説明

N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド、並びにその酒石酸塩及び結晶形態の合成

N−(4−フルオロベンジル−N−(1−メチルピペリジン)−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドである式(I)を合成する方法を本明細書中に開示する。また、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドのヘミ酒石酸塩、及び当該塩を得る方法を本明細書中に開示する。さらに、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)−フェニルメチル)カルバミド、及び様々な多形及び溶媒和物を含むこのヘミ酒石酸塩の様々な結晶形態を開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医学及び化学の分野に関する。より詳細には、本発明は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)−フェニルメチル)カルバミド、その酒石酸塩及び多形、並びにそれらの合成及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第01/66521号は、N−アザシクロアルキル−N−アラルキルカルバミド及びカルボン酸アミドを記載しており、これらは、5−HT2Aサブクラスのセロトニン受容体を含むモノアミン受容体の活性を阻害するのに効果的な新規の化合物群を構成する(国際公開第01/66521号)。当該化合物が使用される病状の例としては、統合失調症及び関連特発性精神病;うつ病;不安神経症(anxiety);睡眠障害;食欲不振;大
うつ病;双極性障害;精神病性特徴を伴ううつ病;及びツレット症候群等の情動障害等の神経精神病が挙げられるが、これらに限定されない。他の有益な治療は、薬物性精神病及びパーキンソン病の副作用;並びにアルツハイマー病又はハンチントン病等の神経変性障害、高血圧、偏頭痛、血管痙攣、虚血に続発する精神病;並びに、様々な血栓状態(心筋梗塞、血栓発作又は虚血発作、特発性血小板減少性紫斑病及び血栓性血小板減少性紫斑病、並びに末梢血管疾患を含む)の一次治療及び二次予防であり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書中に開示される一実施の形態は、式I:
【0004】
【化1】

【0005】
の化合物を製造する方法であって、式II:
【0006】
【化2】

【0007】
の(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミンと、式III:
【0008】
【化3】

【0009】
の4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネートとを反応させることを含む、式Iの化合物を製造する方法を含む。
【0010】
実施の形態によっては、4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネート1当量当たり、約0.9〜約1.1当量の(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミンが使用される。いくつかの実施の形態は、反応後に式Iの化合物を単離することをさらに含む。実施の形態によっては、単離が、反応後に塩形成酸を添加すること;溶媒除去、析出、又は溶媒除去及び析出の両方によって、形成される塩を単離すること;単離した塩を、有機溶媒相とアルカリ水性相とを含む二相系に添加すること;及び式Iの化合物を有機溶媒相から得ることを含む。実施の形態によっては、塩形成酸が、鉱酸、モノカルボン酸又はジカルボン酸、及びスルホン酸から成る群より選択される1つ又は複数である。実施の形態によっては、水性相のpHが約8.5より大きい。一実施の形態では、このpHが水性アルカリ金属水酸化物を添加することによって得られる。実施の形態によっては、反応が不活性有機溶媒の存在下で実行される。実施の形態によっては、この溶媒が、脂肪族エーテル、脂肪族カルボン酸のエステル、アルコール、ラクトン、ハロゲン化炭化水素、及び脂肪族C3〜C8ケトンから成る群より選択される1つ又は複数である。実施の形態によっては、反応が約−30℃〜約60℃の温度で実行される。
【0011】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態であって、10℃/分の加熱速度の示差走査熱量測定(DSC)により測定された約124℃の融点を示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態を含む。
【0012】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態であって、約13.0、約10.9、約6.5、約4.7、約4.3、約4.22及び約4.00のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態を含む。一実施の形態では、この結晶形態が、約13.0、約10.9、約6.8、約6.5、約6.2、約5.2、約4.7、約4.5、約4.3、約4.22、約4.00、約3.53、約3.40、約3.28、約3.24、約3.19、約3.08、約2.91及び約2.72のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0013】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、上記の結晶形態を製造する方法であって、
式I:
【0014】
【化4】

【0015】
の化合物の塩を水に溶解すること、
式Iの化合物を十分に溶解する量の非プロトン性有機溶媒を、塩水溶液に添加すること、
塩基を添加することにより、塩水溶液のpHを少なくとも約8.5の値に調整すること、
非プロトン性有機溶媒の一部を除去すること、
残りの非プロトン性有機溶媒を15℃未満に冷却すること、及び
形成される析出物を単離すること
を含む、上記の結晶形態を製造する方法を含む。
【0016】
実施の形態によっては、式Iの化合物の塩はヘミ酒石酸塩(hemi-tartrate)である。い
くつかの実施の形態は、有機溶媒の一部を除去する前に、水溶液を有機溶媒で抽出すると共に、全ての有機相を回収することをさらに含む。一実施の形態では、有機溶媒が、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪族カルボン酸のエステル、アルコール、ラクトン、エーテル及び脂肪族C4〜C8ケトンから成る群より選択される1つ又は複数である。
【0017】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態であって、
式I:
【0018】
【化5】

【0019】
の化合物のヘミ酒石酸塩を水に溶解すること;式Iの化合物を十分に溶解する量の非プロトン性有機溶媒を、塩水溶液に添加すること;塩基を添加することにより、塩水溶液のpHを少なくとも約8.5の値に調整すること;水溶液を有機溶媒で抽出すると共に、全ての有機相を回収すること;非プロトン性有機溶媒の一部を除去すること;残りの非プロトン性有機溶媒を15℃未満に冷却すること;及び形成される析出物を単離することを含むプロセスによって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態を含む。
【0020】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、式IV:
【0021】
【化6】

【0022】
のN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩である。
【0023】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩を製造する方法であって、上記のような式Iの化合物を合成する反応を実施すること、反応後に酒石酸を添加すること、及び生成されるヘミ酒石酸塩を単離することを含む、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩を製造する方法を含む。一実施の形態では、単離が、酒石酸の添加後に生成される懸濁液からヘミ酒石酸塩を得ることを含む。一実施の形態では、単離が、冷却、溶媒除去、非溶媒の添加、又はこれらの方法の組み合わせによってヘミ酒石酸塩を析出さ
せることを含む。
【0024】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の結晶形態であって、約18.6、約16.7、約10.2、約6.2、約6.1、約4.63、約4.49、約4.44及び約3.96のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の結晶形態を含む。一実施の形態では、粉末X線回折パターンが、約18.6、約16.7、約10.2、約8.2、約7.7、約7.4、約6.5、約6.2、約6.1、約5.86、約5.14、約5.03、約4.78、約4.69、約4.63、約4.49、約4.44、約4.35、約4.10、約3.96及び約3.66のd値(オングストローム)を有するピークを含む。
【0025】
一実施の形態では、上記の結晶形態が、式IV:
【0026】
【化7】

【0027】
の化合物をエタノール又はエタノールとイソプロパノールとの混合剤に溶解すること、溶液を約20℃未満の温度に冷却すること、及びその結果生じる析出固体を単離することによって、調製される。一実施の形態では、溶解工程中の温度が約55〜約90℃である。一実施の形態では、冷却工程中の冷却速度が約0.1〜約3℃/分である。
【0028】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、式IV:
【0029】
【化8】

【0030】
の化合物をエタノール又はエタノールとイソプロパノールとの混合剤中に、約55〜約90℃の温度で溶解すること、溶液を約20度未満の温度に、約0.1〜約3℃/分の速度で冷却すること、及びその結果生じる析出固体を単離することを含む方法によって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。
【0031】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、約17.4、約10.2、約5.91、約4.50、約4.37及び約3.87のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。一実施の形態は、約17.4、約10.2、約8.8、約6.4、約5.91、約5.46、約4.99、約4.90、約4.62、約4.50、約4.37、約4.20、約3.87、約3.73、約3.58、約3.42及び約2.90のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0032】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、約12.0、約10.7、約5.86、約4.84、約4.70、約4.57及び約3.77のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含み、以下、この結晶形態を形態Cと表わす。一実施の形態は、約12.0、約10.7、約7.4、約6.9、約6.6、約6.2、約5.86、約5.53、約5.28、約5.16、約4.84、約4.70、約4.57、約4.38、約4.09、約3.94、約3.77、約3.71、約3.49、約3.46、約3.25、約3.08及び約2.93のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0033】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、上記の結晶形態を製造する方法であって、式IV:
【0034】
【化9】

【0035】
の化合物の固体形態を非プロトン性溶媒中に懸濁すること、及び結晶形態Cの種結晶を添加しながら懸濁液を攪拌することを含む、上記の結晶形態を製造する方法を含む。一実施の形態では、懸濁工程中の溶媒の温度が約30〜約100℃である。一実施の形態では、
非プロトン性溶媒が、脂肪族エーテル又は環状エーテル、カルボン酸エステル、ラクトン、アルカン及び脂肪族C3〜C8ケトンから成る群より選択される1つ又は複数である。一実施の形態では、種添加が約40〜約80℃の温度で実行される。一実施の形態は、約0.1〜約1℃/分の速度で懸濁液を冷却することをさらに含む。一実施の形態では、懸濁
液がおよそ室温まで冷却される。
【0036】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、上記の結晶形態を製造する方法であって、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態、又はN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態の混合物を極性及び非プロトン性溶媒中に、約30〜約70℃の温度で懸濁すること、本明細書中に記載の結晶形態Cの種結晶を添加しながら懸濁液を攪拌すること、及び結晶固体を懸濁液から単離することを含む、上記の結晶形態を製造する方法を含む。
【0037】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、上記の結晶形態を製造する方法であって、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの酒石酸塩を溶媒中に、約0〜約70℃の温度で溶解すること、結晶形態Cの種結晶を添加しながら、得られた溶液を約50〜約70℃の温度で攪拌すること、得られた懸濁液を1時間当たり約5〜約15℃の冷却速度で、約−20℃〜およそ室温までの温度に冷却すること、及び結晶固体を懸濁液から単離することを含む、上記の結晶形態を製造する方法を含む。一実施の形態では、溶媒がテトラヒドロフランである。他の実施の形態では、溶媒が、アセトン、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、及びアセトニトリルから成る群より選択される1つ又は複数である。
【0038】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態、又はN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態の混合物を極性及び非プロトン性溶媒に、約30〜約70℃の温度で懸濁すること、結晶形態Cの種結晶を添加しながら懸濁液を攪拌すること、及び結晶固体を該懸濁液から単離することを含むプロセスによって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。
【0039】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの酒石酸塩をテトラヒドロフラン又はアセトン中に、約0〜約70℃の温度で溶解すること、結晶形態Cの種結晶を添加しながら、得られた溶液を約50〜約70℃の温度で攪拌すること、得られた懸濁液を1時間当たり約5〜約15℃の冷却速度で、約−20℃〜およそ室温までの温度に冷却すること、及び結晶固体を懸濁液から単離することを含むプロセスによって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。
【0040】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、約0%〜約6.6%のイソプロパノール又はエタノールを含み、約17.2、約16.0、約6.1、約4.64、約4.54及び約4.37のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。一実施の形態は、約17.2、約16.0、約10.7、約9.8、約6.6、約6.1、約6.00、約5.73、約5.33、約5.17、約4.91、約4.64、約4.54、約4.37、約4.10、約3.91、約3.84、約3.67、約3.55、約3.42、約3.32、約3.13及び約3.06のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す。
【0041】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、約5%のt−ブチルメチルエーテルを含み、約17.3、約16.2、約10.6、約9.8、約8.1、約7.5、約6.6、約6.0、約5.28、約5.09、約4.90、約4.72、約4.51、約4.39、約4.26、約4.04、約3.86、約3.70、約3.54、約3.48及び約3.02のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。
【0042】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態であって、約3%のテトラヒドロフランを含み、約19.0、約16.0、約13.0、約7.8、約6.4、約6.2、約5.74、約5.29、約5.04、約4.83、約4.62、約4.50、約4.34、約4.24、約4.05、約3.89、約3.76、約3.58及び約3.27のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態を含む。
【0043】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、式IV:
【0044】
【化10】

【0045】
の化合物と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を含む。
【0046】
本明細書中に開示される他の実施の形態は、上記結晶形態のうちの任意のものと、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む医薬組成物を含む。
【0047】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、式Iの化合物を受容者に送達する方法であって、対象者に式IV:
【0048】
【化11】

【0049】
の化合物を投与することを含む、式Iの化合物を受容者に送達する方法を含む。
【0050】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、モノアミン受容体の活性を阻害する方法であって、対象者に式IV:
【0051】
【化12】

【0052】
の化合物を投与することを含む、モノアミン受容体の活性を阻害する方法を含む。
【0053】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、神経精神病を治療する方法であって、対象者に式IV:
【0054】
【化13】

【0055】
の化合物を投与することを含む、神経精神病を治療する方法を含む。
【0056】
実施の形態によっては、神経精神病が、精神病;統合失調症;分裂情動障害;躁病、精神病性うつ病;情動障害;認知症;不安神経症;睡眠障害;食欲不振;双極性障害;高血圧、偏頭痛、血管痙攣、及び虚血に続発する精神病;運動性チック;振せん;精神運動遅延;動作緩慢;及び神経障害疼痛から成る群より選択される。
【0057】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、神経変性疾患を治療する方法であって、対象者に式IVの化合物を投与することを含む、神経変性疾患を治療する方法を含む。実施の形態によっては、神経変性疾患が、パーキンソン病;ハンチントン病;アルツハイマー病;脊髄小脳萎縮症;ツレット症候群;フリードライヒ運動失調症;マシャド・ジョセフ病;レービー小体型認知症;ジストニア;進行性核上麻痺;及び前頭側頭型認知症から成る群より選択される。
【0058】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、ドーパミン作動性療法に関連するジスキネジアを治療する方法であって、対象者に式IVの化合物を投与することを含む、ドーパミン作動性療法に関連するジスキネジアを治療する方法を含む。
【0059】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、ドーパミン作動性療法に関連するジストニア、ミオクローヌス又は振せんを治療する方法であって、対象者に式IVの化合物を投与することを含む、ドーパミン作動性療法に関連するジストニア、ミオクローヌス又は振せんを治療する方法を含む。
【0060】
本明細書中に開示される別の実施の形態は、血栓状態を治療する方法であって、対象者に式IVの化合物を投与することを含む、血栓状態を治療する方法を含む。実施の形態によっては、血栓状態が、心筋梗塞、血栓発作又は虚血発作、特発性血小板減少性紫斑病及び血栓性血小板減少性紫斑病、末梢血管疾患、並びにレイノー病から成る群より選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
1つの有用なN−アザシクロアルキル−N−アラルキルカルバミドは、式I:
【0062】
【化14】

【0063】
のN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドである。
【0064】
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの合成]
一実施形態は、式II:
【0065】
【化15】

【0066】
の化合物((4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミン)と、式III:
【0067】
【化16】

