説明

PTEN/AKT経路のモディファイヤーとしてのGALK1及び使用方法

ヒトGALK1遺伝子はPTEN/AKT経路のモジュレーターとして同定されており、したがってこれらは欠陥PTEN/AKT機能に関連する疾患の治療上の標的である。GALK1の活性を調節する作用剤を探すためにスクリーニングすることを含む、PTEN/AKTのモジュレーターを同定する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(発明の背景)
リン酸化の細胞間レベルは、プロテインキナーゼとホスファターゼとの協調作用により制御される。PTEN(染色体10におけるホスファターゼとテンシン相同体の削除)遺伝子は、様々なヒト組織に腫瘍を生じさせることが知られている。加えて、PTEN中の生殖細胞系列変異は、乳癌及び甲状腺癌の危険を増大させるヒトの疾病(カウデン病及びBannayan−Zonana症候群)の原因である(Nelen MR等(1997)Hum Mol Genet, 8:1383-1387; Liaw D等(1997)Nat Genet, 1:64-67; Marsh DJ等(1998)Hum Mol Genet, 3:507-515)。PTENは、二次メッセンジャーであるホスファチジルイノシトール3,4,5 3リン酸(PIP3)を介して複数のシグナル伝達経路を制御することにより、腫瘍抑制因子として作用する。PTENは、PIPのD3位置を脱リン酸化し、PIP3のレベルに応じてシグナル伝達イベントを下方制御する(Maehama T及びDixon JE(1998)J Biol Chem, 22, 13375-8)。これは、下流の標的、主にプロテインキナーゼB(PKB/AKT)を阻害する。PTEN配列は進化において保存されており、マウス(Hansen GM及びJustice MJ(1998)Mamm Genome, 9(1):88-90)、ショウジョウバエ(Goberdhan DC等(1999)Genes and Dev, 24:3244-58; Huang H等(1999)Development 23:5365-72)、及び線虫(Ogg S及びRuvkun G, (1998) Mol Cell, (6):887-93)中に存在する。これらのモデル生体物の研究により、腫瘍形成に関するプロセスにおいてPTENが果たす役割の解明が進んだ。ショウジョウバエにおいて、PTEN相同体(dPTEN)は、細胞の大きさ、生存及び増殖を調節することが示された(Huang等、上掲;Goberdhan等、上掲;Gao等、2000, 221:404-418)。マウスにおいては、PTEN機能の喪失により癌の罹患率が高まった(Di Cristofano A等(1998)Nature Genetics, 19:438-355;Suzuki A等(1998)Curr. Biol., 8:1169-78)。
【0002】
AKTシグナル伝達経路は、しばしば、黒色腫、乳癌、肺癌、前立腺癌、及び卵巣癌を含む広範囲に亘るヒト癌の様々なメカニズムにより過剰に活性化される(Vivanco I and Sawyers CL (2002) Nat Rev Cancer. 2(7):489-501; Scheid MP及びWoodgett JR (2001) J Mammary Gland Biol Neoplasia. 6(1):83-99)参照)。腫瘍細胞中において、AKT2遺伝子の増殖及び過剰発現により、又はホスファチジルイノシトール(3,4,5)三リン酸エステル(PIP)の生成増加により、AKTプロテインキナーゼの活性が上昇することがあり、それが原形質膜を補充することによりAKTが活性化される。正常なホスホイノシチドの代謝では、ホスファチジルイノシトール(3,4)二リン酸エステル(PIP)がホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)によりリン酸化されてPIPを生成し、PIPは脂質ホスファターゼPTEN/AKTにより脱リン酸化されてPIPに戻る。しかしながら、最も一般的には、腫瘍細胞中のPIPの値は、PTEN/AKT腫瘍抑制因子の突然変異又は欠失により、前立腺癌において40〜50%の割合で上昇する。
AKT経路は、細胞の増殖、成長、生存、及び運動性を増強することと、アポトーシスを抑制することとにより、腫瘍の進行を促す。これらの影響は、関連転写因子FKHR及びAFXを含む複数のAKT基質によって媒介され、その際AKTによるリン酸化が核外移行を媒介する。
【0003】
PTEN/AKTシグナル伝達経路のTOR(mTOR)枝はタンパク質の合成を制御し、AKTシグナル伝達の成長活性及び細胞形質転換特性に直接関与する。TORは、4EBP1及びp70S6キナーゼを含む複数の標的を直接リン酸化する。p70S6キナーゼは、リボソームタンパク質S6(RPS6)を直接リン酸化する(Bader AG等(2004)Oncogene 23:3145-3150;Hay N等(2004)Genes Dev. 18:1926-1945)。タンパク質PRAS40を含む、PTEN/AKTシグナル伝達活性の読み取りとして機能できる追加的な直接AKT基質が同定された(Kovacina KS等(2003)JBC 278(12):10189-10194)。
疾病経路等、特定の経路における新規遺伝子の関与及びこのような経路におけるその機能の同定は、哺乳動物中における相関経路及びこれらを調節する方法を理解するのに直接寄与することができる。更に、同定された遺伝子は、新規治療薬の魅力的な候補標的となり得る。
参照した特許、特許出願、公開公報、及び参照したGenbank識別番号における配列情報を含めた本明細書中で引用するすべての参考文献は、その全体が本明細書中に組み込まれる。
【0004】
(発明の概要)
本発明者等は、ヒト細胞中においてPTEN/AKT経路を改変させる遺伝子を発見し、本明細書中では以降これをPTEN/AKT(MPTENAKT)のモディファイヤーと呼ぶ。特に、本発明者等は、1の遺伝子、ガラクトースキナーゼ1遺伝子(GALK1)が、多数のヒト組織及びヒト細胞系においてPTEN/AKT経路を改変させることを発見した。GALK1は、ガラクトースをガラクトース−1−リン酸塩に転換し、次いでガラクトース−1−リン酸塩は解糖系に送り込まれる。GALK1と、概ねアミノ酸300〜360に位置する他のGHMPキナーゼの間には相同性がある。GALK1は、細胞ガラクトースセンサーとして機能することができる。GALK1の突然変異はガラクトース血症を引き起こす。GALK1とGALK2との同一性は30%に過ぎない。GALK1 mRNAは、大腸、頭部/頚部、肺、卵巣、膵臓、皮膚及び胃の腫瘍に過剰発現する。GALK1は、MDA−MB231T(胸部腫瘍細胞系)、A549(非小細胞肺腫瘍細胞系)、U87MG(神経膠芽腫細胞系)及びPC−3(前立腺腫瘍細胞系)を含む標準的な腫瘍細胞系に多く発現する。
本発明は、これらのPTEN/AKTモディファイヤー遺伝子及びポリペプチドを利用して、PTEN/AKT機能及び/又はGALK1機能の欠陥又は不全に関連する疾患の治療に使用できる候補治療剤であるGALK1調節剤を同定する方法を提供する。好ましいGALK1調節剤(modulating agent)は、GALK1ポリペプチドに特異的に結合してPTEN/AKT機能を修復する。他の好ましいGALK1調節剤は、アンチセンスオリゴマーやRNAiなど、例えば対応する核酸(すなわちDNA又はmRNA)に結合してそれを阻害することによってGALK1遺伝子発現又は生成物の活性を抑制する核酸モジュレーターである。
GALK1調節剤は、GALK1ポリペプチド又は核酸との分子相互作用のための任意の都合のよいインビトロ又はインビボのアッセイによって評価することができる。一実施態様では、GALK1ポリペプチド又は核酸を含むアッセイ系を用いて候補GALK1調節剤を試験する。対照と比べてアッセイ系の活性に変化を生じさせる作用剤は、候補PTEN/AKT調節剤として同定される。このアッセイ系は細胞に基づくものでも、細胞を含まないものでもよい。GALK1調節剤には、GALK1関連タンパク質(例えばドミナントネガティブ変異体やバイオ治療薬);GALK1に特異的な抗体;GALK1に特異的なアンチセンスオリゴマー及び他の核酸モジュレーター;GALK1と特異的に結合するか相互作用する、又は(例えばGALK1結合パートナーに結合することにより)GALK1結合パートナーと競合する化学剤が含まれる。特定の一実施態様では、キナーゼアッセイを用いて小分子モジュレーターを同定する。特定の実施態様では、スクリーニングアッセイは、結合アッセイ、アポトーシスアッセイ、細胞増殖アッセイ、血管新生アッセイ、及び低酸素誘発アッセイから選択される。
【0005】
別の実施態様では、最初に同定した候補作用剤や最初の作用剤から誘導した作用剤によって生じた血管形成、細胞死、又は細胞増殖の変化など、PTEN/AKT経路における変化を検出する第2アッセイ系を使用して、候補PTEN/AKT経路調節剤をさらに試験する。第2アッセイ系には、培養細胞又は非ヒト動物を使用することができる。特定の実施態様では、この二次アッセイ系は、血管新生、細胞死、又は細胞増殖の疾患(例えば癌)などPTEN/AKT経路に関係づけられた疾病又は疾患を有することが事前に確定されている動物を含めた、非ヒト動物を使用する。
本発明はさらに、哺乳動物細胞をGALK1ポリペプチド又は核酸に特異的に結合する作用剤と接触させることによって、哺乳動物細胞中のGALK1機能及び/又はPTEN/AKT経路を調節する方法を提供する。この作用剤は、小分子モジュレーター、核酸モジュレーター、又は抗体であってよく、PTEN/AKT経路に関連する病状を有することが事前に確定されている哺乳動物に投与することができる。
【0006】
(発明の詳細な記載)
本発明者は、不活性化するとAKT経路のシグナル伝達を低減させる抑制遺伝子を同定するために、遺伝子スクリーニングを設計した。複数の遺伝子が同定された。したがって、GALK1遺伝子(すなわち核酸及びポリペプチド)は、癌などのPTEN/AKTシグナル伝達経路の欠陥に関連する病変の治療における魅力的な薬剤標的である。表1(実施例2)にこれらの遺伝子を列挙する。
本発明では、GALK1機能を評価するインビトロ及びインビボの方法を提供する。GALK1又はその対応する結合パートナーの変調は、正常状態及び病態におけるPTEN/AKT経路とそのメンバーとの関連性を理解し、PTEN/AKTに関連する病状の診断方法及び治療様式を開発するのに有用である。本発明で提供する方法を使用して、直接的又は間接的に、例えば酵素学的(触媒的)又は結合活性などのGALK1機能に影響を与えてGALK1の発現を阻害又は亢進することによって作用するGALK1調節剤を同定することができる。GALK1調節剤は、診断、治療、及び製薬の開発に有用である。
【0007】
本発明の核酸及びポリペプチド
本発明で使用することができるGALK1核酸及びポリペプチドに関連する配列は、Genbankに開示されており(Genbank識別子(GI)又はRefSeq番号により参照)、表1及び添付の配列表に示される。
【0008】
用語「GALK1ポリペプチド」とは、完全長のGALK1タンパク質又はその機能的に活性のある断片又は誘導体を言う。「機能的に活性のある」GALK1断片又は誘導体は、抗原活性や免疫原性活性、酵素学的活性、天然の細胞基質に結合する能力など完全長の野生型GALK1タンパク質に関連する機能活性を1つ又は複数示す。GALK1タンパク質、誘導体及び断片の機能活性は、当業者に周知の様々な方法によって(Current Protocols in Protein Science、1998年、Coligan他編、John Wiley & Sons, Inc.、ニュージャージー州ソマーセット)また以下にさらに述べるようにアッセイすることができる。一実施態様では、例えば細胞に基づくアッセイ又は動物アッセイにおいて、機能的に活性のあるGALK1ポリペプチドは、内因性GALK1活性の欠陥を救援する能力を有するGALK1誘導体であり、救援誘導体は同じ種由来でも、異なる種由来でもよい。本発明の目的のために、機能的に活性のある断片には、キナーゼドメイン及び結合ドメインなどGALK1の構造ドメインを1つ又は複数含む断片も含まれる。タンパク質ドメインは、PFAMプログラムを使用して同定することができる(Bateman A.他、Nucleic Acids Res、1999年、27:260〜2)。GALK1ポリペプチドを得る方法も、以下にさらに記載する。一部の実施態様では、好ましい断片は、機能的に活性のある、GALK1の少なくとも25個の連続したアミノ酸、好ましくは少なくとも50個、より好ましくは75個、最も好ましくは100個の連続したアミノ酸を含むドメイン含有断片である。さらに好ましい実施態様では、この断片は機能的に活性のあるドメインの全体を含む。
用語「GALK1核酸」とは、GALK1ポリペプチドをコードするDNA又はRNA分子を言う。好ましくは、このGALK1ポリペプチド又は核酸あるいはその断片はヒト由来であるが、ヒトGALK1と少なくとも70%の配列同一性、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは85%、さらに好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有するオルソログ又はその誘導体でもよい。対象配列又は対象配列の特定の一部分に関して本明細書中で使用する「パーセント(%)配列同一性」とは、配列のアラインメントを行い、最大のパーセント配列同一性を得るために必要な場合はすべての検索パラメータを初期値に設定したプログラムWU−BLAST−2.0a19(Altschul等、J.Mol.Biol.、1997年、215:403〜410)によって作製されたギャップを導入した後の、対象配列(又はその特定の一部分)中のヌクレオチドやアミノ酸と同一である候補誘導体の配列中のヌクレオチドやアミノ酸の割合として定義される。HSP S及びHSP S2パラメータは動的値であり、プログラム自体により、具体的な配列の組成と、目的配列と比較して検索する個々のデータベースの組成とに応じて確定される。%同一性値は、一致する同一ヌクレオチド又はアミノ酸の数を、パーセント同一性が報告される対象となる配列の長さで割ることによって決定される。「パーセント(%)アミノ酸配列類似性」は、%アミノ酸配列同一性の決定と同じ計算を行うが、同一アミノ酸に加えて保存的アミノ酸置換を含めて算定することによって決定される。
【0009】
保存的アミノ酸置換とは、タンパク質のフォールディングや活性が顕著に影響されないように、あるアミノ酸が類似の特性を有する別のアミノ酸で置換される置換である。互いに置換できる芳香族アミノ酸はフェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンであり、互換性のある疎水性アミノ酸はロイシン、イソロイシン、メチオニン、及びバリンであり、互換性のある極性アミノ酸はグルタミン及びアスパラギンであり、互換性のある塩基性アミノ酸はアルギニン、リジン及びヒスチジンであり、互換性のある酸性アミノ酸はアスパラギン酸及びグルタミン酸であり、互換性のある小さいアミノ酸はアラニン、セリン、スレオニン、システイン及びグリシンである。
あるいは、核酸配列のアラインメントは、Smith及びWatermanの局所相同性アルゴリズムによって提供される(Smith及びWaterman、1981年、Advances in Applied Mathematics、2:482〜489;database:European Bioinformatics Institute ; Smith及びWaterman、1981年、J.of Molec.Biol.、147:195〜197; Nicholas他、1998年、「A Tutorial on Searching Sequence Databases and Sequence Scoring Methods」(www.psc.edu)及びこれに引用される参考文献であるW. R. Pearson、1991年、Genomics、11:635〜650)。このアルゴリズムは、Dayhoffによって開発され(Dayhoff:Atlas of Protein Sequences and Structure、M.O.Dayhoff編、第5補遺、3:353〜358、National Biomedical Research Foundation、米国ワシントンD.C.)、Gribskovによって正規化された(Gribskov、1986年、Nucl.Acids Res.14(6):6745〜6763)スコアマトリックス(scoring matrix)を使用することによって、アミノ酸配列に適用することができる。スコアをつけるのに初期パラメータを用いたSmith−Watermanアルゴリズムを使用することができる(例えば、ギャップ隙間ペナルティー(gap open penalty)12、ギャップ伸張ペナルティー(gap extension penalty)2)。作成されたデータでは、「一致」値は「配列同一性」を反映している。
