説明

PCLを含む微粒子及びその使用

本発明は、PCLを含む微粒子を調製するための方法、前記方法によって得られる微粒子、こうして得られたゲル、並びに皮膚の奇形又は傷跡を治療するための、及び/又は膀胱機能を制御するための、及び/又は胃逆流を制御するための、及び/又は勃起機能不全を治療するための、及び/又は声帯を治療するための薬剤を調製するためなどの、ゲルのいくつかの使用に関する。ゲルは、化粧上の応用にも使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(ε−カプロラクトン)又はポリカプロラクトン(PCL)を含む微粒子を調製するための方法、該微粒子、生分解性注射可能ゲル、及び該ゲルのいくつかの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢と共に及び/又はいくつかの疾患の結果として、筋肉及び脂肪をはじめとする身体の軟部組織は、減少し、容貌に影響を及ぼし且つ/又は機能を低下させることがある。例えば、膀胱機能及び胃逆流の制御など、身体の多くの自律機能を制御する括約筋は、年齢又は疾患に伴って減少する。注射可能なウシコラーゲンなどのいくつかの医療用フィラーが、既に開発されている。このフィラーは、アレルギーの危険及びクロイツフェルトヤコブ病によって高められた脅威に主として関連するいくつかの欠点を有する。注射可能なウシコラーゲンの代替物として、他のフィラー、例えば、乳酸及び/又はグリコール酸の反復単位を含むポリマー粒子の粒子懸濁液又は乳液を含むインプラントなどが開発されている(米国特許出願公開第2003/093157号又は国際公開第98/56431号)。
【0003】
しかし、これらの各特許出願中で開示されているようなフィラーは、いくつかの欠点を有し:このようなフィラーを含むゲルの混合及び流動特性(すなわち、流動注射可能性)は、最終製品を構成するのに最適ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、人体中で望ましくない反応をまったく引き起こさず、注射された場合に、凝集、注射針の詰まり、及び小結節形成を回避する本質的に球状の微小球であるため、流動特性などの優れた特性を有する、徐々に再吸収される医療用又は化粧用生分解性インプラントがなお求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、流動特性などの優れた特性を有する微小球を、比較的高い粘度を有し且つ可溶化されたPCL及び界面活性剤を含む当初の混合物を使用する、効率的で迅速な方法で得ることができることを見出した。この方法の各特徴を、ここで広範囲に詳述する。
【0006】
方法
第1の態様において、本発明は、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)含有微粒子を調製するための方法に関し、この方法は、
a1)PCLポリマーを可溶化し、続いて可溶化されたPCLポリマーを、界面活性剤を含み、約1〜約400,000cPの範囲にある粘度を有する液体と混合するステップ、
b)ステップa1)で得られた溶液からPCLを含む微粒子を形成するステップ
を含む。
【0007】
第2の態様において、本発明は、ポリカプロラクトン(PCL)含有微粒子を調製するための方法に関し、この方法は、
a2)PCLポリマーをジクロロメタン(DCM)及び/又は実質的に純粋なTween中で可溶化するステップ、
b)ステップa2)で得られた溶液からPCLを含む微粒子を形成するステップ
を含む。
【0008】
好ましい一実施形態において、ある方法が、上で規定した双方の態様による本発明に包含される。これは、ステップa)において、PCLポリマーをDCM及び/又は実質的に純粋なTween中で可溶化し、続いて該可溶化されたPCLポリマーを、界面活性剤を含み、約1〜約400,000cPの範囲にある粘度を有する液体と混合する方法である。続いてステップb)として、a)で得られた溶液からPCL含有微粒子を形成する。
【0009】
ステップa)
本発明の方法の第1ステップa)は、可溶化ステップを含むか、可溶化ステップからなるか、又は可溶化ステップである。
【0010】
ステップa2)
本発明の方法の第1ステップは、可溶化ステップからなるか、又は可溶化ステップであり:PCLポリマーを、ジクロロメタン(DCM)及び/又は実質的に純粋なTween中で可溶化する。したがって、後に本明細書中で規定するような微粒子を含むゲルに対して意図された応用に応じて、本発明者らは、実質的に純粋なTweenを使用することが、低分子量から中分子量の微粒子を調製する場合に、有機溶媒が存在しないので、特に魅力的であることを見出した。好ましくは、低分子量から中分子量とは、約1,000〜約50,000Mn(数平均分子量)、より好ましくは約1,000〜約40,000Mn、より好ましくは約5,000〜約40,000Mn、より好ましくは約1,000〜約30,000Mn、より好ましくは約10,000〜約30,000Mn、より好ましくは約20,000〜約30,000Mn、最も好ましくは約1,000〜約30,000Mnの範囲にある分子量を意味する。したがって、本発明のこの第2の方法において、3つの好ましい方法が提供され:その1つは、DCMを使用し、低分子量から中分子量、又は中分子量から高分子量を有する微粒子を提供するのに適している。好ましくは、中分子量から高分子量とは、約30,000〜約500,000Mn、より好ましくは約40,000〜約150,000Mn、さらにより好ましくは約40,000〜約100,000Mnの範囲にある分子量を意味する。もう1つの好ましい方法は、実質的に純粋なTweenを使用し、該方法は、低分子量から中分子量を有する微粒子を得るのに適している。最後に、第3の方法は、DCMと実質的に純粋なTweenとの組合せを使用する。
【0011】
実質的に純粋なTweenとは、好ましくは、少なくとも80%のTween、又は少なくとも90%のTween、又はほぼ100%のTweenを意味する。Tweenは、ポリオキシエチレンソルビタンのエステルである界面活性剤のファミリーである。Tween20、40、60又は80を使用できる。ステップa2)で実質的に純粋なTweenを使用する場合、その可溶化ステップは、好ましくは、PCLの溶融温度に近い温度又はそれを超える温度で実施される。この温度は、ほぼ、PCLの溶融温度である。好ましくは、この温度は、約50〜約90℃、又は約60〜約90℃の範囲にある。より好ましくは、この温度は約60℃又は約80℃である。
【0012】
ステップa2)でDCMを使用したなら、続いて、a2)で得られた溶液を界面活性剤を含む液体に添加して、微粒子を含む液体を得る。界面活性剤又は張力作用剤(tensoactive agent)は、溶液の表面張力を低下させ、安定な小粒子の形成を可能にする化学物質である。界面活性剤は、微粒子形成中にそれらの微粒子を安定化する。適切な界面活性剤には、限定はされないが、メチルセルロース(MC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタン又はPluronics(商標)、好ましくはモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、又はモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)が含まれ、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80(商標))、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween60(商標))、及びモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween20(商標))が好ましく、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80(商標))がより好ましい。
【0013】
好ましい実施形態において、界面活性剤は、欧州特許出願公開第1872803号又は米国特許出願公開第2003/0157187号に記載されているポリビニルアルコール(PVA)などの限定された生体適合性を有する界面活性剤ではない。最も好ましい界面活性剤は、中でも、その生体適合性のためMCである。したがって、DCM及び続いて界面活性剤としてMCを使用する方法は、DCM及び続いて界面活性剤としてPVAを使用する方法に比べてより効率的であると予想され;その生体適合性のため、形成された微粒子を工程の最後で界面活性剤を除去するために徹底的に洗浄する必要がない。
