駆動力配分制御装置
【課題】断線異常と誤検出されずに、確実に断線異常を検出できる駆動力配分制御装置を提供する。
【解決手段】マイコン30は、試験電流制御手段から出力された所定の試験電流と、電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、誘導負荷回路に異常があると判定する。そして、試験電流制御手段は、電圧検出手段で検出したバッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくする。
【解決手段】マイコン30は、試験電流制御手段から出力された所定の試験電流と、電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、誘導負荷回路に異常があると判定する。そして、試験電流制御手段は、電圧検出手段で検出したバッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力配分制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動力配分制御装置として、4輪駆動車の駆動力伝達装置の駆動力配分制御装置がある。前記駆動力配分制御装置は、クラッチ機構を備え、リレーをオンオフ制御することにより、同クラッチ機構を断接するための電磁コイルへの通電を制御している。
【0003】
そして、前記駆動力配分制御装置は、リレーをオン制御した状態で、スイッチング素子(FET等)のスイッチ手段をオンオフ制御することにより、前記リレーを介して電源ラインに電気的に接続された電磁コイルを励消磁可能としている。そして、前記電磁コイルの励磁により、クラッチ機構が接続され、4輪駆動のためのトルク配分がされる。
【0004】
このような駆動力配分制御装置においては、車両が停止時に、イグニッションスイッチ(IG、電源スイッチ)がオンされた時、イニシャルチェックのために前記リレー、電磁コイル、スイッチング素子及び配線等の断線異常の検出を行うようにされている。
【0005】
この断線異常の検出は、IGがオンされた初回時にのみ、試験パルス(パルス電流値)を電流指令値として与え、所定の電流値がフィードバックされているかどうかで行なっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2011−013707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記方法では、バッテリ電圧が低下したときなどには、電流の立ち上がりに時間がかかり、そのため、所定の時間内に、所定の電流値がフィードバックされず、断線異常ではないにもかかわらず、断線異常と誤検出されてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、断線異常と誤検出されずに、確実に断線異常を検出できる駆動力配分制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、駆動源から駆動力伝達系を介して、複数の車輪へそれぞれ伝達される駆動力の割合を調節するための誘導負荷回路を制御する誘導負荷回路制御手段を備えた駆動力配分制御装置(12)において、バッテリ(20)の出力電圧を検出する電圧検出手段(33)と、前記誘導負荷回路に流れる電流値を検出する電流検出手段(37)と、所定の試験電流を前記誘導負荷回路に出力制御する試験電流制御手段(30)と、前記試験電流制御手段(30)から出力された前記所定の試験電流と、前記電流検出手段(37)から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、前記誘導負荷回路に異常があると判定する異常判定手段(30)と、前記試験電流制御手段(30)は、前記電圧検出手段(33)で検出した前記バッテリ(20)の出力電圧が所定値未満の場合には、前記試験電流制御手段(30)から出力する前記所定の試験電流の大きさを、前記所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、前記所定値よりも大きくすること、を要旨とする。
【0010】
マイコン30は、試験電流制御手段から出力された所定の試験電流と、電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、誘導負荷回路に異常があると判定する。そして、試験電流制御手段は、電圧検出手段で検出したバッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくする。
【0011】
従って、上記構成によれば、バッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくしたので、実電流の立ち上がり時間が速くなる。その結果、実電流の立ち上がり時間が遅いために、断線異常と誤検出されることがなく、正確に断線異常の発生を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、断線異常と誤検出されずに、確実に断線異常を検出できる駆動力配分制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における4輪駆動車の概略構成図。
【図2】同じく駆動伝達装置の電気的接続を示すブロック図。
【図3】同じく駆動伝達装置の制御ブロック図。
【図4】本実施形態のバッテリ電圧正常時と低電圧時のF/B電流検出タイミングを示す説明図。
【図5】本実施形態のバッテリ電圧と試験電流値の関係を表すマップ図。
【図6】本実施形態のバッテリ電圧と異常判定開始時間の関係を表すマップ図。
【図7】本実施形態のバッテリ電圧と異常判定実施時間の関係を表すマップ図。
【図8】本実施形態の断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図9】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図10】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図11】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図12】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図13】別実施形態のバッテリ電圧と試験電流値の関係を表すマップ図。
【図14】別実施形態のバッテリ電圧と異常判定開始時間の関係を表すマップ図。
【図15】別実施形態のバッテリ電圧と異常判定実施時間の関係を表すマップ図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を4輪駆動車の駆動力配分装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、4輪駆動車1は、内燃機関であるエンジン2及びトランスアクスル3を備えている。トランスアクスル3には、一対のフロントアクスル4、4及びプロペラシャフト5が連結されている。両フロントアクスル4、4にはそれぞれ前輪6、6が連結されている。プロペラシャフト5には駆動力伝達装置(トルクカップリング)7が連結されており、同トルクカップリング7にはドライブピニオンシャフト(図示略)を介してリヤディファレンシャル9が連結されている。リヤディファレンシャル9には一対のリヤアクスル10、10を介して両後輪11、11が連結されている。
【0015】
エンジン2の駆動力は、トランスアクスル3及び両フロントアクスル4、4を介して両前輪6、6に伝達される。また、プロペラシャフト5とドライブピニオンシャフトとがトルクカップリング7にてトルク伝達可能に連結された場合、エンジン2の駆動力は、プロペラシャフト5、ドライブピニオンシャフト、リヤディファレンシャル9及び両リヤアクスル10、10を介して両後輪11、11に伝達される。また、エンジン2の駆動力は、発電機(図示略)を回転させ、バッテリ20(図2参照)に電力を供給している。
【0016】
トルクカップリング7は、湿式多板式の電磁クラッチ機構8を備えており、同電磁クラッチ機構8は互いに摩擦係合又は離間する複数のクラッチ板(図示略)を有している。電磁クラッチ機構8に内蔵された誘導負荷回路としての電磁コイルL0(図2参照)に対して、誘導負荷回路制御手段としての駆動力配分制御装置(ECU)12が電流指令値に応じた電流を供給すると各クラッチ板は互いに摩擦係合し、後輪11にトルクの伝達が行なわれ、4WD制御になる。ECU12が電磁クラッチ機構8への電流指令値に応じた電流の供給を遮断すると、各クラッチ板は互いに離間し、後輪11におけるトルクの伝達も遮断され、前輪駆動となる(2WD制御)。