【0010】
対象核酸分子から誘導した核酸分子には、GALK1の核酸配列とハイブリダイズする配列が含まれる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度、pH、ならびにハイブリダイズ及び洗浄中にホルムアミドなど変性剤を存在させることによって調節することができる。日常的に使用される条件は、容易に入手可能な手順書に記載されている(例えば、Current Protocol in Molecular Biology、第1巻、第2.10章、John Wiley&Sons, Publishers、1994年;Sambrook他、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor、1989年)。一部の実施態様では、本発明の核酸分子は、6×単位強度クエン酸(single strength citrate)(SSC)(1×SSCは0.15MのNaCl、0.015Mのクエン酸Na、pH7.0である)、5×デンハルト溶液、0.05%のピロリン酸ナトリウム及び100μg/mlのニシン精子DNAを含む溶液中で、核酸を含むフィルターを8時間〜終夜、65℃でプレハイブリダイゼーションを行い;6×SSC、1×デンハルト溶液、100μg/mlの酵母tRNA及び0.05%のピロリン酸ナトリウムを含む溶液中で、18〜20時間、65℃でハイブリダイゼーションを行い、;0.1×SSC及び0.1%のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む溶液で、65℃で1時間フィルターを洗浄する高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、GALK1のヌクレオチド配列を含む核酸分子にハイブリダイズすることができる。
他の実施態様では、35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.1%のPVP、0.1%のフィコール、1%のBSA、及び500μg/mlの変性サケ精子DNAを含む溶液中で、核酸を含むフィルターを6時間、40℃で前処理し;35%のホルムアミド、5×SSC、50mMのTris−HCl(pH7.5)、5mMのEDTA、0.02%のPVP、0.02%のフィコール、0.2%のBSA、100μg/mlのサケ精子DNA、及び10%(重量/体積)のデキストラン硫酸を含む溶液中で、18〜20時間、40℃でハイブリダイゼーションを行い;次いで、2×SSC及び0.1%のSDSを含む溶液で2度、1時間55℃で洗浄する、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を使用する。
あるいは、20%のホルムアミド、5×SSC、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%のデキストラン硫酸、及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、8時間〜終夜、37℃でインキュベートし;同じ緩衝液中で18〜20時間、ハイブリダイゼーションを行い;1×SSCで、約37℃で1時間洗浄する、低いストリンジェントな条件を使用することができる。
【0011】
GALK1核酸及びポリペプチドの単離、生成、発現、及びミスエクスプレッション
GALK1核酸及びポリペプチドは、GALK1機能を調節する薬剤の同定及び試験、ならびにPTEN/AKT経路におけるGALK1の関与に関連する他の用途に有用である。GALK1核酸ならびにその誘導体及びオルソログは、利用可能な任意の方法を使用して得ることができる。例えば、DNAライブラリをスクリーニングすることによって、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用することによって、目的のcDNA又はゲノムDNA配列を単離する技術が、当分野で周知である。一般的に、タンパク質の具体的な使用により、発現、生成、及び精製方法の詳細が規定される。例えば、スクリーニングして調節剤を探すために使用するタンパク質を生成するには、これらタンパク質の特異的生物活性を保存する方法が必要であるかもしれないが、抗体を産生するためのタンパク質を生成するには、特定のエピトープの構造的な完全性が必要であるかもしれない。スクリーニング又は抗体を産生するために精製すべきタンパク質を発現させるには、特定のタグの付加が必要であるかもしれない(例えば融合タンパク質の生成)。細胞周期制御や低酸素性応答の関与などGALK1機能を評価するのに使用するアッセイのためのGALK1タンパク質を過剰発現させるには、これらの細胞活動が可能な真核細胞系中での発現が必要であるかもしれない。タンパク質を発現、生成、及び精製する方法は当分野で周知であり、したがって、任意の適切な手段を使用することができる(例えば、Higgins SJ及びHames BD編、Protein Expression:A Practical Approach、Oxford University Press Inc.、ニューヨーク、1999年;Stanbury PF他、Principles of Fermentation Technology、第2版、Elsevier Science、ニューヨーク、1995年;Doonan S編、Protein Purification Protocols、Humana Press、ニュージャージー、1996年;Coligan JE他、Current Protocols in Protein Science編、1999年、John Wiley&Sons、ニューヨーク)。具体的な実施態様では、組換えGALK1は、欠陥PTEN/AKT機能を有することで知られている細胞系で発現される。この組換え細胞は、以下にさらに記載する本発明の細胞に基づくスクリーニングアッセイ系で使用する。
GALK1ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を、任意の適切な発現ベクター内に挿入することができる。プロモーター/エンハンサーエレメントを含めて必要な転写シグナル及び翻訳シグナルは、ネイティブGALK1遺伝子及び/又はそのフランキング領域由来のものでよく、また異種性のものでもよい。ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)で感染させた哺乳動物細胞系;ウイルス(例えばバキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母、あるいはバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNAで形質転換させた細菌などの微生物など、様々な宿主−ベクター発現系が利用できる。遺伝子産物の発現を変調させ、修飾し、及び/又は特異的にプロセッシングする単離された宿主細胞系を使用することができる。
【0012】
GALK1遺伝子産物を検出するために、発現ベクターは、GALK1遺伝子の核酸に発現可能に連結されたプロモーター、1つ又は複数の複製起点、及び1つ又は複数の選択可能なマーカー(例えばチミジンキナーゼ活性、抗生物質耐性など)を含むことができる。あるいは、インビトロアッセイ系(例えば免疫アッセイ)におけるGALK1タンパク質の物理的又は機能的特性に基づいてGALK1遺伝子産物の発現をアッセイすることによって、組換え発現ベクターを同定することもできる。
例えば精製又は検出を促進するために、GALK1タンパク質、断片、又はその誘導体を、任意選択で融合体又はキメラタンパク質産物(すなわち、GALK1タンパク質が異なるタンパク質の異種タンパク質配列にペプチド結合を介して結合されている)として発現させることができる。標準の方法を使用して所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を互いにライゲートさせ、キメラ産物を発現させることによって、キメラ産物を作製することができる。また、タンパク質合成技術、例えばペプチド合成機の使用(Hunkapiller他、Nature、1984年、310:105〜111)によってキメラ産物を作製することもできる。
【0013】
GALK1遺伝子配列を発現する組換え細胞が同定された後は、標準の方法(例えばイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及びゲル排除クロマトグラフィー;遠心分離;溶解度差;電気泳動)を使用して遺伝子産物を単離及び精製することができる。あるいは、標準の方法(例えば免疫親和性精製)によって、天然源から天然に生じたGALK1タンパク質を精製することができる。タンパク質を得た後は、免疫アッセイ、バイオアッセイ、又は結晶学など他の物理的特性の測定など適切な方法によってこれを定量し、その活性を測定することができる。
本発明の方法では、GALK1又はPTEN/AKT経路に関連する他の遺伝子の発現が変化するように(ミスエクスプレスされるように)操作した細胞を使用することもできる。本明細書中で使用するミスエクスプレッションとは、異所性発現、過剰発現、過少発現、及び無発現(例えば遺伝子のノックアウト又は通常は正常に引き起こされる発現の遮断による)を包含する。
【0014】
遺伝子改変動物
候補PTEN/AKT調節剤の活性を試験するため、又は細胞死や細胞増殖などPTEN/AKT経路のプロセスにおけるGALK1の役割をさらに評価するために、GALK1の発現が変化するように遺伝子が改変された動物モデルを、インビボアッセイで使用することができる。好ましくは、変化したGALK1の発現により、正常なGALK1発現を有する対照動物に比べて低減又は上昇した細胞増殖、血管新生、又は細胞死のレベルなど、検出可能な表現型がもたらされる。この遺伝子改変動物はさらに、PTEN/AKT発現が変化していてもよい(例えばPTEN/AKTノックアウト)。好ましい遺伝子改変動物は、特に、霊長類、げっ歯類(好ましくはマウス又はラット)などの哺乳動物である。好ましい哺乳動物でない種には、ゼブラフィッシュ、線虫(C.elegans)、及びショウジョウバエが含まれる。好ましい遺伝子改変動物は、染色体外エレメントとして存在する異種核酸配列をその細胞の一部分内に有するトランスジェニック動物、すなわちモザイク動物(例えば、Jakobovits、1994年、Curr. Biol.、4:761〜763によって記載されている技術参照)、又は異種核酸が生殖系列DNA内(すなわち細胞のほとんど又はすべてのゲノム配列中)に安定に組み込まれているトランスジェニック動物である。異種核酸は、例えば宿主動物の胚又は胚性幹細胞を遺伝子操作することによって、このようなトランスジェニック動物の生殖系列内に導入される。
トランスジェニック動物を作製する方法は当分野で周知である(トランスジェニックマウスには、Brinster他、Proc.Nat.Acad.Sci.USA、82:4438〜4442、1985年、どちらもLeder他による米国特許第4,736,866号及び第4,870,009号、Wagner他による米国特許第4,873,191号、ならびにHogan, B.、Manipulating the Mouse Embryo、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1986年参照;パーティクルボンバードメントについては、Sandford他による米国特許第4,945,050号参照;トランスジェニックショウジョウバエについては、Rubin及びSpradling、Science、1982年、218:348〜53及び米国特許第4,670,388号参照;トランスジェニック昆虫については、Berghammer A.J.他、A Universal Marker for Transgenic Insects、1999年、Nature、402:370〜371参照;トランスジェニックゼブラフィッシュについては、Lin S.、Transgenic Zebrafish、Methods Mol Biol.、2000年、136:375〜3830参照);魚、両生類卵及び鳥でのマイクロインジェクションについては、Houdebine及びChourrout、Experientia、1991年、47:897〜905参照;トランスジェニックラットについては、Hammer他、Cell、1990年、63:1099〜1112参照;胚性幹(ES)細胞を培養し、その後、電気穿孔、リン酸カルシウム/DNA沈降、直接注入などの方法を使用してDNAをES細胞に導入することによるトランスジェニック動物の作製には、例えばTeratocarcinomas and Embryonic Stem Cells, A Practical Approach、E.J.Robertson編、IRL Press、1987年参照)。利用可能な方法に従って非ヒトトランスジェニック動物を作製することができる(Wilmut, I.他、1997年、Nature、385:810〜813;PCT国際公開公報WO97/07668号及びWO97/07669号参照)。
【0015】
一実施態様では、このトランスジェニック動物は、好ましくはGALK1発現が検出不可能又は僅かとなるようにGALK1機能の低下をもたらす、内因性GALK1遺伝子の配列中のヘテロ接合性又はホモ接合性の変化を有する「ノックアウト」動物である。ノックアウト動物は通常、ノックアウトする遺伝子の少なくとも一部分を有する導入遺伝子を含むベクターを用いた相同組換えによって作製される。通常、導入遺伝子を機能的に破壊するために、これに欠失、追加、又は置換を導入しておく。この導入遺伝子はヒト遺伝子(例えばヒトゲノムクローン由来)でもよいが、より好ましくは、トランスジェニック宿主種由来の、ヒト遺伝子のオルソログである。例えば、マウスゲノム中の内因性GALK1遺伝子を変化させるのに適した相同組換えベクターを構築するためには、マウスGALK1遺伝子を使用する。マウスにおける相同組換えの詳細な方法が利用可能である(Capecchi、Science、1989年、244:1288〜1292;Joyner他、Nature、1989年、338:153〜156参照)げっ歯類でない哺乳動物及び他の動物のトランスジェニックを作製する手順も、利用可能である(Houdebine及びChourrout、上掲;Pursel他、Science、1989年、244:1281〜1288;Simms他、Bio/Technology、1988、6:179〜183)。好ましい実施態様では、特定の遺伝子がノックアウトされたマウスなどのノックアウト動物を使用して、ノックアウトされた遺伝子のヒトでの対応物に対する抗体を産生させることができる(Claesson MH他、1994年、Scan J Immunol、40:257〜264;Declerck PJ他、1995年、J Biol Chem.、270:8397〜400)。
別の実施態様では、このトランスジェニック動物は、例えばGALK1の追加のコピーを導入することによって、又はGALK1遺伝子の内因性コピーの発現を変化させる制御配列を作用可能に挿入することによって、GALK1遺伝子の発現の変化(例えば発現の増大(異所性の増大を含む)及び低減)をもたらす変化をそのゲノム中に有する「ノックイン」動物である。このような制御配列としては、誘発性であり、組織特異的で構成的なプロモーター及びエンハンサーエレメントが含まれる。このノックインは、ホモ接合性又はヘテロ接合性であることができる。
【0016】
導入遺伝子の発現を制限可能にする選択された系を含む非ヒト動物のトランスジェニックも、作製することができる。作製し得るこのような系の一例は、バクテリオファージP1のcre/loxPリコンビナーゼ系である(Lakso他、PNAS、1992、89:6232〜6236;米国特許第4,959,317号)。導入遺伝子の発現を制御するためにcre/loxPリコンビナーゼ系を使用する場合、Creリコンビナーゼと選択されたタンパク質の両方をコードする導入遺伝子を含む動物が必要となる。このような動物は、例えば、一方が選択されたタンパク質をコードする導入遺伝子を含み、他方がリコンビナーゼをコードする導入遺伝子を含む2匹のトランスジェニック動物を交配させることによる「ダブル」トランスジェニック動物を作製することによって、提供することができる。リコンビナーゼ系の別の例は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のFLPリコンビナーゼ系である(O'Gorman他、1991年、Science、251:1351〜1355;米国特許第5,654,182号)。好ましい実施態様では、導入遺伝子の発現を制御するため、また同一細胞内でのベクター配列が順次削除されるように、Cre−LoxP及びFlp−Frtの両方が同一系内で使用される(Sun X他、2000年、Nat Genet、25:83〜6)。
遺伝学の研究において欠陥PTEN/AKT機能に関係する疾病及び疾患の動物モデルとして、また以下に記載するスクリーニングで同定されたものなど候補治療剤のインビボ試験のために、遺伝子改変動物を使用してPTEN/AKT経路をさらに解明することができる。この候補治療剤をGALK1機能が変化した遺伝子改変動物に投与し、表現型の変化を、偽薬による処置を与えた遺伝子改変動物及び/又は候補治療剤を与えたGALK1発現が変化していない動物などの適切な対照動物と比較する。
