説明

PPAR変調薬としての(3−{3−(2,4−ビス−トリフルオロメチル−ベンジル)−(5−エチル−ピリミジン−2−イル)−アミノ−プロポキシ}−フェニル)−酢酸および関連化合物、ならびに代謝性障害の処置方法

肥満症などの代謝性疾患を処置するためのペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の変調薬としての式Iの化合物を開示する;式中:Arは、単環式ヘテロ芳香族環構造および二環式ヘテロ芳香族環構造よりなる群から選択され;Arは、単環式、二環式および三環式炭素環式アリール環構造よりなる群から選択され;Rは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環よりなる群から選択され;Rは、水素;置換されていてもよいアルキル;置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環;シアノ;ニトロ;アミノ;アミド;ペルハロアルキル;およびハロゲンよりなる群から選択され;Rは、水素;置換されていてもよいアルキルよりなる群から選択され;Bは、5員もしくは6員ヘテロアリール環、または−(CH−C(O)ORであり、Arが二環式または三環式炭素環構造である場合はjは0または1であり、Arが単環式炭素環構造である場合はjは1であり;Rは、水素;置換されていてもよいアルキル;置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環よりなる群から選択される。任意置換基は請求項1に定められている。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願の引照
本発明は、米国仮特許出願60/464,581(2003年4月17日出願)の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は医療化学の分野のものである。より詳細には、本発明はアリール化合物、およびこれらの化合物を用いて核内受容体仲介プロセス、特にペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)により仲介されるプロセスを変調することにより種々の疾患を処置する方法に関する。
【0003】
発明の背景
ペルオキシソーム増殖剤は、構造的に多様な群の化合物であり、哺乳動物に投与すると、肝および腎ペルオキシソームの大きさおよび個数の劇的な増大を誘発し、かつ同時にβ−酸化サイクルに必要な酵素の発現を増大させることによりペルオキシソームの脂肪酸代謝能の増大を誘発する(Lazarow and Fujiki, Ann. Rev. Cell. Biol. 1: 489-530 (1985);Vamecq and Draye, Essays Biochem 24; 1115-225 (1989);およびNelali et al., Cancer Res. 48: 5316-5324 (1988))。1種類以上のPPARと活性化その他の形でと相互作用する化合物は、動物モデルにおいてトリグリセリドおよびコレステロールの濃度の調節に関与するとされている。この群に含まれる化合物は、フィブラートクラスの脂質低下薬、除草剤、およびフタラート系可塑剤である(Reddy and Lalwani, Crit. Rev. Toxicol. 12: 1-58 (1983))。ペルオキシソーム増殖は、食事因子または生理的因子、たとえば高脂肪食および寒冷順化により誘発することもできる。
【0004】
PPARにより変調される生物プロセスは、PPAR受容体リガンドに応答性の受容体または受容体の組合わせにより変調されるものである。これらのプロセスには、たとえば下記のものが含まれる:血漿脂質輸送および脂肪酸異化、インスリン感受性および血糖値の調節、これらは低血糖症/高インスリン血症に関与する(たとえば、異常な膵臓β細胞機能、インスリン分泌性腫瘍、および/またはインスリンに対する自己抗体、インスリン受容体、もしくは膵臓β細胞に対して刺激性の自己抗体に起因する自己免疫性低血糖症から起きる);マクロファージ分化、これはアテローム硬化班形成、炎症性応答、発癌、過形成および脂肪細胞分化をもたらす。
【0005】
PPARのサブタイプには、PPAR−アルファ、PPAR−デルタ(NUC1、PPAR−ベータおよびFAARとしても知られる)、および2種類のイソ型PPAR−ガンマが含まれる。これらのPPARは、PPAR応答エレメント(PPRE)と呼ばれるDNA配列エレメントに結合することにより標的遺伝子の発現を調節することができる。現在までにPPREは脂質代謝を調節する多数の遺伝子のエンハンサー中に同定されており、これはPPARが脂肪形成シグナル伝達カスケードおよび脂質恒常性に中心的な役割を果たしていることを示唆する(H.Keller and W.Wahli, Trends Endoodn. Met. 291-296, 4 (1993))。
【0006】
ペルオキシソーム増殖剤がそれらの多面的効果を及ぼす機序の洞察は、これらの化学物質により活性化される多数の核内ホルモン受容体スーパーファミリーの同定により得られた(Isseman and Green, Nature 347-645-650 (1990))。その後、PPAR−アルファ(またはPPARα)と呼ばれる受容体が多様な媒体および長鎖脂肪酸により活性化され、ラットのアシル−CoAオキシダーゼおよびヒドラターゼ−デヒドロゲナーゼ(ペルオキシソームのβ−酸化に必要な酵素)ならびにウサギのシトクロムP450 4A6、脂肪酸ω−ヒドロキシラーゼをコードする遺伝子の発現を刺激することが示された(Gottlicher et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4653-4657 (1992);Tugwood et al., EMBO J 11: 433-439 (1992);Bardot et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 192: 37-45 (1993);Muerhoff et al., J. Biol. Chem. 267: 19051-19053 (1992);およびMarcus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(12): 5723-5727 (1993))。
【0007】
核内受容体PPAR−ガンマ(またはPPARγ)の活性剤、たとえばトログリタゾン(troglitazone)は、II型糖尿病患者においてインスリン作用を増強し、血清グルコースを低下させ、血清トリグリセリド濃度の低下にわずかではあるが有意の影響を及ぼすことが、臨床的に示された。たとえばD.E.Kelly et al., Curr. Opin. Endocrinol. Diabetes, 90-96, 5(2), (1998);M.D.Johnson et al., Ann. Pharmacother., 337-348, 32(3), (1997);およびM.Leutenegger et al., Curr. Ther. Res., 403-416, 58(7), (1997)を参照されたい。
【0008】
PPAR−デルタ(またはPPARδ)は、体内で広く発現し、異脂肪血症その他の疾患の処置のための有用な分子標的であることが示された。たとえばインスリン抵抗性肥満症アカゲザルにおける最近の研究で、有効かつ選択的なPPAR−デルタ化合物が用量応答性でVLDLを減少させ、HDLを増加させることが示された(Oliver et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 5305, 2001)。
【0009】
3種類のイソ型PPARがあり、それらはすべてがヒトの体内でエネルギー恒常性その他の重要な生物プロセスに重要な役割を果たすことが示され、代謝性疾患その他の疾患の処置のための重要な分子標的であることが示された(Willson, et al., J. Med. Chem. 43: 527-550 (2000)を参照)ので、選択的に1種類のPPARイソ型のみと相互作用しうる化合物または複数のイソ型PPARと相互作用しうる化合物を同定することが当技術分野で求められている。そのような化合物には、たとえば肥満症の治療または予防、糖尿病、異脂肪血症、代謝性X症候群の治療または予防など多様な用途、および他の用途があるであろう。
【0010】
発明の概要
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)により仲介される核内受容体プロセスを変調しうる化合物、およびそれらの変調を代謝性の疾患、状態および障害の処置に使用する方法を本明細書に記載する。ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)の活性を仲介および/または阻害する炭素環式アリール誘導体化合物、およびそれらの化合物を含有する医薬組成物をも記載する。治療または予防のためのそれらの化合物および組成物の使用、ならびに有効量のそれらの化合物を投与することにより代謝性の疾患、状態および障害を処置する方法をも記載する。
【0011】
1観点において、化合物は式Iの構造をもつ:
【0012】
【化1】

【0013】
[式中:
Arは、単環式ヘテロ芳香族環構造および二環式ヘテロ芳香族環構造よりなる群から選択され;
Arは、単環式、二環式および三環式炭素環式アリール環構造よりなる群から選択され;
は、下記よりなる群から選択され:
下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環、ハロゲン、ペルハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、およびアミノ;
下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環:置換されていてもよいC−C直鎖、分枝鎖または環式の飽和または不飽和アルキル;アルコキシ;シアノ;ニトロ;アミノ;アミド;ペルハロアルキル;およびハロゲン;
は、下記よりなる群から選択され:
水素;
下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環、ハロゲン、ペルハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、およびアミノ;
下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環:置換されていてもよいC−C直鎖、分枝鎖または環式の飽和または不飽和アルキル;アルコキシ;ハロゲン;およびペルハロアルキル;
シアノ;ニトロ;アミノ;アミド;ペルハロアルキル;およびハロゲン;
は、下記よりなる群から選択され:水素;下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環;ヒドロキシ;ハロゲン;アミノ;ニトロ;およびシアノ;
Bは、5員もしくは6員ヘテロアリール環、または−(CH−C(O)ORであり、Arが二環式または三環式炭素環構造である場合はjは0または1であり、Arが単環式炭素環構造である場合はjは1であり;
は、下記よりなる群から選択される:
水素;
下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環;
下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環:置換されていてもよいC−C直鎖、分枝鎖または環式の飽和または不飽和アルキル]
またはその医薬的に許容できるN−オキシド、医薬的に許容できるプロドラッグ、医薬的に活性である代謝産物、医薬的に許容できる塩、医薬的に許容できるエステル、医薬的に許容できるアミド、もしくは医薬的に許容できる溶媒和物。
【0014】
この観点の1態様において、Arはフェニル、ナフチル、アントラセン、およびフェナントレンよりなる群から選択される。この観点の他の態様において、Arはフェニルである。この観点のさらに他の態様において、化合物は式(II)の構造をもつ:
【0015】
【化2】

【0016】
この観点の他の別態様において、Arはナフチルである。この観点の他の態様において、Arは所望によりナフチルであるか、あるいは化合物は式(II)の構造をもつ;便宜上、Arについてこれら2つの別選択を含むこの態様を、態様2と呼ぶ。態様2の他の態様において、Rはアルキルであり、これらは1個以上の置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環で置換されていてもよい。態様2のさらに他の態様において、アルキルは低級アルキルである。態様2のさらに他の態様において、低級アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される。
【0017】
態様2の別態様において、Rは置換されていてもよいフェニルで置換されたアルキルである(すなわち、炭素環式環がフェニルである)。さらに他の態様において、フェニルは、低級アルキル、ハロゲン、ペルハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、およびアミノよりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。さらに他の態様において、置換基はペルハロアルキルである。さらに他の態様において、ペルハロアルキルはトリフルオロメチルである。
【0018】
式(I)の構造をもつ化合物の他の態様において、Rは4−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチルである。
式(I)の構造をもつ化合物のさらに他の態様において、Arは、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【0019】
【化3】