【0014】
液体、好ましくは界面活性剤を含む液体又はゲル状液体は、好ましくは、約1〜約400,000cP、約10〜約100,000cP、約50〜約100,000cP、約75〜約50,000cP、約100〜約50,000cP、約100〜約1,000cP、又は約75〜約1,000cPの範囲にある粘度を有する液体と規定される。最も好ましくは、該粘度は、約75〜約300cPである。粘度は、好ましくは、室温で、又はPCLを可溶化する温度で測定される。好ましい実施形態において、ある濃度の界面活性剤、より好ましくは約0.01〜約5.0w/w%のMCが添加され、より好ましくは約0.1〜約5.0w/w%のMCが添加され、より好ましくは約0.5〜約2.5w/w%のMCが添加され、最も好ましくは約1.0w/w%のMCが添加される。異なる分子量:Mn=14,000、Mn=41,000、Mn=63,000又はMn=88,000を有するいくつかの種類のMCが、市販されている。好ましくは、Mn=63,000の分子量を有するMCが使用される。
【0015】
好ましい実施形態において、好ましくは約1.0w/w%のMC(Mn=63,000)が使用される。このような高濃度のMCを使用することは、その方法の効率及び形成される微粒子の特性のために魅力的であり:当初のMC溶液の粘度は高い(100〜120cP)。本発明者らは、驚くべきことに、大量の濃厚なDCM中のPCL溶液を粘性のあるMC溶液へかなり迅速(1分未満)に添加することができ、結果として、得られる混合物の粘度もかなり高いことを見出した。得られる混合物の粘度は、MC溶液のそれとほぼ同じである。激しい撹拌は、後に本明細書中で確認されるように、実質的に球状である微粒子の形成につながる。DCM中のPCL濃度は、後に本明細書中で規定される。さらに、蒸発によるDCMの除去は、はるかに少ないMCを使用する通常の抽出蒸発法(Iooss Pら(2001)、22:2785〜2794)に比べてより迅速(1〜3時間内)に行われ得る。
【0016】
ステップa1)
本発明の方法の第1ステップは、可溶化ステップを含む。ステップa1)に示す可溶化ステップは、好ましくは、ステップa2)に記載したように実施される。しかし、他の液体、溶媒又は界面活性剤を使用してPCLポリマーを可溶化できる。例には、脂肪族化合物、芳香族化合物、ハロゲン含有化合物、クロロホルム、ハロゲン非含有化合物、アセトン、THF、トルエン、酢酸エチル、又は乳酸エチルなどが含まれる。
【0017】
続いて、可溶化されたPCLポリマーを、界面活性剤を含み、約1〜約400,000cP又は約10〜約100,000cPの範囲にある粘度を有する液体と混合する。粘度は、好ましくは、約10〜約30,000cP、好ましくは約15〜約20,000cP、より好ましくは約20〜約10,000cP、さらにより好ましくは約40〜約5,000cP、さらにより好ましくは約50〜約2,000cP、さらにより好ましくは約75〜約2,000cP、さらにより好ましくは約75〜約1,000cP、さらにより好ましくは約100〜約1,000cP、さらにより好ましくは約75〜約500cP、又はさらにより好ましくは約75〜約400cP、最も好ましくは約75〜約300cPの範囲にある。粘度は、好ましくは、室温、又はPCLを可溶化する温度で測定される。
【0018】
ステップa1)で使用される界面活性剤は、好ましくは、ステップa2)で使用されるものと同一である。このような界面活性剤は、前に本明細書中で明らかにしている。好ましい界面活性剤には、中でも、その生体適合性のためMCが含まれる。MCの好ましい濃度及び種類は、前に本明細書中で規定している。最も好ましくは、約1.0w/w%のMC(Mn=63,000cP)が使用される。このような高濃度のMCを使用すると、後に本明細書中で規定するような方法の効率性及び形成される微粒子の特性のため魅力的である粘性溶液が得られる。好ましくは、何らかの理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、重要なのは、ステップa1)で使用される液体の粘度及び/又はステップa1)の最後に形成される溶液の粘度であると考える。これらの粘度のどれか又は双方は、ステップb)を促進するほど、及び後に本明細書中で規定するような高度に均一な微粒子の高収率での形成を可能にするほど十分に高いことが好ましい。実施例中で例示されるように、約38〜75μmの範囲の直径を有する粒子を、かなり有利であるほぼ60〜80%の収率で得ることができる。このような直径を有する粒子を、ほぼ70〜80%の収率で得ることさえできる。液体及び得られる溶液の好ましい粘度は、双方とも本明細書中で規定される。
【0019】
ステップb)
続いて、PCL含有微粒子は、a1)又はa2)で得られた溶液又は混合物から形成される。中でも、ステップa1)又はa2)中で使用される溶媒の正体(中でも、DCM及び/又はTween)に応じて、別個のステップを、下記で説明するように実施する。ステップa1)又はa2)でDCMを使用するなら、DCMを、粘性液体中に分散されたPCL含有微粒子から抽出蒸発によって抽出する。抽出蒸発法は、蒸発抽出法としても周知であり、当業者に周知であり、例えば、Journal of Controlled Release中に記載されている(「生分解性微小球及びマイクロカプセルの調製(Preparation of biodegradable microspheres and microcapsules)」Journal of Controlled Release、(1991)、volume 17:1〜22)。本明細書中で規定されるような混合物の高粘度ゆえに、激しく撹拌しなければならない可能性がある(実施例中で例示するようにほぼ1,000rpm)。なんらかの理論によって拘束されるものではないが、本発明者らは、激しい撹拌により、混合物中に空気が組み込まれ、泡を作り出すことが可能になり、そのことが、抽出/蒸発法を促進すると考えられると予想する。加えて、抽出/蒸発法は、比較的少量のDCM(すなわち、後に本明細書中で規定するような高いPCL/DCM比)を、抽出/蒸発させればよいという事実によって促進される。前記方法は、ほぼ3時間継続するが、一方、はるかに低い粘度(実施例参照)を有する混合物を使用する通常の抽出/蒸発法は、14時間を超えてはるかに長く継続すると予想される。抽出蒸発中に、PCL含有微粒子中に含まれるDCMのかなりの部分乃至殆どは、水中に抽出され、表面で蒸発する。
【0020】
ステップa1)又はa2)でTweenを単独の溶媒として加熱して使用するなら、制御された冷却及び撹拌条件の結果として、微粒子が形成される。最終温度は、一般に室温である。混合物を、80℃まで加熱できる。撹拌は、約500rmpでよい。制御された冷却は、1〜12時間継続できる。
【0021】
本発明の工程の最終時点で、DCM及び/又は実質的に純粋なTweenを実質的に含まない微粒子が得られる。実質的に含まないとは、好ましくは、当初のDCM又は実質的に純粋なTweenの70wt%未満、より好ましくは60wt%、50wt%、40wt%、30wt%、20wt%、10wt%、5wt%、2wt%、1wt%、0.5wt%、0.3wt%、0.2wt%未満、又はさらには0.1wt%未満がなお存在することを意味する。一実施形態において、DCM及び/又はTweenは、形成された微粒子中で検出できない。DCM又はTweenは、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して検出できる。微粒子は、PCLポリマーを含むか、或いはPCLポリマーからなる。工程の最終時点で、微粒子を、任意選択で、水中で1回又は数回洗浄してDCM及び/又は実質的に純粋なTweenを除去することができる。
【0022】
本発明の方法で溶媒としてDCM及びTweenを組み合わせるなら、この方法は、DCMが単独の溶媒として存在する場合と同じであるのが好ましい。
【0023】
