説明

Mw/Mnが1.25以下であるポリマーの製造方法

【課題】反応温度が−28℃以上でも分子量分布が狭いポリマーを効率よく製造することができる、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法を提供すること。また、連続的な工程で製造でき、M/Mが1.25以下であるブロックポリマーの製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、モノマーを開始剤の存在下でリビング重合させることを特徴とする、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法に関し、特に、反応温度が−28℃以上でも分子量分布が狭いポリマーを効率よく製造することができる、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リビング重合は、開始反応及び成長反応のみからなり、移動反応及び停止反応をほとんど無視できる重合反応である。リビング重合は、一般の高分子重合反応に比べて、(1)得られるポリマーの分子量をモノマーと開始剤のモル比により正確に規制することができる;(2)分子量分布の極めて狭いポリマーが合成できる;(3)ポリマー末端の安定性と反応性とを利用して、様々なポリマー(ブロック共重合体、グラフト共重合体、末端官能基化ポリマー、星型ポリマーなど)の分子設計ができる;などの、長所を有している。
【0003】
リビング重合は、1956年のSzwarcによるスチレンのリビングアニオン重合に関する報告に始まり、1970年代までは、ほとんどリビングアニオン重合において見出されていた。近年では、リビングアニオン重合だけでなく、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合などの、様々なリビング重合が開発されている。
【0004】
前記リビング重合のなかでも、前記リビングアニオン重合は、依然としてスチレンや1,3−ジエン類のリビング重合において最も優れた方法であり、分子量分布(M/M)が狭く、分子量が数百から数万近くのポリマーを合成することができるという特徴を有する。さらに、前記リビングアニオン重合は、ポリマーの成長末端カルバニオンの反応性や構造に関する知見が過去数十年に亘って豊富に蓄積されているために、精密な分子設計を考える上で、最良の方法であると考えられている。
【0005】
従来、前記リビング重合はバッチ方式で行われている。バッチ方式において、リビング重合の開始反応を揃えるためには、モノマー及び開始剤を−78℃以下に冷却しながら混合しなければならないため、超低温冷却設備を要するという問題があった。また、リビング重合の開始反応を揃えるために、モノマーを霧状又は低濃度(例えば、1.5M未満)で加えなければならないため、大量生産に向かないという問題があった。
また、例えばジクロロシランなどの、2つの反応点を有する求電子剤をビルディングブロックとして、異なるリビングポリマーを連結させてブロックポリマーを製造する場合には、まず、あるリビングポリマーに対して過剰量の前記求電子剤を加え、求電子剤が付加したポリマーを一回単離した後に、別のリビングポリマーと反応させなければならず、手間がかかるという問題があった。
【0006】
一方、近年、化学合成の分野において、マイクロリアクターと呼ばれる微小容器を用いた化学反応が研究されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。前記マイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な流路と、前記流路に連通し、前記流路に液体を導入する導入路とを備える微小容器であり、流路径としては、数μmから数百μmのものが代表的である。前記マイクロリアクターの前記導入路を通じて供給された複数の液体は、前記流路で合流することにより、混合され、反応が生じる。
マイクロリアクターを用いた反応では、反応溶液の精確な流れの制御、温度制御、迅速な混合が可能となると考えられており、従来実施されているバッチ方式の反応と比較して転化率や選択制の向上が期待され、高効率な生産方法として注目されている。ドイツのIMM研究所やFZK研究所は、混合や熱交換、触媒反応、電気化学反応のためのマイクロリアクターを開発しており、これらのリアクター部品を使用したミニプラント建設を提案している。
【0007】
上述のとおり、バッチ方式では、反応時の低温環境を実現するために冷却装置が必要であること、さらに、霧状にしたり希釈したりしなければならないので手間がかかるという問題がある。さらには、2つの反応点を有する求電子剤をビルディングブロックとしてブロックポリマーを製造する場合には、ポリマーを単離する工程を要するために手間がかかるという問題がある。
したがって、分子量分布の狭いポリマーを合成する新規な技術、例えば、前記マイクロリアクターを用いて製造する方法により、特別な冷却装置などを用いることなく、効率よく高い転化率でポリマーを製造可能な方法、及び、連続的な工程でブロックポリマーを製造可能な方法が求められているが、未だ満足な方法が提供されていないのが現状である。
【0008】
【非特許文献1】“チミア(Chimia)”、2002年 56巻 p.636
【非特許文献2】“テトラヘドロン(Tetrahedron)”、2002年 58巻 p.4735〜4757
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、反応温度が−28℃以上でも分子量分布が狭いポリマーを効率よく製造することができる、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、連続的な工程で製造でき、M/Mが1.25以下であるブロックポリマーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、マイクロリアクターを用いて、モノマーと開始剤との反応を行うことにより、反応温度が−28℃以上でも分子量分布が狭いポリマーを効率よく製造することができ、さらに、マイクロリアクターを用いてポリマーの成長末端カルバニオンと求電子剤との反応を行うことで、末端に官能基を有するポリマーや、ブロックポリマーを製造することができることを知見した。
【0011】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、モノマーを開始剤の存在下でリビング重合させることを特徴とする、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法である。
<2> M/Mが1.20以下である<1>に記載の製造方法である。
<3> リビング重合がリビングアニオン重合である<1>から<2>のいずれかに記載の製造方法である。
<4> リビング重合における反応温度が、−28℃以上である<1>から<3>のいずれかに記載の製造方法である。
<5> リビング重合における反応温度が、24℃以上である<4>に記載の製造方法である。
<6> 開始剤が有機リチウム試薬である<1>から<5>のいずれかに記載の製造方法である。
<7> 流路にモノマーを導入する第一の導入路、及び、流路に開始剤を導入する第二の導入路の内径が、それぞれ500μm以下である<1>から<6>のいずれかに記載の製造方法である。
<8> モノマーが流速3ml/min以上で、開始剤が流速1ml/min以上で、それぞれ流路に導入される<1>から<7>のいずれかに記載の製造方法である。
<9> モノマーが導入される流速と、開始剤が導入される流速との比率を変えることによって、ポリマーの分子量を制御する<8>に記載の製造方法である。
<10> 流路にモノマーを導入する第一の導入路におけるモノマーの濃度が1.5M以上である<1>から<9>のいずれかに記載の製造方法である。
<11> モノマーがスチレンである<1>から<10>のいずれかに記載の製造方法である。
<12> モノマーが官能基を有する<1>から<10>のいずれかに記載の製造方法である。
<13> モノマーがスチレン誘導体である<12>に記載の製造方法である。
<14> 開始剤がアルキルリチウムである<1>から<13>のいずれかに記載の製造方法である。
<15> アルキルリチウムがsec−ブチルリチウムである<14>に記載の製造方法である。
<16> モノマーがメチルメタクリレートである<1>から<10>のいずれかに記載の製造方法である。
<17> 開始剤がsec−ブチルリチウムより嵩高い分子及び立体障害の大きな分子のいずれかである<16>に記載の製造方法である。
<18> 嵩高い分子及び立体障害の大きな分子のいずれかが、メチルスチリルリチウム、ジフェニルメチルフェニルリチウム及びジフェニルヘキシルリチウムのいずれかである<17>に記載の製造方法である。
<19> ポリマーが直鎖ポリマーである<1>から<18>のいずれかに記載の製造方法である。
<20> 複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、リビング重合後のポリマーの成長末端と、2つ以上の反応点を有する求電子剤とを反応させる工程を含む<1>から<19>のいずれかに記載の製造方法である。
<21> ポリマーがブロックポリマーである<1>から<20>のいずれかに記載の製造方法である。
<22> 多段階にリビング重合させる<21>に記載の製造方法である。
<23> 複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、少なくとも1段階のリビング重合後におけるポリマーの成長末端と、2つ以上の反応点を有する求電子剤とを反応させる工程を含む<22>に記載の製造方法である。
<24> 求電子剤がジクロロジメチルシランである<23>に記載の製造方法である。
<25> 求電子剤の添加量が、開始剤に対して、1〜10当量である<23>から<24>のいずれかに記載の製造方法である。
<26> 複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、モノマーを開始剤の存在下でリビング重合させて製造されることを特徴とする、ポリマー骨格中にSiを含有し、M/Mが1.25以下であるブロックポリマーである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、反応温度が−28℃以上でも分子量分布が狭いポリマーを効率よく製造することができる、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法を提供することができる。また、本発明によると、連続的な工程で製造でき、M/Mが1.25以下であるブロックポリマーの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法)
