説明

めっき成膜装置およびめっき成膜方法

【課題】溝配線等をめっき成膜する際の配線内のボトムアップ量やめっき膜に含まれる不純物量を一定に保持するめっき成膜装置、成膜方法を提供する
【解決手段】めっき成膜装置10は、被成膜基板の表面にCu膜を成膜するためのめっき槽12と、一定量のめっき液を滞留させるめっき液タンク16と、めっき槽12とめっき液タンク16との間でめっき液を循環させるためのめっき液循環ライン18と、めっき液循環ライン18を流れるめっき液に水素を供給する水素供給ライン20を備える。めっき液を循環させながらめっき液に水素を供給して、被成膜基板の表面にCu膜をめっき成膜する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造プロセスにおいて、ダマシン配線等をめっき法を用いて形成するために用いられるめっき成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造プロセスでは、ダマシン配線等を形成するための金属膜堆積技術として、スパッタ法等により下地となる金属薄膜を形成し、この金属薄膜上にめっき法により金属膜を堆積させる方法が用いられている。
【0003】
このめっき成膜を行うためのめっき処理装置では、成膜品質を保つために、めっき液に含まれる無機・有機成分の濃度を、滴定等の方法を用いて定期的に測定して監視し、その結果に基づいて薬液を補充したり、めっき液を排出したりすることにより、一定の成分濃度を保持している。
【0004】
しかしながら、被処理基板のめっき成膜処理を逐次行っていくと、経時的にめっき液に最初から含まれている有機成分以外に、めっき成膜および液循環によって有機成分から有機副生成物が派生し、これが増加する。この有機副生成物の生成には、めっき液中の溶存酸素による有機成分の酸化や分解が関与しているものと考えられている。
【0005】
脱気や窒素吹き込み等の方法により、めっき液中の溶存酸素濃度を一定に管理することが、めっき反応の再現性を高める観点から検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に開示された技術は、めっき液の溶存酸素濃度を積極的に低減するものではなく、所定濃度以上となることを防止することを目的としているために、溶存酸素による有機副生成物の生成を抑制することができない。
【0006】
生成した有機副生成物は、めっき成膜時に、めっき成膜に有用な有機成分と同様に被成膜基板の表面へ吸着し、めっき膜中に取り込まれる。例えば、めっき電流が一定となるように電圧制御を行う定電流めっきでは、ダマシン配線内でのめっき膜成長の特性が有機副生成物によって変化してしまい、その結果、ボトムアップ量が低下してしまうという問題や、めっき膜中の不純物量が増加してしまうという問題が生じ、めっき膜の電気的特性にばらつきが生じる。
【特許文献1】特開2004−260106号公報(段落[0032]、[0050]、[0126]、[0127]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、めっき成膜による配線内のボトムアップ量やめっき膜中に含まれる不純物量を一定に保持するめっき成膜装置および成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は第1発明として、被成膜基板の表面にCu膜を成膜するためのめっき槽と、一定量のめっき液を滞留させるめっき液タンクと、前記めっき槽と前記めっき液タンクとの間でめっき液を循環させるためのめっき液循環ラインと、前記めっき液循環ラインを流れるめっき液に水素を供給する水素供給ラインと、を具備することを特徴とするめっき成膜装置を提供する。
【0009】
本発明は第2発明として、めっき液に被成膜基板を浸漬させて当該被成膜基板の表面にCu膜をめっき成膜する際に、前記めっき液に水素を供給することを特徴とするめっき成膜方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ダマシン配線等をめっき成膜する際に配線内のボトムアップ量やめっき膜中に含まれる不純物量を一定に保持することができる。これにより、半導体装置の電気的特性にばらつきが生じることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1にめっき成膜装置の概略構成を示す。めっき成膜装置10は、被処理基板としてのSiウエハWの表面に銅めっき膜(Cu膜)をめっき成膜するために、SiウエハWを浸漬させるために十分な量のめっき液が滞留しているめっき槽12と、複数枚のSiウエハWを保持してめっき槽12へアクセスするウエハ保持機構14と、一定量のめっき液を滞留させるめっき液タンク16と、めっき槽12とめっき液タンク16との間でめっき液を循環させるめっき液循環ライン18と、めっき液循環ライン18を流れるめっき液に水素を供給する水素供給ライン20と、めっき液に含まれる所定の成分を分析するめっき液分析部22と、めっき液を構成する各種薬液をめっき液タンク16へ補充する薬液供給部24と、めっき成膜装置10の運転制御を行うための制御部26を備えている。
