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TGF−βシグナル伝達機構の阻害剤、Smadの分解誘導剤、Smadユビキチン化促進剤、Smurfの分解誘導剤、Smurfユビキチン化促進剤、TGF−βシグナル伝達機構の阻害方法、Smadの分解誘導方法、Smadユビキチン化促進方法、Smurfの分解誘導方法、及びSmurfユビキチン化促進方法
説明

TGF−βシグナル伝達機構の阻害剤、Smadの分解誘導剤、Smadユビキチン化促進剤、Smurfの分解誘導剤、Smurfユビキチン化促進剤、TGF−βシグナル伝達機構の阻害方法、Smadの分解誘導方法、Smadユビキチン化促進方法、Smurfの分解誘導方法、及びSmurfユビキチン化促進方法

【課題】TGF-βシグナル伝達機構の阻害剤を提供する。
【解決手段】エストロゲン受容体のリガンド、グルココルチコイド受容体のリガンド、ビタミンD受容体のリガンド、プロゲステロン受容体のリガンドまたはレチノイン酸受容体のリガンドを、TGF-βシグナル伝達機構の抑制剤として使用する。TGF-βシグナル伝達機構を制御する物質は、癌(乳癌、肺癌、子宮癌、前立腺癌、膵臓癌、メラノーマ)、肺線維化症、腎線維化症、及び肝硬変の治療、研究に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTGF-βスーパーファミリーのシグナル伝達機構の制御技術に係り、特にTGF-βシグナル伝達機構の阻害剤、Smadの分解誘導剤、Smadユビキチン化促進剤、Smurfの分解誘導剤、Smurfユビキチン化促進剤、TGF-βシグナル伝達機構の阻害方法、Smadの分解誘導方法、Smadユビキチン化促進方法、Smurfの分解誘導方法、及びSmurfユビキチン化促進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TGF (Transforming Growth Factor)-βは多様な生理活性を有するサイトカインであり、細胞の増殖を抑制する。したがってTGF-βは、癌抑制因子として機能する。しかしTGF-βは血管新生、細胞外マトリックス産生、免疫抑制、及び上皮間葉転換等を促進し、癌細胞の転移を促進する。そのため、癌の転移のメカニズムを解明するために、細胞内におけるTGF-βのシグナル伝達機構の研究が進められている。しかし、細胞内におけるTGF-βシグナル伝達機構が、核内受容体の転写活性を上昇させることは報告されているものの(例えば特許文献1参照。)、TGF-βシグナル伝達機構を制御するメカニズムは解明されていなかった。
【特許文献1】特開平11-201967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、TGF-βシグナル伝達機構の阻害剤、Smadの分解誘導剤、Smadユビキチン化促進剤、Smurfの分解誘導剤、Smurfユビキチン化促進剤、TGF-βシグナル伝達機構の阻害方法、Smadの分解誘導方法、Smadユビキチン化促進方法、Smurfの分解誘導方法、及びSmurfユビキチン化促進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本発明の第1の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0005】
本発明の第2の特徴は、グルココルチコイド受容体のリガンドを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0006】
本発明の第3の特徴は、ビタミンD受容体のリガンドを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0007】
本発明の第4の特徴は、プロゲステロン受容体のリガンドを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0008】
本発明の第5の特徴は、レチノイン酸受容体のリガンドを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第6の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第7の特徴は、グルココルチコイド受容体の発現ベクターを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0011】
本発明の第8の特徴は、プロゲステロン受容体の発現ベクターを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0012】
本発明の第9の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0013】
本発明の第10の特徴は、アンドロゲン受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0014】
本発明の第11の特徴は、ビタミンD受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0015】
本発明の第12の特徴は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0016】
本発明の第13の特徴は、肝臓X受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0017】
本発明の第14の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0018】
本発明の第15の特徴は、アンドロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0019】
本発明の第16の特徴は、ビタミンD受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0020】
本発明の第17の特徴は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0021】
本発明の第18の特徴は、肝臓X受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0022】
本発明の第19の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smadユビキチン化促進剤であることを要旨とする。
【0023】
本発明の第20の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smadユビキチン化促進剤であることを要旨とする。
【0024】
本発明の第21の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smurfの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0025】
本発明の第22の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smurfの分解誘導剤であることを要旨とする。
【0026】
本発明の第23の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smurfユビキチン化促進剤であることを要旨とする。
【0027】
本発明の第24の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smurfユビキチン化促進剤であることを要旨とする。
【0028】
本発明の第25の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0029】
本発明の第26の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0030】
本発明の第27の特徴は、グルココルチコイド受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0031】
本発明の第28の特徴は、グルココルチコイド受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0032】
本発明の第29の特徴は、ビタミンD受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0033】
本発明の第30の特徴は、ビタミンD受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0034】
本発明の第31の特徴は、プロゲステロン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0035】
本発明の第32の特徴は、プロゲステロン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0036】
本発明の第33の特徴は、レチノイン酸受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0037】
本発明の第34の特徴は、レチノイン酸受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0038】
本発明の第35の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0039】
本発明の第36の特徴は、グルココルチコイド受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0040】
本発明の第37の特徴は、プロゲステロン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する方法であることを要旨とする。
【0041】
本発明の第38の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0042】
本発明の第39の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0043】
本発明の第40の特徴は、アンドロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0044】
本発明の第41の特徴は、アンドロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0045】
本発明の第42の特徴は、ビタミンD受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0046】
本発明の第43の特徴は、ビタミンD受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0047】
本発明の第44の特徴は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0048】
本発明の第45の特徴は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0049】
本発明の第46の特徴は、肝臓X受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0050】
本発明の第47の特徴は、肝臓X受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0051】
本発明の第48の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0052】
本発明の第49の特徴は、アンドロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0053】
本発明の第50の特徴は、ビタミンD受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0054】
本発明の第51の特徴は、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0055】
本発明の第52の特徴は、肝臓X受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0056】
本発明の第53の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadユビキチン化促進方法であることを要旨とする。
【0057】
本発明の第54の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadユビキチン化促進方法であることを要旨とする。
【0058】
本発明の第55の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞に投与することを含む、Smadユビキチン化促進方法であることを要旨とする。
【0059】
本発明の第56の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smurfの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0060】
本発明の第57の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smurfの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0061】
本発明の第58の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smurfの分解誘導方法であることを要旨とする。
【0062】
本発明の第59の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smurfユビキチン化促進方法であることを要旨とする。
【0063】
本発明の第60の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smurfユビキチン化促進方法であることを要旨とする。
【0064】
本発明の第61の特徴は、エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smurfユビキチン化促進方法であることを要旨とする。
【0065】
本発明の第62の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを含む、細胞の遊走能の抑制剤であることを要旨とする。
【0066】
本発明の第63の特徴は、エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、細胞の遊走能の抑制方法であることを要旨とする。
【0067】
本発明の第64の特徴は、細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、リガンドを投与された細胞における、TGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を計測するステップとを備えるTGF-βシグナル伝達機構を阻害する核内受容体のリガンドのスクリーニング方法であることを要旨とする。
【0068】
本発明の第65の特徴は、細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、リガンドを投与された細胞におけるSmadの量を計測するステップとを備えるSmadの分解を誘導する核内受容体のリガンドのスクリーニング方法であることを要旨とする。
【0069】
本発明の第66の特徴は、細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、核内受容体のリガンドを投与された細胞における、TGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を計測するステップと、転写活性を低下させた核内受容体のリガンドを選択するステップで選択された核内受容体のリガンドを含む、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤であることを要旨とする。