【0017】
また、各クラッチ板の摩擦係合力は電磁クラッチ機構8の電磁コイルL0へ供給する電流指令値に応じた電流の量(電流の強さ)に応じて増減し、これにより後輪11への伝達トルク、即ち後輪11への拘束力(電磁クラッチ機構8の摩擦係合力)を任意に調整可能となっている。この結果、ECU12は、4WD制御又は2WD制御のいずれかを選択すると共に、4WD制御において前後輪6、11間の駆動力配分率(トルク配分率)を制御する。
【0018】
次に、電磁コイルL0を制御するECU12の電気的構成を図2に従って説明する。
ECU12はCPU(図示略)、RAM(図示略)、ROM(図示略)及びI/Oインターフェース(図示略)等を備えたマイコン30を中心として構成されている。ROMにはECU12が実行する各種の制御プログラム、各種のデータ及び各種のマップ等が格納されている。マップは車両モデルによる実験データ及び周知の理論計算等によって予め求められたものである。RAMはROMに書き込まれた断線異常検出プログラムを始めとして制御プログラムを展開してCPUが各種の演算処理を実行するためのデータ作業領域である。
【0019】
ECU12の入力側(I/Oインターフェースの入力端子)には各車輪速センサ(図示略)及びスロットル開度センサ(図示略)及びイグニッションスイッチ(IG)22がそれぞれ接続されている。ECU12の出力側(I/Oインターフェースの出力端子)にはトルクカップリング7及びエンジン制御装置(図示略)がそれぞれ接続されている。
【0020】
尚、前記車輪速センサは各車輪6、11毎にそれぞれ設けられており、各車輪6、11の速度(以下、車輪速度という)を各別に検出する。スロットル開度センサは、スロットルバルブ(図示略)に接続されており、スロットルバルブの開度、即ち運転者のアクセルペダル(図示略)の踏込操作量を検出する。そして、ECU12のマイコン30は、前記各センサからの検出信号に基づいて、定常走行か否かを判定するとともに、通常電流指令値(Irr*)を演算する。
【0021】
また、図2に示すようにバッテリ20には、ヒューズ21、リレー31、ノイズ除去フィルタ32のコイルL、電磁コイルL0に流れる電流検出用抵抗器(R1)36、電磁コイルL0、スイッチング素子(FET)35の直列回路が接続されている。コイルLと電流検出用抵抗器36との接続点には、一方が接地されたコンデンサCの他方が接続されている。前記コンデンサCとコイルLとにより、ノイズ除去フィルタ32が構成されている。又、電磁コイルL0の負端には、フライホイールダイオード34が接続されている。そして、リレー31とコイルLとの接続点には、電圧検出器33が接続されており、電圧検出器33の出力Vinは、マイコン30のA/Dポート1に接続され、バッテリ20の出力電圧値Vbを検出可能としている。
【0022】
電源スイッチとしてのIG22は、バッテリ20の電力をマイコン30に供給する。マイコン30は、IG22がオン操作されて、電力が供給されると、各種制御プログラムの処理を行う。又、上記電流検出用抵抗器36の両端は電流検出器37に入力され、電流検出器37の出力はマイコン30のA/Dポート2に接続され、電磁コイルL0に流れる実電流値(Ir)を検出可能としている。
【0023】
又、マイコン30のPWMポートは駆動回路38と接続されている。駆動回路38は前記電流指令値に応じて電磁クラッチ機構8の電磁コイルL0へ供給する電流の量を制御すべく、PWMポートより出力されてくるPWM信号により、FET35をオンオフ制御(PWM制御)する。この結果、電磁クラッチ機構8の電磁コイルL0へ供給する電流指令値に応じた電流の量が制御されることにより、前輪側と後輪側との駆動力配分が可変制御される。
【0024】
次に、マイコン30の制御構成について、図3に基づいて説明する。同図に示すように、ECU12は、電磁コイル制御信号を出力するマイコン30と、その電磁コイル制御信号に基づいて、トルクカップリング7の駆動源である電磁コイルL0に駆動電力を供給する駆動回路38とを備えている。更に、ECU12は、電磁コイルL0を流れる実電流値Irを検出する電流検出器37を備えている。
【0025】
詳述すると、本実施形態のマイコン30は、電磁コイルL0に与えるべき通常電流指令値Irr*を演算する通常電流指令値生成部40と、電磁コイルL0を含んだ電気負荷の断線異常を検出する断線異常検出部41と、電流の切替を行なう電流切替部44を備えている。そして、電流切替部44から出力された電流指令値Ir*に基づいて、電磁コイル制御信号を出力する電磁コイル制御信号出力部45とを備えている。
【0026】
また、断線異常検出部41には、断線異常を検出するための試験電流を制御する試験電流制御部42と、断線異常を判定する断線異常判定部43を備える。そして、試験電流制御部42から電流切替部44へは、電流切替フラグFLG0と、試験電流値Ites*が出力される。また、断線異常判定部43には、電流切替部44の出力である電流指令値Ir*と電流検出器37から検出された実電流値Irが入力される。更に断線異常判定部43からは、断線異常確定信号Strが電磁コイル制御信号出力部45に出力されている。
【0027】
また、電磁コイル制御信号出力部45には、上記電流指令値Ir*とともに、電流検出器37により検出される電磁コイルL0の実電流値Irが入力される。そして、本実施形態の電磁コイル制御信号出力部45は、その電流指令値Ir*に実電流値Irを追従させるべく、電流フィードバック制御の実行により、電磁コイル制御信号を生成する。
【0028】
そして、本実施形態のECU12は、このようにして生成された電磁コイル制御信号をマイコン30が駆動回路38に出力し、同駆動回路38がその電磁コイル制御信号に基づく駆動力を電磁コイルL0に供給することにより、電磁クラッチ機構8の作動を制御し、これにより、トルクカップリング7の結合力を制御する構成となっている。
【0029】
更に詳述すると、本実施形態の断線異常の検出は、IG22がオフ後の最初のオン時一回の処理ルーチンでのみ実施する。試験電流制御部42は、電流切替部44にIG22がオフ後の最初のオン時一回の処理ルーチンであることを示す電流切替フラグFLG0と、断線異常を検出するためのトリガ信号である試験電流値Ites*を出力する。
【0030】
次に、電流切替部44は、電流切替フラグFLG0の状態を読み取り、接点50、52を接続する。すると、試験電流値Ites*は電流指令値Ir*となって電磁コイル制御信号出力部45に入力される。電磁コイル制御信号出力部45では、上記した電流フィードバック制御の実行により、電磁コイル制御信号が生成される。電磁コイル制御信号は、駆動回路38及び電流検出器37を経由して電磁コイルL0に出力され、トルクカップリング7が作動する。
【0031】
断線異常判定部43は、電流指令値Ir*と実電流値Irを入力する。そして、電流指令値Ir*から実電流値Irを減算した値が、所定の閾値以上の場合には、断線異常が発生したと判断する。一方電流指令値Ir*から実電流値Irを減算した値が、所定の閾値より小さい場合に断線異常が発生していないと判断する。断線異常検出部41は、断線異常判定部43が、断線異常が発生したと判断した場合には、その数をカウントする。
【0032】
そして、断線異常検出部41は、試験電流制御部42から試験電流値Ites*を所定時間出力し、そのうち上述した断線異常カウント値kが閾値ks以上の場合(k≧ks)には断線異常を確定し、断線異常確定処理を実行し、電流切替フラグFLG0の状態を反転させる。
【0033】
一方、断線異常が確定しなかった場合には、電流切替部44は、接点50、51を接続する。接点50、51が接続されると、通常電流指令値生成部40で生成された通常電流指令値Irr*は、電流指令値Ir*となって電磁コイル制御信号出力部45に入力される。そして、トルクカップリング7が作動され、電流指令値Ir*の大きさによって、主動輪及び従動輪に駆動力が配分させる4WD制御、又は、主動輪のみが駆動させる2WD制御が実行される。
【0034】
次に、本実施形態のバッテリ電圧が正常時と、バッテリ電圧が低電圧時の断線異常の検出方法の違いについて図4を用いて説明する。
図4の(1)は電源リレーONを、図4の(2)は試験電流値Ites*の出力のうち、(A)はバッテリ電圧が正常電圧時を、そして、(B)はバッテリ電圧が低電圧時の出力形状を表している。
【0035】
詳述すると、図4の(2)(A)のバッテリ電圧が正常電圧時の試験電流値Ites*の出力は、時間t1からt2まで、出力電流値がI1一定の形状をしている。