【0017】
GALK1機能が変化した上述の遺伝子改変動物に加えて、欠陥PTEN/AKT機能(及びそれ以外は正常なGALK1機能)を有する動物モデルを本発明の方法において使用することができる。例えば、以下に記載するインビトロアッセイのうち1つで同定された候補PTEN/AKT調節剤の活性をインビボで評価するために、欠陥PTEN又はAKT機能を有するマウスを使用することができる。欠陥PTEN機能を有するトランスジェニックマウスは文献に既知である(DiCristofano A等 (1998) Nat genet 19:348-355)。欠陥AKT機能を有するトランスジェニックマウスも文献に既知である(Chen, W. S.等(2001)Genes Dev. 15:2203-2208;Condorelli, G.等(2002)Proc. Nat. Acad. Sci. 99:12333-12338;Peng, X.等(2003)Genes Dev. 17:1352-1365)。好ましくは、候補PTEN/AKT調節剤をPTEN/AKT機能に欠陥がある細胞を有するモデル系に投与した場合、モデル系において検出可能な表現型の変化がもたらされ、これにより、PTEN/AKT機能が修復されている、すなわち細胞が正常な細胞周期進行を示していることが示される。
【0018】
調節剤
本発明は、GALK1の機能及び/又はPTEN/AKT経路と相互作用し及び/又はこれを調節する作用剤を同定する方法を提供する。本方法により同定された調節剤もまた本発明の一部である。このような作用剤は、PTEN/AKT経路に関連する様々な診断及び治療用途、ならびにGALK1タンパク質及びPTEN/AKT経路におけるその寄与のより詳しい分析に有用である。したがって、本発明はまた、GALK1相互作用剤又は調節剤を投与することによってGALK1活性を特異的に調節する工程を含む、PTEN/AKT経路を調節する方法も提供する。
ここで使用する「GALK1調節剤」とは、GALK1機能を調節する任意の薬剤、例えば、GALK1と相互作用してGALK1活性を阻害又は増強するか、或いは正常なGALK1機能にその他の影響を与える薬剤である。GALK1機能への影響は、転写、タンパク質発現、タンパク質の局在化、細胞活性又は細胞外活性を含め、いかなるレベルでもよい。好ましい実施態様では、GALK1調節剤はGALK1の機能を特異的に調節する。表現「特異的調節剤」、「特異的に調節する」などは、本明細書中では、GALK1ポリペプチド又は核酸に直接結合し、好ましくはGALK1の機能を阻害、増強、又は他の形で変化させる調節剤を言うために使用する。また、これらの用語は、(例えば、GALK1の結合パートナーと、又はタンパク質/結合パートナー複合体と結合してGALK1機能を変化させることによって)GALK1と結合パートナー、基質、又はコファクターとの相互作用を変化させる調節剤も包含する。さらに好ましい実施態様では、GALK1調節剤はPTEN/AKT経路のモジュレーターであり(例えばPTEN及び/又はAKT機能を回復させる及び/又は上方制御する)、よってPTEN/AKT調節剤でもある。
好ましいGALK1調節剤には、小分子化合物;GALK1相互作用タンパク質;及びアンチセンスやRNA阻害剤などの核酸調節剤が含まれる。調節剤を、例えば組合せ療法などにおけるような他の活性成分及び/又は適切な担体や賦形剤を含んでもよい組成物として、薬剤組成物中に配合してもよい。化合物を配合又は投与する技術は、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン、第19版に出ている。
【0019】
小分子モジュレーター
小分子は多くの場合、酵素機能を有し及び/又はタンパク質相互作用ドメインを含むタンパク質の機能を調節することが好ましい。当分野で「小分子」化合物と呼ばれる化学剤は通常、分子量が10,000以下、好ましくは5,000以下、より好ましくは1,000以下、最も好ましくは500ダルトン以下である有機非ペプチド分子である。このクラスのモジュレーターには、化学的に合成した分子、例えばコンビナトリアル化学ライブラリからの化合物が含まれる。合成化合物は、既知又は推定GALK1タンパク質の特性に基づいて合理的に設計又は同定する、あるいは化合物ライブラリをスクリーニングすることによっても同定することができる。このクラスの代わりの適切なモジュレーターは、天然産物、特に、やはり化合物ライブラリをスクリーニングしてGALK1変調活性を探すことによって同定することができる、植物や真菌類など生物由来の二次代謝産物である。化合物を作製して得る方法は、当分野で周知である(Schreiber SL、Science、2000年、151:1964〜1969; Radmann J及びGunther J、Science、2000、151:1947〜1948)。
以下に記載するスクリーニングアッセイから同定された小分子モジュレーターをリード化合物として使用することができ、それから候補臨床化合物を設計し、最適化し、合成することができる。このような臨床化合物は、PTEN/AKT経路に関連する病状を処置するのに有用であるかもしれない。候補小分子調節剤の活性は、以下にさらに記載する反復性の二次的な機能検証、構造決定、及び候補モジュレーターの改変及び試験によって、数倍改善されるかもしれない。さらに、候補臨床化合物は、臨床的及び薬理的特性に特に注意を払って作製される。例えば、活性を最適化し、製薬開発における毒性を最小限に抑えるために、試薬を誘導体化し、インビトロ及びインビボアッセイを使用して再スクリーニングすることができる。
【0020】
タンパク質モジュレーター
特異的なGALK1相互作用タンパク質は、PTEN/AKT経路及び関連疾患に関連する様々な診断上及び治療上の用途、ならびに他のGALK1調節剤の検証アッセイにおいて有用である。好ましい実施態様では、GALK1相互作用タンパク質は、転写、タンパク質の発現、タンパク質の局在化、細胞活性又は細胞外活性を含めた正常なGALK1機能に影響を与える。別の実施態様では、GALK1相互作用タンパク質は、癌などPTEN/AKTに関連する疾患に関連性があるので、GALK1タンパク質の機能に関する情報を検出及び提供するのに有用である(例えば診断上の手段用)。
GALK1相互作用タンパク質は、GALK1発現、局在化、及び/又は活性を調節するGALK1経路のメンバーなど内因性のもの、すなわちGALK1と自然に遺伝学的又は生化学的に相互作用するものであってよい。GALK1モジュレーターには、GALK1相互作用タンパク質及びGALK1タンパク質自体のドミナントネガティブの形が含まれる。酵母ツーハイブリッド及び変異体スクリーニングにより、内因性GALK1相互作用タンパク質を同定する好ましい方法が提供されている(Finley, R.L.他、1996年、DNA Cloning-Expression Systems:A Practical Approach、Glover D.及びHames B.D編、Oxford University Press、英国オックスフォード、ページ169〜203; Fashema SF他、Gene、2000年、250:1〜14; Drees BL、Curr Opin Chem Biol、1999、3:64〜70; Vidal M及びLegrain P、Nucleic Acids Res、1999年、27:919〜29;米国特許第5,928,868号)。タンパク質複合体を解明するための好ましい代替方法は、質量分析である(例えば、Pandley A及びMann M、Nature、2000年、405:837〜846;Yates JR 3rd、Trends Genet、2000年、16:5〜8の総説)。
【0021】
GALK1相互作用タンパク質は、GALK1に特異的な抗体やT細胞抗原受容体などの外因性タンパク質でよい(例えば、Harlow及びLane、1988年、Antibodies, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory; Harlow及びLane、1999年、Using antibodies:a laboratory manual.、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー: Cold Spring Harbor Loboratory Press参照)。GALK1抗体については以下でさらに論じる。
好ましい実施態様では、GALK1相互作用タンパク質はGALK1タンパク質に特異的に結合する。好ましい代替実施態様では、GALK1調節剤はGALK1基質、結合パートナー、又はコファクターと結合する。
【0022】
抗体
別の実施態様では、このタンパク質モジュレーターはGALK1に特異的な抗体アゴニスト又はアンタゴニストである。この抗体は治療上及び診断上の用途を有しており、GALK1モジュレーターを同定するスクリーニングアッセイで使用することができる。また、様々な細胞応答ならびにGALK1の通常のプロセッシング及び成熟を担当するGALK1経路の部分の分析においても、この抗体を使用することができる。
周知の方法を使用してGALK1ポリペプチドと特異的に結合する抗体を作製することができる。好ましくは、この抗体はGALK1ポリペプチドの哺乳動物オルソログ、より好ましくはヒトGALK1に、特異的である。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAbs)、ヒト化又はキメラ抗体、単鎖抗体、Fab断片、F(ab’)断片、FAb発現ライブラリによって産生された断片、抗イディオタイプ(抗−Id)抗体、及び上記のうちいずれかのエピトープ結合断片であってよい。例えば、GALK1のアミノ酸配列に対する抗原性を探すための通常のGALK1ポリペプチドスクリーニングによって、又はこれに対するタンパク質の抗原性領域を選択する理論的な方法を施用することによって、特に抗原性であるGALK1のエピトープを選択することができる(Hopp及びWood、1981年、Proc. Nati.Acad. Sci. U.S.A.、78:3824〜28;Hopp及びWood、1983年、Mol. Immunol.、20:483〜89; Sutcliffe他、1983年、Science、219:660〜66)。記載の標準手順によって、10−1、好ましくは10−1〜1010−1、又はそれより強力な親和性を有するモノクローナル抗体を作製することができる(Harlow及びLane、上掲;Goding、1986年、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice(第2版)、Academic Press、ニューヨーク;米国特許第4,381,292号;米国特許第4,451,570号;米国特許第4,618,577号)。GALK1の粗細胞抽出物又は実質的に精製されたその断片に対する抗体を作製することができる。GALK1断片を使用する場合は、これらは、好ましくはGALK1タンパク質の少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個の連続したアミノ酸を含む。特定の実施態様では、GALK1に特異的な抗原及び/又は免疫原は、免疫応答を刺激する担体タンパク質に結合している。例えば、対象ポリペプチドはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)担体に共有結合しており、このコンジュゲートは免疫応答を増強させるフロイント完全アジュバント中で乳化されている。従来のプロトコルに従って実験ウサギやマウスなど適切な免疫系を免疫化する。
【0023】
固定した対応するGALK1ポリペプチドを使用した固相酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)など適切なアッセイによって、GALK1に特異的な抗体の存在をアッセイした。ラジオイムノアッセイや蛍光アッセイなど他のアッセイを使用することもできる。
異なる動物種由来の異なる部分を含む、GALK1ポリペプチドに特異的なキメラ抗体を作製することができる。例えば、抗体の生物活性はヒト抗体由来であり、その結合特異性はネズミ断片由来となるように、ヒト免疫グロブリン定常領域をネズミmAbの可変領域に連結させてもよい。それぞれの種由来の適切な領域をコードする遺伝子を継ぎ合わせることによってキメラ抗体を作製する(Morrison他、Proc. Natl. Acad. Sci.、1984、81:6851〜6855; Neuberger他、Nature、1984、312:604〜608;Takeda他、Nature、1985、31:452〜454)。キメラ抗体の一形態であるヒト化抗体は、組換えDNA技術によって(Riechmann LM他、1988年、Nature、323:323〜327)マウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワーク領域及び定常領域のバックグラウンドに移植することによって(Carlos, T.M.、J.M.Harlan、1994年、Blood、84:2068〜2101)作製することができる。ヒト化抗体は約10%のネズミ配列及び約90%のヒト配列を含み、それにより、抗体特異性を保持したままで免疫原性がさらに低下又は排除される(Co MS及びQueen C.、1991年、Nature、351:501〜501; Morrison SL.、1992年、Ann. Rev. Immun.、10:239〜265)。ヒト化抗体及びそれらを産生させる方法は当分野で周知である(米国特許第5,530,101号、第5,585,089号、第5,693,762号、及び第6,180,370号)。
【0024】
アミノ酸架橋によってFv領域の重鎖断片と軽鎖断片とを連結させて形成した組換え単鎖ポリペプチドであるGALK1特異的単鎖抗体を、当分野で周知の方法によって産生することができる(米国特許第4,946,778号;Bird、Science、1988年、242:423〜426; Huston他、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1988年、85:5879〜5883; Ward他、Nature、1989、334:544〜546)。
抗体を産生するための他の適切な技術は、リンパ球をインビトロで、抗原ポリペプチド、又は代わりにファージや類似のベクター中の選定抗体ライブラリに曝すことを含む(Huse他、Science、1989年、246:1275〜1281)。本明細書中で使用するT細胞抗原受容体は、抗体モジュレーターの範囲内に含まれる(Harlow及びLane、1988年、上掲)。
【0025】
本発明のポリペプチド及び抗体は、改変して又は改変せずに使用することができる。多くの場合、検出可能なシグナルをもたらす基質又は標的タンパク質を発現する、細胞にとって毒性である基質を共有結合又は非共有結合のどちらかによって結合させることによって抗体を標識する(Menard S他、Int J.Biol Markers、1989、4:131〜134)。幅広い種類の標識及びコンジュゲーション技術が知られており、科学文献及び特許文献のどちらにも広く報告されている。適切な標識には、放射性核種、酵素、基質、コファクター、阻害剤、蛍光部分(moiety)、蛍光発光ランタニド金属、化学発光部分、生物発光部分、磁気粒子などが含まれる(米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;第4,366,241号)。また、組換え免疫グロブリンを産生させてもよい(米国特許第4,816,567号)。膜貫通毒素タンパク質とコンジュゲートさせることによって細胞質ポリペプチドに対する抗体をその標的に送達し到達させることができる(米国特許第6,086,900号)。
患者で治療的に使用する場合は、可能な場合は標的部位に非経口的投与によって、又は静脈投与によって本発明の抗体を投与する。臨床研究によって治療上有効な用量及び投与計画を決定する。通常、投与する抗体の量は患者の重量1kgあたり約0.1mg〜約10mgである。非経口投与には、薬学的に許容されるベヒクルを含む単位用量の注射可能な形態(例えば溶液、懸濁液、乳濁液)で抗体を配合する。このようなベヒクルは本質的に無毒性で治療作用がない。例は、水、生理食塩水、リンゲル溶液、ブドウ糖溶液、及び5%のヒト血清アルブミンである。また、不揮発性油、オレイン酸エチル、又はリポソーム担体などの非水性ベヒクルを使用してもよい。ベヒクルには、等張性や化学的安定性を高める又は他の形で治療の可能性を高める緩衝剤や保存料など少量の添加剤が含まれ得る。このようなベヒクル中の抗体濃度は、通常約1mg/ml〜約10mg/mlである。免疫療法的な方法は文献にさらに記載されている(米国特許第5,859,206;国際公開公報WO0073469号)。
【0026】
特異的生物療法
