説明

RFID用リーダ装置及びその制御方法

【課題】直流遮断コンデンサを用いるリーダ装置の送受信の切り替え待機時間を短縮する。
【解決手段】リーダ装置2は、RFID3に対し、高周波搬送波信号を送信する送信回路4と、送信回路5により送信された高周波搬送波信号から、RFID3の応答データを抽出する受信回路5とを備え、受信回路5は、高周波搬送波信号を検波する検波回路14と、検波回路14による検波後の高周波搬送波信号の信号処理を行い、RFID3の応答データを取得する信号処理回路18と、検波回路14と信号処理回路18とを接続する配線に間挿された直流遮断コンデンサ15と、直流遮断コンデンサ15と直列に接続され、オフのときに直流遮断コンデンサ15の少なくとも一方の端子をオープンとするスイッチ素子16とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID用リーダ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データキャリアに記憶されたデータの読み出しを非接触で行えるようにした非接触ICシステムが知られている(例えば、特許文献1〜8を参照。)。非接触ICシステムは一般に、データキャリアとしての非接触ICとアンテナ回路とからなるRFID(Radio Frequency IDentification)と、アンテナ回路を有する読み出し装置(リーダ装置)とから構成される。以下、非接触ICに記憶されるデータの読み出し処理について、簡単に説明する。
【0003】
まず、リーダ装置は、アンテナ回路から、無変調の高周波搬送波信号の送信を開始する。この高周波搬送波信号を受信可能な位置にRFIDがあると、そのRFIDは高周波搬送波信号を受信整流して、電源電圧を生成する。一方、リーダ装置は、送信を開始してから所定時間が経過すると、次に問い合わせコマンドにより変調した高周波搬送波信号を送信する。送信が終了したら無変調の高周波搬送波信号の送信に戻り、送信状態のままで待機する。
【0004】
RFIDは、問い合わせコマンドで変調された高周波搬送波信号を受信すると、その応答として、非接触IC内に保持しているデータを負荷変調により送信する。すなわち、送信データに応じてアンテナ回路の負荷を切り替え、それによってアンテナ回路からの反射波成分の大きさを切り替えることにより、データを送信する。
【0005】
リーダ装置は、自身で送信した高周波搬送波信号を受信している。こうして受信される高周波搬送波信号にはRFIDからの反射波成分が重畳されており、リーダ装置は、受信された高周波搬送波信号を検波して反射波成分の変化を抽出し、RFIDからの応答信号として取得する。そして、この応答信号を信号処理することにより、非接触ICに記憶されるデータを得る。
【0006】
図4(a)は、リーダ装置により受信される高周波搬送波信号を示している。同図の横軸は時間軸であり、縦軸は信号の振幅を示している。後掲の各図でも同様である。図4(a)に示すように、送信時には高周波搬送波信号の振幅が大きく変動するが、受信時の変動はわずかである。図4(b)は、検波用のダイオードを通過した後の高周波搬送波信号を示している。同図に示すように、ダイオードを通過したことにより、信号の一方の極性側がカットされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−288551号公報
【特許文献2】特開平11−345289号公報
【特許文献3】特開平09−046282号公報
【特許文献4】特開平06−006272号公報
【特許文献5】特開平03−009492号公報
【特許文献6】実開平01−091352号公報
【特許文献7】特開2006−279412号公報
【特許文献8】特開平03−098319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図4(b)の信号は、RFIDからの応答信号成分に比して非常に大きな直流成分を有している。そのため、図4(b)の信号を増幅することはほとんどできず、後段の信号処理回路では、振幅が極めて小さい状態でRFIDからの応答信号成分を信号処理しなければならない。そこで、直流成分をカットし、RFIDからの応答信号成分のみを増幅できるようにするために、検波用のダイオードと増幅回路の間に直流遮断用のコンデンサ(直流遮断コンデンサ)を挿入し、入力信号と増幅器バイアス直流電圧の重畳状態にすることが考えられている。
