説明

MWP蓋分離

【課題】固相から浮遊物を分離するための分離装置、分離方法、および分析および試料調製装置に関する。
【解決手段】浮遊物を固相から分離するための分離装置であって、1以上の検体と該検体が結合可能な固相を含む1以上の液体を保持するためのマルチウェルプレートを備え、該マルチウェルプレートが、前記液体および前記固相を保持し、1以上の前記検体が該精製室内にて前記固相と結合する少なくとも2つの精製室と、検体の固相への結合後に、液体がここに移送され得る少なくとも1つの廃棄室と、前記容器を被覆する蓋とを備え、前記容器と前記蓋とのあいだのインターフェースが、固相が前記精製室に残留するあいだに前記1以上の検体が前記固相に結合した後に遠心力にさらされると、固相を保持する精製室から前記廃棄室へ液体を移送可能なように寸法決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相から浮遊物を分離するための分離装置、分離方法、および分析および試料調製装置に関する。
【0002】
たとえば生物学的試料中に存在する検体の分離、精製または濃縮は、分析方法の重要な工程である。このような分析方法は、生物学的試料から検体を分離および精製する分析システムを使用する。分離および精製は、通常、抗原特異抗体または固定支持体に固定された配列特異相補オリゴヌクレオチドプローブを特異的に使用して、あるいは非特異的に、検体を固定支持体に結合することを含む。検体は固定支持体に結合される。生物学的試料中に存在する他の材料は、後続の洗浄工程により除去される。一般的に、複数の洗浄工程が使用される。各々の洗浄工程において、洗浄液が結合された検体を有する固定支持体に添加されて該固定支持体は隔離され、浮遊物を形成する残留液は除去される。最終洗浄後に残留液は除去され、その後、検体は固定支持体から溶出され得る。溶液の添加および除去は、通常、試料調製および/または分析システムの一部を形成するピペット先端部および/またはカニューレを有するピペットを使用して実施される。固定化、洗浄および溶出は、通常、液体を保持可能なマルチウェルプレートまたは試料管にて実施される。
【0003】
[一般的記述]
本発明は、浮遊物を固相から分離するための分離装置に関し、該分離装置が、
(i)1以上の検体と該1以上の検体が結合可能な固相を含む1以上の液体を保持するための容器を備え、該容器が、
(a)前記液体のうちの1つおよび前記固相を保持し、1以上の前記検体が該精製室内にて前記固相と結合する少なくとも1つの精製室と、
(b)検体の固相への結合後に、液体がここに移送され得る少なくとも1つの廃棄室と、
(ii)前記容器を被覆する蓋とを備える。
【0004】
前記容器と前記蓋とのあいだのインターフェースが、固相が前記精製室に残留するあいだに検体が前記固相に結合した後に遠心力にさらされると、固相を保持する精製室から前記廃棄室へ液体を移送可能なように寸法決めされる。好ましくは、液体は水溶液である。
【0005】
ここで使用される「インターフェース」という用語は、蓋部、精製室および廃棄室のあいだの相互作用領域にかかわることが意図されている。該インターフェースの好ましい実施の形態は後に説明する。
【0006】
ここに記載される分離装置は、結合された検体、または検体を含む沈殿物、あるいは精製室の壁に共有結合または非共有結合した検体を残留液から効率的に分離することを可能にする。この効率的な分離は洗浄工程および他の処理工程の数を減少することができるため、固相に含まれた検体の調製および精製時間が減少される。またこのことは、一装置内の精製室間の二次汚染および/または前記液体による環境汚染の危険性を減少する。
【0007】
ここで使用される「浮遊物」という用語は、固相から分離されなければならない任意の流体に関する。
【0008】
ここで使用される「固相」という用語は、検体を有する沈殿物を生じること、または検体を結合することにより検体を含む任意の固相に関する。該固相の好ましい実施の形態は磁性粒子である。磁性粒子とは、たとえば強磁性体または超常磁性体材料の磁石により引き付け可能な材料の粒子である。本発明において、強磁性粒子が特に好ましい。磁性(Fe34)またはFe23が特に好ましい。しかしながら、磁性粒子は、より小さい磁性粒子を含有する材料も含むと理解される。これは、特に、メルク社(Darmstadt,ドイツ)から入手可能な顔料であるイリオジン600を含む。本発明において、特に、100μm未満の平均粒子寸法を有する粒子が好ましい。とりわけ好ましい粒子寸法は、10〜60μmのあいだの範囲である。好ましい粒子配分は均一であり、特に、10μmより小さい粒子または60μmより大きい粒子はほとんど存在しない。この要件を満たす粒子は、たとえば国際公開第90/06045号パンフレットに記載されている。