好ましい実施形態では、GALK1相互作用タンパク質は生物療法に適用できる。生物療法剤は製薬的に許容可能な担体に形成され、シグナル伝達経路を活性化又は阻害するために投与できる。この調節は、リガンドと結合し、よって経路の活性を阻害するか、又は受容体と結合し、受容体の活性を阻害又は活性化することにより行うことができる。あるいは、生物療法剤自体を、受容体を活性化又は阻害可能なリガンドとしてもよい。生物療法剤及び生物療法剤の製造方法は、米国特許第6,146,628号に詳述されている。
GALK1がリガンドであるとき、その天然レセプターを活性化するか、又は阻害する生物療法剤として使用することができる。或いは、GALK1に対する抗体を、前述のようにして生物療法剤として使用することもできる。
GALK1がレセプターであるとき、そのリガンド、リガンドに対する抗体、又はGALK1自体を生物療法剤として使用し、PTEN/AKT経路におけるGALK1の活性を調節することができる。
【0027】
核酸モジュレーター
他の好ましいGALK1調節剤としては、一般的にGALK1活性を阻害するアンチセンスオリゴマーや二本鎖RNA(dsRNA)などの核酸分子が含まれる。好ましい核酸モジュレーターは、DNAの複製、転写、タンパク質翻訳部位へのGALK1 RNAの転位、GALK1 RNAからのタンパク質の翻訳、GALK1 RNAをスプライシングして1つ又は複数のmRNA種を得ること、又はGALK1 RNAに関与し又はそれによって促進され得る触媒活性など、GALK1核酸の機能を妨げる。
一実施態様では、このアンチセンスオリゴマーは、好ましくは5’非翻訳領域に結合することによってGALK1 mRNAと結合して、翻訳を阻止するのに十分相補的なオリゴヌクレオチドである。GALK1に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも6〜約200個の範囲のヌクレオチドである。一部の実施態様では、このオリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも10、15、又は20ヌクレオチド長である。他の実施態様では、このオリゴヌクレオチドは、好ましくは50未満、40、又は30ヌクレオチド長である。このオリゴヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA、あるいはそのキメラ混合物や誘導体又はそれを改変した変形であり得る。このオリゴヌクレオチドの塩基部分、糖部分、又はリン酸主鎖を改変してもよい。このオリゴヌクレオチドは、ペプチド、細胞膜を横切る輸送を促進する作用剤、ハイブリダイゼーションによってトリガされる切断剤、インターカレーション剤など他の付属基を含んでいてもよい。
【0028】
別の実施態様では、このアンチセンスオリゴマーはホスホチオエートモルホリノオリゴマー(PMO)である。PMOは、それぞれがモルホリンの六員環に結合している4種の遺伝子塩基(A、C、G、又はT)のうちの1つを含む、4種の異なるモルホリノサブユニットから組み立てられている。これらサブユニットのポリマーは、非イオン性のホスホジアミデートサブユニット間の連結によって結合されている。PMO及び他のアンチセンスオリゴマーの詳細な作製方法及び使用方法は、当分野で周知である(例えば、国際公開公報WO99/18193号;Probst JC、Antisense Oligodeoxynucleotide and Ribozyme Design, Methods.、2000年、22(3):271〜281;Summerton J及びWeller D.、1997年、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.、7:187〜95;米国特許第5,235,033号;米国特許第5,378,841号参照)。
好ましい代替GALK1核酸モジュレーターは、RNA干渉(RNAi)を媒介する二本鎖RNA種である。RNAiは、動物及び植物における配列特異的な翻訳後の遺伝子サイレンシングプロセスであり、サイレンシングされる遺伝子と相同の配列をもつ二本鎖RNA(dsRNA)によって開始される。線虫、ショウジョウバエ、植物、及びヒトで遺伝子をサイレンシングするためのRNAiの使用に関する方法は、当分野で周知である(Fire A他、1998年、Nature、391:806〜811; Fire, A.、Trends Genet.、15、358〜363、1999年; Sharp, P.A.、RNA interference 2001.、Genes Dev.、15、485〜490、2001年; Hammond, S.M.他、Nature Rev.Genet.、2、110〜1119、2001年;Tuschl, T.、Chem.Biochem.、2、239〜245、2001年;Hamilton, A.他、Science、286、950〜952、1999年;Hammond, S.M.他、Nature、404、293〜296、2000年;Zamore, P.D.他、Cell、101、25〜33、2000年;Bernstein, E.他、Nature、409、363〜366、2001; Elbashir, S.M.他、Genes Dev.、15、188〜200、2001年;国際公開公報WO0129058号;国際公開公報WO9932619号;Elbashir SM他、2001年、Nature、411:494〜498; Novina CD及びSharp P. 2004 Nature 430:161-164; Soutschek J等 2004 Nature 432:173-178; Hsieh AC等(2004)NAR 32(3):893-901)。
核酸モジュレーターは一般的に、研究試薬、診断薬、治療薬として使用される。例えば、遺伝子の発現を厳密な特異性で阻害することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、しばしば特定の遺伝子の機能を解明するのに使用される(例えば、米国特許第6,165,790号参照)。また、核酸モジュレーターは、例えば生体経路の様々なメンバーの機能を識別するためにも使用される。例えば、アンチセンスオリゴマーは、病態の動物及び人の処置における治療的部分として利用されてきており、安全かつ効果的であることが数々の臨床治験で実証されてきた(Milligan JF他、Current Concepts in Antisense Drug Design、J Med、Chem.、1993年、36:1923〜1937;Tonkinson JL他、Antisense Oligodeoxynucleotides as Clinical Therapeutic Agents、Cancer Invest.、1996年、14:54〜65)。したがって、本発明の一態様では、PTEN/AKT経路におけるGALK1の役割、及び/又はGALK1とこの経路の他のメンバーとの関係をさらに解明するためのアッセイで、GALK1に特異的な核酸モジュレーターを使用する。本発明の別の態様では、PTEN/AKTに関連する病態を処置する治療剤として、GALK1に特異的なアンチセンスオリゴマーを使用する。
【0029】
アッセイ系
本発明は、GALK1活性の特異的なモジュレーターを同定するアッセイ系及びスクリーニング方法を提供する。本明細書中で使用する「アッセイ系」とは、具体的な事象を検出及び/又は測定するアッセイを実施してその結果を分析するのに必要なすべての構成要素を包含する。一般的に、一次アッセイを使用して、GALK1核酸又はタンパク質に関するモジュレーターの特異的な生化学的効果又は分子効果を同定又は確認する。一般的に、二次アッセイでは、一次アッセイによって同定されたGALK1調節剤の活性がさらに評価され、この調節剤がPTEN/AKT経路に関連する方式でGALK1に影響を与えることが確認されることもある。場合によっては、GALK1モジュレーターを直接二次アッセイで試験する。
好ましい実施態様では、スクリーニング方法は、候補剤が存在しなければスクリーニング方法で検出される特定の分子事象に基づく対照活性(例えば結合活性)が系によってもたらされる条件下で、GALK1ポリペプチド又は核酸を含む適切なアッセイ系を候補剤と接触させることを含む。作用剤の影響を受ける活性と対照活性との統計的に有意な差により、この候補剤がGALK1活性を、したがってPTEN/AKT経路を調節することが示される。アッセイに使用するGALK1ポリペプチド又は核酸は、上述の核酸又はポリペプチドのいずれを含んでもよい。
【0030】
一次アッセイ
一般的に、試験するモジュレーターの種類によって一次アッセイの種類が決まる。
【0031】
小分子モジュレーター用の一次アッセイ
小分子モジュレーターには、候補モジュレーターを同定するためにスクリーニングアッセイを使用する。スクリーニングアッセイは、細胞に基づくものでもよく、またこの標的タンパク質に関連する生化学的反応を再度引き起こさせる又は保持する無細胞系を使用してもよい(Sittampalam GS他、Curr Opin Chem Biol、1997年、1:384〜91及び付随の参考文献に総説がある)。本明細書中で使用する用語「細胞に基づく」とは、生細胞、死滅細胞、又は膜分画、小胞体分画、ミトコンドリア分画など特定の細胞分画を使用したアッセイを言う。用語「無細胞」とは、実質的に精製されたタンパク質(内因性又は組換えによって生成された)、部分的に精製した又は粗細胞抽出物を使用したアッセイを包含する。スクリーニングアッセイでは、タンパク質−DNA相互作用、タンパク質−タンパク質相互作用(例えば受容体−リガンド結合)、転写活性(例えばレポーター遺伝子)、酵素活性(例えば基質の特徴を介するもの)、セカンドメッセンジャーの活性、免疫原性、及び細胞形態や他の細胞性特徴の変化を含めた様々な分子事象を検出することができる。適切なスクリーニングアッセイでは、蛍光、放射活性、比色、分光光度、及び電流滴定を含めた広範囲の検出方法を使用して、検出する具体的な分子事象の読出しを行うことができる。
通常、細胞に基づくスクリーニングアッセイには、GALK1を組換えによって発現する系及び個々のアッセイで要求される任意の補助タンパク質が必要である。組換えタンパク質を生じさせる適切な方法では、関連する生物活性を保持しており、活性を最適化してアッセイの再現性を保証するのに十分な純度のタンパク質が、十分な量で生成される。酵母ツーハイブリッドスクリーニング、変異体スクリーニング及び質量分析は、タンパク質−タンパク質相互作用を決定し、タンパク質複合体を解明する好ましい方法を提供する。ある種の用途では、小分子モジュレーターを同定するスクリーニングにGALK1相互作用タンパク質を使用する場合、GALK1タンパク質に対する相互作用タンパク質の結合特異性を、基質による処理(例えば候補GALK1に特異的に結合する作用剤の、GALK1発現性細胞におけるネガティブエフェクターとして機能する能力)、結合平衡定数(通常少なくとも約10−1、好ましくは少なくとも約10−1、より好ましくは少なくとも約10−1)、免疫原性(例えばマウス、ラット、ヤギ又はウサギなどの異種宿主中でGALK1に特異的な抗体を誘発する能力)など様々な周知の方法によってアッセイすることができる。酵素及び受容体について、結合はそれぞれ基質及びリガンドによる処理によってアッセイすることができる。
【0032】
スクリーニングアッセイでは、GALK1ポリペプチド、その融合タンパク質、又はこのポリペプチドもしくは融合タンパク質を含む細胞又は膜に特異的に結合する、あるいはその活性を調節する、候補剤の能力を測定することができる。GALK1ポリペプチドは、完全長のものでも、また機能的なGALK1活性を保持しているその断片でもよい。GALK1ポリペプチドは、検出又は固定用のペプチドタグあるいは別のタグなど別のポリペプチドに融合させてもよい。GALK1ポリペプチドは、好ましくはヒトGALK1、あるいは上記のようなそのオルソログ又は誘導体である。好ましい実施態様では、スクリーニングアッセイで、GALK1と内因性タンパク質、外因性タンパク質、又はGALK1に特異的な結合活性を有する他の基質などの結合標的との相互作用の候補剤に基づく変調を検出し、これを使用して正常なGALK1遺伝子機能を評価することができる。
GALK1モジュレーターを探すためのスクリーニングに適合させることのできる適切なアッセイ様式は、当分野で周知である。好ましいスクリーニングアッセイはハイスループット又はウルトラハイスループットであり、したがって、リード化合物用の化合物ライブラリをスクリーニングする、自動化された費用効果の高い手段を提供する(Fernandes PB、Curr Opin Chem Biol、1998年、2:597〜603; Sundberg SA、Curr Opin Biotechnol、2000年、11:47〜53)。好ましい一実施態様では、スクリーニングアッセイで、蛍光偏光、時間分解蛍光、蛍光共鳴エネルギー移動を含めた蛍光技術を使用する。これらの系は、色素で標識した分子から放出されたシグナルの強度がそのパートナー分子との相互作用に依存する、タンパク質−タンパク質又はDNA−タンパク質相互作用をモニターする手段を提供する(例えば、Selvin PR、Nat Struct Biol、2000年、7:730〜4;Fernandes PB、上掲;Hertzberg RP及びPope AJ、Curr Opin Chem Biol、2000年、4:445〜451)。
【0033】
候補GALK1及びPTEN/AKT経路モジュレーターを同定するために様々な適切なアッセイ系を使用することができる(例えば、特に、米国特許第6,165,992号及び同第6,720,162号(キナーゼアッセイ)、同第5,550,019号及び6,133,437号(アポトーシスアッセイ)、同第6,114,132号及び同第6,720,162号(ホスファターゼ及びプロテアーゼアッセイ)、並びに同第5,976,782号、6,225,118号及び6,444,434号(血管新生アッセイ))。好ましい特異的なアッセイを以下に詳述する。
膜結合タンパク質であるか、又は細胞間タンパク質である、重要なシグナル伝達タンパク質のプロテインキナーゼは、アデノシン3リン酸塩(ATP)から、タンパク質基質中のセリン、スレオニン又はチロシン残基へのガンマリン酸塩の伝達を触媒する。[ガンマ−32P又は−33P]ATPからのリン酸の伝達をモニターするラジオアッセイが、キナーゼ活性をアッセイするために頻繁に使用される。例えば、p56(lck)キナーゼ活性のシンチレーションアッセイは、[ガンマ−33P]ATPからビオチン化したペプチド基質へのガンマリン酸の転移をモニターする。基質はシグナルを伝達するストレプトアビジン被覆ビーズに捕らえられる(Beveridge M他、J Biomol Screen、(2000) 5:205-212)。このアッセイはシンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用する。SPAにおいては、SPAビーズの表面に拘束された受容体に結合したラジオリガンドのみが、内部に固定化されたシンチラントによって検出され、それによりフリーリガンドから結合体を分離することなく、結合を測定することができる。プロテインキナーゼ活性のほかのアッセイでは、リン酸化した基質を特異的に認識する抗体を使用できる。例えば、キナーゼレセプター活性化(KIRA)アッセイは、培養細胞中の無償レセプターを刺激するリガンドによりレセプターチロシンキナーゼ活性を測定し、次いで特異的抗体で可溶化されたレセプターを培養し、ホスホチロシンELISAによりリン酸化を定量化する(Sadick MD, Dev Biol Stand (1999) 97:121-133)。プロテインキナーゼ活性のための抗体に基づくアッセイの別の例は、TRF(時間分解蛍光光度法)である。この方法では、ユーロピウムキレート標識した抗ホスホチロシン抗体を利用してマイクロタイタープレートウェル上にコーティングされた重合体基質へのリン酸の転移を検出する。次いで、時間分解、乖離増強蛍光を使用してリン酸化の量を検知する(Braunwalder AF, 他, Anal Biochem 1996 Jul 1;238(2):159-64)。キナーゼのまた別のアッセイには脱共役pH感度アッセイがあり、これを使用して潜在的インヒビターのハイスループットスクリーニングを行うか、又は基質特異性を決定することができる。キナーゼが、水素イオンの放出により、γ−ホスホリル基の、ATPから適切なヒドロキシル受容器への移動を触媒することから、pH感度アッセイは、適合する緩衝液/指標システムを用いたこの水素イオンの検出に基づいている(Chapman EおよびWong CH (2002) Bioorg Med Chem. 10:551-5)。
【0034】
