説明

QPSK変調器

【課題】I相とQ相の位相差をπ/2に保つQPSK変調器を実現する。
【解決手段】QPSK変調器は、入力光を2分岐する手段と、分岐した一方の光を位相変調する第1の位相変調手段と、他方の光を位相変調する第2の位相変調手段と、第1/2の位相変調手段の前段/後段に設けられた位相シフト手段と、第1の位相変調手段と第2の位相変調手段を通過した光を結合し、光信号として出力する手段と、出力された光信号の一部を電気信号に変換する手段と、電気信号から光信号の振幅のピーク値を検出し、ピーク検出信号を出力する手段と、ディザ信号を生成する手段と、ピーク検出信号とディザ信号の位相を比較することにより、位相シフト手段での位相シフト量π/2からの偏差に応じた偏差信号を生成する位相比較手段と、偏差信号にディザ信号を重畳し、位相シフト量がπ/2となるよう位相シフト手段にフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光QPSK変調器に関する。特に、本発明は、40Gb/sや100Gb/sなどの超高速光通信における光QPSK信号の変調に要するQPSK信号の直交位相制御に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信網はブロードバンド・ユビキタスサービスの本格展開に向けて光ネットワーク/NGN(Next Generation Network)や3G(3rd Generation)/スーパー3Gなどのネットワークサービスの追加や充実が進んでいる。これにより通信と放送、固定通信と移動通信などのさまざまな分野のサービスが融合していくことになる。このようなブロードバンド・ユビキタスサービス時代が到来するとき、サービス融合の基盤となるフルIPネットワーク基盤の構築が欠かせない。これまで光通信のブロードバンド化は波長多重により飛躍的に進展してきた。最近では時間軸上に情報を多重する時分割多重によってビットレート向上が著しく進んでいる。これまでの光通信技術は、ビットレート2.5Gb/sや10Gb/sによるNRZ(Non Return-To-Zero)またはRZ(Return-To-Zero)フォーマットを用いた二値振幅シフトキーイング(OOK:On-Off Keying)を用い、波長多重により大容量化を図る方式が主流であった。近年、デュオバイナリ伝送方式、CSRZ(Carrier-Suppressed Return-To-Zero)、光DPSK(Differential Phase Shift Keying)、光DQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)などの変復調技術が光通信に適応され始めており、ビットレートは10Gb/sから40Gb/sに高速化している。この中で、特に、ビットレート向上に有利なDQPSK変復調フォーマットが将来の40Gb/s光通信における有力候補と認められている。DQPSK符号は、4つの位相変化(0、π/2、π、3π/2)にディジタル電気信号の(0、0)、(0、1)、(1、0)、(1、1)を割り当てる4値符号である。従って、同じシンボルレートを用いる場合、DQPSKはNRZやDPSKに比べ2倍の情報量を割り当てることができ、スペクトル効率が2倍となることから、電気デバイスの速度に対する要求、光ファイバの分散の調整、及び偏波モード分散が緩和される。
【0003】
さらに、最近、通信業界の世界的な標準団体であるOIF(Optical Internetworking Forum)は、次世代の超高速通信技術に関して活発な動きをしている。OIFでは次世代の100Gb/s光通信を実現する通信方式/デバイス技術の標準化に関して活発に議論が交わされている。具体的な通信方式としてDP−QPSK(Dual Polarization-Quadrature Phase Shift Keying)方式がOIFの標準化に向けて有望視されている。DP−QPSK方式は基本的にはDQPSKと同様4値の位相変調方式を応用している。DQPSKでは前のビットとの位相変化にデータ信号が割り付けられているのに対し、QPSKでは位相の絶対値そのものに0、1のデータ信号を割り付ける。従って、受信側において、DQPSKでは前のビットとの相関をとるために1ビット遅延干渉計を通して復調が行われ、一方、QPSKでは位相の絶対基準となる局発信号光源を有し、90°ハイブリッドカプラを用いて局発光と受信信号光との相関をとり復調が行われる。また、DP−QPSKは2チャンネルのQPSK信号を直交するふたつの偏波に偏波多重することで多重度を上げ、総伝送容量を拡大する。最終的には、DP−QPSKは、シンボルレートを25Gb/s程度とした場合に、QPSKの4値符号化により倍の伝送容量を確保し、偏波多重化によりさらに倍の伝送容量を確保することにより総伝送容量100Gb/s以上を実現する。
