説明

LPガスバルク貯槽の昇温装置

【課題】 液化LPガスを充填しているバルク貯槽の底に配置して底面を暖める為の昇温装置であって、効率よくバルク貯槽を加熱・昇温することが出来るバルク貯槽の昇温装置の提供。
【解決手段】 底部7の外周には外周壁部8を起立して設けることで収容部9を形成し、収容部9には不凍液6を収容すると共に熱媒体を流して上記不凍液を暖めることが出来る循環パイプ12を設け、外周壁部8の上端面をバルク貯槽1の底面10に隙間なく当接して収容部9に収容した不凍液が底面10に接するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLPガス(低分子炭化水素を主成分とする液化石油ガス)を貯蔵するバルク貯槽を加温する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LPガスはガスボンベ(バルク貯槽)に貯蔵され、給湯器やガスコンロ等の厨房機器及び冷暖房機器、その他のガス燃焼機器へガスを供給することが出来るが、ガスボンベには液化したLPガスが充填されている。ガスを給湯器やガスコンロへ供給するには、ボンベ内の液化ガスを気化させることが必要であるが、気化する際には蒸発潜熱が奪われて温度を著しく低下させ、またガス圧不足をもたらして使用不能に陥ることもある。そこで、多量消費の場合には専用のLPガス蒸発器を取付けて強制的に気化させている。
【0003】
図6は従来の昇温装置を表しているが、該昇温装置には温水マットが用いられている。円盤状をした底面用温水マット(イ)はバルク貯槽(ロ)の底面に取付けられ、帯状をした側面用温水マット(ハ)はバルク貯槽(ロ)の下方側面に取付けられている。上記底面用温水マット(イ)及び側面用温水マット(ハ)にはマグネットが内蔵されている為に、マグネットの磁気力によってバルク貯槽(ハ)に取付けられる。
【0004】
そして、底面用温水マット(イ)及び側面用温水マット(ハ)には細いパイプが渦巻き状に循環して設けられていて、この循環パイプを40℃以下の温水が流れる。すなわち、専用熱源機(ニ)にて加熱した温水は送り管(ホ)を流れて上記底面用温水マット(イ)及び側面用温水マット(ハ)の循環パイプを循環する。循環中にバルク貯槽(ロ)を昇温し、熱が奪われて温度が低下した温水は戻し管(ヘ)を流れて専用熱源機へ戻る。
【0005】
専用熱源機(ニ)では温度が低下した温水は再び加熱されて送り管(ホ)から送り出される。すなわち、温水は専用熱源機(ニ)と底面用温水マット(イ)及び側面用温水マット(ハ)間を循環することでバルク貯槽(ロ)を適温に昇温している。ここで、該温水としては一般に不凍液が使用されている。
【0006】
この昇温装置には専用熱源機(ニ)を作動するためのリモコンタイマー(ト)を備えていて、離れたところからでも該専用熱源機(ニ)をON−OFFすることが出来るように制御している。ところで、上記底面用温水マット(イ)及び側面用温水マット(ハ)には細いパイプが循環して設けられ、約40℃の温水は循環パイプを伝ってバルク貯槽(ロ)を昇温することが出来る。
【0007】
しかし、温水がバルク貯槽(ロ)に直接当たらない為に熱の伝達効率は低く、バルク貯槽(ロ)が昇温するには時間がかかる。すなわち、底面用温水マット(イ)とバルク貯槽(ロ)との間には空気の隙間が介在して熱は奪われ、同じく側面用温水マット(ハ)とバルク貯槽(ロ)との間にも空気の隙間が介在して熱は奪われる。その為に、液化LPガスを気化して消費する際に奪われる潜熱の方が大きくなって逆に温度が低下し、LPガスの供給が不十分になってしまう。勿論、40℃の温水でなく高温の温水を使用するならばバルク貯槽(ロ)を短時間で昇温することは可能であるが、該バルク貯槽(ロ)の温度が上り過ぎて事故が発生する虞がある。
【0008】
特開2002−340293に係る「バルク貯槽の保温装置」は、縦型のバルク貯槽の外周に温水が循環するスパイラル形状の温水パイプを配置し、この温水パイプの外周に保温カバーを設けたものである。このバルク貯槽の保温装置の場合も前記図6に示した温水マットと同じように伝達される熱効率は低くなってしまう。
【0009】
特開2003−269694に係る「保温カバーを取り付けた液化ガス供給装置」は、バルク貯槽内に収容された液化ガスを気化させてガス取出口から外部に供給するようにした液化ガス供給装置であり、バルク貯槽の底部にバルク貯槽内に収容された液化ガスを加熱する加熱手段を設け、加熱手段の少なくとも側面と共にバルク貯槽を覆う保温カバーを取り付け、バルク貯槽と保温カバーとの間に隙間を設けた構成としている。しかし、この保温カバーを取り付けた液化ガス供給装置は構造が非常に複雑であってコストが高くなってしまう。勿論、熱効率も低い。
