めっき基板の製造方法
【課題】微細パターンを精度良く形成するめっき基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明にかかるめっき基板の製造方法は、基板10上に所定のパターン以外の領域に触媒層32を設ける工程と、第1の無電解めっき液に基板を浸漬することにより、基板上に金属を析出させて所定のパターンの第1の金属層34を設ける工程と、触媒層を除去する工程と、第2の無電解めっき液に基板を浸漬することにより、第1の金属層の上方に第2の金属層を設ける工程と、を含む。
【解決手段】本発明にかかるめっき基板の製造方法は、基板10上に所定のパターン以外の領域に触媒層32を設ける工程と、第1の無電解めっき液に基板を浸漬することにより、基板上に金属を析出させて所定のパターンの第1の金属層34を設ける工程と、触媒層を除去する工程と、第2の無電解めっき液に基板を浸漬することにより、第1の金属層の上方に第2の金属層を設ける工程と、を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高速化・高密度化に伴い、基板上に金属層を有するめっき基板の製造方法としてアディティブ法が注目を集めている。アディティブ法では、基板上に設けたフォトレジストをパターニングしてめっきレジストを形成し、めっきレジストの開口部にめっき処理を行うことにより金属層を析出させる方法が知られている。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、微細パターンを精度良く形成するめっき基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかるめっき基板の製造方法は、
無電解めっき法によりめっき基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターン以外の領域に触媒層を設ける工程と、
(b)第1の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記基板上に金属を析出させて前記所定のパターンの第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記触媒層を除去する工程と、
(d)第2の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記第1の金属層の上方に第2の金属層を設ける工程と、を含む。
【0005】
このように、触媒層の形成領域と金属層の形成領域とを異なる領域にすることにより、微細なめっき粒子を基板上に吸着させることができる。即ち、めっき粒子を析出させる領域と、吸着させる領域とを異ならせることによって、微細なめっき粒子であっても基板上に安定的に吸着させることができる。したがって、微細パターンの金属層を形成することができる。
【0006】
また、金属層を形成する途中に触媒層を除去する工程を設けることによって、所定のパターンの金属層の間に金属粒が析出するのを防止することができる。これにより、隣り合う金属層が接触すること等を防止し、信頼性の高いめっき基板を製造することができる。
【0007】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(a)は、
(a1)前記所定のパターン以外の領域に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を設ける工程と、
(a2)前記触媒吸着層の上方に触媒層を設ける工程と、
を含むことができる。
【0008】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)は、
(c1)前記所定のパターン以外の領域に真空紫外放射を照射することによって、前記触媒吸着層を分解する工程を含むことができる。
【0009】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)は、前記工程(c1)の後に、
(c2)前記基板を洗浄することによって、分解された前記触媒吸着層および前記触媒層を除去する工程をさらに含むことができる。
【0010】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)では、
アルカリ性溶液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去することができる。
【0011】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記第1の無電解めっき液は、酸性溶液であることができる。
【0012】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)では、アルカリ性無電解めっき液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去することができる。
【0013】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記アルカリ性無電解めっき液は、前記第2の無電解めっき液であることができる。
【0014】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記アルカリ性溶液は、pH10〜pH14であることができる。
【0015】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記第1の無電解めっき液はニッケルを含み、前記第2の無電解めっき液は銅を含むことができる。
【0016】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(a1)は、
基板上に前記所定のパターンのレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
を含み、
前記工程(a)は、(a2)の後に、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層および触媒層を除去する工程を含むことができる。
【0017】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(a)は、
基板上に所定のパターンの領域にレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層を除去する工程と、
を含むことができる。
【0018】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記基板は、光透過性基板であり、
前記所定のパターンは、1次元または2次元の周期的なパターンであり、
前記周期的なパターンの間隔は、可視光の波長以下であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
1.めっき基板の製造方法
図1〜図10は、本実施の形態にかかるめっき基板100(図11参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用してめっき基板を製造する。
【0021】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、図1に示すように絶縁基板であってもよい。後述する工程により絶縁基板上に金属層を形成することによって、配線基板を製造することができる。あるいは、基板10は、可視光を透過する光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。後述する工程により光透過性基板上に金属層を形成することによって、たとえば偏光板のような光学素子基板を製造することができる。
【0022】
また基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。また基板10の表面には、凹凸がないことが好ましく、たとえば凹凸の高さが10nm未満であることが望ましい。
【0023】
ついで、基板10上に所定のパターンのレジスト層22を形成する。レジスト(図示せず)を基板10の上面に塗布した後、リソグラフィ法により該レジストをパターニングすることにより、図1に示すように、レジスト層22を形成することができる。ここで所定のパターンは、金属層34、37(図11参照)の形成を所望する領域の形状であって、任意の形状とすることができる。
【0024】
(2)次に、基板10を洗浄する。基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよいが、ドライ洗浄がより好ましい。ドライ洗浄にすることによって、剥離等のレジスト層22に与えるダメージを防止することができる。
【0025】
ドライ洗浄は、図2に示すように、真空紫外線ランプを用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、基板10およびレジスト層22の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、基板10の液中表面電位が負電位であれば、基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0026】
ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。
【0027】
(3)次に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層24を基板10上に形成する。
【0028】
