説明

はんだ接合方法、半導体装置及びその製造方法

【課題】SnBi系はんだを用いてはんだ接合する際の接合信頼性を向上することができるはんだ接合方法とその接合方法を利用した半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の導電部材11と第2の導電部材14を、Sn及びBiを含有するはんだを用いて接合する方法において、第1の導電部材11と第2の導電部材14の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるXと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるYの合金で形成し、第1の導電部材11と第2の導電部材14を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する。はんだ中のBiをX−Y合金中に拡散させることによりBi偏析を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ接合方法と、これを利用した半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の電子部品を回路基板上にフリップチップ実装する場合、半導体チップのバンプ電極を回路基板上の電極に接合して、電気的な接続をとる。バンプ電極の金属材料や、接合用のペースト材料として、はんだが使用される場合が多い。はんだペーストを介して、あるいは直接はんだバンプを回路基板上の電極に位置合わせし、リフロー処理で、回路基板側の電極に融着する。
【0003】
電子部品の適正な動作のためには、回路基板とチップとの接合の信頼性が重要である。これに加えて、近年では、環境保護の観点から、有害物質の排除、消費電力・CO2排出量の低減、処理工程の低温化の要請も高まっている。そのため、はんだに低融点材料であるビスマス(Bi)を加えて、電子部品に対する熱ストレスを低減しようとする取り組みが行われている。
【0004】
はんだ材料にBiを用いることで、処理温度を下げることができる、濡れ性が向上するなどの効果が得られる。しかし、Bi量が多くなると、Biの偏析によるリフトオフ、Biの脆弱さによる接合信頼性の低下といった問題が生じる。
【0005】
図1は上述した従来技術の問題点を説明するための図である。図1(A)の加熱前の状態において、回路基板(不図示)のCu電極101上に、SnBi粉末103を含むはんだペースト102が印刷されている。このCu電極101に対して、図示しないチップ側のバンプ電極を位置合わせし、図1(B)でリフロー加熱する。加熱処理により、SnBi粉末103が溶融してSn−Bi層105が形成される。これとともに、Cu電極101の界面にCu−Sn層106が形成される。リフロー時間が長くなると、図1(C)に示すように、電極界面のCu−Sn層106上にBiが偏析し、脆弱なBi層107が形成される。バンプ接合部に衝撃や応力が加わると、Bi層107に容易にクラック108が走り、耐衝撃性が低下し、誤動作の原因となる。
【0006】
そこで、Biの偏析を防止する方法が提案されている。たとえば、はんだ合金に対するBiの重量比を21重量%以下にする方法や(たとえば、特許文献1参照)、Biを含有するPbフリーはんだを用いて固相線温度付近まで急冷し、そこからさらにゆっくりと冷却する方法が知られている(たとえば、特許文献2参照)。前者の方法は、はんだ合金に対するBi重量比を21重量%以下にすることで、高温放置の状態でSnに固溶するBiの割合を向上させ、固体状態のBiの割合を低減する。これにより、はんだ接合部全体としての伸びを増大させて、はんだ接合部にかかる熱応力を緩和するものである。後者の方法は、実装時のリフトオフ、クラック発生、Bi偏析の低減を目的とする。
【0007】
しかし、前者の方法では、Bi析出が防止しきれず、Biの脆さの影響により、はんだ接合構造の耐熱疲労強度を充分に確保することができないという問題がある。特に高温環境下ではBi組織が粗大化するため、はんだ接合部に応力がかかると、SnとBi組織との界面ですべりが生じ、クラックが生じやすくなる。後者の方法では、Bi量をコントロールしたとしても、はんだ中のSnと配線電極(Cu等)との間で合金層(たとえばCu6Sn5)が形成され、合金層上にBiが層状に析出してしまうため、耐衝撃性を充分に確保することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−130697号公報
