説明

β−ケトエステル基含オルガノポリシロキサン化合物

【課題】
揮発性成分が少なく、各種処理剤の成分として使用してもアルコール発生量が少ないβ−ケトエステル構造を有する有機ケイ素化合物として新規なオルガノポリシロキサン化合物を提供する。
【解決手段】平均組成式:
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2
(式中、Yは少なくとも一部がエノール化していてもよいβ-ケトエステル基を有する有機基、Rはメルカプト基、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の官能基を含んでもよい一価炭化水素基であり、Rは官能基を含まない一価炭化水素基、R3は一価炭化水素基、a,b,c,d,及びeは、それぞれ、0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1で示される数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。)
で表されるオルガノポリシロキサン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子内にβ−ケトエステル構造を有する新規なオルガノポリシロキサン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分子内にβ−ケトエステル構造を有し、更にアルコキシシリル基を分子内に含む有機ケイ素化合物は、例えば、特許文献1等で知られている。これらの化合物は、金属イオン補足剤、無機材料の表面処理剤、無機材料と有機材料とからなる複合材料の界面結合剤、無機材料の分散剤、有機系接着剤の無機基材への接着改良剤、プライマー組成物などの成分として有用であるとされている。
【0003】
しかし、従来知られているβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物は、揮発性が高く、接着改良剤として樹脂に添加した場合などに、揮発して効果を充分発揮しないことがあった。また、これを含む上記の各種処理剤で無機基材を処理する際にアルコールが発生するが、アルコール発生量の低減化が求められていた。
【0004】
【特許文献1】特公昭63−250390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、揮発性成分が少なく、各種処理剤の成分として使用してもアルコール発生量が少ない新規なβ−ケトエステル構造を有する有機ケイ素化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、そのような有機ケイ素化合物として、下記平均組成式(1)で表される、β−ケトエステル基含有有機基とヒドロカルビルオキシ基とを一分子内に含有するオルガノポリシロキサン化合物が上記の課題を解決することを見出した。
【0007】
下記平均組成式(1)で表される、β−ケトエステル基含有有機基とヒドロカルビルオキシ基とを一分子内に含有するオルガノポリシロキサン化合物。
【0008】
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2
・・・(1)
(式中、
Yは少なくとも一部がエノール化していてもよいβ−ケトエステル基を含有する有機基であり、
はメルカプト基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アルケニル基、アミノ基、ハロゲン原子、及び、エノール化したβ−ケトエステル基が分子内又は分子間で式ORで表されるヒドロカルビルオキシ基と反応して生成する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「特定官能基」という)を含み又は含まない炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
は官能基を含まず、かつ、Rとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
3は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基であり、
a,b,c,d,及びeは、それぞれ、0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1で示される数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。)
【0009】
また、本発明は、(a)下記一般式(2)で表される少なくとも一種のβ−ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせを単独で部分加水分解及び重縮合することを含む上記オルガノポリシロキサン化合物の製造方法(製造方法1)を提供するものである。
【0010】
YR2Si(OR33−m ・・・(2)
(式中、Y、R及びR3はそれぞれ上述した通りであり、mは0〜2の整数を示す。)
【0011】
さらに、本発明は、(a)上記一般式(2)で表される少なくとも一種のβ−ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせと、
(b)下記一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、下記一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを、部分共加水分解及び重縮合することを含む上記オルガノポリシロキサン化合物の製造方法(製造方法2)を提供するものである。
12nSi(OR33-n (3)
2pSi(OR34-p (4)
(式中、Y、R、R及びR3はそれぞれ上記の通りであり、mは0〜2の整数、nは0〜2の整数、pは0〜3の整数を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明のオルガノポリシロキサン化合物は、モノマー性のβ−ケトエステル構造含有有機ケイ素化合物と比較して使用時の揮発性成分が少なく、アルコール発生量も少ない。
【0013】
本発明のオルガノポリシロキサン化合物はβ−ケトエステル基を有するために、金属イオン捕捉性を有したり、有機樹脂と化学結合しないで水素結合的な結合をして密着性を改善できるという作用、特性を発揮することができる。
【0014】
