X線検査装置
【課題】高解像度かつS/N特性に優れた画像に基づいて物品の検査を行うことができるX線検査装置を提供する。
【解決手段】第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは、互いに水平に並んで配設される。第1X線センサ220aは、フォトダイオードで構成され、例えばSi(珪素)を含んでなる検出部223を有する。検出部223は主に可視光を検出するとともにX線210を検出する。第2X線センサ220bは、シンチレータ221およびフォトダイオード222により構成される。シンチレータ221は、検出したX線210を光に変換する変換層224を備える。フォトダイオード222は、第1X線センサ220aと同様に、Siを含んでなる検出部225を備える。
【解決手段】第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは、互いに水平に並んで配設される。第1X線センサ220aは、フォトダイオードで構成され、例えばSi(珪素)を含んでなる検出部223を有する。検出部223は主に可視光を検出するとともにX線210を検出する。第2X線センサ220bは、シンチレータ221およびフォトダイオード222により構成される。シンチレータ221は、検出したX線210を光に変換する変換層224を備える。フォトダイオード222は、第1X線センサ220aと同様に、Siを含んでなる検出部225を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の形状を認識したり、物品の異物の有無を検出するX線検査装置等が使用されている。これらのX線検査装置に関して、日々研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、X線を検出するセンサが開示されている。このセンサは、形状可変な基板、下部電極、光電変換素子となる半導体層、上部電極およびシンチレータから構成される。上記の半導体層は、例えば、In-Ga-Zn-Oを少なくとも含む非晶質酸化物等で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今のX線検査装置には、異物検査機能以外の機能も併せて求められる。これは、工場等の検査ラインでは、内容量、個数、シール不良、欠品数、被検査物の周長および特定物質の確認など、多岐にわたる検査を実施する必要があるためである。これらの検査性能を左右する要素例として、以下の検出器および検出方法の種類が挙げられる。
【0006】
X線撮像システムにおいて利用されるX線検出器には、X線を光に変換するシンチレータおよび蛍光板が貼り付けられたフォトダイオードアレイを有する間接型検出器と、X線に反応して半導体中に電荷を生じる直接型検出器とがある。概ね、間接型検出器はS/N(signal-to-noise)特性に優れ、直接型検出器は解像度に優れる。
【0007】
また、検出方法として、特定異物を効率よく検査するためのエネルギーサブトラクション法がある。他にも、管電圧を変更して2度撮像する2ショット法、および管電圧を固定し、同一検出器にフィルタを挿入したり、同一フォトダイオードにエネルギー感度特性の異なる蛍光板を貼り付けて検出器の感度特性を変化させる1ショット法等がある。特に、1ショット法では、フィルタまたは蛍光板の選定如何で検査性能が決まるが、制約が多いわりに有効な感度差を導くことが困難な場合が多い。また、X線源に対して垂直に並べられる上下段撮像方式は、下段のセンサ出力を確保することが難しく、画像劣化が起こり、検出感度が低下してしまう場合が多い。
【0008】
例えば、食品用のX線検査装置においては、解像度、S/N特性およびコントラスト特性が検査性能に直結し、いずれも欠かせない要素である。しかしながら、これらの要素は、材料特性によって決まることが多く、全ての要素を満たすのは難しい。例えば、検査現場での検査確実性および誤検査防止のためにS/N特性を優先すると、解像度が犠牲になる。その結果、微小異物を検出することが難しくなる。このように、従来のX線検出装置では、高解像度かつS/N特性に優れた画像を得ることができず、多機能な検査を実施することができない。
【0009】
本発明の目的は、高解像度かつS/N特性に優れた画像に基づいて物品の検査を行うことができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)一の局面に従うX線検査装置は、物品を透過した透過X線に基づくX線画像にて物品の検査を行うX線検査装置であって、主に可視光を検出する検出部を有する第1X線センサと、透過X線を光に変換する変換層と当該変換層からの可視光を主に検出する検出部とを有する第2X線センサと、を備え、第1X線センサからの検出と第2X線センサからの検出とを切り替えて、または、両方のX線センサからの検出に基づき物品の検査を行うものである。
【0011】
一の局面に従うX線検査装置においては、第1X線センサの検出部により主に可視光が検出されるとともにX線が検出される。また、第2X線センサの変換層により透過X線が光に変換される。第2X線センサの検出部により上記変換層からの可視光が主に検出される。そして、第1X線センサからの検出と第2X線センサからの検出とを切り替えて、または、両方のX線センサからの検出に基づき物品の検査が行われる。
【0012】
解像度とS/N比とは相反する関係にあり、高解像度ほど受光線量が減少するためS/N比が低下してしまう。線質を変えるために、フィルタを使用すると、線量が低下するためS/N比も低下する。すなわち、解像度およびS/N特性のうち一方を優先すれば、他方が犠牲となる。例えば、検査現場での検査確実性および誤検査防止のためにS/N特性を優先すると、解像度が犠牲になる。その結果、微小異物を検出することが難しくなる。
【0013】
このX線検査装置によれば、第1X線センサにより検出されたX線が直接電荷に変換されるので、第1X線センサの出力に基づく画像はコントラスト特性および解像度が優れる。また、第2X線センサの変換層によりX線が光に変換されて増幅されるので、第2X線センサの出力はS/N特性が優れる。
【0014】
このような第1X線センサからの出力と第2X線センサからの出力とを検査に応じて切り替えることにより、第1X線センサの出力を用いて例えば包装材の状態の認識および被検査物の淡部領域における異物検出等を高精度で行うことができる。また、第2X線センサからの出力を用いて被検査物の異物検出を安定して行うことができる。さらに、両方のX線センサからの出力に基づき高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を行うことができる。
【0015】
(2)第1X線センサおよび前記第2X線センサは、互いに水平に並んで配設されてもよい。
【0016】
この場合、第1X線センサおよび第2X線センサが互いに水平に並んで配設されることにより、第1X線センサおよび第2X線センサは透過X線を直接受けることができる。それにより、第1X線センサによる検出および第2X線センサによる検出の信頼性を向上できる。
【0017】
(3)第1X線センサは、第2X線センサの上方に配設されてもよい。
【0018】
この場合、本構成とは逆に、第1X線センサの上方に第2X線センサを配設すると、当該第2X線センサの変換層によってX線が光に変換される割合が大きくなり、下方に配設された第1X線センサはX線をほとんど検出できない。
【0019】
したがって、第1X線センサを第2X線センサの上方に配設することにより、当該第1X線センサによる検出に基づいて高解像度な画像を得ることができるとともに、第2X線センサの出力を低下させることなく、当該第2X線センサによる検出に基づいてS/N特性の優れた画像を得ることができる。また、省スペース化のため、第1X線センサおよび第2X線センサを水平に配設することが困難な場合に、本構成は有益である。
【0020】
(4)第1X線センサの検出部と第2X線センサの検出部とは同種材料により形成されることが好ましい。
【0021】
この場合、第1X線センサの検出部と第2X線センサの検出部とが同種材料により形成されることによって、第1X線センサにおいてコストアップを防止できる。すなわち、第2X線センサから変換層を除くだけで第1X線センサの検出部を得ることができるので、著しく安価である。
【0022】
(5)X線検査装置は、第1X線センサおよび第2X線センサは、少なくとも異なる検出波長領域を有し、透過X線の波長に応じて、第1Xセンサおよび第2X線センサの検出結果の重みを調整する調整部をさらに備えてもよい。
【0023】