本発明の状況で、PCLポリマーは、ポリ−ε−カプロラクトン又はポリカプロラクトンを含むポリマーを意味する。PCLは、生分解性で、免疫学的に不活性で、生体適合性で、且つ生体吸収性の合成ポリマーである。本発明で使用するためのPCLポリマーは、市販されているか、或いは当業者に周知の方法で製造できる。好ましくは、生物医学又は化粧上の応用で使用するのに適した精製PCLポリマーが採用される。ポリマーは、モノマーと呼ばれる低分子量の反復単位から構成される分子である。モノマーを連結してポリマーを製造する方法は重合と呼ばれる。
【0024】
本発明の状況で、ポリマーには、線状ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、ターポリマー、又は異なる種類のホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー若しくはターポリマーのブレンドをはじめとする、当業者に周知のすべての可能な意味を付与できる。さらなる好ましい方法において、ε−カプロラクトン(CL)のコポリマーが、ステップa1)又はa2)で使用される。CLの好ましいコポリマーは、CLと、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、TMC(炭酸トリメチレン)、PEO(ポリエチレンオキシド)、グリコリド、及びDO(ジオキサノン)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物とのコポリマーである。ステップa2)で実質的に純粋なTweenを単独の溶媒として使用する方法において、CLのコポリマー(コポリマー、ブロックコポリマー)を使用する場合、PCLの溶融温度は、CLコポリマーが溶融する温度を意味すると解釈される。
【0025】
好ましい方法では、ステップa1)又はa2)でPCLのターポリマーが使用される。PCLの好ましいターポリマーは、CLと、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、TMC、PEO、グリコリド、及びDOからなるリストから選択される1種の化合物とのコポリマーである。ステップa2)で実質的に純粋なTweenを単独の溶媒として使用する方法において、PCLのターポリマーを使用する場合、PCLの溶融温度は、PCLターポリマーが溶融する温度を意味すると解釈される。
【0026】
別法として、PCLのターポリマーは、PCLと、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、TMC、PEO、グリコリド、及びDOからなる群から選択される2種の化合物とのポリマーである。上記に加え、ホモ−/コ−/ブロックコ−/ター−ポリマーと、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、meso−ラクチド、TMC、PEO、グリコリド、及びDOからなる群から選択される成分とのブレンドである。他のCLコポリマー又はブレンドは、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、コポリオキサレート、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ無水物、pbt/peoコポリマー(PolyActive(商標))、及びポリホスファジンを含むことができる。
【0027】
別の好ましい方法では、PCLホモポリマーが使用される。PCLホモポリマーは、それが半結晶性であるので、有利である。したがって、それは安定な形態である。加えて、それは、疎水性物質であり、それゆえ、皮膚用フィラーとして使用した場合、非半結晶性の生体再吸収性ポリマーの対応する再吸収時間に比べてより長い再吸収時間を有する可能性がある。より好ましくは、グリコリド、ジオキサノン、炭酸トリメチレン、ラクチド、及びこれらの組合せからなる群から選択される第2モノマーを含まないPCLポリマーが、使用される。
【0028】
加えて、本発明の別の好ましい実施形態として、本明細書中で使用されるようなPCLポリマーを、別のポリマーで置き換える。このような他のポリマーは、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、meso−ラクチド、TMC、グリコリド、又はジオキサノンをベースにしたポリマーでよい。
【0029】
すべて本明細書中で開示されるポリマー、得られる微粒子、及び得られるゲルの特性は、意図した応用分野に応じて広範に異なり、一般には決定的なものではない。注射可能な応用分野の場合、PCLを含む微粒子は、適切な大きさのシリンジを介する注射に適しているべきである。
【0030】
好ましい実施形態において、PCLポリマーは、重量基準でDCM及び/又は実質的に純粋なTween中に、DCM(単独の溶媒として、又はTweenと組み合わせた)の約10%まで、DCMの約30%まで(単独の溶媒として又はTweenと組み合わせた)、或いはTweenを単独の溶媒として使用するなら実質的に純粋なTween中に約50%までである濃度で、添加され、溶解される。より好ましくは、PCLポリマーは、DCM中に、約25%まで、又は25%までである濃度で添加され、溶解される。この割合は、主として使用するPCLの分子量によって決まる。
【0031】
より好ましい実施形態において、PCL/DCM溶液の粘度は、ほぼ5〜5,000cP(室温で測定して)の範囲でよい。この粘度は、主としてPCLの分子量、並びに使用するPCL及びDCMの濃度によって決まる。比率PCL/DCM(w/w)は、ほぼ、10g(PCL)/100g(DCM)中〜20g(PCL)/100g(PCL)中の範囲でよい。この比率は、従来技術で以前に使用されていた比率と比較して、高く設定される。
【0032】
本明細書中で規定されるような高いPCL/DCM比率を使用することは、できるだけ少ないDCMが存在するので、有利である。したがって、本発明の微粒子を得るためのDCMの蒸発工程は、本発明よりも多くのDCMを使用する通常の工程に比べてより迅速であると予想される。
【0033】
粒子の大きさ及び分布は、使用する界面活性剤(MCが好ましい)、PCLポリマー(ホモポリマーが好ましい)の本体、PCL/溶媒(DCM及び/又は実質的に純粋なTween)比(好ましい比率が付与される)によって、及び処理条件によって影響されると思われる。
【0034】
微粒子
さらなる態様において、本発明は、前の節で略述したような第1及び/又は第2態様の方法で得ることのできる微粒子を提供する。
【0035】
これらの微粒子は、それらが、下記に示すような所望の特性を有するなら、それ自体前述のような方法を使用して得られない。本発明の方法は、これらの微粒子を得るための1つの好ましい方法である。好ましくは、本発明の微粒子は、次の特性の少なくとも1つを有する:
i)5〜200μm、より好ましくは20〜150μm、さらにより好ましくは30〜90μm、さらにより好ましくは25〜75μm、さらにより好ましくは38〜75μm、さらにより好ましくは25〜50μmの範囲にある直径分布、
ii)均一な密度、形状、及び内容物(例として図1を参照されたい):球形状及び表面の滑らかさ、
iii)本質的に球形の微小球。
【0036】
本発明の微小球の均一特性(特徴i)、ii)、及び/又はiii))は、それから誘導されるゲルに対して最適な流動特性を付与するので、極めて魅力的であり(次の節で示すように):本発明者らは、シリンジで注射する場合に、シリンジ中での凝集がなく、注射針の詰まりがないと予想する。この均一特性は、インプラントとして使用される既知のゲルに対する改善を意味する。例えば、本発明の微粒子は、好ましくは界面活性剤を含み、ステップa1)において約1〜約400,000cPの範囲である粘度を有する液体を使用するため、及び/又は好ましくは界面活性剤としてMC、より好ましくは1%のMC、さらにより好ましくは1%のMC(Mn=63,000)を使用するため、及び/又は好ましくは本明細書中で規定するようなより高比率のPCL/DCMを使用するため、及び/又は好ましくは抽出蒸発を実施する方式のため、欧州特許出願公開第1872803号又は米国特許出願公開第2003/0157187号中に開示されているものに比べて、より魅力的な特性を有する。
【0037】
