説明

MnO2/NiOOH活物質を有するアルカリ電池

本発明は、亜鉛アノードと、オキシ水酸化ニッケル及び二酸化マンガンの両方を含有するカソードとを有するアルカリ電池セルである。セルは、高出力放電時の低い分極に加えて高い入力容量を有し、カソード活物質としてオキシ水酸化ニッケルのみを有するセルに比べて、より良好な高出力放電容量を提供すると同時により良好な低率放電容量を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活物質として二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとのブレンドを有する正極を用いたアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛/二酸化マンガン一次電池及び充電式ニッケル電池といったアルカリ電池は、電子デバイス用、特に携帯用デバイス用の一般的な電源である。電子デバイスは、電池に利用可能なスペースが限定されて設計される場合が多く、使用することができる電池の数及び大きさが制約される。多くのタイプのデバイスで、電池区画の大きさを削減する傾向が一般的になっていると同時に、デバイスを動作させる所要電力が増大している。
【0003】
リチウム及びリチウムイオン電池などの電池タイプは、通常エネルギー密度が高く使用中の電圧が高いことに起因して、一部のデバイスでは有利とすることができるが、しかしながら、これらは材料コストが高く、セル設計が複雑であるのでアルカリ電池に比べて高価になる可能性がある。アルカリ電池はこれよりも安価とすることができ、従って、多くのタイプのデバイスに好ましい。充電型アルカリ電池のタイプのセル設計では、質量対表面積比の大きい電極を有する場合が多く、結果として小さな電池内部抵抗と低い放電電流密度が得られるので、充電型アルカリ電池は大きな電池電力を必要とするデバイスにおいて有利とすることができる。しかしながら、このような設計はそれでも製造コストが比較的高い。これらはまた、「ボビン」型設計のように質量対電極界面表面積比が小さい一次アルカリセルに比べ、セパレータ及び集電体など比較的大容積の不活性物質を含み、電極表面積が大きなセル設計においては、残される活物質用の内部セル容積が少なくなる(従って、最大放電容量がより小さい)。低表面積電極セル設計は、キャビティを有する形状(例えば中空円筒)に形成された1つの電極(多くの場合正極)を有することができ、キャビティ内には他の電極が配置される。このような設計を有するアルカリ電池の実施例としては、円筒形亜鉛/二酸化マンガン(Zn/MnO2)LR03、LR6、LR14及びLR20電池が挙げられるが、他の寸法の円筒形電池並びに同様のセル設計を有する角型電池もまた公知であり、一次電池及び充電式電池の両方に使用することができる。
【0004】
ボビン型セル設計を有するアルカリ電池は、コスト面及び低中度の放電速度での放電容量において有利とすることができるが、高消費、高率及び高出力放電(以後高出力放電と称する)に関する性能が低下する可能性がある。コスト及び低出力放電性能に対する悪影響を最小限に抑えるよう努めながら、アルカリセルに対して高出力放電性能を向上させる修正が行われてきた。
【0005】
例えば、一次アルカリZn/MnO2電池では、MnO2(通常電解二酸化マンガン、すなわちEMD)をNiOOHなどの他の正極活物質で置き換えることによって改良されてきた。NiOOHは、より一定の高電圧で放電することができ、高出力を必要とし作動電圧が高いデバイスにおいてエネルギー上の利点をもたらす。一次アルカリZn/NiOOHセルの実施例は、以下の特許公報:JP2003−017,079A、JP2003−017,080A、JP2003−257,423A、US6,489,056B1、US6,492,062B1及びUS6,566,009B1で見出され、これらの全てはボビン型電極構成を有するセルを開示している。
【0006】
アルカリNiOOHセルの欠点もまた存在する。NiOOHは、EMDよりも低密度であり、そのため同じ容積内に入る量がより少ない可能性があり、ベータ型NiOOHは放電時に1つより多い電子還元を受けることができない。このことは、高出力放電のより高くより均一な電圧の利点を相殺し、低出力デバイスの放電容量を低下させる。また、NiOOHは、EMDよりも一般に高価であり、とりわけ高温でのセル保管中に自己放電する傾向がある。
【0007】
この欠点を克服するための様々な方法においてアルカリNiOOHセルを改良する試みがなされてきた。例えば、種々の結晶構造を有するNiOOHが使用され、NiOOH内のニッケルが様々なイオン(例えば、Zn、Co、Al、Ca、Mg、Ti、Sc、Fe、Mn、Y、Yb、Er、Cr、Li、Na、K、Rb、Cs、その他)で部分的に置き換えられ、NiOOHの粒子が種々の材料(例えば、黒鉛、金属類、コバルト化合物、ニッケル化合物、その他)で被覆され、NiOOHの種々の特性(例えば、真密度、タップ密度、粒径分布及び比表面積)の範囲は容積放電容量を高めるように修正されてきた。
【0008】
MnO2とNiOOHとのブレンドはまた、負極内の活物質として亜鉛を有するセルを含む、アルカリセル正極内の活物質として使用されており、場合によっては、全MnO2又は全NiOOH正極の欠点が相殺される。MnO2/NiOOHブレンドを有するセルの実施例は、以下の特許公報:EP1,341,248A1、EP1,372,201A1、JP53−032,347A、JP56−015,555A、JP56−015,560A、JP56−054,759A、JP57−049,168A、JP2003−031,213A、JP2003−017,081A,JP2003−107,043A、JP2003−123,744A、JP2003−123,745A、JP2003−123,747A、JP2003−123,762A、JP2003−242,990A、JP2003−257,440A、JP2003−272,617A、US4,405,698A、US4,370,395A、US6,566,009B1、US2004/0043292A1及びWO03/67,689A1において見出される。
【0009】
良好な放電容量を提供するための3つの望ましいセル特性は、限定的な電極での高電極容量、低いオーム抵抗及び良好なイオン拡散である。これらの特性は相互に関連し、実際の電池では一般に1つの特性を変化させると他の特性の1つ又は両方も変化することになる。これらの特性の相対的な重要性は、様々な放電条件により異なる。例えば、電極容量は、高出力及び連続放電の場合よりも低出力放電及び断続的放電の場合に重要となる傾向があり、オーム抵抗及びイオン拡散は、高出力放電の場合により重要となる傾向がある。その結果、セル設計者は、予期される放電条件に応じて、これらの3つの特性のうちの1つ又は2つを他の特性を犠牲にして改良することが一般的である。様々な放電条件で使用されることになる電池における課題は、これらの予期される条件の全てに対して良好な容量を提供することである。
【0010】
分極はセル容量を決定付ける重要なパラメータである。分極は、電流の通過によって引き起こされる、平衡状態からの電位のずれである。分極は放電容量に関係し、異なる放電条件下では異なる可能性がある。全分極に寄与する3つの特性は、活性化分極、抵抗分極及び濃度分極である。活性化分極は、活物質の表面上の電気化学反応の動力学的抵抗に起因する電位の変化の尺度であり、抵抗分極は、オーム抵抗の変化に起因する電位の変化の尺度であり、濃度分極は、放電反応に伴うイオンの拡散速度の変化に起因する電位の変化の尺度である。
【0011】
【特許文献1】JP2003−017,079A公報
【特許文献2】JP2003−017,080A公報
【特許文献3】JP2003−257,423A公報
【特許文献4】US6,489,056B1公報
【特許文献5】US6,492,062B1公報
【特許文献6】US6,566,009B1公報
【特許文献7】EP1,341,248A1公報
【特許文献8】EP1,372,201A1公報
【特許文献9】JP53−032,347A公報
【特許文献10】JP56−015,555A公報
【特許文献11】JP56−015,560A公報
【特許文献12】JP56−054,759A公報
【特許文献13】JP57−049,168A公報
【特許文献14】JP2003−031,213A公報
【特許文献15】JP2003−017,081A公報
【特許文献16】JP2003−107,043A公報
【特許文献17】JP2003−123,744A公報
【特許文献18】JP2003−123,745A公報
【特許文献19】JP2003−123,747A公報
【特許文献20】JP2003−123,762A公報
【特許文献21】JP2003−242,990A公報
【特許文献22】JP2003−257,440A公報
【特許文献23】JP2003−272,617A公報
【特許文献24】US4,405,698A公報
【特許文献25】US4,370,395A公報
【特許文献26】US6,566,009B1公報
【特許文献27】US2004/0043292A1公報
【特許文献28】WO03/67,689A1公報
【特許文献29】米国特許第5,869,205号公報
【特許文献30】米国特許第6,261,717号公報
【特許文献31】米国特許第6,342,317号公報
【特許文献32】米国特許第6,410,187号公報
【特許文献33】米国特許出願公開2004/0058234公報
【特許文献34】米国特許出願公開2004/0058235公報
【特許文献35】米国特許第6,589,693号公報
【特許文献36】米国特許出願第09/213,544号公報(1999年7月15日付の国際公開特許WO99/34,673に対応)
【特許文献37】米国特許出願第10/713,833号公報
【特許文献38】米国特許第5,464,709号公報
【特許文献39】国際特許公開WO00/48260公報
【特許文献40】米国特許第6,300,011号公報
【特許文献41】米国公開特許2004/0013940A1公報
【特許文献42】米国特許出願第73451号公報
【特許文献43】米国公開特許第2003/0096171A1公報
【特許文献44】米国特許第6,670,077B1号公報
【特許文献45】米国特許第6,312,850号公報
【特許文献46】米国特許第6,270,918号公報
【特許文献47】米国特許第6,265,101号公報
【特許文献48】米国特許第6,087,041号公報
【特許文献49】米国特許第6,060,192号公報
【特許文献50】米国公開特許2003/0157398公報
【特許文献51】米国特許出願第10/439,096公報
【特許文献52】米国特許出願第10/365,197公報
【非特許文献1】Newman他、Electrochemical Systems、第3版、John Wiley & Sons、米国ニュージャージー州ホーボーケン、2004年
【非特許文献2】R.Barnard他、Journal of Applied Electrochemistry、17、165−183(1987年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
NiOOHは、高出力放電中に高作動電圧を必要とするデバイスで使用することを目的とする電池において、負極活物質として亜鉛を有する水性アルカリセル内の正極活物質としてEMDと置き換えられている。このことは通常、低率放電(例えば低出力、低電流及び低抵抗)時の容量を犠牲にしてきた。正極活物質としてNiOOHとEMDとが組み合わされた電池においても、低率放電の容量が通常劣っていた。従って、アルカリセルでの更なる改良に対する必要性が依然としてあり、本発明の目的は、良好な高出力放電容量並びに良好な低中放電容量を有するアルカリセルを提供することである。本発明の別の目的は、とりわけ既に商業用途で存在しているものと同様の製造工程及び設備を使用した製造が容易なアルカリセルを提供することである。本発明の更なる目的は、良好な高、中及び低出力放電容量を有する安価なアルカリセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、正極活物質として二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとのブレンドを有し、正極活物質の量が低率放電で良好な放電容量を与えるほど多いと同時に、高出力放電での良好な容量が与えられるように放電効率が高く維持されるアルカリ電解質セルによって満たされ、従来技術の上述の欠点が克服される。