【0070】
本発明の第67の特徴は、細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、核内受容体のリガンドを投与された細胞における、Smadの量を計測するステップと、Smadの量を減少させた核内受容体のリガンドを選択するステップで選択された核内受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、TGF-βシグナル伝達機構の阻害剤、Smadの分解誘導剤、Smadユビキチン化促進剤、Smurfの分解誘導剤、Smurfユビキチン化促進剤、TGF-βシグナル伝達機構の阻害方法、Smadの分解誘導方法、Smadユビキチン化促進方法、Smurfの分解誘導方法、及びSmurfユビキチン化促進方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
次に本発明の実施の形態を説明する。なお以下の示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための方法等を例示するものであって、この発明の技術的思想を下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0073】
エストロゲン(Estrogen)は女性生殖器の発達、性周期維持、骨形成調節、及び乳癌増悪等の生理作用を有する。エストロゲンの生理作用は、エストロゲン受容体(ER)を介して発揮される。ERは脂溶性リガンド依存的な転写因子である核内受容体の一つであり、Aドメイン、Bドメイン、Cドメイン、Dドメイン、Eドメイン、及びFドメインから構成される。またERには、エストロゲン受容体α(ERα)及びエストロゲン受容体β(ERβ)の2種類が存在する。エストロゲンがERに結合すると、ERはDNA上の特異的な配列に結合し、標的遺伝子の発現を誘導する。
【0074】
ERαは乳癌細胞の増殖を促進する。しかし転移能を有する悪性の癌細胞では、ERαは発現せず、予後は不良である。これに対し、ERαを発現していない癌細胞にERα発現ベクターをトランスフェクトすると、癌細胞の転移能は抑制される。
【0075】
一方、TGF (Transforming Growth Factor)-βシグナルは、細胞表面に存在するTGF-β受容体及びTGF-β受容体の下流因子であるR-Smad (Receptor-Regulated Smad)によって伝達される。TGF-β受容体はセリン/スレオニン型キナーゼ受容体であり、7種類のI型受容体と5種類のII型受容体が存在する。TGF-βはII型受容体及びI型受容体の両方に結合し、TGF-β、I型受容体2分子、及びII型受容体2分子からなるヘテロ複合体を形成する。II型受容体は恒常的に活性型であり、TGF-βの結合によりI型受容体をリン酸化する。リン酸化されキナーゼ活性を有するI型受容体は、R-Smadをリン酸化する。リン酸化されたR-Smadは核内に移行し、転写因子として機能する。なおR-Smadは、構造及び機能によって、AR-Smad及びBR-Smadに分類される。AR-SmadにはSmad2及びSmad3が存在し、BR-SmadにはSmad1、Smad5、及びSmad8が存在する。
【0076】
R-Smadのリン酸化は、I型受容体に直接結合するI-Smad (Inhibitory-Smad)によって阻害される。またI-SmadはユビキチンE3リガーゼSmurf-1 (Smad ubiquitination regulating factor-1)と結合してI型受容体をユビキチン化し、ユビキチンプロテオソームによるI型受容体の分解を誘導し、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する。
【0077】
ここで発明者は、エストロゲン受容体のリガンドがSmadのユビキチン化及びSmadの分解を誘導し、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することを見いだした。ここでエストロゲン受容体のリガンドとは、エストロゲン、エストラジオール(Estradiol:E2)、及びDPN (diarylpropionitrile)等のエストロゲンのアゴニストを指す。したがって、少なくともエストロゲン受容体のリガンドを含む薬を、ヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞、又は非ヒト動物に投与することにより、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することが可能となる。また発明者は、エストロゲン受容体がSmadのユビキチン化及びSmadの分解を誘導し、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することを見いだした。したがって、エストロゲン受容体発現ベクターをヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞にトランスフェクトすることにより、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することが可能となる。
【0078】
TGF-βシグナル伝達機構を制御することは、癌(乳癌、肺癌、子宮癌、前立腺癌、膵臓癌、メラノーマ)、肺線維化症、腎線維化症、及び肝硬変の治療、研究に有用である。
【0079】
さらに発明者は、エストロゲン受容体のリガンドがSmurfのユビキチン化及び分解を誘導することを見いだした。したがって、少なくともエストロゲン受容体のリガンドを含む薬をヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞、又は非ヒト動物に投与することにより、Smurfをユビキチン化し、分解することが可能となる。また発明者は、エストロゲン受容体がSmurfのユビキチン化及び分解を誘導することを見いだした。エストロゲン受容体をヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞にトランスフェクトすることにより、Smurfをユビキチン化し、分解することが可能となる。
【0080】
また発明者は、グルココルチコイド受容体のリガンド、ビタミンD受容体のリガンド、プロゲステロン受容体のリガンド、及びレチノイン酸受容体のリガンドがTGF-βシグナル伝達機構を阻害することを見いだした。ここでグルココルチコイド受容体のリガンドとは、デキサメタゾン(dexamethasone)及びフルチカゾンプロピオネート(fluticasone propionate)等を指す。ビタミンD受容体のリガンドとは、アルファカルシドール(alfacalcidole)、1,25ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)、及びカルシポトリオール(calcipotriol)等を指す。プロゲステロン受容体のリガンドとは、メドロキシプロゲステロン(MPA)、ノルエチステロン(norethisterone)、及び酢酸クロルマジノン(chlormadione acetate)等を指す。レチノイン酸受容体(RAR)のリガンドとは、合成RARアゴニストAM580及びRAR選択的アゴニストTTNPB等を指す。したがって、少なくともグルココルチコイド受容体のリガンド、ビタミンD受容体のリガンド、プロゲステロン受容体のリガンド、又はレチノイン酸受容体のリガンドを含む薬を、ヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞、又は非ヒト動物に投与することにより、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することが可能となる。
【0081】
また発明者は、グルココルチコイド受容体及びプロゲステロン受容体がTGF-βシグナル伝達機構を阻害することを見いだした。したがって、グルココルチコイド受容体発現ベクター又はプロゲステロン受容体発現ベクターをヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞にトランスフェクトすることにより、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することが可能となる。
【0082】
また発明者は、アンドロゲン受容体のリガンド、ビタミンD受容体のリガンド、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンド、及び肝臓X受容体のリガンドがSmadの分解を誘導することを見いだした。ここでアンドロゲン受容体のリガンドとはメチルテストステロン(Methyltestosterone)等を、ビタミンD受容体のリガンドとは1,25ジヒドロキシビタミンD3等を、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドとはトログリタゾン(trogritazone)等を、肝臓X受容体(LXR)のリガンドとはLXRアゴニストTO-901317 (N-(2,2,2-Trifluoroethyl)-N-[4-(2,2,2-trifluoro-1-hydroxy-1-trifluoromethylethyl)phenyl]benzenesulfonamide)等を指す。したがって、少なくともアンドロゲン受容体のリガンド、ビタミンD受容体のリガンド、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンド、又は肝臓X受容体のリガンドを含む薬を、ヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞、又は非ヒト動物に投与することにより、Smadの分解を誘導することが可能となる。
【0083】
また発明者は、アンドロゲン受容体、ビタミンD受容体、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体、及び肝臓X受容体がSmadの分解を誘導することを見いだした。したがって、アンドロゲン受容体発現ベクター、ビタミンD受容体発現ベクター、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体発現ベクター、又は肝臓X受容体発現ベクターをヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞にトランスフェクトすることにより、Smadの分解を誘導することが可能となる。
【0084】
また発明者は、エストロゲン受容体のリガンドが細胞の遊走能の抑制することを見いだした。したがって、少なくともエストロゲン受容体のリガンドを含む薬を、ヒトあるいは非ヒト動物等から単離された細胞、又は非ヒト動物に投与することにより、細胞の遊走能の抑制することが可能となる。
【0085】
従来、核内受容体のリガンドと、TGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性との関係は解明されていなかった。しかし発明者は、核内受容体のリガンドであるエストロゲン等がTGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を抑制することを見いだした。したがって、他の核内受容体のリガンドも、TGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を抑制する可能性がある。よって、細胞に核内受容体のリガンドを投与し、リガンドを投与された細胞におけるTGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を計測することにより、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する核内受容体のリガンドをスクリーニングすればよい。TGF-βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を低下させた核内受容体のリガンドを、TGF-βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤として使用することが可能となる。
【0086】
また従来は、核内受容体のリガンドが、Smadの分解を誘導することは解明されていなかった。しかし発明者は、核内受容体のリガンドであるエストロゲン等がSmadの分解を誘導することを見いだした。したがって、他の核内受容体のリガンドもSmadの分解を誘導する可能性がある。よって、細胞に核内受容体のリガンドを投与し、リガンドを投与された細胞におけるSmadの量を計測することにより、Smadの分解を誘導する核内受容体のリガンドをスクリーニングすればよい。Smadの量を減少させた核内受容体のリガンドを、Smadの分解誘導剤として使用することが可能となる。
【0087】
(第1の実施例)
ERαが発現していない転移性乳癌細胞(MDA-MB-231細胞)、ERαが発現しているMDA-MB231細胞、及びERαが発現しているヒト乳癌由来細胞(MCF-7細胞)のそれぞれを、体積比で10%のウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM: Dulbecco's modified Eagle's medium)で培養した。次にDMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後にTGF-βシグナルの応答配列であるCAGAが9回繰り返される配列及びルシフェラーゼ遺伝子配列を含むレポータプラスミドを、ERα未発現MDA-MB-231細胞、ERα発現MDA-MB231細胞、及びMCF-7細胞のそれぞれにトランスフェクトした。
【0088】
トランスフェクションから24時間後、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、TGF-β、エストロゲン、及びエストロゲン受容体(ER)拮抗剤ICI182,780(フルベストラント)のそれぞれを、条件に応じてDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後、ERα未発現MDA-MB-231細胞、ERα発現MDA-MB231細胞、及びMCF-7細胞のそれぞれを回収し、ルシフェラーゼアッセイによりレポータプラスミドの転写活性を測定した。
【0089】
図1に示すグラフの第1及び第2条件に示すように、TGF-βをDMEMに添加した場合、MCF-7細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は、TGF-βをDMEMに添加しなかった場合と比較して上昇した。また図1に示すグラフの第5及び第6条件に示すように、TGF-βに加えてER拮抗剤ICI182,780をDMEMに添加した場合、MCF-7細胞におけるレポータプラスミドの転写活性はさらに上昇した。
【0090】
これに対し、図1に示すグラフの第3及び第4条件に示すように、TGF-βに加えてエストロゲンをDMEMに添加した場合、MCF-7細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は、エストロゲンをDMEMに添加しなかった場合と比較して抑制された。ERα発現MDA-MB231細胞においても、同様の結果が得られた。したがって、ERαが発現している細胞においては、エストロゲンによってTGF-βシグナル伝達機構が阻害されることが示された。
【0091】
なお、ERα未発現のMDA-MB-231細胞においても、TGF-βをDMEMに添加した場合、レポータプラスミドの転写活性は上昇した。しかし、TGF-βに加えてエストロゲンをDMEMに添加した場合、MDA-MB-231細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は抑制されなかった。そのため、エストロゲンによるTGF-βシグナル伝達機構の阻害には、ERαが必要であることが示された。
