説明

ろ過カートリッジ、ろ過カートリッジの製造方法及び熱板溶着装置

【課題】 微粉末の発生がなく気密性に優れ、より高い精度のろ過処理能力が要求される用途に適する、中空糸膜を用いたろ過カートリッジを提供する。
【解決手段】 中空糸エレメント20の筒状枠21の端面と接続キャップ30の端面とを熱板溶着する。筒状枠21の端面に接する熱板として環状の熱板140を用いることにより、筒状枠21のみを加熱でき、中空糸膜22への影響を小さくできる。溶着時に中空糸膜22の端面を冷却する冷却治具150を用いることにより、中空糸膜22の端面が加熱軟化して処理流体の流路が閉塞することを効果的に防止できる。特に、中空糸膜、筒状枠及び接続キャップの全てが熱可塑性樹脂、好ましくは結晶性樹脂、中でも、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂から形成されたろ過カートリッジの製造に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子産業、一般産業、医薬医療業界、食品産業、電力業界などで使用される中空糸膜を用いたろ過カートリッジ、ろ過カートリッジの製造方法及び熱板溶着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子産業等の上記した各種業界において、中空糸膜、該中空糸膜を保持する筒状枠、並びに、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップを、全て熱可塑性樹脂、中でもポリオレフィン系樹脂から成形したろ過カートリッジを具備する中空糸膜フィルタが、原水等の被処理流体をろ過処理する除微粒子フィルタとして用いられている。ポリオレフィン系樹脂は、低溶出という基本性能を具備しているため、高い除微粒子性能が要求される用途に適していると共に、長寿命であるという特性を有する。
【0003】
ろ過カートリッジを構成する筒状枠と接続キャップとは被処理流体と流体との混合を防止するため、厳密に密着している必要がある。従来、両者を接合するに当たっては接着剤を用いる手段、あるいは、シール部材を介したねじ込み手段などが用いられているが、接着剤を使用した場合には、処理流体中への接着剤自体の溶出の可能性があり、より高いろ過処理能力が要求される用途には適さない。また、ねじ込み式の場合には、ねじ込み時における微粉末の発生があり、同様の問題がある。
【0004】
一方、筒状枠と接続キャップとを超音波溶着、スピン溶着、レーザー溶着、熱板溶着などの溶着技術を用いて一体化することも考えられる。しかしながら、超音波溶着の場合には、ポリオレフィン系樹脂では超音波伝達距離が短く、溶着強度が弱いという問題がある。この点は、ポリオレフィン系樹脂以外の他の熱可塑性樹脂でも同様である。スピン溶着は、筒状枠と接続キャップとの間に円心度のばらつきがある場合、溶着時に微粉末が多量に発生すると共に気密性も低い。レーザー溶着は、塗布する反射板剤の溶出が考えられ、気密性の点でも問題がある。
【0005】
これに対し、熱板溶着では、筒状枠及び接続キャップの各接合面を軟化させた後、互いに突き合わせて冷却固化させるため、ポリオレフィン系樹脂を含む熱可塑性樹脂のいずれでも適用でき、微粉末の発生もなく気密性に優れたろ過カートリッジを製作できることが期待できる。しかしながら、筒状枠に支持される中空糸膜は、一端部がポッティング剤により筒状枠に固着され、筒状枠及び中空糸膜の一方の端面はほぼ面一となるように加工されている。このため、公知の円板状の熱板を筒状枠の端面(接合面)に当接した場合には、中空糸膜の端面も加熱し軟化してしまい、中空糸膜に形成されている処理流体の流路を閉塞してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、熱板溶着手段を用いることにより、微粉末の発生もなく気密性に優れ、より高い精度のろ過処理能力が要求される用途に適する、中空糸膜を用いたろ過カートリッジを提供することを課題とする。また、本発明は、筒状枠及び接続キャップの各端面のみを加熱し、中空糸膜の端面を実質的に加熱せずに、筒状枠と接続キャップとを一体化できるろ過カートリッジの製造方法及び該製造方法に用いる熱板溶着装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、一端部が筒状枠の開口端付近の内周面に固着されて支持され、該筒状枠内に充填される中空糸膜を備えた中空糸エレメントと、