【0009】
図4(c)は、直流遮断コンデンサの後段で測定した高周波搬送波信号を示している。同図に示すように、直流遮断コンデンサの働きにより高周波搬送波信号の直流成分がカットされており、したがって、RFIDからの応答信号成分を増幅することが可能になっている。
【0010】
しかしながら、直流遮断コンデンサを用いる場合、図4(c)に示すように、直流遮断コンデンサを挿入すると送信終了後しばらくの間、図中に符号Aで示した直流成分が発生する。これは直流遮断コンデンサの端子間に蓄積された電荷の充放電に伴う過渡応答によるものであるが、この直流成分が発生している間はRFIDからの応答信号を増幅できないので、受信と送信の間に一定以上の切り替え待機時間を設ける必要がある。
【0011】
過渡応答によって発生する直流成分の減衰に要する時間は、直流遮断コンデンサを含む回路の時定数が大きいほど長くなる。時定数を小さくすれば切り替え待機時間は短くできるが、一方で時定数を小さくしすぎると信号波形に歪みが生ずる。このため、切り替え待機時間の短縮には限界があり、直流遮断コンデンサを用いる場合のボトルネックとなっていた。
【0012】
したがって、本発明の目的の一つは、直流遮断コンデンサを用いる場合の送受信の切り替え待機時間を短縮できるリーダ装置及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明によるリーダ装置は、RFIDに対し、高周波搬送波信号を送信する送信回路と、前記送信回路により送信された前記高周波搬送波信号から、前記RFIDの応答データを抽出する受信回路とを備え、前記受信回路は、前記高周波搬送波信号を検波する検波回路と、前記検波回路による検波後の前記高周波搬送波信号の信号処理を行い、前記RFIDの応答データを取得する信号処理回路と、前記検波回路と前記信号処理回路とを接続する配線に間挿された直流遮断コンデンサと、前記直流遮断コンデンサと直列に接続され、オフのときに前記直流遮断コンデンサの少なくとも一方の端子をオープンとするスイッチ素子とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、スイッチ素子がオフとなっている間、電荷の移動経路が切れ直流遮断コンデンサの電荷の充放電が起こらないため、スイッチ素子がオンとなった後に図4(c)に示したような直流成分が生ずることはない。したがって、直流遮断コンデンサを用いる場合の送受信の切り替え待機時間を短縮することが可能になる。
【0015】
上記リーダ装置において、前記高周波搬送波信号を変調することにより、前記RFIDに対して所定のデータを送信する制御回路をさらに備え、前記制御回路は、前記所定のデータの送信期間に応じて前記スイッチ素子をオフすることとしてもよい。さらに、前記制御回路は、前記スイッチ素子をオフからオンに切り替えるときに前記検波回路と前記信号処理回路とを接続する配線に生ずるパルス成分を中和する中和信号を、該配線に入力することとしてもよい。
【0016】
また、上記各上記リーダ装置において、前記スイッチ素子は、前記直流遮断コンデンサと前記信号処理回路とを接続する配線に間挿され、前記直流遮断コンデンサと前記信号処理回路とを電気的に切り離すことにより、前記直流遮断コンデンサの前記信号処理回路側の端子をオープンとすることとしてもよい。
【0017】
また、本発明によるリーダ装置の制御方法は、RFIDに対し、高周波搬送波信号を送信する送信回路と、前記送信回路により送信された前記高周波搬送波信号から、前記RFIDの応答信号を抽出する受信回路とを備え、前記受信回路は、前記高周波搬送波信号を検波する検波回路と、前記検波回路による検波後の前記高周波搬送波信号の信号処理を行う信号処理回路と、前記検波回路と前記信号処理回路とを接続する配線に間挿された直流遮断コンデンサと、前記直流遮断コンデンサと直列に接続され、オフのときに前記直流遮断コンデンサの少なくとも一方の端子をオープンとするスイッチ素子とを有し、前記高周波搬送波信号を変調することにより、前記RFIDに対して所定のデータを送信するリーダ装置の制御方法であって、前記所定のデータの送信開始に応じて前記スイッチ素子をオフするステップと、前記所定のデータの送信が終了した場合に前記スイッチ素子をオンするステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、直流遮断コンデンサを用いるリーダ装置の送受信の切り替え待機時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による非接触ICシステムのシステム構成を示す図である。