【0092】
なお図中において、レポーター遺伝子のみをトランスフェクトした細胞におけるバックグラウンド発現量を1とした場合のレポーター遺伝子の発現量の比をfoldで表している。
【0093】
(第2の実施例)
ERα未発現のヒト胎児腎臓細胞(293E細胞)を、体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。次にDMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後にレポータプラスミドと共に、不活性型TGF-βI型受容体(ALK5 KR)発現ベクター、恒常活性型TGF-βI型受容体(ALK5 TD)発現ベクター、ERα発現ベクター、及びDNA結合能を有しない変異型ERα発現ベクターのそれぞれを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。
【0094】
トランスフェクションから24時間後、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、エストロゲン又はER拮抗剤ICI182,780を条件に応じてDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイによりレポータプラスミドの転写活性を測定した。
【0095】
図2に示すにグラフの第1及び第2条件に示すように、不活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、ERα発現ベクター、及び変異型ERα発現ベクターのいずれもが293E細胞にトランスフェクトされなかった場合、及びレポータプラスミド及び不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターのみを293E細胞にトランスフェクトした場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写は活性化されなかった。
【0096】
これに対し、図2に示すにグラフの第3乃至第5条件に示すように、レポータプラスミド及び恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写は活性化された。なお、エストロゲン又はER拮抗剤ICI182,780をDMEMに添加しても、レポータプラスミドの転写活性は、ほぼ変化しなかった。
【0097】
図2に示すにグラフの第6条件に示すように、レポータプラスミド、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、及びERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は、第3乃至第5条件と比較して減少した。図2に示すにグラフの第7条件に示すように、レポータプラスミド、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、及びERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、さらにエストロゲンをDMEMに添加した場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性はさらに減少した。しかし、図2に示すにグラフの第8条件に示すように、さらにER拮抗剤ICI182,780をDMEMに添加した場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は、第3乃至第5条件と同様になった。
【0098】
図2に示すにグラフの第9条件に示すように、レポータプラスミド、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、及び変異型ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合も、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は、第3乃至第5条件と比較して減少した。図2に示すにグラフの第10条件に示すように、レポータプラスミド、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、及び変異型ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、さらにエストロゲンをDMEMに添加した場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性はさらに減少した。しかし、図2に示すにグラフの第11条件に示すように、さらにER拮抗剤ICI182,780をDMEMに添加した場合、レポータプラスミドの転写活性は、第3乃至第5条件と同様になった。
【0099】
したがって、ERαによるTGF-βシグナル伝達機構の阻害は、ERαとDNAとの結合を要しない非ゲノム経路(nongenomic pathway)で行われることが示された。
【0100】
(第3の実施例)
MCF-7細胞を体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMで培養し、TGF-β、エストロゲン、ER拮抗剤ICI182,780、及びプロテアソーム阻害剤MG132のそれぞれを条件に応じてDMEMに添加した。3時間後、MCF-7細胞を回収し、抗Smad2マウスモノクローナル抗体、抗Smad3マウスモノクローナル抗体、抗リン酸化Smad2ラビットモノクローナル抗体、抗リン酸化Smad3ラビットモノクローナル抗体、抗ERαマウスモノクローナル抗体、及びβアクチンマウスモノクローナル抗体のそれぞれを用いてウェスタンブロッティング(Western blotting)した。
【0101】
図3に示すブロッティング膜の第1乃至第3レーンに示すように、DMEMにエストロゲン又はER拮抗剤ICI182,780を添加した場合、MCF-7細胞におけるERαの量は、エストロゲン又はER拮抗剤ICI182,780を添加しなかった場合と比較して減少した。しかし、Smad2及びSmad3の量は変化しなかった。
【0102】
図3に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、DMEMにTGF-βを添加した場合、リン酸化Smad2及びリン酸化Smad3の発現が検出された。しかし図3に示すブロッティング膜の第5レーンに示すように、DMEMにTGF-β及びエストロゲンを添加すると、Smad2、Smad3、リン酸化Smad2、リン酸化Smad3、及びERαの量は第4レーンと比較して減少した。また図3に示すブロッティング膜の第6レーンに示すように、DMEMにTGF-β及びER拮抗剤ICI182,780を添加すると、リン酸化Smad2の量は第4レーンと比較してわずかに減少したが、Smad2、Smad3、及びリン酸化Smad3の量は第4レーンと同様であった。ただしERαの量は第4レーンと比較して顕著に減少した。
【0103】
図3に示すブロッティング膜の第7レーンに示すように、DMEMにTGF-β及びエストロゲンに加えてプロテアソーム阻害剤MG132を添加すると、Smad2、Smad3、リン酸化Smad2、リン酸化Smad3、及びERαの量の減少は抑制された。
【0104】
したがって、エストロゲンは、プロテアソームによるSmad2、Smad3、リン酸化Smad2、リン酸化Smad3、及びERαの分解を誘導することが示された。
【0105】
(第4の実施例)
MCF7細胞からAGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法等により、 rRNA、tRNA、及びmRNAを含む全RNA(total RNA)を抽出した。次にオリゴ(dT)プライマーを用いて、全RNAに含まれるmRNAと相補的なcDNAを合成した。その後、以下の配列からなるフォワードプライマー(forward primer)及びリバースプライマー(reverse primer)を用いて、Smad2をコードするcDNA(Smad2 cDNA)をPCR (Polymerase Chain Reaction)装置で増幅した。
【0106】
フォワードプライマー 5'-gctgaattcatgtcgttcatcttgccatt-3'
リバースプライマー 5'-atactcgaggctttatgacatgcttgagc-3'
得られたSmad2 cDNAを6Xmyc配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpcDNA3の制限酵素切断部位(EcoR1とXho1)の間に挿入し、Smad2発現ベクターを得た。
【0107】
またERα未発現の293E細胞を、体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。次にDMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、Smad2発現ベクター及びSmad3発現ベクターと共に、条件に応じてERα発現ベクター又はDNA結合能を有しない変異型ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、エストロゲン及びプロテアソーム阻害剤MG132のそれぞれを条件に応じてDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、抗Smad2マウスモノクローナル抗体、抗Smad3マウスモノクローナル抗体、抗ERαマウスモノクローナル抗体、及びβアクチンマウスモノクローナル抗体のそれぞれを用いてウェスタンブロッティングした。
【0108】
図4に示すブロッティング膜の第1及び第2レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、エストロゲンをDMEMに添加しても、Smad2及びSmad3の量は変化しなかった。図4に示すブロッティング膜の第3及び第4レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、エストロゲンをDMEMに添加すると、Smad2、Smad3、及びERαの量は減少した。また図4に示すブロッティング膜の第5及び第6レーンに示すように、変異型ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合も、エストロゲンをDMEMに添加すると、Smad2、Smad3、及び変異型ERαの量は減少した。
【0109】
なお図4に示すブロッティング膜の第7及び第8レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、プロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加した場合、エストロゲンをDMEMに添加してもSmad2、Smad3、及びERαの量は変化しなかった。したがって、エストロゲンが誘導するプロテアソームによるSmad2及びSmad3の分解にはERαが必要であるが、ERαのDNA結合能は必要ないことが示された。
【0110】
(第5の実施例)
293E細胞をポリ-L-リシンでコートされた8ウェルカルチャースライド上で培養し、Smad2発現ベクター及びERα発現ベクターと共に、恒常活性型TGF-βI型受容体(ALK5 TD)発現ベクター又は不活性型TGF-βI型受容体(ALK5 KR)発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、293E細胞を4 %の体積濃度でパラフォルムアルデヒド(PFA : paraformaldehyde)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS: Phosphate buffered saline)で10分間固定した。固定した293E細胞をPBSで洗浄した後、Tritonバッファ(pH7.5の50 m mol/l Tris-HCl, 0.5 % Triton X-100, 150 m mol/l NaCl, 2 m mol/l EDTA)で15分間透過処理した。次に293E細胞をPBSで洗浄し、1 % BSAおよび0.5 %ヤギ血清を含む37℃のPBSで3時間ブロッキングした後、293E細胞を抗ERαマウスモノクローナル抗体又は抗Smad2マウスモノクローナル抗体を含む37℃の溶液中に2時間配置した。その後293E細胞をPBSで洗浄し、293E細胞をAlexa fluor (登録商標)488ヤギ抗マウスIgG抗体又はAlexa fluor (登録商標)594ヤギ抗マウスIgG抗体を含む37℃の溶液中に1時間配置した。最後に293E細胞をPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡で観察した。
【0111】
恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター及び不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、図5に示すように、過剰発現したSmad2は核と細胞質の両方に局在していた。また図6に示すように、ERαは核内に局在していた。恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、図7に示すように、Smad2は主に核に局在し、図8に示すように、ERαは核内に局在していた。不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、図9に示すように、Smad2は主に細胞質に局在し、図10に示すように、ERαは核内に局在していた。
【0112】
次にERα未発現の293E細胞を、体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、Smad2発現ベクター、Smad3発現ベクター及びERα発現ベクターと共に、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター又は不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じて、エストロゲンをDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、抗Smad2マウスモノクローナル抗体、抗Smad3マウスモノクローナル抗体、抗ERαマウスモノクローナル抗体、及びβアクチンマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0113】
図11に示すブロッティング膜の第1及び第2レーンに示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクター及び不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、エストロゲンをDMEMに添加するとSmad2はわずかに分解された。これに対し図11に示すブロッティング膜の第3及び第4レーンに示すように、Smad2をリン酸化する恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、エストロゲンをDMEMに添加するとSmad2及びERαは顕著に分解された。しかし図11に示すブロッティング膜の第5及び第6レーンに示すように、Smad2をリン酸化しない不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、エストロゲンをDMEMに添加してもSmad2は分解されなかった。
【0114】
したがって、Smad2のリン酸化及び核内移行が、ERαによるSmad2の分解に必要であることが示された。
【0115】
(第6の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、ERα発現ベクター、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター、及びHAエピトープタグ融合ユビキチン発現ベクターのそれぞれを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、プロテアソーム阻害剤MG132及び条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。
