説明

VEGF阻害薬として使用するための置換キノリン類

式(I)の化合物およびその医薬的に許容できる塩、ならびに療法有効量の該化合物を含む医薬組成物。該化合物は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬の処置に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−カルボン酸キノリン誘導体の置換カルボン酸エステルおよび療法におけるその使用に関する。これらのエステルは、改良されたインビボ取込みを示し、インビボで加水分解されてそれらの対応するカルボン酸になる。特に本発明は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬の処置のためのキノリン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の技術水準の概説は本発明の理解を補助するために提示するにすぎず、それまたはそれに引用されたいずれかの参考文献を本発明に対する先行技術であると認めるものではない。
【0003】
血管新生、すなわち既存の血管からの新たな毛細血管の成長は、胚発生、臓器形成、組織再生、およびリモデリングに必須である[Folkman, J. & Shing, Y. (1992) J. Biol. Chem. 267, 10931-10934]。それは下記を含めたさまざまな病的状態の発症および進行にも関与する:腫瘍の増殖および転移、心血管疾患、糖尿病性網膜障害、リウマチ性関節炎、乾癬[Folkman, J. Nat. Med. 1995, 1, 27-30]、および加齢性黄斑変性症[Barakat, M. R.; Kaiser, P. K. Expert Opin. Investig. Drugs 2009, 18, 637-46; Chappelow, A. V.; Kaiser, P. K. Drugs 2008, 68, 1029-1036]。
【0004】
血管新生および血管形成は、内皮細胞の増殖、移動および分化、細胞外マトリックスの分解、管形成、ならびに新たな毛細血管枝の発芽を含む複雑な多段階プロセスである[Hanahan, D.; Folkman, J. Cell 1996, 86, 353-364; Risau, W. Nature (London) 1997, 386, 671-674]。血管新生プロセスの複雑さは、この系の制御が多数存在し、それらが一過性でオンオフ−スイッチングされている可能性があることを示唆する。組織における血管新生表現型のスイッチは、血管新生の刺激因子と阻害因子の間のバランスの局所変化に依存すると考えられる[Folkman, J. N. Engl. J. Med. 1995, 333, 1757-1763]。
【0005】
記載された多数の血管新生因子のうち、血管内皮増殖因子(VEGF)/血管透過因子は、血管内皮細胞に対するその顕著な特異性について最も良く特性解明されている正の調節因子のひとつである[Senger, D. R.; Galli, S. J.; Dvorak, A. M.; Perruzzi, C. A.; Harvey, V. S.; Dvorak, H. F. Science 1983, 219, 983-985; Ferrara, N.; Henzel, W. J. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1989, 161, 851-858; Gospodarowicz, D.; Abraham, J. A.; Schilling, J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1989, 86, 7311-7315]。VEGFの生物学的作用には、内皮細胞の増殖、移動、分化の刺激、管形成、血管透過性の増大、および血管統合性の維持が含まれる[Mustonen, T.; Alitalo, K. J. Cell Biol. 1995, 129, 895-898; Ferrara, N.; Davis-Smyth, T. Endocr. Rev. 1997, 18, 4-25; Thomas, K. J. Biol. Chem. 1996, 271, 603-606; Risau, W. Nature (London) 1997, 386, 671-674; Breier, G.; Risau, W. Trends Cell Biol. 1997, 6, 454-456]。VEGFにより誘発される血管新生応答はチロシンキナーゼ受容体により仲介され、これらは主に内皮系列の血管細胞に発現する[Mustonen, T.; Alitalo, K. J. Cell Biol. 1995, 129, 895-898; De Vries, C.; Escobedo, J. A.; Ueno, H.; Huck, K.; Ferrara, N.; Williams, L. T. Science 1992, 255, 989-99; Terman, B. I.; Dougher-Vermazen, M.; Carrion, M. E.; Dimitrov, D.; Armellino, D. C.; Gospodorawicz, D.; Bohlen, P. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1992, 187, 1579-1586]。
【0006】
内皮細胞膜(ECM)への細胞の接着、すなわち内皮細胞の活性化のための基礎段階、活性化された内皮細胞の生存、ターゲッティングおよび移動の阻害は、抗血管新生のための最も有望なターゲット機序のひとつである可能性がある。VEGFがこれらの機序に関与するだけでなく、これらの相互作用の多くはインテグリン、すなわち多機能性細胞接着受容体のファミリーによっても仲介される[Stupack, D. G. Oncology (Williston Park) 2007, 21 (9 Suppl 3), 6-12; Avraamides, C. J.; Garmy-Susini, B.; Varner, J. A. Nat. Rev. Cancer 2008, 8, 604-17.]。インテグリンファミリーのメンバーは、細胞−細胞、細胞−細胞外マトリックス、および細胞−疾病体の相互作用を仲介する非共有結合型アルファ/ベータヘテロ二量体である。それらは、血管内皮増殖因子に対する受容体(VEGFR)の作用を調節するとも考えられている[Napione, L.; Cascone, I.; Mitola, S.; Serini, G.; Bussolino, F. Autoimmun. Rev. 2007, 7, 18-22]。
【0007】
現在までに19種類の異なるインテグリンアルファサブユニットおよび8種類の異なるインテグリンベータサブユニットが知られており、これらが結合して、異なるリガンド特異性をもつ少なくとも24種類の異なるアルファ/ベータヘテロ二量体を形成する[Silva, R.; D'Amico, G.; Hodivala-Dilke, K. M.; Reynolds, L. E. Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2008, 28, 1701-1713]。現在知られている約24種類のインテグリンのうち16種類は、血管生物学の何らかの面に関係があると報告されている。これらのうち、α1β1、α2β1、α3β1、α5β1、α6β1、α6β4、αvβ3およびαvβ5は内皮細胞に存在することが知られており[Rupp, P. A.; Little, C. D. Circ. Res., 2001, 566-572; Stupack, D. G.; Cheresh, D. A. Sci. STKE, 2002, PE7]、一方、血管平滑筋細胞はα1β1、α2β1、α3β1、α4β1、α5β1、α6β1、α7β1、α8β1,α9β1、αvβ1、αvβ3、αvβ5およびα6β4をもつと報告されている[Moiseeva, E. P. Cardivasc. Res., 2001, 372-386]。
【0008】
多くのインテグリンの細胞外ドメインに対するリガンドは細胞外マトリックスのタンパク質であり、インテグリンの細胞内ドメインは細胞内構成要素、たとえばキナーゼおよび細胞骨格に直接または間接的に結合する。インテグリンは二方向シグナル伝達受容体として作用し、これによりタンパク質活性および遺伝子発現はインテグリンによリその細胞外ドメインへのリガンド結合に応答して変更される;これはアウトサイド−イン−シグナル伝達(outside−in−signalling)とも呼ばれる。他方、インテグリンの親和性は、細胞内変化、たとえばインテグリンの細胞外ドメインへのタンパク質の結合に応答して調節される;これはインサイド−アウト−シグナル伝達(inside−out signalling)と呼ばれる[Humphries, M. J. Biochem. Soc. Trans. 2000, 28, 311-339; Hynes, R. O. Cell, 2002, 110, 673-687]。
【0009】
活性化された内皮細胞におけるインテグリンのパターン、マウス遺伝子ノックアウト体に関する幾つかの研究、ならびに血管新生動物モデルにおける抗体、ペプチドおよび小分子による阻害研究が、血管新生の重要な段階に関与するンテグリンおよびECMタンパク質についての情報を提供した[Brooks, P. C.; Clark, R. A.; Cheresh, D. A. Science, 1994, 264, 569-571; Brooks, P. C. Eur. J. Cancer, 1996, 32A, 2423-2429; Mousa, S. A. Curr Opin Chem Biol, 2002, 6, 534-541; Hynes, R. O. Nature Medicine 2002, 8, 918-21; Kim, S.; Bell, K.; Mousa, S. A.; Varner, J. A.; Am. J. Pathol. 2000, 156, 1345-1362]。
【0010】
上記に述べた研究から、ビトロネクチン受容体αvβ3、αvβ5およびフィブロネクチン受容体α5β1は血管新生において重要な役割を果たすと思われた。インテグリンα5β1の発現は、ヒトの腫瘍の血管および増殖因子による刺激後の血管において有意にアップレギュレートされ、いったん発現すると、α5β1はインビトロおよびインビボで内皮細胞の生存および移動を調節する。インテグリンα5β1は静止期の内皮にはわずかしか発現しないが、それの発現はマウスおよびヒトの両方で腫瘍血管新生中の内皮において有意にアップレギュレートされ、これによりα5β1は抗血管新生療法のための有望なターゲットとなる[Kim, S.; Bell, K.; Mousa, S. A.; Varner, J. A.; Am. J. Pathol. 2000, 156, 1345-1362; Bhaskar, V.; Zhang, D.; Fox, M.; Seto, P.; Wong, M. H.; Wales, P. E.; Powers, D.; Chao, D. T; Dubridge, R. B.; Ramakrishnan, V. J. Transl. Med. 2007, 27, 61]。このインテグリンの発現は角膜の血管新生に際してもアップレギュレートされる[Muether, P. S.; Dell, S.; Kociok, N.; Zahn, G.; Stragies, R.; Vossmeyer, D.; Joussen, A. M.; Exp. Eye. Res. 2007, 85, 356-365]。
【0011】
抗血管新生療法と、他の療法、たとえば化学療法、放射線療法および遺伝子療法の組合わせも、癌の処置に適用および示唆されている。実際の証拠が、併用療法には単一種類だけに優る潜在的相乗効果があることを示唆している[Huveneers, S.; Truong, H.; Danen, H. J. Int. J. Radiat. Biol. 2007, 83, 743-751; Huber, P. E.; Bischof, M.; Jenne, J.; Heiland, S.; Peschke, P.; Saffrich, R.; Groene, H. J.; Debus, J.; Lipson, K. E.; Abdollahi, A. Cancer Res. 2005, 65, 3643-3655]。
【0012】
WO 2008/119771には、キノリン−3−カルボン酸のC−Cアルキルエステルが、異常なチロシンキナーゼ活性に関連する細胞増殖性障害または細胞分化障害の治療および予防のためのチロシンキナーゼ阻害薬として作用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 2008/119771
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Folkman, J. & Shing, Y. (1992) J. Biol. Chem. 267, 10931-10934
【非特許文献2】Folkman, J. Nat. Med. 1995, 1, 27-30
【非特許文献3】Barakat, M. R.; Kaiser, P. K. Expert Opin. Investig. Drugs 2009, 18, 637-46
【非特許文献4】Chappelow, A. V.; Kaiser, P. K. Drugs 2008, 68, 1029-1036
【非特許文献5】Hanahan, D.; Folkman, J. Cell 1996, 86, 353-364
【非特許文献6】Risau, W. Nature (London) 1997, 386, 671-674
【非特許文献7】Folkman, J. N. Engl. J. Med. 1995, 333, 1757-1763
【非特許文献8】Senger, D. R.; Galli, S. J.; Dvorak, A. M.; Perruzzi, C. A.; Harvey, V. S.; Dvorak, H. F. Science 1983, 219, 983-985
【非特許文献9】Ferrara, N.; Henzel, W. J. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1989, 161, 851-858
【非特許文献10】Gospodarowicz, D.; Abraham, J. A.; Schilling, J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1989, 86, 7311-7315
【非特許文献11】Mustonen, T.; Alitalo, K. J. Cell Biol. 1995, 129, 895-898
【非特許文献12】Ferrara, N.; Davis-Smyth, T. Endocr. Rev. 1997, 18, 4-25
【非特許文献13】Thomas, K. J. Biol. Chem. 1996, 271, 603-606
【非特許文献14】Breier, G.; Risau, W. Trends Cell Biol. 1997, 6, 454-456
【非特許文献15】De Vries, C.; Escobedo, J. A.; Ueno, H.; Huck, K.; Ferrara, N.; Williams, L. T. Science 1992, 255, 989-99
【非特許文献16】Terman, B. I.; Dougher-Vermazen, M.; Carrion, M. E.; Dimitrov, D.; Armellino, D. C.; Gospodorawicz, D.; Bohlen, P. Biochem. Biophys. Res. Commun. 1992, 187, 1579-1586
【非特許文献17】Stupack, D. G. Oncology (Williston Park) 2007, 21 (9 Suppl 3), 6-12
【非特許文献18】Avraamides, C. J.; Garmy-Susini, B.; Varner, J. A. Nat. Rev. Cancer 2008, 8, 604-17
【非特許文献19】Napione, L.; Cascone, I.; Mitola, S.; Serini, G.; Bussolino, F. Autoimmun. Rev. 2007, 7, 18-22
【非特許文献20】Silva, R.; D'Amico, G.; Hodivala-Dilke, K. M.; Reynolds, L. E. Arterioscler Thromb Vasc Biol, 2008, 28, 1701-1713
【非特許文献21】Rupp, P. A.; Little, C. D. Circ. Res., 2001, 566-572
【非特許文献22】Stupack, D. G.; Cheresh, D. A. Sci. STKE, 2002, PE7
【非特許文献23】Moiseeva, E. P. Cardivasc. Res., 2001, 372-386
【非特許文献24】Humphries, M. J. Biochem. Soc. Trans. 2000, 28, 311-339
【非特許文献25】Hynes, R. O. Cell, 2002, 110, 673-687
【非特許文献26】Brooks, P. C.; Clark, R. A.; Cheresh, D. A. Science, 1994, 264, 569-571
【非特許文献27】Brooks, P. C. Eur. J. Cancer, 1996, 32A, 2423-2429
【非特許文献28】Mousa, S. A. Curr Opin Chem Biol, 2002, 6, 534-541
【非特許文献29】Hynes, R. O. Nature Medicine 2002, 8, 918-21
【非特許文献30】Kim, S.; Bell, K.; Mousa, S. A.; Varner, J. A.; Am. J. Pathol. 2000, 156, 1345-1362
【非特許文献31】Bhaskar, V.; Zhang, D.; Fox, M.; Seto, P.; Wong, M. H.; Wales, P. E.; Powers, D.; Chao, D. T; Dubridge, R. B.; Ramakrishnan, V. J. Transl. Med. 2007, 27, 61
【非特許文献32】Muether, P. S.; Dell, S.; Kociok, N.; Zahn, G.; Stragies, R.; Vossmeyer, D.; Joussen, A. M.; Exp. Eye. Res. 2007, 85, 356-365
【非特許文献33】Huveneers, S.; Truong, H.; Danen, H. J. Int. J. Radiat. Biol. 2007, 83, 743-751
【非特許文献34】Huber, P. E.; Bischof, M.; Jenne, J.; Heiland, S.; Peschke, P.; Saffrich, R.; Groene, H. J.; Debus, J.; Lipson, K. E.; Abdollahi, A. Cancer Res. 2005, 65, 3643-3655
【発明の概要】
【0015】
本発明者らは、特定の側鎖パターンをもつ新規なキノリン誘導体が哺乳動物において腫瘍の増殖を効果的に遮断できることを今回見出した。当技術分野の同様な類似体と比較して、本発明化合物は改良された溶解特性および改良されたインビトロ特性をも備えている。
【0016】
したがって、1観点によれば本発明は、式(I)の化合物
【0017】
【化1】

