Ta酸化物を主体とする蛍光体及びその製造方法
【課題】白色LEDが広く用いられるようになっているが、色の赤み成分が不足しているために光が青白く、照らされたものに冷たく無機質といった印象を与えてしまい、店舗やリビングルームといった高い演色性が求められる環境や色味に暖かみが求められる環境において照明として使用することができなかった。
【解決手段】Ta2O5とEu2O3を、Ta:Euの原子数比が0.96:0.04〜0.70:0.30となるように混合し、その混合物を1200℃以上、Ta酸化物の溶融温度以下で加熱する。これにより、Ta2O5がホスト酸化物、Euが発光源となった赤色蛍光体を簡便に得ることができる。混合物にZnやTiを更に添加することによって、発光特性を向上させることもできる。また、ベース酸化物をTa2O5に替えてTa2O5+Al2O3としてもよい。
【解決手段】Ta2O5とEu2O3を、Ta:Euの原子数比が0.96:0.04〜0.70:0.30となるように混合し、その混合物を1200℃以上、Ta酸化物の溶融温度以下で加熱する。これにより、Ta2O5がホスト酸化物、Euが発光源となった赤色蛍光体を簡便に得ることができる。混合物にZnやTiを更に添加することによって、発光特性を向上させることもできる。また、ベース酸化物をTa2O5に替えてTa2O5+Al2O3としてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はTa酸化物を主体とする蛍光体に関し、特に、Ta酸化物に主たる発光元素としてEuを含有させ、それにより青色光でも励起可能とした赤色蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、発光強度の高い白色LEDが製品化され始めており、照明やバックライト等の用途において広く使われるようになっている。白色LEDは、水銀フリー、低消費電力、直流駆動のため輝度調節が比較的容易、といった多くのメリットを備えているため、その需要は高まる一方である。
【0003】
現在、白色LEDの白色光は青色LEDと黄色蛍光体(YAG:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)との組合せにより実現されているため、光が青白いという特徴を持つ。一般に店舗やリビングルームでは、演色性の高い照明や暖かみを感じさせる照明が求められるため、このような環境における白色LEDの使用は不適当であった。
【0004】
青白い光の演色性を高めるためには赤み成分を付加する必要があるため、白色LEDに添加するための適切な赤色蛍光体が求められている。しかし、現在赤色蛍光体として使用されているものは、発光効率が低い、時間経過により劣化しやすい、可視光励起できない等の問題があった。
【0005】
非特許文献1には、以上のような問題を解決することを目的とした赤色蛍光体が開示されている。これによると、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化ユーロピウム粉末を、水分と空気を遮断したグローブボックス内で混合し、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中、10気圧、1800℃で反応させることにより、ユーロピウムが固溶したカルシウム・アルミニウム・シリコン三窒化物(CaAlSiN3)赤色蛍光体粉末が得られる。この方法によって得られる赤色蛍光体は、450〜490nmの青色LED光源を励起光として使用できるとされている。また、-240℃〜100℃の温度範囲で劣化しないとも報告されている。
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人物質・材料研究機構," 白色LED用赤色蛍光体の開発に成功 −新時代の明かり−",[online],平成16年8月31日,[平成18年3月27日検索],インターネット<URL:http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/pdf/press90.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載されている赤色蛍光体は高圧の窒素雰囲気下で製造する必要があるため、製造設備やコストの面で改善が望まれる。そこで、本願発明者らは、特に白色LEDに好適に適用できる赤色蛍光体を得るべく鋭意研究を行った結果、Ta2O5等のTa酸化物を主体とし、そこにEuを含有させた新規な赤色蛍光体を得ることに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のようにして成された本発明に係る赤色蛍光体は、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40であるEuを含有することを特徴とする、Ta酸化物を主体とする赤色蛍光体である。
【0009】
このTa:Euの原子数比は、好適には0.95:0.05〜0.70:0.30とするとよい。
【0010】
本発明に係る赤色蛍光体は更に、Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15であるZnを含有するものであってもよい。
【0011】
更に、Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を含有するものであってもよい。
【0012】
更には、本発明に係る赤色蛍光体はTa及びAl酸化物を主体とするものであってもよく、その場合、Euは(Ta・Al):Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40であるようにする。また、Ta酸化物にはLa等の酸化物が含まれていてもよい。
【0013】
本発明に係る赤色蛍光体を製造する方法は各種あるが、例えば次のような方法を用いることができる。
すなわち、Ta酸化物とEu酸化物を、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるように混合し、
該混合物を1200℃以上、Ta酸化物の溶融温度以下の温度で加熱・焼結する。
【0014】
ここで、上記Ta酸化物として例えばTa2O5を、Eu酸化物として例えばEu2O3を用いることができる。この場合、加熱温度の最高値は、Ta2O5の溶融温度である1785℃となる。
【0015】
上記のZnを含有する赤色蛍光体を製造する場合、上記混合物に更にZn酸化物を、Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15となるように加える。加熱温度範囲は同じでよい。
【0016】
上記の、更にMg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を含有するEu-Ta酸化物蛍光体の場合、Ta酸化物とEu酸化物を混合する際に、或いはそれらを混合した後、それらMg等の元素の酸化物又はそれら酸化物の混合物を加え、その後は上記同様に加熱・焼結することにより、蛍光体を得ることができる。なお、これらMg等の元素の酸化物又はそれら酸化物の混合物の混合量は、目的に応じて適宜選択される。
【0017】