まず、図3に示すように、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を溶解した触媒吸着溶液14に基板10を浸漬する。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。
【0029】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤や、アルキルアンモニウム系の界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。
【0030】
触媒吸着溶液14に含まれるシラン系カップリング剤としては、たとえばヘキサメチルジシラザンを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0031】
次いで、触媒吸着溶液14から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図4に示すように、触媒吸着層24を基板10に設けることができる。このとき、界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0032】
(4)次に、触媒層31を基板10上に形成する。まず、図5に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0033】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0034】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電解めっき液に混入するのを防止することができる。
【0035】
以上の工程により、触媒層31が形成される。触媒層31は、図6に示すように、基板10およびレジスト層22上の触媒吸着層24の上面に形成される。
【0036】
(5)次に、基板10上のレジスト層22を除去する。具体的には、図7に示すように、所定のパターンのレジスト層22を除去する。ここでレジスト層22は、たとえばアセトン等を用いて除去することができる。レジスト層22上に設けられた触媒吸着層24および触媒層31もレジスト層22とともに除去される。これにより、所定のパターン以外の領域のみに触媒吸着層26および触媒層32を形成することができる。
【0037】
(6)次に、所定のパターンの第1の金属層34を形成する。言い換えれば、基板10上の触媒層32が形成されていない領域に第1の金属層34を形成する。具体的には、金属を含む第1の無電解めっき液に基板10を浸漬させることによって、触媒層32が形成されていない領域に第1の金属層34を析出させることができる。ここで第1の無電解めっき液は、基板10上にめっき粒子として析出する際、めっき粒子の平均粒径が20nm〜50nmになるように調整されることが好ましい。このような第1の無電解めっき液は、pH、温度、調整時間等をかえることにより調整することができる。また第1の無電解めっき液は、pH10未満であることが好ましく、酸性であることがより好ましい。これにより、第1の無電解めっき液中に触媒吸着層26が溶解して触媒層32が基板10から剥離するのを防止することができる。
【0038】
また第1の無電解めっき液への基板10の浸漬時間が一定時間以上になると、めっき粒子の平均粒径が50nmより大きくなってしまうため、浸漬時間は、一定時間以内であることが好ましい。
【0039】
具体的に第1の金属層34としてニッケル層を析出させる場合について説明すると、第1の無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物または塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、硫酸ニッケル6水和物を含む無電解めっき液(温度70〜80℃)に基板10を10秒〜10分程度浸漬することによって、20nm〜100nmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。
【0040】
なお、第1の金属層34の材料は触媒によってめっき反応が起こる材料であれば特に限定されず、例えば白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などからも形成することができる。こうして、図8に示すように、基板10上の触媒層32の上面に第1の金属層34を形成することができる。
【0041】
このとき、図8に示すように、第1の金属層34の析出とともに、金属粒35が触媒層32上に形成されることがある。この金属粒35は、後述する工程において、触媒層32とともに除去される。
【0042】
第1の無電解めっき液に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。また、水洗後、基板10に熱処理を施すことによって乾燥してもよい。これによって第1の金属層34の基板10に対する密着性を向上させることができる。
【0043】
(7)次に、所定のパターン以外の領域、即ち第1の金属層34が形成されていない領域に設けられている触媒吸着層26および触媒層32を除去する。具体的には、触媒吸着層26を光分解して、基板10を洗浄することにより、触媒吸着層26および触媒層32を除去する(図9参照)。
【0044】
所定のパターン以外の領域に照射する光20としては、例えば真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いることができる。光20の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。これにより、触媒吸着層26を光分解させることができる。また、この波長帯域の光20を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0045】
光20の照射は、具体的には、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、1分〜30分間行うことができる。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光20の波長は、触媒吸着層26を光分解することができるものであれば、特に限定されない。
【0046】
基板10の洗浄は、水洗であってもよいし、アルコール洗浄であってもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。また、水洗後、基板10に熱処理を施すことによって乾燥してもよい。これによって第1の金属層34の基板10に対する密着性を向上させることができる。
【0047】
このようにして、触媒吸着層26および触媒層32を除去することができ、ひいては、触媒層32上に形成された金属粒35を除去することができる(図10参照)。
【0048】
(8)次に、第1の金属層34上にさらに金属を析出させ、第2の金属層37を形成する。具体的には、第1の金属層34を露出させた状態で、基板10を、第2の無電解めっき液に浸漬させることによって、第1の金属層34上に金属を析出させて第2の金属層37を形成することができる(図11参照)。
【0049】
第2の無電解めっき液としては、上述した第1の無電解めっき液と同様の無電解めっき液を用いてもよいし、第1の無電解めっき液と異なる無電解めっき液を用いてもよい。第1の無電解めっき液と異なる無電解めっき液を用いる場合には、第2の無電解めっき液は、第1の金属層34の表面においてめっき反応が起こるものであれば特に限定されない。
【0050】
以上の工程により、図11に示すように、めっき基板100を形成することができる。
【0051】
2.めっき基板
上述した方法により製造されためっき基板100について、図12を用いて説明する。図12は、本実施の形態にかかるめっき基板100を模式的に示す斜視図である。めっき基板100は、基板10と当該基板10の上方に形成された第2の金属層37とを含む。第2の金属層37は、所定のパターンを有する。所定のパターンは、たとえば1次元または2次元の周期的なパターンであることができる。めっき基板100は、光透過性基板上に所定のパターンを有することにより、偏光板等の光学素子基板として機能することができる。たとえば図13に示すように、めっき基板100は、一定の間隔bと一定の幅aの直線状の金属層がX軸方向に繰り返し設けられている1次元の周期的なパターン(ストライプ形状)であることができる。周期方向(X軸方向)における幅aが可視光の波長以下であり、かつ基板10が光透過性基板からなる場合には、めっき基板100は、偏光板として機能することができる。
【0052】
3.本実施の形態にかかるめっき基板100の製造方法では、触媒層32が形成されていない領域に第1の金属層34が形成されている。この機構については、以下のように想定される。無電解めっき反応は、無電解めっき液中の還元剤と金属イオンとの還元反応であり、金属イオンが還元剤から電子を受け取ることによりめっき粒子が析出する反応である。この反応は、触媒層32に含まれる触媒によって促進されるため、主に触媒層32の近傍で進行する。無電解めっき液中では、複数の金属イオンが集合体となって存在しているため、複数の金属原子の集合体であるめっき粒子が還元反応によって析出する。なお、複数の金属イオンの集合体の大きさは、第1の無電解めっき液のpH、温度、時間等によって制御することができる。析出時のめっき粒子の平均粒径が、たとえば約20nm〜50nmである場合には、めっき粒子は、触媒層32近傍で生成された後に触媒層32の形成されていない領域まで移動して基板10に吸着する。即ち、めっき粒子は、触媒層32付近で析出するが、触媒層32付近ではさらに還元反応が継続するためエネルギー状態が不安定であり、一定以上の質量がなければ触媒層32上で安定し、吸着することができない。したがってめっき粒子は、平均粒径が約20nm〜50nmの場合には、触媒層32上で安定することができず、基板10上に移動して吸着する。よって、第1の金属層34は、触媒層32の形成されていない領域に形成されることができる。