【0018】
[式中:
nは、0(ゼロ)または1であり;
mは、0(ゼロ)、1または2であり;
およびRは、独立して水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cカルボサイクリル;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボサイクリルまたはヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;
は、単環式または二環式C−C10アリール;および単環式または二環式C−Cヘテロアリールまたはヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアリール、ヘテロアリールまたはヘテロサイクリルは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよく;
は、−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;−C(O)NR;単環式または二環式C−Cヘテロアリール;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により環中にオキソ基を含むことができ、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;
およびRは、独立して水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびフェニルから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルおよびフェニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式C−C10アリール;−S(O);−C(O)OR;および−C(O)R10から選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよく;
は、水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
10は、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびCアリールから選択され;このアリールは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
Yは、−C(O)−;−S(O)−;および−S(O)−から選択され;
Xは、−NR−;−O−;および-S−から選択され;
各Rは、独立してハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;およびトリハロメトキシから選択され;
各Rは、独立してハロゲン;カルボキシ;ヒドロキシ;シアノ;C−Cアルキル;C−Cアルケニル;C−Cアルキニル;C−Cアルキルオキシ;C−Cアルケニルオキシ;C−Cアルキニルオキシ;C−Cアルキルチオ;C−Cアルケニルチオ;C−Cアルキニルチオ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミノ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル カルボニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニルオキシ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級スルホンアミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル シリル;およびC−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシまたはC−Cアルキニルオキシ カルボニルから選択され;その際、アルキル、アルケニルおよびアルキニル部分はいずれも場合により、独立してハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、ハロメトキシ、ジハロメトキシおよびトリハロメトキシから選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;
その際、p≧4の炭素原子数を有するCアルキル、アルキニルまたはアルケニル基はいずれも、場合により炭素原子q個のC炭素環式部分を含んでいてもよく、それにより3≦q<pとなる]
またはその医薬的に許容できる塩に関する。
【0019】
本発明の他の観点は、療法に使用するための、前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩に関する。
本発明の他の観点は、療法有効量の前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を少なくとも1種類の医薬的に許容できる賦形剤と共に含む医薬組成物に関する。この観点の1態様において、医薬組成物は少なくとも1種類のさらに他の医薬活性化合物を含む。このさらに他の医薬活性化合物は抗腫瘍活性をもつことができる。
【0020】
本発明の他の観点は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬などの疾患または障害の処置に使用するための、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を提供する。
【0021】
本発明の他の観点は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬などの障害の処置のための医薬の製造における、式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩の使用を提供する。
【0022】
本発明の他の観点は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫または乾癬に罹患している哺乳動物の処置方法であって、その必要がある哺乳動物に療法有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法を提供する。この観点の1態様において、哺乳動物はヒトである。
【0023】
本発明の他の観点は、VEGFRチロシンキナーゼまたはインテグリンの活性に関係する疾患または障害に罹患している哺乳動物の処置方法であって、その必要がある哺乳動物に療法有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法を提供する。この観点の1態様において、哺乳動物はヒトである。
【0024】
本発明の他の観点は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫または乾癬に罹患している哺乳動物の処置方法であって、その必要がある哺乳動物に、療法有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を、VEGF、VEGFRチロシンキナーゼまたはインテグリンを阻害する第2療法薬と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。この観点の1態様において、第2療法薬は療法用抗体である。この観点のさらに他の1態様において、第2療法薬はアルキル化剤;葉酸アンタゴニスト;核酸代謝の代謝拮抗薬;ピリミジン類似体;5−フルオロウラシル;およびプリンヌクレオシドから選択される。この観点の他の態様において、哺乳動物はヒトである。この観点の他の態様において、第2療法薬は第1療法薬と組み合わせてまたは逐次、投与される。
【0025】
本発明の他の観点は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫または乾癬に罹患している患者の処置方法であって、その必要がある患者に、療法有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を、照射および/または放射性物質の投与を含めた放射線処置と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0026】
本発明の他の観点は、癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫または乾癬に罹患している患者の処置方法であって、その必要がある患者に、療法有効量の前記に定めた式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩を、前記に述べた少なくとも2種類の処置と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。そのような方法は、療法有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容できる塩と血管新生薬、放射線処置または化学療法との組合わせを伴うことができる。
【0027】
本発明の他の観点は特許請求の範囲に定めたものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、T241野生型マウス線維肉腫腫瘍細胞を皮下移植されたマウスにおける腫瘍体積(mL)を、本発明の実施例1の化合物25mg/kg/日の経口投与による療法日数の関数としてプロットしたものである。これをビヒクルのみの投与と比較している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、哺乳動物において癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬などの疾患および状態を処置するために使用できる、置換キノリン誘導体に関する。
【0030】
本発明化合物の製造は当業者が十分になしうる範囲にある。一例として、本発明のキノリン−3−カルボン酸エステルは6工程法で形成でき、その際、第1に、適切なハロアニリン誘導体を適切なモノ−またはジエチルエステルと反応させ、生成した中間体を環化して4−ハロ−キノリン−3−カルボン酸エステルにし、次いでこれを適切なアミン、H(R)N−(CH−Rとカップリングさせて、置換された第二級または第三級4−アミノキノリン−3−カルボン酸エステルを形成する。次いでハロゲンをカルボニル化して、対応するアミド、−C(O)−NRを得ることができる。これに関して、置換スルホンアミド、−S(O)−NRは、ハロゲンとスルファイトイオンを反応させることにより製造でき、続いてさらに操作して対応するスルホンアミドまたは対応するスルホキシドが得られることは、当業者に自明なはずである。このキノリン−3−カルボン酸エステルを次いで加水分解して対応するカルボン酸にし、最後に適宜な基、−CHR−(CHR−Rとカップリングさせて、式(I)の化合物を得ることができる。この合成全体を反応スキーム1により示す。下記の反応スキームに関して、適切な反応成分および反応条件を選択することは当業者が十分になしうる範囲内にあるはずである。
【0031】
反応スキーム1
式(I)においてXが−NR−である化合物の製造
【0032】
【化2】

【0033】
本発明化合物の製造に有用な他の合成方法を反応スキーム2に示す。この場合、合成は適切な6−アニリン誘導体、−Y−NRから出発し、そしてアミン基、−(R)N(CHをその後の工程で導入する。この合成全体を反応スキーム2により示す。
【0034】
反応スキーム2
式(I)においてXが−NR−である化合物の製造
【0035】
【化3】

【0036】
ハロゲン化アリールからのエーテル類およびスルフィド類の合成について文献中に多数の方法があり、それらはXがO(酸素)またはSである場合に考慮すべきである。この作業についてのまとめは、たとえばJerry March, Advanced Organic Chemistry, 4th Ed, John Wiley & Sons Inc, New York, 1992, p654-656にある。ビアリールエーテルなどの化合物に直接導く新しい合成法の例は、Evans, D. A.; et al., Tetrahedron Lett. 1998, 39, 2937-2940中にある。
【0037】
すなわち、本発明化合物に到達するために式(I)において定めた基R、R、R、R、R、R、YおよびXを導入する方法が幾つかあり、それらはすべて当業者に周知であり、本明細書に述べる合成経路は本発明に対する限定ではない。
【0038】
本明細書中において単独でまたは他の基の一部として用いる用語“アルキル”は、別途特定しない限り、ノルマル鎖中に1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素を含む非環式の直鎖基または分枝鎖基を表わし、これにはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチルおよびn−オクチルが含まれる。分枝鎖基の例はイソ−プロピル、sec−ブチル、イソ−ペンチル、3−メチルペンチル、2,3−ジメチルヘキシル、3−エチルヘキシルなどであるが、記載しない他の可能な異性体を除外するものではない。別途特定しない限り、用語アルキルには、下記に例示するようにカルボサイクリル、たとえばシクロプロパンを含むかまたはそれにより分断された直鎖または分枝鎖アルキル基も含まれる:
【0039】
【化4】

【0040】
アルキルがカルボサイクリルにより分断または終結されている場合、アルキル部分はカルボサイクリルにいずれか可能な結合点で結合することができ、これには下記に例示するように同一の環炭素が含まれる:
【0041】
【化5】

