説明

LED駆動電源装置およびLED照明装置

【課題】極低輝度を含む範囲で調光行っても、安定な調光を可能にする。
【解決手段】フィードバック制御回路101の二次側制御回路120には、調光パルス信号が入力される。平滑回路121では調光パルス信号のパルス周波数に準じたリップルが残るように平滑処理が行われ、制御器122のオペアンプOPの非反転入力端子へは、当該平滑処理された電圧が与えられる。このリップルが残った電圧に基づいて、制御器122、絶縁手段130、一次側制御回路110によるフィードバック制御が実行される。リップルが残っていることで、低輝度時すなわち一次側制御回路110のフィードバック電圧VFBが低くなるときには、リップル成分のみからなる電圧がQ1制御信号生成回路111に入力される。Q1制御信号生成回路111は、このリップル成分のみからなる電圧に基づいてバースト調光制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、LEDを定電流駆動するLED駆動電源装置およびLED照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置やディスプレイ装置のバックライト等、LEDは種々の形態で利用されている。LEDに対して電力を供給するLED駆動回路は、一般に定電流制御によって駆動される。そして、現在、調光機能を備えるLED照明装置が各種実用化されている。
【0003】
特許文献1に記載されたLED照明装置は調光機能を備えるものである。当該特許文献1のLED照明装置の電力コンバータは、入力端子に交流(AC)電圧Vacを受け取り、当該AC電圧を直流(DC)電圧Vdcへ変換し、LEDを駆動するための電流を出力する。電力コンバータ10は、ACの高入力電圧を、整流されたAC入力レベルより高くても低くてもよい希望の電圧レベルへ変換し、LED電流を希望の輝度レベルに対して適切に制御できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−537459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、LED照明装置の輝度を調光により抑えようとする場合、駆動電流を低下させなければならない。
【0006】
しかしながら、LED照明装置の駆動電流を低下していくと、調光可能範囲の下限(ミニマム)付近で、LEDに流れる電流(LED電流)が非常に小さくなり、LED電流が不安定となる。そのため、消灯状態を含む範囲で調光を行う場合にはチラツキが発生する、という課題があった。
【0007】
このようなLED電流の不安定性は定電流制御によって生じる。具体的には、定電流制御のためには、LED照明装置からの電流フィードバックが必要であるが、LED電流が非常に小さくなると、電流フィードバック量が充分な値ではなくなる。
【0008】
そのため、動作上最低限必要な電流フィードバック量が得られるまで、LED電流が一旦余分に増加し、フィードバック制御が掛かる。しかし、そのフィードバック制御によってLED電流が余分に絞られることになり、再びLED電流が余分に増加する。このような制御が繰り返されるため、上述のチラツキが発生する。
【0009】
この発明の目的は、極低い輝度に調光する場合であっても、安定した調光が可能なLED駆動電源装置およびLED照明装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、電力変換回路とフィードバック制御部とを備えるLED駆動電源装置に関する。電力変換回路は、入力電源から電力を入力してLEDへ電力を出力する。フィードバック制御部は、LEDの輝度またはLEDへの供給電力を設定するための調光パルス信号を基準としてフィードバック制御を行い、LEDへの供給電力を制御する制御信号を、電力変換回路に与える。このような構成の上で、フィードバック制御部は、調光パルス信号を所定のリップルが残るように平滑する平滑回路を備える。そして、フィードバック制御のゲインは、調光パルス信号の周波数で高く設定されている。
【0011】
また、この発明のLED駆動電源装置では、フィードバック制御のゲインは、制御信号にリップルの影響が残るような値に設定されていることが好ましい。
【0012】
この構成では、調光パルス信号は、所定の周波数で繰り返されるリップルが残るように、すなわち波形が完全に平滑(直流化)しないように平滑化処理される。また、フィードバック制御のゲインが当該リップルの周波数で高い。このため、電力変換回路に与える制御信号にはリップルの影響が残る。
【0013】
LEDの輝度を高く設定する場合すなわち制御信号の平均電圧値を高く設定する場合には、制御信号の直流電圧値に対してリップルの振幅割合が低くなり、通常の直流電圧制御となる。一方、LEDの輝度を低く設定する場合すなわち制御信号の電圧値を極低く設定する場合には、リップルの振幅割合が大きくなり、また、リップル成分のみが残り、バースト動作となる。これにより、輝度の高い場合も低い場合も安定した電力供給が可能になる。