【0116】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤混合物を含むRIPA(radioimmuno precipitation)バッファ(pH7.5の50 m mol/l Tris-HCl, 150m mol/l NaCl, 1 % Nonidet P-40, 0.5 % sodium deoxycholate, 0.1 % SDS)に縣濁した。その後、縣濁液を氷上に20分間静置して293E細胞を溶解した。次に縣濁液を遠心分離して得られた上清を、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体又は抗HAラットモノクローナル抗体を用いて4℃、1時間免疫沈降した。
【0117】
次に、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いた免疫沈降により得られたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2を含むタンパク質を、抗HAラットモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングした。また抗HAラットモノクローナル抗体を用いた免疫沈降により得られたHAエピトープタグ融合ユビキチンを含むタンパク質を、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングした。
【0118】
図12に示すブロッティング膜の第1レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2は検出されなかった。図12に示すブロッティング膜の第2及び第3レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドが検出された。しかし、エストロゲンをDMEMに添加してもユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2の検出量は変化しなかった。
【0119】
これに対し、図12に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、ERα発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトした場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドの検出強度は第2及び第3レーンと比較して上昇した。さらにエストロゲンをDMEMに添加すると、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドの検出強度はさらに上昇した。
【0120】
したがってERα及びエストロゲンは、Smad2のユビキチン化を促進することが示された。
【0121】
(第7の実施例)
MCF-7細胞を体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMで培養し、エストロゲン及びプロテアソーム阻害剤MG132のそれぞれを、条件に応じてDMEMに添加した。24時間後、MCF-7細胞を回収し、抗Smurf1ヤギポリクローナル抗体及びβアクチンマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0122】
図13に示すブロッティング膜の第1及び第2レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加した場合、MCF-7細胞におけるSmurf1の量は減少した。しかし、図13に示すブロッティング膜の第3及び第4レーンに示すように、エストロゲン及びプロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加した場合、Smurf1の量は減少しなかった。
【0123】
したがって、エストロゲンはプロテアソームによるSmurfの分解を誘導することが示された。
【0124】
(第8の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、Smurf1発現ベクター又はアミノ酸置換によりユビキチンリガーゼ活性を失わせた変異型Smurf1発現ベクターと共に、条件に応じてERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じて、エストロゲン及びプロテアソーム阻害剤MG132のそれぞれをDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後293E細胞を回収し、抗Smurf1ヤギポリクローナル抗体及びβアクチンモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0125】
図14に示すブロッティング膜の第1及び第2レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、エストロゲンをDMEMに添加しても、293E細胞におけるSmurf1及び変異型Smurf1の量は変化しなかった。これに対し図14に示すブロッティング膜の第3レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、Smurf1の量は第1レーンと比較して減少した。ただし、変異型Smurf1の量は変化しなかった。図14に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、エストロゲンをDMEMに添加した場合、Smurf1の量は第3レーンと比較してさらに減少した。ただし、変異型Smurf1の量は変化しなかった。また図14に示すブロッティング膜の第5及び第6レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、エストロゲン及びプロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加した場合、Smurf1及び変異型Smurf1の量は変化しなかった。
【0126】
したがってエストロゲン及びERαは、プロテアソームによるSmurfの分解を誘導することが示された。また変異型Smurf1は分解されなかったことから、エストロゲン及びERαが誘導するSmurf1の分解には、Smurf1自身のユビキチンリガーゼ活性が必要なことが示された。
【0127】
(第9の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、HAエピトープタグ融合ユビキチン発現ベクターと共に、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1発現ベクター及びERα発現ベクターのそれぞれを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、プロテアソーム阻害剤MG132及び条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。
【0128】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤混合物を含むRIPAバッファに縣濁した。その後、縣濁液を氷上で20分間静置して293E細胞を溶解した。次に縣濁液を遠心分離して得られた上清を、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体又は抗HAラットモノクローナル抗体を用いて4℃、1時間免疫沈降した。
【0129】
次に、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いた免疫沈降により得られたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1を含むタンパク質を、抗HAラットモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングした。また抗HAラットモノクローナル抗体を用いた免疫沈降により得られたHAエピトープタグ融合ユビキチンを含むタンパク質を、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングした。
【0130】
図15に示すブロッティング膜の第1レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1は検出されなかった。図15に示すブロッティング膜の第2及び第3レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1のスメアなバンドが検出された。しかし、エストロゲンをDMEMに添加してもユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1の検出量は変化しなかった。
【0131】
これに対し図15に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、ERα発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトした場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1のスメアなバンドの検出強度は、第2レーンと比較して上昇した。また図15に示すブロッティング膜の第5レーンに示すように、ERα発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトし、エストロゲンをDMEMに添加した場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smurf1のスメアなバンドの検出強度は、第4レーンと比較してさらに上昇した。
【0132】
したがってERα及びエストロゲンは、Smurf1のユビキチン化を促進することが示された。
【0133】
(第10の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、Smad2発現ベクター及びSmad3発現ベクターと共に、ERα発現ベクター、Smurf1発現ベクター、及びユビキチンリガーゼ活性を失わせた変異型Smurf1発現ベクターのそれぞれを、条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、抗Smad2マウスモノクローナル抗体、抗Smad3マウスモノクローナル抗体、抗ERαマウスモノクローナル抗体、抗Smurf1ヤギポリクローナル抗体、及びβアクチンマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0134】
図16に示すブロッティング膜の第1及び第2レーンに示すように、ERα発現ベクター、Smurf1発現ベクター、及び変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、エストロゲンをDMEMに添加しても293E細胞におけるSmad2及びSmad3の量は変化しなかった。また図16に示すブロッティング膜の第3及び第4レーンに示すように、Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合も、エストロゲンをDMEMに添加してもSmad2及びSmad3の量は変化しなかった。
【0135】
これに対し図16に示すブロッティング膜の第5及び第6レーンに示すように、ERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、エストロゲンをDMEMに添加するとSmad2及びSmad3の量はわずかに減少した。
【0136】
また図16に示すブロッティング膜の第7レーンに示すように、ERα発現ベクター及びSmurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、Smad2、Smad3、ERα、及びSmurf1の量は、第5レーンと比較して減少した。図16に示すブロッティング膜の第8レーンに示すように、ERα発現ベクター及びSmurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、エストロゲンをDMEMに添加した場合、Smad2、Smad3、ERα、及びSmurf1の量は、第7レーンと比較して顕著に減少した。
【0137】
しかし図16に示すブロッティング膜の第9及び第10レーンに示すように、ERα発現ベクター及び変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、エストロゲンをDMEMに添加してもSmad2及びSmad3の検出量は変化しなかった。
【0138】
したがって、エストロゲン及びERαによってユビキチン化されたSmurf1は、エストロゲン及びERαが誘導するSmad2及びSmad3の分解を促進することが示された。
【0139】
(第11の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、ERα発現ベクター、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター、Smurf1発現ベクター、ユビキチンリガーゼ活性を失わせた変異型Smurf1発現ベクター、及びHAエピトープタグ融合ユビキチン発現ベクターのそれぞれを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、プロテアソーム阻害剤MG132及び条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。
【0140】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、プロテアーゼ阻害剤混合物を含むRIPAバッファに縣濁した。その後、縣濁液を氷上で20分間静置して293E細胞で溶解した。次に縣濁液を遠心分離して得られた上清を、抗HAラットモノクローナル抗体又は抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いて4℃、1時間免疫沈降した。
【0141】
次に、抗HAラットモノクローナル抗体を用いた免疫沈降により得られたHAエピトープタグ融合ユビキチンを含むタンパク質を、抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングした。また抗FLAG(登録商標)M2マウスモノクローナル抗体を用いた免疫沈降により得られたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2を含むタンパク質を、抗HAラットモノクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティングした。
【0142】
図17に示すブロッティング膜の第1レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2は検出されなかった。図17に示すブロッティング膜の第2レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクター及びSmurf1発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドは検出されなかった。
【0143】