【0042】
アルキル鎖がカルボサイクリルにより分断または終結されている場合、アルキル鎖とカルボサイクリルの炭素原子の総数は最大で8である。言い換えると、上記の例においてzとwの和は最大で5である。
【0043】
置換アルキルが存在する場合、これは前記の直鎖または分枝鎖アルキル基が1、2または3個の基Rで置換されたものを表わす。アルキル基は、好ましくはノルマル鎖中に1、2、3または4個の炭素を含み、それらは1、2または3個の基Rで置換されていてもよく、これらの基はそれぞれの可変基に関して定めるように、可能ないずれの結合点においても同一でも異なってもよい。そのような置換アルキル基が存在する場合、好ましい置換基はたとえば下記の場合のようにハロゲンである:−CHCl、−CF、−CHI、−CHF、−CHBr、−CHF、−CHFCHF、−CHFCHCl、−CHFCHClCH、−CHClCHBrCHCF、−CHClCBrICHCF、−CHCHCHCHIなど。
【0044】
本明細書中において単独でまたは他の基の一部として用いる用語“アルケニル”は、別途特定しない限り、2、3、4、5、6、7または8個の炭素を含み、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、直鎖基または分枝鎖基を表わす。好ましくは下記のようにたとえばノルマル鎖中に炭素−炭素二重結合が1つだけ存在する:ビニル、2−プロペニル、3−ブテニル、2−ブテニル、4−ペンテニル、3−ペンテニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、4−ヘプテニル、3−オクテニルなど。アルケニル基は、好ましくはノルマル鎖中に2、3または4個の炭素を含む。“アルキル”に関して前記に述べたように、置換アルケニル基が提示されている場合、アルケニル基の直鎖または分枝鎖部分は場合により置換されていてもよい。さらに、別途特定しない限り、鎖はカルボサイクリル基により分断または終結されていてもよく、その場合、その鎖とカルボサイクリルの炭素原子の総数は最大で8である。
【0045】
本明細書中においてそれ自体でまたは他の基の一部として用いる用語“アルキニル”は、別途特定しない限り、2、3、4、5、6、7または8個の炭素を含み、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む、直鎖基または分枝鎖基を表わす。好ましくは下記のようにたとえばノルマル鎖中に炭素−炭素三重結合が1つだけ存在する:2−プロピニル、3−ブチニル、2−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、2−ヘプチニル、3−ヘプチニル、4−ヘプチニル、3−オクチニルなど。アルキニル基は、好ましくはノルマル鎖中に1、2、3または4個の炭素を含む。“アルキル”に関して前記に述べたように、置換アルキニル基が提示されている場合、アルキニル基の直鎖または分枝鎖部分は場合により置換されていてもよい。さらに、別途特定しない限り、鎖はカルボサイクリル基により分断または終結されていてもよく、その場合、その鎖とカルボサイクリルの炭素原子の総数は最大で8である。
【0046】
本明細書中において単独でまたは他の基の一部として用いる用語“カルボサイクリル”には、合計3、4、5、6、7または8個の環炭素の環を少なくとも1つ含む飽和環式炭化水素基または不飽和(少なくとも1つの二重結合)環式炭化水素基が含まれ、これにはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどが含まれる。環式炭化水素は、単環式または二環式(すなわち、それぞれ炭素3〜8個の環を2つ含む)であってもよい。“アルキル”に関して前記に述べたように、カルボサイクリル基は場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよく、それらは同一でも異なってもよい。
【0047】
本明細書中で用いるように、別途特定しない限り、用語“ヘテロサイクリル”は、場合により不飽和であってもよく、好ましくはN、OおよびSから選択される1個以上のヘテロ原子を含む非芳香族環式基、たとえば少なくとも1個のヘテロ原子、たとえば1〜4個のヘテロ原子を含む4〜10員環系を意味する。ヘテロサイクリルはたとえば下記のものであってもよいが、これらに限定されない:アジリジニル、アゼチジニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロピロリル、ジオキソラニル、ジオキサニル、ジチアニル、ジチオラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、モルホリニル、オキセタニル、オキシラニル、ピロリジニル、ピロリジノニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、スルファロニル(sulfalonyl)、3−スルホレニル(3−sulfolenyl)、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジル、チエタニル(thietanyl)、チイラニル(thiiranyl)、チオラニル、チオモルホリニル、トリチアニル、トロパニル、1H−インダゾリルおよび単糖類。
【0048】
用語“ハロゲン”は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を表わし、その際、好ましいハロゲン基はフッ素および塩素である。
本明細書中で用いる用語“アリール”は、単環式または二環式の芳香族基、たとえばフェニルまたはナフチルなどを意味する。アリール基は、好ましくは単環式Cアリール(すなわちフェニル)である。
【0049】
本明細書中で用いる用語“ヘテロアリール”は、1個以上のヘテロ原子、好ましくはN、OおよびSから選択されるものを含む単環式または二環式のヘテロ芳香族基、たとえば少なくとも1個のヘテロ原子、たとえば1〜4個のヘテロ原子を含む5〜10員環系を意味する。ヘテロアリール基の例は下記のものであるが、これらに限定されない:ピリジル、キノリニル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イソキノリニル、ナフチリジニル、イミダゾリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フタラジニル、インドリル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノリジニル、キノキサリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ピラジニル、インダゾリル、インドリニル、ピリミジニル、チオフェネチル、ピラニル、カルバゾリル、クロマニル、シンノリニル、アクリジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキセピニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾベンゾオキサジアゾリル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾモルホリニル、ベンゾセレナジアゾリル、ベンゾチエニル、プリニルおよびプテリジニル。
【0050】
用語アルキルオキシ、アルケニルオキシおよびアルキニルオキシはタイプRO−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
用語アルキルチオ、アルケニルチオおよびアルキニルチオはタイプRS−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0051】
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル 第二級アミノは、タイプRHN−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル 第三級アミノは、タイプRR’N−の基を表わし、その際、RおよびR’はそれぞれ独立して選択されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0052】
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル 第二級アミドは、タイプRHNC(O)−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル 第三級アミドは、タイプRR’NC(O)−の基を表わし、その際、RおよびR’はそれぞれ独立して選択されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0053】
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル カルボニルは、タイプRC(O)−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル スルホニルは、タイプRS(O)−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0054】
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル スルホニルオキシは、タイプRS(O)O−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル 第二級スルホンアミドは、タイプRHNS(O)−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0055】
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル 第三級スルホンアミドは、タイプRR’NS(O)−の基を表わし、その際、RおよびR’はそれぞれ独立して選択されるアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0056】
用語アルキル、アルケニルおよびアルキニル シリルは、タイプRR’R”Si−の基を表わし、その際、R、R’およびR”のうち少なくとも1つはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0057】
用語アルキルオキシ、アルケニルオキシおよびアルキニルオキシ カルボニルは、タイプROC(O)−の基を表わし、その際、Rはアルキル、アルケニルおよびアルキニル部分である。
【0058】
用語オキソ基は、酸素原子に二重結合した炭素原子からなる基を表わす。したがって、環中にオキソ基を含む環系は、酸素原子に二重結合した環炭素原子、すなわち式>C=Oの部分を含む。
【0059】
用語“不飽和”とは、二環式系について述べる場合、少なくとも1つの環中に少なくとも1つの二重または三重結合を含む環系を意味する。したがって、両方の環が不飽和であってもよく、あるいは一方の環のみが不飽和であって他方の環は飽和であってもよいものとする。さらに、用語“不飽和二環式”は、それ自体は芳香族である環に縮合した不飽和環または飽和環を含む、非芳香族二環式系、たとえばインダンまたは4,5−ジヒドロ-1-インドールをも表わすものとする。
【0060】
したがって、1態様において本発明は、前記に定めた式(I)の化合物
【0061】
【化6】

【0062】
に関する。
1態様において、式(I)の化合物中の
nは、0(ゼロ)または1であり;
mは、0(ゼロ)、1または2であり;
およびRは、独立して水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cカルボサイクリル;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボサイクリルまたはヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;
は、単環式または二環式C−C10アリール;および単環式または二環式C−Cヘテロアリールまたはヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアリール、ヘテロアリールまたはヘテロサイクリルは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよく;
は、−NR;−C(O)NR;単環式または二環式C−Cヘテロアリール;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;
およびRは、独立して水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルおよびフェニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式C−C10アリール;−C(O)OR;および−C(O)R10から選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよく;
は、水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
10は、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびCアリールから選択され;このアリールは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
Yは、−C(O)−;−S(O)−;および−S(O)−から選択され;
Xは、−NR−;−O−;および-S−から選択され;
各Rは、独立してハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;およびトリハロメトキシから選択され;
各Rは、独立してハロゲン;カルボキシ;ヒドロキシ;シアノ;C−Cアルキル;C−Cアルケニル;C−Cアルキニル;C−Cアルキルオキシ;C−Cアルケニルオキシ;C−Cアルキニルオキシ;C−Cアルキルチオ;C−Cアルケニルチオ;C−Cアルキニルチオ;C−Cアルキル;C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミノ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル カルボニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニルオキシ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級スルホンアミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル シリル;およびC−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシまたはC−Cアルキニルオキシ カルボニルから選択され;その際、アルキル、アルケニルおよびアルキニル部分はいずれも場合により、独立してハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、ハロメトキシ、ジハロメトキシおよびトリハロメトキシから選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択される;
またはその医薬的に許容できる塩。
【0063】
1態様において、式(I)による化合物中で、p個(pは4〜8の整数である)の炭素原子数をもついずれかのアルキル、アルケニルまたはアルキニル基には、場合により、その化合物中に存在する他のいずれかのアルキル、アルケニルおよびアルキニル基から独立して、q個(qは3〜7の整数であり、qはpより小さい)の炭素原子数の炭素環式部分が含まれ、この炭素環式部分はアルキル、アルケニルまたはアルキニル基の直鎖または分枝鎖を分断または終結させる位置にあってもよく、これによりアルケニルまたはアルキニル基の直鎖または分枝鎖の炭素原子数はp−qに等しい。
【0064】
他の態様において、式(I)による化合物中で、p個の炭素原子数をもついずれかのアルキル、アルケニルまたはアルキニル基は、その直鎖または分枝鎖部分にp個すべての炭素原子をもち、すなわち分断または終結させるいずれかの炭素環式部分を含まない。
【0065】
式(I)の化合物において、部分RとXを連結する炭素原子の数nは0または1である。1態様において、nは0であり、その場合、式(I)の化合物は式(Ia)により表わすことができる:
【0066】
【化7】

【0067】
式(I)において、RおよびRは、独立して水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cカルボサイクリル;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボサイクリルまたはヘテロサイクリルは場合により1、2もしくは3個の基R、たとえば1もしくは2個の基R、または1個の基Rで置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよい。
【0068】
本発明の1態様において、RおよびRは、独立して水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル、たとえば水素、およびC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよい。特に、RおよびRは、独立して水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、たとえば水素およびC−Cアルキルから選択でき、このアルキルは場合により、ハロゲンから選択される1、2または3個の基Rで置換されていてもよい。
【0069】
他の態様において、RおよびRは、独立して水素、C−Cアルキル、C−CアルケニルおよびC−Cアルキニルから選択され、たとえばRおよびRは、独立して水素およびC−Cアルキル、たとえば水素およびC−Cアルキル、たとえば水素およびメチルから選択される。
【0070】
1態様において、Rは水素であり、Rは前記に定めたものであり、ただし水素ではない;たとえば、Rは水素であり、RはC−Cアルキル、たとえばメチルである。
【0071】
式(I)において、Rは、単環式または二環式C−C10アリール;および単環式または二環式C−Cヘテロアリールまたはヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアリール、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい。
【0072】
1態様において、Rは、単環式Cアリール;単環式C−Cヘテロアリールおよび単環式C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアリール、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい。
【0073】
さらに他の態様において、Rは、単環式Cアリール;および単環式C−Cヘテロアリールから選択され、その際、ヘテロアリールにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアリールおよびヘテロアリールは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい。
【0074】
1態様において、Rは、単環式または二環式C−C10アリールから選択され、このアリールは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい。
他の態様において、Rは単環式Cアリール(フェニル)であり、場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい。したがって、この態様において、式(I)の化合物は式(Ib)により表わすことができる:
【0075】
【化8】

【0076】
さらに、Rが単環式Cアリール(フェニル)であり、場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい態様において、式(Ia)の化合物は式(Ic)により表わすことができる:
【0077】
【化9】

【0078】
1態様において、Rがフェニルである場合、それはRをXに連結している結合または鎖に対してパラ位において基Rで置換されている。特定の1態様において、Rは、RをXに連結している結合または鎖に対してパラ位において1個の基Rで置換されたフェニルである。
【0079】
前記のいずれかの態様において、基Rの数はたとえば1〜4、または1〜3、たとえば1〜2、特に1である。
式(I)の化合物において、Rは、−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;−C(O)NR;単環式または二環式C−Cヘテロアリール;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により環中にオキソ基を含むことができ、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよい。
【0080】
1態様において、Rは−NR;−C(O)NR;単環式または二環式C−Cヘテロアリール;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよい、式(I)の化合物が提供される。
【0081】
この態様において、Rのいずれかの単環式部分はたとえば5員または6員であってもよく、一方、Rのいずれかの二環式部分はたとえば9員または10員であってもよく;単環式または二環式部分は、たとえば1〜4個のヘテロ原子、たとえば1〜3個のヘテロ原子、たとえば1または2個のヘテロ原子を含むことができ、その際、ヘテロ原子はたとえばNおよびOから選択される。
【0082】
1態様において、Rは、前記に定めた−NR;−C(O)NR;単環式C−Cヘテロアリール、および単環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択される。
【0083】
1態様において、Rは、前記に定めた−NR;−C(O)NR;単環式5〜6員C−Cヘテロアリール、および単環式、飽和または不飽和5〜6員C−Cヘテロサイクリルであって、独立してN、OおよびS、たとえばNおよびOから選択される1〜4、1〜3、または2個のヘテロ原子を含むものから選択される。
【0084】
が−NRである態様において、式(I)の化合物は式(Id)により表わすことができる:
【0085】
【化10】

【0086】
が−C(O)NRである態様において、式(I)の化合物は式(Ie)により表わすことができる:
【0087】
【化11】

【0088】
他の態様において、Rは、単環式もしくは二環式C−Cヘテロアリール、または単環式もしくは二環式、飽和もしくは不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により環中にオキソ基を含むことができ、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基R、たとえば1または2個の基R、たとえば1個の基Rで置換されていてもよい。たとえば、Rは5〜10員単環式もしくは二環式C−Cヘテロアリール、または5〜10員単環式もしくは二環式、飽和もしくは不飽和C−Cヘテロサイクリルであってもよく、これらのヘテロアリールまたはヘテロサイクリルは独立してN、OおよびS、たとえばNおよびOから選択される1〜4個のヘテロ原子を含む。
【0089】
他の態様において、Rは単環式C−Cヘテロアリール;または単環式、飽和もしくは不飽和C−Cヘテロサイクリルであり、その際、ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される、式(I)の化合物が提供される。たとえば、Rは5〜6員単環式ヘテロアリール、または5〜6員単環式、飽和もしくは不飽和ヘテロサイクリルであってもよく、たとえば独立してN、OおよびS、たとえばNおよびOから選択される1〜4、または1〜3、たとえば1もしくは2個のヘテロ原子を含む;たとえば、イミダゾリル、1,3−ジオキソリルまたはモルホリニル。
【0090】
が単環式C−Cヘテロアリール、または単環式、飽和もしくは不飽和C−Cヘテロサイクリルであり、その際、ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される態様において、式(I)の化合物は式(If)により表わすことができる:
【0091】
【化12】