この場合、透過X線の波長に応じて、調整部により第1Xセンサおよび第2X線センサの検出結果の重みが調整される。X線源の出力を変えることにより当該X線源から照射されるX線の波長が変わる。X線源の出力を上げると照射されるX線の波長は短くなり、当該出力を下げると照射されるX線の波長は長くなる。第1X線センサと第2X線センサとは少なくとも異なる検出波長領域を有する。したがって、調整部により検出結果の重みを調整することで、第1X線センサおよび第2X線センサの検出結果の一方だけを用いたり、または両方を用いることもできる。これにより、高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るX線検査装置によれば、高解像度かつS/N特性に優れた画像に基づいて物品の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係るX線検査装置の一例を示す模式的外観図である。
【図2】本実施形態に係るX線検査装置の内部構造の一例を示す模式図である。
【図3】X線検査装置において画像処理に関わる構成部を示すブロック図である。
【図4】図2のラインセンサの簡単な構成を示す側面図である。
【図5】図3の調整部による重み調整を説明するための説明図である。
【図6】ラインセンサの配設の他例を示す側面図である。
【図7】他例に係るラインセンサの基本構成の例を示す斜視図である。
【図8】2つのラインセンサの構造の一例を示す図である。
【図9】2つのラインセンサの配設の一例を示す斜視図である。
【図10】2つのラインセンサの配設の他例を示す図である。
【図11】2つのラインセンサの配設の他例を示す図である。
【図12】2つのラインセンサの配設の他例を示す図である。
【図13】互いに異なる解像度を有するラインセンサの配設の例を示す図である。
【図14】図12の2つのラインセンサの構成にフィルタを設けた例を示す図である。
【図15】3つ以上のラインセンサを配設した例を示す図である。
【図16】X線検出器上に蛍光体を貼り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るX線検査装置について図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は本実施形態に係るX線検査装置100の一例を示す模式的外観図であり、図2は本実施形態に係るX線検査装置100の内部構造の一例を示す模式図である。
【0028】
図1に示すように、X線検査装置100には、その内部にX線検査室300が形成されている。このX線検査室300内にはX線照射装置200が内蔵されている。X線検査室300を貫通するように、ベルトコンベア800が設けられている。
【0029】
X線検査室300の開口部からのX線の漏洩を防止するX線漏洩防止カーテン500が設けられている。また、X線検査装置100には、作業者が操作するためのタッチパネル形式の入力表示部MTが設けられている。作業者は、入力表示部MTを操作することによりX線検査装置100を駆動させる。
【0030】
作業者は、ベルトコンベア800上に被検査物900(図2参照)を載置する。ベルトコンベア800上に載置された被検査物900について、X線検査室300内において異物検査等が行われる。以下、X線検査室300の内部構造について説明する。
【0031】
図2に示すように、X線検査室300は、X線照射装置200、ラインセンサ220、X線漏洩防止カーテン500、およびベルトコンベア800を主として備える。ラインセンサ220の詳細については後述する。X線漏洩防止カーテン500は、X線検査室300の入口側のX線漏洩防止カーテン装置510および出口側のX線漏洩防止カーテン装置520により構成される。なお、図2のラインセンサ220の構成例は、後述する図4(a)または(b)の例を示したものである。
【0032】
ベルトコンベア800は、無端状のベルトが一対のローラに巻回されて構成されている。また、X線を検出するラインセンサ220は、上記ベルトコンベア800の内側に設けられる。
【0033】
図2において、ベルトコンベア800上に被検査物900が載置される。そして、ベルトコンベア800が駆動されると、被検査物900は矢印d1の方向(搬送方向)に沿って搬送される。搬送中の被検査物900は、まず、X線漏洩防止カーテン510を通過して、X線検査室300内に移動する。
【0034】
次いで、搬送中の被検査物900に対して、X線照射装置200からX線210が照射される。そして、被検査物900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。
【0035】
ラインセンサ220は、入射されたX線210に基づいて後述の検出データKDaを生成する。ラインセンサ220により生成された検出データKDaに基づいて被検査物900の異物検査等の検査が行われる。
【0036】
そして、X線検査が行われた被検査物900はベルトコンベア800により継続的に搬送されることにより、X線漏洩防止カーテン520を通過した後、X線検査室300外に移動する。その後、被検査物900は次工程へと搬送される。
【0037】
図3はX線検査装置100において画像処理に関わる構成部を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係るX線検査装置100は、画像処理に関わる構成部として、上述のラインセンサ220、A/Dコンバータ230および機能処理部FSを備える。機能処理部FSは情報取得部240、調整部250および検査処理部260を含む。
【0038】
機能処理部FSの各構成部は、CPU(中央演算処理装置)がRAM(Random Access Memory)またはROM(Read-Only Memory)に格納されている処理プログラムを実行することによって機能的に実現される。このような処理プログラムは、当該処理プログラムが記録されたCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体からインストールすることが可能であるし、ネットワークを介してサーバからダウンロードすることも可能である。
【0039】
最初に、被検査物900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。ラインセンサ220は、X線210に基づいてアナログデータである検出データKDaを生成する。A/Dコンバータ230は、検出データKDaをデジタルデータである検出データKDdに変換する。
【0040】
情報取得部240は、上記の検出データKDdに基づいて被検査物900の濃淡情報を取得する。調整部250は、X線210の波長に応じて、後述の第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bの検出データの重みを調整する。詳細については後述する。
【0041】
検査処理部260は、調整部250により重みが調整された検出データに基づいて、被検査物900内に異物が存在するか否かについての異物検査等の検査を行う。そして、検査処理部260の判断結果によって、警告装置(図示せず)により警告音が発せられる等の処理が行われる。その他、表示装置、異物除去装置または異物混入商品区分け装置等が上記検査処理部260の判断結果を用いて処理を行ってもよい。
【0042】
図4は図2のラインセンサ220の簡単な構成を示す側面図である。図4(a)に示すように、第1X線センサ220aは、フォトダイオードで構成され、例えばSi(珪素)を含んでなる検出部223を有する。当該検出部223は主に可視光を検出するとともにX線210を検出する。第1X線センサ220aは、検出したX線210を直接電荷に変換する。なお、検出部223の厚みは、0.04mm以上であることが好ましい。この場合、検出部223の厚みが0.04mm以上であることにより、検出するX線の波長が長い場合(換言すれば、X線のエネルギーが低い場合)でも、第1X線センサ220aの出力を高くすることができる。
【0043】
また、第2X線センサ220bは、シンチレータ221およびフォトダイオード222から構成される。シンチレータ221は、検出したX線210を光に変換する変換層224を備える。また、フォトダイオード222は、第1X線センサ220aと同様に、Siを含んでなる検出部225を備える。フォトダイオード222において検出部225により可視光が主に検出され、当該可視光が電荷に変換される。なお、シンチレータ221の変換層224は、例えばGOS(硫化ガドリニウム)を含んでなる。
【0044】
第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは、互いに水平に並んで配設される。なお、図4(a)の例では、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとが1つのパッケージ226に含まれる。
【0045】