本発明の製造方法は、モノマーと、重合を開始させる開始剤とを、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記モノマーを前記開始剤の存在下でリビング重合させる工程を含み、必要に応じてその他の工程を含む。
【0014】
ここで、前記「M/M」とは、ポリマーの分子量分布を意味し、前記「M/M」における「M」とは重量平均分子量であり、前記「M」とは数平均分子量である。
ここで、前記「M/M」は、例えば、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求めることができる。
【0015】
本発明の製造方法によれば、マイクロリアクターにより反応溶液の精確な流れの制御、精密温度制御、迅速な混合を実現することができるので、前記「M/M」が1に近い値を有する分子量分布が狭いポリマーを製造することができる。
本発明の製造方法により製造されるポリマーの「M/M」としては、1.25以下である限り、特に制限はないが、1.20以下が好ましく、1.15以下がより好ましく、1.10以下が更に好ましい。
【0016】
<リビング重合>
前記リビング重合は、開始反応及び成長反応のみからなり、移動反応及び停止反応をほとんど無視できる重合反応である。
前記リビング重合の重合方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合、リビング配位重合、リビング開環重合などが挙げられる。中でも、スチレンや1,3−ジエン類のリビング重合に特に優れており、分子量分布が狭く、分子量が数百から数万近くのポリマーを合成することができる点で、リビングアニオン重合が好ましい。また、ポリマーの成長末端カルバニオンの反応性や構造に関する知見が過去数十年に亘って豊富に蓄積されている点でも、リビングアニオン重合が好ましい。
【0017】
前記リビング重合の開始反応及び成長反応は、通常、原料としてのモノマーと、所望する前記重合方式に応じて選択された開始剤との混合により行われる。前期モノマー及び開始剤は、溶媒に可溶化された液体の状態で、マイクロリアクターに導入される。
ここで、本発明の製造方法においては、マイクロリアクターを用いて、前記モノマーと開始剤とを混合する。前記マイクロリアクターを用いることで、効率的にモノマーと開始剤とを混合することができるので、開始反応を揃えることができ、製造されるポリマーの分子量分布を狭くすることができる。また、前記マイクロリアクターを用いることで、効率的に反応熱を除熱することができるので、反応液中の温度ムラがなくなり、モノマーが官能基を有する場合であっても、前記官能基と開始剤との副反応を抑制することができる。
【0018】
−マイクロリアクター−
前記マイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な微小な流路を備え、必要に応じて、前記流路に連通し、前記流路に液体を導入する導入路を備え、更に必要に応じて、前記流路及び導入路以外の構成を含む。
【0019】
本発明に用いられる前記マイクロリアクターとしては、複数の液体を混合可能な微小な流路を備える限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロミキサー(基板型のマイクロミキサー、管継手型のマイクロミキサーなど)、分岐したチューブなどが挙げられる。
【0020】
前記基板型のマイクロミキサーは、内部又は表面に流路が形成された基板からなり、マイクロチャンネルと称される場合がある。
前記基板型のマイクロミキサーとしては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、国際公開第96/30113号パンフレットに記載される混合のための微細な流路を有するミキサー;文献「“マイクロリアクターズ”三章、W.Ehrfeld,V.Hessel,H.Lowe著、Wiley−VCH社刊」に記載されるミキサー;などが挙げられる。
【0021】
前記基板型のマイクロミキサーには、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐した構成が好ましい。
前記導入路の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、混合を所望する複数の液体を別々の導入路から導入し、流路で合流させて混合することが好ましい。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0022】
前記管継手型のマイクロミキサーは、内部に形成された流路を備え、必要に応じて前記内部に形成された流路と、チューブとを接続する接続手段を備える。前記接続手段における接続方式としては、特に制限はなく、公知のチューブ接続方式の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ねじ込み式、ユニオン式、突合わせ溶接式、差込み溶接式、ソケット溶接式、フランジ式、食込み式、フレア式、メカニカル式などが挙げられる。
【0023】
前記管継手型のマイクロミキサーの内部には、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐された構成が好ましい。前記導入路の数が2つである場合には、前記管継手型のマイクロミキサーとして例えばT字型やY字型を用いることができ、前記導入路の数が3つである場合には、例えば十字型を用いることができる。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0024】
前記マイクロミキサーの材質としては、特に制限はなく、耐熱性、耐圧性、耐溶剤性、及び加工容易性などの要求に応じて、適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、シリコン、及びテフロン(登録商標)、PFA(パーフロロアルコキシ樹脂)などのフッ素樹脂、TFAA(トリフルオロアセトアミド)などが挙げられる。
【0025】
前記マイクロミキサーは、その微細構造によって精確に反応溶液の流れを制御するものであるから、微細加工技術によって製作されていることが好ましい。
前記微細加工技術としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(a)X線リソグラフィと電気メッキを組み合わせたLIGA技術、(b)EPON SU8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、(c)機械的マイクロ切削加工(ドリル径がマイクロオーダーのドリルを高速回転するマイクロドリル加工など)、(d)Deep RIEによるシリコンの高アスペクト比加工法、(e)Hot Emboss加工法、(f)光造形法、(g)レーザー加工法、及び(h)イオンビーム法などが挙げられる。
【0026】
前記マイクロミキサーとしては、市販品を利用することができ、例えば、インターディジタルチャンネル構造体を備えるマイクロリアクター、インスティテュート・ヒュール・マイクロテクニック・マインツ(IMM)社製シングルミキサー及びキャタピラーミキサー;ミクログラス社製ミクログラスリアクター;CPCシステムス社製サイトス;山武社製YM−1型ミキサー,YM−2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);マイクロ化学技研社製IMTチップリアクター;東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー;スウェージロック社製ユニオンティーなどが挙げられる。
【0027】
前記マイクロリアクターとしては、前記マイクロミキサーを単独で使用してもよく、更にその下流にチューブリアクターを連結し、前記流路を延長する構成としてもよい。前記チューブリアクターを前記マイクロミキサーの下流に連結することで、流路の長さを調節することができる。混合された液体の滞留時間(反応時間)は、前記流路の長さに比例する。
【0028】
前記チューブリアクターとは、マイクロミキサーにより迅速に混合された溶液が、その後の反応を行うための必要な時間を精密に制御(滞留時間制御)するためのリアクターである。
前記チューブリアクターとしては、特に制限はなく、例えば、チューブの内径、外径、長さ、材質などの構成は、所望する反応に応じて適宜選択することができる。
前記チューブリアクターとしては、市販品を利用することができ、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のステンレスチューブ(外径1/16インチ(1.58mm)、内径250μm、500μm及び1,000μmから選択可能、チューブ長さは使用者により調整可能)などが挙げられる。
前記チューブリアクターの材質としては、特に制限はなく、前記マイクロミキサーの材質として例示したものを、好適に利用することができる。
【0029】
−−流路−−
前記流路は、複数の液体を拡散により混合させる機能、及び、反応熱を除熱する機能を有する。
前記流路内における液体の混合方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば層流による混合、乱流による混合が挙げられる。中でも、より効率的に反応制御や除熱を行える点で、層流による混合(静的混合)が好ましい。なお、マイクロリアクターの流路は微小であるため、導入路から導入された複数の液体同士はおのずと層流支配の流れとなりやすく、流れに直交する方向に拡散して混合される。層流による混合において、さらに、流路内に分岐点及び合流点を設けることで、流れる液体の層流断面を分割するような構成とし、混合速度を高める構成としてもよい。
なお、マイクロリアクターの流路において、乱流による混合(動的混合)を行う場合には、流速や流路の形状(接液部分の3次元形状や流路の屈曲などの形状、壁面の粗さ、など)を調整することによって、層流から乱流へと変化させることができる。前記乱流による混合は、前記層流による混合と比べて、混合効率がよく混合速度が速いという利点を有する。
【0030】
ここで、前記流路の内径が小さい方が、分子の拡散距離を短くできるので、混合に要する時間を短縮させて混合効率を向上させることができる。さらに、前記流路の内径が小さい方が、体積に対する表面積の比が大きくなり、例えば反応熱の除熱などの、液体の温度制御を容易に行うことができる。
一方で、前記流路の内径が小さ過ぎると、液体を流す時の圧力損失が増加するとともに、送液に使用するポンプとして特別な高耐圧のものが必要となるため、製造コストが高くなることがある。また、送液流量が制限されることにより、前記マイクロミキサーの構造も制限されることがある。
【0031】
