差動制限装置の性能シミュレーション方法
【課題】 高価な車両試験を行なうことなく、クラッチパックと流体の性能を正確に予測することができる簡易化された小規模な試験方法の提供。
【解決手段】 −所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理し、
−クラッチパックを摩擦試験台に搭載し;
−所定量の試験流体を試験台に提供し;そして
−当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる、ここで駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる;
工程を含んで成る
車両用差動制限装置用スプリットμ車軸試験のシミュレーション方法
【解決手段】 −所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理し、
−クラッチパックを摩擦試験台に搭載し;
−所定量の試験流体を試験台に提供し;そして
−当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる、ここで駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる;
工程を含んで成る
車両用差動制限装置用スプリットμ車軸試験のシミュレーション方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施態様は、大規模の車両性能試験のシミュレーション、特に車両用途の差動制限装置の性能試験シミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
差動制限装置の摩擦特性、ひいては振動の傾向は、一般的に大規模な車両試験により得られ、このとき差動装置を含んだ車両が所定の試験サイクルの間作動される。従来の試験方法によると、差動制限装置が準備され車両に取り付けられる。当車両は、所定の距離(マイル数)様々な表面上を運転される。当試験手順の間にクラッチパックおよび流体の査定を行う。しかしながら、上述の方法には実際の車が必要であり、また試験結果の再生は試験に用いられた周囲の条件によって多様である。
【0003】
従って、高価な車両試験を行うことなくクラッチパックと流体の性能を正確に予測することのできる、簡易化された小規模な試験方法が必要となる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施態様において、車両用差動制限装置のスプリットμ車軸試験のシミュレーションの方法が提供される。本方法には、所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理することが含まれる。当クラッチパックは、摩擦試験台に搭載されている。所定量の試験流体を試験台に入れる。当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる。駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる。
【0005】
別の実施態様において、車両用差動制限装置の摩擦特性のマッピング方法が提供される。当方法には残留流体を含んだクラッチパックを低速摩擦試験台に搭載することが含まれる。試験台の排水だめまたは貯水槽には実質的に試験流体が入っていない。クラッチパック内の摩擦特性は、クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こす条件下でクラッチパックを回転させることにより、温度と圧力の関数として発生する。クラッチパック内の摩擦により生じたトルクが試験中に記録される。
【0006】
また別の実施態様において、車両用差動制限装置の材料を査定するベンチテストの方法が提供される。当ベンチテスト方法には、所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理することが含まれる。当クラッチパックは次に、低速駆動部を含んだ摩擦試験台に搭載される。所定量の試験流体を当試験台に入れる。当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる。駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる。次に試験台に実質的に流体がなくなるように、摩擦試験台から試験流体を排出する。クラッチパック内の摩擦特性は、クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こす条件下でクラッチパックを回転させることにより、温度と圧力の関数として発生する。クラッチパック内の摩擦により生じたトルクが試験中に記録される。
【0007】
本開示に基づいたドライサンプ法の利点は、軸の回転中にはねかけ注油をする場合以外は流体面が低くてクラッチパックに届かないような、特定の差動制限車軸内の摩擦特性を綿密に模倣する条件下で生成された摩擦特性マップが、本方法により提供されるということである。本開示の別の利点は、車両軸の浸漬注油不足がシミュレートされるよう、ドライサンプ構造を使用した摩擦マッピング中にクラッチパックの条件を模倣する能力である
。ドライサンプ摩擦試験は、差動制限クラッチパック摩擦特性を決定するのに適した形態である。
【0008】
本明細書に記載の実施態様の更に他の利点は、小規模な摩擦試験または「スプリットμシミュレーション」が、大規模な車両試験の比較的低コストな代替物を提供することである。さらに当明細書に記載のスプリットμシミュレーション法は、試験時間の短縮、必要な流体量の最小化、およびクラッチパック内の熱の蓄積を容易に観測する能力などの利点を伴う。
【0009】
本開示のさらなる利点は、基準を定めるためではなく、本明細書に記載された主要な特徴を説明するために提供された図面と併せて考慮して詳細を参考することにより、より深く理解されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本開示の実施態様の目的は、差動制限装置を含んだ車両の後ろ車軸の性能試験をシミュレーションすることである。当性能試験は差動制限装置用として適した潤滑油とともに、車軸の材料を査定するために使用される。大規模な車両試験とは、本明細書においてスプリットμ(またはスプリットミュー)車両試験のことを意味する。本方法には、他の車輪の毎分の回転数を[後述の車輪よりも]はるかに低い回転速度に維持しながら、車両の後輪の一つを回転させることが含まれる。これは他の車輪の摩擦係数を高く保ちながら、一つの車輪の摩擦係数(μ)を低めること、つまりスプリットμ試験によって達成される。背景として、以下の方法を車両に受けさせることによりスプリットμ試験を行う。
【0011】
大規模な車両軸性能試験方法
図1を参照し、新しい車軸、または新たに作り直された車軸10を各試験に使用する。車軸10には後ぶたプレート14を備えたディファレンシャルハウジング(差動歯車枠)12が含まれる。
【0012】
すでに流体を含んでいる新しい車軸10を作り直そうとする場合は、以下の方法が使用される。車軸10の後ぶたプレート14を取り除き、流体を排出し、ろ過して固形片を取り除き、ろ過液を残しておく。次にディファレンシャルハウジング12内部のクラッチパックを分解する。車軸の新しい摩擦板を適切な流体中に30分間浸しておき、プレート[摩擦板]を車軸10に取り付ける前に摩擦板から流体を排出する。車軸10に試験クラッチパックを取り付けるには、相手先商標製品製造会社(OEM)推奨のサービス方法を使用する。
【0013】
後ぶたプレート14の元のシーリング剤を取り除いて、新しいシーリング剤と取り替える。次に後ぶたプレート14を車軸10に再び取り付ける。潤滑剤と接触させる前に、当シーリング剤を4時間硬化させる。次に試験潤滑剤を、流体から最初にろ過された固体片と共に車軸10に加える。これで車軸10の作り直しの手順が完了する。
【0014】
以下の方法は、上述のように、新しいまたは作り直された車軸10に使用することができる。ディファレンシャルハウジング12のピニオン部分に加速度計16を搭載する。バルク流体の温度を観測するため、ボトムフィルプラグを通してディファレンシャルハウジング12に熱電対18を搭載する。次に車軸10を試験用の車両20に取り付ける。
【0015】
車両20に行われる性能試験は、一連の試験サイクルから構成される。各試験サイクルは、20のスプリットμ事象(split μ event)と市中・高速の組み合わせの20マイルの運転とから構成される。スプリットμ事象はGEプラスチック社(GE Plastics)からLEXANという商品名で販売されているポリマー材料から作ら
