説明

SAWフィルタ

【課題】 通過帯域外の減衰量を大きくしたSAWフィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】 圧電基板1上に三電極縦モード型SAWフィルタ素子4と、ラダー型フィルタ素子6を形成し、パッケージ9内に収納し、この三電極縦モード型SAWフィルタ素子4とラダー型SAWフィルタ素子6は縦続接続されており、三電極縦モード型SAWフィルタ素子4とラダー型SAWフィルタ素子6のアース端子14a,14b,14c,14dをパッケージ9のアース端子13a,13b,13c,13dとそれぞれ電気的に接続するとともに、アース端子13a,13b,13c,13dをパッケージ9内の一ヵ所において電気的に接続した構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は例えば、無線通信機器における高周波回路などに使用されるSAWフィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】低挿入損失で広い通過帯域を有し、帯域外減衰量の大きなSAWフィルタとしては、特開平7−212183号公報に示されるようにラダー型SAWフィルタ素子と三電極縦モード型SAWフィルタ素子とを接続したものがある。
【0003】図7は従来のSAWフィルタの一例を示す上面図である。
【0004】圧電基板100上において、図中点線で囲まれた三電極縦モード型SAWフィルタ素子101と、ラダー型SAWフィルタ素子102とが縦続接続されている。また、パッケージ103の入、出力端子104a,104bと、各SAWフィルタ101,102の入、出力端子105a,105bとはワイヤ106で接続されている。また、パッケージ103のアース端子107a,107b,107c,107dは、各SAWフィルタ素子101,102のアース端子108a,108b,108c,108dとワイヤ106でそれぞれ接続されている。図8にこのSAWフィルタの特性曲線図を示す。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】この構成のSAWフィルタは、アース端子108a,108b,108c,108dを別々に外部のアースへ接続していたので、通過帯域外の減衰量が小さくなるという問題点を有していた。
【0006】そこで本発明は通過帯域外の減衰量を大きくしたSAWフィルタを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明のSAWフィルタは、複数のアース電極を有するパッケージと、このパッケージ内に収納した三電極縦モード型SAWフィルタ素子と、前記パッケージ内に収納すると共に前記三電極縦モードSAWフィルタ素子に縦続接続されたラダー型SAWフィルタ素子とを備え、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子は圧電基板上に形成された一対の反射器とこの反射器のSAWの伝搬方向に沿って形成した三個のインターデジタルトランスデューサ(以下IDTと称す)とこのIDTに接続した入、出力端子とアース端子とを有するものであり、前記ラダー型SAWフィルタ素子は、圧電基板上に入、出力端子を形成しこの入、出力端子間に直列に接続した少なくとも一つの直列腕SAW共振器と前記入、出力端子間に並列に接続すると共にアース端子に接続した少なくとも一つの並列腕SAW共振器とを有するものであり、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子と前記ラダー型SAWフィルタ素子のアース電極と前記パッケージのアース電極とをそれぞれ電気的に接続するとともに、前記パッケージの複数のアース電極はパッケージ内において電気的に接続された構成としたものであり、通過帯域外の減衰量を大きくすることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、複数のアース電極を有するパッケージと、このパッケージ内に収納した三電極縦モード型SAWフィルタ素子と、前記パッケージ内に収納すると共に前記三電極縦モードSAWフィルタ素子に縦続接続されたラダー型SAWフィルタ素子とを備え、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子は圧電基板上に形成された一対の反射器とこの反射器のSAWの伝搬方向に沿って形成した三個のIDTとこのIDTに接続した入、出力端子とアース端子とを有するものであり、前記ラダー型SAWフィルタ素子は圧電基板上に入、出力端子を形成しこの入、出力端子間に直列に接続した少なくとも一つの直列腕SAW共振器と前記入、出力端子間に並列に接続すると共にアース端子に接続した少なくとも一つの並列腕SAW共振器とを有するものであり、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子と前記ラダー型SAWフィルタ素子のアース電極と前記パッケージのアース電極とをそれぞれ電気的に接続するとともに、前記パッケージの複数のアース電極はパッケージ内において電気的に接続された構成のSAWフィルタであり、通過帯域の挿入損失はほとんど変えず、かつ通過帯域外の減衰量をさらに大きくすることができ、良好なフィルタ特性が得られる。
【0009】請求項2に記載の発明は、ラダー型SAWフィルタ素子の並列腕SAW共振器と前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子の中央のIDTとを接続した請求項1に記載のSAWフィルタであり、帯域外から通過帯域内への立ち上がり特性が良くなり、良好なフィルタ特性が得られる。
