説明

X線診断装置

【課題】被検体に対し少ない被曝量でワーキングアングルを決定し、支持器を制御することができるX線診断装置を提供する。
【解決手段】実施形態のX線診断装置は、被検体に対しプローブを接触して超音波画像を撮影する超音波診断装置と通信を行うX線診断装置において、前記被検体に対する超音波診断装置のプローブの角度および位置の少なくともいずれかを検出する検出部と、前記検出部で検出した前記プローブの角度に基づき、X線撮影角度である臨床角を算出する角度算出部と、前記角度算出部で算出した前記臨床角に基づき、支持器を移動させる駆動部と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体内にカテーテルを入れ、X線診断装置で観察しながら治療を行うインターベンション(血管内カテーテル治療)が知られている。
【0003】
インターベンションによる心臓の大動脈弁置換術では、カテーテルを用いて人工弁を患部に留置する手技が行われている。その際、人工弁を留置するときの位置決めが最も重要であり、誤差5mm程度の精度が必要である。医師は、高精度で大動脈弁を患部に留置するために、X線診断装置の支持器の角度を、大動脈に対して垂直に(血管の円筒に対して垂直に)設定する必要がある。このときの支持器の角度をワーキングアングルと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−047064号公報
【特許文献2】特開2007−075589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では医師がX線撮影を行いながら試行錯誤によってワーキングアングルを決定している。そのため、被検体に対する被曝量が多くなる可能性があった。一方超音波診断装置は被曝を伴わず、観察箇所を特定するために被検体に対し複数回撮影を行っても、極めて低侵襲である。しかし超音波診断装置は、X線診断装置の支持器とは連動していないため、超音波診断装置の観察箇所に合わせてX線診断装置の支持器の角度を制御することが出来ない。
【0006】
本発明の実施形態はこのような点を考慮してなされたもので、被検体に対し少ない被曝量でワーキングアングルを決定し、支持器を制御することができるX線診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のX線診断装置は、被検体に対しプローブを接触して超音波画像を撮影する超音波診断装置と通信を行うX線診断装置において、前記被検体に対する超音波診断装置のプローブの角度および位置の少なくともいずれかを検出する検出部と、前記検出部で検出した前記プローブの角度に基づき、X線撮影角度である臨床角を算出する角度算出部と、前記角度算出部で算出した前記臨床角に基づき、支持器を移動させる駆動部と、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線診断装置のハードウェア構成を示す概略図。
【図2】本実施形態のX線診断装置における保持装置の外観構成を示す斜視図。
【図3】X線診断装置の制御部の詳細を示すブロック図。
【図4】超音波診断装置の構成を示すブロック図。
【図5】超音波画像上に臨床角を表示する動作を示すフローチャート。
【図6】被検体に対するCアームの動作方向を示す図であり、(a)被検体の体軸と平行に被検体頭部から見た図、(b)被検体の体軸と垂直に、被検体右手側から見た図。
【図7】超音波画像と臨床角とを同時表示した場合の表示例を示す図。
【図8】超音波画像上で臨床角の変更を行う場合の表示例を示す図。
【図9】3次元画像上に臨床角を表示する動作を示すフローチャート。
【図10】(a)3次元座標空間の軸方向、(b)超音波プローブの軸方向との関係を示す図。
【図11】3次元画像と断面とを同時表示した場合の表示例を示す図。
【図12】3次元画像上で断面の角度変更を行う場合の表示例を示す図。
【図13】第2断層面と臨床角とを同時表示した場合の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態のX線診断装置100のハードウェア構成、およびX線診断装置100とネットワークNにより接続される超音波診断装置800、CT装置700、MRI装置900とを示す概略図である。超音波診断装置800は超音波画像を撮影しX線診断装置100に送信する。CT装置700はCT画像を撮影し、VR(Volume Rendering)処理により3次元CT画像を形成して、X線診断装置100に送信する。MRI装置900はMR(Magnetic Resonance)画像を撮影し、VR処理により3次元MR画像を形成して、X線診断装置100に送信する。