前記筒状枠の開口端の端面に、一端面が接合されて一体化され、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップとを備えたろ過カートリッジであって、
前記筒状枠の開口端の端面と前記接続キャップの一端面とが、熱板溶着により一体化されていることを特徴とするろ過カートリッジを提供する。
請求項2記載の本発明では、前記中空糸エレメントの筒状枠と接続キャップとが、熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載のろ過カートリッジを提供する。
請求項3記載の本発明では、前記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする請求項2記載のろ過カートリッジを提供する。
請求項4記載の本発明では、前記結晶性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー、フッ素重合体、セルロース、又は液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項3記載のろ過カートリッジを提供する。
請求項5記載の本発明では、一端部が筒状枠の開口端付近の内周面に固着されて支持され、該筒状枠内に充填される中空糸膜を備えた中空糸エレメントと、
前記筒状枠の開口端の端面に、一端面が接合されて一体化され、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップとを備えたろ過カートリッジの製造方法であって、
前記筒状枠の開口端の端面と前記接続キャップの一端面とを、熱板により軟化させた後、両者を突き合わせて加圧する熱板溶着手段を用いたことを特徴とするろ過カートリッジの製造方法を提供する。
請求項6記載の本発明では、前記筒状枠の開口端の端面を軟化させる熱板として、前記中空糸膜に対応する部分が中空となっている環状に形成された熱板を使用し、環状に形成された該熱板の中空部を介して中空糸膜の一端部を冷却しながら加熱することを特徴とする請求項5記載のろ過カートリッジの製造方法を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記筒状枠の開口端の端面及び前記接続キャップの一端面をそれぞれ軟化させる2つの熱板を使用し、そのうち、筒状枠の開口端の端面を軟化させる熱板として、前記中空糸膜に対応する部分が中空となっている環状に形成された熱板を使用することを特徴とする請求項6記載のろ過カートリッジの製造方法を提供する。
請求項8記載の本発明では、前記中空糸エレメントの筒状枠と接続キャップとが、熱可塑性樹脂から形成されているものに適用されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1に記載のろ過カートリッジの製造方法を提供する。
請求項9記載の本発明では、前記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする請求項8記載のろ過カートリッジの製造方法を提供する。
請求項10記載の本発明では、前記結晶性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー、フッ素重合体、セルロース、又は液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項9記載のろ過カートリッジの製造方法を提供する。
請求項11記載の本発明では、一端部が筒状枠の開口端付近の内周面に固着されて支持され、該筒状枠内に充填される中空糸膜を備えた中空糸エレメントと、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップとを、前記筒状枠の開口端の端面に、前記接続キャップの一端面を接合して一体化することにより形成されるろ過カートリッジの製造に用いる熱板溶着装置であって、
前記中空糸膜に対応する部分が中空である環状に形成され、前記筒状枠の一方の開口端の端面に当接することにより、該端面を軟化させる環状の熱板を備えると共に、
環状に形成された前記熱板の中空部に組み込まれ、中空糸膜の一端部を冷却する冷却治具を有することを特徴とする熱板溶着装置を提供する。
請求項12記載の本発明では、前記冷却治具が、環状に形成された前記熱板の中空部内を軸方向に沿って可動に設けられていることを特徴とする請求項11記載の熱板溶着装置を提供する。
