説明

Re系酸化物超電導線材及びその製造方法

【課題】基板の表面粗さに起因する超電導特性の低下を抑制し、かつ、生産効率の良い、Re系酸化物超電導線材を提供すること。
【解決手段】基板11の直上にMOD法により第1中間層12を形成し、第1中間層12の上にMOD法により酸化セリウムからなる第2中間層13を形成し、第2中間層13の直上にMOD法によりReBaCuOからなる超電導層14を形成する。これにより、第1中間層12、第2中間層13及び超電導層14を全てMOD法により作製するので、速い製造速度で、かつ、低い設備コストで、Re系酸化物超電導線材10を作製できる。第1中間層12の塗布工程時に、基板11の凹凸面11aの凹凸が溶液によって平滑化されるので、基板11の表面を電解研磨などによって平滑化しなくても済む。さらに、中間層を多層構造としているので、クラックの発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ReBaCuO(Reは、Y、Nd、Sm、Gd、Eu、Yb、Pr又はHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)の元素から構成された超電導層を有するRe系酸化物超電導線材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Re系酸化物超電導線材は、高磁場領域における通電電流の減衰が小さく、磁場特性に優れている。Re系酸化物超電導線材は、ReBCO線材又はYBCO線材と呼ばれることもある。
【0003】
Re系酸化物超電導線材の構成例及び製造方法の例としては、例えば、特許文献1−3で開示されたものがある。
【0004】
Re系酸化物超電導線材は、結晶のCu面を揃えるだけでなく、面内の結晶方位も揃えることが要求される。この要求を実現するためにRe系酸化物超電導線材においては、Ni合金からなる基板の上に、面内配向度と方位を向上させた中間層を形成し、この中間層の結晶格子をテンプレートとして用いることにより、ReBaCuO超電導層の結晶の面内配向度と方位を向上させるようになっている。
【0005】
中間層に要求されることは主に、(1)上述したように高配向性を有すること、(2)ReBaCuO超電導層との反応性が小さいこと、である。このような要求を満たす中間層の材料として、CeO(酸化セリウム)が提案されている。CeO中間層は、ReBaCuO超電導層との整合性が良く、かつReBaCuO超電導層との反応性が小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−115562号公報
【特許文献2】特開2009−164010号公報
【特許文献3】特開2009−289666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように中間層としてCeOを用いることは、Re系酸化物超電導線材にとって好適な構成である。しかしながら、CeO中間層をMOD(Metal-organic Deposition)法により作製すると、基板とCeO中間層の熱膨張係数の違い等が原因となってCeO中間層にクラックが入り、その結果、中間層としての機能を果たさなくなるおそれがある。
【0008】
CeO中間層にクラックが入ることを防止するめには、CeO中間層を、MOD法ではなく、IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法、又は、PLD(Pulsed Laser Deposition)法を用いて作製することが考えられる。
【0009】
しかしながら、IBAD法、及び、PLD法は、MOD法と比較して、製造速度が遅く、かつ、設備コストも高い欠点がある。
【0010】
また、Re系酸化物超電導線材においては、以下の課題があった。Re系酸化物超電導線材は、配向された基板を用いる、いわゆる基板配向型の超電導線材である。基板配向型超電導線材においては、高い2軸配向性を得るために、強圧延したNi合金が基板として用いられる。しかしながら、強圧延した基板は、表面が粗くなり、それが超電導特性の低下を招く。基板表面の平滑化を向上させるためには、強圧延した基板に対して、電解研磨等の平滑化処理を行う方法があるが、このような処理を行うとその分だけ生産効率が低下する。