説明

p38MAPキナーゼ阻害剤及びその使用方法

式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig又はIh(式中、X及びYは、いずれも窒素であるか、一方が窒素であり、他方がCRgであり、W、D、E、R4、R5、R6及びRgは、明細書で定義するとおりである)の化合物。また、主題化合物を製造する方法及びその化合物をp38MAPキナーゼ媒介疾病の処置で使用する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合ピラゾロピリミジン誘導体及び関連化合物、それらの製造方法、それらを含む医薬製剤ならびにそれらの使用方法に関する。より具体的には、縮合ピラゾロピリミジン及び関連化合物の有用なプロドラッグ化合物ならびにそれらを製造し、使用する方法が開示される。
【0002】
アイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAP)は、二重のリン酸化によって基質を活性化するプロリン指向性セリン/トレオニンキナーゼのファミリーである。これらのキナーゼは、栄養及び浸透ストレス、UV光、成長因子、エンドトキシン及び炎症性サイトカインをはじめとする多様なシグナルによって活性化される。MAPキナーゼの一つのグループが、様々なアイソフォーム(たとえばp38α、p39β、p38γ及びp38δ)を含むp38キナーゼグループである。p38キナーゼは、転写因子及び他のキナーゼをリン酸化し、活性化する役目を負い、物理的及び化学的ストレス、炎症誘発性サイトカイン及びバクテリアリポ多糖によって活性化される。
【0003】
より重要なことには、p38リン酸化の産物は、TNF及びIL−1ならびにシクロオキシゲナーゼ−2をはじめとする炎症性サイトカインの産生を媒介するということが示されている。これらのサイトカインそれぞれは、数多くの疾病状態及び病状に関与するとされている。たとえば、TNF−αは、主に活性化単球及びマクロファージによって産生されるサイトカインである。その過度又は制御されない産生は、リウマチ関節炎の発症において原因的役割を演じるとされている。より最近では、TNF産生の阻害が、炎症、炎症性腸疾患、多発性硬化症及びぜん息の治療に広い用途を有することが示されている。
【0004】
TNFはまた、ウイルス感染、たとえばとりわけHIV、インフルエンザウイルス及び単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス、ヒトヘルペスウイルス−6(HHV−6)、ヒトヘルペスウイルス−7(HHV−7)、ヒトヘルペスウイルス−8(HHV−8)をはじめとするヘルペスウイルス、仮性狂犬病ならびに鼻気管炎における関与するとされている。
【0005】
同様に、IL−1は、活性化単球及びマクロファージによって産生され、リウマチ関節炎、発熱及び骨吸収の減少をはじめとする多くの病態生理学的応答において役割を演じる。
【0006】
さらには、p38の関与は、卒中、アルツハイマー病、変形性関節症、肺障害、敗血症性ショック、血管形成、皮膚炎、乾癬及びアトピー性皮膚炎にも関係するとされている。J. Exp. Opin. Ther. Patents, 2000, 10(1)。
【0007】
腫瘍学における治療標的としてのp38MAPキナーゼの役割が考察されている。Podar et al., Expert Opinion on therapeutic Targets 2005, 9, 359-381、Schultz, Progress in Drug Research 2003, 60, 59-92。
【0008】
p38キナーゼの阻害によるこれらのサイトカインの阻害は、これらの病状の多くを抑制し、軽減し、緩和するのに有益である。
【0009】
活性薬物の物性の変更、薬物動態学的パラメータの最適化及び特定の標的組織もしくは細胞に対する活性部分の部位特異的ターゲティングもしくは限局化をはじめとする様々な理由で、活性薬物部分の化学的誘導体化がしばしば実施される。Albertは、内因性の生物学的活性を欠くが、活性薬物への代謝的転換が可能である化合物を表すためにプロドラッグという語を導入した(Albert, Selective Toxicity, Chapman and Hall, London, 1951)。代謝的転換は特定の酵素、多くの場合はヒドロラーゼによって触媒されることができるが、活性化合物はまた、非特異的な化学的プロセスによって放出させることもできる。プロドラッグは近年にも考察されている(Ettmayer et al, J. Med Chem. 2004 47(10):2393-2404、Beaumont et al, Curr. Drug Metab. 2003 4:461-485、Bundgaard, Design of Prodrugs: Bioreversible derivatives for various functional groups and chemical entities in Design of Prodrugs, Bundgaard (ed) Elsevier Science Publishers, Amersterdam 1985)。
【0010】
本発明は、式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig又はIh
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、
1は、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はシクロアルキルであり、
2は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、分岐鎖状アルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシアルキル、シクロアルケニル又はヒドロキシシクロアルキルであり、
3は、水素又はアルキルであり、
4は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、−(CHRar−C(=O)−Rb、−(CHRar−O−C(=O)−Rb、−(CHRar−NH−C(=O)−Rb又は−SO2−Rbであり、
aは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり、
bは、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルであり、
rは、0〜4であり、
5は、水素、−C(=O)−Rc、−(O=)P(ORd2、−S(=O)2ORd又はモノ、ジもしくはトリペプチドであり、
6は、−C(=O)−Rc又は−(O=)P(ORd2−、−S(=O)2ORd又はモノ、ジもしくはトリペプチドであり、
cは、アルキル、アルコキシ、アミノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルオキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、−(CH2p−C(=O)−Re、−(CH=CH)−C(=O)−Re又は−CH(NH2)−Rfであり、
eは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノであり、
pは、2又は3であり、
fは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、場合によっては置換されているフェニル、ベンジル、グアニジニルアルキル、カルボキシアルキル、アミドアルキル、チオアルキル又はイミダゾルアルキルであり、
dは、水素、アルキル、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンであり、
X及びYは、いずれも窒素であるか、一方が窒素であり、他方がCRgであり、
gは、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ハロアルキル、シアノ、ハロ、ヘテロアルキル、C(=O)−Rh又は−SO2−Rhであり、
hは、水素又はアルキルであり、
Dは、−(CR78n−であり、
nは、1〜3であり、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素又はアルキルであり、
Wは、結合、O、S(O)q、CH2又はNRiであり、
Eは、O、S(O)q、CH2又はNRiであり、
qは、0〜2であり、
iは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシシクロアルキル、−C(=O)−Rj又は−SO2−Rjであり、
jは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル又はヘテロシクリルであり、
あるいは、R4及びRiが、それらが結合する原子と一緒になって、複素環式環を形成することもでき、
Aは、O、CH2、S(O)s、C(=O)、NRk又はCH(ORk)であり、
sは、0〜2であり、
kは、水素又はアルキルであり、
kは、0又は1であり、
Bは、O、S(O)j、−(CHRmt、−NRmSO2−、NRm、NRmC(=O)又はC(=O)であり、
jは、0、1又は2であり、
tは、1〜3であり、
mは、水素又はアルキルである)
の化合物又は薬学的に許容しうるその塩を提供する。
【0013】
本発明のもう一つの態様は、一つ以上の式Iの化合物ならびにそのための薬学的に許容しうる担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含む医薬製剤を提供する。
【0014】
本発明の化合物は、タンパク質キナーゼの阻害剤であり、インビボでp38に対して有効な活性を示す。これらの化合物は、サイクリン依存キナーゼ及びチロシンキナーゼよりもp38キナーゼに対して選択性である。したがって、本発明の化合物は、炎症誘発性サイトカイン、たとえばTNF及びIL−1によって媒介される疾病の処置に使用することができる。したがって、本発明のもう一つの態様は、一つ以上の式Iの化合物の治療有効量を患者に投与する、p38媒介疾病又は病状を処置する方法を提供する。
【0015】
本開示で引用するすべての刊行物を引用例として本明細書に取り込む。
【0016】
断りない限り、明細書及び請求の範囲を含む本出願で使用する以下の語は、以下に記す定義を有する。明細書及び請求の範囲で使用される単数形「a」,「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明らかに指図しない限り、複数の指示対象をも含むということに留意しなければならない。
【0017】
「アルキル」とは、炭素原子1〜6個の一価の直鎖状飽和炭化水素部分又は炭素原子3〜6個の一価の分岐鎖状飽和炭化水素部分、たとえばメチル、エチル、プロピル、2−プロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチルなどをいう。
【0018】
「アルキレン」とは、炭素原子1〜6個の二価の直鎖状飽和炭化水素部分又は炭素原子3〜6個の二価の分岐鎖状飽和炭化水素部分、たとえばメチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどをいう。
【0019】
「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合を含有する、炭素原子2〜6個の一価の直鎖状炭化水素基又は炭素原子3〜6個の一価の分岐鎖状炭化水素基、たとえばエテニル、プロペニルなどをいう。「アルケニレン」とは、二価のアルケニル基をいう。
【0020】
「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合を含む、炭素原子2〜6個の一価の直鎖状炭化水素基又は炭素原子3〜6個の一価の分岐鎖状炭化水素基、たとえばエチニル、プロピニルなどをいう。「アルキニレン」とは、二価のアルキニル基をいう。
【0021】
「アルコキシ」とは、式−OR(Rは、本明細書で定義するアルキル部分である)の部分をいう。アルコキシ部分の例は、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどを含むが、これらに限定されない。
【0022】
「アルコキシアルキル」とは、式Ra−O−Rb−(Raは、本明細書で定義するアルキルであり、Rbは、本明細書で定義するアルキレンである)の部分をいう。典型的なアルコキシアルキル基は、例として、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、1−メチル−2−メトキシエチル、1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピル及び1−(2−メトキシエチル)−3−メトキシプロピルを含む。
【0023】
「アルキルスルホニルアルキル」とは、式Ra−SO2−Rb−(Raは、本明細書で定義するアルキルであり、Rbは、本明細書で定義するアルキレンである)の部分をいう。典型的なアルキルスルホニルアルキル基は、たとえば、3−メタンスルホニルプロピル、2−メタンスルホニルエチル、2−メタンスルホニルプロピルなどを含む。
【0024】
「アルコキシアミノ」とは、−NR−OR′(Rは、水素又は本明細書で定義するアルキルであり、R′は、本明細書で定義するアルキルである)の部分をいう。
【0025】
「アルキルスルファニル」とは、基−SR(Rは、本明細書で定義するアルキルである)の部分をいう。
【0026】
「アルキルスルホニル」とは、基−SO2R(Rは、本明細書で定義するアルキルである)の部分をいう。
【0027】
「アルカリ金属イオン」とは、Ia族金属の一価イオン、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムムイオン、好ましくはナトリウム又はカリウムイオンをいう。
【0028】
「アルカリ土類金属イオン」とは、IIA族金属の二価イオン、たとえばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムイオン、好ましくはマグネシウム又はカルシウムイオンをいう。
【0029】
「アミノ」とは、基−NR′R″(R′及びR″は、それぞれ独立して、水素又はアルキルである)をいう。したがって、本明細書で使用する「アミノ」は「アルキルアミノ」及び「ジアルキルアミノ」を含む。
【0030】
「アルキルアミノアルキル」とは、基−R−NHR′(Rはアルキレンであり、R′はアルキルである)をいう。アルキルアミノアルキルは、メチルアミノメチル、メチルアミノエチル、メチルアミノプロピル、エチルアミノエチルなどを含む。
【0031】
「ジアルキルアミノアルキル」とは、基−R−NR′R″(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′及びR″は、本明細書で定義するアルキルである)をいう。ジアルキルアミノアルキルは、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、N−メチル−N−エチルアミノエチルなどを含む。
【0032】
「アミノアルコキシ」とは、基−OR−R′(R′は、本明細書で定義するアミノであり、Rは、本明細書で定義するアルキレンである)をいう。
【0033】
「アルキルスルホニルアミド」とは、式−NR′SO2−R(Rはアルキルであり、R′は水素又はアルキルである)の部分をいう。
【0034】
「アリール」とは、好ましくはアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、ニトロ、シアノ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、アシル、ヘテロアルキル、場合によっては置換されているアリール、場合によっては置換されているヘテロアリール、場合によっては置換されているアラルキル及び場合によっては置換されているヘテロアラルキルからなる群よりそれぞれ選択される1個以上、好ましくは1、2又は3個の置換基によって場合によっては置換されている一価の単環式又は二環式の芳香族炭化水素部分をいう。特に好ましいアリール置換基はハライドである。より具体的には、アリールという語は、それぞれ置換されていることもできるし、非置換であることもできるフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0035】
「アラルキル」とは、式−R−R′(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、本明細書で定義するアリールである)の部分をいう。
【0036】
「アラルコキシ」とは、基−O−R−R′(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、本明細書で定義するアリールである)をいう。
【0037】
「置換アラルキル」又は「場合によっては置換されているアラルキル」とは、それぞれ、アリール部分が置換されているアラルキル又はアリール部分が場合によっては置換されているアラルキルをいう。
【0038】
「シクロアルキル」とは、環炭素3〜7個の一価の飽和環式炭化水素部分、たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシルなどをいう。シクロアルキルは、場合によっては、1個以上の置換基、好ましくは1、2又は3個の置換基によって置換されていてもよい。好ましくは、シクロアルキル置換基は、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ハロ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、ヘテロアルキル、アシル、アリール及びヘテロアリールからなる群より選択される。
【0039】
「シクロアルキルアルキル」とは、式Rc−Rd−(Rcは、本明細書で定義するシクロアルキルであり、Rdは、本明細書で定義するアルキレンである)の部分をいう。
【0040】
「ハロ」、「ハロゲン」及び「ハライド」とは、本明細書では互換可能に使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードをいう。好ましいハライドはフルオロ及びクロロであり、フルオロが特に好ましいハライドである。
【0041】
「ハロアルキル」とは、1個以上の同じ又は異なるハロ原子によって置換されているアルキル、たとえば−CH2Cl、−CF3、−CH2CF3、−CH2CCl3などをいう。
【0042】
「ヘテロアルキル」とは、1個以上、好ましくは1、2又は3個の水素原子が、−ORa、−NRbc(nは、Rb及びRcがいずれも独立してアルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであるならば0又は1であり、そうでなければ0である)及び−S(O)nd(nは0〜2の整数である)からなる群より独立して選択される置換基によって置換されている、本明細書で定義するアルキル部分であって、ヘテロアルキル部分の結合点が炭素原子を介すると理解されるもの(Raは、水素、アシル、アルコキシカルボニル、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アミノカルボニル、アミノスルホニルアミノ、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、Rb及びRcは、互いに独立して、水素、アシル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノカルボニル、アミノスルホニルアミノ、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、モノもしくはジアルキルアミノスルホニル、アミノアルキル、モノもしくはジアルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシアルキルスルホニル又はアルコキシアルキルスルホニルであり、nが0である場合、Rdは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はアリールであり、nが1又は2である場合、Rdは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、アミノカルボニル、アミノスルホニルアミノ、アルキルスルホニル、アミノ又は場合によっては置換されているフェニルである)をいう。代表例は、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルなどを含むが、これらに限定されない。したがって、ヒドロキシアルキル及びアルコキシアルキルはヘテロアルキルの部分集合である。
【0043】
「ヘテロアリール」とは、N、O又はS(好ましくはN又はO)から選択される1、2又は3個の環ヘテロ原子を含有し、残りの環原子がCである、少なくとも1個の芳香環を有する、環原子5〜12個の一価の単環式又は二環式部分であって、ヘテロアリール部分の結合点が芳香環上にあると理解されているものをいう。ヘテロアリール環は、場合によっては、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロ、ニトロ及びシアノから選択される1個以上の置換基、好ましくは1、2又は3個の置換基によって独立して置換されている。より具体的には、ヘテロアリールという語は、ピリジル、フラニル、チエニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、イミダゾリル、イソキサゾリル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジニル、ベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、イソインドリル、ベンズオキサゾリル、キノリル、テトラヒドロキノリル、イソキノリル、ベンズイミダゾリル、ベンズイソキサゾリル又はベンゾチエニル、イミダゾ[1,2−a]−ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル及びそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0044】
「ヘテロアラルキル」とは、式−R−R′(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、本明細書で定義するヘテロアリールである)の部分をいう。
【0045】
「ヘテロアラルコキシ」とは、基−O−R−R′(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、本明細書で定義するヘテロアリールである)をいう。
【0046】
「ヘテロシクリル」とは、1又は2個の環原子が、N、O又はS(O)n(nは、0〜2の整数である)、好ましくはN又はOから選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子がCである(1又は2個のC原子が場合によってはカルボニル基によって置換されていてもよい)、環原子3〜8個の飽和又は不飽和の非芳香族環式部分をいう。ヘテロシクリル環は、場合によっては、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、シアノアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、アラルキル、−(X)n−C(O)Re(Xは、O又はNRfであり、nは、0又は1であり、Reは、水素、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシ(nが0である場合)、アルコキシ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ又は場合によっては置換されているフェニルであり、Rfは、H又はアルキルである)、−アルキレン−C(O)Rg(Rgは、アルキル、−ORh又はNRijであり、Rhは、水素、アルキル又はハロアルキルであり、Ri及びRjは、独立して、水素又はアルキルである)及び−S(O)nk(nは、0〜2の整数であり、nが0である場合、Rkは、水素、アルキル、シクロアルキル又はシクロアルキルアルキルであり、nが1又は2である場合、Rkは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである)からそれぞれ選択される1個以上、好ましくは1、2又は3個の置換基によって独立して置換されていてもよい。ヘテロシクリル置換基の特に好ましい群は、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、モノ及びジアルキルアミノ、アラルキル及び−S(O)nkを含む。特に、ヘテロシクリルという語は、それぞれ場合によっては置換されていてもよい、テトラヒドロフラニル、ピリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジノ、N−メチルピペリジン−3−イル、ピペラジノ、N−メチルピロリジン−3−イル、3−ピロリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオモルホリノ−1−オキシド、チオモルホリノ−1,1−ジオキシド、4−(1,1−ジオキソ−テトラヒドロ−2H−チオピラニル)、ピロリニル、イミダゾリル、N−メタンスルホニルピペリジン−4−イル及びそれらの誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0047】