該オルガノポリシロキサン化合物は、分子内にβ−ケトエステル基以外の官能基を併せ持つ場合には、該官能基の種類を選択することにより所要の機能を持たせた多機能性オルガノポリシロキサン化合物となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
<β−ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物>
本発明のオルガノポリシロキサン化合物は、上述したように平均組成式(1):
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2 (1)
で表される。該オルガノポリシロキサン化合物は、反応性基としてβ−ケトエステル基とヒドロカルビルオキシ基を一分子内に含有する化合物である。β−ケトエステル基はその少なくとも一部がエノール化(即ち、互変異性化してエノール体を形成)していてもよいが、以下の説明では単に「β−ケトエステル基」とも称する。
【0016】
上記式(1)において、Yはβ−ケトエステル基含有有機基を示し、例えば、一般式:
−Q−Z
(式中、Zはβ−ケトエステル基であり、Qは2価の炭化水素基である。)
で表される。
【0017】
ここで、Zとしては、式:
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有し若しくは有しないフェニル基を示し、特にメチル基が好ましい)
で表されるβ−ケトエステル基が好ましい。Rで表されるアルキル基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6、さらには1〜4のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、メチル基が特に好ましい。
【0020】
で表される置換フェニル基としては、塩素、臭素等のハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基等で置換されたフェニル基が挙げられる。
【0021】
Qの2価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜6のものが好ましく、特に、アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基が好ましく、特にプロピレン基が好ましい。
【0022】
は、炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8の炭化水素基であり、場合によっては少なくとも1種の前記特定官能基で置換されていてもよい。炭素原子数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。特にプロピル基が好ましい。本発明のオルガノポリシロキサン化合物にβ−ケトエステル基含有有機基(Y)の特性のみが期待される場合には特定官能基は含まれていなくてもよい。しかし、β−ケトエステル基含有有機基の特性に加え更に他の特性を付与させる場合には、前記特定官能基を分子内に含ませることができる。特定官能基は、該オルガノポリシロキサンに付与させたい特性に応じて選択される。特にメルカプト基及び/又はエポキシ基を含んでいることが好ましい。
【0023】
上記において、「エノール化したβ−ケトエステル基が該オルガノポリシロキサン化合物の分子内又は分子間でヒドロカルビルオキシ基と反応して生成する基」は、分子内又は分子間での交換反応により形成された架橋構造を意味している。
【0024】
は官能基を含まず、かつ、Rとは異なる炭素原子数1〜18、好ましくは1〜8の一価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。特にメチル基が好ましい。
【0025】
は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基が挙げられる。この中で、特にメチル基、エチル基が好ましい。
【0026】
a,b,c,d,及びeはそれぞれ0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1の数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。
【0027】
ここで、aは該オルガノポリシロキサン化合物において、ケイ素原子数に対するβ−ケトエステル基含有有機基(Y)数の比を表す数値である。このaが0.01より小さいと、本オルガノポリシロキサン化合物の使用時に、所望のβ−ケトエステル基含有有機基の反応性による特性が発揮されない。一方、aを1より大きくすることは合成法上やコスト面から困難である。そのためaは0.01≦a≦1の範囲とすることが必要であり、好ましくは0.1≦a≦1の範囲、より好ましくは0.1≦a≦0.8の範囲である。
【0028】
また、bは、該オルガノポリシロキサン化合物において、ケイ素原子数に対する特定官能基を含んでいてもよい炭素原子数1〜18の一価炭化水素基(R)数の比を表す数値であり、これが0あるいは比較的小さい場合は相対的にアルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基(OR)の含有量が増加して加水分解反応やシリル化反応が起こり易くなるし、場合によってはオルガノポリシロキサンの水に対する親和性が向上する。
【0029】
一方、このbが比較的大きい場合には、Rが前記特定官能基を有するときは、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等の有機系樹脂との反応性が向上するし、また該特定官能基を有しないときには、該一価炭化水素基(R)の種類によっては、該オルガノポリシロキサン化合物に疎水性が付与され(Rが例えばアルキル基である場合)、また、該オルガノポリシロキサン化合物の有機化合物や有機系樹脂との親和性ないしは相溶性が向上する(Rが例えばフェニル基である場合)などの効果が発揮される。しかし、この場合、相対的にアルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基の含有量が減少するため、ヒドロカルビルオキシシリル基等の反応性は低下する。従って、bの値は該オルガノポリシロキサンの使用目的に応じて0≦b<1の範囲内で選択する必要であり、好ましくは0≦b≦0.8の範囲、より好ましくは0≦b≦0.5の範囲である。
【0030】