これに対し、図17に示すブロッティング膜の第3レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター及びERα発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトし、Smurf1発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドが検出された。また図17に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加すると、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2の量は、第3レーンと比較してわずかに増加した。
【0144】
図17に示すブロッティング膜の第5レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター及びSmurf1発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトしなかった場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドはわずかに検出された。また図17に示すブロッティング膜の第6レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加しても、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2の検出量は変化しなかった。
【0145】
図17に示すブロッティング膜の第7レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター、ERα発現ベクター、及びSmurf1発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトした場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドは、第3レーンよりも強く検出された。また図17に示すブロッティング膜の第8レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加すると、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2の検出量は第7レーンと比較して顕著に増加した。
【0146】
なお図17に示すブロッティング膜の第9レーンに示すように、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター、ERα発現ベクター、及び変異型Smurf1発現ベクターを283E細胞にトランスフェクトした場合、ユビキチン化されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2のスメアなバンドの検出強度は、第3レーンと同様であった。
【0147】
したがって、エストロゲン及びERαによってユビキチン化されたSmurf1は、エストロゲン及びERαによるSmad2のユビキチン化をさらに促進することが示された。
【0148】
(第12の実施例)
293E細胞を、体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。次にDMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後にTGF-βシグナルの応答配列であるCAGAが9回繰り返される配列及びルシフェラーゼ遺伝子配列を含むレポータプラスミドと共に、不活性型TGF-βI型受容体(ALK5 KR)発現ベクター、恒常活性型TGF-βI型受容体(ALK5 TD)発現ベクター、ERα発現ベクター、及びユビキチンリガーゼ活性を失わせた変異型Smurf1発現ベクターのそれぞれを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。
【0149】
トランスフェクションから24時間後、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じて、エストロゲン及びプロテアソーム阻害剤MG132のそれぞれをDMEMに添加した。さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイによりレポータプラスミドの転写活性を測定した。
【0150】
図18に示すグラフの第1条件に示すように、不活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクター及び変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は検出されなかった。
【0151】
図18に示すグラフの第2条件に示すように、活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、ERα発現ベクター及び変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は検出された。また図18に示すグラフの第2条件に示すように、エストロゲンをDMEMに添加しても、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は変化しなかった。
【0152】
図18に示すグラフの第4条件に示すように、活性型TGF-βI型受容体発現ベクター及びERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は第2条件と比較して低下した。また図18に示すグラフの第5条件に示すように、エストロゲンをDMEMに添加すると、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は第4条件と比較してさらに低下した。
【0153】
しかし図18に示すグラフの第6条件に示すように、活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、ERα発現ベクター、及び変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、293E細胞に変異型Smurf1を過剰発現させた場合、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は第2条件と同様であった。また図18に示すグラフの第7条件に示すように、エストロゲンをDMEMに添加しても、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は変化しなかった。
【0154】
なお図18に示すグラフの第8条件に示すように、活性型TGF-βI型受容体発現ベクター及びERα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトせず、プロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加した場合も、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は第2条件と同様であった。また図18に示すグラフの第9条件に示すように、エストロゲンをDMEMに添加しても、293E細胞におけるレポータプラスミドの転写活性は変化しなかった。
【0155】
したがって、エストロゲン及びERαによってユビキチン化されたSmurf1は、エストロゲン及びERαが誘導するプロテアソームによるSmad2の分解を促進し、TGF-βシグナル伝達機構を阻害することが示された。
【0156】
(第13の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、ERα発現ベクター、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター、及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3発現ベクターのそれぞれを、条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。
【0157】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、TNEバッファ(pH7.8の10m mol/l Tris-HCl, 1 % Nonidet-P 40(登録商標), 0.15mol/l NaCl, 1m mol/l EDTA, 1μmol/l フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF), 1μg/ml アプロチニン)で溶解した。次に溶解液から抽出したFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3を含むタンパク質を、抗FLAG(登録商標)M2モノクローナル抗体を用いて免疫沈降した。さらに免疫沈降されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3を含むタンパク質をSDS-PAGEで分離した後、抗ERαマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0158】
図19に示すブロッティング膜の第1乃至第4レーンに示すように、ERα発現ベクター、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクター、及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3発現ベクターのそれぞれを単独で293E細胞にトランスフェクトしても、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2とERαの複合体、あるいはFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3とERαの複合体は検出されなかった。
【0159】
これに対し、図19に示すブロッティング膜の第5レーンに示すように、ERα発現ベクター、及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターで293E細胞にトランスフェクトした場合、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2とERαの複合体が検出された。図19に示すブロッティング膜の第6レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加した場合、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2とERαの複合体の検出量はわずかに減少した。
【0160】
また図19に示すブロッティング膜の第7レーンに示すように、ERα発現ベクター、及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3とERαの複合体が検出された。図19に示すブロッティング膜の第8レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加した場合、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad3とERαの複合体の検出量はわずかに減少した。
【0161】
したがって、エストロゲンが存在しなくとも、Smad2とERαの複合体、及びSmad3とERαの複合体は形成されることが示された。
【0162】
(第14の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、ERα発現ベクター、及びユビキチンリガーゼ活性を失わせたHAエピトープタグ融合変異型Smurf1発現ベクターのそれぞれを、条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。
【0163】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収してTNEバッファに溶解した。次に溶解液から抽出したHAエピトープタグ融合変異型Smurf1を含むタンパク質を、抗HAモノクローナル抗体を用いて免疫沈降した。さらに免疫沈降されたHAエピトープタグ融合変異型Smurf1を含むタンパク質をSDS-PAGEで分離した後、抗ERαマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0164】
図20に示すブロッティング膜の第1乃至第3レーンに示すように、ERα発現ベクター及びHAエピトープタグ融合変異型Smurf1発現ベクターのそれぞれを単独で293E細胞にトランスフェクトしても、HAエピトープタグ融合変異型Smurf1とERαの複合体は検出されなかった。これに対し、図20に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、ERα発現ベクター及びHAエピトープタグ融合変異型Smurf1発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、HAエピトープタグ融合変異型Smurf1とERαの複合体が検出された。図20に示すブロッティング膜の第5レーンに示すように、エストロゲンをDMEMに添加した場合、HAエピトープタグ融合変異型Smurf1とERαの複合体の検出量はわずかに減少した。
【0165】
したがって、エストロゲンが存在しなくとも、変異型Smurf1とERαの複合体は形成されることが示された。
【0166】
(第15の実施例)
293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、ERα発現ベクターと共に、ユビキチンリガーゼ活性を失わせた6回繰り返しMycエピトープタグ融合変異型Smurf1発現ベクター、及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターのそれぞれを、条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じてエストロゲンをDMEMに添加した。
【0167】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収してTNEバッファに溶解した。溶解液から抽出したFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2を含むタンパク質を、抗FLAG(登録商標)モノクローナル抗体を用いて免疫沈降した。その後、免疫沈降されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2を含むタンパク質を、抗Mycモノクローナル抗体を用いてさらに免疫沈降した。次に、免疫沈降されたFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2とMycエピトープタグ融合変異型Smurf1の複合体をSDS-PAGEで分離した後、抗ERαマウスモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0168】
図21に示すブロッティング膜の第1乃至第3レーンに示すように、ERα発現ベクターのみ、あるいはERα発現ベクター及びMycエピトープタグ融合変異型Smurf1発現ベクターのみ、あるいはERα発現ベクター及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターのみを293E細胞にトランスフェクトしても、Mycエピトープタグ融合変異型Smurf1と、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2と、ERαの複合体は検出されなかった。
【0169】
これに対し、図21に示すブロッティング膜の第4レーンに示すように、ERα発現ベクター、Mycエピトープタグ融合変異型Smurf1発現ベクター、及びFLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合、Mycエピトープタグ融合変異型Smurf1と、FLAG(登録商標)エピトープタグ融合Smad2と、ERαの複合体は検出された。
【0170】
したがって、変異型Smurf1と、Smad2と、ERαとは、複合体を形成していることが示された。