「ヘテロシクリルアルキル」とは、式−R−R′(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、本明細書で定義するヘテロシクリルである)の部分をいう。
【0048】
「ヘテロシクリルオキシ」とは、式−OR(Rは、本明細書で定義するヘテロシクリルである)の部分をいう。
【0049】
「ヘテロシクリルアルコキシ」とは、式−OR−R′(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、本明細書で定義するヘテロシクリルである)の部分をいう。
【0050】
「ヒドロキシアルコキシ」とは、式−OR(Rは、本明細書で定義するヒドロキシアルキルである)の部分をいう。
【0051】
「ヒドロキシアルキルアミノ」とは、式−NR−R′(Rは、水素又は本明細書で定義するアルキルであり、R′は、本明細書で定義するヒドロキシアルキルである)の部分をいう。
【0052】
「ヒドロキシアルキルアミノアルキル」とは、式−R−NR′−R″(Rは、本明細書で定義するアルキレンであり、R′は、水素又は本明細書で定義するアルキルであり、R″は、本明細書で定義するヒドロキシアルキルである)の部分をいう。
【0053】
「ヒドロキシアルキル」とは、本明細書で定義するヘテロアルキルの部分集合をいい、特に、同じ炭素原子が2個以上のヒドロキシ基を持たないという条件で、1個以上、好ましくは1、2又は3個のヒドロキシ基によって置換されている、本明細書で定義するアルキル部分をいう。代表例は、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシブチル、3,4−ジヒドロキシブチル及び2−(ヒドロキシエチル)−3−ヒドロキシプロピルを含むが、これらに限定されない。
【0054】
「ヒドロキシシクロアルキル」とは、本明細書で定義するシクロアルキル部分の部分集合をいい、特に、シクロアルキル部分中の1個以上、好ましくは1、2又は3個の水素原子がヒドロキシ置換基によって置換されている、本明細書で定義するシクロアルキル部分をいう。代表例は、2−、3−又は4−ヒドロキシシクロヘキシルなどを含むが、これらに限定されない。
【0055】
「ペプチド」とは、二つ以上のアミノ酸から、一方の酸のアミノ基とカルボキシル基との組み合わせによって誘導されるアミドをいう。「モノペプチド」とは、単一アミノ酸をいい、「ジペプチド」とは、二つのアミノ酸を含むアミド化合物をいい、「トリペプチド」とは、三つのアミノ酸を含むアミド化合物をいう等々である。「ペプチド」のC末端はエステル官能基を介して別の部分に結合していてもよい。
【0056】
「脱離基」は、合成有機化学において従来からその語に結び付けられてきた意味を有し、すなわち求核性基によって置換されることができる原子又は基をいい、ハロ(たとえばクロロ、ブロモ及びヨード)、アルカンスルホニルオキシ、アレーンスルホニルオキシ、アルキルカルボニルオキシ(たとえばアセトキシ)、アリールカルボニルオキシ、メシルオキシ、トシルオキシ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、アリールオキシ(たとえば2,4−ジニトロフェノキシ)、メトキシ、N,O−ジメチルヒドロキシルアミノなどを含む。
【0057】
「場合によっては置換されている」とは、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」、「シクロアルキル」又は「ヘテロシクリル」と関連して使用される場合、場合によってはアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(Rは、水素、アルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)、−(CR′R″)n−COOR(nは、0〜5の整数であり、R′及びR″は、独立して、水素又はアルキルであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)又は−(CR′R″)n−CONRab(nは、0〜5の整数であり、R′及びR″は、独立して、水素又はアルキルであり、Ra及びRbは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル又はフェニルアルキルである)から選択される1〜4個、好ましくは1又は2個の置換基によって独立して置換されているアリール、フェニル、ヘテロアリール、シクロアルキル又はヘテロシクリルをいう。
【0058】
「薬学的に許容しうる賦形剤」とは、一般に安全かつ非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない、医薬組成物を調製するのに有用である賦形剤をいい、人間の薬学的用途だけでなく獣医学的用途にも許容しうる賦形剤を含む。明細書及び請求の範囲で使用する「薬学的に許容しうる賦形剤」は、そのような賦形剤一つ及び二つ以上の両方を含む。
【0059】
化合物の「薬学的に許容しうる塩」とは、薬学的に許容可能であり、親化合物の所望の薬理活性を有する塩をいう。このような塩は、(1)無機酸、たとえば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などとで形成される、もしくは有機酸、たとえば酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタン−二スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウスルホン酸、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル乳酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などと形成される酸付加塩、又は(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、たとえばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンもしくはアルミニウムイオンによって置換されるか、有機塩基、たとえばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどとで配位する場合に形成される塩を含む。
【0060】
「プロドラッグ」とは、哺乳動物対象に投与された場合に活性親薬物をインビボで放出する化合物をいう。
【0061】
「保護基」とは、分子中の反応性基に結合すると、その反応性を隠蔽、低下又は阻止する原子群をいう。保護基の例は、Green及びFutsのProtective Groups in Organic Chemistry, (Wiley, 2nd ed. 1991)ならびにHarrison及びHarrisonらのCompendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996)に見ることができる。代表的なアミノ保護基は、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、トリメチルシリル(TMS)、2−トリメチルシリル−エタンスルホニル(SES)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、ニトロ−ベラトリルオキシカルボニル(NVOC)などを含む。代表的なヒドロキシ保護基は、ヒドロキシ基がアシル化又はアルキル化されるもの、たとえばベンジル及びトリチルエーテルならびにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルを含む。
【0062】
疾病の「処置」は、(1)疾病を防ぐ、すなわち、疾病に暴露されている又はその疾病の素因を有するおそれがあるが、まだその疾病の症候を経験していない又は示していない哺乳動物において疾病の臨床症候が発現しないようにすること、(2)疾病を抑制する、すなわち、疾病又はその臨床症候の発現を阻止又は軽減すること、又は(3)疾病を緩和する、すなわち、疾病又はその臨床症候の後退を生じさせることを含む。
【0063】
「治療有効量」とは、疾病の処置のために哺乳動物に投与された場合、その疾病に対して当該処置を生じさせるのに十分である化合物の量をいう。「治療有効量」は、化合物、疾病及びその重篤度ならびに処置を受ける哺乳動物の年齢、体重などに依存して異なる。
【0064】
本明細書で使用する「先に定義したもの」及び「本明細書で定義するもの」は、本明細書では互換可能に使用され、ある可変要素を指していう場合、その可変要素の広い定義ならびに好ましい定義、より好ましい定義及びもっとも好ましい定義を参照によって包含する。
【0065】
「モジュレータ」とは、標的と相互作用する分子をいう。相互作用は、本明細書に定義するアゴニスト、アンタゴニストなどを含むが、それらに限定されない。
【0066】
「場合による」又は「場合によっては」とは、その後に記載される事象又は状況が起こらなくてもよく、その記載が、その事象又は状況が起こる場合及びそれが起こらない場合を含むことをいう。
【0067】
「疾病状態」とは、疾病、症状、症候又は徴候をいう。
【0068】
「不活性有機溶媒」又は「不活性溶媒」とは、それとともに記載される反応の条件の下で不活性である、たとえばベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N.N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレン又はジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどを含む溶媒をいう。断りない限り、本発明の反応で使用される溶媒は不活性溶媒である。
【0069】
「溶媒和物」とは、化学量論的量又は非化学量論的量の溶媒を含有する溶媒添加形態をいう。一部の化合物は、一定のモル比の溶媒分子を結晶固体状態中に捕らえ、それによって溶媒和物を形成する傾向を有する。溶媒が水であるならば、形成される溶媒は水和物であり、溶媒がアルコールであるならば、形成される溶媒はアルコラートである。水和物は、1個以上の水分子と、水がH2Oとしてその分子状態を保持するところの物質の一つとの組み合わせにより、その組み合わせが一つ以上の水和物を形成することができることによって形成される。
【0070】
「対象」とは、哺乳動物及び非哺乳動物をいう。哺乳動物とは、ヒト、非ヒト霊長類、たとえばチンパンジー及び他のサル種、産業動物、たとえばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ及びブタ、家畜、たとえばウサギ、イヌ及びネコ、齧歯類をはじめとする実験動物、たとえばラット、マウス及びモルモットなどをはじめとする哺乳類の任意のメンバーをいう。非哺乳動物の例はトリなどを含むが、それに限定されない。「対象」は、特定の年齢又は性別を指定しない。
【0071】
本明細書で使用する「先に定義したもの」及び「本明細書で定義するもの」は、ある可変要素を指していう場合、その可変要素の広い定義ならびに好ましい定義、より好ましい定義及びもっとも好ましい定義を参照によって包含する。
【0072】
「処理する」、「接触させる」及び「反応させる」とは、ある化学反応を指していう場合、指示生成物及び/又は目的生成物を製造するのに適切な条件下、二つ以上の試薬を添加又は混合することをいう。指示生成物及び/又は目的生成物を製造する反応は、必ずしもはじめに加えられた二つの試薬の組み合わせから直接生じなくてもよいことが理解されよう。すなわち、最終的に指示生成物及び/又は目的生成物の形成につながる混合物中で生成される一つ以上の中間体があってもよい。
【0073】
一般に、本出願で使用される名称は、IUPAC系統名の生成のためのBeilstein Instituteのコンピュータ化システムであるAUTONOM(商標)v.4.0に基づく。本明細書で示す化学構造は、ISIS(登録商標)バージョン2.2を使用して作成した。本明細書における構造中で炭素、酸素又は窒素原子上に見られる空の原子価は水素の存在を示す。キラルな中心が構造中に存在するが、特定のエナンチオマーが示されていない場合、その構造は、そのキラルな中心に対応する両エナンチオマーを含む。
【0074】
本発明は、p38媒介疾病の処置におけるより効率的な投薬計画のために有効成分のより高い血中レベルを達成するp38モジュレータのプロドラッグ化合物を提供する。本発明のプロドラッグ化合物は、驚くことに、親化合物よりも改善された薬物動態学的性質を示す。
【0075】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、kは0である。
【0076】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、X及びYは窒素である。
【0077】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、AはO、S又はNRhである。
【0078】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R2はアリールである。
【0079】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R1はアリールである。
【0080】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R2は、場合によっては置換されているフェニル、たとえば2−ハロフェニル、2,4−ジハロフェニル又は2−ハロ−5−アルキルスルホニルフェニルである。
【0081】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R1は、場合によっては置換されているフェニル、たとえばハロで1回又は2回置換されているフェニルである。特定の実施態様では、R1は2,4−ジハロフェニル、たとえば2,4−フルオロフェニルである。
【0082】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、Xは窒素であり、YはCRgである。
【0083】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、Yは窒素であり、XはCRgである。
【0084】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、AはOである。
【0085】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、nは1又は2である。
【0086】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R7及びR8は水素である。
【0087】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R2は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シアノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルコキシ又は−C(=O)−Rn(Rnは、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキル)で1回又は2回置換されているフェニルである。
【0088】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、R2はヘテロアリールである。好ましいヘテロアリールは、チエニル、フラニル、ピリジニル及びピリミジニルを含む。
【0089】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素である。
【0090】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルである。
【0091】
式Ia〜Ihのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルである。
【0092】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1である。
【0093】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素である。
【0094】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、WはO又はNRiである。そのような実施態様の多くでは、WはNRiである。
【0095】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、R4はヘテロアルキルである。典型的なヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル及びアルキルスルホニルアルキルを含む。好ましいヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル及びアルキルスルホニルアルキルであり、より好ましいヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル及びアルキルスルホニルアルキルである。
【0096】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、R5は水素である。
【0097】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、R5は−C(=O)−Rcである。
【0098】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0099】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、R5は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0100】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0101】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、Wは結合であり、R4は水素である。
【0102】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素であり、WはNRiであり、R4は、ヘテロアルキル、好ましくはヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0103】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素であり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は水素である。
【0104】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素であり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−C(=O)−Rcである。
【0105】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素であり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−C(=O)−Rcであり、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0106】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素であり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−C(=O)−Rcであり、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0107】
式Ia、Ic、Ie及びIgのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは1であり、R7及びR8は水素であり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0108】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは2である。
【0109】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、EはO又はNRiである。そのような実施態様の多くでは、EはNRiである。
【0110】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、R6は水素である。
【0111】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、R6は−C(=O)−Rcである。
【0112】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0113】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、R6は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0114】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0115】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは2であり、EはNRiである。
【0116】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは2であり、EはNRiであり、R6は−C(=O)−Rcである。
【0117】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは2であり、EはNRiであり、R6は−C(=O)−Rcであり、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0118】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは2であり、EはNRiであり、R6は−C(=O)−Rcであり、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0119】
式Ib、Id、If及びIhのいずれかの特定の実施態様では、kは0であり、AはOであり、X及びYは窒素であり、R1は、場合によっては置換されているフェニルであり、R2は、場合によっては置換されているフェニルであり、nは2であり、EはNRiであり、R6は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0120】
本発明の特定の実施態様では、主題化合物は、式IIa、IIb、IIc、IId、IIe、IIf、IIg又はIIh
【0121】
【化5】

