説明

Li−イオン用途のための安定化リチウム金属粉末、組成物及び製法

リチウム金属粉末を安定化させる方法が提供される。この方法は、リチウム金属をその融点以上の温度まで加熱するステップと、溶融リチウム金属を撹拌するステップと、リチウム金属をフッ素化剤と接触させて安定化リチウム金属粉末を提供するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年7月5日に提出された米国特許仮出願No.60/696565号の優先権を主張し、その開示は、全体として、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野及び背景]
本発明は、より良好な安定性及び長期の貯蔵寿命を有する安定化リチウム金属粉末(stabilized lithium metal powder:SLMP)に関する。そのような改良されたSLMPは、有機金属及びポリマー合成、充電式リチウム電池、並びに充電式リチウムイオン電池を含む多種多様な用途で使用することができる。例えば、携帯電話、ビデオカメラ、及びラップトップコンピューターなどの電子技術用途、また更に最近では、電気自動車及びハイブリッド電気自動車などの大電力用途における、充電式リチウム及びリチウムイオン電池の使用は、興味深い一分野である。これらの用途において、望ましいのは、二次電池が、できるだけ高い比容量を有し、更に、連続する充電及び放電サイクルで高い比容量を保持するために、安全な操作条件及び良好なサイクル特性を提供することである。
【背景技術】
【0003】
充電式リチウム電池には種々の構造があるが、各構造は、正極(即ちカソード)、負極(即ちアノード)、カソードとアノードを分離するセパレーター、及びカソードとアノードに電気化学的連絡する電解質を含む。二次電池に関しては、二次電池の放電の場合、即ち、その固有の用途のために使用される場合、リチウムイオンがアノードからカソードへ、電解質を通って移動される。このプロセスの間、電子は、アノードから集められ、外部回路を通って、カソードへ行く。二次電池が充電又は再充電される時には、リチウムイオンは、カソードからアノードへ電解質を通って移動される。
【0004】
歴史的に、リチウム二次電池は、カソード活性物質として高い非容量を有するリチウム化されていない(non−lithiated)化合物、例えばTiS2、MoS2、MnO2及びV25等、を使用して製造された。これらのカソード活性物質は、リチウム金属アノードと対にされた。二次電池の放電の際には、リチウムイオンは、リチウム金属アノードからカソードへと電解質を通って移動された。不運なことに、サイクリング時に、リチウム金属は、最終的に電池に危険な状態を引き起こすデンドライトを発生させた。結果として、リチウムイオン電池のため、これらのタイプの二次電池の製造は、1990年代初期に中止された。
【0005】
リチウム粉末を、特に、二次電池への使用のために、安定化することが知られている。例えば、リチウム粉末は、金属粉末表面を、CO2で不動態化することにより安定化することができる。このことは、例えば、その開示が、全体として、引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米国特許第5567474号、米国特許第5776369号及び米国特許第5976403号に記載される。しかしながら、CO2により不動態化されたリチウム金属粉末は、リチウム金属と空気との反応のために、リチウム金属含分が崩壊する前の限られた期間、低い水分レベルの空気中でのみ使用することができる。従って、改良された貯蔵寿命を有する安定なリチウム金属がなお必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
この目的のために、より安定なリチウム粉末が提供される。リチウム金属粉末は、フッ素又はフッ素含有化合物により不動態化される。LiFの、そのような薄く、緻密な連続層は、LiFの溶解度(即ち、25℃で、H2O100g中0.133g)が、Li2CO3の溶解度(即ち、25℃で、H2O100g中1.29g)より約一桁低いため、CO2に比較して良好な不動態化を提供する。LiF不動態化層は十分に滑らかであり、表面上に、より連続的で緻密な保護不動態化を提供する。生じたリチウム金属粉末は改良された安定性及び改良された貯蔵寿命を有する。
【0007】
