説明

XYステージおよびこれを備えた半導体製造装置

【課題】 移動テーブルの移動によって生じる反力を打ち消して振動の発生を防止し、移動テーブルが高速移動可能で、かつ位置決めに要する時間が短く、さらには位置決め精度が高く、信頼性の高い制御システムを用いたXYステージおよびこれを備えた半導体製造装置を提供することである。
【解決手段】 XYステージに質量体およびこの質量体を移動テーブルの移動する方向と反対方向に駆動するための駆動手段を設けることにより、移動テーブルを移動させる際の加減速に必要な力と同じ大きさであって反対方向の力を形成して、移動テーブルの移動による反力を打ち消し、振動の発生を防止するXYステージおよびこれを備えた半導体製造装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、XYステージおよびこれを備えた半導体製造装置に関し、特に、移動テーブルの高速移動によって発生する振動を防止する制振装置を備え、高速移動可能なXYステージ、およびこれを備えた半導体製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造には、平面上で直交する2軸(X軸およびY軸)方向に移動可能な移動テーブルを備えた半導体製造装置が広く使用されている。例えば、移動テーブルに垂直方向(Z軸)に移動可能なボンディングヘッドを搭載することで、ボンディングヘッドを3次元に移動可能としたワイヤボンディング装置においては、ボンディングヘッドが高速移動し、かつ正確に位置決めできることが望まれる。
【0003】
しかし、移動テーブルを移動させるモータの位置決めの精度が上がり、高速移動させることが可能となったとしても、移動テーブルやその搭載物を加減速するときにはその反力が発生し、反力を受けたワイヤボンディング装置は振動を発生する。ワイヤボンディング装置に振動が発生すると、移動テーブルやその搭載物さらにはワーク対象物にもその振動が伝達され、移動テーブルの位置決め精度が低下するだけではなくボンダビリティの安定性も損なわれる。この傾向は駆動モータが高速移動させるほど顕著となる。
【0004】
移動テーブルの移動による半導体製造装置の振動の発生を防止する方法として、装置の架台を肉厚として剛性を向上させることも考えられるが、架台が大型化、大重量化されることとなり好ましくない。また、移動テーブルの移動により発生する反力自体は減少されないため、装置の設置床を振動させ、隣接するワーク搬送システムなどに搬送異常を引き起こす原因ともなる。
【0005】
そして、移動テーブルの移動による半導体製造装置の振動の発生を防止する技術として、モータにより駆動対象を駆動したときに、モータ本体が駆動対象と反対方向に移動するようにし、駆動対象を駆動することによる反力を打ち消すように構成した半導体製造装置におけるモータ駆動装置およびXYテーブルがある(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−3920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のステージでは、移動テーブルの移動による半導体製造装置の振動の発生を抑制することはできても、モータ本体が移動するために、モータを元の位置に戻すダンパの作動時間が余分に必要となり、作業の高速化の妨げとなる。また、駆動対象の位置決めを行うために、モータの速度センサや駆動対象の位置・速度センサが必要となり、その制御が複雑になるとともに位置決め精度の信頼性が低下する。
【0008】
そこで、本発明は、移動テーブルの移動によって生じる振動の発生を防止し、移動テーブルが高速移動可能で、かつ位置決めに要する時間が短く、さらには位置決め精度が高く、信頼性の高い制御システムを用いたXYステージまたはこれを備えた半導体製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、XYステージに、質量体およびこの質量体を移動テーブルの移動する方向と反対方向に駆動するための駆動手段を設けることにより、移動テーブルを移動する際の加減速に必要な力と同じ大きさであって反対方向の力を形成して、移動テーブルの移動による反力を打ち消し、振動の発生を防止するXYステージおよびこれを備えた半導体製造装置を提供する。