【0122】
(式中、
uは、0〜4であり、
vは、0〜4であり、
各R9は、独立して、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル又はシアノであり、
各R10は、独立して、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シアノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルコキシ又は−C(=O)−Rnであり、
nは、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、
W、X、Y、D、E、R4、R5及びR6は、本明細書で定義するとおりである)
の化合物であることができる。
【0123】
いずれかの式IIa〜IIfの特定の実施態様では、uは1又は2であり、R9はハロである。好ましくは、uは2であり、R9はフルオロである。
【0124】
いずれかの式IIa〜IIfの特定の実施態様では、vは1又は2であり、R10はハロ又はアルキルスルホニルである。そのような実施態様では、vが1であることができ、R10がクロロであることができるか、あるいは、vが2であることができ、各R10がフルオロであることができるか、あるいは、vが2であることができ、R10の一方がハロであり、他方がアルキルスルホニルである。
【0125】
式IIa、IIc、IIe又はIIgのいずれかの特定の実施態様では、nは1である。
【0126】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、R7及びR8は水素である。
【0127】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、WはO又はNRiである。好ましくは、WはNRiである。
【0128】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、Wは結合であり、R4は水素である。
【0129】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、R4はヘテロアルキルである。典型的なヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル及びアルキルスルホニルアルキルを含む。好ましいヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル及びアルキルスルホニルアルキルであり、より好ましいヘテロアルキルは、ヒドロキシアルキル及びアルキルスルホニルアルキルである。
【0130】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、R5は水素である。
【0131】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、R5は−C(=O)−Rcである。
【0132】
IIa、IIc、IIe又はIIgのいずれかの特定の実施態様では、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0133】
式IIa、IIc、IIe又はIIgのいずれかの特定の実施態様では、R5は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0134】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0135】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素である。
【0136】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロである。
【0137】
いずれかの式IIa〜IIfの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルである。
【0138】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであり、WはNRiである。
【0139】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0140】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は水素である。
【0141】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−C(=O)−Rcである。
【0142】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−C(=O)−Rcであり、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0143】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−C(=O)−Rcであり、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0144】
いずれかの式IIa、IIc、IIe又はIIgの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、WはNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルであり、R5は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0145】
式IIb、IId、IIf又はIIhのいずれかの特定の実施態様では、nは2である。
【0146】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、EはO又はNRiである。好ましくは、EはNRiである。
【0147】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、R6は水素である。
【0148】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、R6は−C(=O)−Rcである。
【0149】
IIb、IId、IIf又はIIhのいずれかの特定の実施態様では、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0150】
式IIa、IIc、IIe又はIIgのいずれかの特定の実施態様では、R5は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0151】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0152】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロである。
【0153】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルである。
【0154】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはNRiである。
【0155】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはNRiであり、R6は水素である。
【0156】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはNRiであり、R6は−C(=O)−Rcである。
【0157】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはNRiであり、R6は−C(=O)−Rcであり、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0158】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはNRiであり、R6は−C(=O)−Rcであり、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0159】
いずれかの式IIb、IId、IIf又はIIhの特定の実施態様では、nは2であり、uは2であり、R9はフルオロであり、vは1であり、R10はクロロであるか、あるいは、vは2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはNRiであり、R6は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0160】
本発明の特定の実施態様では、主題化合物は、式IIIa又はIIIb
【0161】
【化6】

