ろ過システム
【課題】従来のろ過処理で十分に除去できないクリプトスポリジウムなどの微生物、微粒子を除去させるとともに、膜、ろ材層双方の目詰まりを抑制させ、逆洗頻度、逆洗時間、逆洗水量を少なくさせるとともに、それらの交換寿命を延長させる。
【解決手段】篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」などのろ材を粒径別に積層したろ材層3の下側に、金属、セラミックなどの異方性多孔質材料で構成され、細孔径が0.1μm〜数10μmにされた膜15を配置し、ろ過池2に流入した被処理水をろ材層3→膜15という経路で流してろ過する。
【解決手段】篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」などのろ材を粒径別に積層したろ材層3の下側に、金属、セラミックなどの異方性多孔質材料で構成され、細孔径が0.1μm〜数10μmにされた膜15を配置し、ろ過池2に流入した被処理水をろ材層3→膜15という経路で流してろ過する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場などで使用されるろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場では河川や貯水池などの水源から原水を取水し、凝集、フロック形成、沈殿、ろ過および殺菌の5つの単位プロセスによって、懸濁質とコロイド質の除去、および細菌等を無害化し、清澄な水道水として需要家に供給している。
【0003】
凝集、フロック形成、沈殿、ろ過による一連の除濁処理には、凝集剤を用いる方法が一般的であり、凝集剤には通常、鉄やアルミニウム等の無機金属塩が用いられる。凝集剤の効果はさまざまな物理的、生物化学的な影響を受け、最適凝集条件は、多くの因子によって定まる複雑な平衡の上に成り立っているため、一定の処理水質を確保するには熟練を要する。
【0004】
図20は、従来の凝集・沈澱後の処理水をろ過する除濁処理システムを示すフロー図である。
【0005】
この図において、原水は、着水井100に一旦貯蔵され、ここで浄水工程に送る水量が調整される。着水井100より送られた原水は、凝集・沈澱池101に入り、ここで、凝集剤注入→急速撹拌→緩速撹拌→沈澱の手順で原水内の濁質の大半である大きな懸濁物が除去された後、ろ過池102に送られる。ろ過池102では、凝集・沈澱池101で除去しきれない微細な浮遊物をろ過して分離したろ過水が次の浄水処理工程に送られる。
【0006】
この際、ろ過池102には、緩速ろ過(ろ過速度3〜6m/日)と、急速ろ過(ろ過速度120〜150m/日)が有り、今日では、設置面積が小さく、除濁能力が高い事から、急速ろ過が多く採用されている。
【0007】
次に、図21の構成図を参照ながら、ろ過池102として使用される急速ろ過池について説明する。
【0008】
急速ろ過池131は、篩い分けた天然の珪砂からなる「ろ材」が敷き詰められたろ材層103と、ろ材の流出を防ぐポーラスコンクリート層104と、それらを支える分散砂利層105と、有孔コンクリート板106を支える支持梁107とで構成されている。また、急速ろ過池131の下部に形成された集水渠108には、ろ材層103を逆流洗浄(以下、逆洗、または逆洗浄と記載する)するために必要な逆洗水を導入する逆洗水導入管109と、空気を導入する空気導入管113とが接続され、バルブ111、114によって、逆洗水の水量、空気の流量が調整できるようになっている。またろ材層103より上部には、逆洗排水を排出するための逆洗排水排出管110が接続され、バルブによって、逆洗水排水の水量が調整できるようになっている。
【0009】
そして、急速ろ過池131の上部側に被処理水が導入されると、重力でろ材層103中を下降し、ろ材の中を流れ落ちる間に被処理水中の懸濁物質が、砂の隙間に入り込んで、被処理水から取り除かれる。流れ落ちる速さは、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度であり、ろ過水は、ポーラスコンクリート層104および分散砂利層105、有孔コンクリート板106を通って、集水渠108に一時的に貯留された後、次の浄水処理工程に送られる。ろ材層103では、ろ材の目詰まりを防ぐため、上部には粒径が大きく比重が小さい「アンスラサイト」などが、下部には粒径が小さく比重が大きい珪砂が用いられる。
【0010】
また、目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管109から逆洗水を導入して下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、ろ材層103から取り除かれて逆洗排水排出管110から排水される。なお、逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層103のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と、水流の剪断力とにより、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ112の開放に伴い、ろ材や膜から分離された濁質が逆洗排水排出管110から排出され、図示していない排水処理工程に送られる。また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、ろ過池102の下部側に設けられた空気導入管113から空気を吹き込んでろ材に付着した濁質を剥離する。いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ111、114で調整する。
【0011】
こうした従来の除濁処理の運転方法を最適化する技術として特開2002−192163号公報(特許文献1)に記載のものがある。一方、平成8年10月に厚生省(現厚生労働省)より通達された「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」では、ろ過池出口の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが制定され、浄水場における濁度管理が重要な課題となっている。
【0012】
クリプトスポリジウムは動物に感染する寄生性原虫で、体外ではオーシストの形で存在しており、大きさは4〜6μmと言われている。クリプトスポリジウムのオーシストの除去率は通常処理を行った場合で、砂ろ過のみの場合、97〜99%、凝集沈殿と砂ろ過とを併用させた場合でも、99.7〜99.9%と言われており、確実にすべてのクリプトスポリジウムを除去できない。
【0013】
特に、設置面積が小さく、除濁能力が高い事から、ろ過手段として多く採用されている急速ろ過池131は、浄水場の浄水処理工程で懸濁物質を除去する最終の工程であり、クリプトスポリジウムに対しても、当然最終段階の重要な除去プロセスとなる。しかし、ろ材の洗浄からろ過工程に移行時、あるいは処理水量の変更時において急激にろ過流量が変わったとき、濁度やクリプトスポリジウムがろ過水側に流出するか、洗浄排水が十分に排水されず、処理再開後のろ過水に混入する恐れがある。
【0014】
このような背景のもと、従来の除濁処理の代替え手段として、精密ろ過膜や限外ろ過膜に関する研究開発が進み、我が国の浄水場において、膜ろ過が急速に普及し始めている。海外においては、既に日量数十万トン規模の膜ろ過浄水場が稼動している。
【0015】
しかし、精密ろ過膜や限外ろ過膜による膜ろ過は、確実に濁質物を除去し、良質な処理水質を得られるという利点がある一方、精密ろ過膜や限外ろ過膜の素材として最も普及している有機高分子化合物(酢酸セルロース、ポリスレホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリトニトリル)の膜は、運転時間の経過とともに膜の圧密化や損傷などの物理的劣化、加水分解・酸化などによる化学的劣化、微生物により膜が資化される生物的劣化などの膜自身の変質による性能低下や、微粒子・懸濁物質の膜表面への蓄積などの外的要因により、性能が低下する。このため寿命が3年〜5年とされ、膜交換に要する費用のため、ランニングコストが従来の浄水方式よりも高いという欠点がある。