【0011】
図2は、X線診断装置100における保持装置50の外観構成を示す斜視図である。図1および図2は、本実施形態の一例として、天井走行式Cアームを備えるX線診断装置100を示す。
【0012】
X線診断装置100は、大きくは、保持装置50およびDF(digital fluorography)装置60から構成される。保持装置50は、検査・治療室に、DF装置60は機械室などに設置される。なお、本発明に係るX線診断装置は、天井走行式Cアームを備えるX線診断装置100に限定されるものではなく、床走行式Cアームを備えるX線診断装置であってもよい。
【0013】
保持装置50は、スライド機構21、鉛直軸回転機構23、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、受像装置28、寝台29、コントローラ30、高電圧供給装置31、駆動制御部32を設ける。
【0014】
スライド機構21は、Z軸方向レール211、X軸方向レール212、および台車213を設ける。スライド機構21は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、鉛直軸回転機構23、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、および受像装置28を一体として水平方向にスライドさせる。
【0015】
Z軸方向レール211は、Z軸方向(天板29aの長軸方向)に延設され、天井に支持される。
【0016】
X軸方向レール212は、X軸方向(天板29aの短軸方向)に延設され、その両端のローラ(図示しない)を介してZ軸方向レール211に支持される。X軸方向レール212は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、Z軸方向レール211上をZ軸方向に移動される。
【0017】
台車213は、ローラ(図示しない)を介してX軸方向レール212に支持される。台車213は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、X軸方向レール212上をX軸方向に移動される。
【0018】
台車213を支持するX軸方向レール212がZ軸方向レール211上をZ軸方向に移動可能であり、台車213がX軸方向レール212上をX軸方向に移動可能であるので、台車213は検査室内を水平方向(X軸方向およびZ軸方向)に移動可能である。
【0019】
鉛直軸回転機構23は、台車213に回転可能に支持される。鉛直軸回転機構23は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、懸垂アーム24、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、および受像装置28を一体として鉛直軸回転方向T1(図2に図示)に回転させる。
懸垂アーム24は、鉛直軸回転機構23によって支持される。
【0020】
Cアーム回転機構25は、懸垂アーム24に回転可能に支持される。Cアーム回転機構25は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、Cアーム26、X線照射装置27、および受像装置28を一体として懸垂アーム24に対する回転方向T2(図2に図示)に回転させる。
【0021】
Cアーム26は、Cアーム回転機構25によって支持され、X線照射装置27と受像装置28とを、被検体Pを中心に対向配置させる。Cアーム26の背面又は側面にはレール(図示しない)が設けられ、Cアーム回転機構25とCアーム26とによって挟み込まれる当該レールを介して、Cアーム26は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、X線照射装置27、および受像装置28を一体としてCアーム26の円弧方向T3(図2に図示)に円弧動させる。
【0022】
X線照射装置27は、Cアーム26の一端に設けられる。X線照射装置27は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、前後動が可能なように設けられる。X線照射装置27は、高電圧供給装置31から高電圧電力の供給を受けて、高電圧電力の条件に応じて被検体Pの所定部位に向かってX線を照射する。X線照射装置27は、X線の出射側に、複数枚の鉛羽で構成されるX線照射野絞りや、シリコンゴム等で形成されハレーションを防止するために所定量の照射X線を減衰させる補償フィルタ等を設ける。
【0023】