cは、該オルガノポリシロキサン化合物において、ケイ素原子数に対する、官能基を含まずかつRとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基(R2)数の比を表す数値である。cが0あるいは比較的小さい場合は相対的にアルコキシ基等のヒドロカルビルオキシ基(OR)の含有量が増加して加水分解反応やシリル化反応が起こり易くなり、場合によっては該オルガノポリシロキサン化合物の水に対する親和性が向上する。一方、このcが比較的大きい場合、該オルガノポリシロキサン化合物に疎水性が付与されたり、該オルガノポリシロキサン化合物の硬化物に柔軟性や離型性が付与されるなどの効果が得られる。しかし、この場合には、相対的にヒドロカルビルオキシ基の含有量が減少するときには、ヒドロカルビルオキシシリル基等の反応性は低下する。従って、cの数値は、使用目的に応じて0≦c<2の範囲内で選択することが必要であり、好ましくは0≦c≦1の範囲、より好ましくは0≦c≦0.8の範囲である。
【0031】
dは、該オルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子数に対するヒドロカルビルオキシ基(OR)数の比を表す数値であり、使用目的に応じて適切に設定することができる。その範囲は0≦d≦2であって、この数値が0又は0に近い場合には、該オルガノポリシロキサンの無機材料に対する反応性が低くなり、2に近ければ逆に無機材料への反応性を高くなる。好ましくは、0≦d≦1.8の範囲である。
【0032】
eは、該オルガノポリシロキサンにおいて、ケイ素原子数に対する水酸基(OH)数の比、換言するとシラノール基の含有率を表す数値である。このシラノール基はシリル化反応や縮合反応にあずかることができ、該オルガノポリシロキサン化合物に親水性を付与する作用を有する。しかし、該オルガノポリシロキサン化合物の保存安定性を良好に保つという観点からはできるだけ少なくすることが好ましい。従って、0≦e≦1の範囲とすることが必要であり、好ましくは0≦e≦0.5の範囲、より好ましくは0≦e≦0.2の範囲である。
【0033】
a+b+c+d+eの合計は、上記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物の縮合度を表す〔4−(a+b+c+d+e)〕/2を決定する数値であり、2≦a+b+c+d+e≦3の範囲とすることが必要である。
【0034】
また、該オルガノポリシロキサン化合物の個々の分子の重合度は、2〜数100の範囲とすることができる。即ち、ケイ素原子2個のダイマーからケイ素原子数百個程度のポリマーまであり得る。しかし、平均重合度が2の場合は該オルガノポリシロキサン化合物中のモノマー含有量が多くなって、シリコーンヒドロカルビルオキシオリゴマー本来の使用目的(即ち、低揮発性)が損なわれる。一方、平均重合度が大きすぎると該オルガノポリシロキサン化合物は高粘度状態、ペースト状、又は固体状となって取り扱いが困難となる。そのため、平均重合度を3〜100の範囲とすることが好ましく、さらには3〜50の範囲、特には6〜20とすることがより好ましい。この様な観点から、上記した(a+b+c+d+e)の数値は、好ましくは2.02≦a+b+c+d+e≦2.67の範囲、より好ましくは2.04≦a+b+c+d+e≦2.67の範囲である。
【0035】
本発明のオルガノポリシロキサン化合物の分子構造は直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、これらが組み合わさった構造を持っていてもよい。該オルガノポリシロキサン化合物は通常単一構造ではなく、種々の構造を有する分子の混合物である。
【0036】
<製造方法>
本発明のオルガノポリシロキサン化合物は従来公知の各種の方法によって得ることができる。代表的な製造方法として上述した製造方法1及び製造方法2を挙げられ、以下詳しく説明する。
【0037】
−製造方法1−
該方法は、(a)下記一般式(2)で表される少なくとも一種のβ−ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせを単独で部分加水分解及び重縮合する方法である。
【0038】
−製造方法2−
この方法は、(a)下記一般式(2)で表される少なくとも一種のβ−ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせと、
(b)下記一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、下記一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを、部分共加水分解及び重縮合する方法である。
【0039】
YR2Si(OR33−m ・・・(2)
12nSi(OR33−n ・・・(3)
2pSi(OR34−p ・・・(4)
(式中、Y、R、R、R3はそれぞれ上記と同様な意味を有し、mは0〜2の整数、nは0〜2の整数、pは0〜3の整数を示す。)
【0040】
式(2)で表される化合物としては以下のものが例示される。
【0041】
【化2】

【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
【化6】

【0046】
【化7】

【0047】
【化8】

【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
一般式(3)で表される化合物について説明する。Rは特定官能基を有し又は有しない炭素原子数1〜18の炭化水素基である。
【0051】
特定官能基を有しない炭素原子数1〜18の炭化水素基の例は上述した通りである。特定官能基を有する炭素原子数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メルカプトメチル基、3−メルカプトプロピル基、6−メルカプトヘキシル基、10−メルカプトデシル基、4−(メルカプトメチル)フェニルエチル基、グリシドキシメチル基、3−グリシドキシプロピル基、5,6−エポキシヘキシル基、9,10−エポキシデシル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、2−(3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル)プロピル基、アクリロイルオキシメチル基、3−アクリロイルオキシプロピル基、6−アクリロイルオキシヘキシル基、10−アクリロイルオキシデシル基、メタクリロイルオキシメチル基、3−メタクリロイルオキシプロピル基、6−メタクリロイルオキシヘキシル基、10−メタクリロイルオキシデシル基、ビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、9−デセニル基、3−ビニルオキシプロピル基、p−スチリル基、シクロヘキセニルエチル基、クロロメチル基、3−クロロプロピル基、6−クロロヘキシル基、10−クロロデシル基、ブロモメチル基、3−ブロモプロピル基、トリフロロプロピル基、ヘプタデカフロロデシル基、アミノメチル基、3−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、N−メチル−3−アミノプロピル基、N,N−ジメチル−3−アミノプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル基、N−(6−アミノヘキシル)−3−アミノプロピル基、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピル基などが挙げられる。