【0016】
こうしたランニングコストを低減する従来技術として、特開2001−225057号公報(特許文献2)に記載のものがある。この従来技術は、凝集剤を利用して凝集フロックを形成し、これを砂ろ過により除去する。さらに耐久性の優れた金属膜ろ過装置により微粒子・懸濁物質を確実に除去するろ過システムである。
【特許文献1】特開2002−192163公報
【特許文献2】特開2001−225057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、上述した旧来の凝集、フロック形成、沈殿、ろ過による一連の除濁処理では、以下の課題があった。
【0018】
[1]クリプトスポリジウム等の微小病原原虫のろ過水への残留
懸濁物質を除去する最終の工程であるろ過池でも除去しきれなかったクリプトスポリジウム等の微小病原原虫がろ過水に残留する場合がある。特に急速ろ過池では、ろ材の洗浄からろ過工程に移行時、あるいは処理水量の変更時において急激にろ過流量が変わったとき、濁度やクリプトスポリジウムがろ過水側に流出するか、ろ材の逆流洗浄排水が十分に排水されない恐れがある。
【0019】
[2]多量の凝集剤注入およびろ過池のろ過損失水頭の上昇
除濁能力の向上のため、凝集剤の注入量を多くすると、沈殿池で除去しきれない凝集剤がろ過池に流入し、ろ過池が目詰まりして、ろ過池の損失水頭が上昇する。一方、従来の除濁処理の代替え手段として開発された精密ろ過膜や限外ろ過膜は、確実に濁質物を除去し、良質な処理水質を得られるという利点があるが、以下の課題があった。
【0020】
[3]ランニングコストの増加
精密ろ過膜や限外ろ過膜の素材として最も普及している有機高分子化合物(酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリトニトリル)の膜は、運転時間の経過とともに膜の圧密化や損傷などの物理的劣化、加水分解・酸化などによる化学的劣化、微生物により膜が資化される生物的劣化などの膜自身の変質による性能低下や、微粒子・懸濁物質の膜表面への蓄積などの外的要因などにより性能が低下する。このため、寿命が3年〜5年とされ、膜交換に要する費用のため、ランニングコストが従来の浄水方式よりも高いという欠点がある。また、上述した特開2001−225057号公報に記載された従来の除濁システムと、金属膜ろ過装置を組み合わせたものでは、金属繊維を積層して焼結した不繊布状の金属膜をプリーツ状に折り畳んで円筒型としたエレメントで構成されており、以下の課題があった。
【0021】
[4]不繊布状構造による透過流束の低下
不繊布状構造の金属膜は、金属膜の表面だけでなく、金属膜内部でも捕捉する構造となっているため、金属表面では捕捉できない微小な粒子や懸濁物質を膜内部で捕捉できるメリットがある一方で、膜の内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質が通常の洗浄で除去できず、運転時間の経過とともに透過流束が低下しやすいという問題がある。円筒型エレメントによる金属膜は、金属膜を充填するスペースに対して有効な膜ろ過面積が小さいため、金属膜ろ過装置が大きくなり、設置スペースが増大するという問題がある。円筒を細くして装置内に充填する本数を増やす方法もあるが、必要以上に円筒を細く丸めることは、膜の孔径が拡大する恐れがあるため適切ではない。
【0022】
本発明は上記の事情に鑑み、高い透過流速を確保して被処理水の流量を大きくすることができ、かつ処理コストを低減させつつ、クリプトスポリジウムなどの微小病原原虫を確実に除去できるとともに、膜の逆洗浄回数を低減でき、運転コストを低く抑えることができるろ過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するために本発明は、ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、前記ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、前記ろ過池の上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填したことを特徴としている。
【0024】
また、前記異方性多孔質材料を用いた膜は、孔径が異なる複数段としたことを特徴としている。
【0025】
さらに、前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗排水排出管を接続し、前記膜を逆洗浄した際に出る逆洗排水を前記逆洗排水排出管から排出させることを特徴としている。
【0026】
さらに、前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗水導入管を接続し、この逆洗水導入管を介して、前記ろ過池内に逆洗水を導き、前記ろ材を洗浄することを特徴としている。
【0027】
さらに、前記膜に対する逆洗水の一部または全量を前記ろ材の逆洗水として活用し、前記膜および前記ろ材を同時に逆洗することを特徴としている。
【0028】
さらに、前記膜の洗浄と前記ろ材の洗浄とを各々、異なる水量あるいは逆洗周期とすることを特徴としている。
【0029】
さらに、前記膜の逆洗水量を0.1〜0.5m3/(min・m2)にすることを特徴としている。
【0030】
さらに、前記膜の逆洗水量と、前記ろ材の逆洗水量との総和が0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように調整することを特徴としている。
【0031】
さらに、前記膜からなる構造体で、前記ろ材を支持することを特徴としている。
【0032】
さらに、前記ろ過池の下部にある集水渠に前記膜を設けたことを特徴としている。
【0033】
さらに、ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、細孔径が異なる複数の異方性多孔質材料によって構成される複数の膜を、上段側になるほど、細孔径が順次、大きくなるように重ねて、前記ろ過池の下部に配置することを特徴としている。
【0034】
さらに、前記各膜毎に、各膜の逆洗水量あるいは逆洗サイクルを変更することを特徴としている。
【0035】
さらに、前記ろ過池のろ過速度を1〜1000m/日、好ましくは、1〜200m/日になるように調整することを特徴としている。
【0036】
さらに、前記各膜を透過速度1〜1000m/日で逆洗浄することを特徴としている。
【0037】
さらに、前記膜の下部に紫外線照射設備を設けたことを特徴としている。
【0038】
さらに、前記膜の上部に紫外線照射設備を設けたことを特徴としている。
【0039】
さらに、前記ろ過池の下部側にユニット構造体を設け、このユニット構造体の内部に、前記膜を交換自在に配置したことを特徴としている。
【0040】
さらに、既存の急速ろ過池、あるいは緩速ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填したことを特徴としている。
【0041】
さらに、前記ろ材は、篩い分けた天然の珪砂、アンスラサイト、粒状活性炭のいずれか一つを含むことを特徴としている。
【0042】
さらに、前記膜の細孔径を0.1μm以上10μm未満の範囲とし、好ましくは、4μm以下にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、高い透過流速を確保して被処理水の流量を大きくすることができ、かつ処理コストを低減させつつ、クリプトスポリジウムなどの微小病原原虫を確実に除去できるとともに、膜の逆洗浄回数を低減でき、運転コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
〈異方性多孔質材料〉
