説明

X線検出器、X線撮影システム、及び画像合成方法

【課題】エリアセンサが故障した場合でも画像形成を行うことを可能として、メンテナンスコストを抑える。
【解決手段】X線検出器は、複数のエリアセンサ25を備える。レンズ21は、各エリアセンサ25の撮像領域IAが、シンチレータ20の発光面20aをエリアセンサ25ごとに区分した1つの区分領域SAと、この区分領域SAから隣接する各区分領域SAの少なくとも中心位置まで重複する重複領域OAとからなる範囲を有するように、発光面20aの光を各エリアセンサ25の受光領域26に導く。画像処理部は、各エリアセンサ25の出力信号に基づいてエリアセンサ25の故障検出を行い、故障したエリアセンサ25に隣接する少なくとも2つのエリアセンサ25の出力信号を用いて、故障したエリアセンサ25の出力信号を代替する代替信号を生成し、この代替信号と、正常なエリアセンサ25の出力信号とを合成して合成画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチエリアセンサ型のX線検出器、このX線検出器を用いたX線撮影システム、及び画像合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野等において、X線源から被検体を透過して入射したX線を、直接デジタル画像として撮影可能なフラットパネル型検出器(FPD)が普及している。このFPDには、液晶表示装置などに用いられる薄膜トランジスタ(TFT)パネル上に、X線を直接電荷に変換するアモルファスセレン(a−Se)等のX線変換層を積層して構成される直接変換型のものがある。また、FPDには、TFTパネル上に、X線を可視光に変換するヨウ化セシウム(CsI)等のシンチレータと、可視光を電荷に変換する複数のフォトダイオードとを積層して構成される間接変換型のものがある。
【0003】
FPDは、直接変換型の場合にはX線変換層の全体、間接変換型の場合にはシンチレータの全体をカバーする大型のTFTパネルを用いるため、製造コストが高いという問題がある。そこで、間接変換型のFPDにおいて、TFTパネルの代わりに、CCD等の比較的安価な汎用の小型エリアセンサ(固体撮像素子)を2次元状に並べて用いることで、製造コストを抑えることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。実際に、シンチレータと複数のCCDとで構成した間接変換型のX線検出器は、コスト面での優位性に加えて、撮像スピードが速く、かつ高感度であるといった性能面での優位性も有することから、近年注目を集めており、既に市販されている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、FPDでは、故障が生じた場合に、その故障箇所がTFTパネルの一部分であったとしても、TFTパネルの全体を交換する必要があるが、一方の複数のエリアセンサをセンサパネルとして用いたX線検出器(以下、マルチエリアセンサ型X線検出器という)では、故障が生じた場合に、故障部分のエリアセンサを交換することにより修復を行うことができる。したがって、マルチエリアセンサ型X線検出器は、メンテナンス性に優れるといった利点も有する(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−235079号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社アールエフ“デジタルX線センサー デジトゲンNAOMI”、[online]、[平成21年9月7日検索]、インターネット<URL:http://www.digitgen.com/naomi/tech/ccdstructure.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来のマルチエリアセンサ型X線検出器は、センサパネルの一部が故障した場合に、故障部分のエリアセンサを交換することで修復が可能であるが、しかしながら、1つのエリアセンサのみが故障した場合であっても画像形成を行うことができなくなるため、修復を行う必要があるといった問題がある。この修復作業は、故障が発生した際に、X線撮影を行う技師がその場で行えるほど容易なものではないため、X線検出器の製造メーカ等で行う必要がある。
【0008】