【0052】
一般式(3)で表され、特定官能基を有するアルコキシシランの例としては、上に例示した特定官能基を有する炭素原子数1−8の炭化水素基を有する、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、エチルジメトキシシラン、エチルジエトキシシラン、プロピルジメトキシシラン、プロピルジエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エトキシジメトキシシラン、メトキシジエトキシシランなどが挙げられる。
【0053】
より具体的には、3−メルカプトプロピルトリメトシシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトシシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、クロロプロピルトリメトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、トリフロロプロピルトリメトキシシラン、ヘプタデカフロロデシルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトシシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、クロロプロピルメチルジメトキシシラン、クロロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフロロプロピルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフロロデシルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、3−メルカプトプロピルトリメトシシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが好ましい。
【0055】
一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシ基含有シランを例示する。具体的には、一般式(4)においてp=0であるヒドロカルビルオキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシランなどが挙げられる。一般式(4)においてp=であるヒドロカルビルオキシシランとして、Rとしてメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェニルエチル基などを有するトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、トリブトキシシラン、トリイソブトキシシランなどが挙げられる。具体的には、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどである。一般式(4)においてp=2のヒドロカルビルオキシシランとして、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0056】
上述した一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン等が好ましい。
【0057】
一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン及び一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシランは、おのおの、その部分加水分解物としても用いることができ、部分加水分解物との混合物として用いてもよい。また、これらの化合物は相互に縮合した縮合物としても用いてもよい。さらに、一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン及びその部分加水分解物、ならびに、一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン及び部分加水分解物は、おのおの、一種単独でも複数種の組み合わせとしても使用することができる。
【0058】
製造方法1においては、(a)成分である、一般式(2)で表される少なくとも一種のヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はそれらの組み合わせを加水分解及び縮合に供する。
【0059】
製造方法2において、(a)成分である、一般式(2)で表される少なくとも一種のヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はそれらの組み合わせと、(b)成分である一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを部分共加水分解及び重縮合に供する。
【0060】
製造方法2において、(a)成分と(b)成分との比率は特に限定されない。しかし、β−ケトエステル基含有有機ケイ素化合物である(a)成分の比率が少なすぎると、得られる本発明のβ−ケトエステル基含有オルガノポリシロキサン化合物においてβ−ケトエステル基由来の特性が発揮され難いので、一分子中に少なくとも一個のβ−ケトエステル基を有するものとする必要がある。したがって、(a)成分と、(b)成分との割合は、ケイ素原子換算でモル比が1:99〜99:1の範囲とすることが好ましく、更には10:90〜80:20の範囲とすることがより好ましい。(a)成分及び(b)成分の配合順序、混合方法、ならびに、部分共加水分解及び重縮合を行う方法は特に限定されない。
【0061】
製造方法1及び製造方法2のいずれの方法でも、通常、従来公知の方法に基づき、例えば、(a)成分単独、或いは(a)成分と(b)成分との混合物に、加水分解・縮合反応触媒の存在下、水を加えて部分(共)加水分解及び重縮合反応を行えばよい。この際、必要に応じて適当な有機溶媒を使用することも可能である。