受像装置28は、Cアーム26の他端であってX線照射装置27の出射側に設けられる。受像装置28は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、前後動が可能なように設けられる。受像装置28は、FPD(Flat Panel Detector:平面検出器)28aを含む。FPD28aは、平面的に配列された複数の検出素子によりX線を検出して電気信号に変換する。
【0024】
寝台29は、床面に支持され、天板(カテーテルテーブル)29aを支持する。寝台29は、駆動制御部32を介したコントローラ30による制御によって、天板29aを水平(X、Z軸方向)動、上下(Y軸方向)動およびローリングさせる。天板29aは、被検体Pを載置可能である。なお、保持装置50は、X線照射装置27が天板29aの下方に位置するアンダーチューブタイプである場合を説明するが、X線照射装置27が天板29aの上方に位置するオーバーチューブタイプである場合であってもよい。
【0025】
コントローラ30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを含んでいる。コントローラ30は、後述する操作部14からの指示に従って、高電圧供給装置31、および駆動制御部32等の動作を制御する。
【0026】
高電圧供給装置31は、コントローラ30の制御に従って、X線照射装置27に高電圧電力を供給する。
【0027】
駆動制御部32は、コントローラ30の制御に従って、スライド機構21、鉛直軸回転機構23、Cアーム回転機構25、Cアーム26、X線照射装置27、受像装置28、および寝台29の天板29aをそれぞれ駆動可能である。
【0028】
DF装置60は、コンピュータをベースとして構成されており、制御部10、第1の表示部11、第2の表示部12、第3の表示部13、操作部14、通信部15、記憶部16、情報記憶媒体17、画像処理部18、画像データベース19、角度データベース20を含み、バスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。DF装置60の制御部10は、保持装置50のコントローラ30と接続されて相互の動作を制御する。
【0029】
操作部14はキーボードやマウス等であり、データの入力を行う。また操作部14は、コントローラ30および駆動制御部32を介して、保持装置50の各機構の動作を指示する。第1の表示部11、第2の表示部12、第3の表示部13はモニタ等である。第1の表示部11は、被検体の超音波画像と、撮影角度算出部111で算出した臨床角を同時表示する。第2の表示部12は、画像データベース19に格納される、VR(Volume Rendering)処理された3次元CT画像を表示する。第3の表示部13はX線画像を表示する。詳細は後述する。
通信部15は、病院内LAN等のネットワークNに接続し、例えば超音波診断装置800やCT装置700等といった外部の装置との通信を行う。
【0030】
記憶部16は、制御部10や通信部15などのワーク領域となるもので、RAM(Random Access Memory)などにより実現できる。また記憶部16は、Cアーム26の可動範囲を格納する。
【0031】
情報記憶媒体17(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、ハードディスク、或いはメモリ(Flash Memory、ROM:Read Only Memory)などにより実現できる。情報記憶媒体17には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)、GUI(Graphical User Interface)等のソフトウェア、複数のアプリケーション等が記憶される。
【0032】
制御部10は、全体の制御を司り、様々な演算処理や制御処理などを行う演算装置である。制御部10の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。制御部10は、情報記憶媒体17に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。
【0033】
画像データベース19は、投影画像データ記憶部191、画像処理後データ記憶部192、超音波画像データ記憶部193、3次元画像データ記憶部194を含む。投影画像データ記憶部191は、保持装置50のFPD28aから出力された投影画像データを記憶する。画像処理後データ記憶部192は、画像処理回路182から出力された撮影画像をデータとして記憶する。超音波画像データ記憶部193は、外部の超音波診断装置800で撮影した超音波画像を格納する。3次元画像データ記憶部194は、外部のCT装置700等であらかじめ撮影された被検体の3次元画像を格納する。