【図2】(a)は、本発明の第1の実施の形態による検波回路に受信される高周波搬送波信号を示す図である。(b)は、本発明の第1の実施の形態による検波回路から出力される検波信号を示す図である。(c)は、本発明の第1の実施の形態による制御回路によって生成される制御信号を示す図である。(d)は、本発明の第1の実施の形態による直流遮断コンデンサから出力される信号を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態による非接触ICシステムのシステム構成を示す図である。
【図4】(a)は、本発明の背景技術によるリーダ装置により受信される高周波搬送波信号を示す図である。(b)は、本発明の背景技術による検波用のダイオードを通過した後の高周波搬送波信号を示す図である。(c)は、本発明の背景技術による直流遮断コンデンサの後段で測定した高周波搬送波信号を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態による非接触ICシステム1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、非接触ICシステム1はリーダ装置2とRFID3とを備えている。このうちリーダ装置2は、送信回路4、受信回路5、及び制御回路10を有し、RFID3は、アンテナ回路30及び非接触IC31を有している。
【0022】
リーダ装置2の送信回路4は、高周波信号送出回路11、整合回路12、及びアンテナ回路13により構成され、RFID3に対し、高周波搬送波信号(高周波数(例えば13.56MHz)の搬送波信号)を送信する機能を有する。また、リーダ装置2の受信回路5は、検波回路14、直流遮断コンデンサ15、スイッチ素子16、増幅回路17、及び信号処理回路18により構成され、送信回路により送信された高周波搬送波信号から、RFID3の応答信号を抽出する機能を有する。以下、各回路について詳しく説明する。
【0023】
制御回路10は、高周波信号送出回路11に、無変調の高周波搬送波信号の送出を開始させる機能を有する。また、RFID3に対して送信するデータ(問い合わせコマンド)を高周波信号送出回路11に出力する機能も有する。さらに、問い合わせコマンドを送信する場合、送信期間に応じてスイッチ素子16をオフする機能も有するが、この点については後に詳述する。
【0024】
高周波信号送出回路11は、制御回路10の指示に応じて高周波搬送波信号の生成を開始し、整合回路12を介してアンテナ回路13に出力する。高周波信号送出回路11内部には変調回路(不図示)が設けられており、制御回路10の指示から入力されるデータに応じ、生成した高周波搬送波信号を変調する処理も行う。
【0025】
整合回路12は、高周波信号送出回路11とアンテナ回路13を接続する配線に間挿されたインダクタL1と、インダクタL1と高周波信号送出回路11を接続する配線とグランド電位の間に挿入されたコンデンサC1とを有し、高周波信号送出回路11とアンテナ回路13とのインピーダンス整合を行う。
【0026】
アンテナ回路13は、インダクタL2とコンデンサC2,C3とが並列に接続されたLC共振回路であり、コンデンサC2とコンデンサC3の接続点がインダクタL1を介して高周波信号送出回路11に接続され、コンデンサC3とインダクタL2の接続点がグランド電位に接続されている。これらの構成により、アンテナ回路13は、高周波信号送出回路11から無変調の又は変調された高周波搬送波信号が入力されると、インダクタL2による電磁誘導を利用して、空間中に高周波搬送波信号を送出する。
【0027】