初めに、本発明者らが開発した異方性多孔質材料について説明する。
【0045】
金属膜によるろ過装置では、背景技術の欄で説明したような問題が発生する。このため、金属膜に比較して微細な孔径が形成可能で、かつ逆洗性に優れたセラミックス膜を用いた膜ろ過装置が考えられる。しかし、セラミック膜は基本的に微粒子がネットワーク状に焼結した多孔質体であるため、上述の金属膜と同様に、膜の表面だけでなく内部でも捕捉する構造となり、内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質を洗浄しづらく、運転時間の経過とともに透過流束が低下しやすいという問題がある。また、細孔が複雑にネットワークを形成する構造のため、初期特性においても圧力損失が比較的大きい。
【0046】
そこで、本発明者らは、上記に鑑み、流体のフィルタにおいて、高精度で大量の分離処理が可能で、透過流束の低下を軽減し、また洗浄性を向上させる以下の(1)〜(7)に示す異方性多孔質材料を開発するに至った。
【0047】
(特願2005−322629参照、未公開)。
【0048】
(1)複数の気孔を含有し、それぞれの気孔は長軸および短軸を規定できる非等方性の形状を有し、前記複数の気孔が方向性を有する配列をなしていることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0049】
(2)前記それぞれの気孔の長軸/短軸の長さの比が10以上であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0050】
(3)前記複数の気孔の短軸の長さが0.001〜500μmであることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0051】
(4)前記複数の気孔が、それらの長軸の方向が±10度の立体角範囲内に含まれる1つ以上の配向グループに分類されることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0052】
(5)同一の配向グループに属する前記複数の気孔の少なくとも一部が貫通気孔であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0053】
(6)前記複数の気孔の短軸の長さのバラツキが、同一の配向グループの中では±15%以下であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0054】
(7)同一の配向グループの中での貫通気孔率が70%以上であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0055】
以下、本発明の膜モジュールで使用される異方性多孔質材料について図12乃至図19を参照して詳述する。
【0056】
初めに、本発明に係る異方性多孔質材料の概念を、図12を参照して説明する。異方性多孔質材料は、複数の気孔を含有し、それらは、例えば図12に示す気孔51,52のような、長軸および短軸を規定することができる非等方性の形状を有する。そして、気孔51,52について、任意の基準方向と長軸のずれを傾きθで表示すると、傾きθが方向性、つまり特定範囲内に分布する傾向を有する。一方、気孔に方向性の無い材料は等方性多孔質材料である。
【0057】
《第1例、その1》
図13は第1例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図13に示すように、第1例の異方性多孔質材料53は、図12に示す楕円球状の気孔52を複数含有する。図13に示す異方性多孔質材料53に含まれる気孔52は、主に気孔全体が材料の内部に入っている閉気孔である。
【0058】
ここで、気孔52の長軸の長さaと短軸の長さbの比(アスペクト比)a/bは10以上であることが好ましい。主に閉気孔からなる場合には、方向性を持った特性を発現する根源は、閉気孔の異方的な形態に起因する。アスペクト比が10未満であると、各気孔間の配列に方向性が存在しても全体として等方に近い特性を示すため、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0059】
また、それぞれの気孔の長軸の方向が立体角Ωの範囲内に含まれるとすると、立体角Ωは±10度の範囲内であることが好ましい。主に閉気孔からなる場合、それぞれの閉気孔が高いアスペクト比を持っていても、方向性に±10度より大きなバラツキがあると、全体として等方に近い特性を示すため、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0060】
また、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであることが好ましい。0.001μm未満の場合、原子・分子間距離のオーダーでの形態制御になり、本発明の異方性多孔質材料の構造を実際的な材料として具現することが困難である。500μmより大きい場合、孔開け加工等の既存の機械加工により製造が可能になる範疇にある。これは、本発明の異方性多孔質材料の概念に含まれない。
【0061】
また、それぞれの気孔の短軸の長さbのバラツキは±15%以下であることが好ましい。主に閉気孔からなる場合、それぞれの閉気孔の径に±15%より大きなバラツキがあると、全体としての特性指向性が弱くなり、より等方に近い特性を示すので、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0062】
《第1例、その2》
図14は第1例の変形例を示している。第1例の変形例の異方性多孔質材料54は、図12に示す非等方性の形状の気孔51を複数含有する。それぞれの気孔の長軸は、一方向に配列している。
【0063】
図14に示す異方性多孔質材料54においても、図13に示す異方性多孔質材料53と同様に、それぞれの気孔のアスペクト比は10以上であり、それぞれの気孔の長軸の方向が±10度の立体角範囲内に含まれ、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであり、それぞれの気孔の短軸の長さbのバラツキは±15%以下であることが好ましい。これらの数値を選定する理由についても上記説明と同様である。
【0064】
《第2例》
図15は第2例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図15に示すように、第2例の異方性多孔質材料55は、気孔52a,52bをそれぞれ複数含有する。異方性多孔質材料55に含まれる気孔は主に閉気孔である。気孔52aは、長軸が方向Aに対して方向性を有する第1の配向グループを構成し、気孔52bは、長軸が方向Aと異なる方向Bに対して方向性を有する第2の配向グループを構成する。
【0065】
ここで、第1例と同様に、気孔52a,52bのアスペクト比は10以上であり、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであることが好ましい。これらの数値を選定する理由についても第1例と同様である。
【0066】
第1の配向グループのそれぞれの気孔の長軸の方向が立体角ΩAの範囲内に含まれるとすると、立体角ΩAは±10度の範囲内であることが好ましい。また、第2の配向グループのそれぞれの気孔の長軸の方向が立体角ΩBの範囲内に含まれるとすると、立体角ΩBは±10度の範囲内であることが好ましい。方向性に±10度より大きなバラツキがあると、全体として等方に近い特性を示すため、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0067】
また、同一の配向グループの中では、それぞれの気孔の短軸の長さbのバラツキは±15%以下であることが好ましい。短軸の長さbに±15%より大きなバラツキがあると、全体としての特性指向性が弱くなり、より等方に近い特性を示すので、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0068】
