X線画像システム
【課題】低線量の撮影であっても高画質のX線画像を出力することができるX線画像システムを提供する。
【解決手段】撮影装置10bは、被写体Wと画像検出器6とを離間せしめてX線源2より15〜30(keV)のX線エネルギーのX線を照射し、位相コントラスト撮影を行う。その後、読取装置10dにおいて画像検出器6により検出されたX線画像のデータが生成されると、画像処理装置30では、前記生成されたX線画像に対し、ノイズ低減処理を含む画像処理を施す。処理後のX線画像はフィルム出力装置50aによりフィルムに出力されるか、或いは読影装置50cにより表示出力される。
【解決手段】撮影装置10bは、被写体Wと画像検出器6とを離間せしめてX線源2より15〜30(keV)のX線エネルギーのX線を照射し、位相コントラスト撮影を行う。その後、読取装置10dにおいて画像検出器6により検出されたX線画像のデータが生成されると、画像処理装置30では、前記生成されたX線画像に対し、ノイズ低減処理を含む画像処理を施す。処理後のX線画像はフィルム出力装置50aによりフィルムに出力されるか、或いは読影装置50cにより表示出力される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影によりX線画像のデータを生成し、出力するX線画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新生児や乳児等(以下、小児等という)は、成人と異なり、ほとんどの骨髄が赤色骨髄であるため、被曝による影響が大きい。よって、成人以上に被曝量の低減化が要求され、小児等のX線撮影を行う際には被曝量を最小限に抑えるため、撮影条件を調整しX線照射量の低減を図ることが必要である。
【0003】
低線量による撮影により得られたX線画像は、信号値が全体的に低下するため、ノイズが増加する。従来は、得られたX線画像に対し、ノイズ除去処理、或いはノイズ低減処理等を施して対応していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−125153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低線量による撮影を行ったX線画像にノイズ低減処理を施すと、ある程度の効果は得られて見やすい画質とはなるが、ノイズ除去の影響で鮮明性が低下することとなる(ノイズ除去により本来の信号部分が減弱してしまうためである)。そのため、部位の境界部分等が不鮮明となり、診断への利用性が低くなる。このような問題を回避するため、撮影時のX線量を十分に減らすことができず、結果として被曝量の十分な低減化を図ることが難しい状況であった。
【0005】
本発明の課題は、低線量の撮影であっても高画質のX線画像を出力することができるX線画像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、X線画像システムにおいて、
被写体に向けてX線を照射するX線源と、前記被写体を透過したX線を検出する画像検出器とを有し、前記被写体と画像検出器とを離間せしめて、X線源から15〜30(keV)のX線エネルギーのX線を前記被写体に照射し、位相コントラスト撮影を行う撮影手段と、
前記位相コントラスト撮影によるX線画像のデータを生成する画像生成手段と、
前記生成されたX線画像に対し、ノイズ低減処理を含む画像処理を施す画像処理手段と、
前記画像処理が施された処理画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線画像システムにおいて、
前記X線源の焦点径は、30〜200(μm)とすることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のX線画像システムにおいて、
前記X線源の焦点径は、50〜120(μm)とすることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のX線画像システムにおいて、 前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.2≦M≦5とすることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のX線画像システムにおいて、
前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.5≦M≦3とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システムにおいて、
前記画像処理には、前記X線画像のコントラストを変更する階調変換処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に階調変換処理を施した後、前記ノイズ低減処理を施して処理画像を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システムにおいて、
前記画像処理には、前記X線画像の階調を反転する階調反転処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に前記ノイズ低減処理を施した後、前記階調反転処理を施して処理画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜5に記載の発明によれば、位相コントラスト撮影によってX線画像を得てこれにノイズ低減処理を施す。位相コントラスト撮影により得られるX線画像は被写体組織の辺縁等がエッジ強調されているため、ノイズ低減処理においてノイズ成分と区別してエッジ成分を抽出しやすく、エッジ強調及びノイズ抑制を精度良く行うことができる。すなわち、鮮明で高画質な処理画像を得ることができるため、小児用の撮影において撮影時のX線量を低線量としても読影に十分な画質のX線画像を得ることができる。よって、小児等を撮影対象とする場合には被曝量を最小限に抑えることが可能となる。さらに、位相コントラスト効果で元画像自体が鮮明になるので、ノイズ低減処理の影響で元画像に比べてややボケたとしても、ノイズ低減後の画像は依然として鮮明性が高い。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、階調変換処理とノイズ低減処理を組み合わせることにより、エッジ強調、ノイズ抑制を行うだけでなく、コントラストや濃度範囲も調整することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、階調反転処理とノイズ低減処理を組み合わせることにより、エッジ強調、ノイズ抑制を行うだけでなく、階調反転により画像中の構造物の視認性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態では、位相コントラスト撮影により辺縁部の鮮鋭性が高いX線画像を得、当該X線画像にノイズ低減処理を施すことにより、低線量下でも高画質のX線画像を提供することが可能なX線画像システムの例を説明する。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1に、本実施形態におけるX線画像システム1のシステム構成を示す。
図1に示すように、X線画像システム1は撮影装置10a〜10c、読取装置10d、制御サーバ20、画像処理装置30、画像サーバ40、フィルム出力装置50a、読影装置50b、50cを備えて構成されている。各装置はネットワークNを介して相互に通信可能に構成されている。
【0018】
X線画像システム1は、撮影装置10a〜10c、或いは読取装置10dにおいてX線撮影により生成したX線画像のデータに対し、画像処理装置30により各種画像処理を施して処理画像を生成し、これをフィルム出力装置50a又は読影装置50b、50cにより出力するものである。
なお、図1はシステム構成の一例であり、これに限定されない。必要に応じて装置台数の変更、他の装置の追加等、適宜構成すればよい。
【0019】
撮影装置10a〜10cは、X線撮影及び/又はX線画像のデータ生成を行うものである。撮影装置10aは一般撮影用のCR(Computed Radiography)装置、撮影装置10bは小児撮影用のCR装置、撮影装置10cはマンモグラフィ用のCR装置である。撮影装置10a〜10cには、X線撮影を行うとともにX線画像のデータ生成を行うタイプのものと、可搬型の画像検出器を用いてX線撮影のみ行うタイプのものとがある。読取装置10dは、後者のタイプの撮影装置10a〜10cにおいて撮影に用いられた画像検出器からX線画像を読み取ってそのデータを生成するものである。
【0020】
制御サーバ20は、撮影装置10a〜10cによる撮影からX線画像の生成、保存、出力までのX線画像システム1における一連の処理を統括的に制御する管理装置である。制御サーバ20としては一般的なコンピュータ装置を適用可能であり、管理用のプログラムを用いて管理動作を行わせる。
【0021】
制御サーバ20は、撮影オーダ情報を用いて管理を行う。撮影オーダ情報は、撮影内容や画像の生成条件等について医師が指定した条件が示された撮影指示情報であり、図示しないHIS(Hospital Information System)やRIS(Radiology Information System
)において生成され、制御サーバ20に送信される。制御サーバ20では、この撮影オーダ情報を解析して撮影装置10a〜10cのうち、撮影内容に応じた撮影装置に撮影オーダ情報を配信する。
【0022】
制御サーバ20は、撮影装置10a〜10c又は読取装置10dにおいて生成されたX線画像の画像処理装置30への転送制御を行う。このとき、撮影オーダ情報により小児用撮影が指定されていた場合、小児用の画像処理条件により画像処理を行うことを指示する制御情報を生成し、X線画像とともに画像処理装置30へ送信する。
【0023】
画像処理装置30は、X線画像に対して各種画像処理を施してその処理画像を生成するものである。
【0024】
画像サーバ40は、大容量メモリにX線画像のデータを保存し、管理するものである。画像サーバ40は、制御サーバ20の指示に従ってフィルム出力装置50a、読影装置50b等にX線画像のデータを送信する。
【0025】
フィルム出力装置50aは、フィルム上にX線画像を形成し、出力するものである。
読影装置50b、50cは、医師がX線画像を観察するために用いられる端末装置であり、モニタ上にX線画像を表示出力する。
【0026】
次に、本発明に係る撮影装置10b、画像処理装置30について詳細に説明する。
撮影装置10bは、小児等を被写体Wとして位相コントラスト撮影を行うものである。
撮影装置10bは、図2に示すように撮影部3と撮影制御等を行う本体部4とを備えて構成されている。
撮影部3は、アーム状に形成され、本体部4を支柱として昇降可能に構成されている。撮影部3のアーム部分にはX線源2と保持部5とが対抗配置されている。保持部5は、画像検出器6を保持してその位置を固定するものである。保持部5は撮影部3の支柱部分に沿って昇降可能に構成されている。この撮影部3、保持部5を昇降させ、その高さ位置を変えることにより、撮影距離を調整することが可能である。
【0027】
本体部4は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)
、ROM(Read Only Memory)、操作部等からなるコンピュータを備えて構成されている。本体部4は、操作指示に応じて撮影部3の昇降、保持部5の昇降を制御するとともに、X線源2によるX線の照射動作を制御する。
【0028】
X線源2は、X線を発生させて被写体Wに向けて照射するものである。X線源2には小児等を撮影対象とする位相コントラスト撮影に適した焦点径D(μm)を有するX線管が用いられている。この焦点径Dは30〜200(μm)、さらには50〜120(μm)であることが好ましい。
【0029】
撮影対象の被写体Wは小児等である。小児等は保育器11に収容された状態で撮影を行い、小児等の高さ位置に合わせてX線源2及び保持器5の高さ位置を調整する。保育器11は図2に示すようにベット状の支持台上に保育用ケースが設けられたものである。
【0030】
画像検出器6は、カセッテと呼ばれる筐体内に蛍光体プレート7を収容してなるものである。蛍光体プレート7は、X線エネルギーを吸収、蓄積するX線検出器である。画像検出器6は、X線源2から照射され、被写体Wを介して到達したX線を蛍光体プレート7により検出する。その後、画像検出器6を読取装置10dに装填し、画像可視化を行う。読取装置10dは蛍光体プレート7にレーザ光等の励起光を照射し、蛍光体プレート7から出射される輝尽光を画像信号に光電変換することにより、その画像信号を生成するものである。
【0031】
なお、本実施形態ではカセッテに蛍光体プレート7を収容した画像検出器6の例を説明するが、画像検出器6としては他にFPD(Flat Panel Detector)等を適用することも
できる。
FPDは、入射したX線量に応じて電気信号を生成する変換素子がマトリクス状に配列されたプレートであり、FPD内で直接電気信号を生成する点で上記蛍光体プレート7と異なる。FPDを適用した場合、FPD内で生成された電気信号がA/D変換され、得られたデジタル画像データが本体部4に出力されることとなる。
【0032】
次に、撮影部3により行われる位相コントラスト撮影について説明する。
位相コントラスト撮影は、通常の拡大撮影とは異なり、エッジ強調作用が得られるように撮影距離やX線の照射条件等の撮影条件を調整したものである。
図3は、位相コントラスト撮影の概略を説明する図である。
一般撮影の場合、被写体Wを透過したX線を画像検出器6ですぐに受けるように被写体Wに隣接させて画像検出器6を設置する。よって、一般撮影により得られるX線画像は、ライフサイズ(被写体Wと同一サイズであることをいう)とほぼ等サイズとなる。
【0033】
一方、位相コントラスト撮影では、図3に示すように被写体Wと画像検出器6の間に距離を設ける。つまり、被写体Wと画像検出器6の間を離間せしめる。この場合、X線源2からコーンビーム状に照射されたX線は被写体Wを透過した後、なおコーンビーム状に画像検出器6に到達するため、得られるX線画像はライフサイズに比して拡大されたサイズとなる。
【0034】
このときの拡大率Mは、X線源2から被写体Wまでの距離をR1、被写体Wから画像検出器6までの距離をR2、X線源2から画像検出器6までの距離をR3(R3=R1+R2)とすると、下記式(1)により求めることができる。