上記酸化物混合体には、焼結助剤を添加してもよい。焼結助剤を加えることにより、加熱・焼結温度を下げることができ、本発明に係る蛍光体の製造工程を簡略化し、コストを下げることができる。焼結助剤としては、Na塩(例えば、Na2SO4、Na2C03、NaCl、Na2O等)やK塩(例えば、KCl等)を用いることができる。その含有量は30〜60重量%とすることが望ましい。これよりも少ないと十分な焼結補助作用が得られず、この範囲を超えると発光体自体の発光効率が低下するおそれがある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る赤色蛍光体は、Ta酸化物を主体とし、Euを含有するものであるが、このうち主としてEuが発光源として作用し、赤色蛍光を発する。明確な構造は未だ解明されていないが、後述するX線回折の結果から判断すると、恐らくTa酸化物がホストの役割を担い、発光源となるEuを囲うカゴ状の構造を有するものと想定される。
【0019】
従って、発光源としてEuと同様の化学的性質を有する希土類元素を用いても、本発明は同様に成立し得る。すなわち、Ta酸化物によるカゴ構造中に発光源としての希土類元素を含有する、Ta酸化物を主体とする蛍光体も本発明の範疇に入るものである。ここにおける希土類元素には、例えば、Er, Dy, Sm, Tb, Ce, Gd, Nd, Dy, Ho等を挙げることができる。
【0020】
本発明に係る蛍光体のうち特にEuを発光源とする赤色蛍光体は、後述するように高い発光効率及び高い発光安定性を備えているほか、青色波長に励起波長域を有しているため、可視光励起により強い赤色発光を行うことができる。現在、白色LEDは青色発光LEDと黄色蛍光体の組み合わせにより構成されているが、前記の通り発光色がやや青白いという特徴があり、暖色系が求められる用途には不適であるとされていたが、本発明に係る赤色蛍光体をそこに適度の量加えることにより、演色性に優れた白色光を得ることができるようになる。これは、LEDの照明光源としての使用に大きな道を開くものとなる。
【0021】
また、本発明に係る蛍光体は、その製造が非常に容易であるという特長を持つ。すなわち、製造時の加熱は常圧・空気中で行うことができるため、上記非特許文献1に記載のもののような特別な装置を必要としない。そして、原料の酸化物も一般的に容易に入手することができる。従って、低コストで製造することができる。また、その加熱温度も比較的低い温度を用いることができる。
【0022】
Euを発光源とする赤色蛍光体を白色LED製造の際に使用することにより、従来は青白く無機質な印象を与えていた白色LEDの発色を、赤みを帯びた暖かく感じられる発色とすることができるようになる。本発明に係る蛍光体を用いた発光装置の一例として、砲弾型LED発光装置を図15に示す。砲弾型LED発光装置10は、発光光束に指向性を与えるためのプラスチック製砲弾型レンズ11の中にLED12を埋設したもので、本願発明に係る蛍光体13は、発光源であるLED12の上に塗布して使用することができる。
【0023】
本発明に係る蛍光体はその他に、単独に各色の発光源として、又はその他の発光源と組み合わせることにより各種色を実現する光源の構成要素として用いることができるのはもちろん、液晶パネル(LCD)のバックライト等の各種発光装置に好適に用いることができる。
【0024】
本発明に係る赤色蛍光体は、青色域の可視光の他、紫外線によっても励起して赤色蛍光を発する。従って、紫外線により励起して発光する照明装置や表示装置の蛍光体としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る蛍光体の基本的な構成は、Ta酸化物とEu等の希土類発光元素が原子レベルで混合した構成にある。発光源としてEuを用いる場合、その原料物質としてはフッ化物塩、炭酸塩、酸化物等が挙げられるが、なかでも酸化物が好ましい。この場合、最も典型的には出発物質としてTa2O5とEu2O3を用いることができる。
【0026】
これらの酸化物は通常、粉末で得られるが、両者を単純に混合し、それを加熱することにより、両酸化物の構造が変化し、Euを発光源とする赤色蛍光体が形成される。なお、混合物にはTa2O5及びEu以外の成分が含まれていてもよい。
【0027】
加熱温度は1200℃以上とする。この温度未満では、前記のようなTa酸化物ホストとEu発光源のカゴ状構造が良好に形成されず、十分な発光強度が得られないおそれがある。発光強度は加熱処理の温度が高くなるにつれて増加する傾向にある(詳細は後述)。従って、加熱温度はTa酸化物の融点まで上げることができる。なお、Ta酸化物の融点を超えて加熱すると、カゴ状構造が形成されなくなる。
【0028】
Ta:Euの原子数比に関しては、例えば酸化物としてTa2O5とEu2O3を用いた場合、両者の混合割合を、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40の範囲内となるようにする。
【0029】
Ta2O5及びEu2O3に更に別の元素を添加することにより、発光特性を向上させることもできる。例えば、ZnOやZnS、Al2O3を所定量添加し、多元元素化することによって発光色及び励起波長の制御が可能となる。更には、Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を加えることによっても、発光色及び励起波長の微調整が可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本願発明者らが行った各種の実験について説明する。まず、粉末のTa2O5とEu2O3を混合し、ペレット状にした後に加熱・焼結処理を行った。以下の実験における基本的な加熱処理条件は特に記載のない限り、次の通りとした:空気中、1気圧、1200℃、2時間。
【0031】
[励起光波長]
Eu添加Ta2O5の励起光波長と、発光強度との関係を調べた。このときのTa2O5とEu2O3の混合モル比は、Ta2O5:Eu2O3=0.92:0.08(原子数比では、Ta:Eu=0.92:0.08)である。図1aに、発光波長と発光強度との関係を複数の異なる励起波長について表すグラフを示す。図1aのグラフによれば、励起波長が470nm付近において、608〜615nmの波長範囲(特に611nm)での発光強度が特に強くなることがわかる。なお、611nmの発光ピークにおける半値幅は約3nmとなっており、本発明に係る蛍光体の発光の波長選択性が良好であることが示されている。
【0032】
そこで次に、同じ物質について、励起波長を200〜600nmの範囲で連続的に変化させたときに611nmにおける発光強度がどのように変化するかを調べた。その結果を図1bに示す。図1bには、Taに起因する発光波長である430nmにおける発光強度の結果も併記した。また、Euを添加しない、Ta2O5単独の同様の結果を図1cに示す。これらの図より、Eu添加Ta酸化物赤色蛍光体は、460〜480nm(青色域)及び520〜540nm(緑色域)の他、380〜420nm及び290〜340nmの近紫外域でも励起可能であることを示している。
【0033】
[Y2O3との比較]
現在、赤色蛍光体として精力的に研究開発が行われているのはEu添加Y2O3である。そこで、本願発明者らは本発明の赤色蛍光体であるEu添加Ta2O5と、Eu添加Y2O3との発光特性の比較を行った。図2に両者の発光強度の比較を表すグラフを示す。励起波長は共に325nmとし、Eu添加Ta2O5におけるTa2O5とEu2O3の比はTa2O5:Eu2O3=0.92:0.08である。Eu添加Ta2O5赤色蛍光体の発光強度(波長611nm)は、Eu添加Y2O3のそれの10倍程度もあることが確認された。
【0034】
[減衰特性]
また、図3に、本発明に係る赤色蛍光体であるEu添加Ta2O5及びEu添加Y2O3の、一定強度の励起光を連続的に照射した場合の、時間経過による発光強度低下(Fatigue)特性の比較を示す。Ta2O5及びY2O3共に、Eu2O3の添加モル比は0.08である。図3のグラフから明らかなように、本発明のEu添加Ta2O5はEu添加Y2O3と比べて発光の減衰が少なく、安定であることがわかる。