【0009】
「検体」という用語は、試料中に見られる細胞またはウイルスの細胞成分を含む分子または分子集合体と理解される。したがって、非限定的な例として、検体は、重要な核酸またはタンパク質であり、その有無が人間または動物の特定の状態または病気の指標となる、生物学的試料中の濃度について調査される。さらに、「検体」という用語の範囲には、試料中に見られるこのような任意の分子の断片が含まれる。好ましい一実施の形態において、前記検体は生物学的検体であり、より好ましくは核酸である。核酸は、RNAまたはDNAまたはその誘導体であり得る。より好ましい実施の形態において、前記検体はウイルスであり、より好ましくはA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、パルボウイルスB19、CT/NGである。より好ましい例として、検体はMAIまたはMTBなどのバクテリアでもよい。
【0010】
ここで使用される「液体」という用語は、検体を含む任意の流体に関する。該液体の非限定的な例としては、血液、血漿または血清、尿、脳液などの生物学的流体を挙げることができる。また、「液体」という用語は、組織試料など生物学的試料の溶解に追従する検体を含む溶液に関する。
【背景技術】
【0011】
一般的に、分子診断の分野において、検体の増幅は、試料中の検体量を測定するために使用され、その後、検体量は病状と相関付けられる。このような増幅方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。また、増幅方法は、リガーゼ連鎖反応(LCR, WuおよびWallace, Genomics 4 (1989)560-569およびBarany, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88 (1991)189-193)、ポリメラーゼリガーゼ連鎖反応(Barany, PCR Methods and Applic. 1 (1991)5-16)、20Gap−LCR(国際公開第90/01069号パンフレット)、修復連鎖反応(欧州公開公報第EP439182A2号)、3SR(Kwohら, Proc. Natl. Acad. I Sci. USA 86 (1989)1173-1177; Guatelli, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87 (1990)1874-1878; 国際公開第92/0880A号パンフレット)および NASBA(米国特許第5,130,238号)でもよい。さらに、鎖置換増幅(SDA)、転写介在増幅(TMA)、およびQ0増幅(検討には、WhelenおよびPersing, Annul Rev. Microbiol. 50 (1996) 349-373; AbramsonおよびMyers, Current Opinion in Biotechnology 4 (1993)41-47を参照)がある。
【0012】
本発明の用途は、分子診断において重要であるのみならず、免疫測定法においても有用である。このような分析は従来技術において既知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、固相から浮遊物を分離するための分離装置、分離方法および分析および試料調製装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
好ましい一実施の形態において、前記分離装置は、マルチウェルプレートである容器を備える。したがって、ここに記載された本発明において、複数の試料が効率的に同時に処理可能である。前記マルチウェルプレートは、少なくとも2つの精製室を備える。
【0015】
