説明

MMP−12関連炎症性障害を治療するためのアンチセンス化合物、方法および組成物

本発明は、哺乳動物のMMP−12をコードする核酸分子の機能を調節するのに使用するための、アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物に関する。より特定には、本発明は、MMP−12をコードする核酸分子に特異的にハイブリダイズし、それによりMMP−12タンパク質産物の発現を阻害することができる長さが8〜50個の核酸塩基の化合物、同様に、それらの医薬組成物およびその使用方法を提供する。本アンチセンスオリゴヌクレオチド化合物は、炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎、乾癬、肺気腫および喘息のような病気を治療するのに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチセンス化合物としてのオリゴヌクレオチドに関する。より特定には、本発明は、メタロプロテイナーゼ12(本発明においては「MMP−12」)の特異的阻害剤として作用し得るアンチセンスオリゴヌクレオチド、同様に、それらの医薬組成物、および、その使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
メタロプロテイナーゼは、近年劇的に数が増加しているプロテイナーゼ(酵素)のスーパーファミリーの代表である。これら酵素は、構造的および機能的な考察に基づきファミリーとサブファミリーに分類されている(Hooper,1994年)。メタロプロテイナーゼの例としては、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)、例えばコラゲナーゼ(MMP1,MMP8,MMP13)、ゼラチナーゼ(MMP2,MMP9)、ストロメライシン(MMP3,MMP10,MMP11)、マトリライシン(MMP7)、メタロエラスターゼ(MMP12)、エナメリシン(MMP19)、MT−MMP(MMP14,MMP15,MMP16,MMP17);レプロライシン(reprolysin)、または、アダマライシン(adamalysin)が挙げられ、または、MDCファミリーとしては、セクレターゼ、および、シダーゼ(sheddase)、例えばTNF変換酵素(ADAM10およびTACE)が挙げられ;アスタシンファミリーとしては、プロコラーゲンプロセシングプロテイナーゼ(PCP)のような酵素;および、その他のメタロプロテイナーゼ、例えばアグリカナーゼ、エンドセリン変換酵素ファミリー、および、アンギオテンシン変換酵素ファミリーが挙げられる。
【0003】
メタロプロテイナーゼ(それらの活性中心に金属イオンが存在することからこのように呼ばれる)は、主として、正常な生理学的条件下での組織等の成長およびリモデリングに必要なプロセスである細胞外マトリックス成分の分解に関与する。
【0004】
MMP−12(マクロファージエラスターゼまたはメタロエラスターゼとも言う)が、Shapiro等(1992年)によりマウスから、最初にクローニングされ、1993年に同グループによりヒトからもクローニングされた(Shapiro等,1993年)。
【0005】
恐らく驚くことではないが、あらゆる種類のプロセスにおいてメタロプロテイナーゼが広範囲にわたり関与しているために、メタロプロテイナーゼは、多くの病気のタイプおよび状態の発病および進行に関連している。例えば:様々な炎症性疾患およびアレルギー性疾患、例えば関節の炎症(特に、リウマチ様関節炎、変形性関節症および痛風)、消化管の炎症(特に、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、胃炎、および、クローン病)、皮膚の炎症(特に、乾癬、湿疹、皮膚炎);腫瘍転移または浸潤;細胞外マトリックスが制御不能に分解することに関連する病気、例えば変形性関節症;骨吸収疾患(例えば骨粗鬆症およびパジェット病);異所性の血管新生に関連する病気;糖尿病、歯周疾患(例えば歯肉炎)、角膜潰瘍形成、皮膚の潰瘍形成、術後の状態(例えば結腸の癒着)、および皮膚の創傷の治癒、に関連する高められたコラーゲンのリモデリング;中枢および末梢神経系の脱髄疾患(例えば多発性硬化症);アルツハイマー病;心臓血管疾患で観察される細胞外マトリックスのリモデリング、例えば再狭窄、および、アテローム性動脈硬化症;喘息;鼻炎;および、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関与する。
【0006】
かなりの種類の科学的な証拠から、制御不能な結合性のマトリックスメタロプロテイナ
ーゼ(MMP)活性は、MMPをもって観察される多くの病気を進行させる作用に関与することが示されており、その結果として、必然的にこれら酵素を阻害することが治療的介入のための魅力的な標的となってきた(Matrisian,1992年;Emonard等,1990年;Docherty,1990年)。
【0007】
MMP阻害剤の臨床条件への移行を実現するには、必ず関連する問題が付随する。臨床条件における広範囲のMMPの阻害により、筋骨格の硬直および痛みが起こる(RasmussenおよびMcCann,1997年)。これら副作用および広範囲の阻害に関連する作用は、長期にわたる投与で増強される恐れがある。従って、特定の対象となるMMPの活性だけを予防することができる選択的MMP阻害剤を提供することが、極めて有利となり得る。
【0008】
従来技術
マウスにおけるタバコの煙で誘導された肺気腫の発生に、MMP−12が必要である、という研究がある(Hautamaki等,1997年)。これは、さらに、機能的インテグリンαvβ6を有さないトランスジェニックマウスが、MMP−12依存性肺気腫を発生させることを示した出版物によって支持されている(Morris等,2003年)。
【0009】
関節軟骨の細胞外マトリックスの急速な崩壊は、リウマチ様関節炎と変形性関節症との両方の病状において重要な特徴であり、現在の証拠は、不適切なMMP合成が、重要な事象であることを示唆している。その上、各種のMMPは、前炎症性サイトカイン腫瘍壊死因子α(TNF−α)の膜結合型前駆体を加水分解することができる(Gearing等,1994年)。この切断により成熟可溶性TNF−αが生じ、MMP阻害剤は、インビトロとインビボの両方で、TNF−αの生産をブロックすることができる(Mohler等,1994年、および、McGeehan等,1994年)。
【0010】
MMP−12の大部分がマクロファージ特異的であるという観察は、マクロファージの炎症部位への移動を可能にするために、マクロファージはMMP−12を必要とするという発見を支持している(Shipley等,1996年)。その上、マクロファージそれ自体が炎症を維持する手段となり、その点において、マクロファージは、多くの前炎症性炎症性サイトカインの生産に関与する。従って、MMP−12の標的化と、それによるマクロファージ移動の減少は、炎症性の状態を治療する新規の治療可能性を提供し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この点において、選択的MMP−12阻害剤はほとんど報告されていないようであり、選択的ではないMMP−12阻害剤または非選択的なMMP−12阻害剤が、あらゆる哺乳動物におけるあらゆる病気の治療のために承認され、または、市場に出回っている。従って、有効な選択的なMMP阻害剤であり、関連する病気の状態の予防および治療における臨床上の使用を可能にする毒性/効力の許容可能な治療指数を有する新規の化合物を発見する必要がある。
【0012】
本発明の目的は、このような選択的化合物をアンチセンスオリゴヌクレオチドの形態で提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、哺乳動物のMMP−12をコードする核酸分子の機能を調節し、最終的にはMMP−12の生産量を調節することによって使用するためのアンチセンスオリゴヌクレオチド化合物を提供する。より特定には、本発明は、MMP−12をコードする核酸分子
に特異的にハイブリダイズし、それにより、MMP−12タンパク質産物の生産をブロックすることができる長さが8〜50個の核酸塩基からなる化合物を提供する。さらに、細胞または組織においてMMP−12の発現を調節する方法および組成物を提供し、本方法は、前記細胞または組織と、1またはそれ以上の本発明のアンチセンス化合物または組成物とを接触させることを含む。これは、MMP−12タンパク質産物をコードする核酸に特異的にハイブリダイズするアンチセンス化合物を提供することによって達成される。