【0010】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、互いに直交するX軸とY軸とに沿って移動する移動テーブルを有するXYステージであって、移動テーブルに係合して移動テーブルをX軸方向に移動させるX軸可動体、およびX軸可動体を駆動する第1の駆動手段を備えたX軸移動装置と、X軸方向に移動可能に設置されたX軸質量体、およびX軸質量体をX軸可動体の移動方向と反対方向に駆動する第2の駆動手段を備えたX軸制振装置と、移動テーブルをY軸方向に移動させるY軸可動体、およびY軸可動体を駆動する第3の駆動手段を備えたY軸移動装置と、Y軸方向に移動可能に設置されたY軸質量体、およびY軸質量体をY軸可動体の移動方向と反対方向に駆動する第4の駆動手段を備えたY軸制振装置と、を有するXYステージを提供する。
【0011】
これによると、X軸可動体、移動テーブルおよびその搭載物を含めたX軸駆動体をX軸方向に移動させるのに必要な力と同じ大きさの力が、X軸駆動体の移動する方向と反対方向に形成され、互いの反力同士が打ち消し合い、移動テーブルの移動により発生する振動を抑制することができる。Y軸方向についても同様である。このように発生する振動が抑制されるため、可動体は高速移動が可能となるだけでなく、位置決めに要する時間は短縮され、位置決めの精度も向上する。また、制振装置の制御には振動センサや位置センサなどの信号をフィードバックする必要はなく、質量体の質量に逆比例する移動量を駆動するようにシーケンス制御すればよく、制御方法が簡潔であり、信頼性が高い制御システムを用いることができる。
【0012】
また本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段であるXYステージにおいて、X軸質量体の重心とX軸可動体の重心とが略同一X軸線上を移動するように、X軸質量体を配設し、Y軸質量体の重心とY軸可動体の重心とが略同一Y軸線上を移動するように、Y軸質量体を配設したXYステージを提供する。
【0013】
これによると、例えば平面上のX軸方向について、移動テーブルがY軸方向についての移動範囲の中心にあって、X軸可動体がX軸方向に移動したときに、X軸駆動体の移動による反力とX軸質量体の移動による反力とが同一直線上にあり、ヨー方向すなわちXYステージを上から見たときに装置を回転させようとするモーメントが0となり、ヨー方向のモーメントによる振動を抑制することができる。また、Y軸方向についても同様である。
【0014】
また本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段であるXYステージにおいて、X軸質量体および第2の駆動手段がそれぞれ2つあり、2つのX軸質量体の総合重心とX軸可動体の重心とが略同一X軸線上を移動するように、X軸質量体を配設し、Y軸質量体の重心とY軸可動体の重心とが略同一Y軸線上を移動するように、該Y軸質量体を配設したXYステージを提供する。
【0015】
これによると、第2の手段と同様に、ヨー方向のモーメントによる振動を抑制することができるとともに、X軸質量体とY軸質量体とを、ともに移動テーブルからY軸方向の位置に配置することが可能となる。したがって、制振装置をX軸方向についてコンパクトにすることができ、X軸質量体の配置設計に自由度を与えることとなる。
【0016】
また本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1の手段であるXYステージにおいて、X軸質量体および第2の駆動手段がそれぞれ2つあり、2つのX軸質量体の総合重心とX軸可動体の重心とが略同一X軸線上を移動するように、X軸質量体を配設し、Y軸質量体および第4の駆動手段がそれぞれ2つあり、2つのY軸質量体の総合重心とY軸可動体の重心とが略同一Y軸線上を移動するように、X軸質量体を配設したXYステージを提供する。
【0017】
これによると、第2および3の手段と同様に、ヨー方向のモーメントによる振動を抑制することが可能であるとともに、質量体の配置設計にさらに自由度を与えることができる。
【0018】
また本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1〜第4の手段のいずれかのXYステージにおいて、X軸質量体の重心とX軸可動体の重心とが略同一水平面上を移動するように、X軸質量体を配設し、Y軸質量体の重心とY軸可動体の重心とが略同一水平面上を移動するように、Y軸質量体を配設したXYステージを提供する。
【0019】