プロテインホスファターゼは、タンパク質基質内のセリン、スレオニン又はチロシン残基からのガンマリン酸塩の除去を触媒する。ホスファターゼはキナーゼとは反対の作用を有するので、適切なアッセイによりキナーゼアッセイと同じパラメータを測定する。一実施例では、蛍光標識したペプチド基質の脱リン酸化により、基質のトリプシン切断が可能となり、これにより切断された基質の蛍光性が有意に高まった(Nishikata M等、Biochem J (1999) 343:35-391)。別の実施例では、反応成分の固定又は分離を必要としない、溶液に基づく均一系技術である蛍光偏光法(FP)を用いてプロテインホスファターゼのハイスループットスクリーニング(HTS)アッセイを開発する。このアッセイは標的とホスファターゼとの直接結合を使用するもので、標的のホスファターゼの濃度を増大させると脱リン酸化率が上昇して偏光に変化が生じる(Parker GJ等、(2000)J Biomol Screen 5:77-88)。
プロテアーゼは、特定の部位でタンパク質基質を切断する酵素である。例示的アッセイは、プロテアーゼ媒介性の切断によって起こる人工基質のスペクトル特性の変化を検出する。一実施例では、2つの異なる蛍光タグを分離する、4つのアミノ酸タンパク質分解認識配列を含む合成カスパーゼ基質が用いられる。蛍光共鳴エネルギー転移は、これらフルオロフォアの近接を検出し、よって基質が切断されているかどうかを示す(Mahajan NP等、Chem Biol (1999) 6:401-409)。
【0035】
内在性プロテアーゼインヒビターは、プロテアーゼの活性を阻害することができる。プロテアーゼ又はプロテアーゼインヒビターのために開発されたアッセイの一実施例では、ビオチン化基質をタイタープレートにコーティングし、プロテアーゼを用いて加水分解させる。加水分解されない基質を、アルカリ性ホスファターゼ−ストレプトアビジン複合体との反応、及び反応産物の検出により定量化する。プロテアーゼインヒビターの活性は、アルカリ性ホスファターゼ指標酵素の活性と相関する(Gan Z等、Anal Biochem 1999) 268:151-156)。
グリコシルトランスフェラーゼは、グリコシル化のパターンの変化を媒介し、このパターンの変化は次いで、糖タンパク質及び/又は糖脂質の機能に影響し、更に下流において発達、分化、形質転換及び細胞−細胞認識に影響し得る。グリコシルトランスフェラーゼのアッセイでは、シンチレーション法を使用して、放射標識した糖−ヌクレオチドドナーから、ポリアクリルアミドに連結させ、プラスチック製のマイクロタイタープレート上にコーティングした合成グリコポリマー受容器への炭水化物の移行を測定する(Donovan RS等、Glycoconj J (1999) 16:607-615)。
【0036】
ヒストン脱アセチル化及びアセチル化タンパク質は、転写の間のクロマチン構造の制御に関与しており、従って遺伝子制御に機能する。一実施例では、ヒストン脱アセチル酵素にシンチレーション近接アッセイ(SPA)とビオチン化[3H]アセチルヒストンH4ペプチド基質とを使用する(Nare B等、Anal Biochem 1999, 267:390-396)。ストレプトアビジンでコーティングされたSPAビードに結合すると、ペプチド基質は放射性シグナルを生成し、ヒストンの脱アセチル活性はこれを減少させる。
Gタンパク質共役レセプター(GPCR)は、生物学的機能の様々なアレイを媒介する細胞表面レセプターの大きなファミリーを含んでいる。これらは、幅広い細胞外からの化学的刺激に応答して特定のシグナル伝達カスケードを活性化する。アッセイにより、レポーター遺伝子活性又は細胞内カルシウムイオン、或いはその他の二次メッセンジャーを測定することができる(Durocher Y等、Anal Biochem (2000) 284:316-326; Miller TR等、J Biomol Screen (1999) 4:249-258)。このようなアッセイは、多数の異なるGPCRに結合することにより「汎用」スクリーニングアッセイを容易にするキメラGαタンパク質を利用することができる(Coward P等、Anal Biochem (1999) 270:242-248; Milligan G及びRees S等、Trends Pharmacol Sci (1999) 20:118-124)。
【0037】
CPCRは、ヘテロ三量体Gタンパク質によりその効果を発揮する。このタンパク質は活性GTP結合形態と不活性GDP結合形態との間で繰り返す周期を有する。レセプターは、GTPのGDPの変化を促進することによりGタンパク質の活性を触媒し、一方Gタンパク質は、固有のGTP加水分解酵素活性によりそれ自体の不活性化を触媒する。GEFはGDPの解離及びGTPの結合を加速し、一方GAPはGTPのGDP加水分解を刺激する。よって、GPCR活性のモニタリングに使用されるアッセイと同じアッセイを、GEF又はGAP活性のモニタリングに適用することができる。別法として、適切なGTP加水分解酵素からの、標識されたGDPの放出により、又は標識されたGTPの取り込みにより、GEF活性をアッセイすることができる。GAP活性は、標識したGTPを使用するGTP加水分解アッセイにより、モニターすることができる(例えば、Jones S等、Molec Biol Cell (1998) 9:2819-2837)。
輸送タンパク質は、細胞膜全体に、栄養分、イオン、アミノ酸、及び薬剤を含む、一定の範囲に亘る基質を運ぶ。トランスポーターの修飾因子のアッセイでは、標識した基質を使用することができる。例えば、異なるペプチド及びアニオントランスポーターの両方と相互作用する化合物を同定するための例示的なハイスループットスクリーニングでは、蛍光標識した基質を使用する。ペプチド輸送のアッセイは、追加的にマルチスクリーン濾過プレートを使用する(Blevitt JM等、J Biomol Screen 1999, 4:87-91; Cihlar T及びHo ES, Anal Biochem 2000, 283:49-55)。
【0038】
イオンチャネルは、流体の分泌、電解質バランス、生体エネルギー論、及び膜興奮性を含む、必須の生理機能を媒介する。チャネル活性のアッセイは、Gonzalez JE等による文献に記載のように(Drug Discovery Today (1999) 4:431-439)イオン感応性の染料又はタンパク質、或いは電圧感応性の染料又はタンパク質を組み込むことができる。別の方法では、既知のリガンドの移動を測定する。これらのリガンドには、放射標識又は蛍光標識することができる(例えば、Schmid EL等、Anal Cehm (1998) 70:1331-1338)。
レダクターゼは、代謝の減少を招く反応を触媒するオキシドレダクターゼクラスの酵素である。レダクターゼを探すためのハイスループットスクリーニングアッセイでは、シンチレーションを行うことができる(Fernandes PB. (1998) Curr Opin Chem Biol 2:597-603; Delaporte E等(2001)J Biomol Screen 6:225-231)。
【0039】
加水分解酵素は、特にエステラーゼ、リパーゼ、ペプチダーゼ、ヌクレオチダーセ、及びホスファターゼなどの基質の加水分解を触媒する。酵素活性アッセイは、加水分解活性を測定するために使用することができる。酵素の活性は、反応産物の出現率を分光光度的に測定することにより、過剰基質の存在下で測定する。加水分解のアッセイ及びハイスループットアレイは、当分野の当業者に既知である(Park CB及びClark DS (2002) Biotech Bioeng 78:229-235)。
キネシンはモータータンパク質である。キネシンのアッセイは、Blackburn等(Blackburn CL等、(1999) J Org Chem 64:5565-5570)によって記載されたように、それらのATP分解酵素活性を利用する。ATP分解酵素アッセイは、EnzCheckATP分解酵素キット(Molecular Probes)を使用して行われる。このアッセイは、Ultraspec分光計(Pharmacia)を使用して行われ、360nmまで吸光度を増大させることにより反応の進行をモニタリングする。微小管(終濃度1.7mM )、キネシン(終濃度0.11mM)、インヒビター(又はDMSOブランク、終濃度5%)、及びEnzCheck成分(プリンヌクレオチドホスホリラーゼ及びMESG基質)を、反応緩衝液(40mMのPIPES(pH6.8)、5mMのパクリタキセル、1mMのEGTA、5mMのMgCl2)中のキュベット内で予め混合する。MgATP(終濃度1mM)を加えることにより反応を開始させる。
【0040】
ペプチジル−プロリル異性化酵素(PPIase)はシクロフィリン、FK506結合タンパク質及びparavulinを含み、オリゴペプチド内のシス−トランスのプロリンペプチド結合の異性化を触媒するもので、細胞内のタンパク質が合成される間の、タンパク質のフォールディングに不可欠であると考えられている。PPIase活性の分光光度アッセイは、異性体に特異的な吸光度を直接測定することにより、又はキモトリプシンによる異性体に特異的な切断への共役異性化により、標識されたペプチド基質の異性化を検出することができる(Scholz C等、FEBS Lett (1997) 4414:69-73; Janowski B等、Anal Biochem (1997) 252:299-307; Kullertz G等、Clin Chem (1998) 44:502-8)。別のアッセイでは、シンチレーション近接アッセイ又は蛍光偏光アッセイを使用して、特定のPPIaseのリガンドを探すスクリーニングを行う(Graziani F等、J Biolmol Screen (1999) 4:3-7; Dubowchik GM等、Bioorg Med Chem Lett (2000) 10:559-562)。3,2−トランス−エノイル−CoA異性化酵素活性のアッセイも文献に既知である(Binstock, J. F.及びSchulz, H. (1981) Methods Enzymol. 71:403-411; Geisbrecht BV等(1999)J Biol Chem. 274:41797-803)。これらのアッセイでは、基質として3−シス−オクテノイル−CoAを使用し、3−シス−オクテノイル−CoAの、2−トランス−オクテノイル−CoAへの異性化の共役アッセイを使用して反応の進行を分光光度的にモニターする。3,2−トランス−エノイル−CoA異性化酵素活性のアッセイも、文献に既知である(Binstock, J. F.及びSchulz, H. (1981) Methods Enzymol. 71:403-411; Geisbrecht BV等(1999)J Biol Chem. 274:21797-803)。これらのアッセイでは、基質として3−シス−オクテノイル−CoAを使用し、3−シス−オクテノイル−CoAの、2−トランス−オクテノイル−CoAへの異性化の共役アッセイを使用して反応の進行を分光光度的にモニターする。
シンチレーション近接アッセイのような、脂肪酸合成に関与するシンターゼ酵素のハイスループットアッセイが、当技術分野の文献に既知である(He X等(2000)Anal Biochem 2000 Jun 15;282(1):107-14)。
【0041】
アポトーシスアッセイ。アポトーシス又はプログラムされた細胞死は、細胞内で起動される自殺プログラムであり、DNAの断片化、細胞質の縮み、膜変化及び細胞死を引き起こす。アポトーシスは、カスパーゼファミリーのタンパク質分解酵素によって媒介される。細胞の変化するパラメータの多くは、アポトーシスの間に測定可能である。細胞死用のアッセイは、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼに媒介されたジゴキシゲニン−11−dUTPニックエンド標識(TUNEL)アッセイによって実施することができる。TUNELアッセイは、フルオレセイン−dUTPの取り込み(Yonehara他、1989、J.Exp.Med.、169、1747)を追跡することによって細胞死に特徴的な核DNAの断片化を測定すること(Lazebnik他、1994、Nature、371、346)に使用される。組織培養細胞のアクリジンオレンジ染色によって細胞死をさらにアッセイすることができる(Lucas, R.他、1998、Blood、15:4730〜41)。その他の細胞に基づくアッセイには、カスパーゼ−3/7アッセイ及び細胞死ヌクレオソームELISAアッセイが含まれる。カスパーゼ−3/7アッセイは、多数のアポトーシス経路におけるプログラム細胞死の段階で発生する事象のカスケードの一部としてのカスパーゼ切断活性の活性化に基づいている。カスパーゼ3/7アッセイ(Promega社から市販されているApo−ONE(登録商標)同種カスパーゼ−3/7、cat#67790)では、溶解緩衝液と基質を混合して細胞に添加する。カスパーゼ基質は活性のカスパーゼ3/7で切断すると蛍光性となる。ヌクレオソームELISAアッセイは、当技術分野の専門家に周知の通常の細胞死アッセイであり、市販されている(Roche社、Cat#1774425)。このアッセイは、DNAとヒストンそれぞれに対して方向付けられたモノクローナル抗体を使用することにより、特に細胞可溶化物の細胞質断片中の単一及び少ヌクレオソームの量を決定する定量的サンドイッチ−酵素−イムノアッセイである。DNA断片化が原形質膜の崩壊の数時間前に起こり、細胞質中に蓄積されるという事実から、単一及び少ヌクレオソームはアポトーシスの間に細胞質中で濃縮された。アポトーシスが起こっていない細胞の細胞質断片にヌクレオソームは存在しない。ホスホ−ヒストンH2Bアッセイは、アポトーシスの結果として起こるヒストンH2Bのリン酸化に基づく別のアポトーシスアッセイである。ホスホヒストンH2Bに関する蛍光染料を使用して、アポトーシスの結果であるホスホヒストンH2Bの増大を測定することができる。アポトーシスに関する複数のパラメータを同時に測定するアポトーシスアッセイも開発されている。そのようなアッセイでは、抗体又は蛍光染料に関連付けることができ、且つアポトーシスの様々な段階を特徴付ける種々の細胞パラメータが標識され、Cellomics(登録商標)ArrayScan HCSシステムのような器具を使用して結果が測定される。測定可能なパラメータ、及びそれらのマーカーには、中期アポトーシスを特徴付ける抗活性カスパーゼ−3抗体、後期アポトーシスを特徴付ける抗PARP−p85抗体(切断されたPARP)、核を標識し、初期アポトーシスの指標として核膨張を、及び後期アポトーシスの指標として核凝縮を測定するために使用されるヘキスト標識、高い細胞膜透過性により死んだ細胞のDNAを標識するTOTO−3蛍光染料、並びに細胞中の細胞骨格の変化を評価し、TOTO−3標識とうまく相関させる抗αチューブリン又はF−アクチン標識が含まれる。
【0042】
アポトーシスアッセイ系は、GALK1を発現する細胞、及び任意選択で欠陥PTEN/AKT機能を有する(例えば、野生型細胞に比べてPTEN及び/又はAKTが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。このアポトーシスアッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した細胞死の誘発における変化により、候補PTEN/AKT調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、無細胞系を使用して最初に同定された候補PTEN/AKT調節剤を試験する二次アッセイとして、アポトーシスアッセイを使用することができる。また、GALK1機能が細胞死において直接役割を果たすかどうかを試験するためにアポトーシスアッセイを使用することもできる。例えば、野生型細胞に比べてGALK1を過剰発現又は過少発現する細胞でアポトーシスアッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した細胞死応答の差により、GALK1が細胞死応答において直接役割を果たすことが示唆される。アポトーシスアッセイは、米国特許第6,133,437号にさらに記載されている。
【0043】
細胞増殖及び細胞周期アッセイ。細胞増殖は、ブロモデオキシウリジン(BRDU)の取り込みを介してアッセイすることができる。このアッセイでは、新しく合成されたDNAにBRDUが取り込まれることにより、DNAが合成されている細胞集団が同定される。その後、抗BRDU抗体を用いて(Hoshino他、1986年、Int.J.Cancer、38、369;Campana他、1988年、J. Immunol. Meth.、107、79)、又は他の手段によって、新しく合成されたDNAを検出することができる。
