説明

PDP用光学フイルター

【課題】 近赤外線遮蔽性、透明性、そして電磁波シールド性と密着性が良好であるとともに、廃棄に際しての透明ガラスの剥離とこれによる分別処理が容易に可能とされる新しいPDP用光学フィルタを提供する。
【解決手段】
透明ガラス板1の一面上に、順次に熱可塑性樹脂含有の接着層2と、近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム3並びに反射防止層4とが積層されており、前記接着層2には銅メッシュ電磁波シールド材21が内包されているものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPDP用光学フイルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、PDP用光学ディスプレーに用いられる光学フイルターとして、透明ガラス板の一面上に、接着層を介して近赤外線遮蔽層と反射防止層とが積層された構造のものが知られている。これら従来のPDP用光学フイルターにおいては、接着層に透明性の熱可塑性樹脂を含有させ、高湿度下においても透明ガラス板が剥離しないようにした高密着性の特性とするための様々な工夫が試みられてきている(たとえば特許文献1−3参照)。
【0003】
しかしながら、これまでのPDP用光学フイルターの場合には、近赤外線の遮蔽性、透明性、そして電磁波シールド性と密着性が良好であるとともに、その廃棄に際して、透明ガラス板を剥離して分別廃棄を容易としたものは知られていないのが実情である。近年の環境負荷の低減への要請に対しては、この分別廃棄を容易可能とすることは大変に重要な課題になっている。
【特許文献1】特開2005−23133号公報
【特許文献2】特開2003−96215号公報
【特許文献3】特開2006−349736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のとおりの背景から、近赤外線遮蔽性、透明性、そして電磁性シールド性と密着性が良好であるとともに、廃棄に際しての透明ガラスの剥離とこれによる分別処理が容易に可能とされる新しいPDP用光学フイルターを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のPDP用光学フイルターは、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
【0006】
第1:透明ガラス板の一面上に、順次に熱可塑性樹脂含有の接着層と、近赤外線遮蔽機能を有する複合フイルム層並びに反射防止層とが積層されており、前記接着層には銅メッシュ電磁波シールド材が内包されている。
【0007】
第2:電磁波シールド材の銅メッシュは、銅線の幅が5〜50μmの範囲内であり、銅線の間隔が50〜1000μmの範囲内である。
【0008】
第3:接着層の軟化温度が200℃以下である。
【0009】
第4:接着層の熱可塑性樹脂は、非晶性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフイン系樹脂のうちの少くとも1種である。
【0010】
第5:60℃の温度、湿度95%の環境下500時間で接着層から透明ガラス板が剥離可能とされている。
【発明の効果】
【0011】
上記第1の発明特有の層の構成、特に、銅メッシュ電磁波シールド材が内包され、熱可塑性樹脂を含有する接着層の配設を必須とすることで、近赤外線遮蔽性、透明性、そして電磁性シールド性と密着性が良好であるとともに、廃棄に際しての透明ガラスの剥離とこれによる分別処理が容易に可能とされる新しいPDP用光学フイルターが提供される。
【0012】
電磁波シールド材の銅メッシュを特有の仕様のものとする上記第2の発明によれば、上記の効果はより確実に、顕著なものとして実現される。また、接着層の軟化温度を200℃以下とする第3の発明、接着層の熱可塑性樹脂を特定種のものとする第4の発明によれば、同様に、上記の効果は確実、顕著なものとして実現される。
【0013】
そして、特有環境下での高湿剥離特性を有する第5の発明によれば、実用的な廃棄の容易な低環境負荷製品が提供されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のPDP用光学フイルターは、図1にその概要を例示したように、透明ガラス板1の一面上に接着層2と、近赤外線遮蔽機能を有する複合フイルム層3並びに反射防止層4とが、積層一体化されている構成を有している。そして、この積層構成において、接着層2
は、熱可塑性樹脂を含有し、しかも銅メッシュ電磁波シ−ルド材21を内包している。
【0015】
透明ガラス板1については特にその種類に制限はないが、たとえばソーダガラス、半強化ガラス、強化ガラス等が例示される。その厚みについては、特に限定的ではないが、たとえば、0.1〜10nm、好ましくは2〜5nm程度である。1mm未満では強度が不足するおそれがあり、一方、10mmを超える場合には軽量化を図ることが難しくなる。
【0016】