前記流路の内径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm〜4mmが好ましく、100μm〜3mmがより好ましく、250μm〜2mmが更に好ましく、500μm〜1mmが特に好ましい。
前記内径が50μm未満であると、圧力損失が増大することがある。前記内径が4mmを超えると、単位体積当たりの表面積が小さくなり、その結果、迅速な混合や反応熱の除熱が困難になることがある。一方、前記内径が前記特に好ましい範囲であると、より迅速に混合でき、より効率的に反応熱を除熱できる点で有利である。
より具体的には、前記マイクロミキサーの内部に形成される流路の内径としては、50〜1000μmが好ましく、100〜800μmがより好ましく、250〜500μmが更に好ましい。前記マイクロミキサーの下流に連結される前記チューブリアクターの内径としては、50μm〜4mmが好ましく、100μm〜2mmがより好ましく、500μm〜1mmが更に好ましい。
【0032】
前記流路の断面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm〜16mmが好ましく、1,000μm〜4.0mmがより好ましく、10,000μm〜2.1mmが更に好ましく、190,000μm〜1mmが特に好ましい。
【0033】
前記流路の長さとしては、特に制限はなく、最適反応時間に応じて適宜調整することができるが、0.1〜3mが好ましく、0.5〜2mがより好ましい。
前記流路の断面形状としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、矩形、半円形、三角形などが挙げられる。
【0034】
−−導入路−−
前記導入路は、前記流路に連通し、前記複数の液体を前記流路に導入する機能を有する。なお、前記導入路において、前記流路に連通する側とは別の一端は、通常、混合を所望する液体を含む容器に繋がっている。
【0035】
前記導入路の内径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。前記内径が500μmを超えると、ポリマーのM/Mが1.25以下にならないことがある。
なお、前記マイクロリアクターが複数の導入路を有する場合には、それぞれの導入路の内径が互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0036】
−−流路及び導入路以外の構成−−
前記流路及び導入路以外の構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、送液に使用するポンプ、温度調整手段、反応促進手段、センサー、製造されたポリマーを貯蔵するためのタンクなどが挙げられる。
【0037】
前記ポンプとしては、特に制限はなく、工業的に使用されうるものから適宜選択することができるが、送液時に脈動を生じないものが好ましく、例えば、プランジャーポンプ、ギアーポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0038】
前記温度調整手段としては、特に制限はなく、反応温度に応じて適宜選択することができ、例えば、恒温槽、循環サーキュレーター、熱交換器などが挙げられる。
例えば、前記反応温度が、−28℃である場合には、メタノールにドライアイスを加えた−28℃の恒温層を用いることが好ましく、0℃である場合には、氷水の恒温層が好ましく、例えば、24℃である場合には、水浴が好ましく、例えば、−78℃である場合には、アセトンにドライアイスを加えた恒温層が好ましい。
【0039】
前記反応促進手段としては、混合する液体や所望する反応に応じて、適宜選択することができるが、例えば、振動エネルギー付与手段、加熱手段、光照射手段、電圧印可手段などが挙げられる。電圧印可手段を備えたマイクロリアクターとしては、例えば、特開2006−104538に開示されるマイクロフロー電気化学リアクターなどが挙げられる。
前記センサーとしては、特に制限はなく、例えば、温度センサー、流量センサー、流路内の圧力を測定するための圧力センサーなどが挙げられる。
【0040】
−反応温度−
前記リビング重合における反応温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、従来のバッチ方式で適用される−78℃以下でも好適に適用できるが、−28℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、24℃以上が特に好ましい。前記温度が−28℃以上であると、簡易な構成の冷却装置を用いてM/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができ、製造コストを低減できる点で好ましい。前記温度が24℃以上であると、より簡易な構成の冷却装置を用いてM/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができ、製造コストを大幅に低減できる点で好ましい。
【0041】
−モノマー−
前記モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばビニル芳香族炭化水素、(メタ)アクリル系モノマー、共役ジエンなどが挙げられる。
【0042】
前記ビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、スチレン誘導体(p−ジメチルシリルスチレン、(p−ビニルフェニル)メチルスルフィド、p−ヘキシニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなど)、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、1,1−ジフェニルエチレン、などが挙げられる。
【0043】
前記アクリル系モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレートトリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。
また、例えばメチルメタアクリレート(MMA)などの、前記アクリレートをメタクリレートにしたものが挙げられる。
【0044】
前記共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどが挙げられる。
前記モノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記モノマーの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01〜4.0M(mol/l、以下同じ)が好ましく、0.1〜3.0Mがより好ましく、0.5〜2.0Mが特に好ましい。前記濃度が0.01M未満であると、単位時間当たりのポリマー生成量が減少することがある。前記濃度が4.0Mを超えると、重合反応熱の除熱が困難になることがある。一方、前記濃度が前記特に好ましい範囲であると、より効率的に重合反応熱を除熱できる点で有利である。
【0046】
前記マイクロリアクターの第一の導入路から前記モノマーを導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜50ml/minが好ましく、0.5〜25ml/minがより好ましく、1〜10ml/minが更に好ましい。前記流速が0.1ml/min未満であると、迅速な混合の実現が困難になることがある。前記流速が50ml/minを超えると、圧力損失が増大することがある。一方、前記流速が前記特に好ましい範囲であると、圧力損失が問題にならない範囲で、より迅速に混合できる点で有利である。
【0047】
−開始剤−
前記開始剤としては、特に制限はなく、モノマーの種類及びリビング重合の重合方式に応じて適宜選択することができる。
前記リビング重合が、リビングアニオン重合である場合の開始剤としては、例えば、有機リチウム試薬が挙げられる。
前記有機リチウム試薬としては、特に制限は無く、従来公知の有機リチウム試薬から適宜選択することができ、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム(n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、iso−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなど)、ペンチルリチウム、ヘキシルリチウム、メトキシメチルリチウム、エトキシメチルリチウム等のアルキルリチウム;α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル3−メチルペントリルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム等のベンジルリチウム;ビニルリチウム、アリルリチウム、プロペニルリチウム、ブテニルリチウム等のアルケニルリチウム;エチニルリチウム、ブチニルリチウム、ペンチニルリチウム、ヘキシニルリチウム等のアルキニルリチウム;ベンジルリチウム、フェニルエチルリチウム等のアラルキルリチウム;フェニルリチウム、ナフチルリチウム等のアリールリチウム;2−チエニルリチウム、4−ピリジルリチウム、2−キノリルリチウム等のヘテロ環リチウム;トリ(n−ブチル)マグネシウムリチウム、トリメチルマグネシウムリチウム等のアルキルリチウムマグネシウム錯体等が挙げられる。中でも、反応性が高いため、高速な開始反応を行える点で、アルキルリチウムが好ましく、sec−ブチルリチウムがより好ましい。前記有機リチウム試薬は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
なお、前記モノマーがメチルメタアクリレートである場合には、前記開始剤として、sec−ブチルリチウムより嵩高い分子及び立体障害の大きな分子のいずれかを用いることが好ましい。前記嵩高い分子及び立体障害の大きな分子のいずれかとしては、例えば、α−メチルスチリルリチウム、1,1−ジフェニル3−メチルペントリルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウムなどが挙げられる。
【0049】
前記開始剤の濃度としては、特に制限はなく、前記モノマーの種類及び濃度に応じて適宜選択されるが、0.001〜1.0Mが好ましく、0.002〜0.75Mがより好ましく、0.01〜0.5Mが更に好ましく、0.02〜0.2Mが特に好ましい。前記濃度が0.001M未満であると、開始剤が溶媒中に含まれる少量の水などにより分解することがある。前記濃度が1.0Mを超えると、重合中に不溶性物質が析出しマイクロリアクターの流路が閉塞することがある。一方、前記濃度が前記特に好ましい範囲であると、マイクロリアクターの流路が閉塞を起こさずに、より実践的に反応を行える点で有利である。