【0035】
[Euの添加量変化による発光強度の変化]
Ta2O5に対してEuの添加量を変化させ、各場合の発光強度を観察した。図4に、Ta2O5に対するEu2O3のモル比を0.0(すなわちTa2O5のみ)、0.01、0.04、0.08、0.15、0.30と変化させた場合の発光波長と発光強度の関係を表すグラフを示す。励起光波長は470nmである。図4のグラフが示す通り、Eu2O3を適切な割合で添加したとき、611nmにおいて鋭い赤色発光が見られることが確認された。また、Eu2O3を全く添加しない場合にはほとんど赤色発光が生じないこともわかった。
【0036】
Ta2O5に対するEu2O3のモル比の範囲を更に拡大し、0〜0.90の範囲で変化させた場合の611nmにおける発光強度のグラフを図5に示す。図5のグラフに示されているように、原子数比0.005〜0.5において有意な赤色発光が生じ、0.08付近において発光強度が最大となる。Euの割合が大きくなると発光強度が低下する理由は、Ta2O5によるカゴ構造を取りにくくなるためと考えられる。
図2を用いて説明したように、Y2O3と比較するとEu添加Ta2O5赤色蛍光体の最大発光強度はY2O3のそれよりも10倍程度高い。逆に言うと、ピーク強度の数分の一であっても、Eu添加Ta2O5赤色蛍光体は従来の赤色発光体であるY2O3よりも発光強度が高い。従って、図5のグラフにおいて縦軸のピーク強度(約1800)の約1/3の強度(約500)の蛍光を発する範囲である、Euの原子数比0.01〜0.40の範囲において、本発明に係るEu添加Ta2O5赤色蛍光体は従来の赤色発光体であるY2O3よりも十分発光強度が高く、新規且つ高発光強度の赤色蛍光体として使用することができる。なお、図5のグラフによると、その原子数比を0.05〜0.30とすることにより発光強度を1000以上とすることができ、従来物質より数倍も発光強度が高い赤色発光体を得ることができることがわかる。
【0037】
[第3元素の効果]
Ta2O5、Euに加え、さらに下に挙げるような第3の元素を添加することで、本発明の発光特性がどのように変化するかを調べた。
Gd、Mn、Sn、Tb、Ce:発光効率において際立った向上効果は見られない。
Zn:発光特性が向上する。
TiO2:発光特性が向上する。
Al2O3:Al2O3はTa2O5と同様、前記のカゴ状構造の一部を構成する。
【0038】
[Zn添加の効果]
図6に、Eu添加Ta2O5(Eu2O3添加量はモル比でTa2O5:Eu2O3=0.92:0.08)と、Zn及びEu添加Ta2O5(Ta2O5:Eu2O3:ZnO=0.84:0.08:0.08)との発光強度の比較を表すグラフを示す。なお、図6のグラフには、参考のために黄色蛍光体であるYAGの発光特性も重ねて表示した。図6のグラフには、Znを添加することにより発光強度が増加することが示されている。
【0039】
図7aに、Eu添加Ta2O5(Ta2O5:Eu2O3=0.92:0.08)にZnOを添加した場合の、Znの濃度(原子数比)と611nmにおける発光強度との関係を示すグラフを示す。これによれば、Eu添加Ta2O5にZnを僅かでも添加すると、発光特性が向上する効果が得られ、Znの原子数比が0.08である時に、最大の発光強度が得られることがわかる。従って、本発明の赤色蛍光体において有効な発光特性を生じさせるためには、先に述べたEuの添加割合と合わせると、Ta、Eu、Znの原子数比を(1-x-y):x:yと表した場合、x=0.01〜0.3、y=0.005〜0.15程度が好適であると言える。特に、x=0.07〜0.17、y=0.005〜0.05程度のとき、強い発光強度が得られる。
また、図7bに、Eu添加Ta2O5(Ta2O5:Eu2O3=0.92:0.08)に添加するZn化合物をZnO及びZnSとした場合の、励起波長が325nmである場合のZn濃度(原子数比)と611nm発光強度の関係を示す。更に、図7cに、励起波長が470nmである場合の611nm発光強度の関係を示す。図7cからわかるように、いずれの形にせよ、Znを添加することにより発光強度は大きく増加している。また、両グラフより、Znを添加する場合、ZnOの形よりはZnSの形で添加した方が高い発光強度が得られることがわかる。
【0040】
[熱処理温度による発光強度の変化]
熱処理温度によって、本発明の赤色蛍光体の発光特性がどのように変化するかを調べた。図8に、Zn及びEu添加Ta2O5(酸化物の混合モル比でTa2O5:Eu2O3:ZnO=0.84:0.08:0.08)に対する熱処理温度を変化させた各場合の発光特性を表すグラフを示す。また、図9に、Zn及びEu添加Ta2O5の熱処理温度と発光強度(発光波長は611nm)の関係を表すグラフを示す。図8、図9のグラフにおいて示されている熱処理温度の最小値は1250℃であるが、本願発明者は、1200℃より低い熱処理温度では有意な赤色発光が生じないことを確認している。図8及び図9に示す実験結果から、熱処理温度が高くなるに伴い発光強度が増加し、1450℃でピークとなることがわかる。なお、熱処理温度はTa2O5の融点である1785℃以下とする必要がある。
【0041】
[紫外線による励起]
次に、紫外線により励起した場合の本発明の赤色蛍光体の発光特性を調べた。図10にEu添加Ta2O5(Eu2O3のモル比=0.08〜0.3)の、図11にTi及びEu添加Ta2O5(Eu2O3の混合モル比=0.08、TiO2の混合モル比=0.01〜0.08)の、それぞれ励起波長325nmの紫外線により励起した場合の発光スペクトルを示す。図6と縦軸のスケールが異なるので直接比較することはできないが、紫外線励起でも611nmにおいて十分な発光が認められる。
【0042】
[Eu添加(Ta・Al)酸化物]
ベース物質であるTa2O5に替え、Ta2O5とAl2O3の混合物をベース物質とした場合のEu添加赤色発光体の特性を調べた。図12a〜図12dは、Ta2O5とAl2O3の混合モル比を1:1、2:3、3:2、3:5と変化させた場合のEu添加赤色発光体の発光スペクトルを示す。いずれも、Eu2O3のモル比は0.08、熱処理温度は1200℃、励起波長は325nmである。全体的にTa2O5のみをベースとした場合よりも発光強度は低下しているが、592nmと618nmの2つの発光ピークが現れる。この混合色はほぼピンク色であり、この発光体はピンク色光源として用いることができる。
【0043】
[焼結助剤]
ベース物質を加熱・焼結する際に、焼結助剤を加えることにより焼結温度を下げることができる。その焼結助剤を添加することによる発光特性への影響を調べた。焼結前の混合物におけるベース物質及び焼結助剤の構成モル比を次に記載する。
Ta2O5: 0.1
Eu2O3: 0.08
K塩(KCl等): 0.053
Na塩(NaCl, Na2CO3, Na2SO4等): 0.767
(なお、焼結助剤であるK塩とNa塩のモル比合計は0.82となるが、重量比では60%以下となる)
上記混合物を800℃で2時間加熱したところ、十分な焼結が行われた。こうして作製した赤色発光体の発光特性を図13に示す。なお、励起波長は325nmである。図1のグラフと比較すると611nmのピークにおける発光強度の絶対値はやや低下しているが、ピークの鋭さ(半値幅)はそのまま維持されており、赤色発光体の発光特性自体には大きな影響は与えないことがわかる。
【0044】
以上、本発明に係る赤色蛍光体について説明を行ったが、上記は例に過ぎず、本発明の精神内で適宜に変更や改良を行っても構わないことは明らかである。
【0045】
[構造解析]