れたパッドのような耐衝撃性、熱可塑性のポリカーボネートパッド26に接する、左前輪22および左後輪24で発生する。右側車輪28および30はアスファルト32に接している。左側の車輪22と24は、ポリカーボネートパッド26上を走る前に、石鹸を含んだパッドを横断する。試験中ポリカーボネートパッド26を絶えず湿らせている水により、さらなる潤滑が与えられる。
【0016】
スプリットμ事象は、スロットルの位置が20%‐35%の範囲に維持されるような加速から成る。各事象中、ほぼ40フィートのポリカーボネートパッド26が横断される。その後車両20は次のスプリットμ事象のため、ポリカーボネートパッド26の前部に直接運転して戻される。
【0017】
スプリットμ事象を行った後、路上でのサーキットドライブを行う。サーキットドライブは、20のスプリットμ事象の各セット後の高速および市中の運転の組み合わせから成る。当サーキットドライブは合計約20マイルである。通常、各性能試験に対し4回から6回の試験サイクルを行う。
【0018】
性能試験査定方法
各性能試験の試験サイクルの終わりに差動装置の振動の傾向が生じる。車両20は、一連の急カーブを停止状態または非常に低い速度から通過させられる。振動傾向の査定中、データを記録する。流体の温度、半軸速度、および振動データを記録するため、記録計(data logger)が使用される。
【0019】
ドライサンプ試験法
上記の試験手順に続いて、車軸10を車両20から取り外す。次に流体を排出し、クラッチパックを車軸10から外す。摩擦試験機40(図2)内に取り付けることにより、当クラッチパックを摩擦マップする。当マッピングは流体の加えられていないドライサンプで行われる。車軸10から取り除かれた流体は、金属分析、粘度、含水量、および全酸価用に供される。
【0020】
試験後の手順および後述のスプリットμシミュレーション試験法に使用される摩擦試験機40は、米国特許第5,372,735号および5,441,656号に記載の修正SAE2号摩擦試験機40である。機械40は、クラッチパックハウジング42、ハウジング42内のスペーサー44、およびクラッチパックに加圧あるいは加重するための空気ピストン46を含む。熱電対48は油温を測定し(潤滑剤が使用されている場合)、熱電対50はスチールクラッチ板52の温度を測定する。ロードセルまたはひずみゲージ54は、選択された温度、荷重、および滑り速度で摩擦円板56に加えられる摩擦力を提供する。SAE文献940821号(SAE Paper #940821)に示されているように、摩擦係数μは以下の式によるロードセルデータから計算され:
【式1】
【0021】
【0022】
ここで、TはN・m単位のトルク、Ppはキロパスカル単位のSAE2号機アプライピストンに加えられた圧力、Apはm2単位のアプライピストンの面積、Rmは摩擦円板の有効平均半径、そしてnは摩擦板面の数である。流体加熱装置58はハウジング42内の流体の温度をコントロールする。
【0023】
静電交流モーター60および減速装置62は、モーター軸拡張66用のウォームギア駆
動部64に接触しており、非常に低い速度(通常5rpm未満)で静電分離摩擦係数(μs)を測定するために使用される。3600rpmの交流モーター68によって摩擦円板56は回転する。取り外し可能なフライホイール70はモーター軸72に接触している。可変速直流(DC)モーター74は、軸継手76によって減速装置78と結合する。減速装置78は軸継手80によってモーター軸72と結合している。DCモーター74、継手76および80、および減速装置78は、標準SAE2号摩擦試験機への改良を表している。
【0024】
場合によっては、一定の温度および負荷条件下での低速の滑り速度での摩擦係数の測定は、交流モーター60および68によって得られるトルクよりも大きなトルクを必要とする。従って、DCモーター74および1rpmで300N−メーターのトルクを生じることのできる減速装置78は、機械40に接触され、継手76および80によって電源の切られた3600rpmのモーター68に接続される。
【0025】
上記車軸10用差動制限装置の起動時の振動傾向の大きさは以下の試験方法により規定される。差動装置の起動状態は、クラッチパックが圧縮状態で数時間潤滑液の上方に保持された状態である。
【0026】
摩擦マッピングサイクルを行う前に、通常約10℃から約140℃の範囲の適切な温度でクラッチパックハウジングの平衡を保たせる。摩擦マッピングは、上述で特定した範囲の温度を使用し、ピストン46により約100から約900キロパスカルの範囲の圧力をクラッチパックにかけながら行われる。
【0027】
上記よりわかるように、差動制限装置の大規模な車両試験には、試験サイクルを完了するためにかなりの時間と場所を必要とする。しかしながら、本明細書に記載の実施態様は、スプリットμ車両試験の結果の厳密なシミュレーションを提供しながら、スプリットμ車両試験の必要性をなくすことができる。本明細書に記載の実施態様において、クラッチパックを老化させ、その摩擦パックが上述のスプリットμ車両試験のクラッチパックから得られた摩擦マップと厳密に対応するようにする。
【0028】
スプリットμシミュレーション
一つの実施態様において、差動制限摩擦クラッチパックを保持することのできる任意の適切な摩擦試験装置において機能する、摩擦試験のプロトコルが提供される。当摩擦試験装置は回転速度、界面プレートの温度、トルク(および・または摩擦係数)、そして加えられた圧力を測定かつコントロールするのに適したように構成されている。当方法は、車輪24と車輪30の間(図1)で差動装置の速度偏向が大きい状態のときに車両の後ろ車軸10に起こるスプリットμ事象を模倣する。一般的な条件は、1500rpm、圧力約330キロパスカル、持続期間6秒である。この各6秒の事象を一サイクルと呼ぶ。当試験方法には通例、20から1000以上のこのようなサイクルが多数含まれる。一連のサイクルの後、同じ試験台、あるいは上述のドライサンプ法に基づいて低速摩擦・トルクを査定することのできる別の試験台で、クラッチパックの摩擦特性を適宜チェックする。
【0029】
スプリットμシミュレーション試験方法、差動制限クラッチパック試験
以下の試験方法の目的は、差動制限車軸内のクラッチパックがスプリットμ車両試験中に悪化するような条件をシミュレートすることである。このような[クラッチパックの]悪化は、差動装置で発生した振動を運転者に伝える傾向があるような特定の車両において、起動時の振動の原因となり得る。
【0030】
シミュレーション試験の準備で、DAスチュワート社(D.A.Stuart Company)が製造しSTURACOという商品名で販売されているような作動制限トップ
処理液中に、例えば25センチのリングギアを含んだ車軸の差動制限クラッチパック内の摩擦板を、室温で約30分浸しておく。その後クラッチパックのプレートをスパイダーギアのスプライン上に組み立て直し、万力あるいは摩擦試験機のテストヘッドを含むその他の適切な道具で、約2時間から約4時間の間、約100kgから約200kgの力で圧縮する。クラッチパックを圧縮した後、摩擦試験機中にすでに存在していなければ、当クラッチパックを圧縮状態から取り除き摩擦試験機40に搭載する。
【0031】
摩擦板56に約300から約350キロパスカル加圧するのに十分な圧力を、空気ピストン46を使用してクラッチパックハウジング42に加える。このような量の圧力は、摩擦板56とスチールプレート52の間に、接触面積約47平方センチの固い接触を呈する。この圧力において、試験装置の安全操業を可能にするため、試験流体の最小量をハウジングに注入する。試験流体の量は最小化し、また摩擦板56の1/3以上をカバーしないように維持しなくてはならない。
【0032】
モーター68を作動させて軸66を回転させ、また摩擦板56とスチールプレート52との間に約1500rpmの相対回転速度をもたらす。その後クラッチパックに適切な圧力を加える。各回転および加圧サイクルを約7秒間行う。当サイクルの間、界面プレートの温度およびサンプ温度を熱電対48および50(図2)を使用して監視する。
【0033】
各回転サイクル[において]、プレート52および56が回転を停止するように駆動モーター68への電力を中断し、動的停止サイクルを行う。回転および停止サイクルを、所定サイクル数、一般に約60から約1000サイクル繰り返す。その後当試験流体を摩擦試験機40から排出する。
【0034】
上述のように、クラッチパック摩擦特性が、ドライサンプ法を使用した摩擦マッピングにより温度の関数として特徴づけられる。
【0035】
以下の非制限的例は本明細書に記載の実施態様の様々な態様を例示するために挙げられたものであり、当開示の制限を意図するものではない。例において以下の略記が使用される:
ギアオイル1(GO1):性能特性GL−5の75W90ギアオイル
トップ処理1(TT1):車軸油の差動制限トップ処理
グラフには以下の凡例記号が使用される:
A:摩擦係数(x1000)
B:中間点のトルク
C:ピークトルク
D:バルク流体の温度
E:中央後部プレートの温度
F:後部プレートの温度
G:トルク
H:摩擦係数
I:rpm
J:プレート3の温度
K:プレート5の温度
L:アップスウィープデータ
M:ダウンスウィープデータ
【実施例】
【0036】
例1: GO1/TT1パックと紙の摩擦板
この例では、ギアオイル1とトップ処理1オイル(GO1/TT1)を使用した。流体
は低燃費75W90 GL−5良質ギア潤滑油で、トップ処理車軸油は差動制限トップ処理液である。クラッチパック内の摩擦板はRAYBESTOS 7901−4紙である。上述の摩擦試験機40を使用して、60スプリットμシミュレーションサイクルの操作パラメータを決定した。
【0037】
図3は、上述の流体およびクラッチパックについての、操作および停止サイクル(スプリットμシミュレーションサイクルの二倍)のシミュレーション結果を要約したグラフである。図3において、曲線Aは観察された摩擦係数(x100)である。曲線Bは中間点のトルクである。曲線Cはピークトルクである。曲線Dは熱電対48で測定されたバルク流体の温度である。曲線Eは中央界面プレートの温度であり、また曲線Fは熱電対50によって決定された後方界面プレートの温度である。曲線EおよびFは、試験を通して比較的安定して維持されたレベルへの、界面プレート温度の急騰を示す。
【0038】
図4は、一番目のスプリットμシミュレーションサイクル中の温度、圧力、およびトルクのグラフである。図4において、曲線D、E、およびFは、上述の通りである。曲線Gは測定されたトルクであり、また曲線Hはクラッチパックハウジング42に加圧された圧力である。図4に見られるように、界面プレートの温度(曲線EおよびF)は急騰したが、バルク流体の温度(曲線D)にはほとんど変化がなかった。
【0039】
上述の例は、クラッチ板の劣化の原因となり得る、非常に高い界面のクラッチ板の温度を表す、ベースラインの流れを示す。
【0040】
例2:GO1/TT1と紙の摩擦板
この例では、例1で使用した流体と摩擦板を使用する。この例では、60サイクルのスプリットμシミュレーションの摩擦マップを、図1について説明された80回のスプリットμ車両試験の摩擦マップと比較した。シミュレーションの摩擦マップと車両試験の摩擦マップは、よく似た振動傾向を示した。図5および図6は、それぞれ圧力900キロパスカルで10℃および40℃で行われたシミュレーションの、トルクおよび温度対時間を表すグラフである。図7および図8は、それぞれ圧力900キロパスカルで10℃および40℃で行われたシミュレーションの摩擦係数のグラフであるが、これらのグラフは回転速度の関数としてプロットされたデータを表す。図9から図12までは、圧力900キロパスカルでそれぞれ10℃および40℃で行われたスプリットμ車両試験からのクラッチパックを試験することによって得られた、対応する摩擦マッピングのグラフである。当摩擦マッピンググラフは、上述のドライサンプ法を用いて得られる。図6および図11に見られるように、40℃におけるシミュレーション試験および車両試験は、どちらも負の傾斜に誘発された振動を表している。図5から図8までと図9から図12までとを比較すると、シミュレーション試験の摩擦マップが車両試験の摩擦マップと非常に類似していることが例証されている。
【0041】
例3:GO1/TT1と紙の摩擦板
この例では、例1に記載されたものと同じ種類の流体および摩擦板について、80サイクルのスプリットμシミュレーションを行った。図13は、この例に基づいた80サイクルのスプリットμシミュレーションの概要グラフであり、これは図3の60サイクルのスプリットμシミュレーションと比較される。図3と図13の比較により、60サイクルのスプリットμシミュレーションと80サイクルのスプリットμシミュレーションの両方の結果が類似していることが示されているが、図13の最初の三回の作動では、界面プレートの温度の上昇の原因となる、より大きな摩擦が発生した。この種の変化は摩擦板やスチールスペーサーの違いによる可能性がある。
【0042】
例4:GO1/TT1と紙の摩擦板
この例でもまた、例1に記載されたものと同じ種類の流体および摩擦板を使用した。この例において、80サイクルのスプリットμシミュレーションを再び行った。80サイクルのスプリットμシミュレーションの摩擦マッピングの結果の要約を図14に示す。このスプリットμシミュレーションの再実行は、図3に示された例1の60サイクルのスプリットμシミュレーションと匹敵する。
【0043】
例5:GO1/TT1と炭素繊維の摩擦板
この例では、例1に記載されたものと同じ種類の流体を使用した。しかしながら、摩擦板は、前記の例で使用された紙の摩擦板の性能と比較するため、炭素繊維を織った摩擦材料のプレートに変えた。図15は、80サイクルのスプリットμシミュレーションにおける、GO1/TT1流体中の炭素繊維摩擦板の性能を表す複合グラフである。図15と図14とを比較すると、界面プレートの温度(曲線Eと曲線F)は、紙の摩擦板を使用した図14のプレートの温度よりも大幅に低い。同様に、バルク流体の温度(曲線D)も、炭素繊維の摩擦板のほうがいくらか低い。中央後部プレート(曲線F)の温度が試験サイクルの間、より劇的に変化したため、より効果的にプレートが冷却されたものと考えられる。当シミュレーションの結果、炭素繊維の摩擦板の界面温度の方が低く、そのため流体・クラッチシステムの劣化を低下できることが直接証明された。
【0044】
例6:紙の摩擦板
この例では、異なった車軸液と例1に記載の紙の摩擦板を使用した。使用した流体は作動制限トップ処理剤入りの粘性度75W140のギア潤滑剤である。140サイクルのスプリットμシミュレーションの摩擦マップを220スプリットμ車両試験の摩擦マップと比較した。シミュレーション試験の摩擦マッピング結果の概要グラフを図16に含める。約63サイクル目で試験を一時中断し、また再開した。圧力900キロパスカル、10℃で行われたシミュレーション試験(図17から図18)のクラッチパックについての摩擦対速度を表す曲線は、同圧力同温度で行われた、同じ流体と摩擦板による220回のスプリットμ車両試験(図19から図20)で得られた結果に匹敵する。全体として、この例の界面プレートの温度は、例1の流体を使用した例よりも高かった。
【0045】
同様の摩擦曲線を生み出すためのシミュレーションと車両試験のスプリットμサイクルの実行回数には違いがあるものの、この例で使用された流体によるスプリットμ車両試験と同様の摩擦特性を得るため、シミュレーションサイクルを調整、あるいは較正することができると考えられている。
【0046】
要約すると、本明細書に記載のスプリットμシミュレーション法は、スプリットμ車両試験を厳密に模倣し、それにより差動制限装置用の流体および材料の性能を査定する、より費用効率の高い方法を提供するものと考えられる。上述の例に示されるように、試験サイクル中に界面プレートの温度に急激な上昇が見られる。従来のスプリットμ車両試験を使用して界面プレートの温度を監視することは非常に困難である。しかしながら、本明細書に記載の装置および手順により、この重要なパラメータを容易に監視することが可能となる。
【0047】
さらに、本明細書に記載の手順により、はるかに短い時間内でより多くのシミュレーションサイクルを行うことが可能となり、それにより査定のためのデータ生成がより迅速となる。従って、差動制限装置の新技術が、大規模な車両試験によるよりも迅速に査定されることになる。
【0048】
この明細書を通した数多くの箇所で、多数の米国特許が引用されている。このような引用文献のすべては、本明細書で完全に説明されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0049】
上述の実施態様は、その実行にいてかなり変化する余地がある。従って、当実施態様は上述の明細書で説明された特定の例証を制限することを意図したものではない。むしろ上述の実施態様は、添付の請求項の精神および範囲内において、法律上利用可能なそれら均等物を含むものである。
【0050】
当特許権者は、開示されたいかなる実施態様をも公共に献ずる意図はなく、また開示された修正または変更はある程度文字通りには請求項の範囲内に含まれないかもしれないが、それらも均等論により当明細書の一部であると見なされる。
本発明の主な特徴および態様を挙げれば以下のとおりである。
1.車両用差動制限装置用スプリットμ車軸試験のシミュレーション方法であり、以下のステップから成る方法:
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理すること;
‐クラッチパックを摩擦試験台に搭載すること;
‐所定量の試験流体を試験台に提供すること;および
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させること。ここで駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる。
2.上記1に記載の方法であり、処理ステップに続き、一番目の圧力で二番目の期間中クラッチパックを圧縮することをさらに含む方法。
3.上記2に記載の方法であり、二番目の期間が少なくとも約5分間である方法。
4.上記3に記載の性能手順であり、二番目の期間が約1時間から約3時間の範囲内である方法。
5.上記1に記載の方法であり、約0分から約60分の範囲の一番目の期間中当クラッチパックが処理される方法。
6.上記1に記載の方法であり、回転していない車軸中の差動制限クラッチパックに見られる範囲の二番目の圧力で、クラッチパックが試験台内で圧縮される方法。
7.上記1に記載の方法であり、所定の相対回転速度が約100rpmから約2000rpmの範囲内である方法。
8.上記1に記載の方法であり、オンのサイクルが約1秒から約20秒の範囲である方法。
9.上記1に記載の方法であり、100キロパスカルから800キロパスカルの範囲内の圧力および約5℃から約50℃の範囲の温度で、実質的に流体を欠いているサンプ内に配置されたクラッチパックを備えた試験台の駆動部を回転させることにより、クラッチパックの摩擦特性を圧力と温度の関数としてマッピングするステップをさらに含んだ方法。
10.車両用差動制限装置の摩擦特性をマッピングする方法であり、以下のステップから成る方法:
‐残留流体を含んだクラッチパックを低速摩擦試験台に搭載すること。当試験台は実質的に試験流体を欠いている;
‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成すること;および
‐クラッチパックのトルク特性を記録すること。
11.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックがスプリットμ車両試験の後に車両の車軸から取り除かれたクラッチパックである方法。
12.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックがシミュレートされたスプリットμ試験の後に得られたクラッチパックである方法。
13.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックが約100重量kgから約800重量kgの範囲の圧力で試験台に搭載される方法。
14.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックが約5℃から約100℃の範囲の温度で試験台に搭載される方法。
15.車両用差動制限装置の材料を査定するベンチテスト方法であり、以下のステップから成るベンチテスト方法:
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理すること;
‐クラッチパックを低速駆動部を含んだ低速摩擦試験台に搭載すること;
‐所定量の試験流体を試験台に供給すること;
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させること。ここで駆動部がオンの場合、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる;
‐続いて試験台に実質的に流体がなくなるように、摩擦試験台から試験流体を排出させること;
‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成させること;および
‐クラッチパックのトルクおよび摩擦係数を記録すること。
16.上記15に記載のベンチテスト方法であり、処理ステップに続き、一番目の圧力で二番目の期間中クラッチパックを圧縮することをさらに含む方法。
17.上記16に記載のベンチテスト方法であり、二番目の期間が約1時間から約3時間の範囲内である方法。
18.上記15に記載のベンチテスト方法であり、一番目の期間が約0分から約60分の範囲内である方法。
19.上記15に記載のベンチテスト方法であり、回転していない車軸内の差動制限クラッチパックで観察される範囲の二番目の圧力でクラッチパックが試験台に圧縮される方法。
20.上記19に記載のベンチテスト方法であり、二番目の圧力が約100重量kgから約800重量kgの範囲内である方法。
21.上記15に記載のベンチテスト方法であり、所定の相対回転速度が約100rpmから約2000rpmの範囲内である方法。
22.上記15に記載のベンチテスト方法であり、オンサイクルが約1秒から約20秒の範囲内である方法。
23.上記15に記載のベンチテスト方法であり、クラッチパックが約5℃から約100℃の範囲の温度で試験台に搭載される間にクラッチパック内の摩擦特性が生成される方法。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】二輪駆動車の差動制限装置および従来の性能試験装置の概略平面図
【図2】本開示に基づいた差動制限装置の摩擦試験をシミュレートする摩擦試験装置の概略図
【図3】本明細書に記載された方法を使用したスプリットμシミュレーションサイクルの合成結果を表す要約グラフ
【図4】本開示に基づいたスプリットμシミュレーションサイクル中の温度、圧力、およびトルクを表すグラフ
【図5−6】本開示に基づいたスプリットμシミュレーションサイクルのトルク、温度、および摩擦係数対時間を表すグラフ
【図7−8】本開示に基づいたスプリットμシミュレーションサイクルの摩擦係数対回転速度を表すグラフ
【図9−12】スプリットμ車両試験を使用して老化したクラッチパックについての開示に基づいた摩擦要約グラフ
【図13−16】本明細書に記載された方法を使用したスプリットμシミュレーションサイクルの合成結果の要約グラフ
【図17】本開示に基づいたスプリットμシミュレーション法を使用して老化したクラッチパックのドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、トルク、温度、および摩擦係数対時間を表す時間領域グラフ
【図18】本開示に基づいたスプリットμシミュレーション法を使用して老化したクラッチパックのドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、摩擦係数対回転速度を表す毎分の回転数(rpm)領域のグラフ
【図19】スプリットμ車両試験を使用して老化したクラッチパックについての開示に基づいたドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、トルク、温度、および摩擦係数対時間を表す時間領域グラフ
【図20】スプリットμ車両試験を使用して老化したクラッチパックについての開示に基づいたドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、摩擦係数対回転速度を表す毎分の回転数領域のグラフ
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施態様は、大規模の車両性能試験のシミュレーション、特に車両用途の差動制限装置の性能試験シミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
差動制限装置の摩擦特性、ひいては振動の傾向は、一般的に大規模な車両試験により得られ、このとき差動装置を含んだ車両が所定の試験サイクルの間作動される。従来の試験方法によると、差動制限装置が準備され車両に取り付けられる。当車両は、所定の距離(マイル数)様々な表面上を運転される。当試験手順の間にクラッチパックおよび流体の査定を行う。しかしながら、上述の方法には実際の車が必要であり、また試験結果の再生は試験に用いられた周囲の条件によって多様である。
【0003】
従って、高価な車両試験を行うことなくクラッチパックと流体の性能を正確に予測することのできる、簡易化された小規模な試験方法が必要となる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施態様において、車両用差動制限装置のスプリットμ車軸試験のシミュレーションの方法が提供される。本方法には、所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理することが含まれる。当クラッチパックは、摩擦試験台に搭載されている。所定量の試験流体を試験台に入れる。当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる。駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる。
