SiC半導体デバイス及びその製造方法
【課題】SiC半導体デバイスにおいて、裏面電極の剥離を十分に抑制することができる製造方法と、裏面電極の剥離が防止された新規な裏面電極構造を有するSiC半導体デバイスを提供する。
【解決手段】SiC半導体上へチタン及びニッケルを含む層を形成して、加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させ、析出した炭素層を逆スパッタにより除去することにより、後工程でニッケルシリサイド上に形成される金属層の電極が剥離することを抑制する。炭素層を除去する前のニッケルシリサイド表面の、析出した炭素の量とチタンカーバイドの炭素量の関係が、所定の条件のときに、さらに剥離防止の効果を向上させることができる。
【解決手段】SiC半導体上へチタン及びニッケルを含む層を形成して、加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させ、析出した炭素層を逆スパッタにより除去することにより、後工程でニッケルシリサイド上に形成される金属層の電極が剥離することを抑制する。炭素層を除去する前のニッケルシリサイド表面の、析出した炭素の量とチタンカーバイドの炭素量の関係が、所定の条件のときに、さらに剥離防止の効果を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の剥離を防止したSiC半導体デバイス及びSiC半導体デバイスの製造方法に関する。例えば縦型構造のショットキーバリアダイオードなどの裏面電極構造において裏面電極の剥離を十分抑制することができる半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からパワーデバイスとして用いられている半導体デバイスは、半導体材料としてシリコンを用いたものが主流であるが、ワイドギャップ半導体であるSiCは、シリコンに比較して熱伝導度が3倍、最大電界強度が10倍、電子のドリフト速度2倍という物性値を有していることから、絶縁破壊電圧が高く低損失で高温動作可能なパワーデバイスとして、近年その応用が研究されている。
【0003】
パワーデバイスの構造は、裏面側に低抵抗なオーミック電極を備えた裏面電極を有する縦型の半導体デバイスが主流である。裏面電極には様々な材料および構造が用いられているが、その中の1つとして、チタン層とニッケル層と銀層との積層体(特許文献1参照)や、チタン層とニッケル層と金層との積層体(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
ショットキーバリアダイオードに代表されるSiCを用いた縦型半導体デバイスにおいては、SiC基板上にニッケル層を製膜後、加熱によりニッケルシリサイド層を形成して、SiC基板とニッケルシリサイド層との間にオーミックコンタクトを形成する手法が用いられている(たとえば特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、該ニッケルシリサイド層の上に裏面電極を形成した際に、裏面電極がニッケルシリサイド層から剥がれやすいという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献3においては、ニッケルシリサイド層の形成時にニッケルシリサイド層の表面に残るニッケル層を除去した後に、チタン層、ニッケル層および銀層をこの順に積層してなるカソード電極を形成した構成の裏面電極とすることが提案されている。カソード電極のニッケルシリサイド層と接する部分はNi以外の金属からなるようにすることで、剥がれ不良を抑制することが提案されている。また、ニッケルシリサイド等とカソード電極との間にCが析出した層が形成されていても、Ni層と共にCが析出した層を除去することができて、剥離を防止できることが示されている。
【0006】
また、特許文献4においては、ニッケルシリサイド層の表面に形成された炭化物を除去することで、裏面電極の密着性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−184571号公報
【特許文献2】特開2010−86999号公報
【特許文献3】特開2008−53291号公報
【特許文献4】特開2003−243323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の特許文献3や特許文献4において、不良が抑制できるとされている構成の裏面電極においても、ニッケルシリサイド層とカソード電極層のチタン層との密着性が低いという問題がある。例えば、半導体デバイスのダイシング時に裏面電極がニッケルシリサイド層から剥がれてしまうという問題がある。
【0009】
たとえば、特許文献3に記されたSiC半導体デバイス用裏面電極の製造方法では、SiC基板上にニッケル層を形成し、引き続いて行う加熱によりニッケルシリサイド層を形成し、SiCとニッケルシリサイド層の間にオーミックコンタクトを形成している。
【0010】
特許文献1の記載によれば、ニッケルシリサイドは、以下の反応式で示される固相反応により生成する。
Ni + 2SiC → NiSi2 + 2C
【0011】
上記の反応式で生成した炭素(C)は、不安定な過飽和状態あるいは微析出体として、ニッケルシリサイド層の内部全体に分散して存在するが、シリサイド形成後に加熱処理を行うとこれが一気に排出され、シリサイド層の表面や内部に、グラファイトとみられる析出物として層状に凝集(析出)する。析出物は、脆く、付着性の乏しい材料であるので、わずかな応力が作用すると容易に破断し、シリサイド層上に形成した裏面電極金属層の剥離が発生する。
【0012】
以上のように、SiC半導体デバイスを製造する工程においては、SiC基板にオーミック電極の形成のためにNiを蒸着させた後に、加熱処理によりSiC基板と電極のNiが反応し、ニッケルシリサイドが形成される。さらに、半導体デバイスのショットキー電極形成過程等において、種々の加熱処理が行われるため、SiC基板の炭素は拡散されてニッケルシリサイド中やニッケルシリサイド表面に析出してくるという問題がある。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、裏面電極の剥離を十分に抑制することができる半導体デバイスの製造方法と、裏面電極の剥離が防止された新規な裏面電極構造を有するSiC半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、SiC半導体上への電極形成において、従来のNi層を形成する方法に換えて、チタン及びニッケルを含む層を形成して、加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させることを行った。SiC半導体上に、チタン及びニッケルを含む層を、例えば、ニッケル層、チタン層の順で積層した後、加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させることができ、チタンカーバイドが生成されることにより、炭素の析出を防ぐことができる。
【0015】
さらに、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層上に析出する炭素層を逆スパッタにより除去することにより、後工程でニッケルシリサイド上に形成される金属層が剥離することを抑制することができる。
【0016】
本発明では、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成後に行う様々な処理工程(ショットキー電極の形成など)を経ることで表面に析出する炭素層を、裏面電極金属膜の形成前に、除去することにより、裏面電極の剥離を防止することができる。
【0017】
炭素層を除去する前のニッケルシリサイド表面の、析出した炭素の量とチタンカーバイドの炭素量の関係が、所定の条件のときに、さらに剥離防止の効果を向上させることができる。
【0018】
本発明では、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層の上に形成する金属層として、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層側にこれと接してチタン層を配置した。チタン層の上にニッケル層、金層の順で積層して、裏面電極を形成した。ニッケルシリサイド層をオーミック電極、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層された金属層を裏面電極と呼び、オーミック電極と裏面電極とからなる構造を裏面電極構造と呼ぶ。一方、SiC基板の裏面電極構造とは反対の面に、SiC基板に接してショットキー電極と該ショットキー電極上に金属層からなる表面電極を形成して設ける。ショットキー電極と表面電極とからなる構造を表面電極構造と呼ぶ。