本発明のこれら及び他の特徴と利点は、本発明の好ましく、また選択的な実施形態を記述する、以下の詳細な記述と添付図面を考慮すると、当業者に一層容易に明らかとなろう。
【0008】
図面及び以下の詳細な記述において、好ましい実施形態が、本発明を実行できるために詳細に記述される。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態を参照して記述されるが、本発明はこれらの好ましい実施形態に限定されないことが理解されるであろう。それとは反対に、しかしながら、本発明は、以下の詳細な記述及び添付図面を考慮して明白なように、多数の代替物、変更及び等価物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明により、リチウム金属を炭化水素油中で、その融点以上の温度まで加熱し、溶融リチウムを撹拌し(例えば、激しく撹拌)、かつリチウムをフッ素化剤と接触させることによりリチウム分散液が製造される。本発明により、他のアルカリ金属、例えばナトリウム及びカリウムをフッ素化できることが認められる。好適なフッ素化剤は、フッ素又はフッ素含有化合物であってよく、フッ素ガス、HF、SiF4、SnF4、SF6等;ペルフルオロカーボン、例えば、ペルフルオロペンチルアミン、ペルフルオロへキサン、ペルフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン;フルオロ無機化合物、例えば三フッ化ホウ素−tert−ブチルメチルエテラート又はジエチルエーテル中のテトラフルオロホウ酸(tetra−fluorobic acid)を挙げることができる。フッ素化剤は、リチウム溶滴に接触させるために、分散の間に導入するか、又はリチウム分散液の冷却後、より低温で導入することができる。
【0010】
本発明では、多様な炭化水素油を使用することができる。本明細書中で使用される、炭化水素油という用語は、主として又は完全に炭化水素混合物からなる種々の油性液体を含み、鉱油、即ち油と認識される粘度制限を有する鉱物起源の液体産物を含み、従って、石油、ケツ岩油、パラフィン油等を含むが、これらに限定はされない。典型的な炭化水素油は、白油(高精製)、例えば、Pennzoil Products Inc.のPenreco Divisionにより製造された、100°Fで43〜59パスカル秒の範囲の粘度を有し、265°Fの引火点を有するPeneteck;Pennzoil ProductsのPenreco Div.から市販されている、100°Fで粘度213〜236パスカル−秒を有し、360°Fの引火点を有するParol100;及びWitcoのSonneborn Div.により製造のCarnation白油(100°Fでの粘度=133〜165パスカル−秒)のような炭化水素油である。リチウム又はナトリウム金属の融点を包含する範囲で沸騰する精製炭化水素溶媒、例えばUnocal 140溶媒を使用することができる。更に、未精製油、例えば、Unocal 460溶媒及び炭化水素シール油並びにExxonのTelura 401及びTelura 407も使用することができる。炭化水素油の選択は、当業者の技術範囲内のことである。
【0011】
プロセスは、10〜500μの範囲の金属粒径を有するリチウム分散液を製造する。当業者は、リチウム分散液の目的用途によって、適切な粒径を選択できることが認められる。冷却時に、生じたリチウム分散液を濾過して、分散炭化水素油の大部分を除去するのは容易であり、その後、金属をヘキサンなどの溶媒で洗浄し、残留油を除去した後、金属粉末を乾燥させることができる。炭化水素油濾液は、無色透明であり、更に処理せずに、金属分散プロセスに再利用でき、これは、再利用の前に油の粘土カラム精製を要する従来技術のプロセスとは対照的である。乾燥金属粉末は、予想外にも、周囲大気に対し安定しており、そのような大気中で、一つの容器から他の容器へ安全に移すことができる。
【0012】
