説明

Nb3Sn超電導線材の前駆体、Nb3Sn超電導線材の前駆体の製造方法、Nb3Sn超電導線材、及び超電導マグネットシステム

【課題】優れた臨界電流と交流損失及び磁気安定性を兼備するNbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムを提供する。
【解決手段】本発明に係るNbSn超電導線材の前駆体は、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Nb基芯を囲むCu基被覆の面積比が異なるNb基単芯線が2種以上配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムに関する。特に本発明は、優れた臨界電流特性と磁気安定性とを兼備し、内部拡散法により作製されるNbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導線材が適用されている分野として、永久電流モードによる時間安定な磁場を応用した核磁気共鳴分析装置や磁気共鳴イメージング装置がある。特に核磁気共鳴装置(NMR)用のマグネットにおいては、システムの共鳴周波数の増加と高分解能化、及び小型化を図るために、高い磁場中で高い電流密度を有する超電導線材の適用が要求されている。
【0003】
ここで、内部拡散法により作製されるNbSn超電導線材が知られている。このNbSn超電導線材は、その前駆体断面においてCu(あるいはCu合金)マトリックス中にNb(あるいはNb合金)芯、Sn(あるいはSn合金)芯を配置し、熱処理によってSn芯のSnをCuマトリックスを介してNbと反応させることでNbSnを生成することにより作製される。この方法は他の製法であるブロンズ法と比較して多量のSnを配置することができるので、NbSnの生成厚さが厚く、かつ高い臨界電流密度が得られる利点がある。
【0004】
なお、ブロンズ法はCu−Sn合金とNb芯の前駆体を反応させてNbSnを生成するものであるのに対して、内部拡散法は上述の部材構成を反応させるためその前駆体にブロンズ(Cu−Sn合金)が存在しない。
【0005】
しかし、ブロンズ法と比べるとSnを配置するスペースを余分に必要とするため、結果としてNb芯を限られたスペースに配置することになり、同一面積のNb芯を配置する場合にはその間隔が自ずと狭くなる。これらが要因で、隣接するNbSn超電導フィラメントが磁気的に結合し、交流損失が大きくなることが課題であった。また、フィラメント間の磁気結合の度合いが極端に大きい場合は、超電導線材が磁気跳躍(フラックスジャンプ)を生じ、磁石システムに適用した場合に本来の臨界電流特性にまで通電できなくなる問題も生じていた。
【0006】
高い臨界電流密度を保持しながら交流損失を低減させる内部拡散法NbSn線材としては、その前駆体断面において、SnのエレメントとNbのエレメントを分散配置し、かつNbのエレメントをSnエレメントで複数の領域に分割したもの(例えば、特許文献1)が知られている。特許文献1においては、前駆体を熱処理して得られるNbSn線材の断面において、反応前にSnが存在した非超電導域でNbSn芯が密集する領域を分割し、超電導領域間の結合を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−97902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法で得られるNbSn線材は、交流損失を低減できるものの、NbエレメントとSnエレメントの配置が均一でなく局所的にSn濃度が異なるため、拡散反応で生成するNbSn芯の臨界電流性能にも分布が生じ、高い臨界電流を有するNbSn芯の占有率が必ずしも大きいものではない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、優れた臨界電流と交流損失及び磁気安定性を兼備するNbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、上記課題を解決することを目的として、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Nb基芯を囲むCu基被覆の面積比が異なるNb基単芯線が2種以上配置されているNbSn超電導線材の前駆体が提供される。
【0011】
(2)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Cu基被覆されたNb基単芯線における面積比が0.4以上のものを含むNbSn超電導線材の前駆体が提供される。
【0012】
(3)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Nb基単芯線においてそのCu基被覆の面積比が0.4以上のものが、線材断面内に放射状に配置されているNbSn超電導線材の前駆体が提供される。
【0013】
(4)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Nb基芯の中心間距離が、Nb基芯径の1.2倍以上であるNbSn超電導線材の前駆体が提供される。