接着層2を構成することになる熱可塑性樹脂については、接着層2に内包する銅メッシュ電磁波シ−ルド材21との密着性はもとより、透明ガラス板1、並びに近赤外線遮蔽層を含む複合フィルム3との密着性が良好であるとともに、廃棄に際しては透明ガラス板1が剥離容易であるものとして用いられる。そして、さらには、本件光学フィルターの製造に際してポリエチレンテレフタレート(PET)等の基板に展伸(キャスト)しやすく、しかも硬化後にこれら基板を剥離しやすいものであることが望ましい。これらの観点を考慮して、熱可塑性樹脂としては、たとえばポリオレフィン系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ブチルゴム系等の各種のものから選択することができる。より好ましくは、非晶性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフィン系樹脂のうちの少くとも1種のものであることが考慮される。
【0017】
これらの熱可塑性樹脂については、これを含む接着層2の軟化温度が200℃以下であることがさらに望ましい。200℃を超える場合には、光学フィルターの製造そのものが難しくなるばかりか、光学フィルターの廃棄時に透明ガラス板の剥離も難しくなる。
【0018】
接着層2は、60℃、95%湿度の条件下において500時間で、透明ガラス板1の剥離が容易に可能であることが望ましい。
【0019】
このような剥離の性能をも左右するものとして本発明の接着層2に銅メッシュ電磁波シールド材21が内包されるが、ここでの「内包」については、銅メッシュが熱可塑性樹脂中に完全に埋め込まれた状態であってもよいしその一部が表面に露出し、熱可塑性樹脂と面一の状態となって接着層2を構成していてもよい。
【0020】
ここでの銅メッシュについては、一般的には、銅線の幅、すなわちライン幅は5〜50μm、好ましく10〜40μmの範囲が、銅線の間隔(ラインピッチ)は、50〜1000μm、好ましくは150〜600μmの範囲が考慮される。このような範囲外にあっては、電磁波シールド性、透明性、そして熱可塑性樹脂との密着性の点において実際的に十分なものとはなりにくい。
【0021】
また、銅メッシュについては、たとえばUV(紫外線)剥離型の樹脂プレート上に配設した銅箔をフォトマスクを用いてのエッチングによってパターニングすることで形成したもの等とすることができる。
【0022】
以上のような銅メッシュ電磁波シールド材21を内包し、熱可塑性樹脂を含む接着層2の厚みについては特に限定的ではないが、10〜200μmの範囲であることが好適に考慮される。
【0023】
本発明のPDP用光学フィルターでは、図1のように接着層2には近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム層3が密着することになるが、この複合フィルム層3は、たとえば防眩層等の他の光機能層と一体化されていてもよい。
【0024】
近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム層としては、銀などの近赤外線反射物質もしくは近赤外線吸収色素や金属酸化物などの近赤外線吸収物質を蒸着等の方法で透明性ベースフィルム上に薄膜を成膜させたもの、上記近赤外線吸収色素や金属酸化物を練り込み法などにより透明樹脂中に分散させたフィルム、あるいは上記近赤外線吸収色素や金属酸化物を溶媒により溶解した樹脂溶液中に混合、均一に分散させ、透明性ベースフィルム上にキャスト法等によりコートしたのち溶媒を除去し近赤外線吸収樹脂層を形成させたものなどで例示でき、近赤外遮蔽機能を有するフィルム層であれば特に限定されない。
【0025】
上記の近赤外線吸収色素の例としては、フタロシアニン系、ナフタロアニン系、ジインモニウム系、ジチオール金属錯体、アゾ化合物、ポリメチン系、アントラキノン系等の色素が挙げられる。また、上記金属酸化物の例としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等が挙げられる
本発明で用いられる前記フィルムは、着色、無着色を問わず、透光性の合成樹脂フィルムであれば、特に限定されない。合成樹脂としては、例えばポリエステル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニール、ABS、ポリエチレン、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネ−トなどの樹脂が挙げられる。このようなフィルムの厚さは、特に限定されないが、通常、50〜1000μm程度の範囲である。
【0026】
また、反射防止層4についても従来公知の手段として様々であってよい。たとえば上記のようなフィルムに、酸化スズ、ITO、酸化クロム、SiO2 等の蒸着膜を配設したもの等として用いることができる。
【0027】
以上のような本発明のPDP用光学フイルターについては各種の公知プロセスの組合わせとして製造することができる。また、公知プロセスをさらに改良、発展させたものであってもよい。図2は、製造プロセスの一実施形態を例示したものである。
【0028】
図2の実施形態では、以下のプロセスとして実施される。
A:前記接着層2を構成する非晶性PET樹脂やアクリル樹脂等の熱可塑性樹脂22を溶剤に溶解する。
B:基板としてのPET樹脂プレート5上に塗布、あるいはキャストする。
C:乾燥処理して溶剤を除する。
D:UV剥離型樹脂プレート6上に配設した銅メッシュ電磁波シールド材21をプレス版7上型に取付け、プレス加工して転写銅メッシュをラミネートする。
E:UVを照射する。