【0014】
従って、本発明の1つの態様において、電気化学電池セルは、正極と、負極と、正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質とを備え、正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体混合物から構成される成形本体を含み、負極が、亜鉛を含む混合物を含み、正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置される。正極本体が単一リングを含み、3.3から4.6cm3の容積を有する場合に、セルは100から310mVの1500mW DSC分極値を有し、正極本体が単一リングを含み、1.4から2.0cm3の容積を有する場合に、セルは100から310mVの1200mW DSC分極値を有し、正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、3.3から4.6cm3の容積を有する場合に、セルが100から240mVの1500mW DSC分極値を有し、正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、1.4から2.0cm3の容積を有する場合に、セルは100から240mVの1200mW DSC分極値を有する。
【0015】
本発明の第2の態様において、電気化学電池セルは、正極と、負極と、正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質とを備え、正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体体を含み、負極が、亜鉛を含む混合物を含み、正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置される。正極本体が、単一リングを含み且つ3.3から4.6cm3の容積を有し、セルが100から310mVの1500mWDSC分極値を有し、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、セルは2500から2800mAh(好ましくは2600から2800mAh)の放電容量を有する。
【0016】
本発明の第3の態様において、電気化学電池セルは、正極と、負極と、正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質とを備え、正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、負極が、亜鉛を含む混合物を含み、正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置される。正極本体が単一リングを含み且つ1.4から2.0cm3の容積を有し、セルが100から310mVの1200mWDSC分極値を有し、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、セルが1050から1250mAh(好ましくは1100から1250mAh)の放電容量を有する。
【0017】
本発明の第4の態様において、電気化学電池セルは、正極と、負極と、正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質とを備え、正極が二酸化マンガンと二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、負極が、亜鉛を含む混合物を含み、正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置される。正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、3.3から4.6cm3の容積を有し、セルが100から240mVの1500mWDSC分極値を有し、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、セルが、2600から2950mAh(好ましくは2700から2950mAh)の放電容量を有する。
【0018】
本発明の第5の態様において、電気化学電池セルは、正極と、負極と、正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質とを備え、正極が二酸化マンガンと二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、負極が、亜鉛を含む混合物を含み、正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置される。正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、1.4から2.0cm3の容積を有し、セルが100から240mVの1200mWDSC分極値を有し、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、セルは、1100から1300mAh(好ましくは1150から1300mAh)の放電容量を有する。
【0019】
本発明の第6の態様において、電気化学電池セルは、正極と、負極と、正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質とを備える。正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルと黒鉛とを含む固体の混合物から構成される中空の円筒形本体を含み、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの重量比が40/60から70/30であり、二酸化マンガン及びオキシ水酸化ニッケルの組み合わせと黒鉛との重量比が15/1から30/1である。正極は、17から23容積パーセントの多孔度と、0.6から1.6ohm−cmの電気抵抗を有する。負極は、正極本体内部の円筒形キャビティ内に配置され、62から70重量パーセントの亜鉛粒子を含む混合物を含み、亜鉛がビスマス、インジウム及びアルミニウムと合金化され、亜鉛粒子が110から120μmのメジアン粒径を有する。負極は、70から76容積パーセントの多孔度と、3.5から3.8ミリオーム−cmの抵抗率とを有する。負極容量と正極容量の比率が1.15/1から1.25/1であり、電解質が、32から36重量パーセントの水酸化カリウムを含む水溶液である。セルがR6サイズのセルである実施形態において、セルは、100から225mVの1500mWDSC分極値と、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに2600から2950mAhの放電容量と、10秒間の1500mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、800から1500の放電容量とを有する。セルが、R03サイズのセルである実施形態において、セルは、100から225mVの1200mWDSC分極値と、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに1100から1300mAhの放電容量と、10秒間の1500mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、300から700mAhの放電容量とを有する。
【0020】
本発明のこれら及び他の特徴、利点並びに目的は、以下の明細書、請求項及び添付図面を参照することにより当業者であればより理解し評価されるであろう。
【0021】
別途定めない限り本明細書では以下の定義及び方法を用いる。
(1)A/C比率−セル内の負極容量と正極容量の比率;
(2)ボビン型電極構成−1つの(例えば正の)電極の固体材料の混合物が1つ又はそれ以上のキャビティを有する固形体に形成され、キャビティ内部に他の(例えば負の)電極が収容される電極配列;
(3)容量、放電−指定の放電試験で放電したときのセルの放電容量;
(4)容量、電極−電極内の組み合わされた活物質の計算容量であって、電極における計測比容量×活物質の重量パーセントを合計して求められ;この電極容量は、電極の量が既知であるときは全容量(例えば、mAhで)として、或いは重量基準(例えば、mAh/gで)又は容積基準(例えば、mAh/cm3で)の何れかの比容積として表すことができる;
(5)容量、計測−活物質の比容量は、以下で説明される電気化学法に従って実験的に測定される;
(6)放電効率−負極と正極の計測容量のうちの小さいものに対する指定放電試験でのセルの放電容量の比率;
(7)電極本体−あらゆる集電体を除外した電極の部分;
(8)セルの分極−電流の通過によって引き起こされる、平衡(開回路)セル電圧からのセル電圧のずれ;分極は、抵抗分極と、活性化分極と、濃度分極とを含み、以下で説明されるように測定される。
(9)多孔度−固体材料で構成されていない、集電体を除外した電極の容積の割合;
(10)固体材料−セル電解質中の有意な溶解度がない(すなわち、水の重量基準で1パーセント未満の溶解度)物質;
(11)固体充填率−成型電極内の固体材料の充填の緊密度であって、電極混合物内の全ての固体材料の容積の合計を成型電極混合物の全容積で除算して求められ、各固体材料の容積は、その重量をヘリウム・ピクノメトリー又は類似の方法によって測定される真密度で除算して求められる(固体充填率は1から電極の多孔度を減算したものに等しい)。
【0022】
本明細書で別途指定されない限り、全ての開示された特性値及び範囲は、室温(20−25℃)で測定されたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、従来型のLR6(AA)サイズのアルカリZn/MnO2セルに相当する寸法を有するボビン型構造の円筒型セルを示す図1を参照すると、更に良く理解されるであろう。しかしながら、本発明によるセルは、他のサイズ、形状(角型など)及び電極構成(米国特許第5,869,205号(1999年2月9日)、第6,261,717号(2001年7月17日)、第6,342,317号(2002年1月29日)及び第6,410,187号(2002年6月25日)、並びに米国特許出願公開2004/0058234(2004年3月25日)及び2004/0058235(2004年3月25日)に開示されたものなど、これらの開示全体は引用により本明細書に組み込まれる)を有することができる。図1でのセルの構成要素の材料及び設計は、説明の目的のものである。他の適切な材料及び設計を代用することができる。
【0024】
図1において、セル10は、閉鎖底端部14及び開放上端部16を有する円筒形スチール缶体12を含む。缶体12の閉鎖底端部14は、溶接又は他の方法で取り付けられた正端子カバー18を含む。正端子カバー18は、例えばめっきスチールで形成することができ、その中央部に突出するナブを有する。金属被覆されたプラスチックフィルムラベル20が、缶体12の端部を除いた缶体12の外側表面の周りに形成される。ラベル20は、図示のように正端子カバー18の周縁部を覆って形成することができ、負端子カバー46上に部分的に延びることができる。
【0025】
正極(カソード)22は、缶体12の内側表面の周りに形成され、ほぼ中空円筒形状を有する。1つの実施例によれば、正極22は、活物質として二酸化マンガン(MnO2)とオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)とのブレンド、黒鉛のような導電性材料、水酸化カリウム水溶液のような電解質、及び添加剤を含む混合物から構成される。正極混合物は、缶体12の内側表面に接触し、缶体12が正極集電体として機能するようにすることができる。(本明細書で使用される電極(正極又は負極)は集電体を含まない。)