【特許文献1】特開2002−340293に係る「バルク貯槽の保温装置」
【特許文献2】特開2003−269694に係る「保温カバーを取り付けた液化ガス供給装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、従来のバルク貯槽に取付けられる昇温装置には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこの問題点であり、40℃の温水の熱が無駄なくバルク貯槽を加熱・昇温することが出来るバルク貯槽の昇温装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る液化LPガスのバルク貯槽の昇温装置は該バルク貯槽の底に取付けられ、バルク貯槽の底面を加熱してLP液化ガスを昇温するように構成している。そこで、本発明ではバルク貯槽の底面に難燃性油又は不凍液などを用いた熱媒体を直接接触させる構造としている。
【0012】
昇温装置は底部と外周壁部を有し、この内部に上記熱媒体を収容し、そして外周壁部にはゴム又は樹脂からなってシール機能を備え、この外周壁部はバルク貯槽の底面に接してシールされ、収容した熱媒体の漏れを防止している。勿論、外周壁部全体をゴム又は樹脂で構成することも可能であり、又外周壁部をリングチューブで構成してエアーを充填することが出来るようにする場合もある。
【0013】
そして、上記熱媒体を所定の温度に保つ為に昇温装置内にはパイプを配置し、このパイプ内を温水が循環することで加熱・保温するようにしている。該パイプを循環する温水は従来と同じく専用熱源機によって加熱されるが、他のヒータを使用することも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の昇温装置は所定温度に保たれている熱媒体がバルク貯槽底面に直接当たることで、効率よく底面を昇温することが出来る。従って、液化したLPガスが気化してもバルク貯槽の温度低下を招くことなく、LPガスを安定して供給することが出来る。そして、本発明の昇温装置は外周壁部と底部から成る収容部に熱媒体を入れると共に底には循環パイプを配置しただけの簡単な構造と成っているが、ゴム質の外周壁部の上端が底面に隙間なく当たって、液漏れは発生しない。
【実施例】
【0015】
図1は本発明に係る昇温装置を備えたバルク貯槽の底部を表している場合で、同図の1はバルク貯槽、2は昇温装置、3は脚を示している。バルク貯槽1は円筒状の容器であり、内部には液化LPガスが収容され、このバルク貯槽1から供給管が接続されて給湯器やガスコンロへガスを供給することが出来る。そして、該バルク貯槽1はコンクリートベース4,4・・に固定された3個の脚3,3・・にて支持されている。
【0016】
脚3は水平断面がコ形を成し、傾斜した上端に外周底5が載って固定されている。そして、3個の脚3,3・・の内側には昇温装置2が配置され、該昇温装置2によってバルク貯槽1の底面が加熱される。図2は上記昇温装置2を表している実施例であり、円形の底部7の周りには外周壁部8が起立して収容部9を形成している。
【0017】
そして、この収容部9には熱媒体となる不凍液6が満たされ、前記図1に示すようにバルク貯槽1の底に配置された場合には、該不凍液6は底面10に直接接するようになる。外周壁部8はゴム質で構成されて、内側を低くして傾斜した上端面11はバルク貯槽1の底面10に当接すると共に該底面10との間に隙間が発生しないように配置される。すなわち、昇温装置2を底に配置する場合に外周壁部8の上端面11が底面10に当たって圧縮され、該底面10に隙間なく密着する。
【0018】
底部7には循環パイプ12が渦巻き状を成して載置され、該循環パイプ12は入口13と出口14を有している。専用熱源機(図示なし)にて加熱された不凍液などの温水は入口13から循環パイプ12へ入って不凍液6を暖め、熱が奪われた温水は出口14から専用熱源機へ戻される。温水は該専用熱源機によって40℃に加熱されて、収容部9に充填されている不凍液6も40℃に保温される。
【0019】
図3は他の昇温装置2を備えたバルク貯槽1の底部を表している。該昇温装置2はバルク貯槽1の底に配置されて底面10を暖めることが出来るように構成している。図4では昇温装置2を単独で表しているように、底部7の上にはリングチューブ15で構成した外周壁部8が載置され、リングチューブ15にはエアーが充填されている。
