説明

Zピンの動的挿入データを解析し自動化された許容可能な挿入が実行されたか否かを判定するための方法

【課題】本発明により、複合材料積層材中への1つ以上のZピンの許容可能な挿入を自動的に確認する方法が提供される。
【解決手段】
この方法には、複合材料積層材上に1つ以上のZピンを配置する最初の工程が含まれる。その後、第1の挿入速度にて複合材料積層材の中へZピンを押し進める挿入プロセスを開始するのに充分な第1のレベルの挿入力がZピンに対し加えられる。Zピンに対し加えられる挿入力は連続的に監視され、挿入力の第1のレベルから第2のレベルまでの増大を監視することに応答して、第1の挿入速度は第2の挿入速度まで減少される。挿入力の第2のレベルから第3のレベルまでの増大を監視することに応答して、Zピンに挿入力を加えることが中断され、挿入プロセスは中断される。許容可能な挿入を確認するため、第1の挿入速度から第2の挿入速度までの減少と、挿入力の第3のレベルまでの増大とが確認される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強化複合材料に関する。より詳細には、本発明は未硬化複合材料積層物を互いにZピン挿着/接合するための2速度挿入プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
航空宇宙産業においては、航空宇宙用途の基本構造物として複合材料を使用することが次第に普及しつつある。従来の複合材料は樹脂マトリクス材料と、X−Y軸方向に連続する2次元の若干の繊維材料とからなるが、材料の厚みを得るために複数層に積層される。ガラス繊維、炭素繊維またはアラミド繊維などの繊維材料を熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂などのマトリクス材料と組み合わせた複合材料構成は、従来の2次元構造物の一例である。
【0003】
機体構造用複合材料など多くの構造用複合材料には、通常、様々な補強材が含まれる。補強材によって、一定の飛行荷重条件下において必要な剛性が与えられる。典型的な補強材の1つはハット(hat)型補強材と呼ばれる。ハット型補強材は、その形状から命名されており、通常、その表面を介して航空宇宙構造用複合材料コンポーネントに対し取着されている。
【0004】
従来、複合材料のハット型補強材は従来型の機械的固定具を用いてコンポーネントの表面に対し取着されていた。時々用いられる別の取着プロセスでは、ハット型補強材は構造用複合材料自体による硬化と同時に、構造用複合材料の表面に対し共硬化(co−cure)されていた。しかしながら、この両方のプロセスや、ハット型補強材が表面に対し機械的に締結されるプロセスまたは接着剤により接合されるプロセスでは、通常、表面に対して内部のハット型補強材において故障が発生していた。
【0005】
先述の取着プロセスを用いる故障の発生を解決するために、現在、航空宇宙産業においては、1つ以上の補強材を複合材料表面へ取着するためにZピン挿着が頻繁に用いられる。これに関して、Zピンの開発、担体中にてZピンを支持するための方法、および未硬化複合材料中へZピンを挿入するための方法により、ハット型補強材と表面とを硬化するより前に互いに接合することが可能となった。Zピンを用いて複合材料部品を一体に接合することにより、軽量化、付加の分散の均一化、コスト低下、および両部品の共硬化など、従来の機械的固定具を超える幾つかの利点が提示される。ハット型補強材と共に用いられる現行のZピン挿着プロセスの1つでは、基礎となる構造用複合材料、即ち、積層材の表面に対し固定されるハット型補強材の表面に、Zピン担体プリフォームが配置される。このプリフォームは、通常、複数のZピンがその中へ埋め込まれている低密度フォームおよび高密度フォームの連続層からなる。このZピンは、流体圧プレス装置または超音波装置(例えば、超音波励起ホーン)などの装置を用いて、担体プリフォームからハット型補強材を通じて基礎積層材の中へと、押し進められる。超音波装置は高周波エネルギーを用いて担体プリフォーム内でZピンを振動させ、補強材を通じて基礎積層材の中へと押し進める。
【0006】
Zピン挿着プロセスにおいて効率化を図る目的では、ロボットを用いてZピンを自動的に挿入することは非常に望ましい。しかしながら、Zピン挿着プロセスに伴う多くの変数に適応するには特殊な手法が必要であるため、Zピン挿着プロセスを自動化する試みは困難であることが判明した。より詳細には、自動化挿入における主要な変数は、挿入速度、挿入力、材料の経時、材料厚、積層材のホット・デバルク量、ホーンの励起の振幅、(超
