説明

めっき処理方法

【課題】 樹脂製材料からなる遊技機の使用部品に対して、磨かれた調度品のような表面仕上げを施すことができるめっき処理方法を提供する。
【解決手段】
樹脂製材料からなる遊技機の使用部品9をめっきするめっき処理方法は、以下の工程を具備する。即ち、先ず、使用部品9に対して行われる前処理工程S1と、この前処理後の使用部品9に対して複数層の異なる色のめっきが重ねて施される工程S2、S3とを備える。そして、使用部品9の表面を研磨又は研削することにより、その下側のめっき層の一部を現出させ(工程S4)、前記研磨又は研削後の使用部品9に対し、コーティング層を形成する(工程S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製材料からなる遊技機の使用部品に対するめっき処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂製材料の部品には、外観意匠性の向上などを目的としてめっきが施されているものが少なくない。この種のめっき処理においては、使用中誤って前記部品のめっき表面に傷をつけたとしても該めっきの剥離を防止することができるように、複数層のめっきが重ねて施されるとともに、そのめっき層の厚みが所定厚さに設定されたものが供されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−332591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のめっき処理により得られた樹脂製材料の部品の表面は、均一な金属の外観を呈するが、変化に乏しく、例えば古調な色合い等の外観を得ることができなかった。
殊に、前記樹脂製材料の部品が遊技機に使用される場合、この使用部品は、興趣を添えるため或いは高級感を与えるための装飾体としての意義をも有する為、種々の外観(表面の色調、材質感など)を備えたものが要求されており、従来のめっき処理によって、その要求を満たすことは困難であった。
【0004】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂製材料からなる遊技機の使用部品に対して、磨かれた調度品のような表面仕上げを施すことができるめっき処理方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、樹脂製材料からなる遊技機の使用部品をめっきするめっき処理方法であって、前記使用部品に対して行われる前処理工程と、この前処理後の前記使用部品に対して複数層の異なる色のめっきが重ねて施される工程と、前記使用部品の表面を研磨又は研削することにより、その下側のめっき層の一部を現出させる工程と、前記研磨又は研削後の前記使用部品に対し、コーティング層を形成する工程とを備えたところに特徴を有する。
【0006】
この方法によれば、前記使用部品には、この表面を研磨又は研削することにより微小な研磨すじ或いは研削すじが形成されるとともに、異なる色の下側のめっき層の一部が現出するため、磨かれた調度品のような表面仕上げを施すことができる。
また、遊技機は、種々形態の発光部を備えて構成されているのが一般である。他方、遊技機に設けられる前記使用部品の表面には、前述した磨かれた調度品のような表面仕上げが形成されている為、この表面仕上げと前記発光部とが相俟って、光の拡散を利用した高級感のある金属光沢を前記使用部品に付与することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のめっき処理方法において、前記複数層のめっきは銅または銅合金のめっき層と、ニッケルまたはニッケル合金のめっき層とを有するところに特徴を有する。
【0008】
この方法によれば、銅または銅合金めっきの層とニッケルまたはニッケル合金のめっき層とは、互いに密着性が高く、且つニッケルまたはニッケル合金は、銅または銅合金より硬度が高く、硬度の面で補完する関係にあるので、好適な複数層のめっきを得ることができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載のめっき処理方法において、前記複数層のめっきは黒ニッケルのめっき層と、その下側に施された銅のめっき層とを有するところに特徴を有する。
この方法によれば、前記研磨又は研削によって、黒色めっき層の下側から銅めっき層の一部が現出するので、古調な色合いの銅の外観を得ることができる。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1記載のめっき処理方法において、前記前処理は、エッチングにより前記使用部品の表面を微細凹凸状に形成し、その微細凹部中に触媒金属を析出させることを特徴とし、これによれば、樹脂製材料からなる使用部品に対する触媒金属の付着性を向上させることができる。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1記載のめっき処理方法において、前記研磨は、バフ研磨であって前記使用部品の表面の一部乃至全体に亘り行われることを特徴とし、これによれば、前記使用部品に対して磨かれたような表面仕上げを施すことができるので、遊技機の使用部品の意匠性を高めることができる。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1記載のめっき処理方法において、前記コーティング層は、UV塗装により形成されていることを特徴とし、これによれば、UV塗装により形成されたコーティング層は無色透明であるため、前記使用部品の外観を損なうことなく耐久性及び光沢を付与することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明のめっき処理方法によれば、樹脂製材料からなる遊技機の使用部品に対して、磨かれた調度品のような表面仕上げを施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をパチンコ機に適用した一実施例について図1、図2及び図3を参照しながら説明する。図1は本発明に係るめっき処理方法の工程図、図2(a)は前記めっき処理後の使用部品の正面図、(b)はその斜視図、図3はパチンコ機の遊技盤を示す正面図である。