【0034】
画像処理部18は、画像データベース19に格納される画像データの各種処理を行う。画像処理部18は、画像取得部181、画像処理回路182を含む。
【0035】
画像取得部181は、投影画像データ記憶部191に格納された投影画像データを取得する。また画像取得部181は、超音波診断装置800で撮影された超音波画像、およびCT装置700で撮影され画像処理された3次元CT画像を通信部15を介して取得し、それぞれ超音波画像データ記憶部193、3次元画像データ記憶部194に格納する。
【0036】
画像処理回路182は、画像取得部181が投影画像データ記憶部191から取得した投影画像データに対して、対数変換処理(LOG処理)を行なって必要に応じて加算処理して、透視画像および撮影画像(DA画像)のデータを生成し、この透視画像および撮影画像に対して画像処理を行う。画像処理としては、データに対する拡大/階調/空間フィルタ処理や、時系列に蓄積されたデータの最小値/最大値トレース処理、およびノイズを除去するための加算処理等が挙げられる。なお、画像処理回路182による画像処理後のデータは、第3の表示部13に出力されると共に、画像処理後データ記憶部192に記憶される。
【0037】
第3の表示部13は、制御部10の制御によって、画像処理回路182によって生成される透視画像および撮影画像のデータに、検査情報(パラメータの文字情報および目盛等)を合成し、合成信号をD/A変換後、ビデオ信号として表示する。第3の表示部13は、画像処理回路182から出力される透視画像および撮影画像をライブ表示するライブモニタや、画像処理回路182から出力される撮影画像を静止画像表示、また、動画再生表示する参照モニタや、FOV(field of view)切り替えのためのデータ等、主に保持装置50の制御を行なうためのデータを表示するシステムモニタ等を含む。
【0038】
図3に制御部10の詳細なブロック図を示す。制御部10は、撮影角度算出部111、撮影角度修正部112、移動可能判定部113、断層面算出部114を含み、バスによって相互に通信可能に接続されて構成されている。
【0039】
撮影角度算出部111は、後述する超音波診断装置800の超音波プローブ89の角度に基づき、被検体に対するX線撮影角度(臨床角)を算出する。また撮影角度算出部111は、3次元画像上に表示した断層面について、3次元座標空間から2次元座標空間への座標変換を行い、被検体に対するX線撮影角度(臨床角)を算出する。詳細は後述する。
【0040】
撮影角度修正部112は、GUIを用いたユーザの操作により変更された角度を再度計算して、臨床角を修正する。移動可能判定部113は、撮影角度修正部112で修正したX線撮影角度について、Cアーム26が移動可能かを判定する。
断層面算出部114は、被検体上の超音波プローブ89の位置に基づき、第1の表示部11に表示された3次元CT画像上における断層面を算出する。また断層面算出部114は、ユーザが操作部14を用いて変更した、3次元CT画像上における断層面も算出する。詳細は後述する。なお、制御部10内の各機能は、X線診断装置100の内部に限らず、外付けの装置内にあってもよい。
【0041】
角度データベース20は、制御部10内の撮影角度算出部111で算出した臨床角、および撮影角度修正部112で再度算出し修正した臨床角を格納する。詳細は後述する。
【0042】
図4にX線診断装置100とネットワークNを介して接続する超音波診断装置800の詳細ブロック図を示す。超音波診断装置800は、制御部80、表示部82、操作部83、通信部85、記憶部86、情報記憶媒体87、画像処理部88、超音波プローブ89を含む。
【0043】
制御部80、操作部83、通信部85、記憶部86、情報記憶媒体87は、X線診断装置100と同様の動作を行うため、説明を省略する。
【0044】
超音波プローブ89は角度センサ891および位置センサ892を備える。超音波プローブ89は被検体に当てることで、当該位置における断層画像データを撮影し、角度センサ891および位置センサ892で検出した角度情報および位置情報と共に画像処理部88に送る。画像処理部88は、超音波プローブ89が取得した断層画像データに画像処理を行って、角度情報および位置情報を含む超音波画像を生成する。
表示部82は、被検体での超音波プローブ89の位置における超音波画像を表示する。
【0045】
次に、上記構成のX線診断装置100の動作について説明する。なお、本実施形態においては、例えば心臓の大動脈弁置換術を行うために大動脈弁が観察出来る角度を決定する動作について述べる。
【0046】