【0014】
(5)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Nb基単芯線においてそのCu基被覆の面積比が0.4未満のものが、相互に隣接した領域の直径が300μm以下であるNbSn超電導線材の前駆体が提供される。
【0015】
(6)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、前記Nb基単芯線のCu基被覆の面積比が0.4未満のものが、一つのSn基単芯線の周囲に隣接して配置されたセグメントからなり、これらのセグメントが面積比0.4以上のNb基単芯線およびSn基単芯線で区切られているNbSn超電導線材の前駆体が提供される。
【0016】
(7)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、Nb基芯、及びSn基芯にCu基マトリックスを被せて各々の単芯線を作製する工程と、これら単芯線を規則的に束ねて筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内に挿入配置する工程と、該単芯線と該拡散バリアからなる集合体をCu管内部に挿入配置する工程を含むNbSn線材の前駆体の製造方法において、前記Cu基マトリックスで覆われたNb基単芯線、及びSn基単芯線の外形状が同一であり、かつ、その銅被覆率が異なるNbSn超電導線材の前駆体の製造方法が提供される。
【0017】
(8)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、Nb基芯、及びSn基芯にCu基マトリックスを被せて各々の単芯線を作製する工程と、これら単芯線を規則的に束ねて筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内に挿入配置する工程と、該単芯線と該拡散バリアからなる集合体をCu管内部に挿入配置する工程を含むNbSn線材の前駆体の製造方法において、Cu基とNb基の断面構成比が異なる2種以上のNb基単芯線を配置するNbSn超電導線材の前駆体の製造方法が提供される。
【0018】
(9)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、そのフィラメント相互の間隔が狭い領域と広い領域があり、該狭い領域が該広い領域によって複数のセグメントに分割されているNbSn超電導線材が提供される。
【0019】
(10)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、NbSnフィラメント相互の間隔が広い領域において、その間隔が0.5μm以上であるNbSn超電導線材が提供される。
【0020】
(11)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、その結晶組織及びSn濃度の分布がフィラメントの中心軸に対して軸対象であることNbSn超電導線材が提供される。
【0021】
(12)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、超電導フィラメント中心部に未反応のNb芯が残存するNbSn超電導線材が提供される。
【0022】
(13)また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記(9)〜(12)のいずれか1つに記載のNbSn超電導線材を巻線して、その両端部に永久電流スイッチを直列に接続した電気回路を含む超電導マグネットシステムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るNbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムによれば、優れた臨界電流と交流損失及び磁気安定性を兼備するNbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】NbSn超電導線材の前駆体の基本構成例を模式的に示した断面図である。
【図2】NbSn線材の前駆体におけるNb芯、及び熱処理された線材における超電導フィラメントの直径、及び間隔に関する説明図である。
【図3】NbSn超電導線材の前駆体の基本構成において、その最適条件の決定に係る磁気特性の測定結果である。
【図4】NbSn超電導線材の前駆体の基本構成において、その最適条件の決定に係る磁気特性の測定結果である。
【図5】NbSn超電導線材の前駆体の基本構成において、その最適条件の決定に係る磁気特性とNb芯間隔の関係図である。
【図6】NbSn超電導線材の基本構成において、その最適条件の決定に係る磁気特性と超電導フィラメント間隔の関係図である。
【図7】NbSn超電導線材の前駆体の他の基本構成例を模式的に示した断面図である。
【図8】NbSn超電導線材の前駆体の他の基本構成例を模式的に示した断面と、Nb芯が密集した領域の寸法形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態の概要]