【0053】
また、本実施の形態にかかるめっき基板100の製造方法では、触媒層32を残存させた状態で、第1の金属層34を析出させ、その後に触媒層32を除去してから、再度金属を析出させて第1の金属層34を厚膜化して第2の金属層37を形成する。即ち、第1の金属層34は、触媒層32の触媒作用によって形成され、触媒層32の除去後には、第1の金属層34を核として自己触媒反応によって第2の金属層37が形成される。したがって、上述したような金属粒35が触媒層32の上に生成してしまった場合でも、触媒吸着層26を除去することによって、触媒層32と金属粒35とを同時に除去することができる。また触媒層32および金属粒35の除去後にさらに自己触媒反応によって金属層を厚膜化することにより、十分な厚みを有する金属層(配線)を形成することができるため配線の電気抵抗を低減することができ、信頼性の高いめっき基板を提供することができる。
【0054】
4.電子デバイス
図13は、本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法によって製造されるめっき基板を適用した電子デバイスの一例を示す。基板10が絶縁基板である場合には、めっき基板100は、配線基板として機能することができる。電子デバイス1000は、配線基板としてのめっき基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0055】
めっき基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。めっき基板100は、上述した製造方法によって製造される。図13に示す例では、めっき基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、めっき基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0056】
また、光学素子基板としてのめっき基板100は、液晶ディスプレイ装置、プロジェクター装置等の偏光板として機能してもよい。
【0057】
5.変形例
次に変形例にかかるめっき基板の製造方法について説明する。本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法では、触媒吸着層26を光分解して、基板10を洗浄することにより、触媒吸着層26および触媒層32を除去しているが、これにかえて、変形例にかかるめっき基板の製造方法では、アルカリ溶液で基板を洗浄することにより触媒吸着層26および触媒層32をする。以下に、変形例にかかるめっき基板の製造方法を説明する。
【0058】
図14および図15は、変形例にかかるめっき基板の製造方法を示す図である。まず、基板10を用意し、洗浄する。次に、所定のパターン以外の領域のみに触媒吸着層24および触媒層32を基板10上に形成する。次に、第1の金属層34を形成する。ここまでの工程の詳細については、本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法の(1)〜(6)と同様であるので説明を省略する。
【0059】
次に、図14に示すように、アルカリ性溶液40で基板10を洗浄することにより、触媒吸着層26および触媒層32を除去する。アルカリ性溶液40は、触媒吸着層26を溶解することができるものであれば特に限定されないが、pH10〜pH14であることが好ましい。またアルカリ性溶液40は、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム溶液等の無機アルカリ溶液であってもよいし、無電解めっき液であってもよい。アルカリ性溶液40として無電解めっき液を用いる場合には、アルカリ性溶液40は、上述した第2の無電解めっき液であってもよい。この場合には、第2の金属層37を形成する工程と触媒吸着層26および触媒層32を除去する工程とを同一の工程で行うことができる。したがって、アルカリ性溶液40として第2の無電解めっき液を用いることによって、工程数を簡略化することができる。
【0060】
また、アルカリ性溶液40として無電解めっき液を用いる場合であっても、その後にさらに基板10を第2の無電解めっき液に浸漬してもよい。アルカリ性溶液40としての無電解めっき液には、触媒層32や触媒吸着層26が混入することによって、当該溶液中で自己分解反応が発生することがあるが、上述したように基板10を第2の無電解めっき液に入れ替えるため、第2の無電解めっき液中で自己分解反応が発生するのを抑制し、効率よく第1の金属層34上に金属を析出させることができる。
【0061】
アルカリ性溶液40として第2の無電解めっき液を用いない場合にも、次に、基板10を第2の無電解めっき液に浸漬することによって、第2の金属層37を形成する。以上の工程により、図11に示すようなめっき基板を製造することができる。
【0062】
なお、アルカリ性溶液40として第2の無電解めっき液を用いる場合には、第2の無電解めっき液は、第1の無電解めっき液と異なるものを用いることが好ましい。上述したように、第2の無電解めっき液はpH10〜pH14であり、第1の無電解めっき液は、pH10未満であることができる。したがって、たとえば第1の無電解めっき液としては、ニッケルを含むものを用い、第2の無電解めっき液としては、銅を含むものを用いることができる。このような2種類のめっき液を用いることによって、図15に示すように、基板10上にニッケルからなる第1の金属層34と銅からなる第2の金属層42とを含むめっき基板200を形成することができる。このように、第2の金属層42で第1の金属層34を覆うことによって、形成された配線が酸化するのを抑制することができる。
【0063】
6.実験例
6.1.実験例1
本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法によりめっき基板を形成した。
【0064】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約200nmピッチで約130nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した。
【0065】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、約130nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0066】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約30〜50nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0067】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0068】
(4)次に、真空紫外放射を真空度670torr程度で5分程度、ガラス基板上に照射した。その後、基板を水洗することにより、触媒層を除去した。
【0069】
(5)次に、ガラス基板を、上述したニッケル無電解めっき液に浸漬し、約100〜200nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0070】
このように形成された金属層のSEM画像を図16に示す。この金属層は、図16に示すとおり、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状であった。
【0071】
6.2.実験例2
変形例にかかるめっき基板の製造方法によりめっき基板を形成した。
【0072】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約200nmピッチで約130nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した。
【0073】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、約130nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0074】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約30〜50nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0075】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0076】
(4)次に、アルカリ性溶液にガラス基板を浸漬した。アルカリ性溶液としては、約10wt%水酸化ナトリウム溶液を用いた。浸漬時間は15分程度とした。
【0077】
(5)次に、ガラス基板を、上述したニッケル無電解めっき液に浸漬し、約100〜200nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0078】
このように形成された金属層のSEM画像を図17に示す。この金属層は、図17に示すとおり、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状であった。
【0079】
6.3.実験例3(比較例)
本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法によりめっき基板を形成した。