【0019】
ニッケルおよびチタンを含む層を加熱して生成したチタンカーバイド層を含む層は、ニッケルシリサイド層との密着性、及び裏面電極で使用するチタン層との密着性に優れている。
【0020】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有する。
【0021】
本発明は、SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって、前記SiC半導体に、ニッケル及びチタンを含む層を形成した後、加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し、ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を逆スパッタにより取り除き、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層することにより金属層を形成することを特徴とする。
【0022】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上の割合であることが好ましい。ここで、最表面とは、オージェ電子分析(オージェ電子分光分析(AES、Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光分析(XPS、Xray Photoelectron Spectroscopy)等により表面を分析した際の、分析対象となる表面深さまでの部分をさす。最表面は深さ数nmである。具体的には深さ2〜3nmである。他の表面分析手法、例えばEPMAの場合は深さ数μmまでを平均化した情報が得られるが、本願ではそれらとの違いを明確にするために、「最表面」、または「極表面」と表現する。「最表面の全炭素原子数」には、表面に析出した炭素層の炭素原子数と、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数と、最表面におけるニッケルシリサイド層中に残存する未反応の炭素原子数が含まれる。最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上の割合であることが好ましい。12%以上であると電極の金属層と剥離をすることがなく、剥離抑制の効果が顕著である。上限は適宜選択できるが、30%で剥離防止の効果があることを確認している。また20%で剥離防止の効果が十分ある。よって、該割合は、12%以上30%以下、好ましくは12%以上20%以下である。
【0023】
本発明において、前記ニッケル及びチタンを含む層は、SiC半導体の表面に、ニッケル層、チタン層の順で積層して形成することが好ましい。
【0024】
前記ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、前記ニッケルシリサイド層表面に炭素原子が数原子層あるいは局所的に析出したものである。炭素原子は、1層以上9層以下、好ましくは1層以上3層以下析出したものであり、また、ニッケルシリサイド層表面に局所的に析出する場合が多い。局所的に析出し、島状に析出する。例えば、1μm2以下の面積を有する島状またはドメイン構造で表面に析出する。
【0025】
本発明の半導体デバイスは、電極構造の具体的構造として、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層のオーミック電極と前記金属層の裏面電極とからなる裏面電極構造を有し、表面電極構造としてショットキー電極と表面電極を有する。
【0026】
本発明における逆スパッタは、アルゴン逆スパッタを用いることが好ましい。その際、アルゴンガスの圧力の好ましい値は、0.1Pa以上で1Pa以下であり、RFパワーが100W以上で600W以下である。圧力の上限/下限値、またパワーの下限値を超えると逆スパッタの安定的な放電が難しくなる。また,パワーの上限値を超えると、デバイスへのダメージが大きくなる。
【0027】
本発明の半導体デバイスは、本発明の半導体デバイスの製造方法により製造されたことを特徴とする。また、本発明の半導体デバイスは、SiC半導体上に、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層、チタン層、ニッケル層、金層の順に積層された電極構造を備えることを特徴とする。また、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層は、前記SiC半導体に近い方から、ニッケルシリサイド層、チタンカーバイド層の順に積層されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法によれば、電極の剥離を十分に抑制することができる。電極の剥離が抑制されることにより、ダイシング時の剥離が抑制されるため、歩留まりが向上し、生産効率が高まる。本発明の製造方法では、前記SiC半導体に、ニッケル及びチタンを含む層を形成した後、加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し、ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を逆スパッタにより取り除いているので、後で形成される金属層の電極との剥離を抑制でき、ダイシング時の剥離の歩留まりを向上させることができる。また、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層することにより、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層と、チタン層との密着性が高まるために、より剥離を防止することができる。
【0029】
本発明では、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上となるようにすると、電極の金属層との剥離が全く生じることがない顕著な効果がある。
【0030】
本発明の電極構造により、電極の剥離が抑制され、本発明のSiC半導体デバイスをショットキーバリアダイオードに適用した場合、1000V以上の高耐圧ショットキーバリアダイオードのリークを抑えつつオン抵抗を下げることができる。その結果、チップ面積を小さくし製品単価を下げることができる。また、定格の大きいダイオードの製造が可能となり、大電流を必要とする産業用電動機や新幹線電車などのインバータへの適用が可能になり、装置の高効率・小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造におけるSiC基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、ガードリングを形成する工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、絶縁層およびニッケルシリサイド層を形成する工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、コンタクトホールを形成する工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、ショットキー電極を形成する工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、表面電極を形成する工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、ニッケルシリサイド上に形成された炭素層を除去する工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、裏面電極を形成する工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの一例を示す図である。
【図10】本発明のTiC由来の炭素原子濃度が12%以上で裏面電極が剥離しないことを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について、以下説明する。
【0033】