一方、図4の(2)(B)のバッテリ電圧が低電圧時の試験電流値Ites*の出力は、時間t1からt3までは、出力電流値がI1より大きい、出力電流値がI2であり、時間t3からt2までは、出力電流値がI1一定の形状をしている。バッテリ電圧が低電圧時の試験電流値Ites*の立ち上がり時の出力は、バッテリ電圧が正常電圧時の試験電流値Ites*の立ち上がり時の出力より、所定時間の間大きくなっている。
【0036】
次に、図4の(3)はF/B電流値Irの波形と検出タイミングを表している。
図4の(3)の(A)は、バッテリ電圧が正常電圧時のF/B電流値Irの波形であり、異常判定閾値I0と、バッテリ電圧が正常時の異常判定開始時間(Tw0)と、異常判定実施時間(Tj0)を表している。
そして、図4(3)の(B)は、バッテリ電圧が低電圧時のF/B電流値Irの波形であり、異常判定電流閾値I0と、バッテリ電圧が低電圧時の異常判定開始時間(Tw1)と、異常判定実施時間(Tj1)を表している。
【0037】
詳述すると、図4の(3)(A)で表されているように、バッテリ電圧が正常時のF/B電流値Irの波形は、立ち上がりが速く、また、逆に、立下りは遅い(曲線L1参照)。
それに対して、バッテリ電圧が低電圧時のF/B電流値Irの波形は、何も対策をしなければ、立ち上がりが遅く、また、逆に、立下りは速くなる。そのため、断線異常と誤検出される場合が生ずる。
【0038】
本実施形態では、図4の(2)(B)で示すように、バッテリ電圧が低電圧時の試験電流値Ites*の立ち上がり時の出力は、出力電流値がI1より大きい、出力電流値I2を、時間t1からt3まで出力している。その結果、図4の(3)(B)で示すように、バッテリ電圧が低電圧時でも、F/B電流値Irの波形は、バッテリ電圧が低電圧時の立ち上がり時間の遅れをなくし、立ち上がりが速くなる(曲線L2参照)ので、断線異常の誤検出を防止できる。
【0039】
尚、試験電流値Ites*は、図5のバッテリ電圧Vbと試験電流値(Ites*)の関係を表すマップ図から求めている。即ち、バッテリ電圧Vbが所定値V0より大きい場合には、試験電流値Ites*をI1(時間t1からt2まで)としている。また、バッテリ電圧Vbが所定値V0より小さい場合には、試験電流値Ites*をI2(時間t1からt3まで)および、試験電流値Ites*をI1(時間t3からt2まで)としている。
【0040】
また、異常判定開始時間は、図6のバッテリ電圧Vbと異常判定開始時間(Tw)の関係を表すマップ図から求めている。即ち、バッテリ電圧Vbが所定値V0より大きい場合には、異常判定開始時間をTw0としている。
更に、異常判定実施時間は、図7のバッテリ電圧Vbと異常判定実施時間(Tj)の関係を表すマップ図から求めている。即ち、バッテリ電圧Vbが所定値V0より大きい場合には、異常判定実施時間をTj0としている。
【0041】
また、異常判定開始時間は、バッテリ電圧Vbが所定値V0より小さい場合には、異常判定開始時間をTw1(Tw1>Tw0)としている。
更に、異常判定実施時間は、バッテリ電圧Vbが所定値V0より小さい場合には、異常判定実施時間をTj1(Tj0>Tj1)としている。
【0042】
上記のようにすることで、バッテリ電圧が低電圧時のF/B電流値Irの波形の異常判定は、異常判定閾値I0より十分大きくなった時点から開始可能となり、また、異常判定閾値I0より、まだ十分大きい時点で終了するので、誘導負荷回路に異常がないにもかかわらず、断線異常と誤検出されることがなくなる。
【0043】
次に、上記断線異常検出方法を図8〜図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
まず、マイコン30は、IG22がオンか否かを判定する(ステップS101)。そして、IG22がオフの場合(ステップS101:NO)には、IG22がオンするまでこの処理を繰り返す。そして、IG22がオンの場合(ステップS101:YES)には、ステップS102に移行し、電流切替フラグFLG0の状態をメモリより読み出す。
【0044】
次に、マイコン30は、電流切替フラグFLG0が「0」か否かを判定する(ステップS103)。そして、電流切替フラグFLG0が「0」の場合(ステップS103:YES)には、電流切替フラグFLG0を電流切替部44に出力する(ステップS104)。次に、マイコン30は、電圧検出値Vinを取り込む(ステップS105)。
【0045】
そして、マイコン30は、取り込んだ電圧検出値Vinが所定電圧値V0以下か否かを判定する(ステップS106)。そして、マイコン30は、電圧検出値Vinが所定電圧値V0以下の場合(ステップS106:YES)には、異常判定開始時間Twを設定する(Tw=Tw1、ステップS107)。次に、マイコン30は、異常判定実施時間Tjを設定する(Tj=Tj1、ステップS108)。
【0046】
そして、マイコン30は、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を読み込む(Ites*(1)=I2、t1〜t3間、ステップS109)。次に、マイコン30は、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(2)を読み込む(Ites*(2)=I1、t3〜t2間、ステップS110)。
【0047】
次に、マイコン30は、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を出力する(ステップS111)。そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr1がt3以上か否かを判定する(ステップS112)。マイコン30は、異常判定開始タイマTr1がt3未満の場合(Tr1<t3、ステップS112:NO)には、異常判定開始タイマTr1をインクリメント(Tr1=Tr1+1、ステップS113)して、ステップS112へ戻る。
【0048】
次に、マイコン30は、異常判定開始タイマTr1がt3以上の場合(Tr1≧t3、ステップS112:YES)には、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(2)を出力する(ステップS114)。そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr2の初期値として、t3を設定する(Tr2=t3、ステップS114a)。
【0049】
そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr2がTw以上か否かを判定する(ステップS115)。異常判定開始タイマTr2がTw未満の場合(Tr2<Tw、ステップS115:NO)には、異常判定開始タイマTr2をインクリメント(Tr2=Tr2+1、ステップS116)して、ステップS115へ戻る。
【0050】
そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr2が、Tw以上になっている場合(Tr2≧Tw、ステップS115:YES)には、電流指令値Ir*を取り込む(ステップS117)。
【0051】
一方、マイコン30は、電圧検出値Vinが所定電圧値V0より大きい場合(ステップS106:NO)には、異常判定開始時間Twを設定する(Tw=Tw0、ステップS118)。次に、マイコン30は、異常判定実施時間Tjを設定する(Tj=Tj0、ステップS119)。
【0052】
次に、マイコン30は、バッテリ電圧正常時の試験電流値Ites*(3)を読み込む(Ites*(3)=I1、t1〜t2間、ステップS120)。そして、マイコン30は、バッテリ電圧正常時の試験電流値Ites*(3)を出力する(ステップS120a)。
【0053】
そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr3がTw以上か否かを判定する(ステップS121)。異常判定開始タイマTr3がTw未満の場合(Tr3<Tw、ステップS121:NO)には、異常判定開始タイマTr3をインクリメント(Tr3=Tr3+1、ステップS122)して、ステップS121へ戻る。そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr3がTw以上の場合(Tr3≧Tw、ステップS121:YES)には、ステップS117へ移行する。
【0054】
次に、マイコン30は、実電流値Irを取り込む(ステップS123)。そして、マイコン30は、電流差分ΔIrを電流指令値Ir*から実電流値Irを減算して求める(ΔIr=Ir*-Ir、ステップS124)。
【0055】
次に、マイコン30は、電流差分ΔIrが電流差分閾値ΔIrs以上か否かを判定する(ステップS125)。そして、電流差分ΔIrが電流差分閾値ΔIrs以上の場合(ΔIr≧ΔIrs、ステップS125:YES)には、断線異常確定カウンタkをインクリメントする(k=k+1、ステップS126)。