【0050】
前記マイクロリアクターの第二の導入路から前記開始剤を導入する流速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜10ml/minが好ましく、0.5〜5ml/minがより好ましく、1〜3ml/minが特に好ましい。前記流速が0.1ml/min未満であると、迅速な混合の実現が困難になることがある。前記流速が10ml/minを超えると、圧力損失が増大することがある。一方、前記流速が前記特に好ましい範囲であると、圧力損失が問題にならない範囲で、より迅速に混合できる点で有利である。
【0051】
ここで、本発明者らにより、マイクロリアクターを用いたリビング重合において、モノマーと開始剤との当量比は、それぞれの濃度と流速との積の比に一致することが、後記する実施例により明らかとなった。
前記モノマーと開始剤との当量比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、モノマーに対して、開始剤が1〜1,000当量が好ましく、5〜500当量がより好ましく、10〜200当量が特に好ましい。前記当量比が1当量未満であると、得られるポリマーの分子量が理論値よりも増大することがある。前記当量比が1,000当量を超えると、得られるポリマーの分子量が理論値よりも増大することがある。一方、前記当量比が前記特に好ましい範囲であると、理論値と等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。
【0052】
−溶媒−
前記モノマー及開始剤は、溶媒に可溶化された液体の状態で、マイクロリアクターに導入される。
前記溶媒としては、特に制限はなく、前記モノマー及び開始剤の種類並びにリビング重合の重合方式に応じて適宜選択することができる。
前記リビング重合が、リビングアニオン重合である場合の溶媒としては、例えば、直鎖、分岐鎖、環状炭化水素溶媒などが挙げられ、より具体的には、例えば、ブタン、ブテン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、デカリン、テトラリン、これらの誘導体などが挙げられる。
【0053】
以上のように、本発明のポリマーの製造方法によれば、反応温度が−28℃以上でもM/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができる。特に、本発明のポリマーの製造方法によれば、官能基を有しないモノマーはもちろん、官能基を有するモノマーを用いた場合であっても、−28℃以上で側鎖の反応を制限しつつ直鎖ポリマーを好適に製造することができる。
【0054】
さらに、本発明のポリマーの製造方法によれば、前記ポリマーの成長末端に官能基を導入し、末端に官能基を有するポリマーを製造することができる。また、前記ポリマーからなる複数のブロックを連結させることにより、ブロックポリマーを製造することができる。
以下、前記末端に官能基を有するポリマー、及び、前記ブロックポリマーの製造方法について、それぞれ具体的に説明する。
【0055】
<末端に官能基を有するポリマーの製造方法>
前記末端に官能基を有するポリマーの製造方法は、下記(A1)、(A2)工程を含み、必要に応じてその他の工程を含む。
(A1)モノマーと、重合を開始させる開始剤とを、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記モノマーを前記開始剤の存在下でリビング重合させる工程。
(A2)前記(A1)工程で重合されたポリマーと、2つ以上の反応点を有する求電子剤とを、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記ポリマーの成長末端に前記求電子剤を付加させる工程。
【0056】
前記(A1)工程は、前記M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法と同じであるので、説明を省略する。
【0057】
前記(A2)工程における前記求電子剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロロトリメチルシラン、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0058】
前記(A2)工程におけるマイクロリアクターとしては、前記M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法で説明したものと同様のものを用いることができる。
前記求電子剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(A1)工程で添加した開始剤に対して、1〜100当量が好ましく、1〜10当量がより好ましく、1〜2当量が特に好ましい。前記添加量が、開始剤に対して1当量未満であると、ポリマーの成長末端に対して求電子剤の理論的に必要な当量が不足することがある。前記添加量が開始剤に対して100当量を超えると、ポリマーの成長末端に対して求電子剤が大過剰量になるため、反応後に求電子剤を取り除く必要がある。一方、前記添加量が前記特に好ましい範囲であると、ポリマーの成長末端に対して求電子剤が理論量に近い点で有利である。
【0059】
なお、開始剤と求電子剤との当量比は、前記モノマーと開始剤との当量比と同様に、それぞれの濃度と流速との積の比により求めることができる。
このように製造された末端に官能基を有するポリマーは、例えば、前記官能基に別のポリマーを結合させることでブロックポリマーの製造に利用したり、前記官能基に求核剤を反応させることで生体機能性物質や機能性材料として利用することができる。
【0060】
<ブロックポリマーの製造方法>
前記ブロックポリマーの製造方法は、下記(B1)、(B2)工程を含み、必要に応じて(B3)工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
(B1)モノマーと、重合を開始させる開始剤とを、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記モノマーを前記開始剤の存在下でリビング重合させる工程。
(B2)前記(B1)工程で重合された第1のポリマーと、2つ以上の反応点を有する求電子剤とを、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記ポリマーの成長末端に前記求電子剤を付加させる工程。
(B3)前記求電子剤が付加された第1のポリマーと、前記(B1)工程で重合されて前記ポリマーとは異なる第2のポリマーとを、複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターに導入し、前記マイクロリアクター内で、前記第1のポリマーの求電子剤付加末端に、前記第2のポリマーの成長末端を、付加させる工程。
【0061】
前記(B1)工程は、前記M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法と同じであるので、説明を省略する。
【0062】
前記(B2)工程における求電子剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジクロロジメチルシラン、トリクロロメチルシラン、テトラクロロシランなどが挙げられる。
【0063】
前記(B2)工程におけるマイクロリアクターとしては、前記M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法で説明したものと同様のものを用いることができる。
前記求電子剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(B1)工程で添加した開始剤に対して、1〜100当量が好ましく、1〜10当量がより好ましく、1〜2当量が特に好ましい。前記添加量が、開始剤に対して1当量未満であると、ポリマーの成長末端に対して求電子剤の理論的に必要な当量が不足することがある。前記添加量が開始剤に対して100当量を超えると、ポリマーの成長末端に対して求電子剤が大過剰量になるため、反応後に求電子剤を取り除く必要がある一方、前記添加量が前記特に好ましい範囲であると、ポリマーの成長末端に対して求電子剤が理論量に近い点で有利である。
なお、開始剤と求電子剤との当量比は、前記モノマーと開始剤との当量比と同様に、それぞれの濃度と流速との積の比により求めることができる。
【0064】
前記(B3)工程における第2のポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法により製造されたポリマーを好適に用いることができる。また、前記第2のポリマーは、前記第1のポリマーと同じモノマーによって製造されていてもよく、異なるモノマーによって製造されていてもよい。
前記(B3)工程におけるマイクロリアクターとしては、前記M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法で説明したものと同様のものを用いることができる。
前記(B3)工程における第2のポリマーの添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記(B1)工程で製造された第1のポリマーに対して、1〜1000当量が好ましく、5〜500当量がより好ましく、10〜200当量が特に好ましい。前記添加量が、第1のポリマーに対して1当量未満であると、得られるポリマーの分子量が理論値よりも増大することがある。前記添加量が、第1のポリマーに対して1,000当量を超えると、得られるポリマーの分子量が理論値よりも増大することがある。一方、前記添加量が前記特に好ましい範囲であると、理論値と等しい分子量のポリマーを得ることができる点で有利である。
なお、前記第1のポリマーと第2のポリマーとの当量比は、前記モノマーと開始剤との当量比と同様に、それぞれの濃度と流速との積の比により求めることができる。即ち、第1のポリマーの製造に用いたモノマー及び開始剤の濃度及び流速と、第2のポリマーの製造に用いたモノマー及び開始剤の濃度及び流速とから、前記第1のポリマーと第2のポリマーとの当量比を求めることができる。
【実施例】
【0065】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
−ポリスチレンの製造−
マイクロリアクターを用いて、スチレンをsec−ブチルリチウム(sec−BuLi)の存在下でリビングアニオン重合させた。
−−マイクロリアクター−−
本実施例で用いたマイクロリアクターは、T字型の管継手からなるマイクロミキサーと、前記マイクロミキサーの下流に連結されたチューブリアクターとを含んで構成される。