したがって、従来のマルチエリアセンサ型X線検出器では、1つのエリアセンサのみが故障した場合であっても、そのX線検出器の修復が完了するまでは撮影を行うことができないため、故障に迅速に対応するには、予備のX線検出器を用意しておくことが必要である。したがって、従来のマルチエリアセンサ型X線検出器は、実質的にメンテナンスコストが高く、改善の余地が残されている。
【0009】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、エリアセンサが故障した場合でも画像形成を行うことを可能とし、メンテナンスコストを抑えることができるX線検出器、X線撮影システム、及び画像合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のX線検出器は、入射X線に応答して発光面から光を発する蛍光板と、前記蛍光体の発光面を撮像するように2次元配列された複数のエリアセンサと、前記各エリアセンサの撮像領域が、前記発光面を前記エリアセンサごとに区分した1つの区分領域と、この区分領域から隣接する各区分領域の少なくとも中心位置まで重複する重複領域とからなる範囲を有するように、前記発光面の光を前記各エリアセンサの受光領域に導く光学系と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
なお、前記エリアセンサは、第1方向とこれに直交する第2方向に沿って正方格子状に配列されていることが好ましい。
【0012】
また、前記重複領域は、前記第1及び第2方向に隣接する区分領域の少なくとも50%の領域に重複していることが好ましい。
【0013】
また、前記区分領域からの光は、対応する前記エリアセンサの受光領域の中心を含む第1領域に入射し、前記重複領域からの光は、前記第1領域の周囲を取り囲む第2領域に入射することが好ましい。
【0014】
また、本発明のX線撮影システムは、上記いずれかのX線検出器と、前記X線検出器にX線を照射するX線源と、前記各エリアセンサの出力信号に基づいて故障したエリアセンサを検出する故障検出手段と、前記故障検出手段により検出された故障したエリアセンサに隣接する少なくとも2つのエリアセンサの出力信号を用いて、前記故障したエリアセンサの出力信号を代替する代替信号を生成し、この代替信号と、正常なエリアセンサの出力信号とを合成して合成画像を生成する画像合成手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
なお、前記エリアセンサの出力信号から前記光学系による光学歪みを除去する歪み補正手段を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記X線源に一様な強度のX線を前記X線検出器に照射させた状態で、前記画像合成手段により得られる合成画像にフィルタ処理を施すことにより、シェーディング補正用の補正データを作成する補正データ作成手段と、前記補正データ作成手段により作成された補正データに基づき、前記X線源と前記X線検出器との間に被検体を配した状態で得られる前記合成画像にシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、を備えることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明の画像合成方法は、上記いずれかのX線検出器の出力信号に基づく画像合成方法において、前記各エリアセンサの出力信号に基づいて故障したエリアセンサを検出し、故障したエリアセンサに隣接する少なくとも2つのエリアセンサの出力信号を用いて、前記故障したエリアセンサの出力信号を代替する代替信号を生成し、この代替信号と、正常なエリアセンサの出力信号とを合成して合成画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エリアセンサが故障した場合でも画像形成を行うことが可能であり、メンテナンスコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のX線撮影システムの構成を示すブロック図である。
【図2】X線検出器の構成を示す図であり、(A)は縦断面図であり、(B)は平面図である。
【図3】エリアセンサの受光領域上に結像する画像の範囲を説明する斜視図である。
