説明

Re系酸化物超電導線材及びその製造方法

【課題】超電導体中に磁束ピンニング点を微細分散させることにより、磁場印加角度依存性に優れたRe系酸化物超電導線材を得る。
【解決手段】複合基板の中間層上に、Ba濃度を低減したRe系超電導体を構成する金属元素を含む有機金属錯体溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む有機金属錯体溶液からなる混合溶液中を塗布後、焼成して、人工的にZr含有酸化物粒(磁束ピンニング点)を微細分散させることにより、Jcの磁場印加角度依存性(Jc,min/Jc,max)を著しく向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導マグネット、超電導ケーブル、電力機器等に有用な酸化物超電導線材及びその製造方法に係り、特に超電導応用機器の中でも超電導マグネット等の磁場下で使用する機器に利用可能な超電導線材及びその製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物超電導体は、その臨界温度(Tc)が液体窒素温度を超えることから超電導マグネット、超電導ケーブル、電力機器及びデバイス等への応用が期待されており、多くの研究結果が報告されている。
【0003】
酸化物超電導体を上記の分野に適用するためには、臨界電流密度(Jc)が高く、かつ高い臨界電流値(Ic)を有する長尺の線材を製造する必要があり、一方、長尺線材を得るためには、強度及び可撓性の観点から金属基体上に酸化物超電導体を形成する必要がある。また、NbSnやNbAl等の金属系超電導体と同等に実用レベルで使用可能とするためには、500A/cm(77K、自己磁界中)程度のIc値が必要である。
【0004】
また、酸化物超電導体はその結晶方位により超電導特性が変化することから、Jcを向上させるためには、その面内配向性を向上させることが必要であり、酸化物超電導体をテープ状の基板上に形成する必要がある。このため、面内配向性の高い基板上に酸化物超電導体をエピタキシャル成長させる成膜プロセスが採用されている。
【0005】
この場合、Jcを向上させるためには、酸化物超電導体のc軸を基板の板面に垂直に配向させ、かつそのa軸(又はb軸)を基板面に平行に面内配向させて、超電導状態の量子的結合性を良好に保持する必要があり、このため、面内配向性の高い金属基板上に面内配向度と方位を向上させた中間層を形成し、この中間層の結晶格子をテンプレートとして用いることによって、超電導層の結晶の面内配向度と方位を向上させることが行われている。また、Icを向上させるためには、基板上に形成される酸化物超電導体の膜厚を厚くする必要がある。
【0006】
テープ状のRe系酸化物超電導体、即ち、ReBaCu系酸化物超電導体(ここでReは、Y、Nd、Sm、Gd、Eu,Yb、Pt又はHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す。以下Re系(123)超電導体と称する。)の製造方法として、MOD法(Metal Organic Deposition Processes:金属有機酸塩堆積法)が知られている。
【0007】
このMOD法は、金属有機酸塩を熱分解させるもので、超電導体を構成する金属成分を含む有機化合物が均一に溶解した溶液を基板上に塗布した後、これを加熱して熱分解させることにより基板上に薄膜を形成する方法であり、非真空プロセスであることから低コストで高速成膜が可能である上、高いJcが得られることから、長尺のテープ状酸化物超電導線材の製造に適する利点を有する。
【0008】
MOD法においては、出発原料である金属有機酸塩を熱分解させると通常アルカリ土類金属(Ba等)の炭酸塩が生成されるが、この炭酸塩を経由する固相反応による酸化物超電導体の形成には800℃以上の高温熱処理を必要とする。更に、厚膜化を行った際、結晶成長のための核生成が基板界面以外の部分からも生じるため結晶成長速度を制御することが難しく、結果として、面内配向性に優れた、即ち、高いJcを有する超電導膜を得ることが難しいという問題がある。
【0009】
MOD法における上記の問題を解決するために、炭酸塩を経由せずにRe系(123)超電導体を形成する方法として、フッ素を含む有機酸塩(例えば、TFA塩:トリフルオロ酢酸塩)を出発原料とし、水蒸気雰囲気中の水蒸気分圧の制御下で熱処理を行い、フッ化物の分解を経由して超電導体を得る方法が近年精力的に行われている。
【0010】
このTFA塩を出発原料とするMOD法では、塗布膜の仮焼後に得られるフッ素を含むアモルファス前駆体と水蒸気との反応により、HFガスを発生しつつ超電導膜が成長する界面にHFに起因する液相を形成することにより基板界面から超電導体がエピタキシャル成長する。この場合、熱処理中の水蒸気分圧によりフッ化物の分解速度を制御できることから超電導体の結晶成長速度が制御でき、その結果、優れた面内配向性を有する超電導膜が製造できる。また、同法では比較的低温で基板上面からRe系(123)超電導体をエピタキシャル成長させることができる。