M=R3/R1・・・(1)
拡大率Mは、距離R1、R2の比率を変えることにより調整が可能である。
【0035】
撮影装置10bでは、特開2001−91479号公報等に開示されているように、R1、R2、R3及び焦点径Dの設定を所定の範囲とせしめることで、被写体W辺縁のエッジ強調効果が得られる位相コントラスト撮影を行う。
特開2001−91479号公報に記載の撮影条件は、X線源2の焦点径DをD≧30とし、距離R1をR1≧(D−7)/200、好ましくは0.3〜1.0(m)とし、距離R2をR2≧0.15、好ましくは0.3〜1.0(m)とするものである。この条件により、撮影によって得られたX線画像においてエッジ強調効果を得ることが可能である。また、撮影室内の全長を考慮するとこの範囲内での撮影が好ましい。
【0036】
エッジ強調効果について説明する。
上記の位相コントラスト撮影により得られたX線画像では、図3に示すように、被写体Wの辺縁を通過することにより屈折したX線が被写体Wを介さずに通過したX線と重なり合い、重なった部分のX線強度が強くなる現象が生じる。そのため、被写体Wの辺縁内側の部分においてX線強度が弱くなる現象が生じる。これにより、被写体Wの辺縁を境にしてX線強度差が広がるエッジ強調作用(エッジ効果、位相コントラスト効果ともいう)が働き、辺縁部分が鮮鋭に描写された視認性の高いX線画像が得られることとなる。
【0037】
X線源2が点線源であるとみなした場合、辺縁部分におけるX線強度は図4の実線で示すようなものとなる。図4に示すEはエッジ強調の半値幅を示し、下記式(2)により求めることができる。半値幅Eはエッジの山−谷間の距離を示す。
【数1】
【0038】
しかし、医療現場や非破壊検査施設では、X線源2としてクーリッジX線管(熱電子X線管ともいう)が広く使用されており、このクーリッジX線管では焦点径が有る程度大きくなるため、理想的な点線源とみなすことができない。この場合、図5に示すようにエッジ強調の半値幅Eが広がり、かつ強度が低下する幾何学的不鋭の現象が生じ、図4の点線で示すようなX線強度となる。この幾何学的不鋭はボケと呼ばれる。
【0039】
ボケが生じた場合のエッジ強調の半値幅をEBとすると、EBは下記式(3)から求めることができる。
【数2】
式中、δ及びrの定義は式(2)と同じである。
また、EBはボケが無い場合のエッジ強調半値幅Eにボケの大きさを示すBを加え、EB=E+Bで示される。
上述のように、X線源の焦点径Dは小さければ小さいほど、ボケが減少し、得られるエッジ効果が大きくなる。
【0040】
小児等を撮影対象とする場合には、撮影装置10bでは小児用の撮影条件により撮影を行う。小児用の撮影条件とは、位相コントラスト撮影を行うにあたり、X線源2の焦点径Dを30〜200(μm)、好ましくは50〜120(μm)とし、拡大率Mを1.2≦M≦5、好ましくは1.5≦M≦3とし、距離R1をR1≧(D−7)/200、好ましくは0.3〜1.0(m)、距離R2をR2≧0.15、好ましくは0.3〜1.0(m)とすることである。小児等は被写体サイズが小さいため、拡大率Mは成人より大きくすることが可能である。また、X線源2がW(タングステン)管を用いている場合、管電圧は20〜50(kVp)と低電圧とし、照射するX線エネルギーを15〜30(keV)とすることが好ましい。小児の軟骨は成人と異なり、軟部組織(筋肉や脂肪等)に近い性質を持っている。よって、前述したエネルギー範囲とすることで、軟骨と軟骨周辺の軟部組織とのコントラスト(信号値差)の増加を図ることができる。
【0041】
なお、図6に示すように、撮影装置10bの撮影部3にはX線源2のみを搭載し、保育器11において被写体Wの下部に画像検出器6を保持する保持部を設けて撮影を行うこととしてもよい。この場合、被写体Wと画像検出器6との距離R2が固定されるので、拡大率MはX線源2と被写体Wとの距離R1により調整する。また、撮影装置10bを移動式のものとしてもよい。
【0042】
次に、画像処理装置30について説明する。
画像処理装置30は、図7に示すように制御部31、操作部32、表示部33、通信部34、記憶部35、画像メモリ36、画像処理部37を備えて構成されている。
【0043】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等からなり、記憶部35に記憶された各種制御プログラムをCPUにより読み出してRAMに展開し、これらプログラムに従って各種演算や各部の集中制御を行う。
【0044】
操作部32は、マウスやキーボード等を備えてこれらの操作に応じた操作信号を生成し、制御部31に出力する。
表示部33は、ディスプレイを備えて制御部31の制御に従って各種表示画面を表示する。
【0045】
通信部34は、ネットワークインターフェイスカード等の通信用インターフェイスを備え、ネットワークN上の外部装置と通信を行う。
記憶部35は、制御部31において実行される各種プログラムや画像処理部37において実行される画像処理プログラム、その実行に必要なパラメータやデータ等を記憶している。
画像メモリ36は、画像処理対象のX線画像や処理後の処理画像を保存するためのメモリである。
【0046】
画像処理部37は、画像処理プログラムに従って各種画像処理を実行する。画像処理としては、前処理として照射野認識処理、関心領域の設定を行った後、階調変換処理、階調反転処理、ノイズ低減処理等の各種画像処理を施すことが可能である。
画像処理部37は、小児用、一般撮影用と、撮影用途に合わせて画像処理条件を予め定めており、制御部31により指定された画像処理条件によって画像処理を行う。
【0047】
画像処理条件としては、施す画像処理の種類、順番、各画像処理における処理パラメータ等が定められている。
小児用の画像処理条件は、階調変換処理後にノイズ低減処理を行うことである。或いは、ノイズ低減処理後に階調反転処理を行うこととしてもよい。各画像処理で採用される小児用の処理パラメータについては、各画像処理の説明とともに以下に説明する。
【0048】
〈階調変換処理〉
階調変換処理は、画像出力時の濃度、コントラストを調整するための処理である。医師がX線画像の読影により人体構造の疾病の有無を診断する場合、X線画像上における構造物の濃度やコントラスト(階調性)に基づき疾病の有無を判断する。よって、読影に適した濃度、コントラストに調整することにより、医師の疾病の検出作業を支援することができる。
【0049】
階調変換処理は、(1)正規化処理、(2)基本LUT(ルックアップテーブル)を用いての変換処理の2段階で行い、最終的に所望の信号値範囲、階調特性となるように階調変換を行うものである。従来、撮影にはスクリーン/フィルム方式が採用されていた背景から、画像検出器を用いたデジタル処理方式が採用された現在でも、医師の読影能(診断性能)を維持するため、スクリーン/フィルム方式で培われた階調特性(コントラスト)を目標として入力信号(読取信号)の変換処理が行われている。
【0050】
スクリーン/フィルム方式で得られる階調特性は、図8に示すようにS字状の曲線CVとなる。階調変換処理では、この階調特性を示すLUTを基本LUTとして準備しておき、正規化処理により対象画像について個々の信号調整を行った後、この基本LUTを用いて信号値の変換を行う。
【0051】
図9に、画像検出器(蛍光体プレートの場合)により検出されるX線量とそのX線量に応じて最終的に出力されるX線画像の信号値との関係を示す。
図9の座標系において、第1象限は読取特性を示しており、画像検出器への到達X線量と、読取信号値(アナログ信号値)との関係を示している。また、第2象限は正規化特性を示しており、その読取信号値と、正規化処理が施された後の正規化信号値(デジタル信号値)の関係を示している。第3象限は階調変換特性を示すものであり、正規化信号値と、基本LUTにより変換された出力濃度値(デジタル濃度信号値)との関係を示している。なお、ここでは出力濃度値を0〜4095の12ビット分解能としている。
【0052】
第2象限において、正規化特性を示す直線はその傾きを変化させることにより出力値の範囲(SH−SL間の大きさ)を調整することができるとともに画像全体のコントラストを変化させることができる。この傾きをG値とする。また、階調変換特性を示す直線の切片を変化させることにより、出力値の範囲全体の高低(SH−SLの移動)を調整し、これにより画像全体の濃度を変化させることができる。この切片をS値とする。
【0053】
例えば、図9に示す直線h2と直線h3で正規化を行った場合を比較すると、G値を大きくすることで、被写体Wに対応する正規化信号値が基本LUTの直線領域に対応することとなり、コントラストが向上することとなる。
すなわち、階調変換特性を示す直線の傾きG値、切片S値を階調変換パラメータとしてこれを制御することにより、出力画像の濃度範囲、コントラストを調整することができる。
【0054】
G値は、図8に示すスクリーン/フィルム方式における階調特性曲線CVの傾きを求める下記式(4)により決定される。
G=(J2−J1)/(logE2−logE1)…(4)
ここで、
J1=0.25+Fog、J2=2.0+Fog、Fog=0.2であり、
E1、E2はそれぞれJ2、J1に対応する入射X線量である。
胸部や乳房等の人体各部位を観察対象とする場合、G値は一般に、2.5〜5.0程度のものが用いられることが多い。
【0055】
また、S値は下記式(5)により求められる。
S=QR×K1/K2…(5)
ここで、
QRは量子化領域値であり、
K1は信号値1535(QR=200、出力濃度1.2)となる到達X線量、K2は階調変換後の画像で出力濃度1.2となった画素の実際の到達X線量である。
K1の値は、撮影前の量子化領域QR値の設定で一意に決まるものである。
【0056】
〈階調反転処理〉
階調反転処理は、階調レベルに対応する濃度を反転させる処理である。例えば、最小階調0(表示濃度:黒)〜最大階調4095(表示濃度:白)である場合、これを反転させて最小階調0のとき表示濃度:白、最大階調4095のとき表示濃度:黒に割り付ける。
【0057】
〈ノイズ低減処理〉
ノイズ低減処理は、X線画像の画像信号に含まれるノイズ成分の低減を図る処理である。ここでは、ノイズが目立ちやすい低濃度部ではノイズの低減の程度を大きくし、ノイズが目立ちにくい高濃度部ではノイズの抑制の程度を小さくする例を説明する。
【0058】
ノイズ低減処理では、多重解像度分解処理、エッジ・ノイズ情報取得処理、平滑化処理、エッジ強調・ノイズ抑制処理、復元処理の各処理を順次実行する。
まず、図10を参照して多重解像度分解処理、エッジ・ノイズ情報取得処理、平滑化処理、エッジ強調・ノイズ抑制処理について説明する。図10は各処理と画像信号との関係を示す図である。
【0059】
《多重解像度分解処理》
多重解像度分解処理では、原画像信号Sinを多重解像度変換することにより複数の空間周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk′(k=1〜L(Lは1以上の整数、以下同じ))を得る。
多重解像度変換にはローパスフィルタを用いる。ローパスフィルタにより原画像信号Sinにフィルタ処理121を施し、その処理後の原画像信号Sinを1画素づつサンプリング(ダウンサンプリング)することによって、非鮮鋭画像信号g1を生成する。この非鮮鋭画像信号g1は原画像の1/4の大きさになっている。
【0060】
次いで、補間処理122によって非鮮鋭画像信号g1のサンプリング間隔毎に「0」の値の画素を補完する。この補間は、非鮮鋭画像信号g1を構成する画素の列毎及び行毎に「0」の値の画素列及び画素行を挿入することにより行う。なお、このように補間された非鮮鋭画像信号は、1画素おきに「0」の場合の画素が挿入されているため、信号値の変化が滑らかではない状態になっている。そして、このような補間の後に、ローパスフィルタによって再度フィルタリングを施し、非鮮鋭画像信号g1′を得る。この非鮮鋭画像信号g1′は、前記した補間直後の非鮮鋭画像信号に比べると信号値の変化が滑らかな状態になっている。
【0061】
この非鮮鋭画像g1′は、画像を1/4にした後に1画素おきに0の補間とフィルタリングとをすることにより原画像信号と同じ大きさとなり、また原画像信号の空間周波数の半分より高い周波数が除かれた状態となっている。
【0062】
さらに、1段階低い周波数帯域の非鮮鋭画像信号を得るため、非鮮鋭画像信号g1をフィルタ処理121する。これにより、非鮮鋭画像信号g1はさらに1画素おきにサンプリングされた1/4(もとの1/16)の大きさの非鮮鋭画像信号g2に変換される。そして、この非鮮鋭画像信号g2に対し、補間処理122を施して非鮮鋭画像信号g2′を生成する。
【0063】
このような処理を順次繰り返すことで、周波数特性の異なる第1〜第nの各周波数帯域(解像度)の非鮮鋭画像信号gk、非鮮鋭画像信号gk′を得ることができる。
【0064】
《エッジ・ノイズ情報取得処理》
エッジ・ノイズ情報取得処理は、多重解像度分解処理により取得された複数の周波数帯域のうち、何れかの周波数帯域の非鮮鋭画像信号に基づいて原画像信号Sinにおけるエッジ情報及びノイズ情報を取得するものである。ここでは、第2周波数帯域の非鮮鋭画像信号に基づいて取得する例を説明するが、基準とする周波数帯域は、画素サイズ0.5〜1.0(mm)ピッチ程度の最高周波数帯域ではない周波数帯域が好ましい。例えば画素サイズ0.175ピッチの画像でダウンサンプリング率が1/2の場合、第3周波数帯域が最も好ましい。これは30step/1〜2mm程度のエッジ信号にガウシアンノイズを付加した疑似微小エッジ像に対して0.5〜1.0mmピッチの解像度でノイズ・コントラスト比が最も高くなり、エッジが認識しやすい条件となるためである。
【0065】
まず、エッジ情報の取得方法について説明する。
エッジ情報には、エッジ成分情報Ev及びエッジ方向情報Edが含まれる。先に、エッジ成分情報Evの取得方法について説明する。
図10に示すように、まず差分処理126によって非鮮鋭画像信号g1と非鮮鋭画像信号g2′の差分画像信号M2を求める。この差分画像信号M2から比較処理127によってエッジ成分情報Evを取得する。
比較処理127では、差分画像信号M2に注目画素を設定する。当該注目画素の信号値と閾値Bh、Blとを比較し、信号値が閾値Bh以上である場合には当該注目画素は正のエッジ成分を構成すると判別し、信号値が閾値Bl以下である場合には当該注目画素は負のエッジ成分を構成すると判別する。注目画素は閾値Bh、Blはそれぞれ正のエッジ成分、負のエッジ成分を判別するために予め準備された閾値である。
【0066】