F:UV剥離型樹脂プレート6を剥離する。
G:プレス加工により透明ガラス板1を貼付ける。
H:前記のPET樹脂プレート5を剥離する。
I:近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム層3と反射防止層4とをプレス加工により貼付ける。
【0029】
たとえば以上のプロセスとして、図2に示されたように、本発明のPDP用光学フィルター10が完成されるが、このものを廃棄する際には、たとえば高湿度(60℃、95%湿度、500時間)で処理すると、透明ガラス板1が接着層2より容易に剥離されることになる。
【0030】
そこで、以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。
【0031】
もちろん、以下の例によって本発明が限定されることはない。
【実施例】
【0032】
図2のプロセスに沿って、PDP用光学フィルタを以下のように製造した。
【0033】
非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を、MEK、トルエン、キシレンの混合溶剤に溶解し、厚さ100μmのPET樹脂プレートに塗布した。これを加熱乾燥し、PET樹脂プレート付の熱可塑性透明樹脂層を得た。
【0034】
次に、このPET樹脂プレート付の熱可塑性透明樹脂層表面に、UV剥離型転写メッシュ(凸版印刷株式会社製)をラミネートし、UV処理することで、導電性メッシュが埋め込まれたPET樹脂プレート付の熱可塑性透明樹脂層を得た。
【0035】
次に、前記導電性メッシュが埋め込まれたPET樹脂プレート付の熱可塑性透明樹脂層とガラス板を合わせ、プレスすることにより貼り合わせ、PET樹脂プレートを剥がすことで、導電性メッシュが接着されたガラス板を得た。
【0036】
次に、前記導電性メッシュが接着されたガラス板と近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム並びに反射防止層を合わせ、プレスすることにより、近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム並びに反射防止層、導電性メッシュが貼り合わされた光学フィルタを得た。
【0037】
得られた光学フィルタについて、以下の方法により、ガラスの剥離について検討した。
<耐湿条件>
60℃、95%の恒湿機中で500時間光学フィルタを静置した。
【0038】
熱可塑性透明樹脂層を形成する非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂として次の3種のもの;
1)RIVESTAR(リケンテクノス)
2)UE3600(ユニチカ、Tg=75℃)
3)UE9800(ユニチカ、Tg=85℃)
を用いた場合について、耐湿試験後のガラスの剥離の有無について評価したところいずれの場合も剥離していることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の光学フィルターの構成概要を示した斜視断面図である。
【図2】本発明の光学フィルターの製造プロセスとガラス板の剥離の過程とを例示した図である。
【符号の説明】
【0040】
1 透明ガラス板
2 接着層
21 銅メッシュ電磁波シールド材
22 熱可塑性樹脂
3 近赤外線遮蔽機能を有する複合フィルム層
4 反射防止層
5 PET樹脂プレート
6 UV剥離型樹脂プレート
7 プレス版
10 PDP用光学フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ガラス板の一面上に、順次に熱可塑性樹脂含有の接着層と、近赤外線遮蔽機能を有する複合フイルム層並びに反射防止層とが積層されており、前記接着層には銅メッシュ電磁波シールド材が内包されていることを特徴とするPDP用光学フイルター。
【請求項2】
電磁波シールド材の銅メッシュは、銅線の幅が5〜50μmの範囲内であり、銅線の間隔が50〜1000μmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のPDP用光学フイルター。
【請求項3】
接着層の軟化温度が200℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のPDP用光学フイルター。
【請求項4】
接着層の熱可塑性樹脂は、非晶性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、アクリル系樹脂、およびポリオレフイン系樹脂のうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のPDP用光学フイルター。
【請求項5】
60℃の温度、湿度95%の環境下500時間で接着層から透明ガラス板が剥離可能とされている請求項1から4のいずれか一項に記載のPDP用光学フイルター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−292857(P2008−292857A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139623(P2007−139623)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】