別の例として、本発明の微粒子は、好ましくは界面活性剤を含み、ステップa1)において約10〜約100,000cPの範囲である粘度を有する液体を使用するため、及び/又は好ましくは本明細書中で規定するようなより高比率のPCL/DCMを使用するため、及び/又は好ましくは界面活性剤として特定の種類及び濃度のMCを使用するため、より好ましくは1%のMC、さらに好ましくは1%のMC(Mn=63,000)を使用するため、及び/又は好ましくは抽出蒸発を実施する方式のため、Iooss(Iooss Pら(2001)、22:2785〜2794)中に開示されているようなものと比べて、より魅力的な特性を有する。微粒子は、均一なので微小球と名付けることもできる。微粒子の均一性(球形状及び表面の滑らかさ、並びに既にi)、ii)及びiii)として規定したような特徴のいずれか)は、中でも本発明の特殊な方法のため、好ましくは界面活性剤を含み、ステップa1)において約1〜約400,000cPの範囲である粘度を有する液体を使用するため、及び/又は好ましくは本明細書中で規定するような最適比率PCL/DCMのため、及び/又は好ましくは使用される界面活性剤、より好ましくは1%のMC(Mn=63,000)のため、及び/又は好ましくは抽出/蒸発法を実施する方式のためである。
【0038】
微粒子(微小球)の好ましい直径は、20〜150μmの範囲である。20μmより大きい直径が、マクロファージによる直接食作用を最小にするので、好ましい。150μmより小さい直径が、ゲル中に存在する場合により良好な流動特性を有すると予想されるので、好ましい。別の選択肢として、好ましい直径は、25〜50μmの範囲である。
【0039】
驚くべきことに、本発明者らは、前に本明細書中で規定したような比較的低分子量から中分子量のPCLを含む微粒子は、本発明で使用するのに極めて適していることを見出した。この低分子量から中分子量のPCLを含む微粒子は、本発明のゲル中に存在する場合、後に本明細書中で規定するような中分子量から高分子量のPCLを用いた微粒子を含むゲルのそれよりも比較的より短い再吸収時間を示す。
【0040】
微粒子は、フリーズドライ、凍結乾燥、又は自由流動性粉末としてある1つの乾燥状態で貯蔵することができ、適切な条件下で数年間保存できる。凍結乾燥は、滅菌及び貯蔵を容易にするので、有利である。ポリマーの分子量及び微粒子の固有の物理特性(中でも、球形状及び表面の滑らかさ、前に本明細書中でi)、ii)及び/又はiii)として規定したような特徴の少なくとも1つを参照されたい)は、ゲル中に存在する場合及びインビボで注射した場合に、それらのインビボでの分解挙動を少なくとも部分的に決定する。
【0041】
ゲル
さらなる態様において、本発明は、前の節で規定したような微粒子及び担体を含む、生分解性注射可能ゲルに関する。担体は、粘度増強剤、密度増強剤、及び/又は張性湿潤化増強剤を含むことができる。粘度増強剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群から選択できる。しかし、当業者にとって容易に明らかであるような、その他の粘度増強剤も使用できる。CMCは、粘度増強剤として好ましい。
【0042】
密度増強剤は、ソルビトール、マンニトール、及び果糖からなる群から選択できるが、その他の適切な密度増強剤も使用できる可能性がある。
【0043】
張性湿潤化剤は、ポリソルベート(Tween 20、40、60、又は80)でよい。その他の張性湿潤化剤も使用できる。本明細書中で開示されるゲルは、様々な量の粘度増強剤、密度増強剤、及び/又は張性湿潤化増強剤を含むことができる。好ましい実施形態において、ゲルは、約0〜8wt%の粘度増強剤、及び/又は約0〜約50wt%の密度増強剤、及び/又は約0〜約5.0wt%の張性湿潤化剤を含む。より好ましくは、ゲルは、約0.1〜8wt%の粘度増強剤、及び/又は約0〜約50wt%の密度増強剤、及び/又は約0〜約5.0wt%の張性湿潤化剤を含む。
【0044】
本明細書中で開示されるゲルは、様々な量の微粒子を含むことができ、典型的には約10wt%〜約50wt%の微粒子、約15wt%〜約50wt%、約25wt%〜約45wt%、約35wt%〜約45wt%の微粒子を含むことができる。担体の量は、典型的には、所望の流動特性、すなわち、適切な粘度を有する懸濁液を得るように選択される。当業者は、本発明のゲルに関して想定される応用の種類に応じて、特定の特性を有する注射針を使用すればよいことがわかっている。使用する注射針のそれぞれの種類に対して、ゲルの粘度を最適化して所望の流動特性を付与すればよい。同じく好ましい実施形態であるゲージ26〜30の注射針及びCMCを使用する例として、ほぼ20,000〜200,000cPの範囲の粘度が適切である。好ましい実施形態において、担体は、医薬として又は化粧料として許容し得る担体及び/又は生物学的、医学的に許容し得る担体である。
【0045】
生分解性は、生体再吸収性と同義である。ゲルの所望される生体再吸収性は、中でも使用するPCLポリマーの種類、構想する使用/応用に応じて異なる可能性がある。好ましい実施形態において、本発明のゲルは、注射後10年以内又は10年未満に、或いは注射後5年以内又は5年未満に、或いは注射後2年間以内又は2年間未満、或いは注射後1年間以内又は1年間未満、生体再吸収性である。
【0046】
得られるゲルは、前に規定したような微粒子の懸濁液を含み、他の周知のゲルに比べてより魅力的であり:本発明のゲルは、滑らかな表面を有する本質的に球状である微粒子(前に本明細書中で規定したような次の特徴、i)、ii)及び/又はiii)の少なくとも1つを有する)を含み、したがって、ゲルの流動特性が改善される。驚くべきことに、本発明者らは、低分子量から中分子量を有する微粒子を含むゲルを、有利に使用できることを見出した。本発明のゲルは、インビボで注射した場合に、より安定であるポリマー(分解の反応速度は、他のポリマーの場合よりも遅い)を含む。ゲルは、微粒子及び担体を含む。担体は、通常、注射後3〜4カ月以内に分解され、溶出され、又は再吸収される。微粒子の再吸収時間は、使用するPCLの当初の分子量によって決まる。例えば、前に本明細書中で規定したような低分子量から中分子量を有するPCLポリマーを含む微粒子は、ほぼ6カ月〜2年の範囲である分解又は再吸収時間を有すると予想される。例として、約10,000Mnの分子量を有するPCLポリマーを含む微粒子を含むゲルは、注射される場所及び微粒子のその他の特性に応じて、ほぼ6〜15カ月、又は12〜15カ月の再吸収時間を有すると予想される。別の例として、約40,000Mnの分子量を有するPCLポリマーを含む微粒子を含むゲルは、注射される場所及び微粒子のその他の特性に応じて、ほぼ18〜24カ月、又は20〜約24カ月の再吸収時間を有すると予想される。このゲルは、以下の記載の通り数種類の用途に使用することもできる。ゲルは、無菌懸濁液の形態で容器中に貯蔵できる。好ましくは、容器は、即時使用用の事前充填シリンジである。シリンジは、一方が(フリーズドライの)微粒子を、他方が医薬として許容し得る担体を含む、2区画の事前充填シリンジとしても提供できる。例えば、水又は2回蒸留水で即座に注射可能な調合物に再構成したなら、次いで、ゲル(懸濁液)を、皮内又は皮下注射で適用することができる。別法として、容器は、バイアル瓶でよい。ここで、シリンジの場合のように、バイアル瓶も、即時に使用される本発明のゲルを含むことができる。別法として、バイアル瓶は、一方の区画に(フリーズドライの)微粒子を、もう1つの区画に医薬として許容し得る担体を含むことができる。
【0047】
シリンジ又はバイアル瓶中でゲルを即席で再構成するのに使用される水は、好ましくは蒸留水、より好ましくは2回蒸留水、さらにより好ましくは無菌水である。最も好ましくは、PBS(リン酸緩衝化生理食塩水)が使用される。担体は、さらに、凍結保護剤及び緩衝剤からなる群から選択される成分を含むことができる。
【0048】
凍結保護剤は、冷却中に生物学的組織中で有害な氷結晶の形成を阻止又は低減する化学物質である。適切な凍結保護剤には、限定はされないが、d−マンニトール、乳糖、蔗糖、果糖、ソルビトール、及びデキストランなどの糖類及び炭水化物が含まれ、d−マンニトールが好ましい。ゲルの担体中の凍結保護剤濃度は、意図した応用、微粒子、及び選択した凍結保護剤の本体に応じて異なってもよい。ゲルは、典型的には、約0〜約45重量%、又は約30%〜約40%の凍結保護剤を含むことができる。
【0049】
緩衝剤は、その溶液が、希釈、又は少量の酸若しくは塩基の添加の結果としてのpH変化に抵抗することを可能にするように、該溶液に添加される化合物又は化合物群である。効果的な緩衝系は、多量のほぼ同濃度の共役酸−塩基対(又は緩衝剤)を含む溶液を用いる。本明細書中で採用される緩衝剤は、医薬として許容し得る塩、例えば、限定はされないがリン酸及びクエン酸の塩(共役酸及び/又は塩基)であるような任意の化合物(単数又は複数)でよい。ゲルは、典型的には、約0〜約0.2重量%、又は約0.1%〜約0.15%の緩衝剤を含むことができる。好ましい緩衝剤はPBSである。