【0005】
別の実施態様において、車両用差動制限装置の摩擦特性のマッピング方法が提供される。当方法には残留流体を含んだクラッチパックを低速摩擦試験台に搭載することが含まれる。試験台の排水だめまたは貯水槽には実質的に試験流体が入っていない。クラッチパック内の摩擦特性は、クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こす条件下でクラッチパックを回転させることにより、温度と圧力の関数として発生する。クラッチパック内の摩擦により生じたトルクが試験中に記録される。
【0006】
また別の実施態様において、車両用差動制限装置の材料を査定するベンチテストの方法が提供される。当ベンチテスト方法には、所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理することが含まれる。当クラッチパックは次に、低速駆動部を含んだ摩擦試験台に搭載される。所定量の試験流体を当試験台に入れる。当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる。駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる。次に試験台に実質的に流体がなくなるように、摩擦試験台から試験流体を排出する。クラッチパック内の摩擦特性は、クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こす条件下でクラッチパックを回転させることにより、温度と圧力の関数として発生する。クラッチパック内の摩擦により生じたトルクが試験中に記録される。
【0007】
本開示に基づいたドライサンプ法の利点は、軸の回転中にはねかけ注油をする場合以外は流体面が低くてクラッチパックに届かないような、特定の差動制限車軸内の摩擦特性を綿密に模倣する条件下で生成された摩擦特性マップが、本方法により提供されるということである。本開示の別の利点は、車両軸の浸漬注油不足がシミュレートされるよう、ドライサンプ構造を使用した摩擦マッピング中にクラッチパックの条件を模倣する能力である
。ドライサンプ摩擦試験は、差動制限クラッチパック摩擦特性を決定するのに適した形態である。
【0008】
本明細書に記載の実施態様の更に他の利点は、小規模な摩擦試験または「スプリットμシミュレーション」が、大規模な車両試験の比較的低コストな代替物を提供することである。さらに当明細書に記載のスプリットμシミュレーション法は、試験時間の短縮、必要な流体量の最小化、およびクラッチパック内の熱の蓄積を容易に観測する能力などの利点を伴う。
【0009】
本開示のさらなる利点は、基準を定めるためではなく、本明細書に記載された主要な特徴を説明するために提供された図面と併せて考慮して詳細を参考することにより、より深く理解されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本開示の実施態様の目的は、差動制限装置を含んだ車両の後ろ車軸の性能試験をシミュレーションすることである。当性能試験は差動制限装置用として適した潤滑油とともに、車軸の材料を査定するために使用される。大規模な車両試験とは、本明細書においてスプリットμ(またはスプリットミュー)車両試験のことを意味する。本方法には、他の車輪の毎分の回転数を[後述の車輪よりも]はるかに低い回転速度に維持しながら、車両の後輪の一つを回転させることが含まれる。これは他の車輪の摩擦係数を高く保ちながら、一つの車輪の摩擦係数(μ)を低めること、つまりスプリットμ試験によって達成される。背景として、以下の方法を車両に受けさせることによりスプリットμ試験を行う。
【0011】
大規模な車両軸性能試験方法
図1を参照し、新しい車軸、または新たに作り直された車軸10を各試験に使用する。車軸10には後ぶたプレート14を備えたディファレンシャルハウジング(差動歯車枠)12が含まれる。
【0012】
すでに流体を含んでいる新しい車軸10を作り直そうとする場合は、以下の方法が使用される。車軸10の後ぶたプレート14を取り除き、流体を排出し、ろ過して固形片を取り除き、ろ過液を残しておく。次にディファレンシャルハウジング12内部のクラッチパックを分解する。車軸の新しい摩擦板を適切な流体中に30分間浸しておき、プレート[摩擦板]を車軸10に取り付ける前に摩擦板から流体を排出する。車軸10に試験クラッチパックを取り付けるには、相手先商標製品製造会社(OEM)推奨のサービス方法を使用する。
【0013】
後ぶたプレート14の元のシーリング剤を取り除いて、新しいシーリング剤と取り替える。次に後ぶたプレート14を車軸10に再び取り付ける。潤滑剤と接触させる前に、当シーリング剤を4時間硬化させる。次に試験潤滑剤を、流体から最初にろ過された固体片と共に車軸10に加える。これで車軸10の作り直しの手順が完了する。
【0014】
以下の方法は、上述のように、新しいまたは作り直された車軸10に使用することができる。ディファレンシャルハウジング12のピニオン部分に加速度計16を搭載する。バルク流体の温度を観測するため、ボトムフィルプラグを通してディファレンシャルハウジング12に熱電対18を搭載する。次に車軸10を試験用の車両20に取り付ける。
【0015】
車両20に行われる性能試験は、一連の試験サイクルから構成される。各試験サイクルは、20のスプリットμ事象(split μ event)と市中・高速の組み合わせの20マイルの運転とから構成される。スプリットμ事象はGEプラスチック社(GE Plastics)からLEXANという商品名で販売されているポリマー材料から作ら
れたパッドのような耐衝撃性、熱可塑性のポリカーボネートパッド26に接する、左前輪22および左後輪24で発生する。右側車輪28および30はアスファルト32に接している。左側の車輪22と24は、ポリカーボネートパッド26上を走る前に、石鹸を含んだパッドを横断する。試験中ポリカーボネートパッド26を絶えず湿らせている水により、さらなる潤滑が与えられる。
【0016】
スプリットμ事象は、スロットルの位置が20%‐35%の範囲に維持されるような加速から成る。各事象中、ほぼ40フィートのポリカーボネートパッド26が横断される。その後車両20は次のスプリットμ事象のため、ポリカーボネートパッド26の前部に直接運転して戻される。
【0017】
スプリットμ事象を行った後、路上でのサーキットドライブを行う。サーキットドライブは、20のスプリットμ事象の各セット後の高速および市中の運転の組み合わせから成る。当サーキットドライブは合計約20マイルである。通常、各性能試験に対し4回から6回の試験サイクルを行う。
【0018】
性能試験査定方法
各性能試験の試験サイクルの終わりに差動装置の振動の傾向が生じる。車両20は、一連の急カーブを停止状態または非常に低い速度から通過させられる。振動傾向の査定中、データを記録する。流体の温度、半軸速度、および振動データを記録するため、記録計(data logger)が使用される。
【0019】
ドライサンプ試験法
上記の試験手順に続いて、車軸10を車両20から取り外す。次に流体を排出し、クラッチパックを車軸10から外す。摩擦試験機40(図2)内に取り付けることにより、当クラッチパックを摩擦マップする。当マッピングは流体の加えられていないドライサンプで行われる。車軸10から取り除かれた流体は、金属分析、粘度、含水量、および全酸価用に供される。
【0020】
試験後の手順および後述のスプリットμシミュレーション試験法に使用される摩擦試験機40は、米国特許第5,372,735号および5,441,656号に記載の修正SAE2号摩擦試験機40である。機械40は、クラッチパックハウジング42、ハウジング42内のスペーサー44、およびクラッチパックに加圧あるいは加重するための空気ピストン46を含む。熱電対48は油温を測定し(潤滑剤が使用されている場合)、熱電対50はスチールクラッチ板52の温度を測定する。ロードセルまたはひずみゲージ54は、選択された温度、荷重、および滑り速度で摩擦円板56に加えられる摩擦力を提供する。SAE文献940821号(SAE Paper #940821)に示されているように、摩擦係数μは以下の式によるロードセルデータから計算され:
【式1】
【0021】
【0022】