一方、信号値が閾値Bhを下回るが閾値Blを上回る場合、注目画素の隣接画素を参照し、当該隣接画素が正又は負のエッジ成分であるかを判別する。隣接画素が正又は負のエッジ成分を有する場合、注目画素はエッジ変局点であると判別する。エッジ変局点とは、エッジ成分の正負の変わり目となる信号値0付近の点であり、エッジの基準となる点である。
また、隣接画素が正又は負のエッジ成分を有していない場合、注目画素は非エッジ成分であると判別する。
【0067】
注目画素の成分を判別すると、その判別結果(正のエッジ成分、負のエッジ成分、エッジ変局点、非エッジ成分の何れか)をエッジ成分情報Evとして画素位置の情報に対応付けて記憶部35に記憶する。
以上の処理を全ての画素について繰り返して実行する。
【0068】
図11(a)は、差分画像信号M2のある一列分の画像信号を模式的に示す図である。図11(b)は、図11(a)の差分画像信号M2について得られたエッジ成分情報Evに基づき、差分画像信号M2のエッジ成分(正のエッジ成分、負のエッジ成分、エッジ変局点、非エッジ成分)を分類した模式図を示すものである。
【0069】
次に、エッジ方向情報Edの取得方法について説明する。
エッジ方向情報Edは、非鮮鋭画像信号g2′をSobelフィルタ、Prewittフィルタ等でフィルタ処理128することにより取得する。
【0070】
次に、ノイズ情報Nsの取得方法について説明する。
非鮮鋭画像信号gn−1′と非鮮鋭画像信号gn′との差分画像信号をMn(第1周波数帯域の場合、原画像信号Sinと非鮮鋭画像信号g1′との差分画像信号)とすると、ノイズ情報Nsは、例えば各周波数帯域における差分画像信号Mnでの局所的な分散値、エントロピー値情報及びその画素位置情報から取得することができる。
画像のエントロピー値Seは、ある画素が画素値zを取る確率P(z)とその画像の階調数Zを用いて下記の式(6)により求めることができる(Wiley-Interscience社刊「Digital Image Processing 3rd Edition」参照)。
【数3】
【0071】
中間周波数帯域(第2〜第nの周波数帯域)でエントロピー値が所定の値より低く、最高周波数帯域(第1周波数帯域)でエントロピーが大きい場合、その画素位置ではノイズ成分が支配的であり、その画素位置の画素をノイズ成分とすることができる。よって、ノイズ情報Nsとして当該画素がノイズ成分であることを示す情報を当該画素位置の情報に対応付けて記憶部35に記憶する。
【0072】
得られたエッジ情報Ev、Ed、ノイズ情報Nsは処理1231、1232において利用する。処理1231、1232ではエッジ情報Ev、Ed及び/又はノイズ情報Nsに基づき、原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk(k=1〜(L−1))に平滑化処理、濃度依存補正処理を施す。平滑化処理はエッジ平滑化処理、ノイズ平滑化処理に分けて施す。すなわち、処理1231はエッジ平滑化処理の後、濃度依存補正処理を施し、処理1232はノイズ平滑化処理の後、濃度依存補正処理を施す。処理1231からは処理済み信号G01、処理1232からは処理済み信号G02が出力される。
【0073】
《平滑化処理》
平滑化に用いるフィルタは、多重解像度分解処理で用いるローパスフィルタか、それに近い周波数応答のローパスフィルタであることが望ましい。図12(a)、図12(b)にそのフィルタ例を示す。図12(a)に示すフィルタ例は、多重解像度分解のダウンサンプリングを、バイノミアルフィルタリング(binomial filtering)を8回行うラプラシアンピラミッド法により行う場合に用いる2次元平滑化フィルタの例である。この平滑化フィルタには平滑化フィルタ係数(5タップ)が2次元的に設定されている。タップ数が5タップである場合、フィルタ係数F(x)は以下の式(7)、(8)で示す関数で表される。
【数4】
【0074】
一方、図12(b)に示すフィルタ例は、多重解像度分解のダウンサンプリングを、バイノミアルフィルタリングを8回行うラプラシアンピラミッド法により行う場合に用いる1次元平滑化フィルタの例である。
【0075】
まず、エッジ平滑化処理について説明する。
エッジ平滑化処理においては、記憶部35から各画素のエッジ成分情報Evを取得し、このエッジ成分情報Evに基づいて原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk(k=1〜(L−1))のそれぞれについてエッジ成分の画素を判別する。そして、原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gkにつき、エッジ成分の画素を対象として平滑化フィルタ(例えば、図12(b)参照)によりエッジ勾配方向のみに一次元的な平滑化処理を施す。これにより、主にノイズ成分と1段階低い周波数帯域の周波数成分からなる画像信号が得られる。すなわち、エッジ平滑化処理は、エッジ成分の信号強度を低減させてノイズ成分を強調した画像信号を得るものである。
【0076】
次に、ノイズ平滑化処理について説明する。
ノイズ平滑化処理においては、記憶部35から取得した各画素のエッジ成分情報Evに基づいて原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk(k=1〜(L−1))のそれぞれについて非エッジ成分、エッジ成分の画素を判別する。そして、原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gkの各画像につき、非エッジ成分の画素を対象として平滑化フィルタ(例えば、図12(a)参照)により二次元的な平滑化処理を行う。また、エッジ成分の画素については平滑化フィルタ(例えば、図12(b)参照)によりエッジ勾配方向以外の方向又はエッジ勾配方向と垂直な方向のみ一次元的な平滑化処理を施す。これにより、主にエッジ成分と1段階低い周波数帯域の周波数成分からなる画像信号のみが得られる。
【0077】
《濃度依存補正処理》
濃度依存補正処理とは、後段におけるノイズ抑制処理1241、エッジ強調処理1242において発生するアーチファクト、ノイズの発生を抑制するため、予め平滑化処理後の画像信号について補正を行っておくものである。補正は画像信号の濃度(画像信号値)によりその補正の程度が制御される。具体的には、図13に示す補正関数Rにより補正成分値を取得し、平滑化処理後に得られる画像信号値からこの補正成分値を減算する処理である。
補正関数Rは、画像信号値及びコントラストから補正成分値を求めるものである。コントラストとは、濃度依存補正処理前の隣り合う周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk同士の差分画像信号(原画像信号Sinについては最高周波数帯域の非鮮鋭画像信号g1との差分画像信号)の信号値である。なお、補正関数Rは、エッジ平滑化処理の処理信号用、ノイズ平滑化処理の処理信号用と、エッジ平滑化処理、ノイズ平滑化処理に対応してそれぞれ準備されるとともにそれぞれ周波数帯域毎に定義されている。
【0078】
このような補正を施すのは、ノイズ抑制処理1241、エッジ強調処理1242では、処理の程度を大きくするとアーチファクトの発生やノイズの増幅により逆に画質が損なわれてしまうことがあるためである。エッジ強調処理1242では、アーチファクトの発生による部分的な画質の劣化が問題となり、ノイズ抑制処理1241ではノイズ成分の増幅が問題となる。このようなアーチファクトやノイズは特に低濃度部で目立ちやすい。よって、低濃度部ではエッジ強調、ノイズ抑制の処理の程度が小さくなるように濃度依存補正処理を行っておくことが必要である。
【0079】
差分画像信号は、エッジ平滑化処理を施したものであれば主にノイズ成分からなる画像信号であり、ノイズ平滑化処理を施したものであれば主にエッジ成分からなる画像信号である。図13に示すように、補正関数Rを低濃度でかつ差分画像信号の値が0に近くなるにつれて補正成分値を大きくなるように設計することにより、低濃度部では原画像信号Sinに加算される信号成分が小さくなるように、すなわちエッジ強調・ノイズ抑制の程度が小さくなるように制御することができる。
【0080】
図14は、補正関数Rのコントラストに対する応答を表した図である。図14に示すように、補正関数Rは何れの周波数帯域においても低コントラスト部より高コントラスト部で補正の程度が大きくなることが分かる。
一方、図15は補正関数Rの濃度に対する応答を表した図である。
図15(a)はノイズ平滑化処理に対応する補正関数Rの濃度に対する応答を示す図である。図15(a)に示すように、高濃度部より低濃度部で補正の程度が大きくなっており、高濃度部に対するエッジ強調処理の程度が大きくなることが分かる。
一方、図15(b)はエッジ平滑化処理に対応する補正関数Rの濃度に対する応答を示す図である。図15(b)に示すように、低濃度部より高濃度部で補正の程度が大きくなっており、低濃度部でノイズ抑制処理の程度が大きくなることが分かる。
このように、濃度依存補正処理により、ノイズが目立ちやすい低濃度部ではノイズ抑制処理の程度を大きくするとともに、エッジ強調処理の程度を小さくするよう制御することにより、ノイズを低減させることができる。一方、ノイズが目立ちにくい高濃度部ではノイズ抑制処理の程度を小さくし、エッジ強調処理の程度を大きくするよう制御することにより、ノイズ抑制処理によるノイズ、アーチファクトの発生を低減させることができる。
【0081】
《エッジ強調・ノイズ抑制処理》
ノイズ抑制処理1241では、処理1231により得られた処理済み信号G01と非鮮鋭画像信号g1′の減算を行う。減算は各画像信号の対応する画素間で実行する。そして、減算により得られた主にノイズ成分からなる差分画像信号にノイズ抑制係数βN1を乗算し、ノイズ成分が低減された差分画像信号N0を得る。ノイズ抑制係数は周波数帯域毎に準備され、βNk(−1<βNk<0)で表される。
【0082】
同様に、エッジ強調処理1242では、処理1232により得られた処理済み信号G02と非鮮鋭画像信号g1′の減算を行う。そして、減算により得られた主にエッジ成分からなる差分画像信号にエッジ強調係数βE1を乗算し、エッジ成分が強調された差分画像信号E0を得る。エッジ強調係数は周波数帯域毎に準備され、βEk(0<βEk<1)で表される。
そして、加算処理125により差分画像信号N0、E0を加算し、差分画像信号B0を得る。
上記の処理を各周波数帯域で行うことにより、差分画像信号Bk−1(k=1〜L)を得る。得られた差分画像信号Bk−1は記憶部35に記憶される。
【0083】
図16は、ノイズ抑制処理1241においてノイズ抑制係数βNkを乗算したときの処理応答と濃度との関係(実線で示す特性)と、エッジ強調処理1242においてエッジ強調係数βEkを乗算したときの処理応答と濃度との関係(点線で示す特性)を示す図である。図16に示すように、濃度依存補正処理をノイズ成分の信号(エッジ平滑化処理後の信号)、エッジ成分の信号(ノイズ平滑化処理後の信号)に個別に施した結果、低濃度部ではノイズ抑制処理の程度が大きくなり、エッジ強調処理の程度が小さくなっている。これにより低濃度部でノイズを目立ちにくくすることができる。また、ノイズの目立ちにくい高濃度部では、ノイズ抑制処理の程度が小さくなり、エッジ強調処理の程度が大きくなる。これにより、高濃度部ではノイズ抑制処理の程度を小さくしてノイズ抑制処理により生じるアーチファクトを低減しつつ、エッジをより強調することが可能となる。
【0084】
《復元処理》
復元処理は、図17に示すように差分画像信号bk−1を原画像信号Sinに加算して逆変換する処理である。なお、本実施形態では、ラプラシアンピラミッド法により複数の細部画像から逆変換(復元)するものとする。このラプラシアンピラミッド法によれば迅速な処理が可能となるが、他の手法を用いることも可能である。
【0085】
まず、最低周波数帯域の差分画像信号bL−1に補間処理を施して各画素の間を補間し、4倍の大きさの画像信号bL−1′とする。次に、補間された画像信号bL−1′と、1段階周波数帯域の高い非鮮鋭画像信号bL−2とを対応する画素同士で加算し、加算画像信号(bL−1′+bL−2)を得る。
次いで、この加算画像信号(bL−1′+bL−2)に補間処理を施し、各画素の間を補間してさらに4倍の大きさの画像bL−2′を得る。次に、補間された画像bL−2′と、1段階周波数帯域の高い非鮮鋭画像信号bL−3とを対応する画素どうして加算して、加算画像信号(bL−2′+bL−3)を得る。
【0086】
以上の処理をより周波数が高い差分画像信号bkとの間で繰り返す。そして、最終的に画像信号b1′と最高解像度の差分画像信号b0とを加算したものを原画像信号Sinに加算することにより、処理済み画像信号Soutを得る。
【0087】
小児用の画像処理条件は、以下の通りである。
小児用の階調変換処理を行う際には、G値を一般撮影用のG値より大きい値とし、ノイズ低減処理においてノイズ抑制処理のノイズ抑制係数βNkを一般撮影のものより大きい値に設定し、ノイズ抑制の程度を大きくする。或いは、G値を一般撮影用のG値より小さい値とし、ノイズ抑制処理においてエッジ強調処理のエッジ強調係数βEkを一般撮影のものより大きい値に設定し、エッジ強調の程度を大きくする。
【0088】
一般的には、小児用股関節画像の階調変換処理時のG値は2.0〜2.2程度で与えられることが多い。また、ノイズ抑制、エッジ強調に係る係数βNk、βEkは画像自体のX線量、診断目的により異なるが、βNkが0.2〜0.6程度、βEkが0〜0.4程度である。
例えば、エッジ成分SE=100、ノイズ成分SN=100のX線画像に対して、G値2.0、βNk=0.4、βEk=0.2の画像処理条件で画像処理を行った場合、画像処理後の関心領域内のエッジ成分SE、ノイズ成分SNはそれぞれ、SE=240、SN=120となり、その比SE/SNはSE/SN=240/120=2.0となる。
【0089】
SNを一定に保ち、SEを向上させるには、例えばG値を3.0、βNk=0.6、βEk=0.2とすればよい。すなわち、G値を増加させるとともにβNkを増加させる。
一方、SEを一定に保ち、SNを向上させるには、例えばG値を1.5、βNk=0.4、βEk=0.6とすればよい。すなわち、G値を減少させるとともにβEkを増加させる。
【0090】