《第3例》
図16は第3例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図16に示すように、第3例の異方性多孔質材料56は、貫通気孔57を複数有する。貫通気孔は両端が材料の表面に開いている気孔である。第3例の異方性多孔質材料56は、図13に示す第1例の異方性多孔質材料を、気孔の長軸方向に垂直で互いに平行な2つの面で切り出した形態をしている。
【0069】
ここで、貫通気孔57のアスペクト比は10以上であることが好ましい。アスペクト比が10以上であることで、フィルタリングなどに好適な強度特性についてもバランス良く優れた膜材料が得られる。
【0070】
また、それぞれの貫通気孔の長軸の方向が、±10度の立体角範囲内に含まれることが好ましい。方向性に±10度より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける圧損が大きくなるなど、特徴的な特性が劣化する。
【0071】
また、それぞれの貫通気孔の短軸の長さは0.001〜500μmであることが好ましい。0.001μm未満の場合、原子・分子間距離のオーダーでの形態制御になり、本発明の異方性多孔質材料の構造を実際的な材料として具現することが困難である。500μmより大きい場合、孔開け加工等の既存の機械加工により製造が可能になる範疇にある。
【0072】
これは、本発明の異方性多孔質材料の概念に含まれない。
【0073】
また、それぞれの貫通気孔の短軸の長さのバラツキは±15%以下であることが好ましい。短軸の長さに±15%より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける分隔精度が低下するなど、特徴的な特性が劣化する。
【0074】
また、異方性多孔質材料56が有するすべての気孔における貫通気孔の割合(貫通気孔率)は70%以上であることが好ましい。貫通気孔率が70%未満の場合、フィルタリングなどにおける透過流量が低下するとともに、貫通孔以外の気孔(開気孔および閉気孔)の影響が顕在化する。具体的には、フィルタリングなどにおける洗浄性の低下、膜強度の低下などの影響がある。ここで、開気孔とは一端のみが材料表面に開いている気孔である。
【0075】
図17は第3例の変形例を示す概略図である。図17に示すように、第3例の変形例の異方性多孔質材料58は、貫通気孔59を複数有し、貫通気孔59は、異方性多孔質材料58の上面および下面に対して垂直でない方向に形成されている。第3例の変形例の異方性多孔質材料58は、図15に示す第1例の異方性多孔質材料を、気孔の長軸方向に対して垂直以外の角度で、互いに平行な2つの面で切り出した形態を有するものである。
【0076】
《第4例》
図18は第4例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図18に示すように、第4例の異方性多孔質材料60は、貫通気孔61a,61bをそれぞれ複数有する。第4例の異方性多孔質材料60は、図15に示す第2例の異方性多孔質材料を、互いに平行な2つの面で切り出した形態をしている。貫通気孔61aは第1の配向グループを構成し、貫通気孔61bは第2の配向グループを構成する。
【0077】
ここで、第3例と同様に、貫通気孔61a,61bのアスペクト比は10以上であり、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであり、同一の配向グループの中での貫通気孔率は70%以上であることが好ましい。これらの数値を選定する理由についても第3例と同様である。
【0078】
また、同一の配向グループの中では、それぞれの貫通気孔の長軸の方向が、±10度の立体角範囲内に含まれることが好ましい。方向性に±10度より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける圧損が大きくなるなど、特徴的な特性が劣化する。また、同一の配向グループの中では、それぞれの貫通気孔の短軸の長さのバラツキは±15%以下であることが好ましい。短軸の長さに±15%より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける分隔精度が低下するなど、特徴的な特性が劣化する。
【0079】
図19は第4例の変形例を示す概略図である。図19に示すように、第4例の変形例の異方性多孔質材料63は、貫通気孔64a,64bをそれぞれ複数有するとともに、図13に示す第1例の異方性多孔質材料を互いに平行な2つの面で切り出したものを、一層ごとに貫通気孔の方向が90°ずれるように積層した形態を有するものである。
【0080】
上述した各異方性多孔質材料は、一般的な多孔質材料、あるいは上述の水の浄化目的に使われている多孔質膜に代表されるような既存の多孔質材料と異なり、長軸/短軸のアスペクト比の大きい気孔が方向性を持って配列したものである。このため、第1,第3例の1次元異方性多孔質材料を流体のフィルタに用いると、フィルタの表面で微粒子・懸濁物質を捕捉するので、高精度で大量の分離処理が可能で、透過流束の低下を軽減し、フィルタの洗浄性を向上させることができる。
【0081】
また、第2,第4例の2次元異方性多孔質材料を熱交換材料として用いると、流体抵抗によるエネルギー損失を大幅に低減するので、体積当たりの熱交換効率を向上させることができる。
【0082】
上述した各異方性多孔質材料の用途についても多岐にわたるが、第1,第3例の1次元異方性多孔質材料では、高精度で大量の分離処理が可能で、高い透過流束を確保し、また洗浄性にも優れるなど、秀でた諸特性を合わせ持つ各種フィルタを挙げることができる。
【0083】
また、第2,第4例の2次元異方性多孔質材料では、体積当たりの熱交換効率が飛躍的に優れ、また流体抵抗によるエネルギー損失を大幅に低減した熱交換器を挙げることができる。
【0084】
本発明の異方性多孔質材料の製造方法は、気孔あるいは貫通気孔を形成するためのテンプレートを用いる方法、気孔あるいは貫通気孔を転写して形成する方法、気孔あるいは貫通気孔の元組織を延伸加工する方法、結晶組織成長により気孔あるいは貫通気孔を形成する方法、気相合成法により気孔あるいは貫通気孔を形成する方法をとることが可能である。
【0085】
なお、上述の各実施の形態では、気孔が1つまたは2つの配向グループからなる異方性多孔質材料を示したが、分類される配向グループの数はこれに限らない。
【0086】
〈実施形態の説明〉
以下、本発明に係るろ過システムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明するろ過システムでは、前述した異方性多孔質材料53,54,55,56,58,60,63のいずれかを膜モジュールを構成するろ過膜に使用するものである。
【0087】
《第1実施形態》(請求項1、18、19、20に対応)
図1は本発明によるろ過システムの一実施形態を示す構成図である。
【0088】
[構成]
この図に示すろ過システム1は、金属やセラミックで生成された異方性多孔質材料53,54,55,56,58,60,63のいずれかによって構成され、ろ過池2内に配置される膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せて構成されている。
【0089】
具体的には、篩い分けた天然の珪砂からなる「ろ材」が敷き詰められたろ材層3と、0.1μm〜数10μmの細孔を持つ金属やセラミックでできた異方性多孔質材料によって構成され、ろ材層3の下側に配置される膜15と、膜15の下側に配置されるポーラスコンクリート層4と、ポーラスコンクリート層4の下側に配置される分散砂利層5と、分散砂利層5の下側に配置される有孔コンクリート板6と、有孔コンクリート板6を支える支持梁7とで構成されている。
【0090】