【0020】
よりなる群から選択される。さらに他の態様において、Arはピリジン、ピリミジン、
【0021】
【化4】

【0022】
である。さらに他の態様において、Arはピリミジンである。
態様2(前記を参照)の他の態様において、Rは置換されていてもよいアルキルである。さらに他の態様において、アルキルは低級アルキルである。さらに他の態様において、低級アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される。さらに他の態様において、Rはエチルである。
【0023】
式(I)の構造をもつ化合物の他の態様において、Rは水素、ハロゲン、または置換されていてもよいアルキルである。1態様において、Rは水素である。別態様において、Rは置換されていてもよいアルキルであり、これは置換されていてもよい低級アルキルである。さらに他の態様において、置換されていてもよい低級アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される。さらに他の態様において、Rはメチルである。
【0024】
式(I)の構造をもつ化合物の一組の別態様において、(a)Ar上のBとプロピルオキシ置換基は互いにオルトにある;(b)Ar上のBとプロピルオキシ置換基は互いにメタにある;(c)Ar上のBとプロピルオキシ置換基は互いにパラにある。
【0025】
式(I)の構造をもつ化合物の他の態様において、Bは、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【0026】
【化5】

【0027】
よりなる群から選択されるヘテロアリール環である。他の態様において、Bはテトラゾールである。
式(I)の構造をもつ化合物の他の態様において、Bは−(CH−C(O)ORである。他の態様において、Rは水素または置換されていてもよいアルキルである。この選択の1態様において、Rは水素である。別態様において、Rはアルキルである。この後者の態様の他の態様において、アルキルは低級アルキルである。さらに他の態様において、低級アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される。
【0028】
態様2(前記を参照)の他の態様において、Arは、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【0029】
【化6】

【0030】
よりなる群から選択される。さらに他の態様において、Arはピリジン、ピリミジン、
【0031】
【化7】

【0032】
である。さらに他の態様において、Arはピリミジンである。
態様2(前記を参照)の他の態様において、Bは、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【0033】
【化8】

【0034】
よりなる群から選択されるヘテロアリール環である。他の態様において、Bはテトラゾールである。
態様2の他の態様において、Bは−(CH−C(O)ORである。さらに他の態様において、Rは水素または置換されていてもよいアルキルである。この態様の別態様において、Rは水素である。この態様の別態様において、Rは置換されていてもよいアルキルである。この後者の別態様の他の態様において、アルキルは低級アルキルである。さらに他の態様において、低級アルキルは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される。
【0035】
式(I)の構造をもつ化合物の他の態様において、化合物は
【0036】
【化9】

【0037】
またはその医薬的に許容できるN−オキシド、医薬的に許容できるプロドラッグ、医薬的に活性である代謝産物、医薬的に許容できる塩、医薬的に許容できるエステル、医薬的に許容できるアミド、もしくは医薬的に許容できる溶媒和物よりなる群から選択される。
【0038】
式(I)の構造をもつ化合物の他の態様において、化合物は
【0039】
【化10】

【0040】
またはその医薬的に許容できるN−オキシド、医薬的に許容できるプロドラッグ、医薬的に活性である代謝産物、医薬的に許容できる塩、医薬的に許容できるエステル、医薬的に許容できるアミド、もしくは医薬的に許容できる溶媒和物よりなる群から選択される。
【0041】
式IIIの構造をもつ化合物:
【0042】
【化11】

【0043】
本明細書中に示す他の観点は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)機能を変調する方法であって、式(I)の構造をもつ化合物とPPARを接触させ、細胞表現型における、細胞増殖における、PPARの活性における、またはPPARと天然結合パートナーの結合における変化をモニターすることを含む方法である。この観点の他の態様において、PPARはPPARα、PPARδ、およびPPARγよりなる群から選択される。
【0044】
本明細書中に示す他の観点は、哺乳動物において脂肪細胞の形成を阻害する方法であって、療法有効量の式(I)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0045】
この観点の1態様においては、療法有効量の、Arがフェニルである式(I)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与する。この観点の他の態様においては、療法有効量の、Arがナフチルである式(I)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与する。この観点の他の態様においては、療法有効量の式(II)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与する。
【0046】
本明細書中に示す他の観点は、哺乳動物において脂肪細胞の形成を阻害する方法であって、療法有効量の式(III)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与することを含む方法である。
【0047】
本明細書中に示す他の観点は、疾患を処置する方法であって、その必要がある患者を同定し、療法有効量の式(I)の構造をもつ化合物をその患者に投与することを含む方法である。他の態様において、疾患はPPAR変調性の疾患または状態である。他の態様または別態様において、疾患は代謝性の障害または状態である。他の態様または別態様において、疾患は、肥満症、糖尿病、高インスリン血症、代謝性X症候群、多嚢胞卵巣症候群、更年期、酸化的ストレス関連障害、組織傷害に対する炎症性応答、気腫の発病、虚血関連の臓器傷害、ドキソルビシン誘発心傷害、薬物誘発肝毒性、アテローム硬化症、および高毒性肺傷害よりなる群から選択される。そのような症例の1つにおいては、療法有効量の、Arがフェニルである式(I)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与する。そのような他の症例においては、療法有効量の、Arがナフチルである式(I)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与する。そのようなさらに他の症例においては、療法有効量の式(II)の構造をもつ化合物を哺乳動物に投与する。
【0048】
本明細書中に示す他の観点は、PPAR変調性の疾患または状態を処置する方法であって、その必要がある患者を同定し、療法有効量の式(III)の構造をもつ化合物をその患者に投与することを含む方法である。
【0049】
本明細書中に示す他の観点は、式(I)の構造をもつ化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物である。この観点の1態様において、Arはアリールである。この観点の他の態様において、Arはナフチルである。この観点のさらに他の態様において、化合物は式(II)の構造をもつ。本明細書中に示す他の観点は、式(III)の構造をもつ化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物である。
【0050】
発明の詳細な記述
本発明は、置換されていてもよい複素環式部分に−O−(CH−NR−基により結合した置換された炭素環式アリール部分が、少なくとも1つのペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)機能を変調し、さらにhPPAR−ガンマの選択的活性化をもたらすことができることを開示する。炭素環式アリール部分は、1態様においてはナフチル基であり、他の態様においてはフェニル基である。具体的な1態様において、炭素環式アリール基がフェニル基である場合、−(CH)C(O)OR置換基と連結−O−(CH−NR−基はフェニル環上で互いにメタに配向している。
【0051】
本明細書に記載する化合物は、PPAR−デルタとPPAR−ガンマ、もしくはPPAR−アルファとPPAR−デルタの両方、または3つのPPARサブタイプすべてを活性化し、または主にhPPAR−ガンマ、hPPAR−アルファもしくはhPPAR−デルタを選択的に活性化することができる。
【0052】
本発明は、少なくとも1種類のペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)機能を変調する方法であって、PPARを式Iの化合物と接触させる工程を含む方法に関する。細胞表現型における、細胞増殖における、PPARの活性における、またはPPARと天然結合パートナーの結合における変化をモニターすることができる。そのような方法は、疾患の処置、生物学的アッセイ、細胞アッセイ、生化学的アッセイなどの様式であってもよい。
【0053】
本発明は、疾患を処置する方法であって、その必要がある患者を同定し、本明細書に記載する療法有効量の式Iの化合物をその患者に投与することを含む方法を記載する。したがってある態様において、本発明方法により処置される疾患は、肥満症、糖尿病、高インスリン血症、代謝性X症候群、多嚢胞卵巣症候群、更年期、酸化的ストレス関連障害、組織傷害に対する炎症性応答、気腫の発病、虚血関連の臓器傷害、ドキソルビシン誘発心傷害、薬物誘発肝毒性、アテローム硬化症、および高毒性肺傷害よりなる群から選択される。
【0054】
I.化学用語
”アセチル”基は、−C(=O)CH基を表わす。
用語”アシル”には、化合物にカルボニル官能基により結合したアルキル、アリール、またはヘテロアリール置換基が含まれる(たとえば−C(O)−アルキル、−C(O)−アリールなど)。
【0055】
”アルコキシ”基は、RO−基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
”アルコキシアルコキシ”基は、ROR’O−基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
【0056】
”アルコキシアルキル”基は、R’OR−基を表わし、ここでRおよびR’は本明細書に定めたものである。
本明細書中で用いる用語”アルキル”は、脂肪族炭化水素基を表わす。アルキル部分は飽和”アルキル”基であってもよく、これはアルケンまたはアルキン部分を含まないことを意味する。アルキル部分は不飽和”アルキル”であってもよく、これは少なくとも1つのアルケンまたはアルキン部分を含むことを意味する。”アルケン”部分は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む基を表わす。”アルキン”部分は、少なくとも2個の炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む基を表わす。アルキル部分は、飽和または不飽和のいずれも、分枝鎖、直鎖または環式であってよい。
【0057】
”アルキル”部分は、1〜40個の炭素原子をもつことができる(本明細書中に現われる場合は常に、”1〜40”などの数値範囲は示された範囲の整数を表わす。たとえば”1〜40個の炭素原子”は、アルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、最高40個(これを含む)の炭素原子からなることを意味するが、この定義は数値範囲を表示しない用語”アルキル”の出現をも含む)。アルキル基は、1〜20個の炭素原子をもつ”中級アルキル”であってもよい。アルキル基は、1〜5個の炭素原子をもつ”低級アルキル”であってもよい。本発明化合物のアルキル基を”C−Cアルキル”またはこれに類する表示で表わすこともできる。例示にすぎないが、”C−Cアルキル”はアルキル鎖中に1〜4個の炭素原子があることを示し、すなわちアルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、およびt−ブチルよりなる群から選択される。一般的なアルキル基にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基は置換されていてもよい。
【0058】
用語”アルキルアミノ”は、−NRR’基を表わし、ここでRおよびR’は本明細書に定めたものである。RとR’は一緒になって環系を形成してもよい。
用語”アルキレン”は、2末端で置換されたアルキル基(すなわち二価の基)を表わす。たとえばメチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、およびプロピレン(−CHCHCH−)がアルキレン基の例である。同様に”アルケニレン”および”アルキニレン”基は、それぞれ二価のアルケンおよびアルキン部分を表わす。アルキレン基は置換されていてもよい。
【0059】
”アミド”は、式−C(O)NHRまたは−NHC(O)Rをもつ化合物部分であり、ここでRは置換されていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素により結合)およびヘテロ脂肪族(環炭素により結合)よりなる群から選択される。アミドは、本発明の分子に結合したアミノ酸またはペプチド分子であってもよく、これによりプロドラッグが形成される。本発明化合物のアミン、ヒドロキシ、またはカルボキシ側鎖は、いずれもアミド化されていてもよい。そのようなアミドの形成を達成するために用いる方法および具体的な基は当業者に既知であり、Green and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 第3版, John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク, 1999などの参考文献中に容易に見いだすことができる。その全体を本明細書に援用する。
【0060】
”C−アミド”基は、−C(=O)−NR基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
”N−アミド”基は、RC(=O)NH−基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
【0061】
用語”芳香族”または”アリール”は、共役パイ電子系を含む少なくとも1つの環をもつ芳香族基を表わし、炭素環式アリール(たとえばフェニル)および複素環式アリール(または”ヘテロアリール”もしくは”ヘテロ芳香族”)基(たとえばピリジン)の両方を含む。この用語には、単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基が含まれる。用語”炭素環式”は、1以上の共有結合閉環構造を含む化合物を表わし、環の主鎖を形成する原子がすべて炭素原子であることを表わす。したがってこの用語は、環の主鎖が炭素とは異なる少なくとも1個の原子を含む複素環式環から炭素環式環を区別する。芳香族基またはアリール基は置換されていてもよい。
【0062】
”O−カルバミル”基は、−OC(=O)−NR基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
”N−カルバミル”基は、ROC(=O)NH−基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
【0063】
”O−カルボキシ”基は、RC(=O)O−基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
”C−カルボキシ”基は、−C(=O)OR基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
【0064】
”シアノ”基は、−CN基を表わす。
用語”シクロアルキル”は、炭素と水素のみを含有する単環式基または多環式基を表わし、飽和、部分飽和または完全不飽和であってよい。シクロアルキル基は置換されていてもよい。好ましいシクロアルキル基には、3〜12個の環原子、より好ましくは5〜10個の環原子をもつ基が含まれる。シクロアルキル基の具体例には、下記の部分が含まれる:
【0065】
【化12】