これによると、例えばX軸縦断面において、X軸可動体がX軸方向に移動したときに、X軸駆動体の移動による反力とX軸質量体の移動による反力とが略同一直線上(略同じ高さ)にあり、ロール方向すなわちXYステージをX軸縦断面で見たときに装置を回転させようとするモーメントが0となり、ロール方向のモーメントによる振動を抑制することができる。また、Y軸縦断面についても同様に、ピッチ方向すなわちXYステージをY軸縦断面で見たときに装置を回転させようとするモーメントによる振動を抑制することができる。
【0020】
また本発明は、上記課題を解決するための第6の手段として、第1〜第5の手段のいずれかのXYステージにおいて、第1および第3の駆動手段がそれぞれ2つあり、直線状の固定子と固定子に沿って移動する可動子とからなるリニアモータであるXYステージを提供する。
【0021】
これによると、X軸可動体およびY軸可動体の移動できる範囲を大きくしても、移動装置全体の横寸法は移動範囲以上に大きくならず、例えばACサーボモータやボイスコイルモータを使用した場合と比較して、XYステージの横方向の寸法について小型化することができる。また、これらのモータでは現実的には不可能であった高速移動可能であって広い移動範囲を有するXYステージを実現することができる。さらに、高分解能のリニアスケールを用いることにより、高精度の位置決めが可能となる。
【0022】
また本発明は、上記課題を解決するための第7の手段として、第1〜第6の手段のいずれかのXYステージを備えた半導体製造装置を提供する。
【0023】
これによると、移動テーブルが移動する際の反力による振動を抑制できるため、半導体製造装置の架台を大型化しなくとも振動が少なく、設置床を振動させない半導体製造装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記手段を用いることにより、移動テーブルが移動する際の反力により発生する振動を抑制することができる。また、ヨー方向、ロール方向およびピッチ方向のモーメントを小さくして、各モーメントによる振動も抑制することができる。このように発生する振動が抑制されるため、高速移動が可能となるだけでなく、位置決めに要する時間が短縮され、位置決めの精度も向上する。さらに、制振装置の制御方法が簡潔であって信頼性の高い制御システムを用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の最良の形態として、
互いに直交するX軸とY軸とに沿って移動する移動テーブルを有するXYステージにおいて、
移動テーブルに係合して移動テーブルをX軸方向に移動させるX軸可動体、および直線状の固定子と固定子に沿って移動する可動子とからなり、X軸可動体を駆動する2つのリニアモータ(第1の駆動手段)を備えたX軸移動装置と、
X軸方向に移動可能に設置された2つのX軸質量体、およびX軸質量体をX軸可動体の移動方向と反対方向に駆動する2つの第2の駆動手段を備えたX軸制振装置と、
移動テーブルをY軸方向に移動させるY軸可動体、および直線状の固定子と該固定子に沿って移動可能な可動子とからなり、Y軸可動体を駆動する2つのリニアモータ(第3の駆動手段)を備えたY軸移動装置と、
Y軸方向に移動可能に設置されたY軸質量体、およびY軸質量体をY軸可動体の移動方向と反対方向に駆動する第4の駆動手段を備えたY軸制振装置と
を有し、
2つのX軸質量体の総合重心とX軸可動体の重心とが略同一X軸線上であって略同一水平面上を移動するように、X軸質量体を配設し、
Y軸質量体の重心とY軸可動体の重心とが略同一Y軸線上であって略同一水平面上を移動するように、Y軸質量体を配設するようにする。
【0026】
これによると、移動テーブルがX軸およびY軸方向の移動範囲の中心にあるときに、2つのX軸質量体の総合重心が、X軸可動体、移動テーブルおよびその搭載物を含めたX軸駆動体の重心を通るX軸線の同じ高さ付近にあり、Y軸質量体の重心が、Y軸可動体、移動テーブルおよびその搭載物を含めたY軸駆動体の重心を通るY軸線の同じ高さ付近にある。このような配置とすることにより、移動テーブルが移動可能な範囲の中心から移動したときに、移動テーブルの移動による反力と質量体の移動による反力とが同一線上となり、振動を抑制することができる。
【0027】
さらに、前記X軸駆動体の反力が伝達されるベース板とX軸質量体の反力が伝達されるベース板とを同一の部材とすること、または直接固定することにより、振動をより抑制することができる。Y軸方向についても同様である。
【0028】
また、前記X軸駆動体の合計質量をWxとし、2つのX軸質量体の合計質量をVxとし、第1の駆動手段のそれぞれがX軸駆動体を移動させる距離をLxとし、第2の駆動手段のそれぞれがX軸質量体をX軸駆動体と反対方向に移動させる距離をMxとして、第1の駆動手段がX軸駆動体を移動させるときに、第2の駆動手段が次の式、