【0056】
次に、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabをインクリメントする(Trab=Trab+1、ステップS127)。一方、マイコン30は、電流差分ΔIrが電流差分閾値ΔIrs未満の場合(ΔIr<ΔIrs、ステップS125:NO)には、ステップ127に移行する。
【0057】
次に、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabが異常判定実施時間Tj以上か否かを判定する(Trab≧Tj、ステップS128)。そして、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabが異常判定実施時間Tj以上の場合(Trab≧Tj、ステップS128:YES)には、ステップS129に移行する。
【0058】
そして、マイコン30は、試験電流値Ites*(2)または、試験電流値Ites*(3)の出力をオフにする(ステップS129)。更に、マイコン30は、異常判定開始タイマTr1、Tr2、Tr3をリセットする(Tr1、Tr2、Tr3=0、ステップS130)。
【0059】
次に、マイコン30は、断線異常確定カウンタkが断線異常確定カウンタ閾値ks以上か否かを判定する(k≧ks、ステップS131)。そして、マイコン30は、断線異常確定カウンタkが断線異常確定カウンタ閾値ks以上の場合(k≧ks、ステップS131:YES)には、断線異常確定処理(システム停止、異常ランプ点灯)を行なう(ステップS132)。
【0060】
次に、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabをリセットする(Trab=0、ステップS133)。そして、マイコン30は、断線異常確定カウンタkをリセットする(k=0、ステップS134)。そして、マイコン30は、電流切替フラグFLG0を「1」にセット(ステップS135)し、この処理を終わる。
【0061】
次に、マイコン30は、ステップS131において、断線異常確定カウンタkが断線異常確定カウンタ閾値ksより小さい場合(k<ks、ステップS131:NO)には、ステップS136に移行し、正常処理(制御開始)を行ない、ステップS133に移行する。
【0062】
また、マイコン30は、ステップS128において、異常判定測定タイマTrabが異常判定実施時間Tj未満の場合(Trab<Tj、ステップS128:NO)には、ステップS117に移行して、ステップS117からステップS128を繰り返す。
更に、マイコン30は、ステップS103において、電流切替フラグFLG0が「0」でない場合(ステップS103:NO)には、ステップS104からステップS135までの処理は一切行なわず、この処理を終わる。
【0063】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
マイコン30は、試験電流制御手段から出力された所定の試験電流と、電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、誘導負荷回路に異常があると判定する。そして、試験電流制御手段は、電圧検出手段で検出したバッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくする。
【0064】
上記構成によれば、バッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくしたので、実電流の立ち上がり時間が速くなる。
その結果、実電流の立ち上がり時間が遅いために、断線異常と誤検出されることがなく、正確に断線異常の発生を検出することができる。
【0065】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、試験電流値(Ites*)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、一定値I2とした(図5)。しかし、これに限らず、試験電流値(Ites*)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、バッテリ電圧Vbが低下するにつれて、漸増させてもよい(図13)。
【0066】
・本実施形態では、異常判定開始時間(Tw)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、一定値Tw1とした(図6)。しかし、これに限らず、異常判定開始時間(Tw)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、バッテリ電圧Vbが低下するにつれて、漸増させてもよい(図14)。
【0067】
・本実施形態では、異常判定実施時間(Tj)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、一定値Tj1とした(図7)。しかし、これに限らず、異常判定実施時間(Tj)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、バッテリ電圧Vbが低下するにつれて、漸減させてもよい(図15)。
【0068】
・本実施形態では、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、異常判定開始時間(Tw1)を、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を出力する時間(t1〜t3間)より長くした。しかし、これに限らず、異常判定開始時間(Tw1)と、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を出力する時間(t1〜t3間)を同じにしてもよい。
【0069】
・本実施形態では、本発明を、前輪を主駆動輪とする車両の駆動力配分装置に具体化
したが、後輪を主駆動輪とする車両の駆動力配分装置に具体化してもよい。
【0070】
・本実施形態では、本発明を、駆動力配分装置に具体化したが、他の装置、例えば電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:4輪駆動車、2:エンジン、3:トランスアクスル、4:フロントアクスル、
5:プロペラシャフト、6:前輪、7:駆動力伝達装置(トルクカップリング)、8:電磁クラッチ機構、9:リヤディファレンシャル、10:リヤアクスル、
11:後輪、12:駆動力配分制御装置(ECU)、
20:バッテリ、21:ヒューズ、22:イグニッションスイッチ(IG)、
30:マイコン、31:リレー、32:ノイズ除去フィルタ、33:電圧検出器、
34:フライホイールダイオード、35:スイッチング素子(FET等)、
36:電流検出用抵抗器(R1)、37:電流検出器、38:駆動回路、
40:通常電流指令値生成部、41:断線異常検出部、42:試験電流制御部、
43:断線異常判定部、44:電流切替部、45:電磁コイル制御信号出力部、
50、51、52:接点、L0:電磁コイル、
Irr*:通常電流指令値、Ir*:電流指令値、Ir:実電流値、
Ites*:試験電流値、I0:異常判定閾値、
I1、I2:所定出力電流値、ΔIr:電流差分、
Vin:電圧検出器出力、Vb:バッテリ電圧、V0:所定出力電圧値、
Tw0、Tw1:異常判定開始時間、Tj0、Tj1:異常判定実施時間、
Tr1、Tr2、Tr3:異常判定開始タイマ、Trab:異常判定測定タイマ、
t1、t2、t3:所定時間、
k:断線異常確定カウンタ、ks:断線異常確定カウンタ閾値、
FLG0:電流切替フラグ、Str:断線異常確定信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力配分制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
駆動力配分制御装置として、4輪駆動車の駆動力伝達装置の駆動力配分制御装置がある。前記駆動力配分制御装置は、クラッチ機構を備え、リレーをオンオフ制御することにより、同クラッチ機構を断接するための電磁コイルへの通電を制御している。
【0003】
そして、前記駆動力配分制御装置は、リレーをオン制御した状態で、スイッチング素子(FET等)のスイッチ手段をオンオフ制御することにより、前記リレーを介して電源ラインに電気的に接続された電磁コイルを励消磁可能としている。そして、前記電磁コイルの励磁により、クラッチ機構が接続され、4輪駆動のためのトルク配分がされる。
【0004】