【0068】
の化合物(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネート)とを反応させることを含む、式Iの化合物を合成する方法である。
【0069】
一実施形態では、4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネート1当量当たり、約0.9〜約1.1当量の(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペ
リジン−4−イル)アミンを使用する。実施形態によっては、得られる式Iの化合物をこの反応混合物から単離する。一実施形態では、塩形成酸を反応後に添加する。溶媒除去、析出、又は溶媒除去及び析出の両方によって、形成される塩を単離してもよく、その後、アルカリ水性条件下で、有機溶媒との二相系に溶解することにより式Iの化合物を分離し、且つ式Iの化合物を有機溶液から分離する。好ましい実施形態では、4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネート1当量当たり、1.0当量の(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミンを反応に使用する。反応は、金属塩又はより好ましくは金属アルコキシレート等の触媒であるルイス酸の存在下で実行することができる。いくつかの例は、MgCl2、FeCl2、FeCl3、FeBr2、Fe(SO42、NiCl2、BCl3、AlCl3、BBr3、TiCl4、TiBr4、ZrCl4、BCl3、Al(O−C1−C4−アルキル)3、及びTi(O−C1−C4−ア
ルキル)3である。触媒の量は、式IIの化合物に対して、約0.0001〜約5重量%
、好ましくは約0.01〜約3重量%であり得る。
【0070】
反応は好ましくは、不活性有機溶媒、例えば、脂肪族エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン若しくはジオキサン)、脂肪族カルボン酸若しくはアルコールのエステル(例えば、酢酸のC2〜C4アルキルエステル)、ラクトン(例えば、バレロラクトン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン若しくはトリクロロメタン、テトラクロロエタン)、又は脂肪族C3〜C8ケトン(例えば、アセトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、又はメチルi−ブチルケトン若しくはメチルt−ブチルケトン)の存在下で実行される。
【0071】
反応温度は好ましくは、約−30℃〜約60℃の範囲、より好ましくは約5℃〜約30℃の範囲である。反応時間は、オンライン処理分析によるか、又はオフラインで試料を回収すると共に分析することによるいずれかで、式II又は式IIIの化合物の消費をモニタリングすることによって制御され得る。
【0072】
式Iの化合物の単離は、約100℃まで、好ましくは約80℃までの低温減圧下での反応残渣の蒸留による溶媒除去を含む任意の好適な方法によって、実施してもよい。また、単離は、溶媒の部分除去により濃度を上げ、不純物を濾過し、さらなる濃縮又は非溶媒(例えば脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン又は水))の添加のいずれかにより式Iの固体化合物を析出させ、この固体を濾過し、乾燥させることによって、起こり得る。単離された式Iの化合物を、蒸留法又はクロマトグラフ法等の既知の方法によって精製してもよい。
【0073】
単離前の形成された副生成物等の不純物の除去は、高純度の式Iの化合物を生成するのに好適な経路であることが見出された。さらに、カルバミドの塩を形成し、このカルバミドの塩を結晶化合物として析出し、その後溶媒から再結晶化して不純物を除去し得ることによって精製を効果的に改良し得ることが見出された。水への塩の溶解、塩基の添加、及び有機溶媒によるカルバミドの抽出によって、式Iの遊離カルバミドを分離する。蒸留による、必要に応じて減圧下での溶媒の除去前に、水及び水性塩化ナトリウムで有機溶液を洗浄してもよい。この方法において、その後の二相系の使用の際に析出又は水への溶解により、不純物を除去してもよい。塩の析出が、濾過又は遠心分離による容易な単離に望まれる場合、有機溶媒の部分除去及び新たな溶媒の添加を実行してもよい。低い塩溶解性を有する好適な溶媒は、非プロトン性有機溶媒、例えば、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、ケトン、カルボン酸エステル及びラクトン、アセトニトリル、及び少なくとも炭素数が3のアルコールである。
【0074】
塩形成酸は、無機酸又は有機酸、例えば鉱酸(HCl、HBr、HI、H2SO4)、モ
ノカルボン酸又はジカルボン酸(ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸)又はスルホン酸(メチルスルホン酸)から選択されてもよい。酸は、固体析出物又は結晶析出物を十分に形成する量で水溶液として添加されてもよい。この量は、主に酸の官能性に基づき、式Iの化合物に対して約0.5〜約2当量の範囲であってもよく、完全で迅速な塩形成のためには過剰であるのが望ましい。
【0075】
塩基を添加すると、分離された式Iの化合物が溶解するため、水、及び式Iの化合物に対する非水混和性有機溶媒に塩を溶解することができる。好適な塩基としては、LiOH、NaOH又はKOH等のアルカリ土類金属水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、水性相のpHが、約8.5より大きい。反応を数分から1時間で終了させてもよい。反応は好ましくは5〜30分後に停止する。その後、有機相は分離され、必要に応じて水及びブラインで洗浄し、且つ/又は濾過する。所望の生成物を、溶媒の除去及び乾燥によって、又は非溶媒による析出、濾過及び固体残渣の乾燥によって得ることができる。式Iの化合物は高純度及び高収率で得られる。
【0076】
上記の反応の出発原料は、既知の方法及び類似の方法によって得ることができる。詳細には、式IIの化合物は、例えば以下のスキーム:
【0077】
【化17】

【0078】
に従って、金属水素化物の存在下でN−メチルピペリド−4−オンと、4−フルオロベンジルアミンとを反応させることによって得ることができる。
【0079】
式IIIの化合物は、4−ヒドロキシベンズアルデヒドと、イソブチルハロゲン化物(例えば、イソブチルブロミド)とを反応させて、4−イソブトキシベンズアルデヒドを生成することによって調製することができ、この4−イソブトキシベンズアルデヒドは、ヒドロキシルアミンによりアルドキシム型:
【0080】
【化18】

【0081】
に変換し得る。このオキシムは、パラジウム触媒により水素添加され、対応する4−イソブトキシベンジルアミンとなる。この4−イソブトキシベンジルアミンから、ホスゲンと反応させることにより式IIIのイソシアネートを得ることができる。
【0082】
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(
4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態(形態Y)]
上記の方法を用いて、一般的に、式Iの化合物が実質的な非晶質固体として得られ、非晶質固体は、少量の結晶形態と混合されている。驚くべきことに、或る特定の条件下での塩基を分離する際、純粋な結晶形態がヘミ酒石酸塩等の塩形態から得られることが見い出された。さらにこの結晶化を用いて、塩の再結晶化によって、又は塩基自体の再結晶化によって塩基を精製することができる。
【0083】
したがって、一実施形態では、10℃/分の加熱速度の示差走査熱量測定(DSC)により測定された約124℃の特徴的な融点(ピーク温度)を示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態が提供され、以下この結晶形態を形態Yと表わす。形態Yの融解エンタルピーは約99J/gである。
【0084】
形態Yの粉末X線回折パターンを図1に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。13.0(vs)、10.9(vs)、6.8(vw)、6.5(s)、6.2(w)、5.2(w)、4.7(m)、4.5(w)、4.3(s)、4.22(vs)、4.00(m)、3.53(vw)、3.40(vw)、3.28(w)、3.24(w)、3.19(w)、3.08(w)、2.91(w)、及び2.72(w)。ここで括弧内の略字は以下のように用いられている。(vs)=極めて高い強度、(s)=高い強度、(m)=中程度の強度、(w)=低い強度、及び(vw)=極めて低い強度。様々な実施形態において、形態Yの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式Iの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0085】
形態Yは、式Iの化合物の、熱力学的に極めて安定な形態である。粉末X線回折及びDSCは形態Yの結晶特徴を示し、主要な組成物の分析が式Iの化合物に適合する。式Iの結晶形態Yは白色粉末として得られる。
【0086】
式Iの化合物は様々な有機溶媒に溶解性であり、水には低溶解性を示す。対照的に、式Iの化合物の塩は水に極めて溶解性である。これらの性質を用いて、式Iの化合物の形態Yを調製することができる。例えば、形態Yを形成する1つの方法は、
a)式Iの塩形態、好ましくはヘミ酒石酸塩を攪拌しながら水に溶解すること、
b)生成される式Iの化合物を溶解するのに十分な量の非プロトン性有機溶媒を添加すること、
c)塩基を添加することにより塩水溶液のpHを少なくとも8.5の値に調整すること、
d)必要に応じて水性相を有機溶媒で抽出すると共に、有機相を全て回収すること、
e)溶媒の一部を除去すると共に、残りの有機溶液を15℃未満に冷却すること、
f)必要に応じて攪拌しながらこの温度を維持すること、及び
g)析出物を濾別し、固体残渣を洗浄し、且つこれを乾燥すること
を含む。母液を再び濃縮及び冷却して収率を上げることができる。塩形成酸は、無機酸又は有機酸、例えば鉱酸(例えば、HCl、HBr、HI、H2SO4、H3PO4)、モノカルボン酸又はジカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸)、スルホン酸(例えば、メチルスルホン酸)、クエン酸、グルクロン酸、リンゴ酸、パモン酸又はエタン−1,2−ジスルホン酸から選択されてもよい。
【0087】
好適な溶媒は、トルエン等の炭化水素;ジクロロメタン又はトリクロロメタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;脂肪族カルボン酸及びアルコールのエステル(酢酸のC2〜C4アルキルエステル)(酢酸エチル);ラクトン(バレロラクトン);エーテ
ル(ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメチルエーテル)、脂肪族C4〜C8ケトン(メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、又はメチルi−ブチルケトン又はメチルt−ブチルケトン)である。工程c)のpH値は有益には、少なくとも9.5に調整され得る。好適な塩基としては、LiOH、NaOH、KOH又はCa(OH)2等の水溶性のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ
土類金属水酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
溶媒の一部の除去は主に、有機溶液を濃縮させるように作用して、有機溶液が約5〜約30重量%の式Iの化合物を含有するようにする。冷却温度は好ましくは、約−10〜約10℃の範囲であり、最も好ましくは約0℃〜約10℃の範囲である。必要に応じて攪拌下でのこの温度における保存時間は好ましくは、約30分〜約12時間である。残りの溶媒の除去は、従来様式で、真空下、希ガス流中、又はこの両方において実行してもよい。
【0089】
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の形成]
式Iの化合物は水への低溶解性を有する。したがって、実施形態によっては、水溶解性の形態であり、それゆえ、優れた生物学的利用能、並びに薬品組成物の調製及び生成に関する優れた処理特徴を有する化合物の形態が提供される。N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドのヘミ酒石酸塩が特に好適であることが見出された。したがって、一実施形態は、式IV:
【0090】
【化19】

【0091】
に記載のN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩を提供する。
【0092】
式IVの化合物は、塩形成酸として酒石酸を用いて上記の式Iの化合物を合成するプロセスに統合された部分として調製することができる。代替的には、酒石酸塩は、単離された式Iの化合物と酒石酸との反応によって生成し得る。
【0093】
一実施形態では、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩が、以下の方法:
a)約0.9〜約1.1当量の式II:
【0094】
【化20】

【0095】
の(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミンと、1当量の式III:
【0096】
【化21】