また、ろ過池2の下部に形成された集水渠8には、ろ材層3と膜15を洗浄するための逆洗水と空気を導入するための逆洗水導入管9、空気導入管13と、バルブ11、14とが接続される一方、ろ材層3より上部には、逆洗排水を排出するための逆洗排水排出管10と、バルブ12とが接続されている。なお、クリプトスポリジウムの除去を主目的とする場合は、クリプトスポリジウムの大きさは4〜6μmなので、その除去を確実にするため、膜15の細孔径は4μm未満にするのが好ましい。
【0091】
この際、新規にろ過システム1を作る場合には、急速ろ過池の下部に金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を敷設した後、膜15上に直接、天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を敷き詰める。
【0092】
また、既設の急速ろ過池を本発明のろ過システム1に改造する場合は、既設のろ材の流出を防ぐポーラスコンクリート層4と分散砂利層5を残しておいても差し支えず、本構成図でもポーラスコンクリート層4とろ材層3の間に膜15を敷設しているが、ろ過池の新設や、既設のろ過池の改造であっても、ポーラスコンクリート層4と分散砂利層5が無い方が好ましい。
【0093】
[作用]
そして、このろ過システム1では、被処理水がろ過池2の上方から導入されると、重力でろ材層3中を下降し、ろ材の中を流れ落ちる間に被処理水中の懸濁物質が、砂の隙間に入り込んで、被処理水から取り除かれる。次に0.1μm〜数10μmの細孔をもつ異方性多孔質材料を用いた膜15の篩い作用により細孔よりも大きな物質は膜面に捕捉される。細孔を通過したろ過水がポーラスコンクリート層4および分散砂利層5、有孔コンクリート板6を通って、集水渠8に貯まる。この時、被処理水がろ材層3や異方性多孔質材料を用いた膜15を流れ落ちる速さは、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度である。そして、集水渠8を貯まったろ過水が図示されていない次の浄水処理工程に送られる。
【0094】
また、ろ材層3では、ろ材の目詰まりを防ぐため、上部には、粒径が大きく比重が小さい「アンスラサイト」などが、下部に粒径が小さく比重が大きい珪砂が用いられる。また、異方性多孔質材料を用いた膜15や、ろ材層3で目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管9から逆洗水を導入して下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、膜15やろ材層3から取り除かれ、逆洗排水排出管10から排水される。
【0095】
また、逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層3のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と水流の剪断力とにより、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ12の開放にともない、ろ材や膜から分離された濁質が逆洗排水排出管10から排出され、別途排水処理工程に送られる。
【0096】
また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、ろ過池2の下部の空気導入管13から空気を吹き込んでろ材に付着した濁質を剥離する。逆流洗浄では、いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ11、14で調整する。
【0097】
[効果]
このように、この第1実施形態では、異方性多孔質材料を用いた膜15は、細孔が供給水の透過方向と同一方向になるとともに、材料に占める空間の割合(空間率)が大きいため、供給水のろ過抵抗が小さくなり、通常水道用で用いられる精密ろ過膜や限外ろ過膜に比べて、透過流速を大きくすることができる。すなわち、従来の急速ろ過池に膜15を導入する場合、ろ材層3中をろ過速度120〜150m/日で流下させなければならないが、膜15中も同じ流量で流れる事になる。しかし、従来の有機高分子材料系の精密ろ過膜や限外ろ過膜、不繊布状構造のセラミック膜、金属膜では、かけられる圧力(ろ過池2の場合、損失水頭)にもよるが、数m/日のろ過速度でしか、被処理水を流す事ができない。これに対し、異方性多孔質材料で構成された膜15では、数百m/日まで被処理水を流す事ができる(請求項1の効果)。
【0098】
ここで、従来の膜と異方性多孔質材料で作った膜15との違いについて、図2、図3を用いて説明する。図2(a)は、従来の有機高分子材料系の精密ろ過膜や限外ろ過膜のモジュールの構造図である。有機高分子材料系のろ過膜201が最もろ過速度が小さく、また、構造上の強度も弱く圧力もかけられない。しかし、図2(a)のような有機高分子材料系のろ過膜201を外径が数mmの繊維状に加工する事により、ろ過速度、強度を向上でき、モジュールにした場合、ユニット体積あたりの、ろ過速度、強度は、他のろ過膜に比べて最も優れている。しかし、ろ過池に膜システムを導入する場合は、平板構造にしなければならず、有機高分子材料系の膜では、ろ過速度不足、強度不足で適用できない。
【0099】
また、図2(b)のように不繊布状構造のセラミック膜、金属膜(ろ過膜202)は、強度は十分で、図3(a)のように平板構造に加工できるため、ろ過池に設置可能だが、透過流速が小さく、急速ろ過池のろ過速度には達していない。また、膜の内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質が通常の洗浄で除去できず、運転時間の経過とともに透過流速が低下しやすいという問題がある。なお、いずれの膜もろ過池2の後段にろ過膜設備として別途、設ける事はできる。
【0100】
一方、異方性多孔質材料の膜15は、図3(b)のように、金属やセラミックでできた0.1μm〜数10μmの異方性の細孔をもつ膜であり、数百m/日まで被処理水を流す事ができ、また、膜の内部で微粒子・懸濁物質が入り込んで通常の洗浄で除去できないような事は無い。すなわち、既設の急速ろ過池において、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を、ろ材層3の下部に設けることにより、新たな施設(敷地)は不要で、かつ、これらのろ過池、ろ過層を大幅な改造なく導入できる。これにより、従来のろ過処理では十分に除去できないクリプトスポリジウム等の微生物や微粒子を除去できる(請求項20の効果)。
【0101】
また、膜15上に直接、天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層してろ材層3を形成し、微細の浮遊物の除去は、膜15で行い、比較的大きい濁質成分をろ材層3で行わせることにより、膜15、ろ材層3、双方の目詰まりを抑制し、逆洗頻度、逆洗時間、逆洗水量を少なくでき、またそれらの交換寿命を延長させることができる(請求項19の効果)。
【0102】
また、上述した実施形態では、近年、設置面積が小さく、除濁能力が高い急速ろ過が多く採用されていることから、急速ろ過池を用いて、本発明のろ過システムを説明した。しかし、逆洗を有し、ウイルス、病原微生物の漏洩がある、高度処理の生物活性炭槽、粒状活性炭槽、緩速ろ過池にも適用できる。
【0103】
それらに適用した場合、前二つの処理槽は、ろ材として粒状活性炭を使用し、構成が違う緩速ろ過池でもろ材は、珪砂を用いるが、構成は急速ろ過池と異なる。しかし、本発明のろ材層3と異方性多孔質材料でできた膜15とを組み合わせる点は、急速ろ過池の場合と同じである。また、緩速ろ過池は、ろ過速度が数m/日であり、ろ過速度が遅く不繊布状構造のセラミック膜、金属膜でも適用可能だが、不繊布状構造内部への目詰まりのデメリットを考慮すると本発明によるろ過システムの方が優れている。その他の効果は、上記と同じである。
【0104】
また、この第1実施形態では、既存のろ過池2を本発明のろ過システム1に改造する場合を例にして、説明しているが、既設の急速ろ過池を本発明のろ過システム1に改造する場合は、既設のろ材の流出を防ぐポーラスコンクリート層4と分散砂利層5を残しておいても差し支えない(請求項18の効果)。