音波ホーンを用いる場合)、Zピンの耐荷重性能、および挿入時間である。Zピンの挿入が速すぎると、ピンに過度な力が加えられることにより、ピンを破壊するか、または、接合されている部品にピンを完全には貫通させないことになる。Zピンの挿入が遅すぎると、余分な時間がかかることにより、妥当な投資収益が得られないか、または、プリフォームを過熱して火災の恐れを生じる。超音波ホーンが用いられる場合、ホーン振動の振幅を増大させることにより挿入をより速めることが可能であるが、プリフォームに過剰なエネルギーを与え、Zピンの過剰挿入と、プリフォームの溶融とを生じる恐れは増大する。さらに、条件の1つのセットが、新しい、全厚の小さい材料に対して良好であっても、経時後の最大厚の材料(例えば、30日経時後の材料)に対しては最適でない場合がある。実際、先述の変数のうちの多くは非線形的に相互作用するため、所与の組み合わせにより挿入の成功を予測することは非常に困難である。さらなる制限として、プロセスにおいて良好な投資収益を生じるために挿入時間は充分に速いことが必要である。したがって、製造環境における自動化Zピン挿入では、設計仕様において遭遇し得る全ての変動に適応する、挿入パラメータの単一のセット(汎用パラメータ)の必要が存在する。
【0007】
自動化Zピン挿入プロセスにおいて用いられる挿入パラメータの単一のセットの必要は、本出願人の同時継続出願である「汎用挿入パラメータを用いる自動化Zピン挿入方法(AUTOMATED Z−PIN INSERTION TECHNIQUE USING UNIVERSAL INSERTION PARAMETERS)」と題する2005年6月22日出願の特許文献1において対処されている。この出願の開示を引用により本明細書に援用する。しかしながら、現行の既知の手動挿入プロセスを用いると、Zピンが完全に適正な深度まで挿入されたことを確認するためには、通常、さらに手動の追跡検査工程が必要である。より詳細には、現行で実施されている手動の検査プロセスにおいては、挿入プロセスが完了すると、Zピンが複合材料積層材の中へ充分に押し込まれ全深度に到達したか否かを判定するために、簡単な計器を用いてZピン担体プリフォームの高さが測定される。この場合の「全深度」は、Zピンが複合材料積層材を完全に貫通し、接合用具表面に達したことを意味している。硬化に続き、Zピンが実際に複合材料積層材のプライを接合用具表面まで貫通したことを確認するため、さらなる目視検査が行われる。Zピンが全深度まで挿入されたことを確認するために、特許文献1に記載の自動化Zピン挿入プロセス/システムに関して、同様の手動検査プロセスが実施され得ると想定される。これに関して、自動化挿入プロセス/システムでは、検査者がこの検査プロセスを実行するための新規な計器が設計及び製造される必要があり得る。
【特許文献1】米国特許出願第11/158,400号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、必要な全深度挿入を自動的に実行し、許容不能な挿入の発生を警告するオペレータへ警告するための、自動化Zピン挿入プロセス/システムと共に用いられ得る方法が必要である。本発明では、以下でさらに詳細に説明するようにして、この必要に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、未硬化複合材料積層物を互いにZピン挿着/接合するための2速度挿入プロセスを実施するためのシステムが提供される。本発明の挿入プロセスでは、Zピン担体プリフォーム内のZピンに超音波エネルギーを供給するために超音波ホーンが用いられる。この挿入プロセスでは、挿入中に遭遇される抵抗力に基づき挿入速度をより低い挿入速度へと変更する、触覚フィードバックシステムが提供される。システムは一般的な条件に適合するので、オペレータの介入は不要である。この2速度プロセスを用いることにより、1速度挿入手法を用いては不可能な種々の条件の複合材料積層材中へZピンを挿入することが可能である。
【0010】