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、酸化セリウムを用いることで超電導特性を良くしつつクラックの発生を抑制でき、基板の表面粗さに起因する超電導特性の低下を容易に抑制でき、かつ、生産効率の良い、Re系酸化物超電導線材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のRe系酸化物超電導線材の一つの態様は、配向された基板上に中間層を介してReBaCuO超電導層(Reは、Y、Nd、Sm、Gd、Eu、Yb、Pr又はHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)が形成されたRe系酸化物超電導線材であって、配向されたNi合金からなる基板と、MOD法により成膜されたReBaCuO超電導層と、前記基板の直上にMOD法により成膜された第1中間層と、前記超電導層の直下にMOD法により成膜された酸化セリウムからなる第2中間層と、を具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、中間層及び超電導層を全てMOD法により形成したので、製造速度を速くでき、かつ、設備コストも低くて済む。また、基板の表面粗さがMOD法により形成された第1中間層によって平滑化(吸収)されるので、基板に対して電解研磨等の平滑化処理を行わなくても、超電導特性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るRe系酸化物超電導線材の構成例を示す図
【図2】他の実施の形態のRe系酸化物超電導線材の構成例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
[実施の形態]
図1に、実施の形態のRe系酸化物超電導線材の構成を示す。Re系酸化物超電導線材10は、基板11上に、順次、第1中間層12、第2中間層13及び超電導層14が積層されている。
【0017】
基板11は、圧延により配向された、Ni−W等のNi合金である。具体的には、基板11は、圧延加工時の圧下率や圧延パス回数、及び、次に施される熱処理時の処理温度によって、配向性が決まる。基板11の厚さは、例えば、50〜200[μm]である。ここで、基板11は圧延加工が施されるため、基板表面は凹凸面11aとなる。凹凸面11aの表面粗さRaは、10〜25[nm]程度である。
【0018】
本実施の形態の場合、第1中間層12、第2中間層13及び超電導層14は、全て、MOD法により成膜される。
【0019】
第1中間層12は、MOD法により成膜されたCeZrである。ここで第1中間層12は、MOD法により成膜されたYであってもよく、MOD法により成膜されたYSZ(イットリウム安定化ジルコニア)であってもよい。第1中間層12は、基板11からの元素拡散を抑えることができる材料が選択されている。
【0020】
第2中間層13は、MOD法により成膜されたCeOである。第2中間層13は、CeOにGdを添加した固溶体をMOD法により成膜してもよい。CeOにGdを添加すると、クラックの発生を抑制できるものの基板11からの元素拡散を抑制できなくなるといった問題が生じるが、本実施の形態では、第1中間層12で元素拡散を抑制できるので、第2中間層13としてCeOにGdを添加した材料を用いることができるようになる。
【0021】
第1中間層12及び第2中間層13は、以下のようにして作製される。
【0022】
第1中間層12は、第1中間層を構成する元素を含むオクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩又は三酢酸塩等の混合溶液を基板11上に塗布した後、熱処理を施すことにより形成される。ここで、混合溶液中の金属元素量は、0.08〜0.5[mol/l]とすることが好ましく、特に、0.1〜0.3[mol/l]であることが好ましい。この金属元素量が上記範囲未満であると1回の塗布及び熱処理で形成される酸化物膜が薄くなり、均一な中間層を形成することが困難となる。一方、金属元素量が上記範囲を超えると1回で形成される酸化物膜が厚くなり、表面平滑性を損ねるだけでなく、結晶性が低下する。
【0023】
第1中間層12の膜厚は、塗布及び熱処理工程を繰り返す回数によってコントロールされるが、表面の平滑性を考慮すると3〜10回の塗布によって所望の厚さを得ることが有効である。また、膜厚は30〜300[nm]とすることが好ましい。塗布方法は、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法等を用いればよい。
【0024】
また、第1中間層のRa値が5[nm]以下となるように、第1中間層をMOD法にて塗布する。上記範囲とすることにより、電解研磨などの平滑化処理を行った基板の上に第1中間層を成膜した際のRa値と略同等となるだけでなく、臨界電流特性も略同等となる。従って、圧延により配向された基板の表面粗さに起因する超電導特性の低下を容易に抑制でき、かつ、生産効率の良い、Re系酸化物超電導線材を得ることができる。実験結果の詳細については、後述する。尚、表面粗さ(Ra:nm)は、原子間力顕微鏡(AMF)観察により測定した。