前記マイクロミキサーとしては、三幸精機工業株式会社製の特注品を使用した(本実施例の記載に基づいて製造を依頼し、同等のものを入手することが可能である)。なお、本実施例で使用したマイクロミキサーは、その内部に第一の導入路、第二の導入路及びこれらが合流する流路の一部を有し、前記マイクロミキサー内においては、そのいずれの内径も同じである。したがって、以下、これらの内径をまとめて「マイクロミキサーの内径」と称する。
前記チューブリアクター(図中では、「micro tube reactor」と記載する。)としては、ジーエルサイエンス株式会社製 ステンレスチューブを使用した。送液用のポンプとしては、ハーバード社製 シリンジポンプ Model 11 Plusを使用した。反応温度の調節は、マイクロリアクター全体を恒温層に埋没させることで行った。
【0067】
−−反応条件−−
図1は、実施例1〜8の反応系の概略を示す図である。図1に示すように、実施例1のマイクロミキサーM1の内径は250μmであり、チューブリアクターの内径は1.0mm、チューブリアクターの長さは50cmである。
そして、実施例1においては、濃度Cが2Mのスチレン溶液を第一の導入路から流速6ml/minで導入し、濃度Cが0.2Mのsec−ブチルリチウム溶液を第二の導入路から流速Vとして2ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
なお、前記スチレン溶液は、アルゴンガスで置換した100mlフラスコ中に、テトラヒドロフラン53.2mlとスチレン14.37g(15.8ml)を加えることにより調製し、前記sec−ブチルリチウム溶液は、アルゴンガスで置換した100mlフラスコ中に、1.0M sec−ブチルリチウム10mlとヘキサン40mlを加えることにより調製した。
【0068】
−評価方法−
−−転化率の測定−−
マイクロリアクターから出てきた重合反応溶液を大過剰量のメタノール入りの容器で採取することで反応を終結させた。得られた溶液は、減圧下で溶媒を留去したのちに、乾固させ、用いたモノマーの重合体への重量変化により、転化率を測定した。
【0069】
−−数平均分子量及び分子量分布の測定−−
数平均分子量(M)及び分子量分布(M/M)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により決定した。具体的には、Shodex LF−804 カラム(昭和電工株式会社製)を2本、Shodex KF−800RL カラム(昭和電工株式会社製)を2本、計4本のカラムを直列に配置し、40℃、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用い、RI(Refractive Index、示差屈折率)検出器により測定した。キャリブレーションは、市販のスチレン重合体(TSK社製、standard polystyrene TOSOHの A−500(TS−505) M=500、A1000(TS−501) M=1,050、A−2500(TS−502) M=2,500、A−5000(TS−503) M=5,870、F−1(TS−203) M=9,830、F−2(TS−504) M=17,100、F−4(TS−202) M=37,200、F−10(TS−144) M=98,900、F−20(TS−140) M=189,000、F−40(TS−85) M=354,000、F−80(TS−201) M=707,000、F128(TS−206) M=1,110,000)を標準サンプルとして用いて行った。
【0070】
(実施例2〜4)
実施例1において、スチレン溶液の濃度C、sec−ブチルリチウム溶液の濃度C及びsec−ブチルリチウム溶液の流速Vを、表1に示す値に変えた以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2〜4のポリマーを製造し、実施例1と同様の方法により、実施例2〜4のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
(実施例5)
実施例1において、反応温度Tを24℃に代えて0℃とした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例5のポリマーを製造し、実施例1と同様の方法により、実施例5のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
(実施例6〜8)
実施例5において、スチレン溶液の濃度C、sec−ブチルリチウム溶液の濃度C及びsec−ブチルリチウム溶液の流速Vを、表1に示す値に変えた以外は、実施例5と同様の方法により、実施例6〜8のポリマーを製造し、実施例5と同様の方法により、実施例6〜8のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
バッチ型反応器を用いて、スチレンをsec−ブチルリチウムの存在下でリビングアニオン重合させた。具体的には、以下の手順で行った。
アルゴンガスで置換した100ml二口フラスコに、0.2M sec−ブチルリチウム溶液を1ml仕込み、バッチ型反応器を恒温層に浸して0℃に冷却した。磁気攪拌機を用いて攪拌しながら、1.0M スチレン溶液 6mlを、10秒(sec)かけて滴下し、0℃で5分間攪拌した。
そして、実施例1と同様の方法により、比較例1のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
マイクロリアクターを用いてリビングアニオン重合させた場合には、反応温度が0℃だけでなく24℃でも、分子量分布が1.25以下のポリマーを製造することができた。一方で、バッチ方式でリビングアニオン重合させた場合には、反応温度が0℃であっても、M/Mが広いポリマーが製造された。
【0076】
(実施例9)
実施例5と同様の方法により、実施例9のポリマーを製造し、実施例5と同様の方法により、実施例9のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
(比較例2)
実施例9において、マイクロミキサーM1の内径(表2では「d」と示す。)を、250μmに代えて500μmとした以外は、実施例9と同様の方法により、比較例2のポリマーを製造し、実施例9と同様の方法により、比較例2のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表2に示す。
【0078】
(比較例3)
実施例9において、マイクロミキサーM1の内径dを、250μmに代えて800μmとした以外は、実施例9と同様の方法により、比較例3のポリマーを製造し、実施例9と同様の方法により、比較例3のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
マイクロミキサーM1の内径dを250μmとした場合では、M/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができるが、マイクロミキサーM1の内径dを500μm以上とした場合では、分子量分布が広いポリマーが製造された。
【0081】
(実施例10〜12及び比較例4、5)
図2は、実施例10〜12及び比較例4、5、並びに、実施例13及び比較例6〜9の反応系の概略を示す図である。
実施例9において、スチレン溶液の流速V及びsec−ブチルリチウム溶液の流速Vを、表3に示す値に変えた以外は、実施例9と同様の方法により、実施例10〜12、比較例4、5のポリマーを製造し、実施例9と同様の方法により、実施例10〜12、比較例4、5のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表3に示す。
【0082】
(実施例13及び比較例6〜9)
比較例2において、スチレン溶液の流速V及びsec−ブチルリチウム溶液の流速Vを、表3に示す値に変えた以外は、比較例2と同様の方法により、実施例13、比較例6〜9のポリマーを製造し、比較例2と同様の方法により、実施例13、比較例6〜9のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表3に示す。
【0083】
【表3】

【0084】
表3に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
スチレン溶液を導入する流速Vと、sec−ブチルリチウム溶液を導入する流速Vとの比を3:1で固定し、マイクロミキサーM1の内径dを250μmとした場合には、Vが3ml/min以上のときに、M/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができ、マイクロミキサーM1の内径dを500μmとした場合には、Vが9ml/min以上のときに、M/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができた。
【0085】
(実施例14〜24)
図3は、実施例14〜24の反応系の概略を示す図である。
実施例5において、sec−ブチルリチウム溶液の濃度C及び流速Vを、表4に示す値に変えた以外は、実施例5と同様の方法により、実施例14〜24のポリマーを製造し、実施例5と同様の方法により、実施例14〜24のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表4に示す。
【0086】
【表4】

前記表4中、「〔M〕/〔I〕」は、sec−ブチルリチウムに対するスチレンの当量比を意味し、〔M〕はモノマーの濃度であり、〔I〕はsec−ブチルリチウムの濃度である。
【0087】
図4は、実施例14〜24の数平均分子量Mと、「〔M〕/〔I〕」との関係を示す相関図である。図4に示すように、モノマーと開始剤との流速を変化させ、開始剤に対するモノマーの当量比を変化させることによって、ポリマーの分子量制御が可能になることが明らかとなった。
【0088】
(実施例25、29、31、33及び比較例10、11)
−スチレン誘導体ポリマーの製造−
実施例1において、モノマーを、スチレンに代えて表5に示すモノマーとした以外は、実施例1と同様の方法により、実施例25、29、31、33及び比較例10、11のポリマーを製造し、実施例1と同様の方法により、実施例25、29、31、33及び比較例10、11のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表5に示す。
【0089】
(実施例26〜28、30、32、34)
実施例5において、モノマーを、スチレンに代えて表5に示すモノマーとした以外は、実施例5と同様の方法により、実施例26〜28、30、32、34のポリマーを製造し、実施例5と同様の方法により、実施例26〜28、30、32、34のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表5に示す。