RFID3のアンテナ回路30は、インダクタL3とコンデンサC4とが並列に接続されたLC共振回路であり、インダクタL3の両端は非接触IC31に接続されている。近傍にあるリーダ装置2から高周波搬送波信号が送出されると、電磁誘導によってインダクタL3に電流が発生し、非接触IC31に入力される。アンテナ回路30は受信した高周波搬送波信号を反射するので、空中に存在する高周波搬送波信号には反射波成分が重畳されることになる。
【0028】
非接触IC31は、アンテナ回路30から入力される電流を整流して自らの動作のための電源電圧を生成する。また、非接触IC31は、アンテナ回路30から入力される電流信号を復調を行い、データによる変調成分が含まれていた場合に、そのデータに応じた処理を行う。データが問い合わせコマンドであった場合には、図示しない記憶部からデータを読み出す。そして、問い合わせコマンドの受信完了から所定時間(切り替え待機時間)待機した後、負荷変調により、読み出したデータを示す応答信号を送信する。すなわち、読み出したデータに応じてアンテナ回路30の負荷(不図示)を切り替え、それによってアンテナ回路30からの反射波成分の大きさを切り替えることにより、応答信号を送信する。
【0029】
リーダ装置2の検波回路14は、アンテナ回路13のインダクタL2に接続されるコンデンサC5と、アノードがコンデンサC5に接続され、カソードが直流遮断コンデンサ15に接続されたダイオードD2と、コンデンサC5とダイオードD2を接続する配線とグランド電位の間に挿入されたコンデンサD1と、それぞれダイオードD2と直流遮断コンデンサ15を接続する配線とグランド電位の間に挿入された抵抗R1及びコンデンサC6とを有している。これらの構成により、検波回路14はアンテナ回路30から送信される高周波搬送波信号を受信して検波し、直流遮断コンデンサ15に出力する。
【0030】
図2(a)は、検波回路14に受信される高周波搬送波信号を示す図である。同図に示した「送信」期間は、リーダ装置2から問い合わせコマンドを送信している期間であり、高周波搬送波信号に問い合わせコマンドによる変調成分が現れている。また、「受信」期間は、RFID3から応答信号が受信されている期間であり、高周波搬送波信号に負荷変調により変調された反射波成分が重畳されている。同図に示すように、重畳された反射波成分の振幅は、高周波搬送波信号の振幅に比べると極めて小さい。
【0031】
図2(b)は、検波回路14から出力される検波信号を示す図である。検波回路14ではダイオードD2を通過することになることから、検波信号では高周波搬送波信号のマイナス側がカットされている。
【0032】
直流遮断コンデンサ15は、検波回路14と増幅回路17とを接続する配線に間挿されている。直流遮断コンデンサ15と増幅回路17の間には、さらにスイッチ素子16も間挿されている。スイッチ素子16は、例えばCMOSアナログスイッチ(トランスファーゲート)により構成することが好適である。直流遮断コンデンサ15とスイッチ素子16は直列に接続されており、その間には、グランド電位や電源電位の供給される配線を含む他の配線や回路素子は接続されていない。直流遮断コンデンサ15とスイッチ素子16の動作については後述する。
【0033】
増幅回路17は、スイッチ素子16と信号処理回路18とを接続する配線に間挿された増幅器A1と、増幅器A1とスイッチ素子16を接続する配線と電源電位の間に挿入された抵抗R2と、増幅器A1とスイッチ素子16を接続する配線とグランド電位の間に挿入された抵抗R3とを有している。これらの構成により、増幅回路17に定常バイアス電圧が供給され、スイッチ素子16を通って信号処理回路18に入力される検波信号(直流遮断コンデンサ15により直流成分がカットされた信号)が所定の増幅率で増幅される。
【0034】
信号処理回路18は、増幅回路17によって増幅された検波信号に所定の信号処理を施し、検波信号に重畳されているデータ(RFID3の応答データ)を取得する。こうして、リーダ装置2は、RFID3の非接触IC31に記憶されていたデータを得る。
【0035】
さて、制御回路10は、スイッチ素子16のオンオフを制御するための制御信号を生成し、出力している。図2(c)は、この制御信号の例を示す図である。同図に示すように、制御信号は、概ね送信期間にはローとなり、それ以外のときにはハイとなる信号である。より具体的には、制御回路10は、問い合わせコマンドの送信開始に応じて制御信号をローとし、問い合わせコマンドの送信が終了した場合に制御信号をハイとする。制御信号をハイに戻す具体的なタイミングは、問い合わせコマンドの送信終了を検出することにより決定してもよいし、問い合わせコマンドの送信開始から所定時間の満了により決定してもよい。