【0010】請求項3に記載の発明は、ラダー型SAWフィルタ素子の並列腕SAW共振器と前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子の両側のIDTとを接続したすると共に、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子の中央のIDTがバランス型の入、出力端子に接続された請求項1に記載のSAWフィルタであり、バランス−アンバランスの変換機能を持たせたSAWフィルタを構成することができる。
【0011】請求項4に記載の発明は、ラダー型SAWフィルタ素子と三電極縦モード型SAWフィルタ素子の接続側から見た前記ラダー型SAWフィルタ素子と前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子のそれぞれの位相をほぼ等しくした請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のSAWフィルタであり、二種類のSAWフィルタ素子を接続したとき通過帯域内のインピーダンス特性を容易に合わせることができるものである。
【0012】以下本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】(実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1におけるSAWフィルタの上面図である。
【0014】圧電基板1上に一対の反射器2を設け、この反射器2の間の弾性表面波が伝搬する方向に形成した三個のIDT3a,3b,3c(点線で各IDTを囲んでいる)とを備えた三電極縦モード型SAWフィルタ素子4(点線で囲んだ部分)を形成する。また、圧電基板1上に直列腕SAW共振器5aと並列腕SAW共振器5bとからなるラダー型SAWフィルタ素子6(点線で囲んだ部分)を形成する。
【0015】この直列腕SAW共振器5a、並列腕SAW共振器5bは、それぞれ反射器7間にIDT8を形成したものである。
【0016】この、三電極縦モード型SAWフィルタ素子4の中央のIDT3bと、ラダー型SAWフィルタ素子6の直列腕SAW共振器5aとを圧電基板1上で縦続接続している。
【0017】また、パッケージ9の入力端子10a、出力端子10bとは、圧電基板1上に形成した本実施の形態のSAWフィルタの入力端子11a、出力端子11bとワイヤ12で接続されている。
【0018】また、パッケージ9のアース端子13a,13b,13c,13dは、パッケージ9の内部で電気的に接続されており、各SAWフィルタ素子4,6のアース端子14a,14b,14c,14dとワイヤ12で接続されている。
【0019】図2は図1で示したSAWフィルタの特性曲線図である。本実施の形態では、従来例に比較して帯域外の減衰量が良くなっていることがわかる。
【0020】(実施の形態2)図3は実施の形態2におけるSAWフィルタの上面図である。圧電基板1上に実施の形態1と同様の三電極縦モード型SAWフィルタ素子4と、ラダー型SAWフィルタ素子6が形成されている。
【0021】また、三電極縦モード型SAWフィルタ素子4の中央のIDT3bに、ラダー型SAWフィルタ素子6の直列腕共振器5a及び並列腕共振器5bとが並列に圧電基板1上で接続されている。
【0022】また、パッケージ9の入力端子10a、出力端子10bは、各SAWフィルタ素子4,6の入力端子11a、出力端子11bとワイヤ12でそれぞれ接続されている。
【0023】さらに、パッケージ9のアース端子13a,13b,13c,13dは、パッケージ9の内部で電気的に接続されているとともに、各SAWフィルタ素子4,6のアース端子14a,14b,14c,14dとワイヤ12でそれぞれ接続されている。
【0024】図4は実施の形態2(図3)に示す構成のSAWフィルタと実施の形態1(図1)に示す構成のSAWフィルタの通過帯域内特性を示したものである。図4R>4中、実施の形態1のSAWフィルタの通過帯域内の特性を実線で、実施の形態2のSAWフィルタの特性を点線で示している。本実施の形態2のSAWフィルタは実施の形態1のSAWフィルタと比較すると、通過帯域外から通過帯域内への立ち上がり特性がさらに向上していることが分かる。
【0025】また、図5(a)は、実施の形態2(図3R>3)に示す構成のSAWフィルタの三電極縦モード型SAWフィルタ素子4とラダー型SAWフィルタ素子6を接続した側から見たラダー型SAWフィルタ素子6の通過帯域近傍のインピーダンス特性図、図5(b)は、同ラダー型SAWフィルタ素子6の通過帯域近傍のインピーダンス特性図である。どちらもスミス図上で短絡点より始まり誘導性領域を通過して50Ω付近へと向かい、50Ω付近で極を作り、さらに50Ω付近より容量性領域を通過して、再び短絡点へと戻っている。
【0026】このように二つのSAWフィルタ素子4,6の位相をほぼ等しくすることにより、50Ω付近で合わせられる周波数帯域が広くなり、結果的に通過帯域を広くとることができる。すなわち二つのSAWフィルタ素子4,6のインピーダンス整合性が良くなるのである。
【0027】(実施の形態3)図6は実施の形態3におけるSAWフィルタの上面図である。圧電基板1上に三電極縦モード型SAWフィルタ素子4と、ラダー型SAWフィルタ素子6が形成され、三電極縦モード型SAWフィルタ素子4の両側のIDT3a,3cに、ラダー型SAWフィルタ素子6の直列腕共振器5a及び並列腕共振器5bとが並列に接続されている。また、パッケージ9の入力端子10a,10c、出力端子10bは、各SAWフィルタ素子4,6の入力端子11a,11c、出力端子11bとワイヤ12でそれぞれ接続されている。さらに、パッケージ9のアース端子13d,13eはパッケージ9の内部で電気的に接続されているとともに、各SAWフィルタ素子4,6のアース端子14d,14eとワイヤ12でそれぞれ接続されている。