【0090】
【表5】

【0091】
なお、表5中の、p−ジメチルシリルスチレン、(p−ビニルフェニル)メチルスルフィド、p−ヘキシニルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシロキシスチレンは、それぞれ、下記構造式(1)〜(5)で表される。
【化1】

ただし、前記構造式(1)、(2)及び(4)中、「Me」はメチル基を示し、前記構造式(5)中、「TBS」は、tert−ブチルジメチルシリル基を示す。
【0092】
表5に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
少なくとも0℃においては、いずれのスチレン誘導体においても、M/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができた。また、24℃においても、スチレン誘導体の種類によっては、M/Mが1.25以下であるポリマーを製造することが可能であった。
【0093】
(実施例35)
−末端に官能基を有するポリマーの製造−
マイクロリアクターを用いて、1段目の反応としてスチレンをsec−ブチルリチウムの存在下でリビングアニオン重合させ、2段目の反応として合成されたポリスチレンの成長末端を求電子剤で補足した。
【0094】
−−マイクロリアクター−−
1段目及び2段目の反応に用いたマイクロリアクターとしては、実施例1で用いたものと同じものを用いた。そして、1段目のマイクロミキサーM1内の流路と、2段目のマイクロミキサーM2内の第一の導入路とを1段目のチューブリアクターを介して接続することで、1段目のマイクロリアクターと2段目のマイクロリアクターとを直列に連結する構成とした(図5参照)。送液用のポンプ、反応温度の調節などの他の構成は、実施例1と同様である。
【0095】
−−反応条件−−
図5は、実施例35〜38の反応系の概略を示す図である。図5に示すように、実施例35の、1段目のマイクロミキサーM1及び2段目のマイクロミキサーM2の内径は250μmであり、1段目のチューブリアクター及び2段目のチューブリアクターの内径は1.0mm、前記両チューブリアクターの長さは50cmである。
そして、実施例35においては、2M スチレン溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第一の導入路から流速3ml/minで導入し、0.2M sec−ブチルリチウム溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第二の導入路から流速3ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
そして、前記混合溶液(ポリスチレン溶液)を、2段目のマイクロミキサーM2の第一の導入路から導入し、2M クロロトリメチルシラン(TMSCl)溶液を、2段目のマイクロミキサーM2の第二の導入路から流速3ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
なお、前記スチレン溶液及び前記sec−ブチルリチウム溶液は、実施例1と同様の方法により、調製したものを用いた。前記クロロトリメチルシラン溶液は、アルゴンガスで置換した50mlフラスコ中に、テトラヒドロフラン14.9mlとクロロトリメチルシラン4.35g(5.08ml)を加えることにより調製した。
そして、実施例35のポリマーの末端構造をNMR(Nuclear Magnetic Resonance)により解析した結果、ポリマー末端にクロロトリメチルシランが付加していることを確認した。
また、実施例1と同様の方法により、実施例35のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表6に示す。
【0096】
(実施例36)
実施例35において、反応温度Tを、24℃に代えて0℃とした以外は、実施例35と同様の方法により、実施例36のポリマーを製造し、実施例35と同様の方法により、実施例36のポリマーについて末端構造を確認し、転化率及び分子量分布を評価した。結果を表6に示す。
【0097】
(実施例37)
実施例35において、求電子剤を、クロロトリメチルシランに代えてベンズアルデヒド(PhCHO)とした以外は、実施例35と同様の方法により、実施例37のポリマーを製造した。なお、マイクロミキサーM2に導入したベンズアルデヒド溶液は、アルゴンガスで置換した50mlフラスコ中に、テトラヒドロフラン20.0mlとベンズアルデヒド5.31g(5.08ml)を加えることにより調製した。
そして、実施例35と同様の方法により、実施例37のポリマーについて末端構造を確認し、転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表6に示す。
【0098】
(実施例38)
実施例37において、反応温度Tを、24℃に代えて0℃とした以外は、実施例37と同様の方法により、実施例38のポリマーを製造し、実施例37と同様の方法により、実施例38のポリマーについて末端構造を確認し、転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表6に示す。
【0099】
【表6】

表6中、c(当量)は、1段目のマイクロミキサーM1に導入した開始剤に対する求電子剤の当量を示す。
【0100】
表6に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
求電子剤の種類にかかわらず、開始剤に対して10当量の求電子剤を添加することで、末端に官能基を有し、M/Mが1.25以下であるポリマーを製造することができた。また、0℃、24℃いずれにおいても、同様の結果であった。
【0101】
(実施例39)
−ブロックポリマーの製造−
マイクロリアクターを用いて、1段目の反応としてスチレンをsec−ブチルリチウムの存在下でリビングアニオン重合させ、2段目の反応として合成されたポリスチレンの成長末端をジクロロシランで補足し、3段目の反応としてポリスチレンのジクロロシラン付加末端と、第2のポリマーとを結合させた。なお、前記第2のポリマーは、第2のモノマーがリビングアニオン重合されることで、1段目の反応と並行して製造されたものであり、下記の説明においては、1’段目と称する。
【0102】
−−マイクロリアクター−−
1〜3段目及び1’段目の反応に用いたマイクロリアクターとしては、実施例1で用いたものと同じものを用いた。そして、1段目のマイクロミキサーM1内の流路と、2段目のマイクロミキサーM2内の第一の導入路とを1段目のチューブリアクターを介して接続することで、1段目のマイクロリアクターと2段目のマイクロリアクターとを直列に連結し、同様に、2段目及び1’段目のマイクロリアクターと3段目のマイクロリアクターとを直列に連結する構成とした(図6参照)。送液用のポンプ、反応温度の調節などの他の構成は、実施例1と同様である。
【0103】
−−反応条件−−
図6は、実施例39〜42の反応系の概略を示す図である。図6に示すように、実施例39の、1段目のマイクロミキサーM1、2段目のマイクロミキサーM2及び1’段目のマイクロミキサーM1’の内径は250μmであり、3段目のマイクロミキサーM3の内径は500μmである。また、1〜3段目及び1’段目のチューブリアクターの内径は1.0mmであり、1段目のチューブリアクターの長さL及び2段目のチューブリアクターの長さLは50cmであり、3段目のチューブリアクターの長さLは200cmであり、1’段目のチューブリアクターの長さL1’は50cmである。
そして、実施例39においては、1.0M スチレン溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第一の導入路から流速3ml/minで導入し、0.025M sec−ブチルリチウム溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第二の導入路から流速2ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
そして、前記混合溶液(ポリスチレン溶液)を、2段目のマイクロミキサーM2の第一の導入路から導入し、0.05M ジクロロシラン溶液を、2段目のマイクロミキサーM2の第二の導入路から流速3ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
【0104】
一方で、第2のモノマーとしての1.0M スチレン溶液を、1’段目のマイクロミキサーM1’の第一の導入路から流速3ml/minで導入し、0.10M sec−ブチルリチウム溶液を、1’段目のマイクロミキサーM1’の第二の導入路から流速3ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
【0105】
そして、2段目のマイクロリアクターにより混合された溶液を、3段目のマイクロミキサーM3の第一の導入路から導入し、1’段目のマイクロリアクターにより混合された溶液を、3段目のマイクロミキサーM3の第二の導入路から導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
なお、前記スチレン溶液及び前記sec−ブチルリチウム溶液は、実施例1と同様の方法により、調製したものを用いた。前記ジクロロシラン溶液は、アルゴンガスで置換した100mlフラスコ中に、ジクロロジメチルシラン82.3mlとジクロロシラン177.3mg(160.7μl)を加えることにより調製した。
そして、実施例39のポリマーの分子構造をNMRにより解析した結果、ポリマー主鎖にSi原子の存在を確認し、前記Si原子を介して2つのポリマーが結合していることを確認した。また、実施例1と同様の方法により、実施例39のポリマーについて転化率及び分子量分布を評価した。結果を表7に示す。
【0106】
(実施例40)
実施例39において、反応温度Tを、24℃に代えて0℃とした以外は、実施例39と同様の方法により、実施例40のポリマーを製造し、実施例39と同様の方法により、実施例40のポリマーについて分子構造を確認し、転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表7に示す。
【0107】
(実施例41)
実施例39において、第2のモノマーを、表7に示す第2のモノマーに変えた以外は、実施例39と同様の方法により、実施例41のポリマーを製造し、実施例39と同様の方法により、実施例41のポリマーについて分子構造を確認し、転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表7に示す。
【0108】
(実施例42)