<実施例1>
超音波画像上に臨床角を表示する場合の超音波診断装置800およびX線診断装置100の動作の一例について、図5を用いて説明する。
【0047】
まず超音波診断装置800における超音波プローブ89のキャリブレーションを行う(ステップS101)。キャリブレーションの一例を、図6に示すCアーム26の動作方向を参照して以下に述べる。図6(a)は被検体の体軸と平行に、被検体頭部から見た図である。Cアーム26がT2方向に動作する際、被検体の左手側方向をLAO方向、右手側方向をRAO方向とする。図6(b)は被検体の体軸と垂直に、被検体の右手側から見た図である。Cアーム26がT3方向に動作する際、被検体の頭部方向をCRA方向、脚部方向をCAU方向とする。ユーザは超音波プローブ89を垂直に立て、超音波画像のファン方向が被検体の左右方向と一致するようにする。制御部80は、超音波プローブ89が有する角度センサ891の情報を、通信部85を介してX線診断装置100の撮影角度算出部111に送信する。撮影角度算出部111は、送信された角度センサ891の情報より、現在の状態をLAO、RAO方向0度、CRA、CAU方向0度と設定する。
【0048】
次に、ユーザは超音波プローブ89を被検体に接触させる(ステップS103)。次にユーザは、超音波プローブ89を操作して表示部82に表示される超音波画像を見ながら、大動脈弁が垂直に観察出来る位置を探す。そして当該位置が決定したら、超音波プローブ89は超音波画像(断層画像)データを撮影して取得し(ステップS104)、角度センサ891は超音波プローブ89の角度に関する情報を検出する(ステップS105)。このとき角度センサ891は6軸モーションセンサを用い、x、y、z方向に水平方向の加速度a(t)と、x軸、y軸、z軸まわりの角速度ω(t)を検出する。
【0049】
制御部80は、角度センサ891が検出した加速度a(t)および角速度ω(t)を通信部85を介してX線診断装置100に送る(ステップS107)。
【0050】
X線診断装置100内の制御部10は、ステップS107で送信された加速度a(t)および角速度ω(t)を通信部15を介して取得する(ステップS151)。次に制御部10内の撮影角度算出部111は、ステップS151で取得した加速度a(t)および角速度ω(t)の情報に基づき、X線撮影角度(臨床角)を算出する(ステップS153)。
【0051】
ステップS153における臨床角の算出方法の詳細について述べる。時刻tにおける加速度a(t)と角速度ω(t)が分かれば、(1)式、(2)式より時刻tにおける位置x(t)と角度θ(t)を算出することができる。
【0052】
【数1】

【0053】
撮影角度算出部111は、図6より、ステップS101において超音波プローブ89のキャリブレーションを行った時刻をt=0とし、(2)式より、時刻tにおけるz軸まわりの角度θz(t)、x軸まわりの角度θx(t)を算出して、臨床角を求める。求めた臨床角は、角度データベース20内に一時的に格納する。
【0054】
次に第1の表示部11は、ステップS153で算出した臨床角と、ステップS104で超音波プローブ89が撮影して取得した超音波画像とを同時表示する(ステップS155)。この同時表示の例を図7に示す。図7では、超音波プローブ89が撮影した超音波画像上に、臨床角「LAO40°、CAU10°」を重畳して右下に表示している。この時点で第1の表示部11に臨床角が表示されているが、Cアーム26自体はまだ表示されている臨床角に動作していない。
【0055】
大動脈弁を垂直に観察出来る断面の位置が決定しても、その断面におけるX線照射装置27とFPD28を対向配置するための角度、つまりCアーム26の取り得る臨床角は360度存在する。しかし実際には機械的な制約があるため、Cアーム26の取り得る臨床角の範囲は限られている。また、ユーザが治療する際に、Cアーム26がユーザにとって邪魔な位置とならず、ユーザが観察かつ治療のし易い適切な観察角度が存在する。よって、ステップS153で算出した臨床角から、Cアーム26の可動範囲であり、かつユーザが観察しやすい角度(以後、実臨床角とする)に修正する必要がある。
【0056】
そこで制御部10は、モニタ上で角度の変更が可能なGUIを情報記憶媒体17から呼び出し、このGUIに基づく表示を超音波画像上に重畳して、第1の表示部11に表示する(ステップS156)。一例を図8に示す。図8で、超音波画像の縦軸に対して水平な矢印[A1]が、ステップS153で算出した臨床角における向きとし、ポインタ[X]をドラッグすることによって矢印[A1]の向きが変更されるとする。このとき、矢印[A1]の角度値は右下の[a1]の位置に表示される。ユーザが操作部14を用い、ポインタ[X]をドラッグして矢印を[A2]の向きに変更すると、撮影角度修正部112は、矢印[A]と矢印[A2]とで成す角度φと、[a1]の位置に表示されている臨床角とに基づいて、矢印[A2]における角度を算出し、第1の表示部11の左下、[a2]の位置に角度を表示する(ステップS157)。