請求項13記載の本発明では、前記冷却治具は、冷却水が循環する循環パイプと、該循環パイプが収容されると共に、環状に形成された前記熱板の中空部内に挿入可能な形状を有する冷却容器とを備えてなることを特徴とする請求項11又は12記載の熱板溶着装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のろ過カートリッジは、中空糸膜が収容された筒状枠の端面と接続キャップの端面とが、熱板溶着により一体化されている。このため、接合部における微粉末の発生がないと共に気密性に優れている。特に、中空糸膜、筒状枠及び接続キャップを熱可塑性樹脂、好ましくは結晶性樹脂、中でも、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂から形成した場合には、素材自体が低溶出であることも相俟って、高いろ過処理能力を発揮できる。
【0009】
また、本発明のろ過カートリッジの製造方法及び熱板溶着装置によれば、筒状枠の端面と接続キャップの端面とを熱板溶着できると共に、筒状枠の端面に接する熱板として環状の熱板を用いることにより、筒状枠のみを加熱でき、中空糸膜への影響を小さくできる。さらに、溶着時に中空糸膜の端面を冷却する冷却治具を用いることにより、中空糸膜の端面が加熱軟化して処理流体の流路が閉塞することを効果的に防止できる。このため、本発明のろ過カートリッジの製造方法及び熱板溶着装置は、特に、中空糸膜、筒状枠及び接続キャップの全てが熱可塑性樹脂、好ましくは結晶性樹脂、中でも、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂から形成されたろ過カートリッジの製造に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態にかかるろ過カートリッジ10を示す図であり、中空糸エレメント20及び接続キャップ30を備えて構成される。
【0011】
中空糸エレメント20は、筒状枠21と、該筒状枠21に充填される中空糸膜22とを備えてなる。筒状枠21は、長手方向の一方の端部が開口端21aとして形成され、他方の端部21bはろ過カートリッジ10を収容するろ過器のハウジング(図示せず)の底壁に連結可能に設けられる。周壁21cには、多数の貫通孔21dが形成されており、他方の端部21bがハウジングの底壁に連結されて密閉されることにより、被処理流体は、該貫通孔21dを通じて筒状枠21内に浸入する。
【0012】
中空糸膜22は、その一端部22aが、筒状枠21の開口端21a付近の内周面に固着されて筒状枠21内に充填されている。実際には、中空糸膜22を筒状枠21内に挿入した後、一端部22aと開口端21a付近とをポッティング剤により数mmから十数mmの範囲(図2のAの範囲)で固着し、一端部22a及び開口端21aの一部を直径方向にカットして製作される。
【0013】
接続キャップ30は、中空糸エレメント20を、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッド(図示せず)に連通させるため、該中空糸エレメント20に一体的に接合される。すなわち、中空糸エレメント20の筒状枠21と同じ径で形成された大径部31と、固定ヘッドの流出路にシール部材を介して接続される小径部32とを備えた筒状の一体成形品として形成されており、該小径部32を固定ヘッドの流出路に接続することにより、筒状枠21の外側から貫通孔21dを通過する被処理流体が、中空糸膜22によりろ過され、小径部32を経て固定ヘッドの流出路へと送られる。
【0014】
ここで、高い除微粒子性能を備えると共に、長寿命であることから、上記したように、各種産業分野、例えば、電子産業、一般産業、医薬医療業界、食品産業、電力業界などにおいて、中空糸エレメント20の筒状枠21、中空糸膜22及び接続キャップ30を、低溶出であることを特徴とするポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から製造したものが用いられている。このため、中空糸エレメント20の筒状枠21と接続キャップ30とを固着して一体化するに当たっては、ポリオレフィン系樹脂の低溶出であるという特徴を阻害しない固着手段が求められ、中空糸エレメント20の筒状枠21及び接続キャップ30の固着部分は、被処理流体と処理流体との混合を防止するために高い気密性を備えることはもちろんのこと、固着部分における微粉末の発生のないことが要求される。
【0015】
そこで、かかる要求を満足するために、本実施形態では、中空糸エレメント20の筒状枠21と接続キャップ30とを熱板溶着手段により固着している。熱板溶着は、溶着部の気密性に優れると共に、溶着時における微粉末の発生も少ない。図3は、本実施形態で用いた熱板溶着装置100の概略構成図である。
