説明

TiAl基合金及びその製造方法並びにそれを用いた動翼

【課題】耐酸化性に優れ、且つ、高温強度の高い熱間鍛造TiAl基合金及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金であって、前記a及びbが以下の式(1)及び(2):
0≦a≦2 (1)
3+a≦b≦7+a (2)
を満たすTiAl基合金。Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、更にV:c原子%、Cr:d原子%、及びMo:e原子%から選択される1種以上の元素を含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金であって、前記a乃至eが以下の式(3)乃至(9):
0≦a≦2 (3)
3+a≦b+1.0c+1.8d+3.8e≦7+a (4)
b≧2 (5)
c≧0 (6)
d≧0 (7)
e≧0 (8)
c+d+e>0 (9)
を満たすTiAl基合金。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TiAl基合金及びその製造方法、並びにそれを用いた動翼に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや過給機の動翼などに用いる材料として、軽量(比重約4)で耐熱性に優れるTiAl基合金が注目されている。特に、大型の回転動翼の場合、動翼の構成部材が軽量であるほど遠心応力が少なくなるので、最高到達回転数の向上や動翼の大面積化、さらにはディスク部分への負荷応力の低減を図ることができる。
【0003】
TiAl基合金は、高温強度に優れた金属間化合物であるTiAlやTiAlを主体とする合金であり、耐熱性に優れている。しかし、TiAl基合金は鋳造性が悪く、鋳造での大型部品の製造が困難であるため、鍛造による成形が研究されている。鍛造方法には、超塑性加工を利用した恒温鍛造と熱間鍛造とがある。恒温鍛造は、鋳造合金のインゴットを高温で加熱しながら低速で加工する方法である。熱間鍛造は、鋳造合金インゴットを高温で加熱した後、放冷しながら高速で加工する方法である。この熱間鍛造では、TiAl基合金の鍛造性を向上させるために、高温での変形能に優れるβ相が析出する成分組成とし、第3元素としてCr,V,Mnなどのβ相安定化元素が添加される。
【0004】
特許文献1には、Alを43〜47原子%含有し、第3元素としてCrを添加したTiAl基合金を、超塑性加工(恒温鍛造)することが開示されている。上記組成のTiAl基合金を、加熱保持装置を用いた塑性加工装置で、動的再結晶が起こる低歪速度で変形し、γ相の結晶粒界にβ相を析出させた微細構造を有するTiAl基合金を得ている。
【0005】
特許文献2には、Alを40〜48原子%含有し第3元素としてCr及びVから選択される1種以上を添加したTiAl基合金、及び、Alを38〜48原子%含有し第3元素としてMnを添加したTiAl基合金が開示されている。上記組成のTiAl基合金に対して高速塑性加工(熱間鍛造)を施し、α相とγ層とが交互に積層されたラメラ組織粒を形成させて、TiAl基合金の高温強度を向上させている。
【特許文献1】米国特許第5370839号明細書
【特許文献2】特開2001−316743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の超塑性加工は、高温に保持しながらの低歪速度での塑性加工であるので、生産性が低く工業的な実用性は低い。
【0007】
一方、特許文献2に記載される熱間鍛造は、汎用設備にて一般鋼材とほぼ同様の鍛造加工が可能であるため、生産性が高く実用的である。
しかし、特許文献2に記載されるTiAl基合金は、熱間鍛造によりラメラ組織粒を析出させて高温強度を向上させているが、鋳造TiAl基合金に比べてクリープ強度が低く、耐酸化性も不十分であった。このため、TiAl基合金の適用可能温度は650℃以下となっていた。
【0008】
本発明は、耐酸化性に優れ、且つ、高温強度の高い熱間鍛造TiAl基合金及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金であって、前記a及びbが以下の式(1)及び(2):
0≦a≦2 (1)
3+a≦b≦7+a (2)
を満たすTiAl基合金を提供する。
【0010】
また、本発明は、Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、更にV:c原子%、Cr:d原子%、及びMo:e原子%から選択される1種以上の元素を含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金であって、前記a乃至eが以下の式(3)乃至(9):