【0011】
従来、厚膜化と高速仮焼プロセスを可能とするために、出発原料としてY及びBaのTFA塩を、またCuのナフテン酸塩をY:Ba:Cu=1:2:3のモル比で有機溶媒中に混合した溶液を用いることで仮焼プロセスにおけるHFガスの大量発生を抑制している。
【0012】
上述のように、MOD法によりテープ状の酸化物超電導体を製造する場合、実用化のためにはIc値を向上させるための厚膜化が必要不可欠である。TFA塩を出発原料とするMOD法によりこの厚膜化を達成するためには、TFA塩を含む原料溶液の粘性を高くして塗布膜を厚くすることが考えられるが、1回当たりの塗布膜厚が厚くなると、熱処理により分解生成するHF及びCO2 ガスの発生量が増加するため仮焼時に塗布膜が飛散する現象が生じ、結果として高特性を有するテープ状酸化物超電導厚膜を製造することは難しい。
【0013】
超電導厚膜を製造するために、原料の塗布及び仮焼の工程を繰返して行うことで仮焼膜を厚膜化する方法が考えられるが、上記の従来技術による仮焼熱処理法では、金属有機酸塩の分解速度に影響する仮焼熱処理中の昇温速度が速いためにTFA塩を始めとする金属有機酸塩の分解が不十分であり、仮焼により得られる酸化物超電導前駆体膜中に溶媒や有機酸塩が残存する傾向がある。そのため、その後の結晶化熱処理中の昇温時に、残存していたフッ化物等の有機酸塩が急激に分解して膜中に突沸痕や異物、ポアなどが発生する。また、仮焼膜が分解してYBCO(Y系(123)超電導体を示す。)の結晶を形成する時の体積収縮により膜に応力が生じ、突沸痕や異物、ポアなどを起点としたクラックが生ずる。
【0014】
この傾向は、塗布と仮焼熱処理を繰り返して多層構造の酸化物超電導前駆体膜を形成して厚膜化する場合に著しくなる。その結果、得られた前駆体厚膜を結晶化し超電導膜を得る際にクラックがそのままの状態で残存するため、通電時の電流経路を阻害してしまうことによりJc特性は著しく低下する。
【0015】
このような問題を解決するために、仮焼熱処理中の昇温速度を制御することにより、金属有機酸塩を十分に分解させ、高いJcと厚膜化を達成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0016】
また、基板上に形成した酸化物超電導前駆体の熱処理時の仮焼熱処理温度及び/又は結晶化熱処理雰囲気中の導入ガスの水蒸気分圧を制御することにより、高配向性と高Jcを有する厚膜のテープ状酸化物超電導体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0017】
しかしながら、上記の仮焼熱処理中の昇温速度を制御する方法や仮焼熱処理温度及び/又は結晶化熱処理雰囲気中の導入ガスの水蒸気分圧を制御する方法においては、従来よりも厚膜化は達成されるものの、その膜厚は1μm程度に止まり、結晶化熱処理を改良した方法においても1.5μm程度になるとクラックが発生し、高いJc及びIcを有する厚膜を得ることは困難であった。
【0018】
その後の研究により、本出願人を構成する出願人等は、このような厚膜化に伴うJcの低下や予想される値よりも低いIcが、クラックの発生だけでなく結晶粒界の電気的結合性の低下に起因することを知見し、このようなクラックの発生及び結晶粒界の電気的結合性の低下の原因を除去又は抑制することにより、高いJc及びIcを有する厚膜のテープ状Re系(123)超電導体を製造する方法を先に出願している(特願2006−226421)。
【0019】
この方法は、基板上に、Re系(123)超電導体を構成する金属元素を含む原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理を施し、次いで超電導体生成の熱処理を施すことによりRe系(123)超電導体を製造する方法において、前記原料溶液中のRe、Ba及びCuのモル比をRe:Ba:Cu=1:y:3としたときに、Baのモル比をy<2の範囲、例えば、1.0≦y≦1.8(好ましくは1.3≦y≦1.7)の範囲内に低減することにより、Baの偏析を抑制することができ、その結果、結晶粒界でのBaべ一スの不純物の析出が抑制されることによりクラックの発生が抑制されるとともに結晶粒間の電気的結合性が向上し、超電導膜をMOD法により形成することにより、高速で均一な厚膜を有する超電導特性に優れたテープ状Re系(123)超電導体を容易に製造するものである。
【0020】
しかしながら、上記のTFA―MOD法により製造したテープ状Re系(123)超電導線材は、溶液の組成を制御することにより、超電導体の粒界特性及び結晶性が改善され、自己磁場Jc、即ち、77K、0T(テスラ)におけるJcが向上することが確認されているが、77K、1TにおけるJcは磁場印加角度依存性の影響を受け、Jc,minは0.19MA/cmと低く、Jcの磁場印加角度依存性は、Jc,min/Jc,max=0.47と異方性を示すため、印加磁場下で使用する機器に利用するためには、超電導体内に磁束ピンニング点を導入する必要がある。