第1X線センサ220aの検出部223と第2X線センサ220bの変換層224とは、少なくとも異なる検出波長領域を有している。例えば、第2X線センサ220bの変換層224は、波長が長いX線、換言するとエネルギーが低いX線に反応する。よって、第2X線センサ220bの検出結果を用いることが必要な検査を行う場合には、変換層224が検出し得る長い波長のX線を照射するために、X線照射装置200の出力を、検査精度に影響がない範囲内で下げる。なお、X線照射装置200の出力を上げると照射されるX線の波長は短くなり、当該出力を下げると照射されるX線の波長は長くなる。
【0046】
また、ラインセンサ220の構成が次のようなものであってもよい。図4(b)に示すように、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとが、それぞれ別のパッケージ227、228に含まれる。この場合にも、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは、互いに水平に並んで配設される。その他の構成は、図4(a)と同じである。
【0047】
また、ラインセンサ220の構成がさらに次のようなものであってもよい。図4(c)に示すように、第1X線センサ220aが第2X線センサ220bの上方に配設される。第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは1つのパッケージ229に含まれる。その他の構成は、図4(a)と同じである。
【0048】
図5は図3の調整部250による重み調整を説明するための説明図である。図5(a)に示すように、例えば、第1X線センサ220aの検出部223の検出波長領域KR1は、比較的波長の短いX線を対象とし、逆に、第2X線センサ220bの変換層224の検出波長領域KR2は、比較的波長の長いX線を対象とする。なお、検出波長領域KR1と検出波長領域KR2とは一部重複する。
【0049】
X線照射装置200により照射されるX線210が、例えば波長領域HR1を有する場合には、第2X線センサ220bが当該X線210を検出できる。この場合、調整部250(図3)により、第1X線センサ220aの検出データおよび第2X線センサ220bの検出データが、それぞれ0%および100%のように重み付けられる。したがって、検査処理部260(図3)は、第2X線センサ220bの検出データのみ用いて検査を行う。
【0050】
一方、図5(b)に示すように、X線照射装置200により照射されるX線210が、例えば波長領域HR2を有する場合には、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bが共に当該X線210を検出できる。この場合、調整部250により、第1X線センサ220aの検出データおよび第2X線センサ220bの検出データが、それぞれ適宜重み付けられる。したがって、検査処理部260は、第1X線センサ220aの検出データおよび第2X線センサ220bの検出データを用いて検査を行う。
【0051】
<本実施形態における効果>
一般に、解像度とS/N比とは相反する関係にあり、高解像度ほど受光線量が減少するためS/N比が低下してしまう。線質を変えるために、フィルタを使用すると、線量が低下するためS/N比も低下する。すなわち、解像度およびS/N特性のうち一方を優先すれば、他方が犠牲となる。例えば、検査現場での検査確実性および誤検査防止のためにS/N特性を優先すると、解像度が犠牲になる。その結果、微小異物を検出することが難しくなる。
【0052】
本実施形態に係るX線検査装置100によれば、第1X線センサ220aの検出部223により検出されたX線が直接電荷に変換されるので、第1X線センサ220aの出力に基づく画像はコントラスト特性および解像度が優れる。また、第2X線センサ220bの変換層224によりX線が光に変換されて増幅されるので、第2X線センサ220bの出力はS/N特性が優れる。
【0053】
このような第1X線センサ220aからの出力と第2X線センサ220bからの出力とを検査に応じて切り替えることにより、第1X線センサ220aの出力を用いて例えば包装材の状態の認識および被検査物900の淡部領域における異物検出等を高精度で行うことができる。また、第2X線センサ220bからの出力を用いて被検査物900の異物検出を安定して行うことができる。さらに、両方のX線センサ220a、220bからの出力に基づき高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bが互いに水平に並んで配設されることにより、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bはX線を直接受けることができる。それにより、第1X線センサ220aによる検出および第2X線センサ220bによる検出の信頼性を向上できる。
【0055】
また、本実施形態に係る構成とは逆に、第1X線センサ220aの上方に第2X線センサ220bを配設すると、当該第2X線センサ220bの変換層224によってX線が光に変換される割合が大きくなり、下方に配設された第1X線センサ220aはX線をほとんど検出できない。
【0056】
したがって、本実施形態のように、第1X線センサ220aを第2X線センサ220bの上方に配設することにより、当該第1X線センサ220aによる検出に基づいて高解像度な画像を得ることができるとともに、第2X線センサ220bの出力を低下させることなく、当該第2X線センサ220bによる検出に基づいてS/N特性の優れた画像を得ることができる。また、省スペース化のため、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bを水平に配設することが困難な場合に、本例の構成は有益である。
【0057】
また、本実施形態では、第1X線センサ220aの検出部223と第2X線センサ220bの検出部225とが同材料(本実施形態では、Si)により形成されることによって、第1X線センサ220aにおいてコストアップを防止できる。すなわち、第2X線センサ220bからシンチレータ221を除くだけで第1X線センサ220aを得ることができるので、著しく安価である。
【0058】
さらに、本実施形態では、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは少なくとも異なる検出波長領域を有するので、調整部250により検出結果の重みを調整することで、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bの検出結果の一方だけを用いたり、または両方を用いることもできる。これにより、高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を容易に実現できる。
【0059】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各構成部との対応関係>
上記実施形態においては、X線検査装置100がX線検査装置に相当し、X線210が透過X線に相当し、第1X線センサ220aが第1X線センサに相当し、第2X線センサ220bが第2X線センサに相当し、被検査物900が物品に相当し、検出部223が第1X線センサの検出部に相当し、変換層224が変換層に相当し、検出部225が第2X線センサの検出部に相当し、検出波長領域KR1、KR2が検出波長領域に相当し、調整部250が調整部に相当する。
【0060】
<変形例>
なお、上記実施形態では、第1X線センサ220aの検出部223および第2X線センサ220bの検出部225の構成材料として同じSiを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばCdTe(カドミウムテルリド)等の他の構成材料を用いてもよい。但し、本実施形態のように、Siを用いる方が低コストである。
【0061】
また、次のようにセンサを構成してもよい。図6(a)に示すように、2つの第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bを、互いに水平に並べて配設してもよい。また、図6(b)に示すように、第1X線センサ220aおよび2つの第2X線センサ220bを、互いに水平に並べて配設してもよい。さらに、4つ以上のX線センサを配設してもよい。
【0062】
ここで、上でも述べたが、解像度とS/N比とは相反する関係にあり、高解像度ほど受光線量が減少するためS/N比が低下してしまう。線質を変えるために、フィルタを使用すると、線量が低下するためS/N比も低下する。したがって、低下したS/N比を向上する仕組みが必要となる。
【0063】