【0097】
の4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネートとを反応させること、
b)酒石酸を添加すること、及び
c)式Iの化合物のヘミ酒石酸塩を得られる懸濁液から単離することに従って生成される。また、ヘミ酒石酸塩は、冷却、溶媒除去、非溶媒の添加又はこれらの方法の組み合わせによる析出によって得ることができる。一実施形態では、工程b)において、ヘミ酒石酸塩に対して低溶解性である、酢酸イソプロピル、ケトン(例えば、アセトン又は2−ブタノン)及び/又はテトラヒドロフラン等の1つ又は複数の溶媒を添加する。工程b)の温度は好ましくは、約15〜約30℃である。ヘミ酒石酸塩は、析出し、懸濁液を生成する。この懸濁液は、好ましくは周囲条件で反応混合物から固形分を濾別する前に、最大3日間攪拌され得る。固体残渣を洗浄し、その後最大50℃の温度で、所望であれば真空下で乾燥してもよい。
【0098】
式IVのヘミ酒石酸塩は、高収率及び高純度で得られる。母液を用いて、常法でより多くの式IVのヘミ酒石酸塩を単離することができる。式Iの遊離塩基に変換してこの塩基の溶液を単離し、その後、この溶液を、酒石酸を添加することによりヘミ酒石酸塩を再結晶化するのに用いることによって、ヘミ酒石酸塩をさらに精製することができる。
【0099】
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の結晶形態(形態A〜形態C)]
驚くべきことに、式IVの化合物が多数の結晶形態で得られることが見出された。上記の方法により生成されるこのような結晶固体形態の1つは以下、結晶形態Aと表わす。結晶形態Aは、FT赤外分光法と組み合わせた熱重量分析において熱に曝した際に、又はカールフィッシャー滴定法により、実証するように一般的にいくらか水を含有する。含水量は、最大約2〜3重量%の範囲であってもよく、これは一般的に半水和物に相当する。しかしながら、周囲温度をわずかに超えると重量損失が始まり、約150℃で完了するため
、水は弱くしか結合していない。また、水は、長時間(約20時間まで)の乾燥窒素を用いた処理によって容易に除去されることができ、形態Aは水を含んでいない状態でも存在することができる。DSCは、脱水形態Aの融点が約133〜135℃(ピーク温度)を示し、融解エンタルピーは約70J/gを示す。形態Aは、湿度、特に75%を超える相対湿度に曝されると、顕著な吸水を示す。相対湿度が50%以下に下がると、水を放出する。この挙動は、潮解性の固体に典型的なものである。結晶形態Aである式IVの化合物は、メタノール、水、又は水と混合される有機溶媒に極めて溶解性である。式IVの化合物は、他の有機溶媒への低溶解性を示す。結晶形態Aは、上記の方法に従って生成されると、(後記のような)少量の結晶形態Cを含有する。
【0100】
形態Aの粉末X線回折パターンを図2に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。18.6(s)、16.7(vs)、10.2(s)、8.2(m)、7.7(w)、7.4(w)、6.5(w)、6.2(m)、6.1(vs)、5.86(w)、5.14(m)、5.03(m)、4.78(m)、4.69(m)、4.63(s)、4.49(s)、4.44(vs)、4.35(m)、4.10(m)、3.96(s)、及び3.66(m)。様々な実施形態において、形態Aの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式IVの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0101】
結晶形態Aは、必要に応じてイソプロパノールと混合した、エタノールによる結晶化により制御された方法で調製され得る。したがって、一実施形態は、
a)高温で、エタノール又はエタノールとイソプロパノールとの混合剤に式IVの化合物を溶解すること、
b)この溶液を20℃未満の温度まで徐冷すること、及び
c)析出固体を濾別すると共に、これを乾燥すること
を含む、結晶形態Aを調製する方法である。
【0102】
実施形態によっては、エタノールとイソプロパノールとの混合物が、最大約15体積%、より好ましくは最大10体積%のイソプロパノールを含有していてもよい。エタノールが好ましい溶媒である。また、乾燥エタノールを、必要に応じて乾燥イソプロパノールと混合して使用することが好ましい。実施形態によっては、高温が約55〜約90℃、より好ましくは約55〜約65℃である。高温で、式IVの化合物が完全に溶解するまで混合物を攪拌する。徐冷は、約0.1〜約3℃/分、好ましくは約0.2〜約2℃/分、特に約0.2〜約1℃/分の冷却速度を意味する。結晶化は約50℃未満で始まり、このような温度で約1時間攪拌すると、粘性のペーストが生成することが観察される。再び高温に加熱した後、再び冷却すると、一般的に、懸濁液が得られる。すなわち、約40〜約50℃、また、約20℃未満、好ましくは約5〜約15℃の温度に冷却し攪拌することができる。攪拌後の冷却速度は、約0.1〜約3℃/分、好ましくは約0.3〜約1℃/分であってもよい。次に、得られた結晶固体を濾別し、約25〜約40℃未満、好ましくは約30℃の温度で濾過ケークを通して乾燥空気を吸引することにより乾燥させる。予備乾燥された固体を一定時間、真空下、周囲温度又は高温で維持することによって乾燥を完了してもよい。
【0103】
式IVの化合物は、化合物を例えば水等の溶媒に溶解することによって、且つ溶液を凍結乾燥することによって完全な非晶質形態に転化し得る。その後、この非晶質形態を使用して、他の多形形態又は擬似多形形態を生成することができる。
【0104】
一実施形態では、式IVの化合物の別の結晶形態が、溶媒として酢酸エチル、アセトン、メチル−エチルケトン又はアセトニトリルを用いた再現可能な方法で相平衡法を用いて
調製される。この結晶固体は以下、結晶形態Bと表わす。結晶形態Bは、FT赤外分光法と組み合わせた熱重量分析において熱に曝した際に、又はカールフィッシャー滴定法によって、実証されるように一般的にいくらか水を含有する。含水量は、最大約3.4重量%の範囲であってもよい。この量は一般的に、周囲条件下で安定な一水和物を示す(理論含量は3.5%である)。しかしながら、重量損失は周囲温度及び約20%未満の低相対湿度で観察されるため、水は弱くしか結合しておらず、また、形態Bは水を含んでいない状態でも存在することができる。脱水形態Bの融点は約135℃であり、融解エンタルピーは約71J/gである。形態Bは、高湿度、特に80%を超える相対湿度に曝されると顕著な吸水を示す。しかしながら、吸湿性は形態Aで観察されるものより小さく、約90%の高い相対湿度では潮解が見られない。
【0105】
形態Bの粉末X線回折パターンを図3に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。7.4(vs)、10.2(s)、8.8(w)、6.4(w)、5.91(vs)、5.46(w)、4.99(m)、4.90(m)、4.62(m)、4.50(vs)、4.37(vs)、4.20(w)、3.87(vs)、3.73(w)、3.58(m)、3.42(w)、及び2.90(w)。様々な実施形態において、形態Bの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式IVの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0106】
結晶形態Bは、様々なプロセスにより制御された方法で調製され得る。一実施形態では、結晶形態Bは、水又は塩化メチレン等の極性溶媒の溶液から、メチルエチルケトン、ヘプタン、トルエン、アセトニトリル又は酢酸エチル等の非溶媒を用いて0〜40℃の温度で析出され、その後、実質的に室温で相平衡される。別の方法は、室温から約40℃の温度での、必要に応じて温度サイクルを用いた、溶媒(例えば、アセトニトリル、酢酸エチル、エタノール/メチルエチルケトン、エタノール/アセトン、水飽和酢酸エチル、約1体積%の水を含有するアセトニトリル若しくは酢酸エチル)中の、結晶形態A若しくは結晶形態C又はそれらの混合物等の他の結晶形態の懸濁液の平衡である。0〜約45℃の温度での、必要に応じて温度サイクルの適用下での、式Iの化合物の非晶質材料を含む懸濁液の平衡が、形態Bを調製するさらなる方法である。好適な溶媒は、ヘプタン、酢酸エチル、アセトニトリル、メチルエチルケトン、水飽和酢酸エチル若しくは水飽和メチル第三級ブチルエーテル、又は1体積%の水を含有する酢酸エチル/エタノールである。
【0107】
ヘミ酒石酸塩の生産による結晶形態Aは、別の多形形態をいくらか含有し得ることが観察され、さらなる調査により、この多形が水和物でも溶媒和物でもないことが分かった。この結晶固体は以下、結晶形態Cと表わす。結晶形態Cは、結晶形態A又は結晶形態Bの懸濁液平衡によって、好ましくは形態Cの種結晶の添加を伴うことにより調製され得る。結晶形態Cは形態A又は形態Bよりも、熱力学的にも化学的にも安定である。結晶形態Cは、形態Aほど水を吸収しない。約95%の相対湿度での吸水は、約1%しかなく、潮解も吸湿性も観察されない。湿度に曝しても結晶形態は変化しない。結晶形態Cは、開放型容器内の75%の相対湿度で安定であり、約60℃まで水を吸収しない。熱重量分析により150℃未満で約0.9%の重量損失が得られ、これは、吸収された水に起因すると考えることができる。20℃の加熱速度のDSCによる調査は、177℃で吸熱シグナルを示し、融解エンタルピーは約129J/gを示す。このシグナルは、融点(ピーク温度)に起因すると考えられるため、物質の第1の分解は170℃超で観察される。水への結晶形態Cの溶解性は極めて高い。結晶形態Cは、薬品の製造及び生成における活性化合物として至極好適である。
【0108】
形態Cの粉末X線回折パターンを図4に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。12.0(w)、10.7(vs)、7
.4(vw)、6.9(vw)、6.6(vw)、6.2(w)、5.86(m)、5.53(w)、5.28(m)、5.16(m)、4.84(vs)、4.70(m)、4.57(s)、4.38(m)、4.09(w)、3.94(w)、3.77(s)、3.71(m)、3.49(w)、3.46(w)、3.25(w)、3.08(w)、及び2.93(w)。様々な実施形態において、形態Cの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式IVの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0109】
一実施形態では、薬学的に活性な化合物の工業生産のために大規模に純粋な結晶形態Cを調製する方法が提供される。加熱されその後冷却された溶液からの結晶化では、容易に形態Cを得られないことが見出された。結晶形態A又はBが、極性及び非プロトン性溶媒の存在下、懸濁液中で平衡化され、且つ形態Cの種結晶が添加される制御された方法で形態Cを生成し得ることがさらに見出された。種結晶を用いる代わりに、式IVの化合物を調製した後の結晶形態Cをいくらか含有する出発原料を用いてもよい。懸濁液中の固形分は、1〜約200、好ましくは2〜100μmの範囲の粒径を有する結晶を有していてもよく、これは、例えば真空下60℃の穏やかな条件下で濾別され、洗浄され、乾燥される。得られる粒径は、生産規模、使用される溶媒又は溶媒混合物、冷却速度、及び添加される種結晶の数に基づく。
【0110】
結晶形態Cを調製する1つの方法は、高温で非プロトン性溶媒中で式IVの固体化合物の懸濁液を形成すること、及び純粋な形態Cへと実質的に完全に変換されるまで、この懸濁液を攪拌すること、必要に応じて形態Cの種結晶を添加することを含む。
【0111】
プロセス温度は、20〜100℃、好ましくは40〜80℃であり得る。形態Cへの変換に好適な溶媒は、脂肪族エーテル又は環状エーテル、カルボン酸エステル、ラクトン、アルカン及び脂肪族C3〜C8ケトンから成る群より選択される。固体形態が部分的に溶解されており、この固体形態が懸濁する飽和溶液が生成される場合、形態Cの結晶による種添加を実行することが好ましい。種添加は、好ましくは40〜80℃、より好ましくは55〜65℃の範囲の温度で実行される。懸濁液の攪拌時間は、30分から数日、最も好ましくは30分〜6時間であり得る。懸濁液は、濾過又は遠心分離による固体の単離前に徐冷され、冷却速度は0.1〜1℃/分であってもよい。冷却は、室温付近か又はそれ未満の最終温度まで実行してもよい。
【0112】
一実施形態は、
a)30〜70℃の温度において極性及び非プロトン性溶媒中で攪拌しながら、非晶質形態、結晶形態A、B、D、E若しくはF、又はそれらの混合物を懸濁すること、
b)30〜70℃の温度で攪拌し続けると共に、結晶形態Cが出発原料中に存在しない場合には、結晶形態Cの種結晶を添加すること、
c)結晶形態Cの形成が完了するまで、30〜70℃の温度で攪拌し続けること、
d)プロセス終了温度まで冷却すること、
e)懸濁液から結晶固体を単離すること、及び
f)必要に応じて、結晶固体を洗浄し、その後乾燥させること
を含む、式IVのN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態Cを調製するプロセスである。
【0113】
結晶形態Aを出発原料として使用することができるが、プロセスは、形態B、D、E及びFを用いて、又は非晶質形態を用いて実行することもできる。出発原料は有益には使用前に乾燥され得る。一般的に、40℃、真空下での乾燥は、形態Cの形成を損なわせることになりかねない望ましくない残留溶媒(例えば、アルコール、水、又はそれらの混合物
)を除去するのに十分である。形態Cの結晶化に好適な溶媒は、エーテル、カルボン酸エステル、ラクトン及び脂肪族ケトンから成る群より選択され得る。いくつかの具体例及び好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、プロピルメチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、t−ブチルメチルケトン、アセトン及びメチルエチルケトンである。最も好ましい溶媒は、ケトンであり、特に好ましいものは、メチルエチルケトン及びテトラヒドロフランである。出発原料として使用される場合、懸濁液中の結晶形態A又はBの量は重要ではなく、この量は、懸濁液が適用温度で攪拌することができるように選択される。工程a)の温度は好ましくはおよそ室温である。
【0114】
工程b)及び工程c)の温度は、10〜60℃の範囲であり得る。より高い温度とより低い温度との間の温度サイクルを利用することが有益である。添加される種結晶の量は、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%であり、結晶形態A及び/又は結晶形態Bの量とみなされる。結晶形態の転化を促進するために、種結晶の添加が一般的に好ましい。
【0115】
工程c)の攪拌は数時間から数日間、例えば、0.5時間〜3日間、好ましくは2時間〜約2日間続けてもよい。転化/変換時間は実質的に、規模、温度、使用される溶媒、攪拌強度、及び懸濁液に添加される種結晶の量に基づく。変換時間は、オンライン処理分析によるか、又はオフラインで試料を回収すると共に分析することによるいずれかで、消失する形態と形成される形態Cとの比をモニタリングすることによって制御され得る。
【0116】
結晶固体の単離は、遠心分離又は濾過によって実行され得る。この生成物を例えば溶媒で洗浄し、その後、溶媒を除去するのに十分な時間真空を適用して、又は濾過ケークを通して、必要であれば真空下で吸引した乾燥不活性ガスにより乾燥させてもよい。さらに、乾燥は、真空下且つ/又は約80℃までの適温で実施され得る。形態Cは濾過及び乾燥に関して優れた特性を示し、事実上、残留溶媒を含まない(すなわち、溶媒が1,000ppm未満、好ましくは200ppm未満である)固体材料が得られることに留意することができる。
【0117】
驚くべきことに、結晶形態Cが、選択された溶媒中の式IVの化合物の溶液からの結晶化、及び高温における結晶形態Cによる種添加によっても調製され得ることが見出された。したがって、一実施形態では、
a)0〜70℃の温度において好適な溶媒中で攪拌しながら、非晶質形態、結晶形態A、B、D、E若しくはF、又はそれらの混合物を溶解すること、
b)高温、好ましくは約50〜70℃、最も好ましくは55〜65℃の温度で攪拌し続けると共に、結晶形態Cの種結晶を溶液に添加すること、
c)同じ温度で、式IVの化合物を結晶形態Cに変換するのに十分な時間、生成した懸濁液の攪拌を続けること、
d)得られた懸濁液を、5〜15℃/時間の冷却速度で−20℃から室温、好ましくは0〜25℃まで冷却すること、
e)懸濁液から結晶固体を単離すること、及び
f)必要に応じて、結晶固体を洗浄し、その後乾燥させること
を含む、結晶形態Cを調製する方法が提供される。
【0118】
工程a)における式IVの化合物の量は、濃縮溶液が得られるように選択される。達成される濃度は、使用される溶媒又は溶媒混合物、及び出発原料の溶解性に応じて決まる。一般に約200mg/mlの形態Aを環流温度で溶解させることができるため、テトラヒドロフラン、及びテトラヒドロフランを含有する混合物が溶媒として好ましい。しかしながら、出発原料を溶解するのに好適ないずれかの溶媒を使用してもよい。非限定的な例としては、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノール、イソプロパノール、ジクロロメタ
ン、1,4−ジオキサン及びアセトニトリルが挙げられる。工程a)の温度は好ましくは40〜70℃である。工程b)の添加される種結晶の量は、溶解した式IVの化合物の量に対し、0.1〜15重量%、好ましくは2〜10重量%である。工程c)の攪拌時間は規模に応じて決定され、約20分〜約24時間、より好ましくは25分〜12時間、最も好ましくは30分〜6時間の範囲であり得る。工程d)の冷却速度は好ましくは8〜12℃/時間である。24時間、好ましくは18時間、より好ましくは14時間までの間、冷却温度範囲で冷却した後で攪拌を続けてもよい。
【0119】
結晶形態Cは高い多形純度で得られる。上記のプロセスで得られる材料は、例えば、結晶形態Cに対して最大20重量%又は最大10重量%の量で、残留する出発原料を含有していてもよい。また、これらの混合物は薬品製剤に極めて好適である。
【0120】
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の溶媒和物(形態D〜形態F)]
実施形態によっては、式IVの化合物は、或る特定の溶媒と様々な溶媒和物を形成し得る。これらの擬似多形形態は、薬品製剤中に、又は他の多形形態の製造に使用し得る。実施形態によっては、これらの溶媒和物は、溶媒和形態(すなわち、それぞれの溶媒を十分量で含有する)として、又は対応する非溶媒和形態(すなわち、溶媒を含まない形態)で存在し、結晶構造が事実上保持される。
【0121】
1つのこのような溶媒和物は、結晶形態A又は式IVの化合物の非晶質形態のイソプロパノール懸濁液平衡によって生成される。窒素下で約30分間乾燥した後、生成した溶媒和物は、約6.0〜6.6重量%のイソプロパノールを含有している。ヘミイソプロパノラート(hemi-isopropanolate)の理論値は、イソプロパノール含有量が5.6%であり、
半溶媒和物が生成したと結論付けられる。イソプロパノールを含む半溶媒和物(hemi-solvate)は、開放型容器内で53%の相対湿度に曝されても安定である。この形態を本明細書中で結晶形態Dと表わす。
【0122】
形態Dの粉末X線回折パターンを図5に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。17.2(s)、16.0(m)、10.7(vw)、9.8(w)、6.6(m)、6.1(s)、6.00(m)、5.73
(w)、5.33(w)、5.17(m)、4.91(m)、4.64(s)、4.54(vs)、4.37(vs)、4.10(m)、3.91(m)、3.84(m)、3.67、(w)、3.55(m)、3.42(m)、3.32(w)、3.13(w)、及び3.06(m)。様々な実施形態において、形態Dの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式IVの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0123】
さらに、式IVの化合物の非晶質形態が、周囲温度、TBME中で相平衡を受けると、t−ブチルメチルエーテル(TBME)溶媒和物を生成し得ることが見出された。TBMEの含有量は、式IVの化合物に対して約5重量%であり、これは10℃の加熱速度での熱重量分析によって測定された。この形態を本明細書中で結晶形態Eと表わす。
【0124】
形態Eの粉末X線回折パターンを図6に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。17.3(vs)、16.2(m)、10.6(m)、9.8(m)、8.1(w)、7.5(w)、6.6(m)、6.0(vs)、5.28(m)、5.09(s)、4.90(m)、4.72(vs)、4.51(m)、4.39(s)、4.26(s)、4.04(m)、3.86(w)、3.70(w)、3.54(m)、3.48(m)、3.02(w)。様々な実施形態において、
形態Eの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式IVの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0125】
また、テトラヒドロフラン(THF)中の溶液からの式IVの化合物の結晶化は、非化学量論的なTHF溶媒和物をもたらし、10℃の加熱速度の熱重量分析により測定されるように、これは式IVの化合物に対して0〜約3%のTHFを含有することが分かった。周囲温度を超えると溶媒放出が始まり、130℃付近で完了する。この形態を本明細書中で結晶形態Fと表わす。
【0126】
形態Fの粉末X線回折パターンを図7に示す。詳細には、粉末X線回折パターンは、d値(Å)で表わされる以下の特性ピークを示す。19.0(w)、16.0(m)、13.0(m)、7.8(w)、6.4(m)、6.2(m)、5.74(w)、5.29(w)、5.04(m)、4.83(m)、4.62(m)、4.50(m)、4.34(m)、4.24(vs)、4.05(m)、3.89(m)、3.76(m)、3.58(w)、及び3.27(m)。様々な実施形態において、形態Fの少なくとも約50%、70%、80%、90%、95%又は98%の量は、固体形態の式IVの化合物で存在し、残りは他の結晶形態(水和物及び溶媒和物を含む)及び/又は非晶質形態である。
【0127】
[安定性及び医薬製剤]
上述のように、式IVの化合物は特に、モノアミン受容体、好ましくは5−HT2Aサブクラスのセロトニン受容体の活性を阻害する医薬製剤における活性化合物又はプロドラッグとして好適である。式IVの化合物は、水性系中で非常に良好な溶解性を有し、この遊離塩基が生理学的pH範囲で脱離されるため、高い生物学的利用能を付与する。式IVの化合物はまた高い保存安定性を有する。
【0128】
結晶形態Cは、確認される全ての結晶形態のうちで最も安定な形態であることが見出された。また結晶形態A及び結晶形態Bは周囲温度で安定であり、形態Cの存在下安定であり、結晶形態Cと共存することができることが見出された。結晶形態A、B、及び特にCは、湿性構成成分の存在下でさえ、様々な種類の広範な製剤に好適である。これらの新たな結晶形態A、B、及び特にCは、製造、好適な結晶サイズ及び形態による良好な取り扱い性、様々な種類の製剤の製造条件下での非常に良好な安定性、保存安定性、高い溶解性、及び高い生物学的利用能にいくらかの利点を提示する。結晶形態D、E及びFも医薬製剤に使用することができる。
【0129】
形態Cは化学的に非常に安定であり、容易に錠剤又は任意の他の薬学的に許容可能な投薬形態へと処方される。高熱安定性にもかかわらず、形態Cは、水溶性が約50〜100mg/mlを超えるため、好ましい溶解性を示す。形態A、B、D、E及びFは200mg/mlを超える高い水溶性を示す。全ての形態の溶解性は水性環境中のpHに応じて決定される。
【0130】
形態A及び形態Bは、周囲水分圧(例えば、20%〜75%の相対湿度)下で十分な安定性を示す。さらに、形態A及び形態Bは、水性環境中、医薬プロセス処理、例えば、水によるか又は溶媒−水混合物による造粒に極めて好適である。
【0131】
したがって、いくつかの実施形態は、式IVの化合物及び薬学的に許容可能な担体又は希釈剤を含む医薬組成物を含む。実施形態によっては、式IVの化合物は、結晶形態A、B及びCから成る群より選択される。
【0132】
必要な式IVの化合物の量は実質的に、製剤の種類、及び投与時間の間の所望の投薬量
に応じて決定される。経口製剤の量は、0.1〜500mg、好ましくは0.5〜300mg、より好ましくは1〜100mgであってもよい。経口製剤は、カプセル、錠剤、丸薬及びトローチ等の固形製剤、又は水性懸濁剤、エリキシル剤及びシロップ剤等の液状製剤であってもよい。固形製剤及び液状製剤は、流動食又は固形食に式IVの化合物を取り込んだものも含む。液体は、注入又は注射等の非経口用途のための式IVの化合物の溶液も含む。
【0133】
上記の結晶形態は、粉末(例えば、微粉粒子)、顆粒、懸濁液又は溶液として直接使用してもよく、構成成分を混合する際、他の薬学的に許容可能な成分と併用してもよく、又は必要に応じて結晶形態を微粉砕し、その後、例えばハードゼラチン又はソフトゼラチンから成るカプセルに充填するか;錠剤、丸薬若しくはトローチに加圧するか;又はそれらを担体中に懸濁若しくは溶解して懸濁液、エリキシル剤及びシロップ剤に構成してもよい。コーティングを、加圧して丸薬を形成した後に適用してもよい。
【0134】
薬学的に許容可能な成分は、様々な種類の製剤でよく知られており、例えば、様々な製剤タイプ用の、天然ポリマー又は合成ポリマー等の結合剤、賦形剤、潤滑剤、界面活性剤、甘味料及び風味料、コーティング材料、防腐剤、染料、増粘剤、補助剤、抗菌剤、抗酸化剤、並びに担体であってもよい。
【0135】
結合剤の例は、トラガカントゴム、アカシア、デンプン、ゼラチン、及びジカルボン酸のホモポリエステル又はコポリエステル等の生分解性ポリマー、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール及び/又は脂肪族ヒドロキシルカルボン酸;ジカルボン酸のホモポリアミド又はコポリアミド、アルキレンジアミン、及び/又は脂肪族アミノカルボン酸;対応するポリエステル−ポリアミド−コポリマー、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリホスファゼン及びポリカーボネートである。生分解性ポリマーは、直鎖、分岐鎖又は架橋していてもよい。具体例は、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリ−d,l−ラクチド/グリコリドである。ポリマーの他の例は、ポリオキサアルキレン(例えば、ポリオキサエチレン、ポリオキサプロピレン及びそれらのポリマー混合物)等の水溶性ポリマー;ポリアクリルアミド、及びヒドロキシルアルキル化ポリアクリルアミド;ポリマレイン酸、及びそのエステル又はアミド;ポリアクリル酸、及びそのエステル又はアミド;ポリビニルアルコール、及びそのエステル又はエーテル;ポリビニルイミダゾール;ポリビニルピロリドン;並びにキトサン等の天然ポリマーである。
【0136】
賦形剤の例は、リン酸二カルシウム等のリン酸塩である。
【0137】
潤滑剤の例は、天然油若しくは合成油、脂肪、ワックス、又はステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩である。
【0138】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は中性であってもよい。界面活性剤の例は、レシチン、リン脂質、硫酸オクチル、硫酸デシル、硫酸ドデシル、硫酸テトラデシル、硫酸ヘキサデシル及び硫酸オクタデシル、オレイン酸Na又はカプリン酸Na、1−アシルアミノエタン−2−スルホン酸(例えば、1−オクタノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−デカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−ドデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−テトラデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、1−ヘキサデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸、及び1−オクタデカノイルアミノエタン−2−スルホン酸)、並びにタウロコール酸及びタウロデオキシコール酸、胆汁酸及びその塩(例えば、コール酸、デオキシコール酸及びグリココール酸ナトリウム)、カプリン酸ナトリウム又はラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、硫酸化ヒマシ油、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン及びラウリルベタイン、脂肪アルコール、コレステロール、モノ
ステアリン酸グリセロール又はジステアリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール又はジオレイン酸グリセロール及びモノパルミチン酸グリセロール又はジパルミチン酸グリセロール、並びにステアリン酸ポリオキシエチレンである。
【0139】
甘味料の例は、スクロース、フルクトース、ラクトース又はアスパルテームである。
【0140】
風味料の例は、ペパーミント、ウィンターグリーン油、又はチェリーフレーバー又はオレンジフレーバーのような果物のフレーバーである。
【0141】
コーティング材料の例は、ゼラチン、ワックス、セラック、糖質、又は生分解性ポリマーである。
【0142】
防腐剤の例は、メチルパラベン又はプロピルパラベン、ソルビン酸、クロロブタノール、フェノール及びチメロサールである。
【0143】
補助剤の例は芳香剤である。
【0144】
増粘剤の例は、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩及び脂肪酸エステル、並びに脂肪アルコールである。
【0145】
抗酸化剤の例は、ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD若しくはビタミンE)、野菜エキス、又は魚油である。
【0146】
液体担体の例としては、水、アルコール(例えば、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)、トリアセチン及び油である。固体担体の例は、タルク、クレイ、微結晶性セルロース、シリカ及びアルミナ等である。
【0147】
本発明による医薬製剤は、糖質、緩衝液又は塩化ナトリウム等の等張剤を含んでもよい。
【0148】
また、本発明による式IVの化合物は、発泡性錠剤又は発泡性粉末として処方されてもよく、これは、水性環境中で分解して飲料溶液となる。
【0149】
シロップ剤又はエリキシル剤は、式IVの化合物、甘味料としてスクロース又はフルクトース、メチルパラベンのような防腐剤、染料、及び風味料を含んでいてもよい。
【0150】
また、徐放製剤は、胃腸管内の体液と接触する際に活性剤の制御放出を達成するために、且つ、実質的に一定で有効な量の活性剤を血漿に与えるように、本発明による式IVの化合物から調製されてもよい。式IVの化合物は、この目的のために生分解性ポリマーのポリマーマトリックス、水溶性ポリマー又はこれらの混合物、及び必要に応じて好適な界面活性剤に包埋され得る。この状況における包埋は、ポリマーのマトリックス中への微小粒子の取り込みを意味し得る。また、制御放出製剤は、既知の分散体又はエマルジョンのコーティング技術による分散微小粒子又は乳化微小滴のカプセル化によって得られる。
【0151】
本発明の式IVの化合物は、治療作用薬の組み合わせを動物に投与するのにも有用である。このような併用療法は、製剤中にさらに分散又は溶解され得る少なくとも1つのさらなる治療薬を使用して実行され得る。本発明の式IVの化合物及びこの製剤はそれぞれ、所定状態を治療するのに有効な他の治療薬と組み合わせて投与することで、併用療法を提供することもできる。
【0152】
本明細書中に記載の結晶形態及び医薬組成物は、精神病、情動障害、認知症、神経障害疼痛及び高血圧を含む神経精神病の有効な治療にかなり好適である。
【0153】
一実施形態は、有効量の式IVの化合物、例えば結晶形態A、B及びCを受容者に投与することを含む、式Iの化合物を受容者に送達する方法である。さらなる実施形態は、モノアミン受容体、特に5−HT2Aサブクラスのセロトニン受容体の活性を阻害するのに有用な医薬品を製造するための、式IVの化合物の使用である。
【0154】
一実施形態は、神経精神病を治療する方法であり、当該神経精神病が、精神病;統合失調症;分裂情動障害;躁病;精神病性うつ病;情動障害;認知症;不安神経症;睡眠障害;食欲不振;双極性障害;高血圧、偏頭痛、血管痙攣及び虚血に続発する精神病;運動性チック;振せん;精神運動遅延;動作緩慢;並びに神経障害疼痛から成る群より選択される神経精神病を含み、当該方法は式IVの化合物を投与することによる。
【0155】
別の実施形態は、神経変性疾患を治療する方法であり、当該神経変性疾患が、パーキンソン病;ハンチントン病;アルツハイマー病;脊髄小脳萎縮症;ツレット症候群;フリードライヒ運動失調症;マシャド・ジョセフ病;レービー小体型認知症;ジストニア;進行性核上麻痺;及び前頭側頭型認知症を含み、当該方法は式IVの化合物を投与することによる。
【0156】
別の実施形態は、式IVの化合物を投与することによる、ドーパミン作動性療法に関連するジスキネジアを治療する方法である。
【0157】
別の実施形態は、式IVの化合物を投与することによる、ドーパミン作動性療法に関連するジストニア、ミオクローヌス又は振せんを治療する方法である。
【0158】
別の実施形態は、血栓状態を治療する方法であり、当該血栓状態が、心筋梗塞;血栓発作又は虚血発作;特発性血小板減少性紫斑病及び血栓性血小板減少性紫斑病;末梢血管疾患;並びにレイノー病を含み、当該方法は式IVの化合物を投与することによる。
【0159】
別の実施形態は、中毒を治療する方法であり、当該中毒が、アルコール中毒、オピオイド中毒及びニコチン中毒を含み、当該方法は式IVの化合物を投与することによる。
【0160】
別の実施形態は、式IVの化合物を投与することによる、性衝動障害又は射精障害における疾患を治療する方法である。
【実施例】
【0161】
[実施例1]
[実験手順]
粉末X線回析(PXRD):CuKα照射線を用いたPhilips1710粉末X線回析装置によりPXRDを実施した。1.54060Åの波長を用いた2θ値からd間隔を計算した。一般的に、2θ値は±0.1〜0.2°の誤差の範囲内であった。このため、d間隔の値の実験的な誤差はピーク位置に依存した。
【0162】
示差走査熱量測定(DSC):形態Aの特性化のため、窒素下で封止された金の試料パン内のPerkin Elmer DSC 7、及び形態Bの特性化のため、約50%の相対湿度下で封止された金の試料パン内のPerkin Elmer DSC 7を用いた。加熱速度10K/分。融点は全て、開始温度ではなく、DSC測定のピーク温度から得られた。
【0163】
FT−ラマン分光:Bruker RFS 100。Nd:YAG 1064nm励起、100mWレーザー出力、Ge検出器、64スキャン、範囲25〜3,500cm-1、2cm-1分解能。
【0164】
TG−FTIR:熱重量分析測定を、Bruker FTIR Spectrometer Vector 22に連結したNetzsch Thermo−Microbalance TG 209で実行した(ピンホールを有する試料パン、窒素雰囲気、加熱速度10K/分)。
【0165】
HPLC:HPLC測定を、HP LC1090Mで実行した(Column Symmetry C18、3.0〜150mm)。
【0166】
[実施例2]
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの調製]
a)下記式化合物の調製
【0167】
【化22】