【0162】
(式中、A、D、E、W、X、Y、R1、R3、R4及びR10は、本明細書で定義するとおりである)
の化合物であることができる。
【0163】
本発明の特定の実施態様では、主題化合物は、式IVa又はIVb
【0164】
【化7】

【0165】
(式中、u、v、D、E、W、R4、R5、R6、R9及びR10は、本明細書で定義するとおりである)
の化合物であることができる。
【0166】
式IVaの特定の実施態様では、Wは結合であり、R4は水素である。
【0167】
式IVaの特定の実施態様では、WはO又はNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0168】
式IVaの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素である。
【0169】
式IVaの特定の実施態様では、uは1又は2であり、R9はハロである。好ましくは、uは2であり、R9はフルオロである。
【0170】
式IVaの特定の実施態様では、vは1又は2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルである。
【0171】
式IVaの特定の実施態様では、R5は水素である。
【0172】
式IVaの特定の実施態様では、R5は−C(=O)−Rcである。
【0173】
式IVaの特定の実施態様では、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0174】
式IVaの特定の実施態様では、R5は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0175】
式IVaの特定の実施態様では、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0176】
式IVaの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは1又は2であり、R9はハロであり、vは1又は2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、Wは結合であり、R4は水素である。
【0177】
式IVaの特定の実施態様では、nは1であり、R7及びR8は水素であり、uは1又は2であり、R9はハロであり、vは1又は2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、WはO又はNRiであり、R4はヒドロキシアルキル又はアルキルスルホニルアルキルである。
【0178】
式IVbの特定の実施態様では、nは2であり、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素又はメチルである。
【0179】
式IVbの特定の実施態様では、uは1又は2であり、R9はハロである。好ましくは、uは2であり、R9はフルオロである。
【0180】
式IVbの特定の実施態様では、vは1又は2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルである。
【0181】
式IVbの特定の実施態様では、R6は水素である。
【0182】
式IVaの特定の実施態様では、R6は−C(=O)−Rcである。
【0183】
式IVaの特定の実施態様では、Rcは−(CH2p−C(=O)−Reである。そのような実施態様では、pは2であることができ、Reはヒドロキシであることができる。
【0184】
式IVaの特定の実施態様では、R6は−(O=)P(ORd2−である。そのような実施態様では、Rdは水素であることができる。
【0185】
式IVaの特定の実施態様では、Rcは−CH(NH2)−Rfである。そのような実施態様では、Rfはアルキルであることができる。
【0186】
式IVbの特定の実施態様では、nは2であり、R7及びR8は、それぞれ独立して、水素又はメチルであり、uは1又は2であり、R9はハロであり、vは1又は2であり、各R10は、独立して、ハロ又はアルキルスルホニルであり、EはO又はNRiである。
【0187】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri、Rj、Rk又はRmのいずれかがアルキルであるか、アルキル部分を含む本発明の実施態様では、そのようなアルキルは、好ましくは低級アルキル、すなわちC1〜C6アルキル、より好ましくはC1〜C4アルキルである。
【0188】
式Iの化合物の薬学的に許容しうる酸付加塩としては、無機酸、たとえば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などから誘導される塩ならびに有機酸、たとえば脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、アルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などから誘導される塩がある。したがって、そのような塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などがある。同じく考慮されるものは、アミノ酸の塩、たとえばアルギン酸塩など及びグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩である(たとえば、Berge et al., J. of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照)。
【0189】
塩基性化合物の酸付加塩は、従来のやり方で、遊離塩基形態を、塩を製造するのに十分な量の所望の酸と接触させることによって調製することができる。遊離塩基形態は、従来のやり方で、塩形態を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することによって再生することができる。遊離塩基形態は、極性溶媒への可溶性のような特定の物性においてその塩形態といくらか異なるが、他の点では、本発明に関して塩はそれぞれの遊離塩基と等価である。
【0190】
本発明の代表的な化合物を以下の表1に示す。
【0191】
【表1】



【0192】
本発明の化合物は、以下に示し、記載する例示的な合成反応スキームで示す多様な方法で製造することができる。
【0193】
これらの化合物を調製する際に使用される出発原料及び試薬は、一般に、供給業者、たとえばAldrich Chemical社から入手可能であるか、当業者には公知の方法により、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis; Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-15、Rodd's Chemistry of Carbon Compounds, Elsevier Science Publishers, 1989, Volumes 1-5 and Supplemental及びOrganic Reactions, Wiley & Sons: New York, 1991, Volumes 1-40のような参考文献に記載された以下の手法にしたがって調製される。以下の合成反応スキームは、本発明の化合物を合成することができるいくつかの方法を例示するだけであり、これらの合成反応スキームに対する様々な改変が可能であり、本出願に含まれる開示を参照した当業者には理解されよう。
【0194】
合成反応スキームの出発原料及び中間体は、所望ならば、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどをはじめとする従来技術を使用して単離し、精製することができる。そのような材料は、物理定数及びスペクトルデータを含む従来手段を使用して特性決定することができる。
【0195】
断りない限り、本明細書に記載される反応は、好ましくは、不活性雰囲気下、大気圧で、約−78℃〜約150℃、より好ましくは約0℃〜約125℃の反応温度範囲、もっとも好ましくかつ好都合には約室温(又は周囲温度)、たとえば約20℃で実施される。
【0196】
本発明のピラゾロピリミジン化合物を調製する具体的な方法の一つを以下のスキームIに示す。スキーム中、X、Y、A、u、v、R4、R9、R10、Rc、Rd及びRiは、本明細書に記載するとおりである。
【0197】
【化8】