【0066】
用語”エステル”は、式−COORをもつ化合物部分を表わし、ここでRは置換されていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素により結合)およびヘテロ脂肪族(環炭素により結合)よりなる群から選択される。本発明化合物のアミン、ヒドロキシ、またはカルボキシ側鎖は、いずれもエステル化されていてもよい。そのようなエステルの形成を達成するために用いる方法および具体的な基は当業者に既知であり、Green and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 第3版, John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク, 1999などの参考文献中に容易に見いだすことができる。その全体を本明細書に援用する。
【0067】
用語”ハロ”または”ハロゲン”は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを表わす。好ましいハロ基はフルオロ、クロロおよびブロモである。
用語”ハロアルキル”、”ハロアルケニル”、”ハロアルキニル”および”ハロアルコキシ”には、1個以上のハロ基またはその組合わせで置換されたアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアルコキシ構造が含まれる。用語”フルオロアルキル”および”フルオロアルコキシ”には、それぞれハロがフッ素であるハロアルキルおよびハロアルコキシ基が含まれる。
【0068】
用語”ヘテロアルキル”、”ヘテロアルケニル”および”ヘテロアルキニル”には、置換されていてもよいアルキル、アルケニルおよびアルキニル基であって、炭素以外の原子、たとえば酸素、窒素、硫黄、リンまたはその組合わせから選択される1個以上の骨格鎖原子を含有するものが含まれる。
【0069】
用語”ヘテロアリール”または”ヘテロ芳香族”は、窒素、酸素および硫黄から選択される1個以上の環異種原子を含有するアリール基を表わす。ヘテロアリール基は置換されていてもよい。N−含有”ヘテロ芳香族”または”ヘテロアリール”部分は、少なくとも1個の環骨格原子が窒素である芳香族基を表わす。多環式ヘテロアリール基は、縮合または非縮合であってよい。アリール基の具体例には、下記の部分などが含まれる:
【0070】
【化13】

【0071】
用語”複素環”は、O、SおよびNから選択される1〜4個の異種原子を含有するヘテロ芳香族基およびヘテロ脂肪族基を表わし、複素環式基はそれぞれその環系中に4〜10個の原子をもち、ただしそれらの基の環は2個の隣接OまたはS原子を含むことはない。非芳香族−複素環式基にはそれらの環系中に4個の原子のみをもつ基が含まれるが、芳香族複素環式基はそれらの環系中に少なくとも5個の原子をもたなければならない。複素環式基には、ベンゾ縮合環系が含まれる。4員複素環式基の例は、アゼチジニル(アゼチジンから誘導)である。5員複素環式基の例は、チアゾリルである。6員複素環式基の例はピリジルであり、10員複素環式基の例はキノリニルである。非芳香族−複素環式基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H−インドリルおよびキノリニジニルである。芳香族複素環式基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナタチリジニル、およびフロピリジニルである。上記の群から選択されるこれらの基は、C−結合、またはそれが可能な場合はN−結合していてもよい。たとえばピロールから誘導される基は、ピロル−1−イル(N−結合)またはピロル−3−イル(C−結合)であってよい。さらに、イミダゾールから誘導される基は、イミダゾル−1−イルもしくはイミダゾル−3−イル(両方ともN−結合)、またはイミダゾル−2−イル、イミダゾル−4−イルもしくはイミダゾル−5−イル(すべてC−結合)であってよい。複素環式基には、ベンゾ縮合環系、および1もしくは2個のオキソ(=O)部分で置換された環系、たとえばピロリジン−2−オンが含まれる。複素環式基は置換されていてもよい。
【0072】
”ヘテロ脂肪族”基は、窒素、酸素および硫黄から選択される少なくとも1個の異種原子を含有するシクロアルキル基を表わす。これらの基はアリールまたはヘテロアリールと縮合していてもよい。ヘテロシクロアルキル基の具体例には、下記の部分などが含まれる:
【0073】
【化14】