【0014】
本発明は、さらに添付の特許請求の範囲で定義され、これらは参照により本発明に加入させる。
【0015】
図面の説明
本発明を、以下の説明、実施例および添付の図面でより詳細に説明する:
図1は、潰瘍性大腸炎(A)またはクローン病(B)のいずれかに罹った患者からの生検サンプルのMMP−12発現のRT−PCR分析を示す。実験プロトコールは、実施例2で概説する。(記号:Mは、塩基対マーカー;Hは、完全に正常な健康個体からの生検を示す;Cは、炎症を起こしていない領域から採取された生検サンプルを示す;および、Tは、同じ患者の炎症を起こした領域から採取された生検を示す。括弧内の数字は、患者の番号を示し、水平のバーは、同じ患者から得られたCおよびT生検サンプルを表示する)。αアクチンは、ローディングコントロールとして用いられ、全てのRT−PCR反応において等しいmRNAインプットを実証するのに一般的に用いられるハウスキーピング遺伝子の発現状態を示す。
【0016】
図2は、アンチセンス化合物投与後の消化管における炎症の程度の改善を評価するのに用いられた4種の異なる基準を示すヒストグラムを示す。この実施例において、アンチセンス化合物は、配列番号3によって得られたものであり、実験プロトコールは、実施例2で使用されたものである。(記号:黒塗りのバーは、標準的な飲用水のみを投与された健康な動物(健康なコントロール)を示す。斜線のバーは、飲用水中に結腸の炎症を誘導する2.5%DSSを投与された大腸炎を誘導された動物(病気のコントロール)を示す。
格子縞のバーは、それらの飲用水中にDSSに加えて実施例7で概説されたアンチセンス化合物(配列番号3)を投与された動物を示す)。太い黒いバーは、ネガティブコントロール対病気の動物コントロールを示す。細い黒いバーは、病気の動物コントロールとMMP−12アンチセンス処理群との比較を示す。組織学的に、表1に示すスケールに従って0〜4に段階分けされる。有意性は、*P<0.05、**P<0.001、および、***P<0.0005として示される。エラーバー:SEM。
【0017】
図3は、実施例2で得られたマウスの結腸組織の組織切片を示す。A)正常な辺縁上皮、正常なリーバーキューン腺を有し、炎症性細胞がほとんどない健康な結腸、B)辺縁上皮の喪失、障害を起こした腺窩構造、および、炎症性細胞の大規模な浸潤を示す、炎症を起こした結腸、C)障害を起こしているが維持された辺縁上皮、正常化された腺窩を有し、炎症性細胞の浸潤がほとんどない、炎症の回復を示す、配列番号3で得られたMMP−12アンチセンスで処理した結腸。辺縁上皮の上部に、粘液の層を観察することができる。バー=50μm。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の方法の開示および説明に先立って、本発明は、本発明で開示された特定の構成、プロセス工程および材料に限定されるものではなく、このような構成、プロセス工程および材料は、いくらか変更可能であることを理解すべきである。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの同等物によってのみ限定されるため、本発明で用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのみに用いられ、限定する意図はないことも理解すべきである。
【0019】
本発明に関して、「アンチセンス分子」および「アンチセンス配列」で用いられるような「アンチセンス」とは、標的遺伝子のmRNAの部分に相補的な一本鎖RNAまたはDNA分子を意味する。アンチセンス分子は、そのmRNAと塩基対を形成し、それによってmRNAのタンパク質への翻訳を予防する。その結果として、用語「アンチセンス療法」は、標的核酸に特異的にハイブリダイズし、例えば前記配列でコードされた遺伝子産物の発現を抑制または減少させることによってその機能または翻訳を調節するようなアンチセンス化合物を用いる方法を意味する。
【0020】
本発明に関して、「相補的な」は、2つのヌクレオチド間の正確な対形成のための能力を意味する。
【0021】
本発明に関して、「ハイブリダイゼーション」は、相補的なヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基間のワトソン−クリック、フーグスティーンまたはリバースフーグスティーン水素結合のような水素結合を意味する。従って、相補性およびハイブリダイゼーションは、オリゴヌクレオチドとDNAまたはRNA標的との間で安定で特異的な結合が起こるような十分な相補性の程度または正確な対形成を示すのに用いられる用語である。
【0022】
アンチセンス化合物は、化合物が標的DNAまたはRNA分子に結合することによって標的DNAまたはRNAの正常な機能に干渉し、効力の損失を引き起こす場合、および、特異的結合が望ましい状況においてアンチセンス化合物が非特異的な標的配列へ非特異的に結合するのを防ぐのに十分な程度の相補性がある場合に、特異的にハイブリダイズ可能である。
【0023】
その上、本発明に関して、「ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション」は、当業者周知の温度および緩衝液に関する基準を意味する(Ausubel等,1991年)。
【0024】
当業界周知であるように、「機能的に相同」とは、開示された配列とは恐らく構造的には低い相同性を有する配列であるが、健康な生物または病気の生物のいずれかにおいてインビボで相同な機能を示す、例えば、同一のタンパク質または類似の細胞性の機能を有する高度に類似したタンパク質をコードすることを意味する。
【0025】
当業界周知であるように、「機能的に挿入された」または「使用可能に挿入された」とは、宿主ゲノムへの配列の挿入が、その配列の正しい発現が起こるような方向と位置で、適用可能であればその配列の正しい発現が起こるようなプロモーターおよび/またはエンハンサーと共になされていることを示す。
【0026】
本発明に関して、「調節」は、遺伝子発現の増加(刺激)または減少(阻害)のいずれかを意味する。本発明に関して、遺伝子発現の調節の好ましい形態は阻害であり、好ましい標的はmRNAである。
【0027】
本発明は、哺乳動物のMMP−12をコードする核酸分子の機能を調節し、最終的に生産されるMMP−12の量を調節するのに使用するためのオリゴヌクレオチド化合物を提供する。より特定には、前記化合物は、MMP−12のmRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである。この調節は、MMP−12タンパク質産物をコードする核酸に特異的にハイブリダイズし、それにより、MMP−12の翻訳を阻害するアンチセンス化合物を提供することによって達成される。一実施形態において、前記標的配列は、ヒトであり、前記アンチセンス化合物は、好ましくは、配列番号1(GenBank(R) 寄託番号NM−002426)、または、機能的に同等なそれらの相同体にハイブリダイズす
る。
【0028】
他の実施形態において、前記標的配列は、配列番号2(GenBank(R) 寄託番号M82831)、または、機能的に同等なそれらの相同体のマウスの配列である。
【0029】
本発明に係る上記標的配列またはそれらの同等物の1つまたはその他に向けられたアンチセンス化合物は、好ましくは、長さが約8〜約50個の核酸塩基を含む。約8〜約30個の核酸塩基を含むアンチセンスオリゴヌクレオチド(すなわち長さが約8〜約30個の連結したヌクレオシド)が特に好ましく、約16〜約24個の核酸塩基を含むオリゴヌクレオチドが最も好ましい。
【0030】
本発明に係るアンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNA分子またはRNA分子のいずれかである。本発明は、上で定義された、そして特に配列番号3〜14(表2およびパテントイン(PatentIn)3.1を用いて作製された添付の配列リストを参照)に記
載の、MMP−12をコードする核酸分子に特異的にハイブリダイズし、それにより、MMP−12タンパク質産物の生産をブロックすることができるアンチセンスオリゴヌクレオチド分子の形態の核酸分子を利用可能にする。
【0031】