【0062】
使用される加水分解・縮合反応触媒としては、従来公知の種々のものを使用することができる。具体例としては、酢酸、トリフロロ酢酸、酪酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などの有機酸類、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸などの無機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、トリエチルアミンなどの塩基性化合物類;フッ化カリウム、フッ化アンモニウムなどの含フッ素化合物類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ジオクチル錫ジラウレート、アルミニウムキレート類などの有機金属化合物類などを挙げることができる。上記触媒は一種単独で使用してもよく、複数種を併用してもよい。触媒の使用量は、原料全体の中に存在するSi原子に対して0.0001〜10モル%の範囲とすることが好ましく、更には0.001〜3モル%の範囲とすることがより好ましい。
【0063】
前述の通り、本発明のオルガノポリシロキサン化合物の製造においては、部分加水分解及び重縮合に使用する水の量によって平均重合度が決まる。水を過剰に添加するとその分のヒドロカルビルオキシ基が加水分解される結果、分岐構造の多いレジン体となって、目的とするヒドロカルビルオキシ基を含有するシリコーンオリゴマ−が得られなくなるため、加水分解水量は厳密に決定する必要がある。例えば、使用するヒドロカルビルオキシシラン原料が全てケイ素原子1個のモノマーである場合、平均重合度Zのオルガノポリシロキサン化合物を調製するためには、Zモルのヒドロカルビルオキシシラン原料に対して(Z−1)モルの水を使用して部分加水分解、重縮合を行うことが好ましい。
【0064】
この際、必要に応じてアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類などの有機溶媒を使用してもよい。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などを挙げることができる。また、上記溶媒と共に、ヘキサン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒を併用してもよい。特に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を使用することが好ましい。
【0065】
有機溶媒の使用量は、原料となるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物及びそれらの縮合物の合計100質量部に対して、一般に0〜1000質量部の範囲とすればよい。加水分解開始時の反応系の均一性と、添加効果及びポットイールドを考慮すると、10〜500質量部の範囲とすることが好ましく、更に、15〜200質量部の範囲とすることがより好ましい。
【0066】
部分(共)加水分解、重縮合反応における実際の操作としては、ヒドロカルビルオキシシラン原料、触媒及び有機溶媒からなる混合系に所定量の水あるいは水/有機溶媒の混合溶液を滴下するか、ヒドロカルビルオキシシラン原料及び有機溶媒からなる混合系に所定量の水/触媒の混合溶液あるいは水/触媒/有機溶媒の混合溶液を滴下することが好ましい。この際、加水分解反応性の高いメトキシ基やエトキシ基を有するヒドロカルビルオキシシラン原料と、加水分解反応性の低いプロポキシ基やブトキシ基等の炭素原子数3〜4のアルコキシ基を有するヒドロカルビルオキシシラン原料とを予め別々に部分加水分解した後、両成分を混合して、場合によって更に部分共加水分解を行ってから、重縮合反応を行うことも可能である。
【0067】
各反応は0〜150℃の温度範囲で実施すればよい。一般的には、室温より低い温度では反応の進行が遅くなるため実用的でなく、また高温すぎる場合もβ−ケトエステル基がエノール化した異性化基が他の分子のヒドロカルビルオキシ基と反応し、架橋反応が生じ増粘したり、ゲル状物となったり、エポキシ基、メルカプト基等の熱分解やアクリロイルオキシ基の熱重合など、特定官能基への悪影響が発生するため、20〜130℃の温度範囲とすることが好ましい。反応後、使用した触媒の中和、吸着、濾過等による除去操作や、使用した有機溶媒と副生したアルコール、低沸点物の留去などによる精製工程を行い、目的とする本発明のオルガノポリシロキサン化合物を得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、実施例は本発明の例示を意図するものに過ぎない。本発明は以下の実施例によって限定されることものではない。
【0069】
以下の合成例で得られたオルガノポリシロキサン化合物の分析は下記の方法で実施した。
(1)オルガノポリシロキサン化合物の平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により、ポリスチレン標準サンプルから作成した検量線を基準として求めた重量平均分子量より算出した。
(2)オルガノポリシロキサン化合物の構造解析は、赤外線吸収スペクトル(IR)分析及びプロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)分析により行った。
【0070】
[実施例1]
〔平均組成式(1)においてa=1、b=0、c=0、そしてd=1.33の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、式:
【0071】
【化11】

【0072】
で表されるアセトアセテート官能性トリメトキシシラン316.8g(1.2mol)及びメタノール32g(1.0mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を攪拌しながら、0.05N塩酸水溶液18g(1.0mol)とメタノール48g(1.5mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
【0073】
次いで、フッ化カリウムの1質量%メタノール溶液11.2g(KF:1.92×10−3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、常圧下内温120℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:255g、収率:94%)。