【0021】
この問題を解決する一つの方法として、基板上にYの一部をSmに置き換えたY0.77Sm0.23Ba1.5Cu超電導体をTFA―MOD法を用いて形成することにより磁束ピンニング点を超電導体内に導入する方法が試みられた。この方法によれば、超電導体内にlow−Tc相である粒子状のSmーrich相(Sm1+xBa2−xCu)が磁束ピンニング点として形成され、77K、1TにおけるJcの磁場印加角度依存性は改善され、Jc,min/Jc,max=0.6と約1.3倍に異方性が改善されるが、磁束ピンニング点のサイズが大きいため、未だJcの磁場印加角度依存性は大きい。
【0022】
また、S. V. Ghalsaki他により、LaAlO単結晶基板上にYの一部をSmに置き換えたY0.33Sm0.66BaCu超電導体をTFA―MOD法を用いて形成
する際にBaZrO粒子を添加する方法が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0023】
この方法によれば、磁束ピンニング点を形成するためにBaZrO粒子が添加されるが、膜厚が0.2μm程度と薄い上、磁束ピンニング点を形成するZr化合物が30nm以上と大きい上その分散状態も不均一であり、異方性による問題を解決するに至っていない。
【0024】
一方、J. GUTIERREZ他により、SrTiO単結晶基板上にYBCO超電導体をTFA―MOD法を用いて形成する際にBaZrO塩を添加する方法が報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0025】
この方法によれば、磁束ピンニング点を形成するためにBaZrO塩が添加されるが、膜厚が同様に0.2μm程度と薄い上、磁束ピンニング点を形成するZr化合物(BaZrO)が5〜数十nm以上と大きい上その分散状態も不均一で、かつ、基板近傍に集中して分散するため、77K、1TにおけるJcの磁場印加角度依存性は、Jc,min/Jc,max=0.66に留まり、同様に異方性による問題を解決するに至っていない。
【0026】
【特許文献1】特開2003−300726
【特許文献2】特開2003−34527
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY , VOL.17, NO.2, JUNE 2007
【非特許文献2】nature materials / VOL 6 / MAY 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
以上述べたように、印加磁場下で使用する超電導機器応用のためには、超電導線材は、あらゆる磁場印加角度に対して高いJc(Ic)を有することが望まれる。例えば、超電導線材によりソレノイドコイルを形成した場合に、コイルの両端部において基板面(超電導面)に対して、Jcが低下する角度で磁場が加わるため、コイルの設計はJc,minの値によって律速されることになる。このことは、高磁場下で使用される超電導変圧器やSMES等への電力機器への応用に対して大きな問題となる。
【0028】
また、超電導体は印加磁場の増加に伴い超電導体内に侵入する量子化磁束の密度が増え、それらが運動して超電導状態が壊れることによりJcが低下する。さらに、上述のように、超電導体は、結晶構造に起因してa軸方向に磁場を加えた際のJcよりもc軸方向に磁場印加時のJcが低いという特性を有する。そこで超電導体内における量子化磁束の移動を妨げるためにあらゆる磁場方向にも有効な等方的な形状のナノサイズの磁束ピンニング点を超電導体内にナノメートル間隔に均一に導入する必要がある。しかしながら、TFA―MOD法は気相成長と異なり前駆体からの相変態で結晶成長するため、導入した磁束ピンニング点は粗大化し易く、微細人工ピンニング点の導入は難しいとされていた。
【0029】
本発明は、以上の問題を解決するためになされたもので、厚膜で粒界特性及び結晶性に優れた超電導体内に均一で微細な磁束ピンニング点を導入することにより、高磁場における磁場印加角度依存性に優れたRe系酸化物超電導線材及びその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記の問題を解決するために、本発明のRe系酸化物超電導線材は、基板上に中間層を介して形成したReBaCu系超電導体において、ReとしてY、Nd、Sm、Gd又はEuから選択されたいずれか1種の元素を用い、Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、超電導体中にZrを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させたものである。