本発明のさらなる観点において、用語「オリゴヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)のオリゴマーまたはポリマー、または、それらのミメティックを意味する。この用語はまた、天然に存在する核酸塩基、糖および共有結合によるインターヌクレオシド(主鎖)結合で構成されるオリゴヌクレオチド、同様に、天然に存在しない修飾を有するオリゴヌクレオチドも包含する。当業界既知であるように、オリゴヌクレオチド構造中のリン酸基は、一般的に、オリゴヌクレオチドのインターヌクレオシド主鎖を形成するといわれている。RNAおよびDNAの天然の結合または主鎖は、3’から5’へのホスホジエステル結合である。
【0032】
本発明で有用な好ましいアンチセンス化合物の特定の例としては、修飾された主鎖、または、非天然のインターヌクレオシド結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられる。これら修飾は、天然に存在するオリゴヌクレオチドによっては得られない特定の望ましい特性(例えば毒性の特性の減少、ヌクレアーゼ分解に対する安定性の増加、および、細胞性による取り込みの増進)をオリゴヌクレオチドに導入することを可能にしている。
【0033】
さらなる実施形態によれば、前記アンチセンスオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾された核酸塩基を含み、これは、アンチセンス核酸主鎖の架橋していない酸素原子を、メタンホスフェート、リン酸メチル、および、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよびその他のアルキルホスホネート、例えば3’−アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホロアミデート、例えば3’−アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、および、チオノアルキルホスホトリエステルからなる群より選択される成分で置換することによって化学修飾が可能である。
【0034】
一実施形態によれば、前記置換は、前記オリゴヌクレオチドの3’末端および/または5’末端の最後の3個のヌクレオチドから独立して選択される1またはそれ以上のヌクレオチドで起こり得る。また、置換は、前記オリゴヌクレオチドの全長のあらゆる位置で生じてもよく、または、実際に全てのイントラヌクレオシド結合が修飾を受けることも考えられる。好ましくは、前記オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾された糖成分の核酸塩基を含み、修飾された糖成分は、2’−O−メトキシエチル糖成分が可能である。
【0035】
前記アンチセンス剤は、DNAもしくはRNA、または、DNAもしくはRNAの類似体もしくはミミックで構成されるアンチセンス剤も可能であり、この類似体もしくはミミックとしては、以下が挙げられる:メチルホスホネート、N3’→P5’−ホスホロアミデート、モルホリノ、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、アラビノシル核酸(ANA)、フルオロ−アラビノシル核酸(FANA)メトキシ−エチル核酸(MOE)、ただし、これらに限定されない。好ましくは、前記アンチセンス剤は、上記DNAもしくはRNA、または、DNAもしくはRNAの類似体もしくはミミックの組み合わせを含むホモポリマーまたはヘテロポリマーである。
【0036】
さらなる実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、治療に、および、予防として利用可能である。治療に関しては、MMP−12の発現を調節することによって治療可能な不適切なMMP−12発現に関連する病気または障害に罹っている恐れのある動物、好ましくはヒトは、治療的または予防的有効量の本発明に係るアンチセンス化合物を投与することによって治療される。本発明の化合物は、有効量のアンチセンス化合物を適切な製薬上許容できる希釈剤またはキャリアーに加えることによって医薬組成物において利用可能である。本発明のアンチセンス化合物および方法の使用は、予防的に有用であり得る(すなわち、MMP−12の関与が疑われる病気または状態の発病を遅延させる)。
【0037】
さらに他の実施形態において、本発明のアンチセンス化合物は、ヒト被験体の調査および診断法に有用であり、なぜなら、これら化合物は、MMP−12をコードする核酸にハイブリダイズし、この事実を活用できるようにサンドイッチおよびその他の分析を容易に設計可能にするためである。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドと、MMP−12をコードする核酸とのハイブリダイゼーション、および、その結果生じるMMP−12発現の抑制/阻害は、当業界周知の手段によって検出することができる。例えば、アンチセンス化合物の放射標識、RNアーゼ保護分析は、アンチセンス化合物の、MMP−12の標的mRNAへの特異的なハイブリダイゼーションを実証し得る。MMP−12レベルの減少を検出する様々な当業界周知の手段が使用可能であり、例えば、MMP−12の抗体検出、または、酵素に基づく活性分析がある。他の実施形態において、アンチセンス化合物は、細胞または組織におけるMMP−12の発現を阻害する方法において用いられ、この場合、インビボまたはインビトロで、前記細胞または組織を治療上有効な用量の本発明の化合物または組成物に接触させ、それによりMMP−12の発現を阻害する。好ましくは、前記阻害は、ヒト被験体におけるMMP−12依存性プロセスを抑制する。MMP−12依存性プロセスは、最も好ましくは、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎、乾癬、肺気腫および喘息の1つである。
【0038】
本発明の他の実施形態は、ヒト被験体において炎症性腸疾患を診断する方法に関し、この方法は、MMP−12の発現の存在または非存在についてスクリーニングすることを含み、MMP−12の発現が、炎症性腸疾患の指標である。
【0039】
本願の化合物は選択的であるため、本願の化合物は、既知の様々な阻害に関する合併症を低減させた長期にわたる療法に有用であると予測される。従って、本願の化合物は、MMP−12が介在する様々な病気および状態の治療に有用である一方で、これら選択的阻害剤は、顕著な炎症性の構成要素を有する障害の治療に特に有用である。
【0040】
標的化したアンチセンス送達の代わりとして、標的化したリボザイムを用いてもよい。用語「リボザイム」は、RNAを基礎とした酵素を意味し、DNAおよびRNA両方の特定の塩基配列を標的とし、切断することができる。リボザイムは、リボザイム配列を取り込んだRNAオリゴヌクレオチドの形態で細胞を直接標的とするか、または、望ましいリボザイムRNAをコードする発現ベクターとして細胞に導入されるかのいずれかが可能である。リボザイムは、アンチセンスポリヌクレオチドで説明されたのとほぼ同様に、使用
および適用が可能である。リボザイム配列はまた、アンチセンスポリヌクレオチドで説明されたのとほぼ同様に修飾されていてもよい。例えば、リボザイム配列は、非ワトソン−クリック塩基を取り込んでもよいし、または、混合型のRNA/DNAオリゴヌクレオチドを形成したり、または、ホスホジエステル主鎖を修飾することもできる。
【0041】
アンチセンスのその他の代替法は、いわゆる「RNA干渉」(RNAi)の使用である。二本鎖RNA(dsRNA)は、多数のインビボ環境で遺伝子のサイレンス化を引き起こすことができ、このインビボ環境としては、ショウジョウバエ、カエノラブディティス−エレガンス(Caenorhabditis elegans)、プラナリア、ヒドラ、トリパノソーマ、菌類、植物および哺乳動物が挙げられる。RNAiの天然の機能や、共に抑制することにより、活性になったときに宿主細胞中で異常なRNAまたはdsRNAを生産するレトロトランスポゾンおよびウイルスのような可動性の遺伝学的要素による浸潤からゲノムを保護するようである(Jensen等,1999年;Ketting等,1999年;Ratcliff等,1999年;Tabara等,1999年)。特異的なmRNA分解は、トランスポゾンおよびウイルス複製を防ぐが、数種のウイルスは、PTGSを抑制するタンパク質を発現することによってこのプロセスを克服または防ぐことが可能である(Lucy等,2000)。二本鎖RNA分子は、以下の工程を含む方法で製造することができる:(a)それぞれ長さが19〜25、例えば19〜23個のヌクレオチドを有する2つのRNA鎖を合成すること(前記RNA鎖は、二本鎖RNA分子を形成することができ、好ましくは、少なくとも1つの鎖は、1〜5個のヌクレオチドからなる3’−オーバーハングを有する)、(b)標的特異的な核酸の修飾、特にRNA干渉および/またはDNAメチル化を媒介することができる二本鎖RNA分子が形成される条件下で、合成されたRNA鎖を結合させること。一実施形態において、アンチセンスRNAiは、配列番号3〜14の配列の1つに含まれる少なくとも8個のヌクレオチド部分を含み、全長25個以下のヌクレオチドを有する。