【0014】
また、この発明のLED駆動電源装置では、入力電源は商用電源であり、電力変換回路は、商用交流電源の電圧を入力し、LEDへの供給電流が商用交流電源の電圧と同位相で正弦波状に変化するように制御する力率改善コンバータであることが好ましい。
【0015】
この構成では、LED駆動電源装置として具体的に力率改善コンバータを用いた場合を示している。この構成により、高力率なLED駆動電源装置が可能となる。
【0016】
また、この発明のLED駆動電源装置では、フィードバック制御のゲインは、商用交流電源の脈動に応答しない値に設定されていることが好ましい。
【0017】
また、この発明のLED駆動電源装置では、フィードバック制御のゲインは、商用交流電源の2倍の周波数帯域で十分低下するように設定されていることが好ましい。
【0018】
この構成では、具体的に力率改善コンバータのフィードバックゲインについて示している。一般に力率改善コンバータのフィードバックゲインは、商用周波数成分の変動が出力に生じないように、商用周波数の2倍において十分低下するように設計される。すなわち、より高力率なLED駆動電源装置を実現できる。
【0019】
また、この発明のLED駆動電源装置では、LEDが軽負荷のときに、調光パルス信号の周波数でバースト調光動作することが好ましい。
【0020】
この構成では、極低輝度制御を行っても、リップル成分が残ることによりバースト調光動作を行うことができ、従来のような極低輝度時に発生するチラツキの発生を抑制することができる。
【0021】
また、この発明のLED駆動電源装置では、電力変換回路は、絶縁状態で電力変換を行う絶縁トランスを備える絶縁型の電力変換回路であり、フィードバック制御部は、商用交流電源の入力側となる一次側制御回路と、LEDが接続される側となる二次側制御回路と、一次側制御回路と二次側制御回路とを絶縁した状態フィードバックループを形成する絶縁手段と、を備えることが好ましい。
【0022】
この構成では、LED駆動電源装置として具体的に絶縁型の電力変換回路を用いた場合を示している。
【0023】
また、この発明のLED駆動電源装置では、電力変換回路は、非絶縁の昇降圧コンバータであることが好ましい。
【0024】
この構成では、LED駆動電源装置として具体的に非絶縁型の電力変換回路を用いた場合を示している。
【0025】
また、この発明の好ましい例としては、LED照明装置に関し、当該LED照明装置は、上述のいずれかに記載のLED駆動電源装置と、当該LED駆動電源装置によって電力供給を受けるLEDと、を備える。
【0026】
この構成では、上述のLED駆動電源装置を備えたLED照明装置を示している。上述のLED駆動電源装置を備えることで、安定した調光動作が可能なLED照明装置を実現できる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によれば、極低い輝度を含む範囲で調光行っても、安定的に調光可能なLED駆動電源装置及びLED照明装置が構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るLED照明装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るフィードバック制御部101の具体的構成を示す回路構成図である。
【図3】二次側制御回路120および一次側制御回路110のゲイン特性および位相特性を示す図である。
【図4】高輝度制御時および極低輝度制御時のフィードバック電圧VFB波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係るLED駆動電源装置およびLED照明装置について、図を参照して説明する。図1はLED照明装置の構成を示す図である。
【0030】
LED照明装置は、LED駆動電源装置100とLEDモジュール300とを備える。LEDモジュール300は、複数のLEDが所定配列で接続された発光モジュールである。LED駆動電源装置100には商用交流電源200が接続されている。
【0031】
LED駆動電源装置100は、電源入力端子P11,P12から商用交流電源200の電圧を入力し、電源出力端子P21,P22に接続されているLEDモジュール300へ直流電力を供給する。このLED駆動電源装置100は基本的に不連続モードおよび臨界モードで駆動する絶縁型のPFC(力率改善コンバータ)である。
【0032】
ダイオードブリッジDBは、電源入力端子P11,P12から入力される交流電圧を全波整流する。ダイオードブリッジDBの出力には、トランスTの1次巻線とスイッチング素子Q1との直列回路が接続されている。また、ダイオードブリッジDBの出力には、電流リップルやノイズを除去するためのコンデンサCiが接続されている。