小児等を撮影対象とする場合、位相コントラスト撮影が行われる。位相コントラスト撮影により得られたX線画像の場合、位相コントラスト効果により人体組織等の辺縁はもともとエッジ強調された画質となっている。よって、ノイズ低減処理ではエッジ成分とノイズ成分を精度良く抽出することができるとともに、ノイズ低減処理において上記のエッジ強調処理1242を経ることにより、辺縁部分のエッジはより強調されることとなる。また、低エネルギーのX線を用いて短時間での撮影となるため、一般撮影と比べて信号値は低くなりノイズが出やすい。しかし、ノイズ低減処理においてノイズ抑制処理1241を経ることにより、低信号値(低濃度部)におけるノイズをできるだけ低減させることができ、上記エッジ強調との相乗作用により、より鮮明な画質を得ることが可能となる。
【0091】
次に、X線画像システム1の動作について説明する。
図18は、X線画像システム1における撮影からX線画像の出力までの流れを示すフローチャートである。
小児を対象とした撮影を行う場合、制御サーバ20は小児用の撮影条件で撮影が可能な撮影装置10bに撮影オーダ情報を送信する(ステップS11)。
撮影装置10bでは、撮影オーダ情報に従って、小児用の撮影条件により位相コントラスト撮影を行う(ステップS12)。すなわち、X線源2から照射するX線の焦点径Dを30〜200(μm)、管電圧を50kVp以下とし、拡大率Mを1.2≦M≦5、R1≧(D−7)/200、距離R2をR2≧0.15の範囲内とする。また、撮影時間は0.02s以内である。
【0092】
撮影済みの画像検出器6は撮影者によって読取装置10dに装填される。読取装置10dは読取処理を実行し、X線画像のデータを生成する。そして、生成したX線画像のデータのヘッダに画像処理条件等を書き込み、画像生成に関する付帯情報とする。その後、制御サーバ20の制御に従って、X線画像のデータは読取装置10dから画像処理装置30に送信される。なお、制御サーバ20ではX線画像の識別を以下のように行う。まず、予め撮影に用いる画像検出器6に付されている識別番号を撮影者に入力させ、制御サーバ20がその識別番号を撮影オーダ情報に対応付けて記憶しておく。そして、読取装置10dにおいて画像検出器6からX線画像を読み出す際に画像検出器6の識別番号も読み出し、この識別番号の情報をX線画像に付帯させる。制御サーバ20ではX線画像に付帯された識別番号を参照することにより、当該識別番号を元にそのX線画像の撮影オーダ情報を判別し、X線画像を識別することができる。
【0093】
画像処理装置30では、制御サーバ20の制御に従って、小児用の画像処理条件によりX線画像のデータに画像処理を施す。画像処理は、階調変換処理の後にノイズ低減処理、或いはノイズ低減処理の後に階調反転処理の順で施す(ステップS13)。階調変換処理ではG値を上げ、ノイズ低減処理ではノイズ抑制の程度を大きくする。或いはG値を下げ、ノイズ低減処理においてノイズ抑制を行うことともに、強調の程度の大きいエッジ強調を行う。
各画像処理が終了すると、画像処理装置30はX線画像データのヘッダに画像処理条件を書き込み、画像処理に関する付帯情報とする。その後、制御サーバ20の制御によりX線画像のデータは画像サーバ40に送信される。画像サーバ40では、X線画像データの保存処理を行う(ステップS14)。
【0094】
制御サーバ20は、画像サーバ40に保存されたX線画像のデータについて読影装置50b、50cから送信要求を受け付け、送信要求されたX線画像のデータを読影装置50a、50bに転送するよう指示する制御情報を画像サーバ40に送信する。画像サーバ40では、この制御情報に従って指定されたX線画像のデータを読影装置50a、50bに送信する。
【0095】
読影装置50b、50cでは、X線画像データの表示出力を行う。医師によりフィルムへの出力の指示操作がなされた場合には、X線画像データをフィルム出力装置50aに送信する。フィルム出力装置50aでは受信されたX線画像データのフィルム出力を行う(ステップS15)。
【実施例】
【0096】
X線画像システムにおいて下記の実験条件により撮影(比較例1、2、実施例1−3)を行い、得られたX線画像をフィルムに出力した出力画像について視覚評価を行った。
〈実験条件〉
被写体:小児を模した模擬ファントム(京都科学社製)の股関節部分を撮影した。
撮影装置:撮影装置はコニカミノルタ社で試作したものを用いた。
X線源:比較例1、2では従来から使用されている医療用W陽極X線管(Varian社A-192)を用いた。焦点径Dは1200(μm)である。一方、実施例1−3ではコニカミノルタ社で試作したW陽極X線管を用いた。焦点径Dは100(μm)である。
画像検出器:蛍光体プレートは同社製のRegiusプレートを用いた。
読取装置:同社製のRegius model 190を用いた。読取ピッチは87.5μmである。
出力装置:同社製のDRYPRO model 793
【0097】
〈撮影条件〉
X線エネルギー:管電圧を制御してX線エネルギーを表1のように調節した。
管電流:100mA
撮影時間:0.005〜0.02(s)の範囲で可変させた。
撮影距離:比較例1では拡大率M=1とし、撮影距離R1を0.5m、R2を0mとした。実施例1〜5及び比較例2では拡大率M=2とし、撮影距離R1、R2をそれぞれ0.5mとした。
〈画像処理条件〉
比較例1、2及び実施例1−3:画像処理は無処理
実施例4、5:G値1.5の階調変換処理、βNk=0.4、βEk=0.6のノイズ低減処理を施した。
【0098】
〈評価基準〉
フィルム上に出力形成されたX線画像の股関節部分の画質について評価した。画質評価は鮮鋭性と粒状性を総合的に評価する。
◎: 極めて明瞭に視認できる。
○:明瞭に視認できる。
△:視認できる。
×:視認できない。
上記の評価基準に従って、7人の画像評価者がフィルム上の画像を観察し、画質評価を行った。
【0099】
〈評価結果〉
表1にその評価結果を示す。
【表1】
なお、表1においてmAs値は管電流の値に撮影時間を乗算して求めた値で、X線量と比例する。すなわち、mAs値が大きいほど、X線量は増加する。
【0100】
表1では実施例1〜5によるX線画像が鮮鋭性、粒状性において良好な画質となっていることが分かる。
比較例1と実施例2を比較すると、同一X線量でありながら、実施例2の方が良い画質が得られている。これは位相コントラスト撮影法の効果である。
実施例1と実施例3を比較すると、実施例3では撮影時間を短くして、実施例1のX線量の約25%までX線量を減少しているにも拘わらず実用上問題のない画質が得られている。よって、本発明により、X線量を減少させても、従来と同様の画質の実現が可能であることが明らかである。
実施例3と実施例4を比較すると同一X線量でありながら、実施例4では画質が向上している。これは実施例4で実施したノイズ低減処理の効果である。よって、X線量を減少させても、本発明によるノイズ低減処理を行うことにより画質を向上できる。
実施例2と比較例2を比較すると同一X線量でありながら比較例2では画質が低下している。これは比較例2ではX線エネルギーを本発明の範囲の上限(30keV)より高くしたためで、位相コントラスト撮影法の効果を得るためには、X線エネルギーを30KeV以下に調節することが必要である。
なお、本発明の範囲の下限(15keV)より低くすると被写体の被曝量が増大するので好ましくない。
【0101】
実施例3、4では撮影時間が0.005sと短時間で十分な画質が得られている。小児は撮影の間、静止させることが難しい。よって、このように短時間での撮影でも視認性の良いX線画像を得ることができるのであれば撮影作業の容易性、小児への被曝量の観点から非常に好ましい構成である。また、撮影の間に発生する小児の動きに伴うボケを抑制できるので、従来の長時間撮影する手法に比べて画像の鮮明性は良好な方向となる。さらに、実施例1〜3では比較例1、2に比して全体的に良好な画質となっている。焦点径100μmと小焦点径にすることにより、位相コントラスト効果におけるボケBの広がりを抑え、エッジ強調効果を高めていることが要因の一つであると考えられる。
なお、実施例1〜5において拡大率Mを1.2から5の範囲で可変させた場合も上記と同様の評価結果が得られている。
【0102】
以上のように、本実施形態によれば、小児等を撮影対象とする場合、位相コントラスト撮影によってX線画像を得てこれにノイズ低減処理を施す。位相コントラスト撮影により得られるX線画像は被写体組織の辺縁等がエッジ強調されているため、ノイズ低減処理においてノイズ成分と区別してエッジ成分を抽出しやすく、エッジ強調及びノイズ抑制を精度良く行うことができる。すなわち、鮮明で高画質な処理画像を得ることができるため、小児用の撮影において撮影時のX線量を少線量としても読影に十分な画質のX線画像を得ることができる。また、画質を優先するのであれば、X線量は特に調整せずに撮影を行うことにより通常撮影時よりも鮮明で高画質なX線画像を得ることができる。
【0103】
また、ノイズ低減処理ではエッジ強調係数βEk及びノイズ抑制係数βNkによりエッジ強調、ノイズ抑制の程度を別々に調整することが可能である。よって、自由度の高い処理が可能となる。さらに、濃度依存補正処理を施すことにより、エッジ強調、ノイズ抑制に伴うノイズやアーチファクトの発生を抑止することができる。
【0104】
また、ノイズ低減処理と併せて階調変換処理、階調反転処理を行うことにより、X線画像の画質を効果的に向上させることができる。例えば、階調変換処理におけるG値、ノイズ低減処理における係数βEk、βNkを調整することにより、ノイズ成分、エッジ成分の調整を行うことが可能である。また、小児用の撮影では低X線量とするため、X線画像全体の信号値が小さくなり、ノイズと画像信号との見分けがつきにくいが、ノイズ低減処理の後、階調反転処理を行うことによりノイズの視認性をさらに低下させることができる。
【0105】
なお、上記実施形態は本発明を適用した好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、小児用の撮影時にはX線量を低減させるため、画像検出器の感度を向上させることとしてもよい。画像検出器に蛍光体プレートを用いる場合にはフォトマル感度を上げる、FPDを用いる場合にはアンプのゲインを上げること等が考えられる。
【0106】
また、画像検出器の蛍光体プレートとして、粒状性を重視した粒状性タイプと、鮮鋭性を重視した鮮鋭性タイプとを選択できることとしてもよい。粒状性タイプは、蛍光体プレートの厚みを大きく調整したものである。蛍光体層を厚くしたことで蓄積できるX線エネルギー量が大きくなるため、信号値が全体として高くなり、低ノイズのX線画像を得ることができる。一方、鮮鋭性タイプは蛍光体プレートの厚みを小さく調整したものである。蛍光体層を薄くしたことで蛍光体層における入射X線の反射を低減し、反射によるボケを低減させて鮮鋭性の高いX線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態におけるX線画像システムのシステム構成を示す図である。
【図2】X線撮影装置の一例を示す図である。
【図3】位相コントラスト撮影及び位相コントラスト効果について説明する図である。
【図4】位相コントラスト効果におけるエッジ強度とボケの関係を示す図である。
【図5】位相コントラスト効果においてボケが生じる場合について説明する図である。
【図6】X線撮影装置の他の例を示す図である。
【図7】画像処理装置の内部構成を示す図である。
【図8】階調変換処理において目標とする階調変換特性を示す図である。
【図9】階調変換処理時の信号値の変換の流れを示す図である。
【図10】ノイズ低減処理の流れの一部を示す図である。
【図11】(a)は差分画像信号のある一列分の画像信号を模式的に示す図である。(b)は(a)の画像信号についてのエッジ成分、非エッジ成分の分類を示す図である。
【図12】(a)は二次元の平滑化フィルタ係数の一例を示す図である。(b)は一次元の平滑化フィルタ係数の一例を示す図である。
【図13】濃度依存補正処理において用いられる補正関数の一例を示す図である。
【図14】図13の補正関数のコントラストに対する応答を示す図である。
【図15】(a)はノイズ平滑化処理に対応する補正関数の濃度に対する応答を示す図である。(b)はエッジ平滑化処理に対応する補正関数の濃度に対する応答を示す図である。
【図16】エッジ強調処理の濃度に対する処理応答と、ノイズ抑制処理の濃度に対する処理応答を示す図である。
【図17】ノイズ低減処理の流れの一部を示す図である。
【図18】X線画像システムにおける全体的な動作の流れを説明する図である。
【符号の説明】
【0108】
1 X線画像システム
10b 撮影装置
2 X線源
3 撮影部
6 画像検出器
7 蛍光体プレート
W 被写体
10d 読取装置
20 制御サーバ
30 画像処理装置
37 画像処理部
40 画像サーバ
50a フィルム出力装置
50b、50c 読影装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線撮影によりX線画像のデータを生成し、出力するX線画像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新生児や乳児等(以下、小児等という)は、成人と異なり、ほとんどの骨髄が赤色骨髄であるため、被曝による影響が大きい。よって、成人以上に被曝量の低減化が要求され、小児等のX線撮影を行う際には被曝量を最小限に抑えるため、撮影条件を調整しX線照射量の低減を図ることが必要である。
【0003】
低線量による撮影により得られたX線画像は、信号値が全体的に低下するため、ノイズが増加する。従来は、得られたX線画像に対し、ノイズ除去処理、或いはノイズ低減処理等を施して対応していた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−125153号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低線量による撮影を行ったX線画像にノイズ低減処理を施すと、ある程度の効果は得られて見やすい画質とはなるが、ノイズ除去の影響で鮮明性が低下することとなる(ノイズ除去により本来の信号部分が減弱してしまうためである)。そのため、部位の境界部分等が不鮮明となり、診断への利用性が低くなる。このような問題を回避するため、撮影時のX線量を十分に減らすことができず、結果として被曝量の十分な低減化を図ることが難しい状況であった。
【0005】
本発明の課題は、低線量の撮影であっても高画質のX線画像を出力することができるX線画像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、X線画像システムにおいて、