Mx=Lx*Wx/Vx
で計算される距離だけX軸質量体を移動させるようにする。同様に、前記Y軸駆動体の合計質量をWyとし、Y軸質量体の質量をVyとし、第3の駆動手段のそれぞれがY軸駆動体を移動させる距離をLyとし、第4の駆動手段がY軸質量体をY軸駆動体と反対方向に移動させる距離をMyとして、第3の駆動手段がY軸駆動体を移動させるときに、第4の駆動手段が次の式、
My=Ly*Wy/Vy
で計算される距離だけY軸質量体を移動させるようにする。
【0029】
すなわち、移動する質量体の加速度を、移動する駆動体の加速度に質量体と駆動体との質量の逆比を乗じた値とする。例えば、駆動体の質量が5kgであり、質量体の質量が20kgであり、駆動体の加速度が2Gである場合、質量体の加速度は0.5Gとする。このように駆動手段を駆動することにより、移動テーブルの移動による反力と質量体の移動による反力とが同じ大きさとなって打ち消し合い、振動を抑制することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本発明によるXYステージの展開斜視図である。XYステージは、移動テーブル21と、X軸制振装置1Xと、X軸移動装置11Xと、Y軸制振装置1Yと、Y軸移動装置11Yとから構成されている。なお、図中において、X軸とY軸との違いがあるだけでその機能が同一である部材には同じ符号を付し、符号の後ろにX軸またはY軸を示すXまたはYをそれぞれ付している。
【0032】
Y軸制振装置1Yは、Y軸制振用ベース板2Yと、Y軸制振ダンパベース板3Yと、Y軸質量体としてのY軸制振用錘4Yと、第4の駆動手段としてのY軸制振駆動モータ5Yとを有している。Y軸制振用ベース板2Yは、搭載されるボンディングヘッドが移動するための開口部を有している。矩形状のY軸制振ダンパベース板3Y、および直方体状のY軸制振用錘4Yは、長辺がX軸方向に延在し、それぞれ長辺の中点がY軸制振用ベース板2Yの開口部の中心を通るY軸線上にあるように配設されている。Y軸制振用錘4Yは、Y軸方向に移動可能に設置されており、Y軸制振駆動モータ5Yの駆動により移動する。
【0033】
Y軸制振装置1Yの上に配設されるY軸移動装置11Yは、Y軸テーブル用ベース板12Yと、Y軸可動体としてのY軸テーブル13Yと、Y軸テーブル13Yを移動させる第3の駆動手段としての2つのY軸リニアモータ14Yと、移動テーブル21とを有している。Y軸リニアモータ14Yは、直線状の固定子としてのY軸リニアモータプレート14aYと、固定子に沿って移動する可動子としてのY軸リニアモータコイル14bYとからなる。矩形状のY軸テーブル用ベース板12Yは、Y軸制振用ベース板2Yと同様に開口部を有し、Y軸方向に延在する2つのY軸リニアモータプレート14aYを2辺に備えている。矩形状のY軸テーブル13Yは、Y軸リニアモータコイル14bYを両端に備え、Y軸方向に移動可能に設置されており、モータの駆動によりY軸リニアモータプレート14aYに沿って移動する。Y軸テーブル13Yの上面の2辺には、X軸方向に延在する移動テーブル用ガイド19が備えられており、移動テーブル21がX軸方向に移動可動に設置されている。移動テーブル21は、X軸駆動用ガイドベアリングブロック22を上面に備え、X軸方向への駆動力を伝動されてX軸方向へ移動する。
【0034】
Y軸移動装置11Y上に配設されるX軸制振装置1Xは、X軸制振用ベース板2Xと、X軸制振ダンパベース板3Xと、2つのX軸質量体としての2つのX軸制振用錘4Xと、第2の駆動手段としてのX軸制振駆動モータ5Xとを有している。X軸制振用ベース板2Xは、Y軸制振用ベース板2Yと同様に開口部を有している。矩形状の2つのX軸制振ダンパベース板3X、および直方体状の2つのX軸制振用錘4Xは、X軸制振用ベース板2Xの開口部の中心に対してY軸方向に対称となるように配設され、それぞれ長辺がX軸方向に延在し、長辺の中点がX軸制振用ベース板2Xの開口部の中心線を通るY軸線上にあるように取り付けられている。2つのX軸制振用錘4Xは、X軸方向に移動可能に設置されており、2つのX軸制振駆動モータ5Xの駆動により移動する。
【0035】
X軸制振装置1Xの上に配設されるX軸移動装置11Xは、Y軸移動装置11Yと同様の構造を含んでおり、重複する部分についての説明は省略する。X軸方向に移動可能に設置されたX軸可動体としての矩形状のX軸テーブル13Xは、Y軸方向に延在するX軸ガイドバー23を下面に備えている。X軸ガイドバー23は、X軸駆動用ガイドベアリングブロック22を介して、X軸方向への駆動力を伝動して移動テーブル21を移動させる。