【0105】
また、本構成図でもポーラスコンクリート層4とろ材層3の間に膜15を敷設しているが、ろ過池の新設や、既設のろ過池の改造であっても、ポーラスコンクリート層4と分散砂利層5が無い方が好ましい。
【0106】
《第2実施形態》(請求項2〜8、17に対応)
次に、図4と図5を用いて本発明によるろ過システムの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0107】
図4は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明によるろ過システムの第2実施形態に関する構成図である。
【0108】
[構成]
この図に示すろ過システム31が図1に示すろ過システム1と異なる点は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を、孔径が異なる2種類の膜15a、15bの2段にして、ユニット構造体(梁)16により2膜間に空間を設けたユニット17の複数を、池面に対し平行に並べた構造にし、さらに逆洗方法を、膜15aと、ろ材層3および膜15bとを別に最適化して洗浄するために逆洗水導入管18と、逆洗排水排出管19を膜15a、15bの間に接続して、それらの水量を調整するバルブ20、21をそれぞれに接続したことである。
【0109】
下段の膜15aは、0.1μm〜数10μmの細孔を持つ異方性多孔質材料を用いた膜で、上段の膜15bの細孔は、膜15aの細孔より大きく、かつ珪砂等のろ材の粒径より小さくろ材が流出しないようになっている。なお、クリプトスポリジウムの除去を主目的とする場合は、クリプトスポリジウムの大きさは4〜6μmなので、その除去を確実するため、膜15aの細孔径は4μm未滴にするのが好ましい。
【0110】
また、逆洗用の空気導入管13は、逆洗水導入管18と同様に膜15a、15bの間に接続する方が望ましい。しかし、既設の急速ろ過池に本発明のろ過システムを導入する場合は、図4に示すように既設の集水渠8への接続している設備をそのまま使用しても構わない。
【0111】
[作用]
そして、このろ過システム31では、被処理水がろ過池2の上方から導入されると、重力でろ材層3中を下降し、ろ材の中を流れ落ちる間に被処理水中の懸濁物質が、砂の隙間に入り込んで、被処理水から取り除かれる。
【0112】
次に、0.1μm〜数10μmの細孔を持つ異方性多孔質材料を用いた膜15a、15bの篩い作用により、各々の細孔よりも大きな物質が膜面に捕捉される。細孔を通過したろ過水がポーラスコンクリート層4および分散砂利層5、有孔コンクリート板6を通って、集水渠8に貯まった後、図示されていない次の浄水処理工程に送られる。この時、ろ材層13や異方性多孔質材料を用いた膜15a、15bを被処理水が流れ落ちる速さは、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度である。
【0113】
また、ろ材層3では、ろ材の目詰まりを防ぐため、上部には、粒径が大きく比重が小さい「アンスラサイト」などが、下部に粒径が小さく比重が大きい珪砂が用いられる。
【0114】
また、膜15a、15bやろ材層3で目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管9から逆洗水を導入して、下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、膜15a、15bやろ材層3から取り除かれて、逆洗排水排出管10、19から排水される。
【0115】
また、逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層3のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と水流の剪断力により、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ12の開放にともない、ろ材や膜15a、15bから分離された濁質が逆洗水排出管10、19から排出され、図示されていない排水処理工程に送られる。
【0116】
また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、空気導入管13から空気を吹き込んでろ材に付着した濁質を剥離する。逆流洗浄では、いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ11、14、20で調整する。この時、逆洗水導入管9、18から導入される総量が、その値になるように調整する。すなわち、逆洗水導入管9から、水量は0.1〜0.5m3/(min・m2)となるように、逆洗水を導入し、残りを逆洗水導入管18から導入する。
【0117】
また、膜15aのみが目詰まりを起こした場合は、膜15aのみを逆洗する。その時は、逆洗水導入管9から、0.1〜0.5m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、同量または、膜15aの上部に残っている被処理水を僅か加えた水量を逆洗排水排出管19から排出する。
【0118】
[効果]
この第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0119】
細孔径の異なる2つの膜15a、15bを使用させることにより、それぞれの膜15a、15bの細孔より大きい懸濁物質がそれぞれの膜表面で捕獲される。結果、細孔径が小さく、目詰まりしやすい膜15aの懸濁物質による目詰まりを低減できるとともに、目詰まりに起因し、塞がれた無効な細孔を減らせる。結果、急速ろ過と同等のろ過速度(流量)を十分に確保でき、逆洗周期、交換寿命を長くできる。また、膜15a、15bの間に逆洗水導入管18、逆洗排水排出管19を接続することもでき、膜15a中の逆洗水量とろ材層3中の逆洗水量を変更できる(請求項2の効果)。
【0120】
ここで、図5を用いて逆洗水量による膜15a、15bへの影響について説明する。図5は、異方性多孔質材料によって構成された膜15a、15bに対する、被処理水の透過流量と、圧力との関係を示す図である。
【0121】
この図から明らかなように、クリプトスポリジウムの捕捉が可能な細孔径が小さい膜15aでは、透過流量が大きくなるほど、膜15aにかかる水圧が上昇する。また、膜15aを介して、ろ材層3内に、ろ材を流動状態にするのに必要な0.6〜0.8m3/(min・m2)の逆洗水を流すと、膜15aでの圧力損失が大きくなり、その分だけ、逆洗水導入ポンプの大型化、電気代等のランニングコストの増大、膜15a、15bや集水渠8等の耐圧性能向上によるイニシャルコストが増大する。
【0122】
つまり、膜15aの目詰まりを取り除くだけなら、それほど多くの逆洗水量を必要としないことから、逆洗水導入管9から、0.2〜0.3m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、導入管18から、0.4〜0.6m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、ろ材を流動状態にする0.6〜0.8m3/(min・m2)の水量を確保する。ここで、膜15bは、細孔径が大きいので、0.4〜0.6m3/(min・m2)で逆洗水を流しても、圧力損失は大きくならない(請求項7、8の効果)。
【0123】
また、被処理水(原水)水質によっては、細孔径が小さい分、膜15aの目詰まり周期は、ろ材層3の目詰まり周期と一致しない。すなわち、逆流洗浄を行う周期の最適間隔が、それぞれ違い、毎回両方同時に逆洗する必要が無い。そして、逆洗排水排出管19を膜15aの上部に接続しているので、膜15aのみを逆洗する事ができ、膜15aと、膜15b及びろ材層3とを個別に、あるいは同時に、最適水量で逆洗する事ができる(請求項3、4、5、6の効果)。
【0124】