【特許文献2】特開平11−354919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、SnとBiを含有するはんだ材料を用いた場合において、半導体チップ等の電子部品と回路基板との接続信頼性を向上することができるはんだ接合方法と、そのような接合方法を利用した半導体装置及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、ひとつの側面では、半導体チップと、前記半導体チップを搭載する回路基板と、前記半導体チップと前記回路基板を電気的に接続する接続電極とを有する半導体装置を提供する。この半導体装置は、
前記接続電極はSnとBiの合金であり、前記接続電極と接合される前記回路基板の外部電極と、前記接続電極と接合される前記半導体チップの外部電極の少なくとも一方が、Bi、X、Yで構成される共晶組成の合金であり、
前記Xは、Cu、Ni、Snからなる金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であり、
前記Yは、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素である。
【0011】
別の側面では、第1の導電部材と第2の導電部材を、Sn及びBiを含有するはんだを用いて接合する方法を提供する。この方法は、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるXと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるYとの合金で形成し、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する。
【0012】
また別の側面では、半導体チップをSn及びBiを含有するはんだを用いて回路基板に実装する半導体装置の製造方法を提供する。この方法は、
前記回路基板上の第1電極と、前記第1電極と接合されることになる前記半導体チップの第2電極の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属Xと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属Yとの合金で形成し、
前記第1電極と前記第2電極を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する。
【発明の効果】
【0013】
上述したはんだ接合方法により、はんだ接合の信頼性が向上する。また、このようなはんだ接合を用いて製造された半導体装置の動作の信頼性、歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】従来のSnBi系はんだ接合の問題点を説明するための図である。
【図2】実施形態におけるSnBi系はんだ接合の原理を説明するための図である。
【図3】SnBiはんだペーストを用いる接合例であり、加熱前の状態を示す図である。
【図4】SnBiはんだペーストを用いる接合例であり、加熱後の状態を示す図である。
【図5】実施例及び比較例の接続抵抗変化率の分布を示す図である。
【図6】SnBiはんだバンプを用いる接合例であり、加熱前の状態を示す図である。
【図7】SnBiはんだバンプを用いる接合例であり、加熱後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、実施形態におけるSnBi系はんだ接合の原理を説明するための図である。第1の導電部材11と、第2の導電部材14を、SnBi粉末13を含有するはんだペースト12で接合する場合を説明する。
【0016】
第1の導電部材11は、たとえば図示しない回路基板上に設けられた外部電極である。この第1の導電部材11上にはんだペースト12を塗布し、その上に第2の導電部材14を位置合わせする。第2の導電部材14は、たとえば半導体チップなどの電子部品に設けられた電極端子である。
【0017】
SnBi系はんだ材料(図2の例では、はんだペースト12)と直接接触する第1の導電部材11と第2の導電部材14の少なくとも一方は、X−Yで表記される合金で形成される。金属Xは、Cu、Ni、Snからなるグループから選択される少なくとも1つの金属元素である。金属Yは、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなるグループから選択される少なくとも1つの金属元素である。第1の金属元素グループに含まれる元素は、はんだペースト12中のSnと反応して合金を形成する金属である。第2の金属元素グループに含まれる金属は、はんだペースト12中のBiと反応して、X−Y合金中にBiを取り込み(拡散させ)、共晶を構成することのできる金属材料である。
【0018】