本実施の形態に係るNbSn超電導線材は、内部拡散法により製造されるNbSn線材であり、このNbSn線材の断面構造において、NbSnフィラメントの占有率が高い領域をNbSnフィラメントの占有率が低い領域で分割して構成される。これにより、NbSn占有率が高い領域ではフィラメント間の磁気結合を部分的に許容して高い臨界電流密度を確保し、これらの領域の磁気結合をNbSn占有率が低い領域で分割することによって、大きな磁気結合領域が形成されることを抑制し、磁気不安定を回避できる。したがって、本実施の形態に係るNbSn超電導線材により、線材全断面にわたって優れた臨界電流密度と交流損失特性を同時に実現できる。
【0026】
具体的に、本実施の形態に係る内部拡散法によって製造されるNbSn超電導線材の前駆体は、Cu基マトリックスにより外周を被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスにより外周を被覆された複数のSn基芯とが拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体である。ここで、拡散バリアは筒状を有し、TaあるいはNbから形成される。そして、一のNb基芯と一のNb基芯の隣の他のNb基芯との中心間距離が、Nb基芯径の1.2倍以上を有して形成される。
【0027】
また、NbSn超電導線材の前駆体は、Nb基芯を囲むCu基被覆の面積比(すなわち、Cu基被覆/Nb基芯)が互いに異なるNb基単芯線が2種以上、配置して形成することもできる。そして、NbSn超電導線材の前駆体は、Cu基被覆されたNb基単芯線における面積比が0.4以上のものを含むこともできる。更に、NbSn超電導線材の前駆体は、Nb基単芯線においてそのCu基被覆の面積比が0.4以上のものが、線材断面内に放射状(すなわち、線材の中心から外周側に向かって(径方向に)直線状に並んだNb単芯線の列が、周方向に規則的に配列している状態)に配置されていてもよい。
【0028】
また、NbSn超電導線材の前駆体は、Nb基単芯線においてそのCu基被覆の面積比が0.4未満のものについて、相互に隣接した領域の直径を300μm以下にすることもできる。そして、NbSn超電導線材の前駆体においては、Nb基単芯線のCu基被覆の面積比が0.4未満のものが一つのSn基単芯線の周囲に隣接して配置されたセグメントを規定した場合、これらのセグメントが面積比0.4以上のNb基単芯線で区切ることもできる。
【0029】
そして、本実施の形態に係るNbSn超電導線材の前駆体は、以下のようにして製造することができる。まず、Nb基芯、Sn基芯、及びCu基マトリックスを準備する。次に、Nb基芯、及びSn基芯にCu基マトリックスを被せて各々の単芯線を作製する。続いて、これら単芯線を規則的に束ねて筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内に挿入配置する。次に、単芯線と拡散バリアとからなる集合体をCu管内部に挿入配置する。ここで、本実施の形態においては、Cu基マトリックスで覆われたNb基単芯線、及びSn基単芯線の外形状を同一にし、かつ、その銅被覆率を異ならせることが好ましい。
【0030】
また、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法において、Cu基とNb基との断面構成比が異なる2種以上のNb基単芯線を配置することもできる。
【0031】
更に、本実施の形態の他の形態においては、上記NbSn超電導線材の前駆体を熱処理することでNb基芯とSn基芯とを拡散反応させ、NbSn超電導線材を作製することができる。そして、NbSn超電導線材の前駆体の熱処理により形成されるNbSn超電導線材は、フィラメント相互の間隔が狭い領域(つまり、一の領域)と広い領域(つまり、一の領域より間隔が広い他の領域)とを含むことになる。本実施の形態においては、この狭い領域は、広い領域によって複数のセグメントに分割される。また、NbSn超電導線材は、NbSnフィラメント相互の間隔として、0.5μm以上の間隔を有して形成される。
【0032】
ここで、NbSn超電導線材の前駆体の熱処理により形成されるNbSn超電導線材は、その結晶組織及びSn濃度の分布がフィラメントの中心軸に対して軸対象若しくはほぼ軸対象である。また、NbSn超電導線材の前駆体の熱処理により形成されるNbSn超電導線材は、超電導フィラメントの中心部に未反応のNb芯が残存していてもよい。
【0033】
更に、本実施の形態の他の形態においては、上記NbSn超電導線材を巻線して、その両端部に永久電流スイッチを直列に接続した電気回路を構成することができる。そして、この電気回路を含み、超電導安定性に優れた磁気共鳴現象を応用した超電導マグネットシステムを構成することができる。
【0034】
以下、実施例により詳細を説明する。
【0035】
(実施例1)
図1は、NbSn超電導線材の前駆体の基本構成例を模式的に示す。具体的に図1は、実施例1に係るNbSn超電導線材の前駆体の基本構成の断面を模式的に示す(以下、断り無く「基本構成」と言った場合、図1の構成を指す。)。