【図4】エリアセンサに接続された回路と画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】歪み補正処理を説明する図であり、(A)は、歪み補正前の第1及び第2画像データ、(B)は、歪み補正後の第1及び第2画像データを示す。
【図6】故障判定処理を説明するフローチャートである。
【図7】エリアセンサの平均画素値を例示するグラフである。
【図8】画像合成時に一時的に作成する画像データを模式的に示す図である。
【図9】代替用画像データの生成方法を説明する図である。
【図10】合成画像データを示す図である。
【図11】X線撮影システムの作用を説明するフローチャートである。
【図12】故障エリアセンサが複数でかつ隣接する場合の代替用画像データの作成方法を模式的に示す図である。
【図13】代替用画像データを生成することができない故障エリアセンサの配列パターンを示す図である。
【図14】撮像領域とそれに隣接する区分領域との重複率が50%より大きい場合のX線検出器の構成を示す断面図である。
【図15】重複率が50%より大きい場合の第1〜第3接合画像データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、本発明のX線撮影システム10は、天板Uに載置された患者(被検体)MにX線を照射するX線源11と、被検体Mを透過したX線像を検出するX線検出器12と、X線源11の照射動作及びX線検出器12の検出動作を制御する撮影制御部13と、X線源11による被検体MへのX線照射に伴ってX線検出器12から出力される画像データに基づいて被検体Mの透過X線像に対応するX線画像を生成する画像処理部14と、画像処理部14により生成されたX線画像や、X線撮影に必要な操作メニュー等を画像表示モニタ15に表示させる表示制御部16とを備える。
【0021】
また、X線撮影システム10には、X線撮影の撮影条件の設定や、X線撮影の実行指示の入力を行なう操作部17と、CPUと動作プログラムとにより構成された主制御部18が設けられている。主制御部18は、操作部17による各種の指令入力に応じて各部を制御し、装置全体を適切に動作させる。
【0022】
図2(A)において、X線検出器12は、シンチレータ(蛍光板)20と、複数のレンズ21がレンズ保持部材22により保持されてなるレンズアレイ23と、各レンズ21に対応するように基板24上に配置されたエリアセンサ25とからなる。シンチレータ20、レンズアレイ23、及び基板24は、この順に配置され、不図示の筐体により保持されている。
【0023】
シンチレータ20は、酸化ガドリニウム(Gd2O3)やヨウ化セシウム(CsI)等からなり、入射X線を約550nmの波長の可視光に変換して射出する。レンズ21は、シンチレータ20から射出された可視光を集光してエリアセンサ25の受光領域26に入射させる。エリアセンサ25は、モノクロのCCD型固体撮像素子からなり、入射した可視光を電気信号(撮像信号)に変換して出力する。
【0024】
エリアセンサ25は、図2(B)に示すように、基板24の平面上の一方向(X方向)とこれに直交する方向(Y方向)に沿って、所定のピッチPで2次元正方格子状に配列されている。レンズ21は、エリアセンサ25の受光領域26の中心位置に光軸が直交するように、エリアセンサ25とシンチレータ20との間に配置されている。
【0025】
レンズ21からエリアセンサ25までの距離L1と、レンズ21からシンチレータ20の発光面20aまでの距離L2とは、シンチレータ20の発光面20aから発せられる可視光像のうち、撮像領域IAの可視光がエリアセンサ25の受光領域26に入射するように設定されている。
【0026】
破線Bは、隣接するエリアセンサ25の間の中間位置を示す仮想線である。この破線Bは、シンチレータ20の発光面20aを、エリアセンサ25ごとに均等に区分しており、エリアセンサ25の数に対応した区分領域SAが形成されている。各区分領域SAは、正方形状である。
【0027】
一方、各エリアセンサ25が撮像する領域である前述の撮像領域IAは、X方向及びY方向にピッチPの2倍の長さを有する矩形領域であり、区分領域SAの4倍の面積を有している。すなわち、撮像領域IAは、それに対応するエリアセンサ25の区分領域SAに対してXY方向及び斜め方向に隣接する各区分領域SAの中心位置を境界とする領域である。図2(B)には、1つのエリアセンサ25の撮像領域IAのみを示している。撮像領域IA中に斜線のハッチングで示した領域OAは、隣接するエリアセンサ25の区分領域SAに重複する重複領域である。