本発明に係るSiC半導体デバイスの好ましい実施の形態として、ショットキーバリアダイオードについて、図1〜8を参照して説明する。図1〜8は、ショットキーバリアダイオードの製造方法を説明するための図であり、製造工程のショットキーバリアダイオードの断面を模式的に表している。図8は、製造されたショットキーバリアダイオードの構造を表している。SiC半導体を用いたショットキーバリアダイオードは、SiC基板1、ガードリング2、絶縁層3、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層4、炭素層5、ショットキー電極6、表面電極7、裏面電極8を備えている。
【0034】
図1は、SiC基板を示す断面図である。SiC基板1は、SiCからなるウェーハ層とSiCからなるエピタキシャル層で構成される。
【0035】
図2は、ガードリングを形成する工程を示す図である。エピタキシャル層の一部にイオン注入を施すことにより、ガードリング2を形成する。
【0036】
図3は、絶縁層およびニッケルシリサイド層を形成する工程を示す断面図である。ガードリング2の上にSiO2からなる絶縁層3を形成した後、SiC基板1の裏面にニッケルおよびチタンを含む層を製膜し、引き続いて行う加熱によりチタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層を形成する。ニッケルおよびチタンを含む層は、ニッケル層、チタン層の順で、SiC基板に形成することが好ましい。ニッケルとチタンの割合は、ニッケルとチタンを積層で形成する場合は、それぞれの膜厚の比を1対1から10対1、好ましくは3対1から6対1とすることで実施できる。その際、ニッケルの膜厚は20〜100nm、チタンの膜厚は10〜50nmであることが好ましい。又、ニッケル中にチタンが含まれるように合金として形成してもよい。ニッケルとチタンの割合は、1対1から10対1、好ましくは3対1から6対1とすることで実施できる。
【0037】
ニッケル層とチタン層の形成方法は、蒸着、スパッタ等の薄膜の形成方法を用いることができる。薄膜形成後、アルゴン雰囲気中1000〜1200℃で加熱して、ニッケルシリサイド層を得る。
【0038】
形成されたチタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層は、厚さ10〜100nm、好ましくは20〜30nmである。
【0039】
チタンカーバイドは、裏面電極を構成する積層体のうちのチタンと良好な密着性を示すため、裏面電極剥離を抑制する機能を有する。また、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層において、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面に析出した全炭素原子数の12%以上であると、電極との剥離が生じないのでより好ましい。なお、12%未満であっても、剥離を抑制でき歩留まりを向上させる効果がある。
【0040】
図4は、コンタクトホールを形成する工程を示す断面図である。図4に示すように、絶縁層3の一部をエッチングにより取り除き、コンタクトホールを形成する。
【0041】
図5は、ショットキー電極を形成する工程を示す断面図である。エッチングにより露出したSiC半導体部分に、ショットキー電極として、たとえばチタンを製膜後、引き続いて行う加熱によりショットキーコンタクトが形成される。加熱温度は400〜600℃程度である。加熱雰囲気はアルゴンまたはヘリウムである。この時、ニッケルシリサイド層の内部に含まれる炭素の一部が、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層の表面に析出し、図5に示すように炭素層5が形成される。炭素層5は、数原子層であり、局所的に析出する。
【0042】
図6は、表面電極7を形成する工程を示す断面図である。図6に示すように、ショットキー電極6を、たとえばアルミニウムで覆い表面電極7とする。
【0043】
図7は、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層4上に形成された炭素層5を除去した工程を示す断面図である。図7に示すように、逆スパッタを施してニッケルシリサイド層4の表面に形成された炭素層5を取り除く。逆スパッタは、アルゴン圧力0.1Pa以上、1Pa以下、およびRFパワーが100W以上、300W以下で行うことが好ましい。
【0044】
図8は、金属層の積層体を形成して裏面電極8とする工程を示す断面図である。炭素層を取り除いた、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層4上に、チタン、ニッケル、金の順で積層した積層体からなる裏面電極8を形成する。
【0045】
全ての製膜操作が完了した基板をダイシングして、SiCショットキーバリアダイオードのチップを得ることができる。
【0046】
ショットキーバリアダイオードについて以上説明したが、本発明に係るSiC半導体デバイスは、ショットキーバリアダイオードに限定されず、MOSFETなど、SiCを用いた種々の半導体デバイスにおいても同様である。
【0047】
(実施例1)
本発明の実施例について、図1〜9を参照して以下説明する。図9は、本実施例で製造するフィールドリミッティングリング(FLR)構造を持つショットキーバリアダイオード(SBD)を説明する図である。エピタキシャル層(低濃度n型ドリフト層13)を形成したSiC基板(高濃度n型基板12)に、イオン注入によりチャンネルストッパー用のn型領域と、終端構造用のp型領域(p型不純物イオン注入領域14)とフローティングリミッティングリング(FLR)構造16用のp型領域を形成する。その後、チャンネルストッパー用のn型領域を形成するために注入されたリンと、終端構造用のp型領域とFLR構造用のp型領域を形成するために注入されたアルミニウムとを、活性化するために、アルゴン雰囲気中において1620℃で180秒間の活性化を行った。その後、常圧CVD装置を用いて基板表面側に厚さ500nmのSiO2膜を形成した。一方、基板裏面側に、スパッタ装置を用いて、基板側から、厚さ60nmのニッケル層、厚さ20nmのチタン層の順で積層して製膜した。製膜した基板は、赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いて、アルゴン雰囲気中1050℃で2分間の加熱処理を行った。この加熱処理によりSiC基板のシリコン原子はニッケルと反応してニッケルシリサイドを生成し、オーミックコンタクトを得ることができた。また、SiC基板の炭素原子はチタンと反応してチタンカーバイドを生成してニッケルシリサイドの表面に析出する。この時、未反応の炭素原子はニッケルシリサイド層中に残存するが、ニッケルシリサイド層の最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数は、表面に析出した全炭素原子数の12%以上であった。ここで、炭素原子数は、XPS分析により算出した。283eV付近に観察されるC1sピークにおいて、ケミカルシフトによって現れる複数のC1sピーク強度の合計値とTiC由来のピーク強度比より算出した。
【0048】
フッ酸緩衝液を用いて表面側の酸化膜にコンタクトホールを形成し(図4参照)、スパッタ装置でショットキー電極用のチタンを200nm製膜後、赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いてアルゴン雰囲気中500℃で5分間の処理を行った(図5参照)。この時、ニッケルシリサイド層中のCが析出して、薄い炭素層が形成された。その後速やかにスパッタ装置を用いて、表面電極用のアルミニウムを5000nm製膜し(図6参照)、表面電極製膜後に基板を反転させてアルゴン逆スパッタを圧力0.5Pa、RFパワー300Wで3分間行って、ニッケルシリサイド層の表面に形成された炭素層を除去した(図7参照)。次に、蒸着装置を用いてニッケルシリサイド層の上に、チタン70nm、ニッケル700nm、金200nmを連続蒸着して、金属積層体の裏面電極を形成した(図8参照)。
【0049】
以上の電極構造が形成された基板をダイシングした結果、裏面電極の剥離は全く生じず、室温でのオン電圧(Vf)が1.7VのSiCショットキーバリアダイオードを得ることができた。
【0050】
(比較例1)