本発明の種々の実施形態で使用されるリチウム金属は、リチウム粉末として提供され得る。リチウム粉末は、輸送の間、安定であるように処理するか、さもなければ調整することができる。例えば、乾燥リチウム粉末は、従来から知られているようにして、二酸化炭素の存在下で形成できる。不活性雰囲気下、例えばアルゴン雰囲気下に包装することができる。リチウム粉末を、懸濁液、例えば鉱油溶液又は他の溶媒の懸濁液に形成することができる。溶媒に懸濁させた形のリチウム粉末の形成は、より小さいリチウム金属粒子の製造を促進することができる。本発明の一部の実施形態では、本発明の種々の実施形態で使用できるリチウム粉末を、溶媒中に形成することができる。溶媒中に形成されたリチウム粉末は、溶媒中にいれたままで輸送することができる。更に、リチウム金属粉末と溶媒との混合物は、本発明の実施形態で使用でき、溶媒及びリチウム金属粉末は、単一成分として入手できるので、電極製造プロセスから混合ステップを除くことができる。このことは、製造費用を減じ、本発明の実施形態で、より小さく、より微細なリチウム金属粉末粒子の使用を可能にする。
【0013】
リチウム金属粉末は、一般に、平均粒径10〜500μを有する。
【0014】
あるいは、溶媒金属を、噴霧器ノズルを通してスプレーして、安定化リチウム金属粉末を製造することができ、かつフッ素化ステップは、溶滴がフッ素化ガスとアルゴンとの混合物中を飛翔中に行うことができるか、又は粉末を採集した後で行うことができる。
【0015】
安定化リチウム金属粉末を、単独で、又は分散剤、例えばオレイン酸と併用して使用することができる。他の好適な分散剤には、リノール酸、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸リチウム、亜麻仁油、CO2、N2、NH3、テルラ油(telura oil)、ステアリン酸、シュウ酸、タンニン酸(tanic acid)及びCOがある。
【0016】
安定化リチウム金属粉末は、例えばその開示が、全体として、引用することにより本明細書の一部をなすものとする、米国特許第6706447B2号に記載されるように、二次電池に使用することができる。典型的な二次電池は、正極、即ちカソード、負極、即ちアノード、正極と負極を分離するセパレーター、並びに正極及び負極に電気化学的に連絡する電解質を含む。二次電池は、カソードと電気接触する電流コレクタ及びアノードと電気接触する電流コレクタも含む。電流コレクタは、外部回路を通って相互に電気接触する。二次電池は、当技術分野で知られている任意の構造、例えば「ゼリーロール(jelly roll)」又は積層構造を有することができる。
【0017】
カソードは、活性物質から形成され、これは、一般に、炭素質材料とバインダーポリマーとに結合されている。カソードに使用される活性物質は、好ましくは、有用な電圧(例えば、リチウムに対して2.0〜5.0V)でリチウム化され得る物質である。好ましくは、非リチウム化物質、例えば、MnO2、V25又はMoS2又はこれらの混合物を、活性物質として使用でき、MnO2を使用するのは更に好ましい。しかしながら、更にリチウム化できるLiMn24などのリチウム化物質も使用することができる。この構造において、非リチウム化活性物質は、リチウム化活性物質よりも一般に高い比容量を有し、より低い費用及びより広い選択を有するので、非リチウム化活性物質が好まれ、従って、リチウム化活性物質を含む二次電池に勝る増加された電力を供給できる。更に、アノードが下記のようにリチウムを含むので、カソードは、作動二次電池用にリチウム化物質を含む必要は無い。カソードで提供される活性物質の量は、アノード中にある離脱し得るリチウム金属を受容するのに十分であることが好ましい。
【0018】
安定化リチウム金属がホスト物質中に分散された電気化学系で、リチウムを吸収及び脱着できるホスト物質から、アノードが形成される。例えば、アノード中に存在するリチウムは、電池(及び特にアノード)が再充電されると、合金中でホスト物質にインターカレートされ、又は吸収され得る。ホスト物質として、電気化学系でリチウムを吸収及び脱着できる物質があり、例えば、炭素質材料;Si、Sn、スズ及び酸化ケイ素含む材料又は複合スズ及び/又はケイ素合金;遷移金属酸化物、例えばCoO;リチウム金属窒化物、例えばLi3-xCoxN(0<x<0.5)、及びリチウム金属酸化物、例えばLi4Ti512である。
【0019】
あるいは、安定化リチウム金属粉末は、有機リチウム生成物を良好な収率で調製するのに使用される。LiF薄層は、反応性を妨害しないと考えられているが、金属が周囲雰囲気と反応することからは保護する。
【0020】
以下の実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0021】