【0057】
次に移動可能判定部113は、記憶部16に格納されたCアーム26の可動範囲の角度を参照し、ステップS157で算出した矢印[A2]における角度が、Cアーム26の移動可能な角度であるか否かを判定する(ステップS159)。Cアーム26の移動可能な角度では無い場合(ステップS159で「No」)、第1の表示部11は、超音波画像上にエラー表示を行ったり、[a2]の角度表示の色を変更したりと、角度を修正するよう促す表示を行う(ステップS161)。
【0058】
ステップS157で算出した角度がCアーム26の移動可能な角度である場合(ステップS159で「Yes」)、この角度が実臨床角である。コントローラ30は駆動制御部32を介してCアーム26を当該角度になるように移動し(ステップS163)、X線撮影を行う(ステップS165)。このように、ユーザにとって観察に適切な角度かつCアーム26が移動可能な角度である実臨床角で大動脈弁が観察出来、精度の良い治療が可能となる。
【0059】
<実施例2>
上述した実施例1では、超音波プローブ89の角度に関する情報から直接臨床角を算出したが、心臓の超音波画像を撮影する場合、肋骨等に遮られ、大動脈弁を垂直方向に観察出来る被検体の位置に超音波プローブを接触するのが困難である場合がある。そこで、CT装置700やMRI装置900で予め撮影していた心臓の3次元画像と超音波画像とを対応させることによって、臨床角を算出する。
【0060】
以下、CT装置700で予め撮影した3次元CT画像上に臨床角を表示する場合の超音波診断装置800およびX線診断装置100の動作の一例について、図9を用いて説明する。
【0061】
まず、ステップS101と同様、超音波診断装置800における超音波プローブ89のキャリブレーションを行う(ステップS201)。ステップS201では、角度のキャリブレーションに加えて位置のキャリブレーションも行う。キャリブレーションの一例を、図10(a)に示す3次元画像の座標空間と、図10(b)に示す超音波プローブ89の動作方向を参照して以下に述べる。まず、角度のキャリブレーションについて述べる。ユーザは超音波プローブ89を垂直に立て、超音波画像のファン方向が被検体の左右方向と一致するようにする。制御部80は、超音波プローブ89が有する角度センサ891の情報を、通信部85を介してX線診断装置100の断層面算出部114に送信する。断層面算出部114は、送信された角度センサ891の情報より、時刻t=0において超音波プローブ89の長軸方向が3次元空間座標のy軸に平行、超音波プローブ89のファン方向がx軸に平行、超音波プローブ89の短軸方向がz軸に平行になるよう設定する。
【0062】
次に位置のキャリブレーションの一例を以下に述べる。ユーザは、角度のキャリブレーション同様に超音波プローブ89を垂直に立て、超音波画像のファン方向が被検体の左右方向と一致する状態を保ったまま、例えば被検体の胸骨の最下部を目印にして超音波プローブ89を接触させ超音波画像を撮影し、第1の表示部11にこの超音波画像を表示する。一方、X線診断装置100内の制御部10は3次元画像データ記憶部194より3次元CT画像を読み出し、第2の表示部12に表示する。ユーザは、第2の表示部12に表示された3次元CT画像より、現在超音波プローブ89が接触している胸骨の最下部の位置を探し、第1の表示部11に表示されている超音波画像と同じ断面図になる位置Pを3次元CT画像上で決定して位置合わせを行う。制御部80は、超音波プローブ89が有する位置センサ892の情報を、通信部85を介してX線診断装置100の断層面算出部114に送信する。断層面算出部114は、送信された位置センサ892の情報より、位置Pを時刻t=0の基準位置として設定する。これにより、超音波プローブ89と3次元CT画像における断面とを連動させることができる。
【0063】
次に、ステップS103同様、ユーザは超音波プローブ89を被検体に接触させる(ステップS203)。次にユーザは、超音波プローブ89を操作して表示部82に表示される超音波画像を見ながら、大動脈弁が観察出来る位置を、超音波プローブ89を被検体に接触して探す。このとき、観察位置は肋骨に邪魔されているために、超音波プローブ89は大動脈弁と垂直とはならない。当該位置が決定したら、超音波プローブ89は超音波画像(断層画像)データを撮影して取得し(ステップS204)、角度センサ891および位置センサ892は超音波プローブ89の角度および位置に関する情報をそれぞれ検出する(ステップS205)。このとき角度センサ891は上述したように6軸モーションセンサを用い、加速度a(t)と角速度ω(t)を検出する。