ここで、TはN・m単位のトルク、Ppはキロパスカル単位のSAE2号機アプライピストンに加えられた圧力、Apはm2単位のアプライピストンの面積、Rmは摩擦円板の有効平均半径、そしてnは摩擦板面の数である。流体加熱装置58はハウジング42内の流体の温度をコントロールする。
【0023】
静電交流モーター60および減速装置62は、モーター軸拡張66用のウォームギア駆
動部64に接触しており、非常に低い速度(通常5rpm未満)で静電分離摩擦係数(μs)を測定するために使用される。3600rpmの交流モーター68によって摩擦円板56は回転する。取り外し可能なフライホイール70はモーター軸72に接触している。可変速直流(DC)モーター74は、軸継手76によって減速装置78と結合する。減速装置78は軸継手80によってモーター軸72と結合している。DCモーター74、継手76および80、および減速装置78は、標準SAE2号摩擦試験機への改良を表している。
【0024】
場合によっては、一定の温度および負荷条件下での低速の滑り速度での摩擦係数の測定は、交流モーター60および68によって得られるトルクよりも大きなトルクを必要とする。従って、DCモーター74および1rpmで300N−メーターのトルクを生じることのできる減速装置78は、機械40に接触され、継手76および80によって電源の切られた3600rpmのモーター68に接続される。
【0025】
上記車軸10用差動制限装置の起動時の振動傾向の大きさは以下の試験方法により規定される。差動装置の起動状態は、クラッチパックが圧縮状態で数時間潤滑液の上方に保持された状態である。
【0026】
摩擦マッピングサイクルを行う前に、通常約10℃から約140℃の範囲の適切な温度でクラッチパックハウジングの平衡を保たせる。摩擦マッピングは、上述で特定した範囲の温度を使用し、ピストン46により約100から約900キロパスカルの範囲の圧力をクラッチパックにかけながら行われる。
【0027】
上記よりわかるように、差動制限装置の大規模な車両試験には、試験サイクルを完了するためにかなりの時間と場所を必要とする。しかしながら、本明細書に記載の実施態様は、スプリットμ車両試験の結果の厳密なシミュレーションを提供しながら、スプリットμ車両試験の必要性をなくすことができる。本明細書に記載の実施態様において、クラッチパックを老化させ、その摩擦パックが上述のスプリットμ車両試験のクラッチパックから得られた摩擦マップと厳密に対応するようにする。
【0028】
スプリットμシミュレーション
一つの実施態様において、差動制限摩擦クラッチパックを保持することのできる任意の適切な摩擦試験装置において機能する、摩擦試験のプロトコルが提供される。当摩擦試験装置は回転速度、界面プレートの温度、トルク(および・または摩擦係数)、そして加えられた圧力を測定かつコントロールするのに適したように構成されている。当方法は、車輪24と車輪30の間(図1)で差動装置の速度偏向が大きい状態のときに車両の後ろ車軸10に起こるスプリットμ事象を模倣する。一般的な条件は、1500rpm、圧力約330キロパスカル、持続期間6秒である。この各6秒の事象を一サイクルと呼ぶ。当試験方法には通例、20から1000以上のこのようなサイクルが多数含まれる。一連のサイクルの後、同じ試験台、あるいは上述のドライサンプ法に基づいて低速摩擦・トルクを査定することのできる別の試験台で、クラッチパックの摩擦特性を適宜チェックする。
【0029】
スプリットμシミュレーション試験方法、差動制限クラッチパック試験
以下の試験方法の目的は、差動制限車軸内のクラッチパックがスプリットμ車両試験中に悪化するような条件をシミュレートすることである。このような[クラッチパックの]悪化は、差動装置で発生した振動を運転者に伝える傾向があるような特定の車両において、起動時の振動の原因となり得る。
【0030】
シミュレーション試験の準備で、DAスチュワート社(D.A.Stuart Company)が製造しSTURACOという商品名で販売されているような作動制限トップ
処理液中に、例えば25センチのリングギアを含んだ車軸の差動制限クラッチパック内の摩擦板を、室温で約30分浸しておく。その後クラッチパックのプレートをスパイダーギアのスプライン上に組み立て直し、万力あるいは摩擦試験機のテストヘッドを含むその他の適切な道具で、約2時間から約4時間の間、約100kgから約200kgの力で圧縮する。クラッチパックを圧縮した後、摩擦試験機中にすでに存在していなければ、当クラッチパックを圧縮状態から取り除き摩擦試験機40に搭載する。
【0031】
摩擦板56に約300から約350キロパスカル加圧するのに十分な圧力を、空気ピストン46を使用してクラッチパックハウジング42に加える。このような量の圧力は、摩擦板56とスチールプレート52の間に、接触面積約47平方センチの固い接触を呈する。この圧力において、試験装置の安全操業を可能にするため、試験流体の最小量をハウジングに注入する。試験流体の量は最小化し、また摩擦板56の1/3以上をカバーしないように維持しなくてはならない。
【0032】
モーター68を作動させて軸66を回転させ、また摩擦板56とスチールプレート52との間に約1500rpmの相対回転速度をもたらす。その後クラッチパックに適切な圧力を加える。各回転および加圧サイクルを約7秒間行う。当サイクルの間、界面プレートの温度およびサンプ温度を熱電対48および50(図2)を使用して監視する。
【0033】
各回転サイクル[において]、プレート52および56が回転を停止するように駆動モーター68への電力を中断し、動的停止サイクルを行う。回転および停止サイクルを、所定サイクル数、一般に約60から約1000サイクル繰り返す。その後当試験流体を摩擦試験機40から排出する。
【0034】
上述のように、クラッチパック摩擦特性が、ドライサンプ法を使用した摩擦マッピングにより温度の関数として特徴づけられる。
【0035】
以下の非制限的例は本明細書に記載の実施態様の様々な態様を例示するために挙げられたものであり、当開示の制限を意図するものではない。例において以下の略記が使用される:
ギアオイル1(GO1):性能特性GL−5の75W90ギアオイル
トップ処理1(TT1):車軸油の差動制限トップ処理
グラフには以下の凡例記号が使用される:
A:摩擦係数(x1000)
B:中間点のトルク
C:ピークトルク
D:バルク流体の温度
E:中央後部プレートの温度
F:後部プレートの温度
G:トルク
H:摩擦係数
I:rpm
J:プレート3の温度
K:プレート5の温度
L:アップスウィープデータ
M:ダウンスウィープデータ
【実施例】
【0036】
例1: GO1/TT1パックと紙の摩擦板
この例では、ギアオイル1とトップ処理1オイル(GO1/TT1)を使用した。流体
は低燃費75W90 GL−5良質ギア潤滑油で、トップ処理車軸油は差動制限トップ処理液である。クラッチパック内の摩擦板はRAYBESTOS 7901−4紙である。上述の摩擦試験機40を使用して、60スプリットμシミュレーションサイクルの操作パラメータを決定した。
【0037】
図3は、上述の流体およびクラッチパックについての、操作および停止サイクル(スプリットμシミュレーションサイクルの二倍)のシミュレーション結果を要約したグラフである。図3において、曲線Aは観察された摩擦係数(x100)である。曲線Bは中間点のトルクである。曲線Cはピークトルクである。曲線Dは熱電対48で測定されたバルク流体の温度である。曲線Eは中央界面プレートの温度であり、また曲線Fは熱電対50によって決定された後方界面プレートの温度である。曲線EおよびFは、試験を通して比較的安定して維持されたレベルへの、界面プレート温度の急騰を示す。
【0038】
図4は、一番目のスプリットμシミュレーションサイクル中の温度、圧力、およびトルクのグラフである。図4において、曲線D、E、およびFは、上述の通りである。曲線Gは測定されたトルクであり、また曲線Hはクラッチパックハウジング42に加圧された圧力である。図4に見られるように、界面プレートの温度(曲線EおよびF)は急騰したが、バルク流体の温度(曲線D)にはほとんど変化がなかった。
【0039】
上述の例は、クラッチ板の劣化の原因となり得る、非常に高い界面のクラッチ板の温度を表す、ベースラインの流れを示す。
【0040】
例2:GO1/TT1と紙の摩擦板