二つのタイプの安定化リチウム金属粉末を使用して安定性テストを行った。表面積0.06M2/g(粒径分布に基づいて計算)を有するタイプIの粉末、即ちCO2安定化リチウム金属粉末、が、米国特許第5567474号、米国特許第5776369号及び米国特許第5976403号に開示されるようにして得られた。
【0022】
実施例1
バッテリーグレードのリチウム金属(440g)を2×2インチのピースに切断し、かつ室温で、乾燥アルゴンの一定流量下に、固定高速撹拌モーターに接続した撹拌軸が取り付けられた4”トップのついた3lステンレススチール製フラスコ反応器に装入した。反応器には、上部及び下部加熱マントルが装備された。反応器を組み立て、Peneteck(商標)油(Penreco,Division of the Penzoil Products Company)1215gを添加した。次に、反応器を約200℃まで加熱し、穏やかな撹拌を、250rpm〜800rpmの範囲で持続させ、全ての金属が溶融したのを確認した。次いで、混合物を高速(10000rpmまで)で2分間撹拌した。オレイン酸8.78gを反応器に装入し、高速撹拌を更に3分間続けた。その後、高速撹拌を停止し、加熱マントルを外して、分散液が約100℃まで冷却するにまかせた。次に、約800rpmで撹拌しながら、フッ素化剤FC70(ペルフルオロペンチルアミン)32.5gを反応器に装入し、混合物が約45℃に冷却するまで、撹拌を続けた。次いで、分散液を貯蔵瓶に移した。更に、密閉された焼結ガラス製濾過漏斗中で、リチウム分散液を濾過し、ヘキサンで3度洗浄し、n−ペンタンで1度洗浄して、炭化水素油媒体を除去した。漏斗をヒートガンで加熱して、微量の溶媒を除去し、生じた自由流動性の粉末を、蓋がきつく閉まる貯蔵瓶に移した。
【0023】
自然発火性テスト(自然発火性物質の輸送に関するDOT規則の方法1050、連邦規則集パート173、別表E)をこの物質に実行し、これが自然発火性で無いことが判明した。この物質に関する物理的及び化学的性質は、以下の表1に示す。
【0024】
表面積0.29M2/g(粒径分布に基づいて計算)を有するタイプIIの粉末、即ちペルフルオロペンチルアミン安定化リチウム金属粉末が、実施例1に開示のようにして得られた。
【0025】
2つの安定化テストを行い、崩壊率、即ち金属リチウム含分の減少率を以下のように分析した。
テストA:サンプルを相対湿度40%で周囲空気に曝した。
テストB:サンプルを相対湿度20%及び一定の空気流の環境チャンバ中の空気に曝した。
テストC:サンプルを露点(Dow Point)である−34℃及び一定の空気流の環境チャンバ中の空気に曝した。
【0026】
図1と図2に見られるように、表面積0.29M2/gを有するペルフルオロペンチルアミン安定化リチウム金属粉末は、表面積0.06M2/gを有するCO2安定化リチウム金属粉末に対して、表面積がほぼ5倍大きいにもかかわらず、より小さな崩壊率を有する。
【0027】
更に、タイプIIの粉末については、変色が見られず、窒素含分は、曝露時間にわたり約0.5%に保持され、このことは、LiF様コーティングの良好な不動態化特性を示す。湿気のある空気中の窒素との反応を示す、黒色層の形成が、CO2安定化サンプル(タイプI)について観察された。実験Aの条件下で、窒素含分は、0.04%から1.4%まで徐々に増加し、実験Bの条件下では、0.04%から0.7%まで増加した。
【0028】
実施例2
バッテリーグレードのリチウム金属(439g)を2×2インチのピースに切断し、かつ室温で、乾燥アルゴンの一定流量下に、固定高速撹拌モーターに接続した撹拌軸が取り付けられた4”トップのついた3lステンレススチール製フラスコ反応器に装入した。反応器には、上部及び下部加熱マントルが装備された。反応器を組み立て、Peneteck(商標)油1215gを添加した。次に、反応器を約200℃まで加熱し、穏やかな撹拌を、250rpm〜800rpmの範囲で持続して、全ての金属が溶融したのを確認した。次いで、混合物を高速(10000rpmまで)で2分間撹拌した。オレイン酸8.78gを反応器に装入し、高速撹拌を更に3分間続けた。その後、高速撹拌を停止し、加熱マントルを外して、分散液が約100℃まで冷却するにまかせた。次に、約800rpmで撹拌しながら、ペルフルオロペンチルアミン16.24gを反応器に装入し、混合物が約45℃に冷却するまで、撹拌を続けた。次いで、分散液を貯蔵瓶に移した。更に、密閉された焼結ガラス製濾過漏斗中で、リチウム分散液を濾過し、ヘキサンで3度洗浄し、n−ペンタンで1度洗浄して、炭化水素油媒体を除去した。漏斗をヒートガンで加熱して、微量の溶媒を除去し、生じた自由流動性の粉末を、蓋がきつく閉まる貯蔵瓶に移した。この物質に関する物理的及び化学的性質は、以下の表1に示す。