【0080】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約200nmピッチで約130nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した。
【0081】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、約130nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0082】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約30〜50nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0083】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0084】
(4)次に、ガラス基板を、上述したニッケル無電解めっき液に浸漬し、約100〜200nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0085】
このように形成された金属層のSEM画像を図18に示す。この金属層は、図18に示すとおり、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状であった。また、間隔には金属粒が析出していることが確認された。
【0086】
以上の実験例によれば、実験例1および実験例2のように、金属層の一部を形成した後に、触媒層および触媒吸着層を除去することによって、パターン間隔に金属粒が形成されるのを防止、または除去することができたことが確認された。
【0087】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば上述した実施の形態では、触媒吸着層および触媒層を形成した後にレジスト層を除去しているが、これにかえて、触媒吸着層の形成後にレジスト層を除去することにより、所定のパターン以外の領域にのみ触媒吸着層を残し、その後に触媒層を形成してもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態では、予め基板上に所定のパターンの領域にレジスト層を設けて全面に触媒吸着層および触媒層を形成した後にレジスト層を除去することにより、触媒層を所定の領域に形成しているが、これにかえて、レジスト層を用いないで触媒層を形成してもよい。具体的には、たとえば触媒吸着層を基板全面に形成し、この触媒吸着層の一部を光分解して所望のパターン領域にのみ触媒吸着層を残す。これにより、触媒層は所定のパターン以外の領域にのみ形成されることができる。触媒吸着層の光分解は、真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いて行うことができる。光の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。この波長帯域を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0089】
また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかるめっき基板を示す断面図。
【図12】本実施の形態にかかるめっき基板を示す斜視図。
【図13】本実施の形態にかかるめっき基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【図14】変形例にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図15】変形例にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図16】実験例1にかかるめっき基板のSEM画像を示す図。
【図17】実験例1にかかるめっき基板のSEM画像を示す図。
【図18】実験例1にかかるめっき基板のSEM画像を示す図。
【符号の説明】
【0091】
10 基板、14 界面活性剤溶液、18 光源、20 光、22 レジスト層、24 触媒吸着層、26 触媒吸着層、30 触媒溶液、31 触媒層、32 触媒層、34 第1の金属層、37 第2の金属層、90 集積回路チップ、92 他の基板、100 めっき基板、1000 電子デバイス
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高速化・高密度化に伴い、基板上に金属層を有するめっき基板の製造方法としてアディティブ法が注目を集めている。アディティブ法では、基板上に設けたフォトレジストをパターニングしてめっきレジストを形成し、めっきレジストの開口部にめっき処理を行うことにより金属層を析出させる方法が知られている。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、微細パターンを精度良く形成するめっき基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明にかかるめっき基板の製造方法は、
無電解めっき法によりめっき基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターン以外の領域に触媒層を設ける工程と、
(b)第1の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記基板上に金属を析出させて前記所定のパターンの第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記触媒層を除去する工程と、
(d)第2の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記第1の金属層の上方に第2の金属層を設ける工程と、を含む。
【0005】
このように、触媒層の形成領域と金属層の形成領域とを異なる領域にすることにより、微細なめっき粒子を基板上に吸着させることができる。即ち、めっき粒子を析出させる領域と、吸着させる領域とを異ならせることによって、微細なめっき粒子であっても基板上に安定的に吸着させることができる。したがって、微細パターンの金属層を形成することができる。
【0006】
また、金属層を形成する途中に触媒層を除去する工程を設けることによって、所定のパターンの金属層の間に金属粒が析出するのを防止することができる。これにより、隣り合う金属層が接触すること等を防止し、信頼性の高いめっき基板を製造することができる。
【0007】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(a)は、
(a1)前記所定のパターン以外の領域に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を設ける工程と、
(a2)前記触媒吸着層の上方に触媒層を設ける工程と、
を含むことができる。
【0008】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)は、
(c1)前記所定のパターン以外の領域に真空紫外放射を照射することによって、前記触媒吸着層を分解する工程を含むことができる。
【0009】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)は、前記工程(c1)の後に、
(c2)前記基板を洗浄することによって、分解された前記触媒吸着層および前記触媒層を除去する工程をさらに含むことができる。
【0010】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)では、
アルカリ性溶液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去することができる。
【0011】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記第1の無電解めっき液は、酸性溶液であることができる。
【0012】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(c)では、アルカリ性無電解めっき液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去することができる。
【0013】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記アルカリ性無電解めっき液は、前記第2の無電解めっき液であることができる。
【0014】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記アルカリ性溶液は、pH10〜pH14であることができる。
【0015】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記第1の無電解めっき液はニッケルを含み、前記第2の無電解めっき液は銅を含むことができる。
【0016】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(a1)は、
基板上に前記所定のパターンのレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
を含み、
前記工程(a)は、(a2)の後に、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層および触媒層を除去する工程を含むことができる。
【0017】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記工程(a)は、