【0074】
用語”員環”は、いずれの環構造も含むことができる。用語”員”は、環を構成する骨格原子の数を表わす。たとえばシクロヘキシル、ピリジン、ピランおよびチオピランは6員環であり、シクロペンチル、ピロール、フランおよびチオフェンは5員環である。
【0075】
”イソシアナト”基は、−NCO基を表わす。
”イソチオシアナト”基は、−NCS基を表わす。
”メルカプトアルキル”基は、R’SR−基を表わし、ここでRおよびR’は本明細書に定めたものである。
【0076】
”メルカプトメルカプチル”基は、RSR’S−基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
”メルカプチル”基は、RS−基を表わし、ここでRは本明細書に定めたものである。
【0077】
本明細書中で用いる用語”求核体”および”求電子体”は、合成および/または物理有機化学に一般的なそれらの通常の意味をもつ。炭素求電子体は一般に、炭素自体のものより大きなポーリング電子陰性度をもつ原子または基で置換された1個以上のアルキル、アルケニル、アルキニルまたは芳香族(sp、spまたはsp混成)炭素原子を含む。炭素求電子体の例には、カルボニル(アルデヒド、ケトン、エステル、アミド)、オキシム、ヒドラゾン、エポキシド、アジリジン類、ハロゲン化アルキル、−アルケニルおよび−アリール、アシル、スルホナート(アリール、アルキルなど)が含まれるが、これらに限定されない。炭素求電子体の他の例には、電子吸引基と電子的に共役した不飽和炭素原子が含まれ、その例はアルファ不飽和ケトン類の6−炭素またはフッ素置換アリール基中の炭素原子である。特に厳密に制御された生成物を得るように炭素求電子体を形成する方法は、有機合成の専門家に既知である。
【0078】
用語”ペルハロアルキル”は、すべての水素原子がハロゲン原子で交換されたアルキル基を表わす。
数値の表示なしにそのものとして現われる置換基RまたはR’は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール(環炭素により結合)およびヘテロ脂環式基(環炭素により結合)よりなる群から選択される、置換されていてもよい置換基を表わす。
【0079】
”スルフィニル”基は、−S(=O)−R基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
”N−スルホンアミド”基は、RS(=O)NH−基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
【0080】
”S−スルホンアミド”基は、−S(=O)NR基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
”N−チオカルバミル”基は、ROC(=S)NH−基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
【0081】
”O−チオカルバミル”基は、−OC(=S)−NR基を表わし、Rは本明細書に定めたものである。
”チオシアナト”基は、−CNS基を表わす。
【0082】
”トリハロメタンスルホンアミド”基は、XCS(=O)NR−基を表わし、XおよびRは本明細書に定めたものである。
”トリハロメタンスルホニル”基は、XCS(=O)−基を表わし、Xはハロゲンである。
【0083】
別途指示しない限り、置換基が”置換されていてもよい”とみなされる場合、それは置換基が個々に独立して下記のものから選択される1個以上の基で置換されていてもよい基であることを意味する:アルキル、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、およびアミノ(モノ−およびジ−置換アミノ基を含む)、ならびにその保護された誘導体。上記置換基の保護された誘導体を形成しうる保護基は当業者に既知であり、前記のGreen and Wutsなどの参考文献中にみられる。
【0084】
本発明の分子態様は、1以上のキラル中心をもつ可能性があり、各中心はRまたはS立体配置で存在することができる。本発明には、すべてのジアステレオマー、鏡像異性体、およびエピマー形、ならびにその適宜な混合物が含まれる。立体異性体は、所望により当技術分野で既知の方法、たとえばキラルクロマトグラフィーカラムによる立体異性体の分離によって得ることができる。さらに、本発明化合物は幾何異性体として存在する可能性がある。本発明は、すべてのシス、トランス、シン、アンチ、entgegen(E、反対側)、およびzusammen(Z、同じ側)異性体、ならびにその適宜な混合物が含まれる。
【0085】
場合により、化合物は互変異性体として存在する可能性がある。すべての互変異性体が式Iに含まれ、本発明により提供される。
さらに本発明化合物は、溶媒和していない形、および医薬的に許容できる溶媒、たとえば水、エタノールなどと溶媒和した形で存在する可能性がある。一般に、本発明の目的に関して溶媒和形は非溶媒和形と均等であるとみなされる。
【0086】
II.タンパク質機能の変調方法
他の態様において、本発明は少なくとも1つのペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)機能を変調する方法であって、PPARを本明細書に記載する式Iの化合物と接触させる工程を含む方法に関する。細胞表現型における、細胞増殖における、PPARの活性における、またはPPARと天然結合パートナーの結合における変化をモニターすることができる。そのような方法は、疾患の処置、生物学的アッセイ、細胞アッセイ、生化学的アッセイなどの様式であってもよい。特定の態様において、PPARはPPARα、PPARδ、およびPPARγよりなる群から選択できる。
【0087】
用語”活性化”は、PPARの細胞機能を増強することを表わす。用語”阻害する”は、PPARの細胞機能を低下させることを表わす。PPAR機能は、天然結合パートナーとの相互作用または触媒活性であってもよい。
【0088】
用語”細胞表現型”は、細胞もしくは組織、または細胞もしくは組織の機能の外見を表わす。細胞または組織の表現型の例は、細胞サイズ(縮小または拡大)、細胞増殖(細胞数の増加または減少)、細胞分化(細胞形状の変化または無変化)、細胞の生存、アポトーシス(細胞死)、または代謝栄養素の利用(たとえばグルコース取込み)である。細胞の表現型の変化または無変化は、当技術分野において既知の方法で容易に測定される。
【0089】
用語”細胞増殖”は、一群の細胞が分裂する速度を表わす。容器内で増殖している細胞の数は、当業者が一般的な光学顕微鏡を用いて一定面積内の細胞数を視覚計数すると定量できる。あるいは細胞増殖速度は、適宜な媒質中の細胞密度を光学的に測定する実験装置により定量できる。
【0090】
本明細書中で用いる用語”接触させる”は、本発明化合物がPPAR活性に直接に、すなわちPPAR自体との相互作用により、または間接的に、たとえばPPARの活性が依存している他の分子との相互作用により、影響を及ぼすことができるような様式で、本発明化合物と標的PPARを一緒にすることを表わす。そのような”接触”は、試験管、ペトリ皿、実験動物(たとえばネズミ、ハムスターまたは霊長類)などにおいて行うことができる。試験管内での接触は、化合物と当該PPARを使用するか、あるいは全細胞を使用することができる。細胞を培養皿内で維持または増殖させ、その環境で化合物と接触させることもできる。これに関連して、特定化合物がPPAR関連障害に効果を及ぼす能力、すなわちその化合物のIC50を、より複雑な生物についてその化合物のインビボ使用を試みる前に判定できる。生物体外にある細胞について、PPARを化合物と接触させるための多数の方法があり、当業者に周知である。これには、細胞への直接マイクロインジェクションおよび多数の膜貫通キャリヤー法が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
用語”変調する(modulate)”は、本発明化合物がPPARの機能を変化させる能力を表わす。変調薬は、PPARの活性を増強し、PPARに暴露させる化合物の濃度に応じてPPARの活性を増強または阻害し、あるいはPPARの活性を阻害することができる。用語”変調する”は、PPARと天然結合パートナーの間に複合体が形成される確率を増大または低下させることにより、PPARの機能を変化させることをも表わす。変調薬は、PPARと天然結合パートナーの間にそのような複合体が形成される確率を増大させ、PPARに暴露させる化合物の濃度に応じてPPARと天然結合パートナーの間に複合体が形成される確率を増大または低下させ、あるいはPPARと天然結合パートナーの間に複合体が形成される確率を低下させることができる。
【0092】
用語”モニターする”は、本発明化合物をこの方法の細胞に添加した効果を観察することを表わす。この効果は、細胞表現型における、細胞増殖における、PPARの活性における、またはPPARと天然結合パートナーの相互作用における変化で表わすことができる。もちろん、用語”モニターする”には、変化が実際に起きたか否かを検出することが含まれる。
【0093】
A.アッセイ法の例
以下のアッセイ法は例示のために示すにすぎない。化合物がhPPAR−ガンマ、hPPAR−アルファ、またはPPAR−デルタに結合する能力を、シンチレーション近接アッセイ(SPA)により試験することができる。PPARリガンド結合ドメイン(LBO)を大腸菌(E.coli)においてポリHisタグ付き融合タンパク質として発現させ、精製することができる。次いでLBOをビオチンで標識し、ストレプトアビジン修飾したシンチレーション近接ビーズに固定化する。次いで、ビーズを一定量の適宜な放射性リガンド、すなわちPPARγについてはeH−BRL 49653、hPPAR−アルファについては2-(4(2-(2,3-ジトリチオ-1-ヘプチル-3-(2,4-ジフルオロフェニル)ウレイド)エチル)フェノキシ)-2-メチルブタン酸(WO 1008002に記載)、PPAR−デルタについてはGW2433(このリガンドの構造および合成については、Brown, P.J. et al., Chem. Biol. 1997, 4, 909-918を参照)および種々の濃度の被験化合物と共にインキュベートし、平衡化した後、ビーズに結合した放射能をシンチレーション計数計により測定する。50μMの対応する非標識リガンドを入れた対照ウェルにより評価した非特異的結合の量を、各データ点から差し引く。被験化合物それぞれについて、リガンド濃度−対−結合した放射性リガンドのCPMのプロットを作成し、単純な競合結合を想定してデータの非線形最少二乗フィットから見掛けK値を推定する。このアッセイ法の詳細は他に報告されている(Blanchard,S.G. et al., ”ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体ガンマのリガンド結合ドメインについてのシンチレーション・プロキシミティ・アッセイ法の開発”,Anal. Biochem. 1998, 257, 112-119を参照)。
【0094】
B.トランスフェクションアッセイ
以下のトランスフェクションアッセイ法は例示のために示すにすぎない。化合物がPPARサブタイプを活性化する能力を調べるために、CV−1細胞での一過性トランスフェクションアッセイにおいて機能力価についてスクリーニングすることができる(トランス活性化アッセイ)。同一の標的遺伝子に対する受容体サブタイプの相対転写活性を比較するために、かつ内因性受容体の活性化により結果の解釈が複雑になるのを防ぐために、これまでに確立されたキメラ受容体系を用いた。たとえば、Lehmann,J.M.; Moore,L.B.; Smith-Oliver, T.A,; Wilkinson, W.O.; Willson,T.M.; Kliewer,S.A., 抗糖尿病薬チアゾリジンジオンはペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)に対する高親和性リガンドである, J. Biol. Chem., 1995, 270, 12953-6を参照されたい。ネズミおよびヒトPPAR−アルファ、PPAR−ガンマおよびPPAR−デルタに対するリガンド結合ドメインを、それぞれ酵母転写因子GAL4 DNA結合ドメインに融合させる。分泌型胎盤アルカリ性ホスファターゼ(SPAP)およびp−ガラクトシダーゼの発現を誘導するGAL4 DNA結合部位の5コピーを含むレポーター構築体と共に、各PPARキメラに対する発現ベクターを用いて、CV−1細胞を一過性トランスフェクションした。16時間後、10%脱脂ウシ胎仔血清および適宜な濃度の被験化合物を補充したDME培地に、培地を交換する。さらに24時間後、細胞抽出物を調製し、アルカリ性ホスファターゼおよびp−ガラクトシダーゼ活性をアッセイする。p−ガラクトシダーゼ活性を内標準として用いて、アルカリ性ホスファターゼ活性をトランスフェクション効率に関して補正した(たとえばKliewer,S.A., et al., Cell 1995, 83, 813-819を参照)。hPPARγアッセイには、ロシグリタゾン(rosiglitazone)を陽性対照として使用する。hPPAR−アルファおよびhPPAR−デルタアッセイにおける陽性対照は、2-[4-(2-(3-(4-フルオロフェニル)-1-ヘプチルウレイド)エチル)-フェノキシ]-2-メチルプロピオン酸であった。これはBrown, Peter J., et al., Synthesis (7), 778-782 (1997)、またはWO 9736579の記載に従って製造できる。
【0095】
III.処置される標的疾患
他の態様において本発明は、疾患を処置する方法であって、その必要がある患者を同定し、本明細書に記載する療法有効量の式Iの化合物をその患者に投与することを含む方法を記載する。
【0096】
PPARにより変調される生物プロセスは、本明細書に記載するPPAR受容体リガンドに応答性の受容体または受容体の組合わせにより変調されるものである。これらのプロセスには、たとえば下記のものが含まれる:血漿脂質輸送および脂肪酸異化、インスリン感受性および血糖値の調節、これらは低血糖症/高インスリン血症に関与する(たとえば、異常な膵臓β細胞機能、インスリン分泌性腫瘍、および/またはインスリンに対する自己抗体、インスリン受容体、もしくは膵臓β細胞に対して刺激性の自己抗体に起因する自己免疫性低血糖症から起きる);マクロファージ分化、これはアテローム硬化班形成、炎症性応答、発癌、過形成および脂肪細胞分化をもたらす。
【0097】
非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)、すなわちII型糖尿病は、より一般的な型の糖尿病であり、90〜95%の高血糖症患者がこの型の糖尿病に罹患している。インスリンの代謝作用に対する抵抗性は、非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)の鍵となる特色のひとつである。インスリン抵抗性は、インスリン感受性標的臓器、たとえば脂肪細胞および骨格筋におけるグルコースの取込みおよび利用の障害、ならびに肝グルコース排出抑制の障害を特色とする。機能性インスリンの欠乏、およびインスリンによる肝グルコース排出抑制の不全は、空腹時高血糖症をもたらす。膵臓β細胞は、分泌されるインスリンの濃度を高めることによりインスリン抵抗性を補償する。しかし、β細胞はこの高いインスリン排出量を維持できず、最終的にはグルコース誘発性インスリン分泌が低下し、その結果グルコース恒常性が悪化し、これに続いて顕性糖尿病が発症する。
【0098】
PPARγはインスリン抵抗性を処置する薬物の開発に有用な分子標的であるという有力な証拠が示された(Willson, et al., J. Med. Chem. 43: 527-550 (2000)を参照)。事実、PPARγアゴニストであるロシグリタゾン(Avandia)およびピオグリタゾン(pioglitazone)(Actos)はインスリン増感薬であり、II型糖尿病の治療薬として現在市販されている薬物である。
【0099】
肥満症は脂肪組織の過剰蓄積である。この領域の最近の研究は、PPARγが脂肪細胞の遺伝子発現および分化に中心的な役割を果たすことを示している。過剰の脂肪組織は、重篤な病的状態、たとえば非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)、高血圧症、冠動脈疾患、高脂血症性肥満症および特定の悪性疾患の発症と関連する。脂肪細胞は、腫瘍壊死因子α(TNFα)その他の分子の産生により、グルコース恒常性にも影響を及ぼす可能性がある。PPARγ活活性化薬、特にトログリタゾン(Troglitazone、登録商標)は、脂肪肉腫において癌組織を正常細胞に変換することが見いだされた(PNAS 96: 3951-3956, 1999)。したがって、PPARγ活性化薬は肥満症ならびに胸部癌および結腸癌の処置に有用な可能性がある。
【0100】
さらに、PPARγ活性化薬、たとえばトログリタゾン(登録商標)は、多嚢胞卵巣症候群(PCO)の処置に有用であることが示唆されている。これは女性における症候群であり、慢性的な無排卵および高アンドロゲン症を特色とする。この症候群を伴う女性はしばしばインスリン抵抗性をもち、非インスリン依存型糖尿病を発症するリスクが高い(Dunaif, Scott, Finegood, Quintana, Whitcomb, J. Clin. Endocrinol. Metab., 81: 3299, 1996)。
【0101】
さらにPPARγ活性化薬は、顆粒膜細胞培養においてプロゲステロンの産生を増大させ、ステロイド生成を阻害することが、最近見いだされ、したがって更年期の処置に有用な可能性がある(USP 5,814,647 Urban et al., 1998年9月29日;B.Lohrke et al., Journal of Endocrinology, 159, 429-39, 1998)。更年期は、生殖期の終了時に女性に起きる内分泌的、身体的および精神的変化に伴う症候群と定義される。
【0102】
PPARαは、多数の中鎖および長鎖脂肪酸により活性化され、肝臓、心臓、骨格筋、および褐色脂肪組織などの組織における脂肪酸β−酸化の刺激に関与する(Isseman and Green, 前掲;Beck et al., Proc. R. Soc. Lond. 247: 83-87, 1992;Gottlicher et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4653-4657, 1992)。PPARαの薬理作用活性化薬、たとえばフェノフィブラート(fenofibrate)、クロフィブラート(clofibrate)、ゲンフィブロジル(genfibrozil)およびベンザフィブラート(benzafibrate)は、血漿トリグリセリドの実質的な減少およびLDLコレステロールの中等度の減少にも関与し、それらは特に高トリグリセリド血症、高脂血症および肥満症の処置に用いられる。PPARαは炎症性障害に関与することも知られている(Schoonjans, K., Current Opinion in Lipidology, 8, 159-66, 1997)。
【0103】
PPARαアゴニストは、HDL濃度を高めるのにも有用であり、したがってアテローム硬化性疾患の処置に有用な可能性がある(Leibowitz et al.; WO/9728149)。アテローム硬化性疾患には、血管疾患、冠動脈性心疾患、脳血管疾患および末梢血管疾患が含まれる。冠動脈性心疾患には、CHD死、心筋梗塞および冠動脈血管再形成が含まれる。脳血管疾患には、虚血性または出血性発作および一過性虚血発作が含まれる。
【0104】
第3サブタイプのPPARであるPPARδ(PPARβ、NUC1)は、体内で広く発現し、異脂肪血症その他の疾患の処置のための有用な分子標的であることが示された。たとえば、インスリン抵抗性肥満症アカゲザルにおける最近の研究で、有効かつ選択的なPPARδ化合物が用量依存性でVLDLを減少させ、HDLを増加させることが示された(Oliver et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 98: 5305, 2001)。
【0105】
本明細書に記載する化合物は、PPARαとPPARγ、もしくはPPARδとPPARγの両方、または3つのPPARサブタイプすべてを活性化することができ、したがってアテローム硬化症関連の異脂肪血症、非インスリン依存性糖尿病、代謝性X症候群(Staels,B. et al., Curr. Pharm. Des., 3(1), 1-14 (1997))、および家族性複合型高脂血症(FCH)の処置に使用できる。代謝性X症候群は、初期のインスリン抵抗状態を特色とし、高インスリン血症、異脂肪血症およびグルコース耐性障害を発症し、これは高血糖症を特色とする非インスリン依存性糖尿病(II型糖尿病)に進行する可能性がある。FCHは、同じ患者と家族内での高コレステロール血症および高トリグリセリド血症を特色とする。
【0106】
したがってある態様において、本発明方法により処置される疾患は、肥満症、糖尿病、高インスリン血症、代謝性X症候群、多嚢胞卵巣症候群、更年期、酸化的ストレス関連障害、組織傷害に対する炎症性応答、気腫の発病、虚血関連の臓器傷害、ドキソルビシン誘発心傷害、薬物誘発肝毒性、アテローム硬化症、および高毒性肺傷害よりなる群から選択される。