本発明の挿入プロセスは、Zピン挿入プロセス中に存在する条件に基づき、上述の変数、即ち、パラメータのうちの1つ以上を効果的に変化させる。本発明のプロセスは、Zピンを積層材の中へ押し進めるために加えられる力を監視し、この情報を用いて挿入速度を変化させるのに効果的であるように、初期条件、即ち、材料の経時および厚さに関するパラメータを無視する。本発明の一実施形態では、最初にZピンは約6.35mm(0.25インチ)毎秒の率で挿入され、挿入力が約178N(40ポンド)に達すると、挿入速度は即座に約1.27mm(0.050インチ)毎秒まで減少される。挿入力が約222N(50ポンド)に達すると、Zピンは積層材を貫通し、硬い用具表面(またはバリアシート)に接触していると仮定される。
【0011】
本発明の挿入プロセスの一部として、超音波ホーンがプリフォームに接触する瞬間が検出されると、誤ったトリガを防止するために、挿入のうちの最初の10%の読取値は無視される。これに加えて、挿入プロセス中に約222N(50ポンド)のトリガが認識されない場合のバックアップとして、製造システム安全条件も監視される。挿入プロセスを中断するために本発明のプロセスに用いられ得る他の安全機能には、挿入時間の長さと、超音波ホーンの移動の最大距離とが含まれる。最大設定時間に達した場合、挿入は中断される。同様に、最大設定深度に達した場合も挿入は中断される。さらなる安全機能の1つには、挿入ホーンの温度の遠隔監視が含まれる。ホーン温度が所与の閾値を超えた場合、現在の挿入に続く挿入プロセスは停止され、さらなる挿入に進む前にホーンが冷却される。
【0012】
さらに本発明により、上述の自動化挿入プロセスと共に用いられ必要な全深度検査を自動的に実行し得る方法が提供され、ロボットオペレータは許容不能な挿入の発生を警告する。上述のように、本発明の自動化挿入プロセスでは汎用挿入パラメータのセットが用いられることにより、一定の挿入力閾値に基づき2速度挿入プロセスが実施される。本発明の自動化検査方法では挿入速度が必須の最低レベルまで低下しているか否か、さらには、挿入プロセス中に必須の最終挿入力に達したか否かが自動的に検査される。これらの特定のパラメータは、挿入プロセス中に生成されるデータを解析することにより、自動的に検査される。より詳細には、この自動化検査方法は、約178N(40ポンド)の挿入力閾値に達することにより挿入速度が約6.35mm(0.25インチ)毎秒から減少され、かつ、約222N(50ポンド)の挿入力限界閾値にも達するときには常に、許容可能な挿入がなされるという原理による。許容不能なZピン挿入では、第1の条件が満たされても、両方の条件が満たされることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1,1Aはそれぞれ、以下でさらに詳細に説明する本発明のZピン挿着プロセスにおいて用いられる、代表的なZピン担体プリフォーム10の断面図、上面斜視図である。担体プリフォーム10は低密度フォームからなる上層12と、高密度フォームからなる下層14とを備える。下層14は上層12と連続している。これに関して、下層14の上面は上層12の下面に隣接している。上層12の上面を覆っているのはポリオレフィンからなる層16である。層16はペーパーから作られる層18により覆われている。したがって、層16は層18と上層12との間に位置する。
【0014】
層12,14,16,18に加えて、担体プリフォーム10は複数のZピン20を備える。複数のZピン20は上層12および下層14内に埋め込まれている。より詳細には、Zピン20は上層12の上面(層16により覆われている)と、下層14の露出している下面との間に、ほぼ直立して伸びている。また好適には、Zピン20は互いに関してほぼ平行に離間して伸びており、上層12および下層14内に、多様な所定のパターンのうちの1つにより埋め込まれてよい。したがって、上層12および下層14内のZピン20の数、間隔および全体の配置は用途により異なるため、図1に示すZピン20の特定のパタ
ーン、即ち、配置は、単なる例である。Zピン20に一般的に用いられる材料の1つはグラファイトであり、通常、Zピン20はビスマレイミド(BMI)樹脂により硬化された炭素繊維である。図1Aに示すように、担体プリフォーム10はほぼ方形の構成であり、長さLは約30.5cm(12インチ)、幅Wは約2.79cm(1.1インチ)、高さHは約1.27cm(0.5インチ)である。しかしながら、担体プリフォーム10は特定の用途に応じて多様な異なった構成により提供され得るため、図1Aに示す担体プリフォーム10の構成も単なる例であることを、当業者は認めるであろう。代表的な担体プリフォーム10の1つは、アズテックス社(Aztex,Inc.)により提供されるZ−Fiber(商標)である。