その解決策の一つとして、従来、エリアセンサを使用したTDI(Time Delay and Integration)処理およびラミノグラフィが利用されているが、エリアセンサはラインセンサに比べて非常に大きなコストアップを伴ってしまう。TDI処理は、例えば受光素子の配列方向の直交方向に光学走査を行い、複数の受光素子の各々から取り出された電気信号を対応するアンプで増幅してさらに遅延した後、対応する受光素子同士の出力信号を加算合成する。これにより、被検査物の同一走査地点での信号が各々加算合成されて大レベルになるのに対して、ノイズはランダムな変化をするので上記加算によっても大レベルとはならないから、全体としてS/N比が改善された信号を得ることができる。また、ラミノグラフィは、被検査物の所望検査面での断層像を検出する技術である。当該技術は、X線源、被検査物、検出器の3要素のうち、2要素を同期させて動かすことにより、複数の異なる透視画像を得るものである。この複数の透視画像に基づいて、被検査物における所望検査面以外の像を排除し、所望検査面での像のみを選別して検出できる。
【0064】
微細な構造を検査する際には高解像度なラインセンサを使用するのが好ましいが、比較的大きな構造を検査する際には低解像度でも高いS/N比を有することが好ましい。しかしながら、一つのラインセンサの解像度は1種しかないため、高解像度および高いS/N比を実現することができない。また、エリアセンサを使用すると大きなコストアップを伴ってしまう。
【0065】
そこで、以下のように、2つのラインセンサを配設する。当該2つのラインセンサにより2種の解像度の画像を得ることによって、異物の大きさに応じた検査が可能となる。
【0066】
まず、一つのラインセンサの構成について説明する。図7はラインセンサ900の基本構成の例を示す斜視図である。図7に示すように、ラインセンサ900においては、平板状のセンサ基材901上に複数の受光素子902が設けられる。これらの受光素子902には半導体チップ904が電気的に接続される。半導体チップ904は、配線906を介してコネクタ905に接続される。コネクタ905には信号線907が接続される。
【0067】
図8は2つのラインセンサ900の構造の一例を示す図である。図8(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、以下の図も同様とする。なお、図7と同様の符号については一部省略しており、以下の図も同様とする。
【0068】
図8(a)、(b)に示すように、2つのラインセンサ900が平行に配置される。そして、各々のラインセンサ900において複数の受光素子902の一端面がセンサ基材901の一端面に揃うようにこれらが配設される。これにより、各受光素子902を直近に配置することができ、2つのラインセンサ900の検出データに基づく画像のずれを抑制できる。
【0069】
図9は2つのラインセンサ900の配設の一例を示す斜視図である。図9に示すように、各ラインセンサ900は互いに間隔を空けて対向するようにそれぞれ配設される。これにより、構造的に2つのラインセンサ900を近接して配設しやすくなる。
【0070】
図10は2つのラインセンサ900の配設の他例を示す図である。図10に示すように、上下両側の各受光素子902が接するように、2つのラインセンサ900はそれぞれ配設される。これにより、2つのラインセンサ900の検出データに基づく画像のずれを抑制できる。
【0071】
図11は2つのラインセンサ900の配設の他例を示す図である。図11に示すように、上下両側の各受光素子902間に絶縁材910を挟んで、2つのラインセンサ900がそれぞれ配設される。これにより、上下両側の各受光素子902が電気的に短絡することなく、2つのラインセンサ900の検出データに基づく画像のずれを抑制できる。
【0072】
図12は2つのラインセンサ900の配設の他例を示す図である。図12に示すように、各ラインセンサ900は互いに間隔を空けて対向するようにそれぞれ配設される。また、各ラインセンサ900の各受光素子902上には蛍光体(増感紙)912が貼り付けられる。各蛍光体912の間には、可視光を遮断する隔壁911が設けられる。これにより、近接した各受光素子902同士が互いに干渉し合うことを抑制できる。
【0073】
図13は互いに異なる解像度を有するラインセンサ900、901の配設の例を示す図である。図13に示すように、ラインセンサ901の構成が、ラインセンサ900の構成と異なる点は、受光素子902の代わりに、当該受光素子902の解像度と異なる解像度を有する受光素子902aを、受光素子902の半数設ける点である。なお、受光素子902aの方が受光素子902よりも解像度が高い。
【0074】
これにより、高解像度画像と低解像度ではあるが高いS/N比の画像とが得られるとともに、微細構造に適した画像と粗い構造に適した画像とを一度に得られる。
【0075】
図14は図12の2つのラインセンサ900の構成にフィルタ913を設けた例を示す図である。図14に示すように、図12の2つのラインセンサ900の上方にフィルタ913を設ける。2つのラインセンサ900は、フィルタ913を透過したX線を受ける。これにより、フィルタ913を設けることでX線の線量が低下し、これに起因してS/N比が低下した場合でも、2つのラインセンサ900の画像データを加算することにより、S/N比を向上することができる。
【0076】
図15は3つ以上のラインセンサ900を配設した例を示す図である。図15に示すように、3つ以上の例として、4つのラインセンサ900をそれぞれ平行に配設する。これにより、より多くの加算処理を実行できるとともに、より多種の解像度の画像を一度に得ることができる。
【0077】
このように、図7〜図15のようなラインセンサ900の配設方法を採用することにより、高解像度な画像を得ることができるとともにS/N比も向上できる。したがって、高解像度な画像を用いて小さな異物を検出することができ、S/N比が向上された画像を用いて大きな異物を検出することができる。
【0078】
なお、図7〜図15のラインセンサ900をX線撮像装置に搭載することもできるし、X線異物検出装置に搭載することもできる。前者によれば、より鮮明なX線画像を得ることができ、後者によれば、より高精度な異物検出を行うことができる。
【0079】
ところで、直接検出型のラインセンサは、間接検出型のラインセンサに比べて、画像のボケが少ないという特徴があり、フォトダイオードサイズ(画素サイズ)を小さくすることで非常に高精細な画像を得ることができる。さらに、直接検出型のラインセンサにバイアス電圧を印加することで、よりボケの少ない画像を得ることができる。
【0080】
しかしながら、フォトダイオードサイズを小さくすると、入射するX線量が減少し、暗い画像またはノイズの多い画像になってしまう傾向がある。
【0081】
そこで、図16に示すように、放射線検出素子としてCdTeまたはCdZnTeを含んでなるX線検出器923上に蛍光体922を貼り付ける。なお、X線検出器923にはバイアス電圧が印加される。放射線検出素子のCdTeおよびCdZnTeは、X線以外の光に感度を有することが多い。
【0082】
上記構成において、X線源920から照射され、被検査物921を透過したX線は、蛍光体922により可視光に変換される。変換後の可視光はX線検出器923で検出される。
【0083】
このように、X線を蛍光体922で低エネルギーの光に変換することにより、光子数を増加させることができ、X線検出器923の出力が増大することが見込める。また、光子数の増加は統計的効果からノイズ低減に寄与する場合が多い。これにより、鮮明な画像を得ることができるとともに、ノイズを抑制できる。
【0084】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0085】
100 X線検査装置
210 X線
220 ラインセンサ
220a 第1X線センサ
220b 第2X線センサ
223 第1X線センサの検出部
224 変換層
225 第2X線センサの検出部
250 調整部
900 被検査物
KR1、KR2 検出波長領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の検査を行うX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の形状を認識したり、物品の異物の有無を検出するX線検査装置等が使用されている。これらのX線検査装置に関して、日々研究開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、X線を検出するセンサが開示されている。このセンサは、形状可変な基板、下部電極、光電変換素子となる半導体層、上部電極およびシンチレータから構成される。上記の半導体層は、例えば、In-Ga-Zn-Oを少なくとも含む非晶質酸化物等で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−165530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今のX線検査装置には、異物検査機能以外の機能も併せて求められる。これは、工場等の検査ラインでは、内容量、個数、シール不良、欠品数、被検査物の周長および特定物質の確認など、多岐にわたる検査を実施する必要があるためである。これらの検査性能を左右する要素例として、以下の検出器および検出方法の種類が挙げられる。