【0004】
以上で述べたように、40Gb/sや100Gb/sなどの超高速光通信において4値の位相変調方式である光QPSK変調技術が重要な基本要素となる。一般的に、光信号をQPSKで変調するためにはリチウムナイオベイト(LiNbO3)を用いたQPSK変調器が用いられる。DQPSK変調は、2チャンネルの高速主信号に1ビット遅延に当たる処理をプリコードしてI相変調部及びQ相変調部を高速変調するのに対し、QPSK変調は、2チャンネルの高速主信号でそのままI相変調部及びQ相変調部を高速変調する。このように主信号の論理的な処理の有無の差異以外、DQPSKもQPSKもQPSK変調器を駆動するハードウェア部分は同じである。2チャンネルの高速主信号を高速増幅器を用いてリチウムナイオベイト変調器の2Vπに対応する振幅に増幅してI相変調部及びQ相変調部を駆動する。また、I相とQ相間の位相関係が直交している必要性がある。QPSK変調器は、直交位相を制御する外部印加可能な電極をI相変調器とQ相変調器間に具備し、適切なフィードバックによるバイアス制御を施すことでI相Q相間の直交性を保っている。
【0005】
ここで、リチウムナイオベイトには、駆動電圧が長時間にわたり広く変化していくというドリフト現象が知られている。このため、ドリフト現象を抑制するためのバイアス制御回路が必須となる。I相/Q相変調部は、通常のBPSK変調器と同様な構成である。I相/Q相変調部は、位相変調部にディザ信号を重畳し、変調器信号光出力の一部をモニタし、ディザ信号の元となる発振器の信号位相と同期検波することで位相のずれを感知することができる。そのため、I相/Q相変調部は、バイアス電圧のずれに応じたDCバイアスを印加するフィードバックループを構成することでドリフト現象を常時抑制することができる。一方、直交位相のドリフト現象に関しては、I相、Q相の信号間に相関がないため、単純に直交位相部にディザ信号を重畳して変調器信号光出力の光パワーモニタに対して同期検波をかけたとしても誤差信号を生成できない。つまり、光パワーモニタによる検出結果は、直交位相部の位相に対して変化することがない。従って、通常のディザ(Dither)法と光パワーモニタ法では直交しているのか直交からずれているのか判別することができない。
【0006】
QPSK変調器の直交位相制御に関して、直交位相制御用電極をI相側とQ相側の二箇所に設け、それぞれの電極が互いに直交するディザ信号を重畳し光パワーモニタにより同期検波することが知られている(特許文献1)。図1に示すように、従来の光QPSK変調器には直交位相に関わる電極として電極1(6)と電極2(7)が設けられている。光QPSK変調器は、半導体レーザ1からの光を2分岐し、データ変調部5に入力する。分岐した光のうち一方は位相シフト部2を経る。なお、図1では位相シフト部2はデータ変調部5の前段に配置されているが、図2、4、5に示すように後段に配置する実施形態も可能である。また、光QPSK変調器は、ディザ信号用の発振器14からの信号を二手に分岐し、一方を電極1(6)に、他方を移相器8を介して電極2(7)に印加し、変調器の光信号出力を低速のPD(photo detector:受光器)10で受信し、位相比較を行い(12)、その結果を位相シフト部2にフィードバック制御する。移相器8によりディザ信号間の位相差が90度の奇数倍に設定されることにより、I相とQ相の相関をディザ信号を介して推定することができる。これにより、通常用いられる同期検波技術が適用でき、感度の高い直交制御を実現できる。なお、データ変調部5を通過したそれぞれの光は、強度変調器9において結合されて光信号として出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−043638号公報
【特許文献2】特開2007−082094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、直交移相制御部に直交したディザ信号を二系統印加する従来の制御方法では、QPSK変調器に直交位相を制御できる電極を二箇所設ける必要がある。これは、QPSK変調器を小型に構成するためには望ましいものではない。また、主なQPSK変調器は直交位相制御に関する電極が一箇所のものが多く、この場合本制御法では本質的に直交制御をかけることが不可能となる。さらに、本制御法は、フィードバックループ中に追加の移相器を一台必要とする。しかも、この移相器は、ふたつのディザ信号間の位相が正確に90度になるよう調整しなければならない。新たに追加の移相器を必要とし、しかもその調整を正確にする必要があることは、光QPSK変調器を実現する上で価格、サイズ、消費電力の点から本質的な問題となる。