ここに開示された好ましい実施の形態の一つの利点は、マルチウェルプレートおよび蓋の既存の構成を使用することにより、一般的に使用されるマルチウェルプレートおよび蓋の製造のためにすでに存在する道具を、これらを製造するために使用できる。
【0016】
容器は、同数の精製室と廃棄室とを備えるように設計可能である。このような設計の好ましい一実施の形態において、前記容器は、48の精製室と48の廃棄室とを備える。しかしながら、上文に例示された数の倍数を含む他の数のものも想定できる。
【0017】
分離装置の別の好ましい設計は、精製室より少数の廃棄室を含む。好ましい一実施の形態において、分離装置は1つのみの廃棄室を備える。このことは、すべての精製室が該1つの廃棄室に流体接続されることを必要とする。このような流体接続の1つの可能な実施の形態として、すべての精製室が接続される流体溝であり、該溝は廃棄室に接続される。別の好ましい実施の形態において、前記分離装置は、複数の廃棄室であるが、精製室よりは少ない数の廃棄室を備える。より好ましい実施の形態において、分離装置は、1列の精製室につき1つの廃棄室を備える。したがって、非限定的実施例として、96のウェルプレートにおいて、1つの廃棄室は8の精製室または12の精製室に連結されており、このため、分離装置は、それぞれ12または8の廃棄室を備えることとなる。
【0018】
ここに記載された本発明の一実施の形態において、分離装置は、精製室を備えたマルチウェルプレートから物理的に分離された1以上の廃棄室を備え、該廃棄室は、蓋に備えられ、遠心力下において浮遊物を精製室から廃棄室へと案内する溝によってマルチウェルプレートの精製室に接続される。好ましい実施の形態において、前記少なくとも1つの廃棄室は精製室を備えたマルチウェルプレートに成型され、分離装置の分離層を形成する。いくつかの実施の形態において、廃棄室は、マルチウェルプレートの外径に沿って取り付け可能であり、マルチウェルプレートに接続される。廃棄室は、マルチウェルプレートに沿って回転し、マルチウェルプレートに永久的に固定され、液体およびエアロゾルを制止可能なフィルタによって通気する。別の実施の形態において、マルチウェルプレートのウェル間の空間を廃棄室として使用できる。マルチウェルプレートのウェル間の空間の体積がきわめて小さい場合には、プレートの縁部を延伸して体積を拡大することが可能である。この場合において、空間は区分化されなければならない(図2を参照)。同時処理される各々の列につき、1つの区画がある。各々の区画は通気される。
【0019】
本分離装置のさらに好ましい実施の形態において、前記インターフェースは、第1室と第2室とのあいだに壁を備え、これは中断されているため、遠心力下で浮遊物を第1室から第2室へと移送可能にする。より好ましくは、前記2室のあいだの壁の長さは、前記壁と蓋とのあいだに間隙が存在するように寸法決めされ、前記浮遊物は、遠心力下で前記間隙を通って第1室から第2室へと移送可能となる。ここで使用される「間隙」という用語は、表面に存在する開口部に関する。好ましい実施の形態において、前記間隙は、精製室および廃棄室の側壁に配置され、流体が通過可能な開口接続部を形成する。
【0020】
本発明の一利点は、改変された蓋を従来のマルチウェルプレートと組み合わせること、または改変されたマルチウェルプレートを従来の蓋と組み合わせて本発明の分離装置を得ることにある。したがって、既存の構成要素を使用することも可能である。
【0021】
前述の分離装置の別の好ましい実施の形態において、蓋は容器に永久的に取り付けられる。したがって、蓋は前述の装置の一体部分である。
【0022】
前述の分離装置のより好ましい実施の形態において、前記廃棄室は、浮遊物を吸収可能な高吸収剤を備える。
【0023】
好ましくは、分離装置に含まれた固相は、核酸を結合可能な磁性粒子を含む。より好ましくは、核酸の結合は一般または特異的である。
【0024】
さらに、本発明において、少なくとも1つの廃棄室が通気されると有利である。
【0025】
好ましい一実施の形態において、前述の分離装置は、上層の精製室と、下層の廃棄室と、磁性ピンを挿入可能な廃棄室間の空間とを備える。本発明の一実施の形態は、前述の分離装置および可動ピンであって、複数の磁性ピンは磁性粒子を引き付けるための位置へ可動であり、1つのピンは2または4の精製室に隣接される。
【0026】