【0042】
dsRNAは通常、医薬組成物として投与される。このような投与は、インビトロまたはインビボで核酸が望ましい標的細胞に導入される既知の方法で行うことができる。一般的に用いられる遺伝子トランスファー技術としては、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、および、ウイルス方法が挙げられる。このような方法は、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel等,(1993年)に教示されている。
【0043】
本発明はまた、医薬組成物を利用可能にし、前記組成物は、上述の化合物またはアンチセンス剤、および、製薬上許容できる製剤および組成物、キャリアーまたは希釈剤を含む。好ましくは、前記医薬組成物は、コロイド分散系をさらに含む。本発明の医薬組成物は、多数の方法で投与することができ、これは、治療しようとする状態にとって局所、表面または全身の投与様式のいずれが最適であるかに大きく依存する。これら様々な投与様式は、例えば表面(例えば皮膚上)、局所的(例えば、眼、および、様々な粘膜、例えば膣、鼻、および、直腸送達)、経口または非経口による、および、肺への投与様式である。
【0044】
このような組成物および製剤の製造は、一般的に、製薬および製剤分野の当業者に既知であり、本発明の組成物の製剤に適用可能である。
【0045】
本発明の範囲内で、製薬上許容できる塩の好ましい例としては、以下が挙げられる:(a)カチオンで形成された塩、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、ポリアミン、例えばスペルミンおよびスペルミジンなどの塩;(b)無機酸で形成された酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸などの塩;(c)有機酸で形成された塩、例えば、酢酸、アルギン酸、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、パルミチン酸、ポリグルタミン酸、p−トルエンスルホン酸、ポリガラクツロン酸、コハク酸、酒石酸、タンニン酸などの塩;および、(d)塩素、臭素、および、ヨウ素のような元素のアニオンから形成された塩、ただし、これらに限定されない。
【0046】
さらに他の実施形態において、表面への投与のための医薬組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、坐剤、スプレー剤、液剤および粉剤が挙げられる。従来の製薬用キャリアー、水性、粉末または油性基材、増粘剤なども、必要であるか、または、望ましい場合がある。
【0047】
経口投与のための組成物および製剤としては、粉剤または顆粒剤、水または非水性媒体への懸濁剤または液剤、カプセル剤、サッシェ、または、錠剤が挙げられる。増粘剤、矯味矯臭薬剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または、結合剤も望ましい場合がある。
【0048】
非経口、髄腔内または心室内投与のための組成物および製剤としては、滅菌水溶液が挙げられ、これは、緩衝液、希釈剤およびその他の適切な添加剤、例えば、透過増強剤、キャリアー化合物、およびその他の製薬上許容できるキャリアーまたは賦形剤を含み得るが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の医薬組成物としては、これらに限定されないが、溶液、エマルジョン、および、リポソーム含有製剤が挙げられる。これら組成物は、様々な成分から製造することができ、このような成分としては、予め調製された液体、自己乳化固体および自己乳化半固体が挙げられるが、これらに限定されない。一般的に、このようなキャリアーは、用いられる投与量および濃度で受容者に対して非毒性であるべきである。通常、このような組成物の製造は、治療剤と、以下に記載の1またはそれ以上とを合わせることを含む:緩衝液、抗酸化剤、低分子量のポリペプチド、タンパク質、アミノ酸、炭水化物、例えばグルコース、スクロースまたはデキストリン、キレート剤、例えばEDTA、グルタチオンおよびその他の安定剤および賦形剤。適切な希釈剤の例としては、中性の緩衝塩類溶液、または、非特異的な血清アルブミンと混合した塩類溶液が挙げられる。
【0050】
本発明の医薬製剤は、都合よく単位投与量形態中に存在させることが可能であり、製薬業界において周知の従来の技術に従って製造することができる。
【0051】
さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、エマルジョンとして製造および製剤化することができ、典型的には、エマルジョンは、1種の液体が液滴状で別の液体中に分散されている異種の系である(Idson,1988年)。エマルジョン製剤で用いられる天然に存在する乳化剤の例としては、アラビアゴム、蜜蝋、ラノリン、レシチンおよびホスファチドが挙げられる。皮膚、経口および非経口経路のエマルジョン製剤の適用およびそれらの製造方法は、文献に総論されている(Idson,1988年)。
【0052】
本発明の一実施形態において、オリゴヌクレオチドと核酸との組成物は、マイクロエマルジョンとして製剤化することができる。マイクロエマルジョンは、水、油および両親媒性物質の系と定義され、単一の、光学的に等方性な、熱力学的に安定な液体溶液である(Rosoff,1988年)。
【0053】
本発明の他の実施形態は、活性成分を作用部位へトランスファーおよび送達するためのリポソームの使用である。リポソーム膜は生体膜と構造的に類似しているため、リポソームが組織に適用されると、リポソームは細胞膜に融合し始める。この現象は、可能性のある薬物送達の様式としてのリポソームの使用における広範な調査を促進してきた。
【0054】
他の実施形態において、透過増強剤の使用は、薬物送達の様式として有用であり得る。このような物質は、5種の広いカテゴリー(すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤、および、非キレート非界面活性剤)の1つに属するものと分類される(Lee等,1991年)。
【0055】
その他の関連する実施形態において、本発明の組成物は、第一の核酸を標的とする1またはそれ以上のアンチセンス化合物、特に、オリゴヌクレオチド、および、第二の核酸標的を標的とする1またはそれ以上の追加のアンチセンス化合物を含んでもよい。2またはそれ以上の組み合わせ化合物は、一緒に、または、逐次的に用いることができる。
【0056】
治療組成物の製剤、および、その後のそれらの投与は、当業界の技術範囲内と考えられる。最適な投与スケジュールは、患者体内の薬物の蓄積を測定することによって計算できる。当業者であれば、最適な投与量、投与方法および反復率を容易に決定できる。良好な治療の後、病状の再発を防ぐために患者に維持療法を受けさせることが望ましい場合があり、この場合、前記オリゴヌクレオチドは、維持量で投与される。
【0057】
本発明はまた、本発明に係るアンチセンス化合物を含む組換えヌクレオチド配列に関する。本組換えヌクレオチド配列は、発現ベクターに挿入することができ、発現ベクターとしては、例えばプラスミドもしくはウイルス、または、当業者既知のその他のあらゆるベクターがある。従って、本発明は、アンチセンス化合物のインビボまたはインビトロでの発現が達成できるように、1またはそれ以上の発現調節因子に使用可能に結合したアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を含む。前記アンチセンスオリゴヌクレオチドを含ませることができるベクターは、真核性または原核性由来のものが可能である。