また、ヒストンH3のリン酸化による有糸分裂が起こった細胞集団を同定するホスホ−ヒストンH3染色によって細胞増殖をアッセイする。セリン10におけるヒストンH3のリン酸化は、ヒストンH3のセリン10残基のリン酸化形態に特異的な抗体を用いて検出される(Chadlee, D.N. 1995, J. Biol. Chem 270:20098-105)。また、[H]−チミジンの取り込みを使用して細胞増殖を検査することもできる(Chen, J.、1996年、Oncogene、13:1395〜403; Jeoung, J.、1995年、J. Biol. Chem.、270:18367〜73)。このアッセイにより、S期のDNA合成の定量的な特徴づけが可能になる。このアッセイでは、DNAを合成している細胞が新しく合成されるDNA中に[H]−チミジンを取り込む。その後、シンチレーション計数器(例えば、Beckman LS 3800液体シンチレーション計数器)による放射性同位元素の計数など標準の技術によって取り込みを測定することができる。別の細胞増殖アッセイでは、染料アラマーブルー(Biosource Internationalより入手可能)を使用する。これにより、生存細胞が減少した際には、蛍光発光させて細胞数を間接的測定値を提供する(Voytik-Harbin SL他, 1998, In Vitro Cell Dev Biol Anim 34:239-46)。また別の増殖アッセイであるMTSアッセイは、インビトロでの化成物の細胞障害性の評価に基づき、可溶性のテトラゾリウム塩であるMTSを使用する。MTSアッセイとして例えばPromega CellTiter96(登録商標)水溶性非放射性細胞増殖アッセイ(Cat.#G5421)などが市販されている。
【0044】
また、軟寒天中のコロニー形成、又はクローン原性生存アッセイによって細胞増殖をアッセイすることもできる(Sambrook他、Molecular Cloning、Cold Spring Harbor、1989年)。例えば、GALK1で形質転換させた細胞を軟寒天プレートに播種し、2週間インキュベートした後コロニーを測定して計数する。
細胞増殖は代謝的活性細胞の指標としてATPレベルを測定することによってもアッセイできる。このようなアッセイとしては、Promega社による発光同種アッセイであるCell Titer−Glo(登録商標)などが市販されている。
フローサイトメトリーによって細胞周期における遺伝子の関与をアッセイすることができる(Gray JW他、1986年、Int J Radiat Biol Relat Stud Phys Chem Med、49:237〜55)。GALK1で形質移入させた細胞をヨウ化プロピジウムで染色し、細胞周期の異なる段階における細胞の蓄積を示すフローサイトメトリー(Becton Dickinsonから入手可能)で評価することができる。
【0045】
細胞周期への遺伝子の関与も、FOXO核転位置アッセイによってアッセイすることができる。転写因子のFOXOファミリーは、細胞周期の進行及び細胞死滅を含む様々な細胞機能のメディエータであり、PI3キナーゼ経路の活性化により負に調節される。FOXOファミリーメンバーのAktリン酸化により、細胞質にFOXOの隔離及び転写の不活性が起こる(Medema, R.H等 (2000) Nature 404:782-787)。PTEN/AKTはPI3キナーゼ経路の負の制御因子である。PTEN/AKTの活性化、或いはPI3キナーゼ又はAKTの欠失は、FOXOのリン酸化を防ぎ、よって核におけるFOXOの蓄積、FOXO制御遺伝子の転写の活性化、及びアポトーシスが起こる。或いは、PTEN/AKTの欠失により、経路活性化及び細胞生存がもたらされる(Nakamura, N.等 (2000) Mol Cell Biol 20:8969-8982)。FOXOの細胞質への転位置をアッセイにおいて使用し、スクリーニングしてPTEN/AKT経路のメンバー及び/又はモジュレーターを同定する。GFP又はルシフェラーゼを検出試薬として用いるFOXO転位置アッセイが従来技術に既知である(例えば、Zhang X等 (2002) J Biol Chem 277:45276-45284; 及びLi等 (2003) Mol Cell Biol 23:104-118)。
したがって、細胞増殖又は細胞周期アッセイ系は、GALK1を発現する細胞、及び任意選択で欠陥PTEN/AKT機能を有する(例えば、野生型細胞に比べてPTEN及び/又はAKTが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。このアッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した細胞増殖又は細胞周期の変化により候補PTEN/AKT調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、無細胞アッセイ系など別のアッセイ系を使用して最初に同定された候補PTEN/AKT調節剤を試験する二次アッセイとして、細胞増殖又は細胞周期アッセイを使用することができる。また、GALK1機能が細胞増殖又は細胞周期において直接役割を果たすかどうかを試験するために細胞増殖アッセイを使用することもできる。例えば、野生型細胞に比べてGALK1を過剰発現又は過少発現する細胞で細胞増殖又は細胞周期アッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した増殖又は細胞周期の差により、GALK1が細胞増殖又は細胞周期において直接役割を果たすことが示唆される。
【0046】
血管新生。臍帯、冠動脈、又は真皮細胞など様々なヒト内皮細胞系を用いて血管新生をアッセイすることができる。適切なアッセイには、増殖を測定するアラマーブルーに基づいたアッセイ(Biosource Internationalから入手可能);血管新生エンハンサー又はサプレッサーが存在する又は存在しない場合の細胞が膜を通り抜ける遊走を測定するBecton Dickinson Falcon HTS FluoroBlockセルカルチャーインサートの使用など蛍光分子を用いた遊走アッセイ;Matrigel(登録商標)(Becton Dickinson)上の内皮細胞による管状構造の形成に基づいた細管形成アッセイが含まれる。したがって、血管新生アッセイ系は、GALK1を発現する細胞、及び任意選択で欠陥PTEN及び/又はAKT機能を有する(例えば、野生型細胞に比べてPTEN及び/又はAKTが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。この血管新生アッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した血管新生の変化により候補PTEN/AKT調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、別のアッセイ系を使用して最初に同定された候補PTEN/AKT調節剤を試験する二次アッセイとして、血管新生アッセイを使用することができる。また、GALK1機能が細胞増殖において直接役割を果たすかどうかを試験するために血管新生アッセイを使用することもできる。例えば、野生型細胞に比べてGALK1を過剰発現又は過少発現する細胞で血管新生アッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した血管新生の差により、GALK1が血管新生において直接役割を果たすことが示唆される。特に、米国特許第5,976,782号、同第6,225,118号及び同第6,444,434号に様々な血管新生アッセイが記載されている。
【0047】
低酸素誘発。転写因子である低酸素誘発性因子−1(HIF−1)のαサブユニットは、インビトロで低酸素に曝した後に腫瘍細胞中で上方制御される。低酸素条件下では、HIF−1は、糖分解酵素やVEGFをコードする遺伝子など腫瘍細胞の生存に重要であることで知られている遺伝子の発現を刺激する。低酸素条件によるこのような遺伝子の誘発は、GALK1で形質移入させた細胞を(例えばNapco7001インキュベーター(Precision Scientific)で発生させた0.1%のO2、5%のCO2、及び残りはN2を用いた)低酸素条件下及び正常酸素(normoxic)条件下で増殖させ、その後Taqman(登録商標)によって遺伝子の活性又は発現を評価することによってアッセイすることができる。例えば、低酸素誘発アッセイ系は、GALK1を発現する細胞、及び任意選択で欠陥PTEN/AKT機能を有する(例えば、野生型細胞に比べてPTEN及び/又はAKTが過剰発現又は過少発現されている)ものを含むことができる。この低酸素誘発アッセイ系に試験剤を加えることができ、試験剤を加えない対照と比較した低酸素応答の変化により候補PTEN/AKT調節剤が同定される。本発明の一部の実施態様では、別のアッセイ系を使用して最初に同定された候補PTEN/AKT調節剤を試験する二次アッセイとして、低酸素誘発アッセイを使用することができる。また、GALK1機能が低酸素応答において直接役割を果たすかどうかを試験するために低酸素誘発アッセイを使用することもできる。例えば、野生型細胞に比べてGALK1を過剰発現又は過少発現する細胞で低酸素誘発アッセイを実施することができる。野生型細胞と比較した低酸素応答の差により、GALK1が低酸素誘発において直接役割を果たすことが示唆される。
【0048】
細胞接着。細胞接着アッセイでは、候補調節剤が存在する又は存在しない場合の、細胞と精製した接着タンパク質との接着、又は細胞の相互接着を測定する。細胞−タンパク質接着アッセイでは、細胞が精製したタンパク質に接着することを調節する作用剤の能力を測定する。例えば、組換えタンパク質を生成し、PBSで2.5g/mLまで希釈し、マイクロタイタープレートのウェルをコーティングするのに使用する。陰性対照で使用するウェルはコーティングしない。その後、コーティングしたウェルを洗浄し、1%のBSAで遮断し、再度洗浄する。化合物を2×最終試験濃度まで希釈し、ブロッキングし、コーティングしたウェルに加える。その後、細胞をウェルに加え、結合しなかった細胞を洗い流す。カルセイン−AMなど膜透過性蛍光色素を加えることによって保持された細胞をプレート上で直接標識し、蛍光マイクロプレート読取装置でシグナルを定量する。
細胞−細胞接着アッセイでは、天然で生じたリガンドとの細胞接着タンパク質の結合を調節する作用剤の能力を測定する。これらのアッセイには、自然に又は組換えによって選択した接着タンパク質を発現する細胞を使用する。例示的なアッセイでは、細胞接着タンパク質を発現している細胞をマルチウェルプレートのウェル内に植え付ける。リガンドを発現している細胞をBCECFなど膜透過性蛍光色素で標識し、候補剤の存在下で単層に接着させる。結合しなかった細胞を洗い流し、蛍光プレート読取装置を使用して結合した細胞を検出する。
ハイスループット細胞接着アッセイも記載されている。このようなアッセイの1つでは、マイクロアレイスポッターを使用して小分子リガンド及びペプチドを顕微鏡スライドの表面に結合させ、その後、未処置の細胞をスライドと接触させ、結合しなかった細胞を洗い流す。このアッセイでは、細胞系に対するペプチド及びモジュレーターの結合特異性が決定されるだけでなく、付着した細胞の機能的細胞シグナル伝達も、マイクロチップ上で免疫蛍光技術をインサイツで使用して測定される(Falsey JR他、Bioconjug Chem.、2001年5-6月、12(3):346〜53)。
【0049】
抗体モジュレーターの一次アッセイ
抗体モジュレーターでは、適切な一次アッセイ試験は、GALK1タンパク質に対する抗体の親和性及び特異性を試験する結合アッセイである。抗体の親和性及び特異性を試験する方法は当分野で周知である(Harlow及びLane、1988年、1999年、上掲)。GALK1に特異的な抗体を検出する好ましい方法は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)である。他の方法には、FACSアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及び蛍光アッセイが含まれる。
場合によっては、小分子モジュレーターについて記載したスクリーニングアッセイも、抗体モジュレーターを試験するために使用できる。
【0050】
核酸モジュレーターの一次アッセイ
核酸モジュレーターでは、一次アッセイにより核酸モジュレーターがGALK1遺伝子の発現、好ましくはmRNAの発現を阻害又は増強する能力を試験し得る。一般的に、発現分析には、核酸モジュレーター存在下又は非存在下の細胞の類似集団(例えば、内因的に又は組換えによってGALK1を発現する2種の細胞プール)中のGALK1発現を比較することが含まれる。mRNA及びタンパク質の発現を分析する方法は当分野で周知である。例えば、ノーザンブロッティング、スロットブロッティング、RNA分解酵素保護、定量的RT−PCR(例えばTaqMan(登録商標)、PE Applied Biosystemsを使用)、又はマイクロアレイ分析を使用して、核酸モジュレーターで処置した細胞中でGALK1 mRNAの発現が低減していることを確認することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、1994年、Ausubel FM他編、John Wiley&Sons, Inc.、第4章;Freeman WM他、Biotechniques、1999年、26:112〜125; Kallioniemi OP、Ann Med、2001年、33:142〜147; Blohm DH及びGuiseppi-Elie、A Curr Opin Biotechnol、2001年、12:41〜47)。タンパク質の発現をモニターすることもできる。タンパク質は、最も一般的にはGALK1タンパク質又は特異的なペプチドのどちらかに対する特異的な抗体又は抗血清を用いて検出される。ウエスタンブロッティング、ELISA、インサイツ検出を含めた様々な手段が利用可能である(Harlow E及びLane D、1988年及び1999年、上掲)。
場合によっては、特にGALK1 mRNA発現を伴うアッセイ系において、小分子モジュレーターについて記載したスクリーニングアッセイも核酸モジュレーターを試験するために使用できる。
【0051】
二次アッセイ
調節剤がPTEN/AKT経路に関連する様式でGALK1に影響を与えることを確認するために、二次アッセイを使用して上記の任意の方法によって同定したGALK1調節剤の活性をさらに評価することができる。本明細書中で使用するGALK1調節剤は、以前に同定した調節剤から誘導した候補臨床化合物又は他の作用剤を包含する。また、二次アッセイを使用して、特定の遺伝的又は生化学的経路における調節剤の活性を試験するために、あるいは調節剤がGALK1と相互作用する特異性を試験することもできる。
二次アッセイでは一般的に、候補モジュレーター存在下又は非存在下において、細胞や動物の類似集団(例えば、内因的に又は組換えによってGALK1を発現する2種の細胞プール)を比較する。一般的に、このようなアッセイでは、候補GALK1調節剤を用いて細胞や動物を処置することにより、処置しない(あるいはモック処置又は偽薬で処置した)細胞や動物と比較してPTEN/AKT経路に変化がもたらされるかどうかを試験する。特定のアッセイでは、「感作させた遺伝的バックグラウンド」を使用する。本明細書中で使用する「感作させた遺伝的バックグラウンド」とは、PTEN/AKT又は相互作用する経路における遺伝子の発現が変化するように操作した細胞や動物を表す。
【0052】
細胞に基づいたアッセイ
細胞に基づいたアッセイでは内因性PTEN/AKT経路活性を検出するか、あるいはこれはPTEN/AKT経路構成要素の組換えによる発現に依存し得る。前述の任意のアッセイをこの細胞に基づいた形式で使用することができる。候補モジュレーターは、通常は細胞培地に加えるが、細胞に注入する又は任意の他の有効な手段によって送達してもよい。
【0053】
動物アッセイ
候補GALK1モジュレーターを試験するために、正常又は欠陥のあるPTEN/AKT経路の様々な非ヒト動物のモデルを使用することができる。通常、欠陥PTEN/AKT経路のモデルでは、PTEN/AKT経路に関与する遺伝子がミスエクスプレスされる(例えば過剰発現又は発現が欠けている)ように操作された遺伝子改変動物を使用する。一般的に、アッセイには、経口投与、注入などによって候補モジュレーターを全身に送達する必要がある。
好ましい実施態様では、新脈管形成及び血管新生をモニターすることによってPTEN/AKT経路の活性を評価する。Matrigel(登録商標)アッセイにおける、GALK1に対する候補モジュレーターの影響を試験するために、欠陥のあるPTEN/AKT及び正常なPTEN/AKTを有する動物モデルを使用する。Matrigel(登録商標)は基底膜タンパク質の抽出物であり、主にラミニン、コラーゲンIV、及びヘパリン硫酸プロテオグリカンから構成される。これは、4℃の無菌的な液体として提供されるが、37℃で迅速にゲルを形成する。液体のMatrigel(登録商標)を、bFGF及びVEGFなど様々な血管新生剤、又はGALK1を過剰発現するヒト腫瘍細胞と混合する。その後、激しい血管性応答をサポートするためにこの混合物を雌の無胸腺ヌードマウス(Taconic、ニューヨーク州ジャーマンタウン)に皮下注入(SC)する。Matrigel(登録商標)ペレットを有するマウスに、経口(PO)、腹腔内(IP)、又は静脈内(IV)経路で候補モジュレーターを投薬してもよい。注入後5〜12日にマウスを安楽死させ、ヘモグロビン分析のためにMatrigel(登録商標)ペレットを回収する(Sigma plasma hemoglobin kit)。ゲルのヘモグロビン含有量は、ゲル中の新脈管形成の程度と相関していることが判明した。