この例では、例1で使用した流体と摩擦板を使用する。この例では、60サイクルのスプリットμシミュレーションの摩擦マップを、図1について説明された80回のスプリットμ車両試験の摩擦マップと比較した。シミュレーションの摩擦マップと車両試験の摩擦マップは、よく似た振動傾向を示した。図5および図6は、それぞれ圧力900キロパスカルで10℃および40℃で行われたシミュレーションの、トルクおよび温度対時間を表すグラフである。図7および図8は、それぞれ圧力900キロパスカルで10℃および40℃で行われたシミュレーションの摩擦係数のグラフであるが、これらのグラフは回転速度の関数としてプロットされたデータを表す。図9から図12までは、圧力900キロパスカルでそれぞれ10℃および40℃で行われたスプリットμ車両試験からのクラッチパックを試験することによって得られた、対応する摩擦マッピングのグラフである。当摩擦マッピンググラフは、上述のドライサンプ法を用いて得られる。図6および図11に見られるように、40℃におけるシミュレーション試験および車両試験は、どちらも負の傾斜に誘発された振動を表している。図5から図8までと図9から図12までとを比較すると、シミュレーション試験の摩擦マップが車両試験の摩擦マップと非常に類似していることが例証されている。
【0041】
例3:GO1/TT1と紙の摩擦板
この例では、例1に記載されたものと同じ種類の流体および摩擦板について、80サイクルのスプリットμシミュレーションを行った。図13は、この例に基づいた80サイクルのスプリットμシミュレーションの概要グラフであり、これは図3の60サイクルのスプリットμシミュレーションと比較される。図3と図13の比較により、60サイクルのスプリットμシミュレーションと80サイクルのスプリットμシミュレーションの両方の結果が類似していることが示されているが、図13の最初の三回の作動では、界面プレートの温度の上昇の原因となる、より大きな摩擦が発生した。この種の変化は摩擦板やスチールスペーサーの違いによる可能性がある。
【0042】
例4:GO1/TT1と紙の摩擦板
この例でもまた、例1に記載されたものと同じ種類の流体および摩擦板を使用した。この例において、80サイクルのスプリットμシミュレーションを再び行った。80サイクルのスプリットμシミュレーションの摩擦マッピングの結果の要約を図14に示す。このスプリットμシミュレーションの再実行は、図3に示された例1の60サイクルのスプリットμシミュレーションと匹敵する。
【0043】
例5:GO1/TT1と炭素繊維の摩擦板
この例では、例1に記載されたものと同じ種類の流体を使用した。しかしながら、摩擦板は、前記の例で使用された紙の摩擦板の性能と比較するため、炭素繊維を織った摩擦材料のプレートに変えた。図15は、80サイクルのスプリットμシミュレーションにおける、GO1/TT1流体中の炭素繊維摩擦板の性能を表す複合グラフである。図15と図14とを比較すると、界面プレートの温度(曲線Eと曲線F)は、紙の摩擦板を使用した図14のプレートの温度よりも大幅に低い。同様に、バルク流体の温度(曲線D)も、炭素繊維の摩擦板のほうがいくらか低い。中央後部プレート(曲線F)の温度が試験サイクルの間、より劇的に変化したため、より効果的にプレートが冷却されたものと考えられる。当シミュレーションの結果、炭素繊維の摩擦板の界面温度の方が低く、そのため流体・クラッチシステムの劣化を低下できることが直接証明された。
【0044】
例6:紙の摩擦板
この例では、異なった車軸液と例1に記載の紙の摩擦板を使用した。使用した流体は作動制限トップ処理剤入りの粘性度75W140のギア潤滑剤である。140サイクルのスプリットμシミュレーションの摩擦マップを220スプリットμ車両試験の摩擦マップと比較した。シミュレーション試験の摩擦マッピング結果の概要グラフを図16に含める。約63サイクル目で試験を一時中断し、また再開した。圧力900キロパスカル、10℃で行われたシミュレーション試験(図17から図18)のクラッチパックについての摩擦対速度を表す曲線は、同圧力同温度で行われた、同じ流体と摩擦板による220回のスプリットμ車両試験(図19から図20)で得られた結果に匹敵する。全体として、この例の界面プレートの温度は、例1の流体を使用した例よりも高かった。
【0045】
同様の摩擦曲線を生み出すためのシミュレーションと車両試験のスプリットμサイクルの実行回数には違いがあるものの、この例で使用された流体によるスプリットμ車両試験と同様の摩擦特性を得るため、シミュレーションサイクルを調整、あるいは較正することができると考えられている。
【0046】
要約すると、本明細書に記載のスプリットμシミュレーション法は、スプリットμ車両試験を厳密に模倣し、それにより差動制限装置用の流体および材料の性能を査定する、より費用効率の高い方法を提供するものと考えられる。上述の例に示されるように、試験サイクル中に界面プレートの温度に急激な上昇が見られる。従来のスプリットμ車両試験を使用して界面プレートの温度を監視することは非常に困難である。しかしながら、本明細書に記載の装置および手順により、この重要なパラメータを容易に監視することが可能となる。
【0047】
さらに、本明細書に記載の手順により、はるかに短い時間内でより多くのシミュレーションサイクルを行うことが可能となり、それにより査定のためのデータ生成がより迅速となる。従って、差動制限装置の新技術が、大規模な車両試験によるよりも迅速に査定されることになる。
【0048】
この明細書を通した数多くの箇所で、多数の米国特許が引用されている。このような引用文献のすべては、本明細書で完全に説明されたものとして、この開示中に完全に明確に含まれている。
【0049】
上述の実施態様は、その実行にいてかなり変化する余地がある。従って、当実施態様は上述の明細書で説明された特定の例証を制限することを意図したものではない。むしろ上述の実施態様は、添付の請求項の精神および範囲内において、法律上利用可能なそれら均等物を含むものである。
【0050】
当特許権者は、開示されたいかなる実施態様をも公共に献ずる意図はなく、また開示された修正または変更はある程度文字通りには請求項の範囲内に含まれないかもしれないが、それらも均等論により当明細書の一部であると見なされる。
本発明の主な特徴および態様を挙げれば以下のとおりである。
1.車両用差動制限装置用スプリットμ車軸試験のシミュレーション方法であり、以下のステップから成る方法:
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理すること;
‐クラッチパックを摩擦試験台に搭載すること;
‐所定量の試験流体を試験台に提供すること;および
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させること。ここで駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる。
2.上記1に記載の方法であり、処理ステップに続き、一番目の圧力で二番目の期間中クラッチパックを圧縮することをさらに含む方法。
3.上記2に記載の方法であり、二番目の期間が少なくとも約5分間である方法。
4.上記3に記載の性能手順であり、二番目の期間が約1時間から約3時間の範囲内である方法。
5.上記1に記載の方法であり、約0分から約60分の範囲の一番目の期間中当クラッチパックが処理される方法。
6.上記1に記載の方法であり、回転していない車軸中の差動制限クラッチパックに見られる範囲の二番目の圧力で、クラッチパックが試験台内で圧縮される方法。
7.上記1に記載の方法であり、所定の相対回転速度が約100rpmから約2000rpmの範囲内である方法。
8.上記1に記載の方法であり、オンのサイクルが約1秒から約20秒の範囲である方法。
9.上記1に記載の方法であり、100キロパスカルから800キロパスカルの範囲内の圧力および約5℃から約50℃の範囲の温度で、実質的に流体を欠いているサンプ内に配置されたクラッチパックを備えた試験台の駆動部を回転させることにより、クラッチパックの摩擦特性を圧力と温度の関数としてマッピングするステップをさらに含んだ方法。
10.車両用差動制限装置の摩擦特性をマッピングする方法であり、以下のステップから成る方法:
‐残留流体を含んだクラッチパックを低速摩擦試験台に搭載すること。当試験台は実質的に試験流体を欠いている;
‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成すること;および
‐クラッチパックのトルク特性を記録すること。
11.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックがスプリットμ車両試験の後に車両の車軸から取り除かれたクラッチパックである方法。
12.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックがシミュレートされたスプリットμ試験の後に得られたクラッチパックである方法。
13.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックが約100重量kgから約800重量kgの範囲の圧力で試験台に搭載される方法。
14.上記10に記載の方法であり、このときクラッチパックが約5℃から約100℃の範囲の温度で試験台に搭載される方法。