【0006】
X線撮像システムにおいて利用されるX線検出器には、X線を光に変換するシンチレータおよび蛍光板が貼り付けられたフォトダイオードアレイを有する間接型検出器と、X線に反応して半導体中に電荷を生じる直接型検出器とがある。概ね、間接型検出器はS/N(signal-to-noise)特性に優れ、直接型検出器は解像度に優れる。
【0007】
また、検出方法として、特定異物を効率よく検査するためのエネルギーサブトラクション法がある。他にも、管電圧を変更して2度撮像する2ショット法、および管電圧を固定し、同一検出器にフィルタを挿入したり、同一フォトダイオードにエネルギー感度特性の異なる蛍光板を貼り付けて検出器の感度特性を変化させる1ショット法等がある。特に、1ショット法では、フィルタまたは蛍光板の選定如何で検査性能が決まるが、制約が多いわりに有効な感度差を導くことが困難な場合が多い。また、X線源に対して垂直に並べられる上下段撮像方式は、下段のセンサ出力を確保することが難しく、画像劣化が起こり、検出感度が低下してしまう場合が多い。
【0008】
例えば、食品用のX線検査装置においては、解像度、S/N特性およびコントラスト特性が検査性能に直結し、いずれも欠かせない要素である。しかしながら、これらの要素は、材料特性によって決まることが多く、全ての要素を満たすのは難しい。例えば、検査現場での検査確実性および誤検査防止のためにS/N特性を優先すると、解像度が犠牲になる。その結果、微小異物を検出することが難しくなる。このように、従来のX線検出装置では、高解像度かつS/N特性に優れた画像を得ることができず、多機能な検査を実施することができない。
【0009】
本発明の目的は、高解像度かつS/N特性に優れた画像に基づいて物品の検査を行うことができるX線検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)一の局面に従うX線検査装置は、物品を透過した透過X線に基づくX線画像にて物品の検査を行うX線検査装置であって、主に可視光を検出する検出部を有する第1X線センサと、透過X線を光に変換する変換層と当該変換層からの可視光を主に検出する検出部とを有する第2X線センサと、を備え、第1X線センサからの検出と第2X線センサからの検出とを切り替えて、または、両方のX線センサからの検出に基づき物品の検査を行うものである。
【0011】
一の局面に従うX線検査装置においては、第1X線センサの検出部により主に可視光が検出されるとともにX線が検出される。また、第2X線センサの変換層により透過X線が光に変換される。第2X線センサの検出部により上記変換層からの可視光が主に検出される。そして、第1X線センサからの検出と第2X線センサからの検出とを切り替えて、または、両方のX線センサからの検出に基づき物品の検査が行われる。
【0012】
解像度とS/N比とは相反する関係にあり、高解像度ほど受光線量が減少するためS/N比が低下してしまう。線質を変えるために、フィルタを使用すると、線量が低下するためS/N比も低下する。すなわち、解像度およびS/N特性のうち一方を優先すれば、他方が犠牲となる。例えば、検査現場での検査確実性および誤検査防止のためにS/N特性を優先すると、解像度が犠牲になる。その結果、微小異物を検出することが難しくなる。
【0013】
このX線検査装置によれば、第1X線センサにより検出されたX線が直接電荷に変換されるので、第1X線センサの出力に基づく画像はコントラスト特性および解像度が優れる。また、第2X線センサの変換層によりX線が光に変換されて増幅されるので、第2X線センサの出力はS/N特性が優れる。
【0014】
このような第1X線センサからの出力と第2X線センサからの出力とを検査に応じて切り替えることにより、第1X線センサの出力を用いて例えば包装材の状態の認識および被検査物の淡部領域における異物検出等を高精度で行うことができる。また、第2X線センサからの出力を用いて被検査物の異物検出を安定して行うことができる。さらに、両方のX線センサからの出力に基づき高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を行うことができる。
【0015】
(2)第1X線センサおよび前記第2X線センサは、互いに水平に並んで配設されてもよい。
【0016】
この場合、第1X線センサおよび第2X線センサが互いに水平に並んで配設されることにより、第1X線センサおよび第2X線センサは透過X線を直接受けることができる。それにより、第1X線センサによる検出および第2X線センサによる検出の信頼性を向上できる。
【0017】
(3)第1X線センサは、第2X線センサの上方に配設されてもよい。
【0018】
この場合、本構成とは逆に、第1X線センサの上方に第2X線センサを配設すると、当該第2X線センサの変換層によってX線が光に変換される割合が大きくなり、下方に配設された第1X線センサはX線をほとんど検出できない。
【0019】
したがって、第1X線センサを第2X線センサの上方に配設することにより、当該第1X線センサによる検出に基づいて高解像度な画像を得ることができるとともに、第2X線センサの出力を低下させることなく、当該第2X線センサによる検出に基づいてS/N特性の優れた画像を得ることができる。また、省スペース化のため、第1X線センサおよび第2X線センサを水平に配設することが困難な場合に、本構成は有益である。
【0020】
(4)第1X線センサの検出部と第2X線センサの検出部とは同種材料により形成されることが好ましい。
【0021】
この場合、第1X線センサの検出部と第2X線センサの検出部とが同種材料により形成されることによって、第1X線センサにおいてコストアップを防止できる。すなわち、第2X線センサから変換層を除くだけで第1X線センサの検出部を得ることができるので、著しく安価である。
【0022】
(5)X線検査装置は、第1X線センサおよび第2X線センサは、少なくとも異なる検出波長領域を有し、透過X線の波長に応じて、第1Xセンサおよび第2X線センサの検出結果の重みを調整する調整部をさらに備えてもよい。
【0023】
この場合、透過X線の波長に応じて、調整部により第1Xセンサおよび第2X線センサの検出結果の重みが調整される。X線源の出力を変えることにより当該X線源から照射されるX線の波長が変わる。X線源の出力を上げると照射されるX線の波長は短くなり、当該出力を下げると照射されるX線の波長は長くなる。第1X線センサと第2X線センサとは少なくとも異なる検出波長領域を有する。したがって、調整部により検出結果の重みを調整することで、第1X線センサおよび第2X線センサの検出結果の一方だけを用いたり、または両方を用いることもできる。これにより、高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るX線検査装置によれば、高解像度かつS/N特性に優れた画像に基づいて物品の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係るX線検査装置の一例を示す模式的外観図である。
【図2】本実施形態に係るX線検査装置の内部構造の一例を示す模式図である。
【図3】X線検査装置において画像処理に関わる構成部を示すブロック図である。
【図4】図2のラインセンサの簡単な構成を示す側面図である。
【図5】図3の調整部による重み調整を説明するための説明図である。
【図6】ラインセンサの配設の他例を示す側面図である。
【図7】他例に係るラインセンサの基本構成の例を示す斜視図である。
【図8】2つのラインセンサの構造の一例を示す図である。
【図9】2つのラインセンサの配設の一例を示す斜視図である。
【図10】2つのラインセンサの配設の他例を示す図である。
【図11】2つのラインセンサの配設の他例を示す図である。
【図12】2つのラインセンサの配設の他例を示す図である。
【図13】互いに異なる解像度を有するラインセンサの配設の例を示す図である。
【図14】図12の2つのラインセンサの構成にフィルタを設けた例を示す図である。
【図15】3つ以上のラインセンサを配設した例を示す図である。