【0058】
本発明の一実施形態は、細胞または組織におけるMMP−12の発現を阻害する方法であり、本方法において、前記細胞または組織は、インビボまたはインビトロで、組換えベクターにより発現された組換えヌクレオチド配列と接触させる。本発明はまた、1またはそれ以上の発現調節因子に使用可能に結合したこれらアンチセンスオリゴヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞も含む。
【0059】
本発明は特に、治療的または予防的有効量の1またはそれ以上の、MMP−12発現を調節するように設計された本発明のアンチセンス化合物または組成物を投与することによって、不適切なMMP−12調節に関連するヒトの病気を有するが、または、その傾向があることが疑われる動物、特にヒトを治療するための化合物および方法を提供する。
【0060】
本発明はまた、トランスジェニック細胞それ自体、同様に、トランスジェニック非ヒト動物を提供する。トランスジェニック動物としては、生存可能なトランスジェニック細胞またはトランスジェニック器官を含む動物、同様に、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド配列(配列番号3〜14)のいずれか1つ、または、それらの機能的な部分を、適切な発現カセットの制御下にゲノムに機能的に取り込んだ動物全体が挙げられる。このような動物は、MMP−12関連障害の病因学、MMP−12関連障害の進行、診断および治療に関する調査のための研究手段として有用である。当業界周知であるように、これら適切なプロモーターおよびエンハンサーを含む発現カセットは、望ましいアンチセンスDNA配列の発現が達成され、それによりMMP−12生産のインビボまたはインビトロでの阻害が起こるように、ベクターの形態で対象となる細胞に導入される。従って、一実施形態において、本発明の配列は、アンチセンス化合物が発現されている細胞中で意図した標的の抑制が達成されるように、過剰発現されてもよい。
【0061】
従って、本発明の一実施形態は、このようなトランスジェニック細胞、器官または動物であり、また、MMP−12関連疾患の性質および/または病因学を調査するためのモデ
ルとして、このような病気に対する製薬の有効性を評価するためのモデルとして、同様に、このような病気の原因となることが既知の物質および疑わしい物質の効果を調査するためのモデルとしての、それらの使用である。
【0062】
炎症性障害におけるMMP−12の関与が確認されたら、本発明はさらに、MMP−12分子の活性化を改変することによってMMP−12の活性を調節する物質を同定するためのスクリーニング分析を提供する。
【0063】
本発明のスクリーニング方法において有用な物質として、新規に合成された化合物、市販の化合物、または、化学ファイルに登録されてはいるが様々な活性は知られていない既知の化合物、コンビナトリアルケミストリー技術で得られた一連の化合物を用いることができる。また、微生物の培養上清、植物または海洋生物から得られた天然の成分、動物の組織抽出物などを用いることができる。
【0064】
本方法は、MMP−12活性を改変させることが可能であると予測される物質と、MMP−12とが相互作用できるような条件下で、MMP−12の活性レベルにおける変化が容易にみられるようにMMP−12を接触させることを含む。好ましい活性レベルの変化様式は、MMP−12活性または拮抗作用を有する物質の阻害である。
【0065】
本発明において、MMP−12の特異的活性を改変する物質を同定するための分析は、例えば、インビトロでの分析、または、細胞に基づく分析が可能であり、MMP−12活性の変化をモニターする好ましい方法としては、例えば、数種の既知のMMP−12の基質(例えばトロポエラスチン、オステオネクチン、ビトロネクチン、およびフィブロネクチン)に対するMMP−12タンパク質分解活性を、ザイモグラフィー分析の形態で測定することが挙げられる。このような方法は、例えばAusubel等,1991年で教示されている。
【0066】
他の実施形態において、MMP−12の拮抗作用を有する化合物のスクリーニングは、固相コンビナトリアルライブラリー法を用いて行うことができる。
【0067】
このようなライブラリーは、例えば、各ビーズに1種の一般的消光性蛍光原基質と、様々な推定の阻害剤の1種とが含まれるように1ビーズ−2化合物のライブラリーとして構築することができる。MMP−12とインキュベートした後、活性阻害剤を含むビーズは簡単に回収することができ、阻害剤化合物構造は例えばMALDI−TOFマススペクトロメーターを用いて分析することができる(Franz等,2003年)。
【0068】
本発明を特定の好ましい実施形態に従い特定して説明したが、以下の実施例は、単に本発明を説明するために提供されたものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施例は使用可能なものの典型であり、これらの代わりに、不適当な実験を行うことなく当業者既知のその他の方法を用いてもよい。
【実施例】
【0069】
実施例1.ヒトの炎症状態において過剰発現されたMMP-12の同定
適切な生検材料の回収
CDまたはUCの炎症性状態を有するという臨床的および病理学的な証拠に基づき選択された患者から、生検を採取した。1人の患者それぞれにおいて、結腸の炎症を起こした部位からトータルで3種の生検を回収し、同時に、炎症を起こしていない領域からの3種の生検サンプルを回収した。これをトータルで16人の異なる患者(うち8人はCDと診断されており(患者1〜8)、残りの8人はUCと診断された(患者9〜16))で行った。UC患者群は、2人は女性であり、6人は男性であり、年齢範囲は29〜77歳であ
る。相応して、CD年齢群は、3人は女性であり、5人は男性であり、年齢範囲は27〜59である。
【0070】
1人の患者の各解剖学的部位の生検をプールし、トータルRNAの単離は、キアゲン(Quiagen)のRneasyキットと、ペレット・ペステル(Pellet Pestel)モーターホモジナイザーを製造元のプロトコールに従って用いてなされた。患者あたり2個のサンプル、すなわち炎症を起こした(標的)サンプル、および、炎症を起こしていない(コントロール)サンプルで、32個のトータルRNAサンプルを単離した。
【0071】
RNAのcDNA合成の実行
第一鎖cDNA合成のために、2μgの各RNAサンプルを用い、10pMのオリゴ−dT−プライマーdT−ジョイント(5’−TAG TCT ATG ATC GTC GAC GGC TGA TGA AGC GGC CGC TGG AGT TTT TTT TTT TTT TTT TTV−3’(配列番号15)を用いて、合成された各cDNA分子に3つの制限酵素切断部位(SalI、NotIおよびBpmI)を導入した。緩衝液、デオキシヌクレオチド三リン酸(dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)、および、酵素の逆転写酵素(スーパースクリプト(Superscript)II)をギブコ・BRL(Gibco BRL)から購入し、製造元のガイドラインに従って反応を行った。第一鎖の合成のための反応混合物(酵素を除く)を、PCR器(PCRスプリント(PCR sprint),ハイバイド(Hybaid)製)で、65℃で5分間プレインキュベートし、氷上で冷却し、次に、42℃に予備加熱し、その後、酵素のスーパースクリプトIIを加え、この混合物を、PCR器(PCRスプリント,ハイバイド製)で、42℃で1時間インキュベートした。
【0072】
第二鎖の合成のために、第二鎖の緩衝液ミックス(41μl)を、提供されたプロトコール(ギブコ・BRL)に従って反応に加え、4μlのE.coliポリメラーゼI(ニューイングランドバイオラボ(New England Biolabs))、1.5μlのE.coli DNAリガーゼ(ニューイングランドバイオラボ)、および、0.7μlのRNアーゼH(ギブコ・BRL)を加えて総容量を160μlとした。この反応液を、PCR器(PCRスプリント)で、16℃で2.5時間インキュベートし、次に、キアゲンPCR精製キットを用いて、提供されたプロトコールに従って精製した。これらサンプルを溶出緩衝液(32μl)で溶出させて、各サンプル(26μl)を以下の工程に用いた。
【0073】
cDNAの3’末端の増幅