【0028】本実施の形態3のSAWフィルタは、実施の形態1のSAWフィルタと比較して優れているところは、三電極縦モード型SAWフィルタ素子4において入力端子11a,11cを二つ設けて中央のIDT3aとそれぞれ接続することにより、バランス−アンバランスの変換機能を有することである。
【0029】なお、上記実施の形態1〜3においては、三電極縦モード側SAWフィルタ素子4を入力側、ラダー型フィルタ素子6を出力側としたが、三電極縦モード側SAWフィルタ素子4を出力側、ラダー型フィルタ素子6を入力側としても同様の効果が得られるものである。
【0030】また、各SAWフィルタ素子4,6のアース端子14a,14b,14c,14dをそれぞれパッケージ9のアース端子13a,13b,13c,13dと接続した後、アース端子13a,13b,13c,13dをパッケージ9の内部の一ヵ所で電気的に接続することにより、各SAWフィルタ素子4,6のアース端子14a,14b,14c,14dをパッケージ9に設けた一つのアース端子に直接接続するよりも帯域外減衰量をより大きくすることができる。
【0031】
【発明の効果】以上本発明によると、通過帯域内の挿入損失を損なうことなく、帯域外の減衰量の大きなSAWフィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1におけるSAWフィルタの上面図
【図2】図1に示すSAWフィルタの特性曲線図
【図3】本発明の実施の形態2におけるSAWフィルタの上面図
【図4】図1及び図3に示すSAWフィルタの特性曲線図
【図5】(a)図3に示すラダー型SAWフィルタ素子のインピーダンス特性曲線図
(b)図3に示す三電極縦モード型SAWフィルタ素子のインピーダンス特性曲線図
【図6】本発明の実施の形態3におけるSAWフィルタの上面図
【図7】従来のSAWフィルタの上面図
【図8】図7のSAWフィルタの特性曲線図
【符号の説明】
1 圧電基板
2 反射器
3a IDT
3b IDT
3c IDT
4 三電極縦モード型SAWフィルタ素子
5a 直列腕SAW共振器
5b 並列腕SAW共振器
6 ラダー型SAWフィルタ素子
7 反射器
8 IDT
9 パッケージ
10a 入力端子
10b 出力端子
10c 入力端子
11a 入力端子
11b 出力端子
11c 入力端子
12 ワイヤ
13a アース端子
13b アース端子
13c アース端子
13d アース端子
13e アース端子
14a アース端子
14b アース端子
14c アース端子
14d アース端子
14e アース端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数のアース電極を有するパッケージと、このパッケージ内に収納した三電極縦モード型SAWフィルタ素子と、前記パッケージ内に収納すると共に前記三電極縦モードSAWフィルタ素子に縦続接続されたラダー型SAWフィルタ素子とを備え、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子は圧電基板上に形成された一対の反射器とこの反射器のSAWの伝搬方向に沿って形成した三個のインターデジタルトランスデューサとこのインターデジタルトランスデューサに接続した入、出力端子とアース端子とを有するものであり、前記ラダー型SAWフィルタ素子は圧電基板上に入、出力端子を形成しこの入、出力端子間に直列に接続した少なくとも一つの直列腕SAW共振器と前記入、出力端子間に並列に接続すると共にアース端子に接続した少なくとも一つの並列腕SAW共振器とを有するものであり、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子と前記ラダー型SAWフィルタ素子のアース電極と前記パッケージのアース電極とをそれぞれ電気的に接続するとともに、前記パッケージの複数のアース電極はパッケージ内において電気的に接続された構成としたSAWフィルタ。
【請求項2】 ラダー型SAWフィルタ素子の並列腕SAW共振器と前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子の中央のインターデジタルトランスデューサとを接続した請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項3】 ラダー型SAWフィルタ素子の並列腕SAW共振器と前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子の両側のインターデジタルトランスデューサとを接続すると共に、前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子の中央のインターデジタルトランスデューサがバランス型の入、出力端子に接続された請求項1に記載のSAWフィルタ。
【請求項4】 ラダー型SAWフィルタ素子と三電極縦モード型SAWフィルタ素子の接続側から見た前記ラダー型SAWフィルタ素子と前記三電極縦モード型SAWフィルタ素子のそれぞれの位相をほぼ等しくした請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のSAWフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−332563(P2000−332563A)
【公開日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−138194
【出願日】平成11年5月19日(1999.5.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】