【0026】
カップ形状セパレータ及び管状セパレータを含むことができるセパレータ24は、正極22及び缶底部14の内側表面の周りに配置される。
【0027】
負極(アノード)26は、正極22と缶底部14とによって形成されるキャビティ内に配置される。1つの実施例によれば、負極26は、粉末亜鉛、ゲル化剤及び添加剤を含む混合物から構成される。負極26に接触して負極集電体28が配置され、これは一方の端部に拡大したヘッドを有するネイル状形態とすることができる。
【0028】
セル10は、缶体12の開放端部16を閉鎖する集電体及びシール組立体によって閉じられる。集電体及びシール組立体は、負極集電体28、環状シール30及び圧縮ブッシュ42を含み、これらは予組み立てして、正極22、セパレータ24及び負極26が缶体12内に挿入された後でユニットとして缶体12の開放端部16内に挿入することができる。開放端部16の近くで缶体12の内側に形成された溝15は、集電体及びシール組立体用の支持部を提供する。例えば、めっきスチールで形成された外側負端子カバー46が、集電体及びシール組立体を覆って負極集電体28に接触して配置され、セル10の負側接点端子として機能する。負端子カバー46は、1つ又はそれ以上のベント開口部48を含み、これは圧力解放ベントが作動するときにセル10からのガスの排出を可能とする。セル10は、溝15の上方で缶体12に半径方向の力を加えて、直立シール壁32を缶体12と負端子カバー46との間で圧縮し、缶体12の上縁と直立シール壁32とを内側下方に圧着して負端子カバー46及び集電体及びシール組立体を缶体12の開放端部16内に保持することによってシールされる。
【0029】
環状シール30は、その外周に形成された外側周辺直立壁32と、中央の厚いハブ38を形成する内側直立壁とを有する。ハブ38と外側直立壁32との間には内側に湾曲したダイアフラム34と逆V字断面36とが形成される。逆V字断面36は、ダイアフラム34と外側直立壁32との間に、セパレータ24の上部開放端部を収容する隆起チャンネルを形成する。中央ハブ38は、集電体ネイル28が貫通して延びる開口部を定め、ハブ38はネイル28と締まり嵌めを形成する。ポリマー製圧縮グロメット42が、ハブ38の周りに圧力嵌めされハブ38を半径方向内側に圧縮する。ハブ38とネイル28との間に封止剤を塗布してもよい。封止剤はまた、直立壁32と缶体12との間にも塗布することができる。シール30は、ダイアフラム38内に形成された薄肉部分40を有する。薄肉部分40は、セル内部の圧力が予め設定されたレベルを超えて内部圧力を解放するときに開く圧力解放ベントの一部である。この時点で、薄肉部分40が破断してダイアフラム38とグロメット38の間の開口部を生成し、加圧ガスがセル10から漏出することが可能になる。グロメット42の周りに離間して配置された垂直チャンネル44は、ダイアフラム38とグロメット42との間の適切な開口部を確保する。
【0030】
正極は、活物質と導電性材料とを含む固体材料の混合物(固体混合物)を含む。活物質は、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの両方を含む。活物質は比較的高い電気抵抗を有するので、固体混合物はまた、混合物の全体の抵抗率を低下させるため高い導電率を有する1つ又はそれ以上の材料の粒子を含有する。固体混合物は、混合物が電極に形成された後で該混合物を結合させるための任意選択のバインダを含有することができる。固体混合物はまた、セルの電気的性能を向上させる潤滑剤及び添加剤のような他の任意選択的な固体材料を含有することができる。
【0031】
高出力放電及び低率放電の両方で良好な放電容量を提供するために、本発明による水性アルカリセルは、重量基準で約10/90から約90/10の比率でMnO2及びNiOOHを含む正極活物質を有する。MnO2とNiOOHの容量は同じではないので、これらの材料の相対量はまた、正極混合物の容量に影響を及ぼす可能性がある。NiOOHの容積は電解質MnO2の容積よりも小さいので、NiOOH電極の容量は、NiOOHの一部をMnO2に置き換えることによって増大させることができる。MnO2のNiOOHに対する比率は、好ましくは約20/80から約80/20であり、より好ましくは約30/70から約70/30であり、最も好ましくは約40/60から約70/30である。
【0032】
アルカリZn/NiOOHセルの正極にMnO2を単に付加するだけでは、高出力放電容量を犠牲にすることなくセルの低率放電容量が改善されることを保証するものではない。MnO2の付加に加えて、高出力放電時にはセル分極が十分に低い必要がある。例えば、正極容積が3.3から4.6cm2(あらゆる集電体を除外する)を有する電池では、以下に説明される高出力1500mW/650mW DSC試験でのセルの全分極は、正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含むときに240mV未満(好ましくは225mV未満)であり、正極本体が単一リングを含むときには310mV未満(好ましくは300mV未満)となる。正極容積が1.4から2.0cm2(あらゆる集電体を除外する)を有する電池では、以下に説明される高出力1200mW/650mW DSC試験でのセルの全分極は、正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含むときに240mV未満(好ましくは225mV未満)であり、正極本体が単一リングを含むときには310mV未満(好ましくは300mV未満)となる。
【0033】
セルの全分極及び個々の電極の分極は、分極の3つの構成要素(活性化分極、抵抗分極及び濃度分極)を様々に組み合わせて修正することによって変更することができる。
【0034】
セル分極は、電流の通過によって引き起こされるセル電圧の低下であるので、セルの分極値は、電流の大きさ及び持続時間に依存する。特に重要なのは、高率(例えば高出力)放電時の分極である。本発明におけるセル分極値設定するために2つの高出力デジタルスチルカメラ(DSC)試験が選択された。第1のものは、1500mV DSC試験と呼ばれる。この試験では、セルは1500mWを2秒間、次いで650mWを28秒間を10サイクルにわたって放電され、次いでセルは55分間休止され、このサイクル/休止方式は連続的に反復される。セル電圧は、試験中の合計時間が20分に達する前の最後の1500mVパルスの終わり(すなわち、19分32秒で)で測定される。分極値(1500mW DSC分極値)は、この電圧と、放電時のセル電圧が測定された時間でのセルの平衡開路電圧(部分的に放電したセルが回復することになる最大開路電圧)との差である。1200mW DSC試験と呼ばれる第2のDSC試験は、1500mW DSC試験での1500mWパルスに1200mWが置き換えられること以外は1500mW試験と同様であり、分極値(1200mW DSC分極値)は、試験中の合計時間が20分に達する前の最後の1200mVパルスの終わり(すなわち19分32秒で)での電圧と、放電時点でのセルの平衡開路電圧との差である。
【0035】
活性化分極は、電気化学的放電反応を起こすのに必要とされる推進力の変化の関数である。全分極のこの成分は、活物質の電気化学反応の電荷移動の反応速度によって大きく左右される。
【0036】
濃度分極は、電極のイオン拡散性、多孔度、屈曲度などの関数である。濃度分極を低減することができる方法の1つの実施例は、1つ又は両方の電極内部の液体電解質の相対量を増大させる(すなわち電極多孔度を高める)ことである。
【0037】
抵抗分極は、オーム抵抗の変化の関数である。オーム抵抗は、放電中に活物質が反応するのに応じて変化する可能性があり、これは反応物質及び反応生成物の電気抵抗が通常は異なるためである。抵抗分極での変化の影響を軽減することができる方法の実施例としては、電流密度の低下(例えば、電極間の界面面積の増大による)、電極内部又は電極に接触する高導電性材料の相対量(例えば正極混合物内の黒鉛の量及び正極混合物と集電体との間の接触表面積)の増大、及び活物質自体の導電性をより高める(例えば活物質の粒子を導電性材料でコーティングすることによって)ことが挙げられる。
【0038】
抵抗分極は電流遮断法によって測定される。セル放電が遮断され、セル電圧が放電遮断の直前とその200マイクロ秒後に測定される。抵抗分極はこれらの2つの電圧の差である。
【0039】
オーム抵抗は、抵抗分極を求める際に閉回路電圧が測定された時点での電流で抵抗分極を除算して求められる。1500mV DSC試験での20分の直前の1500mVパルスの終わりで測定されたオーム抵抗を1500mV DSCオーム抵抗と呼び、1200mV DSC試験での20分の直前の1200mVパルスの終わりで測定されたオーム抵抗を1200mV DSCオーム抵抗と呼ぶ。
【0040】
濃度過電圧とも呼ばれる濃度分極は、Newman他、Electrochemical Systems、第3版、John Wiley & Sons、米国ニュージャージー州ホーボーケン、2004年でより詳細に論じられている。
【0041】
正極本体を形成する方法は、セルのオーム抵抗に影響する可能性がある。一般的に、正極がリング成型法を用いて形成される場合には、インパクト成型法が使用される場合よりもオーム抵抗及び分極が小さい。3.3から4.6cm3の正極容積を有するセル(例えばアルカリR6サイズ・セル)では、リング成型法が使用される場合、1500mW DSCオーム抵抗値は、好ましくは40から90mΩであり、インパクト成型法が使用される場合には、1500mW DSCオーム抵抗は好ましくは75から130mΩである。1.4から2.0cm3の正極容積を有するセル(例えばアルカリR03サイズ・セル)では、リング成型法が使用される場合、1200mW DSCオーム抵抗値は好ましくは55から110mΩであり、インパクト成型法が使用される場合には、1200mW DSCオーム抵抗は好ましくは80から140mΩである。
【0042】
低出力放電時の良好なセル容量のためには、一般に高い電極容量を備えた正極を有することが望ましい。形成された電極内に固体混合物を稠密に充填することで、高い重量基準及び容積基準密度が得られる。固体充填率が高いほど、形成された固体混合物の多孔度が小さくなり、内部に含有できる電解質は少なくなる。しかしながら、放電が高率になるほど、放電容量に対する分極の影響が大きくなり、そのため、一般に、より高い多孔度が高出力放電時の良好な容量のために望ましいことが明らかになった。電極の多孔度が小さい場合、電極内部の電解質の容積も小さい。このことは電極の高い濃度分極をもたらす可能性がある。電解質溶液は、放電中にイオンが移動する媒体を提供する。水が不十分であると、イオン移動度が低く又は遅くなり、高濃度の電解質溶質及び反応生成物を生じる可能性がある。本発明によるセルでは、正極放電反応で水が消費されるので、この状況は更に悪化する。セル内に十分な水があっても、電極多孔度が低すぎる場合には、高率放電時に水が必要とされる反応部位に十分に水が迅速に移動できない可能性がある。多孔度が高い場合には、オーム抵抗及び抵抗分極も高い可能性がある。良好な高出力放電容量を提供するためには、正極の多孔度は、好ましくは20から28、より好ましくは20から25容積パーセントであり、負極の多孔度は、好ましくは70から78パーセント、より好ましくは70から76容積パーセントである。
【0043】
電解質内の溶質濃度を制限することにより、電解質容積が小さい場合に正極での濃度分極が低く維持され、低出力及び高出力放電の両方で良好な容量を提供するのに役立つことが分かった。電解質溶質がKOHを含む場合、好ましいKOH濃度は少なくとも26重量パーセントであり、40重量パーセント未満である。濃度が26パーセントより低いと、アノードの濃度分極がより大きくなるのでセル放電容量が低下し、濃度が40パーセントを越えると正極の分極がより多くなり、高出力放電時のセル電圧の減少が速くなる。より好ましくは、KOH濃度は28から38重量パーセントであり、最も好ましくは32から36重量パーセントである。KOH濃度が過小又は過大であると放電効率が低下する。