【0054】
別の好ましい実施態様では、GALK1における候補モジュレーターの効果を腫瘍形成アッセイによって評価する。腫瘍異種移植アッセイは、当技術分野において既知である(例えば、Ogawa K他, 2000, Oncogene 19:6043-6052を参照)。異種移植片は、通常、既存の腫瘍由来又はインビトロ培養物由来のいずれかの単一細胞懸濁液として、6〜7週齢の雌の無胸腺マウスに移植されたSCである。内因的にGALK1を発現する腫瘍を、マウス1匹あたり1×10〜1×10個の細胞を100μLの体積で、27ゲージの針を用いて脇腹に注入する。その後、マウスの耳に札をつけ、週2回腫瘍を測定した。平均腫瘍重量が100mgに達した日に候補モジュレーターによる処置を開始した。候補モジュレーターは、大量瞬時投与によってIV、SC、IP、又はPOで送達される。それぞれの独特な候補モジュレーターの薬理動態に応じて、1日に複数回投薬を行うことができる。腫瘍の重量を、カリパーを用いて垂直直径を測定することによって評価し、2つの次元の直径の測定値を掛け合わせることによって計算した。実験の最後に、切除した腫瘍をさらなる分析用のバイオマーカーの同定に利用することができる。免疫組織化学染色では、異種移植腫瘍を4%のパラホルムアルデヒド、0.1Mのリン酸、pH7.2で6時間、4℃固定し、PBS中30%のショ糖に浸し、液体窒素で冷却したイソペンタン中で迅速に凍結させる。
別の好ましい実施態様では、ホローファイバーアッセイを使用して腫瘍形成能をモニターする。ホローファイバーアッセイは米国特許第5,698,413号に開示されている。要約すると、本方法は、実験動物に対し、標的細胞を含む生体適合性の半透明なカプセル封入器を埋め込むこと、実験動物を候補調節剤で処置すること、及び候補モジュレーターに対する反応について標的細胞を評価することを含む。埋め込まれる細胞は、通常、既存の腫瘍又は腫瘍細胞系由来のヒト細胞である。適当な時間、通常約6日を置いて、埋め込んだ細胞を回収し、候補モジュレーターの評価に使用する。腫瘍形成能とモジュレーターの有効性は、マクロカプセル中に存在する生細胞の量をアッセイすることにより評価してもよく、これは、当技術分野において既知の試験、例えばMTT染色変換アッセイ、ニュートラルレッド染色取り込み、トリパンブルー染色、生細胞計算、軟寒天中に形成されたコロニーの数、細胞の回復能及びインビトロでの複製能等により決定できる。
別の好ましい実施態様では、腫瘍形成能アッセイは、組織特異性の制御配列の制御の下で、優性オンコジーン、又は腫瘍サプレッサー遺伝子ノックアウトを有するトランスジェニック動物、通常マウスを使用する。これらのアッセイは通常トランスジェニック腫瘍アッセイと呼ばれる。好ましい用途では、トランスジェニックモデルにおける腫瘍の進行の特徴づけ又は制御が良好に行われる。例示的なモデルでは、「RIP1−Tag2」導入遺伝子は、インスリン遺伝子制御領域の制御の下でSV40大型T抗原オンコジーンを有し、膵臓β細胞に発現し、結果的に島細胞悪性腫瘍となる(Hanahan D, 1985, Nature 315:115-122; Parangi S等, 1996, Proc Natl Acad Sci USA 93:2002-2007; Bergers G等, 1999, Science 284:808-812)。通常過剰増殖性の島細胞のサブセット中の静止毛細血管が血管新生性となるので、「血管新生スイッチ(angiogenic switch)」は、約5週目に起こる。RIP1−TAG2マウスは14週で死亡する。候補モジュレーターは、血管新生スイッチの直前(例えば腫瘍予防のモデルの場合)、小規模腫瘍の成長期(例えば処置のモデルの場合)、又は大規模及び/又は湿潤性腫瘍の成長期(例えば退行のモデルの場合)を含め、様々な段階において投与できる。腫瘍形成能及びモジュレーターの有効性は、腫瘍の数、腫瘍の大きさ、腫瘍の形態、血管密度、アポトーシス指数などを含め、寿命延長及び/又は腫瘍特性の評価であってもよい。
【0055】
診断及び治療上の使用
特異的なGALK1調節剤は、疾病又は疾病予後が血管新生、細胞死、又は増殖疾患などPTEN/AKT経路の欠陥に関連している様々な診断及び治療用途に有用である。したがって、本発明は、GALK1活性を特異的に調節する作用剤を細胞に投与する工程を含む、細胞、好ましくはPTEN/AKT機能の欠陥又は不全(例えば、PTEN/AKTの過剰発現、過少発現、又は誤発現、或いは遺伝子突然変異による)を有することが事前に確定されている細胞におけるPTEN/AKT経路を調節する方法も提供する。好ましくは、調節剤は細胞中に検出可能な表現型の変化を生じさせ、これにより、PTEN/AKT機能が修復されたことが示される。本明細書で使用する「機能が修復された」という表現、及びそれと同等の表現は、所望の表現型が達成されたか、又は未処理の細胞と比較した場合に正常に近づいたことを意味する。例えば、PTEN/AKT機能が修復されると、細胞増殖及び/又は細胞周期の進行が正常化するか、又は未処理の細胞と比較した場合に正常に近づく。本発明はまた、PTEN/AKT経路を調節するGALK1調節剤の治療的有効量を投与することによる、PTEN/AKT機能不全に関連する疾患又は疾病の治療方法を提供する。さらに本発明は、GALK1調節剤を投与することによる、細胞、好ましくはGALK1機能の欠陥又は不全を有することが事前に決定されている細胞において、GALK1機能を調節する方法を提供する。これらに加えて、本発明は、GALK1調節剤の治療的有効量を投与することによる、GALK1機能不全に関連する疾患又は疾病の治療法を提供する。
GALK1がPTEN/AKT経路に関係しているという発見により、PTEN/AKT経路の欠陥に関与する疾病及び疾患の診断及び予後評価、ならびにこのような疾病及び疾患の素因を有する対象の同定に使用可能な様々な方法が提供される。
【0056】
特定の試料でGALK1が発現されるかどうかを診断するために、ノーザンブロッティング、スロットブロッティング、RNA分解酵素保護、定量的RT−PCR、及びマイクロアレイ分析など様々な発現分析方法を使用することができる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology、1994年、Ausubel FM他編、John Wiley & Sons, Inc.、第4章; Freeman WM他、Biotechniques、1999年、26:112〜125 ;Kallioniemi OP、Ann Med、2001年、33:142〜147; Blohm及びGuiseppi-Elie、Curr Opin Biotechnol、2001年、12:41〜47)。GALK1を発現する欠陥PTEN/AKTシグナル伝達に関係づけられている疾病又は疾患を有する組織は、GALK1調節剤を用いた処置を受け入れることが同定されている。好ましい用途では、PTEN/AKT欠陥組織は正常組織に比べてGALK1を過剰発現する。例えば、完全又は部分GALK1 cDNA配列をプローブとして使用した、腫瘍及び正常細胞系由来、又は腫瘍及び同一患者からの対応する正常組織試料由来のmRNAのノーザンブロット分析により、具体的な腫瘍がGALK1を発現又は過剰発現するかどうかを決定することができる。あるいは、細胞系、正常組織及び腫瘍試料中のGALK1発現の定量的RT−PCR分析のために、TaqMan(登録商標)を使用する(PE Applied Biosystems)。
例えばGALK1オリゴヌクレオチドなどの試薬、及びGALK1に対する抗体を利用して、上に記載した(1)GALK1遺伝子変異の存在の検出、又は疾患でない状態と比較したGALK1 mRNAの過剰発現又は過少発現のいずれかの検出、(2)疾患でない状態と比較したGALK1遺伝子産物の過剰存在又は過少存在のいずれかの検出、ならびに(3)GALK1に媒介されたシグナル伝達経路における摂動又は異常の検出のために、様々な他の診断方法を実施することができる。
【0057】
様々な試料中におけるGALK1の発現を検出するためのキットも提供され、このキットは、GALK1に特異的な少なくとも1つの抗体と、抗体の検出、抗体の固定等に適した全ての試薬及び/又は装置と、このようなキットを診断又は治療に使用する際の指示書とを含む。
したがって、特定の実施態様では、本発明は、(a)患者から生体試料を得て、(b)試料をGALK1発現用のプローブと接触させ、(c)工程(b)からの結果を対照と比較し、そして(d)工程(c)が疾病又は疾患の可能性を示しているかどうかを決定することを含む、GALK1発現の変化と結び付けられる患者の疾病又は疾患を診断する方法を対象としている。好ましくは、この疾病は癌である。プローブは、DNA又は抗体を含めたタンパク質のどちらであってもよい。
【実施例】
【0058】
以下の実験セクション及び実施例は、限定ではなく例示のために提供するものである。
【0059】
1.PTEN/AKTのスクリーニング
本発明者等は、不活性化するとPTEN/AKT経路を通るシグナル伝達を低減させる抑制遺伝子を同定するための遺伝子スクリーニングを設計した。ヒトゲノム由来の遺伝子を標的とした低分子干渉RNA(siRNA)ライブラリを用いてこれらの実験を行った。この遺伝子の機能を、各遺伝子に対して設計したsiRNAを用いたRNAiにより不活性化し、ヒト肺腫瘍細胞系A549に形質移入した。siRNAで処理した細胞を、細胞原形質中におけるリン酸化したPRAS40タンパク質の量(AKT活性の変化を示す直接的AKT基質)、又は原形質中におけるリン酸化したRPS6タンパク質の量(AKTの下流及びTORの基質であるp70S6キナーゼの直接的基質)の変化をモニターすることにより、PTEN/AKT経路活性につてアッセイした。
1つの遺伝子につきそれぞれ独特な4つのsiRNA二本鎖を使用して、各標的の発現をノックダウンした。製造者の指示に従ってOligofectAmine(登録商標)脂質試薬を使用し、最終的な濃度25nMで各siRNA二本鎖を形質移入した(Invitrogen)。ネガティブコントロールのsiRNAと比べ、2以上の各siRNAによりA549細胞におけるリン酸化されたPRAS40又はRPS6タンパク質の量が低減した場合に陽性として加点した。結果が陽性であった場合、A549細胞と、第二の細胞系であるMDA−MB−231T乳癌細胞で繰り返した。リン酸化タンパク質の減少を検出し、形質移入から72時間後にCellomics(登録商標)Arrayscan蛍光顕微鏡プラットフォーム上で定量化した。本スクリーニングにより、不活性化するとPTEN/AKT経路でのシグナル伝達を低減させる遺伝子が同定された。
【0060】
2.表1の分析
「GALK1の記号」、及び「GALK1の別名」の欄には、Genbankにおける標的の記号及び既知の略称を記載した(存在する場合のみ)。「GALK1 RefSeq_NA又はGI_NA」、「GALK1 GI_AA」、「GALK1の名称」及び「GALK1の説明」には、国立バイオロジー情報センター(NCBI)から入手できるGALK1の標準的なDNA配列、GALK1タンパク質のGenbank識別番号(GI#)、GALK1の名称及びGALK1の説明を記載する。これらは全てGenbankから入手可能である。各アミノ酸の長さは「GALK1タンパク質長」の欄に示した。

【0061】
3.キナーゼアッセイ
精製したか、部分的に精製したGALK1を、適切な反応緩衝液(例えば、塩化マグネシウムまたは塩化マンガン(1−20mM)、およびミエリン塩基性タンパク質またはカゼインなどのペプチドまたはポリペプチド基質(1−10μg/ml)を含むpH7.5の50mM Hepes)に希釈する。キナーゼの最終的な濃度は1−20nMである。酵素反応をマイクロタイタープレートで行い、アッセイのスループットを増大させることにより反応条件の最適化を促進する。96ウェルのマイクロタイタープレートを用い、最終容量を30−100μlとする。33PγATP(0.5μCi/ml)を加えて反応を開始させ、0.5から3時間室温でインキュベートする。EDTA付加によりネガティブコントロールを行い、それにより酵素活性に必要な二価カチオン(Mg2+またはMn2+)をキレート化する。インキュベーション後、EDTAを使用して酵素反応を消光させる。反応物の試料を96ウェルのガラフファイバーフィルタプレート(MultiScreen,Millipore)に移す。続いてフィルタをリン酸緩衝整理食塩水、希釈したリン酸(0.5%)、またはその他適切な媒体で洗浄し、過剰なラジオ標識ATPを除去する。シンチレーションカクテルをフィルタプレートに添加し、シンチレーションカウンティングにより取り込まれた放射能を定量化する(Wallac/PerkinElmer)。活性は、ネガティブコントロール反応値(EDTAクエンチ)の差引き後に検出される放射能の量と定義する。
【0062】
3.ハイスループットのIn Vitro蛍光偏光アッセイ
蛍光標識したGFATペプチド/基質を、試験緩衝液(10mMのHEPES、10mMのNaCl、6mMの塩化マグネシウム、pH7.6)中の試験剤と共に96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルに加えた。Fluorolite FPM−2 Fluorescence Polarization Microtiter System(Dynatech Laboratories,Inc)を用いて決定した蛍光偏光の対照値に対する変化により、試験化合物がGFAT活性の候補モディファイヤーであることが示される。
【0063】
4.ハイスループットのIn Vitro結合アッセイ
33P標識のGFATペプチドを、試験剤と共にアッセイ緩衝液(100mMのKCl、20mMのHEPES pH7.6、1mMのMgCl、1%のグリセロール、0.5%のNP−40、50mMのβ−メルカプトエタノール、1mg/mlのBSA、プロテアーゼ阻害剤の反応混液)中で、Neutralite−アビジンでコーティングしたアッセイプレートのウェルに加え、25℃で1時間インキュベートした。その後、ビオチン標識した基質を各ウェルに加え、1時間インキュベートした。PBSで洗浄することによって反応を停止させ、シンチレーション計数器で計数した。試験剤を用いない対照に比べて活性に変化を引き起こさせる試験剤が、候補AXIN調節剤として同定された。
【0064】
5.免疫沈降及び免疫ブロッティング
形質移入させたタンパク質の共沈では、GFATタンパク質を含む3×10個の適切な組換え細胞を10cmのディッシュに植え付け、発現用コンストラクトを用いて次の日に形質移入させた。空ベクターを加えることによって、それぞれの形質移入での総DNA量を一定に保った。24時間後、細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水で1回洗浄し、50mMのHepes、pH7.9、250mMのNaCl、20mMのグリセロホスフェート、1mMのオルトバナジン酸ナトリウム、5mMのp−ニトロフェニルリン酸、2mMのジチオスレイトール、プロテアーゼ阻害剤(complete、Roche Molecular Biochemicals)、及び1%のノニデットP−40を含む溶解緩衝液1ml中、氷上で20分間溶解させた。15,000×g、15分間の遠心分離2回によって、細胞細片を取り除いた。細胞溶解物を25μlのM2ビーズ(Sigma)と共に2時間、4℃で緩やかに揺り動かしながらインキュベートした。
溶解緩衝液でよく洗浄した後、SDS試料緩衝液中で煮沸することによってビーズに結合したタンパク質を溶解させ、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分画し、ポリ二フッ化ビニリデン膜に移し、標識した抗体を用いてブロットした。適切な二次抗体に結合した西洋わさびペルオキシダーゼ及び高感度化学発光(ECL)ウエスタンブロッティング検出システム(Amersham Pharmacia Biotech)によって、反応性のあるバンドを可視化させた。
【0065】
8.発現分析
以下の実験で使用したすべての細胞系はNCI(米国立癌センター)の系であり、ATCC(アメリカンタイプカルチャーコレクション、バージニア州マナサス、20110〜2209)から入手可能である。正常組織及び腫瘍組織は、Impath、UC Davis、Clontech、Stratagene、Ardais、Genome Collaborative及びAmbionから得た。
様々な試料中における開示した遺伝子の発現レベルを評価するために、TaqMan(登録商標)分析を使用した。
【0066】
Qiagen(カリフォルニア州バレンシア)のRNeasy kitを使用し、製造者のプロトコルに従って各組織試料からRNAを抽出して最終濃度50ng/μlにした。その後、ランダムヘキサマー及び各反応500ngの全RNAを使用して、Applied Biosystems(カリフォルニア州フォスターシティー)のプロトコル4304965に従ってRNA試料を逆転写させることによって一本鎖cDNAを合成した。