【0064】
制御部80は、角度センサ891が検出した加速度a(t)および角速度ω(t)、および位置センサ892が検出した、位置に関する情報を通信部85を介してX線診断装置100に送る(ステップS207)。
【0065】
X線診断装置100内の制御部10は、ステップS207で送信された加速度a(t)、角速度ω(t)、および位置に関する情報を通信部15を介して取得する(ステップS251)。次に制御部10内の断層面算出部114は、ステップS251で取得した加速度a(t)、角速度ω(t)、および位置に関する情報と、ステップS201で超音波プローブ89のキャリブレーションを行った際に読み出した3次元CT画像とに基づき、超音波プローブ89の現在位置に対応する3次元空間での断面B1を算出し、第2の表示部12に表示される3次元CT画像の該当位置に断面B1を重畳して表示する(ステップS241)。このとき第2の表示部12に表示される3次元CT画像と断面B1の例を図11に示す。
【0066】
ステップS241で得られた3次元空間での断面は、断面作成に基づく超音波プローブ89の位置が、肋骨の位置の関係上、大動脈弁を垂直に観察可能な位置ではなかったため、大動脈弁が観察しやすい断面とは限らない。よって、Cアーム26の可動範囲であり、ユーザが大動脈弁を観察しやすい断面に修正する必要がある。
【0067】
そこで制御部10は、モニタ上で断面の位置、角度の変更が可能なGUIを情報記憶媒体17から呼び出し、このGUIに基づく表示を3次元CT画像上に重畳して、第2の表示部12に表示する(ステップS242)。一例を図12に示す。図12で、ポインタXをドラッグすることによって、ステップS241で算出した断面B1から、断面B2が作成され表示される(ステップS243)。このときの断面B2を第2断層面と呼ぶ。なお、第2断層面は図12に表示されている平面上だけでなく、3次元空間上のどの平面をユーザが指定してもよい。
【0068】
次に撮影角度算出部111は、ステップS243で作成した第2断層面における3次元座標空間から、Cアーム26の動作する2次元座標空間への座標変換を行い(ステップS245)、被検体に対する臨床角を算出する(ステップS253)。このときの第2断層面および臨床角の表示の例を図13に示す。
【0069】
以降、ステップS255〜S265の第2断層面に関する動作は、実施例1におけるステップS155〜S165の超音波画像に関する動作と同様であるため、説明を省略する。このように、肋骨との位置関係のため超音波プローブ89が超音波画像の撮影を所望の位置で行えなかった場合、3次元CT画像上に断面としての超音波画像を表示して、適切な観察角度かつCアーム26が移動可能な角度で大動脈弁を観察することが出来、精度の良い治療が可能である。
【0070】
以上説明した実施例によれば、超音波プローブ89を操作して大動脈弁が垂直に観察出来る位置をさがし、当該位置について超音波画像を撮影する。この時の超音波プローブ89の角度に関する情報に基づいて、X線診断装置100の撮影角度算出部111は、臨床角を算出する。算出した臨床角から、Cアーム26の可動範囲であり、かつユーザが観察しやすい角度である実臨床角に変更する。これにより、超音波プローブ89で診断位置を決定してからX線診断装置100を使用するので、被検体に対し少ない被曝量でワーキングアングルを決定することが出来る。また、肋骨で遮られるために超音波プローブ89が大動脈弁に対して垂直に観察出来ない場合は、予めCT装置で撮影した3次元CT画像を用いて断面としての超音波画像を得、断面の角度を変更して大動脈弁に対し適切な観察面を得、臨床角および実臨床角を求めることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0072】
100…X線診断装置、50…保持装置、60…DF装置、10…制御部、11…第1の表示部、12…第2の表示部、13…第3の表示部、14…操作部、15…通信部、16…記憶部、17…情報記憶媒体、18…画像処理部、19…画像データベース、20…角度データベース、111…撮影角度算出部、112…撮影角度修正部、113…移動可能判定部、114…断層面算出部、181…画像取得部、182…画像処理回路、191…投影画像データ記憶部、192…画像処理後データ記憶部、193…超音波画像データ記憶部、194…3次元画像データ記憶部、800…超音波診断装置、700…CT装置、900…MRI装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対しプローブを接触して超音波画像を撮影する超音波診断装置と通信を行うX線診断装置において、
