説明

NKG2Dの調節

【課題】自己反応性T細胞の拡大および機能を障害することによる、炎症性症候群を治療および/または予防するための方法、およびNK細胞媒介移植片拒絶反応を予防するための方法の提供。
【解決手段】NK細胞およびある種のタイプのT細胞でヒトおよびマウスにおいて発現される活性化受容体であるNKG2Dの媒介活性化に関連する症候群を治療または予防する方法であって、NKG2Dを発現する白血球を、細胞のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤と接触させる工程を含む方法。該薬剤としては、NKG2Dに結合する抗体、特に、モノクローナル抗体であることが好ましい。また、該薬剤としては、NKG2Dコーディング核酸の転写または翻訳を低下させる核酸であることが好ましい。該症候群としては、自己免疫および/または炎症に関連する糖尿病、移植片拒絶、慢性関節リウマチ、セリアック病、多発性硬化症などであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、特に、自己反応性T細胞の拡大および機能を障害することによって、炎症性症候群を治療および/または予防するための方法および組成物、およびそれに関連するいずれかのさらなる発明的特徴に関する。加えて、本発明は、NK細胞媒介移植片拒絶反応を予防するための方法および組成物を提供する。
【0002】
なお、本出願は、2005年3月7日に出願された米国仮出願第60/659,678号、2004年6月1日に出願された同第60/576,242号、および2004年4月5日に出願された同第60/559,919号の恩典を主張する。
【0003】
本発明は、National Institutes Healthからの、助成金CA89189、CA95137、P30 DK26743およびP60 DK63720の下で政府の支持により一部成された。そのようなものとして、合衆国政府は本発明においてある種の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
NKG2Dは、NK細胞およびある種のタイプのT細胞でヒトおよびマウスにおいて発現される活性化受容体である。NKG2Dは、ヒトにおいて、UL16結合タンパク質(ULBP1)、ULBP2、ULBP3、ULBP4、およびMHCクラスI鎖関連分子(MICAおよびMICB)を、およびマウスにおいて、重要でない組織適合性抗原60(H60)、レチノイン酸初期誘導性転写物(RAE-1)、およびネズミULBP様転写物1(MULT-1)を認識する。NKG2Dホモダイマーは、コンセンサスp85ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3-K)結合モチーフTyr-Ile-Asn-Met(配列番号:9に記載されたYINM)を含有する、アダプター分子DAP10と会合する。NKG2DおよびDAP10はそれらの生合成経路において初期に相互作用し、この相互作用が細胞表面へのNKG2Dの輸送に必要である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、NKG2D媒介活性化に関連する症候群を治療または予防する方法および組成物を提供する。
【0006】
1つの局面において、本方法は、上記症候群を治療または予防するのに適した条件下で、NKG2Dを発現する白血球を、細胞のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤と接触させることによって行われる。いくつかの態様において、接触の結果、リガンド誘導NKG2D活性化が少なくとも約30%低下し;他の態様において、低下は、対照に対して、少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%または90%である。
【0007】
そうした薬剤は、非限定的に、NKG2DとDAP10との相互作用を低下させ;細胞の表面のNKG2Dの量を低下させ;細胞NKG2Dが内部化される速度を増大させ;NKG2D-NKG2Dリガンド複合体を通じてのシグナル伝達を低下させ;および/またはNKG2Dコーディング核酸の転写または翻訳を低下させる。いくつかの態様において、本薬剤は、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3またはULBP4の一つまたは複数が、(治療剤の場合に)治療的恩典を提供するのに必要である程度まで、細胞表面NKG2Dの量を減少させることができない(例えば、慢性炎症性症候群に存在するもののような)条件下で、本薬剤は表面NKG2Dポリペプチドの内部化を促進する。
【0008】
いくつかの態様において、本発明によって提供される組成物および方本法で用いられる薬剤は、NKG2Dに結合する抗体、またはそのNKG2D結合断片を含む。抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体のようなモノクローナル抗体であり得る。
【0009】
本発明を実施するにおいて、標的白血球はNKG2D+CD8+T細胞、NKG2D+CD4+T細胞、NKG2D+γδT細胞;およびNKG2D+NK細胞の一つもしくは複数であり得;または標的細胞はマクロファージ細胞を含むことができる。
【0010】
1つの局面において、本発明の方法を用いて、ヒト患者のような哺乳動物において、NKG2D媒介活性化に関連する炎症性症候群を治療および/または予防することができる。ヒト患者は、そのような炎症性症候群を有する、または発症する実質的な危険性があると診断され得る。特別な局面において、本発明の方法はヒト患者における診断された疾患の治療に向けられる。
【0011】
別の局面において、本発明は、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、セリアック病、クローン病および潰瘍性結腸のような炎症性腸疾患、乾癬、または移植片拒絶反応を治療または予防する方法も提供する。本発明がやはり適用できる症候群は、非限定的に、I型真性糖尿病、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、自己免疫ブドウ膜炎症、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫肝炎、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫血小板減少症、グレーブス病、自己免疫卵巣炎、自己免疫精巣炎、一時的関節炎、抗リン脂質症候群、ウェグナー肉芽腫症、ベーチェット病、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、剛直性脊椎炎、シェーグレン症候群、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑、乾癬性関節炎、骨関節炎、ステロイド耐性喘息、慢性閉塞性肺病、およびアテローム性動脈硬化症を含む。特別な局面において、症候群はI型真性糖尿病でない。
【0012】
もう1つの局面において、本発明は、例えば、抗NKG2D抗体または抗体断片のようなNKG2Dモジュレーターを含む薬学的製剤およびキットを提供する。一連の態様において、キットは、NKG2Dモジュレーター、および白血球のNKG2D媒介活性化に関連する症候群を治療または予防するのに適した条件下で、白血球をNKG2Dモジュレーターと接触させるための説明書を含む。
【0013】
本発明は、NKG2D+白血球をテスト剤と接触させる工程;および、白血球によるNKG2D発現を測定する工程を含むNKG2D調節剤を同定する方法も提供する。いくつかの好ましい態様において、NKG2D発現の測定は、NKG2D転写、翻訳および内部化の測定の一つまたは複数を含む。これらの態様のサブセットは、さらに、FDAガイドラインに従ってテスト剤をテストする臨床試験を含む。
【0014】
さらに、本発明は、NKG2D+白血球をテスト剤と接触させる工程;および、白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を測定する工程を含む、NKG2D調節剤を同定する方法を提供する。いくつかの好ましい態様において、リガンド誘導NKG2D活性化の測定は、DAP10リン酸化、p85 PI3キナーゼ活性、Aktキナーゼ活性、IFN-γの生産、およびNKG2D+標的細胞の細胞溶解の測定の一つまたは複数を含む。これらの態様のサブセットは、さらに、FDAガイドラインに従ってテスト剤を試験する臨床試験を含む。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、炎症状態および/またはNKG2D活性化に関連する自己免疫疾患の治療または予防用の治療または予防剤を同定する方法を提供する。本方法は、(例えば、本明細書において記載された実験的戦略を用いるそのような抗体を解析することによって)、NKG2Dに特異的に結合し、およびNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、細胞の集団、適当なモデル、宿主または患者におけるそのような細胞を有意に枯渇することなく障害する能力について潜在的薬剤(例えば、抗体または抗体断片)をスクリーニングすることを含む。スクリーニングはまた、あるいは、NKG2D+T細胞またはNK細胞の表面上のNKG2Dの内部化を誘導する能力についてスクリーニングすることを含む。
【0016】
もう1つの特別な局面において、本発明が、慢性関節リウマチの治療用の医用薬剤の調製のための、NKG2Dに対して特異的であって、NKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、そのような細胞を枯渇させることなく障害することができる薬剤(例えば、抗体または抗体断片)の使用に関する。
【0017】
なおもう1つの特別な局面において、本発明は、多発性硬化症の治療用の医用薬剤の調製のための、NKG2Dに対して特異的であって、NKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、そのような細胞を枯渇させることなく障害することができる薬剤(例えば、抗体または抗体断片)の使用に関する。
【0018】
なおもう1つの例示的な局面において、本発明は、炎症性腸疾患の治療用の医用薬剤の調製のための、NKG2Dに対して特異的であって、NKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、そのような細胞を枯渇させることなく障害することができる薬剤(例えば、抗体または抗体断片)の使用に関する。
【0019】
本発明のさらなる例示的な局面は、乾癬の治療用の医用薬剤の調製のための、NKG2Dに対して特異的であって、NKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、そのような細胞を枯渇させることなく、障害することができる薬剤(例えば、抗体または抗体断片)の使用に関する。
【0020】
本発明のさらなる局面は、移植片拒絶反応の治療用の医用薬剤の調製のための、NKG2Dに対して特異的であって、NKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、そのような細胞を枯渇させることなく、障害することができる薬剤(例えば、抗体または抗体断片)の使用に具体化される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】前糖尿病NODマウスにおける膵臓細胞でのRAE-1発現のグラフ表示である。図1(a)は、12〜16週齢NODおよびBALB/cマウスからの膵臓組織における定量的なRT-DCRによって測定されるRAE-1 mRNAを示す。図1(b)は、4〜6週齢および12〜16週齢のNODおよびNOD.scidマウスからの膵臓組織における定量的RT-PCRによって測定されるRAE-1 RNAを示す。図1(c)は、前糖尿病NODの異なる組織における定量的RT-PCRによって測定されるRAE-1 mRNAを示す。代表的なデータが示され、RAE-1転写の倍-誘導として表される。倍-誘導は式:倍誘導=HPRTに対して正規化された前糖尿病NOD器官におけるRAE-1転写物の量を、HPRTに対して正規化された若いNOD器官におけるRAE-1転写物の量で割る;に従って計算した。図1(d)は、抗CD45および抗RAE-1 mAbを用いるフローサイトメトリーによって分析されたCD45-NOD膵臓細胞でのRAE-1発現を示す。図1(e)は、抗CD45および抗RAE-1 mAbで染色したNODマウスにおける膵臓(上方パネル)および排出膵臓リンパ節(PLN)(下方パネル)から単離下CD45-島細胞でのRAE-1発現を示す。
【図2】図2(a)は、CD8+T細胞でのNKG2D発現のグラフ表示である。10週齢および25週齢NODマウスの脾臓、肝臓、膵臓リンパ節(PLN)および膵臓からの白血球を単離し、CD8およびNKG2Dに対するモノクローナル抗体を用いる標準的な方法によって染色した。(合計CD8+T細胞のパーセンテージとして表される)NKG2D+CD8+T細胞の示されたパーセンテージが示される。図2(b)は膵臓およびPLN N KG2D+CD8+T細胞でのCD44およびLy-6Cの発現のグラフ表示である。細胞はCD8、NKG2D、およびCD44またはLy6Cに対するモノクローナル抗体で染色し、結果をゲートしたCD8+T細胞について示す。図2(c)は、膵臓およびPLN N RP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞でのNKG2DおよびCD44の発現のグラフ表示である。細胞をNRP-V7/H-2Kdテトラマーで、およびCD8およびCD44またはNKG2Dに対するモノクローナル抗体で染色した。(CD8+Tでゲートした)NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の示されたパーセンテージが示される。図2(d)は、島近くに蓄積されたNKG2D+CD8+T細胞の顕微鏡写真を示す。16週齢の前糖尿病NODマウスから単離した膵臓の順次の凍結片を、抗CD8、抗CD68(マクロファージマーカー)、抗NKG2Dおよび抗インスリン抗体で染色した。左側:位相差イメージ、中央:CD8(赤色)、NKG2D(緑色)、およびインスリン(青色);右側:CD68(赤色)、NKG2D(緑色)、およびインスリン(青色)。二重陽性CD8+NKG2D+T細胞およびCD68+NKG2D+マクロファージは黄色である。
【図3】図3(a)は、糖尿病を発症したNODマウスの割合に対する7〜25週齢の抗NKG2D mAbでの治療の効果のグラフ表示である。黒丸:抗NKG2D mAbで処理したNODマウス(n=7)(2週間毎に200μg/マウスIP);白丸:滅菌非パイロジェンPBSで処理したNODマウス(n=7)。血糖レベルが2つの連続測定で300mg/dLを超えた場合に糖尿病と診断した。図3(b)は、図3aに表された動物における6週齢〜40週齢で毎週測定した血糖レベルのグラフ表示である。図3(c)は、後期前糖尿病段階における抗NKG2D mAbでの処理後に糖尿病を発症したNODマウスの割合のグラフ表示である。NODマウスは、13週齢〜25週齢にて、抗NKG2D mAb(2週間毎に200μg/マウスIP、黒丸;n=14)または対照Ig(白丸;n=14)で処理した。25週齢において、7匹の抗NKG2D mAb処理マウスは30週齢まで処理を受け続けた(暗い三角形)。図3(d)は、図3cにおいて表された動物における12週齢〜36週齢に毎週測定した血糖レベルのグラフ表示である。
【図4】図4(a)は、抗CD8、抗NKG2D、および抗CD44で染色され、フローサイトメトリーに付された対照Ig(cIg)または抗NKG2D mAbで処理した(200μg/マウスIPで2週間毎、7週齢で開始)。示された結果はCD8+T細胞にゲートされる。図4(b)は、7週齢から対照Igで処理した16週齢NODマウスの膵臓島の写真を表す。凍結膵臓切片は、対照Igで処理した16週齢NODマウスから染色した。左側:DAPI(核)染色;右側:CD8(赤色)、NKG2D(緑色)およびインスリン(青色)。図4(c)は、パネル(b)におけるように調製し、染色した7週齢からの抗NKG2D mAb処理(2週間毎に200μg/マウス)で処理した16週齢NODマウスの膵臓島の写真を表す。図4(d)は、膵臓における自己反応性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の蓄積に対する抗NKG2D抗体処置の効果のグラフ表示である。白血球は、13週齢からの、抗NKG2D mAb(200μg/マウスIPで2週間毎)で処理した18週齢NODマウス、または対照Igの膵臓およびPLNから単離した。(CD8+T細胞でゲートした)NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の示されたパーセンテージを示す。図4(e)は、NKP-V7/H-2Kdテトラマーおよび抗CD8 mAbで染色した、対照Igで、または抗NKG2D(200μg/マウスIP2週間毎)で処理したマウスにおける脾臓および末梢血液からのリンパ球のグラフ表示である。示されたパーセンテージは(CD8+T細胞集団でゲートされた)NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性細胞であった。図4(f)は、示されたように、13週齢で開始し、対照Ig(cIg)または抗NKG2D(200μg/マウスIP2週間毎)で処理した25週齢NODマウスから単離し、PMA(20ng/ml)およびイオノマイシン(500ng/ml)およびブレフェルディンA(5μg/ml)で6時間培養下で膵臓リンパ節のグラフ表示である。細胞内IFN-γは、免疫蛍光染色およびフローサイトメトリーによってCD8+T細胞電検出された。
【図5】NOD.scid受容体へのNOD T細胞の養子免疫伝達実験からのフローサイトメトリー測定のグラフ表示である。図5(a)は、NOD T細胞を移植したNOD.scidマウスの膵臓、PLNおよび脾臓でのNKG2D+CD8+T細胞を示す。養子免疫伝達に先立って、糖尿病NODドナーからの精製されたT細胞を抗CD8および抗NKG2Dで染色した(a、頂部左側パネル)。導入から5週間後、膵臓、PLNおよび脾臓から収穫された細胞を抗CD8および抗NKG2D(a、上方パネル)または抗NKG2Dおよび抗CD44(a、下方パネル)で染色した。(CD8+T細胞でゲートされた)NKG2D+CD8+T細胞のパーセンテージを示す。図5(b)は、導入の時点で開始し、導入から10週間後に分析した、抗NKG2D mAb(200μg/マウスIP2週間毎)または対照Igで処理した糖尿病NODマウスからの養子免疫伝達T細胞を受けるNOD.scidマウスでの自己反応性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の蓄積を示す。自己反応性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の示されたパーセンテージは、生きた細胞でゲートして検出された。図5(c)は、CD8+T細胞でゲートした、これらの同一処理マウスからのNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性T細胞でのNKG2Dの検出を示す。図5(d)は、糖尿病を発症した糖尿病NODマウスからのT細胞を移植したNOD.scidマウスの割合のグラフ表示である。糖尿病NODマウスからの養子免疫伝達T細胞を受けた5週齢NOD.scidマウスを、5週齢〜14週齢に、抗NKG2D mAb(黒丸;n=6)または対照Ig(白丸;n=7)で処理した。マウスに、2週間毎に、200μg抗NKG2D mAb CX5を腹腔内注射した。糖尿病は、血糖レベルが2つの連続測定で300mg/dLよりも大きな場合に診断された。図5(e)は、抗NKG2D mAbでの処理を停止した後における、自己反応性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の拡大のグラフ表示である。抗NKG2D mAb処理を、糖尿病NODマウスからのT細胞を移植したNOD.scidマウスで終えてから4週間後に、動物を犠牲にし、膵臓を、浸潤性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性NKG2D+CD8+T細胞につき分析した。比較のために、糖尿病を発症した対照Igで処理したマウスも分析した。