15.車両用差動制限装置の材料を査定するベンチテスト方法であり、以下のステップから成るベンチテスト方法:
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理すること;
‐クラッチパックを低速駆動部を含んだ低速摩擦試験台に搭載すること;
‐所定量の試験流体を試験台に供給すること;
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させること。ここで駆動部がオンの場合、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる;
‐続いて試験台に実質的に流体がなくなるように、摩擦試験台から試験流体を排出させること;
‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成させること;および
‐クラッチパックのトルクおよび摩擦係数を記録すること。
16.上記15に記載のベンチテスト方法であり、処理ステップに続き、一番目の圧力で二番目の期間中クラッチパックを圧縮することをさらに含む方法。
17.上記16に記載のベンチテスト方法であり、二番目の期間が約1時間から約3時間の範囲内である方法。
18.上記15に記載のベンチテスト方法であり、一番目の期間が約0分から約60分の範囲内である方法。
19.上記15に記載のベンチテスト方法であり、回転していない車軸内の差動制限クラッチパックで観察される範囲の二番目の圧力でクラッチパックが試験台に圧縮される方法。
20.上記19に記載のベンチテスト方法であり、二番目の圧力が約100重量kgから約800重量kgの範囲内である方法。
21.上記15に記載のベンチテスト方法であり、所定の相対回転速度が約100rpmから約2000rpmの範囲内である方法。
22.上記15に記載のベンチテスト方法であり、オンサイクルが約1秒から約20秒の範囲内である方法。
23.上記15に記載のベンチテスト方法であり、クラッチパックが約5℃から約100℃の範囲の温度で試験台に搭載される間にクラッチパック内の摩擦特性が生成される方法。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】二輪駆動車の差動制限装置および従来の性能試験装置の概略平面図
【図2】本開示に基づいた差動制限装置の摩擦試験をシミュレートする摩擦試験装置の概略図
【図3】本明細書に記載された方法を使用したスプリットμシミュレーションサイクルの合成結果を表す要約グラフ
【図4】本開示に基づいたスプリットμシミュレーションサイクル中の温度、圧力、およびトルクを表すグラフ
【図5−6】本開示に基づいたスプリットμシミュレーションサイクルのトルク、温度、および摩擦係数対時間を表すグラフ
【図7−8】本開示に基づいたスプリットμシミュレーションサイクルの摩擦係数対回転速度を表すグラフ
【図9−12】スプリットμ車両試験を使用して老化したクラッチパックについての開示に基づいた摩擦要約グラフ
【図13−16】本明細書に記載された方法を使用したスプリットμシミュレーションサイクルの合成結果の要約グラフ
【図17】本開示に基づいたスプリットμシミュレーション法を使用して老化したクラッチパックのドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、トルク、温度、および摩擦係数対時間を表す時間領域グラフ
【図18】本開示に基づいたスプリットμシミュレーション法を使用して老化したクラッチパックのドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、摩擦係数対回転速度を表す毎分の回転数(rpm)領域のグラフ
【図19】スプリットμ車両試験を使用して老化したクラッチパックについての開示に基づいたドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、トルク、温度、および摩擦係数対時間を表す時間領域グラフ
【図20】スプリットμ車両試験を使用して老化したクラッチパックについての開示に基づいたドライサンプ摩擦マッピングサイクルの、摩擦係数対回転速度を表す毎分の回転数領域のグラフ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用差動制限装置用スプリットμ車軸試験のシミュレーション方法であって、
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理すること;
‐クラッチパックを摩擦試験台に搭載し;
‐所定量の試験流体を試験台に提供し;そして
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる、ここで駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる;
工程を含んでなる方法。
【請求項2】
車両用差動制限装置の摩擦特性をマッピングする方法であって、
‐残留流体を含んだクラッチパックを低速摩擦試験台に搭載し、ここで当試験台は実質的に試験流体を欠いている;
‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成させ;そして
‐クラッチパックのトルク特性を記録する;
工程を含んでなる方法。
【請求項3】
車両用差動制限装置の材料を査定するベンチテスト方法であって、
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理し;
‐クラッチパックを低速駆動部を含んだ低速摩擦試験台に搭載し;
‐所定量の試験流体を試験台に供給し;
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させ、ここで駆動部がオンの場合、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じ;
‐続いて試験台に実質的に流体がなくなるように、摩擦試験台から試験流体を排出させ、‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成させ;そして
‐クラッチパックのトルクおよび摩擦係数を記録する;
工程を含んでなる方法。
【請求項1】
車両用差動制限装置用スプリットμ車軸試験のシミュレーション方法であって、
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理すること;
‐クラッチパックを摩擦試験台に搭載し;
‐所定量の試験流体を試験台に提供し;そして
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させる、ここで駆動部がオンの場合に、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じる;
工程を含んでなる方法。
【請求項2】
車両用差動制限装置の摩擦特性をマッピングする方法であって、
‐残留流体を含んだクラッチパックを低速摩擦試験台に搭載し、ここで当試験台は実質的に試験流体を欠いている;
‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成させ;そして
‐クラッチパックのトルク特性を記録する;
工程を含んでなる方法。
【請求項3】
車両用差動制限装置の材料を査定するベンチテスト方法であって、
‐所定の温度で一番目の期間中潤滑組成物中の差動制限装置用のクラッチパックを処理し;
‐クラッチパックを低速駆動部を含んだ低速摩擦試験台に搭載し;
‐所定量の試験流体を試験台に供給し;
‐当試験台の駆動部を所定のオン・オフサイクル数だけ断続的に循環させ、ここで駆動部がオンの場合、クラッチパック内の摩擦板と金属板の間に所定の相対回転速度が生じ;
‐続いて試験台に実質的に流体がなくなるように、摩擦試験台から試験流体を排出させ、‐クラッチパックの摩擦板と金属板との間に相対回転速度を引き起こすのに十分な条件下でクラッチパックを回転させることにより、クラッチパック内において摩擦特性を温度および圧力の関数として生成させ;そして
‐クラッチパックのトルクおよび摩擦係数を記録する;
工程を含んでなる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−317436(P2006−317436A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119233(P2006−119233)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]