一方、ろ過処理時(ろ過速度150m/日)では、膜15a、15bの圧力損失を加算しなければならず、その分、沈殿池2のろ抗上昇になることから、通常の沈殿池2、例えば圧力損失が0.005MPa未満の沈殿池2では、50cmだけ、ろ抗上昇を加算しなければならない。しかし、膜15bによる除濁能力を考慮し、ろ材層3のろ材の種類、引き詰め方を最適化すれば、ろ抗上昇を低くすることができる。
【0125】
次に、図6を用いて膜15a、15bのユニット化について説明する。図6は、ろ過池2を上から見た図である。通常、ろ過池2は、数m〜数十m角の広さを持ち、急速ろ過より緩速ろ過の方がさらに広い。それほど広い面積の異方性多孔質膜を金属やセラミックで製作または設置するのは困難であり、コスト高、強度不足になるだけでなく、交換や薬品洗浄も難しい。
【0126】
そこで、この第2実施形態では、膜15aと15bおよび、それらを支持するユニット構造体(梁)16によって、膜交換自在なユニット17にし、同一のユニット17を複数個、ろ材層3の下部に同層面となるように平行に並べて固定する。各ユニット17のサイズは、数十cm〜数m角のユニットとする。これにより、それらの問題が解決できる。また、金属、セラミックを材料としているので、ユニット化により加熱再生も可能で、洗浄薬品の使用量を減らす事ができる(請求項17の効果)。
【0127】
《第3実施形態》(請求項10に対応)
次に、図7を用いて本発明に係るろ過システムの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態や第2実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0128】
図7は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明による、ろ過システムの第3実施形態に関する構成図である。
【0129】
[構成]
この図に示すろ過システム32が図1に示すろ過システム1と異なる点は、図1に示す膜15を、ろ過池2の下部に形成された集水渠8の空気導入管13と逆洗水導入管9との下部側に膜15を設けるとともに、膜15の下部に膜15の逆洗用の逆洗水導入管18とバルブ20を接続したことである。なお、既設の急速ろ過池2に本発明のろ過システム32を導入する場合は、既設の集水渠8に接続されている空気導入管13と逆洗水導入管9をそのまま使用しても構わない。
【0130】
[作用]
そして、図1に示すろ過システム1では、被処理水がろ材層3→膜15→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板6→集水渠8という経路で流れる間、ろ材層3と膜15とで、被処理水中の懸濁物質が除濁されるのに対し、この図に示すろ過システム32では、ろ材層3→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板6→膜15→集水渠8という順番になるのみで、除濁処理に関する作用は、図1に示すろ過システム1と違いがない。しかし、膜15やろ材層3の目詰まりを除去する逆洗方法が図1に示すろ過システム1と異なる。
【0131】
逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層3のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と水流の剪断力により、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ12の開放にともない、ろ材や膜15から分離された濁質が逆洗水排出管10から排出され、別途排水処理工程に送られる。また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、空気導入管13から空気を吹き込んで、ろ材に付着した濁質を剥離する。
【0132】
また、逆流洗浄では、いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ11、14、20で調整する。この時、逆洗水導入管9、18から導入される逆洗水の総量が、その値になるように調整する。すなわち、逆洗水導入管9からは、水量は0.1〜0.5m3/(min・m2)導入し、残りを逆洗水導入管18から導入する。
【0133】
[効果]
この第3実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0134】
まず、ポーラスコンクリート板4、分散砂利層5などにより、ろ材層3と、膜15とを物理的に分離しているので、ろ材層3のろ材によって、膜15の細孔が塞がれないようにして、膜15の各細孔が無効にならないようにする。結果、急速ろ過と同等のろ過速度(流量)を十分に確保でき、逆洗周期、交換寿命を長くできる。また、膜15の上部側にろ材層逆洗用の逆洗水導入管9を接続し、膜15の下部側に膜逆洗用の逆洗水導入管18を接続しているので、膜15中の逆洗水量と、ろ材層3中の逆洗水量とを変更できる(請求項10の効果)。なお、逆洗流量による膜15への影響については、第2実施形態の説明で、図5を用いて説明済みである。
【0135】
また、クリプトスポリジウムの捕捉が可能な細孔径が小さい膜15では、透過流量が大きくなるほど、膜15にかかる水圧が上昇する。また、膜15を介して、ろ材層3内に、ろ材を流動状態にするのに必要な0.6〜0.8m3/(min・m2)の逆洗水を流すと、膜15での圧力損失が大きくなり、その分だけ、逆洗水導入ポンプの大型化、電気代等のランニングコストの増大、膜や集水渠8等の耐圧性能向上によるイニシャルコストが増大する。
【0136】
そして、膜15の目詰まりを取り除くだけなら、それほど多くの逆洗水量を必要としないことから、逆洗水導入管18から、0.2〜0.3m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、逆洗水導入管9から、0.4〜0.6m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、ろ材を流動状態にするのに必要な0.6〜0.8m3/(min・m2)の水量を確保する。
【0137】
一方、ろ過処理時(ろ過速度150m/日)では、膜15の圧力損失を加算しなければならず、その分、沈殿池2のろ抗上昇になることから、通常の沈殿池2、例えば圧力損失が0.005MPa未満の沈殿池2では、50cmだけ、ろ抗上昇を加算しなければならない。しかし、膜15による除濁能力を考慮し、ろ材層3のろ材の種類、引き詰め方を最適化すれば、ろ抗上昇を低くすることができる。
【0138】
また、この第3実施形態では、既設のろ過池2に本発明のろ過システム32を導入する場合、ろ材層3の洗浄に最適化された容量の仕様で設計されている空気導入管9および逆洗水導入管9をそのまま転用できるため、軽微の改良だけで済み、更新コストを低減できる。また、逆洗のみで、膜15中の目詰まりを除去できなくなった時は、ろ材層3のろ材を入れ替えることなく、膜15のみの交換で済み、ランニングコストを低減できる。
【0139】
また、膜15が、ろ材の重量に耐える必要がなく、透過流量に対する水圧のみ耐え得る強度の構造で済み、材料コスト、加工コストを低減できる。なお、この第3実施形態では、省略したが、膜15の上部に逆洗排水排出管を接続しても良い。この場合、第2実施形態と同様に、膜15のみを逆洗する事ができ、膜15、ろ材層3を個別にあるいは同時に、最適水量で逆洗する事ができる。
【0140】
《第4実施形態》(請求項9に対応)
次に、図8を用いて本発明に係るろ過システムの第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態から第3実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0141】
図8は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明による、ろ過システムの第4実施形態に関する構成図である。