【0036】
実施例1に係るNbSn超電導線材の前駆体は、Nb芯23とNb芯23を被覆するCu被覆24(厚い)とからなる複数のNb単芯線と、Sn芯25とSn芯25を被覆するCu被覆26とからなる複数のSn単芯線とを含み、予め定められた配置で配列された複数のNb単芯線及び複数のSn単芯線が拡散バリア27により被覆され、拡散バリア27の外周に接する安定化Cu28とを備えて構成される。このようなNbSn超電導線材の前駆体は以下のようにして作製した。
【0037】
まず、外径25.5mm、内径20.2mmの銅管に、外径20mmのNb棒(最終形状においてNb芯23になる)を挿入したものを減面加工し、対辺間距離が1.7mmの六角棒(以下、Nb単芯線(つまり、NbにCu被覆を施した線))を作製した。併せて、外径19.4mm、内径16.3mmの銅管に外径15.9mmのSn合金棒(最終形状においてSn芯25になる)を挿入したものを減面加工し、対辺間距離が1.7mmの六角棒(以下、Sn単芯線(つまり、SnにCu被覆を施した線))を作製した。
【0038】
次に、図1に示すように、Sn単芯線の周囲にNb単芯線を6本配置する断面構成で、Nb単芯線を72本、Sn素線を37本の合計109本を束ねて、外径25.6mm、内径21.2mmの銅管(最終形状において安定化Cu28になる)に挿入し、更に、単芯線束と銅管の間に厚さ0.2mmのTaシート(最終形状において拡散バリア27になる)を5層挿入した。組み立てた多芯線を減面加工して、線径0.5mmのNbSn前駆体を作製した。
【0039】
図2は、NbSn線材の前駆体におけるNb芯の直径、及び間隔に関する説明を示す。具体的に図2(a)は、NbSn線材の前駆体におけるNb芯の直径、及び間隔に関する説明図を示し、図2(b)は、前駆体に熱処理を施した後の断面の概要(すなわち、超電導フィラメントの寸法に関する説明図)を示す。
【0040】
まず、図2(a)を参照する。この前駆体(つまり、熱処理前の前駆体)の断面構造を測定した結果、Nb芯径が27μm、Nb芯の中心間距離(つまり、芯間隔)が34μmであった。
【0041】
続いて、得られた前駆体に210℃で100時間、400℃で50時間、700℃で150時間の熱処理を施してNbSn線材を作製した。得られたNbSn線材の断面の概要が図2(b)である。NbSn線材は、断面観察にて、反応前にSn芯があった領域(非超電導部)と超電導NbSnフィラメント、及びその外周のCu基マトリックス(非超電導部)を有していた。
【0042】
このNbSn線材の臨界電流密度を直流四端子法で測定し、0.1μV/cmの電界が発生した時の電流値を、線材の非Cu部の断面積で除することで求めた。得られたNbSn線材の臨界電流密度は12Tの磁場中において約1200A/mmであった。
【0043】
更に、NbSn線材の交流損失特性を評価するため、超電導磁束量子干渉計(SQUID)によりその磁化特性を測定した。ここでは、交流損失特性を比較するものとして、超電導フィラメントの等価直径を用いた。等価直径は超電導フィラメントの結合状態を表す指標でもある。これは、フィラメントの間隔が狭いと近接効果によって隣接するフィラメントが磁気的に結合し、等価的なフィラメント径が実際より大きくなるものである。等価フィラメント径(deff)は、次式で算出される。
【0044】
eff=(3π/2μ)・(ΔM/Jc)
【0045】
ここで、deffは等価フィラメント径であり、μは真空の透磁率でμ=4π×10−7であり、ΔMは磁化ヒステリシスであり、Jcは臨界電流密度である。
【0046】
上記の熱処理されたNbSn線材の磁場3Tにおける有効フィラメント径は約30μmで、NbSnフィラメントの直径とほぼ同等の直径であった。すなわち、隣接するNbSn超電導フィラメントは相互に磁気結合しておらず、優れた交流損失特性と磁気安定性を有することが確認された。
【0047】
(実施例2および実施例3)
次に、NbSn線材の前駆体におけるNb芯間隔の最適条件を求めるために、上記と同様の方法で、Nb単芯線を被覆するCuの厚さを変化させ、Nbに対するCu比が0.4以上の前駆体試料を作製し、NbSn生成熱処理後の磁気特性を測定評価した。なお、前駆体の製作では単芯線の仕上がり形状を同一とし、その内部のNbとCuの断面積比を調整することで、Nb芯間隔を変化させた。
(比較例1および比較例2)
同様に、Nb単芯線を被覆するCuの厚さを変化させ、Nbに対するCu比が0.4以上の前駆体試料を作製し、NbSn生成熱処理後の磁気特性を測定評価した。
【0048】
以上をまとめて、表1に実験に用いた前駆体のNb芯径と間隔を示す。Nb芯径は約25〜30μmで、その間隔を約3〜9μmの範囲で変化させた。
【0049】
【表1】

【0050】
図3及び図4はそれぞれ、NbSn超電導線材の前駆体の基本構成において、その最適条件の決定に係る磁気特性の測定結果である。
【0051】