図14に、Ta2O5のみの場合と、それにEu2O3をモル比で0.01〜0.3添加して1200℃で加熱した場合のX線回折の結果を示す。これらを比較すると、いずれの場合においてもTa2O5の基本構造がほぼそのまま現れていることがわかる。このことから、Euは、Ta2O5で構成される基本構造の隙間に、イオンとして入り込んでいるのではないかと想定される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る赤色蛍光体は、赤色光源としてはもちろん、青色LED及び黄色蛍光体と組み合わせることにより白色LEDや任意色の光源を構成することができる。このような光源は、照明光源の他、液晶パネル(LCD)のバックライト等にも用いることができる。更に、本発明に係る赤色蛍光体は、紫外線によっても励起するため、紫外線励起照明装置や表示装置の蛍光体としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】Eu添加Ta2O5の励起光波長と発光強度の関係を示すグラフ。
【図1b】Eu添加Ta2O5の励起光波長と発光強度の関係を示すグラフ。
【図1c】Ta2O5の励起光波長と発光強度の関係を示すグラフ。
【図2】本発明に係る赤色蛍光体とEu添加Y2O3との発光強度の比較を表すグラフ。
【図3】本発明に係る赤色蛍光体及びEu添加Y2O3の、時間経過による発光強度の減衰を表すグラフ。
【図4】Ta2O5に対するEu2O3の添加濃度変化による発光強度の変化を示すグラフ。
【図5】発光波長611nmにおける発光強度のEuのモル濃度依存性を表すグラフ。
【図6】Eu添加Ta2O5と、Zn及びEu添加Ta2O5との発光強度の比較を表すグラフ。
【図7a】Znの添加割合と、611nmにおける発光強度との関係を示すグラフ。
【図7b】ZnO、ZnS添加の場合のZnの添加割合と、励起波長が325nmの場合の611nmにおける発光強度との関係を示すグラフ。
【図7c】ZnO、ZnS添加の場合のZnの添加割合と、励起波長が470nmの場合の611nmにおける発光強度との関係を示すグラフ。
【図8】複数の熱処理温度におけるZn及びEu添加Ta2O5の発光特性の関係を示すグラフ。
【図9】Zn及びEu添加Ta2O5の熱処理温度と発光強度の関係を表すグラフ。
【図10】励起波長325nmの紫外線により励起した場合のEu添加Ta2O5の発光特性を表すグラフ。
【図11】励起波長325nmの紫外線により励起した場合のTi及びEu添加Ta2O5の発光特性を表すグラフ。
【図12a】Ta2O5:Al2O3=1:1酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図12b】Ta2O5:Al2O3=2:3酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図12c】Ta2O5:Al2O3=3:2酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図12d】Ta2O5:Al2O3=3:5酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図13】焼結助剤を添加した場合の赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図14】Ta2O5のみ、及びEu添加Ta2O5のX線回折の結果を表すグラフ。
【図15】本発明に係る蛍光体を用いた発光装置の一例である砲弾型LED発光装置の断面図。
【技術分野】
【0001】
本発明はTa酸化物を主体とする蛍光体に関し、特に、Ta酸化物に主たる発光元素としてEuを含有させ、それにより青色光でも励起可能とした赤色蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、発光強度の高い白色LEDが製品化され始めており、照明やバックライト等の用途において広く使われるようになっている。白色LEDは、水銀フリー、低消費電力、直流駆動のため輝度調節が比較的容易、といった多くのメリットを備えているため、その需要は高まる一方である。
【0003】
現在、白色LEDの白色光は青色LEDと黄色蛍光体(YAG:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)との組合せにより実現されているため、光が青白いという特徴を持つ。一般に店舗やリビングルームでは、演色性の高い照明や暖かみを感じさせる照明が求められるため、このような環境における白色LEDの使用は不適当であった。
【0004】
青白い光の演色性を高めるためには赤み成分を付加する必要があるため、白色LEDに添加するための適切な赤色蛍光体が求められている。しかし、現在赤色蛍光体として使用されているものは、発光効率が低い、時間経過により劣化しやすい、可視光励起できない等の問題があった。
【0005】
非特許文献1には、以上のような問題を解決することを目的とした赤色蛍光体が開示されている。これによると、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化カルシウム、窒化ユーロピウム粉末を、水分と空気を遮断したグローブボックス内で混合し、その後窒化ホウ素製のるつぼに入れて窒素中、10気圧、1800℃で反応させることにより、ユーロピウムが固溶したカルシウム・アルミニウム・シリコン三窒化物(CaAlSiN3)赤色蛍光体粉末が得られる。この方法によって得られる赤色蛍光体は、450〜490nmの青色LED光源を励起光として使用できるとされている。また、-240℃〜100℃の温度範囲で劣化しないとも報告されている。
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人物質・材料研究機構," 白色LED用赤色蛍光体の開発に成功 −新時代の明かり−",[online],平成16年8月31日,[平成18年3月27日検索],インターネット<URL:http://www.nims.go.jp/jpn/news/press/pdf/press90.pdf>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1に記載されている赤色蛍光体は高圧の窒素雰囲気下で製造する必要があるため、製造設備やコストの面で改善が望まれる。そこで、本願発明者らは、特に白色LEDに好適に適用できる赤色蛍光体を得るべく鋭意研究を行った結果、Ta2O5等のTa酸化物を主体とし、そこにEuを含有させた新規な赤色蛍光体を得ることに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のようにして成された本発明に係る赤色蛍光体は、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40であるEuを含有することを特徴とする、Ta酸化物を主体とする赤色蛍光体である。
【0009】
このTa:Euの原子数比は、好適には0.95:0.05〜0.70:0.30とするとよい。
【0010】
本発明に係る赤色蛍光体は更に、Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15であるZnを含有するものであってもよい。
【0011】
更に、Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を含有するものであってもよい。
【0012】
更には、本発明に係る赤色蛍光体はTa及びAl酸化物を主体とするものであってもよく、その場合、Euは(Ta・Al):Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40であるようにする。また、Ta酸化物にはLa等の酸化物が含まれていてもよい。