生検から得られた材料が限られた量であるため、予備増幅工程が必要であった。インビトロでのcDNAの3’末端の増幅のために、全てのサンプルからのcDNA(26μl)を、制限酵素DpnII(10U)で、37℃で3時間、容量30μlで消化した。切断されたcDNAを、キアゲンのPCR精製キットを用いて再度精製し、溶出緩衝液(47μl)でcDNAを溶出させた。以下の環状ライゲーション工程を、44μlのDpnIIで切断したcDNA、および、2000UのT4DNAリガーゼ(ニューイングランドバイオラボ)を含む容量50μlで行った。これら反応混合物を、22℃で1時間インキュベートし、65℃で10分間熱で不活性化し、各反応混合物(25μl)を増幅工程に用いた。サンプルあたり5回のPCR反応のための混合物を調製し(5×50μl=250μlトータル)、この混合物は、25μlのcDNA(DpnIIで切断し、環状にライゲートした)、25μlの10×アドバンテージ(Advantage)2PCR緩衝液(クロンテック(Clontech))、5μlのジョイント−Notプライマー(10pmol/μl;5’−TGA TGA AGC GGC CGC TGG−3’(配列番号16))、5μlのジョイント−Salプライマー(10pmol/μl;5’−TTC ATC AGC CGT CGA CGA TC−3’(配列番号17)、5μlの10mM dNTPミックス、および、5μlの50×アドバンテージ2Taq−ポリメラーゼ(クロンテック)を含む。各サンプルに対して、PCR混合物を5個のPCR反応チューブに分配し、以下の条件下でPCRを行った:94℃で1分間、次に、16×(94℃で20秒間、55℃で20秒間、72℃で1分間)。
【0074】
サンプルあたり4個の反応液を取り出し、氷上に置き、サンプルあたり反応液の1つを用いて最適なサイクル数を決定した。全ての32サンプルにとって最適なサイクル数を18サイクルと決定し、従って、サンプルあたり残りの4個の反応液には、追加の2回のサイクル[2×(94℃で20秒間、55℃で20秒間、72℃で1分間)]を行った。サンプルあたり4個のPCR反応液をプールし(総容量200μlまで)、続いて、キアゲンPCR精製キットを用いてDNAを溶出緩衝液(34μl)で溶出させて精製した。精製した反応液を差異的に発現された遺伝子の同定プロトコールの出発原料とした。
【0075】
ヒト生検からの差異的に発現されたcDNA(サブトラクションプロトコール)の単離
差異的に発現されたcDNAの単離を、von Stein OD,2001年で概説されたプロトコール(プロトコールにはいくつかの変更を含む)に従って行った。
【0076】
差異的に発現された遺伝子のスクリーニング
cDNAライブラリー構築のために、各サブトラクションからの2000個のクローンを、1つの22cm2寒天プレートにプレーティングした。これらプレートから、バイオ
ロボティクス(BioRobotics)(ケンブリッジ,イギリス)のバイオピック器(BioPick machine)を用いて、384個のコロニーを取り出し、LB培地(70μl/ウェル)を入れた384ウェルプレート(アンピシリン100mg/mlを含む)に置いた(Maniatis等,1989年を参照)。細菌クローンを一晩37℃でインキュベートし、次に、コロニーPCRに用いた。このPCRを、384PCRウェルプレートで、サンプルあたり容量20μlで行った。1つのPCR反応液は、以下を含む:2μlの10×PCR緩衝液、0.4μlのSport−Notプライマー(10pmolの5’−CGT AAG CTT GGA TCC TCT AGA GC−3’(配列番号18))、0.4μlのSport−Salプライマー(10pmolの5’−TGC AGG TAC CGG TCC GGA ATT CC−3’(配列番号19))、1.6μlのdNTPミックス(各ヌクレオチドは25mM)、0.4μlの0.1%ブロモフェノールブルー、および、0.5μlのDynAzyme Taq−ポリメラーゼ(2U/μl;フィンザイム(Finnzyme))。全ての反応のためのマスターミックスを製造し、分配し、次に、384プラスチックレプリカを用いて接種させた。PCRサイクルパラメーターは、以下の通り:94℃で2分間、37×(94℃で30秒間;50℃で30秒間、72℃で1分間)、および、72℃で5分間。
【0077】
増幅後、PCR反応をハイボンド(Hybond)N+メンブレン(アマシャム(Am
ersham))上で、バイオロボティクスのマイクログリッド(Microgrid)TASを用いて止めた。全てのクローンを二連でスポットし、ガイドドットとしてゲノムDNAを用いた。1つのフィルター上に、4つ全てのサブトラクションからの383の遺伝子を配置させた。様々な放射活性cDNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによる分析のために、24個の二重複製を作製した。次に、これらフィルターを、8人全ての患者の放射活性標識したサブトラクションしたcDNAとハイブリダイズさせた。16回の異なるハイブリダイゼーション実験に16のフィルターを用いた。クレノーポリメラーゼを用いた標識のために、cDNA(1μl)を用いた。ハイブリダイゼーションプロトコールは、ChurchおよびGilbert,1984年で概説されたチャーチプロトコールを用いた。
【0078】
ホスホイメージャー(Phospho−imager)フジフィルムBAS1800H
with BAS1800IIIRプログラム、アレイビジョン(Array vision)バージョン6.0(イメージング・リサーチ社(Imaging Resear
ch Inc))、配列解析、および、BLAST分析を用いて、差異的な発現の程度、および、単離した差異的に発現された遺伝子の同一性を決定した。
【0079】
真の差異的な発現の確認
発現プロファイリング実験結果を確認するために、遺伝子特異的プライマーと、αアクチン(コントロール)のためのプライマーを用いてRT−PCR分析を行った。8人のUC患者それぞれ、および、8人のCD患者それぞれから得られた元のcDNAを用いた。次に、cDNAを蒸留水で1:250に希釈し、5μlのアリコートを1つの1回のPCR反応に用いた。1×PCR緩衝液(Taq−ポリメラーゼを含む)(フィンザイム)、0.5μlの25mM dNTP−ミックス、10pMのMMP−12またはαアクチン
のフォワードおよびリバースプライマー、および、1ユニットのDynZyme(フィンザイムのTaq−ポリメラーゼ)を含む総容量50μlで反応を行った。PCR反応を、サーモハイバイド(Thermohybaid)サーモサイクラーで、以下の条件下で行った:94℃で1分間、および、Nサイクル(94℃で30秒間、55℃で30秒間、72℃で1分間)、および、72℃で5分間。MMP−12に関しては、30サイクルを行い(N=30)、αアクチンに関しては、28サイクル(N=28)を行った。完了後、5μlの各反応液を1×TAEアガロースゲルにローディングし、その後、エチジウムブロマイドで染色した。
【0080】
MMP−12フォワード:5’−GAC TTC CTA CTC CAA CGT ATC ACC−3’(配列番号20)
MMP−12リバース:5’−CTC AGT CCA AGG ATG TTA GGA AGC−3’(配列番号21)
αアクチンフォワード:5’−GTG CAG GGT ATT AAC GTG TCA GGG−3’(配列番号22)
αアクチンリバース:5’−CCA ACT CAA AGC AAG TAA CAG CCC ACG G−3’(配列番号23)。
【0081】
これらの分析から、ヒトUCおよびCDの両方の状態において、大部分のケースでMMP−12のアップレギュレーションが起こると結論付けることができる(図1を参照)。
【0082】
実施例2.MMP−12のアンチセンスオリゴヌクレオチド阻害の分析
MMP−12発現のアンチセンス調節は、当業界周知の様々な方法で分析することができる。例えば、MMP−12のmRNAレベルは、例えばノーザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または、リアルタイムPCR(RT−PCR)で定量することができる。RNA分析は、トータル細胞性RNA、または、ポリ(A)+mRNAで行うことができる。RNAの単離方法は、例えば、Ausubel等,1992年で説明されている。ノーザンブロット分析は当業界で慣例的であり、例えば、Ausubel等,1992年で説明されている。リアルタイム定量PCRは、ABI PRISM.