【0074】
このオルガノポリシロキサン化合物の25℃における粘度は158mm2/sであり、比重は1.200であり、屈折率は、1.4461であった。このものに核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、ならびに、メトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とメトキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、7366であった。
【0075】
[実施例2]
〔平均組成式(1)においてa=0.5、b=0、c=0.5、そしてd=1.33の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、式:
【0076】
【化12】

【0077】
のアセトアセテート官能性エトキシシラン306g(1.0mol)、メチルトリエトキシシラン178g(1.0mol)及びエタノール45g(1mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を攪拌しながら、0.05N塩酸水溶液30g(1.667mol)とエタノール45g(1mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
【0078】
次いで、フッ化カリウムの1質量%エタノール溶液11.2g(KF:1.92×10−3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、常圧下内温120℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:342g、収率:94%)。
【0079】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、エトキシ基、ならびにメチル基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とアルコキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、6727であった。
【0080】
[実施例3]
〔平均組成式(1)においてa=0.5、b=0、c=0、そしてd=1.83の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、式:
【0081】
【化13】

【0082】
のアセトアセテート官能性エトキシシラン306g(1.0mol)、テトラエトキシシラン208g(1.0mol)及びエタノール45g(1.0mol)を仕込み、内温20〜30℃でフラスコ内を攪拌しながら、0.05N塩酸水溶液30g(1.667mol)とエタノール45g(1.0mol)との混合溶液を30分間かけて滴下し、更に昇温して還流下で2時間熟成を行った。
【0083】
次いで、フッ化カリウムの1質量%エタノール溶液11.2g(KF:1.92×10−3mol)を添加し、更に還流下で2時間熟成して部分共加水分解、重縮合反応させた。続けて、常圧下内温120℃まで昇温しながらアルコール成分を留去した後、濾過を行って無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:342g、収率:94%)。
【0084】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、ならびにエトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とアルコキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、9803であった。
【0085】
[実施例4]
〔平均組成式(1)においてa=0.833、b=0.167、c=0、そしてd=1.33の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
実施例1において用いたアセトアセテート官能性トリメトキシシランを量316.8g(1.2mol)を264.0g(1.0mol)に変更したこと、原料モノマーとして該アセトアセテート官能性トリメトキシシランの他にγ−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン47.2g(0.2mol)を加えたこと以外は、実施例1と同様にして無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:248g、収率:93.5%)。
【0086】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、グリシジル基ならびにメトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とメトキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、10211であった。
【0087】
[実施例5]
〔平均組成式(1)においてa=1.0、b=0、c=0.2、そしてd=1.0の構造を有するオルガノポリシロキサン化合物の合成〕
実施例1において用いたアセトアセテート官能性トリメトキシシランの量316.8g(1.2mol)を264.0g(1.0mol)に変更し、原料モノマーとして該アセトアセテート官能性トリメトキシシランの他に式:
【0088】
【化14】

【0089】
で表されるアセトアセテート官能性メチルジメトキシシラン62.0g(0.25mol)を加えたこと、0.05N塩酸水溶液の量を20.25g(1.125g)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、無色透明液状のオルガノポリシロキサン化合物を得た(収量:259g、収率:94.4%)。
【0090】
このものの核磁気共鳴スペクトル分析を行ったところ、β−ケトエステル基及びそのエノール異性化基含有有機基、ならびに、メチル基及びメトキシ基の存在が確認されるとともに、エノール異性化基とメトキシ基が交換反応し、架橋構造を形成していることが確認された。