別の好ましい実施の形態において、分離装置は環状磁石を備え、1つの環状磁石は1つの分離室の下部に配置される。
【0027】
本発明の分離装置のさらに好ましい実施の形態を、実施例中の分離方法、蓋、容器および分析システムに関して以下で説明する。
【0028】
本発明はまた、検体および該検体が結合可能な固相を含む液体を保持するための容器に関し、該容器が、前記液体および前記固相を保持し、前記検体が該精製室内にて前記固相と結合する少なくとも1つの精製室と、検体の固相への結合後に液体がここに移送可能になる少なくとも1つの廃棄室とを備え、固相が前記精製室に残留するあいだに前記検体が前記固相に結合した後に遠心力にさらされると、固相を保持する精製室から前記廃棄室へ液体を移送可能にする接続開口部が前記精製室と前記廃棄室とのあいだに存在する。通常、前記マイクロウェルプレートの精製室の形状は円錐状である。好ましい実施の形態において、容器は従来技術において既知である通常の蓋と組み合わせ可能であり、容器と蓋とのあいだの相互作用は可逆的である、別の好ましい実施の形態において、前記容器は蓋に永久的に固定されている。両方の実施の形態において、蓋と容器とのあいだのインターフェースは溝を画定し、該溝は、本発明の分離装置に関してすでに説明した精製室から廃棄室への液体の通過を可能にする。
【0029】
また、本発明は少なくとも1つの精製室と少なくとも1つの廃棄室とを接続するための蓋に関する。該少なくとも1つの精製室は液相および固相を保持し、検体は精製室内にて固相に結合される。前記蓋は、前記少なくとも1つの精製室と少なくとも1つの廃棄室とのインターフェースを形成し、検体が固相に結合した後に液体の前記少なくとも1つの精製室から少なくとも1つの廃棄室への通過を可能にする。好ましくは、前記インターフェースは、蓋にある間隙または溝であり、前記間隙または溝は精製室と廃棄室とを接続する。また、本発明の蓋は、本発明の分離方法に必要な成分を精製室にピペット採取するためのピペット先端部を挿入するための開口部を備える。
【0030】
また本発明は、液体を固相から分離する方法に関し、液体試料中に含まれる検体を結合可能な固相を有する液体試料をインキュベートする工程と、検体の固相への結合後に、液体を前記固相から分離し、前記液体と前記固相とが前述の分離装置に含まれる工程とを含み、前記分離が分離装置の外側の軸の周りでの遠心分離を含み、前記液体を保持する分離装置が前記液体を1以上の廃棄室に移送し、前記廃棄室が通気されてなる。
【0031】
好ましい一実施の形態において、遠心分離のための軸は分離装置の外側に配置される。
【0032】
好ましくは、前記分離装置は遠心分離のあいだは直立位置にある。より好ましくは、遠心分離は、スイングアウトロータまたは固定角ロータにより実施される。好ましい一実施の形態において、遠心分離軸と分離装置の容器の側壁とのあいだの角度は、1〜46°のあいだである。直立の分離装置が本記載のとおりに遠心分離されると、精製室内の液体は、遠心分離軸とは反対側の精製室の壁へ押進められる。これにより、液体は、精製室と廃棄室とのあいだのインターフェースの間隙を通って精製室から強制的に出されるか、または流体溝に流入させられる。したがって、液相と固相との分離が達成される。精製室は、通常、わずかな円錐状を有する。分離に必要な時間は、角度および速度に依存する。非限定的実施例として、約10gの加速度により、液体は1秒未満で精製室から加速排出される。固相は、精製室の側壁に固定されるか、または磁性粒子の場合には、粒子は磁場により精製室の底部に固定可能である。本非限定的実施例において、回転軸と分離装置の容器の側壁とのあいだの角度は、次の公式により少なくとも6°である。
a>arc tan(1/n)
ここで、nは、液体を精製室から完全に移送するために必要な重力加速度である。
【0033】
固相を精製室に残留させる一方で、蓋を介して液体を廃棄室に移送するために、好ましくは磁性粒子に付加される磁力である、固相に付加される力は、遠心力により固相がさらされる力よりも大きくなければならない。本方法は、従来の分離技術と比較して、分離後の空間体積を約2000倍減少することが可能である。さらに、遠心分離により喪失する粒子がないことが実験により明らかになった。このことは、洗浄工程の数を減少させ、検体量を測定するために実施される後続の分析工程の感度および精度を増加することが可能である。ここに記載される工程は、分離中に、液体が常に遠心分離軸から離間することを明らかにするものである。