【0031】
上記のRe系酸化物超電導線材は、基板上に、中間層を介して原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理を施し、次いで超電導体生成の熱処理を施すことによりReBaCu系超電導体を製造する方法において、原料溶液として、Re(Re=Y、Nd、Sm、Gd又はEuから選択された1種の金属元素を示す。)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む有機金属錯体溶液からなる混合溶液を用い、Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、超電導体中にZr、Ce、Sn又はTiを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることにより製造することができる。
【0032】
また、本発明の他のRe系酸化物超電導線材は、基板上に中間層を介して形成したReBaCu系超電導体において、ReをRe=A1−xの組成とし、A及びBは、それぞれY、Nd、Sm、Gd又はEuから選択されたいずれか1種以上の異なる元素からなり、Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、超電導体中にZrを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させたものである。
【0033】
上記のRe系酸化物超電導線材は、基板上に、中間層を介して原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理を施し、次いで超電導体生成の熱処理を施すことによりReBaCu系超電導体を製造する方法において、原料溶液として、Re(Re=A1−xの組成を有し、A及びBは、それぞれY、Nd、Sm、Gd又はEuから選択されたいずれか1種以上の異なる元素を示す。)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む有機金属錯体溶液からなる混合溶液を用い、Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にZr、Ce、Sn又はTiを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることにより製造することができる。
【0034】
上記のRe=A1−xの組成を有するRe系酸化物超電導線材及びその製造方法においては、Re=Y1−xSmの組成とすることが好適する。この場合には、超電導体中にSmを含む酸化物粒子及びZrを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることができる。
【0035】
以上述べたRe系酸化物超電導線材及びその製造方法において、Baのモル比を1.3<y<1.8の範囲内とすることが好ましい。Baのモル比をその標準モル比より小さくすることにより、Baの偏析が抑制され、結晶粒界でのBaべ一スの不純物の析出が抑制される結果、クラックの発生が抑制されるとともに、結晶粒間の電気的結合性が向上して通電電流によって定義されるJcが向上する。Baのモル比を低減することにより、磁束ピンニング点であるYCuやCuOが形成され、磁界特性が改善される。
【0036】
超電導体中に人工的に導入される磁束ピンニング点として分散するZr、Ce、Sn又はTiを含む酸化物粒子は、50nm以下とされるが、特に、5〜30nmのZrを含む酸化物粒子であることが好ましい。
【0037】
この場合、Y1−xSmの組成を用いた場合には、先に述べたように、超電導体内にlow−Tc相である粒子状のSmーrich相(Sm1+xBa2−xCu)が磁束ピンニング点として形成され、磁束ピンニング点がSmを含む酸化物粒子及び5〜30nmのZrを含む酸化物粒子により形成される結果、著しくピンニング力が向上する。
【0038】
人工的に導入される磁束ピンニング点を形成するために添加されるZrの添加量は、金属濃度で0.5〜10モル%であることが好ましく、Zrの添加量が0.5モル%未満の場合、酸化物粒子の密度が十分でないため、高磁場で十分なピンニング力が得られず、一方、10モル%を超えると析出物が粗大化して結晶性を低下させる。特に、金属濃度で0.5〜5モル%の範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、Ba濃度を低減したRe系超電導体において、超電導体中に人工的にZr含有磁束ピンニング点を微細分散させることができ、これにより、Jcの磁場印加角度依存性が小さく、かつ、高磁場で高いJcを有する磁場特性を有するとともに、Jcの磁場印加角度依存性(Jc,min/Jc,max)も著しく向上するため、あらゆる磁場印加角度方向に対しても有効に磁束をピンニングすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