【0092】
式中のZとWを連結する湾曲した線:
【0093】
【化13】

【0094】
は、独立してC(炭素)およびヘテロ原子、たとえばN、OまたはSから選択される共有結合した原子の飽和鎖または不飽和鎖を表わし、したがって環構造を形成する;QはC(炭素)およびNから選択される;WおよびZは、独立してC(炭素)およびN、OまたはSから選択される。
【0095】
式(If)の化合物の1態様において、WとZを連結する原子の鎖は2〜4個の原子、たとえば2〜3個の原子を含む。特定の態様において、この環はRから選択される1個または数個の基により置換されている。他の態様において、この環はオキソ基を含む。
【0096】
式(I)の化合物において、RおよびRは、独立して水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。
【0097】
1態様において、RおよびRは、独立して水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、たとえばC−Cアルキル、たとえばメチルであって、場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3、たとえば1または2個の基で置換されていてもよいものから選択される。1態様においてRおよびRは両方とも水素であり、他の態様においてRおよびRのうち一方のみが水素であり、他方は前記に定めたものである。たとえば、Rはメチルであり、かつRは水素である。
【0098】
1態様において、mは0である。特定の1態様において、mは0であり、Rは、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。
【0099】
他の態様において、mは0であり、Rは、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、たとえばC−Cアルキル、たとえばメチルであって、場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよいものから選択される。
【0100】
特定の1態様において、mは0または1であり、Rは水素またはメチルであり、Rは水素である。
部分Rは、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびフェニルから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルおよびフェニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。
【0101】
1態様において、Rは、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。たとえば、Rは水素およびC−Cアルキル、たとえばメチルから選択できる。
【0102】
他の態様において、Rは、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル;およびフェニルから選択され;これらのアルキルおよびフェニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。たとえば、Rは水素;C−Cアルキル、たとえばメチル;およびフェニルから選択できる。
【0103】
部分Rは、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式C−C10アリール;−S(O);−C(O)OR;および−C(O)R10から選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよい。
【0104】
1態様において、Rは、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式C−C10アリール;−C(O)OR;および−C(O)R10から選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよい。
【0105】
1態様において、Rは、分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;−S(O);−C(O)OR;および−C(O)R10から選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよい。
【0106】
特定の1態様において、Rは、C−Cアルキル、−S(O);−C(O)OR;および−C(O)R10から、たとえばC−Cアルキル、たとえばメチル;−S(O)CH;−C(O)OCHおよび−C(O)フェニルから選択される。
【0107】
部分Rは、水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。
【0108】
1態様において、Rは、水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキルであって、場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよいものから選択される。たとえば、Rは水素、またはC−Cアルキル、たとえばメチルであってもよい。
【0109】
部分R10は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびCアリールから選択され;このアリールは場合により1、2または3個の基R、たとえば1または2個の基R、たとえば1個の基Rで置換されていてもよく;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基、たとえば1または2個の基で置換されていてもよい。1態様において、R10は、分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびCアリールから選択される。たとえば、R10はフェニルである。
【0110】
式(I)の化合物において、各Rは、独立してハロゲン;カルボキシ;ヒドロキシ;シアノ;C−Cアルキル;C−Cアルケニル;C−Cアルキニル;C−Cアルキルオキシ;C−Cアルケニルオキシ;C−Cアルキニルオキシ;C−Cアルキルチオ;C−Cアルケニルチオ;C−Cアルキニルチオ;C−Cアルキル;C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミノ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル カルボニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニルオキシ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級スルホンアミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル シリル;およびC−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシまたはC−Cアルキニルオキシ カルボニルから選択され;その際、アルキル、アルケニルおよびアルキニル部分はいずれも場合により、独立してハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、ハロメトキシ、ジハロメトキシおよびトリハロメトキシから選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい。
【0111】
1態様において、Rは、独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキルオキシ、C−Cアルケニルオキシ、C−Cアルキニルオキシおよびハロゲンから選択される。
【0112】
さらに他の特定の態様において、Rは、C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され、他の可変基は前記のいずれかの態様において定めたものである。
【0113】
さらに他の特定の態様において、Rは、C−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシまたはC−Cアルキニルオキシから選択され、他の可変基は前記のいずれかの態様において定めたものである。
【0114】
さらに他の特定の態様において、Rはハロゲンから選択され、他の可変基は前記のいずれかの態様において定めたものである。
他の態様において、RはC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され、それらは場合により、独立してハロゲンから選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい、式(I)の化合物が提供される。
【0115】
他の態様において、RはC−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシおよびC−Cアルキニルオキシから選択され、それらは場合により、独立してハロゲンから選択される1、2または3個の基で置換されていてもよい、式(I)の化合物が提供される。
【0116】
他の態様において、Rはハロゲンである式(I)の化合物が提供される。
式(I)において、Rは、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択される。1態様において、Rは、水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、たとえばC−Cアルキル、たとえばメチルから選択される。たとえば、Rは水素またはメチル、特に水素である。
【0117】
1態様において、Yは−C(O)−である式(I)の化合物が提供される。この態様において、式(I)の化合物は式(Ig)により表わすことができ:
【0118】
【化14】

【0119】
式(Ia)の化合物は式(Ih)により表わすことができ:
【0120】
【化15】

【0121】
式(Ib)の化合物は式(Ii)により表わすことができる:
【0122】
【化16】

【0123】
さらに他の態様において、式(I)中のYはC(O)であり、nは0(ゼロ)であり、Rは単環式Cアリール(フェニル)であり、場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよい。したがって、この態様において、式(Ih)の化合物は式(Ij)により表わすことができる:
【0124】
【化17】

【0125】
1態様において、XはNRを表わす式(I)の化合物が提供される。この態様において、たとえば式(Ij)の化合物は式(Ik)により表わすことができる:
【0126】
【化18】

【0127】
さらに他の態様において、Rはパラ位において1個の基Rで置換されたフェニルである式(I)の化合物が提供される。この態様において、たとえば式(Ik)の化合物は式(Il)により表わすことができる:
【0128】
【化19】

【0129】
他の態様において、RおよびRは、独立して水素、C−Cアルキル、C−CアルケニルおよびC−Cアルキニルから選択され;YはC(O)であり;Xは−NR−であり;nは0(ゼロ)であり;mは0(ゼロ)または1であり;Rはフェニルであり、場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよく;各Rは、独立してハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシおよびC−Cアルキニルオキシから選択され、各Rは、ハロゲンではない場合は、独立して場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよく;Rは、単環式C−Cヘテロアリール、および単環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリル(その際、ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される)、たとえば5員または6員単環;−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;および−C(O)NRから選択され;各R5およびR6は水素またはメチルであり;RはH、C−Cアルキルまたはフェニルを表わし;RはC−Cアルキル、−S(O);−C(O)ORおよび−C(O)R10から選択され;RはC−Cアルキルを表わし;R10はCアリールを表わす、式(I)の化合物;およびその医薬的に許容できる塩類が提供される。
【0130】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;YはC(O)であり;XはNRを表わし;nは0(ゼロ)であり;mは0(ゼロ)または1であり;Rは水素を表わし;Rは1個のRで置換された単環式Cアリールを表わし;RはハロゲンまたはC−Cアルキルオキシを表わし;Rは単環式C−Cヘテロアリール、たとえば5員または6員ヘテロアリールを表わし;R5およびR6は水素またはメチルである、式(I)の化合物が提供される。
【0131】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;YはC(O)であり;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;Rは1個のRで置換された単環式Cアリールを表わし;RはハロゲンまたはC−Cアルキルオキシを表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;Rは−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;または−C(O)NRを表わし;R5およびR6は水素またはメチルであり;RはH、C−Cアルキルまたはフェニルを表わし;RはC−Cアルキル、−S(O);−C(O)ORおよび−C(O)R10から選択され;RはC−Cアルキルを表わし;R10はCアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0132】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;YはC(O)であり;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;RはRで置換された単環式Cアリールを表わし;Rはハロゲンまたはトリフルオロメチルを表わし;Rは単環式C−Cヘテロアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0133】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;YはC(O)であり;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;RはRで置換された単環式Cアリールを表わし;Rはハロゲンまたはトリフルオロメチルを表わし;Rは−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;−C(O)NRを表わし;RはH、C−Cアルキルまたはフェニルを表わし;RはC−Cアルキル、−S(O);−C(O)ORおよび−C(O)R10から選択され;RはC−Cアルキルを表わし;R10はCアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0134】
他の態様において、RおよびRは、独立して水素、C−Cアルキル、C−CアルケニルおよびC−Cアルキニルから選択され;YはC(O)であり;nは0(ゼロ)であり;Rはフェニルであり、場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよく;各Rは、独立してC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシおよびC−Cアルキニルオキシから選択され、各Rは独立して、場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよく;Rは、単環式C−Cヘテロアリール、および単環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリル(その際、ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される);−NRおよび−C(O)NRから選択され;Xは−NR−であり;各R5およびR6は水素である、式(I)の化合物が提供される。
【0135】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;Rは1個のRで置換された単環式Cアリールを表わし;RはC−Cアルキルオキシを表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;Rは単環式C−Cヘテロアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0136】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;Rは1個のRで置換された単環式Cアリールを表わし;RはC−Cアルキルオキシを表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;Rは−NRまたは−C(O)NRを表わし;RはC−Cアルキルを表わし;RはC−Cアルキル、−C(O)ORおよび−C(O)R10から選択され;RはC−Cアルキルを表わし;R10はCアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0137】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;RはRで置換された単環式Cアリールを表わし;Rはハロゲンまたはトリフルオロメチルを表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;Rは単環式C−Cヘテロアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0138】
他の態様において、Rは水素を表わし;RはC−Cアルキルを表わし;XはNRを表わし;Rは水素を表わし;RはRで置換された単環式Cアリールを表わし;Rはハロゲンまたはトリフルオロメチルを表わし;nは0(ゼロ)を表わし;mは0(ゼロ)または1を表わし;Rは−NRまたは−C(O)NRを表わし;RはC−Cアルキルを表わし;RはC−Cアルキル、−C(O)ORおよび−C(O)R10から選択され;RはC−Cアルキルを表わし;R10はCアリールを表わす、式(I)の化合物が提供される。
【0139】
他の態様において、下記の式(I)の化合物が提供される:
【0140】
【化20】

【0141】
(1H−イミダゾール−1−イル)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0142】
【化21】

【0143】
(メトキシカルボニル(メチル)アミノ)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0144】
【化22】

【0145】
(N−メチルベンズアミド)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0146】
【化23】

【0147】
2−(ジメチルアミノ)エチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0148】
【化24】

【0149】
2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0150】
【化25】

【0151】
(2−メトキシ−1−メチル−2−オキソ−エチル) 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0152】
【化26】

【0153】
アセトキシメチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0154】
【化27】

【0155】
(メチルスルホニル(フェニル)アミノ)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0156】
【化28】

【0157】
2−[4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボニル]オキシプロパン酸;
【0158】
【化29】

【0159】
2−イミダゾール−1−イルエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート;
【0160】
【化30】

【0161】
2−モルホリノエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート;
【0162】
【化31】

【0163】
(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
【0164】
【化32】

【0165】
4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸2−イミダゾール−1−イル−エチルエステル;
【0166】
【化33】

【0167】
4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸イミダゾール−1−イル−メチルエステル;
【0168】
【化34】