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光QPSK変調器の直交位相制御において、特殊な電極構成や、コストアップ・大型化を招く移相器部品が必要になるという課題を解決することにある。また、本発明は、I相とQ相の位相差をπ/2に保つことが可能なQPSK変調器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明のQPSK変調器は、入力された光を2分岐する分岐手段と、分岐した一方の光を位相変調する第1の位相変調手段と、分岐した他方の光を位相変調する第2の位相変調手段と、前記第1の位相変調手段と前記第2の位相変調手段のいずれかの前段若しくは後段に設けられた位相シフト手段と、前記第1の位相変調手段と前記第2の位相変調手段を通過した光を結合し、光信号として出力する結合手段と、前記結合手段から出力される前記光信号の一部を電気信号に変換する光検出手段と、前記電気信号から前記光信号の振幅のピーク値を検出し、ピーク検出信号を出力するピーク検出手段と、ディザ信号を生成するディザ信号生成手段と、前記ピーク検出信号と前記ディザ信号の位相を比較することにより、前記位相シフト手段での位相シフト量π/2からの偏差に応じた偏差信号を生成する位相比較手段と、前記偏差信号に前記ディザ信号を重畳して、前記位相シフト量がπ/2となるよう前記位相シフト手段にフィードバック制御するフィードバック制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特殊な電極構造のQPSK変調器を必要とせず、汎用なQPSK変調器を用いて直交位相を制御することが可能となる。また、追加で必要となる移相器やその移相器の調整を省くことができ、安価、小型、低消費電力のQPSK送信器を実現できる。
【0012】
また、本発明の直交位相制御法は、一般に用いられる同期検波技術を適用することが可能であり、特殊な制御法を用いることなく安定かつ感度の高いフィードバックループを構成することができる。
【0013】
本発明の位相制御法は、単独のQPSK変調器の制御に適していることは自明であるが、さらに、QPSK変調器を構成要素とする信号フォーマット(例えば、NRZ−DQPSKやRZ−DQPSK、さらには応用形としてのQPSK符号を用いた8PSKや16PSKなどの多値符号、その発展形となる多値QAM符号、OFDM符号、また、DP−QPSKなど)のコヒーレント通信などに使われるQPSK変調器の直交位相制御に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来の光QPSK変調器バイアス制御の構成図である。
【図2】本発明の実施例1に示す光QPSK変調器直交位相バイアス制御の基本構成図である。
【図3】本発明の実施例1に示す光QPSK変調器直交位相バイアス制御の原理を示す図である。
【図4】本発明の実施例2に示す光QPSK変調器直交位相バイアス制御の基本構成図である。
【図5】本発明の実施例3に示す光QPSK変調器バイアス制御の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について添付図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
図2は、本発明の第1の実施例のQPSK変調器17の基本構成を示す。図2は、光分岐18、光検出器19、ピークホールド回路20、位相比較21、ディザ信号用発振器22、駆動回路23も含む。
【0017】
まず、リチウムナイオベイトにより構成されるQPSK変調器17の出力部からの光信号が分岐され(18)、光検出器19が該光信号を電気信号に変換する。ピークホールド回路20は、電気信号に変換されたモニタ電気信号に対して振幅の最大値(ピーク値)を維持する出力を生成する。このようにしてピーク検出された信号とディザ信号用発振器22からの信号とが位相比較され(21)、偏差成分が抽出される。位相比較により得られた偏差成分は適切な大きさと時定数をもつDC信号として処理されており、フィードバックによりQPSK変調器の直交位相制御部に与えられる。その際、ディザ信号用発振器22からのディザ信号が該DC信号に重畳される。DC信号と重畳されたディザ信号は、駆動回路23によってリチウムナイオベイトの位相を制御するのに適切な駆動電気信号に変換され、直交位相制御用電極にフィードバックされる。
【0018】