基板上に所定のパターンの領域にレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層を除去する工程と、
を含むことができる。
【0018】
本発明にかかるめっき基板の製造方法において、
前記基板は、光透過性基板であり、
前記所定のパターンは、1次元または2次元の周期的なパターンであり、
前記周期的なパターンの間隔は、可視光の波長以下であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
1.めっき基板の製造方法
図1〜図10は、本実施の形態にかかるめっき基板100(図11参照)の製造方法を示す図である。本実施の形態では、無電解めっきを適用してめっき基板を製造する。
【0021】
(1)まず、基板10を用意する。基板10は、図1に示すように絶縁基板であってもよい。後述する工程により絶縁基板上に金属層を形成することによって、配線基板を製造することができる。あるいは、基板10は、可視光を透過する光透過性基板(例えば透明基板)であってもよい。後述する工程により光透過性基板上に金属層を形成することによって、たとえば偏光板のような光学素子基板を製造することができる。
【0022】
また基板10は、有機系基板(例えばプラスチック材、樹脂基板)であってもよいし、無機系基板(例えば石英ガラス、シリコンウエハ、酸化物層)であってもよい。プラスチック材としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネイト、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。基板10は、単層のみならず、ベース基板上に少なくとも1層の絶縁層が形成されている多層のものも含む。本実施の形態では、基板10上に金属層を形成する。また基板10の表面には、凹凸がないことが好ましく、たとえば凹凸の高さが10nm未満であることが望ましい。
【0023】
ついで、基板10上に所定のパターンのレジスト層22を形成する。レジスト(図示せず)を基板10の上面に塗布した後、リソグラフィ法により該レジストをパターニングすることにより、図1に示すように、レジスト層22を形成することができる。ここで所定のパターンは、金属層34、37(図11参照)の形成を所望する領域の形状であって、任意の形状とすることができる。
【0024】
(2)次に、基板10を洗浄する。基板10の洗浄は、ドライ洗浄でもよいし、ウエット洗浄でもよいが、ドライ洗浄がより好ましい。ドライ洗浄にすることによって、剥離等のレジスト層22に与えるダメージを防止することができる。
【0025】
ドライ洗浄は、図2に示すように、真空紫外線ランプを用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。基板10を洗浄することによって、基板10の表面に付着している油脂などの汚れを除去することができる。また、基板10およびレジスト層22の表面を撥水性から親水性に変化させることができる。また、基板10の液中表面電位が負電位であれば、基板10の洗浄により均一な負電位面を形成することができる。
【0026】
ウエット洗浄は、例えば、基板10をオゾン水(オゾン濃度10ppm〜20ppm)に室温状態で5分〜30分程度浸漬することで行うことができる。またドライ洗浄は、真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、30秒〜900秒間、真空紫外線を照射して行うことができる。
【0027】
(3)次に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層24を基板10上に形成する。
【0028】
まず、図3に示すように、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を溶解した触媒吸着溶液14に基板10を浸漬する。基板10の表面の液中表面電位が負電位の場合には、カチオン系界面活性剤を適用することが好ましい。カチオン系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べて基板10に吸着しやすいからである。
【0029】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、アミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤や、アルキルアンモニウム系の界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルジメチルアンモニウムブロマイド等)などを用いることができる。
【0030】
触媒吸着溶液14に含まれるシラン系カップリング剤としては、たとえばヘキサメチルジシラザンを用いることができる。浸漬時間は、例えば、1分〜10分程度とすることができる。
【0031】
次いで、触媒吸着溶液14から基板10を取り出し、超純水で洗浄する。その後、基板10を、例えば、室温下で自然乾燥、または、圧縮空気を吹き付けて水滴を除去した後、90℃〜120℃のオーブン内に10分〜1時間程度放置して乾燥させる。以上の工程により、図4に示すように、触媒吸着層24を基板10に設けることができる。このとき、界面活性剤としてカチオン系界面活性剤を適用した場合には、基板10の液中表面電位は吸着前よりも正電位側にシフトしている。
【0032】
(4)次に、触媒層31を基板10上に形成する。まず、図5に示すように、触媒溶液30に基板10を浸漬する。触媒溶液30は、無電解めっきの触媒として機能する触媒成分を含む。触媒成分としては、たとえばパラジウムを用いることができる。
【0033】
たとえば、以下の手順により触媒溶液30を作製することができる。
(4a)純度99.99%のパラジウムペレットを塩酸と過酸化水素水と水との混合溶液に溶解させ、パラジウム濃度が0.1〜0.5g/lの塩化パラジウム溶液とする。
(4b)上述した塩化パラジウム溶液をさらに水と過酸化水素水で希釈することによりパラジウム濃度を0.01〜0.05g/lとする。
(4c)水酸化ナトリウム水溶液等を用いて、塩化パラジウム溶液のpHを4.5〜6.8に調整する。
【0034】
触媒溶液30に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われることができる。この水洗によって、触媒の残渣が後述する無電解めっき液に混入するのを防止することができる。
【0035】
以上の工程により、触媒層31が形成される。触媒層31は、図6に示すように、基板10およびレジスト層22上の触媒吸着層24の上面に形成される。
【0036】
(5)次に、基板10上のレジスト層22を除去する。具体的には、図7に示すように、所定のパターンのレジスト層22を除去する。ここでレジスト層22は、たとえばアセトン等を用いて除去することができる。レジスト層22上に設けられた触媒吸着層24および触媒層31もレジスト層22とともに除去される。これにより、所定のパターン以外の領域のみに触媒吸着層26および触媒層32を形成することができる。
【0037】
(6)次に、所定のパターンの第1の金属層34を形成する。言い換えれば、基板10上の触媒層32が形成されていない領域に第1の金属層34を形成する。具体的には、金属を含む第1の無電解めっき液に基板10を浸漬させることによって、触媒層32が形成されていない領域に第1の金属層34を析出させることができる。ここで第1の無電解めっき液は、基板10上にめっき粒子として析出する際、めっき粒子の平均粒径が20nm〜50nmになるように調整されることが好ましい。このような第1の無電解めっき液は、pH、温度、調整時間等をかえることにより調整することができる。また第1の無電解めっき液は、pH10未満であることが好ましく、酸性であることがより好ましい。これにより、第1の無電解めっき液中に触媒吸着層26が溶解して触媒層32が基板10から剥離するのを防止することができる。
【0038】
また第1の無電解めっき液への基板10の浸漬時間が一定時間以上になると、めっき粒子の平均粒径が50nmより大きくなってしまうため、浸漬時間は、一定時間以内であることが好ましい。
【0039】
具体的に第1の金属層34としてニッケル層を析出させる場合について説明すると、第1の無電解めっき液としては、硫酸ニッケル6水和物または塩化ニッケル6水和物が主体であり、次亜燐酸ナトリウムが還元剤として含まれたものを用いることができる。例えば、硫酸ニッケル6水和物を含む無電解めっき液(温度70〜80℃)に基板10を10秒〜10分程度浸漬することによって、20nm〜100nmの厚みを有するニッケル層を形成することができる。
【0040】
なお、第1の金属層34の材料は触媒によってめっき反応が起こる材料であれば特に限定されず、例えば白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などからも形成することができる。こうして、図8に示すように、基板10上の触媒層32の上面に第1の金属層34を形成することができる。
【0041】
このとき、図8に示すように、第1の金属層34の析出とともに、金属粒35が触媒層32上に形成されることがある。この金属粒35は、後述する工程において、触媒層32とともに除去される。
【0042】
第1の無電解めっき液に浸漬した後、基板10を水洗してもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。また、水洗後、基板10に熱処理を施すことによって乾燥してもよい。これによって第1の金属層34の基板10に対する密着性を向上させることができる。
【0043】