【0034】
分離装置、容器および蓋についてすでに記載したとおり、液体と固相との分離は、精製室と相互作用する蓋であって、前述の状態下で精製室から廃棄室へ液体を移送可能にする間隙または溝を形成することにより、精製室を備えた容器上に蓋が取り付けられる場合に前述の方法により行われる。さらに、本発明の方法において使用される装置、容器および蓋の好ましい実施の形態は前述の説明のとおりである。
【0035】
いかなる抵抗もなしに液体を精製室から廃棄室へ通過させるためには、廃棄室が通気される必要がある。1つの好ましい実施の形態において、廃棄室は、開口部、より好ましくはガス浸透性の隔壁によって通気される。該隔壁は廃棄室の開口部に取り付けられる。
【0036】
好ましい実施の形態において、本方法の固相は磁性粒子を含む。したがって、本方法は、より好ましい実施の形態において、磁界を印加することによって、最も好ましくは磁性粒子を固定するために精製室の近傍に磁性ピンを移動することによって遠心分離中に磁性粒子を固定することを含む。
【0037】
最も好ましい実施の形態において、本発明の方法は自動化される。
【0038】
前述の方法、装置および容器の好ましい実施の形態において、前記廃棄室は、液体を固定可能な高吸収剤を含む。これにより、後続の工程において精製室を汚染し得るエアロゾルの生成を回避できる。
【0039】
ここに使用される「高吸収剤」という用語は、高吸水性ポリマーに関する。従来技術において既知であるこのようなポリマーは、これ自体の質量の倍数程度、好ましくはこれ自体の質量の1000倍までの液体を吸収可能である。
【0040】
分離後に、固相に含まれた検体は再度洗浄され可溶化されるか、固相に液体を添加することにより溶出される。溶出または可溶化後、精製された検体を含む液体は、その後反応溶液に移送されて、さらに処理される。一実施の形態において、精製室は反応容器である。
【0041】
また、本発明は、試料調製システムに関し、該システムが、前述の分離装置を保持可能な遠心分離機であって、前述の分離装置が水平または回転軸と精製室の側壁とのあいだで1〜46°の角度にて固定可能である、遠心分離機と、前述の分離装置とを備える。
【0042】
好ましい一実施の形態において、回転軸と分離室の外壁とのあいだの角度は、精製工程のあいだに変更可能である。
【0043】
好ましい実施の形態は、本発明の分離装置、容器ならびに蓋および方法についてすでに述べたとおりのものである。
【0044】
好ましい実施の形態において、試料調製装置は検体が結合した磁性粒子を固定するための磁石をさらに備える。好ましくは、前記磁石は、分離装置の室間に配置可能なピンを備える。より好ましい実施の形態において、分離装置の廃棄室は、固相から分離されて精製室から廃棄室へ移送された液体を吸収する高吸収剤を含む。
【0045】
また本発明は、前述の試料調製装置を備えた分析システムに関する。該分析システムは、好ましくはさらに増幅モジュールを備える。より好ましくは、これはさらに検出モジュールを備える。別のより好ましい実施の形態において、増幅モジュールは、増幅および検出モジュールである。
【0046】
さらに好ましい実施の形態は、本発明の分離装置、容器、蓋、方法および試料調製システムについての前述のものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】精製室1および隣接した廃棄室2を有するマルチウェルプレート12の断面図である。加速方向が矢印により示されている。蓋3と室1および2とのあいだのインターフェースは、1つの精製室と1つの廃棄室とのあいだの間隙4を備える。高吸収剤6は廃棄室に配置される。マルチウェルプレート12の下方の矢印は加速方向を示す。
【図2】マルチウェルプレートの短辺の断面図である。
【図3】蓋なしの上部および下部の平面図である。
【図4】廃棄室がマルチウェルプレートの外側に配置された実施の形態における蓋の詳細図である。浮遊物のための溝は魚骨構成の外側に導かれ、ピペット採取のための開口部は開口しているが、蓋により閉鎖可能である。
【図5a】単一の精製カセットを使用した分離方法の概略図である。
【図5b】単一の精製カセットを使用した分離方法の概略図である。