実施例39において、第2のモノマーを、スチレンに代えて表7に示す第2のモノマーとしたこと、1’段目のチューブリアクターの長さL1’を、50cmに代えて200cmとしたこと以外は、実施例39と同様の方法により、実施例42のポリマーを製造し、実施例39と同様の方法により、実施例42のポリマーについて分子構造を確認し、転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表7に示す。
【0109】
【表7】

【0110】
表7に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
マイクロリアクターを用いて、1段目の反応に用いた開始剤に対して1当量のジクロロメチルシランを添加することで、ジクロロシラン1分子に対して1分子のポリマー成長末端が付加したポリマーを選択的に得ることができた。さらに、このジクロロシランが付加されたポリマーに対して第2のポリマーを添加することで、M/Mが1.25以下であるブロックポリマーを製造することができた。また、0℃、24℃いずれにおいても、同様の結果であった。
【0111】
(実施例43)
−ポリメチルメタアクリレートの製造−
マイクロリアクターを用いて、メチルメタアクリレートを1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウムの存在下でリビングアニオン重合させた。
【0112】
−−マイクロリアクター−−
マイクロリアクターとしては、実施例1で用いたものと同じものを用いた。送液用のポンプ、反応温度の調節などの他の構成は、実施例1と同様である。
【0113】
−−反応条件−−
図7は、実施例43、44及び比較例12、13の反応系の概略を示す図である。図7に示すように、実施例43の、マイクロミキサーM1の内径は250μmであり、チューブリアクターの内径は1.0mmである。また、実施例43においては、チューブリアクターの長さxを50cmとし、滞留時間Rが、3.4秒となるように設定した。
そして、実施例43においては、1.0M メチルメタアクリレート溶液を、マイクロミキサーM1の第一の導入路から流速6.0ml/minで導入し、0.20M 1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム溶液を、マイクロミキサーM1の第二の導入路から流速1.0ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
なお、前記メチルメタアクリレート溶液は、アルゴンガスで置換した100mlフラスコ中に、テトラヒドロフラン88.2mlとメタクリル酸メチル9.896g(10.6ml)を加えることにより調製し、前記1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム溶液は、アルゴンガスで置換した100mlフラスコ中に、テトラヒドロフラン16mlと1,1−ジフェニルエテン721.9mg(704μl)と1.0M sec−ブチルリチウム4mlを加えることにより調製した。そして、実施例1と同様の方法により、実施例43のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表8に示す。
【0114】
(実施例44)
実施例43において、反応温度を、24℃に代えて0℃とした以外は、実施例43と同様の方法により、実施例44のポリマーを製造し、実施例43と同様の方法により、実施例44のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表8に示す。
【0115】
(比較例12)
実施例43において、チューブリアクターの長さxを50cmに代えて400cmとすることにより、滞留時間Rを、3.4秒に代えて27秒としたこと以外は、実施例43と同様の方法により、比較例12のポリマーを製造し、実施例43と同様の方法により、比較例12のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表8に示す。
【0116】
(比較例13)
比較例12において、反応温度を、24℃に代えて0℃とした以外は、比較例12と同様の方法により、比較例13ポリマーを製造し、比較例12と同様の方法により、比較例13のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表8に示す。
【0117】
(比較例14)
−バッチ方式によるポリメチルメタアクリレートの製造−
バッチ型反応器を用いて、メチルメタアクリレートを1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウムの存在下でリビングアニオン重合させた。具体的には、以下の手順で行った。
アルゴンガスで置換した100ml二口フラスコに、1.0M 1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム溶液を1ml仕込み、バッチ型反応器を恒温層に浸して−78℃に冷却した。磁気攪拌機を用いて攪拌しながら、1.0M メチルメタアクリレート溶液 6mlを、10secかけて滴下し、−78℃で5分間攪拌した。
そして、実施例1と同様の方法により、比較例14のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表8に示す。
【0118】
(比較例15)
比較例14において、反応温度Tを、−78℃に代えて0℃とした以外は、比較例15と同様の方法により、比較例15のポリマーを製造し、比較例14と同様の方法により、比較例15のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表8に示す。
【0119】
【表8】

【0120】
表8に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
マイクロリアクターを用いてメチルメタアクリレートをリビングアニオン重合させた場合には、滞留時間Rが3.4秒のときに、分子量分布が1.25以下のポリマーを製造することができた。一方で、マイクロリアクターを用いても長い滞留時間であったり、バッチ方式によりメチルメタアクリレートをリビングアニオン重合させたりする場合には、分子量分布が広いポリマーが製造された。即ち、メチルメタアクリレートのような官能基を有するモノマーをリビングアニオン重合させる場合には、滞留時間(反応時間)を短く制御することで、副反応の進行を抑制でき、M/Mが1.25以下のポリマーを製造することができることが示された。
【0121】
(実施例45)
−開始剤の調製〜ポリメチルメタアクリレートの製造−
マイクロリアクターを用いて、1段目の反応として1,1−ジフェニルエテンとsec−ブチルリチウムとを反応させて1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウムを調製し、2段目の反応としてメチルメタアクリレートを1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウムの存在下でリビングアニオン重合させた。
【0122】
−−マイクロリアクター−−
1段目及び2段目の反応に用いたマイクロリアクターとしては、実施例1で用いたものと同じものを用いた。そして、1段目のマイクロミキサーM1内の流路と、2段目のマイクロミキサーM2内の第一の導入路とを1段目のチューブリアクターを介して接続することで、1段目のマイクロリアクターと2段目のマイクロリアクターとを直列に連結する構成とした(図8参照)。送液用のポンプ、反応温度の調節などの他の構成は、実施例1と同様である。
【0123】
−−反応条件−−
図8は、実施例45〜48の反応系の概略を示す図である。図8に示すように、実施例45の、1段目のマイクロミキサーM1の内径は500μmであり、2段目のマイクロミキサーM2の内径は250μmである。1段目のチューブリアクター及び2段目のチューブリアクターの内径は1.0mm、長さは50cmである。
そして、実施例45においては、0.25M 1,1−ジフェニルエテン溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第一の導入路から流速1.6ml/minで導入し、1.0M sec−ブチルリチウム溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第二の導入路から流速0.4ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
そして、前記混合溶液(1,1−ジフェニル−3−メチルペントリルリチウム)を、2段目のマイクロミキサーM2の第一の導入路から導入し、1.0M メチルメタアクリレート溶液を、2段目のマイクロミキサーM2の第二の導入路から流速Vとして6ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、24℃である。
そして、実施例1と同様の方法により、実施例45のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表9に示す。
【0124】
(実施例46)
実施例45において、反応温度Tを、24℃に代えて0℃とした以外は、実施例45と同様の方法により、実施例46のポリマーを製造し、実施例45と同様の方法により、実施例46のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表9に示す。
【0125】
(実施例47)
実施例45において、メチルメタアクリレートの流速Vを、6ml/minに代えて9ml/minとした以外は、実施例45と同様の方法により、実施例47のポリマーを製造し、実施例45と同様の方法により、実施例47のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表9に示す。
【0126】
(実施例48)
実施例47において、反応温度Tを、24℃に代えて0℃とした以外は、実施例47と同様の方法により、実施例48のポリマーを製造し、実施例47と同様の方法により、実施例48のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表9に示す。
【0127】
【表9】

【0128】
表9に示す結果から、以下のことが明らかとなった。
マイクロリアクターを用いて開始剤を調製し、この開始剤を用いて連続的に重合反応を行った場合においても、M/Mが1.25以下であるブロックポリマーを製造することができた。
【0129】
(実施例49)
−開始剤の調製〜ポリメチルメタアクリレートの製造−