0≦a≦2 (3)
3+a≦b+1.0c+1.8d+3.8e≦7+a (4)
b≧2 (5)
c≧0 (6)
d≧0 (7)
e≧0 (8)
c+d+e>0 (9)
を満たすTiAl基合金を提供する。
【0011】
Al含有量が高くなると高温強度は向上する。しかし、Al含有量が高いと、高温での変形能に優れるβ相が析出しない、あるいは、析出温度域が高いために、鍛造性が悪くなる。本発明のTiAl基合金は、汎用の鍛造設備で実現可能な温度範囲の高温でα相とβ相の2相領域となる温度領域を有し、この温度領域での熱間鍛造が可能である。本発明のTiAl基合金は、β相安定化元素としてNbを上記範囲で含有し、Al含有量が40原子%以上42原子%以下と従来のTiAl基合金よりも低くすることにより、鍛造性を維持しつつ高い高温強度を有する。また、Nbを添加することにより、従来の熱間鍛造TiAl基合金よりも耐酸化性を向上させることが可能となる。
【0012】
V,Cr及びMoは、Nbと同様にβ相を形成させやすく、TiAl基合金の鍛造性を向上させる効果が高い元素である。Nbの他にV,Cr及びMoから選択される1種以上の元素を上記の割合で含有することで、鍛造性に優れたTiAl基合金となる。更に、Vは高温での引張強度向上に寄与する。Crは、TiAl基合金の変形抵抗を低下させる。Moはクリープ強度向上に寄与する。V,Cr及びMoから選択される1種以上の元素を含有することにより、合金性能を更に向上させることが可能となる。
【0013】
上記発明において、TiAl基合金が、α相とγ相とが交互に積層されたラメラ粒が配列してなる金属組織を有することが好ましい。ラメラ粒が配列した金属組織を有することで、高温強度の高いTiAl基合金となる。
【0014】
本発明は、Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金素材であって、前記a及びbが以下の式(1)及び(2):
0≦a≦2 (1)
3+a≦b≦7+a (2)
を満たすTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域内の保持温度に保持する工程と、該保持温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の最終加工温度まで冷却しながら高速塑性加工する工程とを備えるTiAl基合金の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、更にV:c原子%、Cr:d原子%、及びMo:e原子%から選択される1種以上の元素を含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金素材であって、前記a乃至eが以下の式(3)乃至(9):
0≦a≦2 (3)
3+a≦b+1.0c+1.8d+3.8e≦7+a (4)
b≧2 (5)
c≧0 (6)
d≧0 (7)
e≧0 (8)
c+d+e>0 (9)
を満たすTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域内の保持温度に保持する工程と、該保持温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の最終加工温度まで冷却しながら高速塑性加工する工程とを備えるTiAl基合金の製造方法を提供する。
【0016】
上記組成のTiAl基合金は、高温において(α+β)相の平衡領域を有するとともに、V,Cr及びMoから選択される1種以上の元素及びNbを含有するので、β相が安定して析出する。TiAl基合金素材を(α+β)相の平衡温度領域保持して、高温変形能の高いβ相が安定して存在する状態で、高速にて塑性加工を施すので、加工性が良好である。また、(α+β)相の平衡温度領域の保持温度から最終加工温度まで冷却する間に高速塑性加工を施すことにより、合金中に歪みが多数導入される。この歪みを起点として動的再結晶が誘起され、最終的に微細なラメラ粒が配列する金属組織が形成される。このラメラ粒が存在する金属組織とすることで、TiAl基合金は高い高温強度を示す。
【0017】
上記発明において、前記保持温度が、1150℃以上1350℃以下であれば、金属組織内に(α+β)相が安定して析出させることができる。
【0018】
上記発明において、前記最終加工温度が、1150℃以上であれば、高速塑性加工が可能な高い変形能を維持できる。1150℃未満であると、変形能が低下してTiAl基合金素材に割れが発生する恐れがある。