【0015】
上述のように、本発明のZピン挿着システムおよびプロセスは、未硬化複合材料積層材を互いに接合するために適切に用いられる。ここで図2,2Aを参照する。本発明の挿入システムおよびプロセスの典型的な用途は、基礎となる複合材料積層材24へ複合材料のハット型補強材22を取着することである。図2に示すように、ハット型補強材22は長尺状の拡がった中央部分26と、中央部分26に一体に接続され、かつ、中央部分26のそれぞれの側に沿って伸びている一対のフランジ部分28とを備える。各フランジ部分28の底面は積層材24の上面に沿って伸び、積層材24の上面に接触している。底面に加えて、各フランジ部分28は、積層材24の上面に対してわずかに傾いて伸びている上面を有する。図2,2Aに示すように、積層材24の上面に対する各フランジ部分28の上面の角度は、ほぼ12度である。以下では、特に積層材24へのハット型補強材22の取着に関し、本発明のZピン挿着システムおよびプロセスを説明するが、そうしたシステムおよびプロセスは任意の複合材料積層材構造物を互いに固定するために適切に用いられ、積層材24へのハット型補強材22の固定に用いることに限定されないことを当業者は認めるであろう。
【0016】
ここで図3を参照する。図3には、本発明のZピン挿着プロセスを実施するために用いられる挿入システム29に含まれる種々の構成要素の概略図を示す。好適な一実施形態では、システム29は超音波ホーン30を備える。超音波ホーン30を図4A,4Bに詳細に示す。超音波ホーン30はコンバータ32を備え、コンバータ32はブースタ34に動作可能に接続されている。ブースタ34は挿入ホーン36に動作可能に接続されており、挿入ホーン36の先端は、ほぼ平らなアンビル38を形成している。
【0017】
超音波ホーン30に加えて、システム29はロードセル40を備える。ロードセル40は超音波ホーン30のコンバータ32に隣接して配置されており、プログラマブル論理コントローラ(PLC)42と電気的に通信している。また、PLC42は超音波出力源44とも電気的に通信しており、超音波出力源44は超音波ホーン30のコンバータ32と電気的に通信している。さらにPLC42は、ロボットコントローラ48と通信するHMIインタフェース46を装備している。ロボットコントローラ48は多軸ロボット50と電気的に通信する。多軸ロボット50は、本発明の挿入/Zピン挿着プロセスを用いて互いに固定される複合材料積層材に対する超音波ホーン30の移動を制御および調整することが可能であるように、超音波ホーン30に動作可能に接続されている。
【0018】
再び図2,2Aを参照する。図3に示すシステム29を用いてハット型補強材22を積層材24へ取着する際、最初に担体プリフォーム10をハット型補強材22のフランジ部分28の上面の上に配置すると想定される。次に、ロボット50はロボット50のロボットエンドエフェクタを所定の位置、即ち、担体プリフォーム10のうちの1つに対する位置へと誘導する。エンドエフェクタには、超音波ホーン30、単軸のサーボモータ、即ち、駆動装置54及びPLC42用のドライバが配置されている。より詳細には、超音波ホーン30のアンビル38は第1の位置P1(図2Aに示す)へと誘導される。第1の位置P1は、担体プリフォーム10のうちの1つの約5.08mm(0.200インチ)上方
である。エンドエフェクタが初期位置に到達すると、ロボットコントローラ48は、ロボット50の位置を「静止(freeze)」させ、挿入プロセスの制御をPLC42へ渡す。PLC42はエンドエフェクタの単軸の駆動装置54と通信し、単軸の駆動装置54にアンビル38を第2の位置P2へ移動させる。第2の位置P2は、隣接する担体プリフォーム10の約2.54mm(0.100インチ)上方である。第2の位置P2へのアンビル38の移動により、担体プリフォーム10内からハット型補強材22の対応するフランジ部分28を通じて基礎積層材24の中へのZピン20の挿入プロセスの開始がトリガされる。
【0019】