(7)次に、所定のパターン以外の領域、即ち第1の金属層34が形成されていない領域に設けられている触媒吸着層26および触媒層32を除去する。具体的には、触媒吸着層26を光分解して、基板10を洗浄することにより、触媒吸着層26および触媒層32を除去する(図9参照)。
【0044】
所定のパターン以外の領域に照射する光20としては、例えば真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いることができる。光20の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。これにより、触媒吸着層26を光分解させることができる。また、この波長帯域の光20を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0045】
光20の照射は、具体的には、例えば、光源18として真空紫外線ランプ(波長172nm、出力10mW、試料間距離1mm)を用いて、窒素雰囲気下において、1分〜30分間行うことができる。光源18は、例えばXeガスが封入されたエキシマランプであってもよい。なお、光20の波長は、触媒吸着層26を光分解することができるものであれば、特に限定されない。
【0046】
基板10の洗浄は、水洗であってもよいし、アルコール洗浄であってもよい。水洗は、純水によって行われてもよいし、水蒸気によって行われてもよいし、純水及び水蒸気の双方を用いて行われてもよい。また、水洗後、基板10に熱処理を施すことによって乾燥してもよい。これによって第1の金属層34の基板10に対する密着性を向上させることができる。
【0047】
このようにして、触媒吸着層26および触媒層32を除去することができ、ひいては、触媒層32上に形成された金属粒35を除去することができる(図10参照)。
【0048】
(8)次に、第1の金属層34上にさらに金属を析出させ、第2の金属層37を形成する。具体的には、第1の金属層34を露出させた状態で、基板10を、第2の無電解めっき液に浸漬させることによって、第1の金属層34上に金属を析出させて第2の金属層37を形成することができる(図11参照)。
【0049】
第2の無電解めっき液としては、上述した第1の無電解めっき液と同様の無電解めっき液を用いてもよいし、第1の無電解めっき液と異なる無電解めっき液を用いてもよい。第1の無電解めっき液と異なる無電解めっき液を用いる場合には、第2の無電解めっき液は、第1の金属層34の表面においてめっき反応が起こるものであれば特に限定されない。
【0050】
以上の工程により、図11に示すように、めっき基板100を形成することができる。
【0051】
2.めっき基板
上述した方法により製造されためっき基板100について、図12を用いて説明する。図12は、本実施の形態にかかるめっき基板100を模式的に示す斜視図である。めっき基板100は、基板10と当該基板10の上方に形成された第2の金属層37とを含む。第2の金属層37は、所定のパターンを有する。所定のパターンは、たとえば1次元または2次元の周期的なパターンであることができる。めっき基板100は、光透過性基板上に所定のパターンを有することにより、偏光板等の光学素子基板として機能することができる。たとえば図13に示すように、めっき基板100は、一定の間隔bと一定の幅aの直線状の金属層がX軸方向に繰り返し設けられている1次元の周期的なパターン(ストライプ形状)であることができる。周期方向(X軸方向)における幅aが可視光の波長以下であり、かつ基板10が光透過性基板からなる場合には、めっき基板100は、偏光板として機能することができる。
【0052】
3.本実施の形態にかかるめっき基板100の製造方法では、触媒層32が形成されていない領域に第1の金属層34が形成されている。この機構については、以下のように想定される。無電解めっき反応は、無電解めっき液中の還元剤と金属イオンとの還元反応であり、金属イオンが還元剤から電子を受け取ることによりめっき粒子が析出する反応である。この反応は、触媒層32に含まれる触媒によって促進されるため、主に触媒層32の近傍で進行する。無電解めっき液中では、複数の金属イオンが集合体となって存在しているため、複数の金属原子の集合体であるめっき粒子が還元反応によって析出する。なお、複数の金属イオンの集合体の大きさは、第1の無電解めっき液のpH、温度、時間等によって制御することができる。析出時のめっき粒子の平均粒径が、たとえば約20nm〜50nmである場合には、めっき粒子は、触媒層32近傍で生成された後に触媒層32の形成されていない領域まで移動して基板10に吸着する。即ち、めっき粒子は、触媒層32付近で析出するが、触媒層32付近ではさらに還元反応が継続するためエネルギー状態が不安定であり、一定以上の質量がなければ触媒層32上で安定し、吸着することができない。したがってめっき粒子は、平均粒径が約20nm〜50nmの場合には、触媒層32上で安定することができず、基板10上に移動して吸着する。よって、第1の金属層34は、触媒層32の形成されていない領域に形成されることができる。
【0053】
また、本実施の形態にかかるめっき基板100の製造方法では、触媒層32を残存させた状態で、第1の金属層34を析出させ、その後に触媒層32を除去してから、再度金属を析出させて第1の金属層34を厚膜化して第2の金属層37を形成する。即ち、第1の金属層34は、触媒層32の触媒作用によって形成され、触媒層32の除去後には、第1の金属層34を核として自己触媒反応によって第2の金属層37が形成される。したがって、上述したような金属粒35が触媒層32の上に生成してしまった場合でも、触媒吸着層26を除去することによって、触媒層32と金属粒35とを同時に除去することができる。また触媒層32および金属粒35の除去後にさらに自己触媒反応によって金属層を厚膜化することにより、十分な厚みを有する金属層(配線)を形成することができるため配線の電気抵抗を低減することができ、信頼性の高いめっき基板を提供することができる。
【0054】
4.電子デバイス
図13は、本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法によって製造されるめっき基板を適用した電子デバイスの一例を示す。基板10が絶縁基板である場合には、めっき基板100は、配線基板として機能することができる。電子デバイス1000は、配線基板としてのめっき基板100と、集積回路チップ90と、他の基板92とを含む。
【0055】
めっき基板100に形成された配線パターンは、電子部品同士を電気的に接続するためのものであってもよい。めっき基板100は、上述した製造方法によって製造される。図13に示す例では、めっき基板100には、集積回路チップ90が電気的に接続され、めっき基板100の一方の端部は、他の基板92(例えば表示パネル)に電気的に接続されている。電子デバイス1000は、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、EL(Electro luminescence)ディスプレイ装置などの表示装置であってもよい。
【0056】
また、光学素子基板としてのめっき基板100は、液晶ディスプレイ装置、プロジェクター装置等の偏光板として機能してもよい。
【0057】
5.変形例
次に変形例にかかるめっき基板の製造方法について説明する。本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法では、触媒吸着層26を光分解して、基板10を洗浄することにより、触媒吸着層26および触媒層32を除去しているが、これにかえて、変形例にかかるめっき基板の製造方法では、アルカリ溶液で基板を洗浄することにより触媒吸着層26および触媒層32をする。以下に、変形例にかかるめっき基板の製造方法を説明する。
【0058】
図14および図15は、変形例にかかるめっき基板の製造方法を示す図である。まず、基板10を用意し、洗浄する。次に、所定のパターン以外の領域のみに触媒吸着層24および触媒層32を基板10上に形成する。次に、第1の金属層34を形成する。ここまでの工程の詳細については、本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法の(1)〜(6)と同様であるので説明を省略する。
【0059】
次に、図14に示すように、アルカリ性溶液40で基板10を洗浄することにより、触媒吸着層26および触媒層32を除去する。アルカリ性溶液40は、触媒吸着層26を溶解することができるものであれば特に限定されないが、pH10〜pH14であることが好ましい。またアルカリ性溶液40は、たとえば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム溶液等の無機アルカリ溶液であってもよいし、無電解めっき液であってもよい。アルカリ性溶液40として無電解めっき液を用いる場合には、アルカリ性溶液40は、上述した第2の無電解めっき液であってもよい。この場合には、第2の金属層37を形成する工程と触媒吸着層26および触媒層32を除去する工程とを同一の工程で行うことができる。したがって、アルカリ性溶液40として第2の無電解めっき液を用いることによって、工程数を簡略化することができる。
【0060】
また、アルカリ性溶液40として無電解めっき液を用いる場合であっても、その後にさらに基板10を第2の無電解めっき液に浸漬してもよい。アルカリ性溶液40としての無電解めっき液には、触媒層32や触媒吸着層26が混入することによって、当該溶液中で自己分解反応が発生することがあるが、上述したように基板10を第2の無電解めっき液に入れ替えるため、第2の無電解めっき液中で自己分解反応が発生するのを抑制し、効率よく第1の金属層34上に金属を析出させることができる。
【0061】