【0171】
(第16の実施例)
293E細胞からAGPC法等により全RNAを抽出した。次にオリゴ(dT)プライマーを用いて、全RNAに含まれるmRNAと相補的なcDNAを合成した。その後、以下の配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、ERβをコードするcDNA(ERβ cDNA)をPCR 装置で増幅した。
【0172】
フォワードプライマー 5'-ggatccatggatataaaaaactcac-3'
リバースプライマー 5'-taggatcctcaaagcagcacgtgggt-3'
得られたERβ cDNAをFLAG(登録商標)配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpCMV5の制限酵素切断部位(BamHI)の間に挿入し、ERβ発現ベクターを得た。
【0173】
また以下の配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、アンドロゲン受容体(AR)をコードするcDNA(AR cDNA)をPCR 装置で増幅した。
【0174】
フォワードプライマー 5'-aagcggccgctatggaagtgcagttagggctg-3'
リバースプライマー 5'-tgcggatcctcactgggtgtggaaatagatg-3'
得られたAR cDNAをFLAG(登録商標)配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpCMV5の制限酵素切断部位(Not1とBamH1)の間に挿入し、アンドロゲン受容体(AR)発現ベクターを得た。
【0175】
また以下の配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)をコードするcDNA(PPARγ cDNA)をPCR 装置で増幅した。
【0176】
フォワードプライマー 5'-aattcggtgaaactctgggagatgct-3'
リバースプライマー 5'-taggatccctagcacaagtccttgtagat-3'
得られたPPARγ cDNAをFLAG(登録商標)配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpcDNA3の制限酵素切断部位(EcoR1とXba1)の間に挿入し、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)発現ベクターを得た。
【0177】
また以下の配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、肝臓X受容体(LXR: Liver X Receptor)αをコードするcDNA(LXRα cDNA)をPCR 装置で増幅した。
【0178】
フォワードプライマー 5'-aaggatccatgtccttgtggctgggg-3'
リバースプライマー 5'-ttctcgagtcattcgtgcacatcccagatc-3'
得られたLXRα cDNAをFLAG(登録商標)配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpcDNA3の制限酵素切断部位(Bam1とXho1)の間に挿入し、肝臓X受容体(LXR: Liver X Receptor)α発現ベクターを得た。
【0179】
またPC12(rat pheochromocytoma)細胞からAGPC法等により全RNAを抽出した。次にオリゴ(dT)プライマーを用いて、全RNAに含まれるmRNAと相補的なcDNAを合成した。その後、以下の配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、ビタミンD受容体(VDR)をコードするcDNA(VDR cDNA)をPCR 装置で増幅した。
【0180】
フォワードプライマー 5'-gaattcatggaggcaacagcggccagc-3'
リバースプライマー 5'-taggatcctcaggagatctcattgccg-3'
得られたVDR cDNAをFLAG(登録商標)配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpcDNA3の制限酵素切断部位(EcoR1とBamH1)の間に挿入し、ビタミンD受容体(VDR)発現ベクターを得た。
【0181】
また293E細胞を体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。その後DMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後に、核内受容体発現ベクターを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。
【0182】
ここで「核内受容体発現ベクター」とは、ERβ発現ベクター、アンドロゲン受容体(AR)発現ベクター、ビタミンD受容体(VDR)発現ベクター、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体γ(PPARγ)発現ベクター、又は肝臓X受容体(LXR: Liver X Receptor)α発現ベクターのいずれかを意味する。
【0183】
トランスフェクションから24時間後、4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、条件に応じて、リガンド及びプロテアソーム阻害剤MG132のそれぞれをDMEMに添加した。
【0184】
ここで「リガンド」とは、ERβ発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対しては終濃度10-8mol/lの17β-エストラジオールを、AR発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対しては終濃度10-6mol/lのメチルテストステロンを、VDR発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対しては終濃度10-8mol/lの1,25ジヒドロキシビタミンD3を、PPARγ発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対しては終濃度10-6mol/lのトログリタゾン(trogritazone)を、LXRα発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対しては終濃度10-7mol/lのLXRアゴニストTO-901317 (N-(2,2,2-Trifluoroethyl)-N-[4-(2,2,2-trifluoro-1-hydroxy-1-trifluoromethylethyl)phenyl]benzenesulfonamide)を意味する。
【0185】
さらにトランスフェクションから48時間後293E細胞を回収し、抗Smad2マウスモノクローナル抗体及びβアクチンモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングした。
【0186】
図22の第1及び第2レーンに示すように、核内受容体を293E細胞にトランスフェクトし、リガンド及びプロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加しなかった場合、核内受容体を293E細胞にトランスフェクトしなかった場合と比較してSmad2の検出強度は減少した。また図22の第3レーンに示すように、核内受容体を293E細胞にトランスフェクトしてリガンドをDMEMに添加し、プロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加しなかった場合、Smad2の検出強度は第2レーンと比較してさらに減少した。
【0187】
次に図22の第3及び第4レーンに示すように、核内受容体を293E細胞にトランスフェクトし、プロテアソーム阻害剤MG132をDMEMに添加した場合、リガンドをDMEMに添加してもSmad2の検出強度は顕著に減少しなかった。
【0188】
図23は、図22に示した第1乃至第5レーンのそれぞれにおけるSmad2のバンドの検出強度を示した表である。バンドの検出強度は、ブロッティング膜をスキャナで読み込み、画像処理ソフトウェア(Image-J)で算出した値である。ERβ発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合のSmad2の検出強度は115.4であった。これに対しERβ発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、17β-エストラジオールをDMEMに添加しなかった場合のSmad2の検出強度は101.0に低下した。さらにERβ発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、17β-エストラジオールをDMEMに添加した場合のSmad2の検出強度は74.9に低下した。
【0189】
AR発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合のSmad2の検出強度は143.9であった。これに対しAR発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、メチルテストステロンをDMEMに添加しなかった場合のSmad2の検出強度は111.3に低下した。さらにAR発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、メチルテストステロンをDMEMに添加した場合のSmad2の検出強度は99.5に低下した。
【0190】
VDR発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合のSmad2の検出強度は162.2であった。これに対しVDR発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、1,25ジヒドロキシビタミンD3をDMEMに添加しなかった場合のSmad2の検出強度は118.9に低下した。さらにVDR発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、1,25ジヒドロキシビタミンD3をDMEMに添加した場合のSmad2の検出強度は96.2に低下した。
【0191】
PPARγ発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合のSmad2の検出強度は181.9であった。これに対しPPARγ発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、トログリタゾンをDMEMに添加しなかった場合のSmad2の検出強度は92.0に低下した。さらにPPARγ発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、トログリタゾンをDMEMに添加した場合のSmad2の検出強度は78.4に低下した。
【0192】
LXRα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトしなかった場合のSmad2の検出強度は196.4であった。これに対しLXRα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、LXRアゴニストTO-901317をDMEMに添加しなかった場合のSmad2の検出強度は98.6に低下した。さらにLXRα発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトし、LXRアゴニストTO-901317をDMEMに添加した場合のSmad2の検出強度は78.7に低下した。
【0193】
したがって、ERβ、ERβのリガンド、AR、ARのリガンド、VDR、VDRのリガンド、PPARγ、PPARγのリガンド、LXRα、及びLXRαのリガンドも、プロテアソームによるSmad2の分解を誘導することが示された。
【0194】
(第17の実施例)
293E細胞を、体積比で10%のFBSを添加したDMEMで培養した。次にDMEMを、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、24時間後にレポータプラスミドと共に、不活性型TGF-βI型受容体(ALK5 KR)発現ベクター、恒常活性型TGF-βI型受容体(ALK5 TD)発現ベクター、及び核内受容体発現ベクターのそれぞれを条件に応じて293E細胞にトランスフェクトした。
【0195】
ここで「核内受容体発現ベクター」とは、ERα発現ベクター、ERβ発現ベクター、グルココルチコイド受容体(GR)発現ベクター、VDR発現ベクター、プロゲステロン受容体(PR)発現ベクター、又はレチノイン酸受容体β(RARβ)発現ベクターのいずれかを意味する。
【0196】
なお、GR発現ベクターは以下のように調製した。まず293E細胞からAGPC法等により全RNAを抽出した。次にオリゴ(dT)プライマーを用いて、全RNAに含まれるmRNAと相補的なcDNAを合成した。その後、以下の配列からなるフォワードプライマー及びリバースプライマーを用いて、GRをコードするcDNA(GR cDNA)をPCR 装置で増幅した。
【0197】
フォワードプライマー 5'-cttgcggccgctatggactccaaagaatc-3'
リバースプライマー 5'-taggatcctcaattggtgatgatttc-3'
得られたGR cDNAをFLAG(登録商標)配列を付加したInvitrogen社の哺乳類細胞用発現ベクターpCMV5の制限酵素切断部位(Not1とBamH1)の間に挿入し、GR発現ベクターとした。
【0198】
レポータプラスミド、不活性型TGF-βI型受容体発現ベクター、及び恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターのそれぞれは、培養ディッシュのウェルに1ウェルあたり0.02μg添加した。ERα発現ベクターは、培養ディッシュのウェルに1ウェルあたり0.00025μg添加した。ERβ発現ベクターは、培養ディッシュのウェルに1ウェルあたり0.0005μg添加した。GR発現ベクター、VDR発現ベクター、及びRARβ発現ベクターのそれぞれは、培養ディッシュのウェルに1ウェルあたり0.004μg添加した。PR発現ベクターは、培養ディッシュのウェルに1ウェルあたり0.001μg添加した。
【0199】
トランスフェクションから24時間後、体積比で4%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMを、体積比で0.2%のチャコールで処理したFBSを含むDMEMに交換し、リガンドを条件に応じてDMEMに添加した。
【0200】
ここで「リガンド」とは、ERα発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対してはエストロゲンを、ERβ発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対してはエストロゲン又はDPN (diarylpropionitrile)を、GR発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対してはデキサメタゾン(dexamethasone)又はフルチカゾンプロピオネート(fluticasone propionate)を、VDR発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対してはアルファカルシドール(alfacalcidole)、1,25ジヒドロキシビタミンD3(1,25(OH)2D3)、又はカルシポトリオール(calcipotriol)を、PR発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対してはメドロキシプロゲステロン(MPA)、ノルエチステロン(norethisterone)、又は酢酸クロルマジノン(chlormadione acetate)を、RARβ発現ベクターをトランスフェクトされた細胞に対しては合成RARアゴニストAM580、又はRAR選択的アゴニストTTNPBを意味する。