【0025】
尚、基板11は、例えば、Niまたはこれに1種類以上の元素を添加してなるNi基合金あるいはCuまたはこれに1種類以上の元素を添加してなるCu基合金を冷間圧延して所定の厚さにし、これを熱処理することにより製造され、この場合の熱処理は900〜1300℃の温度範囲で、基板の表面酸化を防ぐために水素を含んだ不活性ガス雰囲気中で施される。この熱処理により、NiまたはNi基合金あるいはCuまたはCu基合金を高配向化させることができる。この熱処理は、連続方式でもバッチ方式のいずれをも採用することができる。
【0026】
また、上記のNi基合金あるいはCu基合金は、NiまたはCuにW、Sn、Zn、Mo、Cr、V、TaまたはTiの中から選択されたいずれか1種以上の元素を添加した合金を用いることができ、特にNiW基板が配向性の観点から好ましい。この場合の添加元素量は、1〜10at%の範囲とすることが好ましい。この添加元素量が1at%未満であると、基板強度が弱く、その後のプロセスによって劣化を起こす恐れがあり、10at%を超えると、冷間圧延及び熱処理によって2軸配向性が得られにくいだけでなく、その後のプロセスによって添加元素が中間層中に拡散し、臨界電流Ic200A以上を得ることできず、超電導特性を低下させる。
【0027】
さらに、基板11は、基板と、Niを含む耐熱性及び耐酸化性を有する合金を冷間圧延して所定の厚さにしたものと、を貼り合せた複合基板としてもよい。この耐熱性及び耐酸化性を有する金属基板としては、ハステロイ、インコネルまたはステンレスのいずれか1種より成るNi系合金を用いることが好ましい。上記の耐熱性及び耐酸化性を有する金属基板に対するNiまたはNi基合金あるいはCuまたはCu基合金の厚み方向における比率は、所望する機械強度に対応して任意に変えることができる。この貼りあわせは、温間加工を用いることもできるが冷間加工を採用することが好ましい。
【0028】
また、第1中間層12の熱膨張係数は、基板11の熱膨張係数と第2中間層13の熱膨張係数との間の範囲であることが好ましい。第1中間層の熱膨張係数を上記範囲にすることにより基板11と第2中間層13との熱膨張係数の差を緩和することができ、第2中間層13、例えば酸化セリウムのクラックを防止することができる。また、第3中間層21(図2)がある場合については、第3中間層21の熱膨張係数は、第2中間層13の熱膨張係数と第1中間層12の熱膨張係数との間の範囲であることが好ましい。第3中間層21の熱膨張係数を上記範囲にすることにより、第1中間層12と第2中間層13の熱膨張係数の差を緩和することができ、第2中間層13、例えば酸化セリウムのクラックをより防止することができる。
【0029】
第2中間層13も、第1中間層12とは用いられる元素が異なるだけで、第1中間層12と同様の工程で作製される。
【0030】
具体的には、第2中間層13の膜厚は、塗布及び熱処理工程を繰り返す回数によってコントロールされる。また、膜厚は30〜300[nm]とすることが好ましい。塗布方法は、スピンコート法、ディップコート法、インクジェット法等を用いればよい。また、第2中間層13のRa値が3[nm]以下となるように、第2中間層13をMOD法にて塗布することが好ましい。上記範囲及び上記成膜方法とすることにより、第2中間層13を成膜した際のRa値が第1中間層12よりも小さくなり、臨界電流特性も向上する。従って、圧延により配向された基板11の表面粗さに起因する超電導特性の低下をさらに抑制でき、かつ、生産効率の良い、超電導特性のより良いRe系酸化物超電導線材を得ることができる。実験結果の詳細については、後述する。
【0031】
超電導層14は、MOD法により成膜されたReBaCuO超電導層である。具体的には、超電導層14は、Re系酸化物超電導体と呼ばれるものであり、ReBaCuで表される。
【0032】
超電導層14は、以下のような原料溶液(a)〜(d)の混合溶液を用いて、MOD法により形成される。
【0033】
(a)Reを含む有機金属錯体溶液:Reを含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液。特に、Reを含むトリフルオロ酢酸塩溶液
(b)Baを含む有機金属錯体溶液:Baを含むトリフルオロ酢酸塩の溶液
(c)Cuを含む有機金属錯体溶液:Cuを含むナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
(d)Baと親和性の大きい金属を含む有機金属錯体溶液:Zr、Ce、Sn又はTiから選択された少なくとも1種以上の金属を含むトリフルオロ酢酸塩、ナフテン酸塩、オクチル酸塩、レブリン酸塩、ネオデカン酸塩のいずれか1種以上を含む溶液
【0034】