【0168】
トリアセトキシボロハイドライド(6.5kg)を1.5時間かけて、N−メチルピペリド−4−オン(3.17kg)と4−フルオロベンジルアミン(3.50kg)とのメタノール(30L)溶液に、27℃未満の温度を維持しながら添加した。反応混合物を15時間22℃で攪拌した。残留アミンをゲルクロマトグラフィにより調べた(4−フルオロベンジルアミン:<5%)。30%水酸化ナトリウム(12.1kg)の水(13.6kg)溶液を75分間、20℃未満の温度に維持しながら添加した。メタノールを蒸留除去すると、残留体積は26リットルになった。酢酸エチルを添加し(26L)、この溶液を15分間攪拌し、15分かけて相をデカントし、下側の水性相を捨てた。酢酸エチルを減圧下で有機相から73〜127℃で蒸留した。この段階で、残渣を、本方法に従って調製される第2の未処理のバッチと混合した。次に、混合生成物を139〜140℃/20mbarで蒸留し、11.2kg(>82%)の生成物を得た。
【0169】
b)下記式化合物の調製
【0170】
【化23】

【0171】
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(4.0kg)及びエタノール(20L)をイソブチ
ルブロミド(9.0kg)のエタノール(15L)溶液に添加した。炭酸カリウム(13.6kg)を添加し、懸濁液を5日間環流した(74〜78℃)。残りの4−ヒドロキシベンズアルデヒドをHPLCで調べた(<10%)。懸濁液を20℃に冷却し、また次の工程に使用した。
【0172】
c)下記式化合物の調製
【0173】
【化24】