このような駆動力配分制御装置においては、車両が停止時に、イグニッションスイッチ(IG、電源スイッチ)がオンされた時、イニシャルチェックのために前記リレー、電磁コイル、スイッチング素子及び配線等の断線異常の検出を行うようにされている。
【0005】
この断線異常の検出は、IGがオンされた初回時にのみ、試験パルス(パルス電流値)を電流指令値として与え、所定の電流値がフィードバックされているかどうかで行なっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2011−013707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記方法では、バッテリ電圧が低下したときなどには、電流の立ち上がりに時間がかかり、そのため、所定の時間内に、所定の電流値がフィードバックされず、断線異常ではないにもかかわらず、断線異常と誤検出されてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、断線異常と誤検出されずに、確実に断線異常を検出できる駆動力配分制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、駆動源から駆動力伝達系を介して、複数の車輪へそれぞれ伝達される駆動力の割合を調節するための誘導負荷回路を制御する誘導負荷回路制御手段を備えた駆動力配分制御装置(12)において、バッテリ(20)の出力電圧を検出する電圧検出手段(33)と、前記誘導負荷回路に流れる電流値を検出する電流検出手段(37)と、所定の試験電流を前記誘導負荷回路に出力制御する試験電流制御手段(30)と、前記試験電流制御手段(30)から出力された前記所定の試験電流と、前記電流検出手段(37)から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、前記誘導負荷回路に異常があると判定する異常判定手段(30)と、前記試験電流制御手段(30)は、前記電圧検出手段(33)で検出した前記バッテリ(20)の出力電圧が所定値未満の場合には、前記試験電流制御手段(30)から出力する前記所定の試験電流の大きさを、前記所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、前記所定値よりも大きくすること、を要旨とする。
【0010】
マイコン30は、試験電流制御手段から出力された所定の試験電流と、電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、誘導負荷回路に異常があると判定する。そして、試験電流制御手段は、電圧検出手段で検出したバッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくする。
【0011】
従って、上記構成によれば、バッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくしたので、実電流の立ち上がり時間が速くなる。その結果、実電流の立ち上がり時間が遅いために、断線異常と誤検出されることがなく、正確に断線異常の発生を検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、断線異常と誤検出されずに、確実に断線異常を検出できる駆動力配分制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態における4輪駆動車の概略構成図。
【図2】同じく駆動伝達装置の電気的接続を示すブロック図。
【図3】同じく駆動伝達装置の制御ブロック図。
【図4】本実施形態のバッテリ電圧正常時と低電圧時のF/B電流検出タイミングを示す説明図。
【図5】本実施形態のバッテリ電圧と試験電流値の関係を表すマップ図。
【図6】本実施形態のバッテリ電圧と異常判定開始時間の関係を表すマップ図。
【図7】本実施形態のバッテリ電圧と異常判定実施時間の関係を表すマップ図。
【図8】本実施形態の断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図9】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図10】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図11】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図12】同じく断線異常検出の処理手順を示すフローチャート図。
【図13】別実施形態のバッテリ電圧と試験電流値の関係を表すマップ図。
【図14】別実施形態のバッテリ電圧と異常判定開始時間の関係を表すマップ図。
【図15】別実施形態のバッテリ電圧と異常判定実施時間の関係を表すマップ図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を4輪駆動車の駆動力配分装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、4輪駆動車1は、内燃機関であるエンジン2及びトランスアクスル3を備えている。トランスアクスル3には、一対のフロントアクスル4、4及びプロペラシャフト5が連結されている。両フロントアクスル4、4にはそれぞれ前輪6、6が連結されている。プロペラシャフト5には駆動力伝達装置(トルクカップリング)7が連結されており、同トルクカップリング7にはドライブピニオンシャフト(図示略)を介してリヤディファレンシャル9が連結されている。リヤディファレンシャル9には一対のリヤアクスル10、10を介して両後輪11、11が連結されている。
【0015】
エンジン2の駆動力は、トランスアクスル3及び両フロントアクスル4、4を介して両前輪6、6に伝達される。また、プロペラシャフト5とドライブピニオンシャフトとがトルクカップリング7にてトルク伝達可能に連結された場合、エンジン2の駆動力は、プロペラシャフト5、ドライブピニオンシャフト、リヤディファレンシャル9及び両リヤアクスル10、10を介して両後輪11、11に伝達される。また、エンジン2の駆動力は、発電機(図示略)を回転させ、バッテリ20(図2参照)に電力を供給している。
【0016】
トルクカップリング7は、湿式多板式の電磁クラッチ機構8を備えており、同電磁クラッチ機構8は互いに摩擦係合又は離間する複数のクラッチ板(図示略)を有している。電磁クラッチ機構8に内蔵された誘導負荷回路としての電磁コイルL0(図2参照)に対して、誘導負荷回路制御手段としての駆動力配分制御装置(ECU)12が電流指令値に応じた電流を供給すると各クラッチ板は互いに摩擦係合し、後輪11にトルクの伝達が行なわれ、4WD制御になる。ECU12が電磁クラッチ機構8への電流指令値に応じた電流の供給を遮断すると、各クラッチ板は互いに離間し、後輪11におけるトルクの伝達も遮断され、前輪駆動となる(2WD制御)。
【0017】
また、各クラッチ板の摩擦係合力は電磁クラッチ機構8の電磁コイルL0へ供給する電流指令値に応じた電流の量(電流の強さ)に応じて増減し、これにより後輪11への伝達トルク、即ち後輪11への拘束力(電磁クラッチ機構8の摩擦係合力)を任意に調整可能となっている。この結果、ECU12は、4WD制御又は2WD制御のいずれかを選択すると共に、4WD制御において前後輪6、11間の駆動力配分率(トルク配分率)を制御する。
【0018】
次に、電磁コイルL0を制御するECU12の電気的構成を図2に従って説明する。
ECU12はCPU(図示略)、RAM(図示略)、ROM(図示略)及びI/Oインターフェース(図示略)等を備えたマイコン30を中心として構成されている。ROMにはECU12が実行する各種の制御プログラム、各種のデータ及び各種のマップ等が格納されている。マップは車両モデルによる実験データ及び周知の理論計算等によって予め求められたものである。RAMはROMに書き込まれた断線異常検出プログラムを始めとして制御プログラムを展開してCPUが各種の演算処理を実行するためのデータ作業領域である。
【0019】
ECU12の入力側(I/Oインターフェースの入力端子)には各車輪速センサ(図示略)及びスロットル開度センサ(図示略)及びイグニッションスイッチ(IG)22がそれぞれ接続されている。ECU12の出力側(I/Oインターフェースの出力端子)にはトルクカップリング7及びエンジン制御装置(図示略)がそれぞれ接続されている。
【0020】
尚、前記車輪速センサは各車輪6、11毎にそれぞれ設けられており、各車輪6、11の速度(以下、車輪速度という)を各別に検出する。スロットル開度センサは、スロットルバルブ(図示略)に接続されており、スロットルバルブの開度、即ち運転者のアクセルペダル(図示略)の踏込操作量を検出する。そして、ECU12のマイコン30は、前記各センサからの検出信号に基づいて、定常走行か否かを判定するとともに、通常電流指令値(Irr*)を演算する。