【0107】
IV.医薬組成物
他の態様において本発明は、本明細書に記載する式Iの化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物に関する。
【0108】
用語”医薬組成物”は、本発明化合物と、他の化学成分、たとえばキャリヤー、希釈剤または賦形剤の混合物を表わす。医薬組成物は生物への本発明化合物の投与を容易にする。当技術分野には、静脈内、経口、エアゾル、非経口、眼、肺および局所投与を含めた多数の化合物投与方法があるが、これらに限定されない。医薬組成物は、化合物と無機酸または有機酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などとの反応により得ることもできる。
【0109】
用語”キャリヤー”は、比較的無毒性の化合物または物質を表わす。そのようなキャリヤーは、細胞または組織への化合物の取込みを容易にすることができる。たとえばヒト血清アルブミン(HSA)は生物の細胞または組織への多くの有機化合物の取込みを容易にするので、慣用されるキャリヤーである。
【0110】
用語”希釈剤”は、送達前に当該化合物を希釈するために用いられる化合物を表わす。希釈剤はより安定な環境を提供できるので、化合物を安定化するためにも使用できる。緩衝液(pHを制御する)に溶解した塩類は、当技術分野で希釈剤として用いられる。慣用される緩衝液のひとつは、リン酸緩衝化生理食塩水である。これは自然界で血液系中にみられる緩衝液である。緩衝塩類は低濃度で溶液のpHを制御できるので、緩衝化された希釈剤が化合物の生物活性を変更することはほとんどない。
【0111】
用語”生理的に許容できる”は、本発明化合物の生物活性または特性を妨げず、かつ無毒性であるキャリヤーまたは希釈剤を表わす。
用語”医薬的に許容できる塩”は、それが投与される生物に著しい刺激を与えず、かつ本発明化合物の生物活性または特性を妨げない化合物配合物を表わす。医薬的に許容できる塩類は、本発明化合物と酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などとの反応により得ることができる。医薬的に許容できる塩類は、本発明化合物を塩基と反応させてアンモニウム塩、アルカリ金属塩、たとえばナトリウム塩またはカリウム塩、アルカリ土類金属塩、たとえばカルシウム塩またはマグネシウム塩、有機塩基、たとえばジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンの塩、およびアミノ酸、たとえばアルギニン、リシンなどとの塩類を形成することにより、あるいは当技術分野で既知の他の方法により得ることもできる。
【0112】
”プロドラッグ”は、インビボで親薬物に変換される薬剤を表わす。ある状況ではプロドラッグは親薬物より投与しやすいので、しばしば有用である。たとえば、それらは経口投与により生物学的に利用可能であるのに対し、親化合物はそうでない場合がある。プロドラッグは医薬組成物中で親薬物より改善された溶解度をもつ場合がある。限定ではないが、プロドラッグの一例は、細胞膜透過(溶解性が移動にとっては不都合である)を容易にするためにエステルとして投与されるが、次いで細胞内側(水溶性が有益である)に入ると代謝加水分解されて有効物質カルボン酸になる本発明化合物(”プロドラッグ”)である。プロドラッグの他の例は、酸基に結合した短鎖ペプチド(ポリアミノ酸)であり、この場合はペプチドが代謝されて活性部分が現われる。
【0113】
本明細書に記載する化合物は、そのまま投与するか、あるいは医薬組成物中において他の有効成分と混合した併用療法として、または適切なキャリヤーもしくは希釈剤と混合して、ヒト患者に投与できる。本発明化合物を配合および投与するための技術は、”Remington's Pharmaceutical Sciences”,第20版, Alfonso Gennaro編, 2000中にある。
【0114】
A.投与経路
適切な投与経路には、たとえば下記のものを含めることができる:経口、直腸、経粘膜、肺、眼または腸投与;非経口送達:筋肉内、皮下、静脈内、髄内注射、およびクモ膜下(髄腔内)、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内または眼内注入。
【0115】
あるいは、本発明化合物は全身投与方式ではなく、たとえば化合物をしばしばデポー配合物または持続放出配合物として臓器に直接注入することにより局所投与することができる。さらに、標的薬物送達システム、たとえば臓器特異的抗体でコーティングしたリポソーム中において薬物を投与することができる。これらのリポソームはその臓器を標的とし、選択的に取込まれるであろう。
【0116】
B.組成物/配合物
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方法で、たとえば一般的な混合法、溶解法、造粒法、糖衣丸製造法、研和法、乳化法、カプセル封入法、エントラップ法または圧縮法により調製できる。
【0117】
したがって、本発明に従って使用するための医薬組成物は、常法により、有効化合物を医薬として使用できる製剤に加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む1種類以上の生理的に許容できるキャリヤーを用いて配合できる。適切な配合物は、選択する投与経路に依存する。当技術分野において、たとえば前記のRemington's Pharmaceutical Sciences中で適切かつ理解されている周知の方法、キャリヤーおよび賦形剤をいずれも使用できる。
【0118】
静脈内注射のためには、本発明の薬剤を、好ましくは生理的に適合性の緩衝液、たとえばハンクス液、リンゲル液または生理的食塩水中の水性液剤として配合できる。経粘膜投与のためには、透過すべきバリヤーに適した透過剤を配合物中に用いる。そのような透過剤は、一般に当技術分野で既知である。他の非経口注射のためには、本発明の薬剤を、好ましくは生理的に適合性の緩衝液または賦形剤と共に、水性または非水性液剤として配合できる。そのような賦形剤は、一般に当技術分野で既知である。
【0119】
経口投与のためには、有効化合物と当技術分野で周知の医薬的に許容できるキャリヤーまたは希釈剤を混和することにより、本発明化合物を容易に配合できる。そのようなキャリヤーは、処置される患者の経口摂取のために本発明化合物を錠剤、散剤、丸剤、糖衣丸、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤などとして配合するのを可能にする。経口用の医薬製剤は、1種類以上の固体賦形剤と1種類以上の本発明化合物を混合し、得られた混合物を場合により粉砕し、所望により適切な助剤を添加した後、この顆粒混合物を加工して錠剤または糖衣丸のコアを得ることにより得られる。適切な賦形剤は、特に下記のものである:充填剤、たとえば糖類:乳糖、ショ糖、マンニトールもしくはソルビトールを含む;セルロース製品、たとえばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;または他のもの、たとえばポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)もしくはリン酸カルシウム。所望により崩壊剤、たとえば架橋したクロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、たとえばアルギン酸ナトリウムを添加してもよい。
【0120】
糖衣丸のコアには、適切なコーティングを施す。このために濃厚な糖溶液を使用でき、これらは所望によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶剤または溶剤混合物を含有してもよい。識別のために、または異なる組合わせの有効化合物量を明らかにするために、色素または顔料を錠剤または糖衣丸コーティングに添加することができる。
【0121】
経口使用できる医薬製剤には、ゼラチン製の滑り嵌め型カプセル剤、ならびにゼラチンおよび可塑剤、たとえばグリセロールまたはソルビトールで作製した密閉軟カプセル剤が含まれる。滑り嵌め型カプセル剤は、充填剤、たとえば乳糖、結合剤、たとえばデンプン、および/または滑沢剤、たとえばタルクもしくはステアリン酸マグネシウム、および所望により安定剤と混合した、有効成分を収容することができる。軟カプセル剤の場合、有効化合物を適切な液体、たとえば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁することができる。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のためのすべての配合物が、その投与に適切な用量でなければならない。
【0122】
口腔または舌下投与のためには、組成物は常法により配合した錠剤、トローチ剤またはゲル剤の形をとることができる。
吸入による投与のためには、本発明に従って使用する化合物を、適切な噴射剤、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素その他の適切なガスを用いて、加圧パックまたはネブライザーからのエアゾルスプレー製剤の形で送達するのが好都合である。加圧エアゾル剤の場合、計量された量を送達するための弁を設けることにより投与単位を決定できる。吸入器または注入器に用いるために、本発明化合物および適切な粉末基剤、たとえば乳糖またはデンプンの粉末ミックスを収容した、たとえばゼラチンのカプセルおよびカートリッジを製造できる。
【0123】
本発明化合物を、注入により、たとえばボーラス注射または連続注入により非経口投与するために配合できる。注入用配合物は、単位剤形で、たとえばアンプルまたは多数回分の容器内に、保存剤を添加して提供することができる。この組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤または乳剤の形をとることができ、配合剤、たとえば沈殿防止剤、安定剤および/または分散剤を含有することができる。
【0124】
非経口投与のための医薬配合物には、水溶性形の有効化合物の水性液剤が含まれる。さらに、適宜な注射用油性懸濁剤として有効化合物の懸濁液を調製できる。適切な親油性溶剤またはビヒクルには、脂肪油、たとえばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、たとえばオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド、またはリポソームが含まれる。注射用水性懸濁剤は、懸濁液の粘度を高める物質、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有してもよい。所望により懸濁剤は、高濃度液剤の調製を可能にするために、適切な安定剤、または本発明化合物の溶解度を高める物質を含有してもよい。
【0125】
あるいは、適切なビヒクル、たとえば発熱物質を含有しない無菌水で使用前に構築するために、有効成分は粉末状であってもよい。
本発明化合物は、直腸用組成物、たとえば坐剤または停留型浣腸剤、たとえばカカオ脂または他のグリセリドなどの一般的な坐剤基剤を含有するものとして配合することもできる。
【0126】
前記の配合物のほかに、本発明化合物をデポー製剤として配合することもできる。そのような長時間作用型配合物を、埋込み(たとえば皮下または筋肉内)または筋肉内注射により投与することができる。たとえば本発明化合物を適切なポリマーもしくは疎水性物質と共に(たとえば許容できる油中の乳剤として)、またはイオン交換樹脂と共に、または貧溶解性塩として配合することができる。
【0127】
本発明の疎水性化合物のための医薬キャリヤーは、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマーおよび水相を含む、補助溶剤系である。補助溶剤は、10%のエタノール、10%のポリエチレングリコール300、10%のポリエチレングリコール40ヒマシ油(PEG−40ヒマシ油)、70%の水を含む溶液である。この補助溶剤系は、疎水性化合物を良好に溶解し、それ自体は全身投与に際して生じる毒性が低い。もちろん、補助溶剤系の割合をかなり変更しても、その溶解性および毒性を損なうことはない。さらに、補助溶剤成分の種類を変更してもよい:たとえばPEG−40ヒマシ油の代わりに他の低毒性非極性界面活性剤を使用し、ポリエチレングリコールの割合を変更し;ポリエチレングリコールを他の生体適合性ポリマー、たとえばポリビニルピロリドンに交換し;水溶液中に他の糖類または多糖類を含有させてもよい。
【0128】
あるいは、疎水性医薬化合物のための他の送達システムを使用できる。リポソームおよびエマルションは、疎水性薬物のための送達ビヒクルまたはキャリヤーの周知の例である。ある種の有機溶剤、たとえばN−メチルピロリドンも使用できるが、通常は毒性がより高いという犠牲を伴う。さらに、持続放出システム、たとえば療法薬を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスにより、本発明化合物を送達できる。種々の持続放出材料が確立されており、当業者に周知である。持続放出カプセルは、それらの化学的性質に応じて、数週間ないし100日を超える期間、本発明化合物を放出することができる。療法薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、他のタンパク質安定化方法を採用できる。
【0129】
本発明の多くの化合物を、医薬的に適合性の対イオンとの塩類として提供できる。医薬的に適合性の塩類は、多くの酸により形成でき、これには塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが含まれるが、これらに限定されない。塩類は、水性溶剤または他のプロトン溶剤に、対応する遊離の酸形または塩基形より溶解性が良好な傾向がある。
【0130】
V.処置方法、投与量および併用療法
用語”患者”は、ヒトを含めたすべての哺乳動物を意味する。患者の例には、ヒト、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、ブタおよびウサギが含まれる。
【0131】
本明細書中で用いる用語”療法有効量”は、処置すべき疾患、状態または障害の1以上の症状をある程度緩和する化合物投与量を表わす。糖尿病または異脂肪血症の処置に関しては、療法有効量は下記の効果をもつ量を表わす:(1)血糖値を低下させる;(2)脂肪、たとえばトリグリセリド、低密度リポタンパク質を正常化する;および/または(3)処置すべき疾患、状態または障害に関連する1以上の症状をある程度緩和する(または、好ましくは排除する)。
【0132】
本明細書に記載する化合物(1以上)を含有する組成物は、予防および/または治療処置のために投与できる。治療用の場合、PPARが仲介、変調または関与する疾患、状態または障害(前記の代謝性の疾患、状態または障害が含まれるが、これらに限定されない)に既に罹患している患者に、これらの疾患、障害または状態を治癒または少なくとも部分的に停止する量の本発明組成物を投与する。この用途に有効な量は、疾患、障害または状態の重症度および経過、それ以前の療法、患者の健康状態および薬物に対する反応、ならびに担当医の判断に依存するであろう。そのような治療有効量をルーティン実験(たとえば用量漸増臨床試験)により判定するのは、当業者が容易になしうると考えられる。
【0133】
予防用の場合、本明細書に記載する化合物を含有する組成物を、PPARが仲介、変調または関与する特定の疾患、障害または状態(前記の代謝性の疾患、状態または障害が含まれるが、これらに限定されない)に罹患しやすいか、あるいは他の形のリスクのある患者に投与する。そのような量を”予防有効量または予防投与量”と定義する。この用途の場合も、厳密な量は患者の健康状態、体重などに依存する。そのような予防有効量をルーティン実験(たとえば用量漸増臨床試験)により判定するのは、当業者が容易になしうると考えられる。
【0134】
用語”増強する”または”増強”は、目的効果の力価または持続を増大または延長することを意味する。たとえば療法薬の効果の増強に関して、用語”増強”は、ある系に他の療法薬が及ぼす効果の力価または持続を増大または延長する能力を表わす。本明細書中で用いる用語”増強有効量”は、目的系における他の療法薬の効果を増強するのに適した量を表わす。患者に使用する場合、この用途に有効な量は、疾患、障害または状態(代謝性障害が含まれるが、これらに限定されない)の重症度および経過、それ以前の療法、患者の健康状態および薬物に対する反応、ならびに担当医の判断に依存するであろう。そのような増強有効量をルーティン実験(たとえば用量漸増臨床試験)により判定するのは、当業者が容易になしうると考えられる。
【0135】
患者の状態の改善が起きた時点で、必要ならば維持量を投与する。その後、症状の結果に応じて、改善された疾患、障害または状態が維持されるレベルまで、投与量もしくは投与回数または両方を減らすことができる。症状が目的レベルまで軽減した時点で、治療を停止することができる。ただし、症状が再発した場合、患者は長期間にわたる断続的な治療を必要とする可能性がある。
【0136】
特定薬剤のそのような量に相当する量は、個々の化合物、疾患の状態およびその重症度、処置を必要とする対象またはホストの個性(たとえば体重)などの要因に応じて変動するであろうが、それでも当技術分野で既知の方法で、たとえば投与する具体的な薬剤、投与経路、処置される状態、および処置される対象またはホストを含めたその症例を取り巻く個々の環境に従って、ルーティンに決定できる。しかし、一般に成人に使用する量は、一般的に0.02〜5000mg/日、好ましくは1〜1500mg/日であろう。目的量を1回量として、あるいは適宜な間隔で、たとえば1日2、3または4回の部分量で投与する分割量として提供するのが好都合であろう。
【0137】
特定の場合、本明細書に記載する少なくとも1種類の化合物(または医薬的に許容できる塩、エステル、アミド、プロドラッグもしくは溶媒和物)を、他の療法薬と組み合わせて投与するのが適切な可能性がある。例示にすぎないが、本明細書中の化合物のいずれかを投与した際に患者が受ける副作用の1つが血圧上昇である場合、初回療法薬と組み合わせて降圧薬を投与するのが適切であろう。あるいは、例示にすぎないが、本明細書に記載する化合物のいずれかの療法有効性は、佐剤(すなわち、佐剤自体は療法上の有益性をわずかしたもたないが、他の療法薬と組み合わせると患者に対する全体的有益性が増強する)の投与によって増大する可能性がある。あるいは、例示にすぎないが、患者が受ける有益性は、本明細書に記載する化合物のいずれかを、療法有益性をもつ他の療法薬(これには、療法も含まれる)と共に投与することによって増大する可能性がある。例示にすぎないが、本明細書に記載する化合物のいずれかを投与する糖尿病療法において、患者に他の糖尿病療法薬をも投与することにより、療法有益性の増大が得られる可能性がある。いずれの場合も、処置される疾患、障害または状態に関係なく、患者が受ける全体的有益性は2種類の療法薬の単純な加算であるか、あるいは患者は相乗効果を受ける可能性がある。
【0138】
限定ではないが、可能な併用療法の具体例には、式(I)の化合物を下記のものと共に使用することが含まれる:(a)前記および/または他の脂質低下薬、たとえばMTP阻害薬およびLDLR増加薬(upregulator);(b)抗糖尿病薬、たとえばメトホルミン(metformin)、スルホニル尿素、またはPPAR−ガンマ、PPAR−アルファおよびPPAR−アルファ/ガンマ変調薬(たとえばチアゾリジンジオン類、たとえばピオグリタゾンおよびロシグリタゾン);ならびに(c)降圧薬、たとえばアンギオテンシンアンタゴニスト、たとえばテルミサルタン(telmisartan)、カルシウムチャンネルアンタゴニスト、たとえばラシジピン(lacidipine)、およびACE阻害薬、たとえばエナラプリル(enalapril)。
【0139】
いずれの場合も、複数の療法薬(それらのうちの1つは本明細書に記載する化合物のいずれか)を任意の順序で投与でき、同時に投与することすらできる。同時の場合、複数の療法薬を単一の一体化した剤形で、または複数の剤形で提供できる(例示にすぎないが、単一丸剤または2つの別個の丸剤として)。療法薬の1つを複数回量で投与してもよく、あるいは両方を複数回量で投与してもよい。同時ではない場合、複数回投与の間隔は0週より長くから4週未満まで変更できる。
【0140】
VI.本発明化合物の合成
本発明化合物は、当業者に既知の標準的な合成法を用いて、または当技術分野で既知の方法を本明細書に記載する方法と組み合わせて用いて合成できる。指針として下記の合成法を使用できる。
【0141】
A.求電子体と求核体の反応による共有結合の形成
共有結合およびそれらを生成する前駆官能基の選択した例を、”共有結合およびその前駆体の例”と題する表中に示す。前駆官能基を求電子基および求核基として示す。有機物質上の官能基は直接結合していてもよく、後記に定めるいずれか有用なスペーサーまたはリンカーを介して結合していてもよい。
【0142】
【表1】