超電導層14は、上記原料溶液(a)〜(d)の混合溶液を第2中間層13上に塗布した後、例えば、水蒸気分圧3〜76Torr、酸素分圧300〜760Torrの雰囲気中で400〜500℃の温度範囲で仮焼した後、例えば、水蒸気分圧30〜100Torr、酸素分圧0.05〜1Torrの雰囲気中で700から800℃の温度範囲で本焼することで形成される。
【0035】
以上の構成によれば、以下のような顕著な効果を得ることができる。
【0036】
(1)第1中間層12、第2中間層13及び超電導層14を全てMOD法により作製したことにより、速い製造速度で、かつ、低い設備コストで、Re系酸化物超電導線材10を作製できるようになる。
【0037】
(2)基板11の直上の第1中間層12をMOD法により形成するので、第1中間層12の塗布工程時に、基板11の凹凸面11aの凹凸が溶液によって平滑化される。よって、基板11の表面を電解研磨などによって平滑化しなくても済む。因みに、IBAD法、又は、PLD法によって第1中間層を形成した場合には、略一様な厚さの層が形成されるので、凹凸面11aと同様の面が表面にも現れてしまい、平滑化の効果があまり得られない。
【0038】
(3)超電導層14の直下には第2中間層13として超電導層14との整合性が非常に良い酸化セリウムが配置され、かつ、中間層は第1中間層12及び第2中間層13を含む多層構造とされているので、酸化セリウムにより超電導特性が良くされ、かつ、多層構造によりクラックの発生が抑制される。つまり、従来、酸化セリウム中間層をMOD法により作製しようとしたときに生じるクラックの発生を多層構造により抑制できる。特に、第1中間層12の材料として、酸化セリウムとの熱膨張係数の差が小さい材料を選択すれば、酸化セリウムのクラックの発生確率を下げることができる。因みに、超電導層14の直下には、超電導層14との整合性が非常に良い酸化セリウムが配置されるので、第1中間層12の材料や構造は比較的広範囲なものから選択できる。
【0039】
(4)第1中間層12の熱膨張係数を、基板11の熱膨張係数と第2中間層13の熱膨張係数の間の範囲に選定すれば、第1中間層12及び第2中間層13でのクラックの発生をより抑制できるようになる。
【0040】
[他の実施の形態]
なお、上述の実施の形態では、主に、中間層を第1中間層12及び第2中間層13から構成された2層構造とした場合について述べたが、第1中間層12と第2中間層13との間にMOD法により別の中間層を形成してもよい。
【0041】
例えば、図2に示すように、第1中間層12としてMOD法によりCeGdOを形成し、第2中間層13としてMOD法によりCeOを形成し、第1中間層12と第2中間層13との間に第3中間層21としてMOD法によりCeZrOを形成することで、Re系酸化物超電導線材20を構成してもよい。また例えば、第1中間層12としてMOD法によりYを形成し、第2中間層13としてMOD法によりCeOを形成し、第1中間層12と第2中間層13との間に第3中間層21としてMOD法によりCeZrOを形成することで、Re系酸化物超電導線材20を構成してもよい。
【0042】
また、超電導層14は、Zrを含む50[nm]以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させた有機金属錯体溶液を塗布後に、焼成して作製してもよい。このようにすることで、磁場印加角度依存性に優れたRe系酸化物超電導線材を得ることができる。ここで、磁束ピンニング点については、特許文献2にも記載された公知の技術なので、ここでの説明は省略する。
【0043】
[実験結果]
表1に、実験結果を示す。
【表1】

【0044】
表1は、本発明のRe系酸化物超電導線材によって、基板の凹凸がどの程度吸収され、臨界電流特性がどの程度向上するかを調べた実験結果である。なお、表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AMF)観察により測定した。
【0045】
実施例1のRe系酸化物超電導線材は、超電導層がYBCOであり、第1中間層がMOD法により形成されたCeZrOであり、第2中間層がMOD法により形成されたCeOであり、基板が電解研磨されていないNiWである。実施例2のRe系酸化物超電導線材は、超電導層がYBCOにZrOを混入させたものであり、第1中間層がMOD法により形成されたCeGdOであり、第2中間層がMOD法により形成されたCeOであり、第3中間層がMOD法により形成されたCeZrOであり、基板が電解研磨されていないNiWである。実施例3のRe系酸化物超電導線材は、超電導層がYBCOであり、第1中間層がMOD法により形成されたCeZrOであり、第2中間層がMOD法により形成されたCeOであり、基板が電解研磨されていないNiWである。
【0046】