図3を参照すると、試料1(比較例1)及び試料2(比較例2)は、外部磁場の変化に対応して磁化が一様に変化せず不安定な現象を生じることが示された。これは磁気跳躍(フラックスジャンプ)であり、超電導フィラメントの直径が大きい、あるいは細いフィラメント群が磁気的に結合して等価的に太くなった挙動を示している。また、図4を参照すると分かるように、試料3〜5(実施例1〜3)は磁気跳躍が認められず磁気的に安定であることが分かった。
【0052】
図5は、NbSn超電導線材の前駆体の基本構成(図1)を熱処理した超電導線材を熱処理した超電導線材において、その最適条件の決定に係る磁気特性(磁気結合度)とNb芯間隔の関係を示す。
【0053】
Nb芯間隔は、Nb芯の中心間距離とNb芯径の割合とした。Nb芯間隔の最適条件を求める実験の結果、Nb芯の中心間距離とNb芯径の割合が1.2以上の場合に磁気結合度が小さく、割合が1.2未満の場合では、磁気結合度が急激に大きくなり、磁気跳躍を生じることが示された。この時のNb芯の中心間距離とNb芯径の割合は、Nb芯の外周に被覆されたCu層の厚さ、あるいはCu被覆とNb芯との断面積比でも表すことができるが、面積比で示すと約0.4以上が好ましいことが分かった。すなわち、Nb芯の中心間距離とNb芯径の割合が1.2以上、あるいは、Cu被覆とNb芯の断面積比が0.4以上を確保することで、磁気結合度を小さくして交流損失も低減できる。
【0054】
ここで、超電導フィラメント間の磁気結合が小さいと、図3、4に記載の磁化曲線において、その曲線に囲まれた面積も小さくなる。一般的に交流損失は、磁化ヒステリシス損失、結合損失、渦電流損失に大別されるが、外部の磁界変化が小さい場合には磁化ヒステリシス損失が支配的である。この磁化ヒステリシス損失は、磁化曲線の閉面積と等価であるため、磁気結合度を小さくすることにより、交流損失が小さくなる。
【0055】
図6は、NbSn超電導線材の基本構成(図1)について熱処理した超電導線材において、その最適条件の決定に係る磁気特性と超電導フィラメント間隔の関係を示す。具体的に図6は、NbSn超電導フィラメントの磁気結合度と超電導フィラメントの間隔の関係を示すと共に、超電導フィラメントの等価直径と超電導フィラメント間隔の関係も併せて示す。
【0056】
超電導フィラメントの間隔は、NbSnのフィラメントの間隙に存在する非超電導部の距離とした。図2(b)を参照する。図2(b)に示すように、超電導フィラメントは、熱処理によって生成したNbSnを示し、その外径はNbSn相の外周縁とCu基マトリックス(非超電導部)との境界から定義される。この結果により、熱処理後のフィラメント間隔の絶対値が0.5μm以下になるとフィラメント間の磁気結合が大きくなり磁気不安的を生じること、また間隔が0.5μmより大きくなると、磁気結合度が小さくなることが分かった。すなわち、熱処理後の超電導フィラメントの間隔を0.5μm以上にすることで、優れた磁気安定性と交流損失特性が得られた。
【0057】
図6を参照する。超電導フィラメントの等価直径は、フィラメント径と磁気結合度の積で表せるが、その絶対値が約300μm以上になると磁気不安定を生じており、Nb芯とSn芯とを多数本配置させてNbSn線材を作製する内部拡散法においては、その等価直径は300μm以下にすることが好ましい。
【0058】
これら最適化条件の選定に用いた試料の臨界電流密度は、12Tの外部磁場において、試料1:1500A/mm、試料2:1450A/mm、試料3:1300A/mm、試料4:1150A/mm、試料5:1200A/mmであり、磁気安定に優れた試料3〜試料5は、試料1及び試料2と比較すると若干臨界電流密度が低いものの、優れた臨界電流特性を有している。
【0059】
熱処理されたNbSn超電導線材の断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察したところ、Nb芯の周囲に拡散生成したNbSn結晶層の厚さとSn含有量は、その中心軸に対してほぼ軸対象に均質に分布していた。これは、Nb単芯線とSn単芯線を線材断面内にほぼ均等に配置できる本実施例を用いることにより、Nb芯のCu被覆厚さが若干異なるものの、拡散反応時にNb芯へ供給できるSn量が線材断面内において均質とすることができたためである。その結果として優れた臨界電流密度を有する超電導フィラメントの占有率を大きくすることができた。
【0060】
また、本実施例に係るNbSn線材の前駆体を熱処理する条件を適切に選定することにより、Nb芯の周囲に生成するNbSn層の厚さを制御することができるため、熱処理の終了時点で未反応のNb芯を残留させることにより機械的に脆弱なNbSn超電導フィラメントの内部に延性を有するNbの配置させた構造とすることも可能である。
【0061】
本実施例に係るNbSn線材の前駆体を構成する単芯線は、Nb基単芯線、Sn基単芯線共に同一の断面形状であるため、配置レイアウトの変更が容易であり、かつ減面加工性に優れている。また、本実施例に係るNbSn線材の前駆体を構成するNb基芯の組成は、NbのみならずTaを添加したNb−Ta等の合金、Sn基芯の組成はSnのみならず、TiやGeを添加したSn合金を用いてもその効果を発揮することができる。
【0062】