【0201】
なおエストロゲンは、培養ディッシュのウェルに最終濃度が1×10-8mol/lとなるよう添加した。DPN、デキサメタゾン、フルチカゾンプロピオネート、アルファカルシドール、カルシポトリオール、MPA、ノルエチステロン、酢酸クロルマジノン、RARアゴニストAM580、及びRAR選択的アゴニストTTNPBのそれぞれは、培養ディッシュのウェルに最終濃度が1×10-6mol/lとなるよう添加した。1,25ジヒドロキシビタミンD3は、培養ディッシュのウェルに最終濃度が1×10-7mol/lとなるよう添加した。
【0202】
さらにトランスフェクションから48時間後、293E細胞を回収し、ルシフェラーゼアッセイによりレポータプラスミドの転写活性を測定した。
【0203】
図24に示すグラフの第2条件に示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合のレポータプラスミドの転写活性を100%とした場合、第3条件に示すように、ERα発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトすると、レポータプラスミドの転写活性は50.5%に低下した。さらに第4条件に示すようにエストロゲンをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は32.73%に低下した。
【0204】
図24に示すグラフの第6条件に示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合のレポータプラスミドの転写活性を100%とした場合、第7条件に示すように、ERβ発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトすると、レポータプラスミドの転写活性は74.52%に低下した。さらに第8条件に示すようにエストロゲンをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は54.77%に低下した。また第9条件に示すようにDPNをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は49.53%に低下した。
【0205】
図24に示すグラフの第11条件に示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合のレポータプラスミドの転写活性を100%とした場合、第12条件に示すように、GR発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトすると、レポータプラスミドの転写活性は67.39%に低下した。さらに第13条件に示すようにデキサメタゾンをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は20.62%に低下した。また第14条件に示すようにフルチカゾンプロピオネートをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は15.72%に低下した。
【0206】
図24に示すグラフの第16条件に示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合のレポータプラスミドの転写活性を100%とした場合、第17条件に示すように、VDR発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトすると、レポータプラスミドの転写活性は124.72%に上昇した。しかし第18条件に示すようにアルファカルシドールをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は61.80%に低下した。また第19条件に示すように1,25ジヒドロキシビタミンD3をDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は38.19%に低下した。また第20条件に示すようにカルシポトリオールをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は36.94%に低下した。
【0207】
図24に示すグラフの第22条件に示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合のレポータプラスミドの転写活性を100%とした場合、第23条件に示すように、PR発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトすると、レポータプラスミドの転写活性は65.47%に低下した。さらに第24条件に示すようにMPAをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は40.31%に低下した。また第25条件に示すようにノルエチステロンをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は41.43%に低下した。また第26条件に示すように酢酸クロルマジノンをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は46.04%に低下した。
【0208】
図24に示すグラフの第28条件に示すように、恒常活性型TGF-βI型受容体発現ベクターを293E細胞にトランスフェクトした場合のレポータプラスミドの転写活性を100%とした場合、第29条件に示すように、RARβ発現ベクターをさらに293E細胞にトランスフェクトすると、レポータプラスミドの転写活性は116.08%に上昇した。しかし第30条件に示すようにAM580をDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は79.57%に低下した。また第31条件に示すようにTTNPBをDMEMに添加すると、レポータプラスミドの転写活性は76.56%に低下した。
【0209】
したがって、ERα、ERβ、GR、及びPRのそれぞれによってTGF-βシグナル伝達機構が阻害されることが示された。またERαとリガンド、ERβとリガンド、GRとリガンド、VDRとリガンド、PRとリガンド、及びRARβとリガンドのそれぞれの組み合わせによってもTGF-βシグナル伝達機構が阻害されることが示された。
【0210】
(第18の実施例)
ベクトン・ディッキンソン(BD)社のインサートチャンバー(12 well, 8μmポアサイズ, カタログ番号353182)のインサートを1.5 mlのDMEMが入った12ウェルプレートのウェルにセットした。次に、RNA干渉(RNAi)法によりCHIP (Carboxyl-terminus of Hsc 70 interacting protein)の発現を抑制されたMCF-7細胞であるCHIPi細胞をトリプシン消化によって細胞培養皿から剥がし、体積濃度が10%(体積/体積)の血清を含むDMEMで細胞数が8.3×105 細胞/mlになるように再懸濁し、CHIPi細胞の懸濁液を調製した。また条件に応じて、エストラジオール及びTGF-βのそれぞれを、CHIPi細胞の懸濁液及びプレート内のDMEMの両方に添加した。CHIPi細胞の懸濁液0.6 mlをチャンバーに移し、CO2インキュベーターで20時間インキュベートした。
【0211】
インキュベーション後、綿棒を用いてインサート内のメンブレンを通過していないCHIPi細胞を取り除き、PBSで簡単に洗浄した。その後、インサートを体積濃度が4%(体積/体積)のパラホルムアルデヒド溶液を1.0 ml入れたプレートに移し、室温で15分放置して、CHIPi細胞を固定した。
【0212】
次にインサートをPBSで5分間洗浄することを3回繰り返し、クリスタルバイオレットでメンブレンを通過したCHIPi細胞を染色し、顕微鏡でメンブレンを通過したCHIPi細胞の細胞数を計測した。なお、少なくとも5視野の撮影画像からCHIPi細胞の細胞数を計測した。また同一の条件で、RNA干渉(RNAi)法によりlacZの発現を抑制されたMCF-7細胞であるコントロール細胞についてもメンブレンを通過した細胞の数を計測した。
【0213】
図25に示すグラフの第1条件に示すように、コントロール細胞では、3回の実験で1ウェルあたり平均190個の細胞がフィルターを透過した。これに対し図25に示すグラフの第2条件に示すように、CHIPi細胞では、3回の実験で1ウェルあたり平均408.5個の細胞がフィルターを透過し、遊走能が亢進した。図25に示すグラフの第3条件に示すように、エストラジオールを添加した場合、3回の実験で1ウェルあたり平均356.5個のCHIPi細胞がフィルターを透過し、第2条件と比較して遊走能はわずかに減少した。図25に示すグラフの第4条件に示すように、TGF-βを添加した場合、3回の実験で1ウェルあたり平均764個のCHIPi細胞がフィルターを透過し、第2条件と比較して遊走能は顕著に亢進した。図25に示すグラフの第5条件に示すように、エストラジオール及びTGF-βを添加した場合、3回の実験で1ウェルあたり平均225個のCHIPi細胞がフィルターを透過し、第4条件と比較して遊走能は顕著に減少した。
【0214】
したがってエストラジオールの添加により、CHIPの発現を抑制された細胞の遊走能が抑制されることが示された。
【0215】
(第19の実施例)
BD社のインサートチャンバー(12 well, 8μmポアサイズ, カタログ番号353182)のインサートを1.5 mlのDMEMが入った12ウェルプレートのウェルにセットした。次に、ERα発現ベクターをトランスフェクトされた遊走能の高いMDA細胞であるERα発現細胞をトリプシン消化によって細胞培養皿から剥がし、体積濃度が10%(体積/体積)の血清を含むDMEMで細胞数が8.3×105 細胞/mlになるように再懸濁し、ERα発現細胞の懸濁液を調製した。また条件に応じて、エストラジオール及びTGF-βのそれぞれを、ERα発現細胞の懸濁液及びプレート内のDMEMの両方に添加した。ERα発現細胞の懸濁液0.6 mlをチャンバーに移し、CO2インキュベーターで20時間インキュベートした。
【0216】
インキュベーション後、綿棒を用いてインサート内のメンブレンを通過していないERα発現細胞を取り除き、PBSで簡単に洗浄した。その後、インサートを体積濃度が4%(体積/体積)のパラホルムアルデヒド溶液を1.0 ml入れたプレートに移し、室温で15分放置して、ERα発現細胞を固定した。
【0217】
次にインサートをPBSで5分間洗浄することを3回繰り返し、クリスタルバイオレットでメンブレンを通過したERα発現細胞を染色し、顕微鏡でメンブレンを通過したERα発現細胞の細胞数を計測した。なお、少なくとも5視野の撮影画像からERα発現細胞の細胞数を計測した。また同一の条件で、コントロールベクターとしてGFP(green fluorescent protein)発現ベクターをトランスフェクトされたMDA細胞であるコントロール細胞についてもメンブレンを通過した細胞の数を計測した。
【0218】
図26に示すグラフの第1及び第2条件に示すように、コントロール細胞では、TGF-βを添加しなかった場合の遊走細胞数の割合を100%とすると、TGF-βを添加した場合の遊走細胞数の割合は200%に上昇した。これに対し、図26に示すグラフの第3条件に示すように、TGF-β及びエストラジオールを添加した場合の遊走細胞数の割合は168%に低下した。
【0219】
図26に示すグラフの第4及び第5条件に示すように、ERα発現細胞では、TGF-βを添加しなかった場合の遊走細胞数の割合を100%とすると、TGF-βを添加した場合の遊走細胞数の割合は147%に上昇した。これに対し、図26に示すグラフの第6条件に示すように、TGF-β及びエストラジオールを添加した場合の遊走細胞数の割合は92%に低下した。
【0220】
したがってエストラジオールの添加により、細胞の遊走能が抑制されることが示された。またERαが発現している細胞では、エストラジオールの添加により、細胞の遊走能が顕著に抑制されることが示された。
【0221】
(配列表の説明)
本明細書の配列表に記載された配列番号1乃至17は、以下の配列を示す。
【0222】
[配列番号 : 1] 第4の実施例でSmad2発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0223】
[配列番号 : 2] 第4の実施例でSmad2発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0224】
[配列番号 : 3] 第16の実施例でERβ発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0225】
[配列番号 : 4] 第16の実施例でERβ発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0226】
[配列番号 : 5] 第16の実施例でAR発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0227】
[配列番号 : 6] 第16の実施例でAR発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0228】
[配列番号 : 7] 第16の実施例でLXRα発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0229】
[配列番号 : 8] 第16の実施例でLXRα発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0230】
[配列番号 : 9] 第16の実施例でPPARγ2発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0231】
[配列番号 : 10] 第16の実施例でPPARγ2発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0232】
[配列番号 : 11] 第16の実施例でVDR発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0233】
[配列番号 : 12] 第16の実施例でVDR発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0234】
[配列番号 : 13] 第17の実施例でGR発現ベクターの作製に用いたフォワードプライマーの塩基配列。
【0235】
[配列番号 : 14] 第17の実施例でGR発現ベクターの作製に用いたリバースプライマーの塩基配列。
【0236】
[配列番号: 15] 第3、第9、第11、第13、及び第15の実施例で用いたFLAG(登録商標)エピトープタグのアミノ酸配列。
【0237】
[配列番号: 16] 第6、第9、第11、及び第14の実施例で用いたHAエピトープタグのアミノ酸配列。
【0238】
[配列番号: 17] 第15の実施例で用いたMycエピトープタグのアミノ酸配列。
【0239】
本明細書において塩基あるいはアミノ酸を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commision on Biochemical Nomenclatureによる略号、あるいは当該分野における慣用略号を用いる。以下に、略号の例を示す。
【0240】
a : アデニン、t : チミン、g : グアニン、c : シトシン、Asp: アスパラギン酸、Tyr: チロシン、Lys: リシン、Pro: プロリン、Val: バリン、Ala: アラニン、Glu: グルタミン酸、Gln: グルタミン、Leu: ロイシン、Ile: イソロイシン、Ser: セリン。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】本発明の第1の実施例に係るレポータプラスミドの転写活性を示すグラフである。