【0016】
この図に示したように、この熱板溶着装置100は、ガイド部材110に支持され、図3の手前側と奥側とに移動可能に設けられた熱板支持フレーム120と、該熱板支持フレーム120の上部フレーム121に支持されたキャップ用の熱板130と、熱板支持フレーム120の上部フレーム121に対して所定の距離をおいて設けられた下部フレーム122に支持されたエレメント用の熱板140と、下部フレーム122に連結され、冷却治具150を支持する冷却治具支持フレーム160とを備えて構成される。
【0017】
キャップ用の熱板130及びエレメント用の熱板140は、図示しない電磁誘導発振器により加熱される。また、各熱板130,140は、本実施形態ではいずれも環状に形成されているが、キャップ用の熱板130は、接続キャップ30の端面31aに当接可能であればよく、円板状であってもよい。これに対し、エレメント用の熱板140は、内径が筒状枠21の開口端21aの内径とほぼ同じで、中空糸膜22に対応する部分が中空となっている環状に形成されていることが必須である。
【0018】
冷却治具150は、環状に形成されたエレメント用の熱板140の中空部に装填される。冷却治具150は、中空糸膜22の端面を冷却し、エレメント用の熱板140によって筒状枠21の開口端21aの端面を加熱した際に、中空糸膜22の端面への熱の影響を抑制するために設けられる。これにより、中空糸膜22の端面に形成されている処理流体の流路を閉塞せずに、筒状枠21の開口端21aの端面のみを加熱軟化させることができる。
【0019】
冷却治具150の構造は任意であるが、本実施形態では、エレメント用の熱板140の中空部に挿入可能な略円筒状に形成された冷却容器151と、該冷却容器151内に配設され、冷却水が循環する循環パイプ152とを備えてなる。循環パイプ152に冷却水を流すことにより、冷却容器152を介して中空糸膜22の端面を冷却する。
【0020】
また、冷却治具150は、環状に形成されたエレメント用の熱板140の中空部内を軸方向に沿って可動に設けることが好ましい。上記したように、中空糸膜22の一端部22aは、筒状枠21の開口端21aにポッティング剤により固着された後、その一部を直径方向にカットして中空糸膜22の端面にろ過処理された処理流体を流出させるための孔(処理流体の流路)を開設している。このため、カットされた筒状枠21の開口端21aの端面と中空糸膜22の一端部22aの端面とは、必ずしも面一で正確に平坦な面になっているとは限らず、両者間に僅かな凹凸(段差)が生じている場合もある。このような段差が生じている場合に、冷却治具150が固定されていたのでは、冷却治具150を構成する冷却容器151の当接面と中空糸膜22の端面との間に隙間が生じたり、逆に、環状のエレメント用の熱板140と筒状枠21の端面との間に隙間が生じたりして、中空糸膜22の端面の冷却や筒状枠21の端面の加熱を阻害する。これに対し、冷却治具150が可動であれば、筒状枠21の開口端21aの端面と中空糸膜22の一端部22aの端面との間に段差が生じていても、熱板140及び冷却治具150は、筒状枠21の開口端21aの端面及び中空糸膜22の一端部22aの端面により確実に当接する。
【0021】
本実施形態においては、冷却容器152の上部と冷却治具支持フレーム160との間にコイルスプリングなどの弾性部材161を介在させ、該冷却容器152がエレメント用の熱板140に独立して上下動する構成とすることにより、上記した段差の有無に拘わらず、冷却容器152の底面が中空糸膜22の端面に当接する構成としている。
【0022】
なお、熱板溶着装置100は、各熱板130及び140に対して離接可能な上ワーク支持部及び下ワーク支持部(いずれも図示せず)を備えており、下ワーク支持部に中空糸エレメント20を保持させ、上ワーク支持部に接続キャップ30を保持させて加工される。
【0023】
次に、上記した熱板溶着装置100を用いてろ過カートリッジ10を製造する方法について説明する。まず、上記のように中空糸膜22を筒状枠21内に充填した中空糸エレメント20及び接続キャップ30を準備し、それぞれを熱板溶着装置100の下ワーク支持部及び上ワーク支持部に保持させる。また、電磁誘導発振器を駆動させ各熱板130,140を所定の温度に加熱しておくと共に、冷却治具150の循環パイプ152には冷却水を循環させておく。各熱板130,140の加熱温度は、中空糸エレメント20を構成する筒状枠21、中空糸膜22及び接続キャップ30の素材によっても異なるが、通常約400〜800℃の範囲で適宜に設定される。