また、本実施例に係るNbSn線材の前駆体を構成するNb基芯の組成は、NbのみならずTaを添加したNb−Ta等の合金を用いることで減面加工性が向上し、最終形状にまで加工した前駆体の断面における単芯配置の規則性が保持されやすくなる。またSn基芯の組成はSnのみならず、TiやGeを添加したSn合金を用いることで、熱処理されたNbSn線材の臨界電流特性を改善することができる。
【0063】
(実施例4)
図7は、実施例4に係るNbSn超電導線材の断面の概要を示す。具体的に図7は、NbSn超電導線材の前駆体の他の基本構成例を模式的に示す。
【0064】
実施例2に係るNbSn超電導線材はNb芯23とNb芯23を被覆するCu被覆24(厚い)とからなる複数の第1のNb線材と、Sn芯25とSn芯25を被覆するCu被覆26とからなる複数のSn線材と、Nb芯21とNb芯21を被覆するCu被膜22(薄い)とからなる複数の第2のNb線材とを含み、所定の配置で配列された複数の第1のNb線材、複数のSn線材、及び複数の第2のNb線材が拡散バリア27により被覆され、拡散バリア27の外周に接する安定化Cu28とを備えて構成される。ここで、Cu被覆22の厚さはCu被覆24の厚さより薄く構成される。
【0065】
また、実施例4に係るNbSn超電導線材においては、Nb基単芯線において、そのCu基被覆の面積比(Cu基被覆/Nb基芯)が0.4以上のものが線材断面内に放射状に配置されている。つまり、図7に示すように、被覆Cuの厚いNb単芯線とSn単芯線とが並んでいるが、Sn芯は熱処理後の最終形態で超電導フィラメントとならず磁気結合に悪影響を及ぼさないため、断面内の規則的な配列を極力乱さないよう、線材の中心から外周側に向かって(径方向に)直線状に並んだNb単芯線の列を、周方向に規則的に配列させた。
【0066】
実施例4に係るNbSn超電導線材は以下のようにして作製した。
【0067】
まず、外径25.5mm、内径20.2mmの銅管に、外径20mmのNb棒(最終形状においてNb芯23になる)を挿入したものを減面加工し、対辺間距離が1.7mmの六角棒(以下、Cu被覆の厚いNb単芯線)とした。これと同様に、外径22.5mm、内径20.2mmの銅管に、外径20mmのNb棒(最終形状においてNb芯21になる)を挿入したものを減面加工し、対辺間距離が1.7mmの六角部(以下、Cu被覆の薄いNb単芯線)を作製した。併せて、外形19.4mm、内径16.3mmの銅管に外径15.9mmのSn合金棒(最終形状においてSn芯25になる)を挿入したものを減面加工し、対辺間距離が1.7mmの六角棒(以下、Sn単芯線)とした。
【0068】
その後、図7に示すような断面構成で、Cu被覆の厚いNb線を18本、Cu被覆の薄いNb単芯線を54本、Sn素線を37本の合計109本を束ねて、外径25.6mm、内径21.2mmの銅管(最終形状において安定化Cu28になる)に挿入し、更に、単芯線束と銅管の間に厚さ0.2mmのTaシート(最終形状において拡散バリア27になる)を5層挿入した。組み立てた多芯線を減面加工して、線径0.5mmのNbSn前駆体を作製した。この前駆体の断面構造を評価した結果、Cu被覆の厚いNb単芯線のCu被覆とNb芯の断面積比が0.6、Cu被覆の薄いNb単芯線の同断面積比が0.3であった。
【0069】
得られた前駆体に210℃で100時間、400℃で50時間、700℃で150時間の熱処理を施して、NbSn線材とした。なお、厚いCu被覆24のNb単芯線(Cu/Nbの断面積比0.4以上)の領域は、中心間距離が芯径の1.2倍以上であった。この前駆体の断面構造を評価した結果、上述のごとくCu被覆の厚いNb単芯線のCu被覆とNb芯の断面積比が0.6、Cu被覆の薄いNb単芯線の同断面積比が0.3であった。また、これらCu被覆の厚さが異なるNb単芯線の断面形状を、その中心間距離と芯径の比率に換算すると、Cu被覆の厚い単芯線が1.26、薄い単芯線が1.14であった。
【0070】
このNbSn超電導線材の特性を評価した結果、有効フィラメント径が100μmで、12Tの磁場中での臨界電流密度が1350A/mmであり、優れた臨界電流密度と交流損失、磁気安定性を兼備していた。この線材の磁気特性を±5Tの磁場領域で測定した場合においても磁気跳躍(磁気不安定)を生じることもなく、臨界電流測定においてもその通電特性は安定したものであった。
【0071】
(実施例5)
図8は、実施例5に係るNbSn超電導線材の断面の概要を示す。具体的に図8は、NbSn超電導線材の前駆体の他の基本構成例を模式的に示した断面と、Nb芯が密集した領域の寸法形状を示す。
【0072】
上述の実施例と同様に2種のNb単芯線、及びSn単芯線を作製し、図8に示すような単芯線の配置で線径0.5mmのNbSn線材の前駆体を作製した。図に示すようにCu被覆の薄いNb単芯線が六方最密構造に配置されており、これらCu被覆の薄いNb単芯線が隣接した領域(つまり、セグメント)が、Cu被覆の厚いNb単芯線で区切られている。ここで、Cu被覆の薄いNb単芯線からなるセグメント、すなわち、Nb芯が隣接した領域の直径は図8中の補助図に示すようなハニカム形状で表される。
【0073】