【図2】本発明の第2の実施例に係るレポータプラスミドの転写活性を示すグラフである。
【図3】本発明の第3の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図4】本発明の第4の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図5】本発明の第5の実施例に係る細胞染色の結果を示す第1の画像である。
【図6】本発明の第5の実施例に係る細胞染色の結果を示す第2の画像である。
【図7】本発明の第5の実施例に係る細胞染色の結果を示す第3の画像である。
【図8】本発明の第5の実施例に係る細胞染色の結果を示す第4の画像である。
【図9】本発明の第5の実施例に係る細胞染色の結果を示す第5の画像である。
【図10】本発明の第5の実施例に係る細胞染色の結果を示す第6の画像である。
【図11】本発明の第5の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図12】本発明の第6の実施例に係る免疫沈降及びウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図13】本発明の第7の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図14】本発明の第8の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図15】本発明の第9の実施例に係る免疫沈降及びウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図16】本発明の第10の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図17】本発明の第11の実施例に係る免疫沈降及びウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図18】本発明の第12の実施例に係るレポータプラスミドの転写活性を示すグラフである。
【図19】本発明の第13の実施例に係る免疫沈降及びウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図20】本発明の第14の実施例に係る免疫沈降及びウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図21】本発明の第15の実施例に係る免疫沈降及びウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図22】本発明の第16の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す画像である。
【図23】本発明の第16の実施例に係るウェスタンブロッティングの結果を示す表である。
【図24】本発明の第17の実施例に係るレポータプラスミドの転写活性を示すグラフである。
【図25】本発明の第18の実施例に係る遊走能試験の結果を示すグラフである。
【図26】本発明の第19の実施例に係る遊走能試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エストロゲン受容体のリガンドを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項2】
前記リガンドはエストロゲンであることを特徴とする請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
グルココルチコイド受容体のリガンドを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項4】
ビタミンD受容体のリガンドを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項5】
プロゲステロン受容体のリガンドを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項6】
レチノイン酸受容体のリガンドを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項7】
エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項8】
グルココルチコイド受容体の発現ベクターを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項9】
プロゲステロン受容体の発現ベクターを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項10】
エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項11】
前記リガンドはエストロゲンであることを特徴とする請求項10に記載のSmadの分解誘導剤。
【請求項12】
アンドロゲン受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項13】
ビタミンD受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項14】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項15】
肝臓X受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項16】
エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項17】
アンドロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項18】
ビタミンD受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項19】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項20】
肝臓X受容体の発現ベクターを含む、Smadの分解誘導剤。
【請求項21】
エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smadユビキチン化促進剤。
【請求項22】
前記リガンドは、エストロゲンであることを特徴とする請求項21に記載のSmadユビキチン化促進剤。
【請求項23】
エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smadユビキチン化促進剤。
【請求項24】
エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smurfの分解誘導剤。
【請求項25】
前記リガンドは、エストロゲンであることを特徴とする請求項24に記載のSmurfの分解誘導剤。
【請求項26】
エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smurfの分解誘導剤。
【請求項27】
エストロゲン受容体のリガンドを含む、Smurfユビキチン化促進剤。
【請求項28】
前記リガンドは、エストロゲンであることを特徴とする請求項27に記載のSmurfユビキチン化促進剤。
【請求項29】
エストロゲン受容体の発現ベクターを含む、Smurfユビキチン化促進剤。
【請求項30】
エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項31】
エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項32】
前記リガンドはエストロゲンであることを特徴とする請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
グルココルチコイド受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項34】
グルココルチコイド受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項35】
ビタミンD受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項36】
ビタミンD受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項37】
プロゲステロン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項38】
プロゲステロン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項39】
レチノイン酸受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項40】
レチノイン酸受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項41】
エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項42】
グルココルチコイド受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項43】
プロゲステロン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する方法。
【請求項44】
エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項45】
エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項46】
前記リガンドはエストロゲンであることを特徴とする請求項44又は45に記載のSmadの分解誘導方法。
【請求項47】
アンドロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項48】
アンドロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項49】
ビタミンD受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項50】
ビタミンD受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項51】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項52】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項53】
肝臓X受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項54】
肝臓X受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項55】
エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項56】
アンドロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項57】
ビタミンD受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項58】
ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項59】
肝臓X受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smadの分解誘導方法。
【請求項60】
エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smadユビキチン化促進方法。
【請求項61】
エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smadユビキチン化促進方法。
【請求項62】
前記リガンドは、エストロゲンであることを特徴とする請求項60又は61に記載のSmadユビキチン化促進方法。
【請求項63】
エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞に投与することを含む、Smadユビキチン化促進方法。
【請求項64】
エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smurfの分解誘導方法。
【請求項65】
エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smurfの分解誘導方法。
【請求項66】
前記リガンドは、エストロゲンであることを特徴とする請求項64又は65に記載のSmurfの分解誘導方法。
【請求項67】
エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smurfの分解誘導方法。
【請求項68】
エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、Smurfユビキチン化促進方法。
【請求項69】
エストロゲン受容体のリガンドを非ヒト動物に投与することを含む、Smurfユビキチン化促進方法。
【請求項70】
前記リガンドは、エストロゲンであることを特徴とする請求項68又は69に記載のSmurfユビキチン化促進方法。
【請求項71】
エストロゲン受容体の発現ベクターを細胞にトランスフェクトすることを含む、Smurfユビキチン化促進方法。
【請求項72】
エストロゲン受容体のリガンドを含む、細胞の遊走能の抑制剤。
【請求項73】
エストロゲン受容体のリガンドを細胞に投与することを含む、細胞の遊走能の抑制方法。
【請求項74】
細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、
前記リガンドを投与された細胞における、TGF−βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を計測するステップ
とを備えることを特徴とするTGF−βシグナル伝達機構を阻害する核内受容体のリガンドのスクリーニング方法。
【請求項75】
細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、
前記リガンドを投与された細胞における、Smadの量を計測するステップ
とを備えることを特徴とするSmadの分解を誘導する核内受容体のリガンドのスクリーニング方法。
【請求項76】
細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、
前記核内受容体のリガンドを投与された細胞における、TGF−βシグナル伝達機構による遺伝子の転写活性を計測するステップと、
前記転写活性を低下させた前記核内受容体のリガンドを選択するステップ
で選択された前記核内受容体のリガンドを含む、TGF−βシグナル伝達機構を阻害する阻害剤。
【請求項77】
細胞に核内受容体のリガンドを投与するステップと、
前記核内受容体のリガンドを投与された細胞における、Smadの量を計測するステップと、
前記Smadの量を減少させた前記核内受容体のリガンドを選択するステップ
で選択された前記核内受容体のリガンドを含む、Smadの分解誘導剤。

【図1】
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【図2】
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【図18】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−174463(P2008−174463A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7436(P2007−7436)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(505136941)株式会社アンクス (1)
【Fターム(参考)】