アルカリ性溶液40として第2の無電解めっき液を用いない場合にも、次に、基板10を第2の無電解めっき液に浸漬することによって、第2の金属層37を形成する。以上の工程により、図11に示すようなめっき基板を製造することができる。
【0062】
なお、アルカリ性溶液40として第2の無電解めっき液を用いる場合には、第2の無電解めっき液は、第1の無電解めっき液と異なるものを用いることが好ましい。上述したように、第2の無電解めっき液はpH10〜pH14であり、第1の無電解めっき液は、pH10未満であることができる。したがって、たとえば第1の無電解めっき液としては、ニッケルを含むものを用い、第2の無電解めっき液としては、銅を含むものを用いることができる。このような2種類のめっき液を用いることによって、図15に示すように、基板10上にニッケルからなる第1の金属層34と銅からなる第2の金属層42とを含むめっき基板200を形成することができる。このように、第2の金属層42で第1の金属層34を覆うことによって、形成された配線が酸化するのを抑制することができる。
【0063】
6.実験例
6.1.実験例1
本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法によりめっき基板を形成した。
【0064】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約200nmピッチで約130nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した。
【0065】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、約130nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0066】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約30〜50nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0067】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0068】
(4)次に、真空紫外放射を真空度670torr程度で5分程度、ガラス基板上に照射した。その後、基板を水洗することにより、触媒層を除去した。
【0069】
(5)次に、ガラス基板を、上述したニッケル無電解めっき液に浸漬し、約100〜200nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0070】
このように形成された金属層のSEM画像を図16に示す。この金属層は、図16に示すとおり、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状であった。
【0071】
6.2.実験例2
変形例にかかるめっき基板の製造方法によりめっき基板を形成した。
【0072】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約200nmピッチで約130nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した。
【0073】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、約130nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0074】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約30〜50nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0075】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0076】
(4)次に、アルカリ性溶液にガラス基板を浸漬した。アルカリ性溶液としては、約10wt%水酸化ナトリウム溶液を用いた。浸漬時間は15分程度とした。
【0077】
(5)次に、ガラス基板を、上述したニッケル無電解めっき液に浸漬し、約100〜200nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0078】
このように形成された金属層のSEM画像を図17に示す。この金属層は、図17に示すとおり、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状であった。
【0079】
6.3.実験例3(比較例)
本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法によりめっき基板を形成した。
【0080】
(1)ガラス基板上にフォトレジスト膜を形成し、その後直描方式により約200nmピッチで約130nm幅の直線状に露光、現像することにより、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状の開口部を有するフォトレジストパターンを形成した。
【0081】
(2)このガラス基板を1cm角に切り出し、カチオン系界面活性剤溶液(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)に浸漬した。次いで、このガラス基板をパラジウム触媒溶液に浸漬した。その後、アセトン等の有機溶剤を用いてガラス基板上のフォトレジストを除去した。これにより、約130nm幅の直線状のラインと約70nm間隔を有するストライプ状の触媒層が形成された。
【0082】
(3)次に、触媒層が形成されたガラス基板を、80℃のニッケル無電解めっき液(テクニックジャパン(株)製FPDニッケル)に30秒間浸漬し、約30〜50nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0083】
次いで、ガラス基板を十分に水洗し、100〜150℃で10分間焼成してニッケル金属層中の水分を蒸発させ、基板に対する密着性を向上させた。
【0084】
(4)次に、ガラス基板を、上述したニッケル無電解めっき液に浸漬し、約100〜200nm程度の厚み、約70nm幅のニッケル金属層を形成した。
【0085】
このように形成された金属層のSEM画像を図18に示す。この金属層は、図18に示すとおり、約70nm幅の直線状のラインと約130nm間隔を有するストライプ状であった。また、間隔には金属粒が析出していることが確認された。
【0086】
以上の実験例によれば、実験例1および実験例2のように、金属層の一部を形成した後に、触媒層および触媒吸着層を除去することによって、パターン間隔に金属粒が形成されるのを防止、または除去することができたことが確認された。
【0087】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば上述した実施の形態では、触媒吸着層および触媒層を形成した後にレジスト層を除去しているが、これにかえて、触媒吸着層の形成後にレジスト層を除去することにより、所定のパターン以外の領域にのみ触媒吸着層を残し、その後に触媒層を形成してもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態では、予め基板上に所定のパターンの領域にレジスト層を設けて全面に触媒吸着層および触媒層を形成した後にレジスト層を除去することにより、触媒層を所定の領域に形成しているが、これにかえて、レジスト層を用いないで触媒層を形成してもよい。具体的には、たとえば触媒吸着層を基板全面に形成し、この触媒吸着層の一部を光分解して所望のパターン領域にのみ触媒吸着層を残す。これにより、触媒層は所定のパターン以外の領域にのみ形成されることができる。触媒吸着層の光分解は、真空紫外線(VUV;vacuum ultraviolet)を用いて行うことができる。光の波長を、例えば170nm〜260nmとすることにより、原子間結合(例えば、C−C、C=C、C−H、C−F、C−Cl、C−O、C−N、C=O、O=O、O−H、H−F、H−Cl、N−Hなど)を切断することができる。この波長帯域を用いることにより、イエロールームなどの設備が不要となり、例えば白色灯下で本実施形態に係る一連の工程を行うことができる。
【0089】
また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図2】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図3】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図4】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図5】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図6】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図7】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図8】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図9】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図10】本実施の形態にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図11】本実施の形態にかかるめっき基板を示す断面図。
【図12】本実施の形態にかかるめっき基板を示す斜視図。
【図13】本実施の形態にかかるめっき基板を適用した電子デバイスの一例を示す図。