被写体に向けてX線を照射するX線源と、前記被写体を透過したX線を検出する画像検出器とを有し、前記被写体と画像検出器とを離間せしめて、X線源から15〜30(keV)のX線エネルギーのX線を前記被写体に照射し、位相コントラスト撮影を行う撮影手段と、
前記位相コントラスト撮影によるX線画像のデータを生成する画像生成手段と、
前記生成されたX線画像に対し、ノイズ低減処理を含む画像処理を施す画像処理手段と、
前記画像処理が施された処理画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線画像システムにおいて、
前記X線源の焦点径は、30〜200(μm)とすることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のX線画像システムにおいて、
前記X線源の焦点径は、50〜120(μm)とすることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のX線画像システムにおいて、 前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.2≦M≦5とすることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のX線画像システムにおいて、
前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.5≦M≦3とすることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システムにおいて、
前記画像処理には、前記X線画像のコントラストを変更する階調変換処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に階調変換処理を施した後、前記ノイズ低減処理を施して処理画像を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システムにおいて、
前記画像処理には、前記X線画像の階調を反転する階調反転処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に前記ノイズ低減処理を施した後、前記階調反転処理を施して処理画像を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜5に記載の発明によれば、位相コントラスト撮影によってX線画像を得てこれにノイズ低減処理を施す。位相コントラスト撮影により得られるX線画像は被写体組織の辺縁等がエッジ強調されているため、ノイズ低減処理においてノイズ成分と区別してエッジ成分を抽出しやすく、エッジ強調及びノイズ抑制を精度良く行うことができる。すなわち、鮮明で高画質な処理画像を得ることができるため、小児用の撮影において撮影時のX線量を低線量としても読影に十分な画質のX線画像を得ることができる。よって、小児等を撮影対象とする場合には被曝量を最小限に抑えることが可能となる。さらに、位相コントラスト効果で元画像自体が鮮明になるので、ノイズ低減処理の影響で元画像に比べてややボケたとしても、ノイズ低減後の画像は依然として鮮明性が高い。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、階調変換処理とノイズ低減処理を組み合わせることにより、エッジ強調、ノイズ抑制を行うだけでなく、コントラストや濃度範囲も調整することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、階調反転処理とノイズ低減処理を組み合わせることにより、エッジ強調、ノイズ抑制を行うだけでなく、階調反転により画像中の構造物の視認性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本実施形態では、位相コントラスト撮影により辺縁部の鮮鋭性が高いX線画像を得、当該X線画像にノイズ低減処理を施すことにより、低線量下でも高画質のX線画像を提供することが可能なX線画像システムの例を説明する。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1に、本実施形態におけるX線画像システム1のシステム構成を示す。
図1に示すように、X線画像システム1は撮影装置10a〜10c、読取装置10d、制御サーバ20、画像処理装置30、画像サーバ40、フィルム出力装置50a、読影装置50b、50cを備えて構成されている。各装置はネットワークNを介して相互に通信可能に構成されている。
【0018】
X線画像システム1は、撮影装置10a〜10c、或いは読取装置10dにおいてX線撮影により生成したX線画像のデータに対し、画像処理装置30により各種画像処理を施して処理画像を生成し、これをフィルム出力装置50a又は読影装置50b、50cにより出力するものである。
なお、図1はシステム構成の一例であり、これに限定されない。必要に応じて装置台数の変更、他の装置の追加等、適宜構成すればよい。
【0019】
撮影装置10a〜10cは、X線撮影及び/又はX線画像のデータ生成を行うものである。撮影装置10aは一般撮影用のCR(Computed Radiography)装置、撮影装置10bは小児撮影用のCR装置、撮影装置10cはマンモグラフィ用のCR装置である。撮影装置10a〜10cには、X線撮影を行うとともにX線画像のデータ生成を行うタイプのものと、可搬型の画像検出器を用いてX線撮影のみ行うタイプのものとがある。読取装置10dは、後者のタイプの撮影装置10a〜10cにおいて撮影に用いられた画像検出器からX線画像を読み取ってそのデータを生成するものである。
【0020】
制御サーバ20は、撮影装置10a〜10cによる撮影からX線画像の生成、保存、出力までのX線画像システム1における一連の処理を統括的に制御する管理装置である。制御サーバ20としては一般的なコンピュータ装置を適用可能であり、管理用のプログラムを用いて管理動作を行わせる。
【0021】
制御サーバ20は、撮影オーダ情報を用いて管理を行う。撮影オーダ情報は、撮影内容や画像の生成条件等について医師が指定した条件が示された撮影指示情報であり、図示しないHIS(Hospital Information System)やRIS(Radiology Information System
)において生成され、制御サーバ20に送信される。制御サーバ20では、この撮影オーダ情報を解析して撮影装置10a〜10cのうち、撮影内容に応じた撮影装置に撮影オーダ情報を配信する。
【0022】
制御サーバ20は、撮影装置10a〜10c又は読取装置10dにおいて生成されたX線画像の画像処理装置30への転送制御を行う。このとき、撮影オーダ情報により小児用撮影が指定されていた場合、小児用の画像処理条件により画像処理を行うことを指示する制御情報を生成し、X線画像とともに画像処理装置30へ送信する。
【0023】
画像処理装置30は、X線画像に対して各種画像処理を施してその処理画像を生成するものである。
【0024】
画像サーバ40は、大容量メモリにX線画像のデータを保存し、管理するものである。画像サーバ40は、制御サーバ20の指示に従ってフィルム出力装置50a、読影装置50b等にX線画像のデータを送信する。
【0025】
フィルム出力装置50aは、フィルム上にX線画像を形成し、出力するものである。
読影装置50b、50cは、医師がX線画像を観察するために用いられる端末装置であり、モニタ上にX線画像を表示出力する。
【0026】
次に、本発明に係る撮影装置10b、画像処理装置30について詳細に説明する。
撮影装置10bは、小児等を被写体Wとして位相コントラスト撮影を行うものである。
撮影装置10bは、図2に示すように撮影部3と撮影制御等を行う本体部4とを備えて構成されている。
撮影部3は、アーム状に形成され、本体部4を支柱として昇降可能に構成されている。撮影部3のアーム部分にはX線源2と保持部5とが対抗配置されている。保持部5は、画像検出器6を保持してその位置を固定するものである。保持部5は撮影部3の支柱部分に沿って昇降可能に構成されている。この撮影部3、保持部5を昇降させ、その高さ位置を変えることにより、撮影距離を調整することが可能である。
【0027】
本体部4は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)
、ROM(Read Only Memory)、操作部等からなるコンピュータを備えて構成されている。本体部4は、操作指示に応じて撮影部3の昇降、保持部5の昇降を制御するとともに、X線源2によるX線の照射動作を制御する。
【0028】
X線源2は、X線を発生させて被写体Wに向けて照射するものである。X線源2には小児等を撮影対象とする位相コントラスト撮影に適した焦点径D(μm)を有するX線管が用いられている。この焦点径Dは30〜200(μm)、さらには50〜120(μm)であることが好ましい。
【0029】
撮影対象の被写体Wは小児等である。小児等は保育器11に収容された状態で撮影を行い、小児等の高さ位置に合わせてX線源2及び保持器5の高さ位置を調整する。保育器11は図2に示すようにベット状の支持台上に保育用ケースが設けられたものである。
【0030】
画像検出器6は、カセッテと呼ばれる筐体内に蛍光体プレート7を収容してなるものである。蛍光体プレート7は、X線エネルギーを吸収、蓄積するX線検出器である。画像検出器6は、X線源2から照射され、被写体Wを介して到達したX線を蛍光体プレート7により検出する。その後、画像検出器6を読取装置10dに装填し、画像可視化を行う。読取装置10dは蛍光体プレート7にレーザ光等の励起光を照射し、蛍光体プレート7から出射される輝尽光を画像信号に光電変換することにより、その画像信号を生成するものである。
【0031】
なお、本実施形態ではカセッテに蛍光体プレート7を収容した画像検出器6の例を説明するが、画像検出器6としては他にFPD(Flat Panel Detector)等を適用することも
できる。
FPDは、入射したX線量に応じて電気信号を生成する変換素子がマトリクス状に配列されたプレートであり、FPD内で直接電気信号を生成する点で上記蛍光体プレート7と異なる。FPDを適用した場合、FPD内で生成された電気信号がA/D変換され、得られたデジタル画像データが本体部4に出力されることとなる。
【0032】
次に、撮影部3により行われる位相コントラスト撮影について説明する。
位相コントラスト撮影は、通常の拡大撮影とは異なり、エッジ強調作用が得られるように撮影距離やX線の照射条件等の撮影条件を調整したものである。
図3は、位相コントラスト撮影の概略を説明する図である。
一般撮影の場合、被写体Wを透過したX線を画像検出器6ですぐに受けるように被写体Wに隣接させて画像検出器6を設置する。よって、一般撮影により得られるX線画像は、ライフサイズ(被写体Wと同一サイズであることをいう)とほぼ等サイズとなる。
【0033】
一方、位相コントラスト撮影では、図3に示すように被写体Wと画像検出器6の間に距離を設ける。つまり、被写体Wと画像検出器6の間を離間せしめる。この場合、X線源2からコーンビーム状に照射されたX線は被写体Wを透過した後、なおコーンビーム状に画像検出器6に到達するため、得られるX線画像はライフサイズに比して拡大されたサイズとなる。
【0034】
このときの拡大率Mは、X線源2から被写体Wまでの距離をR1、被写体Wから画像検出器6までの距離をR2、X線源2から画像検出器6までの距離をR3(R3=R1+R2)とすると、下記式(1)により求めることができる。
M=R3/R1・・・(1)
拡大率Mは、距離R1、R2の比率を変えることにより調整が可能である。
【0035】
撮影装置10bでは、特開2001−91479号公報等に開示されているように、R1、R2、R3及び焦点径Dの設定を所定の範囲とせしめることで、被写体W辺縁のエッジ強調効果が得られる位相コントラスト撮影を行う。
特開2001−91479号公報に記載の撮影条件は、X線源2の焦点径DをD≧30とし、距離R1をR1≧(D−7)/200、好ましくは0.3〜1.0(m)とし、距離R2をR2≧0.15、好ましくは0.3〜1.0(m)とするものである。この条件により、撮影によって得られたX線画像においてエッジ強調効果を得ることが可能である。また、撮影室内の全長を考慮するとこの範囲内での撮影が好ましい。
【0036】
エッジ強調効果について説明する。
上記の位相コントラスト撮影により得られたX線画像では、図3に示すように、被写体Wの辺縁を通過することにより屈折したX線が被写体Wを介さずに通過したX線と重なり合い、重なった部分のX線強度が強くなる現象が生じる。そのため、被写体Wの辺縁内側の部分においてX線強度が弱くなる現象が生じる。これにより、被写体Wの辺縁を境にしてX線強度差が広がるエッジ強調作用(エッジ効果、位相コントラスト効果ともいう)が働き、辺縁部分が鮮鋭に描写された視認性の高いX線画像が得られることとなる。
【0037】
X線源2が点線源であるとみなした場合、辺縁部分におけるX線強度は図4の実線で示すようなものとなる。図4に示すEはエッジ強調の半値幅を示し、下記式(2)により求めることができる。半値幅Eはエッジの山−谷間の距離を示す。
【数1】
【0038】
しかし、医療現場や非破壊検査施設では、X線源2としてクーリッジX線管(熱電子X線管ともいう)が広く使用されており、このクーリッジX線管では焦点径が有る程度大きくなるため、理想的な点線源とみなすことができない。この場合、図5に示すようにエッジ強調の半値幅Eが広がり、かつ強度が低下する幾何学的不鋭の現象が生じ、図4の点線で示すようなX線強度となる。この幾何学的不鋭はボケと呼ばれる。
【0039】
ボケが生じた場合のエッジ強調の半値幅をEBとすると、EBは下記式(3)から求めることができる。
【数2】
式中、δ及びrの定義は式(2)と同じである。
また、EBはボケが無い場合のエッジ強調半値幅Eにボケの大きさを示すBを加え、EB=E+Bで示される。
上述のように、X線源の焦点径Dは小さければ小さいほど、ボケが減少し、得られるエッジ効果が大きくなる。
【0040】