【0044】
上述のように、形成された固体混合物の多孔度が低いと、電極内の活物質の割合が高い。好ましくは、混合物内の活物質の合計量は、固体材料の総重量の約86から約97パーセントであろう。また、活物質のパーセンテージは、最小量の不活性物質を使用することによって高く維持することができる。好ましくは導電性材料の量は、約3から約10重量パーセントであり、バインダの量は、約1重量パーセント以下となる。より好ましくは、バインダの量は、0.65パーセント以下であり、更に好ましくは0.45パーセント以下である。活物質の導電性材料に対する重量比は、好ましくは約10/1から約30/1である。不活性材料の量が過大であると、電極の比容量は減少することになる。バインダの量が過大であるか、又は導電性材料の量が過小である場合には、混合物の電気抵抗が過大になる可能性があり、高出力放電容量が所要量よりも小さくなる可能性がある。含まれるバインダが不十分である場合、形成された電極の強度が所要強度を下回る可能性がある。導電性材料及びバインダの最適量は、選択された特定の材料の特性、使用される製造方法、並びに形成された正極の形状及び寸法にある程度左右されることになる。或る実施形態においては、黒鉛の量は約4から8重量パーセントであり、他の実施形態においては、約5.5から6重量パーセントである。
【0045】
良好な高出力セル放電性能を提供するため、形成された正極本体は比較的低い電気抵抗を有する。このことは、正極での容積に対する集電体接触表面積の比率が低い(すなわち、正極が比較的厚い)セルにおいてはより重要である。螺旋状に巻かれた電極構成でなくボビン型(例えば、負極が正極本体内の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置されているもの)のセルでは、正極の電気抵抗は、室温で約10オーム−cm、より好ましくは約5オーム−cm未満、更により好ましくは約2.5オーム−cm未満となる。最も好ましくは、正極は約0.6から1.6オーム−cmである。混合物に導電性粒子を付加することに加え、活物質への粒子に導電性コーティングの付加、NiOOHへの他の陽イオンのドーピング、及びより導電性のあるバインダの使用などといった他の方法によって電気抵抗を低下させることができる。
【0046】
正極電気抵抗は、R.Barnard他、Journal of Applied Electrochemistry、17、165−183(1987年)で記述されたインピーダンス分光法を用いて、以下の方法に従って求めることができる。
(1)セル容器の側壁にドリルで穴を開ける
(2)その穴を通じて電極の外側表面(例えば、セル容器に接触する表面)にピペット型亜鉛参照電極を挿入し挿入深度を計測する
(3)ポテンショスタット(例えば、SOLARTRON(登録商標)モデル1286ポテンショスタット/ガルバノスタット)が結合された周波数応答アナライザ(例えば、SOLARTRON(登録商標)FRAモデル1250)を参照電極とセルの正端子との両方に接続する
(4)1から65,000Hzの周波数範囲にわたって小振幅の交流電流を(例えば10mV、システムの高い信号対ノイズ比で線形応答を維持する)印加する
(5)ステップ(4)によるデータのナイキスト線図(インピーダンスの虚部対実部)によって、高周波数(1000Hzを超える)での実数軸とプロットとの交点から電気抵抗値を求める
(6)参照電極を正極の内側表面(例えば、セパレータとの接触面)に挿入し、挿入深度を計測する
(7)ステップ(3)からステップ(5)まで繰り返す
(8)ステップ(5)による抵抗値間の差分をステップ(2)とステップ(6)の挿入深度の差分で除算する
【0047】
正極混合物は、組成が均一とすることができ、或いはカソードの異なる部分で異なる活物質組成、導電性材料濃度、及び様々なバインダレベルを有するものなど、不均一な組成とすることができる。セルは、単一正極構造、複合構造(例えば、異なる組成を有する隣接する同軸円筒状構造)或いは多重構造(例えば、2つの同軸形成正極を有する)を含むことができる。
【0048】
あらゆる適切なMnO2が活物質成分として用いることができる。好ましくは、MnO2は、高い理論比容量を有し、高出力放電時に比較的高効率で放電する(すなわち理論比容量に対する実放電容量が高い)もの、例えばEMDであろう。好ましくは、EMDは、引用により本明細書に組み込まれる2003年7月8日付与された米国特許第6,589,693号に開示されるように、200ppmを超えないほどのカリウム不純物を含有し、室温及びpH6.0で標準水素電極に対し少なくとも0.860ボルトの電位を有することになる。適切なアルカリグレードEMDの実施例は、米国オクラホマ州オクラホマシティ所在のKerrMcGee Chemical Corp.が提供するEMD、並びに米国メリーランド州バルチモア所在のErachem Comilog,Inc.が提供するK60グレードEMDである。
【0049】
EMDはまた、セル放電性能を向上させるため様々な方法(例えばTi、Zr又は他のイオンをドープすること、或いは黒鉛又は他の材料でEMD粒子をコーティングすることによる)で処理することもできる。活物質のMnO2成分は、各々が異なる性質を有し、異なる様式でセル性能に影響を及ぼす、1つよりも多いタイプのMnO2を含むことができる。
【0050】
あらゆる適切なNiOOHを活物質成分として使用でき、異なる組成或いは特性を有するNiOOHの組み合わせも使用することができる。NiOOHは、アルカリセルにおいて良好な放電容量を提供し、セルの良好な安定性(例えば、特に高温での自己放電に強い)を有するものである。NiOOHの好ましい特性は、ベータ型又はガンマ型(より好ましくはベータ型)の結晶構造、13−40(とりわけ18−25)μmの平均粒径、約12−40(とりわけ15−22)m2/gの比表面積(BET法)、約2.3から2.5g/cm3のタップ密度、及び約2−4重量パーセントの、とりわけCoOOHであるコバルト含有材料でコーティングされた粒子が挙げられる。NiOOHは、セル性能を向上させるために様々な方法で処理することができる。例えば、ニッケルの一部が1つ又はそれ以上の陽イオンで置き換えることができ、NiOOH粒子の表面がCoOOHのような超高導電性層でコーティングされる。3重量パーセントのZnOが加えられた40重量パーセントのKOH溶液内で亜鉛に対して測定されたときに、約1.76未満、或いは約1.72未満のミッドライフ電圧を有するもののような限定的な開路電圧を有するNiOOHを使用することも望ましいとすることができる。アルカリセルに使用することができるNiOOHの実施例は、Tanaka Chemical Co.(日本国福井)、Kansai CatalystCo.,Ltd(日本国大阪)、Umicore Canada Inc.(アルバータ州レダック)から入手可能である。
【0051】
あらゆる適切な導電性材料又は導電性材料の組み合わせが正極混合物内で使用することができる。実施例としては、限定ではないが、黒鉛、黒鉛化カーボン及び金属が挙げられる。導電性材料の粒子は、球状及び非球状粉末、フレーク、中空管体、ウィスカ、及び同様のものといったあらゆる適切な形状とすることができる。導電性材料は、セル内部で安定となる。好ましくは、導電性材料は、最小限の添加容積で正極混合物に望ましい低レベルの抵抗率をもたらす材料であろう。しかしながら、導電性材料の選択において、望ましい固体充填レベル、正極形成工程、及び望ましい形成電極強度などの他の要因も考慮されることになる。黒鉛は、MnO2/NiOOH活物質を有するアルカリセルで使用するのに適切なタイプの導電性材料である。黒鉛は、合成黒鉛或いは天然黒鉛とすることができる。黒鉛は、引用により本明細書に組み込まれる1998年12月17日出願の同時係属の米国特許出願第09/213,544号(1999年7月15日付の国際公開特許WO99/34,673に対応)に開示されるように、好ましくは2.2から3.5ml/gのケロシン吸収値で膨脹することができ、又は非膨張とすることができ、或いは、膨張黒鉛と非膨張黒鉛との混合物とすることができる。適切な非膨張黒鉛の実施例は、米国オハイオ州ウェストレーク所在のTIMCAL AmericaによるKS−6グレード・黒鉛、及びスイス国バーゼル所在のLonza,Ltd.によるMX25グレード合成黒鉛である。適切な膨張黒鉛の実施例は、米国イリノイ州シカゴ所在のSuperior Graphite Co.によるGA−17グレード膨張黒鉛である。
【0052】
導電性材料として黒鉛が使用される場合、膨張黒鉛の使用により必要とされる黒鉛の量を低減することができるが、しかしながら、膨張黒鉛は高価であるので、好ましくは膨張黒鉛と非膨張黒鉛とのブレンドを使用して、コストを最小に抑えながら所要の最小の正極混合物抵抗率を達成することができる。例えば、活物質と黒鉛の重量比が15/1以下である場合、どのような膨張黒鉛も用いる必要がない場合があり、活物質対黒鉛の比率が30/1以上であれば、所要の正極電気抵抗を達成するためには100パーセントの膨張黒鉛を用いることが必要となる可能性がある。
【0053】
バインダが望ましい場合、あらゆる適切なバインダを使用することができる。実施例としては、米国デラウェア州ウィルミントン所在のE.I.du Pont de Nermous & Co.,Polymer Products Div.によるグレードTFE 30Bディスパージョンに含まれるようなポリテトラフルオロエチレン;米国ニュージャージー州ウォーレン所在のClariant Corp.によるCOATHYLENE(登録商標)HA1681のようなポリエチレン;米国テキサス州ヒューストン所在のKraton Polymers BussinessによるKRATON(登録商標)G1702のようなスチレン、エチレン及びプロピレンのダイブロックコポリマー;ポリフッ化ビニリデン;ポリアクリルアミド;及びポートランドセメントが挙げられる。上述のように、より高い割合の活物質及び/又はより多くの導電性材料を可能とするためには、最小量のバインダを使用することが好ましいとすることができる。しかしながら、電気抵抗を低く(例えば、バインダが導電性ポリマーである場合)又はイオン伝導性を向上させるなど、バインダがセル内で別の目的で役立つ場合には、形成正極に対し望ましい強度を与えるのに必要な最小量よりも多い量を用いることが望ましいとすることができる。
【0054】
少量の他の材料を正極混合物に付加することができる。ステアリン酸のような潤滑剤は、正極形成工程を改善するのに付加することができる材料の一例である。性能向上用添加剤も含めることができ、実施例としては、ルチル及びアナターゼTiO2のような酸化チタン、還元及びニオブ・ドープ二酸化チタンのようなn型二酸化チタン、並びにチタン酸バリウムのようなチタン酸塩が挙げられる。NiOOHよりも高い酸化電位を有する固体材料(例えば、BaFeO4及びAgO)もまた、正極混合物内の添加剤として含むことができる。
【0055】
正極混合物は、あらゆる適切なプロセスを用いて望ましい形状に形成することができる。円筒形アルカリZn/MnO2ボビン型セルを形成するために使用されてきた2つのプロセス:すなわちインパクト成型及びリング成型は、本発明による正極を形成するように適合させることができる。
【0056】
形成された正極混合物内の固体材料の充填率は、形成プロセスに応じて或る程度決定付けることができる。インパクト成型プロセスを用いると、容積基準で約74パーセントを超える固体充填率(又は26パーセント未満の多孔度)を達成することは困難である。好ましくは、最小の固体充填率は69パーセント(最大31パーセントの多孔度に相当)であり、より好ましくは固体充填率は少なくとも71パーセント(最大29パーセントの多孔度)であり、最も好ましくは固体充填率は少なくとも約73パーセント(最大27パーセントの多孔度)である。リング成型プロセスを用いれば、最大83パーセント或いはそれ以上の固体充填率(17パーセントの多孔度に相当)を達成することができる。好ましくは、固体充填率は少なくとも70パーセント(最大30パーセントの多孔度)であり、より好ましくは固体充填率は少なくとも77パーセント(最大23パーセントの多孔度)であり、最も好ましくは固体充填率は少なくとも約79パーセント(最大21パーセントの多孔度)である。