実施例1においては、裏面電極の形成時にNi層の上にTi層を形成して加熱することによりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイドを得たのに対して、比較例1は、Ni層の上にTi層を形成せずに加熱した例である。比較例2におけるSiC半導体デバイスの製造工程について説明する。エピタキシャル層を形成したSiC基板に、イオン注入によりチャンネルストッパー用のn型領域と、終端構造用のp型領域とフローティングリミッティングリング(FLR)構造用のp型領域を形成後、チャンネルストッパー用のn型領域を形成するために注入されたリンと終端構造用のp型領域とFLR構造用のp型領域を形成するために注入されたアルミニウムを活性化するために、アルゴン雰囲気中において1620℃で180秒間の活性化を行った。常圧CVD装置を用いて基板表面側に厚さ500nmのSiO2膜を形成した後、裏面側にスパッタ装置を用いて厚さ60nmのニッケル層を製膜した。その後、製膜した基板を、実施例1と同じ方法、即ち、赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いて、アルゴン雰囲気中1050℃で2分間の加熱処理を行った。この加熱処理によりSiC基板のシリコン原子はニッケルと反応してニッケルシリサイドが生成した。シリサイド層形成後、実施例1と同じ工程で、表面電極製膜後に基板を反転させてアルゴン逆スパッタを圧力0.5Pa、RFパワー300Wで3分間行って、ニッケルシリサイド層の表面に形成された炭素層を除去した。その後、ニッケルシリサイド層の上に実施例1と同様に金属層を、基板側から見てTi層、Ni層、Au層の順に積層して裏面電極を形成した。得られた基板をダイシングした結果、ニッケルシリサイド層と裏面電極におけるチタン層の界面で剥離した。
【0051】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同じ方法で表面電極用のアルミニウムまで製膜した後、逆スパッタを行わずに、裏面電極を形成した。得られた基板をダイシングした結果、裏面電極はニッケルシリサイド層と裏面電極におけるチタン層の界面で剥離した。
【0052】
(実施例2)
ニッケルシリサイド層の最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数の、最表面に析出した全炭素原子数に対する割合が異なる場合について調べた。チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を生成させるためのチタン層の厚さを変えた以外は、実施例1と同様に、次のようにSiCショットキーバリアダイオードを製造した。エピタキシャル層を形成したSiC基板に、イオン注入によりチャンネルストッパー用のn型領域と、終端構造用のp型領域とフローティングリミッティングリング(FLR)構造用のp型領域を形成した後、チャンネルストッパー用のn型領域を形成するために注入されたリンと終端構造用のp型領域とFLR構造用のp型領域を形成するために注入されたアルミニウムを活性化するために、アルゴン雰囲気中において1620℃で180秒間の活性化を行った。常圧CVD装置を用いて基板表面側に厚さ500nmのSiO2膜を形成した後、裏面側にスパッタ装置を用いて厚さAnmのチタン層と厚さ60nmのニッケル層を製膜し、RTA装置を用いて、アルゴン雰囲気中1050℃で2分間の加熱処理を行って、チタンカーバイドおよびニッケルシリサイドを生成した。
【0053】
TiとNiの層の膜厚を異ならせて複数形成し、加熱することにより、該割合の異なるチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成することができる。具体的には、ニッケルシリサイド層を生成する際のチタン層のスパッタ厚さAを0〜40nmとして、チタンカーバイドの生成量を変化させ、裏面電極の密着性を評価した。図10に、TiC由来の炭素原子濃度と剥離の有無の関係を示す。図10において、縦軸は炭素Cの組成比(atomic%)であり、横軸は各サンプルA〜Oである。剥離なしを白丸で示し、剥離ありを黒丸で示した。図10から、TiC由来の炭素原子濃度が12%以上で裏面電極が剥離しないという相関関係があることがわかる。
【0054】
例えば、チタン層の厚さAを10nm、ニッケル層の厚さを60nmとして製膜した場合、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数は、表面に析出した全炭素原子数の6%であった。その後、実施例1と同じ方法で裏面電極を形成した。得られた基板をダイシングした結果、裏面電極においてニッケルシリサイド層とチタン層の界面で剥離した。
【0055】
12%未満であると剥離する場合があるが、比較例1や比較例2に比較して、剥離する割合が減少するので、歩留まりが向上した。
【0056】
(実施例3)
実施例1で図示して説明したショットキーバリアダイオードの代わりに、図11に示したジャンクションバリアショットキー(JBS)構造を持つショットキーバリアダイオード(SBD)についても、実施例1と同様に、基板側から、厚さ60nmのニッケル層、厚さ20nmのチタン層の順で積層して製膜し、加熱処理によりチタンカーバイドを包含するニッケルシリサイド層を作成し、その後の製造工程中に析出した炭素原子を逆スパッタにより除去した。裏面電極を形成後ダイシングした結果、裏面電極の剥離は全く生じなかった。
【0057】
以上、実施例と比較例の結果から明らかであるように、本発明のSiC半導体デバイス用裏面電極は、裏面電極の剥離を十分に抑制することができ、かつ、信頼性に優れたSiC半導体デバイスを得ることができる。
【0058】
上記実施の形態及び実施例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、1000V以上の高耐圧ショットキーバリアダイオードとして利用することができ、リークを抑えつつオン抵抗を下げられるため、チップ面積を小さくし製品単価を下げることができ有用である。また、定格の大きいダイオードの製造が可能となり、大電流を必要とする産業用電動機や新幹線電車などのインバータへの適用が可能になり、装置の高効率・小型化に寄与できる。
【符号の説明】
【0060】
1 SiC基板
2 ガードリング
3 絶縁層
4 チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層
5 炭素層
6 ショットキー電極
7 表面電極
8 裏面電極
11 オーミック電極
12 高濃度n型基板
13 低濃度n型ドリフト層
14 p型不純物イオン注入領域
15 ショットキー電極
16 FLR構造
17 JBS構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の剥離を防止したSiC半導体デバイス及びSiC半導体デバイスの製造方法に関する。例えば縦型構造のショットキーバリアダイオードなどの裏面電極構造において裏面電極の剥離を十分抑制することができる半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からパワーデバイスとして用いられている半導体デバイスは、半導体材料としてシリコンを用いたものが主流であるが、ワイドギャップ半導体であるSiCは、シリコンに比較して熱伝導度が3倍、最大電界強度が10倍、電子のドリフト速度2倍という物性値を有していることから、絶縁破壊電圧が高く低損失で高温動作可能なパワーデバイスとして、近年その応用が研究されている。
【0003】
パワーデバイスの構造は、裏面側に低抵抗なオーミック電極を備えた裏面電極を有する縦型の半導体デバイスが主流である。裏面電極には様々な材料および構造が用いられているが、その中の1つとして、チタン層とニッケル層と銀層との積層体(特許文献1参照)や、チタン層とニッケル層と金層との積層体(特許文献2参照)などが提案されている。
【0004】
ショットキーバリアダイオードに代表されるSiCを用いた縦型半導体デバイスにおいては、SiC基板上にニッケル層を製膜後、加熱によりニッケルシリサイド層を形成して、SiC基板とニッケルシリサイド層との間にオーミックコンタクトを形成する手法が用いられている(たとえば特許文献1および特許文献2参照)。しかしながら、該ニッケルシリサイド層の上に裏面電極を形成した際に、裏面電極がニッケルシリサイド層から剥がれやすいという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献3においては、ニッケルシリサイド層の形成時にニッケルシリサイド層の表面に残るニッケル層を除去した後に、チタン層、ニッケル層および銀層をこの順に積層してなるカソード電極を形成した構成の裏面電極とすることが提案されている。カソード電極のニッケルシリサイド層と接する部分はNi以外の金属からなるようにすることで、剥がれ不良を抑制することが提案されている。また、ニッケルシリサイド等とカソード電極との間にCが析出した層が形成されていても、Ni層と共にCが析出した層を除去することができて、剥離を防止できることが示されている。