図3は、本発明の第1の実施例のQPSK変調器の直交位相制御の原理を示す。図3のグラフは、コンスタレーションを元に光信号のピーク値の様子をシミュレーションした結果を示す。グラフの横軸はIQ変調器間の位相差を表し、縦軸は相対的な光信号の振幅を表す。そして、図3に示される(01)の振幅と(11)の振幅のうち大きい方の振幅が振幅のピーク値となる。IQ位相差が90度で理想的な直交状態の場合、コンスタレーション(1)は正方形をなす。この場合、IQ信号を合成した(00)、(01)、(10)、(11)の4値の振幅は縮退して等しい値となり、それが振幅のピーク値となる。次に、IQ位相差が90度からずれる場合、コンスタレーション(2)は菱形をなす。コンスタレーション(1)の直交状態の対角成分(振幅ピーク値)と比較すると、コンスタレーション(2)では長軸成分は伸長し、短軸成分は短縮する。さらにIQ位相差がずれ、コンスタレーション(3)に示すように180度(または0度)に近くなると、短軸成分は消失し長軸成分だけが残る。この時の長軸成分は直交時の対角成分の√2倍となる。このシミュレーション結果より、QPSK変調器出力信号の振幅ピーク値は直交状態で最小となり(コンスタレーション(1))、変調器直交バイアスがずれて直交状態からずれた時振幅ピーク値は増大する(コンスタレーション(2)(3))。従って、QPSK変調器出力信号の振幅ピーク値を検出することにより直交位相の状態を推定することが可能となる。
【0019】
さらに、図3のグラフを制御の観点から眺めると、直交状態で振幅ピーク値が最小になる特性を有することに留意されたい。つまり、これは、直交制御電極に低速なディザ信号を重畳し、変調器出力をモニタしてディザ信号成分の振幅ピーク値を検出し、元のディザ信号波形との位相比較を行うことによって、直交状態からのずれに応じた偏差信号を抽出することが可能となることを意味する。なお、直交位相制御バイアスが直交状態に合致した場合偏差信号はゼロとなる。この動作は一般に用いられるディザリングによる同期検波と同様である。
【0020】
さらに特徴的かつ重要なことは、直交状態が鋭い傾きを持つ極値になることである。すなわち、直交状態からほんの少しでも位相がずれただけでも振幅ピーク値は敏感に反応し大きな値を示すことになる。このように鋭いボトム特性を有することは偏差検出の感度が高いことを意味し、制御をより安定に収束させる上で大きなメリットとなる。これは、他の高感度化手段、例えばRZ強度変調器との組み合わせによる強度周波数成分(シンボルレート周波数成分)の抽出を施す必要がないことを意味する。このため、本発明単独で高感度な直交位相制御を実現することができる。
【0021】
上述のことを図2の回路構成の動作に対比させると、変調器出力のモニタ信号をピークホールド回路20を通すことで、信号成分の振幅ピーク値を得られることが分かる。図3のグラフより、振幅ピーク値は直交状態で最小となることから、ピークホールド回路20の出力結果をディザ信号波形と位相比較することで偏差信号を得ることができる。なお、位相比較は一般に用いられる手法であり、対象となる信号波形と参照信号波形の乗算で得られるものである。
【0022】
重要なこととしては、光検出器の動作帯域とIQ相の信号周波数帯域が少なくとも一部重なっていることに留意されたい。図3のグラフに示すように、IQ相はシンボル周波数により高速変調されており、その信号周波数成分の少なくとも一部が検出されない限り、振幅ピーク値を検出することができなくなり、そして、モニタ結果にピークホールドをかけたとしてもこのグラフどおりの挙動を示さない。具体的には、特許文献2に示されるように、43Gb/sのDQPSK変調を想定した場合、シンボル周波数は21.5GHzとなり、光検出器の動作帯域としては3dBのカットオフ周波数が100MHz以上であれば良いとされる。光検出器を100MHz程度で動作させることは通常の回路部品及び回路設計により十分対応可能である。また、ピークホールド回路の動作帯域もこのカットオフ周波数程度に設定されればより効率的に振幅ピーク値を検出することができる。さらに、ディザ信号周波数はピークホールド回路より十分低周波である方が良く、100MHz程度の動作帯域に対し数KHz〜数MHz程度であれば十分である。この周波数は一般にリチウムナイオベイトの強度変調器をディザ制御する周波数と同じである。
【0023】
なお、変調器の出力をモニタするための光分岐部は変調器の外付けとして説明したが、一般にはQPSK変調器の出力部にタップが内蔵されているものもあり、この場合そのタップを利用することは小型化を図る上で好適である。また、位相比較部21において制御ループの安定化のため比例/積分/微分(PID)演算処理を施すことは非常に有効であり、フィードバックが安定に収束する限りその一部の演算処理やその組み合わせで実装できることは制御設計上自明である。
【0024】