【図16】X線検出器上に蛍光体を貼り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るX線検査装置について図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は本実施形態に係るX線検査装置100の一例を示す模式的外観図であり、図2は本実施形態に係るX線検査装置100の内部構造の一例を示す模式図である。
【0028】
図1に示すように、X線検査装置100には、その内部にX線検査室300が形成されている。このX線検査室300内にはX線照射装置200が内蔵されている。X線検査室300を貫通するように、ベルトコンベア800が設けられている。
【0029】
X線検査室300の開口部からのX線の漏洩を防止するX線漏洩防止カーテン500が設けられている。また、X線検査装置100には、作業者が操作するためのタッチパネル形式の入力表示部MTが設けられている。作業者は、入力表示部MTを操作することによりX線検査装置100を駆動させる。
【0030】
作業者は、ベルトコンベア800上に被検査物900(図2参照)を載置する。ベルトコンベア800上に載置された被検査物900について、X線検査室300内において異物検査等が行われる。以下、X線検査室300の内部構造について説明する。
【0031】
図2に示すように、X線検査室300は、X線照射装置200、ラインセンサ220、X線漏洩防止カーテン500、およびベルトコンベア800を主として備える。ラインセンサ220の詳細については後述する。X線漏洩防止カーテン500は、X線検査室300の入口側のX線漏洩防止カーテン装置510および出口側のX線漏洩防止カーテン装置520により構成される。なお、図2のラインセンサ220の構成例は、後述する図4(a)または(b)の例を示したものである。
【0032】
ベルトコンベア800は、無端状のベルトが一対のローラに巻回されて構成されている。また、X線を検出するラインセンサ220は、上記ベルトコンベア800の内側に設けられる。
【0033】
図2において、ベルトコンベア800上に被検査物900が載置される。そして、ベルトコンベア800が駆動されると、被検査物900は矢印d1の方向(搬送方向)に沿って搬送される。搬送中の被検査物900は、まず、X線漏洩防止カーテン510を通過して、X線検査室300内に移動する。
【0034】
次いで、搬送中の被検査物900に対して、X線照射装置200からX線210が照射される。そして、被検査物900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。
【0035】
ラインセンサ220は、入射されたX線210に基づいて後述の検出データKDaを生成する。ラインセンサ220により生成された検出データKDaに基づいて被検査物900の異物検査等の検査が行われる。
【0036】
そして、X線検査が行われた被検査物900はベルトコンベア800により継続的に搬送されることにより、X線漏洩防止カーテン520を通過した後、X線検査室300外に移動する。その後、被検査物900は次工程へと搬送される。
【0037】
図3はX線検査装置100において画像処理に関わる構成部を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態に係るX線検査装置100は、画像処理に関わる構成部として、上述のラインセンサ220、A/Dコンバータ230および機能処理部FSを備える。機能処理部FSは情報取得部240、調整部250および検査処理部260を含む。
【0038】
機能処理部FSの各構成部は、CPU(中央演算処理装置)がRAM(Random Access Memory)またはROM(Read-Only Memory)に格納されている処理プログラムを実行することによって機能的に実現される。このような処理プログラムは、当該処理プログラムが記録されたCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体からインストールすることが可能であるし、ネットワークを介してサーバからダウンロードすることも可能である。
【0039】
最初に、被検査物900を透過したX線210がラインセンサ220に入射される。ラインセンサ220は、X線210に基づいてアナログデータである検出データKDaを生成する。A/Dコンバータ230は、検出データKDaをデジタルデータである検出データKDdに変換する。
【0040】
情報取得部240は、上記の検出データKDdに基づいて被検査物900の濃淡情報を取得する。調整部250は、X線210の波長に応じて、後述の第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bの検出データの重みを調整する。詳細については後述する。
【0041】
検査処理部260は、調整部250により重みが調整された検出データに基づいて、被検査物900内に異物が存在するか否かについての異物検査等の検査を行う。そして、検査処理部260の判断結果によって、警告装置(図示せず)により警告音が発せられる等の処理が行われる。その他、表示装置、異物除去装置または異物混入商品区分け装置等が上記検査処理部260の判断結果を用いて処理を行ってもよい。
【0042】
図4は図2のラインセンサ220の簡単な構成を示す側面図である。図4(a)に示すように、第1X線センサ220aは、フォトダイオードで構成され、例えばSi(珪素)を含んでなる検出部223を有する。当該検出部223は主に可視光を検出するとともにX線210を検出する。第1X線センサ220aは、検出したX線210を直接電荷に変換する。なお、検出部223の厚みは、0.04mm以上であることが好ましい。この場合、検出部223の厚みが0.04mm以上であることにより、検出するX線の波長が長い場合(換言すれば、X線のエネルギーが低い場合)でも、第1X線センサ220aの出力を高くすることができる。
【0043】
また、第2X線センサ220bは、シンチレータ221およびフォトダイオード222から構成される。シンチレータ221は、検出したX線210を光に変換する変換層224を備える。また、フォトダイオード222は、第1X線センサ220aと同様に、Siを含んでなる検出部225を備える。フォトダイオード222において検出部225により可視光が主に検出され、当該可視光が電荷に変換される。なお、シンチレータ221の変換層224は、例えばGOS(硫化ガドリニウム)を含んでなる。
【0044】
第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは、互いに水平に並んで配設される。なお、図4(a)の例では、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとが1つのパッケージ226に含まれる。
【0045】
第1X線センサ220aの検出部223と第2X線センサ220bの変換層224とは、少なくとも異なる検出波長領域を有している。例えば、第2X線センサ220bの変換層224は、波長が長いX線、換言するとエネルギーが低いX線に反応する。よって、第2X線センサ220bの検出結果を用いることが必要な検査を行う場合には、変換層224が検出し得る長い波長のX線を照射するために、X線照射装置200の出力を、検査精度に影響がない範囲内で下げる。なお、X線照射装置200の出力を上げると照射されるX線の波長は短くなり、当該出力を下げると照射されるX線の波長は長くなる。
【0046】
また、ラインセンサ220の構成が次のようなものであってもよい。図4(b)に示すように、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとが、それぞれ別のパッケージ227、228に含まれる。この場合にも、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは、互いに水平に並んで配設される。その他の構成は、図4(a)と同じである。
【0047】
また、ラインセンサ220の構成がさらに次のようなものであってもよい。図4(c)に示すように、第1X線センサ220aが第2X線センサ220bの上方に配設される。第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは1つのパッケージ229に含まれる。その他の構成は、図4(a)と同じである。
【0048】
図5は図3の調整部250による重み調整を説明するための説明図である。図5(a)に示すように、例えば、第1X線センサ220aの検出部223の検出波長領域KR1は、比較的波長の短いX線を対象とし、逆に、第2X線センサ220bの変換層224の検出波長領域KR2は、比較的波長の長いX線を対象とする。なお、検出波長領域KR1と検出波長領域KR2とは一部重複する。
【0049】