【0036】
スイッチ素子16は、制御信号がローのときにオフとなり、ハイのときにオンとなるよう構成されている。したがって、スイッチ素子16は、問い合わせコマンドの送信中にオフとなり、それ以外のときにオンとなる。スイッチ素子16がオフとなっている間、直流遮断コンデンサ15は増幅回路17と切り離され、そのスイッチ素子16側の端子はオープンとなる。つまり、どこにも接続されない浮いた状態となる。したがって、この端子に蓄積された電荷は移動できないため、スイッチ素子16がオフとなっている間、直流遮断コンデンサ15への充放電電流は流れず、過渡現象も生じない。
【0037】
図2(d)は、直流遮断コンデンサ15から出力される信号を示す図である。同図に示すように、問い合わせコマンドの送信開始に伴って制御信号がローとなる(スイッチ素子16がオフとなる)直前、直流遮断コンデンサ15の出力信号は定常バイアス状態となっている。制御信号がローとなってスイッチ素子16がオフに切り替わった後も、直流遮断コンデンサ15の両端子には、定常バイアス状態となっていたときに蓄積されていた電荷が保存される。
【0038】
問い合わせコマンドの送信が終わって制御信号がハイに変化すると、スイッチ素子16がオンに切り替わり、直流遮断コンデンサ15は増幅回路17に接続される。この時点で、直流遮断コンデンサ15の両端子には、定常バイアス状態となっていたときに蓄積されていた電荷が保存されているため、スイッチ素子16がない場合に発生していた過渡応答による直流成分(図4(c)に示した直流成分A。)は、図2(d)に示すように発生せず、定常バイアス状態が維持される。したがって、非接触ICシステム1では、送受信の切り替え待機時間を背景技術に比べて短縮することが可能になっている。
【0039】
なお、図2(d)に示されるパルス成分Bはスイッチ素子16のオンオフに伴って発生しているものであり、過渡応答によって発生しているものではない。具体的には、スイッチ素子16が浮遊容量を有していることによって生ずるものである。図4(c)と図2(d)とを比較すると明らかなように、このパルス成分Bは直流成分Aに比べると極めて小さなもの(入力換算で50μV程度。)で、継続時間も短いため、切り替え待機時間にはあまり影響しない。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態による非接触ICシステム1によれば、リーダ装置2に直流遮断コンデンサを用いる場合の、送受信の切り替え待機時間を短縮することが可能になる。
【0041】
図3は、本発明の第2の実施の形態による非接触ICシステム1のシステム構成を示す図である。本実施の形態による非接触ICシステム1は、リーダ装置2が、スイッチ素子16と増幅回路17を接続する配線と制御回路10との間に直列に挿入されたインバータ20、コンデンサ21、及び可変容量コンデンサ22を有している点で、第1の実施の形態による非接触ICシステム1と異なっている。これらは、上述したパルス成分Bを打ち消すための構成である。以下、相違点に着目して説明する。
【0042】
インバータ20の出力は、図2(c)に示した制御信号の反転信号(逆極性の信号)となる。この反転信号が微小な容量のコンデンサ21及び可変容量コンデンサ22を通過することにより、図2(d)に示したパルス成分Bと逆極性の信号が得られる。この信号は、直流遮断コンデンサ15と増幅回路17を接続する配線に入力され、パルス成分Bを中和する中和信号として機能する。したがって、本実施の形態では、図2(d)に示したパルス成分Bを、より小さくすることが可能になっている。具体的には、パルス成分Bの大きさを入力換算で10μV以下にできることが実験により確かめられた。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0044】