図2(A)の例では、第1の導電部材11をX−Y合金、たとえばCu−Ag合金で構成し、第2の導電部材14を任意の金属材料、たとえばSnBi合金で構成する。第1のX−Y合金の例としては、2元系合金として、Cu−18Ag、Cu−2.3Al、Cu−10Znなどが挙げられる。3元系X−Y合金として、97Cu−1Zn−2Niがあり、4元系X−Y合金として、85Cu−5Sn−4Zn−1Ni、87Cu−6Sn−6Zn−1Ni、60Cu−1Sn−38Zn−1Ni、97.7Cu−1.3Sn−0.3Zn−0.7Niなどが挙げられる。
【0019】
図2(A)のように、第1の導電部材11と第2の導電部材14を、SnBi系はんだペースト12を介して位置合わせし、図2(B)のように、加熱処理する。加熱処理温度は、SnBi系はんだペーストの共晶温度(約138℃)以上であって、BiがX−Y合金母材中に拡散する温度、すなわち金属Yと反応する温度である。X−Yの組成にもよるが、一例として、138℃〜200℃の範囲とする。あるいは、第1の加熱温度(はんだペーストの共晶温度以上である138℃〜200℃)ではんだを溶融させた後、第2の加熱温度80℃〜135℃で、BiをX−Y合金母材中に拡散(すなわち金属Yと反応)させるプロセスを取ってもよい。加熱処理は、たとえば、はんだペースト12を介して位置合わせがされた第1の導電部材11と第2の導電部材14の全体を、N2リフロー炉に入れて加熱する。加熱により、第2の導電部材14とはんだペースト12が溶融してSn−Bi合金の接続電極15が形成されるとともに、第1の導電部材11の界面にCu−Sn界面層16が形成される。
【0020】
SnBi系はんだペースト12では、加熱により、まずSnが拡散する。拡散したSnは、母材であるX−Y合金の金属Xと反応して、第1の導電部材11の界面に、Sn−Xで表記される合金の界面層(図2の例ではCu−Sn界面層)16を形成する。この時点で、第1の導電部材11と第2導電部材14とは、融着される状態となっている。
【0021】
図2(C)に示すように、さらに加熱を続けると、はんだ中のBiが、X−Y合金中の金属Yの影響を受けて、Cu−Sn界面層16の粒界を通って、第1の導電部材11の表面に到達する。Biは金属Yとの反応によってX−Y合金中に取り込まれ、拡散する。取り込まれたBiは、X、Yと共融混合物を構成し、冷却されたときに共晶組成となるX−Y−Bi合金19を形成する。図2の例では、BiがCu−Ag合金のAgと反応してCu−Ag合金中に取り込まれ、共晶組成のCu−Ag−Bi合金19が形成される。
【0022】
このように、はんだペースト12中のBiを、Cu−Sn界面層16の粒界からX−Y合金中に拡散させることにより、Cu−Sn界面層16上にBiが偏析するのを防止することができる。結果として、はんだ接合部の耐衝撃性が向上する。なお、X−Y−Bi合金中のBiの量は、5wt%以下であることが望ましい。5wt%を超えると接合強度が低下するおそれがあるからである。さらに望ましくは、Bi量は、0.5wt%≦Bi≦5wt%である。X−Y−Bi合金中のBi量が0.5wt%より少ないと、SnCu界面層16上にBiが偏析するおそれがあるからである。これにより、信頼性の高いはんだ接合を実現することができる。
【実施例1】
【0023】
図3及び図4は、図2の手法を半導体装置の製造に適用した実施例1の構成を示す。実施例1では、はんだバンプ35を有する半導体チップ30を、SnBi系はんだペースト24を介してプリント回路基板20上の電極21に接続する。はんだペースト24は、Sn−58Bi系のはんだペーストであり、はんだ粒径25〜45μmのはんだ粒子が90wt%以上を占めている。フラックス含有率は9.5wt%である。
【0024】
このはんだペースト24を、スクリーン印刷により、プリント回路基板20上の電極21に塗布する。より詳しくは、外部接続用の電極21は、プリント配線板22の図示しない多層配線に電気的に接続されている。プリント配線板22の表面は、電極21を除いてソルダーレジスト23で被覆されている。電極21に対応する位置に開口を有するマスク(不図示)を用いて、スキージによりハンダペースト24を印刷する。
【0025】
一方、半導体チップ30は、半導体基板32上に素子、配線等と絶縁膜とが交互に積層された積層部33を有する。半導体基板32側からみた積層部の最上層に、回路基板との接続を取るための電極21が形成され、電極21上にシード層36を介してSnBiはんだバンプ35が形成されている。SiBiはんだバンプ35は、たとえば電極21を露出するようにパッシベーション膜34を設け、Cuシード層36を形成した後に電界メッキ等によりSnBi層を形成し、不要な部分のSnBi層及びCuシード層を除去してリフローすることにより形成される。
【0026】