【0050】
さらに好ましい実施形態において、微粒子を含むゲルは、薬剤として使用するためのものである。いかなる活性成分も含まない、又は好ましくは本明細書中に含まれるいかなる薬剤も含まない、ゲル自体も、薬剤と見なすことができる。この最初の事例において、ゲルは、好ましくは、皮膚の奇形又は傷跡の治療、膀胱機能の制御(泌尿器括約筋不全の治療)、及び/又は胃逆流の制御(幽門部括約筋不全の治療)、声帯不全、先天性奇形、歯科治療のためのガム補填を含む各種治療において、哺乳動物の軟部組織を補うためのフィラー又はインプラントとして使用される。これらのすべての使用において、哺乳動物は、好ましくは、ヒトである。これらのすべての使用において、ゲルは、典型的には、一般に皮内又は皮下シリンジ注射で治療又は投薬すべき組織部位中に導入される。
【0051】
好ましい実施形態において、ゲルは、フィラー及び/又はインプラントとして使用される。より好ましい実施形態において、ゲルは、皮膚用フィラーである。皮膚用フィラーは、術後の皮膚奇形、又は熱傷等の傷跡など、対象の健康にとって脅威となる皮膚奇形を矯正するのに使用できる。ゲルを、薬剤として、及び皮膚用フィラーとしての応用に応じた皮膚用フィラーとして使用する場合、PCLポリマーは、好ましくは、前に本明細書中の本発明の方法のステップa1)又はa2)で規定したような低分子量から中分子量、又は中分子量から高分子量を有する。
【0052】
別のより好ましい実施形態において、本明細書中で開示されるゲルは、尿失禁(膀胱機能の制御)などの各種の括約筋不全を治療するためのインプラント又はフィラーとして使用される。膀胱制御の低下は、肉体的活動(咳、くしゃみ、運動)によるストレスのため、及び/又は睡眠時を含む予期しない時刻での大量の尿意又は漏れのためである可能性がある。すべての型の失禁は、患者の年齢に関係なく、本発明のゲルを使用して治療できる。排尿自制は、従順な貯蔵器、及び2つの構成部分、すなわち(1)膀胱頚部の不随意平滑筋、及び(2)外側括約筋の随意骨格筋を有する括約筋の能力に依存する。
【0053】
したがって、本発明のゲルを、括約筋又は尿道に圧迫を集中するように添加し、それによって、1回以上のゲルの注射により管腔の大きさを減少させ、かくして泌尿器のストレス性失禁を実質的に低減又は排除することができる。これらの例で、ゲルは、注射によって尿道又は尿道周囲組織中に挿入され得る。したがって、典型的な手順は、膀胱鏡の助けを借りてゲルを膀胱頚部周辺の組織中に注射すること、増大した組織容積を創り出すこと、続いて尿道管腔を接合することを含む。ゲルは、容積を加増し、尿道を閉じるのを助けてストレス性失禁を減らす。注射は、典型的には、最善の結果を得るために周期的に繰り返すことができる。
【0054】
別のより好ましい実施形態において、ゲルは、胃逆流を制御する(幽門括約筋不全を治療する)ためのフィラー又はインプラントとして使用される。胃食道逆流疾患(GERD)は、胃酸及びその他の内容物の食道又は隔膜中への逆流に関連し、逆流エピソードの70%は、下部食道括約筋の自発弛緩中に、又は嚥下後の長期弛緩のため発生する。30%は、下部括約筋の圧迫期間中に発生する。主な症状は、胸やけ(食後30〜60分)である。GERDの典型的でない発現には、喘息、慢性咳、喉頭炎、咽頭炎、及び非心原性胸痛が含まれる。GERDは、生活様式の変更及び医学的介入を必要とする終生続く疾患である。
【0055】
したがって、本発明のゲルは、容積を加増し、下部食道括約筋に圧迫を集中させるように注射することができる。それゆえ、典型的な手順は、内視鏡の助けを借りてゲルを下部食道括約筋周辺の組織中に注射すること、増加した組織容積、結果としての接合を創り出すこと、括約筋圧迫を正常化することを含む。ゲルは、容積を加増し、括約筋を閉止するのを助けて逆流を減らす。注射は、最善の結果を得るために毎年繰り返すことができる。ゲルは、局所麻酔を使用して注射され得る。
【0056】
膀胱機能及び/又は胃逆流を制御するための薬剤としてゲルを使用する場合、使用されるPCLポリマーは、好ましくは、前に本明細書中の本発明の方法のステップa1)又はa2)で規定したような中分子量から高分子量を有する。そのため、使用したゲルが、注射部位により長く存在し続け(より低いインビボでの分解速度)、且つ外科的介入をしばしば繰り返す必要がないので、このことは好ましい。
【0057】
別のより好ましい実施形態において、ゲルは、すべての年齢の男性を襲う可能性のある勃起機能不全(ED)を治療するためのフィラー又はインプラントとして使用される。本発明のゲルは、EDを治療するのに使用できる。典型的な手順は、ゲルを海綿体の全長にわたって深筋膜部に直接注入することを含む。
【0058】
別のより好ましい実施形態において、ゲルは、声帯を治療するためのフィラー又はインプラントとして使用される。本発明のゲルは、喉頭音声発生器の声帯内に注入し、この軟質組織体の形状を変えるために使用できる。
【0059】
さらに、ゲル自体が薬剤(medicament)と見なされる場合、ゲルが、さらに、やはり好ましくは薬剤である活性成分を含むことも、本発明に包含される。本明細書中で使用する場合、「薬剤」は、任意の生物活性組成物、医薬、薬物、又はゲルの注入部位に投与することが望まれる化合物でよい。この場合、ゲルに添加される薬剤は、ゲルの機能を促進することができ、且つゲル注入に付随する疼痛又は不快を減らすための麻酔薬、或いはPCL又は微粒子の完全性を促進するか、或いは注入部位に対する外傷を減らすための組成物を含むことができる。1つの好ましい実施形態では、ゲルに薬剤を添加する。典型的な麻酔薬には、限定はされないが、リドカイン、キシロカイン、ノボカイン、ベンゾカイン、プリロカイン、リピバカイン、及びプロポフォールが含まれる。本明細書中で開示されるゲル中で採用できるその他の薬剤には、ペプチド、組織再生薬、抗生物質、ステロイド、フィブロネクチン、サイトカイン、増殖因子、鎮痛薬、防腐剤、α、β、若しくはγ−インターフェロン、エリスロポエチン、グルカゴン、カルシトニン、ヘパリン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、フィルグラスチム、cDNA、DNA、タンパク質、ペプチド、HGH、黄体形成ホルモン、心房性ナトリウム利尿因子、第VIII因子、第IX因子、及び卵胞刺激ホルモンが含まれる。薬剤は、注入直前に、前に本明細書中で規定したような担体との活性化混合中にゲルに添加されることが多い。典型的には、活性成分又は薬剤は、ゲル中に導入され得る微小球中に存在し、続いて、前記ゲルを注入することができる。
【0060】
別法として、別の好ましい実施形態において、ゲル中に存在する薬剤は、ゲルの機能を促進するために存在するのではない。この場合、ゲルは、任意の既知の又は発見された薬剤のための制御放出系と見なされる。
【0061】
別の好ましい実施形態において、ゲルは、化粧用ゲルである。化粧用ゲルは、皮膚用フィラーとして使用できる。この好ましい実施形態の範囲内で、最適の特性を有するゲルは、本発明の方法を実施する場合に、好ましくはステップa1)で界面活性剤を含み、約1〜約400,000cPの範囲である粘度を有する液体を使用し、且つ/又は好ましくは本明細書中で規定するような高比率のPCL/DCMを使用し、且つ/又は好ましくは界面活性剤としてMC、より好ましくはほぼ1%のMC、さらにより好ましくはほぼ1%のMC(Mn=63,000)を使用し、且つ/又は好ましくは抽出蒸発が好ましくは先に本明細書中で規定したように実施する場合に得られる。この好ましい実施形態の範囲内で、PCLポリマーは、好ましくはPCLホモポリマーである。この好ましい実施形態の範囲内で、ゲルは、いかなる活性成分又は薬剤も含まない。ゲルが、皮膚用フィラーのような化粧用ゲルとして使用される場合、PCLポリマーは、好ましくは、先に本明細書中の本発明の方法のステップa2)で規定したような低分子量から中分子量を有する。ゲルは、瘢痕、しわ、及び顔面脂肪減少を化粧的に治療するのに使用できる。本発明のゲルは、痘痕又は瘢痕(水痘、ざ瘡瘢痕、先天奇形(口唇裂など)及び皺などの軟部組織欠陥を充填し、滑らかにするのに使用できる。瘢痕は、任意の起源:疾患、術後、熱傷によるものでよい。ゲルは、また、ヒトにおける顔面組織又は脂肪減少を補うための増量剤として使用できる。ゲルを効率的に使用するための解剖学的領域は、皮膚、好ましくは顔面区域の皮膚:表皮及び/又は皮下でよい。考えられる具体的な化粧上の応用に応じて、注射部位は、異なってよい:ざ瘡瘢痕及び微妙な顔面ラインを治療するための部位、しわ、ひだ及び顔面輪郭の肉付きを治療するための深部位、並びにリポジストロフィーを治療するための深部位。