【0012】
めっき槽12には、めっき槽12内のめっき液を排出するためのバルブを備えたドレイン32aが設けられている。めっき液タンク16には、めっき液タンク16内のめっき液を排出するためのバルブを備えたドレイン32bが設けられている。
【0013】
めっき液循環ライン18は、めっき槽12からめっき液タンク16へめっき液を送る第1配管34aと、めっき液タンク16からめっき槽12へめっき液を送る第2配管34bと、第1配管34aに設けられた送液ポンプ36aを有している。
【0014】
水素供給ライン20は第1配管34aに取り付けられており、めっき槽12からめっき液タンク16へ向かって流れるめっき液に水素ガスを供給する。水素供給ライン20の第1配管34a側端部には多孔質体28が取り付けられている。この多孔質体28の内部を通過した水素ガスは、多孔質体28の表面の多数の孔から吹き出し、気泡となってめっき液に取り込まれ、めっき液タンク16へ向かって流れる。
【0015】
こうしてめっき液に気泡の状態で取り込まれた水素ガスは、ガスの状態でまたはその一部がめっき液に溶解した後に、めっき液中の溶存酸素や酸素イオンと結合し、めっき液における溶存酸素濃度および酸素イオン濃度を低下させる。めっき液中の溶存酸素および酸素イオンは、めっき液に有用成分として添加されている有機成分と反応して有機副生成物を発生させる原因となっているため、このようにしてめっき液における溶存酸素濃度および酸素イオン濃度を低下させることにより、有機副生成物の発生を抑制することができる。なお、めっき液に含まれる溶存酸素および酸素イオンには、酸素(O)に由来するものの他に、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO)等に由来するものが含まれる。
【0016】
水素ガスを気泡の状態で含むめっき液がめっき液タンク16からめっき槽12へ送られてしまうと、この気泡がSiウエハWの表面に付着すること等によって、局所的にめっき不良が生じるおそれがある。そこで、めっき槽12へ送液されるめっき液から気泡を除去するために、第2配管34bは脱泡機構(デガッサー)を備えた構造となっている。
【0017】
すなわち、第2配管34bは、気液分離膜からなるチューブ42と、このチューブ42の外側に空間が形成されるようにチューブ42を囲む外管44とからなる二重構造となっている。外管44に真空ポンプ等の脱気装置46を取り付けて、チューブ42の外側空間を減圧することにより、チューブ42を流れるめっき液に含まれている水素ガスはチューブ42を通過して減圧された空間へと取り込まれる。こうしてめっき液の脱泡・脱気を行うことができる。このとき、水素と反応することなく存在している溶存酸素を脱気して、さらに溶存酸素濃度を低下させることができる。
【0018】
水素供給ライン20による水素ガスの供給は、めっき槽12とめっき液タンク16に新しいめっき液が供給され、めっき液循環ライン18によるめっき液の循環が開始されたときから開始することができ、その後、めっき液排出等のためにめっき液の循環を停止するまでの間、継続して行うことが好ましい。但し、水素ガス供給はこのような常時供給の形態に限られるものではなく、水素ガスの供給と停止を一定時間毎に繰り返す間欠運転の形態であっても、Cu膜のボトムアップ量を一定に保持する等の効果が後述するように認められる限りにおいて、採用することができる。
【0019】
薬液供給部24は、所定組成に調整された新しいめっき液や、めっき液の基本溶液となる硫酸銅基本液、めっき成膜時における溝配線内のめっき膜成長を促進させるためにめっき液に加えられる有機成分をはじめとした各種の有機成分,無機成分の補充に必要な薬液、めっき液を希釈するための純水等を、制御部26からの指令信号にしたがって、めっき液タンク16に供給する。薬液供給部24がこれらの薬液等をめっき槽12に供給する構成であってもよい。
【0020】
SiウエハWにめっき成膜が行われると、当然に、めっき液中のCuイオン濃度が低下し、めっき成膜に必要な無機成分や有機成分も減少する。そのため、薬液供給部24は定期的に一定量の硫酸銅基本液や各種薬液(以下「定期補充液」という)をめっき液タンク16に供給する。一方で、めっき成膜に用いられるめっき液の全量をほぼ一定とするために、めっき液タンク16またはめっき槽12から定期的にめっき液が排出される。
【0021】
めっき液分析部22は、めっき液の状態を監視するために制御部26からの指令信号にしたがって、送液ポンプ36bの駆動により一定量のめっき液をめっき液タンク16から採取し、めっき液を構成する所定の成分の成分濃度を、例えば、滴定法により定期的に測定する。図1では、この成分濃度分析のためのめっき液をめっき液タンク16から採取する構造となっているが、この採取はめっき槽12から行ってもよい。