【0174】
ヒドロキシルアミン(水中で50%、8.7kg)を、先行工程b)による生成物(174L、176kg)及びエタノール(54L)に添加した。懸濁液を3時間環流した(77℃)。未反応の残渣をHPLCで調べた(<5%)。懸濁液を30℃に冷却し、濾過し、濾過器をエタノール(54L)で洗浄した。溶液を減圧下、30℃での蒸留によって濃縮すると、残留体積は67Lになった。溶液を25℃に冷却し、水(110L)を添加した。懸濁液を減圧下、30℃での蒸留によって濃縮すると、残留体積は102Lになった。石油エーテル(60〜90留分、96L)を添加し、混合物を加熱により環流した(70℃)。溶液を40℃に冷却し、種添加により結晶化を開始させた。懸濁液を5℃に冷却し、4時間攪拌した。この生成物を遠心分離し、ケークを石油エーテル(60〜90留分、32L)で洗浄した。湿潤ケークを約40℃で乾燥して16kg(63%)の生成物を得た。
【0175】
d)下記式化合物の調製
【0176】
【化25】

【0177】
先行工程c)による生成物(15.7kg)をエタノール(123L)に溶解した。酢酸(8.2kg)及び5%湿潤したチャコール上のパラジウム(1.1kg)を添加した。オキシムを22℃及び1.5barで4時間水素添加した。オキシムの消費をHPLCで調べた。触媒を濾過し、溶媒を減圧下、36℃で蒸留すると、最終体積は31Lになった。酢酸エチル(63L)を添加し、混合物が溶解するまで加熱により環流した(75℃)。溶液を45℃に冷却し、種添加により結晶化を開始させた。懸濁液を6〜10℃に冷却し、2.5時間攪拌した。この生成物を遠心分離し、ケークを酢酸エチル(2×0.8L)で2回洗浄した。湿潤ケークを約40℃の温度で乾燥し、8kg(41%)を得た。
【0178】
e)下記式化合物の調製
【0179】
【化26】

【0180】
水性水酸化ナトリウム(30%、5.0kg)を、先行工程d)による生成物(7.9kg)のヘプタン(41L)懸濁液に添加した。溶液を47℃に加熱し、15分間攪拌し、15分かけてデカントした。pHを調べて(pH>12)、水性相を分離した。溶媒を減圧下、47〜65℃の蒸留により除去した。ヘプタンを添加し(15L)、その後、減圧下、58〜65℃の蒸留により除去した。ヘプタンを添加し(7L)、溶液を濾過し、濾過器をヘプタン(7L)で洗浄した。溶媒を減圧下、28〜60℃の蒸留により除去した。テトラヒドロフラン(THF、107L)及びトリエチルアミン(TEA、6.8kg)を添加し、温度を22℃で固定した。別の反応器内で、ホスゲン(5.0kg)を、事前に−3℃に冷却したテトラヒドロフラン(88L)中に投入した。THF及びTEA溶液を、3時間50分のうちにホスゲンの溶液に添加し、−3℃の温度に維持した。反応器をテトラヒドロフラン(22L)で洗浄した。混合物を45分間、20℃で攪拌し、その後、環流しながら(65℃)90分間攪拌した。溶媒を減圧下、25〜30℃で蒸留すると、残留体積は149Lになった。ホスゲンを含まないように制御した。この段階で、ホスゲンはまだ存在しているため、窒素を懸濁液に通気することにより、懸濁液を脱気した。この作業の後、溶液の上方のホスゲンの量は0.075ppm未満となった。懸濁液を濾過し、テトラヒドロフラン(30L)で洗浄した。溶媒を減圧下、20〜25℃で蒸留すると、残留体積は40Lになった。テトラヒドロフラン(51L)を添加し、溶媒を減圧下、20〜25℃で蒸留すると、残留体積は40Lになった。テトラヒドロフラン(11L)を添加することで、最終体積を約52Lに調整した。溶液を分析し、また次の工程に使用した。
【0181】
f)式Iの表題の化合物の調製
【0182】
【化27】

【0183】
先行工程e)による生成物(51L)を1時間、工程a)による生成物(7.3kg)のテトラヒドロフラン(132L)溶液に17℃で添加した。このラインをテトラヒドロフラン(12L)で洗浄し、混合物を15時間攪拌した。第1の工程による残留生成物をHPLCで調べた。溶媒を減圧下、20〜38℃で蒸留することにより除去すると、残留体積は165Lになった。チャコール(Norit SX1−G、0.7kg)を添加し
、この混合物を15分間攪拌し、濾過した。このラインをテトラヒドロフラン(7L)で洗浄し、溶媒を減圧下、20〜25℃で蒸留することにより除去すると、残留体積は30Lになった。酢酸イソプロピル(96L)を添加して、式Iの表題の化合物の溶液を得た。この溶液は、少量の不純物(主に、先行反応による副生成物)を含有している。試料からの溶媒の除去により、実質的に非晶質な固体を得た。
【0184】
粗生成物を含む溶液を、ヘミ酒石酸塩の直接調製、及び同時に、好適な溶媒からの結晶化によるヘミ酒石酸塩を介した遊離塩基の精製に使用した。
【0185】
[実施例3]
[式Iの化合物の純粋な結晶形態Yの調整]
下記の実施例10に従って調製された15.78gの酒石酸塩を130mlの水に溶解した。500mlのTBMEを添加し、pHを2NのNaOH溶液を添加することにより9.8に調整した。白色固体の析出後、水性相を5回、500mlのTBMEで抽出した。体積が約400mlになるまで有機相を濃縮した。溶液を6℃で保存した。析出物を濾過し、TBMEで洗浄し、最後に真空下で5時間乾燥させた。収率:8.24gの白色粉末。母液を濃縮して4分の1とし、6℃で保存した。析出物を濾過し、真空下で18時間乾燥させた。収率:1.6gの白色粉末。
【0186】
PXRDによって結晶試料が示された。粉末X線回析パターンを図1に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表1に示す。また、ラマン分光は結晶試料を示した。酒石酸からのラマンピークは見られなかった。TG−FTIRにより、60℃〜150℃の約0.4%の質量損失が示され、TBMEの遊離によって起こったと考えられた。約190℃を超えると、試料が分解し始めた。DSC(−50℃〜210℃、10℃/分)により、124℃での融解吸熱が示された。
【0187】
【表1】

【0188】
遊離塩基のおよその溶解度を室温において、表2に列挙される11種の溶媒について測定した。
【0189】
【表2】

【0190】
[実施例4]
[実施例1(f)において得られる溶液からの式IVのヘミ酒石酸塩の調製]
a)粗生成物塩の形成
実施例1(f)による式Iの化合物の酢酸イソプロピル(96L)溶液に、事前に調製した酒石酸(1.7kg)の水(1.7L)溶液、及びテトラヒドロフラン(23L)を23℃で添加した。残留懸濁液を2.5日間、22℃で攪拌した。酒石酸塩の粗生成物を遠心分離し、ケークを酢酸イソプロピル(4×23L)で4回洗浄した。合計107kgの母液を、酒石酸塩を得る際の以後の使用のために取っておいた。湿潤ケークを約40℃で乾燥させて、8.3kg(50%)の生成物を得た。
【0191】
b)精製
先行工程a)の酒石酸塩の粗生成物(8.1kg)を脱塩水(41L)に22℃で溶解した。酢酸イソプロピル(40L)、30%水性水酸化ナトリウム(4.3kg)及び塩化ナトリウム(2kg)を添加した。pHを調べ(>12)、この溶液を15分間攪拌した。溶液を15分かけてデカントし、水性相を分離した。水性相を酢酸イソプロピル(12L)で再抽出した。脱塩水(20L)及び塩化ナトリウム(2.0kg)を、混合有機相に添加し、この溶液を15分間攪拌し、15分間かけてデカントし、水性相を廃棄した。チャコール(0.4kg)を添加してこの混合物を20分間攪拌し、濾過した。ラインを酢酸イソプロピル(12L)で洗浄した後、溶媒を減圧下、20〜25℃で除去した。ヘプタン(49L)を添加し、この懸濁液を15分間40℃で攪拌した。その後、8Lの溶媒を、減圧下、38〜41℃の蒸留により除去した。このスラリーを20℃に冷却し、1時間攪拌した。生成物を遠心分離し、ケークをヘプタン(5L)で洗浄した。湿潤した式Iの化合物(5.5kg)を45℃のエタノール(28L)に溶解した。酒石酸(0.72kg)のエタノール(11L)溶液を45℃で添加し、ラインをエタノール(9L)で洗浄した。この溶液を43℃に冷却し、式Iの化合物の酒石酸塩を種添加した後、スラリーを30分間のうちに35℃に冷却し、この温度で1時間攪拌し、−5℃に冷却した。14時間後、この温度で生成物を遠心分離し、2回に分けてエタノール(2×6L)で洗浄した。合計42kgの母液を、酒石酸塩を得る際の後の使用のために取っておいた。湿潤ケークを約45℃で76時間乾燥させると、4kgの生成物になった。
【0192】
c)母液からのさらなる単離
取っておいた母液から以下のようにさらなる生成物を得た。溶媒を、工程a)による粗製酒石酸塩の母液(107kg)、及び工程b)による式Iの酒石酸塩の母液(42kg)の溶液から減圧下、24〜26℃の蒸留によって除去すると、残留体積は27Lになった。脱塩水(25L)を添加し、減圧下、24〜26℃の蒸留により混合物を濃縮すると残留体積は32Lになった。酢酸イソプロピル(30L)及び30%水性水酸化ナトリウム(2.7kg)を添加した。pHを調べ(>12)、この溶液を15分間攪拌した。溶液を15分かけてデカントし、水性相を分離した。水性相を酢酸イソプロピル(6L)で再抽出した。脱塩水(9L)及び塩化ナトリウム(0.9kg)を混合有機相に添加し、この溶液を15分間攪拌し、15分かけてデカントし、水性相を廃棄した。チャコール(0.3kg)を添加してこの混合物を20分間攪拌し、濾過した。ラインを酢酸イソプロピル(8L)で洗浄した後、溶媒を減圧下、20〜25℃の蒸留によって除去すると、残留体積は12Lになったが、乾燥はしなかった。ヘプタン(25L)を30℃で添加し、このスラリーを20℃に冷却し、1.5時間攪拌した。生成物を遠心分離し、ケークをヘプタン(2×5L)で洗浄した。湿潤ケーク(4.3kg)を45℃のエタノール(23L)に溶解した。酒石酸(0.58kg)のエタノール(7.5L)溶液を45℃で添加し、ラインをエタノール(6L)で洗浄した。この溶液を20分間攪拌し(生成物の結晶化)、このスラリーを30分のうちに35℃に冷却し、この温度で1時間攪拌し、−5℃に冷却した。14時間後、この温度で生成物を遠心分離し、エタノール(2×4L)で2
回洗浄した。湿潤ケークを約45℃で80時間乾燥させると、3.3kgの生成物が得られた。
【0193】
両方の生成物のPXRDにより結晶試料が明らかになり、高い基準線から、非晶質部の存在、及びおそらく少量の結晶形態Cが示された。PXRDにより、固体生成物が実質的に、式IVのN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の結晶形態Aを含有することが明らかである。結晶形態Aは、いくらか水を含有し、これは、熱重量分析において熱に曝した際に示される(TG−FTIR、水及び少量の溶媒に起因して2.2%損失)。この量から、結晶形態Aが半水和物(含水量の理論値は1.8%)であることが示される。しかしながら、周囲温度をわずかに超えると重量損失が始まり、約150℃で完了するため、水は弱くしか結合していなかったと考えられる。また、水は、長時間(約20時間まで)の乾燥窒素を用いた処理によって容易に除去されることができる。脱水形態Aの融点は約133〜135℃であり、融解エンタルピーは約70J/gであった(ピーク温度、DSCにより測定)。形態Aは、特に75%の相対湿度を超える湿度に曝されると、顕著な吸水を示す。相対湿度が50%以下に下がると、水が放出された。この挙動は、潮解性の固体に典型的なものであった。
【0194】
様々な溶媒中への飽和溶液の調製、及び溶媒除去後の溶解物質の重量決定によりおよその溶解度を測定した。結果を表3に示す。
【0195】
【表3】

【0196】
[実施例5]
[式Iの粗製遊離塩基からの式IVのヘミ酒石酸塩の調製]
実施例1(f)による粗生成物(5.5kg)を45℃でエタノール中(28L)に溶
解した。(+)−L−酒石酸(0.72kg)のエタノール溶液を45℃で添加し、ラインを9Lのエタノールで洗浄した。溶液を43℃に冷却し、式IVのヘミ酒石酸塩を用いて種添加した。その後、このスラリーを35℃に30分かけて冷却し、この温度で1時間攪拌し、攪拌しながら−5℃に冷却した。この温度での攪拌の14時間後、生成物を遠心分離し、エタノール(2×6L)で2回洗浄した。湿潤ケークを45℃で76時間乾燥し、4.0kgの生成物(83%、酒石酸を主成分とする)を得た。生成物のPXRDにより、多形Aが形成したことが示された。
【0197】
[実施例6]
[式Iの粗製遊離塩基からの式IVのヘミ酒石酸塩の調製]
実施例1(f)による粗生成物(4.3kg)を45℃でエタノール(23L)に溶解した。(+)−L−酒石酸(0.58kg)のエタノール溶液を45℃で添加し、ラインを6Lのエタノールで洗浄した。この溶液を20分間攪拌し(固体析出物の形成)、スラリーを35℃に30分かけて冷却した。スラリーをこの温度で1時間攪拌した後、−5℃に冷却した。この温度での攪拌の14時間後、生成物を遠心分離し、エタノール(2×4L)で2回洗浄した。湿潤ケークを45℃で80時間乾燥し、3.3kgの生成物(85%、酒石酸を主成分とする)を得た。生成物のPXRDにより、多形Aが形成したことが示された。
【0198】
[実施例7]
[水性溶液の凍結乾燥による式IVの化合物の非晶質形態の調製]
2.02gの式Iの粗製遊離塩基を室温で、23±2℃の8.0mlの水(Fluka
no.95306)に溶解した。得られた溶液を0.22μmミリポア濾過ユニットにより濾過し、濾過した溶液を100ml容のガラス製丸底フラスコに移した。この透明溶液を−78℃のドライアイス(固体CO2)の台で凍結し、その後、凍結溶液の入ったガ
ラスフラスコを凍結乾燥器に接続した。凍結乾燥器タイプ:CHRIST、BETA 2−8 LD−2。初期圧力は約0.10mbarであり、コールドトラップ温度は−82℃であり、最終圧力は0.007mbarであった。約15時間後、凍結乾燥は完了し、フラスコを外した。得られた白色固体粉末を、示差走査熱量測定及び粉末X線回析により特性化した。得られた生成物に関するPXRDにより完全な非晶質状態が示され、同様に、DSC測定により、54℃付近のガラス転移温度及び約0.5J/g/℃のΔCPを有
する完全な非晶質化合物が明らかである。
【0199】
[実施例8]
[再結晶化による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例5からの142.5gの生成物を、無水エタノール(750ml)に懸濁させた。この白色懸濁液を攪拌しながら30分かけて70℃に加熱した。60℃から、この溶液は透明で黄色がかった。溶液を徐冷し、生成物は約48℃で結晶化し始めた。48℃から15℃への冷却を4時間行った。この懸濁液を1.5時間15℃で攪拌した。その後、粘性の懸濁液を生成した。析出物を真空下で濾過し、70ml無水エタノールで2回洗浄し、その後、真空下40℃で乾燥させた。乾燥時の重量は135.2gであった(収率95%)。
【0200】
この生成物を850mlの無水エタノール中で攪拌しながら再び懸濁し、30分かけて75℃に加熱した。溶解を完了し、58〜60℃から溶液は実質的に無色であった。溶液を75℃で濾過し、ラインを50mlの無水エタノールで洗浄し、その後、溶液を攪拌しながら冷却した。結晶化は48℃で始まった。約42〜44℃で結晶化した生成物及び多量の析出物が、形成された。懸濁液を一晩かけて室温に冷却させた。この懸濁液を20〜22℃で濾過し、50mlの無水エタノールで2回洗浄した。白色固体の生成物を48時間かけて真空下で42℃で乾燥した。乾燥時の重量は123.6g(収率92%)であっ
た。
【0201】
粉末X線回折パターンを図2に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表4に示す。
【0202】
【表4】