【0006】
また、特許文献4においては、ニッケルシリサイド層の表面に形成された炭化物を除去することで、裏面電極の密着性を向上させることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−184571号公報
【特許文献2】特開2010−86999号公報
【特許文献3】特開2008−53291号公報
【特許文献4】特開2003−243323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術の特許文献3や特許文献4において、不良が抑制できるとされている構成の裏面電極においても、ニッケルシリサイド層とカソード電極層のチタン層との密着性が低いという問題がある。例えば、半導体デバイスのダイシング時に裏面電極がニッケルシリサイド層から剥がれてしまうという問題がある。
【0009】
たとえば、特許文献3に記されたSiC半導体デバイス用裏面電極の製造方法では、SiC基板上にニッケル層を形成し、引き続いて行う加熱によりニッケルシリサイド層を形成し、SiCとニッケルシリサイド層の間にオーミックコンタクトを形成している。
【0010】
特許文献1の記載によれば、ニッケルシリサイドは、以下の反応式で示される固相反応により生成する。
Ni + 2SiC → NiSi2 + 2C
【0011】
上記の反応式で生成した炭素(C)は、不安定な過飽和状態あるいは微析出体として、ニッケルシリサイド層の内部全体に分散して存在するが、シリサイド形成後に加熱処理を行うとこれが一気に排出され、シリサイド層の表面や内部に、グラファイトとみられる析出物として層状に凝集(析出)する。析出物は、脆く、付着性の乏しい材料であるので、わずかな応力が作用すると容易に破断し、シリサイド層上に形成した裏面電極金属層の剥離が発生する。
【0012】
以上のように、SiC半導体デバイスを製造する工程においては、SiC基板にオーミック電極の形成のためにNiを蒸着させた後に、加熱処理によりSiC基板と電極のNiが反応し、ニッケルシリサイドが形成される。さらに、半導体デバイスのショットキー電極形成過程等において、種々の加熱処理が行われるため、SiC基板の炭素は拡散されてニッケルシリサイド中やニッケルシリサイド表面に析出してくるという問題がある。
【0013】
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、裏面電極の剥離を十分に抑制することができる半導体デバイスの製造方法と、裏面電極の剥離が防止された新規な裏面電極構造を有するSiC半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、SiC半導体上への電極形成において、従来のNi層を形成する方法に換えて、チタン及びニッケルを含む層を形成して、加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させることを行った。SiC半導体上に、チタン及びニッケルを含む層を、例えば、ニッケル層、チタン層の順で積層した後、加熱によりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成させることができ、チタンカーバイドが生成されることにより、炭素の析出を防ぐことができる。
【0015】
さらに、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層上に析出する炭素層を逆スパッタにより除去することにより、後工程でニッケルシリサイド上に形成される金属層が剥離することを抑制することができる。
【0016】
本発明では、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成後に行う様々な処理工程(ショットキー電極の形成など)を経ることで表面に析出する炭素層を、裏面電極金属膜の形成前に、除去することにより、裏面電極の剥離を防止することができる。
【0017】
炭素層を除去する前のニッケルシリサイド表面の、析出した炭素の量とチタンカーバイドの炭素量の関係が、所定の条件のときに、さらに剥離防止の効果を向上させることができる。
【0018】
本発明では、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層の上に形成する金属層として、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層側にこれと接してチタン層を配置した。チタン層の上にニッケル層、金層の順で積層して、裏面電極を形成した。ニッケルシリサイド層をオーミック電極、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層された金属層を裏面電極と呼び、オーミック電極と裏面電極とからなる構造を裏面電極構造と呼ぶ。一方、SiC基板の裏面電極構造とは反対の面に、SiC基板に接してショットキー電極と該ショットキー電極上に金属層からなる表面電極を形成して設ける。ショットキー電極と表面電極とからなる構造を表面電極構造と呼ぶ。
【0019】
ニッケルおよびチタンを含む層を加熱して生成したチタンカーバイド層を含む層は、ニッケルシリサイド層との密着性、及び裏面電極で使用するチタン層との密着性に優れている。
【0020】
本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有する。
【0021】
本発明は、SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって、前記SiC半導体に、ニッケル及びチタンを含む層を形成した後、加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し、ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を逆スパッタにより取り除き、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層することにより金属層を形成することを特徴とする。
【0022】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上の割合であることが好ましい。ここで、最表面とは、オージェ電子分析(オージェ電子分光分析(AES、Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光分析(XPS、Xray Photoelectron Spectroscopy)等により表面を分析した際の、分析対象となる表面深さまでの部分をさす。最表面は深さ数nmである。具体的には深さ2〜3nmである。他の表面分析手法、例えばEPMAの場合は深さ数μmまでを平均化した情報が得られるが、本願ではそれらとの違いを明確にするために、「最表面」、または「極表面」と表現する。「最表面の全炭素原子数」には、表面に析出した炭素層の炭素原子数と、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数と、最表面におけるニッケルシリサイド層中に残存する未反応の炭素原子数が含まれる。最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上の割合であることが好ましい。12%以上であると電極の金属層と剥離をすることがなく、剥離抑制の効果が顕著である。上限は適宜選択できるが、30%で剥離防止の効果があることを確認している。また20%で剥離防止の効果が十分ある。よって、該割合は、12%以上30%以下、好ましくは12%以上20%以下である。
【0023】
本発明において、前記ニッケル及びチタンを含む層は、SiC半導体の表面に、ニッケル層、チタン層の順で積層して形成することが好ましい。
【0024】
前記ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、前記ニッケルシリサイド層表面に炭素原子が数原子層あるいは局所的に析出したものである。炭素原子は、1層以上9層以下、好ましくは1層以上3層以下析出したものであり、また、ニッケルシリサイド層表面に局所的に析出する場合が多い。局所的に析出し、島状に析出する。例えば、1μm2以下の面積を有する島状またはドメイン構造で表面に析出する。
【0025】
本発明の半導体デバイスは、電極構造の具体的構造として、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層のオーミック電極と前記金属層の裏面電極とからなる裏面電極構造を有し、表面電極構造としてショットキー電極と表面電極を有する。