【0057】
インパクト成型においては、望ましい量の正極混合物が缶体の下方部分に挿入され、次いで、形成正極内の中央キャビティの所望の内径にほぼ等しい外径を有するラムがセルの中心に挿入され、カソードを缶側壁の内側表面に対して外方に押し付け、所望の高さにまで上方に押し上げる。一貫した高い固体充填率のためには、インパクト成型プロセスの少なくとも後半部分の間に混合物の上端を拘束することが好ましい。
【0058】
リング成型セルにおいては、2つ又はそれ以上(通常3から5)の中空円筒形リングが缶体内にスタックで(順に重ねて)形成され挿入される。リングの外径は缶の内径よりも僅かに大きく、正極混合物と缶体との間で良好な物理的及び電気的接触を備えた締まり嵌めを形成することができる。或いは、形成リングは、損傷無く缶体内への挿入を容易にするために缶体よりも僅かに小さくすることができ、続いて、リングの上部及び/又は内径に対して軸方向及び/又は半径方向の力を加えて、混合物が互いに対し、及び缶体の内側に対して堅固に押し付けられる。
【0059】
本発明の1つの実施形態において、セルは、本質的にMnO2(好ましくはEMD)及びNiOOHからなる活物質を有するリング成型カソードを有する。好ましいカソード容量密度(成形カソード単位容積当たりのカソード容量)は、数式ax+bによって定められる範囲内にあり、式中、xはカソード活物質内のMnO2重量パーセントであり、aは1.8mAh/cm3、bは553から698mAh/cm3である。例えば、活物質が50重量パーセントMnO2であると、カソードの好ましい容量密度は643から788mAh/cm3となる。
【0060】
プロセスに差異があるので、導電性材料に対する活物質の好ましい比率は、インパクト成型の場合、重量で約10/1から20/1まで、リング成型の場合、約15/1から30/1までの範囲とすることができる。
【0061】
セルが完全に組み立てられると、正極はまた、電解質を含むことになる。この電解質の一部が、正極を形成する前に正極混合物の固体材料と混合することができる。正極が形成された後、電解質の一部を正極に直接付加することができる。電解質の残りは、負極及びセパレータから正極内に移動する。最初にセル放電中では、正極内部の電解質の量、分布及び組成は変動する可能性があるが、電池製造後及び放置(非放電)期間の間、正極内部の電解質は平衡状態に移る傾向があり、この状態では、電解質組成はセル全体を通じて均一である。以下では別途示されない限り電解質組成は均一とされる。
【0062】
電解質の大部分は、負極混合物の一部としてセルに付加することができ、この混合物はまた、亜鉛、亜鉛合金、マグネシウム、及びマグネシウム合金などの活物質を含む。活物質が粒子状亜鉛を含む場合、活物質及び電解質は流動性混合物の形で混合することができ、該混合物はポンプ注入又は他の方法でセル内に供給することができる。電解質はまた、アノード混合物の供給後に電解質をゲル化し粒子状活物質を中に懸濁させるゲル化剤を含むことができる。
【0063】
粒子状亜鉛含有活物質を含むゲル化負極を有する、本発明によるアルカリセルでは、完成したセル内の負極混合物の組成は、約60から73重量パーセントの亜鉛粒子、約26.5から38.5重量パーセントの電解質、及び約0.3から0.7重量パーセントのゲル化剤とすることができる。以下でより詳細に説明されるように、少量の他の材料を負極内に含めることができる。好ましくは、負極内の亜鉛含量は、少なくとも62重量パーセントである。好ましくは、負極内の亜鉛含量は、73重量パーセントを超えないほどであり、より好ましくは71重量パーセントを超えないほどである。亜鉛のパーセンテージが過大な場合、電極内部の電解質拡散がセルの高出力放電性能を制限する可能性がある。高レベルの亜鉛もまた、特に過放電の後に過剰な水素ガス発生及びセル漏出を生じる可能性がある。このことは、NiOOHの容量密度がEMDの容積密度よりも遙かに小さいので、MnO2及びNiOOHを含む正極活物質を備えたセルの場合には特に当てはまる。負極内の亜鉛のパーセンテージが過小である場合、負極内に亜鉛粒子の導電性が不十分なマトリックスが存在する可能性があり、亜鉛粒子の一部を絶縁し、セル放電中に亜鉛の不完全な利用を引き起こす。
【0064】
製造時のセル内負極の固体マトリックスの電気抵抗は、約10ミリオーム−cmより小さく、より好ましくは約4ミリオーム−cmよりも小さい。最も好ましくは、負極抵抗率は、3.5から4.0、特に3.5から3.8ミリオーム−cmである。
【0065】
負極の抵抗率は、引用により本明細書に組み込まれる2003年11月14日に出願された同時係属の米国特許出願第10/713,833号に開示された方法:すなわち、
(1)一定の直径及び既知の長さ(L)を有する非導電性管体にアノード混合物を充填する;
(2)管体の両端に集電体として銅板を置く;
(3)ポテンショスタット(例えば、SOLARTRON(登録商標)モデル1286ポテンショスタット/ガルバノスタット)が結合された周波数応答アナライザ(例えば、SOLARTRON(登録商標)FRAモデル1250)をその銅の集電体に接続する;
(4)1から65,000Hzの周波数範囲にわたって小振幅の交流電流(例えば10mV、システムの高い信号対ノイズ比で線形応答を維持する)印加する;
(5)ステップ(4)によるデータのナイキスト線図(インピーダンスの虚部対実部)によって高周波数(1000Hzを超える)での実数軸とプロットとの交点から電気抵抗値を求める;
(6)数式:抵抗率=抵抗・(S/L)、式中、S=π(D/2)2を用いて抵抗率を計算する;
ことによって測定される。
【0066】
あらゆる適切な亜鉛材料を使用することができる。好ましくは亜鉛組成物は、とりわけ水銀無添加でセル内で用いる場合の高純度(例えば、少なくとも99.5重量パーセント亜鉛)で低ガス発生の組成物である。亜鉛粒子は、適度なコストで負極内部での良好な放電性能及び良好な電気マトリクスを提供するように選択された、様々な形状及びサイズとすることができる。使用することができる亜鉛形状の実施例としては、球状及び非球状の粉末並びにフレークが含まれる。
【0067】
引用により本明細書に組み込まれる1995年11月7日に付与された米国特許第5,464,709号で開示されるように、亜鉛材料は、低ゲル膨張性亜鉛であるのが好ましい。好ましい亜鉛材料の実施例は、ベルギー王国ブリュッセル所在のN.V.UMICORE,S.A.,によるグレードBIA110及びBIA115亜鉛合金粉末である。これらの材料は、ビスマス、インジウム及びアルミニウムを組み込んだ亜鉛合金を含み、好ましくは75から125ppmのビスマス、175から225ppmのインジウム、及び75から125ppmのアルミニウムを含有する。BIA亜鉛合金の組成及びこれらの材料を製造するのに使用される遠心噴霧法は、2000年8月17日付の国際特許公開WO00/48260に記載されている。比較的低い(例えば、28容積パーセント以下)亜鉛濃度で負極内部の亜鉛粒子間を良好に接触させるために、BIA115亜鉛は、引用により本明細書に組み込まれる2003年11月14日出願の同時係属米国特許出願第10/713,833に開示された特性を有する。これらの特性は、130μm未満(より好ましくは100から130μmで最も好ましくは110から120μm)の中央値(D50)を有するように特徴付けられる粒径と、少なくとも400cm2/g(より好ましくは少なくとも450cm2/g)のBET比表面積と、2.80g/cm3を超え3.65g/cm3未満(より好ましくは2.90g/cm3を超え3.55g/cm3未満、最も好ましくは3.00g/cm3を超え3.45g/cm3未満)のタップ密度と、少なくとも14パーセント(好ましくは少なくとも15パーセント)のKOH吸収値とを含む。
【0068】
また、亜鉛フレーク及び凝集亜鉛微粉末から構成される亜鉛材料は、単独或いは他の形態を有する亜鉛材料と組み合わせて使用することができる。亜鉛フレークは、米国オハイオ州コロンバス所在のTransmet Corporation及びスイス国ベトロツ所在のEckart−PM−Laboratoryから入手可能である。凝集亜鉛粒子の実施例は、引用により本明細書に組み込まれる2001年10月10日に付与された米国特許第6,300,011号で開示されており、同様に引用により本明細書に組み込まれる米国公開特許2004/0013940A1では、凝集及び非凝集亜鉛粒子の混合物を含む負極を有するセルが開示されている。
【0069】
ガス発生防止剤、有機及び無機防食剤、並びに界面活性剤を負極に付加することができる。ガス発生防止剤及び防食剤の実施例は、インジウム塩(例えば、In(OH)3)、ペルフルオロアルキルアンモニウム塩、及びアルカリ金属硫化物を含む。界面活性剤の実施例は、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンアルキルエーテル及びペルフルロアルキル化合物を含む。また、酸化亜鉛を付加することでガス発生を防止することができる。
【0070】
負極混合物は、引用により本明細書に組み込まれる2003年12月12日に出願された同時係属の米国特許出願第73451号に開示されるように、セル製造での混合物の処理を改善するための流動改質剤も含むことができる。流動改質剤の実施例としては、米国イリノイ州ノースフィールド所在のStepan ChemicalsによるSTEPFAC(登録商標)8173及びSTEPFAC(登録商標)8170のようなノニルフェニル・エトキシレート・ホスフェート、米国ミシガン州ミッドランド所在のDow ChemicalによるQS−44(登録商標)、並びにドイツ国所在のBYK ChemieによるDISPERBYK(登録商標)190及びDISPERBYK(登録商標)102のような界面活性剤を含む。
【0071】
適切なゲル化剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリアウリルアミド及びポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。好ましいゲル化剤は、米国オハイオ州クリーブランド所在のNoveon,Inc.によるCARBOPOL(登録商標)940のような架橋ポリアクリル酸である。
【0072】
EMD及びNiOOHの両方を含む正極活物質を有する、好ましくは本発明によるセルは、負極容量と正極容量の比率(以下、アノード対カソード比率又はA/C比率と称する)が、過放電後のセルの電解質漏出を防止するために約1.0から1.4、より好ましくは1.35未満である。
【0073】
所与のカソード容量を有するセルでは、より高いA/C比率が、放電容量を最大にするのに有利とすることができる。一般に、EMD対NiOOH比率が高いほど、過放電時の電解質が漏出することなく、より高いA/Cが可能である。これは、Ni+3をその名目上の反応生成物(Ni(OH)2)の平均価数を超えて還元できる以上に、Mn+4を第1の電子還元(MnOOHに対する)を超えて更に還元することができるので、その結果、カソード内により多くのパーセントのEMDを有するセルでは過放電時のガス発生の懸念が少ないことに起因する。加えて、インパクト成型法を用いて作製されたセルでは、カソード放電が低率でより効率的とすることができる。従って、NiOOH対EMDの重量比が40/60から80/20である場合、リング成型セルでは約1.15から1.25のA/C比率が好ましく、インパクト成型セルでは約1.20から1.35のA/C比率が好ましい。
【0074】
電極容量は、これらそれぞれの活物質の測定容量に基づく。アルカリ電池グレード亜鉛の測定容量はあまり変動せず、通常は本明細書で亜鉛の測定容量として用いられる理論容量820mAh/gに極めて近い。正極活物質の測定容量は、特定のカットオフ電圧までの断続的な低率放電を用いて求められる。82.59重量パーセントの活物質、13.76重量パーセントの黒鉛、0.65重量パーセントのポリエチレンバインダ、及び3.00重量パーセントのKOH水溶液(40重量パーセント)からなる正極が、直径約19mmの薄い(約0.13から0.15mm)電極に圧縮される。電極は、亜鉛参照電極に対してZnOでほぼ飽和された40重量パーセントKOH溶液(40重量パーセントKOH及び3重量パーセントZnOの電解質中の亜鉛)中の電極材料の1グラム当たり10mAを30分通電後2時間開回路とする反復放電サイクルでNiOOHに1.0V及びEMDに0.9Vまで放電される。