実施例1で用いた半導体チップ30は、サイズが8.5×8.5mm、周辺に約120個のSn−58Biはんだバンプ35を配置したものである。一方、プリント回路基板20は、40×40mmのFR−4基板であり、半導体チップ30のはんだバンプ35と対応する位置にCu−15Ag電極21を配置したものである。半導体チップ30を、SnBiバンプ電極がプリント回路基板20と向き合うようにチップマウンターで保持し、印刷されたはんだペースト24上に搭載した後、N2リフロー炉に搬送する。
【0027】
図4は、リフロー加熱後のはんだ接合構造を有する半導体装置1の概略構成図である。はんだ接合のためのN2リフローのプリヒート条件は、温度100〜120℃を90〜120秒とした。ピーク条件は、170℃を50〜60秒とした。冷却速度は2〜3℃/sとした。リフロー処理により、はんだペースト24とはんだバンプ35は溶融し、冷却後にSn−58Bi合金の接続電極45を構成する。はんだペースト24に含まれるSnは、プリント回路基板20のCu−Ag電極21のCu(第1金属元素グループから選択された金属元素)と合金を形成し、Cu−Ag電極21上にCu−Sn界面層36を形成する。一方、はんだペースト24に含まれるBiの一部は、Cu−Sn界面層36の粒界を通って、Cu−Ag電極21を構成するCu−Ag合金中に拡散させる。その結果、プリント回路基板20上の電極21は、冷却されたときに共晶組成のCu−Ag−Bi合金電極29となる。SnBi接続電極45、Cu−Sn界面層36、共晶組成のCu−Ag−Bi合金電極29で、はんだ接合構造2を構成する。この構成では、Biが粒界を通ってCu−Ag合金中に拡散するので、Cu−Sn界面層36上に析出することが防止される。
【0028】
このようにして形成した半導体装置1を用いて、基板32側の引き出し配線(不図示)を用いて、はんだ接合構造2の導通試験を行った。試験の結果、全てのはんだ接合構造において導通していることが確認できた。さらに、落下高さ1.6m、基板歪み量4000μεを1サイクルとし、これを50サイクル繰り返す落下衝撃試験を行った。
【0029】
図5は、実施例1、後述する実施例2、比較例1、比較例2の落下衝撃試験の結果を示す図である。各例において、50サイクルにわたる接続抵抗変化(%)の分布を示している。図5に示すように、実施例1では、50サイクル終了後でも、半導体装置1の接続抵抗変化率は+3%に抑えられている。また、はんだ接合部の断面SEM/EPMA解析を行った結果、いずれのはんだ接合部のCu−Sn界面層36上にもBiの偏析は認められず、Cu−15Ag電極内部に微細なBiが分散析出していることを確認した。
【実施例2】
【0030】
実施例1のプリント回路基板20に形成する電極21を、Cu−15Ag電極に代えて、Cu−10Zn電極とした。実施例1と同様の条件で半導体装置を作製し、導通測定および落下衝撃試験を実施した。その結果、図5に示すように、落下衝撃50サイクル後の接続抵抗値は+4%であった。このように、実施例1、実施例2を通して、本発明の構成による半導体装置1では、50サイクル後の接続抵抗変化率を+5%以下に抑制できることがわかった。また、実施例2の構成ではんだ接合部の断面SEM/EPMA解析を行った結果、いずれのはんだ接合部のCu−Sn界面層36上にもBiの偏析は認められず、Cu−10Zn電極内部に微細なBiが分散析出していることが確認された。
【0031】
[比較例1]
実施例1のプリント回路基板20上の電極21を、Cu−15Ag電極に代えて、Cu電極を用いて半導体装置を作製し、実施例1と同様にして導通測定及び落下衝撃試験を実施した。その結果、3サイクル後にすでに接続抵抗値の上昇が見られ、図5に示すように、50サイクル終了後の接続抵抗変化率が+30%と実施例1の10倍にもなることがわかった。また、はんだ接合部の断面SEM/EPMA解析を行った結果、いずれのはんだ接合部のCu−Sn界面層上にBiが層状に偏析しており、同箇所にてクラックが発生していることが確認された。
【0032】
[比較例2]
実施例1のプリント回路基板20の電極21として、Cu−15Ag電極でなく、Au/Ni電極(Ni電極上にAuめっきをしたもの)を用いて実施例1と同様の条件で半導体装置を作製し、実施例1と同様にして導通測定及び落下衝撃試験を実施した。その結果、落下衝撃試験5サイクル後にすでに接続抵抗値の上昇が見られ、図5に示すように、50サイクル終了後の接続抵抗変化率(%)は、実施例1の12倍、実施例2の9倍にもなることがわかった。また、はんだ接合部の断面SEM/EPMA解析を行った結果、いずれのはんだ接合部のAu−Sn界面層上にBiが層状に偏析しており、同箇所にてクラックが発生していることが確認された。
【0033】
[変形例]