【0198】
スキーム1のステップ1で、塩基、たとえばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)又は当業者に周知である他の適当な塩基を使用して、ジクロロチオ化合物aを脱プロトン化する。脱プロトン化したピリミジンaをベンズアルデヒドb又はその誘導体と反応させてアルコールcを生成する。ステップ2で、このアルコールcをたとえば酸化マンガンなどによって酸化させてピリミジンフェニルケトンdを生成する。ステップ3で、ケトンdをヒドラジンと反応させると、ピラゾロピリミジンeの形態の閉環生成物が得られる。ステップ4で、ピラゾロピリミジンeを求核試薬、たとえばアミンfと反応させると、化合物e上のクロロ基が置換されてアミノ化合物fが得られる。あるいはまた、アルコキシドR4-又はチオアルコキシドR4-をアミンfに代えて使用することもできる。次いで、ステップ5で、化合物f上のチオ基をたとえばオキソン、メタクロロ安息香酸又は当業者に公知の他の酸化剤によって酸化させてスルホニル誘導体gを生成することができる。次いで、ステップ6で、化合物g上のスルホニル基を求核性アリール基h、たとえば場合によっては置換されているフェノキシド、場合によっては置換されているアニリン又は場合によっては置換されているチオフェンオキシドで置換して化合物jを生成する。ステップ7で、化合物jの1位置の窒素をホルムアルデヒドとの反応によってアルキル化してヒドロメチル化合物kを生成する。そして、化合物kを無水物lで処理してエステル化合物mを得ることがことができる。無水物は、環式無水物、たとえばマレイン酸又はコハク酸無水物であってもよい。場合によっては、Rdが水素になるように化合物oを加水分解してもよい。化合物m及びoは本発明の式Iaの化合物である。
【0199】
当業者は、上記スキームに対する特定の改変が考えられ、本発明の範囲に入るということを理解するであろう。たとえば、特定のステップは、特定の反応条件とで適合しない官能基のための保護基の使用を含む。
【0200】
本発明の化合物を製造するためのさらなる詳細を以下の実施例の部分で記載する。
【0201】
本発明は、少なくとも一つの本発明の化合物又はその個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物又は薬学的に許容しうる塩もしくは溶媒和物を、少なくとも一つの薬学的に許容しうる担体ならびに場合によっては他の治療及び/又は予防成分とともに含む医薬組成物を含む。
【0202】
一般に、本発明の化合物は、同様な用途に役立つ薬剤に関して許容されている投与形態のいずれかによって治療有効量で投与される。適当な用量範囲は、多数の要因、たとえば処置される疾病の重篤度、対象者の年齢及び相対的健康度、使用される化合物の効力、投与の経路及び形態、用途が向けられる指示ならびに関与する医療実施者の好み及び経験に依存して、一般に1日1〜500mg、好ましくは1日1〜100mg、もっとも好ましくは1日1〜30mgである。そのような疾病を処置する当業者は、無駄な実験を行うことなく、自らの知識及び本出願の開示に依存して、所与の疾病の場合の本発明の化合物の治療有効量を確かめることができるであろう。「製剤」又は「剤形」は、有効成分化合物の固形調合物及び液状調合物の両方を含むことを意図し、当業者は、有効成分が、標的器官又は組織ならびに所望の用量及び薬物動態学的パラメータに依存して異なる製剤として存在することができることを理解するであろう。
【0203】
一般に、本発明の化合物は、経口(口腔及び舌下を含む)、直腸、鼻内、局所、肺、膣内又は非経口(筋内、動脈内、脊髄内、皮下及び静脈内を含む)投与に適した医薬製剤を含む医薬製剤として、又は吸入もしくは吹入投与に適した形態で投与される。好ましい投与方法は、一般に、病気の程度に応じて調節することができる好都合な1日当たりの投与計画を使用する経口投与である。
【0204】
本発明の化合物は、一つ以上の従来のアジュバント、担体又は希釈剤とともに、医薬組成物又は単位剤形に配することができる。医薬組成物及び単位剤形は、さらなる有効成分化合物又は成分の有無にかかわらず、従来の割合の従来成分で構成されることができ、単位剤形は、用いられる所期の1日用量範囲と釣り合った有効成分の適当な有効量を含有することができる。医薬組成物は、固体、たとえば錠剤もしくは充填カプセル剤、半固体、散剤、徐放性剤又は液体、たとえば液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、又は経口用の充填カプセル剤として、又は直腸もしくは膣内投与のための坐剤の形態、又は非経口使用のための無菌注射用液剤の形態で使用することができる。したがって、有効成分を1錠あたり約1mg、より広くは約0.01〜約100mg含有する製剤が適当な代表的単位剤形である。
【0205】
本発明の化合物は、広く多様な経口投与剤形に調合することができる。医薬組成物及び剤形は、本発明の化合物又は薬学的に許容しうるその塩を有効成分化合物として含むことができる。薬学的に許容しうる担体は、固体又は液体のいずれであってもよい。固形製剤は、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤及び分散性顆粒剤を含む。固形担体は、希釈剤、香料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤又はカプセル化材として働くことができる一つ以上の物質であることができる。散剤では、担体は一般に、微粉有効成分との混合物である微粉固体である。錠剤では、有効成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適当な割合で混合され、所望の形及びサイズに成形される。散剤及び錠剤は、好ましくは、有効成分化合物を約1〜約70%含有する。適切な担体としては、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ロウ、ココアバターなどがあるが、これらに限定されない。「製剤」とは、有効成分化合物が、担体の有無にかかわらず、それに対応する担体によって包囲されているカプセル剤を提供する、有効成分化合物と担体としてのカプセル化材との調合物を含むことを意図する。同様に、カシェ剤及びロゼンジ剤が含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤及びロゼンジ剤は、経口投与に適した固形剤形であることができる。
【0206】
経口投与に適した他の形態は、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を含む液状製剤又は使用の直前に液状製剤に転換される固形製剤を含む。乳剤は、溶液、たとえばプロピレングリコール水溶液中で調製することもできるし、乳化剤、たとえばレシチン、ソルビタンモノオレエート又はアラビアゴムを含有することもできる。水溶液は、有効成分を水に溶解し、適切な着色剤、香料、安定剤及び増粘剤を加えることによって調製することができる。水性懸濁剤は、微粉有効成分を粘稠な材料、たとえば天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及び他の周知の懸濁化剤とともに水に分散させることによって調製することができる。固形製剤は、液剤、懸濁剤及び乳剤を含み、有効成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含有することができる。
【0207】
本発明の化合物は、非経口投与(たとえば注入、たとえば大量瞬時投与又は連続輸液)に備えて調合することもでき、アンプル、充填済みシリンジ、少量輸液として単位剤形で、又は保存剤を添加した多回用量容器で提示することもできる。組成物は、油性又は水性溶媒中の懸濁剤、液剤又は乳剤、たとえば水性ポリエチレングリコール中の液剤のような形態をとることができる。油性又は非水性担体、希釈剤、溶剤又は溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(たとえばオリーブ油)及び注射用有機エステル(たとえばオレイン酸エチル)を含み、調合剤、たとえば保存剤、湿潤剤、乳化もしくは懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤を含有することができる。あるいはまた、有効成分は、無菌固体の無菌的単離又は溶液からの凍結乾燥によって得られる、使用前に適当な溶媒、たとえばパイロジェンを含まない無菌水によって構成するための粉末形態にあってもよい。
【0208】
本発明の化合物は、表皮への局所投与のために、軟膏、クリームもしくはローションとして又は経皮パッチとして調合することもできる。軟膏及びクリームは、たとえば、水性又は油性の基材を用いて、適切な増粘剤及び/又はゲル化剤の添加によって調合することができる。ローションは、水性又は油性基材を用いて調合することができ、一般に、一つ以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤又は着色剤を含有する。口腔への局所投与に適した製剤としては、有効薬剤を着香基材、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に含むロゼンジ剤、有効成分を不活性基材、たとえばゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアラビアゴム中に含むパステル剤ならびに有効成分を適切な液状担体中に含む口内洗浄剤がある。
【0209】
本発明の化合物は、坐剤としての投与のために調合することもできる。低融点ロウ、たとえば、まず、脂肪酸グリセリド又はココアバターの混合物を溶融させ、たとえばかく拌によって有効成分を均質に分散させる。次いで、溶融した均質な混合物を好都合なサイズの型に注加し、冷まし、固化させる。
【0210】
本発明の化合物は、膣内投与に備えて調合することもできる。有効成分に加えて、当該技術で知られるような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレーが適切である。
【0211】
本発明の化合物は、経鼻投与に備えて調合することもできる。液剤又は懸濁剤は、従来手段、たとえばドロッパ、ピペット又はスプレーによって鼻腔に直接塗布される。製剤は、単回用量剤形又は多回用量剤形として提供することができる。ドロッパ又はピペットの後者の場合、これは、患者が適切な所定量の液剤又は懸濁剤を投与することによって達成することができる。スプレーの場合、これは、計量型噴霧化スプレーポンプによって達成することができる。
【0212】
本発明の化合物は、鼻腔内投与を含め、特に気道へのエアゾール用途に備えて調合することもできる。化合物は一般に、たとえば5ミクロン以下のオーダの小さな粒径を有する。このような粒径は、当該技術で公知の手段、たとえば超微粉化によって得ることができる。有効成分は、適切な推進剤、たとえばクロロフルオロカーボン(CFC)、たとえばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタンもしくはジクロロテトラフルオロメタン又は二酸化炭素もしくは他の適切なガスとともに加圧パックで提供される。エアゾールはまた、好都合には、レシチンのような界面活性剤を含有する。薬物の用量は、計量弁によって制御することができる。あるいはまた、有効成分は、乾燥粉末、たとえば、適切な粉末基材、たとえばラクトース、デンプン、デンプン誘導体、たとえばヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドン(PVP)中の化合物の粉末混合物の形態で提供することもできる。粉末担体は鼻腔中でゲルを形成する。粉末組成物は、単位剤形として、たとえばゼラチンのカプセルもしくはカートリッジ又はブリスタパックとして提示することができ、そこから吸入器によって粉末を投与することができる。
【0213】
所望ならば、製剤は、有効成分の徐放投与のために適合された腸溶コーティングを有するように調製することができる。たとえば、本発明の化合物は、経皮又は皮下薬物送達装置として調合することができる。そのような送達システムは、化合物の徐放が必要である場合及び処置計画への患者コンプライアンスが決定的に重要である場合に有利である。経皮膚送達システム中の化合物は、多くの場合、皮膚接着固体支持体に取り付けられる。対象の化合物はまた、浸透促進剤、たとえばアゾン(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と組み合わせることもできる。徐放送達系は、手術又は注入によって皮下層に挿入される。皮下インプラントは、脂溶性膜、たとえばシリコーンゴム又は生分解性ポリマー、たとえばポリ乳酸中に化合物を封入したものである。
【0214】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形にある。そのような剤形では、製剤は、適量の有効成分を含有する単位用量に細分される。単位剤形は包装製剤であることができ、包装が、別個の量の製剤、たとえばパケット錠剤、カプセル剤及び散剤をバイアル又はアンプル中に含む。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤又はロゼンジ剤そのものであることもできるし、それらのいずれかの適当な数を包装形態にしたものであることもできる。
【0215】
他の適切な薬学的担体及びそれらの調合は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 1995, edited by Martin, Mack Publishing Company, 19th edition, Easton, Pennsylvaniaに記載されている。本発明の化合物を含有する代表的な医薬製剤を以下の実施例で説明する。
【0216】
本発明の化合物は、非限定的に、過度な又は制御されないTNF又はp38キナーゼ産生によって増悪する又は引き起こされる人間又は他の哺乳動物における障害又は疾病状態の処置に有用である。したがって、本発明は、p38媒介疾病を処置する方法であって、本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩、溶媒和物もしくはプロドラッグの有効量をそのような処置を要する対象又は患者に投与することを含む方法を提供する。
【0217】
本発明の化合物は、非限定的に、対象における炎症の処置に有用であり、また、発熱の処置のための解熱薬として有用である。本発明の化合物は、リウマチ関節炎、脊椎関節症、痛風性関節炎、変形性関節症、全身性エリテマトーデス及び若年性関節炎、変形性関節症、痛風性関節炎及び他の関節症をはじめとする関節炎を処置するのに有用である。このような化合物は、成人呼吸困難症候群、肺サルコイドーシス、ぜん息、ケイ肺症及び慢性肺炎症疾患をはじめとする肺疾患又は肺炎症の処置に有用である。化合物はまた、敗血症、敗血症性ショック、グラム陰性敗血症、マラリア、髄膜炎、感染又は悪性疾患に続発性の悪液質、後天性免疫不全症候群(AIDS)に続発性の悪液質、AIDS、ARC(AIDS関連複合症候群)、肺炎及びヘルペスウイルスをはじめとするウイルス及びバクテリア感染の処置に有用である。化合物はまた、骨吸収疾患、たとえば骨粗鬆症、内毒素性ショック、毒性ショック症候群、再灌流傷害、移植片対宿主反応及び同種移植片拒絶反応をはじめとする自己免疫疾患、動脈硬化症、血栓症、うっ血性心不全及び心再灌流傷害をはじめとする心臓血管病、腎再灌流傷害、肝疾患及び腎炎ならびに感染による筋肉痛の処置に有用である。
【0218】
化合物はまた、アルツハイマー病、インフルエンザ、多発性硬化症、癌、糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚関連の症状、たとえば乾癬、湿疹、火傷、皮膚炎、ケロイド形成及び瘢痕組織形成の処置に有用である。加えて、本発明の化合物は、胃腸の症状、たとえば炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群及び潰瘍性大腸炎を処置するのに有用である。化合物はまた、眼病、たとえば網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、光恐怖症及び眼組織への急性傷害の処置に有用である。化合物はまた、新生物をはじめとする血管形成、癌の転移、眼科学的症状、たとえば角膜移植片拒絶反応、眼血管新生、外傷又は感染後の血管新生をはじめとする網膜血管新生、糖尿病性網膜症、水晶体後方線維増殖症及び血管新生緑内障、潰瘍性疾患、たとえば胃潰瘍、病的ではあるが悪性ではない状態、たとえば乳児性血管腫をはじめとする血管腫、鼻咽腔の血管線維腫及び骨の虚血壊死、糖尿病性腎障害及び心筋症ならびに女性生殖器系の障害、たとえば子宮内膜症の処置に使用することもできる。化合物はさらに、シクロオキシゲナーゼ−2の産生を防止するために使用することができ、鎮痛性を有する。したがって、式Iの化合物は、痛みの処置に有用である。
【0219】
式Iの化合物の他の用途は、HCV、重篤なぜん息、乾癬、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、癌、多発性骨髄腫及び抗TNF性化合物によって処置することができる他の疾患の処置を含む。
【0220】
人間の処置に有用である他に、これらの化合物はまた、哺乳動物、齧歯類などをはじめとするペット、珍獣及び産業動物の獣医学的処置にも有用である。より好ましい動物はウマ、イヌ及びネコを含む。
【0221】
本化合物はまた、他の従来の抗炎症剤の部分的又は完全な代用として、たとえばステロイド、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤、NSAID、DMARDS、免疫抑制剤、5−リポオキシゲナーゼ阻害剤、LTB4アンタゴニスト及びLTA4ヒドロラーゼ阻害剤とともに同時治療に使用することができる。