【0075】
本発明で使用されるセパレータは、非導電性であり、電解質に対して透過性がある。セパレータは単層とすることができ、或いは、別個の又は共に積層された複数の層を含むことができる。2つの層が使用される場合、両方は同じ材料で作ることができ、或いは、同じタイプの材料の異なるグレード又は異なるタイプの材料のような異なる材料で作ることができる。好適なタイプのセパレータ材料は、セルロース、ポリビニルアルコール、レーヨン及びセロハンなどの材料で作られた織布型又は不織布型とすることができる。実施例としては、ドイツ国ワインハイム所在のCarl Freudenberg KGから入手可能な不織フィブリル化セルロース繊維(引用により本明細書に組み込まれる2003年5月22日付の米国公開特許第2003/0096171A1に開示されたような)で作られたセパレータ;日本国高知県所在のNippon Kodoshi Corp.,によるVLZ105グレードのセパレータ、PDMによるPA25グレードのポリビニルアルコール及びレーヨン、並びにポリマー溶液が含浸された繊維状セルロース紙(引用により本明細書に組み込まれる2003年12月30日に付与された米国特許第6,670,077B1号に開示されたような)が挙げられる。或いは、セパレータは、ポリ(アクリル酸−co−4−スチレンスルホン酸ナトリウム)から作り、或いはこの層を含むことができ、これは基材又は正極表面に直接塗布することができる。
【0076】
負極集電体は、本発明のセルで用いるのに適切なあらゆる材料及び設計のものとすることができる。設計及び材料は、セルの通常の保管又は使用中並びに異常条件下で、特にセルが水銀付加をほとんど又は全く含まない場合に、ガスの発生を最小限にするように選択することができる。例えば、負極活物質として亜鉛及び水性KOH電解質を有するセルの負極集電体は、インジウム又は錫がコーティングされた黄銅で作ることができる。集電体の設計は、或る程度全体のセル設計に左右されることになる。例えば、ボビン型電極構成を有する円筒形セルにおいては、集電体はセルの負側接点端子に電気的に接触し負極内に延びるネイル又はピンの形状とすることができる。
【0077】
コンテナはスチールで作ることができ、内側表面に接触して形成された正極用の集電体として機能することができる。スチールは、内側表面をニッケル及び/又はコバルトでメッキすることができ、カーボン(例えば黒鉛)を含有するコーティングを電極との電気接触を向上させるために缶表面に施すことができる。適切な黒鉛コーティングには、LB1000及びLB1090(米国オハイオ州ウェストレーク所在のTIMCAL America,Ltd.)、ECCOCOAT(登録商標)257(W.R.Grace & Co.)、並びにELECTRODAG(登録商標)109及び112(米国ミシガン州ポートヒューロン所在のAcheson Colloids Company)が挙げられる。
【0078】
コンテナの開放端部は、集電体及びシール組立体で閉鎖することができる。この組立体は、活物質及び電解質用に大きな容積を割り当てるためにセル内に占める容積が小さいのが好ましい。集電体及びシール組立体は、図1でのセル10のものと同様の設計を有することができる。他の適切な設計を使用することができる。実施例は、米国特許第6,312,850号(2001年11月6日公布)、第6,270,918号(2001年8月7日公布)、第6,265,101号(2001年7月24日公布)、第6,087,041号(2000年7月11日公布)、及び第6,060,192号(2000年5月9日公布);米国公開特許2003/0157398(2003年8月21日公開);並びに同時係属米国特許出願第10/439,096(2003年5月15日出願)及び第10/365,197(2003年2月11日出願)に開示され、これらの全ては引用により本明細書に組み込まれる。
【0079】
セルは、圧力が予め設定された値を超えたときにセル内部から圧力を解放するための圧力解放ベント機構を有することができる。ベント機構は、図1に示されるように集電体及びシール組立体内のシール部材に組み込むことができ、或いはセルカバー内又はコンテナの側壁又は底壁内などの他の場所に組み込むこともできる。
【0080】
本発明に従って作製されるセルは、単一セル又は複数セル電池に使用することができる。セルはほぼ円筒形とすることができ、或いは角型などの他の形状を有することができる。
【0081】
本発明の好ましい実施形態において、セルは気密シールされる。換言すれば、内部セル構成要素は、保管中又は使用中の何れにおいても、金属/空気セル、空気アシストセル及び燃料電池などのように空気に開放されることが意図されているものではない。別の好ましい実施形態においては、セルは一次セルであり、再充電は意図されていない。
【0082】
以下の実施例において、本発明の実施形態を詳細に説明し、従来型セルと比較する。
【実施例1】
【0083】
比較対象のLR6型アルカリZn/MnO2セル(以下ロット1及びロット2で識別される)を活物質としてMnO2のみを用いて作製した。比較R6サイズのアルカリZn/NiOOHセル(以下ロット3で識別される)を活物質としてNiOOHのみを用いて作製した。両ロットのセルは、図1でのセル10と同様であった。完成セルの特性値を表1にまとめる。ロット3で使用された材料は、EMDの代わりにNiOOHを使用したこと以外は、ロット1及びロット2と同じであった。
【0084】
ロット1及びロット2に使用したEMDは、Kerr−McGeeによるアルカリ電池グレードEMDであった。ロット2に使用したNiOOHは、Umicoreから入手した。黒鉛は、2.2から3.5ml/gのケロシン吸収値を有する膨張黒鉛であった。亜鉛は、115μmのメジアン粒径を有するビスマス−インジウム−アルミニウム合金であった。
【0085】
表1に示されたカソード、アノード及び電解質の組成は、別途示されない限り最終セルについてのものである。表示されたカソード混合物組成は、内部に含有される電解質は含まず、表示されたアノード混合物組成は、セル付加前のものである。更に追加液体がセルに付加されるが、その組成も示されている。最終電解質の量及びKOH濃度は、組み立て後のセルについてのものであり、カソード、アノード及び追加液体の一部としてセルに付加された水及びKOHを含む。
【0086】
ロット1及びロット3のカソードは、リング成型法を用いて形成され、インパクト成型法はロット2に使用した。カソード混合物の乾燥成分は、成型前に40重量パーセントのKOH溶液と混合した(リング成型セルでは1.5から3重量パーセント、インパクト成型セルでは5から7重量パーセント)。
【0087】
アノード混合物を表1に示された組成で調製し、セルに加えた。リング成型カソードを有するセルでは、電解質溶液は、33重量パーセントのKOH、1重量パーセントのZnO、及び0.3重量パーセントのケイ酸ナトリウムを含有し、インパクト成型カソードを有するセルでは、電解質溶液は、32重量パーセントのKOH、1重量パーセントのZnO、及び0.3重量パーセントのケイ酸ナトリウムを含有した。
【0088】
追加の水及びKOHは、組み立て工程の種々の段階でセルに付加した。
【0089】
電極及びセルの特性値を表1に要約する。この表において、「ドライ」とは、カソード混合物(「カソード混合物組成」の下に示されている)中の固体成分のみを含み、「ウェット」は、固体成分並びにカソード混合工程中(カソードが形成される前)にカソード混合物に付加された水及び水溶性材料を含み、「最終」特性値は平衡にある完成セルについてのものである。
(表1)

【実施例2】
【0090】
R6サイズのアルカリセル(以下ロット4及びロット5で識別される)を活物質としてMnO2とNiOOHとのブレンドを用いて作製した。セルは、実施例1と同じ材料タイプ及び同じ工程で作製し、表2に示される以外はロット1、ロット2及びロット3と同様であった。ロット4の正極はリング成型し、ロット5の正極はインパクト成型した。
(表2)

【実施例3】
【0091】
ロット1からロット5の各々からのセルは、室温での低率放電試験及び高出力放電試験によって放電された。低率及び高出力放電試験を以下に説明する。各ロットからのセルはまた、1500mW DSC試験で試験し、上述のようにセル分極、濃度分極、活性化分極、抵抗分極及びオーム抵抗を測定した。結果を表3にまとめる。
【0092】
低率放電試験は、30分の50mA後2時間の開回路のサイクルからなる断続的定電流試験であり、セルが0.4ボルトに達するまで連続的に反復する。
【0093】
高出力試験は、デジタルスチルカメラ(DSC)試験である。セルは、2秒間1500mW後28秒間650mWの10サイクルにわたって放電され、次いでセルは55分間休止される。このサイクル/休止方式は、セル電圧が1.05Vに達するまで連続的に反復される。
(表3)

【0094】
リング成型カソードを有するセルでは、ロット1とロット3との比較は、カソード内のEMDをNiOOHで置き換えると共に、高出力(DSC)試験での放電容量を約87パーセント増大させた結果、低率放電試験での放電容量において17パーセントの低下をもたらすことになる。EMDとNiOOHとの50/50ブレンドを活物質として使用した場合(ロット4)、低率放電容量の低下は、ロット1に比べて11パーセントに過ぎなかった。意外にも、高出力DSC試験での放電容量は、カソード活物質としてNiOOHのみを有するロット3よりも、50/50EMD/NiOOHブレンドでは更に良好(約18パーセント)であった。ロット4は、ロット3のものに匹敵する低いセル1500mW DSC分極を有し、これはロット1よりも遙かに低く、この低いセル分極が、セルがその増加した(ロット3に対して)カソード容量をより有効に利用して向上した高出力放電容量を提供できるようにすることで、ロット4の向上した高出力放電容量をもたらしていると考えられる。
【実施例4】
【0095】
亜鉛負極とEMD及び/又はNiOOHを含む正極とを有する市販のR6サイズのアルカリセルを入手し、各々のサンプルを分析、放電、及び分極試験した。結果(概略)を表4にまとめた。
(表4)

【0096】
カソード活物質としてNiOOHのみを用いるロット9は、低率放電及び高出力1500mW DSC試験の両方で低い放電容量を有する。EMD/NiOOHブレンドを有するロット6からロット8は、低率放電試験及び高出力放電試験の両方でロット9よりも大きい放電容量を有する。しかしながら、ロット6からロット8は、ロット4及びロット5で表される本発明によるセルよりも劣っている。このことは、高出力放電試験において特に明らかであり、ロット6からロット8のうちの最良のものでもロット4よりも45パーセント低い放電容量を有する。ロット6からロット8はまた、ロット4よりもかなり高い(28から32パーセント)セル1500mW DSC分極値を有し、1500mW DSC抵抗分極値での差は更に大きい。
【実施例5】
【0097】
R03サイズのアルカリセルが、ロット1−ロット5で用いたのと同じタイプの材料及び工程を使用して、活物質としてEMDのみ(ロット10)、NiOOHのみ(ロット11)及びEMDとNiOOHを加えたもの(ロット12)で作製された。ロット10、ロット11及びロット12の特性値を表5に示す。
(表5)

【実施例6】
【0098】
ロット10からロット12の各々からのセルを室温で高出力放電試験により放電させた。高出力放電試験は、上述の1200mW DSC試験であった。各ロットからのセルはまた、これらの1200mW DSC分極、濃度分極、活性化分極、抵抗分極及びオーム抵抗を測定するために試験した。結果を表6にまとめる。低率放電容量は試験では測定されなかったが、カソード容量が、予想低率放電容量の近似値を提供する。