【0024】
かかる状態で下ワーク支持部を動作させ、中空糸エレメント20を構成する筒状枠21の開口端21aの端面を、環状に形成されたエレメント用の熱板140に約10〜30秒程度当接させる。筒状枠21の開口端21aの端面がエレメント用の熱板140に当接した際、例えば、筒状枠21の端面よりも中空糸膜22の端面が突出している場合には、該中空糸膜22の端面が冷却容器151の底面を押圧して上昇させる一方、弾性部材161の弾性力によって該冷却容器151の底面と中空糸膜22の端面とが密接した状態で、筒状枠21の端面が加熱されて軟化する。
【0025】
一方、上ワーク支持部は、下ワーク支持部の動作にほぼ同期して動作し、接続キャップ30の端面31aをキャップ用の熱板130に約10〜30秒程度当接させる。これにより、接続キャップ30の端面31aも加熱されて軟化する。
【0026】
次に、熱板支持フレーム120をガイド部材110に沿って、中空糸エレメント20と接続キャップ30との対向面間の外方に至るまで移動させた後、下ワーク支持部及び上ワーク支持部を相互に接近させ、中空糸エレメント20の筒状枠21の開口端21aの端面と接続キャップ30の端面31aとを突き合わせ、沈み混み量(図2のBで示した範囲の長さ)が約0.5〜2.0mm程度なるように相互に押しつける。その後、約20〜40秒程度冷却する。
【0027】
本実施形態によれば、中空糸エレメント20と接続キャップ30とを熱板溶着手段により溶着し一体化しているため、溶着部分の気密性に優れると共に微粉末の発生もない。特に、本実施形態では、中空糸膜22の端面を冷却治具150によって冷却しながら中空糸エレメント20の筒状枠21の端面を加熱する構成であるため、必要な箇所のみ加熱でき、中空糸膜22の処理流体の流出流路を閉塞し、ろ過液の流出量に影響が生じることを抑制できる。
【0028】
なお、上記実施形態においては、キャップ用の熱板130とエレメント用の熱板140とをそれぞれ別に備えた熱板溶着装置100を用いているが、図4に示したように、熱板200を一つのみ有し、該熱板200の表裏両面を利用して中空糸エレメント20の筒状枠21の開口端21aの端面と接続キャップ30の端面31aとを加熱する構成とすることもできる。但し、この場合、中空糸膜22の端面の加熱による軟化を防止するため、該熱板200は環状に形成する必要があると共に、その中空部には冷却治具250を装着した構成とする必要がある。
【0029】
また、上記実施形態においては、中空糸エレメント20を構成する筒状枠21及び中空糸膜22、並びに接続キャップ30として、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から製造したものを例に挙げ説明しているが、溶着部分の気密性と微粉末の発生防止に優れる熱板溶着が適する材料としては、その他の熱可塑性樹脂であってもよい。特に、ポリエチレンやポリプロピレンと同様に、超音波の伝播距離が短く超音波溶着の不向きな結晶性樹脂、中でも、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー、フッ素重合体、セルロース、又は液晶性ポリマーを素材とするものを溶着するのに適する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかるろ過カートリッジを示す分解斜視図である。
【図2】図2は、上記実施形態にかかるろ過カートリッジを示す一部断面図である。
【図3】図3は、本発明の一の実施形態にかかる熱板溶着装置の概略構造を示す図である。
【図4】図4は、本発明の他の実施形態にかかる熱板溶着装置の概略構造を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 ろ過カートリッジ
20 中空糸エレメント
21 筒状枠
22 中空糸膜
30 接続キャップ
100 熱板溶着装置
130,140,200 熱板
150,250 冷却治具
151 冷却容器
152 循環パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が筒状枠の開口端付近の内周面に固着されて支持され、該筒状枠内に充填される中空糸膜を備えた中空糸エレメントと、
前記筒状枠の開口端の端面に、一端面が接合されて一体化され、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップとを備えたろ過カートリッジであって、
前記筒状枠の開口端の端面と前記接続キャップの一端面とが、熱板溶着により一体化されていることを特徴とするろ過カートリッジ。