図4は、本発明により製造されるRe系酸化物超電導線材の軸方向に垂直な断面を示したもので、テープ状のRe系超電導線材10は、テープ状の複合基板1の表面にRe系超電導層2及びAg等からなる安定化層3が形成された断面構造を有する。
【0041】
上記の複合基板1としては、LaAlO3等の単結晶基板上に中間層を形成したものも用いることができるが、長尺線材の製造には配向性Ni基板上に中間層を形成したものやIBAD法(Ion Beam Assisted Deposition)を用いた複合基板等の多結晶基板を用いることができる。このIBAD複合基板は、非磁性で高強度のテープ状Ni系基板上(ハステロイC276等)に、このNi系基板に対して斜め方向からイオンを照射しながら、ターゲットから発生した粒子を堆積させて形成した高配向性を有し超電導体を構成する元素との反応を抑制する中間層を1層又は2層設けたものである(特開平4−329867号、特開平4−331795号参照)。
【0042】
複合基板1は、同図に示すように、Ni基合金等の金属基板1aの上に高配向性の中間層を1層または複数層、例えば、第1中間層1b及び第2中間層1cを形成した複合基板であることが好ましい。この第1中間層は、バッファ層としての機能を有し、超電導層との反応を抑制して超電導特性の低下を防止し、一方、第2中間層は、超電導層との整合性を維持するために配置される。
【0043】
上記の金属基板1a上に2層構造の中間層が形成された複合基板1上に、Re系超電導層2、即ち、ReBaCu系超電導層が形成される。
【0044】
Re系超電導層2は、MOD法により形成されるが、この原料溶液としては、下記(a)〜(b)の混合溶液を用いることが好ましい。
(a)Reを含む有機金属錯体溶液:Reを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液、特に、Reを含むトリフルオロ酢酸塩溶液
(b)Baを含む有機金属錯体溶液:Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液
(c)Cuを含む有機金属錯体溶液:Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
(d)Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液:Zr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
Re系超電導層2は第2中間層1c上に形成され、水蒸気分圧3〜76Torr、酸素分圧300〜760Torrの雰囲気中で400〜500℃の温度範囲の仮焼熱処理後、水蒸気分圧30〜100Torr、酸素分圧0.05〜1Torrの雰囲気中で700から800℃の温度範囲で超電導体生成の熱処理を施すことが好ましい。
【0045】
また、上記の仮焼熱処理と超電導体生成の熱処理との間に超電導体生成の熱処理温度より低い温度で中間熱処理を施すことが有効である。これは、結晶化温度に至る前に仮焼での残存有機分あるいは剰余フッ化物を排出してクラックの発生を防止し、厚膜の超電導体を形成するためである(特開2007−165153号参照)。
【0046】
このときの知見によれば、TFA塩を出発原料とするMOD法の特徴は、結晶化熱処理においてフッ素を含む前駆体と水蒸気との反応により超電導体が生成し、水蒸気分圧により結晶成長速度を制御でき、超電導相の成長速度は、水蒸気分圧が上昇するにつれて増大するが、YBCO超電導膜のJcは、臨界水蒸気分圧を超えると超電導膜中のクラックの発生やポアの生成により急激に低下するため、上記の範囲の条件で仮焼熱処理及び超電導体生成の熱処理を施すことが行われる。
【0047】
一方、結晶化熱処理の際の昇温時の急激な有機分の分解・脱離後に形成されるポアが多く荒れた組織が、その後のYBCO相生成に伴う膜の体積収縮時の局所的な歪み応力の起点となり、これがクラック発生の原因となるため、中間熱処理を施すことが行われる。
【0048】
しかしながら、その後の研究の結果、JcやIcの低下がクラックの発生にのみ起因するものではなく、また、クラックの発生原因である局所的な歪み応力の起点がポアが多く荒れた組織のみによるものでないことを知見するに至った。
【0049】
即ち、Re系(123)超電導体を構成する金属元素のうち、特にBaは仮焼プロセスの条件によっては、仮焼膜中に均一に分散せずに偏析を生じ易く、この偏析を生じた領域ではBaが局所的に過剰となるため、Re系(123)超電導体以外にBa不純物が形成される。このBa不純物は多くの場合、結晶粒界に析出し、その結果、結晶粒界に誘電体である不純物が介在することになり、結晶粒間の電気的結合性を損なわせる上、クラックの発生を誘発する要因の1つとなり、結果としてJcやIcが低下する原因となっているものと考えられている。