【0015】
図3に示すように、遊技機たるパチンコ機1の遊技盤2には作動口3及び大入賞口4が設けられており、遊技盤2は遊技領域を構成している。作動口3は、遊技球(図示せず)の通路を備えており、その通路入口には羽根5が開閉可能に支持されている。前記大入賞口4の前にはシャッタ6が設けられている。このシャッタ6は、図示しないソレノイドにより作動させられて大入賞口4を開閉するように構成されている。
【0016】
遊技盤2の中央部分(作動口3の上方)には、可変表示装置としての特別図柄表示装置(以下、単に表示装置7と称す)が組み込まれている。この表示装置7では、図柄変動が遊技球の作動口3への入賞に基づいて開始させられる。この場合、図柄が大当たり図柄となると、大入賞口4が開放し大当たりの状態となり、より多くの賞球を獲得することが可能となる。
上記表示装置7を取り囲むようにセンター役物8が設けられている。このセンター役物8は、その右方(図3中、右方)の側部8aにランプ形に形成された使用部品9が設けられる。尚、前記遊技盤2には適宜、興趣性を高めるためや、入賞表示のために種々形態の発光部(図示せず)が設けられている。
【0017】
前記使用部品9は、樹脂製材料、例えばABS樹脂からなり、後述するめっき処理が施されている(図2(a)、(b)参照)。また、使用部品9は、前記側部8aに回動可能に取り付けられていて、前記表示装置7が所定の図柄の状態(例えば、前記大当たり図柄、リーチ図柄など)になると、これに基づいて回動するようになっている。以下、前記使用部品9のめっき処理方法の過程について詳述する。
【0018】
先ず、めっき処理においては、図1に示すように前処理工程S1が行われる。この前処理工程S1は、工程S1a、S1b、S1c、S1d、S1e及びS1fからなる。工程S1aにおいては、使用部品9を無水クロム酸と硫酸との混合液に浸漬することによってエッチングを行い、使用部品9の表面を微細凹凸状に形成する。
そして、前記無水クロム酸および硫酸を中和し、水洗した後、使用部品9の表面に触媒金属を析出させる(工程S1b)。この触媒金属の析出は、例えば塩化パラジウムと塩化錫との混合液に使用部品9を浸漬することによって、前記エッチングにより形成された使用部品9の微細凹部中に触媒金属たるパラジウムを析出させることにより行われる。
【0019】
次いで、工程S1cにおいて、使用部品9を酸性水溶液、例えば塩酸に浸漬させることによって、使用部品9に触媒活性を付与する。そして、触媒金属が析出し且つ活性化した使用部品9に無電解ニッケルめっき処理を施す。この工程S1dでは、無電解ニッケルめっき液を用いて、使用部品9の表面に1μm以下のニッケルめっき層を形成させる。
かようにして、樹脂製材料たる使用部品9の表面に無電解ニッケルめっき処理を施すことにより導電性を付与したうえで、通常の電気めっき処理が行われる。この電気めっきの工程S1e、S1fでは、前記ニッケルめっき層上に銅めっき、ニッケルめっきの順で電気めっきが行われ、二層のめっきが重ねて施される。
【0020】
続いて、上記した前処理工程S1の後の使用部品9に対して、異なる色のめっきが電気めっきにより重ねて施される。即ち、先ず、工程S2において、工程S1fで形成されたニッケルめっき層上に、外観用の銅めっきが施される。そして、工程S3において、前記銅めっき層上に外観用の黒ニッケルめっきが重ねて施される。この黒ニッケルめっきは、ニッケルと亜鉛との合金からなり、使用部品9に形成された複数層のめっきの最表層に位置するとともに、その外観は重量感のある黒色を呈する。
【0021】
次いで、工程S4において、使用部品9の表面の研磨処理が行われる。この研磨処理では、ランプ形をなす使用部品9の全体に亘りバフ研磨が行われ、黒ニッケルのめっき層の下側に施された銅のめっき層の一部を現出させる。
そして、工程S5において、前記バフ研磨の後の使用部品9に対してUV塗料によるUV塗装が行われる。このUV塗装により形成されたコーティング層は、無色透明をなし耐久性及び光沢を有する。尚、本発明でいうUV塗料とは、紫外線を照射することにより硬化する塗料をいう。また、UV塗装とは、前記UV塗料の塗布後に紫外線を照射して硬化させる塗布乃至照射の一連の工程をいう。
【0022】
次に、上述しためっき処理方法によって生成された使用部品9の作用及び効果について説明する。
使用部品9には、この表面を研磨することにより微小な研磨すじが形成されるとともに、異なる色の下側のめっき層の一部が現出するため、磨かれた調度品のような表面仕上げを施すことができる。殊に本実施においては、最表層の黒色めっき層の下側から銅のめっき層の一部が現出するので、ランプ形をなす使用部品9に対し、恰も古調な色合いの銅製の外観を施すことができる。