小児等を撮影対象とする場合には、撮影装置10bでは小児用の撮影条件により撮影を行う。小児用の撮影条件とは、位相コントラスト撮影を行うにあたり、X線源2の焦点径Dを30〜200(μm)、好ましくは50〜120(μm)とし、拡大率Mを1.2≦M≦5、好ましくは1.5≦M≦3とし、距離R1をR1≧(D−7)/200、好ましくは0.3〜1.0(m)、距離R2をR2≧0.15、好ましくは0.3〜1.0(m)とすることである。小児等は被写体サイズが小さいため、拡大率Mは成人より大きくすることが可能である。また、X線源2がW(タングステン)管を用いている場合、管電圧は20〜50(kVp)と低電圧とし、照射するX線エネルギーを15〜30(keV)とすることが好ましい。小児の軟骨は成人と異なり、軟部組織(筋肉や脂肪等)に近い性質を持っている。よって、前述したエネルギー範囲とすることで、軟骨と軟骨周辺の軟部組織とのコントラスト(信号値差)の増加を図ることができる。
【0041】
なお、図6に示すように、撮影装置10bの撮影部3にはX線源2のみを搭載し、保育器11において被写体Wの下部に画像検出器6を保持する保持部を設けて撮影を行うこととしてもよい。この場合、被写体Wと画像検出器6との距離R2が固定されるので、拡大率MはX線源2と被写体Wとの距離R1により調整する。また、撮影装置10bを移動式のものとしてもよい。
【0042】
次に、画像処理装置30について説明する。
画像処理装置30は、図7に示すように制御部31、操作部32、表示部33、通信部34、記憶部35、画像メモリ36、画像処理部37を備えて構成されている。
【0043】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等からなり、記憶部35に記憶された各種制御プログラムをCPUにより読み出してRAMに展開し、これらプログラムに従って各種演算や各部の集中制御を行う。
【0044】
操作部32は、マウスやキーボード等を備えてこれらの操作に応じた操作信号を生成し、制御部31に出力する。
表示部33は、ディスプレイを備えて制御部31の制御に従って各種表示画面を表示する。
【0045】
通信部34は、ネットワークインターフェイスカード等の通信用インターフェイスを備え、ネットワークN上の外部装置と通信を行う。
記憶部35は、制御部31において実行される各種プログラムや画像処理部37において実行される画像処理プログラム、その実行に必要なパラメータやデータ等を記憶している。
画像メモリ36は、画像処理対象のX線画像や処理後の処理画像を保存するためのメモリである。
【0046】
画像処理部37は、画像処理プログラムに従って各種画像処理を実行する。画像処理としては、前処理として照射野認識処理、関心領域の設定を行った後、階調変換処理、階調反転処理、ノイズ低減処理等の各種画像処理を施すことが可能である。
画像処理部37は、小児用、一般撮影用と、撮影用途に合わせて画像処理条件を予め定めており、制御部31により指定された画像処理条件によって画像処理を行う。
【0047】
画像処理条件としては、施す画像処理の種類、順番、各画像処理における処理パラメータ等が定められている。
小児用の画像処理条件は、階調変換処理後にノイズ低減処理を行うことである。或いは、ノイズ低減処理後に階調反転処理を行うこととしてもよい。各画像処理で採用される小児用の処理パラメータについては、各画像処理の説明とともに以下に説明する。
【0048】
〈階調変換処理〉
階調変換処理は、画像出力時の濃度、コントラストを調整するための処理である。医師がX線画像の読影により人体構造の疾病の有無を診断する場合、X線画像上における構造物の濃度やコントラスト(階調性)に基づき疾病の有無を判断する。よって、読影に適した濃度、コントラストに調整することにより、医師の疾病の検出作業を支援することができる。
【0049】
階調変換処理は、(1)正規化処理、(2)基本LUT(ルックアップテーブル)を用いての変換処理の2段階で行い、最終的に所望の信号値範囲、階調特性となるように階調変換を行うものである。従来、撮影にはスクリーン/フィルム方式が採用されていた背景から、画像検出器を用いたデジタル処理方式が採用された現在でも、医師の読影能(診断性能)を維持するため、スクリーン/フィルム方式で培われた階調特性(コントラスト)を目標として入力信号(読取信号)の変換処理が行われている。
【0050】
スクリーン/フィルム方式で得られる階調特性は、図8に示すようにS字状の曲線CVとなる。階調変換処理では、この階調特性を示すLUTを基本LUTとして準備しておき、正規化処理により対象画像について個々の信号調整を行った後、この基本LUTを用いて信号値の変換を行う。
【0051】
図9に、画像検出器(蛍光体プレートの場合)により検出されるX線量とそのX線量に応じて最終的に出力されるX線画像の信号値との関係を示す。
図9の座標系において、第1象限は読取特性を示しており、画像検出器への到達X線量と、読取信号値(アナログ信号値)との関係を示している。また、第2象限は正規化特性を示しており、その読取信号値と、正規化処理が施された後の正規化信号値(デジタル信号値)の関係を示している。第3象限は階調変換特性を示すものであり、正規化信号値と、基本LUTにより変換された出力濃度値(デジタル濃度信号値)との関係を示している。なお、ここでは出力濃度値を0〜4095の12ビット分解能としている。
【0052】
第2象限において、正規化特性を示す直線はその傾きを変化させることにより出力値の範囲(SH−SL間の大きさ)を調整することができるとともに画像全体のコントラストを変化させることができる。この傾きをG値とする。また、階調変換特性を示す直線の切片を変化させることにより、出力値の範囲全体の高低(SH−SLの移動)を調整し、これにより画像全体の濃度を変化させることができる。この切片をS値とする。
【0053】
例えば、図9に示す直線h2と直線h3で正規化を行った場合を比較すると、G値を大きくすることで、被写体Wに対応する正規化信号値が基本LUTの直線領域に対応することとなり、コントラストが向上することとなる。
すなわち、階調変換特性を示す直線の傾きG値、切片S値を階調変換パラメータとしてこれを制御することにより、出力画像の濃度範囲、コントラストを調整することができる。
【0054】
G値は、図8に示すスクリーン/フィルム方式における階調特性曲線CVの傾きを求める下記式(4)により決定される。
G=(J2−J1)/(logE2−logE1)…(4)
ここで、
J1=0.25+Fog、J2=2.0+Fog、Fog=0.2であり、
E1、E2はそれぞれJ2、J1に対応する入射X線量である。
胸部や乳房等の人体各部位を観察対象とする場合、G値は一般に、2.5〜5.0程度のものが用いられることが多い。
【0055】
また、S値は下記式(5)により求められる。
S=QR×K1/K2…(5)
ここで、
QRは量子化領域値であり、
K1は信号値1535(QR=200、出力濃度1.2)となる到達X線量、K2は階調変換後の画像で出力濃度1.2となった画素の実際の到達X線量である。
K1の値は、撮影前の量子化領域QR値の設定で一意に決まるものである。
【0056】
〈階調反転処理〉
階調反転処理は、階調レベルに対応する濃度を反転させる処理である。例えば、最小階調0(表示濃度:黒)〜最大階調4095(表示濃度:白)である場合、これを反転させて最小階調0のとき表示濃度:白、最大階調4095のとき表示濃度:黒に割り付ける。
【0057】
〈ノイズ低減処理〉
ノイズ低減処理は、X線画像の画像信号に含まれるノイズ成分の低減を図る処理である。ここでは、ノイズが目立ちやすい低濃度部ではノイズの低減の程度を大きくし、ノイズが目立ちにくい高濃度部ではノイズの抑制の程度を小さくする例を説明する。
【0058】
ノイズ低減処理では、多重解像度分解処理、エッジ・ノイズ情報取得処理、平滑化処理、エッジ強調・ノイズ抑制処理、復元処理の各処理を順次実行する。
まず、図10を参照して多重解像度分解処理、エッジ・ノイズ情報取得処理、平滑化処理、エッジ強調・ノイズ抑制処理について説明する。図10は各処理と画像信号との関係を示す図である。
【0059】
《多重解像度分解処理》
多重解像度分解処理では、原画像信号Sinを多重解像度変換することにより複数の空間周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk′(k=1〜L(Lは1以上の整数、以下同じ))を得る。
多重解像度変換にはローパスフィルタを用いる。ローパスフィルタにより原画像信号Sinにフィルタ処理121を施し、その処理後の原画像信号Sinを1画素づつサンプリング(ダウンサンプリング)することによって、非鮮鋭画像信号g1を生成する。この非鮮鋭画像信号g1は原画像の1/4の大きさになっている。
【0060】
次いで、補間処理122によって非鮮鋭画像信号g1のサンプリング間隔毎に「0」の値の画素を補完する。この補間は、非鮮鋭画像信号g1を構成する画素の列毎及び行毎に「0」の値の画素列及び画素行を挿入することにより行う。なお、このように補間された非鮮鋭画像信号は、1画素おきに「0」の場合の画素が挿入されているため、信号値の変化が滑らかではない状態になっている。そして、このような補間の後に、ローパスフィルタによって再度フィルタリングを施し、非鮮鋭画像信号g1′を得る。この非鮮鋭画像信号g1′は、前記した補間直後の非鮮鋭画像信号に比べると信号値の変化が滑らかな状態になっている。
【0061】
この非鮮鋭画像g1′は、画像を1/4にした後に1画素おきに0の補間とフィルタリングとをすることにより原画像信号と同じ大きさとなり、また原画像信号の空間周波数の半分より高い周波数が除かれた状態となっている。
【0062】
さらに、1段階低い周波数帯域の非鮮鋭画像信号を得るため、非鮮鋭画像信号g1をフィルタ処理121する。これにより、非鮮鋭画像信号g1はさらに1画素おきにサンプリングされた1/4(もとの1/16)の大きさの非鮮鋭画像信号g2に変換される。そして、この非鮮鋭画像信号g2に対し、補間処理122を施して非鮮鋭画像信号g2′を生成する。
【0063】
このような処理を順次繰り返すことで、周波数特性の異なる第1〜第nの各周波数帯域(解像度)の非鮮鋭画像信号gk、非鮮鋭画像信号gk′を得ることができる。
【0064】
《エッジ・ノイズ情報取得処理》
エッジ・ノイズ情報取得処理は、多重解像度分解処理により取得された複数の周波数帯域のうち、何れかの周波数帯域の非鮮鋭画像信号に基づいて原画像信号Sinにおけるエッジ情報及びノイズ情報を取得するものである。ここでは、第2周波数帯域の非鮮鋭画像信号に基づいて取得する例を説明するが、基準とする周波数帯域は、画素サイズ0.5〜1.0(mm)ピッチ程度の最高周波数帯域ではない周波数帯域が好ましい。例えば画素サイズ0.175ピッチの画像でダウンサンプリング率が1/2の場合、第3周波数帯域が最も好ましい。これは30step/1〜2mm程度のエッジ信号にガウシアンノイズを付加した疑似微小エッジ像に対して0.5〜1.0mmピッチの解像度でノイズ・コントラスト比が最も高くなり、エッジが認識しやすい条件となるためである。
【0065】
まず、エッジ情報の取得方法について説明する。
エッジ情報には、エッジ成分情報Ev及びエッジ方向情報Edが含まれる。先に、エッジ成分情報Evの取得方法について説明する。
図10に示すように、まず差分処理126によって非鮮鋭画像信号g1と非鮮鋭画像信号g2′の差分画像信号M2を求める。この差分画像信号M2から比較処理127によってエッジ成分情報Evを取得する。
比較処理127では、差分画像信号M2に注目画素を設定する。当該注目画素の信号値と閾値Bh、Blとを比較し、信号値が閾値Bh以上である場合には当該注目画素は正のエッジ成分を構成すると判別し、信号値が閾値Bl以下である場合には当該注目画素は負のエッジ成分を構成すると判別する。注目画素は閾値Bh、Blはそれぞれ正のエッジ成分、負のエッジ成分を判別するために予め準備された閾値である。
【0066】
一方、信号値が閾値Bhを下回るが閾値Blを上回る場合、注目画素の隣接画素を参照し、当該隣接画素が正又は負のエッジ成分であるかを判別する。隣接画素が正又は負のエッジ成分を有する場合、注目画素はエッジ変局点であると判別する。エッジ変局点とは、エッジ成分の正負の変わり目となる信号値0付近の点であり、エッジの基準となる点である。
また、隣接画素が正又は負のエッジ成分を有していない場合、注目画素は非エッジ成分であると判別する。
【0067】
注目画素の成分を判別すると、その判別結果(正のエッジ成分、負のエッジ成分、エッジ変局点、非エッジ成分の何れか)をエッジ成分情報Evとして画素位置の情報に対応付けて記憶部35に記憶する。
以上の処理を全ての画素について繰り返して実行する。
【0068】
図11(a)は、差分画像信号M2のある一列分の画像信号を模式的に示す図である。図11(b)は、図11(a)の差分画像信号M2について得られたエッジ成分情報Evに基づき、差分画像信号M2のエッジ成分(正のエッジ成分、負のエッジ成分、エッジ変局点、非エッジ成分)を分類した模式図を示すものである。
【0069】
次に、エッジ方向情報Edの取得方法について説明する。
エッジ方向情報Edは、非鮮鋭画像信号g2′をSobelフィルタ、Prewittフィルタ等でフィルタ処理128することにより取得する。
【0070】
次に、ノイズ情報Nsの取得方法について説明する。
非鮮鋭画像信号gn−1′と非鮮鋭画像信号gn′との差分画像信号をMn(第1周波数帯域の場合、原画像信号Sinと非鮮鋭画像信号g1′との差分画像信号)とすると、ノイズ情報Nsは、例えば各周波数帯域における差分画像信号Mnでの局所的な分散値、エントロピー値情報及びその画素位置情報から取得することができる。
画像のエントロピー値Seは、ある画素が画素値zを取る確率P(z)とその画像の階調数Zを用いて下記の式(6)により求めることができる(Wiley-Interscience社刊「Digital Image Processing 3rd Edition」参照)。
【数3】
【0071】
中間周波数帯域(第2〜第nの周波数帯域)でエントロピー値が所定の値より低く、最高周波数帯域(第1周波数帯域)でエントロピーが大きい場合、その画素位置ではノイズ成分が支配的であり、その画素位置の画素をノイズ成分とすることができる。よって、ノイズ情報Nsとして当該画素がノイズ成分であることを示す情報を当該画素位置の情報に対応付けて記憶部35に記憶する。
【0072】
得られたエッジ情報Ev、Ed、ノイズ情報Nsは処理1231、1232において利用する。処理1231、1232ではエッジ情報Ev、Ed及び/又はノイズ情報Nsに基づき、原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk(k=1〜(L−1))に平滑化処理、濃度依存補正処理を施す。平滑化処理はエッジ平滑化処理、ノイズ平滑化処理に分けて施す。すなわち、処理1231はエッジ平滑化処理の後、濃度依存補正処理を施し、処理1232はノイズ平滑化処理の後、濃度依存補正処理を施す。処理1231からは処理済み信号G01、処理1232からは処理済み信号G02が出力される。