【0036】
図2は、本発明によるXYステージを示した斜視図である。Y軸制振装置1Yと、Y軸移動装置11Yと、X軸制振装置1Xと、X軸移動装置11Xとが、それぞれ堅固に結合された状態を示している。それぞれの装置に備えられた開口部の中心が平面において一致するように結合されており、X軸駆動用ガイドベアリングブロック22とX軸ガイドバー23とが嵌合している。
【0037】
図3は、本発明によるXYステージを構成するX軸制振装置の制振ダンパの展開斜視図である。制振ダンパは、X軸制振ダンパベース板3Xと、X軸制振用錘4Xと、X軸制振駆動モータ5Xとから構成されている。X軸制振用錘4Xは、X軸制振用錘ベース4aXと、X軸制振用錘本体4bXとからなり、互いに螺設される。平面において矩形状であるX軸制振ダンパベース板3Xは、短辺の一方にX軸制振駆動モータ5Xが固定され、他方の側にはX軸制振用ガイドレール6Xを備えている。X軸制振駆動モータ5Xは一般的な回転モータであって、モータから延出されたX軸制振用ボールねじ9Xは、X軸制振用ボールねじ受け10Xにより保持され、X軸制振用ボールねじナット9Xを螺合している。X軸制振用錘ベース4aXは、X軸制振用ガイドレール6XおよびX軸制振用ボールねじナット9Xに固定され、X軸制振用ガイドレール6Xを滑合するX軸制振用ガイド7Xにより誘導される。
【0038】
X軸制振駆動モータ5Xの駆動力は、回転運動エネルギからX軸制振用ボールねじ8XおよびX軸制振用ボールねじナット9Xを介して直線運動エネルギに変換され、X軸制振用錘4XをX軸制振用ガイドレール6Xに沿って移動させる。
【0039】
図4は、本発明によるXYステージのY軸移動装置の制御システムを示す模式図である。モーション制御装置31には、Y軸リニアモータドライバ32YおよびY軸制振モータドライバ35Yが接続されている。Y軸リニアモータドライバ32Yには、2本のY軸リニアモータ用ケーブル34Y、およびY軸リニアスケール用ケーブル33Yが接続されており、それぞれ2つのY軸リニアモータコイル14bY、およびY軸リニアモータコイル14bYに備えられたセンサ(図示せず)に接続されている。Y軸制振モータドライバ35Yに接続されたY軸制振モータ用ケーブル36Yは、Y軸制振駆動モータ5Yを接続している。
【0040】
Y軸リニアモータドライバ32Yは、モーション制御装置31から送られる指令に従い、2つのY軸リニアモータコイル14bYを制御する。Y軸リニアモータコイル14bYにはセンサが備えられており、リニアスケール15Yを読み取って得られた位置および速度信号は、Y軸リニアモータドライバ32Yにフィードバックされて、高精度の位置決めが可能となる。一方、モーション制御装置31は、Y軸駆動体とY軸制振用錘との反力が互いに打ち消し合うように算出した信号をY軸制振モータドライバ35Yに送る。Y軸制振モータドライバ35Yは、入力された信号に従ってY軸制振駆動モータ5Yのシーケンス制御を行う。
【0041】
このように図1〜図5は、本発明によるXYステージの一実施例を示すが、本発明がここに示された実施例に限定されるものではない。例えば、Y軸制振装置1YのY軸制振用ベース板2Yと、Y軸移動装置11YのY軸テーブル用ベース板12Yとが、同一の部材であってもよい。または、Y軸制振装置1YのY軸制振用ベース板2Yと、X軸制振装置1XのX軸制振用ベース板2Xとが、同一の部材であってもよい。また、移動テーブル用ガイド20を、Y軸テーブル13YではなくX軸テーブル13Xの上面に設置して、移動テーブル21をY軸方向に移動可動に設置してもよい。この場合、X軸駆動用ガイドベアリングブロック22を、Y軸駆動用ガイドベアリングブロックとして移動テーブル21の下面に配置し、X軸ガイドバー23を、Y軸ガイドバーとしてY軸テーブル13Yの上面に設置する。また、リニアモータ14は、固定子としてのリニアモータプレート14aが永久磁石であって可動子としてのリニアモータコイル14bがコイルであってもよいが、その逆であってもよい。さらに、第2および第4の駆動手段としての制振駆動モータ5は、回転モータではなくリニアモータであってもよく、同様に、第1および第3の駆動手段としてのリニアモータ14は、回転モータとボールねじとの組み合わせであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明によるXYステージ展開斜視図である。