バッチ反応容器を用い、ジフェニルエチレンに対して、n−ブチルリチウムを加え、開始剤3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム溶液を調製した。その後、マイクロリアクターを用い、1段目の反応としてメチルメタアクリレートを、開始剤3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム溶液の存在下でアニオン重合させ、2段目のマイクロリアクター中でメタノールにより反応を終結させ、実施例49のポリマーを得た。
【0130】
−−マイクロリアクター−−
1段目の反応に用いたマイクロリアクターとしては、実施例1で用いたものと同じものを用いた。また、2段目の反応に用いたマイクロリアクターとしては、実施例45で用いたものと同じものを用いた。そして、1段目のマイクロミキサーM1内の流路と、2段目のマイクロミキサーM2内の第一の導入路とを1段目のチューブリアクターを介して接続することで、1段目のマイクロリアクターと2段目のマイクロリアクターとを直列に連結する構成とした(図9参照)。送液用のポンプ、反応温度の調節などの他の構成は、実施例1と同様である。
【0131】
−−反応条件−−
図9は、実施例49〜51及び比較例16の反応系の概略を示す図である。図9に示すように、実施例49の1段目のマイクロミキサーM1の内径は250μmであり、2段目のマイクロミキサーM2の内径は500μmである。1段目のチューブリアクターの内径は、1.0mm、長さは200cmであり、2段目のチューブリアクターの内径は1.0mm、長さは50cmである。
そして、実施例49においては、0.50M メチルメタアクリレート溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第一の導入路から流速6.0ml/minで導入し、0.05M 開始剤3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム溶液を、1段目のマイクロミキサーM1の第二の導入路から流速2.0ml/minで導入し、流路内で層流により混合させた。反応温度Tは、0℃である。
そして、前記混合溶液を、2段目のマイクロミキサーM2の第一の導入路から導入し、0.33M メタノール溶液を、2段目のマイクロミキサーM2の第二の導入路から流速3.0ml/minで導入し、流路内で層流により混合、反応を終結させた。反応温度Tは、0℃である。
そして、実施例1と同様の方法により、実施例49のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0132】
(実施例50)
実施例49において、反応温度Tを、0℃に代えて−28℃とした以外は、実施例49と同様の方法により、実施例50のポリマーを製造し、実施例49と同様の方法により、実施例50のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0133】
(実施例51)
実施例49において、反応温度Tを、0℃に代えて−48℃とした以外は、実施例49と同様の方法により、実施例51のポリマーを製造し、実施例49と同様の方法により、実施例51のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0134】
(比較例16)
実施例49において、反応温度Tを、0℃に代えて−78℃とした以外は、実施例49と同様の方法により、比較例16のポリマーを製造し、実施例49と同様の方法により、比較例16のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0135】
(比較例17)
図10は、比較例17〜20の反応系の概略を示す図である。比較例17では、バッチ型反応器を用い、ジフェニルエチレン溶液1.1当量に対して、n−ブチルリチウム溶液を1当量加え、開始剤3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム溶液を調製した。該開始剤3−メチル−1,1−ジフェニルペンチルリチウム溶液の存在下でメチルメタアクリレート溶液30当量を加え、リビングアニオン重合させた。この混合溶液に対してメタノール溶液10当量を加えて、反応を終結させ、比較例17のポリマーを得た。具体的には、以下の手順で行った。
アルゴンガスで置換した100ml二口フラスコに、0.05M ジフェニルエチレン溶液を1.9ml仕込んだバッチ型反応器を恒温層に浸して0℃に冷却し、2.77Mのn−ブチルリチウム溶液36.1μlを加えた。これを磁気攪拌機を用いて攪拌しながら、0.50Mのメチルメタアクリレート溶液6mlを、3秒(sec)かけて滴下し、反応温度Tを0℃として10秒間攪拌した。その後、0.33Mのメタノール溶液3mlを、3秒かけて滴下し、反応温度Tを0℃として10分間攪拌した。
そして、実施例1と同様の方法により、比較例1のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す
【0136】
(比較例18)
比較例18では、比較例17における反応温度Tを、0℃に代えて−28℃とした以外は、比較例17と同様の方法により、比較例18のポリマーを製造し、比較例17と同様の方法により、比較例18のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0137】
(比較例19)
比較例19では、比較例17における反応温度Tを、0℃に代えて−48℃とした以外は、比較例17と同様の方法により、比較例19のポリマーを製造し、比較例17と同様の方法により、比較例19のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0138】
(比較例20)
比較例20では、比較例17における反応温度Tを、0℃に代えて−78℃とした以外は、比較例17と同様の方法により、比較例20のポリマーを製造し、比較例17と同様の方法により、比較例20のポリマーについて転化率、数平均分子量及び分子量分布を評価した。結果を表10に示す。
【0139】
【表10】

【0140】
表10の結果から、以下のことが明らかとなった。
即ち、マイクロリアクターを用いた実施例49、50、51では、それぞれの反応温度Tを0℃、−28℃、−48℃として、M/Mが1.25以下のポリマーを製造することができた。また、反応温度Tをそれぞれ0℃、−28℃とする実施例49、50では、反応温度Tを−48℃とする実施例51に対し、良好な転化率(100%)でポリマーを製造することができた。一方、反応温度Tを−78℃とする比較例16では、M/Mが1.25以下のポリマーを製造することができなかった。
また、バッチ型反応器を用いた比較例17〜20では、温度が上がるにつれて分子量分布が大きくなるとともに、0℃、−28℃、−48℃、−78℃のいずれの反応温度においても、M/Mが1.25以下のポリマーを製造することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のM/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法は、反応温度が−28℃以上でも分子量分布が狭いポリマーを効率よく製造することができ、例えば、繊維、ゴム、フィルム、接着剤、プラスチック製品などの分野で有用なポリマーの製造に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、実施例1〜8の反応系の概略を示す図である。
【図2】図2は、実施例10〜12及び比較例4、5、並びに、実施例13及び比較例6〜9の反応系の概略を示す図である。
【図3】図3は、実施例14〜24の反応系の概略を示す図である。
【図4】図4は、実施例14〜24の数平均分子量Mと、「〔M〕/〔I〕」との関係を示す相関図である。
【図5】図5は、実施例35〜38の反応系の概略を示す図である。
【図6】図6は、実施例39〜42の反応系の概略を示す図である。
【図7】図7は、実施例43、44及び比較例12、13の反応系の概略を示す図である。
【図8】図8は、実施例45〜48の反応系の概略を示す図である。
【図9】図9は、実施例49〜51及び比較例16の反応系の概略を示す図である。
【図10】図10は、比較例17〜20の反応系の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、モノマーを開始剤の存在下でリビング重合させることを特徴とする、M/Mが1.25以下であるポリマーの製造方法。
【請求項2】
リビング重合における反応温度が、−28℃以上である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
流路にモノマーを導入する第一の導入路、及び、流路に開始剤を導入する第二の導入路の内径が、それぞれ500μm以下である請求項1から2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
開始剤が有機リチウム試薬である請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
モノマーが官能基を有する請求項1から4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
モノマーがスチレン誘導体である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
開始剤がアルキルリチウムである請求項1から6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
アルキルリチウムがsec−ブチルリチウムである請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
ポリマーが直鎖ポリマーである請求項1から8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
ポリマーがブロックポリマーである請求項1から9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
多段階にリビング重合させる請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
複数の液体を混合可能な流路を備えるマイクロリアクターを用いて、少なくとも1段階のリビング重合後におけるポリマーの成長末端と、2つ以上の反応点を有する求電子剤とを反応させる工程を含む請求項11に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−67999(P2009−67999A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210576(P2008−210576)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】