【0028】
図3において、各エリアセンサ25の受光領域26は、シンチレータ20の発光面20aのうちの該エリアセンサ25に対応する区分領域SAの可視光が入射する第1領域26aと、該区分領域SAに隣接する他の区分領域SAに重複する重複領域OAの可視光が入射する第2領域26bとに分けられる。
【0029】
詳しくは後述するが、すべてのエリアセンサ25が正常である正常時には、各エリアセンサ25の第1領域26aに対応する画像データ(以下、第1画像データD1という)を繋ぎ合わせることにより、X線画像が生成される。一方の第2領域26bに対応する画像データ(以下、第2画像データD2という)は、正常時には使用されないが、その第2領域26bを含むエリアセンサ25に隣接するエリアセンサ25が故障した場合に、この故障したエリアセンサ25の第1画像データD1を代替するための代替用画像データを作成するために用いられる。なお、エリアセンサ25の故障には、エリアセンサ25内の出力アンプの故障により撮像信号が異常値となる場合や、エリアセンサ25と基板24との実装不良により撮像信号が異常値となる場合などがある。
【0030】
図4において、各エリアセンサ25の出力端子には、エリアセンサ25から出力される撮像信号からノイズを除去するための相関二重サンプリング(CDS)回路30と、CDS回路30から出力された撮像信号をデジタルの画像データに変換するA/D変換器31と、A/D変換器31から出力された1フレーム分の画像データを記憶するフレームメモリ32とがそれぞれ接続されている。このフレームメモリ32には、受光領域26の第1領域26aに対応する第1画像データD1と、第2領域26bに対応する第2画像データD2が記憶される。これらのCDS回路30、A/D変換器31、及びフレームメモリ32は、基板24上に直接実装されるか、或いは、フレキシブル回路基板などを介して基板24に接続されている。
【0031】
画像処理部14は、読み出し選択部33、歪み補正部34、故障判定部35、画像合成部36、ローパスフィルタ(LPF)処理部37、補正データ記憶部38、シェーディング補正部39、及び画像メモリ40によって構成されている。これらのうち、故障判定部35及びLPF処理部37は、X線撮影システム10のキャリブレーション動作時に機能するものである。このキャリブレーション動作は、レンズ21の集光により、エリアセンサ25の受光領域26の中心から周辺部に向けて生じる光量低下(すなわち、シェーディング)を補正するためのものである。
【0032】
キャリブレーション動作は、操作部17からの入力指示により主制御部18の制御に基づいて行われるものであり、主制御部18は、X線源11からX線検出器12の全体に一様な一定強度のX線を照射させるとともに、X線検出器12及び画像処理部14を動作させる。なお、このキャリブレーション動作は、X線源11とX線検出器12との間に被検体Mが配置されていない状態で行われる。
【0033】
まず、キャリブレーション動作時の画像処理部14の機能を説明する。読み出し選択部33は、上記のように一様な強度のX線がX線検出器12に照射された状態で、X線検出器12により検出動作が行われた結果、各フレームメモリ32に記憶された第1及び第2画像データD1,D2をそれぞれ読み出して歪み補正部34に入力する。
【0034】
歪み補正部34は、レンズ21により生じる光学的な歪みを補正する。具体的には、歪み補正部34は、予め格子状の画像を撮影することにより作成された歪み補正データを記憶しておき、歪みが生じた第1及び第2画像データD1,D2(図5(A)参照)に対して歪み補正を行うことで、歪みのない第1及び第2画像データD1’,D2’(図5(B)参照)を生成する。このように歪みが除去された第1及び第2画像データD1’,D2’は、故障判定部35及び画像合成部36に入力される。
【0035】
故障判定部35は、図6のフローチャートに示すように、まず、入力された第1及び第2画像データD1’,D2’の画素値(各画素の輝度値)を対応するエリアセンサ25ごとに積算して平均化することで、各エリアセンサ25の平均画素値を算出する(ステップS1)。次いで、各エリアセンサ25について、それと隣接するエリアセンサ25との間の平均画素値の差分値(差の絶対値)を算出する(ステップS2)。このステップS2では、X方向及びY方向に隣接するエリアセンサ25の間で該差分値を算出することが好ましい。