TM.7700配列検出システム(PE−アプライド・バイオシステム(Applied
Biosystems)(フォスターシティー,カリフォルニア州,米国)より利用可能)を用いて都合よく達成することができ、製造元の説明書に従って用いられる。その他のPCR方法も当業界既知である。
【0083】
同様に、MMP−12タンパク質レベルは、免疫沈降、ウエスタンブロット分析(イムノブロット)、または、ELISAのような当業界周知の様々な方法で定量することができる。MMP−12に対する抗体は、市場で購入可能であり、または、抗体は、従来の抗体製造方法で製造することもできる。ポリクローナル抗血清の製造方法は、例えば、Au
subel等,1997年で教示されている。モノクローナル抗体の製造は、例えば、Ausubel等,1997年で教示されている。
【0084】
当業界周知の免疫沈降方法は、例えばAusubel等,1998年で見出すことができる。ウエスタンブロット(イムノブロット)分析は、当業界で標準的であり、例えばAusubel等,1997年で説明されている。酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)は、当業界で標準的であり、例えばAusubel等,1991年で説明されている。
【0085】
MMP−12に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた大腸炎マウスモデルにおける炎症の抑制
マウスの大腸において炎症が誘導された動物モデルは、Okayasu等,1990年で説明されている。本発明の実験に用いられたモデルにおいて、炎症を誘導するのに経口デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)が利用される(Axelsson等,1998年)。DSSは、飲用水でマウスに投与することができ、それにより、ヒトでの炎症性腸疾患(IBD)に類似した大腸炎を誘導する。MW約40〜50kDであって、約19%までの高含量の硫黄を含むものが、炎症を誘導するDSS形態として最適であることが示されている。Okayasu,1990年において、DSSが濃度約2〜5%で動物に投与されている。
【0086】
本研究において、濃度2.5%で水に溶解させた、最終pH8.5(NaOHで調節)のDSSが用いられた。DSSを8日間連続して雌SPF NMRIマウスに経口投与し、全ての個体で安定した大腸炎を誘導した。このタイプの実験で誘導された大腸炎は、飲用水に添加した後4〜5日でも十分に誘導されることが示されている(Cooper等,1993年)。
【0087】
配列番号3で得られるアンチセンス物質を投薬されていない、または、麻酔した大腸炎の動物に直腸投与した。短くしたXROフィーディングチューブ(Vygon,Ecouen,フランス)を直腸にトライツ靭帯のレベルまで挿入し、物質を容量100μlで投与し、直腸への物質の漏れを防ぐためにチューブをゆっくり慎重に引き抜いた。1回用量の水(100μl)中のアンチセンス(100μg)を投与した。8日目に1回治療的処理を施し、その後10日間、DSS処理を継続した。18日目に、動物を殺して、臨床的な炎症性パラメーターの分析および病理組織学的検査を行った。
【0088】
臨床的徴候
各マウスを研究期間中1日1回観察した。全ての健康の悪化の徴候およびあらゆる挙動の変化を記録した。重度の病気の徴候を示し、もとの体重の15%超を喪失した動物を殺した。
【0089】
死亡率および剖検
実験期間中の死亡率を記録した。実験期間の最後に、動物を頚椎脱臼で殺した。腹部を開き、脾臓を切除し、重さを量った。回盲の隣接する直腸への接合部から、恥骨軟骨部の下の通路近くまで大腸を切り出した。盲腸を頂部で開き、便を慎重に取り出した。結腸を縦に開き、便をスパーテルで慎重に取り出した。臨床的パラメーター、例えば死亡率、結腸の長さ、脾臓の重量、および便の湿潤/乾燥重量(60℃で48時間乾燥させた後)として計算した下痢、を記録することによって大腸炎の評価を行った(図2)。顕微鏡実験のために、盲腸と結腸全体を4%の中性に緩衝したホルムアルデヒドにおいて固定した。
【0090】
図2より、測定された全てのパラメーターで特異的で顕著な改善がみられることが明白である。すなわち、処理された動物は、下痢が減り、より正常な結腸の長さを有し、より正常な脾臓の重量を有し、統計学的に有意な組織学的な改善の徴候を示した。
【0091】
加工および顕微鏡実験
固定した後、顕微鏡実験用にサンプル化した組織を整え、組織学的に加工するために盲腸と結腸の中央部分から標本を採取した。第一のサンプルの解釈が困難な場合、追加の標本を採取した。標本をパラフィンに埋め込み、基準の厚さ5μmで切断し、ヘマトキシリンとエオシンで染色し、光学顕微鏡で試験した。
【0092】
マウスのDSSで誘導された大腸炎の病理組織学的評価の広範囲の経験を有する経験を積んだ獣医学の病理学者により、大腸炎の検証と炎症の評価を行った。診断上の組織病理学は、表1に示す規格化された格付けシステムに基づく。
【0093】
【表1】

【0094】
結腸の切片の組織学的分析
上で概説したように、組織学的な加工のために、盲腸と結腸の中央部分から採取した切片を用いた。ヘマトキシリンとエオシンを用いて染色した。次に、切片を光学顕微鏡で試験し、形態学的な変化を記録した。図3から、生理学的パラメーターと組織学の両方において観察されるように、配列番号3から得られたアンチセンス化合物の1回の直腸投与は、劇的に炎症を減少させるのに十分であると結論付けることができる(図2および3)。
【0095】
実施例3.アンチセンス配列に接近可能な結合部位に関するヒトMMP−12mRNAのインビトロでのスクリーニング
標的核酸発現に対するアンチセンス化合物の効果は、標的核酸が測定可能なレベルで存在する場合、様々な細胞型で容易にモニターすることができる。当業者にとって、発現された標的のレベルにおける変化を決定するのに使用可能な多数のよく確立された方法がある(以下を参照)。
【0096】
アンチセンス化合物を用いた治療
ヒトMMP−12mRNAへ選択的な結合を示し、その結果としてMMP−12タンパク質の量の減少が起こるようなアンチセンス化合物を同定するために、本発明者等は、独自に開発したインビトロでのスクリーニングシステムをセットアップした。驚くべきことに、配列番号1のコード領域(GenBank(R) 寄託番号NM−002426)内で、本発明者等は、極めて高い阻害を示す多数のアンチセンス配列を同定した。
【0097】
ここで次に、アンチセンスを配列解析し、当業界周知の方法(例えばPCRまたはノーザンブロット分析)を使用して標的mRNAレベルをモニターすることによって、ヒトMMP−12mRNAの量を減少させるそれらの能力をモニターし、それに対して、ウエスタンブロットは、標的mRNAによりコードされたタンパク質のレベルを示す。アンチセ
ンス配列の効力を、標的配列の阻害の程度の尺度として任意にスコア化した。表2に、それらの効力の程度を減少させる群のアンチセンス配列を列挙する。
【0098】
【表2】

【0099】
アンチセンス配列の配列番号3〜6は、MMP−12mRNAレベルが、コントロールに比べて約75〜85%阻害されたことを示した。アンチセンス配列の配列番号7〜10は、MMP−12mRNAレベルが、コントロールに比べて約65〜75%阻害されたことを示した。アンチセンス配列の配列番号11〜14は、MMP−12mRNAレベルが、コントロールに比べて約50〜65%阻害されたことを示した。
【0100】
本発明は、本発明者等が現在知っている最良の様式を構成する好ましい実施形態に関して説明されたが、ここに添付された特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、当該分野の一般的な技術を有するものには明白と思われる様々な変化および改変がなされ得ると理解されるべきである。
【0101】
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【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】潰瘍性大腸炎(A)またはクローン病(B)のいずれかに罹った患者からの生検サンプルのMMP−12発現のRT−PCR分析を示す。
【図2】アンチセンス化合物投与後の消化管における炎症の程度の改善を評価するのに用いられた4種の異なる基準を示すヒストグラムを示す。