【0020】
そこで、この昇温装置2をバルク貯槽1の底に配置するならば、リングチューブ15から成る外周壁部8は底面10に当たって圧縮され、該リングチューブ15と底面10及び底部7との間に隙間を形成することはなく、収容部9に入れた不凍液6が漏れることはない。すなわち、車のタイヤチューブのような外周壁部8がバルク貯槽1の底に配置されて内側の収容部9に不凍液6が充填されている。勿論、底部7には循環パイプ12が載置されて専用熱源機で加熱された温水が該不凍液を保温する。
【0021】
外周壁8をリングチューブ15で構成する場合、該リングチューブ15にはエアーを充填する為のバルブが設けられている。そして、収容部9に収容されている不凍液6が漏れて流れ出した場合には、不凍液6の液面が低下してバルク貯槽1の底面10に接しないようになる。そこで、外周壁部8には不凍液6の水位が分かるように水準器が取付けられている。そして、水準器を利用して不足した不凍液を注入することも可能である。
【0022】
ところで、図2に示す昇温装置2にアジャスターを取付けた構造とし、床面に設置した複数のアジャスターにて底部7を支持し、該アジャスターを調整することで外周壁部8の上端面11が底面10に当接して適度に圧縮するように出来る。図5はアジャスター16,16・・にて昇温装置2を支えた場合を示し、該アジャスター16,16・・のネジを調整することで高さを変えることが可能となる。又、このようなネジを使用することなく昇温装置2をエアー袋にて押上げるようなアジャスターを用いることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】昇温装置を備えたバルク貯槽の底部。
【図2】昇温装置を示す実施例。
【図3】昇温装置を備えたバルク貯槽の底部。
【図4】昇温装置を示す実施例。
【図5】アジャスターにて支持されている昇温装置。
【図6】従来の昇温装置を備えたバルク貯槽。
【符号の説明】
【0024】
1 バルク貯槽
2 昇温装置
3 脚
4 ベース
5 外周底
6 不凍液
7 底部
8 外周壁部
9 収容部
10 底面
11 上端面
12 循環パイプ
13 入口
14 出口
15 リングチューブ
16 アジャスター













【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化LPガスを充填しているバルク貯槽の底に配置して底面を暖める為の昇温装置において、底部の外周には外周壁部を起立して設けることで収容部を形成し、収容部には不凍液や難燃性油などの熱媒体を収容すると共に温水を流して上記熱媒体を暖めることが出来るヒータを設け、外周壁部の上端面をバルク貯槽の底面に隙間なく当接して収容部に収容した熱媒体が底面に接するようにしたことを特徴とするLPガスバルク貯槽の昇温装置。
【請求項2】
上記外周壁部をゴム質で構成した請求項1記載のLPガスバルク貯槽の昇温装置。
【請求項3】
上記外周壁部の上端をゴム質で構成した請求項1記載のLPガスバルク貯槽の昇温装置。
【請求項4】
液化LPガスを充填しているバルク貯槽の底に配置して底面を暖める為の昇温装置において、底部の外周にはエアーを充填したリングチューブを沿設して収容部を形成し、収容部には不凍液や難燃性油などの熱媒体を収容すると共に温水を流して上記熱媒体を暖めることが出来るヒータを設け、上記リングチューブの下縁部を底部に当接し、上縁部をバルク貯槽の底面に隙間なく当接して収容部に収容した熱媒体が底面に接するようにしたことを特徴とするLPガスバルク貯槽の昇温装置。
【請求項5】
上記収容部に収容した熱媒体の液面が分かる水準器を取付け、不足した熱媒体を注入する注入口を設けた請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4記載のLPガスバルク貯槽の昇温装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−263342(P2007−263342A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92899(P2006−92899)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(506108413)福井矢崎サービス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】