得られた前駆体に210℃で100時間、400℃で50時間、700℃で150時間の熱処理を施して、NbSn線材とした。そのNbSn超電導線材の特性を評価した結果、有効フィラメント径が70μm、12Tの磁場中での臨界電流密度が1380A/mmであり、優れた臨界電流密度と交流損失、磁気安定性を兼備していた。この線材の磁気特性を±5Tの磁場領域で測定した場合においても磁気跳躍(磁気不安定)を生じることもなく、臨界電流測定においてもその通電特性は安定したものであった。
【0074】
Nb芯が隣接した領域においては、NbSn生成熱処理後に超電導フィラメントが磁気的に結合していたが、その有効フィラメント径は前記のセグメントの直径とほぼ同等なものであった。また、実施例5におけるCu被覆の薄いNb単芯線からなるセグメント、すなわち、Nb芯が隣接した領域の直径を変化させた線材を作製し、その有効フィラメント径と磁気安定性を評価した結果、図6で得られた結果と同様に、有効フィラメント径が300μm以下、すなわち、セグメントの直径が300μm以下であれば、磁気不安定を生じないことが明らかとなった。これらの結果より、超電導フィラメント単独のみならず、これらフィラメントが磁気的に結合した場合の両方においても、その磁気的な挙動を示す有効フィラメント径を300μmの閾値以下にすれば磁気安定となることが分かる。(なお、セグメントの直径は、図8を参照のこと)。
【0075】
上述の実施例および比較例で得られた熱処理前の前駆体の断面構造と熱処理後の超電導特性の結果一覧を表2に示す。これらを比較することにより、銅被覆率が異なる2種のNb単芯線を組み合わせることで、優れた臨界電流特性と磁気安定性を兼備する線材を実現することが確認できた。
【0076】
【表2】

【0077】
上述の実施例で得られた熱処理後の線材の断面構成と超電導特性の結果一覧を表3に示す。各実施例を比較することにより、銅被覆率が異なる2種のNb単芯線を組み合わせることで、優れた臨界電流特性と磁気安定性を兼備する線材を実現することが確認できた。
【0078】
なお、Cu/Nb比については、良好な磁気安定性を得るためには、いずれの構成もCu/Nbが0.4以上であることが好ましい。これは、図5に示すごとく、磁気安定性に及ぼすNb芯間隔/Nb芯径、即ちNb芯に被覆されたCuの断面積比の影響は、遷移領域を有している。Cu/Nb断面積比が0.3の場合が磁気不安定であり、同断面積比が0.5の場合は磁気安定な結果が得られたことより、同値が0.4付近が閾値であると結論付けられた。
一方、上限値については、Cu/Nbが0.6以上であると、その特性に違いがなくなる(飽和する)。また、コストの面から、または、等価フィラメント径が小さくなるという理由から、Cu/Nbが0.6以上とする理由はない。
【0079】
(実施例10)
上述の実施例10で得られたNbSnの前駆体を用いて、巻きボビンの形状が内径φ100mm、外径φ150mm、軸長100mmのソレノイドコイルを製作した。巻線した線材の両端部は、安定化Cuと拡散バリアを除去し、各々の端部を接近させた状態で固定し、コイルとその線材端部を熱処理した。熱処理は、210℃で100時間、400℃で50時間、650℃で100時間で、NbSnフィラメントの中央部に未反応のNb芯が残留する条件とした。その後、熱処理された線材端部のCu被覆を化学除去して内部の超電導フィラメントを露出させ、永久電流スイッチを直列にPbBi超電導合金で半田付けすることで、永久電流運転が可能な超電導コイルとした。
【0080】
なお、未反応のNb芯を残す目的は、脆弱なNbSn化合物の内部に延性のあるNbを残すことで機械特性を改善することができるからである。これにより、熱処理後のコイル口出し線を超電導接続する際、安定化銅を除去して内部のNbSbフィラメントを露出させる場合において、この作業時におけるフィラメントの破損を低減できる。
【0081】
このコイルを励磁したところ、NbSn線材の臨界電流まで安定に通電でき、励磁過程で磁気跳躍等の磁気不安定が生じることがなかった。この超電導コイルを永久電流モードとして、その磁場減衰を測定したところ、減衰率は1ppm/hであり、核磁気共鳴分析装置や磁気共鳴イメージング装置等の超電導マグネットに適用できる優れた性能を有することが確認できた。
【0082】
(効果)
実施例に係るNbSn線材の断面構造において、NbSnフィラメントの占有率が高い領域を非超電導域で分割するのではなく、占有率が低い領域で分割するようにしたので、高い臨界電流密度と優れた磁気特性を兼備するNbSn超電導線材の前駆体、NbSn超電導線材の前駆体の製造方法、NbSn超電導線材、及び超電導マグネットシステムを実現することができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0084】
21 Nb芯
22 Cu被覆(薄い)
23 Nb芯
24 Cu被覆(厚い)
25 Sn芯
26 Cu被覆
27 拡散バリア
28 安定化Cu

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、