【0143】
一般に、炭素求電子体は相補的な求核体(炭素求核体を含む)による攻撃を受けやすく、その際、求核体と炭素求電子体の間に新たな結合を形成するために、攻撃する求核体は炭素求電子体に電子対を運ぶ。
【0144】
適切な炭素求核体には、アルキル、アルケニル、アリールおよびアルキニルグリニャール試薬、有機リチウム、有機亜鉛、アルキル−、アルケニル−、アリール−およびアルキニル−スズ試薬(有機スズ)、アルキル−、アルケニル−、アリール−およびアルキニル−ボラン試薬(有機ボランおよび有機ボロネート)が含まれるが、これらに限定されない;これらの炭素求核体は、水または極性有機溶媒中での反応速度が安定であるという利点をもつ。他の炭素求核体には、リンイリド、エノールおよびエノラート試薬が含まれる;これらの炭素求核体は、合成有機化学の分野の専門家に周知の前駆物質から製造するのが比較的容易であるという利点をもつ。炭素求核体を炭素求電子体と一緒に用いると、炭素求核体と炭素求電子体の間に新たな炭素−炭素結合が生成する。
【0145】
炭素求電子体に結合させるのに適した非炭素−求核体には、第一級および第二級アミン、チオール、チオラート、およびチオエーテル、アルコール類、アルコキシド、アジド、セミカルバジド類などが含まれるが、これらに限定されない。これらの非炭素−求核体を炭素求電子体と一緒に用いると、一般に異種原子結合(C−X−C)が生成する。ここでXは異種原子、たとえば酸素または窒素である。
【0146】
B.保護基の使用
用語”保護基”は、一部または全部の反応性部分を遮断して、保護基が除去されるまでそれらの基が化学反応に関与するのを阻止する化合物部分を表わす。それぞれの保護基を異なる手段で除去できることが好ましい。全く異なる反応条件下で開裂する保護基は、分別除去の要件を満たす。保護基は酸、塩基、および水素添加分解により除去できる。トリチル、ジメトキシトリチル、アセタールおよびt−ブチルジメチルシリルなどの基は酸不安定であり、Cbz基(水素添加分解により除去できる)およびFmoc基(塩基不安定である)により保護されたアミノ基の存在下で、反応性部分であるカルボキシおよびヒドロキシを保護するために使用できる。酸不安定基、たとえばt−ブチルカルバメートまたはカルバメート(酸および塩基の両方に安定であるが、加水分解により除去できる)で遮断されたアミンの存在下では、反応性部分であるカルボン酸およびヒドロキシを塩基不安定基、たとえばメチル、エチルおよびアセチル(限定ではない)で遮断できる。
【0147】
反応性部分であるカルボン酸およびヒドロキシを加水分解により除去できる保護基、たとえばベンジル基で遮断し、一方、酸と水素結合しうるアミン基をFmocなどの塩基不安定基で遮断することもできる。反応性部分であるカルボン酸を酸化により除去できる保護基、たとえば2,4−ジメトキシベンジルで遮断し、一方、共存するアミノ基をフルオリド不安定シリルカルバメートで遮断することができる。
【0148】
遮断基アリルは、酸保護基および塩基保護基の存在下で有用である。前者は安定であり、その後、金属またはπ−酸触媒により除去できるからである。たとえばアリル遮断したカルボン酸を、アミン保護基である酸不安定カルバミン酸t−ブチルまたは塩基不安定アセテートの存在下で、Pd−触媒反応により脱保護することができる。さらに他の形の保護基は樹脂であり、これに化合物または中間体を結合させることができる。残基が樹脂に結合している限りその官能基は遮断されており、反応することができない。樹脂から放出されると、その官能基を反応に利用できる。
【0149】
一般に遮断基/保護基は下記のものから選択される:
【0150】
【化15】