(表6)

【0099】
実施例3の場合のように、活物質としてのEMDをNiOOHに置き換えることで、高出力(DSC試験)放電容量をかなり増大させるが、低率放電試験での放電容量の低下を生じる。カソード活物質としてEMD/NiOOHの50/50ブレンドを使用することによって、100パーセントEMDの活物質を有するものと比べて低率容量での低下は遙かに小さく、高出力放電容量は100パーセントNiOOHの活物質の場合よりも更に大きかった。ロット12での全セル分極、抵抗分極及びオーム抵抗は、ロット11の場合よりも低く、ロット11に比べて増加したカソード容量をより有効に利用することが可能となり、高出力放電容量が増大される。
【0100】
本開示の概念の精神を逸脱することなく、本発明に対して様々な修正及び改善を行うことができる点は、本発明の実施者並びに当業者であれば理解されるであろう。得られる保護範囲は、請求項及び法的に認められる解釈の外延によって決定されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の電気化学電池セルの実施形態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0102】
10 セル
12 円筒形スチール缶体
14 閉鎖底端部
16 開放上端部
18 正端子カバー
20 プラスチックフィルムラベル
22 正極(カソード)
24 セパレータ
26 負極
28 負極集電体
30 環状シール
32 直立シール壁
42 圧縮ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質と、
を備える電気化学電池セルであって、
前記正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体混合物から構成される成形本体を含み、
前記負極が、亜鉛を含む混合物を含み、前記正極本体内の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置され、
前記正極本体が単一リングを含み且つ3.3から4.6cm3の容積を有する場合に、前記セルが、100から310mVの1500mW DSC分極値を有し、
前記正極本体が単一リングを含み且つ1.4から2.0cm3の容積を有する場合に、前記セルが、100から310mVの1200mW DSC分極値を有し、
前記正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み且つ3.3から4.6cm3の容積を有する場合に、前記セルが100から240mVの1500mW DSC分極値を有し、
前記正極本体が2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み且つ1.4から2.0cm3の容積を有する場合に、前記セルが100から240mVの1200mW DSC分極値を有する、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項2】
二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの前記重量比が、20/80から80/20であることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項3】
二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの前記重量比が、40/60から70/30であることを特徴とする請求項2に記載の電池セル。
【請求項4】
前記正極本体が、0.6から1.6オーム−cmの電気抵抗を有することを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項5】
前記正極固体混合物が、3から10重量パーセントの黒鉛を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の電池セル。
【請求項6】
前記正極固体混合物が、4から8重量パーセントの黒鉛を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の電池セル。
【請求項7】
前記正極固体混合物が、5.5から6重量パーセントの黒鉛を更に含むことを特徴とする請求項6に記載の電池セル。
【請求項8】
前記正極混合物が黒鉛を更に含み、前記二酸化マンガン及び前記オキシ水酸化ニッケルを組み合わせた重量と前記黒鉛の重量との比率が30/1以上である場合、前記黒鉛の全てが膨張黒鉛であることを特徴とする請求項4に記載の電池セル。
【請求項9】
前記正極混合物が、20から28容積パーセントの多孔度を有することを特徴とする請求項4に記載の電池セル。
【請求項10】
前記正極本体が、20から25容積パーセントの多孔度を有することを特徴とする請求項4に記載の電池セル。
【請求項11】
前記負極が、3.5から3.8ミリオーム−cmの電気抵抗を有することを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項12】
前記負極が、62から73重量パーセントの亜鉛を含むことを特徴とする請求項11に記載の電池セル。
【請求項13】
前記負極が、62から70重量パーセントの亜鉛を含むことを特徴とする請求項12に記載の電池セル。
【請求項14】
前記負極が、70から78容積パーセントの多孔度を有することを特徴とする請求項11に記載の電池セル。
【請求項15】
前記負極が、70から76容積パーセントの多孔度を有することを特徴とする請求項14に記載の電池セル。
【請求項16】
前記亜鉛が、ビスマス、インジウム及びアルミニウムから構成される亜鉛合金を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項17】
前記亜鉛が、100から130μmのメジアン粒径を有する粒子の形態であることを特徴とする請求項16に記載の電池セル。
【請求項18】
前記メジアン粒径が、110から120μmであることを特徴とする請求項17に記載の電池セル。
【請求項19】
前記亜鉛がフレークを含むことを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項20】
前記電解質が、水酸化カリウムの水溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項21】
前記電解質が、少なくとも26重量パーセントから40重量パーセント未満の水酸化カリウムを含むことを特徴とする請求項20に記載の電池セル。
【請求項22】
前記電解質が、28から38重量パーセントの水酸化カリウムを含むことを特徴とする請求項21に記載の電池セル。
【請求項23】
前記電解質が、32から36重量パーセントの水酸化カリウムを含むことを特徴とする請求項22に記載の電池セル。
【請求項24】
前記正極がある容量を有し、前記負極がある容量を有し、前記正極容量と前記負極容量の比率が1.0/1から1.4/1であることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項25】
前記正極がある容量を有し、前記負極がある容量を有し、前記正極容量と前記負極容量の比率が1.0/1から1.35/1であることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項26】
前記セルが一次セルであることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項27】
前記ハウジングが気密シールされていることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項28】
前記セルが円筒形セルであることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項29】
前記セルが角型セルであることを特徴とする請求項1に記載の電池セル。
【請求項30】
正極と、負極と、前記正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質と、
を備える電気化学電池セルであって、
前記正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、
前記負極が、亜鉛を含む混合物を含み、前記正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置され、
前記正極本体が、単一リングを含み且つ3.3から4.6cm3の容積を有し、
前記セルが、100から310mVの1500mW DSC分極値を有し、
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、2500から2800mAhの放電容量を有する、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項31】
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、2600から2800mAhの放電容量を有することを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項32】
前記セルが、10秒間の1500mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、700から1400の放電容量を有することを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項33】
二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの前記重量比が40/60から80/20であり、前記正極がある容量を有し、前記負極がある容量を有し、前記正極容量と前記負極容量の比率が1.3/1から1.35/1であることを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項34】
前記セルが、100から300mVの1500mW DSC分極値を有することを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項35】
前記セルが、75から130mΩの1500mW DSCオーム抵抗値を有することを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項36】
前記正極本体が、71から74容積パーセントの固体充填率を有することを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項37】
前記正極本体が、10/1から20/1の活物質と黒鉛の重量比を有することを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項38】
前記セルが、R6サイズのセルであることを特徴とする請求項30に記載の電池セル。
【請求項39】
正極と、負極と、前記正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質と、
を備える電気化学電池セルであって、
前記正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、
前記負極が、亜鉛を含む混合物を含み、前記正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置され、
前記正極本体が、単一リングを含み且つ1.4から2.0cm3の容積を有し、
前記セルが、100から310mVの1200mW DSC分極値を有し、
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、1050から1250mAhの放電容量を有する、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項40】