Zピン挿着プロセスが開始すると、超音波ホーン30はエンドエフェクタ(及び詳細には駆動装置54)により上下方向のZ軸(図2Aに示す)に沿って下向きに移動され、アンビル38が担体プリフォーム10の一部と直に接触する。超音波ホーン30が担体プリフォーム10へ向けて移動され、アンビル38が担体プリフォーム10に接触し、ロードセル40により約13.3N(約3ポンド重)が測定されるとき、超音波エネルギーが発生され、挿入プロセスが継続する。このZ軸に沿って下向きの移動は、アンビル38がアンビル38の直下に位置する担体プリフォーム10のZピン20に下向きの圧力を働かせる/保持するように継続される。認められるであろうように、超音波ホーン30による機械的運動(即ち、超音波ホーン30のZ軸に沿って下向きの移動)と、超音波エネルギーとの組み合わせにより、Zピン20は担体プリフォーム10からハット型補強材を通じてハット型補強材22の中へと効果的に押し進められる。これに関して、Zピン挿入プロセス中、アンビル38により担体プリフォーム10に対し加えられる、ハット型補強材22の対応するフランジ部分28を通じて基礎積層材24の中へとZピン20を押し進める力は、ロードセル40により監視される。上述のように、ロードセル40はPLC42と電気的に通信している。ロードセル40によりPLC42へ伝送されるデータはZピン20の挿入速度を変化させるために用いられる。認められるであろうように、挿入速度は、Z軸に沿って下向きの超音波ホーン30の移動、したがって、アンビル38の移動の率に相当する。そうした移動の率は、PLC42により制御される駆動装置54により支配される。
【0020】
本発明のZピン挿着/挿入プロセスの一実施形態では、超音波ホーン30が駆動装置54によりZ軸に沿って下向きに移動され、アンビル38は隣接する担体プリフォーム10の複数のZピン20のうちの一定のものを、最初に対応するフランジ部分28を通じて基礎積層材24の中へと約6.35mm(0.25インチ)毎秒の率で挿入するように作用する。通常、図2Aに示す第1の距離D1を通じて、Zピン20の挿入は約6.35mm(0.25インチ)毎秒の率で起こる。
【0021】
ロードセル40によりPLC42へ伝送されるデータによって、超音波ホーン30によりZピン20に対し加えられる挿入力の量が約178N(40ポンド)に達することが示されるとき、駆動装置54によるZ軸に沿って下向きの超音波ホーン30の移動の率、したがって挿入速度は、即座に約1.27mm(0.050インチ)毎秒まで減少される。通常、やはり図2Aに示す第2の距離D2を通じて、Zピン20の挿入は約1.27mm(0.050インチ)毎秒の率で起こる。このとき、ロードセル40はPLC42へ、アンビル38により担体プリフォーム10内のZピン20に対し加えられている下向きの力のレベルを表すデータの伝送を継続する。この力が約222N(50ポンド)に達すると、Zピン20は担体プリフォーム10の上層12および下層14からハット型補強材22の対応するフランジ部分28を通じ下向きに押し進められ、基礎積層材24を貫通して硬い用具表面またはバリアシート56に接触したと仮定される。挿入力と挿入速度との間の関係を図5のグラフに示す。
【0022】
本発明のZピン挿着/挿入プロセスに関連して上で述べたように、挿入速度の変動性は
、PLC42へプログラムされているサーボ回路ソフトウェア52により調整される。サーボ回路ソフトウェア52は駆動装置54の機能を調整するように適合されており、超音波ホーン30の、したがってアンビル38のZ軸に沿って上下方向の運動を正確に制御/調整する。挿入の完了後、ロボット50のエンドエフェクタの次の挿入の位置決定のため、PLC42は制御をロボットコントローラ48へ返す。サーボモータ54によりサーボ回路ソフトウェア52へ伝送されるサーボループフィードバック56は、ロードセル40によりPLC42へ、したがってサーボ回路ソフトウェア52へ伝送されるデータと共に用いられ、上述の2速度挿入プロセスを実行するとともに、一定の安全機能を提供する。この安全機能を以下でさらに詳細に説明する。サーボループフィードバック56と、ロードセル40により伝送されるデータとによって、上述のようにして挿入プロセスを効果的に調整する、触覚フィードバック機構が提供される。
【0023】