例えば、上記各実施の形態では直流遮断コンデンサ15の後段(信号処理回路18側)にスイッチ素子16を設けたが、直流遮断コンデンサ15の前段(検波回路14側)にスイッチ素子16を設けてもよい。ただし、この場合にはスイッチ素子16に大きな直流成分を有する高周波搬送波信号が直接印加されることになるので、スイッチ素子16として高い耐圧を有する素子を用いる必要がある。
【0045】
また、本発明は、短波帯(13.56MHz)の搬送波信号を用いる非接触ICシステムだけでなく、他の周波数を用いる非接触ICシステムにも適用可能である。例えば、UHF帯の搬送波信号を用いる非接触ICシステムのように送受信分離のためにサーキュレータを用いる例についても、本発明は適用をすることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 非接触ICシステム
2 リーダ装置
3 RFID
4 送信回路
5 受信回路
10 制御回路
11 高周波信号送出回路
12 整合回路
13 アンテナ回路
14 検波回路
15 直流遮断コンデンサ
16 スイッチ素子
17 増幅回路
18 信号処理回路
20 インバータ
21 コンデンサ
22 可変容量コンデンサ
30 アンテナ回路
31 非接触IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDに対し、高周波搬送波信号を送信する送信回路と、
前記送信回路により送信された前記高周波搬送波信号から、前記RFIDの応答データを抽出する受信回路とを備え、
前記受信回路は、
前記高周波搬送波信号を検波する検波回路と、
前記検波回路による検波後の前記高周波搬送波信号の信号処理を行い、前記RFIDの応答データを取得する信号処理回路と、
前記検波回路と前記信号処理回路とを接続する配線に間挿された直流遮断コンデンサと、
前記直流遮断コンデンサと直列に接続され、オフのときに前記直流遮断コンデンサの少なくとも一方の端子をオープンとするスイッチ素子とを有する
ことを特徴とするリーダ装置。
【請求項2】
前記高周波搬送波信号を変調することにより、前記RFIDに対して所定のデータを送信する制御回路をさらに備え、
前記制御回路は、前記所定のデータの送信期間に応じて前記スイッチ素子をオフすることを特徴とする請求項1に記載のリーダ装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記スイッチ素子をオフからオンに切り替えるときに前記検波回路と前記信号処理回路とを接続する配線に生ずるパルス成分を中和する中和信号を、該配線に入力することを特徴とする請求項2に記載のリーダ装置。
【請求項4】
前記スイッチ素子は、前記直流遮断コンデンサと前記信号処理回路とを接続する配線に間挿され、前記直流遮断コンデンサと前記信号処理回路とを電気的に切り離すことにより、前記直流遮断コンデンサの前記信号処理回路側の端子をオープンとする
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリーダ装置。
【請求項5】
RFIDに対し、高周波搬送波信号を送信する送信回路と、
前記送信回路により送信された前記高周波搬送波信号から、前記RFIDの応答信号を抽出する受信回路とを備え、
前記受信回路は、
前記高周波搬送波信号を検波する検波回路と、
前記検波回路による検波後の前記高周波搬送波信号の信号処理を行う信号処理回路と、
前記検波回路と前記信号処理回路とを接続する配線に間挿された直流遮断コンデンサと、
前記直流遮断コンデンサと直列に接続され、オフのときに前記直流遮断コンデンサの少なくとも一方の端子をオープンとするスイッチ素子とを有し、
前記高周波搬送波信号を変調することにより、前記RFIDに対して所定のデータを送信するリーダ装置の制御方法であって、
前記所定のデータの送信開始に応じて前記スイッチ素子をオフするステップと、
前記所定のデータの送信が終了した場合に前記スイッチ素子をオンするステップとを備えることを特徴とするリーダ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145836(P2011−145836A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5242(P2010−5242)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】