【0222】
本明細書で使用する「TNF媒介疾病」とは、TNFが、TNFそのものの制御によって、又はTNFがIL−1、IL−6もしくはIL−8をはじめとする別のモノカインを放出させることによって役割を演じるところのあらゆる障害及び疾病状態をいう。したがって、たとえばIL−1が主成分であり、その産生又は作用がTNFに応答して増悪又は分泌される疾病状態は、TNFによって媒介される疾病とみなされる。
【0223】
本明細書で使用する「p38媒介疾病」とは、p38が、p38そのものの制御によって、又はp38がIL−1、IL−6もしくはIL−8をはじめとする別の因子を放出させることによって役割を演じるところのあらゆる障害及び疾病状態をいう。したがって、たとえばIL−1が主成分であり、その産生又は作用がp38に応答して増悪又は分泌される疾病状態は、p38によって媒介される疾病とみなされる。
【0224】
TNF−βはTNF−α(カケクチンとも知られる)と近い構造的相同性を有し、それぞれが類似した生物学的応答を誘発し、同じ細胞レセプタに結合するため、TNF−αの合成及びTNF−βの合成はいずれも本発明の化合物によって阻害され、したがって、特に区別しない限り、本明細書ではこれらをまとめて「TNF」と呼ぶ。
【0225】
実施例
以下の調製及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することを可能にするために提供するものである。これらの例は、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単に本発明を例示し、代表するものとみなされるべきである。
【0226】
断りない限り、温度は、融点(すなわちMP)を含め、すべての摂氏度(℃)で表記する。指示生成物及び/又は目的生成物を生成する反応は、必ずしもはじめに加えられた二つの試薬の組み合わせから直接生じなくてもよいということが理解されよう。すなわち、最終的に指示生成物及び/又は目的生成物の形成につながる混合物中で生成される一つ以上の中間体があってもよい。実施例では以下の略号を使用することもある。
【0227】
略号
AcOH:酢酸、DCM:ジクロロメタン、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、DMAP:4−ジメチルアミノピリジン、EtOAc:酢酸エチル、Gc:ガスクロマトグラフィー、HMPA:ヘキサメチルホルホラミド、Hplc:高速液クロマトグラフィー、mCPBA:m−クロロ過安息香酸、MeCN:アセトニトリル、MeOH:メタノール、TEA:トリエチルアミン、THF:テトラヒドロフラン、LDA:リチウムジイソプロピルアミン、TLC:薄層クロマトグラフィー、TMSBR:臭化トリメチルシリル、uL:マイクロリットル、RT:室温、min:分
【0228】
実施例1:コハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−(S)−ヒドロキシプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステルの合成
ステップ1:(2−クロロフェニル)−(4,6−ジクロロ−2−メチルスルファニルピリミジン−5−イル)−メタノールの調製
乾燥THF(130mL)中4,6−ジクロロ−2−(メチルチオ)ピリミジン(Aldrich)(5.0g、25.64mmol)の溶液に対し、窒素下−78℃で、THF中2.0MのLDA(23.0mL、0.8当量)の溶液をシリンジを介してゆっくりと加えた。得られた混合物を−78℃でさらに20分間かく拌したのち、2−クロロベンズアルデヒド(Aldrich)(7.2mL、2当量)をシリンジを介して滴下した。反応混合物を−78℃でさらに30分間かく拌したのち、塩化アンモニウム飽和溶液で急冷した。酢酸エチルを加え、混合物を室温まで温めた。水層を分離し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過して、濃縮して粗生成物(14.2g)を油状物として得た。ヘキサン中5%の酢酸エチルで溶離させるシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィーを使用して精製すると、標記化合物(8.60g、(M+H)+=336、融点=109.5〜112.5℃)が得られ、これを放置すると結晶化して白色固体が得られた。
【0229】
ステップ2:(2−クロロフェニル)−(4,6−ジクロロ−2−メチルスルファニルピリミジン−5−イル)−メタノンの調製
トルエン(300mL)中(2−クロロフェニル)−(4,6−ジクロロ−2−メチルスルファニルピリミジン−5−イル)−メタノール(8.6g、25.6mmol)の溶液に酸化マンガン(IV)(Aldrich)(22.3g、10当量)を加え、得られた混合物をかく拌しながら還流状態で合計5時間加熱した。反応物を室温まで冷ましたのち、3.5cmのセライトパッドに通してろ過し、ろ液を濃縮して粗生成物8.84gを得た。純粋なヘキサンから出発し、ヘキサン中2%の酢酸エチルまで漸増し、最終的にヘキサン中5%の酢酸エチルに達する勾配を用いるシリカゲル上でのフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製すると、標記化合物がオフホワイト色の粉末として得られた(1.388g、(M+H)+=333)。
【0230】
ステップ3:4−クロロ−3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンの調製
THF(20mL)中(2−クロロフェニル)−(4,6−ジクロロ−2−メチルスルファニルピリミジン−5−イル)−メタノン(875mg、2.62mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.69mL、1.5当量)の混合物に対し、0℃で、THF(20mL)中ヒドラジン(83μL、1当量)の溶液をかく拌しながら滴下した。添加が完了したのち、2時間かけて反応物を徐々に室温まで温めた。TLCによる分析は、出発原料がなおも残留していることを示した。THF(10mL)中ヒドラジン(17μL)の溶液さらに3mLを反応混合物に滴下し、反応混合物を室温で一晩かく拌した。反応混合物を酢酸エチル(150mL)及び水(50mL)で希釈した。有機層を分離し、水(4×50mL)及びブライン(1×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮すると、標記化合物が黄色を帯びた粉末として得られた(867mg、(M+H)+=311)。
【0231】
ステップ4:(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オールの調製
THF(5mL)中4−クロロ−3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(300mg、0.964mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.34mL、2当量)の混合物に対し、THF中(S)−(+)−1−アミノ−2−プロパノール(Aldrich)(0.217g、3当量)の溶液を滴下した。得られた混合物を室温で一晩かく拌した。反応をTLC分析によってモニタした。反応混合物を酢酸エチル(150mL)及び水(70mL)で希釈した。有機層を分離し、水(2×70mL)及びブライン(1×70mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮すると、標記化合物がオフホワイト色の固体として得られた(328mg、(M+H)+=350)。
【0232】
ステップ5:(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−メタンスルホニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]プロパン−2−オールの調製
THF(15mL)及びメタノール(5mL)中(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]プロパン−2−オール(320mg、0.915mmol)の溶液にm−クロロペルオキシ安息香酸(Aldrich)(431mg、2.1当量)を加え、得られた混合物を室温で30時間かく拌した。反応をTLC分析によってモニタした。反応混合物を酢酸エチル(170mL)及び飽和炭酸水素ナトリウム(50mL)で希釈した。有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム(3×50mL)及びブライン(1×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮すると、標記化合物がオフホワイト色の粉末として得られた(325mg、(M+H)+=382)。
【0233】
ステップ6:(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]プロパン−2−オールの調製
マイクロ波反応容器中、DMSO(2mL)中2,4−ジフルオロフェノール(Aldrich)(0.15mL、4当量)の0℃の溶液に対し、THF(1.61mL、4.1当量)中カリウムtert−ブトキシドの1.0M溶液を加えた。得られた溶液を室温まで温め、10分間かく拌したのち、反応混合物をマイクロ波反応容器に入れ、150℃で1時間加熱した。反応混合物を冷まし、酢酸エチル(150mL)及び水(50mL)で希釈した。有機層を分離し、水(2×50mL)及びブライン(1×50mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、ろ過し、濃縮すると、粗化合物(370mg)が得られた。ジクロロメタン中5%のメタノールで溶離させる分取薄層クロマトグラフィーによって精製すると、標記化合物が白色粉末として得られた(109mg、(M+H)+=432、融点=254.6〜258.2℃)。
【0234】
ステップ7:1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−ヒドロキシメチル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オールの調製
(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]プロパン−2−オール(2.4g、5.5mmol)をMeOH50mL中に懸濁させ、かく拌した。ホルムアルデヒド(3.3mL、過剰)を加え、反応混合物を室温で16時間かく拌した。反応混合物を水と酢酸エチルとに分配し、有機層をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮すると、1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−ヒドロキシメチル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール2.0gが得られた。MS(M+H)=462
【0235】
ステップ8:コハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−(S)−ヒドロキシプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステルの調製
1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−ヒドロキシメチル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール(2.0g、4.3mmol)をTHF80mLに溶解し、室温でかく拌しながらジイソプロピルアミン(0.78g、5.6mmol)、ジメチルアミノピリジン(52mg、0.4mmol)及び無水コハク酸(703mg、7.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間かく拌したのち、水と酢酸エチルとに分配し、有機層をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をEtOAcに溶解し、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc1:1〜EtOAc/AcOH100:1)によって精製すると、コハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−ヒドロキシプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステル0.62gが得られた。MS(M+H)=562
【0236】
上記実施例にしたがって調製したさらなる化合物を表1に示す。
【0237】
実施例2:(S)−リン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステルの合成
ステップ1:(S)−リン酸2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステルジメチルエステルの調製
(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]プロパン−2−オール(2.5g、5.79mmol)を室温でピリジン20mLに溶解し、混合物をかく拌しながら0℃に冷却した。P(OCH33(1.93mL、過剰)及びCBr4(0.96g)をゆっくりと加え、反応混合物をかく拌しながら20分かけて室温まで温めた。反応混合物を冷温の1N HClに注加し、得られた溶液をEtOAcで抽出した。合わせた有機層を1N HClで洗浄したのち、飽和水性NaHCO3で洗浄し、さらに飽和ブラインで洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン中30%〜60%EtOAc)によって精製すると、リン酸2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステルジメチルエステル3.132gが得られた。MS(M+H)=540
【0238】
ステップ2:(S)−リン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステルの調製
塩化メチレン35mL中(S)−リン酸2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステルジメチルエステル(3.1g、5.74mmol)に臭化トリメチルシリル(2.97mL、過剰)を加えた。反応混合物を室温で4時間かく拌したのち、溶媒を減圧下で除去した。メタノール(80mL)を加え、反応混合物を室温でかく拌した。再び溶媒を減圧下で除去し、残渣を2N NaOH(100mL)及びEtOAc(mL)に加えた。混合物を15分間かく拌したのち、有機層を分離し、飽和ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮すると、(S)−リン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステル2.243gが得られた。MS(M+H)=512。この固体を、MeOH中0.5MのNaOCH315mLでの処理により、対応する二ナトリウム塩2.182gに転換した。MP>300℃。MS(M+H)=512
【0239】
上記実施例にしたがって調製したさらなる化合物を表1に示す。
【0240】
実施例3:2−アミノ−3−メチル酪酸2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステル
ステップ1:4−クロロ−3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1−(2−トリメチルシラニルエトキシメチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジンの調製
乾燥DMF(40mL)中4−クロロ−3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(2.30g、7.39mmol)及び2−(トリメチルシリル)−エトキシメチレンクロリド(1.96mL、11.086mmol)の溶液に対し、窒素下0℃で、水素化ナトリウム(鉱油中60%固形分0.354g、14.78mmol)を加えた。反応混合物を2時間かく拌し、その間に室温まで温めた。反応混合物を水と酢酸エチルとに分配し、有機層を分離し、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲル上でクロマトグラフィー(ヘキサン中01%〜20%EtOAc)に付すと、4−クロロ−3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1−(2−トリメチルシラニルエトキシメチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン2.30gが得られた。
【0241】
ステップ2:(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オールの調製
乾燥THF45mL中4−クロロ−3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1−(2−トリメチルシラニルエトキシメチル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン(2.30g、5.21mmol)の溶液に(S)−1−アミノプロパン−2−オール(1.565g、20.84mmol)を加えた。反応混合物を18時間かく拌したのち、水と酢酸エチルとに分配した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮すると、(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール2.42gが得られた。