【図6】図6(a)は、養子免疫伝達前における、8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞でのNKG2Dの発現の欠如のグラフ表示である。若い8.3TcR-トランスジェニックNODマウスのリンパ節および脾臓からリンパ球を単離した。および、磁気細胞ソーティングによって、8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞を精製した。T細胞の導入に先立って、8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞を、抗CD8およびNRP-V7/H-2Kdテトラマーまたは抗NKG2Dで染色し、図示したように、フローサイトメトリーによって分析した。図6(b)は、8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞の養子免疫伝達から2日後における、膵臓における8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞でのNKG2D発現のグラフ表示である。8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞の養子免疫伝達から2日後に、細胞導入の時点で、対照Igまたは抗NKG2D mAb CX5で処理されたマウスの膵臓から白血球を単離した。細胞をNRP-V7/H-2Kdテトラマーで染色し、抗NKG2Dをフローサイトメトリーによって分析した。(NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性細胞でのゲーティングによって同定された)養子免疫伝達されたT細胞でのNKG2Dの発現を示す。図6(c)は、膵臓における8.3TcR-トランスジェニックCD8+NOD T細胞の増殖に対する抗NKG2D mAb CX5の効果のグラフ表示である。CFSE標識8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞(1×107)を10週齢野生型NODマウスに導入した(0日)。受容体NODマウスを、-1日、1日、および5日に、受容体NODマウスをcIgまたは抗NKG2D mAb CX5(200μg)で処理した。導入後に、受容体NODマウスを犠牲にし、白血球を単離し、膵臓、膵臓リンパ節(PLN)、および腸間膜リンパ節(MLN)から分析した。(c)に示される細胞は、生きたCD8陽性リンパ球でゲートされた。図6(d)は、以下の式:%増殖細胞=(合計CFSE+NRP-V7/H-2Kdテトラマー+CD8+細胞−非分裂性CFSE+NRP-V7/H-2Kdテトラマー+CD8+細胞)×100/合計CFSE+ NRP-V7/H-2Kdテトラマー+CD8+細胞によって計算された、導入から2、3および4日後における、一つまたは複数の分裂を受けた対照Ig(塗り潰していない棒線)および抗NKG2D mAb(塗り潰した棒線)処理マウスにおけるCSFS標識細胞のパーセンテージのグラフ表示である。
【図7】100nM IGRP(グルコース-6-リン酸触媒サブユニット-関連タンパク質)ペプチドで3日間培養し、および、200U/mlヒト組換えIL-2および4ng/ml IL-7の存在下でさらに5日間増殖させた8.3TcR-トランスジェニックNODリンパ球の顕微鏡写真である。活性化された8.3TcR-トランスジェニックCD8+T細胞を抗NKG2D mAb CX5で氷上で染色し、コレラトキシンBで逆染色して、細胞表面膜を標識した。これらの染色された細胞のアリコートを37℃にて30分間インキュベートし、もう1つのアリコートを氷上に維持した。細胞は、蛍光顕微鏡を用いることによって分析した。顕微鏡写真においては、NKG2D発現は緑色蛍光で表示され、赤色蛍光はコレラトキシンB(膜)染色を示す。NKG2Dは氷上でインキュベートした細胞の細胞表面に存在したが、37℃で培養された細胞において調節され、内部化された。
【図8】インビボにおける、NKG2D保有CD8+T細胞に対する抗NKG2D mAbの効果のグラフ表示である。OT-1オボアルブミン(OVA)-特異的TcR-トランスジェニックCD8+T細胞を3日間100nM OVAペプチドで活性化し、および、200U/mlヒト組換えIL-2および4ng/ml IL-7でさらに5日間培養した。NKG2Dを活性化されたOT-1T細胞で発現され(>95%)、これをCFSEで染色し、C57BL/6マウスに養子免疫伝達した(2×107細胞)。導入されたCD8+NKG2D+OT-1 TcR-トランスジェニックT細胞を受けるマウスを、-2、0および+2日に抗NKG2D mAbまたは対照ラットIgで処理した(腹腔内注射当たり200μg)。図8(a):導入から4日後に、血液試料を集め、マウスCD8およびNKG2Dに対するmAbで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。CSFEで標識したCD8+T細胞のパーセンテージを示す。図8(b):CFSE標識OT-1 TcR-トランスジェニックT細胞の養子免疫伝達および(a)に示したような対照Igまたは抗NKG2D mAb CX5での処理から21日に、マウスを犠牲にし、脾臓細胞を単離し、フローサイトメトリーによって分析した。図8(c):CFSE標識CD8+NKG2D+OT-1T細胞の養子免疫伝達から7日に、マウスに、枯渇ラット抗マウスCD8 mAb(2.43ハイブリドーマ、ラットIgG2bイソタイプ)を注射した。3日後に、末梢血液細胞を対照Ig、抗CD8または抗NKG2D mAbで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。この実験の目的は、CX5抗NKG2Dモノクローナル抗体が、抗体がインビボで投与された場合に、NKG2D+CD8+T細胞を枯渇させないことを示すことであった。
【図9】自己反応性CD8+T細胞増殖に対する抗NKG2D mAbの効果のグラフ表示である。8.3TcR-トランスジェニックNOD T細胞をCSFEで標識し、野生型NODマウスに導入し、これを図6に記載したように対照Igまたは抗NKG2D mAb CX5で処理した。膵臓、膵臓リンパ節、腸間膜リンパ節および脾臓から収穫された細胞をNRP-V7/H-2Kdテトラマーおよび抗CD8 mAbで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。CD8陽性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性細胞にゲートされたリンパ球のヒストグラムを示す。(CFSE+CD8+NRP-V7/H-2Kdテトラマー+T細胞にゲートされた)増殖する(1を超える分裂)および非増殖細胞のパーセンテージを各ヒストグラムに示す。イソタイプがマッチした対照Igまたはテトラマー染色に対する対照で染色した細胞は、試薬の結合の特異性を示した。
【図10】NOD膵臓細胞でのNKG2Dリガンドに対する染色の特異性を示す。図10(a):NOD膵臓細胞を単離し、抗CD45 mAbで、および対照Ig、抗汎用RAE-1 mAb(クローン186107)、抗RAE1γ mAb(クローンCX1)またはマウスNKG2D-Ig融合タンパク質(ヒトIgG1 Fcに融合したマウスNKG2Dの細胞外ドメイン)、続いて、可視化のための適当な第二工程試薬で染色した。細胞はフローサイトメトリーによって分析し、CD45-陰性およびヨウ化プロピジウム陰性の生細胞を評価した。イソタイプがマッチした対照Ig(cIg)で染色した細胞は、mAb結合の特異性を示した(細い線)。図10(b)純粋な抗RAE-1 mAbはビオチン標識抗RAE-1 mAbの染色をブロックし、これは、結合の特異性を示す。膵臓細胞を0.25μgの精製されたcIg、抗汎用RAE-1 mAbクローン186107または抗RAE-1γ mAbクローンCX1(これはRAE-1αおよびRAE-1βと交差反応する)と共にプレインキュベートした。氷上での20分間のインキュベーションの後、および、これらの細胞を、さらに20分間、0.25μgビオチニル化対照Ig、ビオチニル化抗RAE-1 mAbクローン186107、ビオチニル化抗RAE-1γ mAbクローンCX1およびFITC結合抗CD45 mAbで染色した。ビオチニル化mAbを検出するために、細胞を洗浄し、PE結合ストレプトアビジンと共にインキュベートした。細胞をフローサイトメトリーによって分析し、示したデータはCD45-陰性ヨウ化プロピジウム-陰性の生きた細胞でゲートした。従って、3つの独立した試薬:抗RAE-1 mAbクローン186107、抗RAE-1 mAbクローンCX1、およびマウスNKG2D-Ig融合タンパク質を用い、NKG2DリガンドをNOD膵臓細胞で検出する。抗RAE-1 mAb染色は、ビオチニル化抗RAE-1 mAb染色が精製された抗RAE-1 mAbによって完全にブロックされたが、対照ラットIgGによってブロックされなかったことが特異的である。
【図11】図11(a)はネズミNKG2DのcDNA配列(配列番号:1)を示す。図11(b)はネズミNKG2Dのアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。図11(c)はヒトNKG2DのcDNA配列(配列番号:3)を示す。図11(d)はヒトNKG2Dのアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。
【図12】マウス抗ヒトNKG2D抗体(クローン149810)と共に16時間インキュベートして、NKG2D内部化を刺激したNKL細胞(ヒトNK白血病細胞系)のフローサイトメトリー分析のグラフ表示である(右側パネル)。左側パネルは、対照抗体と共に16時間インキュベートした細胞を示す。各場合、細胞を軽く酸性緩衝液(pH3.5)中で洗浄して、いずれの残存する結合抗体も除去し、および、対照Igまたは抗NKG2D mAb、続いて、フィコエリスリン結合ヤギ抗マウスIgG抗体で染色した。実験は、抗ヒトNKG2Dモノクローナル抗体がNKG2Dの内部化(調節)を誘導し、他方、対照IgとのインキュベーションはNKG2Dの内部化を引き起こさないことを示す。
【図13】RAE-1がB/c BM細胞で発現されるが、B4 BM細胞では発現されないことを示す。図13(a):新たに単離されたBM細胞をマウスNKG2D-ヒトIg Fc融合タンパク質(NKG2D Ig)または対照ヒトIg(cIg)で染色した。NKG2D-Igの結合を検出するために、PE結合抗ヒトIgG抗体(抗ヒトIg PE)を第二工程抗体として用いた。点線は、BM細胞へのcIg染色を表す。太い線はBM細胞でのNKG2Dリガンド発現を示す。図13(b)BM細胞をビオチニル化抗汎用RAE-1 mAb、ビオチニル化抗H60 mAb、ビオチニル化抗MULT1 mAbまたはビオチニル化されたイソタイプがマッチしたcIgで染色し、および、PE結合ストレプトアビジンで染色した。点線はcIg染色を示し、太い線はBM細胞でのRAE-1、H60およびMULT1発現を示す。図13(cおよびd):CB6F1受容体を-2日に抗NK1.1 mAbで処理した。0日に、受容体を照射し(11Gy)、および、B/cまたはCB6CF1 BM細胞(4×106)で復元した。7日に、受容体脾臓からの細胞を単離し、パネルaおよびbについて記載したように分析した。点線はBM細胞でのcIg染色を表す。太い線はBM細胞でのNKG2Dリガンド、RAE-1、H60およびMULT1発現を示す。数字は染色された細胞の平均蛍光(任意の直線単位)を表す。図13(eおよびf):グラフ的には、RAE-1-発現細胞の表現型を示す。BM細胞を、抗NK1.1 mAbで予め処理し照射された受容体に導入した。細胞を単離し、パネルcに記載したように染色した。図13(g):増殖する細胞はRAE-1を発現することを示す。B/c BM細胞を、抗NK1.1 mAbで予め処理した照射されたCB6F1マウスに導入した。導入から6日後に、BrdU(0.8mg/マウス)をマウスに注射した。2時間または12時間後に、受容体脾臓からの細胞を集め、抗汎用-RAE-1 mAbおよび抗BrdUで染色した。図13(hおよびI):RAE-1が5-FU/処理BMの子孫に発現されることを示す。5-フルオロウラシル処理B/cマウスからのBM細胞を、抗NK1.1 mAbで予め処理した照射されたCD6F1マウスに導入した。導入から8日後に、細胞を単離し、パネルcおよびeにつき記載したように分析した。図13(i):RAE-1陽性ゲーテッド細胞のc-kitおよびSca-1染色を示す。パネルe-iにおいて、cIgで染色した細胞の>98%は下方左側4分の1にあった(図示せず)。頂部の2つの4分の1体の各々における細胞のパーセンテージを表示する。これらの結果は、少なくとも2つの独立した実験で再現性があった(代表的なデータを示す)。
【図14】図14(a):CB6F1ハイブリッドマウスにおけるB/c BMの拒絶を抗NKG2D mAbがブロックすることを示す。約4×106BM細胞を照射されたCB6F1受容体に導入した。受容体マウスに5日に125IUdRを注射し、6日に脾臓を収穫し、カウントした。黒色棒線はB/c BM->CB6F1マウスにおける脾臓の125IUdR取込を示し、白色棒線はCB6F1 BM->CB6F1受容体における放射線標識の取込を示す。マウスを非枯渇中和抗NKG2D mAbまたはNK細胞-枯渇抗NK1.1 mAb(-2日に200μg/マウス)で、示されたように、処理した。結果は平均±S.D.cpm(群当たり5匹のマウス)として示す。実験は匹敵する結果でもって2回行った。図14(b)抗NKG2D mAbまたは対照Igで処理した照射されたCB6F1受容体に再度住み着いたB/cドナー細胞の表現型をグラフにより示す。マウスを、パネルaに記載したように、移植から8日後に収穫された脾臓細胞で処理し、他方、細胞を染色し、図13に記載したようにデータを掲げた。
【図15】RAE-1を発現する同遺伝子型BM細胞の拒絶を示す。図15(a)は、RAE-1εトランスジェニックB6マウスにおける骨髄細胞でのRAE-1εの発現を示す。野生型B6およびRAE-1εトランスジェニックB6マウスからの新たに単離された骨髄を、cIgまたは抗汎用-RAE-1 mAbで染色した。図15(b)は、B6 NK細胞がインビトロにて同遺伝子型RAE-1εトランスジェニックBM細胞を殺傷することを示す。野生型B6およびRAE-1εトランスジェニックB6マウスからの新たに単離されたBMを、10μg/mlで用いたcIgまたは抗NKG2D mAb(クローン191004)の存在下で、エフェクターとしてのIL-2-活性化野生型NK細胞(National Cancer Institute Biological Resources Branch Pre-clinical Repositoryからの2000U/ml組換えヒトIL-2中で7日間培養したB6 NK細胞)を用い、標準インビトロ細胞障害アッセイ法で標的として用いた。図15(c)は、B6マウスがRAE-1εを発現する同遺伝子型骨髄を拒絶することを示す。約4×106 RAE-1εトランスジェニックB6 BM細胞を、照射されたB6受容体に導入した。受容体マウスに5日に125IUdRを注射し、6日に脾臓を収穫し、カウントした。黒い棒線はRAE-1εトランスジェニックBM->B6マウスにおける脾臓の125IUdR取込を示し、白色棒線は野生型B6 BM->B6受容体における放射性標識の取込を示す。示したように、マウスを非枯渇中和抗NKG2D mAbまたはNK細胞-枯渇抗NK1.1 mAb(-2日に200μg/マウス)で処理した。結果は平均±S.D.cpmとして示す(群当たり5匹のマウス)。実験は匹敵する結果でもって2回行った。図15(d)は、CB6F1マウスが、RAE-1εを発現する同遺伝子型骨髄を拒絶することを示す。約4×106のRAE-1εトランスジェニックCB1 BM細胞が照射されたCB6F1受容体に導入された。マウスを5日に125IUdRを注射し、6日に脾臓を収穫し、カウントした。黒色棒線はRAE-1εトランスジェニックCB6F1 BM->CB6F1マウスにおける脾臓の125IUdR取込を示し、白色棒線は野生型CB6F1 BM->CB6F1受容体における放射性標識の取込を示す。マウスを処理し、パネルcに記載したようにデータを示す。
【図16】図16(a)は、DAP10-/-マウスが、RAE-1εを発現する同遺伝子型骨髄を非効率的に拒絶することを示す。約4×106RAE-1εトランスジェニックB6 BM細胞を照射された受容体に導入した。マウスを5日に125IUdRで注射し、6日に脾臓を収穫し、カウントした。黒色棒線はRAE-1εトランスジェニックB6 BM->野生型B6マウスにおける脾臓の125IUdR取込を示し、白色棒線はRAE-1εトランスジェニックB6 BM->DAP10-/-B6受容体における放射性標識の取込を示す。マウスを、示したように、非枯渇中和抗NKG2D mAbまたはNK細胞-枯渇抗NK1.1 mAb(-2日に200μg/マウス)で処理した。結果は平均±S.D.cpmである(群当たり5匹のマウス)。図16(b)は、DAP12-/-マウス(Bakker et al.,Immunity,13:345-353,2000)が、RAE-1εを発現する同遺伝子型骨髄を拒絶することを示す。約4×106のRAE-1εトランスジェニックB6 BM細胞を照射された受容体に導入した。マウスを5日に125IUdRを注射し、6日に脾臓を収穫し、カウントした。黒色棒線はRAE-1εトランスジェニックB6 BM->野生型B6マウスにおける脾臓の125IUdR取込を示し、白色棒線はRAE-1εトランスジェニックB6 BM->DAP12-/-B6受容体における放射性標識の取込を示す。マウスを処理し、パネルaに記載したように結果を示す。
【図17】図17(a)は、RAE-1εトランスジェニックB6マウスにおけるNK細胞でのNKG2Dの調節を示す。野生型およびRAE-1εトランスジェニックB6マウスからの脾臓細胞を抗汎用-RAE-1 mAb(左側パネル)または抗NKG2Dおよび抗NK1.1 mAb(右側パネル)で染色した。RAE-1発現を脾臓細胞で分析し、NKG2D発現は、NK1.1+細胞でゲーティングすることによって分析した。この線はcIgで染色された細胞を示し、他方、太い棒線はRAE-1またはNKG2D特異的染色を示す。数字は染色された細胞の平均蛍光(任意直線単位)を表す。図17(b)は、NKG2D依存性細胞傷害性がRAE-1εトランスジェニック(Tg)NK細胞で損なわれることをグラフで示す。濃縮されたNK細胞を、収穫から1日前に、ポリI:C(100μg/マウス)をIP-注射した野生型またはRAE-1ε Tg B6マウスの脾臓から調製した。CD32-トランスフェクト721.221標的細胞に対するモノクローナル抗体依存性再指向性殺傷アッセイを、対照Ig(cIg)、抗NKG2Dまたは抗NK1.1 mRbを用いることによって、記載されているように行った(Lanier et al.,J Immunol,141:3478-3485,1998)。図17(c)RAE-1εトランスジェニック宿主において発生する野生型NK細胞についてのNKG2Dの調節を示す。Ly 5.2 B6 BM細胞(1×107/マウス)を照射された野生型(WT)またはRAE-1ε Tg B6マウスに導入した。移植から3ヵ月後に、NKG2D(左側パネル)およびNK1.1(右側パネル)の発現レベルを(CD3-、NK1.1+リンパ球でゲートされた)脾臓NK細胞で分析した。細い線は、cIgで染色された細胞を示し、他方、太い線はRAE-1またはNKG2D特異的染色を示す。数字は染色された細胞の平均蛍光(任意直線単位)を表す。図17(g)は、Ly5.2 B6 BM->RAE-1 TgキメラマウスにおけるNK細胞のNKG2D依存性細胞傷害性をグラフにより示す。濃縮されたNK細胞は、収穫から1日前にポリI:C(100μg/マウス)を注射したLy5.2 B6 BM->RAE-1 TgおよびLy5.2 B6 BM->B6マウスIP-の脾臓から調製した。mAb依存性再指向性細胞障害アッセイ法はパネルbに記載したように行った。図17(e)は、RAE-1 Tgマウスにおいて発生しつつある野生型NK細胞が損なわれたNKG2D依存性骨髄拒絶を示すことを示す。黒色棒線はRAE-1+Tg BM細胞->キメラマウス(Ly5.2 B6 BM->野生型B6)の脾臓における125IUdR取込を示し、白色棒線はRAE-1+ Tg BM細胞->キメラマウス(Ly5.2 B6 BM->RAE-1 Tgキメラマウス)の脾臓における放射性標識の取込を示す。図17(f)は、RAE-1εトランスジェニックCB6F1マウスにおけるハイブリッド蛍光性が損なわれることを示す。約4×106 B/c BM細胞が照射された受容体に導入された。受容体マウスを5日に125IUdRを注射し、6日に脾臓を収穫し、カウントした。黒色棒線はB/c BM->野生型CB6F1マウスにおける脾臓の125IUdR取込を示し、白色棒線はB/c BM->RAE/1εトランスジェニックCB6F1受容体における放射性標識の取込を示し、および灰色棒線はCB6F1 BM->CB6F1マウスを示す。マウスを、示されたように、非枯渇中和抗NKG2D mAbまたはNK細胞-枯渇抗NK1.1 mAb(-2日に200μg/マウス)で処理した。結果を平均±S.D.cpmとして示す(群当たり5匹のマウス)。実験は2回行い同様の結果が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
発明の詳細な記載
本発明は、部分的には、NKG2D、CD8+T細胞、NK細胞上の活性化受容体、およびある種の活性化されたCD4+T細胞の調節が、自己免疫および炎症性症候群を予防および/または治療するための効果的な手段であるという驚くべき知見に基づく。1つの局面において、本発明者らは、NKG2Dの内部化を刺激するための薬剤および方法を見出し、NKG2D活性化に関連する症候群を治療するための有用な治療的様式としてのそのような薬剤を同定した。本薬剤および方法は、天然の可溶性NKG2Dリガンドが内部化を刺激することができない(例えば、慢性炎症性症候群に存在すると信じられているもののような)条件下で特に有用である。本発明は、さらに、そのような炎症性症候群を治療するためにNKG2Dの機能的発現を低下させるためのいずれの手段も含む。いくつかの態様において、本発明の方法および組成物は、主としてNKG2Dに対するそれらの活性化に依存する白血球のサブセットのみに影響する。
【0023】
本発明は、白血球のNKG2D媒介活性化に関連する症候群を治療または予防するのに効果的な方法および組成物を含む。本方法は、そうした症候群を予防または治療するのに適当な条件下で、NKG2Dを発現する白血球を、細胞のNKG2D媒介活性化を低下させる薬剤と接触させることによって行われる。接触は、薬剤を患者または宿主における細胞へ送達するのを可能とする条件下で、NKG2D経路によって活性化された細胞を含む患者または宿主へ薬剤または薬剤を含む組成物を投与することを含む、いずれかの適当な方法によって行うことができる。NKG2D活性化は、(i)細胞表面に予め存在するNKG2D分子の細胞表面を枯渇させる;(ii)NKG2DとDAP10との機能的相互作用に干渉し、またはそうでなければNKG2Dのシグナル伝達機能をブロックし;および(iii)転写、翻訳または翻訳後レベルにおいてNKG2Dの生産に干渉することを含む、細胞表面にNKG2D分子が到達することを妨げる一つまたは複数によって本発明に従って低下させることができる。いくつかの態様において、本発明は、NKG2D保有白血球のエフェクター機能をトリガーする有意な活性化を同時に引き起こすことなく、それらの内部化を刺激することによって予め存在する細胞表面NKG2D分子を低下させることを含む。