本発明のZピン挿着/挿入プロセスではさらに、図3に示すZピン挿入システム29は、挿入ホーン36の形成するアンビル38がプリフォーム10に接触する瞬間を検出することが可能な構成要素を備え得ると想定される。これに関して、PLC42へプログラムされているサーボ回路ソフトウェア52は、誤ったトリガを防止するために、Zピン20の挿入のうちの最初の約10%の読取値(即ち、ロードセル40またはサーボ回路フィードバック56から伝送されるデータ)を無視するように適合されてよい。また、挿入プロセスを中断する約222N(50ポンド重)のトリガがPLC42により認識されない場合のバックアップとして、一定の製造システム安全条件が監視され得ると想定される。挿入プロセスを中断するためにシステム29に組み込まれ(例えば、PLC42へプログラムされ)得る他の安全機能には、挿入時間の長さと、超音波ホーン30により、したがってアンビル38によりZ軸に沿って移動される最大距離とが含まれる。これに関して、最大設定時間に達した場合、挿入は中断される。同様に、Z軸に沿ったアンビル38の移動距離により最大設定深度に達したことが示される場合も、挿入は中断される。
【0024】
さらになお、さらなる安全機能の1つとして、挿入ホーン36の温度が監視され得ると想定される。これに関して、挿入ホーン36の温度が所与の閾値を超えた場合、現在の挿入に続くZピン20の挿入プロセスは停止され、さらなる挿入を進めるより前に挿入ホーン36が冷却され得る。図5に示す挿入グラフは、Zピン20がハット型補強材22のフランジ部分28および基礎積層材24を完全に貫通したことの記録としても用いられ、それによって、検査者による手動検査の必要は除去される。全てのZピン挿入が良好であった(即ち、完全に貫通した)か否かを自動的に判定するためのソフトウェアプログラムを作成し、PLC42へプログラムすることも可能である。このソフトウェアプログラムでは、全てのZピン挿入が良好であったとのメッセージをオペレータへ送信するか、或いは、いずれの挿入がサーボ回路ソフトウェア52のソフトウェア基準を満たさなかったかを後に再調査するためのエラーメッセージを記録する。認められるように、ハット型補強材22を積層材24へZピン挿着するプロセスを完全に完了させるには、最終的にハット型補強材22のフランジ部分28を通じて基礎積層材24の中へ全てのZピン20が進められるように、超音波ホーン30のアンビル38を全ての担体プリフォーム10の全てのZピン20に対し連続的に作用させる必要に応じて、エンドエフェクタの駆動装置54を移動させるようにPLC42をプログラムすることが必要となる。
【0025】
さらに本発明により、上述の自動化挿入プロセスと共に用いられ必要な全深度検査を自動的に実行し得る手法が提供され、ロボット50のオペレータは許容不能な挿入の発生を警告する。上述のように、本発明の自動化挿入プロセスでは汎用挿入パラメータのセットが用いられることにより、一定の挿入力閾値に基づき2速度挿入プロセスが実施される。本発明の自動化検査方法では、超音波ホーン30によりZピン20に対し加えられる挿入力が約178N(40ポンド)に達することにより、挿入速度が初期の約6.35mm(0.25インチ)毎秒の率から約1.27mm(0.050インチ)毎秒の必須の最低レ
ベルまで低下しているか否かを、さらには、挿入プロセス中に約222N(50ポンド)の必須の最終挿入力に達したか否かが自動的に検査される。これらの特定のパラメータは、挿入プロセス中に生成されるデータを解析することにより、自動的に検査される。上述のように、そうしたデータはロードセル40により生成され、PLC42へ伝送される。
【0026】
したがって、本発明の自動化検査手法は(1)挿入速度が初期の約6.35mm(0.25インチ)毎秒の率から約1.27mm(0.050インチ)毎秒の必須の最低レベルまで減少され、かつ、(2)約222N(50ポンド)の挿入力限界閾値にも達するときには常に、許容可能な挿入がなされるという原理による。許容不能なZピン挿入では、第1の条件(1)が満たされても、両方の条件(1,2)が満たされることはない。本発明の自動化検査手法を用いる許容可能および許容不能なZピン挿入に関する挿入力と挿入速度との間の関係を、図6A〜6Eのグラフに示す。これに関して、図6A,6Dには許容可能な挿入を表す関係を示し、図6B,6C,6Eには許容不能な挿入を表す関係を示す。PLC42は、許容不能な挿入が発生したことをロボット50のオペレータに警告する信号を提供するか、または、品質目的で挿入システム29により生成される挿入データに警告メッセージを提供するようにプログラムされると想定される。本発明の自動化検査手法の実施により、Zピン20の全深度挿入の手動検査は製造プロセスから除去され、コストが実質的に節約されると想定される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】複数のZピンがその中へ埋め込まれている代表的なZピン担体プリフォームの断面図。