【図14】変形例にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図15】変形例にかかるめっき基板の製造方法を示す図。
【図16】実験例1にかかるめっき基板のSEM画像を示す図。
【図17】実験例1にかかるめっき基板のSEM画像を示す図。
【図18】実験例1にかかるめっき基板のSEM画像を示す図。
【符号の説明】
【0091】
10 基板、14 界面活性剤溶液、18 光源、20 光、22 レジスト層、24 触媒吸着層、26 触媒吸着層、30 触媒溶液、31 触媒層、32 触媒層、34 第1の金属層、37 第2の金属層、90 集積回路チップ、92 他の基板、100 めっき基板、1000 電子デバイス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解めっき法によりめっき基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターン以外の領域に触媒層を設ける工程と、
(b)第1の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記基板上に金属を析出させて前記所定のパターンの第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記触媒層を除去する工程と、
(d)第2の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記第1の金属層の上方に第2の金属層を設ける工程と、
を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(a)は、
(a1)前記所定のパターン以外の領域に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を設ける工程と、
(a2)前記触媒吸着層の上方に触媒層を設ける工程と、
を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記工程(c)は、
(c1)前記所定のパターン以外の領域に真空紫外放射を照射することによって、前記触媒吸着層を分解する工程を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記工程(c)は、前記工程(c1)の後に、
(c2)前記基板を洗浄することによって、分解された前記触媒吸着層および前記触媒層を除去する工程をさらに含む、めっき基板の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記工程(c)では、
アルカリ性溶液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去する、めっき基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の無電解めっき液は、酸性溶液である、めっき基板の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記工程(c)では、アルカリ性無電解めっき液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去する、めっき基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記アルカリ性無電解めっき液は、前記第2の無電解めっき液である、めっき基板の製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかにおいて、
前記アルカリ性溶液は、pH10〜pH14である、めっき基板の製造方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれかにおいて、
前記第1の無電解めっき液はニッケルを含み、前記第2の無電解めっき液は銅を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項11】
請求項2ないし10のいずれかにおいて、
前記工程(a1)は、
基板上に前記所定のパターンのレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
を含み、
前記工程(a)は、(a2)の後に、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層および触媒層を除去する工程を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項12】
請求項2ないし10のいずれかにおいて、
前記工程(a)は、
基板上に所定のパターンの領域にレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層を除去する工程と、
を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、
前記基板は、光透過性基板であり、
前記所定のパターンは、1次元または2次元の周期的なパターンであり、
前記周期的なパターンの間隔は、可視光の波長以下である、めっき基板の製造方法。
【請求項1】
無電解めっき法によりめっき基板を製造する方法であって、
(a)基板上に所定のパターン以外の領域に触媒層を設ける工程と、
(b)第1の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記基板上に金属を析出させて前記所定のパターンの第1の金属層を設ける工程と、
(c)前記触媒層を除去する工程と、
(d)第2の無電解めっき液に前記基板を浸漬することにより、前記第1の金属層の上方に第2の金属層を設ける工程と、
を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記工程(a)は、
(a1)前記所定のパターン以外の領域に、界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を設ける工程と、
(a2)前記触媒吸着層の上方に触媒層を設ける工程と、
を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記工程(c)は、
(c1)前記所定のパターン以外の領域に真空紫外放射を照射することによって、前記触媒吸着層を分解する工程を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記工程(c)は、前記工程(c1)の後に、
(c2)前記基板を洗浄することによって、分解された前記触媒吸着層および前記触媒層を除去する工程をさらに含む、めっき基板の製造方法。
【請求項5】
請求項2において、
前記工程(c)では、
アルカリ性溶液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去する、めっき基板の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記第1の無電解めっき液は、酸性溶液である、めっき基板の製造方法。
【請求項7】
請求項5または6において、
前記工程(c)では、アルカリ性無電解めっき液で前記基板を洗浄することにより、前記触媒層を除去する、めっき基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記アルカリ性無電解めっき液は、前記第2の無電解めっき液である、めっき基板の製造方法。
【請求項9】
請求項5ないし8のいずれかにおいて、
前記アルカリ性溶液は、pH10〜pH14である、めっき基板の製造方法。
【請求項10】
請求項5ないし9のいずれかにおいて、
前記第1の無電解めっき液はニッケルを含み、前記第2の無電解めっき液は銅を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項11】
請求項2ないし10のいずれかにおいて、
前記工程(a1)は、
基板上に前記所定のパターンのレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
を含み、
前記工程(a)は、(a2)の後に、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層および触媒層を除去する工程を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項12】
請求項2ないし10のいずれかにおいて、
前記工程(a)は、
基板上に所定のパターンの領域にレジスト層を設ける工程と、
界面活性剤またはシラン系カップリング剤を含む触媒吸着層を前記基板上に設ける工程と、
前記レジスト層を除去することにより、前記所定のパターンの触媒吸着層を除去する工程と、
を含む、めっき基板の製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかにおいて、
前記基板は、光透過性基板であり、
前記所定のパターンは、1次元または2次元の周期的なパターンであり、
前記周期的なパターンの間隔は、可視光の波長以下である、めっき基板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−13825(P2008−13825A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187711(P2006−187711)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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