【0033】
トランスTはフライバック型コンバータを構成するためのトランスである。トランスTの2次巻線にはダイオードD1及びコンデンサC1による二次側整流平滑回路が接続されている。
【0034】
これらダイオードブリッジDB、トランスT、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、コンデンサC1によって電力変換回路が構成されている。
【0035】
二次側整流平滑回路の出力には電力供給端子P21,P22が接続されており、当該電力供給端子P21,P22間にLEDモジュール300が接続されている。LEDモジュール300の電流経路(グランド側ライン)には電流検出用の抵抗Rsが直列に接続されている。
【0036】
フィードバック制御回路101は、具体的な調光制御については後述するが、概略的なフィードバック制御機能としては、次の制御を行う。なお、本実施形態では、定電流供給のフィードバック制御に関する具体的な回路構成は図示せず、調光制御に利用する回路構成のみを図示して説明する。
【0037】
フィードバック制御回路101は、LEDモジュール300に流れる電流Ioを検出用の抵抗Rsで電圧検知する。フィードバック制御回路101は、リファレンス電圧Vrefと当該検知電圧とから得られる二次側制御用電圧(後述するオペアンプOPの反転入力端子の電圧)と調光信号入力端子P31から入力される調光パルス信号によって設定される基準電圧(後述するオペアンプOPの非反転入力端子の電圧)とを一致させるように、スイッチング素子Q1をオン/オフ制御する制御信号を生成する。
【0038】
ここで、調光パルス信号とは、LEDモジュール300に流れる電流Ioを設定する信号であり、つまり輝度を設定する信号である。調光パルス信号は、LED駆動電源装置100の外部から入力される矩形波である。調光パルス信号のオンデューティ(1周期におけるオン時間の比率)により、輝度が設定される。なお、本実施形態のLED駆動電源装置100では、調光パルス信号としてパルス周波数が1000Hzに設定されている。
【0039】
スイッチング素子Q1のオン/オフにおいて、フィードバック制御回路101は、電源入力端子P11,P12に流れる電流変化が商用交流電源200からの交流電圧Vacと同位相のほぼ正弦波状となるように、不連続モードもしくは臨界モードでスイッチング素子Q1を制御する。このことにより、電力変換回路をPFC(力率改善)コンバータとして機能させることができる。
【0040】
具体的に、本実施形態のフィードバック制御回路101は、一次側制御回路110、二次側制御回路120、および絶縁手段130を備える。図2はフィードバック制御回路101の具体的構成を示す回路構成図である。なお、以下ではフィードバックの経路に準じて、二次側から順に説明する。
【0041】
二次側制御回路120は、調光パルス信号を平滑処理する平滑回路121(本発明の「平滑回路」に相当する。)を備える。平滑回路121は、抵抗RfとコンデンサCfとの直列回路であり、コンデンサCfがグランドラインに接続されている。ここで、平滑回路121は、調光パルス信号を所定のリップルが残るように平滑する。所定のリップルは、抵抗RfとコンデンサCfの値により設定される。
【0042】
この際、コンデンサCfは、グランドラインにおける電流検出用の抵抗RsのLEDモジュール300側に接続されている。
【0043】
平滑回路121の抵抗Rf側には、pnp型トランジスタQpのコレクタが接続している。当該トランジスタQpのエミッタには、リファレンス電圧Vrefが供給されている。また、トランジスタQpのベースには、調光信号入力端子P31が接続されている。
【0044】
トランジスタQpには、抵抗Rbが並列接続されている。また、コンデンサCfには、放電用の抵抗Rdが並列接続されている。抵抗Rb、抵抗Rfおよび抵抗Rdは、調光パルス信号が入力されていない状態で、オペアンプOPの反転入力端子の電圧と非反転入力端子の電圧を同じにするような抵抗値に設定されている。
【0045】
平滑回路121の抵抗RfとコンデンサCfとの接続点は、抵抗R10を介してオペアンプOPの非反転入力端子に接続されている。
【0046】
抵抗Rrefと抵抗R1の直列回路は、抵抗R1側が、グランドラインに直列接続された電流検出用の抵抗Rsにおける平滑回路121と接続する反対側に接続されている。抵抗Rref側には、リファレンス電圧Vrefが供給されている。オペアンプOPの反転入力端子は、抵抗Rrefと抵抗R1との接続点に接続されている。抵抗R1には、コンデンサC3と抵抗R3との直列回路が並列接続されている。したがって、オペアンプOPの反転入力端子には、抵抗Rrefと、抵抗R1,R3およびコンデンサC3からなる回路との分圧電圧が印加される。
【0047】
オペアンプOPの出力端と反転入力端子との間には、コンデンサC2と抵抗R2との直列回路が接続されている。