【0169】
2−モルホリノエチル 4−[(4−フルオロフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
またはその医薬的に許容できる塩。
【0170】
そうではないことが指示されるかまたは状況から明らかでない限り、本明細書中で式(I)の化合物という表記は、式(I)の範囲に含まれる態様である式(Ia)、(Ib)、(Ic)、(Id)、(Ie)、(If)、(Ig)、(Ih)、(Ii)、(Ij)、(Ik)または(Il)の化合物をも表わすことを理解すべきである。
【0171】
本発明の化合物は塩類として提供することができ、それらも本発明の範囲に含まれる。医薬的に許容できる(すなわち、無毒性で、生理的に許容できる)塩類が好ましい。
たとえば、本発明の化合物はアミノ官能基において酸付加塩を形成できる。これらは、たとえば下記のものにより形成できる:強い無機酸、たとえば鉱酸、たとえば硫酸、リン酸またはハロゲン化水素酸;強い有機カルボン酸、たとえば炭素原子1〜4個のアルカンカルボン酸であって、置換されていないか、またはたとえばハロゲンにより置換されたもの、たとえば酢酸、飽和または不飽和ジカルボン酸、たとえばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸、ヒドロキシカルボン酸、たとえばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸、アミノ酸(たとえば、アスパラギン酸またはグルタミン酸またはリジンまたはアルギニン)、または安息香酸、あるいは有機スルホン酸、たとえばC−Cアルキルまたはアリールスルホン酸であって、置換されていないか、またはたとえばハロゲンにより置換されたもの、たとえばメチル−またはp−トルエン−スルホン酸。所望により、さらに存在する塩基中心をもつ対応する酸付加塩も形成できる。
【0172】
少なくとも1つの酸基(たとえば、C(O)OH)をもつ式Iの化合物も、塩基との塩類を形成できる。塩基との適切な塩類は、たとえば金属塩、たとえばアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、たとえばナトリウム塩、カリウム塩もしくはマグネシウム塩、またはアンモニアもしくは有機アミン、たとえばモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−もしくはトリ−低級アルキルアミン、たとえばエチル、tert−ブチル、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチルもしくはジメチル−プロピルアミン、またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、たとえばモノ−、ジ−もしくはトリ−エタノールアミンとの塩類である。対応する分子内塩類をさらに形成できる。医薬用途には不適切であるけれどもたとえば式Iの遊離化合物またはそれらの医薬的に許容できる塩類の単離または精製に使用できる塩類も含まれる。
【0173】
本発明にはプロドラッグも含まれる。事実、式Iのエステルは改良されたインビボ取込みを示し、インビボで加水分解されてそれらに対応するカルボン酸になる。用語“プロドラッグ”はキャリヤーに結合した化合物を表わすものとし、プロドラッグはそのプロドラッグを哺乳動物対象に投与した際に活性成分を放出することができる。活性成分の放出はインビボで起きる。本発明化合物のプロドラッグには、ヒドロキシル、アミノ、カルボキシル、またはこれらに類する基が修飾された化合物が含まれる。プロドラッグの例には、エステル(たとえば、アセテート、ホルメート、およびベンゾエート誘導体)、カルバメート(たとえば、本発明のN,N−ジメチルアミノカルボニルまたはヒドロキシルまたはアミノ官能基)、アミド(たとえば、トリフルオロアセチルアミノ、アセチルアミノなど)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
本発明化合物は、そのまま、または代替プロドラッグとして、たとえばインビボ加水分解性エステルまたはインビボ加水分解性アミドの形で投与できる。カルボキシまたはヒドロキシル基を含む本発明化合物のインビボ加水分解性エステルは、たとえばヒトまたは動物の体内で加水分解されて親酸または親アルコールを生成する、医薬的に許容できるエステルである。カルボキシに適切な医薬的に許容できるエステルには、C−Cアルキルオキシメチルエステル(たとえば、メトキシメチル)、C−Cアルカノイルオキシメチルエステル(たとえば、ピバロイルオキシメチル)、フタリジルエステル、C−Cシクロアルキルオキシカルボニルオキシ−C−Cアルキルエステル(たとえば、1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル)、1,3−ジオキソレン−2−オニルメチルエステル(たとえば、5−メチル−1,3−ジオキソレン−2−オニルメチル)およびC−Cアルキルオキシカルボニルオキシエチルエステル(たとえば、1−メトキシカルボニルオキシエチル)が含まれ、本発明化合物中のいずれか適切なカルボキシ基において形成できる。
【0175】
ヒドロキシル基を含む本発明化合物のインビボ加水分解性エステルには、たとえば無機エステル、たとえばリン酸エステル、およびアシルオキシアルキルエーテル、ならびにインビボ加水分解によるエステル分解の結果として親ヒドロキシ基を生成する関連化合物が含まれる。アシルオキシアルキルエーテルの例には、アセトキシメトキシおよび2,2−ジメチル−プロピオニルオキシ−メトキシが含まれる。ヒドロキシについて選択されるインビボ加水分解性エステル形成基には、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチル、ならびに置換されたベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカーボネートエステルを生成)、ジアルキルカルバモイルおよびN−(N,N−ジアルキルアミノ−エチル)−N−アルキルカルバモイル(カルバメートを生成)、N,N−ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルが含まれる。ベンゾイル上の置換基の例には、環窒素原子からメチレン基を介してベンゾイル環の3−または4−位に連結したモルホリノおよびピペラジノが含まれる。カルボキシ基を含む本発明化合物のインビボ加水分解性アミドについて適切な意味は、たとえばN−C−CアルキルまたはN,N−ジC−Cアルキルアミド、たとえばN−メチル、N−エチル、N−プロピル、N,N−ジメチル、N−エチル−N−メチルまたはN,N−ジエチルアミドである。本発明化合物またはその代替プロドラッグを投与すると、プロドラッグは代謝プロセスまたは化学的プロセスによる化学変換を受けて、他の化合物、たとえばその塩および/または溶媒和物を生成する。本発明化合物の溶媒和物には、たとえば水和物が含まれる。
【0176】
本発明の療法薬の投与には、療法有効量の本発明の薬剤の投与が含まれる。本明細書中で用いる用語“療法有効量”は、本発明の組成物を投与することにより処置できる状態を治療または予防するための療法薬の量を表わす。その量は、検出できる療法効果または予防効果または改善効果を示すのに十分な量である。効果には、たとえば本明細書中に挙げる状態の治療または予防を含めることができる。ある対象について的確な有効量は、対象の体格および全般的状態、処置される状態の性質および程度、担当医の推奨、ならびに投与のために選択する療法薬または療法薬の組合わせに依存するであろう。したがって、厳密な有効量を予め厳密に特定するのは有用ではない。しかし、経口投与の場合は投与量は1日当たり約0.01mgから約1000mgまでの式(I)の化合物または対応する量のその医薬的に許容できる塩の範囲であろう。
【0177】
本発明による組成物は、いずれかの投与経路、たとえば経口、静脈内、皮膚もしくは皮下、鼻、筋肉内または腹腔内のために調製できる。キャリヤーまたは他の材料の厳密な性質は、投与経路に依存するであろう。非経口投与については、非経口用として許容できる水溶液が用いられ、それは発熱物質を含まず、かつ要求されるpH、等張性および安定性をもつ。当業者は適切な溶液を十分に調製でき、また多数の方法が文献に記載されている。
【0178】
本明細書に記載する医薬的に許容できる賦形剤、たとえばビヒクル、佐剤、キャリヤーまたは希釈剤は、当業者に周知であり、一般に容易に入手できる。医薬的に許容できるキャリヤーは、有効化合物に対して化学的に不活性であり、かつ使用条件下で有害な副作用もしくは毒性をもたないものであってよい。医薬配合物の例は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. A. R. Gennaro, Editor. Lippincott, Williams and Wilkins, 20th edition (2000)中にある。
【0179】
混合物または純粋もしくは実質的に純粋な形態のいずれであっても、本発明化合物のすべての立体異性体が考慮される。本発明化合物は、R置換基のいずれかを含めていずれの炭素原子においても不斉中心をもつ可能性がある。したがって、式Iの化合物は鏡像異性体もしくはジアステレオマーの形態またはその混合物として存在する可能性がある。製造方法は、ラセミ体、鏡像異性体またはジアステレオマーを出発物質として使用できる。ジアステレオマーまたは鏡像異性体の生成物が製造される場合、それらを常法により分離することができ、それはたとえばクロマトグラフィーまたは分別結晶化である。
【0180】
疾患の予防または治療における本発明化合物の有効性は、これらの化合物をそれらの目的に有効な他の薬剤、たとえば下記のもの(それらに限定されない)と組み合わせて投与することによって改善できる:VEGF、VEGFRチロシンキナーゼを阻害する他の抗血管新生化合物、インテグリン阻害薬、光線療法、VEGFに対する抗体、または1種類以上の一般的な療法薬、たとえばアルキル化剤、葉酸アンタゴニスト、核酸代謝の代謝拮抗薬、ピリミジン類似体、5−フルオロウラシル、プリンヌクレオシド。そのような他の薬剤は、投与される組成物中に存在してもよく、あるいは個別に投与されてもよい。本発明化合物を放射線療法と連続してまたは組み合わせて投与することも適切であり、これは照射または放射性物質の投与のいずれを伴うものであってもよい。
【0181】
本明細書中においてそれ自体でまたは他の定義の一部として用いる抗血管新生薬という用語は、たとえば充実性腫瘍中への新たな血管の増殖である血管新生を阻害する能力をもつ化合物を表わす。
【0182】
抗血管新生薬に関する多数の機序は多様であり、たとえば下記の化合物を含めることができるが、これらに限定されない:細胞増殖を阻害する、内皮細胞の細胞移動を阻害する、免疫系を活性化する、血管新生刺激因子をダウンレギュレートする、血管新生阻害因子の形成を刺激する、血管新生刺激因子の結合を阻害する、基底膜の分解を阻害する、内皮細胞のアポトーシスを誘発する、内皮細胞の生存を阻害する、細胞接着を阻害する、および内皮細胞の生存を阻害する。
【0183】
抗血管新生性である多数の化合物またはモノクローナル抗体には下記のものを含めることができるが、これらに限定されない:Avastin(登録商標)(ベバシズマブ(bevacizumab))カルボキシアミドトリアゾール(5−アミノ−1−((3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル)メチル)−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド)、TNP−470((3R,4S,5S,6R)−5−メトキシ−4−[(2R,3R)−2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)−オキシラニル]−1−オキサスピロ−[2,5]オクタ−6−イル(クロロアセチル)カルバメート)、CM−101(B群連鎖球菌(group B Streptococcus)(GBS)が産生する細菌性多糖エキソトキシン,GBSトキシンとも呼ばれる)、Germanin(登録商標)(スラミン(suramin)とも呼ばれる,CAS番号145−63−1)、SU5416(セマキシニブ(semaxinib),(3Z)−3−[(3,5−ジメチル−1H−ピロール−2−イル)メチリデン]−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オン)、TSP(トロンボスポンジン,抗血管新生能をもつ一群の分泌性タンパク質)、血管増殖阻害性ステロイドとヘパリンの組合わせ、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬、Angiostatin(商標)、Macugen(登録商標)(ペガプタニブナトリウム(pegaptanib sodium)注射剤)、Endostatin(商標)、2−メトキシエストラジオール、テコガランナトリウム(Tecogalan sodium)(DS−4152,細菌性多糖)、プロラクチン(または黄体刺激ホルモン(LTH),ペプチドホルモンの1種)、リノミド(linomide)(LS−2616,[N−メチル−N−フェニル−1,2−ジヒドロ−4−ヒドロキシ−1−メチル−2−オキソ−キノリン−3−カルボキサミド])など。
【0184】
本明細書中で用いる用語VEGF(血管内皮増殖因子)は、増殖因子のサブファミリーを表わし、これらは血小板由来増殖因子ファミリーのシスチンノット増殖因子である。それらは血管新生に、および血管形成(胚循環系のデノボ形成)にも関与する、重要なシグナル伝達タンパク質である。
【0185】
本明細書中で用いる用語VEGFRチロシンキナーゼは、それにVEGFファミリーのメンバーが結合するチロシンキナーゼ受容体を表わす。
本明細書中においてそれ自体でまたは他の定義の一部として用いる用語インテグリンは、非共有結合ヘテロ二量体からなる膜貫通型糖タンパク質のファミリーを表わす。インテグリンは少なくとも3つの同定されたファミリーからなり、各ファミリーは1以上の異なるアルファ−サブユニットと結合した共通のベータ−サブユニットを含む。これらの受容体は、発癌性トランスフォーメーションを含めた多くの生理的に重要なプロセスにおいて、細胞−マトリックスおよび細胞−細胞の接着に関与する。
【0186】
式(I)による化合物は、種々の疾患、たとえば癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬を処置するために有用であろう。処置は予防的、対症的または治癒的であってもよい。
【0187】
本発明化合物は、VEGFRチロシンキナーゼまたはインテグリンの活性に関連する疾患または障害に罹患している哺乳動物の処置方法であって、その必要がある哺乳動物に療法有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法を提供する。哺乳動物はヒトであってもよい。
【0188】
本発明化合物は、高増殖性疾患の処置に有用な1種類以上の追加薬物、たとえば抗血管新生薬(化合物およびモノクローナル抗体の両方を含む)および細胞増殖抑制薬と組み合わせて使用または投与することができる。これらの成分は、同時または逐次投与のために同一配合物中または個別の配合物中にあってよい。本発明化合物を他の処置、たとえば癌の処置のための照射と組み合わせて使用または投与することもできる。
【0189】
本明細書中で前記に指示したように使用するための細胞増殖抑制薬の例は、DNAアルキル化性化合物、トポイソメラーゼI阻害薬、トポイソメラーゼII阻害薬、RNAおよびDNAの合成に干渉する化合物、細胞骨格を重合させる化合物、および細胞骨格を解重合させる化合物である。
【実施例】
【0190】
本発明を以下の限定ではない実施例により説明する。
実施例1:(1H−イミダゾール−1−イル)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート
【0191】
【化35】

【0192】
(a)中間化合物2−((4−ブロモフェニルアミノ)メチレン)−マロン酸ジエチルの製造:
【0193】
【化36】

【0194】
4−ブロモアニリン(10g)およびマロン酸ジエトキシメチレン(12.6g)を、150℃で3時間、密閉管内で加熱した。次いで反応混合物を冷却し、n−ヘキサンで希釈すると、固体生成物が析出した。この固体を濾過し、n−ヘキサンで数回洗浄し、真空乾燥して、17.8gの2−[(4−ブロモ−フェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 11.03 (d, 1H, J = 13 Hz, -NH-), 8.48 (d, 1H, J =13 Hz, -CH=C), 7.49 (m, 2H, 芳香族), 7.10-7.01 (m, 2H, 芳香族), 4.42-4.22 (m, 4H, -CH2-CH3), 1.45-1.26 (m, 6H, -CH2-CH3); LC-MS (m/z) 343.9 (M+1)。
【0195】
(b)中間化合物6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの製造:
【0196】
【化37】