【0026】
本発明における逆スパッタは、アルゴン逆スパッタを用いることが好ましい。その際、アルゴンガスの圧力の好ましい値は、0.1Pa以上で1Pa以下であり、RFパワーが100W以上で600W以下である。圧力の上限/下限値、またパワーの下限値を超えると逆スパッタの安定的な放電が難しくなる。また,パワーの上限値を超えると、デバイスへのダメージが大きくなる。
【0027】
本発明の半導体デバイスは、本発明の半導体デバイスの製造方法により製造されたことを特徴とする。また、本発明の半導体デバイスは、SiC半導体上に、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層、チタン層、ニッケル層、金層の順に積層された電極構造を備えることを特徴とする。また、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層は、前記SiC半導体に近い方から、ニッケルシリサイド層、チタンカーバイド層の順に積層されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法によれば、電極の剥離を十分に抑制することができる。電極の剥離が抑制されることにより、ダイシング時の剥離が抑制されるため、歩留まりが向上し、生産効率が高まる。本発明の製造方法では、前記SiC半導体に、ニッケル及びチタンを含む層を形成した後、加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し、ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を逆スパッタにより取り除いているので、後で形成される金属層の電極との剥離を抑制でき、ダイシング時の剥離の歩留まりを向上させることができる。また、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層することにより、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層と、チタン層との密着性が高まるために、より剥離を防止することができる。
【0029】
本発明では、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上となるようにすると、電極の金属層との剥離が全く生じることがない顕著な効果がある。
【0030】
本発明の電極構造により、電極の剥離が抑制され、本発明のSiC半導体デバイスをショットキーバリアダイオードに適用した場合、1000V以上の高耐圧ショットキーバリアダイオードのリークを抑えつつオン抵抗を下げることができる。その結果、チップ面積を小さくし製品単価を下げることができる。また、定格の大きいダイオードの製造が可能となり、大電流を必要とする産業用電動機や新幹線電車などのインバータへの適用が可能になり、装置の高効率・小型化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造におけるSiC基板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、ガードリングを形成する工程を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、絶縁層およびニッケルシリサイド層を形成する工程を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、コンタクトホールを形成する工程を示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、ショットキー電極を形成する工程を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、表面電極を形成する工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、ニッケルシリサイド上に形成された炭素層を除去する工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの製造において、裏面電極を形成する工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの一例を示す図である。
【図10】本発明のTiC由来の炭素原子濃度が12%以上で裏面電極が剥離しないことを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態のショットキーバリアダイオードの他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態について、以下説明する。
【0033】
本発明に係るSiC半導体デバイスの好ましい実施の形態として、ショットキーバリアダイオードについて、図1〜8を参照して説明する。図1〜8は、ショットキーバリアダイオードの製造方法を説明するための図であり、製造工程のショットキーバリアダイオードの断面を模式的に表している。図8は、製造されたショットキーバリアダイオードの構造を表している。SiC半導体を用いたショットキーバリアダイオードは、SiC基板1、ガードリング2、絶縁層3、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層4、炭素層5、ショットキー電極6、表面電極7、裏面電極8を備えている。
【0034】
図1は、SiC基板を示す断面図である。SiC基板1は、SiCからなるウェーハ層とSiCからなるエピタキシャル層で構成される。
【0035】
図2は、ガードリングを形成する工程を示す図である。エピタキシャル層の一部にイオン注入を施すことにより、ガードリング2を形成する。
【0036】
図3は、絶縁層およびニッケルシリサイド層を形成する工程を示す断面図である。ガードリング2の上にSiO2からなる絶縁層3を形成した後、SiC基板1の裏面にニッケルおよびチタンを含む層を製膜し、引き続いて行う加熱によりチタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層を形成する。ニッケルおよびチタンを含む層は、ニッケル層、チタン層の順で、SiC基板に形成することが好ましい。ニッケルとチタンの割合は、ニッケルとチタンを積層で形成する場合は、それぞれの膜厚の比を1対1から10対1、好ましくは3対1から6対1とすることで実施できる。その際、ニッケルの膜厚は20〜100nm、チタンの膜厚は10〜50nmであることが好ましい。又、ニッケル中にチタンが含まれるように合金として形成してもよい。ニッケルとチタンの割合は、1対1から10対1、好ましくは3対1から6対1とすることで実施できる。
【0037】
ニッケル層とチタン層の形成方法は、蒸着、スパッタ等の薄膜の形成方法を用いることができる。薄膜形成後、アルゴン雰囲気中1000〜1200℃で加熱して、ニッケルシリサイド層を得る。
【0038】
形成されたチタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層は、厚さ10〜100nm、好ましくは20〜30nmである。
【0039】
チタンカーバイドは、裏面電極を構成する積層体のうちのチタンと良好な密着性を示すため、裏面電極剥離を抑制する機能を有する。また、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層において、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面に析出した全炭素原子数の12%以上であると、電極との剥離が生じないのでより好ましい。なお、12%未満であっても、剥離を抑制でき歩留まりを向上させる効果がある。
【0040】
図4は、コンタクトホールを形成する工程を示す断面図である。図4に示すように、絶縁層3の一部をエッチングにより取り除き、コンタクトホールを形成する。
【0041】
図5は、ショットキー電極を形成する工程を示す断面図である。エッチングにより露出したSiC半導体部分に、ショットキー電極として、たとえばチタンを製膜後、引き続いて行う加熱によりショットキーコンタクトが形成される。加熱温度は400〜600℃程度である。加熱雰囲気はアルゴンまたはヘリウムである。この時、ニッケルシリサイド層の内部に含まれる炭素の一部が、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層の表面に析出し、図5に示すように炭素層5が形成される。炭素層5は、数原子層であり、局所的に析出する。