【0048】
これらオペアンプOP、抵抗R1,R2,R3、コンデンサC2,C3によって制御器122を構成する。そして、これら抵抗R1,R2,R3、コンデンサC2,C3の素子値を適宜設定することで、図3(A)に示すゲイン及び位相の周波数特性を実現する。図3(A)は二次側制御回路120のフィードバックゲインおよび位相特性を示す図である。具体的に、本願の制御器122は、図3(A)に示すように、ゲインが100Hz付近で極小になり、1000Hz付近まで上昇する特性を有する。なお、図3(A)に示すように、100Hzまでの周波数の上昇に応じたゲインの低下はコンデンサC2のキャパシタンスで決定し、100Hzから1000Hzまでのゲインの上昇は抵抗R1の抵抗値およびコンデンサC3のキャパシタンスで決定し、1000Hz以上のゲインは抵抗R3の抵抗値で決定する。
【0049】
これにより、フィードバックゲインの周波数特性を、LED駆動電源装置100に供給される商用交流電源の周波数の2倍の周波数である100Hz付近の周波数で低下させるように変更できる。つまり、商用交流電源の全波整流の脈動に応答しない値にゲインを設定することができ、商用交流電源によるノイズ等を防止できる。また、調光パルス信号のパルス周波数である1000Hzでのゲインを上昇することができ、後述するフィードバック電圧VFBに調光パルス信号のリップル成分を残すことができる。なお、ここでは、1000Hzでのゲインの低下を抑制するような特性に設定しているが、パルス周波数に応じてゲインの低下を抑制する特性になるように、各素子値を設定すればよい。このようにすることで、100Hz付近ではフィードバックの信号を減衰させ、1000Hz付近ではフィードバックの信号を通過させることができる。
【0050】
図2に戻り、オペアンプOPの出力端には、抵抗を介して絶縁手段130を構成するフォトカプラのフォトダイオードが接続されている。この際、フォトダイオードのカソードが抵抗を介してオペアンプOPの出力端に接続されている。フォトダイオードのアノードからは、直流駆動電圧Vcc2が供給されている。
【0051】
絶縁手段130を構成するフォトカプラのフォトトランジスタのコレクタ及びエミッタは、一次側制御回路110に接続されている。
【0052】
一次側制御回路110は、駆動電圧Vcc1が供給される定電流源Icomを備える。定電流源Icomの出力端子は、フォトトランジスタのコレクタに接続されており、フォトトランジスタのエミッタはグランドラインに接続されている。
【0053】
フォトトランジスタのコレクタ−エミッタ間には、抵抗R5およびコンデンサC5の直列回路と、コンデンサC4とが、それぞれ並列接続されている。また、フォトトランジスタのコレクタは、Q1制御信号生成回路111に接続されている。
【0054】
そして、これら抵抗R5、コンデンサC4,C5の素子値を適宜設定することで、図3(B)に示すゲイン及び位相の周波数特性を実現する。図3(B)は一次側制御回路110のフィードバックゲインおよび位相特性を示す図である。具体的には、図3(B)に示すように、100Hz付近まで周波数が高くなるにしたがってゲインが低下し、且つ100Hz付近から1000Hz付近まではゲインが所定レベルを維持し、さらに周波数が高くなるにしたがってゲインが低下する特性を有する。
【0055】
なお、図3(B)に示すように、100Hzまでの周波数の上昇に応じたゲインはコンデンサC5のキャパシタンスで決定し、100Hzから1000Hzまでのゲインは抵抗R5の抵抗値で決定し、1000Hz以上の周波数の上昇に応じたゲインはコンデンサC4のキャパシタンスで決定する。
【0056】
これにより、上述の二次側制御回路120と同様に、フィードバックゲインの周波数特性について、調光パルス信号のパルス周波数である1000Hzでのゲインを維持することができ、後述するフィードバック電圧VFBに調光パルス信号のリップル成分を残すことができる。そして、この際、商用交流電源の2倍の周波数である100Hzのゲインが高くなりすぎないように設定することができ、商用交流電源によるノイズ等を防止できる。なお、ここでも、二次側制御回路120と同様に、商用交流電源の周波数およびパルス周波数に応じて、各素子値を適宜設定することで、ゲイン特性を適切に調整すればよい。
【0057】
Q1制御信号生成回路111は、フォトトランジスタのコレクタ電圧であるフィードバック電圧VFBに基づいて、スイッチング素子Q1を制御する制御信号を生成し、スイッチング素子Q1へ出力する。Q1制御信号生成回路111は、スイッチング素子Q1のオン時間をTonとすると、Ton=α・VFBとなるように、スイッチング素子Q1を制御する制御信号を生成する。また、Q1制御信号生成回路111は、電源入力端子P11,P12に流れる電流がゼロになるタイミングを検出して、スイッチング素子Q1をターンオンさせる。これにより、LED駆動電源装置100は臨界モードで動作する。なお軽負荷では、Q1制御信号生成回路111は、電源入力端子P11,P12に流れる電流がゼロになるタイミングを検出してから所定の時間が経過した後に、スイッチング素子Q1をターンオンさせる。これにより、LED駆動電源装置100は不連続モードで動作する。