【0203】
[実施例9]
[再結晶化による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例5で得られる105.0gの式IVの化合物を、65℃で560mlの無水エタノールに溶解した後、攪拌しながら1℃/分の冷却速度で48℃に冷却した。この温度で数分後に結晶化が始まり、懸濁液が1時間以内に粘性のペーストに変わった。懸濁液を再び60℃に加熱した後、1℃/分の速度で48℃に冷却した。得られた懸濁液を攪拌し、3℃/時間の冷却速度で15℃に冷却した。結晶析出物を濾過により分離し、この瓶を、5℃に冷却した50mlの無水エタノールで洗浄した。その後、結晶残渣を30℃で18時間、空気中で乾燥し、次に、真空下、室温で40時間乾燥して98.1gの結晶生成物を得た。PXRDは、生成物が多形Aであることを示した。TG−FTIRは、約2.5%の重量損失を示し、これは、水及び少量のエタノールに起因していた。
【0204】
[実施例10]
[再結晶化による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例3(b)で得られる21.0gの式IVの化合物を攪拌しながら、65℃、112mlの無水エタノールに溶解した後、攪拌しながら1℃/分の冷却速度で48℃に冷却した。この温度で数分後に結晶化が始まり、懸濁液が1時間以内に粘性のペーストに変わった。懸濁液を再び60℃に加熱した後、1℃/分の速度で48℃に冷却した。得られた懸濁液を攪拌し、3℃/時間の冷却速度で15℃に冷却した。結晶析出物を濾過により分離し、この瓶を、5℃に冷却した10mlの無水イソプロパノールで洗浄した。初めに、結晶残渣を25℃で18時間、窒素下で乾燥し、次に、真空下、室温で20時間乾燥して19.9gの結晶生成物を得た。PXRDは、生成物が、形態Dとの類似性を有する多形Aであることを示した。TG−FTIRは、約7.7%の重量損失を示し、これは、イソプロパノール及び水に起因していた。生成物を再び30℃、空気中で20時間乾燥し、約5%のイソプロパノール及び水の重量損失を有する生成物を得た。
【0205】
[実施例11]
[再結晶化による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例3(b)で得られる150.0gの式IVの化合物を攪拌しながら、65℃、112mlの無水エタノールに溶解した後、攪拌しながら1℃/分の冷却速度で48℃に冷却した。この温度で数分後に結晶化が始まり、懸濁液が1時間以内に粘性のペーストに変わった。懸濁液を再び60℃に加熱した後、1℃/分の速度で48℃に冷却した。得られた懸濁液を攪拌し、3℃/時間の冷却速度で15℃に冷却した。結晶析出物を濾過により分離し、この瓶を、5℃に冷却した10mlの無水エタノールで洗浄した。初めに、結晶残渣を40℃で50時間乾燥して、146gの結晶生成物を得た。この結晶生成物は、PXRDによると純粋な多形Aであった。
【0206】
[実施例12]
[懸濁液平衡による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例3(b)による20mgの式IVの化合物を溶媒に懸濁し、18〜40℃のサイクルの様々な温度で4日間攪拌した。生成物を、以下の溶媒、すなわちエタノール、イソプロパノール、ヘプタン、メチルエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル(TBME)、エタノール及びTBME、エタノール/ヘプタン、水で飽和したTBMEを用いた場合に、PXRD又はラマン分光により結晶形態Aであると同定した。
【0207】
[実施例13]
[非晶質形態からの懸濁液平衡による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例6からの64mgの非晶質化合物を、1.0mlのテトラヒドロフランに懸濁し、5℃で18時間攪拌した。固体を濾過し、窒素下、室温で2時間乾燥した。結晶形態AがPXRD又はラマン分光により同定された。
【0208】
[実施例14]
[非晶質形態からの懸濁液平衡による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例6による20mgの非晶質化合物を500μlのエタノール/アセトン(1:1)に懸濁した後、室温〜40℃のサイクルを用いて3日間攪拌した。結晶形態Aがラマン分光により同定された。
【0209】
[実施例15]
[非晶質形態からの懸濁液平衡による純粋な結晶形態Aの調製]
実施例6による20mgの非晶質化合物を500μlのテトラヒドロフランで懸濁した後、室温〜40℃のサイクルを用いて3日間攪拌した。結晶形態Aがラマン分光により同定された。
【0210】
[実施例16]
[貧溶媒であるメチルエチルケトンを用いた析出による結晶形態Bの調製]
実施例3(b)による約160mgの式IVの化合物を含有する600μlの水溶液を、5℃の10mlのメチルエチルケトン(MEK)に添加した。この懸濁液を3日間攪拌した。5mlのMEKを添加し、5時間攪拌し続けた。この固体を濾別し、空気中、室温で12時間乾燥させた。結晶形態BがXPRD又はラマン分光により同定された。TG−FTIRは約2.5%の重量損失を示し、これは、水に起因していた。粉末X線回折パターンを図3に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表5に示す。
【0211】
【表5−1】

【表5−2】

【0212】
[実施例17]
[貧溶媒であるヘプタンを用いた析出による結晶形態Bの調製]
実施例3(b)による135mgの式IVの化合物を含有する2.0mlの塩化メチレン溶液を、室温で3.0mlのヘプタンに添加した。生成した懸濁液を24時間攪拌した後、濾別し、空気中、室温で8時間乾燥させた。結晶形態BがPXRD又はラマン分光により同定された。DSC測定により、約131℃の融点を示し、融解エンタルピーは約63J/gであった。
【0213】
[実施例18]
[貧溶媒であるトルエンを用いた析出による結晶形態Bの調製]
実施例3(b)による135mgの式IVの化合物を含有する2.0mlの塩化メチレン溶液を、室温で3.0mlのトルエンに添加した。生成した懸濁液を24時間攪拌した後、濾別し、空気中、室温で14時間乾燥させた。結晶形態BがPXRD又はラマン分光により同定された。DSC測定により、129℃付近の融点を示し、融解エンタルピーは約71J/gであった。
【0214】
[実施例19]
[貧溶媒であるアセトニトリルを用いた析出による結晶形態Bの調製]
実施例3(b)による135mgの式IVの化合物を含有する2.0mlの塩化メチレン溶液を、室温で3.0mlのアセトニトリルに添加した。生成した懸濁液を24時間攪拌した後、濾別し、空気中、室温で18時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0215】
[実施例20]
[貧溶媒である酢酸エチルを用いた析出による結晶形態Bの調製]
実施例3(b)による210mgの式IVの化合物を含有する1.5mlのメタノール溶液を室温で10mlの酢酸エチルに添加した。約50%の酢酸エチル/メタノール溶媒混合物が室温で蒸発するまで、生成物は析出しなかった。得られた懸濁液を15℃、18時間攪拌した後、濾別し、空気中、室温で12時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0216】
[実施例21]
[アセトニトリル中における多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例3(b)による式IVの化合物をアセトニトリルに懸濁し、4日間、18〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾別し、空気中、室温で18時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0217】
[実施例22]
[酢酸エチル中における多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例3(b)による式IVの化合物を6mlの酢酸エチルに懸濁し、4日間、18〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾過し、空気中、室温で18時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0218】
[実施例23]
[エタノール/MEKに溶解した多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例3(b)による式IVの化合物を5mlのエタノール/MEK(1:1)に懸濁し、4日間、18〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾過し、空気中、室温で18時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0219】
[実施例24]
[水飽和酢酸エチルに溶解した多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例6による材料を500μlの水で飽和した酢酸エチルに懸濁し、3日間、室温〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾過し、空気中、室温で8時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0220】
[実施例25]
[1%の水を含有するアセトニトリルに溶解した多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例6による材料を500μlの1%の水を含有するアセトニトリルに懸濁し、3日間、室温〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾過し、空気中、室温で
16時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0221】
[実施例26]
[酢酸エチル/水に溶解した多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
1.0gの、実施例6の材料を10mlの酢酸エチル及び100μlの水に懸濁し、100時間、室温で攪拌した後、濾別し、空気中、室温で18時間乾燥させた。750mgの結晶形態Bが得られ、ラマン分光及び粉末X線回折により同定された。
【0222】
[実施例27]
[エタノール/MEKに溶解した多形Aを用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例3(b)による式Iの化合物を7mlのエタノール/MEK(1:1)に懸濁し、4日間、18〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾過し、空気中、室温で18時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0223】
[実施例28]
[ヘプタンに溶解した非晶質形態を用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
60mgの、実施例6による材料を1.0mlのヘプタンに懸濁し、40℃で18時間攪拌した。固体を濾過し、空気中、40℃で1時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0224】
[実施例29]
[酢酸エチルに溶解した非晶質形態を用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
62mgの、実施例6による材料を1.0mlの酢酸エチルに懸濁し、40℃で18時間攪拌した。固体を濾別し、空気中、40℃で1時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0225】
[実施例30]
[アセトニトリルに溶解した非晶質形態を用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
62mgの、実施例6による材料を1.0mlのアセトニトリルに懸濁し、5℃で18時間攪拌した。固体を濾別し、窒素中、22℃で2時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0226】
[実施例31]
[MEKに溶解した非晶質形態を用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
149mgの、実施例6による材料を3.0mlのMEKに懸濁し、室温で16時間攪拌した。固体を濾別し、窒素中、22℃で30分間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0227】
[実施例32]
[水飽和酢酸エチルに溶解した非晶質形態を用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
20mgの、実施例6による材料を500μlの水で飽和した酢酸エチルに懸濁し、3日間、室温〜40℃のサイクルの温度で攪拌した後、濾過し、空気中、室温で6時間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0228】
[実施例33]
[水含有溶媒混合物に溶解した非晶質形態を用いた懸濁液平衡による結晶形態Bの調製]
70mgの、実施例6による材料を、2.0mlの1%の水を含有する酢酸エチル/エタノールに懸濁し、1日、5℃〜室温のサイクルの温度で攪拌した。その後、攪拌を10℃で5日間続けた。固体を濾別し、空気中、室温で15分間乾燥させた。結晶形態Bがラマン分光により同定された。
【0229】
[実施例34]
[アセトンに溶解した多形Aの懸濁液平衡による結晶形態Cの調製]
20mgの、実施例3(b)による式IVの化合物を1mlのアセトンに懸濁し、2mgの形態Cの種結晶を添加し、この懸濁液を4日間、18〜40℃のサイクルの温度で攪拌させた後、濾過し、空気中、室温で1時間乾燥させた。結晶形態Cがラマン分光により同定された。
【0230】
[実施例35]
[テトラヒドロフラン(THF)に溶解した多形Aの懸濁液平衡による結晶形態Cの調製]
20mgの、実施例3(b)による式IVの化合物を500μlのTHFに懸濁し、2mgの形態Cの種結晶を添加し、この懸濁液を3日間、18〜40℃のサイクルの温度で攪拌させ、濾別し、空気中、室温で3時間乾燥させた。結晶形態Cがラマン分光により同定された。
【0231】
[実施例36]
[テトラヒドロフラン(THF)に溶解した多形Aの懸濁液平衡による結晶形態Cの調製]
255mgの、実施例3(b)による式Iの化合物を5.0mlのTHFで懸濁し、25mgの形態Cを種結晶として添加し、この懸濁液を40時間、40℃の温度で攪拌し、濾過し、窒素下、室温で15分間乾燥させた。結晶形態CがPXRD及びラマン分光により同定された。
【0232】
[実施例37]
[テトラヒドロフラン(THF)に溶解した多形Aの懸濁液平衡による結晶形態Cの調製]
1.0gの、実施例3(b)による式Iの化合物を6.0mlのTHFに懸濁し、50mgの形態Cを種結晶として添加し、得られた懸濁液を50時間室温で攪拌し、濾過し、空気中、室温で45分間乾燥させた。結晶形態CがPXRD及びラマン分光により同定された。TG−FTIRは、150℃未満で0.9%未満の重量損失を示し、これは水に起因していた。動的流動性吸収実験により、多形Cが水を吸収せず、水和物を形成し、吸湿性をとることが示された。DSC実験により、177℃付近の融点が示され、融解エンタルピーは約129J/gであった。
【0233】
粉末X線回折パターンを図4に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表6に示す。
【0234】
【表6−1】