【0024】
本明細書において用いる用語「NKG2D」、「NKG2-D」、「D12S2489E」、「KLRK1」、および「キラー細胞レクチン様受容体サブファミリーK、メンバー1」とは、ヒトキラー細胞活性化レポーター遺伝子、cDNA(例えば、Homo Sapiens-GENBANKアクセッション番号NM 007360)、および野生型および変異体産物を含む、その遺伝子産物、ならびにその哺乳動物カウンターパートを指す。ヒトNKG2Dコーディング領域は配列番号:3に記載され、ヒトNKG2Dタンパク質配列が配列番号:4に記載される。NKG2Dの哺乳動物カウンターパートは、非限定的に、マウスNKG2D(例えば、Mus musculus-GENBANKアクセッション番号NM_033078)、ラットNKG2D(例えば、Rattus norvegicus-GENBANKアクセッション番号NM_133512)、ブタNKG2D(例えば、Sus scrofa-GENBANKアクセッション番号AF285448)、サルNKG2D(例えば、Macaca mulatta-GENBANKアクセッション番号AJ554302)、およびオランウータンNKG2D(例えば、Pongo pygmaeus-GENBANKアクセッション番号AF470403)を含む。本発明の好ましい態様は、NKG2Dアンタゴニストおよび部分的アンタゴニストのようなNKG2D調節剤を含む。
【0025】
特記しない限り、本発明の方法は、NKG2D活性に関連するいずれかの炎症性自己免疫疾患のような、NKG2D活性に関連するいずれかのタイプの炎症状態を治療する(例えば、そのような兆候/状態の存在の期間、そのような疾患/兆候の拡大、そのような疾患/兆候の重症度等いずれかの点において、疾患に対して原因であると考えられる状態に関連するおよび/またはそうした状態の基礎となる兆候を低下させる)または予防する(例えば、発症する可能性を低下させ、開始を遅延させ、開始後の重症度を遅延させ、開始に際しての重症度を低下させる)点で実施することができる。しかしながら、そのような疾患は、種々の疾患を治療する方法が本発明のユニークな局面であると考えることもできるようにかなり変化し得ることが認識される。
【0026】
I.NKG2D調節剤
別途記載または明瞭に文脈上示されない限り、本発明を実施するにおいて、NKG2D媒介細胞活性化を低下させるいずれの薬剤も用いることができる。そのような薬剤の非限定的例は、NKG2Dリガンド、またはNKG2D結合断片、変種、またその誘導体;(例えば、NKG2D結合活性のような)抗体、またはその断片、変種または誘導体;細胞においてNKG2DまたはDAP10生産を阻害する核酸(またはその変種または誘導体)、または小分子;NKG2D-DAP10複合体の形成または機能に干渉するペプチドまたは小分子;NKG2Dシグナル変換を変化させる小分子、および前述のいずれかの組合せを含む。例示的なNKG2Dリガンドは、例えば、米国特許第6,653,447号;Carayannopoulos et al., J Immunol,169(8):4079-83,2002;Carayannopoulos et al., Eur J Immunol,32(3):597-605,2002: Sutherland et al., J Immunol, 168(2):671-9,2002;Sutherland et al., Immunol Rev,181:185-92,2001;およびCosman et al., Immunity, 14(2):123-33,2001)に見出すことができる。
【0027】
本発明は、外部からのNKG2D発現細胞を接触させ、および、それらが引き続いてNKG2Dリガンド保有細胞または組換えNKG2Dリガンドに暴露される場合にNKG2D保有細胞の活性化を低下させる薬剤を含む。非限定的に、DAP10リン酸化の刺激、p85 PI3キナーゼの刺激、Aktの活性化、インターフェロンγ(IFN-γ)または他のサイトカインまたはケモカインのNKG2D依存性生産、NKG2Dリガンド保有標的細胞のNKG2D依存性殺傷等を含む、この活性化のいずれのインジケーターもモニターすることができる。NKG2D活性化のレベルを評価する1つの手段が、NKG2Dリガンド保有標的細胞のヒトNK細胞殺傷を測定することによる(例えば、以下の実施例参照)。本発明のいくつかの態様において、有用なNKG2D調節剤は、実施例1に記載されたもののようなモデル系におけるNKG2Dリガンド誘導NKG2D活性化の少なくとも約20%低下を引き起こすものであり;他の態様において、そうした薬剤の結果、リガンド誘導NKG2D活性化が少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する。例えば、NKG2Dリガンド誘導活性化は、対照と比較して、薬剤の存在が少なくとも約30%だけ低下させることができる。対照は、例えば、(a)個体、(b)対照としての平均値を用いる、実質的に同様な生物な集団、または(c)双方いずれかにおいて、薬剤の非存在下であるが、実質的に同一の条件下におけるNKG2D-活性化であり得る。NKG2D活性化のレベルを評価するもう1つの手段は、MICAまたはULBPのようなNKG2Dリガンドの存在または非存在においてIFNγ生産を測定することによる。非限定的に、イムノアッセイ法、またはIFN-γタンパク質を測定する他のアッセイ法;IFN-γ活性を測定するバイオアッセイ法などを含む、IFN-γ生産を測定するためのいずれかの方法を用いることができる。本発明のいくつかの態様において、有用なNKG2D調節剤はNKG2D媒介IFN-γ生産の少なくとも約20%低下を引き起こすものであり;他の態様において、そうした薬剤の結果、NKG2D媒介IFN-γ生産が少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する。
【0028】
一連の態様において、本発明によるNKG2D調節剤はNKG2Dの細胞内部化を刺激する。内部化は、例えば、フローサイトメトリー(例えば、以下の実施例に参照);(共焦点顕微鏡観察によって抗体の内部化をモニターすることを含む)免疫蛍光顕微鏡観察;細胞面NKG2Dを検出する結合アッセイ等のようないずれかの適当な手段によってアッセイすることができる。本発明のいくつかの態様において、有用なNKG2D調節剤は、実施例2に記載されたもののようなモデル系でテストする場合の対照と比較して、NKG2Dの細胞表面レベルの少なくとも約10%低下、または細胞表面からのNKG2Dの消失速度の10%増加を引き起こすものであり;他の態様において、そうした薬剤の結果、細胞表面レベルが少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または>99%低下し、あるいはNKG2Dの消失速度が少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%増加する。
【0029】
好ましくは、本発明によるNKG2D調節剤の結果は、例えば、CD8+T細胞、CD4+T細胞、γδ-TcR+T細胞、およびCD56/16+NK細胞の一つまたは複数を含む、NKG2D発現細胞の有意な細胞溶解または枯渇をもたらさない。NKG2D発現細胞を殺す薬剤の能力は、例えば、アネキシンVまたはプロピジウムヨウ化物染色、トリパンブルーの取り込み、ユーロピウムアッセイ法またはクロム放出アッセイ法を用いるフローサイトメトリーまたは顕微鏡観察による死滅した細胞の検出によるような、いずれかの適当な手段を用いてアッセイすることができる。本発明のいくつかの態様において、有用なNKG2D調節剤は、NKG2D発現細胞の少なくとも約90%の生存率を維持する条件下で検出可能な治療的利点を呈するものである。他の態様において、薬剤は、NKG2D発現細胞の数の約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%未満低下を引き起こす。
【0030】
以下の表は、本発明によるNKG2D調節剤の特徴の非限定的例を含む。
【0031】
(表1)NKG2D調節剤の特徴

【0032】
本発明は、慢性炎症に罹っていない個体で起こり得る内部化と同様な方法で、慢性炎症に罹った患者において、(例えば、MICAまたはULBPのような)NKG2Dの天然可溶性リガンドが、NKG2Dの内部化を刺激できないことに関し;理論に拘束されるつもりはないが、この現象は、慢性炎症状態に伴う高レベルのサイトカインから少なくとも部分的には由来すると考えられる。(この現象は、慢性炎症に罹った患者における、および健康な患者における、T細胞またはNK細胞についてのNKG2Dレベルで比較することによって記載することができ;2つの群における同様なNKG2Dレベルは、慢性炎症には高循環レベルのNKG2Dリガンドが伴うという事実にもかかわらず、NKG2D内部化の欠陥を反映する)。本発明は、天然可溶性NKG2Dリガンドがそうすることにおいて効果的でないか、またはあまり効果的ではない条件下で、NKG2Dの内部化を刺激する薬剤、ならびに本明細書において提供される種々の発明方法におけるそのような薬剤の使用を含む。この効果を調べるためのいずれかの適当なモデル系を用いて、特定の薬剤がそのような特徴を保有しまたは呈することを、例えば、内部化に対する天然可溶性リガンドの効果に反対に作用することが知られた条件下で、(非限定的に、インターロイキン-2、インターロイキン-15、腫瘍壊死因子、または前述の組合せを含む)サイトカインにNKG2D発現細胞が暴露される条件下で、天然可溶性リガンドおよび本発明による調節剤のNKG2D内部化に対する効果を比較することによって示すことができる。いくつかの態様において、本発明のNKG2D調節剤は、内部化を媒介する天然可溶性リガンドの能力に干渉する(例えば、一つまたは複数のサイトカインの存在下における)条件下で内部化を測定した場合、天然可溶性NKG2Dリガンドによって引き起こされる表面NKG2Dレベルの低下よりも少なくとも10%大きい表面NKG2Dレベルの低下を引き起こすことができる。他の態様において、NKG2D調節剤は、NKG2D内部化を媒介するにおいて、天然可溶性NKG2Dリガンドよりも少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または>99%より効果的である。
【0033】
A.NKG2Dリガンド
本発明による1つのタイプのNKG2D調節剤は、NKG2Dリガンドを含む。典型的には、そのようなリガンドは、天然可溶性リガンドが効果的でない条件下で、NKG2D内部化を刺激するにおいてそれらを効果的とする、(例えば、MICA、MICB、およびULBPの可溶性形態のような)天然可溶性NKG2Dリガンドに対していくつかの修飾を呈する。例えば、(すなわち、膜貫通および細胞質ドメインを欠く;例えば、参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願US2003/0165835参照)MICAおよびMICBタンパク質の可溶性形態、またはNKG2D結合活性を保有するそれらの断片は慣習的な方法を用いて化学的に架橋して、複数のNKG2D分子に結合することができ、それにより、内部化を刺激する多量体NKG2Dリガンドを形成することができる。NKG2D結合活性は、例えば、競合結合、フローサイトメトリーなどを含むいずれかの手段を用いてアッセイすることができる。他の一連の態様において、多量体NKG2Dリガンドは、MICA、MICB、またはULBPに由来するNKG2D結合ドメインの(適当なスペーサーによって分離された)タンデムリピートを有するポリペプチドをコードする核酸の発現によって生産することができる。もう一連の態様において、リガンドは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)のようなさらなる化学基を取り込むことができる。
【0034】
B.抗体
本発明は、NKG2D媒介シグナル伝達経路を介して、有意な活性化なしで、例えば、NKG2Dの内部化を刺激するもののような、NKG2D媒介活性化を減少させるのに用いることができるいずれかの抗体の使用を含む。そのような抗体の非限定的例は、NKG2Dのいずれかの適当な細胞外または膜内エピトープに対して産生される抗体;DAP10のいずれかの適当な細胞外または膜内エピトープに対して産生される抗体;および可溶性NKG2DリガンドまたはNKG2D-NKG2Dリガンド複合体に対して産生される抗体を含む。また、二特異的抗体、すなわち、2つの結合ドメインの各々が異なる結合エピトープを認識する抗体が含まれる。NKG2Dのアミノ酸配列は、例えば、米国特許第6,262,244号に開示され、DAP10のアミノ酸配列は Wu et al., Science 285:730,1999に開示されており、MICAおよびMICBポリペプチドのアミノ酸配列は、例えば、米国特許出願US 2003/0165835に開示されており、それらの全てを、その全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0035】
一般に、基本的な抗体の構造ユニットはテトラマーを含むことが知られている。各テトラマーはポリペプチド鎖の2つの同一な対を含み、各対は1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として、抗原認識を担う約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含むことができる。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主として担う定常領域を規定することができる。
【0036】
典型的には、ヒト軽鎖はカッパおよびラムダ軽鎖として分類される。さらに、ヒト重鎖は、典型的には、ミュウ、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンに分類され、抗体のタイプは、各々、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEと定義される。軽鎖および重鎖内では、可変領域および定常領域は約12以上のアミノ酸の「J」領域で連結され、重鎖もまた約10以上のアミノ酸の「D」領域を含む。一般に、Fundamental Immunology, Ch.7(Paul,ed., 2nd ed. Raven Press,NY,1989)参照。
【0037】
各軽/重鎖対の可変領域は、典型的には、抗体結合部位を形成する。従って、一般には、無傷のIgG抗体は2つの結合部位を有する。二官能性または二特異的抗体を除いて、2つの結合部位は一般には同一である。通常、鎖は、全て、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる、3つの超可変領域によって連結される比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同一の一般的構造を呈する。各対の重鎖および軽鎖のCDRは、通常は、フレームワーク領域によって整列され、特異的エピトープに結合するのを可能とする。一般には、N末端からC末端にかけて、軽鎖および重鎖は共にドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、一般には、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Kabat et al., National Institutes of Health,Bethesda,MD,5th ed.,NIH Publ.No.91-3242,1991;Kabat,Adv Prot Chem,32:1-75,1978;Kabat et al., J Biol Chem,252:6609-6616,1977;Chothia et al., J Mol Biol,196:901-917,1987;およびChothia et al., Nature,342:878-883,1989の定義に従う。
【0038】
本発明の抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二特異的抗体、Fab抗体断片、F(ab)2抗体断片、Fv抗体断片(例えば、VHまたはVL)、単一鎖Fv抗体断片およびdsFv抗体断片を含むことができる。さらに、本発明の抗体分子は完全にヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であり得る。いくつかの態様において、抗体分子はモノクローナルの完全にヒト抗体である。モノクローナル抗体は実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を含み、すなわち、そうした集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能な天然に生じる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられる。モノクローナル抗体は、それらが、他の免疫グロブリンによって実質的に汚染されていないハイブリドーマ培養によって合成することができる点で有意である。修飾語「モノクローナル」は、とりわけ、抗体の実質的に均一な集団である抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。
【0039】
本発明の抗体は、いずれかの免疫グロブリン定常領域に連結された成熟または処理されていないいずれの抗体可変領域も含む。軽鎖可変領域が定常領域に連結されれば、好ましくは、それはカッパ鎖である。重鎖可変領域が定常領域に連結されれば、好ましくは、それはヒトガンマ1、γ2、γ3またはγ4定常領域、より好ましくはγ1、γ2、またはγ4、なおより好ましくはγ1またはγ4である。
【0040】
いくつかの態様において、例えば、NKG2DまたはDAP10に対して産生された完全にヒトのモノクローナル抗体は、マウス系よりはむしろヒト免疫系の一部を運ぶトランスジェニックマウスを用いて作成される。「HuMAb」マウスと本明細書においていうことができるこれらのトランスジェニックマウスは、内因性ネズミミュウおよびカッパ鎖遺伝子座を不活化する標的化突然変異と共に、再配列されていないヒト重鎖(ミュウおよびガンマ)およびカッパ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有する。従って、マウスはマウスIgMまたはカッパの低下した発現を呈し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチングおよび体細胞突然変異を受けて、高親和性ヒトIgG/カッパモノクローナル抗体を作り出す。HuMAbマウスにおける完全にヒトの抗体の作成は当技術分野において通常知られている。
【0041】
モノクローナル抗体は、Kohler et al., Nature,256:495,1975によって最初に記載されたハイブリドーマ方法を用いて、あるいは他の周知の、後に開発された方法によって作成することができる。ハイブリドーマ方法においては、マウスまたは他の適当な宿主動物を免疫化して、免疫化で用いられるタンパク質に特異的に結合する抗体を生産する、または生産することができるリンパ球を誘導する。または、リンパ球はインビトロで免疫化することができる。および、リンパ球は、ポリエチレングリコールのような適当な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する。このように調製されたハイブリドーマ細胞は、非融合親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する一つまたは複数の物質を好ましくは含有する適当な培養基において接種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠くならば、ハイブリドーマ用の培養基は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質はHGPRT-欠乏細胞の増殖を妨げる。
【0042】
ハイブリドーマ細胞が増殖される培養基は、抗原に対するモノクローナル抗体の生産についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって生産されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によって、またはラジオイムノアッセイ法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイ法によって、または免疫蛍光およびフローサイトメトリーによって、またはウェスタンブロットによって測定することができる。所望の特異性、親和性および/または活性の抗体を生産するハイブリドーマ細胞が同定された後、限界希釈法によってクローンをサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させることができる。この目的のための適当な培養基は、例えば、D-MEMまたはRPMI-1640培地を含む。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。サブクローンによって分泌されたモノクローナル抗体は、適切には、例えば、プロテインAセファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーのような慣習的なな免疫グロブリン精製手法によって、培養基、腹水液または血清から分離する。
【0043】
モノクローナル抗体または抗体断片をコードするDNAは慣習的なな手法を用いて容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの源として働く。一旦単離されれば、DNAを発現ベクターに入れることができ、および、これを、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を生産しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、ヒト293T細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞のような宿主細胞に導入して、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得る。