【0242】
ステップ3:(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−1−(3−ジメチルシラニルプロポキシ)−6−メタンスルホニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オールの調製
(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−メチルスルファニル−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール(2.41g、5.02mmol)をTHF50mLに溶解し、メタ−クロロ過安息香酸(77%固形分2.36g、10.54mmol)を加えた。反応混合物を室温で18時間かく拌したのち、水と酢酸エチルとに分配した。有機層を分離し、ブライン及び飽和水性炭酸水素ナトリウムで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮すると、(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−1−(3−ジメチルシラニルプロポキシ)−6−メタンスルホニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール2.10gが得られた。
【0243】
ステップ4:(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オールの調製
実施例1のステップ6の手順を使用して、(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−1−(3−ジメチルシラニルプロポキシ)−6−メタンスルホニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール(2.09g、4.00mmol)を(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール1.59gに転換した。
【0244】
ステップ5:(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−メチル酪酸(S)−2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステルの調製
DMF4mL中(S)−1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール(50mg、0.2846mmol)、Boc−(L)−バリン(68mg、0.313mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(7mg、0.057mmol)及び1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(60mg、0.313mmol)の溶液を室温で3日間かく拌したのち、120℃で4時間加熱した。反応混合物を冷まし、水と酢酸エチルとに分配した。有機層を分離し、0.5N水性HCl、飽和水性炭酸水素ナトリウム及びブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカ上でクロマトグラフィー(ヘキサン中0%〜50%EtOAc)に付すと、(S)−2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−メチル酪酸(S)−2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−メチル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステル50mgが得られた。
【0245】
ステップ6:2−アミノ−3−メチル酪酸2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステルの調製
(S)−3−メチル−2−メチルアミノ酪酸(S)−2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1−(3−トリメチルシラニルプロポキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステル(15mg、0.0197mmol)、HCl(5N水溶液1mL)及びジオキサン(1mL)の混合物を80℃で30分間加熱したのち、室温まで冷ました。炭酸水素ナトリウム飽和水溶液の添加によって反応混合物を弱塩基性にし、得られた沈殿物をろ過し、水洗し、真空下で乾燥させると、2−アミノ−3−メチル酪酸2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチルエステル7mgが得られた。
【0246】
実施例4:2−アミノ−3−メチル酪酸6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル
ステップ1:2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−メチル酪酸6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル
[6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イル]−メタノール(170mg、0.33mmol)を塩化メチレンに溶解し、Boc−(L)−バリン(216mg、0.99mmol)、ジメチルアミノピリジン(81mg、0.66mmol)及びトリエチルアミン(0.23mL、1.6mmol)を加えた。反応混合物を0℃に冷却し、窒素下でかく拌し、イソプロペニルクロロホルメート(54uL、0.49mmol)を加えた。反応混合物を10分間かく拌したのち、水と塩化メチレンとに分配した。有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(1:1ヘキサン/EtOAc)によって精製すると、2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−メチル酪酸6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル120mgが油状物として得られた。
【0247】
ステップ2:2−アミノ−3−メチル酪酸6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル
2−tert−ブトキシカルボニルアミノ−3−メチル酪酸6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル(110mg、0.15mmol)をEt2Oに溶解し、HCl・Et2O4mLで処理した。反応混合物を室温で3時間かく拌したのち、減圧下で濃縮すると、2−アミノ−3−メチル酪酸6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−インダゾル−1−イルメチルエステル100mgが得られた。MS(M+H)=611
【0248】
実施例5:リン酸モノ−[6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステル
ステップ1:リン酸ジ−tert−ブチルエステル6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル
ビス(tert−ブトキシ)クロロメチルホスフェート(410mg、1.5mmol)をアセトニトリルに溶解し、[6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル]−(2−メタンスルホニルエチル)−アミン(180mg、0.37mmol)及び炭酸セシウム(300mg、0.92mmol)を加えた。反応混合物をかく拌しながら80℃で2時間加熱したのち、室温まで冷まし、ろ過して不溶物を除去し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をシリカでのフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc中50%〜100%ヘキサン)によって精製すると、リン酸ジ−tert−ブチルエステル6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチルエステル190mgが得られた。
【0249】
ステップ2:リン酸モノ−[6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステル
リン酸ジ−tert−ブチルエステル6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−インダゾル−1−イルメチルエステル(180mg、0.25mmol)を塩化メチレンに溶解し、トリフルオロ酢酸(29uL、0.51mmol)で処理した。反応混合物を室温で5時間かく拌したのち、減圧下で濃縮した。残渣を塩化メチレンとで粉砕し、減圧下で濃縮すると、リン酸モノ−[6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−3−(2,5−ジフルオロフェニル)−4−(2−メタンスルホニルエチルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステル40mgが得られた。
【0250】
実施例6:プロドラッグリン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステルの投与後の、1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール及びそのプロドラッグリン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステルの薬物動態学的パラメータの測定
体重240〜260gのオスCrl:WI(Glx/BRL/Han)IGS BR(Hanover-Wistar)ラットにカニューレ処置を施した。ラット3匹ずつのグループを実験化合物の用量レベルごとに使用した。カニューレ処置なしの1匹のさらなるラットをビヒクル対照として含めた。実験期間中、ラットには食物及び水を普通に与えた。試験物質リン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステルを水性懸濁剤として調合し、3又は30mg/kg(1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オール当量中)の用量を胃管栄養法によって経口投与した。投与してから0(投与前)、0.083、0.25、1、2、4、6及び8時間後、処置した各ラットから頸静脈カニューレによって血液サンプル(0.3mL)を採取した。投与後24時間で、処置した各ラットから心穿刺によって血液を採取した。同様に、24時間で、非処置のラットからも心穿刺によって血液を採取した。リチウムヘパリンをサンプルに加え、サンプリング手順の間、サンプルを氷上に貯蔵した。できるだけ速やかにサンプルを冷却遠心分離器中4℃でスピンし、遠心分離の直後から分析まで血漿サンプルを−20℃で貯蔵した。試験化合物の濃度をHPLC−MS/MSによって測定した。上記手順を使用して、化合物1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−2−オールに関して1.33及び9.80μg/mLのCmax(それぞれ3mg/kg及び30mg/kg)ならびに12.6及び124μg*h/mLのAUC(それぞれ3mg/kg及び30mg/kg)が計測された。プロドラッグリン酸モノ−{2−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−1−メチルエチル}エステルは、3mg/kgの用量ではラット血漿中に検出されなかった(定量限界0.0005μg/mL)。30mg/kgの用量では、このプロドラッグに関して0.214μg/mLのCmax及び0.188μg*h/mLのAUCが計測された。
【0251】
実施例7:プロドラッグコハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステルの投与後の、1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−メチルプロパン−2−オール及びそのプロドラッグコハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステルの薬物動態学的パラメータの測定
体重240〜260gのオスCrl:WI(Glx/BRL/Han)IGS BR(Hanover-Wistar)ラットにカニューレ処置を施した。ラット3匹ずつのグループを実験化合物の用量レベルごとに使用した。試験物質コハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステルを水性懸濁剤として調合し、3又は10mg/kg(1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−メチルプロパン−2−オール当量中)の用量を胃管栄養法によって経口投与した。投与してから0(投与前)、0.083、0.25、1、2、4、6及び8時間後、処置した各ラットから頸静脈カニューレによって血液サンプル(0.3mL)を採取した。投与後24時間で、処置した各ラットから心穿刺によって血液を採取した。リチウムヘパリンをサンプルに加え、サンプリング手順の間、サンプルを氷上に貯蔵した。できるだけ速やかにサンプルを冷却遠心分離器中4℃でスピンし、遠心分離の直後から分析まで血漿サンプルを−20℃で貯蔵した。試験化合物の濃度をHPLC−MS/MSによって測定した。上記手順を使用して、化合物1−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−2−メチルプロパン−2−オールに関して、それぞれ3mg/kg及び10mg/kgの用量で、1.34及び7.05μg/mLのCmaxならびに9.27及び47.4μg*h/mLのAUCが計測された。プロドラッグコハク酸モノ−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミノ)−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−1−イルメチル]エステルの場合、それぞれ3mg/kg及び10mg/kgの用量で、1.83及び9.25μg/mLのCmaxならびに6.11及び20.9μg*h/mLのAUCが計測された。
【0252】
実施例8:本発明の化合物を評価するのに有用なp38(MAP)キナーゼインビトロアッセイ
Ahn, et al, J. Biol. Chem. 266:4220-4227 (1991)に記載されている方法をわずかに改変したものを使用して、p−38キナーゼによる、γホスフェートの、γ−33P−ATPからミエリン塩基性タンパク質(MBP)への転移を計測することにより、本発明の化合物のインビトロでのp38MAPキナーゼ阻害活性を測定した。
【0253】
大腸菌中、組み換えp38MAPキナーゼのリン酸化形態をSEK−1及びMEKKとともに同時発現させたのち(Khokhlatchev et al., J. Biol. Chem. 272:11057-11062 (1997)を参照)、ニッケルカラムを使用するアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0254】
リン酸化p38MAPキナーゼをキナーゼ緩衝剤(20mM3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、pH7.2、25mMβ−グリセロールホスフェート、5mMエチレングリコール−ビス(ベータアミノエチルエーテル)−N,N,N′,N′−四酢酸、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mMジチオトレイトール、40mM塩化マグネシウム)中に希釈した。DMSOに溶解した試験化合物又はDMSOのみ(対照)を加え、サンプルを30℃で10分間インキュベートした。MBP及びγ−33P−ATPを含有する基質カクテルを加えることによってキナーゼ反応を開始させた。30℃でさらに20分間インキュベートしたのち、0.75%リン酸を加えることによって反応を終了させた。そして、ホスホセルロース膜(Millipore、Bedfrod、MA)を使用してリン酸化MBPを残留γ−33P−ATPから分離し、シンチレーションカウンタ(Packard、Meriden、CT)を使用して定量した。
【0255】
上記手順を使用して、本発明の化合物がp38MAPキナーゼの阻害剤であることがわかった。たとえば、親化合物3−[3−(2−クロロフェニル)−6−(2,4−ジフルオロフェノキシ)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イルアミノ]−プロパン−1,2−ジオールは、0.004のp38IC50(uM)を示した。
【0256】
実施例9:製剤
様々な経路によって送達するための医薬製剤を以下の表に示すように調合した。表に使用する「有効成分」又は「有効成分化合物」とは、式Iの化合物の一つ以上を指す。
【0257】
【表2】