【0062】
ゲルの使用
本発明のさらなる態様は、皮膚の奇形若しくは傷跡を治療するための、又は膀胱機能を制御するための、及び/又は胃逆流を制御するための、及び/又は勃起機能不全を治療するための、及び/又は声帯を治療するための薬剤の調製に関する本発明のゲルの使用に関する。
【0063】
本発明のゲルのもう1つの使用は、化粧上の応用に関して前に本明細書中で規定したような、本発明の化粧用ゲルの使用である。
【0064】
これらの使用のすべて特徴は、「ゲル」と題した前の節で既に規定している。
【0065】
この文書及びその特許請求の範囲で、動詞「を含む(to comprise)」及びその活用形は、その非限定的な意味で使用され、該単語に続く品目を含むが、具体的に言及されていない品目を排除しないことを意味する。加えて、動詞「からなる(to consist)」は、「から本質的になる(to consist essentially of)」で置き換えることができ、本明細書中で規定するような製品、組成物、ゲル、又は微粒子が、具体的に明らかにしたもの以外に、本発明の独特の特性を変えないさらなる成分(単数又は複数)を含むことができることを意味する。加えて、不定冠詞(「a」、「an」)を用いるある要素に対する言及は、文脈が1つ又はたった1つの要素が存在することを明確に要求していないなら、1つを超える要素が存在する可能性を排除しない。不定冠詞(「a」、「an」)は、かくして通常、「少なくとも1つ」を意味する。単語「約」又は「ほぼ」は、数値に付随して使用される場合(約10など)、好ましくは、その値が、10±その値の1%の所定値でよいことを意味する。
【0066】
本明細書中で引用されるすべての特許及び参照文献は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。
【0067】
後記の実施例は、単に例示の目的で提供されるものであり、本発明の範囲をいかなる意味でも限定することを意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例2で調製される通りの微小球の顕微鏡写真を示す図である。
【図2】PCL(Mn=10,000g/モル)のDCM溶液、及びMC(Mn=63,000g/モル)の水溶液を使用して調製されたPCL微小球を示す図である。[PCL]の濃度は20g/100gDCMであり、[MC]の濃度は1.1wt%である。表1を参照されたい。光学顕微鏡像、倍率10×。
【図3】10wt%PCL/DCM溶液及び1.0wt%PVA水溶液を使用し、1,000rpmで激しく撹拌しながら調製されたPCL微小球を示す図である。表4のHunterを参照されたい。光学顕微鏡像、倍率10×。
【図4】10wt%PCL/DCM溶液及び3.0wt%PVA水溶液を使用し、1,000rpmで激しく撹拌しながら調製されたPCL微小球を示す図である。表4のEmeta及びWuを参照されたい。光学顕微鏡像、倍率10×。
【図5】10wt%PCL/DCM溶液及び0.1wt%MC水溶液を使用し、1,000rpmで激しく撹拌しながら調製されたPCL微小球を示す図である。表4のIoossを参照されたい。光学顕微鏡像、倍率10×。
【実施例】
【0069】
微小球/微粒子の合成、及び担体を含むゲル中へのこれら粒子の即時使用のための懸濁に関する実験計画案を以下に記す。
1.微小球を、所望の特性を得るために、伝統的な溶媒蒸発技術を使用して、又は無溶媒合成技術を使用して調製する。
2.周知の調製技術を使用して所望の粘度を有するゲルを調製し、その後、該ゲル中に微小球を適切な混合によって懸濁させる。
3.次いで、制御された雰囲気中で、シリンジに滅菌されたゲル懸濁液を充填する。
【0070】
以下の例を使用して又は組み合わせて、ポリマー又は前に述べたブレンドから構成される微粒子の即用性適用のための、或いは(フリーズドライの)バイアル瓶適用のための懸濁液を得ることができる。
【0071】
(例1)
10〜20gのPCL(Mn10,000又はMn42,500)をDCMに溶解する(10〜20w/w%)。この溶液を、0.1〜5%のMCを含有する1,000mLの水中に分散させる。猛烈に撹拌(1,000rpm)しながら、説明中で引用される刊行物中に記載の通りの溶媒抽出によって、40μmの平均直径を有する微粒子が得られる。得られた微小球を、濾過し、洗浄し、乾燥する。続いて、10〜50%の微小球を、CMC(0.1〜5%)ゲル又はMC(0.1〜5%)ゲル中におだやかに撹拌して分散させ、さらに処理する。
【0072】
(例2)
10〜20gのPCL(Mn=42,500)をDCMに溶解する(10〜20w/w%)。この溶液を、0.8%のMCを含有する1,000mLの水中に分散させる。猛烈に撹拌(1,000rpm)しながら、例1の通りの溶媒抽出によって、60μmの平均直径を有する微粒子が得られる。得られた微小球を、濾過し、洗浄し、乾燥する。続いて、10〜50%の微小球を、CMC(0.1〜5%)ゲル又はMC(0.1〜5%)ゲル中に穏やかに撹拌して分散させ、さらに処理する。例2で調製された微小球の顕微鏡写真を図1に示す。
【0073】
(例3)
40〜80gのPCL(Mn=10,000)を、純粋なTween 20、40、60又は80中に70〜90℃に加熱、撹拌(600〜1,000rpm)して溶解し、その後、相分離及び30分以内での5℃までの制御された冷却により微小球を得る。得られた微小球を、濾過し、洗浄し、乾燥する。平均分布は45μmであり、収率75%が必要とされる範囲内にある。続いて、10〜50%の微小球を、CMC(0.1〜5%)ゲル又はMC(0.1〜5%)ゲルに穏やかに撹拌して分散させ、さらに処理する。
【0074】
さらなる例
本発明は、生分解性微小球の効率的で効果的な調製方法に関する。重要な核心は、比較的高い濃度及び粘度を有する界面活性剤溶液の使用である。本発明は、滑らかな表面を有し、ほぼ38〜75μmの範囲の所望される大きさの均一粒子の形成につながる。
【0075】
A)例4で詳しく例示するような本発明の一方法において、粘性ポリマー溶液は、激しく撹拌された界面活性剤水溶液に急速に添加される。混合物の激しい撹拌及び溶媒の蒸発により、粒子が形成される。DCMなどの揮発性溶媒が好ましい。この急速添加は、激しく撹拌された界面活性剤水溶液の高い粘度のため可能である。激しい撹拌は、また、短時間での溶媒蒸発を可能にし、その後、粒子を集め、さらに処理することができる。このことは効率的であるので、このことは、有利であり望ましい。
【0076】
ポリマー微小球を回収することが可能であるためには、実質的にすべて(又は少なくとも大部分)のポリマー用溶媒を除去する必要がある。その場合にのみ、球状のポリマー粒子が硬化する(結晶性粒子の場合、それらは結晶化できる)。
【0077】
溶媒を蒸発させ、除去するのに必要な時間は、いくつかの手段で決定できる:
・溶媒の蒸発により冷えた分散液は、再び外界温度まで温まる
・PCL微小球の分散液は、ポリマーの結晶化により白色に変わる
・MCなどの界面活性剤を用いるため、DCMが蒸発すると界面活性剤溶液の表面で泡が形成される。この泡は、本質的にすべてのDCMが蒸発すると消失する
・微小球は、放置しても凝集しない。
【0078】
B)例7で詳しく例示するような本発明のもう1つの方法において、PCLポリマーは、Tweenなどの比較的粘性のある界面活性剤(溶液)に加熱して溶解される。ここで、ポリマーの小滴は、混合物の激しい撹拌により、界面活性剤溶液中で溶融ポリマーの分散液を形成する。混合物を絶え間なく撹拌し、室温まで(制御して)冷却すると、粒子が生じる。この方法は、揮発性溶媒を必要としないので、極めて効率的である。
【0079】
方法の特徴:
・所望の粒径範囲:本発明者らは38〜75μmの画分を集めた
・効率的な方法:DCMを使用する場合の短い蒸発時間、及び所望粒径範囲の高い収率
・効果的な方法:滑らかな表面を有する本質的に球形状の粒子、患者への優れた注射可能性をもたらす。
【0080】