【0044】
抗体または抗体断片は、鎖シャッフリングならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染およびインビボ組換えを用い、または用いることなく、周知の技術を用いて産生される抗体ファージライブラリーから単離することもできる。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離用の伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行できる代替法である。
【0045】
抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における重要でない変動は本発明によって含まれ、但し、アミノ酸配列の変動は配列の少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、最も好ましくは99%を維持するものとする。特に、保存的アミノ酸置換が考えられる。保存的置換は、それらの側鎖に関連するアミノ酸のファミリー内で起こるものである。アミノ酸変化の結果、機能的ペプチドをもたらすか否かは、ポリペプチド誘導体の特異的活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。抗体または免疫グロブリン分子の断片(またはアナログ)は当業者が容易に調製することができる。好ましい断片またはアナログのアミノ-およびカルボキシ末端は機能的ドメインの境界近くで起こる。構造的および機能的ドメインは、公のまたは所有された配列データベースに対してヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列を比較することによって同定することができる。好ましくは、コンピュータ化された比較方法を用いて、公知の構造および/または機能の他のタンパク質で起こる配列モチーフまたは予測されるタンパク質立体配座ドメインを同定する。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は公知である。配列モチーフおよび構造的立体配座を用いて、本発明に従って構造および機能的ドメインを規定することができる。
【0046】
いくつかの態様において、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させ、(4)結合親和性を変化させ、および/または(4)そのようなアナログの他の物理化学的または機能的特性を付与し、または修飾するアミノ酸置換がなされる。
【0047】
一般に、本発明による有用な抗NKG2D抗体は、可溶性NKG2Dリガンドのそれと少なくとも同等であるヒトNKG2Dに対する親和性(Kd)を呈する。いくつかの態様において、抗体は、ナノモル親和性、またはなおより好ましくはピコモル親和性でもってヒトNKG2Dに結合する。いくつかの態様において、抗体は、約100nM、50nM、20nM、20nM、または1nM未満のKdでもってヒトNKG2Dに結合する。
【0048】
いくつかの態様において、有用な抗体は、ヒトNKG2Dと、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、およびULBP4の一つまたは複数との間の相互作用を低下させるものを含む。このような阻止抗体は、従来の競合アッセイ法を使用して同定され得る。
【0049】
C.核酸モジュレーター
本発明は、転写、翻訳または翻訳後レベルにおいてNKG2D細胞表面発現の調節を含む。いくつかの態様において、モジュレーターは、非限定的に、DNA、RNA、キメラRNA/DNA、タンパク質核酸、および他の核酸誘導体を含む核酸ベースのものである。
【0050】
いくつかの態様において、NKG2Dモジュレーターは、短いヘアピン二本鎖RNA(shRNA)を含む、NKG2D発現細胞に導入された場合にNKG2D生産を阻害できるRNA分子を含む(RNAiといわれる)。NKG2D発現を調節するための有用なRNAi配列の非限定的な例は、以下の配列によってコードされるものを含む;


および

NKG2Dの細胞表面発現を低下させることができるいずれの配列も本発明を実施するのに用いることができると理解される。
【0051】
RNAi構築体の生産は、化学的合成方法によって、または組換え核酸技術によって行うことができる。処理された細胞の内因性RNAポリメラーゼはインビボで転写を媒介することができ、あるいはクローン化されたRNAポリメラーゼをインビトロで転写で用いることができる。RNAi構築体は、例えば、細胞ヌクレアーゼに対する感受性を低下させ、生物学的利用性を改良し、処方特徴を改良し、および/または他の薬物動態学的特性を変化させるために、リン酸-糖骨格またはヌクレオシドいずれかに対する修飾を含むことができる。例えば、天然RNAのホスホジエステル結合を修飾して、窒素へテロ原子または硫黄へテロ原子の少なくとも1つを含ませることができる。RNA構造における修飾は、dsRNAに対する一般的応答を回避しつつ、特異的遺伝子阻害を可能とするようにしつらえることができる。同様に、塩基を修飾して、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックすることができる。RNAi構築体は酵素的に、あるいは部分的/全有機合成によって生産することができ、いずれの修飾されたリボヌクレオチドもインビトロ酵素または有機合成によって導入することができる。
【0052】
RNA分子を化学的に修飾する方法は、RNAi構築体を修飾するために適合させることができる(例えば、Heidenreich et al., Nucleic Acids Res,25:776-780,1977;Wilson et al., J Mol Recog.7:89-98,1994;Chen et al., Nucleic Acids Res,23:2661-2668,1995;およびHirschbein et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev,7:55-61,1997参照)。例えば、RNAi構築体の骨格はホスホロチオエート、ホスホルアミデート、ホスホジチオエート、キメラメチルホスホネート-ホスホジエステル、ペプチド核酸、5-プロピニル-ピリミジン含有オリゴマーまたは糖修飾(例えば、2'-置換リボヌクレオシド、a-立体配置)で修飾することができる。
【0053】
二本鎖構造は単一自己相補性RNAストランドから、あるいは2つの相補的RNAストランドから形成することができる。RNA二重鎖形成は細胞の内部または外部いずれかで開始することができる。RNAは、細胞当たり少なくとも1つのコピーの送達を可能とする量で導入することができる。二本鎖物質のより高い量(例えば、細胞当たり少なくとも5、10、100、500または1000コピー)はより効果的な阻害を生じることができ、他方、より低い量もまた特異的適用で有用であり得る。阻害は、RNAの二重鎖領域に対応するヌクレオチド配列が遺伝子的阻害について標的化される点で配列特異的である。
【0054】
ある態様において、主題のRNAi構築体は「小さな干渉性RNA」または「siRNA」である。これらの核酸は、例えば、長さが約21〜23ヌクレオチドのように長さが約19〜30ヌクレオチドであり、より長い二本鎖RNAのヌクレアーゼ「ダイシング」によって生じる断片に長さが対応する。siRNAは、特異的配列に対合することによってヌクレアーゼ複合体を動員させ、複合体を標的mRNAにガイドすると理解される。その結果、標的mRNAは、タンパク質複合体においてヌクレアーゼによって分解される。特別な態様において、21〜23ヌクレオチドのsiRNA分子は3'ヒドロキシル基を含む。
【0055】
本発明で用いられるsiRNAは、当業者に公知の多数の技術を用いて得ることができる。例えば、siRNAは、当技術分野において公知の方法を用いて化学的に合成でき、または組換えにより生産することができる。例えば、短いセンスおよびアンチセンスRNAオリゴマーを合成し、アニールして、各末端に2-ヌクレオチドの突出を持つ二本鎖RNA構造を形成することができる(Caplen et al., Proc Natl Acad Sci USA,98:9742-9747,2001;およびElbashir et al., EMBO J,20:6877-88,2001)。および、これらの二本鎖siRNA構造を、受動的接種によって、または選択された送達系によって細胞に直接導入することができる。
【0056】
ある態様において、siRNA構築体は、例えば、酵素ダイサーの存在下で、より長い二本鎖RNAのプロセッシングを介して作り出すことができる。1つの態様において、ショウジョウバエのインビトロ系が用いられる。この態様において、dsRNAはショウジョウバエ胚に由来する可溶性抽出物と組み合わせ、それにより、組換えが生じる。組換えは、dsRNAが約21〜約23ヌクレオチドのRNA分子にプロセッシングされる条件下で維持される。
【0057】
siRNA分子は慣習的な技術を用いて精製することができる。例えば、ゲル電気泳動を用いて、siRNAを精製することができる。または、非変性カラムクロマトグラフィーのような非変性方法を用いて、siRNAを精製することができる。加えて、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロールグラジエント遠心、抗体でのアフィニティー精製を用いて、siRNAを精製することができる。
【0058】
いくつかの態様において、プラスミドを用いて、例えば、転写産物としての二本鎖RNAを送達する。そのような態様において、プラスミドは、RNAi構築体のセンスおよびアンチセンスストランドの各々についての「コード配列」を含むように設計される。コード配列は、例えば、逆転プロモーターが近接する同一配列であり得るか、あるいは各々が別々のプロモーターの転写制御下にある2つの別々の配列であり得る。コード配列が転写された後、相補的RNAが塩基対を転写して、二本鎖RNAを形成する。PCT出願WO 01/77350は、真核生物細胞における同一導入遺伝子のセンスおよびアンチセンス両RNA転写物を生じさせるための導入遺伝子の二方向性転写用の例示的なベクターを記載する。
【0059】
II.治療の方法
本発明は、種々の炎症性自己免疫疾患およびNKG2D活性化に関連する症候群を含む、炎症性疾患を予防および/または治療する方法を提供する。そのような症候群は、非限定的に、ストレス関連NKG2Dリガンド(例えば、MICA、MICB、およびULBP)の誘導の結果、自己反応性T細胞および/またはNK細胞の過剰な活性化および/または拡大をもたらす臨床的状況を含み、これは、IL-2、TNF-α、およびIL-15のようなサイトカインの増大したレベルに反映され得る。
【0060】
従って、特別な局面において、本発明は慢性関節リウマチ(RA)を治療しおよび/または予防する方法を提供する。本方法は、リガンド誘導NKG2D活性化を低下させる有効量の薬剤を、RAを有する、またはRAを発症する実質的な危険性があると同定/診断された患者に、RAが治療または予防されるように、送達することを含む。特別な局面において、本発明のRA治療/予防方法は、NKG2Dに「対する」(すなわち、「に対して特異的な」または「特異的にそれに結合する」または「選択的にそれに結合する」)モノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片の使用によって実施される。1つの局面において、薬剤(例えば、抗NKG2D mAbまたはmAb断片)は、米国特許第6,414,218号および米国特許公報第20030005469号に記載されているような、RAの許容できるモデルにおいてRAを軽減するのに効果的であることが示された薬剤である(関連する原理およびモデルは、例えば、Wooley,P.H., Animal Models of Arthritis,eds.,J.H.Klippel and P.A.Dieppe,Mosby Publishers(London),1998;Erning et al., Arthritis Res,4 Suppl 3:S133-40,2002;Holmdahl et al., Ageing Res Rev,1(1):135-47,2002;Anthony et al., Clin Exp Rheumatol,17(2):240-4,1999;Durie et al., Clin Immunol Immunopathol,73(1):11-8,1994;およびMuller-Ladner et al., Drugs Today(Barc),35(4-5):379-88,1999)に記載されている。さらなる局面において、薬剤は、(例えば、適当な対照と比較して細胞の約10%以下の低下を引き起こす)このような細胞を有意に枯渇させることなく、(例えば、米国特許公報第20040115198号に記載された抗体の少なくともいくつかとは対照的に)(例えば、自己反応性CD8+T細胞の拡大および/または機能を障害する)NKG2D発現白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を検出可能に低下させることができ、および/またはNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を障害することができる抗体である。1つの局面において、本方法の結果、RAの(適用できる)治療または予防と合致する方法で一つまたは複数のバイオマーカーが調節される(例えば、血清IL-6、TNF R、IL-2R、放出されたCD4、放出されたCD8、および/またはC反応性タンパク質)。もう1つの局面において、本方法の実施の結果、患者/宿主の末梢関節における滑膜炎症の検出可能な低下がもたらされる。1つの局面において、本方法の結果、例えば、患者または宿主におけるラジオグラフィー進行の低下、(許容される分析的基準によって決定された)膨潤した敏感な関節の低下、および/または(例えば、RA Health Assessment Questionnaireについての不能スコアの低下によって決定されるように)生活の有意に改良された質によって示されるように、患者または宿主において、ラジオグラフィー劣化が妨げられ、身体的機能が改善される。
【0061】
もう1つの特別な例示的な局面において、本発明は、多発性硬化症(MS)を治療および/または予防する方法を提供する。本方法は、MSが患者または宿主において治療されまたは予防されるように、MSを有する、あるいはMSを発症する実質的な危険性があると同定/診断されたヒト患者または哺乳動物宿主に、有効量のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤を送達することを含む。特別な局面において、本発明のMS治療/予防方法は、NKG2Dに対するモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片(「抗NKG2D抗体」)の使用によって実施される。より特別な局面において、薬剤は、細胞を有意に枯渇させることなく、NKG2D発現白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を検出可能に低下でき、および/またはNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を障害することができる抗NKG2Dモノクローナル抗体である。
【0062】
なおもう1つの例示的な局面において、本発明は、クローン病または潰瘍性結腸炎のような炎症性腸疾患(IBD)を治療および/または予防する方法を提供する。本方法は、IBDが患者または宿主において治療または予防されるように、IBDを有する、またはIBDを発症する実質的な危険性があると同定/診断されたヒト患者または哺乳動物宿主に、有効量のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤を送達することを含む。特別な局面において、本発明のIBD治療/予防方法は、NKG2Dに対するモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片の使用によって実施される。より特別な局面において、薬剤は、細胞を有意に枯渇させることなく、NKG2D発現白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を検出可能に低下させることができ、および/またはNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を障害することができる抗NKG2Dモノクローナル抗体である。
【0063】
もう1つの局面において、本発明は乾癬を治療および/または予防する方法を提供する。本方法は、乾癬が患者または宿主において治療または予防されるように、乾癬を有する、または乾癬を発症する実質的な危険性があると同定/診断されたヒト患者または哺乳動物宿主に、有効量のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤を送達することを含む。典型的には、本方法は、NKG2Dに対する有効量のモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体断片を患者に送達することによって行うことができる。より特別な局面において、薬剤は、細胞を有意に枯渇させることなく、NKG2D発現白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を検出可能に低下させることができ、および/またはNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を障害することができる抗NKG2Dモノクローナル抗体である。
【0064】
なおもう1つの局面において、本発明は、移植片拒絶反応の尤度を低下させる(または移植片拒絶反応関連疾患の重症度またはその開始までの時間を低下させる)方法を提供する。本方法は、(例えば、対照)と比較して拒絶の尤度が検出可能に低下するように、組織/器官移植の受容者となろうとする、または最近なったヒト患者または哺乳動物宿主に、有効量のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤を送達する(例えば、直接的に投与する、あるいはコーディング核酸を含む組成物を投与することなど)を含む。特別な局面において、本方法は、抗NKG2D mAbまたは抗NKG2D mAb断片の送達によって行われる。より特別な局面において、薬剤は、細胞を有意に枯渇させることなく、NKG2D発現白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を検出可能に低下でき、および/またはNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を障害することができる抗NKG2D mAbまたは断片である。
【0065】
もう1つの局面において、抗NKG2D mAbまたは抗NKG2D mAb断片のような本発明による薬剤は、患者または宿主において疾患を治療または予防する量にて、またはそれに十分な条件下で、I型真性糖尿病に罹った、またはそれを発症する実質的な危険性がある患者または宿主に送達される。
【0066】
本発明の方法は、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、ギラン-バレー症候群、自己免疫ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫肝炎、自己免疫溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫血小板減少症、グレーブス病、自己免疫卵巣炎、自己免疫精巣炎、一時的関節炎、抗リン脂質症候群、ウェグナー肉芽腫症、ベーチェット病、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、剛直性脊椎炎、シェーグレン症候群、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑、乾癬性関節炎、骨関節炎、ステロイド耐性喘息、慢性閉塞性肺病およびアテローム性動脈硬化症を含む、種々の他の自己免疫疾患およびNKG2Dに関連する炎症状態に同様に適用することができる。いくつかの好ましい態様において、移植体は骨髄(BM)または末梢血液幹細胞(PBSM)移植体である。いくつかの態様において、BMTまたはPBSCT移植体は白血病またはリンパ腫の治療として投与され、他方、他の態様において、移植体は神経芽腫または多発性骨髄腫のような癌の他のタイプのための治療として投与される。
【0067】
本発明を実施するにおいて、NKG2Dモジュレーターは、炎症性または自己免疫症候群を予防または治療するための有効量を一緒に含む、炎症性または自己免疫症候群を予防または治療するための単一用量有効量を含む単一用量にて、または段階的一連の用量にて患者に投与することができる。NKG2Dモジュレーターの有効量とは、単一用量にて、もしくは複数用量の集合にて、または規定された治療方法のいずれかの他のタイプの一部として投与した場合に、そうした症候群に関連する少なくとも1つの臨床的パラメーターによって証明されるように、結果において測定可能な統計学的改善を生じるモジュレーターの量を指す。NKG2Dモジュレーターの有効量は、NKG2Dモジュレーターを受けない患者と比較した場合に病気の進行を遅らせることができる。
【0068】