【0151】
他の保護基は、Green and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 第3版, John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク, 1999に記載されており、その全体を本明細書に援用する。
【0152】
C.合成反応経路
本発明化合物は、下記の一般合成法および例により合成できる。
【0153】
【化16】

【0154】
実施例1A:3-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジルアミノ)-プロパン-1-オール(3)の合成(反応経路1)
3-ヒドロキシプロピルアミン(5.62mL, 73.5mmol, 1.2当量)を250mLのTMOF/MeOH(1:5)(TMOF=オルトギ酸トリメチル)に溶解し、次いでこの溶液に室温で撹拌しながら2,4-ビス-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド(14.83g, 61.2mmol, 1.0当量)を添加した。得られた溶液を室温で6時間撹拌し、次いで0℃に冷却した。冷却した反応溶液に、激しく撹拌しながらNaBHを少量ずつ添加した。TLCが還元の完了を示した後、反応混合物を減圧濃縮した。残留物を250mLの酢酸エチルで希釈し、水、ブラインで洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。溶媒の除去後、17.1g(収率93%)の無色の油を目的の3-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジルアミノ)-プロパン-1-オール(3)として得た。
【0155】
【化17】

【0156】
実施例1B:3-ブチルアミノ-プロパン-1-オール(4)の合成(反応経路1)
化合物(3)について記載した方法に従って化合物(4)を合成した。
【0157】
【化18】

【0158】
【化19】

【0159】
【表2】

【0160】
実施例2A:3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロパン-1-オール(5a)の合成(反応経路2)
高圧フラスコに、中間体(3)(12.23g, 40.6mmol, 1.0当量)、2-クロロ-5-エチルピリミジン(4.9mL, 40.6mmol, 1.0当量)、トリエチルアミン(11.3mL, 81.2mmol, 2.0当量)および50mLのトルエンを添加した。フラスコをシールした後、それを撹拌しながら180℃に加熱した。同温度で48時間反応させた後、反応混合物を室温に冷却し、100mLの酢酸エチルで希釈した。得られた溶液を水、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶媒の除去後、残留物をクロマトグラフィーにより精製して、7.7g(収率46%)の生成物(5a)を明かるい褐色の固体として得た。
【0161】
【化20】

【0162】
実施例2B:化合物(5a)について記載した方法に従って、化合物5b〜5iを製造した(反応経路2)。
3-[ブチル-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロパン-1-オール(5b)
【0163】
【化21】

【0164】
3-[ブチルピリジン-2-イル-アミノ]-プロパン-1-オール(5c)
【0165】
【化22】

【0166】
3-[ベンゾチアゾル-2-イル-ブチル-アミノ]-プロパン-1-オール(5d)
【0167】
【化23】

【0168】
3-[ベンゾオキサゾル-2-イル-ブチル-アミノ]-プロパン-1-オール(5e)
【0169】
【化24】

【0170】
3-[ベンゾチアゾル-2-イル-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロパン-1-オール(5f)
【0171】
【化25】

【0172】
3-[ベンゾチアゾル-2-イル-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロパン-1-オール(5g)
【0173】
【化26】

【0174】
3-[(ベンゾオキサゾル-2-イル)-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロパン-1-オール(5h)
【0175】
【化27】

【0176】
3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-(ピリド-2-イル)-アミノ]-プロパン-1-オール(5i)
【0177】
【化28】

【0178】
【表3】

【0179】
実施例3A:(3-{3-[ブチル-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-フェニル)-酢酸(7b)の合成(反応経路3)
アルコール(5b)(162mg, 0.69mmol)およびトリフェニルホスフィン(218mg, 0.83 mmol)を5mLのエーテルに溶解し、続いて3-ヒドロキシフェニル酢酸メチル(115mg, 0.69 mmol)を添加した。得られた溶液を0℃に冷却し、次いでアゾジカルボン酸ジイソプロピル(163μL, 0.83mmol)を3回に分けて撹拌しながら添加した。同温度で10分間撹拌した後、反応混合物を室温に高め、一夜撹拌した。生成した沈殿をシリカゲルのパッドにより濾過し、有機溶液を濃縮した。残留物をクロマトグラフィーにより精製すると、11mg(収率4%)の目的エステル(6b)が得られた。これを2mLのTHF/MeOH(3:1)溶液中の1N LiOH(60μL, 0.06 mmol)で加水分解して、9.0gの生成物(7b)を得た。
【0180】
【化29】

【0181】
実施例3B:化合物7bについて記載した方法に従って、化合物7aおよび7c〜7iを製造した(反応経路3参照)。
(3-{3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-フェニル)-酢酸(7a)
【0182】
【化30】

【0183】
{3-[(3-ブチル-ピリジン-2-イル-アミノ)-プロポキシ]-フェニル}-酢酸(7c)
【0184】
【化31】

【0185】
{3-[3-(ベンゾチアゾル-2-イル-ブチル-アミノ)-プロポキシ]-フェニル}-酢酸(7d)
【0186】
【化32】

【0187】
{3-[3-(ベンゾオキサゾル-2-イル-ブチル-アミノ)-プロポキシ]-フェニル}-酢酸(7e)
【0188】
【化33】

【0189】
(3-{3-[ベンゾチアゾル-2-イル-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロポキシ}-フェニル)-酢酸(7f)
【0190】
【化34】

【0191】
(3-{3-[ベンゾチアゾル-2-イル-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロポキシ}-フェニル)-酢酸(7g)
【0192】
【化35】

【0193】
(3-{3-[ベンゾオキサゾル-2-イル-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロポキシ}-フェニル)-酢酸(7h)
【0194】
【化36】

【0195】
(3-{3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-ピリジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-フェニル)-酢酸(7i)
【0196】
【化37】

【0197】
実施例4:実施例3Aについて記載したものと同様な方法で、適宜なヒドロキシナフチルアセテートを用いて、下記のナフチル誘導体を合成した。
1-{3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-ナフタレン-2-カルボン酸(8a)
【0198】
【化38】

【0199】
6-{3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-ナフタレン-2-カルボン酸(8b)
【0200】
【化39】

【0201】
3-{3-[(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-ナフタレン-2-カルボン酸(8c)
【0202】
【化40】

【0203】
1-{3-[ブチル-(5-エチル-ピリミジン-2-イル)-アミノ]-プロポキシ}-ナフタレン-2-カルボン酸(8d)
【0204】
【化41】

【0205】
1-[3-(ブチル-ピリジン-2-イル-アミノ)-プロポキシ]-ナフタレン-2-カルボン酸(8e)
【0206】
【化42】

【0207】
1-{3-(ベンゾチアゾル-2-イル-ブチル-アミノ)-プロポキシ]-ナフタレン-2-カルボン酸(8f)
【0208】
【化43】

【0209】
1-{3-(ベンゾチアゾル-2-イル-(4-トリフルオロメチル-ベンジル)アミノ)-プロポキシ]-ナフタレン-2-カルボン酸(8g)
【0210】
【化44】

【0211】
1-[3-(ベンゾオキサゾル-2-イル-ブチル-アミノ)-プロポキシ]-ナフタレン-2-カルボン酸(8h)
【0212】
【化45】

【0213】
1-{3-[ベンゾオキサゾル-2-イル-(2,4-ビス-トリフルオロメチル-ベンジル)-アミノ]-プロポキシ}-ナフタレン-2-カルボン酸(8i)
【0214】
【化46】

【0215】
実施例5:生物学的アッセイ
本発明化合物のヒトPPAR活性を判定するために、それらを細胞ベースのアッセイ法で評価した。PPARのLBDをコードする増幅cDNAを酵母GAL4 DNA結合ドメインのC末端に融合させることにより、ヒトPPAR−GAL4キメラのためのプラスミドを調製した。CV−1細胞を増幅させ、製造業者のプロトコルに従い、PerFectin(GTS、カリフォルニア州サンディエゴ)をルシフェラーゼレポーターと共に用いて、一過性トランスフェクションした。トランスフェクションの8時間後、50μLの細胞を384ウェルプレートに再接種した(1×10個/ウェル)。再接種の16時間後、細胞を化合物または1% DMSOで24時間処理した。次いでルシフェラーゼ活性をBritelite(Perkin Elmer)で製造業者のプロトコルに従ってアッセイし、Perkin ElmerのViewluxまたはMolecular DevicesのAcquestで測定した。
【0216】
【表4】