【図5c】単一の精製カセットを使用した分離方法の概略図である。
【図6】マルチウェルプレートのためのスイングアウトロータを示す図であって、該ロータは、固相の隔離のための振動し、蓋を介した浮遊物の分離のために固定可能である。
【図7】水平位置(a)または傾斜位置(b)にある本発明によるマルチウェルプレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下において、非限定的実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0049】
実施例1
96のウェルのマルチウェルプレート12において、48のウェルが精製室1として使用され、48のウェルが廃棄室2として使用される。図1に示されるとおり、精製室1は、最初の内側列にロータに最も近接して配置され(回転軸9が図示されている)、またここから2列毎に配置され、廃棄室2は精製室の列の後続する列毎に配置される。マルチウェルプレートは、蓋3により覆われ、精製室1と廃棄室2とは間隙4により対になって接続される。検体、溶解/結合試薬および磁性粒子8を含有する液体5は精製室に添加され、検体が磁性粒子に結合するようにインキュベートされる。磁石7はマルチウェルプレートに隣接して配置されるため、磁性粒子8はロータ近傍の内壁または精製室の底部に隔離される。ここで、固相8からの液体5の分離は、マルチウェルプレートの外側に配置された軸9の周りに遠心分離により達成される。遠心分離中、プレートは水平位置または回転軸9に対してわずかに傾斜した位置にて固定される(図7aおよび7b参照)。回転運動は、数gの遠心加速度を生じる。液体は回転軸に対して遠方の壁へ加速されるが、磁界により磁性粒子に付される磁力は遠心力よりも強いため、結合検体を有する磁性粒子8は加速方向に追随しない。したがって、磁性粒子8は精製室に保持されるが、液体は精製室1から廃棄室2へと加速排出される。
【0050】
マルチウェルプレート12は、2つの隣接するウェルが、常に、円錐状の精製室1と高吸収剤を6を含み得る廃棄室2である1つのユニットを形成するように設計される。1つのユニットの2つのウェルが1ユニットとして機能するように、マルチウェルプレート12は、マルチウェルプレートのユニット数と同数の、たとえば48の開口部である開口部15を備えた蓋3と組み合わされる。ユニットの2つのウェルは、蓋とマルチウェルプレートとのあいだの間隙4により流体接続される。精製室と廃棄室とのあいだのインターフェースの間隙4は、一方の室から他方の室への液体の移送中にユニットが通気されるように形成されるため、液体に逆圧が付加されない。液体が完全に廃棄室2に移送されるとその上にMWPを有するロータが停止し、洗浄バッファが精製室中の固相に添加可能となり、全工程が繰り返し可能となる。
【0051】
図7は、水平位置(図7a)または回転軸9に対して傾斜した角度10(図7b)を示すマルチウェルプレートの例示である。蓋3はピペット採取のための開口部15を備え、精製室1と廃棄室2とは間隙4により接続されて、これを通って除去される液体5が精製室1から廃棄室2へと移動可能となる。遠心分離中、液体は精製室1の側壁23の上方へ移動するが、磁性粒子8は回転軸近傍の精製室1の側壁22下方に保持される。
【0052】
実施例2
本例において、96の試料がマルチウェルプレートの96のウェルにおいて同時に精製される。したがって、各々のウェルは精製室を規定する。固相が磁性粒子である場合には24の磁石が必要となり、各々の磁石はマルチウェルプレートの下方から4つのウェルの近傍に移動される。別の実施の形態において、1つの磁石が1つのウェルの近傍に移動され、この場合においては96の磁石が使用される。
【0053】
96の試料を同時に精製するために2つの可能な実施の形態がある。一実施の形態において、本発明により、ウェルと蓋とのあいだに取り付けられた溝を経由して浮遊物が除去され、溝は魚骨様に配置される(図4を参照)。本構成においてすべての主要な溝は、マルチウェルプレートの外側に配置された1つの廃棄室内に導かれ、ここにおいて外側とは回転軸から離間した側を意味する。廃棄室は、内側方向へ導かれてフィルタ(たとえばPorexフィルタ)により通気された1つ以上の開口部を有する。
【0054】