有効量のNKG2Dモジュレーター、ならびに全投与方法は、臨床的に許容される病気スコアのような一つまたは複数の臨床的パラメーターに反映され得る、病気および患者の臨床的状態に従って変化し得ることが理解されるであろう。例えば、慢性関節リウマチでは、病気の重症度および/または治療の結果は、膨潤した関節:疼痛;移動性;および/または公的な病気スコアACR20/50または70の数をモニターすることによって評価することができる。I型糖尿病では、病気の重症度および/または治療の結果は、血糖レベルまたはその変動、Hb1Cレベルなどを測定することによって評価することができる。多発性硬化症では、脳炎症を脳をスキャンすることを通じて評価することができる。造血系移植片拒絶反応では、病気の重症度(移植の失敗)および/または治療の結果は、筋肉剥離コンディショニングを受けた患者における延長された好中球減少症、血小板減少症、および赤血球細胞輸血依存性の証拠によって、および筋肉剥離コンディショニングを受けていない患者においてキメラ現象を観察することができないことによって評価することができる。一般には、本発明の方法および組成物を用いる治療の結果に対する検出可能な効果は、(例えば、他の薬物または治療の量および/または持続の減少を含める)他の治療に対する必要性の減少、入院の数および/または持続の減少、病気による失われた仕事の日数の減少などを含む。有効量は、値のマトリックスを作成し、および、マトリックスにおいて異なる点をテストすることにより、ルーチン的実験によって、決定できることがさらに理解されるであろう。
【0069】
本発明は、NKG2Dモジュレーターと組み合わせた一つまたは複数のさらなる薬剤の組合せ投与を含む。NKG2Dモジュレーターと他の薬剤との組合せの投与を含む態様において、NKG2Dモジュレーターの用量は、それ自身につき、有効量を含むことができ、さらなる薬剤は患者に対する治療的恩典をさらに増加させられることが理解されるであろう。または、NKG2Dモジュレーターおよび第二の薬剤の組合せは、一緒になって、そうした症候群を予防または治療するための有効量を含むことができる。また、例えば、投与のタイミングおよび数、投与の態様、処方などを含む、特定の治療方法に関して有効量を規定できることが理解されるであろう。
【0070】
NKG2D関連症候群がI型糖尿病であるいくつかの態様において、さらなる薬剤は、膵臓ベータ-細胞の増殖を促進し、あるいは例えば、ベータ細胞増殖または生存因子あるいは免疫調節抗体のようなベータ-細胞移植を増進する薬剤の一つまたは複数を含む。NKG2D関連症候群は慢性関節リウマチであるいくつかの態様において、さらなる薬剤はメトトレキセート;抗TNF-α抗体;TNF-α受容体-Ig融合タンパク質、抗IL-15抗体、非ステロイド抗炎症薬物(NSAID)、および病気-修飾抗リウマチ薬物(DMARD)の一つまたは複数である。例えば、さらなる薬剤は、抗TNF剤(例えば、ENBREL(登録商標))、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))およびアダリムマブ(HUMIRA(登録商標))またはリツキシマブ(RITUXAN(登録商標))のような生物学的薬剤であり得る。NKG2D関連症候群が造血系移植片拒絶反応であるいくつかの態様において、造血系成長因子(例えば、エリスロポエチン、G-SCF、GM-CSF、IL-3、IL-11、トロンボポエチンなど)または抗微生物剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤)を補助的療法として投与することができる。KNG2D-関連症候群が乾癬であるいくつかの態様において、さらなる薬剤はタールおよびその誘導体、光療法、コルチコステロイド、サイクロスポリンA、ビタミンDアナログ、メトトレキセート、p38マイトジェン-関連プロテインキナーゼ(MAPK)阻害剤、ならびに抗TNF-アルファ剤およびRITUXAN(登録商標)のような生物剤の一つまたは複数である。NKG2D関連症候群は、例えば、クローン病または潰瘍性結腸炎のような炎症性腸疾患(IBD)であるいくつかの態様において、さらなる薬剤は、アミノサリシレート、コルチコステロイド、免疫モジュレーター、抗生物質、あるいはREMICADE(登録商標)およびHUMIRA(登録商標)のような生物剤の一つまたは複数である。
【0071】
III.薬学的製剤および投与の様式
本発明は、一つまたは複数の薬学的に許容される担体を含むこともできる、NKG2Dモジュレーターを含む薬学的製剤を含む。薬学的に許容される担体はいずれかのおよび全ての適当な溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤、ならびに本発明によって提供されるNKG2Dモジュレーターもしくは関連組成物またはその組合せに生理学的に適合する他の物を含む。薬学的に許容される担体の例は水、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにその組合せの一つまたは複数を含む。多くの場合、そのような組成物に、等張剤、例えば、糖、マンニトールまたはソルビトールのようなポリアルコール、あるいは塩化ナトリウムを含むのが望ましい。薬学的に許容される物質は、NKG2Dモジュレーター、関連組成物または組合せの貯蔵寿命または有効性を望ましくは増強させることができる、湿潤剤または乳化剤、保存剤または緩衝液のような補助的物質の少量を含む。薬学的組成物の担体および他の成分についての適当性は、NKG2Dモジュレーター、関連組成物または組合せの所望の生物学的特性に対する有意な負のインパクトの欠如に基づいて決定される。
【0072】
本発明によるNKG2Dモジュレーター組成物、関連組成物、および組合せは種々の適当な形態とすることができる。そのような形態は、例えば、液体溶液(例えば、注射および注入溶液)、分散液または懸濁液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、デンドリマーおよび他のナノ粒子(例えば、Baek et al., Methods Enzymol,362:240-9,2003;およびNigavekar et al., Pharm Res,21:476-83,2004)、ミクロ粒子および坐薬のような液体、半固体および固体投与形態を含む。最適な形態は、投与の意図した態様、組成物または組合せの性質、および治療的適用に依存する。処方は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルジョン、エマルジョンカルボワックス(種々の分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、および半固体のカルボワックス含有混合物を含むこともできる。これまでの混合物のいずれも本発明による治療および療法で適当であり得るが、但し、処方中の有効成分は処方によって不活化されず、処方は投与の経路と生理学的に適合し、許容できるものとする。また、例えば、薬学的化学者に周知の賦形剤および担体に関連するさらなる情報については、Powell et al.「Compendium of excipients for parenteral formulations」PDA J Pharm Sci Technol,52:238-311,1998、およびそこでの引用文献を参照のこと。
【0073】
NKG2Dモジュレーター組成物は、NKG2Dモジュレーターペプチドおよびその適当な塩のいずれかの適当な組合せを含む組成物も含む。いずれかの適当な形態のアルカリ土類金属塩(例えば、緩衝液塩)のようないずれかの適当な塩をNKG2Dモジュレーターの安定化で用いることができる(好ましくは、塩の量は、NKG2Dモジュレーターの酸化および/または沈殿が回避されるようなものである)。適当な塩は、典型的には、塩化ナトリウム、コハク酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、および塩化カルシウムを含む。塩基およびNKG2Dを含む組成物も提供される。他の局面において、本発明は、等張量のいずれかの塩を欠くNKG2Dモジュレーター組成物を提供する。
【0074】
薬学的用途のための組成物は希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗剤(例えば、Tween-80のような非イオン性洗剤)、安定化剤(例えば、糖またはタンパク質-遊離アミノ酸)、保存剤、組織固定剤、安定化剤、および/または薬学的組成物に含めるのが適した他の物質を含むこともできる。適当な成分の例も、例えば、Berge et al., J Pharm Sci,6661:1-19,1977;Wang and Hanson,J Parenteral Sci Tech,42:S4-S6,1988,米国特許第6,165,779号および第6,225,289号;および本明細書に引用した他の文献に記載されている。そのような薬学的組成物は保存剤、抗酸化剤、または当業者に公知の他の添加剤を含むこともできる。さらなる薬学的に許容される担体は当技術分野で公知であり、例えば、Urquhart et al., Lancet,16:367,1980;Lieberman et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS-DISPERSE SYSTEMS,2nd ed.,vol.3,1998;Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS & DRUG DELIVERY SYSTEMS, 7th ed.,2000;Martindale, THE EXTRA PHARMACOPEIA,31st ed.;Remington's PHARMACEUTICAL SCIENCES, 16th-20th editions;THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, Goodman and Gilman,eds.,9th ed.,1996;Wilson and Gisvolds' TEXTBOOK OF ORGANIC MEDICINAL AND PHARMACEUTICAL CHEMISTRY, Delgado and Remers,eds.,10th ed.,1998;および米国特許第5,708,025号および同第5,994,106号に記載されている。薬学的に許容される組成物を処方する原理もまた、例えば、Platt,Clin Lab Med,7:289-99,1987;Aulton,PHARMACEUTICS:THE SCIENCE OF DOSAGE FORM DESIGN, Churchill Livingstone,NY,1988;EXTEMPORANEOUS ORAL LIQUID DOSAGE PREPARATIONS,CSHP,1998,および「Drug Dosage」, J Kans Med Soc,70(I):30-32,1969に記載されている。ベクターの投与に特に適したさらなる薬学的に許容される担体は、例えば、国際特許出願WO 98/32859に記載されている。1つの例示的な局面において、活性化合物または組合せは、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含める、徐放製剤のような迅速な放出に対して化合物を保護する担体とで調製される。エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のような生分解性の成体適合性ポリマーを用いることができる。そのような処方の調製のための多くの方法は特許されているか、あるいは当業者に一般的に公知である。例えば、SUSTAINED AND CONTROLLED RELEASE DRUG DELIVERY SYSTEMS,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,NY,1978参照。
【0075】
もう1つの局面において、経口投与を意図した本発明の組成物は、例えば、不活性な希釈剤または同化可能な食用担体とで処方することができる。そうした化合物(および、所望であれば、他の成分)もハードまたはソフトシェルゼラチンカプセルに包み、錠剤に圧縮し、または対象のダイエットに直接配合することもできる。経口治療投与では、化合物は賦形剤と共に一体化することができ、食べることができる錠剤、バッカル錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウェハーなどの形態で用いることができる。非経口投与以外による本発明の化合物を投与するためには、その不活化を妨げる物質で化合物をコートするか、またはそうした物質と共に化合物を共投与する必要があろう。
【0076】
本発明のもう1つの局面はNKG2Dモジュレーター、関連組成物、または組合せ、薬学的に許容される担体、および必要に応じて、他の薬学的組成物成分を含むキットを提供する。キットは、NKG2Dモジュレーターに加えて、診断剤または治療剤を含むことができる。キットは、診断または治療方法で用いられる説明書を含むこともできる。一連の態様において、キットは、高度に安定な形態と混合して、注射組成物を形成することができる薬学的に許容される担体と組み合わせて、(凍結乾燥形態のような)高度に安定な形態のNKG2Dモジュレーター、関連化合物、または組合せ組成物を含む。
【0077】
NKG2Dモジュレーター組成物、関連組成物、および組合せ組成物は経口、粘膜、バッカル、鼻腔内、吸入、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、腫瘍間、腫瘍内、または局所経路のようないずれかの適当な経路を介して投与することができる。それらは連続的に、ミニポンプまたは他の適当なデバイスを介して投与することもできる。抗体または他のNKG2Dモジュレーターは、一般には、病気が存在する限り投与されるであろうが、但し、抗体が疾患が悪化するのを停止し、または改善するようにするものとする。抗体または他のNKG2Dモジュレーターは、一般には、本明細書において他の箇所に記載された薬学的に許容される組成物の一部として投与されるであろう。抗体はいずれかの適当な経路によって投与することができるが、典型的には、慣習的な薬学的に許容される担体、アジュバントなど(安定化剤、崩壊剤、抗酸化剤など)を含有する投与単位製剤にて非経口投与される。本明細書で用いる用語「非経口」は、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、胸骨内、腱内、脊髄内、頭蓋内、胸内、注入技術および腹腔内送達を含む。最も通常には、抗体は静脈内または皮下投与されるであろう。注射の経路は筋肉への注射(筋肉内,IM);皮膚下の注射(皮下,SC);静脈への注射(静脈内,IV);腹腔への注射(腹腔内、IP);および皮膚への/皮膚を通しての他の送達(通常は複数注射による皮内,ID)を含む。
【0078】
本発明は、さらに、潜在的興味を持ついずれかの個人または団体(例えば、医薬チェーン、処方管理会社、保証会社、HMO、病院および病院チェーン、他のヘルスケアの会社、薬剤給付管理会社、潜在的患者、緩解中の患者、一般開業医、看護士、薬局の医師、および/または鍵となる意見のリーダー)に、これまでの局面のいずれかで引用した、あるいは本明細書においての他の箇所で記載した、いずれかの疾患または疾患の組合せの予防または治療における化合物の使用に関連する(取り扱われ、郵送される印刷された資料による;本発明における化合物の使用、または広告文字による;テレビプログラムおよび広告による;ラジオプログラムおよび広告による;インターネットサイトのポスティングによる;e-メールによる;テレマーケティングによる;ドアツードアまたはパーソンツーパーソンマーケティングによる;ファンディングおよび/またはホスティング会議、パネル、フォーラムなどによる;販売業者および/または医療/科学連絡のサービスの使用および/またはそれについての契約による;そのような使用に関連する科学リサーチおよび公表のファンディングおよび/またはホスティングによる)情報を分配することを含む、これまでの局面のいずれかによる、または本明細書において記載された化合物の販売および/または使用を促進する方法を提供する。
【0079】
以下の実施例は、本発明のある好ましい態様および局面を示し、さらに説明するために掲げるものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0080】
実施例1
NKG2D活性化についてのアッセイ法
IL-2活性化ヒトNK細胞を、MICAポリペプチドが発現される条件下でヒトMICAをコードするcDNAでトランスフェクトされているマウスBa/F3細胞のような適当な51Cr標識標的細胞培養物;および対照細胞としての、トランスフェクトされていない同一標的細胞と共に培養する。51Crの放出をモニターして、細胞溶解を示す。対照を超えるレベルにおいて、活性化されたNK細胞によるMICA発現細胞の溶解は、NKG2D特異的活性化を示す。
【0081】
NKG2Dモジュレーターについてスクリーニングするために、活性化されたNK細胞を、51Cr標識標的細胞への暴露に先立って候補薬剤と共にインキュベートする。NKG2Dリガンド保有標的細胞も殺傷を有意に減少させる化合物を同定し、さらに評価する。
【0082】
実施例2
NKG2D内部化についてのアッセイ法
ヒトNKG2Dを発現する細胞を、ビオチン標識抗NKG2D抗体の存在下で1時間以上37℃にて培養する。対照として、NKG2D+細胞を、0.05%アジ化ナトリウムの存在下で4℃にてビオチン標識抗NKG2Dと共に培養して、内部化を妨げる。細胞を洗浄して、過剰の抗体を除去し、および、蛍光色素標識ストレプトアビジンで染色して、ビオチン結合NKG2D抗体を検出する。および、蛍光顕微鏡またはフローサイトメトリーによって内部化を評価する。4℃にてビオチン標識抗NKG2D抗体と共にインキュベートした細胞と比較した、37℃にてビオチン標識抗NKG2D抗体との共培養後における細胞表面のNKG2Dの量の減少は内部化の1つのインジケーターである。これは、細胞の固定および浸透化、および一次抗NKG2D抗体を検出する蛍光色素標識第二工程抗体での染色によってさらに確認することができる。内部化されれば、第二工程抗体は、蛍光顕微鏡によって目視されるように、37℃で培養した細胞の内側の一次抗NKG2D抗体を検出するであろう。
【0083】
実施例3
NKG2D遮断はマウスにおいて自己免疫疾患を予防する
以下の実験は、動物モデル系、NODマウスにおけるI型糖尿病の発症に対するNKG2D遮断の効果をテストするために行った(Ogasawara et al., Immunity,20:757-767,2004)。
【0084】
マウス、試薬、サイトカインおよび抗体
NODマウスはTaconic(Germantown,NY)から購入した。NOD.scidマウスはJackson Laboratory(Bar Harbor,ME)から購入した。8.3 TcR-トランスジェニックNODマウスは記載されている(Verdaguer et al., J Exp Med,186:1663-1676,1997)。全てのマウスはUCSF動物施設において特異的病原体フリー条件下で維持し、実験は、UCSF動物研究委員会のガイドラインに従って行った。2連続測定で血糖レベルが300mg/dLより大きくなると糖尿病と診断した。血糖レベルは血糖モニター(Walgreen's,Deerfield,IL)を用いることによって測定した。
【0085】
抗マウスNKG2D mAb、クローンCX5およびCX6(ラットIgG1イソタイプ)は記載されているようにして作成し(Ogasawara et al., Immunity,18:41-51,2003)、抗マウスNKG2D mAbクローン191004(ラットIgG2aイソタイプ)はR&D Systems(Minneapolis,MN)から得た。全ての抗NKG2D mAbは、NKG2D細胞外ドメインを認識し、NKG2Dのそのリガンドへの結合を効果的にブロックする。インビボ注射では、検出可能なエンドトキシンを含有しない(<0.3pg/注射)精製されたCX5抗体を利用した。対照ラットIgGはSigma(St.Louis,MO)から購入した。抗マウス汎用RAE-1 mAb(クローン186107,ラットIgG2bイソタイプ)はRAE-1α、β、γ、δおよびεに結合する。NRP-V7/H-2KdおよびTUM/H-2Kd(対照)は記載されているように(Amrani et al.,Nature,406:739-742,2000)、またはNIH Tetramer Facility(Atlanta,GA)から生産した。TUM/H-2KdテトラマーはNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性細胞に結合しなかった。他の抗体はBD PharMingenまたはeBioscience(San Diego,CA)から購入した。
【0086】
膵臓からの島細胞の調製
マウス島は以下のように単離した。簡単に述べれば、0.3mg/mlコラゲナーゼP(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)を膵臓管に注射した。膨張した膵臓を摘出し、37℃にて13〜17分インキュベートした。4つの異なる密度(1.108、1.096、1.069および1.037)を含むEurocollin-Ficoll勾配での遠心によって島を精製した。遠心の後、1.069/1.096における組織断片を集め、洗浄した。その後、単一細胞を得るために、非酵素的細胞解離溶液によって島細胞を解離させた(Sigma,St.Louis,MO)。
【0087】
免疫蛍光、フローサイトメトリーおよび顕微鏡観察