注射可能なゲルを、本発明により調製された微小球から、混合によって容易に形成できた。容積の50%までの微小球を、ゆっくり撹拌することによって、カルボキシメチルセルロースゲル(CMC、Hercules社からのAqulonの水溶液又はリン酸緩衝化生理食塩水溶液)中に均一に混合できた。
【0081】
(例4)
本発明の実験
PCLのDCM溶液、及びMCの水溶液を使用する微小球の調製
ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)のジクロロメタン(DCM)溶液をメチルセルロース(MC)の水溶液中に激しく混合し、続いてDCMを蒸発させることによって、PCL微小球を調製した。
【0082】
Sigma Aldrich社から入手した種々の量のPCL(Mn=10,000g/モル)をDCMに溶解した。これらの溶液100gを、2Lビーカー中の1,000gのMC水溶液に、1,000rpmで激しく撹拌しながら2秒間以内に添加した。Colorcon社から入手した種々の分子量のMC(Mn=14,000g/モル、Mn=41,000g/モル、及びMn=63,000g/モル)を採用した。
【0083】
室温で絶え間なく激しく撹拌している3時間以内に、本質的にすべてのDCMが蒸発した。撹拌を停止し、生じた微小球を、ビーカーの底部に沈降させた。上澄液を除去し、微小球を水で洗浄した。ステンレススチールの篩いを使用して、微小球を湿り状態で篩い分け、38〜75μmの直径を有する画分を集めた。
【0084】
微小球を室温で真空乾燥し、収率を重量分析で測定した。光学顕微鏡法(倍率10×)を採用して、得られた微小球の形態を分析した。
【0085】
PCL溶液の濃度及びMC溶液の特徴を変えた一連の実験を実施した。結果を表1に示す。
表1.PCLのDCM溶液をMCの水溶液中に激しく撹拌しながら混合することによるPCL微小球の調製
【表1】

【0086】
表1から、比較的高粘度のMC溶液を使用すると、滑らかな球状粒子を効率的に得ることができると考えることができる。さらに、高濃度のPCL溶液は、高収率で、所望の粒径を有するPCL粒子をもたらす。
【0087】
(例5)
本発明の実験
PLLAのDCM溶液及びMCの水溶液を使用する微小球の調製
ポリ(L−ラクチド)(PLLA)のジクロロメタン(DCM)溶液をメチルセルロース(MC)の水溶液中に混合し、続いてDCMを蒸発させることによって、PLLA微小球を調製した。
【0088】
Purac Biochem社から入手した10gのPLLA(クロロホルム中で2.3dl/gの固有粘度を有する)を100gのDCMに溶解した。この溶液100gを、2Lビーカー中の1,000gのMC水溶液に、1,000rpmで激しく撹拌しながら2秒間以内に添加した。MC(Mn=63,000g/モル)は、Colorcon社から入手した。
【0089】
室温で絶え間なく激しく撹拌している3時間以内に、本質的にすべてのDCMが蒸発した。撹拌を停止し、生じた微小球を、ビーカーの底部に沈降させた。上澄液を除去し、微小球を水で洗浄した。ステンレススチールの篩いを使用して、微小球を湿り状態で篩い分け、38〜75μmの直径を有する画分を集めた。
【0090】
微小球を室温で真空乾燥し、収率を重量分析で測定した。光学顕微鏡法(倍率10×)を採用して、得られた微小球の形態を分析した。
表2.PLLAのDCM溶液をMCの水溶液中に激しく撹拌しながら混合することによるPLLA微小球の調製
【表2】

【0091】
この表2は、PLLA微小球も効率的に調製することが可能であることを示している。高粘度のMC溶液を使用すると、所望の粒径を有する滑らかな球状PLLA微小球を高収率で得ることができる。
【0092】
(例6)
比較例実験
PCLとCLとのコポリマーのDCM溶液及び界面活性剤の水溶液を使用する微小球の調製
I.文献からの典型的なデータ
PCLとCLとのコポリマーの微小球の調製は、科学及び特許文献中に記載されている。例えば、Hunter(米国特許出願公開第2003/015787A1号)、Erneta及びWu(欧州特許出願公開第1872803A1号)、及びIoosら(Biomaterials 22(2001)2785〜2794)による刊行物中には、PCLのDCM溶液をポリビニルアルコール(PVA)又はMCの水溶液に添加すると、PCL微小球の形成をもたらすことができると記載されている。
【0093】
撹拌された水性媒体中でのPCL溶液の凝集を防止するため、採用される条件には、PCLのDCM溶液を比較的長時間にわたって添加すること、及び分散されたPCL粒子が固化するのを可能にするための長いDCM蒸発時間が含まれる。その場合にのみ、形成された球状PCL微小球は、集めるのに十分な安定性を有する。種々の実験設定、PCLとCLとの種々のコポリマー、界面活性剤濃度、添加速度、及び溶媒蒸発時間を採用して、PCL微小球を調製した。
【0094】
Hunter(米国特許出願公開第2003/0157187A1号中の実施例41):
PCL:Mn=25,000〜45,000g/モル;DCM中のPCL濃度:9.5wt/vol%;PVA:Mn=12,000〜18,000g/モル;2mLのポリマー溶液を100mLの界面活性剤水溶液中に1,000rpmの撹拌速度で注入した;ポリマー溶液の添加時間:120分;粒子を遠心分離し水で洗浄した;30〜100μmの範囲の大きさを有する微小球が得られた。粒子は、球状であるが、粗い又は窪みのある形態を有した。
【0095】
Erneta及びWu(欧州特許出願公開第1872803A1号中の実施例):
半結晶性CLコポリマー:5,000〜25,000g/モルの分子質量;DCM中のポリマー濃度:4〜7.5wt/vol%、PVA:Mnは示されていない;ほぼ275gの溶液をほぼ1,500mLの界面活性剤水溶液中に250rpm近辺の速度で撹拌しながら注入した;ポリマー溶液の添加時間:最長で19分;DCM蒸発時間;14〜16時間;回収された38〜75μmの大きさを有する微小球の画分は最大71%である;表面形態は、示されていない。
【0096】
Iooss(Biomaterials 22(2001)2785〜2794):
PCL:Mw=150,000;MC:Mn=14,000のMethocel A15LV;DCM中のPCL濃度:6.7〜9.1wt/vol%;15mLの溶液をMC水溶液中に400〜600rpmで撹拌しながら1時間かけて注入する;DCMは、大量(1,000mL)の水中に抽出することによって除去される;回収された80μmより小さい大きさを有するPCL粒子の画分は、ほぼ1〜40%の間で変動する。
【0097】
このデータの概要を表3に示す。
表3.ポリマーのDCM溶液を撹拌された界面活性剤水溶液中に混合することによって調製されるPCLとCLとのコポリマーの微小球に関する文献データの概要
【表3】

【0098】
II.PCLのDCM溶液及び界面活性剤水溶液を使用する微小球の調製。ポリマー及び界面活性剤の濃度は文献に記載されている通りである。
80gのPCL(Sigma Aldrich社から入手、Mn=10,000g/モル)を800gのDCMに溶解した。この溶液100gを、2Lビーカー中の1,000gのPVA又はMC界面活性剤の水溶液中に、1,000rpmで激しく撹拌しながら2秒間以内に添加した。実験では、Sigma Aldrich社から入手したPVA(Mn=9,000〜10,000g/モル)、及びColorcon社から入手したMC(Mn=14,000g/モル)を採用した。
【0099】
室温で絶え間なく1,000rpmで激しく撹拌している3〜4時間以内に、本質的にすべてのDCMが蒸発した。撹拌を停止し、生じた微小球を、ビーカーの底部に沈降させた。上澄液を除去し、微小球を水で洗浄した。ステンレススチールの篩いを使用して、微小球を湿り状態で篩い分け、38〜75μmの直径を有する画分を集めた。
【0100】
微小球を室温で真空乾燥し、収率を重量分析で測定した。光学顕微鏡法(倍率10×)を採用して、得られた微小球の形態を分析した。
【0101】
比較実験は、Erneta及びWuによる文献(欧州特許出願公開第1872803A1号)中に記載されている通りに実施した。そこで、270gの7.5wt%PCL/DCM溶液を、1500mLの3.0wt%PVA水溶液に240rpmで撹拌しながら12分間にわたって添加した。微小球を集める前に、DCMを、絶え間なく16時間撹拌して蒸発させた。
【0102】
結果を表4にまとめる。