【0042】
図6は、表面電極7を形成する工程を示す断面図である。図6に示すように、ショットキー電極6を、たとえばアルミニウムで覆い表面電極7とする。
【0043】
図7は、チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層4上に形成された炭素層5を除去した工程を示す断面図である。図7に示すように、逆スパッタを施してニッケルシリサイド層4の表面に形成された炭素層5を取り除く。逆スパッタは、アルゴン圧力0.1Pa以上、1Pa以下、およびRFパワーが100W以上、300W以下で行うことが好ましい。
【0044】
図8は、金属層の積層体を形成して裏面電極8とする工程を示す断面図である。炭素層を取り除いた、チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層4上に、チタン、ニッケル、金の順で積層した積層体からなる裏面電極8を形成する。
【0045】
全ての製膜操作が完了した基板をダイシングして、SiCショットキーバリアダイオードのチップを得ることができる。
【0046】
ショットキーバリアダイオードについて以上説明したが、本発明に係るSiC半導体デバイスは、ショットキーバリアダイオードに限定されず、MOSFETなど、SiCを用いた種々の半導体デバイスにおいても同様である。
【0047】
(実施例1)
本発明の実施例について、図1〜9を参照して以下説明する。図9は、本実施例で製造するフィールドリミッティングリング(FLR)構造を持つショットキーバリアダイオード(SBD)を説明する図である。エピタキシャル層(低濃度n型ドリフト層13)を形成したSiC基板(高濃度n型基板12)に、イオン注入によりチャンネルストッパー用のn型領域と、終端構造用のp型領域(p型不純物イオン注入領域14)とフローティングリミッティングリング(FLR)構造16用のp型領域を形成する。その後、チャンネルストッパー用のn型領域を形成するために注入されたリンと、終端構造用のp型領域とFLR構造用のp型領域を形成するために注入されたアルミニウムとを、活性化するために、アルゴン雰囲気中において1620℃で180秒間の活性化を行った。その後、常圧CVD装置を用いて基板表面側に厚さ500nmのSiO2膜を形成した。一方、基板裏面側に、スパッタ装置を用いて、基板側から、厚さ60nmのニッケル層、厚さ20nmのチタン層の順で積層して製膜した。製膜した基板は、赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いて、アルゴン雰囲気中1050℃で2分間の加熱処理を行った。この加熱処理によりSiC基板のシリコン原子はニッケルと反応してニッケルシリサイドを生成し、オーミックコンタクトを得ることができた。また、SiC基板の炭素原子はチタンと反応してチタンカーバイドを生成してニッケルシリサイドの表面に析出する。この時、未反応の炭素原子はニッケルシリサイド層中に残存するが、ニッケルシリサイド層の最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数は、表面に析出した全炭素原子数の12%以上であった。ここで、炭素原子数は、XPS分析により算出した。283eV付近に観察されるC1sピークにおいて、ケミカルシフトによって現れる複数のC1sピーク強度の合計値とTiC由来のピーク強度比より算出した。
【0048】
フッ酸緩衝液を用いて表面側の酸化膜にコンタクトホールを形成し(図4参照)、スパッタ装置でショットキー電極用のチタンを200nm製膜後、赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いてアルゴン雰囲気中500℃で5分間の処理を行った(図5参照)。この時、ニッケルシリサイド層中のCが析出して、薄い炭素層が形成された。その後速やかにスパッタ装置を用いて、表面電極用のアルミニウムを5000nm製膜し(図6参照)、表面電極製膜後に基板を反転させてアルゴン逆スパッタを圧力0.5Pa、RFパワー300Wで3分間行って、ニッケルシリサイド層の表面に形成された炭素層を除去した(図7参照)。次に、蒸着装置を用いてニッケルシリサイド層の上に、チタン70nm、ニッケル700nm、金200nmを連続蒸着して、金属積層体の裏面電極を形成した(図8参照)。
【0049】
以上の電極構造が形成された基板をダイシングした結果、裏面電極の剥離は全く生じず、室温でのオン電圧(Vf)が1.7VのSiCショットキーバリアダイオードを得ることができた。
【0050】
(比較例1)
実施例1においては、裏面電極の形成時にNi層の上にTi層を形成して加熱することによりチタンカーバイドを含むニッケルシリサイドを得たのに対して、比較例1は、Ni層の上にTi層を形成せずに加熱した例である。比較例2におけるSiC半導体デバイスの製造工程について説明する。エピタキシャル層を形成したSiC基板に、イオン注入によりチャンネルストッパー用のn型領域と、終端構造用のp型領域とフローティングリミッティングリング(FLR)構造用のp型領域を形成後、チャンネルストッパー用のn型領域を形成するために注入されたリンと終端構造用のp型領域とFLR構造用のp型領域を形成するために注入されたアルミニウムを活性化するために、アルゴン雰囲気中において1620℃で180秒間の活性化を行った。常圧CVD装置を用いて基板表面側に厚さ500nmのSiO2膜を形成した後、裏面側にスパッタ装置を用いて厚さ60nmのニッケル層を製膜した。その後、製膜した基板を、実施例1と同じ方法、即ち、赤外線ランプを備えた高速アニール装置(RTA)を用いて、アルゴン雰囲気中1050℃で2分間の加熱処理を行った。この加熱処理によりSiC基板のシリコン原子はニッケルと反応してニッケルシリサイドが生成した。シリサイド層形成後、実施例1と同じ工程で、表面電極製膜後に基板を反転させてアルゴン逆スパッタを圧力0.5Pa、RFパワー300Wで3分間行って、ニッケルシリサイド層の表面に形成された炭素層を除去した。その後、ニッケルシリサイド層の上に実施例1と同様に金属層を、基板側から見てTi層、Ni層、Au層の順に積層して裏面電極を形成した。得られた基板をダイシングした結果、ニッケルシリサイド層と裏面電極におけるチタン層の界面で剥離した。
【0051】
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同じ方法で表面電極用のアルミニウムまで製膜した後、逆スパッタを行わずに、裏面電極を形成した。得られた基板をダイシングした結果、裏面電極はニッケルシリサイド層と裏面電極におけるチタン層の界面で剥離した。
【0052】
(実施例2)
ニッケルシリサイド層の最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数の、最表面に析出した全炭素原子数に対する割合が異なる場合について調べた。チタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を生成させるためのチタン層の厚さを変えた以外は、実施例1と同様に、次のようにSiCショットキーバリアダイオードを製造した。エピタキシャル層を形成したSiC基板に、イオン注入によりチャンネルストッパー用のn型領域と、終端構造用のp型領域とフローティングリミッティングリング(FLR)構造用のp型領域を形成した後、チャンネルストッパー用のn型領域を形成するために注入されたリンと終端構造用のp型領域とFLR構造用のp型領域を形成するために注入されたアルミニウムを活性化するために、アルゴン雰囲気中において1620℃で180秒間の活性化を行った。常圧CVD装置を用いて基板表面側に厚さ500nmのSiO2膜を形成した後、裏面側にスパッタ装置を用いて厚さAnmのチタン層と厚さ60nmのニッケル層を製膜し、RTA装置を用いて、アルゴン雰囲気中1050℃で2分間の加熱処理を行って、チタンカーバイドおよびニッケルシリサイドを生成した。
【0053】
TiとNiの層の膜厚を異ならせて複数形成し、加熱することにより、該割合の異なるチタンカーバイドを含むニッケルシリサイド層を形成することができる。具体的には、ニッケルシリサイド層を生成する際のチタン層のスパッタ厚さAを0〜40nmとして、チタンカーバイドの生成量を変化させ、裏面電極の密着性を評価した。図10に、TiC由来の炭素原子濃度と剥離の有無の関係を示す。図10において、縦軸は炭素Cの組成比(atomic%)であり、横軸は各サンプルA〜Oである。剥離なしを白丸で示し、剥離ありを黒丸で示した。図10から、TiC由来の炭素原子濃度が12%以上で裏面電極が剥離しないという相関関係があることがわかる。