NKG2Dの検出のために、細胞(1×106)を0.25μgビオチニル化またはPE標識抗NKG2D mAb(クローン191004)で染色した。細胞をFITC結合抗CD8、APC結合抗CD8、FITC結合抗CD44、またはFITC結合抗Ly-6Cで共染色した。RAE-1を検出するために、細胞を、全ての5つの公知のRAE-1タンパク質を認識するビオチニル化抗汎用RAE-1 mAb(Londoen et al.,J Exp Med.197:1245-1253,2003)または抗RAE-1mAb(クローンCX1)(Ogasawara et al.,前記,2003)で染色した。PE結合ストレプトアビジンまたはAPC結合ストレプトアビジンを用いて、ビオチニル化mAbを検出した。細胞をmAbと共に20分間インキュベートし、0.01%NaN3を含有するPBSで洗浄した。細胞はFACSCalibur(Becton Dickinson, San Jose, CA)またはGuava ViaCount(商標)およびGuava Express(商標)ソフトウェアを備えた小デスクトップGuava(登録商標)Personal Cytometer(Hayward,CA)を用いることによって分析した。目に見えるリンパ球集団は前方および側方散乱プロフィールに基づき、ヨウ化プロピジウム染色の欠如によってゲートした。免疫組織化学のために、器官をOCT媒体中にスナップ凍結させ、切片を調製し、慣習的な技術によって染色した。イメージはDeltavision顕微鏡(Applied Precision,Issaquah,WH)を用いて獲得し、計算デコンボリューションはsofdWoRxソフトウェア(Applied Precision)を用いて行った。
【0088】
定量的RT-PCR
定量的(リアル-タイム)PCRは、製造業者の指示に従って、ABI 7700(Applied Biosystems)を用いて行った。プローブはApplied Biosystemsから購入した。RAE-1特異的プローブおよびプライマーは従前に記載されている(Ogasawara et al.,前記,2003)。全ての公知のRAE-1転写物を検出するのに用いるユニバーサルプライマーは:センス、5'-ctagtgccac ctgggaattc a-3'(配列番号:6);アンチセンス5'-catcattage tgatctccag ctca-3'(配列番号:7)であり、プローブは5'-6-FAM-catcagtgac agttacttct tcaccttcta cacagaga-Tamra-3'(配列番号:8)であった。全RNAをDNase Iで処理し、および、ランダムへキサマープライマーを用いて第一ストランドcDNAを合成した。リアル-タイムPCRについてのサイクリング条件は:50℃10分間、続いて、95℃30秒間および60℃2分間の50サイクルであった。データは、Sequence Detector v1.7 Analysis Software(Applied Biosystems)を用いて分析した。統計学的解析は2標本t検定を用いて行った。
【0089】
養子免疫伝達実験-NOD.scidマウスに導入されたNOD T細胞
T細胞は、MACS(Miltenyi Biotec Inc.,Germany)を用いる磁性細胞ソーティングによって、糖尿病16週齢NODマウスの脾臓およびリンパ節から単離した。T細胞(純度>98%)はCD19+、CD24+、およびMHCクラスII+細胞の枯渇での陰性選択によって濃縮した。尾静脈への注射によって、約7.5×106T細胞は4〜5週齢NOD.scidマウスに導入した。養子免疫伝達マウスにおける血糖レベルは毎週調べた。
【0090】
養子免疫伝達実験-NODマウスへの8.3 TcR-トランスジェニックT細胞
養子T細胞導入は従前に記載されているように行った(Serra et al., Proc Natl Acad Sci USA,99:15566-15571,2002)。簡単に述べれば、8.3 TcR-トランスジェニックリンパ球はリンパ節および脾臓から単離した。T細胞(純度>95%)は、MACSを用いる磁性ソーティングによって陰性選択によって濃縮した。CFSE(5μM)で標識した約1×107T細胞は、0日での尾静脈への注射によって10週齢NODマウスに導入した。抗NKG2D mAb(CX5)またはcIg(200μg/注射)は-1、+1、および+5日に受容体NODマウスに注射した。
【0091】
前糖尿病NODマウスの膵臓におけるRAE-1の発現
NKG2DとRAE-1との相互作用が自己免疫糖尿病の発症に関連するか否かを調べるために、全ての公知のRAE-1遺伝子の転写物を検出するために定量的RT-PCRアッセイ法を開発した。豊富なRAE-1転写物が後期前糖尿病NODマウス(12〜16週齢)の膵臓で検出されたが、週齢を適合させたBALB/cマウスの膵臓には検出されなかった(図1a)。比較的より顕著ではないが、RAE-1転写物もまた4〜6週齢NODマウスの膵臓で検出された。RAE-1もまた(BおよびT細胞を欠く)成体NOD.scidマウスの膵臓で検出された(図1b)。統合すると、これらの結果は、RAEの発現が継続する自己免疫応答と無関係であることを示した。RAE-1が年齢と共に膵臓において選択的にアップレギュレートされるか否かを調べるために、若いNODマウスからの特別な器官におけるRAE-1転写物のレベルを、後期前糖尿病NODマウスにおける同一器官におけるものと比較した。この基準により、RAE-1は、肝臓、脾臓、腎臓および胸腺と比較して、年齢と共に前糖尿病マウスの膵臓において比較的より増加した(図1c)。
【0092】
RAE-1タンパク質が細胞表面で発現されるか否かを調べるために、膵臓細胞を前糖尿病NODおよび非糖尿病BALB/cマウスから単離した。膵臓の酵素消化によって単離された細胞を(浸潤CD45+造血系細胞をCD45-非造血系膵臓島細胞と区別する)抗RAE-1および抗CD45 mAbで染色した。CD45陽性造血系の系統の細胞は前糖尿病NOD膵臓に浸潤するのが検出されたが、非糖尿病BALB/c膵臓についてはそうではなかった(図1d)。RAE-1タンパク質は、圧倒的に、NODマウスにおいてCD45-陰性非造血系膵臓細胞で検出されたが、BALB/cマウスにおいては膵臓細胞で見出されなかった。密度勾配分離技術を用い、島をNOD膵臓から単離し、また、これらのマウスの膵臓リンパ節(PLN)から収穫した。単離された島およびPLNからの単一-細胞懸濁液を抗RAE-1および抗CD45 mAbで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。RAE-1はほとんどのCD45-島細胞では低いレベルで存在したが、膵臓またはPLNにおけるCD45+造血系細胞ではそうではなかった(図1d,e)。これらの結果は、RAE-1転写物およびタンパク質が前糖尿病NODマウスの膵臓に存在したが、非糖尿病BALB/cマウスではそうではないことを示し、およびRAE-1の発現は病気の開始に先行し、NODマウスにおける病気進行に寄与し得ることを示した。
【0093】
NOD膵臓に浸潤するCD8+T細胞はNKG2Dを発現する
NODマウスにおける糖尿病の発症はCD4+およびCD8+T細胞双方を必要とするので、NKG2D発現は、末梢免疫組織から単離されたT細胞で、およびNODマウスの膵臓における浸潤白血球で分析した。図2aに示すように、NKG2Dは10および5週齢NODマウスにおける膵臓に浸潤するCD8+T細胞のサブセットで検出された。膵臓-浸潤NKG2D+CD8+T細胞のパーセンテージは病気進行と共に増加する(図2a)。より小さな割合のNKG2D+CD8+T細胞はPLNおよび脾臓で検出された(図2a,b)。さらに、膵臓およびPLNにおけるNKG2D+CD8+T細胞は高レベルのCD44を発現するが、Ly-6Cはそうでないことが見出された(図2b)。(CD3を発現しない)CD8-NKG2D+白血球の集団もまたNOD膵臓に浸潤する白血球で観察され(図2a)、これらの細胞の多くはK細胞および骨髄様細胞抗原で共発現した。正常な非糖尿病マウス株についての報告(Jamieson et al., Immunity,17:19-29,2002)として、NKG2Dは、10週齢または25週齢NODマウスいずれかの膵臓または末梢リンパ様組織ではCD4+T細胞または220+B細胞で検出されなかった。
【0094】
最近の研究は、NODマウスにおける自己反応性CD8+T細胞の実質的集団は、H-2Kdによって呈されるグルコース-6-リン酸触媒サブユニット-関連タンパク質(IGRP)からのペプチドを認識することを明らかにした。ミモトープペプチド、NRP-V7(KYNKANVFL,配列番号:5として記載)は、8.3TcRを発現するNODマウスにおいてスーパー-アゴニストとして機能する。NRP-V7-反応性CD8+T細胞はNODマウスの膵臓に蓄積し、糖尿病形成において臨界的役割を演じる。膵臓およびPLNにおけるCD8+T細胞はNRP-V7/H-2Kdテトラマーおよび抗NKG2Dと共に染色された。膵臓に浸潤するほとんど全てのNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞はNKG2DおよびCD44highを発現した(図2c)。同様に、膵臓におけるNKG2D+CD8+細胞はCD44highであったが、エフェクターCD8+T細胞と合致する表現型のLy-6C-(図2b)はそうではなかった(Cerwenka et al., J Immunol,161:97-105,1998)。顕著には、PLNでは、ほとんどNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞は検出されなかった(図2c)。免疫組織化学は、NKG2D+CD8+T細胞が、インスリン生産性ベータ細胞近くの前糖尿病NODマウスの島に蓄積したことを明らかとした(図2d)。CD8+T細胞に加えて、膵臓におけるCD68陽性細胞(マクロファージ)のサブセットもNKG2Dを発現した(図2d)。
【0095】
インビボでの中和抗NKG2D mAbでの処理は自己免疫糖尿病を予防する
前糖尿病島での浸潤CD8+T細胞およびNKG2Dリガンド上のNKG2Dの発現は、糖尿病形成におけるこれらの分子に対する役割を示した。前糖尿病NODマウスを中和抗NKG2D mAbで処理することによってこの仮説を検定した。CX5抗マウスNKG2D mAbはNKG2Dのそのリガンドへの結合をブロックし、CX5とのNKG2D保有細胞のインキュベーションの結果、受容体が調節され内部化された。重要なことには、CX5でのインビボでのマウスの処理は、NKG2D+NK細胞またはCD8+T細胞を枯渇させなかった。NODマウスを7〜25週齢において抗NKG2D mAbで処理した。希釈剤のみで処理したマウスは糖尿病を発症し、15週齢で開始し、全て(n=7)28週までに病気を有した(図3a,b)。対照的に、抗体処理は5週間前に停止したが、抗NKG2Dで処理したNODマウス(n=7)はいずれも30週齢で糖尿病を発症しなかった(図3a,b)。
【0096】
より厳格な分析として、抗NKG2D mAb処理を、確立されたインスリン炎を持つ13週齢前糖尿病マウスでの病気開始の予防につきテストした。対照IgGを投与したマウスは糖尿病を発症させ、15週齢で開始した。対照的に、12週の抗NKG2D処理の間にNODマウスのいずれにおいても糖尿病は起こらなかった(図3c,d)。注目すべきは、抗NKG2D処理マウスのほとんどは停止(halting)療法から7週後に病気でないままであった(図3c,d)。従って、インスリン炎を持つ若いマウスにおいてのみならず、島破壊の開始が切迫した後期前糖尿病段階におけるマウスにおいての、NKG2D遮断は糖尿病の進行を予防した。抗NKG2D mAb処理の副作用は、肉眼での調査または組織学的分析いずれによっても観察されなかった。従って、抗NKG2D mAb処理は、少なくとも抗体が継続的に投与される限りは、糖尿病を予防するのに効果的な治療法である。
【0097】
抗NKG2D mAb媒介療法のメカニズムを調べるために、対照Igおよび抗NKG2D mAb処理NODマウスの膵臓およびPLNから単離した白血球を分析した。NKG2Dおよび高レベルのCD44を共発現するCD8+T細胞は対照Ig処理マウスの膵臓で存在した。予測されるように、NKG2D発現はCD8+T細胞で有意に減少したが、CD44発現は、対照Igで処理したマウスのそれと比較して、抗NKG2D mAbで処理したマウスの膵臓で同一であった(図4a)。対照的に、NKG2Dを発現するCD8+T細胞は、対照および抗NKG2D mAb処理マウス双方のPLNにおいて比較的頻繁ではなく、これは、(未処理NODマウスについての図2に示した結果と合致する)膵臓におけるNKG2D+CD8+T細胞の優先的局所化を示す。対照Ig処理マウスからの膵臓の凍結切片の免疫組織学的分析は、対照Igで処理した16週齢NODマウスの膵臓においてNKG2Dを発現する豊富なCD8+T細胞を示した(図4b)。対照的に、多くのより少数のCD8+T細胞が、抗NKG2Dで9週間処理されている16週齢マウスの健康な膵臓に存在した(図4c)。
【0098】
対照Igまたは抗NKG2D mAbで処理したNODマウスの膵臓およびPLNから単離された白血球もまた抗特異的自己反応性CD8+T細胞の存在につき分析した。驚くべきことに、膵臓への自己反応性NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の浸潤は、抗NKG2D mAbで処理したマウスにおいて劇的に減少した(75%)(図4d)。NRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の頻度は、対照Ig処理マウスと比較して、抗NKG2D mAb処理マウスのPLN、脾臓および末梢血液でやはり検出された(図4d,e)。NKG2Dは、抗NKG2D mAbで処理したマウスにおいてCD8+T細胞では検出されなかった。CX5は非枯渇抗NKG2D mAbであるので(図8参照)、治療法は、受容体の調節(図7参照)および/またはリガンド結合の阻害によって働くと考えられる。対照Igまたは抗NKG2D mAbでインビボで処理したマウスのPLNから単離したCD8+T細胞によるIFN-γ生産もまた調べた。インビトロにおけるPMAおよびイオノマイシンでの刺激に際して、IFN-γ+CD8+T細胞はcIg処理NODマウスで検出され、他方、抗NKG2D mAb療法を受けているマウスでより少数のIFN-γ+CD8+T細胞が観察された(図4f)。それにもかかわらず、メカニズムの理解は、本発明を製造し使用するためには必要ない。
【0099】
NKG2D遮断は、糖尿病NODマウスからの養子免疫伝達T細胞を受領するNOD.scidマウスにおいて糖尿病を予防する
NKG2D遮断がエフェクターCD8+T細胞に影響するか否かに取り組むために、糖尿病16週齢NODマウスから単離したT細胞を(T細胞を欠くが、糖尿病を発症しない)NOD.scid受容体に養子免疫伝達した。導入の時点において、CD8+T細胞の小さなパーセンテージのみがNKG2Dを発現した(図5a)。しかしながら、導入から5週間後に、実質的な数のNKG2D+CD8+T細胞が、受容体マウスにおいて膵臓、PLNおよび脾臓で検出され(図5a)、これは、予め存在するNKG2D+T細胞の拡大、または導入されたCD8+T細胞でのNKG2Dの獲得を示唆する。cIg処理受容体マウスにおける膵臓に浸潤するCD8+T細胞の約15%はNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性であり、他方、抗NKG2D mAb処理マウスで見出されたのは有意に少なかった(図5b,c)。NKG2Dは対照Ig処理NODマウスにおけるほとんどのNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性自己反応性CD8+T細胞にNKG2Dが存在したが、抗NKG2D mAb療法を受領するマウスでは検出されなかった(図5c)。糖尿病NODマウスからのT細胞を受領する全ての対照Ig処理NOD.scidマウスにおいて糖尿病は発症しなかったが、療法を受けつつ糖尿病を発症した抗NKG2D mAb処理マウスはなかった(図5d)。
【0100】
抗NKG2D処理がNOD.scid受容体マウスにおいて病原性CD8+T細胞の拡大をブロックしたか否かを判断するために、抗NKG2D mAb処理を、全ての対照Ig処理マウスが病気に罹った8週間後に停止した。抗NKG2D療法を停止してから4週間後に、糖尿病NODドナーからのT細胞を受領したNOD.scidマウスの大部分で糖尿病が発症した(図5d)。さらに、この時点において、NOD.scidマウスにおけるNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性NKG2D+CD8+T細胞の拡大について証拠があった(図5e)。これらの結果は、抗NKG2D mAb処理が膵臓におけるNKG2D+CD8+T細胞の拡大および/または蓄積を阻害したことを示した。療法停止から間もなくの糖尿病への迅速な進行は、エフェクターT細胞が、抗体処理の間において、枯渇されるよりはむしろ制御されたことを示した。
【0101】
抗NKG2D mAb療法は、膵臓において自己反応性CD8+T細胞の拡大を予防する
抗NKG2D処理マウスの膵臓におけるより少数のNRP-V7/H-2Kdテトラマー陽性CD8+T細胞の発見は、mAb療法が自己反応性T細胞の拡大をブロックした可能性と合致した。この仮説を直接的に検定するために、8.3TcR-トランスジェニックT細胞をCSFEで標識し、10週齢NOD受容体に養子免疫伝達し、対照Igまたは抗NKG2D mAbいずれかで処理した(図6)。導入前に、8.3TcR-トランスジェニックNODマウスのリンパ節および脾臓からのドナーCD8+T細胞は>90%NRP-V7/H2Kdテトラマー陽性であったが、NKG2Dを発現しなかった(図6a)。2日後に、対照Igで処理したマウスの膵臓に浸潤する導入されたCSFE標識8.3TcR-トランスジェニックNOD CD8+T細胞はNKG2Dを発現し(図6b)、すでに増殖していた;しかしながら、膵臓または腸間膜リンパ節に存在する導入されたT細胞でCSFEの希釈は観察されなかった(図6c)。導入から4および8日後、対照Igで処理したマウスの、腸間膜リンパ節ではなく、膵臓および膵臓リンパ節におけるCFSE標識8.3TcR-トランスジェニックT細胞は、かなりの増殖を示した(図6c)。驚くべき対照的に、NKG2Dは、抗NKG2D mAbで処理したNODマウスの膵臓における導入されたCSFE標識8.3TcR-トランスジェニックCD8+T細胞の細胞表面で検出されなかった(図6b)。さらに、膵臓におけるこれらの細胞の拡大は、対照Igで処理したマウスと比較して実質的に阻害された(図6c)。興味深いことには、抗NKG2D mAbでの処理は、リンパ節における細胞と比較して、膵臓に浸潤するCSFE標識8.3TcR-トランスジェニックT細胞の増殖に対してかなり顕著な効果を有した。NRP-V7/H2Kdテトラマーで検出された膵臓における内因性CSFE-未標識T細胞の拡大もまた、対照Ig処理マウスと比較して、抗NKG2D mAbでの処理によってやはり減少した。対照Igおよび抗NKG2D mAb処理NODマウスにおける膵臓に浸潤する養子免疫伝達8.3TcR-トランスジェニックT細胞の増殖の定量は、自己反応性抗原-特異的CD8+T細胞の拡大に対して抗NKG2D療法の顕著な効果を示した(図6d)。
【0102】
データは、RAE-1がNODマウスの前糖尿病島に存在し、自己反応性CD8+T細胞が膵臓発現NKG2Dを浸潤することを示す。前糖尿病段階における非枯渇抗NKG2Dモノクローナル抗体(mAb)の処理は、自己反応性CD8+T細胞の拡大および機能を障害することにより、病気を完全に予防した。これらの知見は、NKG2Dが病気の進行のために必要であることを示し、自己免疫型I糖尿病の新しい治療的標的を提供する。これらのデータは、病原性CD8+T細胞のエフェクター機能の機能的発生におけるNKG2D受容体に直接関連し、抗NKG2D mAbが、フランク細胞枯渇の非存在下の受容体媒介シグナルを治療的にブロックする機能を示す。
【0103】
実施例4
shRNAによるNKG2Dの細胞表面発現の調節
以下の実験を行って、NKG2D発現に対する阻害性RNAの効果を調べた。IRES-eGFPエレメントを含有するベクターにおけるヒトNKG2DをコードするDNAは安定にCHO細胞にトランスフェクトされた。および、マウスCD8(mCD8)をコードするcDNAで、および(shDNA03と命名される)ヒトNKG2Dのセグメントと相同な22塩基対(bp)cDNA(配列番号:10に記載された5'-ggatgggact agtacacatt cc-3')を含有するプラスミド(InVitroGenからのpCR2.1-TOPOベクター)で、安定にトランスフェクトされたNKG2D発現細胞を(リポフェクタミンおよび標準的方法を用いて)トランスフェクトした。特異性を示す対照として、NKG2D発現CHO細胞を、mCD8で、およびヒトNKG2Dと同様であるが、3つの突然変異したヌクレオチド(配列番号:13に記載された5'-ggatgggatt agtatagatt cc-3')を持つ22bp cDNAで二重にトランスフェクトした。左側パネルにおける細胞は、マウスCD8 cDNA(mCD8)を含有するプラスミドでのみトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞を、マウスCD8に対する、およびヒトNKG2Dに対するモノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。二変量ドットプロットが得られ、これは、(i)マウスCD8対-ヒトNKG2D、および(ii)eGFP(ヒトNKG2D-IRES-eGFPベクターの拡大から得られる固有の緑色蛍光)対-ヒトNKG2Dを表す蛍光を呈する。
【0104】
結果は、まず、細胞表面にマウスCD8を発現した細胞は容易に検出することができ、それらはCHO細胞に導入されたプラスミドでトランスフェクトされたことを明らかとした。さらに、マウスCD8発現細胞でのヒトNKG2Dの発現は、マウスCD8プラスミド単独での、または変異体NKG2D構築体を含有するプラスミドとの共トランスフェクションによって影響されなかった。対照的に、相同NKG2D配列での共トランスフェクションはNKG2Dの発現を実質的に妨げた。
【0105】
実施例5
抗NKG2Dモノクローナル抗体の使用による細胞表面NKG2Dの調節
以下の実験を行って、NKG2Dに向けられたモノクローナル抗体の、NKG2Dの細胞表面発現を調節する能力を評価した。
【0106】