以上、本発明の直交位相制御法を用いれば通常の同期検波手段のみで制御回路を実現することが可能となり、従来の制御法(図1)で行っていたディザ信号間の位相差を90°に設定する個別の位相調整工程が不要となる。制御ループの安定性を高めるためPIDのパラメータ調整は従来どおり必要となるが、変調器や電子部品の動特性などの個体差は100MHz程度の周波数領域では小さいことから、一度PIDパラメータを最適化してしまえば、個別に調整する必要はない。また、制御感度を高めるためピーク検出回路の時定数(コンデンサの容量)も最適化する必要があるが、主信号のビットレートは20Gbps程度で一桁以上変わるようなものではないので、一度最適化してしまえば、個別に調整する必要はない。
【0025】
従って、本発明の直交位相制御法は、一旦閉ループのパラメータを最適化してしまえば、以降個別に調整作業を行う必要がなくなる。つまり、設計が確定してしまえば、本質的に自律的に動作する制御法となっている。
【実施例2】
【0026】
図4は、本発明の第2の実施例のQPSK変調器24の直交位相制御の具体的な回路構成を示す。図4の光検出器は、フォトディテクタ26、電流検出用抵抗27、アンプ28により構成され、ピークホールド回路は、ダイオード31、抵抗32、容量33から構成される。フォトディテクタ26によりフォトカレントを抵抗検出した後、DC成分を除去するため容量結合29でAC信号を取り出し、バッファアンプ30で増幅した後ピークホールド回路(31、32、33)に入力する。ピークホールド回路の出力を適宜増幅し(34)、ディザ信号成分のみをバンドパスフィルタ35で抽出する。ピークホールド回路とバンドパスフィルタ35で抽出された信号に、元のディザ信号波形を掛け合わせ(37)、ローパスフィルタ39でDC成分に変換して偏差信号を生成する。この偏差信号に、フィードバック制御で一般に用いられる比例/積分/微分制御を施し(40)、DCバイアス信号を生成する。こうして生成された直交位相部の位相ずれに応じた振幅を有するDCバイアス信号にディザ信号波形を加算し(41)、リチウムナイオベイトを駆動するドライバ42により適切な電圧信号に変換し直交位相制御用電極に印加する。光検出器、ピークホールド回路、ディザ信号用発振器の動作帯域は第1の実施例と同様である。
【0027】
これらの回路要素は全てアナログ回路で構成することも可能である。また、モニタ部以降の信号を適宜アナログディジタル変換し、ピークホールド回路、バンドパスフィルタ部、乗算回路、ローパスフィルタ、比例/積分/微分演算処理部、ディザ信号用発振器、加算回路の一部または全てをCPUやFPGAなどのディジタル回路で構成しディジタルアナログ変換を実施してドライバに入力して変調器バイアス電極を駆動する構成は、小型化を図る上で好適である。
【0028】
ここに示した実施例の各構成要素及び回路構成は最適設計の観点で導き出されたものであるが、小型化、低消費電力化など実装上の都合によりその一部を省略するか、または回路部間の順序を入れ替えるなどの変形は特に制限されるものではない。
【実施例3】
【0029】
図5は、本発明の第3の実施例のQPSK変調器全体のバイアス制御を行う具体的な回路構成を示す。直交バイアス制御回路は、第2の実施例に示した回路構成と同様であり、抵抗検出回路46、47、48、容量結合49、バッファアンプ50、ダイオード51と抵抗52と容量53から成るピークホールド回路、バンドパスフィルタ55、アンプ54、56、乗算器57、ローパスフィルタ59、比例/積分/微分演算回路60、ディザ信号用発振器58、加算回路61から構成される。これにより、第1の実施例で原理を説明したように直交位相は最適値に制御される。
【0030】
直交バイアス制御回路とは独立にI変調用BPSK変調部及びQ変調用BPSK変調部のバイアス制御が構成される。I変調器、Q変調器のバイアス制御は、光パワーモニタによりディザ信号成分を検出し位相比較する一般的な構成である。ただし、変調器の出力をモニタする場合、I変調器、Q変調器のモニタと、直交位相制御のモニタは独立していることが望ましい。この理由は、I変調器、Q変調器のモニタ部の帯域がディザ周波数程度の低速であるのに対し、直交位相制御のモニタ部の帯域が第1の実施例で具体的に述べたようにシンボル周波数の一部を検出すべくある程度の広帯域特性が必要とされるからである。
【0031】
I変調器のバイアス制御、Q変調器のバイアス制御、直交位相バイアス制御はそれぞれの制御を同時に常時動作させる構成でも、また時分割で時系列的に各制御を繰り返す構成でも良い。同時制御の場合、各バイアス制御に用いるディザ周波数は変えておく必要がある。また、それぞれの制御にバンドパスフィルタを組み入れてクロストークを抑制することも好適である。一方、時分割制御の場合、ディザ周波数は同一でも構わない。また、ディザ信号用発振器、乗算器、ローパスフィルタ、比例/積分/微分演算処理回路、加算回路は共通化しておき、偏差信号入力と各電極を駆動するためのドライバへのアナログ出力をスイッチやディジタル回路の出力ポート選択により切り替える構成は、より小型化を図る上で好都合である。