前記被検体に対する超音波診断装置のプローブの角度および位置の少なくともいずれかを検出する検出部と、
前記検出部で検出した前記プローブの角度に基づき、X線撮影角度である臨床角を算出する角度算出部と、
前記角度算出部で算出した前記臨床角に基づき、支持器を移動させる駆動部と、
を有することを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記角度算出部で算出した前記臨床角に基づき、ユーザが指定したX線撮影角度である実臨床角に修正する撮影角度修正部と、
前記プローブで撮影した超音波画像と、少なくとも前記角度算出部で算出した前記臨床角、および前記撮影角度修正部で修正した前記実臨床角のうちいずれかを表示する第1の表示部と、
を更に有し、
前記駆動部は、前記撮影角度修正部で修正した前記実臨床角に基づき支持器を移動させるよう構成される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記第1の表示部は、前記超音波画像上に、少なくとも前記臨床角算出部で算出した臨床角とその向き、および前記撮影角度修正部で修正した実臨床角とその向きのうち1つをさらに表示する、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記第1の表示部は、X線撮影角度の修正が可能なGUIを前記超音波画像に重畳して表示するよう構成される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記撮影角度修正部で修正した前記実臨床角の値は、前記角度算出部で算出し前記第1の表示部に表示された前記臨床角の値と、前記臨床角と前記実臨床角とで成す角度より求める、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項6】
前記検出部は、モーションセンサであり、加速度と角速度とに基づき、前記プローブの角度または位置を算出するよう構成される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項7】
前記撮影角度修正部で修正した前記実臨床角が、前記支持器の可動範囲内であるか否かを判定する可動判定部を更に有し、
前記可動判定部で、前記実臨床角が前記支持器の可動範囲外であると判定された場合、前記表示部は警告表示を行うよう構成される、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記プローブが被検体に接する前に、少なくとも角度および位置いずれかのキャリブレーションを行う、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項9】
3次元画像を格納する3次元画像データ記憶部と、
前記3次元画像データ記憶部に格納された前記被検体の3次元画像を表示する第2の表示部と、
前記検出部で検出したプローブの被検体に対する角度および位置に基づき、第1断層面を算出する断層面算出部と、
前記断層面算出部で算出した前記第1断層面に基づき、第2断層面を作成する第2断層面作成部と、
をさらに有し、
前記第2の表示部は、表示される前記3次元画像上の該当位置に、前記断層面算出部で算出した前記第1断層面、および前記第2断層面作成部で作成された前記第2断層面の少なくとも1つを重畳表示する、
ことを特徴とする請求項1記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記第2の表示部は、前記第1断層面の角度を変更して前記第2断層面が作成可能なGUIを前記3次元画像に重畳して表示するよう構成される、
ことを特徴とする請求項9記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記角度算出部は、前記第2断層面における3次元座標空間から座標変換を行い、前記臨床角を算出するよう構成される、
ことを特徴とする請求項9記載のX線診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−152519(P2012−152519A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16864(P2011−16864)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】