第2の実施の形態において、廃棄室はマルチウェルプレートの下部に配置される。例示として、一列中の8または12のウェルが同時に処理される場合には、8または12のウェルの列毎に廃棄室がマルチウェルプレートの下部に配置される。
【0055】
実施例3
本実施の形態において、検体は、磁性粒子に結合されるのではなく、濃度に応じて隔離された固相に結合される。検体の固相への結合後、固相は、高加速での振動状態の遠心分離により隔離される。固相の隔離後、遠心分離は停止する。その後、マルチウェルプレートは水平位置に停止され、低加速にて短時間遠心分離される。これにより、前述の例のように浮遊物は蓋を介して除去される。
【0056】
実施例4
次の方法により、多数の試料が同時に処理可能である。本方法は、非磁性粒子に対してとりわけ有用である。1つのユニットを形成するマルチウェルプレートの2つのウェルが常に存在する。生物学的試料、試薬および粒子は第1のウェル(精製室)にてインキュベートされる。プレートは浮遊物から粒子を分離するために遠心分離にかけられる。ロータはプレートを振動し、これによって粒子がウェルの底部に隔離される。ここで、ロータは水平位置またはわずかに傾斜して固定可能である。正確な位置は、標準的なプレートが使用されるか、本発明の分離工程のために特別に設計されたプレートが使用されるかによる。ここで、ロータは、通常、8〜10gの加速度にて回転を開始する。溶液は、精製室と廃棄室とを接続する精製室の外側(回転軸に対して)に配置された間隙へ側壁を上方向に移動する。浮遊物は廃棄室に流入し、ここで精製室に保持された固相から分離される。廃棄室には、エアロゾルの繰越を回避するために高吸収剤が配置可能である。
【0057】
第2の工程において、洗浄バッファを固相に添加して、たとえばピペットを上下させることによって、または超音波あるいは別の方法によって粒子を再懸濁する。洗浄液にて平衡がもたらされると、粒子が精製されるまで前述の精製工程が1度または2度繰り返される。その後、検体は粒子から溶出する。
【0058】
実施例5
本方法はマルチウェルプレートに限定されず、図5に示されるように単一のカセットにおいても使用可能である。該カセットは、円錐状20の1つの精製室1と、高吸収剤6を含む第2の廃棄室2を備える。2つの室は間隙4により接続される。間隙は、精製室1と廃棄室2とのあいだに配置された2つの側壁部分17,18のあいだの開口部により形成可能である。カセットは頂上部(蓋)3にて閉じられ、隔壁により閉じることが可能な精製室の上部に1つまたは2つの開口部15,16を有する。これらの開口部は、試料、試薬および溶液を精製室にピペット採取するためにピペット先端部14,21を受領可能である。精製室にて固相19から分離される溶液は、通常、8〜19gの遠心分離により除去可能である。このことは、粒子間の液体の残量を減少し、精製工程をより効率的にする。好ましい実施の形態において、分離は、水平位置(図5aおよびc)に固定された室の遠心分離により、または直立位置(図5b)に室を固定することで遠心分離なしに液体を廃棄室2に排出することにより達成可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 精製室
2 廃棄室
3 蓋
4 間隙
5 液体
6 高吸収体
7 磁石
8 磁性粒子
9 軸
10 角度
12 マルチウェルプレート
14,21 ピペット先端部
15,16 開口部
17,18 側壁部分
19 固相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊物を固相から分離するための分離装置であって、
1以上の検体と該検体が結合可能な固相を含む1以上の液体を保持するためのマルチウェルプレートを備え、該マルチウェルプレートが、
前記液体および前記固相を保持し、1以上の前記検体が該精製室内にて前記固相と結合する少なくとも2つの精製室と、
検体の固相への結合後に、液体がここに移送され得る少なくとも1つの廃棄室と、
前記容器を被覆する蓋とを備え、
前記容器と前記蓋とのあいだのインターフェースが、固相が前記精製室に残留するあいだに前記1以上の検体が前記固相に結合した後に遠心力にさらされると、固相を保持する精製室から前記廃棄室へ液体を移送可能なように寸法決めされる分離装置。
【請求項2】
前記廃棄室が、前記浮遊物を吸収可能な高吸収剤を含む請求項1記載の分離装置。