【0050】
上述のように、Baのモル比をその標準モル比より小さくすることにより、Baの偏析が抑制され、結晶粒界でのBaべ一スの不純物の析出が抑制される結果、クラックの発生が抑制されるとともに、結晶粒間の電気的結合性が向上して通電電流によって定義されるJcが向上する。
【0051】
本発明では、TFAーMOD法によるRe系酸化物超電導線材に磁束ピンニング点を導入する手法として、TFAを含む溶液中にBaと親和性の高いZr含有ナフテン酸塩等を混合する手法が採用される。また、その導入量を制御することで、粒界偏析によるJc低下の要因の一つであるBaと結合してBaZrOを形成し、粒内に分散させることにより粒界特性が改善され、また、超電導体内に形成されたBaZrO、ZrOが膜面方向だけでなく、膜厚方向にもナノサイズ、ナノ間隔に存在しこれらが磁束を有効にピンニングし、磁場印加角度に対するJcの異方性を著しく改善することが可能となる。また、BaZrO、ZrOのサイズ、密度及び分散を制御するためには、Zr含有ナフテン酸塩等の導入量だけでなく、仮焼熱処理時及び結晶化熱処理時の酸素分圧、水蒸気分圧、焼成温度の制御により可能となり、これらの最適化を行うことにより有効な磁束ピンニング点の導入が可能となる。
【0052】
以下、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
【0053】
実施例
基板として、ハステロイテープ上にIBAD法によりGdZrから成る第1中間層及びPLD法によりCeOからなる第2中間層を順次形成した複合基板を用いた。この場合の第1中間層及び第2中間層のΔφは、それぞれ14及び4.5deg.であった。
【0054】
一方、Y―TFA塩、Sm−TFA塩、Ba―TFA塩及びCuのナフテン酸塩をY:Sm:Ba:Cuのモル比が0.77:0.23:1.5:3となるように有機溶媒中に混合し、この混合溶液中にZr含有ナフテン酸塩を金属モル比で1%配合して原料溶液を作製した。
【0055】
上記の複合基板の第2中間層上に原料溶液を塗布し、次いで、仮焼熱処理を施した。仮焼熱処理は、水蒸気分圧16Torrの酸素ガス雰囲気中で最高加熱温度(Tmax)500℃まで加熱した後、炉冷することにより施した。
【0056】
以上の仮焼熱処理の後、超電導体生成の熱処理(結晶化熱処理)を施して複合基板上に超電導膜を形成した。この熱処理は、水蒸気分圧76Torr、酸素分圧0.23Torrのアルゴンガス雰囲気中で760°の温度で保持した後、炉冷することにより施した。
【0057】
以上の方法により製造したテープ状Re系超電導体(YSmBCO+BZO)の膜厚は0.8μmであった。
【0058】
このようにして得られた超電導膜について、その磁場印加角度依存性、即ち、c軸に平行な方向(ab面に垂直)に外部磁場を印加し、その値を変化させたときのJc(77K)を測定した。その結果を図2に示す。また、この超電導膜について、その磁場印加角度依存性、即ち、1Tの外部磁場を印加し、ab面に対する角度を変化させたときのJc(77K)を測定した。その結果を図1に示す。図1において、Jcの磁場印加角度依存性はJc,min/Jc,max=0.91であった。
【0059】
また、超電導膜に垂直な断面におけるTEM像を図3(a)に材料マッピングを同図(b)に示す。
【0060】
このときの磁束ピンニング点は、Sm1+xBay=2−xCu(low−Tc相)、BaZrO及びZrOであり、約20nm(5〜25nm)程度のBaZrO及びZrOが超電導膜の(c軸に平行な)断面内において、おおよそ50nmの間隔でその膜厚方向に均一に分散していることが確認された。
【0061】
比較例1
実施例と同様の複合基板を用い、Y―TFA塩、Sm−TFA塩、Ba―TFA塩及びCuのナフテン酸塩をY:Sm:Ba:Cuのモル比が0.77:0.23:1.5:3となるように有機溶媒中に混合して原料溶液を作製した。
【0062】
上記の複合基板の第2中間層上に原料溶液を塗布し、次いで、実施例と同様にして仮焼熱処理及び超電導体生成の熱処理(結晶化熱処理)を施して複合基板上に超電導膜を形成した。以上の方法により製造したテープ状Re系超電導体(YSmBCO)の膜厚は0.8μmであった。
【0063】
このようにして得られた超電導膜について、そのJcの磁場依存性を実施例と同様にして測定した。その結果を図2に示した。また、この超電導膜について、Jcの磁場印加角度依存性を実施例と同様にして測定した。Jcの磁場印加角度依存性はJc,min/Jc,max=0.6であった。
【0064】
このときの磁束ピンニング点は、Sm1+xBay=2−xCu(low−Tc相)であり、約100nm程度であった.