【0058】
フィードバック電圧VFBに基づいて、スイッチング素子Q1を制御する制御信号を生成する際、上述のように、一次側制御回路110と二次側制御回路120のゲインを調整していることにより、パルス周波数のゲインが高いので、フィードバック電圧VFBには、調光パルス信号のリップル成分が残る。逆に言えば、調光パルス信号のリップルを意図的に残したフィードバック電圧VFBを得ることができる。
【0059】
以上のような構成のフィードバック制御回路101を用いることで、次に示すような動作で、調光制御される。
【0060】
なお、本実施形態のLED駆動電源装置100では、調光パルス信号としてパルス周波数が1000Hzに設定されている。ここで、パルス周波数とは、パルスの立ち上がりタイミングが1/1000秒周期となる信号の周波数をいう。そして、本実施形態で用いる調光パルス信号は、輝度を低下させる場合にはオンデューティが高くなり、輝度を向上させる場合にはオンデューティが低くなる信号である。
【0061】
(i)輝度を上昇させる場合
輝度を上昇させる場合、調光パルス信号のオンデューティが低くなる。オンデューティの低下にともない、トランジスタQpのオフ時間が短くなる。これにより、オペアンプOPの非反転入力端子の電圧がリファレンス電圧Vrefに近づき上昇する。
【0062】
オペアンプOPの非反転入力端子の電圧が上昇すると、反転入力端子の電圧を基準とした非反転入力端子の電圧が高くなり、オペアンプOPの出力端電圧が高くなる。オペアンプの出力端電圧が高くなると、フォトダイオードに印加される電圧が低下する。
【0063】
フォトダイオードに印加される電圧が低下すると、発光量が低下し、フォトトランジスタが検知する光量が低下し、コレクタ−エミッタ間の電圧が上昇する。これにより、Q1制御信号生成回路111に入力されるフィードバック電圧VFBが上昇する。
【0064】
Q1制御信号生成回路111は、フィードバック電圧VFBの上昇に応じて、スイッチング素子Q1のオン時間を長くする制御信号を生成し、スイッチング素子Q1へ与える。スイッチング素子Q1のオン時間が長くなることで、LEDモジュール300への供給電力が上昇する。これにより、LED輝度を上昇する方向へ制御することができる。
【0065】
この際、フィードバック電圧VFBは、図4(A)に示すように高い電圧値となり、直流成分とリップル成分とから構成される。図4(A)は高輝度制御時のフィードバック電圧VFB波形を示す図である。しかしながら、リップル成分の振幅に対して直流成分の振幅が大幅に高いので、リップル成分の影響は殆ど無く、このような場合には、通常のDC調光制御を行うことができる。
【0066】
(ii)輝度を低下させる場合
輝度を低下させる場合、調光パルス信号のオンデューティが高くなる。オンデューティの高くなるのにともない、トランジスタQpのオン時間が短くなる。これにより、オペアンプOPの非反転入力端子の電圧がグランド電位に近づき低下する。
【0067】
オペアンプOPの非反転入力端子の電圧が低下すると、反転入力端子の電圧に対して非反転入力端子の電圧が相対的に低くなり、オペアンプOPの出力端電圧が低下なる。オペアンプの出力端電圧が低下すると、フォトダイオードに印加される電圧が高くなる。
【0068】
フォトダイオードに印加される電圧が高くなると、発光量が増加し、フォトトランジスタが検知する光量が増加してコレクタ−エミッタ間の電圧が低下する。これにより、Q1制御信号生成回路111に入力されるフィードバック電圧VFBが低下する。
【0069】
Q1制御信号生成回路111は、フィードバック電圧VFBの低下に応じて、スイッチング素子Q1のオン時間を短くする制御信号を生成し、スイッチング素子Q1へ与える。スイッチング素子Q1のオン時間が短くなることで、LEDモジュール300への供給電力が低下する。これにより、LEDの輝度を低下させる方向へ制御することができる。
【0070】
この際、上述のフィードバックゲイン制御を行っていることで、フィードバック電圧VFBは、図4(B)に示すようにリップル成分のみから構成される。図4(B)は極低輝度制御時のフィードバック電圧VFB波形を示す図である。このように、極低輝度制御を行っても、リップル成分が残ることによりバースト調光動作となる。バースト調光においては、電流オフの期間により輝度が調整されるため、すべての期間において電流の大きさにより輝度を調整するDC調光ほど電流は小さくならず、安定に動作させることができる。また1000Hz程度の明滅は人の眼にはチラツキとして現れない。これにより、従来のような極低輝度時に発生するチラツキの発生を抑制することができる。