ヒトNK細胞系(NKL)を、ビオチン結合対照IgG(cIg bio)で、またはビオチンコンジュゲーテッドマウス抗ヒトNKG2D mAb(R&D Systemsクローン149810)で、氷上で30分間染色し、洗浄し、アリコートを37℃にて一晩インキュベートした。培養前(0時間)、または培養後(16時間)に、細胞をアロフィコシアニン結合ストレプトアビジンで染色し、引き続いて、フローサイトメトリーによって分析した。培養前の、抗NKG2D染色細胞の平均蛍光強度(任意単位)を培養後の61と186を比較し、16時間抗NKG2D mAbで処理したNK細胞の細胞表面でのNKG2Dの発現の67%減少が示された。
【0107】
NKL細胞を、対照IgGと、またはマウス抗ヒトNKG2D IgG(R&D Systemsクローン149810)と、37℃にて16時間培養した。インキュベーションの最後に、細胞を洗浄し、pH3.5にて15分間酸性培地で処理して、表面抗体を除去した。および、細胞を抗NKG2D抗体、続いて、PE標識ヤギ抗マウスIgG二次抗体で染色して、表面NKG2Dを検出した。図12は、この抗NKG2D抗体が、これらのヒト細胞についての表面NKG2Dの内部化を刺激するのに効果的であることを示す。
【0108】
実施例6
NKG2D遮断は、F1マウスにおいて非経口骨髄移植片拒絶反応を予防する
以下の実験を行って、動物モデル系、(C57BL/6×BALB/c)、F1(CB6F1)マウスにおける、ハイブリッド耐性の発生に対するNKG2D遮断の効果をテストした(F1受容体による非経口骨髄移植片の拒絶)。
【0109】
マウス
約6〜8週齢のC57BL/6、BALB/c、およびCB6F1マウスは、National Cancer Institute Animal Program(Frederick,MD)から購入した。RAE-1εトランスジェニックマウスを作成し、C57BL/6バックグラウンドに戻し交配させた(Ehrlich et al.,未公表観察)。C57BL/6バックグラウンドでのDAP12-/-マウス(戻し交配9世代)は従前に記載されており(Bakker et al.,Immunity,13:45-353,2000)、DAP10-/-はC57BL/6胚性幹細胞から作成した(Phillips et al.,未公表観察)。全ての実験は、UCSF Committie on Animal Researchのガイドラインに従って行った。
【0110】
試薬、サイトカインおよび抗体
抗マウスNKG2D mAb、クローンCX5(ラットIgG1イソタイプ)は、従前に記載されたように、精製されたマウスNKG2Dタンパク質でラットを免疫化することによって作成した(Ogasawara et al.,Immunity,18:41-51,2003)。抗マウスNKG2D、クローン191004(ラットIgG2aイソタイプ)は、組換えマウスNKG2D細胞外ドメイン(R&D Systems, Minneapolis,MN)で免疫化したラットからのB細胞とマウス骨髄腫との融合から得られたハイブリドーマーから生産した。全ての抗NKG2D mAbは、NKG2D細胞外ドメインを認識し、NKG2Dのそのリガンドへの結合を効果的にブロックする。インビボ注射では、検出可能なエンドトキシン(<0.3pg注射)を含有しない精製された抗NKG2D mAb CX5および抗NK1.1 mAb PK136を用いた。抗NKG2D mAb CX5は、インビボで注入された場合に、NKG2D保有NK細胞またはT細胞を枯渇させないブロッキング抗体である(Ogasawara et al.,Immunity,20,757-7567,2004;Lodoen et al.,J Exp Med,197:1245-1253,2003;およびLodoen et al.,J Exp Med,200:1075-108,2004)。対照ラットIgGはSigma(St.Louis,MO)から購入した。抗マウス汎用-RAE-1 mAb(クローン186107、ラットIgG2bイソタイプ)、抗マウスH60 mAb(クローン205310)および抗マウスMULT1 mAb(クローン237104)は記載されているように作成した(Lodoen et al.,前記,2003;)およびLodoen et al.,前記、2004)。他の抗体はBD PharMingenまたはeBioscience(San Diego,CA)から購入した。
【0111】
骨髄移植
ネズミ骨髄は従前に記載されているように移植した(George et al.,J Immunol,163:1859-1867,1999)。簡単に述べれば、骨髄導入の2日前にmAb処理(200μg/マウス)を行い、受容体をポリI:C(Sigma、200μg/マウス)で処理して、骨髄細胞の注入から1日前にNK細胞媒介移植片拒絶をブーストした(Murphy et al.,J Exp Med,166:1499-1509,1987)。0日に、マウスを致死量(11Gy)の137Csγ照射に暴露することによって照射し、および、4×106BM細胞を静脈内注射した。導入から5日後に、マウスに26μgの5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(Sigma,St.Louis,MO)を静脈内投与して、内因性チミジン合成を抑制した(George et al.,前記,1999)。30分後に、マウスに3μ Ciの5-[125I]ヨード-2'-デオキシウリジン(Amersham Life Science,Arlington Heights IL)を静脈内投与した。6日に、脾臓を受容体マウスから摘出し、ガンマカウンターでカウントした。
【0112】
BMキメラマウスの作成
簡単に述べれば、1×107 Ly5.2 B6 BM細胞をNK細胞-枯渇した照射した受容体マウス(照射の吸収された量=11Gy)に従前に記載されているように静脈内導入した(Ogasawara et al.,Nature,391:701-703,1998)。再構成の間に、マウスを抗生物質に維持した。
【0113】
NK細胞の調製
NK細胞は従前に記載されているように濃縮した(Ogasawara et al.,J Immunol,169:3676-3685,2002)。簡単に述べれば、脾臓細胞を抗マウスCD4 mAb(クローンGK1.5)および抗マウスCD8 mAb(クローン53-6.7)と共にインキュベートし、その後に、これらの細胞を、ヤギ抗マウスIgおよびヤギ抗ラットIg(Advanced Magnetic,Inc,Cambridge,MA)で被覆した磁性ビーズと混合した。CD4、CD8、および表面Ig(sIg)陽性細胞は、磁性細胞ソーティングによって取り出した。
【0114】
フローサイトメトリー分析
ヒトIgG1 Fcに融合したマウスNKG2D(mNKG2D-Ig)の細胞外ドメインを含有する融合タンパク質を用いて、NKG2Dリガンドを検出した(Cerwenka et al.,Immunity,12:721-727,2000)。PE結合ヤギ抗ヒトIgG Fcγ断片(Jackson ImmunoResearch,West Grove,PA)を第二工程の試薬として用いた。細胞(1×106)を0.5μgのmNKG2D-Igで、および0.25μgの他のmAbで染色した。いずれのNKG2Dリガンドが発現されたかを判断するために、細胞を、全ての5つの公知のRAE-1タンパク質(すなわち、RAE-1α、β、γ、δ、およびε)を認識するビオチニル化抗汎用RAE-1 mAb、ビオチニル化抗H60 mAbまたは抗MULT1 mAbで染色した。PE結合ストレプトアビジンまたはAPC結合ストレプトアブジンを用いて、ビオチニル化mAbsを検出した。NKG2Dの検出のために、細胞(1×106)を0.25μgのビオチニル化またはPE標識抗NKG2D mAb(クローン191004)で染色した。細胞を抗CD43、抗Ly6C/G、抗CD11c、抗B220、抗CD3、抗TER119、抗NK1.1および抗CD49d(DX5) mAbで共染色した。細胞をmAbと共に20分間インキュベートし、0.01%NaN3を含有するPBSで洗浄した。細胞はFACS Calibur(Becton Dickinson,San Jose,CA)フローサイトメーターを用いて分析した。目に見えるリンパ球集団を、前方および側方散乱プロフィールに基づいて、かつヨウ化プロピジウム染色の欠如によってゲートした。
【0115】
細胞傷害アッセイ法
モノクローナル抗体媒介再指向性細胞障害アッセイ法は従前に記載されているように行った(Lanier et al.,J Immunol,141:3478-3485,1988)。標的細胞を、10%FCSを含有するRPMI-1640培地中で、50μCiのNa2(51Cr)O4で37℃にて2時間標識し、培地で3回洗浄し、細胞障害アッセイ法で用いた。51Cr標識標的細胞(5×103)およびエフェクター細胞を、三連にて、示されたエフェクター/標的(E/T)比率にて、96ウェルマイクロタイタープレートのU底ウェル中で混合した。4時間のインキュベーション時間の後、細胞を含まない上清を集め、Micro-betaカウンター(Wallac,Turku,Finland)にて放射能を測定した。自然発生放出は最大放出の15%未満であった。特異的51Cr放出のパーセンテージは以下の式に従って計算した:%特異的溶解=(実験-自然発生)放出×100/(最大-自然発生)放出。
【0116】
マウスBM細胞でのNKG2Dリガンドの発現
NKG2Dリガンドをコードする遺伝子は多形であり;BLAB/c(B/c)マウスはRAE-1α、βおよびγ遺伝子を有し、他方、C57BL/6(B6)マウスはRAE-1δおよびε遺伝子を保有する(Cerwenka and Lanier,Tissue Antigens,61:335-343,2003)。同様に、B/cマウスはH60を発現するが、B6マウスは発現しない(Malarkannan et al.,J Immunol,161:3501-3509,1998)。B/c、B6および(BALB/c x C57BL/6)F1(CB6F1)マウスから単離したBM細胞を分析して、NKG2DリガンドはBM細胞で発現されるか否かを判断した。細胞をマウスNKG2D-IgG Fc融合タンパク質で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。低レベルのNKG2Dリガンドは新たに単離されたB/c BM細胞の表面で検出されたが、B6 BM細胞の表面では検出されなかった(図13a)。いずれのNKG2Dリガンドが発現されたかを判断するために、BM細胞を抗汎用RAE-1、抗H60および抗MULT1モノクローナル抗体(mAb)で染色した。RAE-1およびH60は新たに単離されたB/c BM細胞は低レベルで発現され、他方、MULT1は検出されなかった(図13b)。対照的に、RAE-1は、B/c、B6またはCB6F1マウスからの新たに単離された脾臓細胞で検出されなかった。
【0117】
従前の研究は、F1受容体におけるNK細胞が非経口骨髄移植片を拒絶できることを確立している(Kiessling et al.,Eur J Immunol,7:655-663,1977;Lotzova et al.,Transplantation,35:490-494,1983;Murphy et al.,J Exp Med,165.1212-1217,1987;およびMurphy et al.,Eur J Immnuol,20:1729-1734,1990)。本発明者らは、照射されたCB6F1受容体における脾臓に再度定着するB/c BM細胞はNKG2Dリガンドを発現すると考えた。従って、本発明の開発の間に、受容体CB6F1マウスを抗NK1.1 mAbで予め処理して、存在するNK細胞を枯渇させ、それにより、移植されたB/c BM細胞の拒絶を妨げた。対照として、照射されたCB6F1マウスの群は、同系CB6F1 BM細胞で再構築した。移植から7日後に、CB6F1マウスの脾臓に再び定着する造血系細胞を単離し、NKG2Dリガンドの発現について分析した。図13cに示すように、NKG2Dリガンドは、B/c BM->CB6F1マウスの脾臓から単離した造血形細胞では検出されたが、CB6F1 BM->CB6F1マウスの脾臓から単離された細胞では検出されなかった。照射されたCB6F1受容体の脾臓を再構成するB/c造血系細胞は、圧倒的に、RAE-1を発現したが、H60またはMULT1を発現しなかった(図13d)。
【0118】
RAE-1を発現した造血系細胞の集団を同定するために、CB6F1 BM->CB6F1およびB/c BM->CB6F1受容体の脾臓から単離した細胞を、造血系の系列のマーカーに対するmAbで染色した。移植から7日後に、RAE-1をCB6F1 BM->CB6F1受容体の脾臓から単離した細胞の大部分で検出した。対照的に、RAE-1は、CB6F1 BM->CB6F1受容体の脾臓からの細胞の実質的割合では検出されなかった。B/c BM->CB6F1受容体から単離した本質的に全てのRAE-1陽性細胞は、CD43を発現した(図13e)。RAE-1は、顆粒球-関連Gr-1(Ly-6 C/G)タンパク質および骨髄様細胞-関連マーカーCD11b(Mac-1)を発現するほとんどの細胞でやはり存在した。B220(B細胞-関連マーカー)陽性細胞およびTer119(赤血球-関連マーカー)陽性細胞の僅かな割合のみがRAE-1を発現し、RAE-1はCD3+T細胞では検出されなかった(図13e)。脾臓で検出されたB細胞およびT細胞は宿主起源の残存放射能抵抗性細胞であると考えられた。なぜならば、T細胞またはB細胞は、移植から1週間未満にドナー骨髄細胞から発生したようであるからである。ほとんどのRAE-1陽性細胞はこれらのマーカーを有しないが、RAE-1はc-kitおよびSca-1を発現する細胞の小さなサブセットで検出された(図13f)。B/c BM->CB6F1受容体においてRAE-1を発現する細胞の増殖状態は、2時間および12時間前にBrdUをこれらのマウスに注射し、移植から7日後に脾臓細胞を収穫することによって評価した。図13gに示すように、RAE-1は、移植受容体の脾臓における増殖する先祖細胞の大きな割合(全てではない)に容易に検出された。
【0119】
最初の実験においては、CB6F1マウスにB/cドナーから単離した全骨髄を移植した。RAE-1が造血系幹細胞(HSC)の子孫で発現されるか否かに取り組むために、骨髄収穫前にドナーB/cマウスを5-フルオロウラシル(5-FU)で処理して、HSCを濃縮させて、および、5-FU処理ドナーからの骨髄を、抗NK1.1で予め処理したCB6F1受容体に移植して、存在する宿主NK細胞を枯渇させた。5-FU処理ドナーから収穫した骨髄細胞はRAE-1を発現しなかった。B/c 5-FU BM->CB6F1受容体の脾臓における細胞は移植から8日後に分析すると、本質的に全てのRAE-1陽性細胞はLy-6C/g、CD11bおよびCD43を発現したが、CD3、Ter119、またはB220を発現しなかった。RAE-1陽性細胞の大部分はこれらのマーカーの双方を欠くが、RAE-1陽性細胞の小さな集団は低レベルのc-kitおよびSca-1を発現した(図13i)。これらの結果は、NK細胞-枯渇CB6F1受容体における増殖するB/c先祖細胞の大部分はRAE-1を発現することを示した。
【0120】
本発明の開発以来、増殖するヒト骨髄細胞でのNKG2Dリガンドの発現が報告されている(Nowdakht et al.,Blood,2005年1月18日に電子的に公開)。従って、本発明者らは、マウスにおける本明細書において記載した実験はヒト(および他の哺乳動物)にも関連すると考える。
【0121】
NKG2Dはハイブリッド抵抗性に関与する
本発明の開発の間に、RAE-1が、B/c骨髄で再構成されたCB6F1マウスの脾臓における増殖する先祖細胞で発現されたという知見は、本発明者らに対して、NKG2Dがハイブリッド抵抗性に関与することを示唆した。これは、対照抗体(cIg)、中和非枯渇抗NKG2D mAb(CX5)(Ogasawara et al.,Immunity、20:757-767,2004)、またはNK細胞-枯渇抗NK1.1 mAb(PK136)で予め処理した照射CB6F1マウスへのB/c BM細胞の導入によって確認した。受容体マウスの造血系細胞再構成は、7日に脾臓を収穫するのに12時間先立って、125IUdRを注射することによって評価した。cIg処理マウスはB/c BM細胞を拒絶し、これは以前の報告と合致し(Lotzova et al.,Transplantation,35:490-494,1983)、CB6F1マウスにおけるNK細胞の枯渇はB/c骨髄細胞の拒絶を効率的に妨げ、その結果、脾臓における放射性標識の取込が実質的に増加した(図14a)。非枯渇中和抗NKG2D mAbもまた、NK細胞を枯渇する効果と匹敵して、125IUdRの取込を劇的に増加させた。
【0122】
B/c骨髄細胞の拒絶を妨げる抗NKG2D mAb処理の能力は、移植の8日後に脾臓に再度定着する細胞を調べることによって確認した。図14bに示すように、圧倒的にCD43、Ly-6C/G、およびCD11bを共発現するRAE-1陽性細胞は、抗NKG2D mAbで処理したCB6F1マウスの脾臓で検出された。対照的に、cIg処理マウスからはるかに少数の細胞が回収され、これらの細胞の非常に少数がRAE-1を発現した。これらのデータは、CB6F1マウスにおけるRAE-1陽性B/c BM細胞の拒絶は、NK細胞の枯渇によって、またはNKG2D受容体をブロックすることによって効果的に妨げられることを示した。
【0123】
高レベルのRAE-1を発現する同系BM細胞をNK細胞は排除する
F1受容体における非経口骨髄移植の拒絶をブロックする抗NKG2D mAb処理能力は、F1 NK細胞による非経口H-2の認識がNKG2D依存性拒絶に必要であるか否か、またはNK細胞もまた同系骨髄細胞を拒絶できるかの問題を生起し、但し、RAE-は十分に高レベルで発現されるものとする。同系照射CB6F1受容体に再度定着するCB6F1骨髄細胞(図13c,e)、および同系照射B6受容体に再度定着するB6骨髄細胞は、B/cの再度定着する骨髄細胞(図13d,e)と比較して、非常に低いレベルのRAE-1を発現したに過ぎなかった。従って、B6またはCB6F1骨髄細胞でのRAE-1の発現が、同系骨髄移植片の拒絶を引き起こすか否かを調べるために、ヒトβ-アクチンプロモーターによって駆動されるRAE-1εを発現し、その結果、全ての組織においてRAE-1εが発現されるトランスジェニックマウスを作成した。図15aに示すように、B6 RAE-εトランスジェニックマウスからの新たに単離された骨髄細胞でのRAE-1εの発現レベルは、再度定着するB/c骨髄細胞に存在するRAE-1のレベルと同様である(図13d,e)。
【0124】
RAE-1εトランスジェニックB6マウスからの新たに単離した骨髄細胞は、標準インビトロ細胞障害アッセイ法において、IL-2-活性化同系非トランスジェニックNK細胞についての標的としてテストした。図15bに示すように、活性化されたNK細胞は新たに単離されたRAE-1εトランスジェニックB6骨髄細胞を殺したが、RAE-1-陰性非トランスジェニックB6骨髄細胞を殺さなかった。細胞傷害性は抗NKG2D mAbによってブロックされ、これは、殺傷がNKG2D依存性であることを示す。インビトロ結果と合致して、照射された非トランスジェニックB6マウスは、RAE-1εトランスジェニックB6ドナーからの骨髄細胞を拒絶した。重要なことには、拒絶は、中和抗NKG2D mAbで処理下マウスでは妨げられたが、対照Igで処理したマウスでは妨げられなかった(図15c)。RAE-1εトランスジェニックB6をB/cマウスと交配させ、RAE-1εトランスジェニックCB6F1骨髄細胞を非トランスジェニックCB6F1受容体に移植した場合に、同様な結果が得られた。RAE-1εトランスジェニックCB6F1骨髄細胞は、非トランスジェニックCB6F1骨髄細胞とは異なり(図13c,e)、高レベルのRAE-1εを発現し、同系非トランスジェニックCB6F1受容体によって拒絶された(図15d)。拒絶は、中和非枯渇抗NKG2D mAbの投与によって、あるいは抗NK1.1 mAbでのNK細胞の枯渇によって妨げられた。考え併わすと、これらの発見は、B6およびCB6F1 NK細胞がH-2同一骨髄細胞を拒絶できるが、骨髄細胞はRAE-1を発現するものとする。
【0125】
NKG2D媒介BM拒絶におけるDAP10およびDAP12
マウスにおいて、NKG2D転写物の別のRNAスプライシングは、NKG2D-SおよびNKG2D-Lと呼ばれる2つのタンパク質イソ形態を作成する。NKG2D-Lは休止NK細胞において圧倒的に発現され、DAP10アダプタータンパク質と会合し、他方、NKG2D-SはNK細胞の活性化によって誘導され、DAP10またはDAP12いずれかと会合する(Diefenbach et al.,Nat Immunol、3:1142-1149,2002)。RAE-1εトランスジェニックB6マウスからの骨髄細胞を照射された野生型、DAP10-/-、およびDAP12-/-C57BL/6受容体に移植して、DAP10またはDAP12または双方のアダプターがNKG2D媒介拒絶に関与するか否かを判断した。マウスに5日に125IUdRを注射し、脾臓を収穫し、6日にカウントした。野生型B6マウスと比較して、DAP-10-/-B6マウスは、RAE-1εトランスジェニックB6骨髄移植片を拒絶するにおいてかなりの欠乏を示した(図16a)。対照的に、野生型B6マウスよりはわずかによくないが、DAP12-/-B6受容体はDAP10-/-B6マウスよりも効果的にRAE-1εトランスジェニックB6骨髄細胞を拒絶した(図16b)。野生型、DAP10-/-およびDAP12-/-B6マウスは、全て、枯渇抗NK1.1 mAbで、または非枯渇中和抗NKG2D mAbで処理した場合、RAE-1εトランスジェニックB6骨髄移植片を拒絶しなかった。これらの結果は、NKG2D依存性骨髄細胞拒絶における、DAP10の圧倒的な役割、およびDAP12のより少ない役割を示す。それにも拘らず、本発明を製造し、使用するためには、メカニズムの理解は必要でない。
【0126】
RAE-1εトランスジェニックマウスにおける欠陥ハイブリッド抵抗性