比較例2
実施例と同様の複合基板を用い、Y―TFA塩、Ba―TFA塩及びCuのナフテン酸塩をY:Ba:Cuのモル比が1:1.5:3となるように有機溶媒中に混合して原料溶液を作製した。
【0065】
上記の複合基板の第2中間層上に原料溶液を塗布し、次いで、実施例と同様にして仮焼熱処理及び超電導体生成の熱処理(結晶化熱処理)を施して複合基板上に超電導膜を形成した。以上の方法により製造したテープ状Re系超電導体(YBCO)の膜厚は0.8μmであった。
【0066】
このようにして得られた超電導膜について、そのJcの磁場依存性を実施例と同様にして測定した。その結果を図2に示した。また、この超電導膜について、Jcの磁場印加角度依存性を実施例と同様にして測定した。その結果を図1に示した。図1において、Jcの磁場印加角度依存性はJc,min/Jc,max=0.47であった。
【0067】
以上の実施例及び比較例の結果から明らかなように、本発明によるテープ状Re系超電導体(YSmBCO+Zr含有酸化物粒)は、Yの一部をSmに置き換えた比較例1のテープ状Re系超電導体(YSmBCO)及びBa濃度を標準組成よりも低減した比較例2のテープ状Re系超電導体(YBCO)と比較してJcの磁場依存性が小さく、かつ、高磁場で高いJcを有する磁場特性を示している。
【0068】
また、c軸に平行な方向(ab面に垂直)に1Tの外部磁場を印加した場合(77K)、比較例1の(YSmBCO)は比較例2の(YBCO)と比較して1.3倍のJcを有するが、実施例の(YSmBCO+Zr含有酸化物粒)は比較例2の(YBCO)と比較して2.2倍のJcを有する。
【0069】
更に、実施例の(YSmBCO+Zr含有酸化物粒)の磁場印加角度依存性(Jc,min/Jc,max)も、比較例2のYBCO及び比較例1のYSmBCOがそれぞれ0.47及び0.6と異方性を示すのに対して0.91と著しく向上する。
【0070】
即ち、本発明によれば、Ba濃度を低減したRe系超電導体において、人工的に磁束ピンニング点(BaZrO及びZrO等のZr含有酸化物)を微細分散させることにより、77K、1TにおいてNbTi合金超電導体に匹敵するJcを得ることができるとともに、あらゆる磁場方向に対しても有効に磁束をピンニングすることができるため、Jc−B−θ特性を向上させることができ、等方的Jc特性が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、非真空で低コストプロセスであるTFA−MOD法に適したRe系酸化物超電導線材の高磁場下におけるJc及び磁場印加角度に対するJcの異方性が著しく向上するため、超電導マグネット、超電導変圧器、超電導電力貯蔵装置等の超電導機器への応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例及び比較例により製造された超電導体の磁場印加角度依存性を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例及び比較例により製造された超電導体の印加磁場に対する臨界電流値を示すグラフである。
【図3】本発明により製造された超電導体の超電導膜に垂直な断面におけるTEM像(a)及び材料マッピング(b)を示す写真である。
【図4】本発明により製造されるテープ状のRe系酸化物超電導線材のテープの軸方向に垂直な断面を示す概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1 テープ状の複合基板
1a Ni基合金等の金属基板
1b 第1中間層
1c 第2中間層
2 Re系超電導層
3 安定化層
10 テープ状のRe系超電導線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に中間層を介して形成したReBaCu系超電導体において、前記Reは、Y、Nd、Sm、Gd又はEuから選択されたいずれか1種の元素からなり、前記Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にZrを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させたことを特徴とするRe系酸化物超電導線材。
【請求項2】
基板上に中間層を介して形成したReBaCu系超電導体において、前記Reは、Re=A1−xの組成を有し、A及びBは、それぞれY、Nd、Sm、Gd又はEuから選択されたいずれか1種以上の異なる元素からなり、前記Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にZrを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させたことを特徴とするRe系酸化物超電導線材。
【請求項3】
基板上に中間層を介して形成したReBaCu系超電導体において、前記Reは、Re=Y1−xSmの組成を有し、前記Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にSmを含む酸化物粒子及びZrを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させたことを特徴とするRe系酸化物超電導線材。
【請求項4】
Baのモル比は1.3<y<1.8の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項5】
磁束ピンニング点は、5〜30nmのZrを含む酸化物粒子であることを特徴とする請求項1、2及び4いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項6】
磁束ピンニング点は、Smを含む酸化物粒子及び5〜30nmのZrを含む酸化物粒子であることを特徴とする請求項3又は4記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項7】
Zrの添加量は、金属濃度で0.5〜10モル%であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項8】
Zrの添加量は、金属濃度で0.5〜5モル%であることを特徴とする請求項7記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項9】
基板上に、中間層を介して原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理を施し、次いで超電導体生成の熱処理を施すことによりReBaCu系超電導体を製造する方法において、前記原料溶液として、Re(Re=Y、Nd、Sm、Gd又はEuから選択された1種の金属元素を示す。)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む有機金属錯体溶液からなる混合溶液を用い、前記Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にZr、Ce、Sn又はTiを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることを特徴とするRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項10】