【図1A】図1に示すZピン担体プリフォームの上面斜視図。
【図2】本発明の挿入システムおよびプロセスを用いてハット型補強材を基礎積層材に固定するためにハット型補強材上に担体プリフォームを配置する手法を示す断面図。
【図2A】挿入システムの超音波ホーンの一部と、挿入プロセス中のプリフォームのうちの1つに対するその配向とをさらに示す、図2に示す円で囲まれた領域2の拡大図。
【図3】本発明の挿入プロセスを実施するために用いられる挿入システムに含まれる種々の構成要素を示す概略図。
【図4A】本発明の挿入プロセスを実施するために用いられる挿入システムの超音波ホーンの側面図。
【図4B】本発明の挿入プロセスを実施するために用いられる挿入システムの超音波ホーンの端面図。
【図5】本発明の挿入プロセスを用いて達成される挿入力と挿入速度との間の関係を示すグラフ。
【図6A】本発明の挿入プロセスを用いて達成される許容可能、許容不能なZピン挿入に関連する挿入力と挿入速度との間の関係を示すグラフ。
【図6B】本発明の挿入プロセスを用いて達成される許容可能、許容不能なZピン挿入に関連する挿入力と挿入速度との間の関係を示すグラフ。
【図6C】本発明の挿入プロセスを用いて達成される許容可能、許容不能なZピン挿入に関連する挿入力と挿入速度との間の関係を示すグラフ。
【図6D】本発明の挿入プロセスを用いて達成される許容可能、許容不能なZピン挿入に関連する挿入力と挿入速度との間の関係を示すグラフ。
【図6E】本発明の挿入プロセスを用いて達成される許容可能、許容不能なZピン挿入に関連する挿入力と挿入速度との間の関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料積層材中への1つ以上のZピンの許容可能な挿入を自動的に確認する方法であって、
(a)複合材料積層材上に1つ以上のZピンを配置する工程と、
(b)第1の挿入速度にて複合材料積層材の中へZピンを押し進める挿入プロセスを開始するのに充分な第1のレベルの挿入力をZピンに加える工程と、
(c)Zピンに対し加えられる挿入力を監視する工程と、
(d)挿入力の第1のレベルから第2のレベルまでの増大を監視することに応答して、第1の挿入速度を第2の挿入速度まで減少する工程と、
(e)挿入力の第2のレベルから第3のレベルまでの増大を監視することに応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程と、
(f)工程(d)における第1の挿入速度から第2の挿入速度までの減少及び工程(e)における挿入力の第3のレベルまでの増大を確認する工程とからなる方法。
【請求項2】
工程(b)におけるZピンの第1の挿入速度は約6.35mm(0.25インチ)毎秒である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(d)におけるZピンの第2の挿入速度は約1.27mm(0.050インチ)毎秒まで減少される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(d)においてZピンに加えられる第2のレベルの挿入力は約178N(40ポンド)である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(e)においてZピンに加えられる第3のレベルの挿入力は約222N(50ポンド)である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)及び(d)においてZピンに挿入力を加えるために超音波ホーンを用いる請求項1に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)において監視したZピンに対し加えられる挿入力に対応する読取値は挿入プロセスのうちの所定の初期増加を通じて無視される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(e)は、挿入プロセスの完了に対する最大設定時間の経過に応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(e)は、Zピンが最大設定深度まで複合材料積層材の中へ押し進められていることに応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)及び(d)においてZピンに挿入力を加えるために超音波ホーンを用いることと、