【0036】
次いで、ステップS2で算出された差分値に、所定値より大きいものが存在するか否かを判定する(ステップS3)。所定値より大きい差分値が存在する場合には(ステップS3:YES)、隣接する少なくとも2つのエリアセンサ25との平均画素値の差分値が所定値より大きいエリアセンサ25を故障と判定することにより、故障したエリアセンサ25を特定する(ステップS4)。図7は、X方向またはY方向に並ぶエリアセンサ25の平均画素値をプロットしたものであり、第3番目のエリアセンサ25が、それに隣接する第2番目のエリアセンサ25との平均画素値の差分値Δ23と、第4番目のエリアセンサ25との平均画素値の差分値Δ34とのそれぞれが所定値より大きく、故障したエリアセンサ25として特定される例を示している。
【0037】
そして、故障判定部35は、故障したエリアセンサ25の位置情報を示す故障情報FIを、読み出し選択部33及び画像合成部36に供給する(ステップS5)。一方、ステップS3において、所定値より大きい差分値が存在しない場合には(ステップS3:NO)、故障したエリアセンサ25が存在しないため、ステップS4をスキップしてステップS5に移行し、故障したエリアセンサ25が存在しないこと(すなわち、すべて正常であること)を、故障情報FIとして読み出し選択部33及び画像合成部36に供給する。
【0038】
画像合成部36は、歪み補正部34から入力された各エリアセンサ25に対応する第1及び第2画像データD1’,D2’に基づき、X線検出器12の全撮影領域を表す合成画像を生成する。図8は、画像合成部36が合成画像を作成する第1段階として一時的に作成する画像データを模式的に示す(簡単化のため、5個×5個のエリアセンサ25に対応する画像データを示している)。同図中の#1〜#25は、各画像データに対応するエリアセンサ25の位置を区別する番号である。
【0039】
画像合成部36は、まず、歪み補正部34から入力された各エリアセンサ25の第1及び第2画像データD1’,D2’から、合成画像の作成に必要なデータを、故障判定部35から供給された故障情報FIに基づいて選別する。具体的には、画像合成部36は、故障したエリアセンサ25(#13のエリアセンサ)の第1及び第2画像データD1’,D2’と、正常でかつ故障したエリアセンサ25に隣接しないエリアセンサ25(#1〜#5,#6,#10,#11,#15,#16,#20,#21〜#25のエリアセンサ)の第2画像データD2’とを削除する。この結果、第2画像データD2’は、故障したエリアセンサ25に隣接する周囲8個のエリアセンサ25(#7〜#9,#12,#14,#17〜#19)に対応するもののみが残存する。同図中のa〜hは、残存した第2画像データD2’のうち、故障したエリアセンサ25の区分領域SAに重複する領域を示している。
【0040】
次いで、画像合成部36は、図9に示すように、上記第2画像データD2’のうち、X方向に対向する領域a,bを接合して第1接合画像データC1を生成し、Y方向に対向する領域c,dを接合して第2接合画像データC2を生成し、斜め方向に対向する領域e,f,g,hを接合して第3接合画像データC3を生成する。そして、画像合成部36は、これらの第1〜第3接合画像データC1〜C3を重ね合わせ、対応する画素値を加算して平均化することにより、代替用画像データSを生成する。この平均化により、代替用画像データSは、S/Nが高く、領域a〜hの接合部分が平滑化されて目立ち難くいものとなる。
【0041】
さらに、画像合成部36は、図10に示すように、故障したエリアセンサ25に対応する第1画像データD1’を代替用画像データSで置き換え、この代替用画像データSを、その他のエリアセンサ25に対応する第1画像データD1’と接合することにより、合成画像データTを作成する。
【0042】
キャリブレーション動作時には、画像合成部36により作成された合成画像データTは、LPF処理部37に入力される。LPF処理部37は、入力された合成画像データTに対して、移動平均処理等のLPF処理を行うことにより、レンズ21のシェーディング特性を表す補正データを生成する。この補正データは、補正データ記憶部38に記憶される。
【0043】