【0073】
《平滑化処理》
平滑化に用いるフィルタは、多重解像度分解処理で用いるローパスフィルタか、それに近い周波数応答のローパスフィルタであることが望ましい。図12(a)、図12(b)にそのフィルタ例を示す。図12(a)に示すフィルタ例は、多重解像度分解のダウンサンプリングを、バイノミアルフィルタリング(binomial filtering)を8回行うラプラシアンピラミッド法により行う場合に用いる2次元平滑化フィルタの例である。この平滑化フィルタには平滑化フィルタ係数(5タップ)が2次元的に設定されている。タップ数が5タップである場合、フィルタ係数F(x)は以下の式(7)、(8)で示す関数で表される。
【数4】
【0074】
一方、図12(b)に示すフィルタ例は、多重解像度分解のダウンサンプリングを、バイノミアルフィルタリングを8回行うラプラシアンピラミッド法により行う場合に用いる1次元平滑化フィルタの例である。
【0075】
まず、エッジ平滑化処理について説明する。
エッジ平滑化処理においては、記憶部35から各画素のエッジ成分情報Evを取得し、このエッジ成分情報Evに基づいて原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk(k=1〜(L−1))のそれぞれについてエッジ成分の画素を判別する。そして、原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gkにつき、エッジ成分の画素を対象として平滑化フィルタ(例えば、図12(b)参照)によりエッジ勾配方向のみに一次元的な平滑化処理を施す。これにより、主にノイズ成分と1段階低い周波数帯域の周波数成分からなる画像信号が得られる。すなわち、エッジ平滑化処理は、エッジ成分の信号強度を低減させてノイズ成分を強調した画像信号を得るものである。
【0076】
次に、ノイズ平滑化処理について説明する。
ノイズ平滑化処理においては、記憶部35から取得した各画素のエッジ成分情報Evに基づいて原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk(k=1〜(L−1))のそれぞれについて非エッジ成分、エッジ成分の画素を判別する。そして、原画像信号Sin及び各周波数帯域の非鮮鋭画像信号gkの各画像につき、非エッジ成分の画素を対象として平滑化フィルタ(例えば、図12(a)参照)により二次元的な平滑化処理を行う。また、エッジ成分の画素については平滑化フィルタ(例えば、図12(b)参照)によりエッジ勾配方向以外の方向又はエッジ勾配方向と垂直な方向のみ一次元的な平滑化処理を施す。これにより、主にエッジ成分と1段階低い周波数帯域の周波数成分からなる画像信号のみが得られる。
【0077】
《濃度依存補正処理》
濃度依存補正処理とは、後段におけるノイズ抑制処理1241、エッジ強調処理1242において発生するアーチファクト、ノイズの発生を抑制するため、予め平滑化処理後の画像信号について補正を行っておくものである。補正は画像信号の濃度(画像信号値)によりその補正の程度が制御される。具体的には、図13に示す補正関数Rにより補正成分値を取得し、平滑化処理後に得られる画像信号値からこの補正成分値を減算する処理である。
補正関数Rは、画像信号値及びコントラストから補正成分値を求めるものである。コントラストとは、濃度依存補正処理前の隣り合う周波数帯域の非鮮鋭画像信号gk同士の差分画像信号(原画像信号Sinについては最高周波数帯域の非鮮鋭画像信号g1との差分画像信号)の信号値である。なお、補正関数Rは、エッジ平滑化処理の処理信号用、ノイズ平滑化処理の処理信号用と、エッジ平滑化処理、ノイズ平滑化処理に対応してそれぞれ準備されるとともにそれぞれ周波数帯域毎に定義されている。
【0078】
このような補正を施すのは、ノイズ抑制処理1241、エッジ強調処理1242では、処理の程度を大きくするとアーチファクトの発生やノイズの増幅により逆に画質が損なわれてしまうことがあるためである。エッジ強調処理1242では、アーチファクトの発生による部分的な画質の劣化が問題となり、ノイズ抑制処理1241ではノイズ成分の増幅が問題となる。このようなアーチファクトやノイズは特に低濃度部で目立ちやすい。よって、低濃度部ではエッジ強調、ノイズ抑制の処理の程度が小さくなるように濃度依存補正処理を行っておくことが必要である。
【0079】
差分画像信号は、エッジ平滑化処理を施したものであれば主にノイズ成分からなる画像信号であり、ノイズ平滑化処理を施したものであれば主にエッジ成分からなる画像信号である。図13に示すように、補正関数Rを低濃度でかつ差分画像信号の値が0に近くなるにつれて補正成分値を大きくなるように設計することにより、低濃度部では原画像信号Sinに加算される信号成分が小さくなるように、すなわちエッジ強調・ノイズ抑制の程度が小さくなるように制御することができる。
【0080】
図14は、補正関数Rのコントラストに対する応答を表した図である。図14に示すように、補正関数Rは何れの周波数帯域においても低コントラスト部より高コントラスト部で補正の程度が大きくなることが分かる。
一方、図15は補正関数Rの濃度に対する応答を表した図である。
図15(a)はノイズ平滑化処理に対応する補正関数Rの濃度に対する応答を示す図である。図15(a)に示すように、高濃度部より低濃度部で補正の程度が大きくなっており、高濃度部に対するエッジ強調処理の程度が大きくなることが分かる。
一方、図15(b)はエッジ平滑化処理に対応する補正関数Rの濃度に対する応答を示す図である。図15(b)に示すように、低濃度部より高濃度部で補正の程度が大きくなっており、低濃度部でノイズ抑制処理の程度が大きくなることが分かる。
このように、濃度依存補正処理により、ノイズが目立ちやすい低濃度部ではノイズ抑制処理の程度を大きくするとともに、エッジ強調処理の程度を小さくするよう制御することにより、ノイズを低減させることができる。一方、ノイズが目立ちにくい高濃度部ではノイズ抑制処理の程度を小さくし、エッジ強調処理の程度を大きくするよう制御することにより、ノイズ抑制処理によるノイズ、アーチファクトの発生を低減させることができる。
【0081】
《エッジ強調・ノイズ抑制処理》
ノイズ抑制処理1241では、処理1231により得られた処理済み信号G01と非鮮鋭画像信号g1′の減算を行う。減算は各画像信号の対応する画素間で実行する。そして、減算により得られた主にノイズ成分からなる差分画像信号にノイズ抑制係数βN1を乗算し、ノイズ成分が低減された差分画像信号N0を得る。ノイズ抑制係数は周波数帯域毎に準備され、βNk(−1<βNk<0)で表される。
【0082】
同様に、エッジ強調処理1242では、処理1232により得られた処理済み信号G02と非鮮鋭画像信号g1′の減算を行う。そして、減算により得られた主にエッジ成分からなる差分画像信号にエッジ強調係数βE1を乗算し、エッジ成分が強調された差分画像信号E0を得る。エッジ強調係数は周波数帯域毎に準備され、βEk(0<βEk<1)で表される。
そして、加算処理125により差分画像信号N0、E0を加算し、差分画像信号B0を得る。
上記の処理を各周波数帯域で行うことにより、差分画像信号Bk−1(k=1〜L)を得る。得られた差分画像信号Bk−1は記憶部35に記憶される。
【0083】
図16は、ノイズ抑制処理1241においてノイズ抑制係数βNkを乗算したときの処理応答と濃度との関係(実線で示す特性)と、エッジ強調処理1242においてエッジ強調係数βEkを乗算したときの処理応答と濃度との関係(点線で示す特性)を示す図である。図16に示すように、濃度依存補正処理をノイズ成分の信号(エッジ平滑化処理後の信号)、エッジ成分の信号(ノイズ平滑化処理後の信号)に個別に施した結果、低濃度部ではノイズ抑制処理の程度が大きくなり、エッジ強調処理の程度が小さくなっている。これにより低濃度部でノイズを目立ちにくくすることができる。また、ノイズの目立ちにくい高濃度部では、ノイズ抑制処理の程度が小さくなり、エッジ強調処理の程度が大きくなる。これにより、高濃度部ではノイズ抑制処理の程度を小さくしてノイズ抑制処理により生じるアーチファクトを低減しつつ、エッジをより強調することが可能となる。
【0084】
《復元処理》
復元処理は、図17に示すように差分画像信号bk−1を原画像信号Sinに加算して逆変換する処理である。なお、本実施形態では、ラプラシアンピラミッド法により複数の細部画像から逆変換(復元)するものとする。このラプラシアンピラミッド法によれば迅速な処理が可能となるが、他の手法を用いることも可能である。
【0085】
まず、最低周波数帯域の差分画像信号bL−1に補間処理を施して各画素の間を補間し、4倍の大きさの画像信号bL−1′とする。次に、補間された画像信号bL−1′と、1段階周波数帯域の高い非鮮鋭画像信号bL−2とを対応する画素同士で加算し、加算画像信号(bL−1′+bL−2)を得る。
次いで、この加算画像信号(bL−1′+bL−2)に補間処理を施し、各画素の間を補間してさらに4倍の大きさの画像bL−2′を得る。次に、補間された画像bL−2′と、1段階周波数帯域の高い非鮮鋭画像信号bL−3とを対応する画素どうして加算して、加算画像信号(bL−2′+bL−3)を得る。
【0086】
以上の処理をより周波数が高い差分画像信号bkとの間で繰り返す。そして、最終的に画像信号b1′と最高解像度の差分画像信号b0とを加算したものを原画像信号Sinに加算することにより、処理済み画像信号Soutを得る。
【0087】
小児用の画像処理条件は、以下の通りである。
小児用の階調変換処理を行う際には、G値を一般撮影用のG値より大きい値とし、ノイズ低減処理においてノイズ抑制処理のノイズ抑制係数βNkを一般撮影のものより大きい値に設定し、ノイズ抑制の程度を大きくする。或いは、G値を一般撮影用のG値より小さい値とし、ノイズ抑制処理においてエッジ強調処理のエッジ強調係数βEkを一般撮影のものより大きい値に設定し、エッジ強調の程度を大きくする。
【0088】
一般的には、小児用股関節画像の階調変換処理時のG値は2.0〜2.2程度で与えられることが多い。また、ノイズ抑制、エッジ強調に係る係数βNk、βEkは画像自体のX線量、診断目的により異なるが、βNkが0.2〜0.6程度、βEkが0〜0.4程度である。
例えば、エッジ成分SE=100、ノイズ成分SN=100のX線画像に対して、G値2.0、βNk=0.4、βEk=0.2の画像処理条件で画像処理を行った場合、画像処理後の関心領域内のエッジ成分SE、ノイズ成分SNはそれぞれ、SE=240、SN=120となり、その比SE/SNはSE/SN=240/120=2.0となる。
【0089】
SNを一定に保ち、SEを向上させるには、例えばG値を3.0、βNk=0.6、βEk=0.2とすればよい。すなわち、G値を増加させるとともにβNkを増加させる。
一方、SEを一定に保ち、SNを向上させるには、例えばG値を1.5、βNk=0.4、βEk=0.6とすればよい。すなわち、G値を減少させるとともにβEkを増加させる。
【0090】
小児等を撮影対象とする場合、位相コントラスト撮影が行われる。位相コントラスト撮影により得られたX線画像の場合、位相コントラスト効果により人体組織等の辺縁はもともとエッジ強調された画質となっている。よって、ノイズ低減処理ではエッジ成分とノイズ成分を精度良く抽出することができるとともに、ノイズ低減処理において上記のエッジ強調処理1242を経ることにより、辺縁部分のエッジはより強調されることとなる。また、低エネルギーのX線を用いて短時間での撮影となるため、一般撮影と比べて信号値は低くなりノイズが出やすい。しかし、ノイズ低減処理においてノイズ抑制処理1241を経ることにより、低信号値(低濃度部)におけるノイズをできるだけ低減させることができ、上記エッジ強調との相乗作用により、より鮮明な画質を得ることが可能となる。
【0091】
次に、X線画像システム1の動作について説明する。
図18は、X線画像システム1における撮影からX線画像の出力までの流れを示すフローチャートである。
小児を対象とした撮影を行う場合、制御サーバ20は小児用の撮影条件で撮影が可能な撮影装置10bに撮影オーダ情報を送信する(ステップS11)。
撮影装置10bでは、撮影オーダ情報に従って、小児用の撮影条件により位相コントラスト撮影を行う(ステップS12)。すなわち、X線源2から照射するX線の焦点径Dを30〜200(μm)、管電圧を50kVp以下とし、拡大率Mを1.2≦M≦5、R1≧(D−7)/200、距離R2をR2≧0.15の範囲内とする。また、撮影時間は0.02s以内である。
【0092】
撮影済みの画像検出器6は撮影者によって読取装置10dに装填される。読取装置10dは読取処理を実行し、X線画像のデータを生成する。そして、生成したX線画像のデータのヘッダに画像処理条件等を書き込み、画像生成に関する付帯情報とする。その後、制御サーバ20の制御に従って、X線画像のデータは読取装置10dから画像処理装置30に送信される。なお、制御サーバ20ではX線画像の識別を以下のように行う。まず、予め撮影に用いる画像検出器6に付されている識別番号を撮影者に入力させ、制御サーバ20がその識別番号を撮影オーダ情報に対応付けて記憶しておく。そして、読取装置10dにおいて画像検出器6からX線画像を読み出す際に画像検出器6の識別番号も読み出し、この識別番号の情報をX線画像に付帯させる。制御サーバ20ではX線画像に付帯された識別番号を参照することにより、当該識別番号を元にそのX線画像の撮影オーダ情報を判別し、X線画像を識別することができる。
【0093】
画像処理装置30では、制御サーバ20の制御に従って、小児用の画像処理条件によりX線画像のデータに画像処理を施す。画像処理は、階調変換処理の後にノイズ低減処理、或いはノイズ低減処理の後に階調反転処理の順で施す(ステップS13)。階調変換処理ではG値を上げ、ノイズ低減処理ではノイズ抑制の程度を大きくする。或いはG値を下げ、ノイズ低減処理においてノイズ抑制を行うことともに、強調の程度の大きいエッジ強調を行う。
各画像処理が終了すると、画像処理装置30はX線画像データのヘッダに画像処理条件を書き込み、画像処理に関する付帯情報とする。その後、制御サーバ20の制御によりX線画像のデータは画像サーバ40に送信される。画像サーバ40では、X線画像データの保存処理を行う(ステップS14)。
【0094】