図6及び図7は、実施例1の変形例を示す図である。実施例1では、SnBi系はんだペースト24を介して、半導体チップ30のはんだバンプ35をプリント回路基板20の電極21に接合した。変形例では、はんだペーストを用いずに、半導体チップ60のはんだバンプ65を直接、回路基板50上の電極51に接続する。この場合、半導体チップ60の接続電極(パッド電極またはアンダーバンプメタル)31が第2の導電部材となり、はんだバンプ65によって、第1の導電部材である回路基板側の電極50に接続される。変形例では、柱状のはんだバンプ65としているが、この例に限られず、実施例1と同様にボール状のはんだバンプであってもよい。
【0034】
実施例1と同様に、半導体チップ60は、半導体基板62と、素子、配線等と絶縁膜とが交互に積層された積層部63とを有する。積層部63の半導体基板62からみた最上層に外部接続用の電極31が形成され、電極31を除く積層部63の表面はパッシベーション膜64で保護されている。電極31上にCuシード層36を介してSnBi柱状バンプ65が形成されている。
【0035】
プリント回路基板50は、プリント配線板52の最上層に形成された外部接続用のCu−Ag電極51を有する。プリント配線板52の表面は、電極51を除いて、たとえばエポキシ樹脂等の絶縁層53で被覆されている。半導体チップ60のSnBiはんだバンプ65を、プリント回路基板50の電極51上に直接位置合わせして配置する。この状態でリフロー炉に搬送し、加熱処理する。
【0036】
図7に示すように、加熱処理により、SnBiはんだバンプ65が溶融して、プリント回路基板50の電極59上に融着される。このとき、SnBiはんだバンプに含まれるSnと、プリント回路基板50の電極51を構成するCu−Ag合金の第1金属元素であるCuとが、電極界面にCu−Sn界面層66を形成する。また、SnBiはんだバンプに含まれるBiが、Cu−Sn界面層66の粒界を通って電極51のCu−Ag合金中に拡散し、冷却されたときに共晶組成のCu−Ag−Bi合金電極59を構成する。溶融、冷却後のSnBi接続電極(バンプ電極)67、Cu−Sn界面層66、共晶組成のCu−Ag−Bi合金電極59で、はんだ接合構造75を構成する。はんだ接合構造75では、Cu−Sn界面層66上のBi偏析が抑制され、接合信頼性の向上が実現される。
【0037】
以上の説明に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
半導体チップと、前記半導体チップを搭載する回路基板と、前記半導体チップと前記回路基板を電気的に接続する接続電極とを有する半導体装置において、
前記接続電極はSnとBiの合金であり、
前記接続電極と接合される前記回路基板の第1電極と、前記接続電極と接合される前記半導体チップの第2電極の少なくとも一方が、Bi、X、Yで構成される共晶組成の合金で構成され、
前記Xは、Cu、Ni、Snからなる金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であり、
前記Yは、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であることを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記Bi、X、Yで構成される合金のBi量は5wt%以下であることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記Bi、X、Yで構成される共晶組成の合金の界面に存在する界面層をさらに含み、前記界面層は、前記はんだ中のSnと前記Xとの合金層であることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
(付記4)
第1の導電部材と第2の導電部材を、Sn及びBiを含有するはんだを用いて接合する方法において、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるXと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるYとの合金で形成し、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する
ことを特徴とするはんだ接合方法。
(付記5)
前記加熱は、前記はんだ中のBiを前記X、Yの合金中に拡散させる工程を含むことを特徴とする付記4に記載のはんだ接合方法。
(付記6)
半導体チップをSn及びBiを含有するはんだを用いて回路基板に実装する半導体装置の製造方法であって、
前記回路基板上の第1電極と、前記第1電極と接合されることになる前記半導体チップの第2電極の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属Xと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属Yとの合金で形成し、