このものの重量平均分子量は、8211であった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明のオルガノポリシロキサン化合物は、金属イオン補足剤、無機材料の表面処理剤、無機材料と有機材料とからなる複合材料の界面結合剤、無機材料の分散剤、有機系接着剤の無機基材への接着改良剤、プライマー組成物などの成分として有用である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記平均組成式(1)で表される、β-ケトエステル基含有有機基とヒドロカルビオキシ基とを一分子内に含有するオルガノポリシロキサン化合物。
Si(OR3(OH)e(4−a−b−c−d−e)/2
・・・(1)
(式中、
Yは少なくとも一部がエノール化していてもよいβ-ケトエステル基を含有する有機基であり、
はメルカプト基、エポキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アルケニル基、アミノ基、ハロゲン原子、及び、エノール化したβ−ケトエステル基が分子内又は分子間で式ORで表されるヒドロカルビルオキシ基と反応して生成する基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を含み又は含まない炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
は官能基を含まず、かつ、Rとは異なる炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であり、
3は炭素原子数1〜4の一価炭化水素基であり、
a,b,c,d,及びeは、それぞれ、0.01≦a≦1、0≦b<1、0≦c≦2、0≦d≦2、及び0≦e≦1で示される数であって、かつ2≦a+b+c+d+e≦3を満たす。)
【請求項2】
前記平均組成式(1)におけるYが、式:
【化1】

(式中、Rは、炭素原子数1〜10のアルキル基、又は置換基を有し若しくは有しないフェニル基を示す。)
で表され、その少なくとも一部がエノール化していてもよいβ−ケトエステル基含有有機基であることを特徴とする請求項1に係るオルガノポリシロキサン化合物。
【請求項3】
前記平均組成式(1)において、Rがメルカプト基、エポキシ基又はこれらの両方を含む炭素原子数1〜18の一価炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に係るオルガノポリシロキサン化合物。
【請求項4】
下記一般式(2)で表される少なくとも一種のヒドロカルビルオキシシランを部分加水分解及び重縮合させて得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に係るオルガノポリシロキサン化合物。
YR2Si(OR33-m ・・・(2)
(式中、Y、R及びR3はそれぞれ請求項1において定義の通りであり、mは0〜2の整数を示す。)
【請求項5】
下記一般式(2)で表される少なくとも一種のヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、又はそれらの組み合わせと、
下記一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、下記一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを、
部分共加水分解及び重縮合させて得られたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に係るオルガノポリシロキサン化合物。
YR2Si(OR33-m (2)
12nSi(OR33-n (3)
2pSi(OR34-p (4)
(式中、Y、R、R及びR3はそれぞれ請求項1において定義の通りであり、mは0〜2の整数、nは0〜2の整数、pは0〜3の整数を示す。)
【請求項6】
前記一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシランが、3−メルカプトプロピルトリメトシシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、
前記一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシランが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリイソブトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、及びテトライソブトキシシランからなる群から選ばれる少なくとも一種である、
ことを特徴とする、請求項5に係るオルガノポリシロキサン化合物。
【請求項7】
平均重合度が3〜100であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に係るオルガノポリシロキサン化合物。
【請求項8】
請求項1に係る平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物の製造方法であって、
(a)請求項4に記載の一般式(2)で表される少なくとも一種のβ-ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせを単独で部分加水分解及び重縮合することを含む上記オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1に係る平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン化合物の製造方法であって、
(a)請求項4に記載の一般式(2)で表される少なくとも一種のβ-ケトエステル基含有ヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物又はこれらの組み合わせと、
(b)請求項5に記載の一般式(3)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、請求項5に記載の一般式(4)で表されるヒドロカルビルオキシシラン、その部分加水分解物、及びこれらの少なくとも1種の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを、部分共加水分解及び重縮合することを含む上記オルガノポリシロキサン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−143840(P2010−143840A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321067(P2008−321067)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】