【0023】
この研磨後の使用部品9に対し、UV塗装によって形成されたコーティング層は無色透明であるため、前述した使用部品9の外観を損なうことなく耐久性及び光沢を付与することができる。また、前記コーティング層は、前記研磨すじを覆うように使用部品9の表面に形成されるので、相対的に硬度が低い銅のめっき層の保護を図りつつ使用部品9の表面粗さを改善することができる。
【0024】
他方、パチンコ機1の遊技盤2には種々形態の発光部が設けられている為、この発光部と前記表面仕上げとが相俟って、光の拡散を利用した高級感のある金属光沢を前記使用部品9に付与することができる。さらに、使用部品9は、前記表示装置7が所定の図柄の状態(例えば、前記大当たり図柄、リーチ図柄など)になると、これに基づいて回動する。このとき、前記使用部品9は、光の乱反射により玉虫色の輝きを放つので興趣を添えることができる。
【0025】
さらに、前記銅のめっき層とニッケルまたは黒ニッケル(ニッケル合金)のめっき層とは、互いに密着性が高く、且つニッケルまたはニッケル合金は、銅より硬度が高く、硬度の面で補完する関係にあるので、好適な複数層のめっきを得ることができる。
また、エッチングにより使用部品9の表面を微細凹凸状に形成し、その微細凹部中に触媒金属を析出させるようにした。これにより、樹脂製材料からなる使用部品9に対する触媒金属の付着性を向上させることができる。
【0026】
さらに、工程S4における研磨は、バフ研磨であって全体に亘り行われる為、使用部品9に対して磨かれたような表面仕上げを施すことができるので、パチンコ機1の使用部品9の意匠性を高めることができる。また、この場合、外観用の銅のめっき層の下側に、より高硬度のニッケルのめっき層が施されている為、過度の研磨による樹脂製素材の露出を防止することができる。
【0027】
尚、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形、拡張が可能である。
上記実施例では、工程S1e、S2において銅のめっきを施すようにしたが、これに代えて、銅と亜鉛との合金などの銅合金のめっきを施すようにしても良い。その場合も前述の実施例と同様の効果を奏する。
【0028】
また、工程S4におけるバフ研磨は、これに限定するものではなく、研削により使用部品9の表面に研削すじを形成するようにしても良い。即ち、外観用のめっきの種類、めっき層の厚み、並びに所望の表面仕上げに応じて、研磨乃至研削方法は適宜変更が可能である。さらに上記実施例では、バフ研磨は使用部品9の全体に亘り行うようにしたが、使用部品9の一部に対し行うようにしても良い。
また、前記複数層のめっきは、これに限定するものではなく、コバルト、黒クロム、錫、金、アルミニウム合金などのめっき層により構成し、所望の色合いを得るようにしても良い。
【0029】
さらに、使用部品9は、パチンコ機1に使用される樹脂製材料のものであれば、その配設位置及び形状はこれらに限定されるものではなく、例えば鍋の形状の使用部品をセンター役物8の上方に設けるようにしても良い。
このほか、本発明は、前記電気めっき又は無電解めっきに代えて気相めっき又は真空めっきを施す等、要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示すめっき処理方法の工程図
【図2】(a)は使用部品の正面図、(b)はその斜視図
【図3】パチンコ機の遊技盤を示す正面図
【符号の説明】
【0031】
図面中、1はパチンコ機(遊技機)、9は使用部品を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製材料からなる遊技機の使用部品をめっきするめっき処理方法であって、
前記使用部品に対して行われる前処理工程と、
この前処理後の前記使用部品に対して複数層の異なる色のめっきが重ねて施される工程と、
前記使用部品の表面を研磨又は研削することにより、その下側のめっき層の一部を現出させる工程と、
前記研磨又は研削後の前記使用部品に対し、コーティング層を形成する工程とを備えたことを特徴とするめっき処理方法。
【請求項2】
前記複数層のめっきは、銅または銅合金のめっき層と、ニッケルまたはニッケル合金のめっき層とを有することを特徴とする請求項1記載のめっき処理方法。
【請求項3】
前記複数層のめっきは、黒ニッケルのめっき層と、その下側に施された銅のめっき層とを有することを特徴とする請求項2記載のめっき処理方法。
【請求項4】
前記前処理は、エッチングにより前記使用部品の表面を微細凹凸状に形成し、その微細凹部中に触媒金属を析出させることを特徴とする請求項1記載のめっき処理方法。
【請求項5】
前記研磨は、バフ研磨であって前記使用部品の表面の一部乃至全体に亘り行われることを特徴とする請求項1記載のめっき処理方法。
【請求項6】
前記コーティング層は、UV塗装により形成されていることを特徴とする請求項1記載のめっき処理方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−46111(P2007−46111A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−231984(P2005−231984)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(593045053)株式会社内藤商会 (112)
【Fターム(参考)】