【表6−2】

【0235】
[実施例38]
[多形Cの種材料の調製]
25gの、実施例3(b)による式IVの化合物を100mlのTHFに懸濁し、この懸濁液を3日間30℃で攪拌した。固体を濾別し、減圧下、40℃で2時間攪拌した。23.3gの純粋な多形Cの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。材料を、その後の実験で種結晶として使用した。
【0236】
[実施例39]
[多形Cの調製]
6.0gの、実施例9による結晶材料を30mlのMEKに懸濁し、50℃で攪拌した。100mgの、実施例37による種結晶を2時間後に添加し、攪拌を80時間、室温で続けた。結晶固体を濾別し、18時間45℃で乾燥させた。少量の多形Aを含有する多形Cの4.7gの収量が得られ、PXRDにより確認された。TG−FTIRは、170℃
未満での重量損失を示さなかった。
【0237】
[実施例40]
[多形Cの調製]
6.0gの、実施例9の結晶材料を30mlのTHFに懸濁し、50℃で攪拌した。100mgの、実施例37による種結晶を2時間後に添加し、攪拌を80時間、室温で続けた。結晶固体を濾別し、18時間45℃で乾燥させた。少量の多形Aを含有する多形Cの4.7gの収量が得られ、PXRDにより確認された。TG−FTIRは、170℃未満で約0.5%の重量損失を示し、これはTHFに起因していた。
【0238】
[実施例41]
[多形Cの調製]
6.0gの、実施例8の結晶材料を40mlのTHFに懸濁し、50℃で攪拌した。実施例37による150mgの種結晶を2時間後に添加し、攪拌を104時間、40℃で続けた。種結晶の第2部分として、200mgの、実施例37による種結晶を3時間後に添加した。結晶固体を濾別し、18時間、45℃で乾燥させた。少量の多形Aを含有する多形Cの5.0gの収量が得られ、PXRDで確認された。TG−FTIRは、170℃未満で約0.5〜0.8%の重量損失を示し、これはTHFに起因していた。
【0239】
[実施例42]
[多形Cの調製]
6.0gの、実施例8の結晶材料を40mlのMEKに懸濁し、50℃で攪拌した。150mgの、実施例37による種結晶を2時間後に添加し、攪拌を104時間、40℃で続けた。種結晶の第2部分として、200mgの、実施例37による種結晶を30時間後に添加した。結晶固体を濾別し、18時間、45℃で乾燥させた。少量の多形Aを含有する多形Cの5.4gの収量が得られ、PXRDで確認された。TG−FTIRは、170℃未満での重量損失を示さなかった。
【0240】
[実施例42]
[純粋な多形Cの調製]
7.0gの、実施例8の結晶材料を50mlのアセトンに懸濁し、50℃で攪拌した。200mgの、実施例37による種結晶を2時間後に添加した。粘性のペーストが形成し、10mlのアセトンを添加した。攪拌を29時間、50℃で続けた。その後、この懸濁液を10℃に冷却し、この温度で14時間攪拌した。結晶固体を濾別し、空気中で4.5時間、45℃で乾燥させて、6.3gの純粋な多形Cが得られ、PXRDにより確認された。
【0241】
[実施例43]
[純粋な多形Cの調製]
7.0gの、実施例8による結晶材料を50mlのMEKに懸濁し、60℃で攪拌した。200mgの、実施例37による種結晶を2時間後に添加し、攪拌を29時間、60℃で続けた。その後、この懸濁液を10℃に冷却し、この温度で14時間攪拌した。結晶固体を濾別し、空気中で4.5時間、45℃で乾燥させて、6.0gの純粋な多形Cが得られ、PXRDにより確認された。
【0242】
[実施例44]
[純粋な多形Cの調製]
50.0gの、実施例10による結晶材料を310mlのMEKに懸濁し、50℃で攪拌した(600rpm)。1.5gの、実施例37による種結晶(10mlのMEK中の懸濁液)を2時間後に添加し、攪拌を52時間、50℃で続けた。その後、この懸濁液を
15℃に冷却し、この温度で2時間攪拌した。結晶固体を濾別し、真空下で16時間、50℃で乾燥させた。純粋な多形Cの44.2gの収量が得られ、PXRDにより確認された。TG−FTIRは、170℃未満での重量損失を示さなかった(溶媒を含まない生成物)。
【0243】
[実施例45]
[純粋な多形Cの調製]
50.0gの、実施例10による結晶材料を360mlのMEKに懸濁し、50℃で攪拌した(600rpm)。1.5gの、実施例37による種結晶(10mlのMEK中への懸濁液)を2時間後に添加し、攪拌を35.5時間、50℃で続けた。その後、この懸濁液を15℃に冷却し、この温度で2時間攪拌した。結晶固体を濾別し、真空下で16時間、50℃で乾燥させた。純粋な多形Cの41.5gの収量が得られ、PXRDにより確認された。TG−FTIRは、170℃未満での重量損失を示さなかった(溶媒を含まない生成物)。
【0244】
[実施例46]
[THF溶液からの純粋な多形Cの調製]
7.0gの、実施例10による結晶材料を35mlのTHFに懸濁し、65℃に加熱した。結晶形態Aを完全に溶解し、溶液を60℃に冷却した。その後、0.35gの、実施例37による種結晶(1.0mlのTHF中への懸濁液)を添加し、攪拌を約30分間、60℃で続けた。その後、0.15℃/分の冷却速度で懸濁液を10℃に冷却し、攪拌をこの温度で2時間続けた。結晶固体を濾別し、真空下で16時間、50℃で乾燥させた。純粋な多形Cの4.5gの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。
【0245】
[実施例47]
[直接的な溶液からの形態Cの調製]
2.0gの、実施例10による結晶材料を10mlのTHFに室温で懸濁した。この懸濁液を65℃に加熱して、透明溶液とした。この溶液を60℃に冷却し、100mgの、実施例37による形態Cの種結晶を溶液に添加した。この温度で懸濁液を徐々に濃縮させ、この懸濁液を1時間、60℃で攪拌した後、10℃/時の冷却速度で懸濁液を10℃に冷却した。5時間後に10℃に達し、攪拌を一晩、すなわち約14時間続けた後、得られた固体を濾別し、50℃で約2時間、真空下で乾燥させた。純粋な結晶形態Cが得られた。
【0246】
[実施例48]
[多形Cの安定性試験]
a)熱処理
実施例3(b)の化合物(多形A)、実施例25の化合物(多形B)、及び実施例36の化合物(多形C)を封止したアンプルに入れ、1週間100℃に曝した。多形A及び多形Bは潮解性の緻密な材料を生成したが、多形Cは実質的に反応せず、結晶を含まない流動粉末のままであった。生成物はHPLCにより分析され、純度を検出し、分解により化学安定性を示した。多形Aは25.9%の純度、多形Bは28.3%の純度、及び多形Cは99.7%の純度を示し、多形Cの高い安定性が示された。
【0247】
[実施例49]
[湿度への曝露]
実施例3(b)の化合物(多形A)、実施例25の化合物(多形B)、及び実施例36の化合物(多形C)を開放型容器に入れ、1週間及び2週間60℃で、75%の相対湿度に曝した。多形Aでは、2.8%の含水量が検出され、HPLCによる純度は80%であった。多形Bは多形Cに転化し、1.9%の含水量が検出され、HPLCによる純度は9
4.6%であった。多形Cは反応せず、HPLCによる純度は99.7%であった。
【0248】
[実施例50]
[多形Aを出発原料として用いた結晶形態Eの調製]
実施例3(b)による160mgの式IVの化合物を含有する600μlの水溶液を、5℃で10mlのイソプロパノールに添加した。結晶固体を析出させ、この懸濁液を5時間、5℃で攪拌した。結晶固体を濾別し、窒素下、1時間、室温で乾燥させた。結晶形態Dの164mgの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。TG−FTIRは、170℃未満で約8%の重量損失を示し、これはイソプロパノール及び水に起因していた。
【0249】
[実施例51]
[非晶質形態からのEを出発原料として用いた結晶の調製]
200mgの、実施例6による材料を16.0mlのイソプロパノールに懸濁した。この懸濁液を18時間40℃、及び14時間20℃で攪拌した。結晶固体を濾別し、窒素下で1時間、室温で乾燥させた。結晶形態Dの178mgの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。TG−FTIRは、170℃未満で約6.6%の重量損失を示し、これはイソプロパノールに起因していた。イソプロパノールの量は、イソプロパノールの半溶媒和物の存在を示す(イソプロパノールの理論含有量は5.6%であり、溶媒を乾燥時に除去することは難しい)。
【0250】
粉末X線回折パターンを図5に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表7に示す。
【0251】
【表7−1】

【表7−2】

【0252】
[実施例52]
[非晶質形態を出発原料として用いた結晶形態Eの調製]
70mgの、実施例6による材料を1.0mlのt−ブチルメチルエーテル(TBME)に懸濁した。この懸濁液を18時間、40℃で攪拌した。結晶固体を濾別し、空気中で1時間、40℃で攪拌した。結晶形態Eの58mgの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。
【0253】
[実施例53]
[出発原料とした非晶質形態からの結晶の調製]
150mgの、実施例6による材料を4.0mlのTBMEに懸濁した。この懸濁液を26時間、室温で攪拌した。結晶固体を濾別し、空気中で5分間、室温で乾燥させた。結晶形態Eの121mgの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。TG−FTIR(10℃/分)は、周囲温度を超え始めると約5.1%の重量損失を示し、150℃未満で完了する。これはTBMEに起因していた。TBMEの量は、TBME溶媒和物の存在を示す。
【0254】
粉末X線回折パターンを図6に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表8に示す。
【0255】
【表8】

【0256】
[実施例54]
[出発原料とした非晶質形態からの結晶形態Fの調製]
250mgの、実施例6による材料を攪拌しながら65℃で、5.5mlのテトラヒドロフラン(THF)に溶解した。この溶液を20℃に冷却することによって、粘性のペーストを形成した。3mlのTHFを添加し、攪拌を40℃で1時間続けた。その後、この懸濁液を20℃に冷却し、攪拌を3時間続けた。結晶固体を濾別し、空気中で30分間、室温で乾燥させた。結晶形態Fの214mgの収量が得られ、PXRD及びラマン分光により確認された。TG−FTIR(10℃/分)は、周囲温度を超え始めると約3.0%の重量損失を示し、130℃未満で完了し、これはTHFに起因していた。THFの量は、非化学量論的なTHF溶媒和物の存在を示す(モノTHF溶媒和物の理論含有量は12.5%THFであった)。
【0257】
粉末X線回折パターンを図7に示し、特性ピーク(2θ)を、対応するd間隔の値(Å)と共に表8に示す。
【0258】
【表9】

【0259】
[実施例55]
[N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の調製]
a)下記式の調製
【0260】
【化28】

【0261】
N−メチル−4−ピペリドン(SM、16.0kg)及び4−フルオロベンジルアミン(17.7kg、1.00当量)をメタノール(110.2kg、8.70−v/w SM)にT=15〜19℃で溶解した後、5%パラジウム/C(0.59kg、3.68%−w/w SM)を窒素下で添加した。バルクをT=23〜27℃まで加熱し、同温で、P=5bar以下で水素吸収が止まるまで(11時間以下)水素添加した。残留SMをGCにより調べた(イミン<5%)後、バルクの不純物を除去し(1575+GF92濾紙)、このラインをメタノール(5.1kg、0.40−v/w SM)で洗浄した。溶媒を減圧下(P=265〜60mbar、T=35〜40℃)で蒸留し、油状残渣を真空下
、T=135〜140℃、P=8〜0.5mbarの分留により精製し、22.15kg(70%)の生成物を得た。
【0262】
b)下記式の調製
【0263】
【化29】

【0264】
4−ヒドロキシベンズアルデヒド(SM、60.0kg)をジメチルホルムアミド(142.5kg、2.50−v/w SM)にT=15〜25℃で溶解した後、炭酸ナトリウムカリウム(137.2kg、2.02当量)及びヨウ素カリウム(8.1kg、0.10当量)をT<30℃で分けて添加し、懸濁液をT=78〜82℃まで加熱した。コンデンサの温度を15℃に固定し、イソブチルブロミド(134.8kg、2.00当量)を懸濁液に4〜5時間、T=78〜82℃で添加した。添加の終わりに、この混合物を3時間以下、T=78〜82℃で攪拌し、残留SMをHPLCにより調べた(SM<5%)。この懸濁液をT=20〜30℃に冷却し、100%エタノール(213.1kg、4 50−v/w SM)で希釈し、15分間、T=20〜30℃で攪拌し、最後に、遠心分離により過剰な炭酸塩及び臭化カリウムを除去した。ライン及びケークを100%エタノール(82.4kg、1.74−v/w SM)で洗浄し、その後、水に溶解させた50%ヒドロキシルアミン(48.8kg、1.5当量)を室温で濾液に添加した後、バルクをT=73〜77℃まで加熱し、この温度で2時間攪拌した。試料をIPCにかけた(Aca−11−アルデヒド<5%)後、バルクを減圧下(270〜150mbar、45〜55℃)で濃縮して残渣を6体積以下とし、T=45〜55℃の水でクエンチし(404.5kg、6.74−v/w SM)、及び残留エタノールを真空下で蒸留した(270〜150mbar、45−55℃、残留体積=10.4以下)。バルクをベンゼン60〜90(236.9kg、5.64−v/w SM)で希釈し、環流(T=60℃以下)の下で加熱し、完全に溶解させた(15分以下、目視検査)。溶液を8〜12℃にまで冷却し(結晶化はT=17℃以下で起こり、必要であれば、12℃以下で種添加する)、その後0〜5℃に冷却した。T=0〜5℃での2時間の攪拌後、バルクを遠心分離し、ケークをベンゼン60〜90(59.4kg、1.41−v/w SM)で2回に分けて洗浄した後、減圧下、T=40℃で乾燥させて、86.7kg(91.3%)の生成物を得た。
【0265】
c)下記式化合物の調製
【0266】
【化30】

【0267】
工程bによる生成物(SM、40.0kg)を100%エタノール(229.5kg、
7.26−v/w SM)にT=20〜25℃で溶解した後、無水ラネーニッケル(5.8kg、14.6%−w/w SM)を窒素下で添加し(KF<300ppmとなるまで、100%エタノールで触媒を洗浄)、この懸濁液をT=−8℃〜−12℃にまで冷却した。アンモニアガス(45.8kg、13当量)を真空下で8時間以下かけて管を通して添加した後、懸濁液をT=48〜50℃まで加熱した(内部圧力は2.5bar以下にまで上がる)。水素吸収が止まるまで、バルクをT=48〜50℃、P=4barで水素添加し(9時間以下)、残留SMをHPLCにより調べた(SM<0.5%)。この懸濁液をT=10〜15℃に冷却し、過剰なアンモニアを除去し、バルクの不純物を除去し(濾過器上に1575+GF92濾紙+celtroxe相)、このラインを100%エタノール(63.4kg、2.00−v/w SM)で洗浄した。溶媒を減圧下(P=870〜13mbar、T=42〜50℃)で蒸留し、油状の緑色残渣を100%エタノール(50.7kg、1.60−v/w SM)及び酢酸エチル(150.1kg、4.17−v/w SM)で希釈し、最後にT=20〜25℃に冷却した。添加中に温度を上げながら(+14℃以下)、100%酢酸(19.9kg、1.60当量)を徐々に添加し、その後、バルクを加熱して環流し(T=70℃以下)、完全に溶解させた。この溶液を40〜42℃に冷却し、種添加した後、この懸濁液を結晶化温度(T=41℃以下)で30分間攪拌し、T=0〜5℃に冷却し、5時間、この温度で攪拌した。バルクを遠心分離し、ケークを冷却酢酸エチル(2×9.4kg、2×0.26−v/w SM)で洗浄し、最後に真空下、T=50℃で乾燥させて、33.6kg(67.9%)のアミノ酢酸形態を得た。
【0268】
アミノ酢酸形態(26.4kg)の飲料水(42.2kg、1.60体積)溶液を30%水酸化ナトリウム(35.4kg、2.41当量以下)で塩基性化し、T=10〜25℃でpH=14とした。その後、生成物をトルエン(91.4kg、4.00体積)中にT=43〜47℃で抽出させた。バルクをT=43〜47℃でデカントし、必要であれば、さらなる30%NaOHを用いてpHを14に補正した後、相を分離した。有機相を飲料水(35.1kg、1.33体積)で洗浄した後、真空下(P=170〜20mbar、表示)、T=48〜50℃で濃縮して乾燥すると、油状残留物として生成物がもたらされた。
【0269】
d)下記式化合物の調製
【0270】
【化31】