【0019】
上記発明において、前記高速塑性加工として鍛造法を用いることができる。
【0020】
上記のTiAl基合金を用いた動翼は、高温強度と耐酸化性に優れ、650℃以上での使用に耐え得る動翼となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高温強度と耐酸化性が高く、鍛造性に優れたTiAl基合金とすることができる。本発明のTiAl基合金を用いた動翼は、高温強度と耐酸化性に優れるため、650℃以上の使用環境においても適用可能である。また、鍛造性が良好であるため、短時間での成形が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第一実施形態に係るTiAl基合金は、Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなり、a及びbが以下の式(1)及び(2):
0≦a≦2 (1)
3+a≦b≦7+a (2)
を満たす。
【0023】
上記組成のTiAl基合金は、Alを40原子%以上42原子%の割合で含有する。Al含有量が40原子%未満であると、高温強度が低下する。Al含有量が42原子%を超えると、鍛造性が低下する。
【0024】
第一実施形態のTiAl基合金は、Nbを含有することにより耐酸化性に優れる。Nbはβ相を高温領域で安定して析出させる効果もある。β相は高温での変形能が大きいため、β相を安定して析出させることで鍛造性が向上する。また、β相が析出することによって、冷却過程でラメラ組織(例えば、平均粒径が1μmから50μmの微細ラメラ組織)が形成されやすくなる。このため、鍛造後の合金の高温強度、特にクリープ強度が向上する。Nb含有量が多くなると逆にラメラ組織が析出しにくくなり、高温強度が低下する。Nb含有量を上記割合とすることで、高温強度に優れ鍛造性が良好なTiAl基合金となる。
【0025】
本発明の第二実施形態に係るTiAl基合金は、Al:(40+a)原子%と、Nb:b原子%とを含有し、更にV:c原子%、Cr:d原子%、及びMo:e原子%から選択される1種以上の元素を含有し、残部がTi及び不可避的不純物からなり、a乃至eが以下の式(3)乃至(9):
0≦a≦2 (3)
3+a≦b+1.0c+1.8d+3.8e≦7+a (4)
b≧2 (5)
c≧0 (6)
d≧0 (7)
e≧0 (8)
c+d+e>0 (9)
を満たす。
【0026】
V,Cr及びMoは、Nbと同様にβ相を形成させやすい元素である。Nbのβ相析出効果をNb量:b(原子%)に換算した値をNb当量とすると、各元素のNb当量は以下のようになる。
V:b=1.0c
Cr:b=1.8d
Mo:b=3.8e
すなわち、Vのβ相析出効果はNbの場合と同等である。Cr及びMoのβ相析出効果は、それぞれNbの1.8倍、3.8倍であり、Nbに比べて少量の添加でβ相を安定して析出させることができる。
【0027】
β相を安定して析出させる効果の他に、Vは高温での引張強度を更に向上させる効果がある。CrはTiAl基合金の変形抵抗を低下させる効果があり、鍛造性が更に向上する。Moはクリープ強度を更に向上させる効果がある。
【0028】
Nb,V,Cr及びMoの含有量は、鍛造性及び高温強度を考慮すると、上記割合の範囲内とすると良い。
【0029】
第一実施形態および第二実施形態のTiAl基合金を熱間鍛造法で製造する方法を、以下に説明する。
上記組成で表される組成となるTiAl基合金素材(例えばインゴット形状)を溶製する。
【0030】
TiAl基合金素材を重油炉などで加熱して、(α+β)相の平衡温度領域内の保持温度で長時間保持する。この工程により、金属組織内にα相及びβ相を析出させる。保持温度は、上記組成式のTiAl基合金の場合は、1150℃から1350℃となる。
【0031】
保持後のTiAl基合金素材を炉から取り出し、合金素材の温度が(α+β)相平衡温度領域である間に、汎用の油圧プレス機などを用いて、高速塑性加工を施す。冷却過程での高速塑性加工により、α相に歪みが導入される。歪みを起点として動的再結晶がおこり、その結果、α相とγ相とが交互に積層された微細なラメラ粒が形成する。β相からは冷却過程でγ相が析出して等軸的な微細組織が形成される。上記組成のTiAl基合金の場合、最終加工温度は1150℃以上とすれば、変形能が大きいβ相が析出した状態で塑性加工を施すことができる。最終加工温度が1150℃未満であると、変形能が低下して材料割れが発生する。また、冷却速度が速すぎると、マッシブ変態を生じてラメラ組織が形成されず、冷却速度が遅すぎるとラメラ間隔が広がり材料強度が低下する。冷却速度は、例えば50〜700℃/分程度とすることが好ましい。