【0197】
2−[(4−ブロモフェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステル(5g)をPOCl(塩化ホスホリル,31.5mL)と共に150℃で密閉管内において約6時間加熱した。過剰のPOClを回転式蒸発器により除去し、粗製混合物をジクロロメタンで希釈した。ジクロロメタン抽出液を水酸化ナトリウム水溶液(10%)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して(シリカゲル,ヘキサン/酢酸エチル 80:20)、2.3gの6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.22 (s, 1H, 芳香族), 8.60 (d, 1H, J = 2.1 Hz, 芳香族), 8.04 (d, 1H, J = 9 Hz, 芳香族), 7.95-7.85 (m, 1H, 芳香族), 4.53 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 1.50 (t, 3H, J = 7 Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 315.8 (M+1)。
【0198】
(c)中間化合物6−ブロモ−4−[(4−メトキシフェニル)−アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチルの製造:
【0199】
【化38】

【0200】
p−アニシジン(0.43g)および6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(1.0g)をジオキサン中で混合し、マイクロ波反応器内において150℃で30分間照射した。反応混合物を石油エーテルで希釈した。得られた固体生成物を濾過し、乾燥させて、1.3gの6−ブロモ−4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 11.41 (s, 1H, -NH-), 9.22 (s, 1H, 芳香族), 8.20 (d, 1H, J = 8.2 Hz, 芳香族), 7.77 (d, 1H, J = 8.2 Hz, 芳香族), 7.64 (s, 1H, 芳香族), 7.15 (d, 2H, J = 8.1 Hz, 芳香族), 6.99 (d, 2H, J = 8.1 Hz, 芳香族), 4.47 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 3.89 (s, 3H, -OCH3), 1.47 (t, 3H, J = 7 Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 401.0 (M+1)。
【0201】
(d)中間化合物4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチルの製造:
【0202】
【化39】

【0203】
6−ブロモ−4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]キノリン−3−カルボン酸エチル(0.25g,0.62mmol)をテトラヒドロフランに添加し、続いてtrans−ジ(μ−アセタト)−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)−ベンジル]二パラジウム(II)(Herrmannのパラダサイクル(palladacycle),0.031mmol)、[(t−Bu)PH]BF(トリtert−ブチルホスホニウムヘキサフルオロボレート)(0.125mmol)、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO),1.246mmol)、メチルアミン(1.5当量,2N,THF中)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU,1.869mmol)を添加した。反応混合物を130℃で5分間、マイクロ波反応器内において照射した。反応混合物を濃縮し、次いでカラム上で精製して(シリカゲル,ジクロロメタン/メタノール 98:2)、4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸エチルを定量的収率で得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 10.96 (s, 1H, -NH-) 9.24 (s, 1H, 芳香族), 8.14-7.98 (m, 2H, 芳香族),7.73 (s, 1H, 芳香族), 7.16 (d, 2H, J = 9 Hz, 芳香族), 6.98 (d, 2H, J = 9 Hz, 芳香族),4.46 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 3.87 (s, 3H, -OCH3), 1.48 (t, 3H, J = 7Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 380.0 (M+1)。
【0204】
(e)中間化合物4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸の製造
【0205】
【化40】

【0206】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチル(0.2g,0.53mmol)を水酸化リチウム(85.5mg)と共に、6mLのメタノール/テトラヒドロフラン/水(2:2:2,)混合物中で一夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、水層を酢酸エチルで洗浄した。水層を採集し、塩酸水溶液で酸性にし、生成した沈殿を濾過し、乾燥させて、0.142g(77%の収率)の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸を得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 9.05 (s, 1H, 芳香族), 8.20 (s, 1H, 芳香族), 8.12-7.81 (m, 2H, 芳香族), 7.27 (d, 2H, J = 9.9 Hz, 芳香族), 7.06 (d, 2H, J = 9.9 Hz, 芳香族), 3.88 (s, 1H, -OCH3), 2.82 (s, 3H, -NCH3); LC-MS (m/z) 352.0 (M+1)。
【0207】
(f)4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(1.0g,2.8mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(15mL)中における懸濁液に、0℃で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl,2g)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.042g)、トリエチルアミン(4mL)および1−ヒドロキシメチル イミダゾール(0.34g,3.4)を添加した。反応混合物を徐々に室温にし、5時間撹拌した。水処理後、反応混合物を抽出し、濃縮し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させると粗生成物が得られ、その後これをカラムクロマトグラフィーにより精製して、0.2gの(1H−イミダゾール−1−イル)メチル−4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートを淡黄色固体として得た(17%の収率)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) 10.63 (s, 1H, -CONH-), 9.16 (s, 1H, 芳香族), 8.05 (d, 1H, J= 8.7 Hz, 芳香族), 7.98 (d, 1H, J= 8.7 Hz, 芳香族), 7.85 (s, 1H, 芳香族), 7.77 (s, 1H, 芳香族), 7.25 (s,1H, 芳香族), 7.19 (d, 1H, J= 2.1 Hz, 芳香族), 7.00 (s, 1H, 芳香族), 6.98 (d, 2H, J= 2.1 Hz, 芳香族), 6.18 (s, 2H, -CH2-), 5.49 (bs, 1H, -NH-), 3.88 (s, 3H, -OCH3), 2.85 (s, 3H, N-CH3) ; LC-MS (m/z) 432 (M+1)。
【0208】
実施例2:(メトキシカルボニル(メチル)アミノ)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0209】
【化41】

【0210】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.1g,0.28mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,0.12g)のテトラヒドロフラン(15mL)中における懸濁液に、0℃でクロロメチル(メチル)カルバミン酸メチル(0.039g)を添加した。反応混合物を徐々に室温にし、一夜撹拌した。次いで反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出し、カラム上でカラムにより精製して(シリカゲル,クロロホルム/メタノール,9:1)、35mgの(メトキシカルボニル(メチル)−アミノ)メチル 4−(4−メトキシフェニル−アミノ)−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレートを固体として得た(28%の収率)。1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) 9.17 (s, 1H, 芳香族), 8.45 (s, 1H, 芳香族), 8.3 (s, 1H, 芳香族), 8.22 (s, 1H, 芳香族), 8.19 (s, 1H, 芳香族), 8.14 (s,1H, 芳香族), 7.25 (d, 1H, J= 8 Hz, 芳香族), 7.03 (d, 2H, J= 9 Hz, 芳香族), 6.05 (s, 2H, -CH2-), 3.80 (s, 3H, -OCH3), 2.89 (s, 3H, N-CH3) 2.73 (s, -CONHCH3), 1.35 (s, 3H, -OCH3); LC-MS (m/z) 452.9 (M+1)。
【0211】
実施例3:(N−メチルベンズアミド)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート
【0212】
【化42】

【0213】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.1g,0.28mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,0.12g)のテトラヒドロフラン(15mL)中における懸濁液を、室温で15分間撹拌した。この溶液にN−(クロロメチル)−N−メチルベンズアミド(0.051g)を添加し、反応混合物を徐々に室温にし、12時間撹拌した。次いで反応混合物を真空濃縮し、酢酸エチルで抽出し、カラム上で精製して(シリカゲル,石油エーテル/酢酸エチル)、9mgの(N−メチルベンズアミド)メチル 4−(4−メトキシフェニル−アミノ)−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレートを固体として得た(6%の収率)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) 9.29 (s, 1H, -CONH-), 8.44 (d, 1H, J= 4 Hz, 芳香族), 8.33 (s,1H, 芳香族), 8.21 (m, 1H, 芳香族), 8.05 (s, 1H, 芳香族), 7.49 (m, 5H, 芳香族), 7.28 (d, 2H, J= 8 Hz, 芳香族), 7.05 (d, 2H, J= 8 Hz, 芳香族), 6.27 (s, 2H, -CH2-), 3.81 (s, 3H, -OCH3), 2.91 (s, 3H, -NCH3) 2.5 (s, 3H, -NCH3); LC-MS (m/z) 498.9 (M+1)。
【0214】
実施例4:2−(ジメチルアミノ)エチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート
【0215】
【化43】

【0216】
N,N−ジメチルホルムアミド(4mL)中の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.030g,0.085mmol)を、10mLのマイクロ波バイアル内で混合した。N,N−ジ−イソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,0.055g)および2−クロロ−N,N−ジメチル−エタナミン(13.6mg)を混合物に窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物を150℃で15分間照射し、粗製反応混合物を次いで砕き氷に注いだ。反応混合物を酢酸エチルで3回抽出し(各回50mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮し、n−ヘキサンから再結晶して、10mgの2−(ジメチルアミノ)エチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレートを固体として得た(28%の収率)。1H NMR (300 MHz, メタノール-d4) 9.18 (s, 1H, 芳香族), 8.28 (d, 1H, J=1.8 Hz, 芳香族), 8.02 (m, 1H, 芳香族), 7.91 (m, 1H, 芳香族), 7.16 (m, 2H, 芳香族), 6.98 (m, 2H, 芳香族) 4.52 (t, 2H, J= 5.4 Hz, -CH2-), 3.83 (s, 3H,-OCH3), 2.84 (m, 5H, N-CH3および-CH2-) , 2.38 (s, 6H, -N(CH3)2) ; LC-MS (m/z) 422.9 (M+1)。
【0217】
実施例5:2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル−4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0218】
【化44】

【0219】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.03g,0.085mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,0.02g)のテトラヒドロフラン(2mL)中における懸濁液に、0℃で2−クロロ−N,N−ジメチルアセトアミド(0.015g)を添加し、反応混合物を徐々に室温にし、一夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチルで抽出し、カラム上で精製して(シリカゲル,クロロホルム/メタノール 9:1)、8mgの2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル−4−(4−メトキシ−フェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートを固体として得た(22%の収率)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) 10.75 (s, 1H, -CONH-), 9.14 (s, 1H, 芳香族), 8.08(s, 1H, 芳香族), 7.94 (d, 2H, J= 7 Hz, 芳香族), 7.17 (d, 2H, J= 8.7 Hz, 芳香族), 6.96 (d, 2H, J= 8.7 Hz, 芳香族), 6.26 (bs, 1H, -NH-), 4.99 (s, 2H, -CH2-), 3.86 (s, 3H, -OCH3), 3.10 (s, -NCH3), 3.04 (s, -NCH3), 2.89 (s, 3H, -CONHCH3) ; LC-MS (m/z) 436.9 (M+1)。
【0220】
実施例6:(2−メトキシ−1−メチル−2−オキソ−エチル) 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0221】
【化45】

【0222】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(300mg,0.85mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,0.012g,0.09mmol)のテトラヒドロフラン(2mL)中における懸濁液に、0℃で乳酸L−メチル(0.009g,0.08mmol)を添加し、反応混合物を徐々に室温にし、一夜撹拌した。次いで反応混合物を真空濃縮し、酢酸エチルで抽出し、カラム上で精製して(シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー,クロロホルム/メタノール 9:1)、70mg(19%の収率)の(2−メトキシ−1−メチル−2−オキソ−エチル)−4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートを得た。LC-MS (m/z) 437.8 (M+1). 1H NMR (CDCl3) δ 10.64 (s, 1H), 9.31 (s, 1H), 8.06 (m, 2H, 芳香族), 7.79 (s, 1H), 7.17 (d, 2H, J = 9 Hz), 6.98 (d, 2H, J = 9 Hz), 5.50 (幅広い s, 1H), 5.54 (q, 1H), 3.87 (s, 3H), 3.83 (s, 3H), 2.87 (s, 3H), 1.73 (d, 3H, J = 7 Hz)。
【0223】
実施例7:アセトキシメチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0224】
【化46】

【0225】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(300mg,0.85mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中における溶液に、10mLのマイクロ波バイアル内で、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,100mg,0.078mmol)および酢酸クロロメチルエステル(10.6mg,0.85mmol)を窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物を150℃で30分間照射し、粗製反応混合物を砕き氷に注いだ。反応混合物を次いで酢酸エチル(50mL)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。残留物をカラム上で精製して(シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー,クロロホルム:メタノール,中性アルミナ上)、60mg(16.5%の収率)のアセトキシメチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートを得た。LC-MS (m/z) 423.9 (M+1). 1H NMR (CDCl3) δ 11.43 (s, 1H,), 9.13 (s, 1H), 8.41 (d, 1H, J = 8 Hz), 8.23 (d, 2H, J = 8Hz), 8.10 (s, 1H), 7.25 (d, 2H, J = 9 Hz), 7.05 (d, 2H, J = 9 Hz), 6.05 (s, 2H), 3.90 (s, 3H), 2.93 (s, 3H), 2.19 (s, 3H)。
【0226】
実施例8:(メチルスルホニル(フェニル)アミノ)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0227】
【化47】