一方、比較例1のRe系酸化物超電導線材は、超電導層がYBCOであり、第1中間層がIBAD法により形成されたCeZrOであり、第2中間層がMOD法により形成されたCeOであり、基板が電解研磨されていないNiWである。参考例1のRe系酸化物超電導線材は、超電導層がYBCOであり、第1中間層がCeZrOであり、第2中間層がMOD法により形成されたCeOであり、基板が電解研磨されたNiWである。
【0047】
表1の実験結果から、実施例1、2及び3のRe系酸化物超電導線材は、比較例1のRe系酸化物超電導線材と比較して、基板の凹凸が第1中間層の凹凸又は第2中間層の凹凸として現れにくい、つまり、基板の凹凸が中間層によって吸収されて中間層の表面の凹凸が小さくなる、ことが分かった。また、実施例1、2及び3のRe系酸化物超電導線材は、比較例1のRe系酸化物超電導線材と比較して、臨界電流Icが大きく、臨界電流特性が向上していることが分かった。特に、MOD法によって形成された第2中間層に加えて、MOD法によって形成された第3中間層を備えた、実施例2のRe系酸化物超電導線材は、参考例1のように基板を電解研磨した場合よりも、第2中間層の凹凸を小さくでき、臨界電流特性も向上させることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明にかかるRe系酸化物超電導線材は、超電導マグネット、超電導ケーブル及び電力機器等に有用である。
【符号の説明】
【0049】
10、20 Re系酸化物超電導線材
11 基板(Ni合金)
12 第1中間層
13 第2中間層(酸化セリウム)
14 超電導層(ReBaCuO超電導層)
21 第3中間層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向基板上に中間層を介してReBaCuO超電導層(Reは、Y、Nd、Sm、Gd、Eu、Yb、Pr又はHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)が形成されたRe系酸化物超電導線材であって、
配向Ni合金からなる基板と、
MOD法により成膜されたReBaCuO超電導層と、
前記基板の直上にMOD法により成膜された第1中間層と、
前記超電導層の直下にMOD法により成膜された、酸化セリウムからなる第2中間層と、
を具備するRe系酸化物超電導線材。
【請求項2】
前記第1中間層の熱膨張係数は、前記基板の熱膨張係数と前記第2中間層の熱膨張係数との間の範囲である、
請求項1に記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項3】
前記第1中間層は、CeZrからなる、
請求項1又は請求項2に記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項4】
前記第1中間層のRa値は5[nm]以下であり、かつ前記第2中間層のRa値は3[nm]以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項5】
前記第1及び第2の中間層は、この中間層を構成する元素を含むオクチル酸塩、ナフテン酸塩、ネオデカン酸塩又は三酢酸塩の混合液を塗布後に、焼成されて作製される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項6】
前記ReBaCuOからなる超電導層は、Zrを含む50[nm]以下の酸化物粒子を磁束ピンニング点として分散させた有機金属錯体溶液を塗布後に、焼成されて作製される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のRe系酸化物超電導線材。
【請求項7】
配向基板上に中間層を介してReBaCuO超電導層(Reは、Y、Nd、Sm、Gd、Eu、Yb、Pr又はHoから選択された少なくとも1種以上の元素を示す)が形成されたRe系酸化物超電導線材の製造方法であって、
配向されたNi合金からなる基板を作製するステップと、
前記基板の直上にMOD法により第1中間を成膜するステップと、
前記ReBaCuO超電導層の直下にMOD法により酸化セリウムからなる第2中間層を成膜するステップと、
前記第2中間層の直上にMOD法により前記ReBaCuO超電導層を成膜するステップと、
を含むRe系酸化物超電導線材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−38653(P2012−38653A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179504(P2010−179504)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】