【0032】
本実施形態のTiAl基合金を用いて製造された動翼は、高温強度及び高温での耐酸化性に優れる。動翼は以下の手順にて製造される。
第一実施形態または第二実施形態の組成のTiAl基合金素材(インゴット形状など)を溶製する。次に、TiAl基合金素材に熱間自由鍛造を施し、後工程の型鍛造における鍛造性を向上させる。その後、合金素材を棒状に切断し、動翼の型鍛造の荒地とする。荒地の製造は、コストを重視する場合には、棒状のTiAl基合金素材を溶製しても良い。棒材の形状は、最終的な翼形状を付与しやすいように、ドッグボーン形状などに加工する。
【0033】
型鍛造工程では、棒状のTiAl基合金素材を重油炉などで加熱し、(α+β)相平衡温度領域内の保持温度に保持する。合金素材を炉から取り出した直後に、鍛造荒地を使用して、汎用のハンマープレスで型鍛造を施して成形する。型鍛造後は、冷却過程での熱変形を防ぐために断熱材中あるいは600℃程度の低温炉中で除冷する。最後に、鍛造品を切削加工などで動翼形状に成形する。
【0034】
本実施形態のTiAl基合金は鍛造性に優れるため、大型部材である動翼を簡略な工程にて短時間で形成することが可能である。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
表1の実施例1−1乃至実施例1−4に示す成分からなるTiAl基合金インゴットを鋳造により製造した。各インゴットを所定の寸法となるように切断して表面加工を施し、直径80mm、高さ60mmの柱状のTiAl基合金素材を得た。
【0036】
各TiAl基合金素材を重油炉内で1300℃に加熱保持した。保持後、重油炉からTiAl基合金素材を取り出し、汎用の300トン油圧プレスを用いて、鍛造比3sの据え込み鍛造を行った。なお、TiAl基合金素材取出しから鍛造終了まで10秒以内で実施した。鍛造後の冷却は、鉄製架台上にて大気放冷とした。鍛造後熱処理として、マッフル炉を使用して800℃、24時間の応力除去焼鈍を実施した。
【0037】
(比較例)
表1の比較例1−1乃至比較例1−9に示す成分からなるTiAl基合金インゴットを鋳造により製造した。各インゴットを切断して表面加工を施し、直径80mm、高さ60mmの柱状のTiAl基合金素材を得た。実施例1と同様の方法で、各TiAl基合金素材の鍛造及び鍛造後の応力除去焼鈍を実施した。
【0038】
(実施例2〜5)
表1の実施例2乃至実施例5に示す成分からなるTiAl基合金インゴットを鋳造により製造した。インゴットを切断して表面加工を施し、直径80mm、高さ60mmの柱状TiAl基合金素材を得た。実施例1と同様の方法で、実施例2のTiAl基合金素材の鍛造及び鍛造後の応力除去焼鈍を実施した。
【0039】
各TiAl基合金の鍛造性評価、クリープ強度試験及び耐酸化性試験を実施した。
鍛造性評価は、鍛造後のインゴットの割れの発生有無を目視で確認した。割れが発生しない場合は鍛造性良好(○)とし、割れが発生する場合は鍛造性不良(×)とした。
クリープ強度試験は、焼鈍後のインゴットから試験片を切り出し、試験温度760度、負荷応力311MPaで実施した。クリープ破断時間が25時間以上で高温強度良好(○)とし、25時間未満で高温強度不足(×)とした。
耐酸化性試験は、焼鈍後のインゴットから一辺が2.8mmの立方体試験片を切り出し、870℃にて50時間加熱し、単位面積当たりの酸化増量で比較した。酸化増量が0.01g/mm以下で耐酸化性良好(○)とし、0.01g/mmを超えた場合に耐酸化性不足(×)とした。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1−1乃至実施例1−4のTiAl基合金は、いずれもラメラ粒が析出した金属組織となり、高い高温強度が得られた。また、Nbを含有しない比較例1−9のTiAl基合金と比較して、耐酸化性が大幅に改善された。
【0042】
Alが40原子%(at%)未満の場合、クリープ破断時間が低下した(比較例1−1、比較例1−3)。Alが42原子%を超えると、クリープ破断時間が長く高温強度は良好だったが、鍛造割れが発生した(比較例1−5、比較例1−7)。
Nbの含有量bが不等式b<3+aを満たす場合、鍛造割れが発生した(比較例1−2、比較例1−6)。Nb含有量bが不等式b>7+aとなる場合は、クリープ破断時間が低下した(比較例1−4、比較例1−8)。
【0043】