X線照射装置200により照射されるX線210が、例えば波長領域HR1を有する場合には、第2X線センサ220bが当該X線210を検出できる。この場合、調整部250(図3)により、第1X線センサ220aの検出データおよび第2X線センサ220bの検出データが、それぞれ0%および100%のように重み付けられる。したがって、検査処理部260(図3)は、第2X線センサ220bの検出データのみ用いて検査を行う。
【0050】
一方、図5(b)に示すように、X線照射装置200により照射されるX線210が、例えば波長領域HR2を有する場合には、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bが共に当該X線210を検出できる。この場合、調整部250により、第1X線センサ220aの検出データおよび第2X線センサ220bの検出データが、それぞれ適宜重み付けられる。したがって、検査処理部260は、第1X線センサ220aの検出データおよび第2X線センサ220bの検出データを用いて検査を行う。
【0051】
<本実施形態における効果>
一般に、解像度とS/N比とは相反する関係にあり、高解像度ほど受光線量が減少するためS/N比が低下してしまう。線質を変えるために、フィルタを使用すると、線量が低下するためS/N比も低下する。すなわち、解像度およびS/N特性のうち一方を優先すれば、他方が犠牲となる。例えば、検査現場での検査確実性および誤検査防止のためにS/N特性を優先すると、解像度が犠牲になる。その結果、微小異物を検出することが難しくなる。
【0052】
本実施形態に係るX線検査装置100によれば、第1X線センサ220aの検出部223により検出されたX線が直接電荷に変換されるので、第1X線センサ220aの出力に基づく画像はコントラスト特性および解像度が優れる。また、第2X線センサ220bの変換層224によりX線が光に変換されて増幅されるので、第2X線センサ220bの出力はS/N特性が優れる。
【0053】
このような第1X線センサ220aからの出力と第2X線センサ220bからの出力とを検査に応じて切り替えることにより、第1X線センサ220aの出力を用いて例えば包装材の状態の認識および被検査物900の淡部領域における異物検出等を高精度で行うことができる。また、第2X線センサ220bからの出力を用いて被検査物900の異物検出を安定して行うことができる。さらに、両方のX線センサ220a、220bからの出力に基づき高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bが互いに水平に並んで配設されることにより、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bはX線を直接受けることができる。それにより、第1X線センサ220aによる検出および第2X線センサ220bによる検出の信頼性を向上できる。
【0055】
また、本実施形態に係る構成とは逆に、第1X線センサ220aの上方に第2X線センサ220bを配設すると、当該第2X線センサ220bの変換層224によってX線が光に変換される割合が大きくなり、下方に配設された第1X線センサ220aはX線をほとんど検出できない。
【0056】
したがって、本実施形態のように、第1X線センサ220aを第2X線センサ220bの上方に配設することにより、当該第1X線センサ220aによる検出に基づいて高解像度な画像を得ることができるとともに、第2X線センサ220bの出力を低下させることなく、当該第2X線センサ220bによる検出に基づいてS/N特性の優れた画像を得ることができる。また、省スペース化のため、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bを水平に配設することが困難な場合に、本例の構成は有益である。
【0057】
また、本実施形態では、第1X線センサ220aの検出部223と第2X線センサ220bの検出部225とが同材料(本実施形態では、Si)により形成されることによって、第1X線センサ220aにおいてコストアップを防止できる。すなわち、第2X線センサ220bからシンチレータ221を除くだけで第1X線センサ220aを得ることができるので、著しく安価である。
【0058】
さらに、本実施形態では、第1X線センサ220aと第2X線センサ220bとは少なくとも異なる検出波長領域を有するので、調整部250により検出結果の重みを調整することで、第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bの検出結果の一方だけを用いたり、または両方を用いることもできる。これにより、高解像度およびS/N特性に優れた多機能な検査を容易に実現できる。
【0059】
<請求項の各構成要素と上記実施形態の各構成部との対応関係>
上記実施形態においては、X線検査装置100がX線検査装置に相当し、X線210が透過X線に相当し、第1X線センサ220aが第1X線センサに相当し、第2X線センサ220bが第2X線センサに相当し、被検査物900が物品に相当し、検出部223が第1X線センサの検出部に相当し、変換層224が変換層に相当し、検出部225が第2X線センサの検出部に相当し、検出波長領域KR1、KR2が検出波長領域に相当し、調整部250が調整部に相当する。
【0060】
<変形例>
なお、上記実施形態では、第1X線センサ220aの検出部223および第2X線センサ220bの検出部225の構成材料として同じSiを用いたが、これに限定されるものではなく、例えばCdTe(カドミウムテルリド)等の他の構成材料を用いてもよい。但し、本実施形態のように、Siを用いる方が低コストである。
【0061】
また、次のようにセンサを構成してもよい。図6(a)に示すように、2つの第1X線センサ220aおよび第2X線センサ220bを、互いに水平に並べて配設してもよい。また、図6(b)に示すように、第1X線センサ220aおよび2つの第2X線センサ220bを、互いに水平に並べて配設してもよい。さらに、4つ以上のX線センサを配設してもよい。
【0062】
ここで、上でも述べたが、解像度とS/N比とは相反する関係にあり、高解像度ほど受光線量が減少するためS/N比が低下してしまう。線質を変えるために、フィルタを使用すると、線量が低下するためS/N比も低下する。したがって、低下したS/N比を向上する仕組みが必要となる。
【0063】
その解決策の一つとして、従来、エリアセンサを使用したTDI(Time Delay and Integration)処理およびラミノグラフィが利用されているが、エリアセンサはラインセンサに比べて非常に大きなコストアップを伴ってしまう。TDI処理は、例えば受光素子の配列方向の直交方向に光学走査を行い、複数の受光素子の各々から取り出された電気信号を対応するアンプで増幅してさらに遅延した後、対応する受光素子同士の出力信号を加算合成する。これにより、被検査物の同一走査地点での信号が各々加算合成されて大レベルになるのに対して、ノイズはランダムな変化をするので上記加算によっても大レベルとはならないから、全体としてS/N比が改善された信号を得ることができる。また、ラミノグラフィは、被検査物の所望検査面での断層像を検出する技術である。当該技術は、X線源、被検査物、検出器の3要素のうち、2要素を同期させて動かすことにより、複数の異なる透視画像を得るものである。この複数の透視画像に基づいて、被検査物における所望検査面以外の像を排除し、所望検査面での像のみを選別して検出できる。
【0064】
微細な構造を検査する際には高解像度なラインセンサを使用するのが好ましいが、比較的大きな構造を検査する際には低解像度でも高いS/N比を有することが好ましい。しかしながら、一つのラインセンサの解像度は1種しかないため、高解像度および高いS/N比を実現することができない。また、エリアセンサを使用すると大きなコストアップを伴ってしまう。
【0065】
そこで、以下のように、2つのラインセンサを配設する。当該2つのラインセンサにより2種の解像度の画像を得ることによって、異物の大きさに応じた検査が可能となる。
【0066】
まず、一つのラインセンサの構成について説明する。図7はラインセンサ900の基本構成の例を示す斜視図である。図7に示すように、ラインセンサ900においては、平板状のセンサ基材901上に複数の受光素子902が設けられる。これらの受光素子902には半導体チップ904が電気的に接続される。半導体チップ904は、配線906を介してコネクタ905に接続される。コネクタ905には信号線907が接続される。
【0067】
図8は2つのラインセンサ900の構造の一例を示す図である。図8(a)は上面図であり、(b)は側面図であり、以下の図も同様とする。なお、図7と同様の符号については一部省略しており、以下の図も同様とする。
【0068】