表4.PCLのDCM溶液をMCの水溶液中に撹拌しながら混合することによるPCL微小球の調製。ポリマー及び界面活性剤の濃度は、文献中に記載されている実験で使用された濃度を代表する。
【表4】


a)図3に示す光学顕微鏡像を参照されたい。
b)図4に示す光学顕微鏡像を参照されたい。
c)図5に示す光学顕微鏡像を参照されたい。
【0103】
表4から、文献中に記載されているポリマー及び界面活性剤の代表的濃度を使用すると、所望の特徴を有する粒子を効率的に調製することは可能でないことになる。これらの低粘度の界面活性剤溶液の場合、所望の特徴を有する粒子を効率的に調製するためには、ポリマー溶液をより長い時間にわたって添加すること、比較的低速で撹拌すること、及びDCMをより長い時間蒸発させることが、明らかに必要である。
【0104】
III.PCLのDCM溶液及び粘性のある界面活性剤水溶液を使用する微小球の調製
PCL微小球を、PCLのジクロロメタン(DCM)溶液を界面活性剤の水溶液中に激しく混合し、続いてDCMを蒸発させることによって調製した。
【0105】
Sigma Aldrich社から入手した様々な量のPCL(Mn=10,000g/モル)をDCMに溶解した。これらの溶液100gを、2Lビーカー中の1,000gのMC水溶液中に、1,000rpmで激しく撹拌しながら2秒間以内に添加した。Sigma Aldrich社から入手したPVA(Mn=9,000〜10,000g/モル)、及びColorcon社から入手したMC(Mn=63,000g/モル)を採用した。
【0106】
室温で絶え間なく1,000rpmで激しく撹拌している3〜4時間以内に、本質的にすべてのDCMが蒸発した。撹拌を停止し、生じた微小球を、ビーカーの底部に沈降させた。上澄液を除去し、微小球を水で洗浄した。ステンレススチールの篩いを使用して、微小球を湿り状態で篩い分け、38〜75μmの直径を有する画分を集めた。
【0107】
微小球を室温で真空乾燥し、収率を重量分析で測定した。光学顕微鏡法(倍率10×)を採用して、得られた微小球の形態を分析した。
【0108】
界面活性剤溶液の性質及び濃度を変えた一連の実験を実施した。結果を表5に示す。
表5.PCLのDCM溶液を粘性界面活性剤水溶液中に激しく撹拌しながら混合することによるPCL微小球の調製
【表5】


a)図2に示す光学顕微鏡像を参照されたい。
【0109】
表5は、より高濃度でPVAを使用すると、PCL溶液を激しく撹拌された界面活性剤溶液に急速添加することによってPCL微小球を調製するのに使用できる粘性水溶液が生じることを示している。粒子の形態は適切であるが、極めて小さな粒子が得られ、回収できた大きさが所望範囲の粒子の収率は極めて低い。界面活性剤としてMCを使用すると、方法の効率は、かなり良好である。
【0110】
(例7)
本発明の実験:Tween混合物中への高められた温度でのPCLの溶解、それに続く冷却による粒子形成
250mLのガラス容器中で、ほぼ80℃まで加熱し、且つ500rpmで絶え間なく撹拌することによって、15gのPCL(Mn=10,000g/モル)を、Tween 60と水との50/50(wt/wt)混合物100mL中に分散させた。Tween 60は、Sigma Aldrich社から入手される。溶融されたポリマーの小滴を、さらに2分間撹拌することによってこの分散状態で維持する。さらに撹拌しながら、次いで、液状分散液を室温まで一夜冷却する。分散されたポリマー小滴の固化により、デカンテーションで回収できる微小球が得られる。
【0111】
水で洗浄した後、PCL微小球を、ステンレススチールの篩いを使用して湿り状態で篩い分け、38〜75μmの大きさを有する画分を集めた。次いで、微小球を室温で真空乾燥し、収率を重量分析で測定した。全部で12.1gのPCL微小球が集められた。
表6.PCLのTween 60と水との混合物中の溶液を激しく撹拌しながら冷却することによるPCL微小球の調製。
【表6】

【0112】
この表から、Tween 60と水との比較的粘性のある混合物を使用すると、高められた温度の撹拌されたポリマー溶液から、冷却することによってPCL微小球を形成できると考えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカプロラクトン(PCL)含有微粒子を調製するための方法であって、
a1)PCLポリマーを可溶化し、続いて可溶化されたPCLポリマーを、界面活性剤を含み、約1〜約400,000cPの範囲にある粘度を有する液体と混合するステップ、
b)ステップa1)で得られた溶液からPCL含有微粒子を形成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
PCLを含む微粒子を調製するための、好ましくは請求項1に記載の方法であって、
a2)PCLポリマーを実質的に純粋なTween及び/又はジクロロメタン中で可溶化するステップ、
b)ステップa2)で得られた溶液からPCL含有微粒子を形成するステップ
を含む方法。
【請求項3】
可溶化ステップa2)において実質的に純粋なTweenが単独の溶媒として使用され、前記ステップが、PCLポリマーの溶融温度を超える温度又はそれに近い温度で実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)においてPCL含有微粒子が、制御された冷却及び撹拌条件の結果として形成される、請求項1又は3に記載の方法。
【請求項5】
可溶化ステップa2)においてDCMが使用され、ステップb)が、ゲル中に分散されたこれらのPCL含有微粒子から抽出蒸発によって界面活性剤を抽出することにより、PCL含有微粒子を形成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
液体の粘度が約20〜約200cPの範囲にある、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項7】
界面活性剤が、メチルセルロース、好ましくはほぼ1%のMC(Mn63,000を有する)である、請求項1又は5又は6に記載の方法。
【請求項8】
PCLポリマーが、線状ポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は種々のタイプのホモポリマー/コポリマー/ターポリマーのブレンドである、請求項1〜7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8までのいずれか一項に記載の方法によって得られうる微粒子であって、好ましくは、次の特徴:
i)5〜100μmの範囲にある直径、
ii)均一な密度、形状、及び内容物、
iii)本質的に球状の微小球
の少なくとも1つを有する微粒子。
【請求項10】
請求項9に記載の微粒子及び担体を含み、任意選択で活性成分がさらに存在する、生分解性注射可能ゲル。
【請求項11】
インプラント又はフィラーである、請求項10に記載のゲル。
【請求項12】
好ましくは皮膚の奇形又は傷跡を治療するための、及び/又は膀胱機能を制御するための、及び/又は胃逆流を制御するための、及び/又は勃起機能不全を治療するための、及び/又は声帯を治療するのに使用するための薬剤として使用するための、請求項11〜13までのいずれか一項に記載のゲル。
【請求項13】
化粧用ゲルとしての、請求項10又は11に記載のゲル。
【請求項14】
皮膚の奇形又は傷跡を治療するための、及び/又は膀胱機能を制御するための、及び/又は胃逆流を制御するための、及び/又は勃起機能不全を治療するための、及び/又は声帯を治療するための薬剤を調製するための、請求項10〜12までのいずれか一項で規定した通りのゲルの使用。
【請求項15】
化粧上の応用における、請求項13に記載のゲルの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−534649(P2010−534649A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518139(P2010−518139)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【国際出願番号】PCT/NL2008/050506
【国際公開番号】WO2009/014441
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(510023148)
【Fターム(参考)】