【0032】
第1〜第3の実施例ではQPSK変調器としてリチウムナイオベイトによる変調器による構成例を示したが、変調器の材料はこれに限定されず、インジウムリン(InP)も適用可能である。さらに、本発明は、PLC(Planar Lightwave Circuit:平面光波回路)によりチップ・チップ接続され、高速の変調部分にリチウムナイオベイトまたはインジウムリンを用い、干渉計の分岐部やバイアスを制御する部分を石英系光導波路で構成する変調器にも適用可能である。ただし、この場合、ドライバは電界効果を用いるリチウムナイオベイトのように電圧駆動するわけではなく、石英系光導波路の熱光学効果を用いるヒータへの電力駆動となる。さらにディザ周波数は石英系光導波路の熱光学効果の動作帯域が100Hz程度であることから、ディザ周波数は100Hz以下となる。
【0033】
以上の実施例ではQPSK変調器単体の構成を示したが、データ変調部にプリコード処理を施してDQPSK変調器として動作させたり、またデータ変調のクロック成分を利用してRZ変調器を駆動して本DQPSK変調器の前段または後段に配置することでRZ−DQPSK変調に適用したりすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の光QPSK送信器の位相制御法とその構成は、光通信ネットワークなどに使用される光通信機器に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 半導体レーザ(LD:laser diode)
2 位相シフト部
3 第1のアーム
4 第2のアーム
5 データ変調部
6 第1の電極
7 第2の電極
8 移相器
9 強度変調器
10、10´ 低速受光器(PD:photo detector)
11 帯域通過フィルタ(BPF:band-pass filter)
12 位相比較器
13 逓倍器
14 低周波信号発生器
15 クロック信号発生部
16 駆動信号発生部
17、24、43 QPSK変調器
18、25、44、45 光分岐
19 光検出器
20 ピークホールド回路
21 位相比較
22、38、58、67 ディザ信号用発振器
23 駆動回路
26、46 中速域(〜100MHz)フォトディテクタ
27、47、64 抵抗
28、30、48、50 中速域(〜100MHz)アンプ
29、49 容量
31、51 ダイオード
32、52 抵抗
33、53 容量
34、36、54、56、65 アンプ
35、55 バンドパスフィルタ(BPF)
37、57、66 乗算器
39、59、68 ローパスフィルタ(LPF:low-pass filter)
40、60、69 比例/積分/微分(PID:Proportional Integral Derivative)演算処理回路
41、61、70、72 加算器
42、62、73 ドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光を2分岐する分岐手段と、
分岐した一方の光を位相変調する第1の位相変調手段と、
分岐した他方の光を位相変調する第2の位相変調手段と、
前記第1の位相変調手段と前記第2の位相変調手段のいずれかの前段若しくは後段に設けられた位相シフト手段と、
前記第1の位相変調手段と前記第2の位相変調手段を通過した光を結合し、光信号として出力する結合手段と、
前記結合手段から出力される前記光信号の一部を電気信号に変換する光検出手段と、
前記電気信号から前記光信号の振幅のピーク値を検出し、ピーク検出信号を出力するピーク検出手段と、
ディザ信号を生成するディザ信号生成手段と、
前記ピーク検出信号と前記ディザ信号の位相を比較することにより、前記位相シフト手段での位相シフト量π/2からの偏差に応じた偏差信号を生成する位相比較手段と、
前記偏差信号に前記ディザ信号を重畳して、前記位相シフト量がπ/2となるよう前記位相シフト手段にフィードバック制御するフィードバック制御手段と
を備えたことを特徴とするQPSK変調器。
【請求項2】
前記第1の位相変調手段及び前記第2の位相変調手段がリチウムナイオベイトからなることを特徴とする請求項1に記載のQPSK変調器。
【請求項3】
前記第1の位相変調手段及び前記第2の位相変調手段がインジウムリンからなることを特徴とする請求項1に記載のQPSK変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−69924(P2011−69924A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219679(P2009−219679)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】