次に、上記のキャリブレーション動作後に行われる撮影動作時の画像処理部14の機能を説明する。この撮影動作は、操作部17からの入力指示により主制御部18の制御に基づいて行われるものであり、主制御部18は、X線源11に被検体Mの撮影条件に応じた強度のX線を発生させるとともに、X線検出器12及び画像処理部14を動作させる。X線検出器12は、被検体Mを透過したX線を検出し、各エリアセンサ25から出力される撮像信号が、各フレームメモリ32に第1及び第2画像データD1,D2として記憶される。
【0044】
読み出し選択部33は、故障判定部35から供給された前述の故障情報FIに基づき、故障したエリアセンサ25に対応するフレームメモリ32以外のフレームメモリ32から第1及び第2画像データD1,D2を読み出して歪み補正部34に入力する。歪み補正部34は、入力された第1及び第2画像データD1,D2について、上記と同一の歪み補正処理を行うことにより、歪みが除去された第1及び第2画像データD1’,D2’を生成する。撮影動作時には、この第1及び第2画像データD1’,D2’は、画像合成部36にのみ入力される。
【0045】
画像合成部36は、歪み補正部34から入力された各エリアセンサ25に対応する第1及び第2画像データD1’,D2’に基づき、上記と同一の画像合成処理を行うことにより、合成画像データTを生成する。この合成画像データTは、シェーディング補正部39に入力される。シェーディング補正部39は、入力され合成画像データTから、補正データ記憶部38に記憶された補正データを画素ごとに減算することにより、シェーディング補正を行う。このシェーディング補正後の合成画像データT’は、画像メモリ40に記憶される。この合成画像データT’は、被検体Mの撮影領域のX線画像として、前述の表示制御部16により画像表示モニタ15に表示される。
【0046】
次に、以上のように構成されたX線撮影システム10の作用を図11に示すフローチャートに沿って説明する。被検体MをX線源11とX線検出器12との間に配置しない状態で、技師により操作部17からキャリブレーション動作の開始指示が入力されると(ステップS11:YES)、X線源11からX線検出器12に一様な一定強度のX線照射が行われ、X線検出器12によりX線の検出動作が行われる(ステップS12)。このX線検出動作によりX線検出器12の各エリアセンサ25から出力された撮像信号が、第1及び第2画像データD1,D2に変換され、歪み補正が行われた後、故障判定部35により、故障したエリアセンサ25の検出が行われる(ステップS13)。
【0047】
次いで、故障判定部35により検出されたエリアセンサ25の故障情報FIに基づき、画像合成部36により前述の画像合成が行われ、LPF処理部37によりLPF処理が行われることにより、シェーディング特性を表す補正データが作成されて、補正データ記憶部38に記憶される(ステップS14)。
【0048】
この後、技師により操作部17から撮影条件等の設定が行われた後、撮影動作の開始指示が入力されると(ステップS15:YES)、X線源11からX線検出器12に撮影条件に応じた強度のX線照射が行われ、X線検出器12によりX線の検出動作が行われる(ステップS16)。このX線検出動作によりX線検出器12の各エリアセンサ25から出力された撮像信号が、第1及び第2画像データD1,D2に変換され、歪み補正が行われた後、故障情報FIに基づいて画像合成部36により前述の画像合成が行われ、合成画像データTが生成される(ステップS17)。
【0049】
そして、補正データ記憶部38に記憶された補正データに基づき、シェーディング補正部39によりシェーディング補正が行われる(ステップS18)。シェーディング補正が行われた合成画像データT’は、画像メモリ40に記憶され、被検体Mの撮影領域のX線画像として、前述の表示制御部16により画像表示モニタ15に表示される(ステップS19)。
【0050】
同図のフローチャートは、キャリブレーション動作の後、1回の撮影動作が行われる例を示しているが、キャリブレーション動作は、撮影動作の前に必ず行われるものでなく、キャリブレーション動作後、撮影動作が連続して行われる場合がある。撮影動作が連続して行われた場合には、各撮影動作では、直近のキャリブレーション動作により取得された同一の補正データによりシェーディング補正が行われる。
【0051】