【請求項2】
前記中空糸エレメントの筒状枠と接続キャップとが、熱可塑性樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1記載のろ過カートリッジ。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする請求項2記載のろ過カートリッジ。
【請求項4】
前記結晶性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー、フッ素重合体、セルロース、又は液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項3記載のろ過カートリッジ。
【請求項5】
一端部が筒状枠の開口端付近の内周面に固着されて支持され、該筒状枠内に充填される中空糸膜を備えた中空糸エレメントと、
前記筒状枠の開口端の端面に、一端面が接合されて一体化され、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップとを備えたろ過カートリッジの製造方法であって、
前記筒状枠の開口端の端面と前記接続キャップの一端面とを、熱板により軟化させた後、両者を突き合わせて加圧する熱板溶着手段を用いたことを特徴とするろ過カートリッジの製造方法。
【請求項6】
前記筒状枠の開口端の端面を軟化させる熱板として、前記中空糸膜に対応する部分が中空となっている環状に形成された熱板を使用し、環状に形成された該熱板の中空部を介して中空糸膜の一端部を冷却しながら加熱することを特徴とする請求項5記載のろ過カートリッジの製造方法。
【請求項7】
前記筒状枠の開口端の端面及び前記接続キャップの一端面をそれぞれ軟化させる2つの熱板を使用し、そのうち、筒状枠の開口端の端面を軟化させる熱板として、前記中空糸膜に対応する部分が中空となっている環状に形成された熱板を使用することを特徴とする請求項6記載のろ過カートリッジの製造方法。
【請求項8】
前記中空糸エレメントの筒状枠と接続キャップとが、熱可塑性樹脂から形成されているものに適用されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1に記載のろ過カートリッジの製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂が結晶性樹脂であることを特徴とする請求項8記載のろ過カートリッジの製造方法。
【請求項10】
前記結晶性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、アイオノマー、フッ素重合体、セルロース、又は液晶性ポリマーであることを特徴とする請求項9記載のろ過カートリッジの製造方法。
【請求項11】
一端部が筒状枠の開口端付近の内周面に固着されて支持され、該筒状枠内に充填される中空糸膜を備えた中空糸エレメントと、被処理流体の流入路及び処理流体の流出路を備えた固定ヘッドに接続される接続キャップとを、前記筒状枠の開口端の端面に、前記接続キャップの一端面を接合して一体化することにより形成されるろ過カートリッジの製造に用いる熱板溶着装置であって、
前記中空糸膜に対応する部分が中空である環状に形成され、前記筒状枠の一方の開口端の端面に当接することにより、該端面を軟化させる環状の熱板を備えると共に、
環状に形成された前記熱板の中空部に組み込まれ、中空糸膜の一端部を冷却する冷却治具を有することを特徴とする熱板溶着装置。
【請求項12】
前記冷却治具が、環状に形成された前記熱板の中空部内を軸方向に沿って可動に設けられていることを特徴とする請求項11記載の熱板溶着装置。
【請求項13】
前記冷却治具は、冷却水が循環する循環パイプと、該循環パイプが収容されると共に、環状に形成された前記熱板の中空部内に挿入可能な形状を有する冷却容器とを備えてなることを特徴とする請求項11又は12記載の熱板溶着装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−51408(P2006−51408A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232713(P2004−232713)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【出願人】(000195649)精電舎電子工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】