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、1100から1250mAhの放電容量を有することを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項41】
前記セルが、10秒間の1200mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、250から650の放電容量を有することを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項42】
二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの前記重量比が40/60から80/20であり、前記正極がある容量を有し、前記負極がある容量を有し、前記正極容量と前記負極容量の比率が1.3/1から1.35/1であることを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項43】
前記セルが、80から140mΩの1200mW DSC分極値を有することを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項44】
前記セルが、75から130mΩの1200mW DSCオーム抵抗を有することを特徴とする請求項43に記載の電池セル。
【請求項45】
前記正極本体が、71から74容積パーセントの固体充填率を有することを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項46】
前記正極本体が、10/1から20/1の活物質と黒鉛の重量比を有することを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項47】
前記セルが、R03サイズのセルであることを特徴とする請求項39に記載の電池セル。
【請求項48】
正極と、負極と、前記正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質と、
を備える電気化学電池セルであって、
前記正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、
前記負極が、亜鉛を含む混合物を含み、前記正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置され、
前記正極本体が、2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、3.3から4.6cm3の容積を有し、
前記セルが、100から240mVの1500mW DSC分極値を有し、
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、2600から2950mAhの放電容量を有する、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項49】
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、2700から2950mAhの放電容量を有することを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項50】
前記セルが、10秒間の1500mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、800から1500の放電容量を有することを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項51】
二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの前記重量比が40/60から80/20であり、前記正極がある容量を有し、前記負極がある容量を有し、前記正極容量と前記負極容量の比率が1.15/1から1.25/1であることを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項52】
前記セルが、100から225mVの1500mW DSC分極値を有することを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項53】
前記セルが、40から90mΩの1500mW DSCオーム抵抗を有することを特徴とする請求項52に記載の電池セル。
【請求項54】
前記正極本体が、77から83容積パーセントの固体充填率を有することを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項55】
前記正極本体が、15/1から30/1の活物質と黒鉛の重量比を有することを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項56】
前記セルが、R6サイズのセルであることを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項57】
前記成形カソード本体が、数式(ax+b)(aが1.8mA/cm3、bが553から698mAh/cm3)によって定められる容量密度を有することを特徴とする請求項48に記載の電池セル。
【請求項58】
正極と、負極と、前記正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質と、
を備える電気化学電池セルであって、
前記正極が、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルとを10/90から90/10の重量比で含む固体の混合物から構成される成形本体を含み、
前記負極が、亜鉛を含む混合物を含み、前記正極本体内部の1つ又はそれ以上のキャビティ内に配置され、
前記正極本体が、2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、1.4から2.0cm3の容積を有し、
前記セルが、100から240mVの1200mW DSC分極値を有し、
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、1100から1300mAhの放電容量を有する、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項59】
前記セルが、30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、1150から1300mAhの放電容量を有することを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項60】
前記セルが、10秒間の1200mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、300から700mAhの放電容量を有することを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項61】
二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの前記重量比が40/60から80/20であり、前記正極がある容量を有し、前記負極がある容量を有し、前記正極容量と前記負極容量の比率が1.15/1から1.25/1であることを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項62】
前記セルが、100から225mVの1200mW DSC分極値を有することを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項63】
前記セルが、55から110mΩの1200mW DSCオーム抵抗を有することを特徴とする請求項62に記載の電池セル。
【請求項64】
前記正極本体が、77から83容積パーセントの固体充填率を有することを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項65】
前記正極本体が、15/1から30/1の活物質と黒鉛の重量比を有することを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項66】
前記セルが、R03サイズのセルであることを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項67】
前記成形カソード本体が、数式(ax+b)(aが1.8mA/cm3、bが553から698mAh/cm3)によって定められる容量密度を有することを特徴とする請求項58に記載の電池セル。
【請求項68】
正極と、負極と、前記正極と負極との間のセパレータと、ハウジング内部に配置された電解質と、
を備える電気化学電池セルであって、
前記正極が、
中空円筒形本体を含み、
二酸化マンガンと、オキシ水酸化ニッケルと、黒鉛とを含む固体混合物から構成され、二酸化マンガンとオキシ水酸化ニッケルの重量比が40/60から70/30であり、二酸化マンガン及びオキシ水酸化ニッケルの組み合わせと黒鉛との重量比が15/1から30/1であり、
17から23容積パーセントの多孔度を有し、
0.6から1.6ohm−cmの電気抵抗を有しており、
前記負極が、
前記正極本体内部の円筒形キャビティ内に配置され、
62から70重量パーセントの亜鉛粒子を含む混合物を含み、前記亜鉛がビスマス、インジウム及びアルミニウムと合金化されており、前記亜鉛粒子が110から120μmのメジアン粒径を有し、
70から76容積パーセントの多孔度を有し、
3.5から3.8ミリohm−cmの抵抗率を有しており、
前記正極及び負極が電極容量を有し、前記負極容量と前記正極容量の比率が1.15/1から1.25/1であり、
前記電解質が、32から36重量パーセントの水酸化カリウムを含む水溶液である、
ことを特徴とする電池セル。
【請求項69】
前記セルがR6サイズのセルであり、
100から225mVの1500mW DSC分極値と、
30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、2600から2950mAhの放電容量と、
10秒間の1500mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、800から1500の放電容量と、
を有することを特徴とする請求項68に記載の電池セル。
【請求項70】
前記セルがR03サイズのセルであり、
100から225mVの1200mW DSC分極値と、
30分間の50mAの後に2時間の開回路からなる各サイクルを0.4ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、1100から1300mAhの放電容量と、
10秒間の1200mWに次いで28秒間の650mWの交互パルスの10セットの後に55分間の開回路からなる各サイクルを1.05ボルトに達するまで連続的に繰り返したときに、300から700mAhの放電容量と、
を有することを特徴とする請求項68に記載の電池セル。
【請求項71】
前記成形カソード本体が、2つ又はそれ以上のリングのスタックを含み、数式(ax+b)(aが1.8mA/cm3、bが553から698mAh/cm3)によって定められる容量密度を有することを特徴とする請求項68に記載の電池セル。

【図1】
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【公表番号】特表2008−511961(P2008−511961A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530010(P2007−530010)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/029802
【国際公開番号】WO2006/026232
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(397043422)エバレデイ バツテリ カンパニー インコーポレーテツド (123)
【Fターム(参考)】