【0071】
以上のように、本実施形態の構成および処理を用いることで、高輝度から消灯状態に近い極低輝度に亘っても安定した輝度が得られる調光が可能になる。この際、例えば高輝度時にDC調光制御を行い低輝度時にPWM調光制御を行う等の二種類の制御方式に切り替える構造や処理を行う必要が無く、フィードバック制御回路101の回路素子値を適宜設定するだけで、安定した調光を行うことができる。
【0072】
なお、上述の説明では、調光パルス信号の周波数を1000Hzとしたが、商用交流電源の周波数と略一致する周波数でなければ、当該商用交流電源の周波数よりも高い所定の周波数に設定すればよい。
【0073】
本実施形態では、絶縁型のPFC(力率改善)コンバータを示しているが、非絶縁の昇降圧コンバータを回路方式としたPFC(力率改善)コンバータにおいても、同様の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
100:LED駆動電源装置、101:フィードバック制御部、110:一次側制御回路、111:Q1制御信号生成回路、120:二次側制御回路、121:平滑回路、122:制御器、130:絶縁手段、200:商用交流電源、300:LEDモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電源から電力を入力し、LEDへ電力を出力する電力変換回路と、
前記LEDの輝度または前記LEDへの供給電力を設定するための調光パルス信号を基準としてフィードバック制御を行い、前記LEDへの供給電力を制御する制御信号を、前記電力変換回路に与えるフィードバック制御部と、を備え、
該フィードバック制御部は、前記調光パルス信号を所定のリップルが残るように平滑する平滑回路を備えるとともに、
前記フィードバック制御のゲインは、前記調光パルス信号の周波数で高く設定されている、LED駆動電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のLED駆動電源装置であって、
前記フィードバック制御のゲインは、前記制御信号に前記リップルの影響が残るような値に設定されている、LED駆動電源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のLED駆動電源装置であって、
前記電力変換回路は、前記商用交流電源の電圧を入力し、前記LEDへの供給電流が前記商用交流電源の電圧と同位相で正弦波状に変化するように制御する力率改善コンバータである、LED駆動電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載のLED駆動電源装置であって、
前記フィードバック制御のゲインは、前記商用交流電源の脈動に応答しない値に設定されている、LED駆動電源装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4のいずれかに記載のLED駆動電源装置であって、
前記フィードバック制御のゲインは、前記商用交流電源の2倍の周波数帯域で十分低下するように設定されている、LED駆動電源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のLED駆動電源装置であって、
前記LEDが軽負荷のときに、前記調光パルス信号の周波数でバースト調光動作する、LED駆動電源装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のLED駆動電源装置であって、
前記電力変換回路は、絶縁状態で電力変換を行う絶縁トランスを備える絶縁型の電力変換回路であり、
前記フィードバック制御部は、前記商用交流電源の入力側となる一次側制御回路と、LEDが接続される側となる二次側制御回路と、前記一次側制御回路と前記二次側制御回路とを、絶縁した状態フィードバックループを形成する絶縁手段と、を備える、LED駆動電源装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のLED駆動電源装置であって、
前記電力変換回路は、非絶縁の昇降圧コンバータである、LED駆動電源装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のLED駆動電源装置と、
該LED駆動電源装置によって電力供給を受けるLEDと、を備えるLED照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−134100(P2012−134100A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287335(P2010−287335)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】