NODマウスからのNK細胞の活性化はRAE-1の発現を誘導し、その結果、NK細胞でNKG2Dのリガンド依存性調節がもたらされる(Ogasawara et al.,Immunity,18,41-51,2003)。RAE-1εトランスジェニックB6からのNK細胞の表面でのNKG2Dの発現の分析は、野生型マウスからのNK細胞と比較して、NKG2Dの低下した発現を明らかにした(図17a)。RAE-1εトランスジェニックB6でのNKG2Dの量は実質的に減少したが、脾臓におけるNK細胞の数、およびNK細胞でのNK1.1、Ly-49D、Ly-49A、Ly-49C/I,Ly-49F/I/C/H、およびLy-49G2の発現は、野生型NK細胞と同様であった。NKG2Dの機能がRAE-1εトランスジェニックNK細胞で損なわれるか否かを調べるために、cIg、抗NKG2D mAbおよび抗NK1.1 mAbを用いて、抗体-再指向性細胞障害アッセイ法を行った。RAE-1εトランスジェニックNK細胞のNK1.1依存性細胞傷害性活性は野生型B6 NK細胞のそれと同一であったが、NKG2D依存性細胞傷害性はRAE-1εトランスジェニックNK細胞で損なわれた(図17b)。
【0127】
RAE-1ε導入遺伝子はこれらのトランスジェニックマウスにおいてβ-アクチンプロモーターによって駆動され、従って、これらの動物のNK細胞はリガンドおよび受容体を共発現させる。野生型(非トランスジェニック)NK細胞がNKG2Dリガンドへの一定の暴露によってインビボで不活化されるか否かを判断するために、野生型Ly5.2共通遺伝子系B6骨髄を致死的に照射されたRAE-1ε B6(Ly5.1)トランスジェニック受容体に移植することによって骨髄キメラを作成した。移植から3ヵ月後に、脾臓におけるNK細胞の数、Ly5.2 BM->RAE-1εトランスジェニックマウスにおけるNK1.1(図17c)、Ly-49D、Ly-49A、Ly-49 C/I、Ly-49F/I/C/HおよびLy-49G2の発現は、Ly5.2BM->野生型B6マウスにおけるそれと同様であった。対照的に、NK細胞でのNKG2D発現は、Ly-5.2BM->RAE-1εトランスジェニックマウスにおいて劇的に減少した(図17c)。NK細胞でのNKG2Dの減少したレベルと合致して、NKG2D依存性細胞傷害性活性は、インビトロ抗体-再指向性細胞障害アッセイ法によって測定して、Ly-5.2BM->RAE-1εトランスジェニックマウスにおいて損なわれた(図17d)。また、本発明者らは、RAE-1εトランスジェニックB6 BM細胞がLy-5.2 B6 BM->RAE-1ε B6トランスジェニック受容体において拒絶されたか否かも調べた。予測されたように、野生型Ly5.2B6->野生型B6マウスにおけるNK細胞は、RAE-1εトランスジェニックBM細胞を効果的に拒絶した(図17e)。対照的に、Ly-5.2B6 BM->RAE-1εトランスジェニックマウスにおいて発生したNK細胞は、RAE-1εトランスジェニックBM細胞を拒絶しなかった(図17)。これらの発見は、NK細胞のNKG2D調節が、照射-抵抗性受容体RAE-1発現細胞のインビボでの相互作用によって引き起こされ、およびこの結果、インビボでNKG2D機能が損なわれることを示した。それに拘らず、本発明を製造し使用するためには、メカニズムの理解は必要ない。
【0128】
F1ハイブリッド抵抗性が、RAE-1εトランスジェニックB6マウスにおいてNK細胞でのNKG2Dの減少したレベルによって影響されるか否かを調べるために、トランスジェニックマウスをB/cマウスと交配させ、RAE-1εトランスジェニックCBF1マウスを、親B/c BM細胞を拒絶するその能力についてテストした。野生型CB6F1マウスとは異なり、RAE-1εトランスジェニックマウスはB/c BM細胞を拒絶しなかった(図17f)。さらに、抗NK1.1 mAbまたは抗NKG2D mAbでの処理は、RAE-1εトランスジェニックCB6F1受容体におけるB/c BM細胞の125IUdR取込に影響しなかった。しかしながら、NK細胞の枯渇またはNKG2Dのブロッキングは、野生型CB6F1受容体におけるB/c骨髄細胞の移植を可能とした。従って、本明細書において示されるように、NKG2Dは、F1ハイブリッド抵抗性における重要な成分として含まれる。
【0129】
実施例7
慢性関節リウマチの予防および治療のためのNKG2D遮断
これは、NKG2Dが炎症の部位に存在することを示すことができる関節炎の慢性動物モデルでテストすることができる。そのようなモデルの例は、慢性コラーゲン誘導関節炎である(Malfait et al.,Arthritis and Rheumatism 44:1215-1224,2001)。
【0130】
最近、ヒト慢性関節リウマチ患者の末梢血液および滑膜組織におけるCD4+CD28-T細胞はNKG2Dを発現することが見出されており、他方、炎症した滑膜細胞はNKG2DのMICリガンドを異常に発現することが見出されている(Groh et al.,Proc Natl Acad Sci USA,100:9452-9457,2003)。従って、本発明者らは、本明細書において記載したNKG2Dをブロックするための組成物および方法もまた、慢性関節リウマチの予防または治療で適当であると考える。以下の実験は、動物モデル系、DBA/1マウスにおいて慢性関節リウマチ(RA)の発生に対するNKG2D遮断の効果をテストするために行う。
【0131】
簡単に述べれば、コラーゲンII型(CII)-誘導関節炎(CIA)を、記載されたように、フロイントの完全アジュバント中に乳化した2.0mg/ml Mycobacterium tuberculosis H37RAを補足した100μgのウシコラーゲンIIの皮内尾ベース注射によって、6〜7週齢雄DBA/1マウスにおいて誘導する(Seo et al.,Nat Med,10:1088-1094,2004)。関節の炎症は1〜4のスコアとし、最大のスコアはマウス当たり16である。関節炎の臨床的重症度は以下のようにグレード分けされる:0、正常;1、僅かに腫れおよび/または僅かに紅斑;2、実質的な水腫状腫れ;3、実質的な水腫状腫れ+軽い関節剛性;または4、弛緩(例えば、Williams et al.,Proc Natl Acad Sci USA,89:9784-9788,1992参照)。各四肢をグレード分けし、各動物について最大臨床スコアは16とする。後足の腫れはキャリパーの対で測定する。
【0132】
0、2、4、6および8日に、または免疫化から0、3、7、および10日後に、マウスに200μgの抗NKG2D mAbまたは対照イソタイプがマッチしたmAb IPを注射する。本発明者らは、対照IgG処理の結果、酷い関節炎が発生し、免疫化から約28日後に開始すると考える(例えば、10を超える重症度;80%よりも大きな発生率、および3.5mmを超える足の厚み)。対照的に、抗NKG2D mAb処理は病気の抑制をもたらすと予測され、これは、関節炎の重症度、および発生率の減少、ならびに対照mAb処理動物に対して低下した足の厚みおよび低下した関節の組織病理学を発現する(例えば、10未満、好ましくは5未満、および最も好ましくは2未満の重症度;80%未満、好ましくは50%未満、および最も好ましくは20%未満の発生率;および3.5mm未満、好ましくは3.0mm未満、および最も好ましくは2.5mm未満の足の厚み)。
【0133】
確立されたCIAを治療するために、マウスに免疫化から28、30、32、34および36日後、または28、31、35および38日後に注射する。および、免疫化から28日後に、マウスを等しい平均関節炎スコアを持つ2つの群に分け、免疫化から28、30、32、34および36日後に、対照mAb、または抗NKG2D mAbで処理した。関節炎は抗NKG2D mAb処理群においてのみ逆行すると考えられる(例えば、病気の重症度、発生率、足の厚みおよび関節組織病理学の低下)。さらに、本発明者らは、抗NKG2D mAb処理の結果、関節炎対象の関節に存在するNKG2D発現細胞の数の低下、ならびに滑液中の炎症性サイトカイン(例えば、TNF-α、IL-15など)のレベルの低下をもたらすと考える。
【0134】
実施例8
セリアック病の予防および治療のためのNKG2D遮断
MICはセリアック病(CD)患者における腸上皮表面で強く発現され、これは、今度は、NKG2Dを介して上皮内Tリンパ球(IEL)を共活性化し、上皮細胞標的の細胞溶解に導く(Meresse et al.,Immunity,21:357-366,2004;およびHeu et al.,Immunity,21:367-377,2004)。本発明者らは、本明細書において記載したNKG2Dを遮断する組成物および方法もまたセリアック病の予防および治療に適当であると考える。炎症性腸病(IBD)の発生に対するNKG2D遮断の効果は、例えば、以下の2つの結腸のネズミモデルのいずれかの1つのような適当な小さな動物のモデルでテストされるであろう:SCIDマウスにおけるTNB誘導(Chin et al.,Digestive Diseases and Sciences 39:513-525,1994)またはT-細胞導入モデル(Powrie et al.,Int Immunol 5:1461 et seq.,1993)。
【0135】
本明細書において引用した刊行物、特許出願および特許を含める全ての文献は、各文献が個々にかつ具体的に示されて、参照により組み入れられ、(法律によって許される最大程度まで)本明細書にその全体が記載されたのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。全ての見出しおよび小見出しは便宜のためだけに用い、断じて本発明を限定するものと解釈されるべきではない。その全ての可能な変形における前記した要素のいずれの組合せも、本明細書において別途示されるか、または文脈上明瞭に矛盾するのでない限り、本発明に含まれる。
【0136】
(特に、特許請求の範囲の文脈で)発明を記載する文脈における用語「ある」および「該」および同様な支持する対象は、本明細書において他のことが示されるか、または明瞭に文脈により矛盾するのでなければ、単数および複数を双方カバーすると解釈されるべきである。本明細書において、値の範囲の引用は、本明細書において他のことが示されるのでなければ、範囲内に入る各別々の値に個々に言及する手短な方法として働くことを単に意図し、各別個の値は、それが個々に引用されたように本明細書において一体化される。他のことが述べられるのでなければ、本明細書において提供される全ての正確な値は対応する近似的な値の代表である(例えば、特別な因子または測定に関して提供される全ての正確な例示的値は、適切であれば、「約」によって修飾される、対応する近似的な測定を提供するとも考えることができる)。本明細書において記載された全ての方法は、本明細書において別途示され、または文脈上明瞭に矛盾するのでない限り、いずれの適当な順番で行うこともできる。本明細書において提供されるいずれかおよび全ての例、または(例えば、「のような」)例示的用語は、発明をより明らかとする意図のものであり、他のことが主張されるのでなければ、本発明の範囲に対して制限を設けるものではない。明細書中の用語は、本発明の実施に必須のいずれの主張されていない要素も示すと解釈されるべきではない。本明細書において、特許処理の引用および一体化は便宜のためだけになされ、そのような特許書類の有効性、特許性および/または強制のいずれの見解も反映しない。特定の要素を「含む」、「有する」、「含める」または「含有する」のような用語を用いる本発明の局面または態様の本明細書においての記載は、他のことが述べられ、または明瞭に文脈上矛盾するのでなければ、その特定の要素「からなる」、「本質的にそれからなる」または「実質的にそれを含む」という本発明の局面または態様に対する裏付を提供することを意図する。本発明は、適用可能な法律によって許されるように本明細書において添付する特許請求の範囲に引用された主題の全ての修飾および同等体を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NKG2D媒介活性化に関連する症候群を治療または予防する方法であって、該症候群を治療または予防するのに適した条件下で、NKG2Dを発現する白血球を、細胞のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤と接触させる工程を含む方法。
【請求項2】
接触の結果、リガンド誘導NKG2D活性化が、少なくとも30%低下される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
薬剤がNKG2DとDAP10との相互作用を低下させる、請求項1および2のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
薬剤が細胞の表面のNKG2Dの量を低下させる、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、またはULBP4の一つまたは複数が細胞表面NKG2Dの量を減少させることができない条件下で、細胞表面NKG2Dの量の低下が起こる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
薬剤が、細胞表面NKG2Dが内部化される速度を増大させる、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、ULBP3、またはULBP4の一つまたは複数がNKG2D内部化の速度を増大させることができない条件下で、NKG2Dの内部化の速度の増大が起こる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
接触がNKG2D-NKG2Dリガンド複合体を通じてのシグナル伝達を低下させる、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
白血球がNKG2D+CD8+T細胞、NKG2D+CD4+T細胞、NKG2D+γδT細胞、NKG2D+NK細胞、およびマクロファージからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
接触の結果、対照に対して、NKG2D発現白血球の数が約10%未満低下する、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
薬剤が、NKG2Dに結合する抗体、またはそのNKG2D結合断片を含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
モノクローナル抗体がヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
薬剤が、NKG2Dコーディング核酸の転写または翻訳を低下させる核酸を含む、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
症候群がI型真性糖尿病である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
症候群が移植片拒絶反応である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
症候群がI型真性糖尿病でない、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
症候群が慢性関節リウマチである、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
症候群がセリアック病である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
症候群が多発性硬化症である、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
NKG2Dリガンド発現が、症候群によって侵された器官または組織の細胞で上昇する、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
条件の結果、症候群によって侵された器官または組織に浸潤するリンパ球が低下する、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
条件の結果、症候群によって侵された器官または組織におけるインターフェロンγのレベルが低下する、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
薬剤が白血球の増殖を低下させる、請求項1〜23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
症候群を有すると診断されたヒト患者を治療する工程を含む、請求項1〜24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ヒト患者においてNKG2D媒介活性化に関連する症候群を治療または予防する方法であって、NKG2D発現白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を低下させる薬剤を、該症候群を治療または予防するのに有効な量にて且つそれに適した条件化でヒト患者に投与する工程を含む方法。
【請求項27】
NKG2Dモジュレーター、および白血球のNKG2D媒介活性化に関連する症候群を治療または予防するのに適した条件下で白血球をNKG2Dモジュレーターと接触させるための説明書を含むキット。
【請求項28】
i)NKG2D+白血球をテスト薬剤と接触させる工程;および
ii)該白血球によるNKG2D発現を測定する工程
を含む、NKG2D調節剤を同定する方法。
【請求項29】
NKG2D発現の測定が、NKG2D転写、翻訳、および内部化の測定の一つまたは複数を含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
i)NKG2D+白血球をテスト剤と接触させる工程;および
ii)該白血球のリガンド誘導NKG2D活性化を測定する工程;
を含む、NKG2D調節剤を同定する方法。
【請求項31】
リガンド誘導NKG2D活性化の測定が、DAP10リン酸化、p85 PI3キナーゼ活性、Aktキナーゼ活性、IFN-γの生産、およびNKG2D+標的細胞の細胞溶解の測定の一つまたは複数を含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
NKG2D媒介活性化に関連する自己免疫疾患の治療用の医用薬剤の調製における、NKG2Dに結合し、且つNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大をそのような細胞を枯渇させることなく障害することができる抗体または抗体断片の使用。
【請求項33】
抗体または抗体断片が、細胞表面NKG2Dが内部化される速度を増大させる、請求項32記載の使用。
【請求項34】
抗体がヒトまたはヒト化抗体である、請求項32および33のいずれか一項記載の使用。
【請求項35】
自己免疫疾患が慢性関節リウマチである、請求項32〜34のいずれか一項記載の使用。
【請求項36】
自己免疫疾患が多発性硬化症である、請求項32〜34のいずれか一項記載の使用。
【請求項37】
自己免疫疾患がI型真性糖尿病でない請求項32〜34のいずれか一項記載の使用。
【請求項38】
移植片拒絶反応の治療用の医用薬剤の調製における、NKG2Dに結合し、かつNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を、そのような細胞を枯渇させることなく障害することができる抗体または抗体断片の使用。
【請求項39】
NKG2Dに特異的に結合し、NKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大を 、そのような細胞を有意に枯渇させることなく障害する能力について抗体または抗体断片をスクリーニングする工程を含む、NKG2D媒介活性化に関連する炎症状態の治療剤または予防剤を同定する方法。
【請求項40】
抗体または抗体断片が、NKG2D+T細胞またはNK細胞の表面のNKG2Dの内部化を誘導する能力についてさらにスクリーニングされる、請求項39記載の方法。
【請求項41】
抗体がヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項39または40記載の方法。
【請求項42】
細胞を有意に枯渇させることなく、NKG2Dに結合し細胞表面NKG2Dの内部化を誘導する能力について抗体または抗体断片をスクリーニングする工程を含む、NKG2D媒介活性化に関連する炎症状態の治療剤または予防剤を同定する方法。
【請求項43】
哺乳動物宿主においてNKG2D+細胞の拡大を障害する条件下で且つ障害するのに有効な量にて、NKG2Dに対して特異的であって、かつNKG2D+T細胞またはNK細胞の拡大をそのような細胞を有意に枯渇させることなく障害することができる抗体を、哺乳動物宿主に送達する工程を含む、NKG2D活性に関連する炎症状態に罹った、または該炎症状態を発症する実質的な危険性がある哺乳動物宿主においてNKG2D+細胞の拡大を障害する方法。
【請求項44】
NKG2D発現細胞においてNKG2Dの細胞内部化を刺激する条件下にて且つ刺激するのに有効な量にて、NKG2D媒介シグナル伝達経路を介して有意な活性化なしで、NKG2Dに特異的に結合し、かつNKG2Dの細胞内部化を刺激することができる抗体または抗体断片を宿主に送達する工程を含む、炎症状態および/またはNKG2D活性に関連する自己免疫疾患に罹った、またはそれらを発症する実質的な危険性がある宿主においてNKG2D発現細胞におけるNKG2Dの細胞内部化を刺激する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−79826(P2011−79826A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226316(P2010−226316)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【分割の表示】特願2007−507429(P2007−507429)の分割
【原出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】