【0021】
また、図2に示すようにバッテリ20には、ヒューズ21、リレー31、ノイズ除去フィルタ32のコイルL、電磁コイルL0に流れる電流検出用抵抗器(R1)36、電磁コイルL0、スイッチング素子(FET)35の直列回路が接続されている。コイルLと電流検出用抵抗器36との接続点には、一方が接地されたコンデンサCの他方が接続されている。前記コンデンサCとコイルLとにより、ノイズ除去フィルタ32が構成されている。又、電磁コイルL0の負端には、フライホイールダイオード34が接続されている。そして、リレー31とコイルLとの接続点には、電圧検出器33が接続されており、電圧検出器33の出力Vinは、マイコン30のA/Dポート1に接続され、バッテリ20の出力電圧値Vbを検出可能としている。
【0022】
電源スイッチとしてのIG22は、バッテリ20の電力をマイコン30に供給する。マイコン30は、IG22がオン操作されて、電力が供給されると、各種制御プログラムの処理を行う。又、上記電流検出用抵抗器36の両端は電流検出器37に入力され、電流検出器37の出力はマイコン30のA/Dポート2に接続され、電磁コイルL0に流れる実電流値(Ir)を検出可能としている。
【0023】
又、マイコン30のPWMポートは駆動回路38と接続されている。駆動回路38は前記電流指令値に応じて電磁クラッチ機構8の電磁コイルL0へ供給する電流の量を制御すべく、PWMポートより出力されてくるPWM信号により、FET35をオンオフ制御(PWM制御)する。この結果、電磁クラッチ機構8の電磁コイルL0へ供給する電流指令値に応じた電流の量が制御されることにより、前輪側と後輪側との駆動力配分が可変制御される。
【0024】
次に、マイコン30の制御構成について、図3に基づいて説明する。同図に示すように、ECU12は、電磁コイル制御信号を出力するマイコン30と、その電磁コイル制御信号に基づいて、トルクカップリング7の駆動源である電磁コイルL0に駆動電力を供給する駆動回路38とを備えている。更に、ECU12は、電磁コイルL0を流れる実電流値Irを検出する電流検出器37を備えている。
【0025】
詳述すると、本実施形態のマイコン30は、電磁コイルL0に与えるべき通常電流指令値Irr*を演算する通常電流指令値生成部40と、電磁コイルL0を含んだ電気負荷の断線異常を検出する断線異常検出部41と、電流の切替を行なう電流切替部44を備えている。そして、電流切替部44から出力された電流指令値Ir*に基づいて、電磁コイル制御信号を出力する電磁コイル制御信号出力部45とを備えている。
【0026】
また、断線異常検出部41には、断線異常を検出するための試験電流を制御する試験電流制御部42と、断線異常を判定する断線異常判定部43を備える。そして、試験電流制御部42から電流切替部44へは、電流切替フラグFLG0と、試験電流値Ites*が出力される。また、断線異常判定部43には、電流切替部44の出力である電流指令値Ir*と電流検出器37から検出された実電流値Irが入力される。更に断線異常判定部43からは、断線異常確定信号Strが電磁コイル制御信号出力部45に出力されている。
【0027】
また、電磁コイル制御信号出力部45には、上記電流指令値Ir*とともに、電流検出器37により検出される電磁コイルL0の実電流値Irが入力される。そして、本実施形態の電磁コイル制御信号出力部45は、その電流指令値Ir*に実電流値Irを追従させるべく、電流フィードバック制御の実行により、電磁コイル制御信号を生成する。
【0028】
そして、本実施形態のECU12は、このようにして生成された電磁コイル制御信号をマイコン30が駆動回路38に出力し、同駆動回路38がその電磁コイル制御信号に基づく駆動力を電磁コイルL0に供給することにより、電磁クラッチ機構8の作動を制御し、これにより、トルクカップリング7の結合力を制御する構成となっている。
【0029】
更に詳述すると、本実施形態の断線異常の検出は、IG22がオフ後の最初のオン時一回の処理ルーチンでのみ実施する。試験電流制御部42は、電流切替部44にIG22がオフ後の最初のオン時一回の処理ルーチンであることを示す電流切替フラグFLG0と、断線異常を検出するためのトリガ信号である試験電流値Ites*を出力する。
【0030】
次に、電流切替部44は、電流切替フラグFLG0の状態を読み取り、接点50、52を接続する。すると、試験電流値Ites*は電流指令値Ir*となって電磁コイル制御信号出力部45に入力される。電磁コイル制御信号出力部45では、上記した電流フィードバック制御の実行により、電磁コイル制御信号が生成される。電磁コイル制御信号は、駆動回路38及び電流検出器37を経由して電磁コイルL0に出力され、トルクカップリング7が作動する。
【0031】
断線異常判定部43は、電流指令値Ir*と実電流値Irを入力する。そして、電流指令値Ir*から実電流値Irを減算した値が、所定の閾値以上の場合には、断線異常が発生したと判断する。一方電流指令値Ir*から実電流値Irを減算した値が、所定の閾値より小さい場合に断線異常が発生していないと判断する。断線異常検出部41は、断線異常判定部43が、断線異常が発生したと判断した場合には、その数をカウントする。
【0032】
そして、断線異常検出部41は、試験電流制御部42から試験電流値Ites*を所定時間出力し、そのうち上述した断線異常カウント値kが閾値ks以上の場合(k≧ks)には断線異常を確定し、断線異常確定処理を実行し、電流切替フラグFLG0の状態を反転させる。
【0033】
一方、断線異常が確定しなかった場合には、電流切替部44は、接点50、51を接続する。接点50、51が接続されると、通常電流指令値生成部40で生成された通常電流指令値Irr*は、電流指令値Ir*となって電磁コイル制御信号出力部45に入力される。そして、トルクカップリング7が作動され、電流指令値Ir*の大きさによって、主動輪及び従動輪に駆動力が配分させる4WD制御、又は、主動輪のみが駆動させる2WD制御が実行される。
【0034】
次に、本実施形態のバッテリ電圧が正常時と、バッテリ電圧が低電圧時の断線異常の検出方法の違いについて図4を用いて説明する。
図4の(1)は電源リレーONを、図4の(2)は試験電流値Ites*の出力のうち、(A)はバッテリ電圧が正常電圧時を、そして、(B)はバッテリ電圧が低電圧時の出力形状を表している。
【0035】
詳述すると、図4の(2)(A)のバッテリ電圧が正常電圧時の試験電流値Ites*の出力は、時間t1からt2まで、出力電流値がI1一定の形状をしている。
一方、図4の(2)(B)のバッテリ電圧が低電圧時の試験電流値Ites*の出力は、時間t1からt3までは、出力電流値がI1より大きい、出力電流値がI2であり、時間t3からt2までは、出力電流値がI1一定の形状をしている。バッテリ電圧が低電圧時の試験電流値Ites*の立ち上がり時の出力は、バッテリ電圧が正常電圧時の試験電流値Ites*の立ち上がり時の出力より、所定時間の間大きくなっている。
【0036】
次に、図4の(3)はF/B電流値Irの波形と検出タイミングを表している。
図4の(3)の(A)は、バッテリ電圧が正常電圧時のF/B電流値Irの波形であり、異常判定閾値I0と、バッテリ電圧が正常時の異常判定開始時間(Tw0)と、異常判定実施時間(Tj0)を表している。
そして、図4(3)の(B)は、バッテリ電圧が低電圧時のF/B電流値Irの波形であり、異常判定電流閾値I0と、バッテリ電圧が低電圧時の異常判定開始時間(Tw1)と、異常判定実施時間(Tj1)を表している。
【0037】
詳述すると、図4の(3)(A)で表されているように、バッテリ電圧が正常時のF/B電流値Irの波形は、立ち上がりが速く、また、逆に、立下りは遅い(曲線L1参照)。
それに対して、バッテリ電圧が低電圧時のF/B電流値Irの波形は、何も対策をしなければ、立ち上がりが遅く、また、逆に、立下りは速くなる。そのため、断線異常と誤検出される場合が生ずる。
【0038】
本実施形態では、図4の(2)(B)で示すように、バッテリ電圧が低電圧時の試験電流値Ites*の立ち上がり時の出力は、出力電流値がI1より大きい、出力電流値I2を、時間t1からt3まで出力している。その結果、図4の(3)(B)で示すように、バッテリ電圧が低電圧時でも、F/B電流値Irの波形は、バッテリ電圧が低電圧時の立ち上がり時間の遅れをなくし、立ち上がりが速くなる(曲線L2参照)ので、断線異常の誤検出を防止できる。
【0039】