前記Nb基芯を囲むCu基被覆の面積比が異なるNb基単芯線が2種以上配置されているNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項2】
前記Cu基被覆されたNb基単芯線におけるCu/Nb面積比が0.4以上のものを含む請求項1に記載のNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項3】
前記Nb基単芯線においてそのCu基被覆のCu/Nb面積比が0.4以上のものが、線材断面内に放射状に配置されている請求項2に記載のNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項4】
内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、
前記Cu基被覆されたNb基単芯線におけるCu/Nb面積比が0.4以上のものを含むNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項5】
内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、
前記Nb基芯の中心間距離が、Nb基芯径の1.2倍以上であるNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項6】
内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、
前記Nb基単芯線においてそのCu基被覆のCu/Nb面積比が0.4未満のものが、相互に隣接した領域の直径が300μm以下であるNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項7】
内部拡散法によって製造するNbSn線材の前駆体であって、Cu基マトリックスが被覆された複数のNb基芯とCu基マトリックスが被覆された複数のSn基芯が、筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内部に規則的に配置された前駆体において、
前記Nb基単芯線のCu基被覆のCu/Nb面積比が0.4未満のものが、一つのSn基単芯線の周囲に隣接して配置されたセグメントからなり、これらのセグメントが面積比0.4以上のNb基単芯線およびSn基単芯線で区切られているNbSn超電導線材の前駆体。
【請求項8】
Nb基芯、及びSn基芯にCu基マトリックスを被せて各々の単芯線を作製する工程と、これら単芯線を規則的に束ねて筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内に挿入配置する工程と、該単芯線と該拡散バリアからなる集合体をCu管内部に挿入配置する工程を含むNbSn線材の前駆体の製造方法において、
前記Cu基マトリックスで覆われたNb基単芯線、及びSn基単芯線の外形状が同一であり、かつ、その銅被覆率が異なるNbSn超電導線材の前駆体の製造方法。
【請求項9】
Nb基芯、及びSn基芯にCu基マトリックスを被せて各々の単芯線を作製する工程と、これら単芯線を規則的に束ねて筒状のTaあるいはNbの拡散バリア内に挿入配置する工程と、該単芯線と該拡散バリアからなる集合体をCu管内部に挿入配置する工程を含むNbSn線材の前駆体の製造方法において、
Cu基とNb基の断面構成比が異なる2種以上のNb基単芯線を配置するNbSn超電導線材の前駆体の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、
そのフィラメント相互の間隔が狭い領域と広い領域があり、該狭い領域が該広い領域によって複数のセグメントに分割されているNbSn超電導線材。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、
NbSnフィラメント相互の間隔が広い領域において、その間隔が0.5μm以上であるNbSn超電導線材。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、
その結晶組織及びSn濃度の分布がフィラメントの中心軸に対して軸対象であることNbSn超電導線材。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のNbSn超電導線材の前駆体を熱処理することで、Nb基芯とSn基芯を拡散反応させて作製するNbSn超電導線材において、
超電導フィラメント中心部に未反応のNb芯が残存するNbSn超電導線材。
【請求項14】
請求項9〜13のいずれか1項に記載のNbSn超電導線材を巻線して、その両端部に永久電流スイッチを直列に接続した電気回路を含む超電導マグネットシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−129005(P2012−129005A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277878(P2010−277878)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】