なお、上記実施形態では、図8に示したように、故障したエリアセンサ25に隣接する周囲の8個のエリアセンサ25の第2画像データD2’に含まれる領域a〜hを用いて、代替用画像データSを作成しているため、故障したエリアセンサ25が複数存在する場合であっても、それが点在している場合には、精度良く代替用画像データSを生成することができるが、故障したエリアセンサ25が隣接している場合には、一方の故障エリアセンサ25の第2画像データD2’が、他方の故障エリアセンサ25の代替用画像データSを生成に部分的に用いられることになるため、代替用画像データSの精度が低下する。
【0052】
そこで、故障エリアセンサ25が隣接する場合には、図9で示したような第1〜第3接合画像データC1〜C3の平均化を行わずに、故障エリアセンサ25の位置に応じて、第1〜第3接合画像データC1〜C3のいずれかを代替用画像データSとして選択すればよい。例えば、図12に示すように、#8,#12,#13の3個の故障エリアセンサ25が隣接する場合には、領域a,bを接合した第1接合画像データC1により#8の故障エリアセンサ25の代替用画像データSを生成し、領域c,dを接合した第2接合画像データC2により#12の故障エリアセンサ25の代替用画像データSを生成し、領域e〜hを接合した第3接合画像データC3により#13の故障エリアセンサ25の代替用画像データSを生成すればよい。
【0053】
しかしながら、故障エリアセンサ25の配列パターンが、図13(A)〜(C)のいずれかのパターン、または、それらの回転対称形若しくは線対称形を含む場合には、第1〜第3接合画像データC1〜C3で代替用画像データSを生成することができない故障エリアセンサ25が存在するため、この場合には、警告表示等により、ユーザに報知を行うことが好ましい。
【0054】
また、上記実施形態では、図2(A),(B)で示したように、各エリアセンサ25の撮像領域IAを、X方向及びY方向に隣接する区分領域SAの50%の位置まで重複させているが、この重複率を50%より大きく、例えば、重複率を60%程度とすることも好ましい。図14は、上記重複率を60%とするように、距離L1,L2を設定したX線検出器12の構成を示す。
【0055】
この場合には、図15に示すように、第1接合画像データC1は、領域a,bをX方向に重複させて接合することにより生成され、第2接合画像データC2は、領域c,dをX方向に重複させて接合することにより生成され、第3接合画像データC3は、領域e〜fをXY方向に重複させて接合することにより生成される。各重複部は、重複する画素値を平均化することによって画像化される。このように、重複部を設けることで、領域間の接合部が平滑化されるという利点がある。なお、上記重複部は、画素値の平均化以外に、境界部からの距離に応じて画素値を重み付け加算することや、各領域からランダムにいずれかの画素値を選択することによって画像化することも可能であり、これらの場合にも領域間の接合部が平滑化されるという効果が得られる。
【0056】
また、上記実施形態では、レンズ21の光学的特性を考慮して、歪み補正及びシェーディング補正を行っているが、レンズ21の光学的性能が高く、歪みやシェーディングを無視することができる場合には、歪み補正及び/又はシェーディング補正を行わなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、隣接するエリアセンサ25の平均画素値の差分値に基づいて故障したエリアセンサ25を検出しているが、故障検出方法はこれに限られず、他の検出方法を用いてもよい。例えば、各エリアセンサ25の平均画素値が、X線検出器12に照射されるX線強度から推測される範囲内にあるか否かを判定することにより、故障したエリアセンサ25を検出することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、エリアセンサ25の受光領域26の第1領域26aと第2領域26bとの区分けを固定しているが、区分領域SAの可視光が入射する領域に正確に対応するように、第1領域26aの位置及び形状を可変としてもよい。第1領域26aの位置及び形状は、例えば、格子状の被写体を撮影し、それが写し込まれる受光領域26上の位置に基づいて決定する。
【0059】