【0258】
成分を混合し、それぞれが約100mgを含有するカプセルに小分けした。カプセル1個がほぼ1日の全服用量を含む。
【0259】
【表3】

【0260】
メタノールのような溶媒を使用して成分を合わせ、顆粒化した。次いで、調合物を乾燥させ、適切な錠剤機を使用して錠剤(有効成分化合物を約20mg含有)に成形した。
【0261】
【表4】

【0262】
成分を混合して経口投与のための懸濁剤を形成した。
【0263】
【表5】

【0264】
有効成分を注射用水の一部に溶解した。次いで、溶液を等張性にするのに十分な量の塩化ナトリウムをかく拌しながら加えた。注射用水の残りで溶液を補充し、0.2ミクロン膜フィルタに通してろ過し、無菌条件下で包装した。
【0265】
【表6】

【0266】
成分を一緒に溶融させ、蒸気浴上で混合し、全重量2.5gを収容する型に注加した。
【0267】
【表7】

【0268】
水を除く全成分を合わせ、かく拌しながら約60℃に加熱した。次いで、成分を乳化させるのに十分な量の約60℃の水を激しくかく拌しながら加え、さらに、約100gになるまで水を加えた。
【0269】
点鼻スプレー製剤
有効成分化合物を約0.025〜0.5%含有するいくつかの水性懸濁剤を点鼻スプレー製剤として調製した。製剤は、場合によっては、不活性成分、たとえば結晶セルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、デキストロースなどを含有する。pHを調節するために塩酸を加えてもよい。点鼻スプレー製剤は、通常は1回の操作で約50〜100マイクロリットルの製剤を送達する点鼻スプレー計量型ポンプによって送達することができる。一般的な服用スケジュールは4〜12時間ごとに2〜4回のスプレーである。
【0270】
具体的な実施態様を参照しながら本発明を説明したが、本発明の本質及び範囲を逸することなく様々な変更を加えることができ、また、等価物で代用することができることが当業者によって理解されるべきである。加えて、特定の状況、材料、物質組成、方法、工程を本発明の本質及び範囲に適合させるように多くの改変を加えることができる。そのような改変はすべて請求の範囲に入ると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig又はIh
【化1】


(式中、
1は、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はシクロアルキルであり、
2は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、分岐鎖状アルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシアルキル、シクロアルケニル又はヒドロキシシクロアルキルであり、
3は、水素又はアルキルであり、
4は、水素、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヒドロキシシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホンアミド、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、−(CHRar−C(=O)−Rb、−(CHRar−O−C(=O)−Rb、−(CHRar−NH−C(=O)−Rb又は−SO2−Rbであり、
aは、水素、アルキル又はヘテロアルキルであり、
bは、アルキル、ヒドロキシ、アミノ、ヘテロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール又はヘテロシクリルであり、
rは、0〜4であり、
5は、水素、−C(=O)−Rc、−(O=)P(ORd2、−S(=O)2ORd又はモノ、ジもしくはトリペプチドであり、
6は、−C(=O)−Rc又は−(O=)P(ORd2−、−S(=O)2ORd又はモノ、ジもしくはトリペプチドであり、
cは、アルキル、アルコキシ、アミノ、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキルオキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、−(CH2p−C(=O)−Re、−(CH=CH)−C(=O)−Re又は−CH(NH2)−Rfであり、
eは、水素、ヒドロキシ、アルコキシ又はアミノであり、
pは、2又は3であり、
fは、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、場合によっては置換されているフェニル、ベンジル、グアニジニルアルキル、カルボキシアルキル、アミドアルキル、チオアルキル又はイミダゾルアルキルであり、
dは、水素、アルキル、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンであり、
X及びYは、いずれも窒素であるか、一方が窒素であり、他方がCRgであり、
gは、水素、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、ハロアルキル、シアノ、ハロ、ヘテロアルキル、C(=O)−Rh又は−SO2−Rhであり、
hは、水素又はアルキルであり、
Dは、−(CR78n−であり、
nは、1〜3であり、
7及びR8は、それぞれ独立して、水素又はアルキルであり、
Wは、結合、O、S(O)q、CH2又はNRiであり、
Eは、O、S(O)q、CH2又はNRiであり、
qは、0〜2であり、
iは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、ヒドロキシシクロアルキル、−C(=O)−Rj又は−SO2−Rjであり、
jは、アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル又はヘテロシクリルであり、
あるいは、R4及びRiが、それらが結合する原子と一緒になって、複素環式環を形成することもでき、
Aは、O、CH2、S(O)s、C(=O)、NRk又はCH(ORk)であり、
sは、0〜2であり、
kは、水素又はアルキルであり、
kは、0又は1であり、
Bは、O、S(O)j、−(CHRmt、−NRmSO2−、NRm、NRmC(=O)又はC(=O)であり、
jは、0、1又は2であり、
tは、1〜3であり、
mは、水素又はアルキルである)
の化合物又は薬学的に許容しうるその塩。
【請求項2】
式Iaの化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
式IVa
【化2】


(式中、
uは、0〜4であり、
vは、0〜4であり、
各R9は、独立して、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル又はシアノであり、
各R10は、独立して、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シアノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルコキシ又は−C(=O)−Rnであり、
nは、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、
W、D、R4及びR5は、請求項1で定義したとおりである)
の化合物である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
式Ibの化合物である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
式IVb
【化3】


(式中、
uは、0〜4であり、
vは、0〜4であり、
各R9は、独立して、ハロ、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル又はシアノであり、
各R10は、独立して、ハロ、アルキル、ハロアルキル、シアノ、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヒドロキシシクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアルコキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルコキシ又は−C(=O)−Rnであり、
nは、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクリルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、
D、E、R3及びR6は、請求項1で定義したとおりである)
の化合物である、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
(a)薬学的に許容しうる賦形剤、及び(b)請求項1記載の化合物を含む組成物。
【請求項7】
請求項1記載の化合物の治療有効量を患者に投与することを含む、関節炎、クローン病、過敏性腸症候群、成人呼吸困難症候群又は慢性閉塞性肺疾患から選択されるp38媒介障害を処置する方法。
【請求項8】
p38媒介障害の処置のための薬を製造するための、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項9】
本明細書に記載するとおりの発明。

【公表番号】特表2009−506009(P2009−506009A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527442(P2008−527442)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065335
【国際公開番号】WO2007/023115
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】