【0228】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(CLT−28643)(0.1g,0.28mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,0.1g,0.8mmol)のテトラヒドロフラン(5mL)中における懸濁液を、0℃で15分間撹拌した。この溶液に、(2−クロロ−1−メチルスルホニルエチル)ベンゼン(50mg,0.23mmol)を添加し、反応混合物を徐々に室温にし、12時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、酢酸エチルで抽出し、カラム上で精製して(シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー,石油エーテル:酢酸エチル)、0.02g(13%の収率)の(メチルスルホニル(フェニル)アミノ)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレートを得た。LC-MS (m/z) 534.7 (M+1). 1H NMR (DMSO-d6) δ 9.90 (s, 1H), 8.97 (s, 1H), 8.54 (d, 1H, J = 2 Hz), 8.46 (d, 1H, J= 4.5 Hz), 8.11 (m, 1H), 7.95 (d, 1H, J= 9 Hz), 7.50-7.43 (m, 5H), 7.04 (d, 2H, J = 9Hz), 6.81 (d, 2H, J = 9Hz), 5.60 (s, 2H), 3.71 (s, 3H), 3.21 (s, 3H), 2.76 (s, 3H)。
【0229】
実施例9:2−[4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボニル]オキシプロパン酸
【0230】
【化48】

【0231】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.04g,0.09mmol)のピリジン(15mL)中における懸濁液に、室温でヨウ化リチウム(61mg,0.45mmol)を添加し、反応混合物を110℃で約48時間環流した。反応混合物をヘキサン、続いてアセトニトリルで希釈した。その後、飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、有機層を分離し、カラム上で精製して(調製用HPLC)、0.024g(50%の収率)の2−[4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボニル]オキシプロパン酸を得た。LC-MS (m/z) 423.8 (M+1). 1H-NMR (DMSO-d6) δ 10.08 (s, 1H), 8.96 (s, 1H), 8.55 (s, 1H), 8.49 (d, 2H, J = 4.5 Hz), 8.25 (m, 1H), 7.95 (m, 1H), 7.10 (d, J = 9 Hz), 6.91 (d, 2H, J = 9 Hz), 4.87 (q, 1H, J = 7 Hz), 3.79 (s, 3H), 2.70 (s, 3H), 1.44 (d, 3H , J = 7Hz)。
【0232】
実施例10:2−イミダゾール−1−イルエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート
【0233】
【化49】

【0234】
4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(1.0g,2.8mmol)の乾燥テトラヒドロフラン(15mL)中における懸濁液に、0℃で窒素雰囲気下に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(2.0g,11.2mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,0.64g,4.84mmol)、トリエチルアミン(3.2mL,2.3mmol)および2−ヒドロキシエチルイミダゾール(0.65g,3.4mmol)を添加した。反応混合物を徐々に室温にし、12時間撹拌した。反応混合物を真空濃縮し、水処理後、ジクロロメタンで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。残留物をカラム上で精製して(アルミナゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー,クロロホルム/メタノール 99.8:0.2)、0.25g(23%の収率)の2−イミダゾール−1−イルエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートを黄色固体として得た。LC-MS (m/z) 446.2 (M+1). 1H NMR δ (CDCl3) 10.65 (s, 1H), 9.16 (s, 1H), 8.05 (dd, 1H, J1 = 8.7 Hz, J2 = 1.8 Hz), 7.97 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 7.84 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.22-7.10 (m, 3H), 7.08 (s, 1H), 6.97 (d, 2H, J = 9.0 Hz), 5.67 (幅広い s, 1H), 4.75 - 4.60 (m, 2H), 4.50-4.35 (m, 2H), 3.87 (s, 3H), 2.88 (s, 3H)。
【0235】
実施例11:2−モルホリノエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート
【0236】
【化50】

【0237】
N,N−ジメチルホルムアミド(15mL)中の4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(1.0g,2.8mmol)に、窒素雰囲気下でN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,4.1mL,2.48mmol)および4−(2−クロロエチル)−モルホリン塩酸塩(1.0g,5.6mmol)を添加し、反応混合物をマイクロ波反応器内において120℃で30分間照射した。水処理後、反応混合物をジクロロメタンで2回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。残留物をカラム上で精製して(アルミナゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー,クロロホルム/メタノール 99.8:0.2)、0.22g(16%の収率)の2−モルホリノエチル−4−[(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレートを淡黄色固体として得た。LC-MS (m/z) 465 (M+1). 1H NMR (CDCl3) δ 10.72 (s, 1H), 9.24 (s, 1H), 8.04 (dd, 1H, J1 = 8.7 Hz, J2 = 1.5 Hz), 7.98 (d, 1H, J = 8.7 Hz), 7.81 (s, 1H, J = 1.5 Hz), 7.15 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 6.95 (d, 2H, J = 8.7 Hz ), 5.52 (幅広い s, 1H), 4.60-4.50 (m, 2H), 3.87 (s, 3H), 3.80-3.75 (m, 4H), 2.90-2.80 (m, 5H), 2.70-2.55 (m, 4H)。
【0238】
実施例12:(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0239】
【化51】

【0240】
(a)中間体4−ブロモメチル−5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレンの製造
【0241】
【化52】

【0242】
4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン(342mg,3.0mmol)の四塩化炭素(10mL)中における溶液に、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN,9.8mg,0.06mmol)およびN−ブロモスクシンイミドNBS(580mg,3.3mmol)を添加した。反応混合物を暗所でステムブロック(stem block)内において78℃で20分間加熱した。混合物を冷却し、ほぼ乾固するまで蒸発させた。混合物を濾過し、残留物を蒸発させると淡黄色固体が生成し、これは20%の出発物質を含有していた。収量:450mg(58%)。この混合物をさらに精製せずに次の工程に用いた。
【0243】
(b)炭酸カリウム(334mg,2.4mmol)を、4−[(4−メトキシ−フェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボン酸(0.17g,0.48mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中における溶液に添加し、反応混合物を5分間撹拌した。この混合物(溶液)を、4−ブロモメチル−5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン(0.34g,1.74mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中における溶液に添加した。反応混合物を1時間撹拌し、真空濃縮した。残留物をジクロロメタンと炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の間で分配した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空濃縮した。残留物をカラム上で精製した(シリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィー,ジクロロメタン/メタノール 95:5)。クロマトグラフィーからの最も純粋な画分をプールし、真空濃縮すると、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートが70%の純度で得られた。この粗製混合物をジクロロメタンに溶解し、黄色固体が生成するまでジエチルエーテルを添加した。混合物を濾過し、黄色固体をジエチルエーテルで2回洗浄し、真空乾燥して、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレートを得た;95%の純度(H−NMRによる)。収量:55mg(25%)。LC-MS (m/z) 463.9 (M+1). 1H-NMR (CDCl3) δ 10.67 (幅広い s, 1H), 9.19 (s, 1H), 8.05-7.99 (m, 2H), 7.82 (s, 1H), 7.17 (d, 2H, J = 8.7 Hz), 6.98 (d, 2H, J = 8.9 Hz), 5.60 (幅広い s, 1H), 5.17 (s, 2H), 3.87 (s, 3H), 2.86 (d, 3H, J = 5.1 Hz), 2.28 (s, 3H)。
【0244】
実施例13:4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸2−イミダゾール−1−イル−エチルエステル
【0245】
【化53】

【0246】
(a)中間化合物2−((4−ブロモフェニルアミノ)メチレン)−マロン酸ジエチルの製造:
【0247】
【化54】

【0248】
4−ブロモアニリン(10g)およびマロン酸ジエトキシメチレン(12.6g)を、密閉管内において150℃で3時間加熱した。次いで反応混合物を冷却し、n−ヘキサンで希釈すると、固体生成物が析出した。この固体を濾過し、n−ヘキサンで数回洗浄し、真空乾燥して、17.8gの2−[(4−ブロモ−フェニルアミノ)メチレン]−マロン酸ジエチルエステルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 11.03 (d, 1H, J = 13Hz, -NH-), 8.48 (d, 1H, J = 13Hz, -CH=C), 7.49 (m, 2H, 芳香族), 7.10-7.01 (m, 2H, 芳香族), 4.42-4.22 (m, 4H, -CH2-CH3), 1.45-1.26 (m, 6H, -CH2-CH3); LC-MS (m/z) 343.9 (M+1)。
【0249】
(b)中間化合物6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの製造:
【0250】
【化55】

【0251】
2−[(4−ブロモフェニルアミノ)メチレン]マロン酸ジエチルエステル(5g)をPOCl(塩化ホスホリル,31.5mL)と共に、密閉管内において150℃で6時間加熱した。過剰のPOClを真空下で除去し、反応混合物をジクロロメタンで希釈した。ジクロロメタン抽出液を水酸化ナトリウム水溶液(10%)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、カラムクロマトグラフィーにより精製して(シリカゲル,ヘキサン/酢酸エチル 80:20)、2.3gの6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.22 (s, 1H, 芳香族), 8.60 (d, 1H, J = 2.1 Hz, 芳香族), 8.04 (d, 1H, J = 9 Hz, 芳香族), 7.95-7.85 (m, 1H, 芳香族), 4.53 (q, 2H, J = 7 Hz, -CH2-), 1.50 (t, 3H, J = 7 Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 315.8 (M+1)。
【0252】
(c)中間化合物6−ブロモ−4−(4−フルオロフェニルアミノ)−キノリン−3−カルボン酸エチルの製造:
【0253】
【化56】

【0254】
p−フルオロアニリン(0.106g)および6−ブロモ−4−クロロキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(0.3g,0.95mmol)をジオキサン中で混合し、マイクロ波反応器内において150℃で30分間照射した。反応混合物を石油エーテルで希釈した。得られた固体生成物を濾過し、乾燥させて、0.33gの6−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル−アミノ)キノリン−3−カルボン酸エチルを得た。LC-MS (m/z) 389.4 (M+1)。
【0255】
(d)中間化合物4−(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチルの製造:
【0256】
【化57】

【0257】
6−ブロモ−4−(4−フルオロフェニル−アミノ)キノリン−3−カルボン酸エチル(0.3g)をテトラヒドロフランに添加し、続いてtrans−ジ(μ−アセタト)−ビス[o−(ジ−o−トリルホスフィノ)−ベンジル]二パラジウム(II)(Herrmannのパラダサイクル,0.038mmol)、トリtert−ブチルホスホニウムヘキサフルオロボレート)([(t−Bu)PH]BF,0.0385mmol)、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO),1.54mmol)、メチルアミン(4.6mmol,2N,テトラヒドロフラン中)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU,7.7mmol)を添加した。反応混合物を130℃で5分間、マイクロ波反応器内において照射した。反応混合物を濃縮し、次いでカラム上で精製して(シリカゲル,ジクロロメタン/メタノール 98:2)、0.39gの4−(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチルを固体として得た。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ 9.88 (s, 1H, -CONH-), 8.89 (s, 1H, 芳香族), 8.72 (s, 1H, 芳香族), 8.59 (d, 1H,J=4 Hz, 芳香族), 8.15 (d,1H, J= 8.7 Hz, 芳香族), 7.98 (d, 1H, J=8.7 Hz, 芳香族), 7.16 (m, 4H, 芳香族), 3.98 (q, 2H, J=7 Hz, -CH2-), 2.80 (s, 3H,-NCH3), 1.16 (t, 2H, J=7 Hz, -CH3); LC-MS (m/z) 368.1 (M+1)。
【0258】
(e)中間化合物4−(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボン酸の製造
【0259】
【化58】

【0260】
4−(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸エチル(0.03g)を水酸化リチウム(0.128g)と共に、6mLのメタノール/テトラヒドロフラン/水(2:2:2,)混合物中で一夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、水層を酢酸エチルで洗浄した。水層を採集し、塩酸水溶液で酸性にし、生成した沈殿を濾過し、乾燥させて、0.022gの4−(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸を黄色固体として得た。1H NMR (300 MHz, CD3OD) δ 12.47 (bs, 1H,-C(O)OH), 9.12 (s, 1H, 芳香族), 8.46 (s, 1H, 芳香族), 8.23 (s, 1H, 芳香族), 8.07 (d, 1H, J=8.4 Hz, 芳香族), 7.92 (d, 1H, J=8.4 Hz, 芳香族), 7.15 (m, 4H, 芳香族), 2.17 (s, 3H, -NCH3) ; LC-MS (m/z) 340.2 (M+1)。
【0261】
(f)4−(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸(240mg,0.707mmol)のジクロロメタン(6mL)、N,N−ジメチルホルムアミド(2mL)およびトリエチルアミン(0.5mL,3.54mmol)混合物中における溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC,545mg,2.83mmol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,58mg,0.42mmol)を0℃で添加した。反応混合物を同温度で撹拌した。20分後、1−ヒドロキシ−メチルイミダゾール(119mg,1.06mmol)を一度に0℃で添加し、室温で24時間、撹拌を続けた。反応混合物を水で停止し、ジクロロメタンで3回(各回20mL)、メタノールとジクロロメタンの混合物で3回(10%メタノール,各回20mL)抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。粗生成物をジイソプロピルエーテルで洗浄し、ジクロロメタンから再結晶して、80mg(26%の収率)の4−(4−フルオロフェニル−アミノ)−6−メチルカルバモイルキノリン−3−カルボン酸2−イミダゾール−1−イル−エチルエステルを得た。1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 9.85 (bs, 1H), 8.87 (s, 1H), 8.61 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 8.54 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 8.15 (dd, J = 8.7, 1.8 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.68 (s, 1H), 7.21 (s, 1H), 7.14-7.07 (m, 4H), 6.90 (s, 1H), 4.26-4.20 (m, 4H), 2.78 (d, J = 4.5 Hz, 3H). LC-MS (m/z, %): 419.8 (M+1, 91.9). HPLC: 94.7 %の純度。
【0262】
実施例14:4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸イミダゾール−1−イル−メチルエステル
【0263】
【化59】