図8(a)、(b)に示すように、2つのラインセンサ900が平行に配置される。そして、各々のラインセンサ900において複数の受光素子902の一端面がセンサ基材901の一端面に揃うようにこれらが配設される。これにより、各受光素子902を直近に配置することができ、2つのラインセンサ900の検出データに基づく画像のずれを抑制できる。
【0069】
図9は2つのラインセンサ900の配設の一例を示す斜視図である。図9に示すように、各ラインセンサ900は互いに間隔を空けて対向するようにそれぞれ配設される。これにより、構造的に2つのラインセンサ900を近接して配設しやすくなる。
【0070】
図10は2つのラインセンサ900の配設の他例を示す図である。図10に示すように、上下両側の各受光素子902が接するように、2つのラインセンサ900はそれぞれ配設される。これにより、2つのラインセンサ900の検出データに基づく画像のずれを抑制できる。
【0071】
図11は2つのラインセンサ900の配設の他例を示す図である。図11に示すように、上下両側の各受光素子902間に絶縁材910を挟んで、2つのラインセンサ900がそれぞれ配設される。これにより、上下両側の各受光素子902が電気的に短絡することなく、2つのラインセンサ900の検出データに基づく画像のずれを抑制できる。
【0072】
図12は2つのラインセンサ900の配設の他例を示す図である。図12に示すように、各ラインセンサ900は互いに間隔を空けて対向するようにそれぞれ配設される。また、各ラインセンサ900の各受光素子902上には蛍光体(増感紙)912が貼り付けられる。各蛍光体912の間には、可視光を遮断する隔壁911が設けられる。これにより、近接した各受光素子902同士が互いに干渉し合うことを抑制できる。
【0073】
図13は互いに異なる解像度を有するラインセンサ900、901の配設の例を示す図である。図13に示すように、ラインセンサ901の構成が、ラインセンサ900の構成と異なる点は、受光素子902の代わりに、当該受光素子902の解像度と異なる解像度を有する受光素子902aを、受光素子902の半数設ける点である。なお、受光素子902aの方が受光素子902よりも解像度が高い。
【0074】
これにより、高解像度画像と低解像度ではあるが高いS/N比の画像とが得られるとともに、微細構造に適した画像と粗い構造に適した画像とを一度に得られる。
【0075】
図14は図12の2つのラインセンサ900の構成にフィルタ913を設けた例を示す図である。図14に示すように、図12の2つのラインセンサ900の上方にフィルタ913を設ける。2つのラインセンサ900は、フィルタ913を透過したX線を受ける。これにより、フィルタ913を設けることでX線の線量が低下し、これに起因してS/N比が低下した場合でも、2つのラインセンサ900の画像データを加算することにより、S/N比を向上することができる。
【0076】
図15は3つ以上のラインセンサ900を配設した例を示す図である。図15に示すように、3つ以上の例として、4つのラインセンサ900をそれぞれ平行に配設する。これにより、より多くの加算処理を実行できるとともに、より多種の解像度の画像を一度に得ることができる。
【0077】
このように、図7〜図15のようなラインセンサ900の配設方法を採用することにより、高解像度な画像を得ることができるとともにS/N比も向上できる。したがって、高解像度な画像を用いて小さな異物を検出することができ、S/N比が向上された画像を用いて大きな異物を検出することができる。
【0078】
なお、図7〜図15のラインセンサ900をX線撮像装置に搭載することもできるし、X線異物検出装置に搭載することもできる。前者によれば、より鮮明なX線画像を得ることができ、後者によれば、より高精度な異物検出を行うことができる。
【0079】
ところで、直接検出型のラインセンサは、間接検出型のラインセンサに比べて、画像のボケが少ないという特徴があり、フォトダイオードサイズ(画素サイズ)を小さくすることで非常に高精細な画像を得ることができる。さらに、直接検出型のラインセンサにバイアス電圧を印加することで、よりボケの少ない画像を得ることができる。
【0080】
しかしながら、フォトダイオードサイズを小さくすると、入射するX線量が減少し、暗い画像またはノイズの多い画像になってしまう傾向がある。
【0081】
そこで、図16に示すように、放射線検出素子としてCdTeまたはCdZnTeを含んでなるX線検出器923上に蛍光体922を貼り付ける。なお、X線検出器923にはバイアス電圧が印加される。放射線検出素子のCdTeおよびCdZnTeは、X線以外の光に感度を有することが多い。
【0082】
上記構成において、X線源920から照射され、被検査物921を透過したX線は、蛍光体922により可視光に変換される。変換後の可視光はX線検出器923で検出される。
【0083】
このように、X線を蛍光体922で低エネルギーの光に変換することにより、光子数を増加させることができ、X線検出器923の出力が増大することが見込める。また、光子数の増加は統計的効果からノイズ低減に寄与する場合が多い。これにより、鮮明な画像を得ることができるとともに、ノイズを抑制できる。
【0084】
さらに、本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0085】
100 X線検査装置
210 X線
220 ラインセンサ
220a 第1X線センサ
220b 第2X線センサ
223 第1X線センサの検出部
224 変換層
225 第2X線センサの検出部
250 調整部
900 被検査物
KR1、KR2 検出波長領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を透過した透過X線に基づくX線画像にて物品の検査を行うX線検査装置であって、
主に可視光を検出する検出部を有する第1X線センサと、
前記透過X線を光に変換する変換層と当該変換層からの可視光を主に検出する検出部とを有する第2X線センサと、を備え、
前記第1X線センサからの検出と前記第2X線センサからの検出とを切り替えて、または、両方のX線センサからの検出に基づき物品の検査を行う、X線検査装置。
【請求項2】
前記第1X線センサおよび前記第2X線センサは、互いに水平に並んで配設される、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記第1X線センサは、前記第2X線センサの上方に配設される、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記第1X線センサの検出部と前記第2X線センサの検出部とは同種材料により形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記第1X線センサおよび前記第2X線センサは、少なくとも異なる検出波長領域を有し、
前記透過X線の波長に応じて、前記第1Xセンサおよび前記第2X線センサの検出結果の重みを調整する調整部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項1】
物品を透過した透過X線に基づくX線画像にて物品の検査を行うX線検査装置であって、
主に可視光を検出する検出部を有する第1X線センサと、
前記透過X線を光に変換する変換層と当該変換層からの可視光を主に検出する検出部とを有する第2X線センサと、を備え、
前記第1X線センサからの検出と前記第2X線センサからの検出とを切り替えて、または、両方のX線センサからの検出に基づき物品の検査を行う、X線検査装置。
【請求項2】
前記第1X線センサおよび前記第2X線センサは、互いに水平に並んで配設される、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記第1X線センサは、前記第2X線センサの上方に配設される、請求項1記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記第1X線センサの検出部と前記第2X線センサの検出部とは同種材料により形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記第1X線センサおよび前記第2X線センサは、少なくとも異なる検出波長領域を有し、
前記透過X線の波長に応じて、前記第1Xセンサおよび前記第2X線センサの検出結果の重みを調整する調整部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−145073(P2011−145073A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3606(P2010−3606)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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