尚、試験電流値Ites*は、図5のバッテリ電圧Vbと試験電流値(Ites*)の関係を表すマップ図から求めている。即ち、バッテリ電圧Vbが所定値V0より大きい場合には、試験電流値Ites*をI1(時間t1からt2まで)としている。また、バッテリ電圧Vbが所定値V0より小さい場合には、試験電流値Ites*をI2(時間t1からt3まで)および、試験電流値Ites*をI1(時間t3からt2まで)としている。
【0040】
また、異常判定開始時間は、図6のバッテリ電圧Vbと異常判定開始時間(Tw)の関係を表すマップ図から求めている。即ち、バッテリ電圧Vbが所定値V0より大きい場合には、異常判定開始時間をTw0としている。
更に、異常判定実施時間は、図7のバッテリ電圧Vbと異常判定実施時間(Tj)の関係を表すマップ図から求めている。即ち、バッテリ電圧Vbが所定値V0より大きい場合には、異常判定実施時間をTj0としている。
【0041】
また、異常判定開始時間は、バッテリ電圧Vbが所定値V0より小さい場合には、異常判定開始時間をTw1(Tw1>Tw0)としている。
更に、異常判定実施時間は、バッテリ電圧Vbが所定値V0より小さい場合には、異常判定実施時間をTj1(Tj0>Tj1)としている。
【0042】
上記のようにすることで、バッテリ電圧が低電圧時のF/B電流値Irの波形の異常判定は、異常判定閾値I0より十分大きくなった時点から開始可能となり、また、異常判定閾値I0より、まだ十分大きい時点で終了するので、誘導負荷回路に異常がないにもかかわらず、断線異常と誤検出されることがなくなる。
【0043】
次に、上記断線異常検出方法を図8〜図12のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
まず、マイコン30は、IG22がオンか否かを判定する(ステップS101)。そして、IG22がオフの場合(ステップS101:NO)には、IG22がオンするまでこの処理を繰り返す。そして、IG22がオンの場合(ステップS101:YES)には、ステップS102に移行し、電流切替フラグFLG0の状態をメモリより読み出す。
【0044】
次に、マイコン30は、電流切替フラグFLG0が「0」か否かを判定する(ステップS103)。そして、電流切替フラグFLG0が「0」の場合(ステップS103:YES)には、電流切替フラグFLG0を電流切替部44に出力する(ステップS104)。次に、マイコン30は、電圧検出値Vinを取り込む(ステップS105)。
【0045】
そして、マイコン30は、取り込んだ電圧検出値Vinが所定電圧値V0以下か否かを判定する(ステップS106)。そして、マイコン30は、電圧検出値Vinが所定電圧値V0以下の場合(ステップS106:YES)には、異常判定開始時間Twを設定する(Tw=Tw1、ステップS107)。次に、マイコン30は、異常判定実施時間Tjを設定する(Tj=Tj1、ステップS108)。
【0046】
そして、マイコン30は、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を読み込む(Ites*(1)=I2、t1〜t3間、ステップS109)。次に、マイコン30は、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(2)を読み込む(Ites*(2)=I1、t3〜t2間、ステップS110)。
【0047】
次に、マイコン30は、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を出力する(ステップS111)。そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr1がt3以上か否かを判定する(ステップS112)。マイコン30は、異常判定開始タイマTr1がt3未満の場合(Tr1<t3、ステップS112:NO)には、異常判定開始タイマTr1をインクリメント(Tr1=Tr1+1、ステップS113)して、ステップS112へ戻る。
【0048】
次に、マイコン30は、異常判定開始タイマTr1がt3以上の場合(Tr1≧t3、ステップS112:YES)には、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(2)を出力する(ステップS114)。そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr2の初期値として、t3を設定する(Tr2=t3、ステップS114a)。
【0049】
そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr2がTw以上か否かを判定する(ステップS115)。異常判定開始タイマTr2がTw未満の場合(Tr2<Tw、ステップS115:NO)には、異常判定開始タイマTr2をインクリメント(Tr2=Tr2+1、ステップS116)して、ステップS115へ戻る。
【0050】
そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr2が、Tw以上になっている場合(Tr2≧Tw、ステップS115:YES)には、電流指令値Ir*を取り込む(ステップS117)。
【0051】
一方、マイコン30は、電圧検出値Vinが所定電圧値V0より大きい場合(ステップS106:NO)には、異常判定開始時間Twを設定する(Tw=Tw0、ステップS118)。次に、マイコン30は、異常判定実施時間Tjを設定する(Tj=Tj0、ステップS119)。
【0052】
次に、マイコン30は、バッテリ電圧正常時の試験電流値Ites*(3)を読み込む(Ites*(3)=I1、t1〜t2間、ステップS120)。そして、マイコン30は、バッテリ電圧正常時の試験電流値Ites*(3)を出力する(ステップS120a)。
【0053】
そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr3がTw以上か否かを判定する(ステップS121)。異常判定開始タイマTr3がTw未満の場合(Tr3<Tw、ステップS121:NO)には、異常判定開始タイマTr3をインクリメント(Tr3=Tr3+1、ステップS122)して、ステップS121へ戻る。そして、マイコン30は、異常判定開始タイマTr3がTw以上の場合(Tr3≧Tw、ステップS121:YES)には、ステップS117へ移行する。
【0054】
次に、マイコン30は、実電流値Irを取り込む(ステップS123)。そして、マイコン30は、電流差分ΔIrを電流指令値Ir*から実電流値Irを減算して求める(ΔIr=Ir*-Ir、ステップS124)。
【0055】
次に、マイコン30は、電流差分ΔIrが電流差分閾値ΔIrs以上か否かを判定する(ステップS125)。そして、電流差分ΔIrが電流差分閾値ΔIrs以上の場合(ΔIr≧ΔIrs、ステップS125:YES)には、断線異常確定カウンタkをインクリメントする(k=k+1、ステップS126)。
【0056】
次に、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabをインクリメントする(Trab=Trab+1、ステップS127)。一方、マイコン30は、電流差分ΔIrが電流差分閾値ΔIrs未満の場合(ΔIr<ΔIrs、ステップS125:NO)には、ステップ127に移行する。
【0057】
次に、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabが異常判定実施時間Tj以上か否かを判定する(Trab≧Tj、ステップS128)。そして、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabが異常判定実施時間Tj以上の場合(Trab≧Tj、ステップS128:YES)には、ステップS129に移行する。
【0058】
そして、マイコン30は、試験電流値Ites*(2)または、試験電流値Ites*(3)の出力をオフにする(ステップS129)。更に、マイコン30は、異常判定開始タイマTr1、Tr2、Tr3をリセットする(Tr1、Tr2、Tr3=0、ステップS130)。
【0059】
次に、マイコン30は、断線異常確定カウンタkが断線異常確定カウンタ閾値ks以上か否かを判定する(k≧ks、ステップS131)。そして、マイコン30は、断線異常確定カウンタkが断線異常確定カウンタ閾値ks以上の場合(k≧ks、ステップS131:YES)には、断線異常確定処理(システム停止、異常ランプ点灯)を行なう(ステップS132)。
【0060】
次に、マイコン30は、異常判定測定タイマTrabをリセットする(Trab=0、ステップS133)。そして、マイコン30は、断線異常確定カウンタkをリセットする(k=0、ステップS134)。そして、マイコン30は、電流切替フラグFLG0を「1」にセット(ステップS135)し、この処理を終わる。