【0013】
本発明に係る赤色蛍光体を製造する方法は各種あるが、例えば次のような方法を用いることができる。
すなわち、Ta酸化物とEu酸化物を、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるように混合し、
該混合物を1200℃以上、Ta酸化物の溶融温度以下の温度で加熱・焼結する。
【0014】
ここで、上記Ta酸化物として例えばTa2O5を、Eu酸化物として例えばEu2O3を用いることができる。この場合、加熱温度の最高値は、Ta2O5の溶融温度である1785℃となる。
【0015】
上記のZnを含有する赤色蛍光体を製造する場合、上記混合物に更にZn酸化物を、Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15となるように加える。加熱温度範囲は同じでよい。
【0016】
上記の、更にMg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を含有するEu-Ta酸化物蛍光体の場合、Ta酸化物とEu酸化物を混合する際に、或いはそれらを混合した後、それらMg等の元素の酸化物又はそれら酸化物の混合物を加え、その後は上記同様に加熱・焼結することにより、蛍光体を得ることができる。なお、これらMg等の元素の酸化物又はそれら酸化物の混合物の混合量は、目的に応じて適宜選択される。
【0017】
上記酸化物混合体には、焼結助剤を添加してもよい。焼結助剤を加えることにより、加熱・焼結温度を下げることができ、本発明に係る蛍光体の製造工程を簡略化し、コストを下げることができる。焼結助剤としては、Na塩(例えば、Na2SO4、Na2C03、NaCl、Na2O等)やK塩(例えば、KCl等)を用いることができる。その含有量は30〜60重量%とすることが望ましい。これよりも少ないと十分な焼結補助作用が得られず、この範囲を超えると発光体自体の発光効率が低下するおそれがある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る赤色蛍光体は、Ta酸化物を主体とし、Euを含有するものであるが、このうち主としてEuが発光源として作用し、赤色蛍光を発する。明確な構造は未だ解明されていないが、後述するX線回折の結果から判断すると、恐らくTa酸化物がホストの役割を担い、発光源となるEuを囲うカゴ状の構造を有するものと想定される。
【0019】
従って、発光源としてEuと同様の化学的性質を有する希土類元素を用いても、本発明は同様に成立し得る。すなわち、Ta酸化物によるカゴ構造中に発光源としての希土類元素を含有する、Ta酸化物を主体とする蛍光体も本発明の範疇に入るものである。ここにおける希土類元素には、例えば、Er, Dy, Sm, Tb, Ce, Gd, Nd, Dy, Ho等を挙げることができる。
【0020】
本発明に係る蛍光体のうち特にEuを発光源とする赤色蛍光体は、後述するように高い発光効率及び高い発光安定性を備えているほか、青色波長に励起波長域を有しているため、可視光励起により強い赤色発光を行うことができる。現在、白色LEDは青色発光LEDと黄色蛍光体の組み合わせにより構成されているが、前記の通り発光色がやや青白いという特徴があり、暖色系が求められる用途には不適であるとされていたが、本発明に係る赤色蛍光体をそこに適度の量加えることにより、演色性に優れた白色光を得ることができるようになる。これは、LEDの照明光源としての使用に大きな道を開くものとなる。
【0021】
また、本発明に係る蛍光体は、その製造が非常に容易であるという特長を持つ。すなわち、製造時の加熱は常圧・空気中で行うことができるため、上記非特許文献1に記載のもののような特別な装置を必要としない。そして、原料の酸化物も一般的に容易に入手することができる。従って、低コストで製造することができる。また、その加熱温度も比較的低い温度を用いることができる。
【0022】
Euを発光源とする赤色蛍光体を白色LED製造の際に使用することにより、従来は青白く無機質な印象を与えていた白色LEDの発色を、赤みを帯びた暖かく感じられる発色とすることができるようになる。本発明に係る蛍光体を用いた発光装置の一例として、砲弾型LED発光装置を図15に示す。砲弾型LED発光装置10は、発光光束に指向性を与えるためのプラスチック製砲弾型レンズ11の中にLED12を埋設したもので、本願発明に係る蛍光体13は、発光源であるLED12の上に塗布して使用することができる。
【0023】
本発明に係る蛍光体はその他に、単独に各色の発光源として、又はその他の発光源と組み合わせることにより各種色を実現する光源の構成要素として用いることができるのはもちろん、液晶パネル(LCD)のバックライト等の各種発光装置に好適に用いることができる。
【0024】
本発明に係る赤色蛍光体は、青色域の可視光の他、紫外線によっても励起して赤色蛍光を発する。従って、紫外線により励起して発光する照明装置や表示装置の蛍光体としても使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係る蛍光体の基本的な構成は、Ta酸化物とEu等の希土類発光元素が原子レベルで混合した構成にある。発光源としてEuを用いる場合、その原料物質としてはフッ化物塩、炭酸塩、酸化物等が挙げられるが、なかでも酸化物が好ましい。この場合、最も典型的には出発物質としてTa2O5とEu2O3を用いることができる。
【0026】
これらの酸化物は通常、粉末で得られるが、両者を単純に混合し、それを加熱することにより、両酸化物の構造が変化し、Euを発光源とする赤色蛍光体が形成される。なお、混合物にはTa2O5及びEu以外の成分が含まれていてもよい。
【0027】
加熱温度は1200℃以上とする。この温度未満では、前記のようなTa酸化物ホストとEu発光源のカゴ状構造が良好に形成されず、十分な発光強度が得られないおそれがある。発光強度は加熱処理の温度が高くなるにつれて増加する傾向にある(詳細は後述)。従って、加熱温度はTa酸化物の融点まで上げることができる。なお、Ta酸化物の融点を超えて加熱すると、カゴ状構造が形成されなくなる。
【0028】
Ta:Euの原子数比に関しては、例えば酸化物としてTa2O5とEu2O3を用いた場合、両者の混合割合を、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40の範囲内となるようにする。
【0029】
Ta2O5及びEu2O3に更に別の元素を添加することにより、発光特性を向上させることもできる。例えば、ZnOやZnS、Al2O3を所定量添加し、多元元素化することによって発光色及び励起波長の制御が可能となる。更には、Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を加えることによっても、発光色及び励起波長の微調整が可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本願発明者らが行った各種の実験について説明する。まず、粉末のTa2O5とEu2O3を混合し、ペレット状にした後に加熱・焼結処理を行った。以下の実験における基本的な加熱処理条件は特に記載のない限り、次の通りとした:空気中、1気圧、1200℃、2時間。
【0031】
[励起光波長]
Eu添加Ta2O5の励起光波長と、発光強度との関係を調べた。このときのTa2O5とEu2O3の混合モル比は、Ta2O5:Eu2O3=0.92:0.08(原子数比では、Ta:Eu=0.92:0.08)である。図1aに、発光波長と発光強度との関係を複数の異なる励起波長について表すグラフを示す。図1aのグラフによれば、励起波長が470nm付近において、608〜615nmの波長範囲(特に611nm)での発光強度が特に強くなることがわかる。なお、611nmの発光ピークにおける半値幅は約3nmとなっており、本発明に係る蛍光体の発光の波長選択性が良好であることが示されている。