【0029】
実施例3
バッテリーグレードのリチウム金属(444g)を2×2インチのピースに切断し、かつ室温で、乾燥アルゴンの一定流量下に、固定高速撹拌モーターに接続した撹拌軸が取り付けられた4”トップのついた3lステンレススチール製フラスコ反応器に装入した。反応器には、上部及び下部加熱マントルが装備された。反応器を組み立て、Peneteck(商標)油1218.6gを添加した。次に、反応器を約200℃まで加熱し、穏やかな撹拌を、250rpm〜800rpmの範囲で持続して、全ての金属が溶融したのを確認した。次いで、混合物を高速(10000rpmまで)で2分間撹拌した。オレイン酸4.44gを反応器に装入し、高速撹拌を更に3分間続けた。その後、高速撹拌を停止し、加熱マントルを外して、分散液が約100℃まで冷却するにまかせた。次に、約800rpmで撹拌しながら、ペルフルオロペンチルアミン16.43gを反応器に装入し、混合物が約45℃に冷却するまで、撹拌を続けた。次いで、分散液を貯蔵瓶に移した。更に、密閉された焼結ガラス製濾過漏斗中で、リチウム分散液を濾過し、ヘキサンで3度洗浄し、n−ペンタンで1度洗浄して、炭化水素油媒体を除去した。漏斗をヒートガンで加熱して、微量の溶媒を除去し、生じた自由流動性の粉末を、蓋がきつく閉まる貯蔵瓶に移した。この物質に関する物理的及び化学的性質は、以下の表1に示す。
【表1】

【0030】
図3に見られるように、実施例3のサンプルは、CO2安定化リチウム粉末より大きな安定性を有する。図4に見られるように、両方のサンプルが安定性を示す。図5を参照すると、実施例1と3並びに比較例についての−34°D.P.での金属リチウム含分損失は同程度である。
【0031】
実施例4
27%の油中非安定化リチウム分散液12.7gを、マグネティックスターラーを装備した120mlハステロイ缶中に装入した。メチルtert−ブチルエーテルの23.9%溶液としての三フッ化ホウ素tert−ブチルメチルエテラート8.845gを撹拌しながら、一気に添加し、温度が約278℃上昇した。サンプルは冷却するにまかせ、かつ貯蔵瓶に移した。更に、密閉された焼結ガラス製濾過漏斗中で、リチウム分散液を濾過し、ヘキサンで3度洗浄し、n−ペンタンで一度洗浄して、炭化水素油媒体を除去した。漏斗をヒートガンで加熱して、微量の溶媒を除去し、生じた自由流動性の粉末を、蓋がきつく閉まる貯蔵瓶に移した。
【0032】
実施例5
27%の油中の安定化させていないリチウム分散液20.175gを、マグネティックスターラーを装備した1120mlハステロイ缶中に装入した。ペルフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン0.514gを撹拌しながら、一気に添加し、温度が約60℃上昇した。サンプルを〜85℃で約1時間保持した。サンプルは冷却するにまかせ、かつ貯蔵瓶に移した。更に、密閉された焼結ガラス製濾過漏斗中で、リチウム分散液を濾過し、ヘキサンで3度洗浄し、n−ペンタンで1度洗浄して、炭化水素油媒体を除去した。漏斗をヒートガンで加熱して、微量の溶媒を除去し、生じた自由流動性粉末を、蓋がきつく閉まる貯蔵瓶に移した。
【0033】
実施例6
27%の油中の安定化させていないリチウム分散液6.472gを、マグネティックスターラーを装備した120mlハステロイ缶中に装入した。シクロヘキサン中のペルフルオロへキサンの8.74%溶液37.3mlを撹拌しながら、20倍過剰で一気に添加した。反応熱は観察されなかった。サンプルを180℃まで10時間にわたり加熱した。サンプルは冷却するにまかせ、かつ貯蔵瓶に移した。更に、密閉された焼結ガラス製濾過漏斗中で、リチウム分散液を濾過し、ヘキサンで3度洗浄し、n−ペンタンで1度洗浄して、炭化水素油媒体を除去した。漏斗をヒートガンで加熱して、微量の溶媒を除去し、生じた自由流動性粉末を、蓋がきつく閉まる貯蔵瓶に移した。
【0034】
実施例7