【0054】
例えば、チタン層の厚さAを10nm、ニッケル層の厚さを60nmとして製膜した場合、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数は、表面に析出した全炭素原子数の6%であった。その後、実施例1と同じ方法で裏面電極を形成した。得られた基板をダイシングした結果、裏面電極においてニッケルシリサイド層とチタン層の界面で剥離した。
【0055】
12%未満であると剥離する場合があるが、比較例1や比較例2に比較して、剥離する割合が減少するので、歩留まりが向上した。
【0056】
(実施例3)
実施例1で図示して説明したショットキーバリアダイオードの代わりに、図11に示したジャンクションバリアショットキー(JBS)構造を持つショットキーバリアダイオード(SBD)についても、実施例1と同様に、基板側から、厚さ60nmのニッケル層、厚さ20nmのチタン層の順で積層して製膜し、加熱処理によりチタンカーバイドを包含するニッケルシリサイド層を作成し、その後の製造工程中に析出した炭素原子を逆スパッタにより除去した。裏面電極を形成後ダイシングした結果、裏面電極の剥離は全く生じなかった。
【0057】
以上、実施例と比較例の結果から明らかであるように、本発明のSiC半導体デバイス用裏面電極は、裏面電極の剥離を十分に抑制することができ、かつ、信頼性に優れたSiC半導体デバイスを得ることができる。
【0058】
上記実施の形態及び実施例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、1000V以上の高耐圧ショットキーバリアダイオードとして利用することができ、リークを抑えつつオン抵抗を下げられるため、チップ面積を小さくし製品単価を下げることができ有用である。また、定格の大きいダイオードの製造が可能となり、大電流を必要とする産業用電動機や新幹線電車などのインバータへの適用が可能になり、装置の高効率・小型化に寄与できる。
【符号の説明】
【0060】
1 SiC基板
2 ガードリング
3 絶縁層
4 チタンカーバイドを包含したニッケルシリサイド層
5 炭素層
6 ショットキー電極
7 表面電極
8 裏面電極
11 オーミック電極
12 高濃度n型基板
13 低濃度n型ドリフト層
14 p型不純物イオン注入領域
15 ショットキー電極
16 FLR構造
17 JBS構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって、
前記SiC半導体に、
ニッケル及びチタンを含む層を形成した後、
加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し、
ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を逆スパッタにより取り除き、
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層することにより金属層を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記ニッケル及びチタンを含む層は、SiC半導体の表面に、ニッケル層、チタン層の順で積層して形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、前記ニッケルシリサイド層表面に炭素原子が原子層1層以上9層以下あるいは局所的に析出したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記半導体デバイスは、前記電極構造として、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層のオーミック電極と前記金属層の裏面電極とからなる裏面電極構造を有し、表面電極構造としてショットキー電極と表面電極を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記逆スパッタは、アルゴン逆スパッタであり、アルゴンガスの圧力が0.1Pa以上で1Pa以下であり、RFパワーが100W以上で600W以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法により製造されたものであることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項8】
SiC半導体上に、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層、チタン層、ニッケル層、金層の順に積層された電極構造を備えることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項9】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層は、前記SiC半導体に近い方から、ニッケルシリサイド層、チタンカーバイド層の順に積層されていることを特徴とする請求項8に記載の半導体デバイス。
【請求項1】
SiC半導体に電極構造を形成する半導体デバイスの製造方法であって、
前記SiC半導体に、
ニッケル及びチタンを含む層を形成した後、
加熱によりチタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層を生成し、
ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層を逆スパッタにより取り除き、
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層上に、チタン層、ニッケル層、金層の順で積層することにより金属層を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、最表面におけるチタンカーバイドに含まれる炭素原子数が、最表面の全炭素原子数に対して12%以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記ニッケル及びチタンを含む層は、SiC半導体の表面に、ニッケル層、チタン層の順で積層して形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記ニッケルシリサイド層表面に生成した炭素層は、前記ニッケルシリサイド層表面に炭素原子が原子層1層以上9層以下あるいは局所的に析出したものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記半導体デバイスは、前記電極構造として、前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層のオーミック電極と前記金属層の裏面電極とからなる裏面電極構造を有し、表面電極構造としてショットキー電極と表面電極を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記逆スパッタは、アルゴン逆スパッタであり、アルゴンガスの圧力が0.1Pa以上で1Pa以下であり、RFパワーが100W以上で600W以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法により製造されたものであることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項8】
SiC半導体上に、チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層、チタン層、ニッケル層、金層の順に積層された電極構造を備えることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項9】
前記チタンカーバイドを有するニッケルシリサイド層は、前記SiC半導体に近い方から、ニッケルシリサイド層、チタンカーバイド層の順に積層されていることを特徴とする請求項8に記載の半導体デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−248729(P2012−248729A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120124(P2011−120124)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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