【0032】
そこで次に、同じ物質について、励起波長を200〜600nmの範囲で連続的に変化させたときに611nmにおける発光強度がどのように変化するかを調べた。その結果を図1bに示す。図1bには、Taに起因する発光波長である430nmにおける発光強度の結果も併記した。また、Euを添加しない、Ta2O5単独の同様の結果を図1cに示す。これらの図より、Eu添加Ta酸化物赤色蛍光体は、460〜480nm(青色域)及び520〜540nm(緑色域)の他、380〜420nm及び290〜340nmの近紫外域でも励起可能であることを示している。
【0033】
[Y2O3との比較]
現在、赤色蛍光体として精力的に研究開発が行われているのはEu添加Y2O3である。そこで、本願発明者らは本発明の赤色蛍光体であるEu添加Ta2O5と、Eu添加Y2O3との発光特性の比較を行った。図2に両者の発光強度の比較を表すグラフを示す。励起波長は共に325nmとし、Eu添加Ta2O5におけるTa2O5とEu2O3の比はTa2O5:Eu2O3=0.92:0.08である。Eu添加Ta2O5赤色蛍光体の発光強度(波長611nm)は、Eu添加Y2O3のそれの10倍程度もあることが確認された。
【0034】
[減衰特性]
また、図3に、本発明に係る赤色蛍光体であるEu添加Ta2O5及びEu添加Y2O3の、一定強度の励起光を連続的に照射した場合の、時間経過による発光強度低下(Fatigue)特性の比較を示す。Ta2O5及びY2O3共に、Eu2O3の添加モル比は0.08である。図3のグラフから明らかなように、本発明のEu添加Ta2O5はEu添加Y2O3と比べて発光の減衰が少なく、安定であることがわかる。
【0035】
[Euの添加量変化による発光強度の変化]
Ta2O5に対してEuの添加量を変化させ、各場合の発光強度を観察した。図4に、Ta2O5に対するEu2O3のモル比を0.0(すなわちTa2O5のみ)、0.01、0.04、0.08、0.15、0.30と変化させた場合の発光波長と発光強度の関係を表すグラフを示す。励起光波長は470nmである。図4のグラフが示す通り、Eu2O3を適切な割合で添加したとき、611nmにおいて鋭い赤色発光が見られることが確認された。また、Eu2O3を全く添加しない場合にはほとんど赤色発光が生じないこともわかった。
【0036】
Ta2O5に対するEu2O3のモル比の範囲を更に拡大し、0〜0.90の範囲で変化させた場合の611nmにおける発光強度のグラフを図5に示す。図5のグラフに示されているように、原子数比0.005〜0.5において有意な赤色発光が生じ、0.08付近において発光強度が最大となる。Euの割合が大きくなると発光強度が低下する理由は、Ta2O5によるカゴ構造を取りにくくなるためと考えられる。
図2を用いて説明したように、Y2O3と比較するとEu添加Ta2O5赤色蛍光体の最大発光強度はY2O3のそれよりも10倍程度高い。逆に言うと、ピーク強度の数分の一であっても、Eu添加Ta2O5赤色蛍光体は従来の赤色発光体であるY2O3よりも発光強度が高い。従って、図5のグラフにおいて縦軸のピーク強度(約1800)の約1/3の強度(約500)の蛍光を発する範囲である、Euの原子数比0.01〜0.40の範囲において、本発明に係るEu添加Ta2O5赤色蛍光体は従来の赤色発光体であるY2O3よりも十分発光強度が高く、新規且つ高発光強度の赤色蛍光体として使用することができる。なお、図5のグラフによると、その原子数比を0.05〜0.30とすることにより発光強度を1000以上とすることができ、従来物質より数倍も発光強度が高い赤色発光体を得ることができることがわかる。
【0037】
[第3元素の効果]
Ta2O5、Euに加え、さらに下に挙げるような第3の元素を添加することで、本発明の発光特性がどのように変化するかを調べた。
Gd、Mn、Sn、Tb、Ce:発光効率において際立った向上効果は見られない。
Zn:発光特性が向上する。
TiO2:発光特性が向上する。
Al2O3:Al2O3はTa2O5と同様、前記のカゴ状構造の一部を構成する。
【0038】
[Zn添加の効果]
図6に、Eu添加Ta2O5(Eu2O3添加量はモル比でTa2O5:Eu2O3=0.92:0.08)と、Zn及びEu添加Ta2O5(Ta2O5:Eu2O3:ZnO=0.84:0.08:0.08)との発光強度の比較を表すグラフを示す。なお、図6のグラフには、参考のために黄色蛍光体であるYAGの発光特性も重ねて表示した。図6のグラフには、Znを添加することにより発光強度が増加することが示されている。
【0039】
図7aに、Eu添加Ta2O5(Ta2O5:Eu2O3=0.92:0.08)にZnOを添加した場合の、Znの濃度(原子数比)と611nmにおける発光強度との関係を示すグラフを示す。これによれば、Eu添加Ta2O5にZnを僅かでも添加すると、発光特性が向上する効果が得られ、Znの原子数比が0.08である時に、最大の発光強度が得られることがわかる。従って、本発明の赤色蛍光体において有効な発光特性を生じさせるためには、先に述べたEuの添加割合と合わせると、Ta、Eu、Znの原子数比を(1-x-y):x:yと表した場合、x=0.01〜0.3、y=0.005〜0.15程度が好適であると言える。特に、x=0.07〜0.17、y=0.005〜0.05程度のとき、強い発光強度が得られる。
また、図7bに、Eu添加Ta2O5(Ta2O5:Eu2O3=0.92:0.08)に添加するZn化合物をZnO及びZnSとした場合の、励起波長が325nmである場合のZn濃度(原子数比)と611nm発光強度の関係を示す。更に、図7cに、励起波長が470nmである場合の611nm発光強度の関係を示す。図7cからわかるように、いずれの形にせよ、Znを添加することにより発光強度は大きく増加している。また、両グラフより、Znを添加する場合、ZnOの形よりはZnSの形で添加した方が高い発光強度が得られることがわかる。
【0040】
[熱処理温度による発光強度の変化]
熱処理温度によって、本発明の赤色蛍光体の発光特性がどのように変化するかを調べた。図8に、Zn及びEu添加Ta2O5(酸化物の混合モル比でTa2O5:Eu2O3:ZnO=0.84:0.08:0.08)に対する熱処理温度を変化させた各場合の発光特性を表すグラフを示す。また、図9に、Zn及びEu添加Ta2O5の熱処理温度と発光強度(発光波長は611nm)の関係を表すグラフを示す。図8、図9のグラフにおいて示されている熱処理温度の最小値は1250℃であるが、本願発明者は、1200℃より低い熱処理温度では有意な赤色発光が生じないことを確認している。図8及び図9に示す実験結果から、熱処理温度が高くなるに伴い発光強度が増加し、1450℃でピークとなることがわかる。なお、熱処理温度はTa2O5の融点である1785℃以下とする必要がある。
【0041】
[紫外線による励起]
次に、紫外線により励起した場合の本発明の赤色蛍光体の発光特性を調べた。図10にEu添加Ta2O5(Eu2O3のモル比=0.08〜0.3)の、図11にTi及びEu添加Ta2O5(Eu2O3の混合モル比=0.08、TiO2の混合モル比=0.01〜0.08)の、それぞれ励起波長325nmの紫外線により励起した場合の発光スペクトルを示す。図6と縦軸のスケールが異なるので直接比較することはできないが、紫外線励起でも611nmにおいて十分な発光が認められる。
【0042】
[Eu添加(Ta・Al)酸化物]