乾燥した1L3つ口丸底フラスコに、メカニカルスターラーと、熱電対と、アルゴン吸気口を備えた添加漏斗とを装備した。フラスコをアルゴンでパージし、FC−70で安定化されたリチウム金属粉末(20.00g、2.2eq)を装入した。ヘキサン(195g)を添加し、スラリを37℃まで加熱した。少量のn−ブチルクロリドを添加して、反応を開始させた。数分後に、n−ブチルクロリド(総量は121g)の残分を、混合物の穏やかな還流を保持するような速度で添加した。添加の終了後、混合物を1時間撹拌し、次いで冷却して、濾過した。濾過は迅速であり、かつブチルリチウム溶液はほぼ無色であった。滴定から、収率がナトリウム低分散液に典型的なものであることが判明した。
【0035】
こうして、本発明の特定の実施形態を記述してきたが、以下に請求される特許請求の範囲の精神又は範囲を逸脱せずに多数の明らかなその変法が可能であるので、添付の特許請求の範囲により定義される本発明は、前記記述に記載の特定の詳細により限定すべきでないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1及びCO2安定化リチウム金属粉末に関する、崩壊率の比較である(テストA)。
【図2】実施例1及びCO2安定化リチウム金属粉末に関する、崩壊率の比較である(テストB)。
【図3】実施例3及びCO2安定化リチウム金属粉末に関する、平均崩壊率の比較である。
【図4】実施例1及び実施例3に関する、平均崩壊率の比較である。
【図5】実施例1と3及びCO2安定化リチウム金属粉末に関する、−34°D.P.での金属リチウム含分損失の比較である(テストC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属粉末を安定化する方法であって、
a)リチウム金属をその融点以上の温度まで加熱するステップと、
b)溶融リチウム金属を撹拌するステップと、
c)リチウム金属をフッ素化剤と接触させて安定化リチウム金属粉末を提供するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、炭化水素油中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記安定化されたリチウム金属粉末に、残留炭化水素油を除去する処理を施す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リチウム金属粉末が、10〜500μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融リチウム金属が、24℃〜200℃の温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
リチウム金属粉末を安定化させる方法であって、
a)リチウム金属をその融点以上の温度まで加熱するステップと、
b)溶融リチウム金属を、噴霧器ノズルを通してスプレーして、溶滴を提供するステップと、
c)前記溶滴の飛翔中に、該溶滴をフッ素化して、安定化されたリチウム金属粉末を提供するステップと
を含む、安定化方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、炭化水素油中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記安定化されたリチウム金属粉末に、残留炭化水素油を除去する処理を施す、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記リチウム金属粉末が、10〜500μmの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融リチウム金属が、24℃〜200℃の温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−500526(P2009−500526A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520370(P2008−520370)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/026238
【国際公開番号】WO2007/005983
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(598076270)エフエムシー・コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】