工程(e)は、超音波ホーンが所定の最大温度レベルに達していることに応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程を含むことと、を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1及び第2の複合材料積層材中への複数のZピンの許容可能な挿入を自動的に確認する方法であって、
(a)第1の複合材料積層材上にZピンを配置する工程と、
(b)第1の挿入速度にて第1の複合材料積層材を通じて第2の複合材料積層材の中へZピンを押し進める挿入プロセスを開始するのに充分な第1のレベルの挿入力をZピンに加える工程と、
(c)Zピンに対し加えられる挿入力を監視する工程と、
(d)挿入力の第1のレベルから第2のレベルまでの増大を監視することに応答して、第1の挿入速度を第2の挿入速度まで減少する工程と、
(e)挿入力の第2のレベルから第3のレベルまでの増大を監視することに応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程と、
(f)工程(d)における第1の挿入速度から第2の挿入速度までの減少及び工程(e)における挿入力の第3のレベルまでの増大を確認する工程とからなる方法。
【請求項12】
工程(b)及び(d)においてZピンに挿入力を加えるために超音波ホーンを用いる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)において監視したZピンに対し加えられる挿入力に対応する読取値は挿入プロセスのうちの所定の初期増加を通じて無視される請求項11に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)は、挿入プロセスの完了に対する最大設定時間の経過に応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
工程(e)は、各Zピンが最大設定深度まで第1及び第2の複合材料積層材の中へ押し進められていることに応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程を含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
工程(b)及び(d)においてZピンに挿入力を加えるために超音波ホーンを用いることと、
工程(e)は、超音波ホーンが所定の最大温度レベルに達していることに応答して、Zピンに挿入力を加えることを中断し、挿入プロセスを中断する工程を含むことと、を含む請求項11に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)において第1の複合材料積層材上に位置する共通の担体プリフォーム内にZピンが配置される請求項11に記載の方法。
【請求項18】
工程(b)におけるZピンの第1の挿入速度は約6.35mm(0.25インチ)毎秒である請求項11に記載の方法。
【請求項19】
工程(d)におけるZピンの第2の挿入速度は約1.27mm(0.050インチ)毎秒まで減少される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(d)においてZピンに加えられる第2のレベルの挿入力は約178N(40ポンド)であることと、
工程(e)においてZピンに加えられる第3のレベルの挿入力は約222N(50ポンド)であることと、を含む請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【公開番号】特開2007−1307(P2007−1307A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−171410(P2006−171410)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(397017191)ノースロップ グラマン コーポレーション (30)
【Fターム(参考)】