【0061】
次に、マイコン30は、ステップS131において、断線異常確定カウンタkが断線異常確定カウンタ閾値ksより小さい場合(k<ks、ステップS131:NO)には、ステップS136に移行し、正常処理(制御開始)を行ない、ステップS133に移行する。
【0062】
また、マイコン30は、ステップS128において、異常判定測定タイマTrabが異常判定実施時間Tj未満の場合(Trab<Tj、ステップS128:NO)には、ステップS117に移行して、ステップS117からステップS128を繰り返す。
更に、マイコン30は、ステップS103において、電流切替フラグFLG0が「0」でない場合(ステップS103:NO)には、ステップS104からステップS135までの処理は一切行なわず、この処理を終わる。
【0063】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
マイコン30は、試験電流制御手段から出力された所定の試験電流と、電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、誘導負荷回路に異常があると判定する。そして、試験電流制御手段は、電圧検出手段で検出したバッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくする。
【0064】
上記構成によれば、バッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、試験電流制御手段から出力する所定の試験電流の大きさを、所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、所定値よりも大きくしたので、実電流の立ち上がり時間が速くなる。
その結果、実電流の立ち上がり時間が遅いために、断線異常と誤検出されることがなく、正確に断線異常の発生を検出することができる。
【0065】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、試験電流値(Ites*)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、一定値I2とした(図5)。しかし、これに限らず、試験電流値(Ites*)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、バッテリ電圧Vbが低下するにつれて、漸増させてもよい(図13)。
【0066】
・本実施形態では、異常判定開始時間(Tw)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、一定値Tw1とした(図6)。しかし、これに限らず、異常判定開始時間(Tw)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、バッテリ電圧Vbが低下するにつれて、漸増させてもよい(図14)。
【0067】
・本実施形態では、異常判定実施時間(Tj)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、一定値Tj1とした(図7)。しかし、これに限らず、異常判定実施時間(Tj)を、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、バッテリ電圧Vbが低下するにつれて、漸減させてもよい(図15)。
【0068】
・本実施形態では、バッテリ電圧Vbが所定電圧値V0以下の場合には、異常判定開始時間(Tw1)を、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を出力する時間(t1〜t3間)より長くした。しかし、これに限らず、異常判定開始時間(Tw1)と、バッテリ電圧低電圧時の試験電流値Ites*(1)を出力する時間(t1〜t3間)を同じにしてもよい。
【0069】
・本実施形態では、本発明を、前輪を主駆動輪とする車両の駆動力配分装置に具体化
したが、後輪を主駆動輪とする車両の駆動力配分装置に具体化してもよい。
【0070】
・本実施形態では、本発明を、駆動力配分装置に具体化したが、他の装置、例えば電動パワーステアリング装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1:4輪駆動車、2:エンジン、3:トランスアクスル、4:フロントアクスル、
5:プロペラシャフト、6:前輪、7:駆動力伝達装置(トルクカップリング)、8:電磁クラッチ機構、9:リヤディファレンシャル、10:リヤアクスル、
11:後輪、12:駆動力配分制御装置(ECU)、
20:バッテリ、21:ヒューズ、22:イグニッションスイッチ(IG)、
30:マイコン、31:リレー、32:ノイズ除去フィルタ、33:電圧検出器、
34:フライホイールダイオード、35:スイッチング素子(FET等)、
36:電流検出用抵抗器(R1)、37:電流検出器、38:駆動回路、
40:通常電流指令値生成部、41:断線異常検出部、42:試験電流制御部、
43:断線異常判定部、44:電流切替部、45:電磁コイル制御信号出力部、
50、51、52:接点、L0:電磁コイル、
Irr*:通常電流指令値、Ir*:電流指令値、Ir:実電流値、
Ites*:試験電流値、I0:異常判定閾値、
I1、I2:所定出力電流値、ΔIr:電流差分、
Vin:電圧検出器出力、Vb:バッテリ電圧、V0:所定出力電圧値、
Tw0、Tw1:異常判定開始時間、Tj0、Tj1:異常判定実施時間、
Tr1、Tr2、Tr3:異常判定開始タイマ、Trab:異常判定測定タイマ、
t1、t2、t3:所定時間、
k:断線異常確定カウンタ、ks:断線異常確定カウンタ閾値、
FLG0:電流切替フラグ、Str:断線異常確定信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源から駆動力伝達系を介して、複数の車輪へそれぞれ伝達される駆動力の割合を調節するための誘導負荷回路を制御する誘導負荷回路制御手段を備えた駆動力配分制御装置において、
バッテリの出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記誘導負荷回路に流れる電流値を検出する電流検出手段と、
所定の試験電流を前記誘導負荷回路に出力制御する試験電流制御手段と、
前記試験電流制御手段から出力された前記所定の試験電流と、前記電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、前記誘導負荷回路に異常があると判定する異常判定手段と、
前記試験電流制御手段は、前記電圧検出手段で検出した前記バッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、前記試験電流制御手段から出力する前記所定の試験電流の大きさを、前記所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、前記所定値よりも大きくすること、
を特徴とする駆動力配分制御装置。
【請求項1】
駆動源から駆動力伝達系を介して、複数の車輪へそれぞれ伝達される駆動力の割合を調節するための誘導負荷回路を制御する誘導負荷回路制御手段を備えた駆動力配分制御装置において、
バッテリの出力電圧を検出する電圧検出手段と、
前記誘導負荷回路に流れる電流値を検出する電流検出手段と、
所定の試験電流を前記誘導負荷回路に出力制御する試験電流制御手段と、
前記試験電流制御手段から出力された前記所定の試験電流と、前記電流検出手段から検出された電流値の差が、所定値以上の場合には、前記誘導負荷回路に異常があると判定する異常判定手段と、
前記試験電流制御手段は、前記電圧検出手段で検出した前記バッテリの出力電圧が所定値未満の場合には、前記試験電流制御手段から出力する前記所定の試験電流の大きさを、前記所定の試験電流の立ち上がりから所定時間経過後までは、前記所定値よりも大きくすること、
を特徴とする駆動力配分制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−53933(P2013−53933A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192450(P2011−192450)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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