基板上に、中間層を介して原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理を施し、次いで超電導体生成の熱処理を施すことによりReBaCu系超電導体を製造する方法において、前記原料溶液として、Re(Re=A1−xの組成を有し、A及びBは、それぞれY、Nd、Sm、Gd又はEuから選択されたいずれか1種以上の異なる元素を示す。)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む有機金属錯体溶液からなる混合溶液を用い、前記Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にZr、Ce、Sn又はTiを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることを特徴とするRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項11】
基板上に、中間層を介して原料溶液を塗布した後、仮焼熱処理を施し、次いで超電導体生成の熱処理を施すことによりReBaCu系超電導体を製造する方法において、前記原料溶液として、Re(Re=Y1−xSmの組成を元素を示す。)、Ba及びCuを含む有機金属錯体溶液とBaと親和性の大きいZr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含む有機金属錯体溶液からなる混合溶液を用い、前記Baのモル比をy<2の範囲内とするとともに、前記超電導体中にSmを含む酸化物粒子及びZr、Ce、Sn又はTiを含む50nm以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させることを特徴とするRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項12】
Baのモル比は1.3<y<1.8の範囲内であることを特徴とする請求項9乃至11いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項13】
磁束ピンニング点は、5〜30nmのZrを含む酸化物粒子であることを特徴とする請求項9、10及び12いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項14】
磁束ピンニング点は、Smを含む酸化物粒子及び5〜30nmのZrを含む酸化物粒子であることを特徴とする請求項11記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項15】
Zrの添加量は、金属濃度で0.5〜10モル%であることを特徴とする請求項9乃至14いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項16】
Zrの添加量は、金属濃度で0.5〜5モル%であることを特徴とする請求項15記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項17】
Reを含む有機金属錯体溶液は、有機溶媒とReを含むトリフルオロ酢酸(TFA)塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む混合溶液からなることを特徴とする請求項9乃至16いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項18】
Baを含む有機金属錯体溶液は、有機溶媒とBaを含むトリフルオロ酢酸(TFA)塩の混合溶液からなることを特徴とする請求項9乃至17いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項19】
Cuを含む有機金属錯体溶液は、有機溶媒とCuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む混合溶液からなることを特徴とする請求項9乃至18いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項20】
Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液は、有機溶媒とZrを含むトリフルオロ酢酸(TFA)塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む混合溶液からなることを特徴とする請求項9乃至19いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項21】
Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液は、有機溶媒とCe、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸(TFA)塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む混合溶液からなることを特徴とする請求項9乃至12及び17乃至19いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項22】
仮焼熱処理は、400〜500℃の温度範囲の熱処理により施されることを特徴とする請求項9乃至21いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項23】
仮焼熱処理は、水蒸気分圧3〜76Torr、酸素分圧300〜760Torrの雰囲気中で施されることを特徴とする請求項22記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項24】
超電導体生成の熱処理は、700から800℃の温度範囲で施されることを特徴とする請求項9乃至23いずれか1項記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。
【請求項25】
超電導体生成の熱処理は、水蒸気分圧30〜100Torr、酸素分圧0.05〜1Torrの雰囲気中で施されることを特徴とする請求項24記載のRe系酸化物超電導線材の製造方法。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−164010(P2009−164010A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1443(P2008−1443)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「超電導応用基盤技術研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】