【請求項3】
前記分離装置が、精製室より少ない廃棄室を有する請求項1または2記載の分離装置。
【請求項4】
前記廃棄室が、前記精製室を備えた前記マルチウェルプレートから物理的に離間しており、前記廃棄室が、遠心力下で前記精製室から前記廃棄室へと浮遊物を案内する、前記蓋に備えられた溝によって前記マルチウェルプレートの前記精製室に接続される請求項1〜3のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項5】
前記インターフェースが、遠心力下で前記第1の室から第2の室へ浮遊物を移送可能にするように中断された壁を前記第1の室と第2の室とのあいだに備えた請求項1〜4のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項6】
前記2つの室のあいだの壁の長さが、間隙が前記壁と蓋とのあいだに存在するように寸法決めされ、前記浮遊物が、遠心力下で前記間隙を通って前記第1の室から前記第2の室へ移送可能となる請求項1〜5のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項7】
前記蓋が、前記容器に永久的に取り付けられた請求項1〜6のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの廃棄室が通気されてなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項9】
精製室より少ない廃棄室を備えた請求項1〜8のいずれか1項に記載の分離装置。
【請求項10】
検体および該検体が結合可能な固相を含む液体を保持するためのマルチウェルプレートであって、
前記液体および前記固相を保持し、前記検体が該精製室内にて前記固相と結合する少なくとも2つの精製室と、
検体の固相への結合後に液体がここに移送可能になる少なくとも1つの廃棄室とを備え、
固相が前記精製室に残留するあいだに前記検体が前記固相に結合した後に遠心力にさらされると、固相を保持する精製室から前記廃棄室へ液体を移送可能にする接続開口部が前記精製室と前記廃棄室とのあいだに存在するマルチウェルプレート。
【請求項11】
少なくとも1つの精製室と少なくとも1つの廃棄室とを接続するための蓋であって、前記少なくとも1つの精製室が液体および固相を保持し、検体が前記精製室にて前記固相に結合し、前記蓋が、前記少なくとも1つの精製室および前記少なくとも1つの廃棄室とともにインターフェースを形成し、検体が固相に結合した後に、前記少なくとも1つの精製室から前記少なくとも1つの廃棄室へ前記液体を通過可能にする蓋。
【請求項12】
前記インターフェースが、蓋上に存在する間隙または溝であって、前記間隙または溝が精製室と廃棄室とを接続する請求項11記載の蓋。
【請求項13】
液体を固相から分離する方法であって、液体試料中に含まれる検体を結合可能な固相を有する液体試料をインキュベートする工程と、検体の固相への結合後に、液体を前記固相から分離し、前記液体と前記固相とが請求項1〜9記載の分離装置に含まれる工程とを含み、前記分離が分離装置の外側の軸の周りでの遠心分離を含み、前記液体を保持する分離装置が前記液体を1または複数の廃棄室に移送し、前記廃棄室が通気されてなる方法。
【請求項14】
遠心分離の軸と前記分離装置の容器の側壁とのあいだの角度が1〜46°である請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜9記載の分離装置を保持可能な遠心分離機であって、請求項1〜9記載の分離装置が水平または回転軸と精製室の側壁とのあいだで1〜46°の角度にて固定可能である遠心分離機と、請求項1〜9記載の分離装置とを備えた試料調製システム。
【請求項16】
請求項15記載の試料調製装置を備えた分析システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−133952(P2010−133952A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−256431(P2009−256431)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】