TaqMan(登録商標)プロトコルならびに以下の基準に従って、TaqMan(登録商標)アッセイ(Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティー)を使用した発現分析用のプライマーを調製した。その基準は、a)ゲノムの混入を排除するために、イントロンにまたがるようにプライマーの対を設定すること、及びb)各プライマーの対が1つの産物のみを生成することである。発現分析は7900HT機器を使用して行った。
【0067】
TaqMan(登録商標)のプロトコルに従って、300nMのプライマー及び250nMのプローブならびに約25ngのcDNAを、96ウェルプレートでは25μlの全体積、384ウェルプレートでは10μlの全体積で使用して、TaqMan(登録商標)反応を実施した。標的が大量に存在する可能性が高くなるように広範囲の組織由来のcDNAを含む混合物である、ヒトcDNA試料のユニバーサルプール(universal pool)を使用して結果分析用の標準曲線を作成した。18SのrRNA(すべての組織及び細胞中で普遍的に発現される)を使用して生データを正規化した。
それぞれの発現分析について、腫瘍組織試料を、同一患者からの対応する正常組織と比較した。対応する正常試料と比べて腫瘍中の遺伝子発現レベルが2倍以上高い場合に、ある遺伝子は腫瘍中で過剰発現されているとみなされる。正常組織が入手可能でない場合は、cDNA試料のユニバーサルプールを代わりに使用する。これらの場合では、腫瘍試料と同じ組織タイプからのすべての正常試料の平均との発現レベルの差が、すべての正常試料の標準偏差の2倍を超える場合(すなわち、腫瘍−平均(すべての正常試料)>2×STDEV(すべての正常試料))に、遺伝子は腫瘍試料中で過剰発現されているとみなされる。GALK1遺伝子は、正常な組織試料より、大腸、大腸AC、大腸非AC、頭部/頚部、肺、肺LCLC、卵巣、膵臓、皮膚及び胃の腫瘍試料に強く発現した。GALK1遺伝子は、正常な組織試料と比較して、腎臓腫瘍試料で低発現であった。
【0068】
GALK1遺伝子は、MDA_MB_231T、胸部細胞系を含む複数の細胞系に強く発現した。GALK1遺伝子は、U87_MG子宮細胞系に強く発現した。GALK1遺伝子は、A549肺細胞系に強く発現した。GALK1遺伝子は、PC−3前立腺細胞系に強く発現した。
遺伝子が過剰発現する腫瘍への投与により、本明細書に記載のアッセイによって同定されるモジュレーターの治療効果を更に確認することができた。腫瘍の成長が低減したことにより、このモジュレーターの治療的有効性が確認された。このモジュレーターを用いて患者の処置を行う前に、患者から腫瘍試料を採取して当該モジュレーターが標的とする遺伝子の発現をアッセイすることにより、患者が治療に反応する可能性を診断することができる。また、遺伝子の発現データを、疾病の進行の診断マーカーとして使用することができた。本アッセイは、上述の発現分析、遺伝子標的を目的とする抗体、又は他の何らかの検出方法により、行うことができた。
【0069】
8.細胞アッセイ
本発明者等は、不活性化すると、AKT経路を通るシグナル伝達を低減させる(PTEN経路のモディファイヤーを探すためのsiRNAスクリーニングの原理の証明として、Hsieh AC等 (2004) NAR 32(3):893-901を参照)抑制遺伝として遺伝子スクリーニングで同定された標的の確認を行うために、哺乳動物細胞で細胞アッセイを実施した。各遺伝子に対して設計されたsiRNAを用いて、RNAiにより個々の遺伝子の機能を不活性化し、ヒト腫瘍細胞系A549.MDA−MB231−T、及びPC−3細胞に形質移入した。関連する3つの経路の読み取り、即ち、1)細胞原形質中におけるリン酸化したPRAS40タンパク質の量(直接的AKT基質であり、AKT活性の変化を示す)、2)原形質中におけるリン酸化したRPS6タンパク質の量(TORの基質であるp70S6キナーゼの直接的基質、及びAKTの下流)、並びに3)前記基質中のコンセンサスリン酸化部位を認識する抗体の使用による、全体的なAkt基質のリン酸化の量、の変化をモニタリングすることにより、siRNAで処理した細胞のAKT経路の活性をアッセイした。
1の遺伝子につきそれぞれ独特な4のsiRNA二本鎖を使用して、各標的の発現をノックダウンした。製造者の指示に従って(Invitrogen)、OligofectAmine脂質試薬を使用し、最終濃度25nMで各siRNA二本鎖を形質移入した。遺伝子は、2以上の個々のsiRNAが、ネガティブコントロールのsiRNAと比較して、上記の細胞種類におけるPRAS40又はRPS6タンパク質のリン酸化、或いはAkt基質のリン酸化を低減させた場合に陽性として加点した。リン酸化タンパク質の低減を検出し、形質移入の72時間後にCellomics Arrayscan蛍光顕微鏡のプラットフォーム上で定量化した。これらの確認アッセイにおける陽性の結果により、これら標的が、不活性化されるとAKT経路を通るシグナル伝達を低減させることが確認された。合成されたGALK1 siRNAにより、PC−3及びMB231T細胞において少なくとも20%だけ、Phospho−Pans40の量が低減した。合成されたGALK1 siRNAにより、A549、PC−3及びMB231T細胞において少なくとも20%だけ、Phospho−Pan AKT基質アッセイの量が低減した。
加えて、これら標的は、増殖の低減及びアポトーシスの誘発といった表現型の終点に対する標的ノックダウンの影響を見るために設計された、複数の細胞に基づくアッセイにおいて確認された。
【0070】
アポトーシスアッセイ。アポトーシス又はプログラムされた細胞死は、細胞内で起動される自殺プログラムであり、DNAの断片化、細胞質の縮み、膜変化及び細胞死を引き起こす。アポトーシスは、カスパーゼファミリーのタンパク質分解酵素によって媒介される。細胞の変化するパラメータの多くは、アポトーシスの間に測定可能である。
カスパーゼ3アッセイ:
カスパーゼ3アッセイは、多くのアポトーシス経路におけるプログラムされた細胞死の間に起こる一連のイベントの一部としての、カスパーゼの切断活性の活性化に基づいている。標的の活性が低減したとき、mPTENAKT経路の標的によってカスパーゼ3が媒介するアポトーシスが誘発されたかどうかを決定するために、細胞種類A549、PC−3、MDA−MB231−T及びU87−MGを、1つの遺伝子につきそれぞれ独特な4つのsiRNA二本鎖で処理することにより、各標的の発現をノックダウンした。製造者の指示に従って(Invitrogen)、OligofectAmine脂質試薬を使用し、最終濃度25nMで各siRNA二本鎖を形質移入した。アポトーシスの中期段階を示す切断されたカスパーゼ3の検出を、この形態のカスパーゼ3を特異的に認識する抗体によって検出し、形質移入の72時間後にCellomics Arrayscan蛍光顕微鏡のプラットフォーム上で定量化した。合成されたGALK1 siRNAは、PC−3細胞における検出可能な切断カスパーゼ3のレベルを増大させた。
【0071】
ホスホヒストンH2Bアッセイ:
ホスホ−ヒストンH2Bアッセイは、アポトーシスの結果として起こるヒストンH2Bのリン酸化に基づく別のアポトーシスアッセイである。ホスホヒストンH2Bに関する蛍光染料を使用して、アポトーシスの結果であるホスホヒストンH2Bの増大を測定することができる。標的の活性が低減するとき、mPTENAKT経路標的により、ホスホヒストンH2Bが媒介するアポトーシスが誘発されるかどうかを決定するため、細胞種類A549、PC−3、MDA−MB231−T及びU87−MGを、1つの遺伝子につきそれぞれ独特な4つの二本鎖で処理することにより、各遺伝子の発現をノックダウンした。製造者の指示に従って(Invitrogen)、OligofectAmine脂質試薬を使用し、最終濃度25nMで各siRNA二本鎖を形質移入した。アポトーシスの誘発を示唆するホスホヒストンH2Bの検出を、リン酸化したH2Bを特異的に認識する抗体を用いて検出し、形質移入の72時間後にCellomics Arrayscan蛍光顕微鏡のプラットフォーム上で定量化した。合成されたGALK1 siRNAは、231T細胞、及びPC−3細胞において、ヒストンH2Bのリン酸化を誘発した。
【0072】
細胞増殖及び細胞計数アッセイ。PTEN経路標的が細胞増殖を低減させるかどうかを決定するため、ブロモデオキシウリジン(BRDU)取り込みアッセイを実施した。このアッセイは、新規に合成されたDNAへのBRDUの取り込みにより、細胞増殖が進行中であるDNA合成を同定する。次いで、抗BRDU抗体を用いて新規に合成されたDNAを検出する(Hoshino等、1986, Int. J. Cancer 38, 369; Campana等、1988, J. Immunol. Meth. 107,79)。標的の活性が低減するとき、mPTENAKT経路標的によってBrdUの取り込みが低減し、よって細胞増殖が減少するかどうかを決定するために、細胞種類A549、PC−3、MDA−MB231−T及びU87−MGを、1つの遺伝子につきそれぞれ独特な4つのsiRNA二本鎖を用いて処理することにより、各標的の発現をノックダウンした。製造者の指示に従って(Invitrogen)、OligofectAmine脂質試薬を使用し、最終濃度25nMで各siRNA二本鎖を形質移入した。形質移入の72時間後に、BrdUを細胞に4時間に亘って添加し、取り込みを生じさせた。標的の不活性化の後で、BrdUが低減したか、つまり増殖が低減したかどうかを測定するために、抗BrdU抗体を用いてBrdUを検出し、Cellomics Arrayscan蛍光顕微鏡のプラットフォーム上で定量化した。合成されたGALK1 siRNAは、231T細胞、A549細胞、U87MG細胞、及びPC−3細胞においてBrdUの取り込みを減少させた。
加えて、標的の不活性化により細胞数が減少したかどうかを測定するために、細胞種類A549、PC−3、MDA−MB231−T、及びU87−MGを、1つの遺伝子につきそれぞれ独特な4つのsiRNA二本鎖を用いて処理することにより、各標的の発現をノックダウンした。製造者の指示に従って(Invitrogen)、OligofectAmine脂質試薬を使用し、最終濃度25nMで各siRNA二本鎖を形質移入した。72時間後にHoescht試薬を添加した。この試薬は染色体のDNAに取り込まれて各細胞の核の境界を画定する。次いでHoeschtの取り込みを、Cellomics Arrayscan蛍光顕微鏡のプラットフォーム上で定量化した。合成されたGALK1 siRNAは、A549細胞、MB231T細胞、及びPC−3細胞の細胞数を減少させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)GALK1ポリペプチド又は核酸を含むアッセイ系を提供する工程と、
(b)試験剤が存在しない場合に系により対照活性がもたらされる条件下で、アッセイ系を試験剤と接触させる工程と、
(c)試験剤の影響を受けたアッセイ系の活性を検出し、試験剤の影響を受けた活性と対照活性との差により試験剤を候補PTEN/AKT経路調節剤として同定する工程と
を含む、候補PTEN/AKT経路調節剤を同定する方法。
【請求項2】
アッセイ系がGALK1ポリペプチドを発現する培養細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養細胞がさらに欠陥PTEN/AKT機能を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アッセイ系がGALK1ポリペプチドを含むスクリーニングアッセイを含み、候補試験剤が小分子モジュレーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アッセイが結合アッセイである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アッセイ系が、アポトーシスアッセイ系、細胞増殖アッセイ系、血管形成アッセイ系、及び低酸素誘発アッセイ系からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アッセイ系がGALK1ポリペプチドを含む結合アッセイを含み、候補試験剤が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
アッセイ系がGALK1核酸を含む発現アッセイを含み、候補試験剤が核酸モジュレーターである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
核酸モジュレーターがアンチセンスオリゴマーである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
核酸モジュレーターがPMOである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(d)(c)で同定された候補PTEN/AKT経路調節剤を、PTEN/AKT機能に欠陥がある細胞を含むモデル系に投与し、PTEN/AKT機能が修復されたことを示すモデル系における表現型の変化を検出する工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
モデル系が欠陥PTEN/AKT機能を有するマウスモデルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PTEN/AKT機能に欠陥がある細胞を、GALK1ポリペプチドに特異的に結合する候補モジュレーターと接触させることを含み、それによりPTEN/AKT機能が修復される、細胞のPTEN/AKT経路を調節する方法。
【請求項14】
PTEN/AKT機能の欠陥に起因する疾病又は疾患を有することが事前に確定されている脊椎動物に候補モジュレーターを投与する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
候補モジュレーターが抗体及び小分子からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
(d)GALK1を発現している非ヒト動物又は培養細胞を含む二次アッセイ系を提供する工程と、
(e)二次アッセイ系を(b)の試験剤又はそれから誘導した作用剤と、試験剤又はそれから誘導した作用剤が存在しない場合に二次アッセイ系により対照活性がもたらされる条件下で接触させる工程と、
(f)作用剤の影響を受けた第2アッセイ系の活性を検出する工程
をさらに含み、作用剤の影響を受けた第2アッセイ系の活性と対照活性との差により試験剤又はそれから誘導した作用剤が候補PTEN/AKT経路調節剤であることが同定され、
ここで第2アッセイが作用剤の影響を受けたPTEN/AKT経路における変化を検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
二次アッセイ系が培養細胞を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
二次アッセイ系が非ヒト動物を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
非ヒト動物がPTEN/AKT経路の遺伝子をミスエクスプレスする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物の細胞をGALK1ポリペプチド又は核酸と特異的に結合する作用剤と接触させることを含む、哺乳動物細胞内のPTEN/AKT経路を調節する方法。
【請求項21】
PTEN/AKT経路に関連する病状を有することが事前に確定されている哺乳動物に作用剤を投与する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
作用剤が小分子モジュレーター、核酸モジュレーター、又は抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
(a)患者から生体試料を得て、
(b)試料をGALK1発現用のプローブと接触させ、
(c)工程(b)からの結果を対照と比較し、そして
(d)工程(c)が疾病の可能性を示しているかどうかを決定する
ことを含む、患者の疾病を診断する方法。
【請求項24】
前記疾病が癌である、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2008−543337(P2008−543337A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518337(P2008−518337)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/024053
【国際公開番号】WO2007/002131
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(504408797)エクセリクシス, インク. (65)
【Fターム(参考)】