【図3】実施例2で得られたマウスの結腸組織の組織切片を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特異的にハイブリダイズし、メタロプロテイナーゼ12(MMP−12)タンパク質の翻訳を阻害することを特徴とする、MMP−12をコードする核酸分子を標的とする長さが8〜50個の核酸塩基からなる化合物。
【請求項2】
標的配列は、配列番号1、または、機能的に同等なそれらの相同体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
標的配列は、配列番号2、または、機能的に同等なそれらの相同体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
化合物は、mRNAに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
オリゴヌクレオチドは、DNA分子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
オリゴヌクレオチドは、RNA分子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号3〜14からなる群より選択される配列を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
オリゴヌクレオチドは、配列番号3〜14からなる群より選択される配列の少なくとも8個のヌクレオチド部分を含み、全長25個以下のヌクレオチドを有するRNAiである、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
MMP−12をコードする核酸分子を標的とする長さが8〜50個の核酸塩基からなる化合物であって、哺乳動物において特異的にハイブリダイズし、MMP−12の翻訳を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、アンチセンス核酸主鎖の架橋していない酸素原子を、メタンホスフェート、リン酸メチル、および、ホスホロチオエートからなる群より選択される成分で置換することによって化学修飾されていることを特徴とする、上記化合物。
【請求項10】
置換は、3’末端もしくは5’末端またはその両方から選択される1またはそれ以上のヌクレオチドで生じる、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
置換は、オリゴヌクレオチドの全長のあらゆる位置の1またはそれ以上のヌクレオチドで生じる、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
DNAもしくはRNA、または、DNAもしくはRNAの類似体もしくはミミックで構成されるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり、上記類似体もしくはミミックとしては、ただしこれらに限定されないが、メチルホスホネート、N3’→P5’−ホスホロアミデート、モルホリノ、ペプチド核酸(PNA)、ロックト核酸(LNA)、アラビノシル核酸(ANA)、フルオロ−アラビノシル核酸(FANA)メトキシ−エチル核酸(MOE)が挙げられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
DNAもしくはRNA、または、DNAもしくはRNAの類似体もしくはミミックの組み合わせを含むホモポリマーまたはヘテロポリマーであるアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾された糖成分の核酸塩基を含む、請求項2〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
修飾された糖成分は、2’−O−メトキシエチル糖成分である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物、および、製薬上許容できるキャリアーまたは希釈剤を含む組成物。
【請求項17】
組成物は、コロイド分散系をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
細胞または組織と、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物とを接触させ、それによりMMP−12の翻訳を阻害する、細胞または組織におけるMMP−12の翻訳を阻害する方法。
【請求項19】
細胞または組織と、請求項16〜17のいずれか一項に記載の組成物とを接触させ、それによりMMP−12の翻訳を阻害する、細胞または組織におけるMMP−12の翻訳を阻害する方法。
【請求項20】
MMP−12発現の阻害は、ヒト被験体におけるMMP−12依存性プロセスを抑制する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
MMP-12依存性プロセスは、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患
、リウマチ様関節炎、乾癬、肺気腫および喘息の1つである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ヒト患者の1またはそれ以上の細胞においてMMP−12発現が抑制されることを特徴とする、該患者におけるMMP−12依存性障害を予防、緩和または治療する方法。
【請求項23】
ヒト患者の1またはそれ以上の細胞においてMMP−12レベルが抑制されることを特徴とする、該患者におけるMMP−12依存性障害を予防、緩和または治療する方法。
【請求項24】
MMP−12依存性障害は、潰瘍性大腸炎およびクローン病のような炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎、乾癬、肺気腫および喘息の1つである、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物を含む組換えヌクレオチド配列。
【請求項26】
請求項25に記載の組換えヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクター。
【請求項27】
ベクターは、真核性または原核性由来である、請求項26に記載の組換え発現ベクター。
【請求項28】
インビボまたはインビトロで、細胞または組織と、請求項27に記載の組換えベクターで発現された組換えヌクレオチド配列とを接触させる、細胞または組織におけるMMP−12の発現を阻害する方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法で製造された組換え宿主細胞。
【請求項30】
少なくとも1つの細胞に機能的に挿入された少なくとも1つの請求項7に記載の配列を有する、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項31】
少なくとも1つの機能的に挿入された配列が、過剰発現される、請求項30に記載のトランスジェニック動物。
【請求項32】
請求項16または17に記載の組成物を、治療上有効な用量で、製薬上許容できるキャリアーと共に、ヒトに投与する、細胞または組織におけるMMP−12の発現を阻害する方法。
【請求項33】
MMP−12の発現の存在または非存在をスクリーニングすることを含み、MMP−12発現が炎症性腸疾患の指標である、ヒト被験体において炎症性腸疾患を診断する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−500073(P2006−500073A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505495(P2005−505495)
【出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001223
【国際公開番号】WO2004/009098
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(504473038)インデックス・ファーマシューティカルズ・アクチエボラーグ (2)
【Fターム(参考)】