また、上記実施形態では、エリアセンサ25とシンチレータ20との間の光学系として、単一のレンズ21を配置しているが、複数のレンズを組み合わせた光学系を配置してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、エリアセンサ25としてCCD型固体撮像素子を例示しているが、CMOSセンサなどの他の固体撮像素子を適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 X線撮影システム
11 X線源
12 X線検出器
14 画像処理部
20 シンチレータ
20a 発光面
21 レンズ
22 レンズ保持部材
23 レンズアレイ
24 基板
25 エリアセンサ
26 受光領域
26a 第1領域
26b 第2領域
33 読み出し選択部
34 歪み補正部
35 故障判定部
36 画像合成部
37 ローパスフィルタ処理部
38 補正データ記憶部
39 シェーディング補正部
FI 故障情報
IA 撮像領域
SA 区分領域
OA 重複領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射X線に応答して発光面から光を発する蛍光板と、
前記蛍光体の発光面を撮像するように2次元配列された複数のエリアセンサと、
前記各エリアセンサの撮像領域が、前記発光面を前記エリアセンサごとに区分した1つの区分領域と、この区分領域から隣接する各区分領域の少なくとも中心位置まで重複する重複領域とからなる範囲を有するように、前記発光面の光を前記各エリアセンサの受光領域に導く光学系と、
を備えたことを特徴とするX線検出器。
【請求項2】
前記エリアセンサは、第1方向とこれに直交する第2方向に沿って正方格子状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検出器。
【請求項3】
前記重複領域は、前記第1及び第2方向に隣接する区分領域の少なくとも50%の領域に重複していることを特徴とする請求項2に記載のX線検出器。
【請求項4】
前記区分領域からの光は、対応する前記エリアセンサの受光領域の中心を含む第1領域に入射し、前記重複領域からの光は、前記第1領域の周囲を取り囲む第2領域に入射することを特徴とする請求項3に記載のX線検出器。
【請求項5】
前記請求項1から4いずれかに記載のX線検出器と、
前記X線検出器にX線を照射するX線源と、
前記各エリアセンサの出力信号に基づいて故障したエリアセンサを検出する故障検出手段と、
前記故障検出手段により検出された故障したエリアセンサに隣接する少なくとも2つのエリアセンサの出力信号を用いて、前記故障したエリアセンサの出力信号を代替する代替信号を生成し、この代替信号と、正常なエリアセンサの出力信号とを合成して合成画像を生成する画像合成手段と、
を備えることを特徴とするX線撮影システム。
【請求項6】
前記エリアセンサの出力信号から前記光学系による光学歪みを除去する歪み補正手段を備えることを特徴とする請求項5に記載のX線撮影システム。
【請求項7】
前記X線源に一様な強度のX線を前記X線検出器に照射させた状態で、前記画像合成手段により得られる合成画像にフィルタ処理を施すことにより、シェーディング補正用の補正データを作成する補正データ作成手段と、
前記補正データ作成手段により作成された補正データに基づき、前記X線源と前記X線検出器との間に被検体を配した状態で得られる前記合成画像にシェーディング補正を行うシェーディング補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項5または6に記載のX線撮影システム。
【請求項8】
前記請求項1から4いずれかに記載のX線検出器の出力信号に基づく画像合成方法において、
前記各エリアセンサの出力信号に基づいて故障したエリアセンサを検出し、
故障したエリアセンサに隣接する少なくとも2つのエリアセンサの出力信号を用いて、前記故障したエリアセンサの出力信号を代替する代替信号を生成し、
この代替信号と、正常なエリアセンサの出力信号とを合成して合成画像を生成する
ことを特徴とする画像合成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−67508(P2011−67508A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222350(P2009−222350)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】