ベース物質であるTa2O5に替え、Ta2O5とAl2O3の混合物をベース物質とした場合のEu添加赤色発光体の特性を調べた。図12a〜図12dは、Ta2O5とAl2O3の混合モル比を1:1、2:3、3:2、3:5と変化させた場合のEu添加赤色発光体の発光スペクトルを示す。いずれも、Eu2O3のモル比は0.08、熱処理温度は1200℃、励起波長は325nmである。全体的にTa2O5のみをベースとした場合よりも発光強度は低下しているが、592nmと618nmの2つの発光ピークが現れる。この混合色はほぼピンク色であり、この発光体はピンク色光源として用いることができる。
【0043】
[焼結助剤]
ベース物質を加熱・焼結する際に、焼結助剤を加えることにより焼結温度を下げることができる。その焼結助剤を添加することによる発光特性への影響を調べた。焼結前の混合物におけるベース物質及び焼結助剤の構成モル比を次に記載する。
Ta2O5: 0.1
Eu2O3: 0.08
K塩(KCl等): 0.053
Na塩(NaCl, Na2CO3, Na2SO4等): 0.767
(なお、焼結助剤であるK塩とNa塩のモル比合計は0.82となるが、重量比では60%以下となる)
上記混合物を800℃で2時間加熱したところ、十分な焼結が行われた。こうして作製した赤色発光体の発光特性を図13に示す。なお、励起波長は325nmである。図1のグラフと比較すると611nmのピークにおける発光強度の絶対値はやや低下しているが、ピークの鋭さ(半値幅)はそのまま維持されており、赤色発光体の発光特性自体には大きな影響は与えないことがわかる。
【0044】
以上、本発明に係る赤色蛍光体について説明を行ったが、上記は例に過ぎず、本発明の精神内で適宜に変更や改良を行っても構わないことは明らかである。
【0045】
[構造解析]
図14に、Ta2O5のみの場合と、それにEu2O3をモル比で0.01〜0.3添加して1200℃で加熱した場合のX線回折の結果を示す。これらを比較すると、いずれの場合においてもTa2O5の基本構造がほぼそのまま現れていることがわかる。このことから、Euは、Ta2O5で構成される基本構造の隙間に、イオンとして入り込んでいるのではないかと想定される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る赤色蛍光体は、赤色光源としてはもちろん、青色LED及び黄色蛍光体と組み合わせることにより白色LEDや任意色の光源を構成することができる。このような光源は、照明光源の他、液晶パネル(LCD)のバックライト等にも用いることができる。更に、本発明に係る赤色蛍光体は、紫外線によっても励起するため、紫外線励起照明装置や表示装置の蛍光体としても使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】Eu添加Ta2O5の励起光波長と発光強度の関係を示すグラフ。
【図1b】Eu添加Ta2O5の励起光波長と発光強度の関係を示すグラフ。
【図1c】Ta2O5の励起光波長と発光強度の関係を示すグラフ。
【図2】本発明に係る赤色蛍光体とEu添加Y2O3との発光強度の比較を表すグラフ。
【図3】本発明に係る赤色蛍光体及びEu添加Y2O3の、時間経過による発光強度の減衰を表すグラフ。
【図4】Ta2O5に対するEu2O3の添加濃度変化による発光強度の変化を示すグラフ。
【図5】発光波長611nmにおける発光強度のEuのモル濃度依存性を表すグラフ。
【図6】Eu添加Ta2O5と、Zn及びEu添加Ta2O5との発光強度の比較を表すグラフ。
【図7a】Znの添加割合と、611nmにおける発光強度との関係を示すグラフ。
【図7b】ZnO、ZnS添加の場合のZnの添加割合と、励起波長が325nmの場合の611nmにおける発光強度との関係を示すグラフ。
【図7c】ZnO、ZnS添加の場合のZnの添加割合と、励起波長が470nmの場合の611nmにおける発光強度との関係を示すグラフ。
【図8】複数の熱処理温度におけるZn及びEu添加Ta2O5の発光特性の関係を示すグラフ。
【図9】Zn及びEu添加Ta2O5の熱処理温度と発光強度の関係を表すグラフ。
【図10】励起波長325nmの紫外線により励起した場合のEu添加Ta2O5の発光特性を表すグラフ。
【図11】励起波長325nmの紫外線により励起した場合のTi及びEu添加Ta2O5の発光特性を表すグラフ。
【図12a】Ta2O5:Al2O3=1:1酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図12b】Ta2O5:Al2O3=2:3酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図12c】Ta2O5:Al2O3=3:2酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図12d】Ta2O5:Al2O3=3:5酸化物をベースとするEu添加赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図13】焼結助剤を添加した場合の赤色発光体の発光特性を表すグラフ。
【図14】Ta2O5のみ、及びEu添加Ta2O5のX線回折の結果を表すグラフ。
【図15】本発明に係る蛍光体を用いた発光装置の一例である砲弾型LED発光装置の断面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ta酸化物中に発光源としての希土類元素を含有する、Ta酸化物を主体とする蛍光体。
【請求項2】
前記希土類元素がEu, Er, Dy, Sm, Tb, Ce, Gd, Nd, Dy, Hoのいずれか又はそれらの2以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のTa酸化物を主体とする蛍光体。
【請求項3】
Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるようEuを含有することを特徴とする、Ta酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項4】
Ta:Euの原子数比が0.95:0.05〜0.70:0.30となるようEuを含有することを特徴とする、Ta酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項5】
Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15となるようZnを含有する、請求項3又は4に記載のTa酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項6】
Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のTa酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項7】
(Ta・Al):Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるようEuを含有することを特徴とする、Ta及びAl酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項8】
焼結助剤としてNa塩又はK塩を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項9】
焼結助剤の含有量が30〜60重量%であることを特徴とする請求項8に記載の蛍光体。
【請求項10】
励起発光源と、請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体を有する発光装置。