制御サーバ20は、画像サーバ40に保存されたX線画像のデータについて読影装置50b、50cから送信要求を受け付け、送信要求されたX線画像のデータを読影装置50a、50bに転送するよう指示する制御情報を画像サーバ40に送信する。画像サーバ40では、この制御情報に従って指定されたX線画像のデータを読影装置50a、50bに送信する。
【0095】
読影装置50b、50cでは、X線画像データの表示出力を行う。医師によりフィルムへの出力の指示操作がなされた場合には、X線画像データをフィルム出力装置50aに送信する。フィルム出力装置50aでは受信されたX線画像データのフィルム出力を行う(ステップS15)。
【実施例】
【0096】
X線画像システムにおいて下記の実験条件により撮影(比較例1、2、実施例1−3)を行い、得られたX線画像をフィルムに出力した出力画像について視覚評価を行った。
〈実験条件〉
被写体:小児を模した模擬ファントム(京都科学社製)の股関節部分を撮影した。
撮影装置:撮影装置はコニカミノルタ社で試作したものを用いた。
X線源:比較例1、2では従来から使用されている医療用W陽極X線管(Varian社A-192)を用いた。焦点径Dは1200(μm)である。一方、実施例1−3ではコニカミノルタ社で試作したW陽極X線管を用いた。焦点径Dは100(μm)である。
画像検出器:蛍光体プレートは同社製のRegiusプレートを用いた。
読取装置:同社製のRegius model 190を用いた。読取ピッチは87.5μmである。
出力装置:同社製のDRYPRO model 793
【0097】
〈撮影条件〉
X線エネルギー:管電圧を制御してX線エネルギーを表1のように調節した。
管電流:100mA
撮影時間:0.005〜0.02(s)の範囲で可変させた。
撮影距離:比較例1では拡大率M=1とし、撮影距離R1を0.5m、R2を0mとした。実施例1〜5及び比較例2では拡大率M=2とし、撮影距離R1、R2をそれぞれ0.5mとした。
〈画像処理条件〉
比較例1、2及び実施例1−3:画像処理は無処理
実施例4、5:G値1.5の階調変換処理、βNk=0.4、βEk=0.6のノイズ低減処理を施した。
【0098】
〈評価基準〉
フィルム上に出力形成されたX線画像の股関節部分の画質について評価した。画質評価は鮮鋭性と粒状性を総合的に評価する。
◎: 極めて明瞭に視認できる。
○:明瞭に視認できる。
△:視認できる。
×:視認できない。
上記の評価基準に従って、7人の画像評価者がフィルム上の画像を観察し、画質評価を行った。
【0099】
〈評価結果〉
表1にその評価結果を示す。
【表1】
なお、表1においてmAs値は管電流の値に撮影時間を乗算して求めた値で、X線量と比例する。すなわち、mAs値が大きいほど、X線量は増加する。
【0100】
表1では実施例1〜5によるX線画像が鮮鋭性、粒状性において良好な画質となっていることが分かる。
比較例1と実施例2を比較すると、同一X線量でありながら、実施例2の方が良い画質が得られている。これは位相コントラスト撮影法の効果である。
実施例1と実施例3を比較すると、実施例3では撮影時間を短くして、実施例1のX線量の約25%までX線量を減少しているにも拘わらず実用上問題のない画質が得られている。よって、本発明により、X線量を減少させても、従来と同様の画質の実現が可能であることが明らかである。
実施例3と実施例4を比較すると同一X線量でありながら、実施例4では画質が向上している。これは実施例4で実施したノイズ低減処理の効果である。よって、X線量を減少させても、本発明によるノイズ低減処理を行うことにより画質を向上できる。
実施例2と比較例2を比較すると同一X線量でありながら比較例2では画質が低下している。これは比較例2ではX線エネルギーを本発明の範囲の上限(30keV)より高くしたためで、位相コントラスト撮影法の効果を得るためには、X線エネルギーを30KeV以下に調節することが必要である。
なお、本発明の範囲の下限(15keV)より低くすると被写体の被曝量が増大するので好ましくない。
【0101】
実施例3、4では撮影時間が0.005sと短時間で十分な画質が得られている。小児は撮影の間、静止させることが難しい。よって、このように短時間での撮影でも視認性の良いX線画像を得ることができるのであれば撮影作業の容易性、小児への被曝量の観点から非常に好ましい構成である。また、撮影の間に発生する小児の動きに伴うボケを抑制できるので、従来の長時間撮影する手法に比べて画像の鮮明性は良好な方向となる。さらに、実施例1〜3では比較例1、2に比して全体的に良好な画質となっている。焦点径100μmと小焦点径にすることにより、位相コントラスト効果におけるボケBの広がりを抑え、エッジ強調効果を高めていることが要因の一つであると考えられる。
なお、実施例1〜5において拡大率Mを1.2から5の範囲で可変させた場合も上記と同様の評価結果が得られている。
【0102】
以上のように、本実施形態によれば、小児等を撮影対象とする場合、位相コントラスト撮影によってX線画像を得てこれにノイズ低減処理を施す。位相コントラスト撮影により得られるX線画像は被写体組織の辺縁等がエッジ強調されているため、ノイズ低減処理においてノイズ成分と区別してエッジ成分を抽出しやすく、エッジ強調及びノイズ抑制を精度良く行うことができる。すなわち、鮮明で高画質な処理画像を得ることができるため、小児用の撮影において撮影時のX線量を少線量としても読影に十分な画質のX線画像を得ることができる。また、画質を優先するのであれば、X線量は特に調整せずに撮影を行うことにより通常撮影時よりも鮮明で高画質なX線画像を得ることができる。
【0103】
また、ノイズ低減処理ではエッジ強調係数βEk及びノイズ抑制係数βNkによりエッジ強調、ノイズ抑制の程度を別々に調整することが可能である。よって、自由度の高い処理が可能となる。さらに、濃度依存補正処理を施すことにより、エッジ強調、ノイズ抑制に伴うノイズやアーチファクトの発生を抑止することができる。
【0104】
また、ノイズ低減処理と併せて階調変換処理、階調反転処理を行うことにより、X線画像の画質を効果的に向上させることができる。例えば、階調変換処理におけるG値、ノイズ低減処理における係数βEk、βNkを調整することにより、ノイズ成分、エッジ成分の調整を行うことが可能である。また、小児用の撮影では低X線量とするため、X線画像全体の信号値が小さくなり、ノイズと画像信号との見分けがつきにくいが、ノイズ低減処理の後、階調反転処理を行うことによりノイズの視認性をさらに低下させることができる。
【0105】
なお、上記実施形態は本発明を適用した好適な一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、小児用の撮影時にはX線量を低減させるため、画像検出器の感度を向上させることとしてもよい。画像検出器に蛍光体プレートを用いる場合にはフォトマル感度を上げる、FPDを用いる場合にはアンプのゲインを上げること等が考えられる。
【0106】
また、画像検出器の蛍光体プレートとして、粒状性を重視した粒状性タイプと、鮮鋭性を重視した鮮鋭性タイプとを選択できることとしてもよい。粒状性タイプは、蛍光体プレートの厚みを大きく調整したものである。蛍光体層を厚くしたことで蓄積できるX線エネルギー量が大きくなるため、信号値が全体として高くなり、低ノイズのX線画像を得ることができる。一方、鮮鋭性タイプは蛍光体プレートの厚みを小さく調整したものである。蛍光体層を薄くしたことで蛍光体層における入射X線の反射を低減し、反射によるボケを低減させて鮮鋭性の高いX線画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態におけるX線画像システムのシステム構成を示す図である。
【図2】X線撮影装置の一例を示す図である。
【図3】位相コントラスト撮影及び位相コントラスト効果について説明する図である。
【図4】位相コントラスト効果におけるエッジ強度とボケの関係を示す図である。
【図5】位相コントラスト効果においてボケが生じる場合について説明する図である。
【図6】X線撮影装置の他の例を示す図である。
【図7】画像処理装置の内部構成を示す図である。
【図8】階調変換処理において目標とする階調変換特性を示す図である。
【図9】階調変換処理時の信号値の変換の流れを示す図である。
【図10】ノイズ低減処理の流れの一部を示す図である。
【図11】(a)は差分画像信号のある一列分の画像信号を模式的に示す図である。(b)は(a)の画像信号についてのエッジ成分、非エッジ成分の分類を示す図である。
【図12】(a)は二次元の平滑化フィルタ係数の一例を示す図である。(b)は一次元の平滑化フィルタ係数の一例を示す図である。
【図13】濃度依存補正処理において用いられる補正関数の一例を示す図である。
【図14】図13の補正関数のコントラストに対する応答を示す図である。
【図15】(a)はノイズ平滑化処理に対応する補正関数の濃度に対する応答を示す図である。(b)はエッジ平滑化処理に対応する補正関数の濃度に対する応答を示す図である。
【図16】エッジ強調処理の濃度に対する処理応答と、ノイズ抑制処理の濃度に対する処理応答を示す図である。
【図17】ノイズ低減処理の流れの一部を示す図である。
【図18】X線画像システムにおける全体的な動作の流れを説明する図である。
【符号の説明】
【0108】
1 X線画像システム
10b 撮影装置
2 X線源
3 撮影部
6 画像検出器
7 蛍光体プレート
W 被写体
10d 読取装置
20 制御サーバ
30 画像処理装置
37 画像処理部
40 画像サーバ
50a フィルム出力装置
50b、50c 読影装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に向けてX線を照射するX線源と、前記被写体を透過したX線を検出する画像検出器とを有し、前記被写体と画像検出器とを離間せしめて、X線源から15〜30(keV)のX線エネルギーのX線を前記被写体に照射し、位相コントラスト撮影を行う撮影手段と、
前記位相コントラスト撮影によるX線画像のデータを生成する画像生成手段と、
前記生成されたX線画像に対し、ノイズ低減処理を含む画像処理を施す画像処理手段と、
前記画像処理が施された処理画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするX線画像システム。
【請求項2】
前記X線源の焦点径は、30〜200(μm)とすることを特徴とする請求項1に記載のX線画像システム。
【請求項3】
前記X線源の焦点径は、50〜120(μm)とすることを特徴とする請求項2に記載のX線画像システム。
【請求項4】
前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.2≦M≦5とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のX線画像システム。
【請求項5】
前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.5≦M≦3とすることを特徴とする請求項4に記載のX線画像システム。
【請求項6】
前記画像処理には、前記X線画像のコントラストを変更する階調変換処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に階調変換処理を施した後、前記ノイズ低減処理を施して処理画像を生成することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システム。
【請求項7】
前記画像処理には、前記X線画像の階調を反転する階調反転処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に前記ノイズ低減処理を施した後、前記階調反転処理を施して処理画像を生成することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システム。
【請求項1】
被写体に向けてX線を照射するX線源と、前記被写体を透過したX線を検出する画像検出器とを有し、前記被写体と画像検出器とを離間せしめて、X線源から15〜30(keV)のX線エネルギーのX線を前記被写体に照射し、位相コントラスト撮影を行う撮影手段と、
前記位相コントラスト撮影によるX線画像のデータを生成する画像生成手段と、
前記生成されたX線画像に対し、ノイズ低減処理を含む画像処理を施す画像処理手段と、
前記画像処理が施された処理画像を出力する出力手段と、
を備えることを特徴とするX線画像システム。
【請求項2】
前記X線源の焦点径は、30〜200(μm)とすることを特徴とする請求項1に記載のX線画像システム。
【請求項3】
前記X線源の焦点径は、50〜120(μm)とすることを特徴とする請求項2に記載のX線画像システム。
【請求項4】
前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.2≦M≦5とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のX線画像システム。
【請求項5】
前記位相コントラスト撮影の拡大率Mを、1.5≦M≦3とすることを特徴とする請求項4に記載のX線画像システム。
【請求項6】
前記画像処理には、前記X線画像のコントラストを変更する階調変換処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に階調変換処理を施した後、前記ノイズ低減処理を施して処理画像を生成することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システム。
【請求項7】
前記画像処理には、前記X線画像の階調を反転する階調反転処理が含まれ、
前記画像処理手段は、前記X線画像に前記ノイズ低減処理を施した後、前記階調反転処理を施して処理画像を生成することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のX線画像システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−73515(P2008−73515A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211784(P2007−211784)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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