【図2】本発明によるXYステージを示した斜視図である。
【図3】本発明によるXYステージを構成するX軸制振装置の制振ダンパの展開斜視図である。
【図4】本発明によるXYステージを構成するY軸移動装置の制御システムを示す模式図である。
【符号の説明】
【0043】
1 制振装置
2 制振用ベース板
3 制振用ダンパベース板
4 制振用錘
4a 制振用錘ベース
4b 制振用錘本体
5 制振駆動モータ
6 制振用ガイドレール
7 制振用ガイド
8 制振用ボールねじ
9 制振用ボールねじナット
10 制振用ボールねじ受け
11 移動装置
12 テーブル用ベース板
13 テーブル
14 リニアモータ
14a リニアモータプレート
14b リニアモータコイル
15 リニアスケール
20 移動テーブル用ガイド
21 移動テーブル
22 X軸駆動用ガイドベアリングブロック
23 X軸ガイドバー
31 モーション制御装置
32 リニアモータドライバ
33 リニアスケール用ケーブル
34 リニアモータ用ケーブル
35 制振モータドライバ
36 制振モータ用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交するX軸とY軸とに沿って移動する移動テーブルを有するXYステージであって、
前記移動テーブルに係合して該移動テーブルをX軸方向に移動させるX軸可動体、および該X軸可動体を駆動する第1の駆動手段を備えたX軸移動装置と、
前記X軸方向に移動可能に設置されたX軸質量体、および該X軸質量体を前記X軸可動体の移動方向と反対方向に駆動する第2の駆動手段を備えたX軸制振装置と、
前記移動テーブルをY軸方向に移動させるY軸可動体、および該Y軸可動体を駆動する第3の駆動手段を備えたY軸移動装置と、
前記Y軸方向に移動可能に設置されたY軸質量体、および該Y軸質量体を前記Y軸可動体の移動方向と反対方向に駆動する第4の駆動手段を備えたY軸制振装置と
を有することを特徴とするXYステージ。
【請求項2】
前記X軸質量体の重心と前記X軸可動体の重心とが略同一X軸線上を移動するように、該X軸質量体を配設し、
前記Y軸質量体の重心と前記Y軸可動体の重心とが略同一Y軸線上を移動するように、該Y軸質量体を配設したことを特徴とする、請求項1に記載のXYステージ。
【請求項3】
前記X軸質量体および前記第2の駆動手段がそれぞれ2つあり、該2つのX軸質量体の総合重心と前記X軸可動体の重心とが略同一X軸線上を移動するように、該X軸質量体を配設し、
前記Y軸質量体の重心と前記Y軸可動体の重心とが略同一Y軸線上を移動するように、該Y軸質量体を配設したことを特徴とする、請求項1に記載のXYステージ。
【請求項4】
前記X軸質量体および前記第2の駆動手段がそれぞれ2つあり、該2つのX軸質量体の総合重心と前記X軸可動体の重心とが略同一X軸線上を移動するように、該X軸質量体を配設し、
前記Y軸質量体および前記第4の駆動手段がそれぞれ2つあり、該2つのY軸質量体の総合重心と前記Y軸可動体の重心とが略同一Y軸線上を移動するように、該X軸質量体を配設したことを特徴とする、請求項1に記載のXYステージ。
【請求項5】
前記X軸質量体の重心と前記X軸可動体の重心とが略同一水平面上を移動するように、該X軸質量体を配設し、
前記Y軸質量体の重心と前記Y軸可動体の重心とが略同一水平面上を移動するように、該Y軸質量体を配設したことを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のXYステージ。
【請求項6】
前記第1および第3の駆動手段がそれぞれ2つあり、直線状の固定子と該固定子に沿って移動する可動子とからなるリニアモータであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のXYステージ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のXYステージを備えたことを特徴とする半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−19269(P2007−19269A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199154(P2005−199154)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(591189638)超音波工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】