実施例2乃至実施例5のTiAl基合金はいずれも、鍛造性、高温強度及び耐酸化性は良好だった。
【0044】
実施例1−1、及び、実施例2乃至実施例5のTiAl基合金について、変形抵抗測定、引張試験、クリープ強度試験、及び耐酸化性試験の評価結果を表2に示す。変形抵抗測定は、焼鈍後のインゴットから直径7mm、長さ12mmの円柱試験片を切り出し、高周波加熱を用いて1250℃に保持し、変形速度100mm/秒で実施した。引張試験は、焼鈍後のインゴットから切り出した全長60mm、評定部直径4mm、評定部長さ20mmの試験片に対し、700℃大気中にて実施した。
【0045】
【表2】

【0046】
Vを含有する実施例2及び実施例3は、実施例1−1と比較し引張破断強度が向上した。Crを含有する実施例4は、変形抵抗が小さくなった。すなわち、高温での変形能が増大した。Moを含有する実施例5は、クリープ強度が大幅に向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al:(40+a)原子%と、
Nb:b原子%とを含有し、
残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金であって、
前記a及びbが以下の式(1)及び(2):
0≦a≦2 (1)
3+a≦b≦7+a (2)
を満たすTiAl基合金。
【請求項2】
Al:(40+a)原子%と、
Nb:b原子%とを含有し、更に
V:c原子%、
Cr:d原子%、及び
Mo:e原子%
から選択される1種以上の元素を含有し、
残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金であって、
前記a乃至eが以下の式(3)乃至(9):
0≦a≦2 (3)
3+a≦b+1.0c+1.8d+3.8e≦7+a (4)
b≧2 (5)
c≧0 (6)
d≧0 (7)
e≧0 (8)
c+d+e>0 (9)
を満たすTiAl基合金。
【請求項3】
α相とγ相とが交互に積層されたラメラ粒が配列してなる金属組織を有する請求項1または請求項2に記載のTiAl基合金。
【請求項4】
Al:(40+a)原子%と、
Nb:b原子%とを含有し、
残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金素材であって、
前記a及びbが以下の式(1)及び(2):
0≦a≦2 (1)
3+a≦b≦7+a (2)
を満たすTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域内の保持温度に保持する工程と、
該保持温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の最終加工温度まで冷却しながら高速塑性加工する工程とを備えるTiAl基合金の製造方法。
【請求項5】
Al:(40+a)原子%と、
Nb:b原子%とを含有し、更に
V:c原子%、
Cr:d原子%、及び
Mo:e原子%
から選択される1種以上の元素を含有し、
残部がTi及び不可避的不純物からなるTiAl基合金素材であって、
前記a乃至eが以下の式(3)乃至(9):
0≦a≦2 (3)
3+a≦b+1.0c+1.8d+3.8e≦7+a (4)
b≧2 (5)
c≧0 (6)
d≧0 (7)
e≧0 (8)
c+d+e>0 (9)
を満たすTiAl基合金素材を、(α+β)相の平衡温度領域内の保持温度に保持する工程と、
該保持温度に保持したTiAl基合金素材を、所定の最終加工温度まで冷却しながら高速塑性加工する工程とを備えるTiAl基合金の製造方法。
【請求項6】
前記保持温度が、1150℃以上1350℃以下である請求項4または請求項5に記載のTiAl基合金の製造方法。
【請求項7】
前記最終加工温度が、1150℃以上である請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。
【請求項8】
前記高速塑性加工として鍛造法を用いる請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載のTiAl基合金の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のTiAl基合金を用いた動翼。

【公開番号】特開2009−215631(P2009−215631A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62690(P2008−62690)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】