【0271】
工程cによる生成物を無水トルエン(68.5kg、KF<300ppm、3.00体積)に溶解し、この溶液をスクラバーを備えたホスゲン化反応器に入れ、ラインを無水トルエン(10.3kg、0.45体積)で洗浄した。トルエン溶液をT=0〜5℃で洗浄し、塩化水素(気体、4.0kg、1.00当量)を管を用いてT max=10℃で3時間以下で徐々に投入した。添加の終わりに、バルクを97〜103℃まで加熱し、ホスゲン(16.6kg、1.5当量)を管を用いて徐々に(3時間以下)投入した。添加の終わりに、この混合物をさらに30分間、T=97〜103℃で攪拌し、反応をIPCにより調べ(TLC、出発原料<1%)、バルクをT=80〜85℃に冷却した。この溶液を真空下(P=500mbar、表示)、同じ温度で濃縮すると、2.1体積以下になっ
た。残留ホスゲンがないことを確認するためにバルクを調べ、粗製イソシアネート溶液をT=20〜25℃に冷却し、ドラム中に吐出し、分析した。
【0272】
e)式IVの表題の化合物の調製
工程dによる生成物(30%以下トルエン溶液、1当量)を40分間以下、T=38〜42℃で工程aによる生成物(SM、21.8kg)のTHF(189.5kg、9.80−v/w SM)溶液に添加した。添加の終わりに、ラインをTHF(9.7kg、0.50−v/w SM)で洗浄し、透明溶液を得るまで(3時間以下)、バルクをT=38〜42℃で攪拌した。試料をIPCにかけて(TLC、Aca−11−フルオラミン<1%)尿素形成の完全性を調べた。溶媒を減圧下(P=170〜70mbar、T=22〜25℃)で蒸留し、固体残渣を100%エタノール(132.5kg、7.69−v/w SM)中にT=40〜45℃で溶解した。事前に調製したL−(+)−酒石酸(8.1kg、1.10当量)の100%エタノール(96.0kg、5.57−v/w SM)溶液を、T=40〜45℃で添加し、ラインを100%エタノール(3.3kg、0.19−v/w SM)で洗浄した。この溶液を35〜38℃に冷却し、種添加し、この懸濁液を結晶化温度(T=37℃以下)で30分間攪拌し、2時間以下でT=0〜5℃に冷却し、最後に、この温度でさらに2時間攪拌した。バルクを遠心分離し、ケークを冷却100%エタノール(2×18.9kg、2×0.65−v/w SM)で洗浄し、粗生成物の乾燥時の重量をLODに基づき計算した(46%以下)。
【0273】
粗製酒石酸塩生成物(36.7kg、SM、測定LODに基づき計算された乾燥時の重量)を環流下で(T=75℃以下)、100%エタノール(205.4kg、7.08−v/w SM、湿潤生成物中に含有されるアルコールを含む)中に溶解した後、この溶液を、環流温度で、絶対濾過精度0.3μのカートリッジを通して濾過し、ラインを高温100%エタノール(5.9kg、0.21−v/w SM)で洗浄した。溶液を48〜50℃に冷却し、種添加し、この懸濁液を結晶化温度(T=49℃以下)で30分間攪拌し、2時間以下でT=20〜22℃に冷却し、最後に、この温度でさらに2時間攪拌した。バルクを遠心分離し、ケークを、事前に濾過した冷却100%エタノール(2×18.9kg、2×0.65−v/w SM)で洗浄し、生成物を真空下、T=45℃で少なくとも60時間、乾燥させた。
【0274】
式IVの化合物(SM、26.5kg)の、事前に濾過及び脱気されたメチルエチルケトン(149.3kg、7.00体積)懸濁液をT=58〜63℃に加熱し、この温度で8時間、窒素雰囲気下で攪拌した。それぞれ2時間攪拌させて試料をIPC(粉末X線、DSC、IR)にかけた。この混合物を4.5時間以下でT=12〜17℃に冷却し、この温度で2時間以下攪拌した後、生成物を遠心分離し、ケークを冷却(15℃)した事前に濾過及び脱気されたメチルエチルケトン(2×10.7kg、2×0.50体積)で洗浄した。湿潤生成物を15時間以下真空下で、T=45℃で乾燥させ、取り出し、窒素下で充填して、25.2kg(51.1%)の式IVの表題の化合物の形態Cを得た。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】式Iの遊離塩基化合物の結晶形態Yの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】式IVの化合物の結晶形態Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3】式IVの化合物の結晶形態Bの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4】式IVの化合物の結晶形態Cの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図5】式IVの化合物の結晶形態Dの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6】式IVの化合物の結晶形態Eの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図7】式IVの化合物の結晶形態Fの粉末X線回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式II:
【化1】

の(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミンと、式III:
【化2】

の4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネートとを反応させる工程を含む、式I:
【化3】

の化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル−イソシアネート1当量当たり、約0.9〜約1.1当量の前記(4−フルオロベンジル)−(1−メチルピペリジン−4−イル)アミンを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IV:
【化4】

のN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩。
【請求項4】
請求項1に記載の反応を実施する工程、
該反応後に酒石酸を添加する工程、及び
形成される該ヘミ酒石酸塩を単離する工程
を含む、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩を製造する方法。
【請求項5】
前記単離が、酒石酸の添加後に生成される懸濁液から前記ヘミ酒石酸塩を得る工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記単離が、冷却、溶媒除去、非溶媒の添加、又はこれらの方法の組み合わせによって前記ヘミ酒石酸塩を析出させる工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
約18.6、約16.7、約10.2、約6.2、約6.1、約4.63、約4.49、約4.44及び約3.96のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドヘミ酒石酸塩の結晶形態。
【請求項8】
約18.6、約16.7、約10.2、約8.2、約7.7、約7.4、約6.5、約6.2、約6.1、約5.86、約5.14、約5.03、約4.78、約4.69、約4.63、約4.49、約4.44、約4.35、約4.10、約3.96及び約3.66のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項7に記載の結晶形態。
【請求項9】
前記式IV:
【化5】

の化合物をエタノール又はエタノールとイソプロパノールとの混合液中に溶解する工程、
該溶液を約20℃未満の温度に冷却する工程、及び
その結果生じる析出固体を単離する工程
を含む、請求項7に記載の結晶形態を製造する方法。
【請求項10】
前記溶解工程中の温度が約55〜約90℃である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記冷却工程中の冷却速度が約0.1〜約3℃/分である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記式IV:
【化6】

の化合物をエタノール又はエタノールとイソプロパノールとの混合液中に、約55〜約90℃の温度で溶解する工程、
該溶液を約20度未満の温度に、約0.1〜約3℃/分の速度で冷却する工程、及び
その結果生じる析出固体を単離する工程
を含む方法によって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項13】
約17.4、約10.2、約5.91、約4.50、約4.37及び約3.87のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項14】
約17.4、約10.2、約8.8、約6.4、約5.91、約5.46、約4.99、約4.90、約4.62、約4.50、約4.37、約4.20、約3.87、約3.73、約3.58、約3.42及び約2.90のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項13に記載の結晶形態。
【請求項15】
約12.0、約10.7、約5.86、約4.84、約4.70、約4.57及び約3.77のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項16】
約12.0、約10.7、約7.4、約6.9、約6.6、約6.2、約5.86、約5.53、約5.28、約5.16、約4.84、約4.70、約4.57、約4.38、約4.09、約3.94、約3.77、約3.71、約3.49、約3.46、約3.25、約3.08及び約2.93のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項15に記載の結晶形態。
【請求項17】
式IV:
【化7】

の化合物の固体形態を非プロトン性溶媒中に懸濁する工程、
請求項15に記載の結晶形態の種結晶を添加しながら該懸濁液を攪拌する工程、及び
請求項15に記載の結晶形態を該懸濁液から単離する工程
を含む、請求項15に記載の結晶形態を製造する方法。
【請求項18】
前記懸濁工程中の前記溶媒の温度が約30〜約100℃である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記非プロトン性溶媒が、脂肪族エーテル又は環状エーテル、カルボン酸エステル、ラクトン、アルカン及び脂肪族C3〜C8ケトンから成る群より選択される1つ又は複数である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記種添加が、約40〜約80℃の温度で実行される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
約0.1〜約1℃/分の速度で前記懸濁液を冷却する工程をさらに含む、請求項17に
記載の方法。
【請求項22】
前記懸濁液がおよそ室温まで冷却される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態、又はN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態の混合物を極性及び非プロトン性溶媒中に、約30〜約70℃の温度で懸濁する工程、
請求項15に記載の結晶形態の種結晶を添加しながら該懸濁液を攪拌する工程、及び
該結晶固体を該懸濁液から単離する工程
を含む、請求項15に記載の結晶形態を製造する方法。
【請求項24】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの酒石酸塩を溶媒中に、約0〜約70℃の温度で溶解する工程、
請求項15に記載の結晶形態の種結晶を添加しながら、得られた溶液を約50〜約70℃の温度で攪拌する工程、
得られた懸濁液を1時間当たり約5〜約15℃の冷却速度で、約−20℃〜およそ室温までの温度に冷却する工程、及び
結晶固体を該懸濁液から単離する工程
を含む、請求項15に記載の結晶形態を製造する方法。
【請求項25】
前記溶媒がテトラヒドロフランである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒が、アセトン、ジクロロメタン、1,4−ジオキサン、エタノール、イソプロパノール及びアセトニトリルから成る群より選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態、又はN−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態の混合物を極性及び非プロトン性溶媒に、約30〜約70℃の温度で懸濁する工程、
請求項15に記載の結晶形態の種結晶を添加しながら該懸濁液を攪拌する工程、及び
該結晶固体を該懸濁液から単離する工程
を含むプロセスによって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項28】
N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの酒石酸塩をテトラヒドロフラン又はアセトン中に、約0〜約70℃の温度で溶解する工程、
請求項15に記載の結晶形態の種結晶を添加しながら、得られた溶液を約50〜約70℃の温度で攪拌する工程、
得られた懸濁液を1時間当たり約5〜約15℃の冷却速度で、約−20℃〜およそ室温までの温度に冷却する工程、及び
結晶固体を該懸濁液から単離する工程
を含むプロセスによって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項29】
約0%〜約6.6%のイソプロパノール又はエタノールを含み、約17.2、約16.0、約6.1、約4.64、約4.54及び約4.37のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項30】
約17.2、約16.0、約10.7、約9.8、約6.6、約6.1、約6.00、約5.73、約5.33、約5.17、約4.91、約4.64、約4.54、約4.37、約4.10、約3.91、約3.84、約3.67、約3.55、約3.42、約3.32、約3.13及び約3.06のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項29に記載の結晶形態。
【請求項31】
約5%のt−ブチルメチルエーテルを含み、約17.3、約16.2、約10.6、約9.8、約8.1、約7.5、約6.6、約6.0、約5.28、約5.09、約4.90、約4.72、約4.51、約4.39、約4.26、約4.04、約3.86、約3.70、約3.54、約3.48及び約3.02のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項32】
約3%のテトラヒドロフランを含み、約19.0、約16.0、約13.0、約7.8、約6.4、約6.2、約5.74、約5.29、約5.04、約4.83、約4.62、約4.50、約4.34、約4.24、約4.05、約3.89、約3.76、約3.58及び約3.27のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミド酒石酸塩の結晶形態。
【請求項33】
前記反応後に前記式Iの化合物を単離する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記単離が、
前記反応後に塩形成酸を添加する工程、
溶媒除去、析出、又は溶媒除去及び析出の両方によって、形成される塩を単離する工程、
該単離した塩を、有機溶媒相とアルカリ水性相とを含む二相系に添加する工程、及び
前記式Iの化合物を前記有機溶媒相から得る工程
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記塩形成酸が、鉱酸、モノカルボン酸又はジカルボン酸、及びスルホン酸から成る群より選択される1つ又は複数である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記水性相のpHが約8.5より大きい、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記反応が不活性有機溶媒の存在下で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記不活性有機溶媒が、脂肪族エーテル、脂肪族カルボン酸のエステル、アルコール、ラクトン、ハロゲン化炭化水素、及び脂肪族C3〜C8ケトンから成る群より選択される1つ又は複数である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記反応が、約−30℃〜約60℃の温度で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
水性アルカリ金属水酸化物を添加する工程をさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
式I:
【化8】

の化合物のヘミ酒石酸塩を水に溶解する工程、
該式Iの化合物を十分に溶解する量の非プロトン性有機溶媒を、該塩水溶液に添加する工程、
塩基を添加することにより、該塩水溶液のpHを少なくとも約8.5の値に調整する工程、
該水溶液を前記有機溶媒で抽出すると共に、全ての有機相を回収する工程、
前記非プロトン性有機溶媒の一部を除去する工程、
残りの非プロトン性有機溶媒を15℃未満に冷却する工程、及び
形成される析出物を単離する工程
を含むプロセスによって生成される、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態。
【請求項42】
10℃/分の加熱速度の示差走査熱量測定(DSC)により測定された約124℃の融点を示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態。
【請求項43】
約13.0、約10.9、約6.5、約4.7、約4.3、約4.22及び約4.00のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、N−(4−フルオロベンジル)−N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−N’−(4−(2−メチルプロピルオキシ)フェニルメチル)カルバミドの結晶形態。
【請求項44】
約13.0、約10.9、約6.8、約6.5、約6.2、約5.2、約4.7、約4.5、約4.3、約4.22、約4.00、約3.53、約3.40、約3.28、約3.24、約3.19、約3.08、約2.91及び約2.72のd値(オングストローム)を有するピークを含む粉末X線回折パターンを示す、請求項43に記載の結晶形態。
【請求項45】
式I:
【化9】

の化合物の塩を水に溶解する工程、
該式Iの化合物を十分に溶解する量の非プロトン性有機溶媒を、該塩水溶液に添加する
工程、
塩基を添加することにより、該塩水溶液のpHを約8.5より大きい値に調整する工程、
前記非プロトン性有機溶媒の一部を除去する工程、
残りの非プロトン性有機溶媒を15℃未満に冷却する工程、及び
形成される析出物を単離する工程
を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記式Iの化合物の塩がヘミ酒石酸塩である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記有機溶媒の一部を除去する前に、前記水溶液を該有機溶媒で抽出すると共に、全ての有機相を回収する工程をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記有機溶媒が、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、脂肪族カルボン酸のエステル、アルコール、ラクトン、エーテル及び脂肪族C4〜C8ケトンから成る群より選択される1つ又は複数である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
式IV:
【化10】

の化合物と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項50】
請求項7に記載の結晶形態と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項51】
請求項13に記載の結晶形態と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項52】
請求項15に記載の結晶形態と、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項53】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、式I:
【化11】

の化合物を受容者に送達する方法。
【請求項54】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、モノアミン受容体の活性を阻害する方法。
【請求項55】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、神経精神病を治療する方法。
【請求項56】
前記神経精神病が、精神病;統合失調症;分裂情動障害;躁病;精神病性うつ病;情動障害;認知症;不安神経症;睡眠障害;食欲不振;双極性障害;高血圧、偏頭痛、血管痙攣及び虚血に続発する精神病;運動性チック;振せん;精神運動遅延;動作緩慢;及び神経障害疼痛から成る群より選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、神経変性疾患を治療する方法。
【請求項58】
前記神経変性疾患が、パーキンソン病;ハンチントン病;アルツハイマー病;脊髄小脳萎縮症;ツレット症候群;フリードライヒ運動失調症;マシャド・ジョセフ病;レービー小体型認知症;ジストニア;進行性核上麻痺;及び前頭側頭型認知症から成る群より選択される、請求項57に記載の神経変性疾患を治療する方法。
【請求項59】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、ドーパミン作動性療法に関連するジスキネジアを治療する方法。
【請求項60】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、ドーパミン作動性療法に関連するジストニア、ミオクローヌス又は振せんを治療する方法。
【請求項61】
対象者に請求項3に記載の化合物を投与する工程を含む、血栓状態を治療する方法。
【請求項62】
前記血栓状態が、心筋梗塞;血栓発作又は虚血発作;特発性血小板減少性紫斑病及び血栓性血小板減少性紫斑病;末梢血管疾患;並びにレイノー病から成る群より選択される、請求項61に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−514642(P2008−514642A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533762(P2007−533762)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2005/034813
【国際公開番号】WO2006/037043
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507164652)アカディア ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】