【0264】
(4−フルオロフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸(170mg,0.5mmol)のジクロロメタン(5mL)、N,N−ジメチルホルムアミド(2mL)およびトリエチルアミン(0.35mL,2.5mmol)混合物中における溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC,385mg,2.0mmol)およびヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt,41mg,0.303mmol)を0℃で添加した。混合物を同温度で撹拌した。20分後、2−ヒドロキシエチル−イミダゾール(74mg,0.75mmol)を一度に0℃で添加し、室温で24時間撹拌した。反応混合物を水で停止し、ジクロロメタンで3回(各回20mL)、メタノールとジクロロメタンの混合物で3回(10%メタノール,各回20mL)抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空濃縮した。粗生成物をジイソプロピルエーテルで洗浄し、ジクロロメタンから再結晶して、50mg(24%の収率)の4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸イミダゾール−1−イル−メチルエステルをベージュ色固体として得た。1H-NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 9.87 (bs, 1H), 8.91 (s, 1H), 8.62 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.13 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.96 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.80 (s, 1H), 7.27 (s, 1H), 7.14-7.10 (m, 4H), 5.95 (s, 2H), 2.79 (d, J = 4.5 Hz, 3H). LC-MS (m/z, %): 433.7 (M+1, 94.8). HPLC: 95.3 %の純度。
【0265】
実施例15:2−モルホリノエチル 4−[(4−フルオロフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
【0266】
【化60】

【0267】
2−クロロエチルモルホリン塩酸塩(99mg,0.53mmol)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA,Huenigの塩基,38mg,0.29mmol)を、4−[(4−フルオロフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボン酸(100mg,0.29mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(2mL)中における溶液に添加した。この試薬混合物をマイクロ波条件下に120℃で50分間加熱した。反応混合物を真空濃縮し、ジクロロメタンに懸濁した。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液を反応混合物に添加し、ジクロロメタンで2回抽出した。有機相を合わせて炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、最後に真空濃縮した。残留物をカラム上で精製して(シリカゲル,フラッシュクロマトグラフィー,ジクロロメタン/メタノール 95:5)、25mg(19%の収率)の2−モルホリノエチル 4−[(4−フルオロフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレートを得た。LC-MS (m/z) 453.6 (M+1). 1H-NMR (CDCl3) δ 10.55 (s, 1H), 9.26 (s, 1H), 7.99 (s, 2H), 7.92 (s, 1H), 7.11-7.08 (m, 4H), 5.65 (d, 1H, J = 4.3 Hz), 4.52 (三重線, 2H, J = 11.3 Hz), 3.72-3.69 (m, 4H), 2.89 (d, 3H, J = 4.7 Hz), 2.82 (t, 2H, J = 11.7 Hz), 2.61-2.58 (m, 4H)。
【0268】
生物学的アッセイ
細胞形状アッセイ
使用したアッセイ法のひとつは、PAE/VEGFR−2およびPAE/VEGFR3細胞の培養を含んでいた。VEGF−AおよびVEGF−Cをそれぞれ添加し、続いて最大100μMの最終濃度の被験化合物を添加した後、細胞の形態変化を顕微鏡検査により記録した。PAE/VEGFR−2細胞の増殖阻害が、本発明の実施例1の化合物10μM以下の存在下で検出された。さらに、本発明化合物類をPAE/VEGFR−3細胞において試験し、VEGF−Cを、続いて最大100μMの最終濃度の被験化合物を添加した後、細胞の形態変化を顕微鏡検査により記録した。PAE/VEGFR−3細胞の増殖阻害が、本発明による幾つかの実施例の存在下で検出された。化合物を10、50および100μMで試験した。表1の被験化合物の作用を、VEGF AおよびVEGF Cにより誘発された細胞形態を阻害する化合物濃度として表わす。作用なしは100μMの化合物濃度まで形態変化がみられなかったことを意味する。
【0269】
走化性アッセイ
さらに、走化性に影響を及ぼすこの能力において化合物の作用を試験した。VEGFR2およびVEGFR3を発現するブタ大動脈内皮(PAE)細胞(PAE/VEGFR−2およびPAE/VEGFR−3)において、被験化合物を試験した。用いた方法は改変Boydenチャンバーアッセイである。走化因子として使用したそれぞれVEGF−AおよびVEGF−Cに対する受容体を発現するPAE細胞の移動を、血清の不存在下で微孔ポリカーボネートフィルターにより調べて採点した。このアッセイは10μMの化合物の存在下で実施された。
【0270】
表1に、細胞形状アッセイおよび走化性アッセイの両方からのデータを示す。したがって、“細胞形状:PAE/VEGFR−2 VEGFアンタゴニスト濃度(μM)”および“細胞形状:PAE/VEGFR−3 VEGFアンタゴニスト濃度(μM)”のデータには、指示した本発明化合物の、細胞形状アッセイにおいて細胞形態の回復をもたらした濃度を示す。“走化性:VEGFR−2 細胞移動の阻害率%”および“走化性:VEGFR−3 細胞移動の阻害率%”は、指示した本発明化合物10μMの存在下での、VEGFR−2または3を発現するPAE細胞の阻害率を示す。
【0271】
【表1】

【0272】
腫瘍synograftモデル
雌6週令C57Blマウスを腫瘍試験に用いた。対数期増殖中の約100万個のヒトT241野生型マウス線維肉腫腫瘍細胞を収穫し、培地に再懸濁し、容量100μLの単細胞溶液を各動物の右わき腹に皮下移植した。6匹のマウスを処理グループに用い、6匹のマウスを対照グループに用いた。50μlのビヒクルまたは本発明化合物(実施例1の化合物)(25mg/kg/日)の経口投与注入による全身処理を0(ゼロ)日に開始した。本発明化合物を10日間投与した。移植後5〜10日目に、目視できる腫瘍が存在した。指示した日に原発性腫瘍をディジタルカリパスで測定した。報告されたように腫瘍体積を次式に従って計算した:長さ×幅×0.52。本発明化合物はこの動物モデルにおいてそれの有効性につき説得力のある結果を示した(図1)。処理した動物がビヒクル処理動物と同じ腫瘍体積に達するには著しい日数がかかる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】

[式中:
nは、0(ゼロ)または1であり;
mは、0(ゼロ)、1または2であり;
およびRは、独立して水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cカルボサイクリル;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボサイクリルまたはヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;
は、単環式または二環式C−C10アリール;および単環式または二環式C−Cヘテロアリールまたはヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのアリール、ヘテロアリールまたはヘテロサイクリルは場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよく;
は、−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;−C(O)NR;単環式または二環式C−Cヘテロアリール;および単環式または二環式、飽和または不飽和C−Cヘテロサイクリルから選択され、その際、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により環中にオキソ基を含むことができ、ヘテロアリールおよびヘテロサイクリルにおいて各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択され;これらのヘテロアリールおよびヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;
およびRは、独立して水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびフェニルから選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルおよびフェニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;単環式または二環式C−C10アリール;−S(O);−C(O)OR;および−C(O)R10から選択され;これらのアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよく;
は、水素、および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
10は、水素;分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル;およびCアリールから選択され;このアリールは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により、独立してフッ素および塩素から選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
Yは、−C(O)−;−S(O)−;および−S(O)−から選択され;
Xは、−NR−;−O−;および-S−から選択され;
各Rは、独立してハロゲン;ヒドロキシ;カルボニル;メトキシ;ハロメトキシ;ジハロメトキシ;およびトリハロメトキシから選択され;
各Rは、独立してハロゲン;カルボキシ;ヒドロキシ;シアノ;C−Cアルキル;C−Cアルケニル;C−Cアルキニル;C−Cアルキルオキシ;C−Cアルケニルオキシ;C−Cアルキニルオキシ;C−Cアルキルチオ;C−Cアルケニルチオ;C−Cアルキニルチオ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミノ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級アミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル カルボニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニル;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル スルホニルオキシ;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル 第二級または第三級スルホンアミド;C−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニル シリル;およびC−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシまたはC−Cアルキニルオキシ カルボニルから選択され;その際、アルキル、アルケニルおよびアルキニル部分はいずれも場合により、独立してハロゲン、ヒドロキシ、メトキシ、ハロメトキシ、ジハロメトキシおよびトリハロメトキシから選択される1、2または3個の基で置換されていてもよく;
は、水素;および分枝したまたは分枝していないC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され;
その際、p≧4の炭素原子数を有するCアルキル、アルキニルまたはアルケニル基はいずれも、場合により炭素原子q個のC炭素環式部分を含んでいてもよく、それにより3≦q<pとなる]
またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項2】
およびRは、独立して水素、C−Cアルキル、C−CアルケニルおよびC−Cアルキニルから選択され、これらのアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボサイクリルまたはヘテロサイクリルは場合により1、2または3個の基Rで置換されていてもよく;Rはハロゲンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
は水素を表わし、かつRはC−Cアルキルを表わす、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Yは−C(O)−である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
nは0(ゼロ)である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
は場合により1、2、3、4または5個の基Rで置換されていてもよいフェニルである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
は場合により1個の基Rで置換されていてもよいフェニルである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Xは−NR−である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
は水素である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
は−OC(O)R;−C(O)OR;−NR;および−C(O)NRから選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
はC−Cアルキルおよびフェニルから選択され;RはC−Cアルキル、−S(O);−C(O)ORおよび−C(O)R10から選択され;RはC−Cアルキルを表わし;R10はフェニルを表わす、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
は、単環式もしくは二環式C−Cヘテロアリール、または単環式もしくは二環式、飽和もしくは不飽和C−Cヘテロサイクリルであり、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
は、単環式C−Cヘテロアリール;または単環式、飽和もしくは不飽和C−Cヘテロサイクリルであり、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
は単環式C−Cヘテロアリールであり、その際、各ヘテロ原子は独立してN、OおよびSから選択される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
各Rは独立してC−Cアルキル、C−CアルケニルまたはC−Cアルキニルから選択され、これらのアルキル、アルケニルおよびアルキニルは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよい、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
各Rは独立してC−Cアルキルオキシ、C−CアルケニルオキシおよびC−Cアルキニルオキシから選択され、これらのアルキルオキシ、アルケニルオキシおよびアルキニルオキシは場合により1、2または3個のハロゲンで置換されていてもよい、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
各Rはクロロ、フルオロまたはトリフルオロメチルから選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
各Rはハロゲンから選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
(1H−イミダゾール−1−イル)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
(メトキシカルボニル(メチル)アミノ)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチル−カルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
(N−メチルベンズアミド)メチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
2−(ジメチルアミノ)エチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチル 4−(4−メトキシフェニルアミノ)−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
(2−メトキシ−1−メチル−2−オキソ−エチル) 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
アセトキシメチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
(メチルスルホニル(フェニル)アミノ)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
2−[4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボニル]オキシプロパン酸;
2−イミダゾール−1−イルエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート;
2−モルホリノエチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)−キノリン−3−カルボキシレート;
(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソール−4−イル)メチル 4−[(4−メトキシフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート;
4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸2−イミダゾール−1−イル−エチルエステル;
4−(4−フルオロ−フェニルアミノ)−6−メチルカルバモイル−キノリン−3−カルボン酸イミダゾール−1−イル−メチルエステル;
2−モルホリノエチル 4−[(4−フルオロフェニル)アミノ]−6−(メチルカルバモイル)キノリン−3−カルボキシレート
である、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項20】
療法に使用するための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項21】
療法有効量の請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩を少なくとも1種類の医薬的に許容できる賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項22】
癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬から選択される障害の処置に使用するための、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項23】
癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫および乾癬から選択される障害の処置のための医薬の製造における、請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩の使用。
【請求項24】
癌、糖尿病性網膜障害、加齢性黄斑変性症、炎症、発作、虚血性心筋、アテローム性硬化症、黄斑浮腫または乾癬に罹患している哺乳動物の処置方法であって、その必要がある哺乳動物に療法有効量の請求項1〜19のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与することを含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−527431(P2012−527431A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511290(P2012−511290)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056968
【国際公開番号】WO2010/133669
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511280939)クラノテク・アクチボラグ (1)
【Fターム(参考)】