前記第1電極と前記第2電極を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記加熱は、前記はんだ中のBiを、前記XとYの合金中に拡散させる工程を含むことを特徴とする付記6に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記はんだは、SnとBiを含有するはんだペーストであり、前記はんだペーストを前記回路基板の第1電極上に配置する工程をさらに含むことを特徴とする付記7に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記はんだは、前記半導体チップに設けられたはんだバンプであり、前記はんだバンプを前記回路基板の第1電極上に位置合わせして、前記加熱することにより、前記はんだバンプ中のBiを前記第1電極中に拡散させることを特徴とする付記7に記載の半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0038】
液体の液質の調整が求められるシステム、たとえばコンピュータ水冷システム、自動販売機の冷却システム等に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 半導体装置
2、75 はんだ接合構造
11、21,51 第1導電部材(第1電極)
12、24 はんだペースト
13 SnBi粉末
14、35、61 第2導電部材(第2電極)
16、36、66 界面層(Sn−X合金)
19、29、59 共晶組成のBi−X−Y合金電極
20、50 回路基板
30、60 半導体チップ
35、65 はんだバンプ
45、67 Sn−Bi合金(接続電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、前記半導体チップを搭載する回路基板と、前記半導体チップと前記回路基板を電気的に接続する接続電極とを有する半導体装置において、
前記接続電極はSnとBiの合金であり、
前記接続電極と接合される前記回路基板の第1電極と、前記接続電極と接合される前記半導体チップの第2電極の少なくとも一方が、Bi、X、Yで構成される共晶組成の合金で構成され、
前記Xは、Cu、Ni、Snからなる金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であり、
前記Yは、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記Bi、X、Yで構成される合金のBi量は5wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記Bi、X、Yで構成される共晶組成の合金の界面に存在する界面層をさらに含み、前記界面層は、前記はんだ中のSnと前記Xとの合金層であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
第1の導電部材と第2の導電部材を、Sn及びBiを含有するはんだを用いて接合する方法において、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるXと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属元素であるYとの合金で形成し、
前記第1の導電部材と前記第2の導電部材を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する
ことを特徴とするはんだ接合方法。
【請求項5】
前記加熱は、前記はんだ中のBiを前記X、Yの合金中に拡散させる工程を含むことを特徴とする請求項4に記載のはんだ接合方法。
【請求項6】
半導体チップをSn及びBiを含有するはんだを用いて回路基板に実装する半導体装置の製造方法であって、
前記回路基板上の第1電極と、前記第1電極と接合されることになる前記半導体チップの第2電極の少なくとも一方を、Cu、Ni、Snからなる第1金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属Xと、Ag、Au、Mg、Rh、Zn、Sb、Co、Li、Alからなる第2金属元素グループから選択される少なくとも1つの金属Yとの合金で形成し、
前記第1電極と前記第2電極を、前記はんだを介して位置合わせして加熱処理する、
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216813(P2011−216813A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85937(P2010−85937)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】