【請求項11】
励起発光源と蛍光体とを有する照明装置において、蛍光体として少なくとも請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体を、励起発光源として該蛍光体の励起波長域に発光波長を有するLEDを、それぞれ用いることを特徴とする照明装置。
【請求項12】
蛍光体として請求項1〜9のいずれかに記載の励起波長が460〜480nm又は520〜540nmである赤色蛍光体を用いることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
蛍光体として請求項1〜9のいずれかに記載の発光波長が608〜615nmである赤色蛍光体を用いることを特徴とする照明装置。
【請求項14】
蛍光体として請求項1〜13のいずれかに記載の発光ピークにおける半値幅が3nm以下である赤色蛍光体を用いることを特徴とする照明装置。
【請求項15】
Ta酸化物とEu酸化物を、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるように混合し、
該混合物を1200℃以上、Ta酸化物の溶融温度以下で加熱する工程を有する
ことを特徴とする赤色蛍光体の製造方法。
【請求項16】
上記Ta酸化物がTa2O5であり、Eu酸化物がEu2O3である、請求項15に記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項17】
前記混合物に更にZn酸化物を、Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15となるように加えることを特徴とする請求項15又は16に記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項18】
前記混合物に更に、Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれかの酸化物又はそれらの酸化物の混合物を加えることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項19】
前記混合物に、焼結助剤として30〜60重量%のNa塩又はK塩を添加することを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項1】
Ta酸化物中に発光源としての希土類元素を含有する、Ta酸化物を主体とする蛍光体。
【請求項2】
前記希土類元素がEu, Er, Dy, Sm, Tb, Ce, Gd, Nd, Dy, Hoのいずれか又はそれらの2以上の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載のTa酸化物を主体とする蛍光体。
【請求項3】
Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるようEuを含有することを特徴とする、Ta酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項4】
Ta:Euの原子数比が0.95:0.05〜0.70:0.30となるようEuを含有することを特徴とする、Ta酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項5】
Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15となるようZnを含有する、請求項3又は4に記載のTa酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項6】
Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれか1つ又は複数を含有する請求項1〜5のいずれかに記載のTa酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項7】
(Ta・Al):Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるようEuを含有することを特徴とする、Ta及びAl酸化物を主体とする赤色蛍光体。
【請求項8】
焼結助剤としてNa塩又はK塩を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光体。
【請求項9】
焼結助剤の含有量が30〜60重量%であることを特徴とする請求項8に記載の蛍光体。
【請求項10】
励起発光源と、請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体を有する発光装置。
【請求項11】
励起発光源と蛍光体とを有する照明装置において、蛍光体として少なくとも請求項1〜9のいずれかに記載の蛍光体を、励起発光源として該蛍光体の励起波長域に発光波長を有するLEDを、それぞれ用いることを特徴とする照明装置。
【請求項12】
蛍光体として請求項1〜9のいずれかに記載の励起波長が460〜480nm又は520〜540nmである赤色蛍光体を用いることを特徴とする照明装置。
【請求項13】
蛍光体として請求項1〜9のいずれかに記載の発光波長が608〜615nmである赤色蛍光体を用いることを特徴とする照明装置。
【請求項14】
蛍光体として請求項1〜13のいずれかに記載の発光ピークにおける半値幅が3nm以下である赤色蛍光体を用いることを特徴とする照明装置。
【請求項15】
Ta酸化物とEu酸化物を、Ta:Euの原子数比が0.99:0.01〜0.60:0.40となるように混合し、
該混合物を1200℃以上、Ta酸化物の溶融温度以下で加熱する工程を有する
ことを特徴とする赤色蛍光体の製造方法。
【請求項16】
上記Ta酸化物がTa2O5であり、Eu酸化物がEu2O3である、請求項15に記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項17】
前記混合物に更にZn酸化物を、Ta:Eu:Znの原子数比が0.985:0.01:0.005〜0.45:0.40:0.15となるように加えることを特徴とする請求項15又は16に記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項18】
前記混合物に更に、Mg、Gd、Sn、Ti、Tbのいずれかの酸化物又はそれらの酸化物の混合物を加えることを特徴とする請求項15〜17のいずれかに記載の赤色蛍光体の製造方法。
【請求項19】
前記混合物に、焼結助剤として30〜60重量%のNa塩又はK塩を添加することを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の赤色蛍光体の製造方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【図1b】
【図1c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図13】
【図14】
【図15】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12a】
【図12b】
【図12c】
【図12d】
【公開番号】特開2008−88316(P2008−88316A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271465(P2006−271465)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】
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