【0217】
【表5】

【0218】
【表6】

【0219】
医薬配合物の実施例
指針にすぎないが、式(I)の化合物を下記の一般例に従って医薬組成物中に配合することができる。
【0220】
非経口組成物
注射による投与に適した非経口医薬組成物を調製するために、式(I)の化合物の水溶性塩100mgをDMSOに溶解し、次いで0.9%無菌塩類溶液10mLと混合する。混合物を注射による投与に適した投与単位剤形に取り込ませる。
【0221】
経口組成物
経口送達用の組成物を調製するために、式(I)の化合物の水溶性塩100mgを乳糖750mgと混合する。混合物を経口投与に適した経口用単位剤形、たとえば硬ゼラチンカプセルに収容する。
【0222】
本明細書に開示した化合物および用途をPPAR変調薬として利用し、療法効果が得られることは、当業者に理解されるであろう。
前記および本来の課題を実施し、目的および利点を得るために、これらの方法および化合物を適用できることは、当業者に理解されるであろう。本明細書に記載する方法、操作および化合物は例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の精神に包含され、特許請求の範囲に定める変更および他の用途が、当業者に自明であろう。
【0223】
本発明の精神から逸脱することなく本明細書に開示した本発明に対する多様な置換および修飾をなしうることは、当業者に自明であろう。
本明細書に示した観点および態様を互いに個別に、または互いに組み合わせて実施しうることは、当業者に認識されるであろう。したがって、個別の態様の組合わせは特許請求の範囲に記載する本発明の範囲に含まれる。
【0224】
本明細書中に述べたすべての特許および刊行物は、本発明が関係する分野の専門家の水準を示すものである。すべての特許および刊行物が、各刊行物を詳細かつ個別に本明細書に援用すると指示したと同様な程度に、本明細書に援用される。
【0225】
本明細書に具体的に記載した本発明は、本明細書に具体的に開示していない要素、限定がなくても実施できる。たとえば本明細書においてそれぞれの場合、用語”含む(comprising)”、”本質的に....からなる(consisting essentially of)”および”からなる(consisting of)”は、互いに他の2語と交換できる。使用した用語および表現は記述のための用語として使用したものであって、限定ではなく、そのような用語および表現の使用が、指示および記載した特色またはその一部の均等物の除外を示すことを意図したものではない。特許請求の範囲に記載する本発明の範囲内で多様な改変が可能であることは認識される。したがって、本発明を特定の態様および選択事項によって具体的に開示したが、当業者は本明細書に開示した概念の改変および変更を行うことができ、そのような改変および変更は特許請求の範囲に記載する本発明の範囲内であることを理解すべきである。
【0226】
さらに、本発明の特色または観点をマーカッシュ(Markush)グループに関して記載した場合、それにより本発明がそのマーカッシュグループの個々のメンバーまたはサブグループのメンバーのいずれに関しても記載したものであることは当業者に認識されるであろう。たとえばXが臭素、塩素およびヨウ素よりなる群から選択されると記載した場合、Xが臭素である請求項ならびにXが臭素および塩素である請求項は十分に記載されている。
【0227】
他の態様は特許請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの構造を有する化合物:
【化1】

[式中:
Arは、単環式ヘテロ芳香族環構造および二環式ヘテロ芳香族環構造よりなる群から選択され;
Arは、単環式、二環式および三環式炭素環式アリール環構造よりなる群から選択され;
は、下記よりなる群から選択され:
下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環、ハロゲン、ペルハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、およびアミノ;
下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環:置換されていてもよいC−C直鎖、分枝鎖または環式の飽和または不飽和アルキル;アルコキシ;シアノ;ニトロ;アミノ;アミド;ペルハロアルキル;およびハロゲン;
は、下記よりなる群から選択され:
水素;
下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環、ハロゲン、ペルハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、およびアミノ;
下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環:置換されていてもよいC−C直鎖、分枝鎖または環式の飽和または不飽和アルキル;アルコキシ;ハロゲン;およびペルハロアルキル;
シアノ;ニトロ;アミノ;アミド;ペルハロアルキル;およびハロゲン;
は、下記よりなる群から選択され:水素;下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環;ヒドロキシ;ハロゲン;アミノ;ニトロ;およびシアノ;
Bは、5員もしくは6員ヘテロアリール環、または−(CH−C(O)ORであり、Arが二環式または三環式炭素環構造である場合はjは0または1であり、Arが単環式炭素環構造である場合はjは1であり;
は、下記よりなる群から選択される:
水素;
下記よりなる群から選択される置換基で置換されていてもよいアルキル:水素、低級アルキル、置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環;
下記よりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい5員もしくは6員ヘテロアリール環または6員アリール環:置換されていてもよいC−C直鎖、分枝鎖または環式の飽和または不飽和アルキル]
またはその医薬的に許容できるN−オキシド、医薬的に許容できるプロドラッグ、医薬的に活性である代謝産物、医薬的に許容できる塩、医薬的に許容できるエステル、医薬的に許容できるアミド、もしくは医薬的に許容できる溶媒和物。
【請求項2】
Arが、フェニル、ナフチル、アントラセン、およびフェナントレンよりなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arがフェニルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
【化2】

の構造を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Arがナフチルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
がアルキルであり、これらは1個以上の置換されていてもよい炭素環式環または複素環式環で置換されていてもよい、請求項4または5に記載の化合物。
【請求項7】
アルキルが低級アルキルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
低級アルキルが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
炭素環式環がフェニルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項10】
フェニルが、低級アルキル、ハロゲン、ペルハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ニトロ、およびアミノよりなる群から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
置換基がペルハロアルキルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
ペルハロアルキルがトリフルオロメチルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
が、4−ビス(トリフルオロメチル)フェニルメチルで置換されたアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Arが、窒素含有または酸素含有複素環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Arが、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【化3】

よりなる群から選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
Arが、ピリジン、ピリミジン、
【化4】

である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
Arがピリミジンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、置換されていてもよいアルキルである、請求項4および5のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
アルキルが低級アルキルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
低級アルキルが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
がエチルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
が、水素、ハロゲン、または置換されていてもよいアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項23】
置換されていてもよいアルキルが、置換されていてもよい低級アルキルである、請求項22に記載の化合物。
【請求項24】
置換されていてもよい低級アルキルが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項27】
Ar上のBとプロピルオキシ置換基が互いにオルトにある、請求項1に記載の化合物。
【請求項28】
Ar上のBとプロピルオキシ置換基が互いにメタにある、請求項1に記載の化合物。
【請求項29】
Ar上のBとプロピルオキシ置換基が互いにパラにある、請求項1に記載の化合物。
【請求項30】
Bが、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【化5】

よりなる群から選択されるヘテロアリール環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
Bがテトラゾールである、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
Bが−(CH−C(O)ORである、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
が、水素または置換されていてもよいアルキルである、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
アルキルが低級アルキルである、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
低級アルキルが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される、請求項34に記載の化合物。
【請求項36】
が水素である、請求項33に記載の化合物。
【請求項37】
Arが、窒素含有複素環または酸素含有複素環である、請求項4および5のいずれかに記載の化合物。
【請求項38】
Arが、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【化6】

よりなる群から選択される、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
Arが、ピリジン、ピリミジン、
【化7】

である、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
Arがピリミジンである、請求項39に記載の化合物。
【請求項41】
Bが、フラン、チオフェン、ピロール、ピロリン、ピロリジン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イミダゾリン、イミダゾリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾリジン、イソオキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、ピラン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペラジン、トリアジン、
【化8】

よりなる群から選択されるヘテロアリール環である、請求項4および5のいずれかに記載の化合物。
【請求項42】
Bがテトラゾールである、請求項41に記載の化合物。
【請求項43】
Bが−(CH−C(O)ORである、請求項4および5のいずれかに記載の化合物。
【請求項44】
が、水素または置換されていてもよいアルキルである、請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
アルキルが低級アルキルである、請求項44に記載の化合物。
【請求項46】
低級アルキルが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、およびsec−ブチルよりなる群から選択される、請求項45に記載の化合物。
【請求項47】
が水素である、請求項4および5のいずれかに記載の化合物。
【請求項48】
【化9】

またはその医薬的に許容できるN−オキシド、医薬的に許容できるプロドラッグ、医薬的に活性である代謝産物、医薬的に許容できる塩、医薬的に許容できるエステル、医薬的に許容できるアミド、もしくは医薬的に許容できる溶媒和物よりなる群から選択される、請求項4に記載の化合物。
【請求項49】
【化10】

またはその医薬的に許容できるN−オキシド、医薬的に許容できるプロドラッグ、医薬的に活性である代謝産物、医薬的に許容できる塩、医薬的に許容できるエステル、医薬的に許容できるアミド、もしくは医薬的に許容できる溶媒和物よりなる群から選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項50】
式IIIの構造を有する化合物:
【化11】

【請求項51】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(PPAR)機能を変調する方法であって、PPARを請求項1に記載の化合物と接触させ、細胞表現型における、細胞増殖における、PPARの活性における、またはPPARと天然結合パートナーの結合における変化をモニターすることを含む方法。
【請求項52】
PPARがPPARα、PPARδ、およびPPARγよりなる群から選択される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
哺乳動物において脂肪細胞の形成を阻害する方法であって、療法有効量の請求項1に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項54】
療法有効量の請求項3に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
療法有効量の請求項4に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
療法有効量の請求項5に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
哺乳動物において脂肪細胞の形成を阻害する方法であって、療法有効量の請求項50に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む方法。
【請求項58】
疾患を処置する方法であって、その必要がある患者を同定し、療法有効量の請求項1に記載の化合物をその患者に投与することを含む方法。
【請求項59】
疾患がPPAR変調性の疾患または状態である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
疾患が代謝性の障害または状態である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
疾患が、肥満症、糖尿病、高インスリン血症、代謝性X症候群、多嚢胞卵巣症候群、更年期、酸化的ストレス関連障害、組織傷害に対する炎症性応答、気腫の発病、虚血関連の臓器傷害、ドキソルビシン誘発心傷害、薬物誘発肝毒性、アテローム硬化症、および高毒性肺傷害よりなる群から選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
療法有効量の請求項3に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、請求項59〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
療法有効量の請求項4に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、請求項59〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
療法有効量の請求項5に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含む、請求項59〜61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
PPAR変調性の疾患または状態を処置する方法であって、その必要がある患者を同定し、療法有効量の請求項50に記載の化合物をその患者に投与することを含む方法。
【請求項66】
請求項1に記載の化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項67】
請求項3に記載の化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項68】
請求項4に記載の化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項69】
請求項5に記載の化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項70】
請求項50に記載の化合物、および医薬的に許容できる希釈剤、賦形剤またはキャリヤーを含む、医薬組成物。

【公表番号】特表2006−523698(P2006−523698A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509849(P2006−509849)
【出願日】平成16年4月7日(2004.4.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/010970
【国際公開番号】WO2004/093879
【国際公開日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505375355)カリプシス・インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】