【0022】
制御部26には、めっき成膜時に実際に用いられているめっき液に含まれる各種成分の許容濃度範囲等が記憶されている。制御部26は、所定の成分の濃度がこの許容濃度範囲から外れた場合に、めっき液の組成を調整するように、各種薬液を添加する等して、めっき液の品質を管理する。
【0023】
図2に、めっき電流値,基板回転数等のめっき成膜条件を一定としてめっき成膜処理を行ったときの,めっき膜成長を促進させるためにめっき液に添加されている有機成分から派生した有機副生成物の量と溝配線内のボトムアップ量との関係を示す。図2中の線Aは、新しいめっき液がめっき槽12およびめっき液タンク16に供給されてその循環が開始された時点から水素供給ライン20による水素供給を行った場合を示しており、線Bは、水素供給ライン20による水素供給を行わなかった場合を示している。
【0024】
なお、ボトムアップ量は新しいめっき液の供給直後に行われためっき成膜処理でのボトムアップ量を1として、それ以降のボトムアップ量を相対的に評価している。ボトムアップ量の測定は、a,b,c,d,e点で行っており、これらの各測定点でのめっき液使用時間はa<b<c<d<eとなっている。これは、有機副生成物は、新しいめっき液には含まれておらず、生成してもその分析が困難であるが、有機副生成物量は、水素ガスをめっき液に供給しない場合には、めっき液使用時間の経過にともなって増加する傾向にあることは明らかであるので、有機副生成物量をめっき液使用時間で置き換えて考えることができるからである。但し、有機副生成物の生成量はめっき液使用時間にのみ依存して増加するものではないため、図2の横軸を測定点で示すこととした。
【0025】
図2に示される通り、水素ガスを供給しない場合、めっき液使用時間が長くなるとともに、すなわち有機副生成物の増加とともに、ボトムアップ量が低下していることが確認された。これに対して、水素ガスを供給した場合、同じめっき成膜条件であっても、ボトムアップ量を一定に維持することができることが確認された。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。例えば、水素供給ライン20はめっき液タンク16に直接に取り付けられていてもよい。また、定期補充液として、水素ガスの溶存濃度を高めたものを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】めっき成膜装置の概略構成図。
【図2】めっき液使用時間とボトムアップ量との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0028】
10…めっき成膜装置、12…めっき槽、14…ウエハ保持機構、16…めっき液タンク、18…めっき液循環ライン、20…水素供給ライン、22…めっき液分析部、24…薬液供給部、26…制御部、28…多孔質体、32a・32b…ドレイン、34a…第1配管、34b…第2配管、36a・36b…送液ポンプ、42… チューブ、44…外管、46…脱気装置、W…Siウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成膜基板の表面にCu膜を成膜するためのめっき槽と、
一定量のめっき液を滞留させるめっき液タンクと、
前記めっき槽と前記めっき液タンクとの間でめっき液を循環させるためのめっき液循環ラインと、
前記めっき液循環ラインを流れるめっき液に水素を供給する水素供給ラインと、を具備することを特徴とするめっき成膜装置。
【請求項2】
前記水素供給ラインは、水素ガスを気泡化させてめっき液へ供給する構造を有することを特徴とする請求項1に記載のめっき成膜装置。
【請求項3】
めっき液に供給された水素ガスの気泡を除去する脱気機構をさらに具備することを特徴とする請求項2に記載のめっき成膜装置。
【請求項4】
めっき液に被成膜基板を浸漬させて当該被成膜基板の表面にCu膜をめっき成膜する際に、前記めっき液に水素を供給することを特徴とするめっき成膜方法。
【請求項5】
前記被処理基板を浸漬させるめっき槽と一定量のめっき液を滞留させるめっき液タンクとの間でめっき液を循環させながら、前記めっき槽から前記めっき液タンクへ流れるめっき液に水素ガスを気泡化させて供給し、前記めっき液タンクから前記めっき槽に流れるめっき液を脱気することを特徴とする請求項4に記載のめっき成膜方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−303417(P2008−303417A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150460(P2007−150460)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】