【0142】
[構成]
この図に示すろ過システム33が図1に示すろ過システム1と異なる点は、図1に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を無くし、異方性多孔質材料を用いた膜15とそのユニット構造体(梁)16で構成されるユニット17をろ材層3の支持構造体としてにしたことである。
【0143】
[作用]
そして、この図に示すろ過システム33では、図1に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6の代わりに、膜15と、ユニット構造体(梁)16で構成されるユニット17でろ材層3を支持している。また、図1に示すろ過システム1では、被処理水がろ材層3→膜15→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板→集水渠8に流れる間、ろ材層3と膜15にて、被処理水中の懸濁物質が除濁されるのに対し、この図に示すろ過システム33では、ろ材層3→膜15(ユニット17)→集水渠8の順番になる事が異なっており、その他の作用は、図1に示すろ過システム1と違いがない。
【0144】
[効果]
この第4実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0145】
ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6が無くなることにより、設備の簡易化による管理コストの低減させることができるとともに、それらの孔中に、細菌等が繁殖する恐れがなく、また、定期的にユニット17を交換洗浄するので管理を容易にさせることができる。また、新規にろ過池2を敷設する場合は、ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を必要としない分、敷設コストを低減させることができる(請求項9の効果)。
【0146】
一方、既設のろ過池2にこのろ過システム33を導入する場合、既存のポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を撤去する必要があるが、これらを無くした分だけ、ユニット17の取り付け位置を下げて、ろ過池2の池面と、膜15との高低差を大きくさせることにより、膜15に加えられる水圧を大きくし、被処理水の透過流速に対する圧力損失(ろ抗上昇)分を補償させることができる。
【0147】
《第5実施形態》(請求項15、16に対応)
次に、図9を用いて本発明に係るろ過システムの第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態から第4実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0148】
図9は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明による、ろ過システムの第5実施形態に関する構成図である。
【0149】
[構成]
この図に示すろ過システム34が図4に示すろ過システム31と異なる点は、図4に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を無くし、細孔径が異なる異方性多孔質材料を用いた2つの膜15a、15bと、ユニット構造体(梁)16a、16bで構成されるユニット17を、ろ材層3の支持構造体にするとともに、膜15aの上下に、波長が254nmの殺菌線の出す紫外線ランプ22、23を設置したことである。
【0150】
[作用]
そして、この図に示すろ過システム34では、図4に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6の代わりに、膜15とユニット構造体(梁)16で構成されるユニット17でろ材層3を支持するとともに、図4に示すろ過システム32では、被処理水がろ材層3→膜15b→膜15a→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板6→集水渠8に流れる間、ろ材層3と膜15にて、被処理水中の懸濁物質が除濁されるのに対し、この図に示すろ過システム34では、ろ材層3→膜15b→膜15a→集水渠8の順番になるようにしている。
【0151】
また、膜15a表面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスに対し、紫外線ランプ23から照射される、波長が254nmの紫外線(殺菌線)によって不活化される。
【0152】
一方、膜15aの細孔より小さい、微生物、ウイルス等は、膜15aでは捕捉されず、透過するが、集水渠8に一時的に貯留されているとき、紫外線ランプ22から照射される、波長が254nmの紫外線(殺菌線)によって不活化される。
【0153】
その他の作用は、実施例2と違いはない。
【0154】
[効果]
この第5実施形態では、第2実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0155】
ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6が無くなることにより、設備の簡易化による管理コストの低減させることができるとともに、それらの孔中に、細菌等が繁殖する恐れがなく、また、定期的にユニット17を交換洗浄するので管理を容易にさせることができる。また、新規にろ過池2を敷設する場合は、ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を必要としない分、敷設コストを低減させることができる。
【0156】
一方、このろ過システム33を既設のろ過池2に導入する場合、既存のポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を撤去する必要があるが、これらを無くした分だけ、ユニット17の取り付け位置を下げて、ろ過池2の水面と、膜15a、15bとの高低差を大きくさせることにより、膜15a、15bに加えられる水圧を大きくし、被処理水の透過流速に対する圧力損失(ろ抗上昇)分を補償させることができる。
【0157】
また、膜15aの上部に設けた紫外線ランプ23から、波長が254nmの殺菌線である紫外線を被処理水に対し照射する事により、膜15a表面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスを不活化できる。すなわち、異方性多孔質材料の膜15aでは、不繊布状構造のろ過膜に比べて、膜表面に捕捉された懸濁物質が長時間水流(水圧)にさらされることで、膜15aを透過するリスクがあるが、膜15aを透過する前に十分な時間、殺菌線に被曝させることにより不活化、死滅させることができ、ろ過水の安全性を向上できる(請求項15の効果)。
【0158】
一方、第1、第3、第4実施形態のように、膜15の上部に紫外線ランプ23を設けることができない構成の場合を含め、膜15aの細孔より小さい微生物やウイルスは、膜15a表面で捕捉できず、膜15aを透過してしまうが、その場合は、膜15aの下部に設けられた紫外線ランプ22から照射される波長が254nmの殺菌線である紫外線により、それらを不活化でき、ろ過水の安全性を向上できる(請求項16の効果)。
【0159】
《第6実施形態》(請求項11、13、14に対応)
次に、図10を用いて本発明に係るろ過システムの第6実施形態を説明する。
【0160】
図10は、細孔の大きさが異なる金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を多段にした本発明による、ろ過システムの第6実施形態に関する構成図である。
【0161】
[構成]
この図に示すろ過システム35は、ろ過池2に細孔の大きさが異なる金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fを組合せた多段ろ過膜層24と、それらを支える有孔コンクリート板6と、この有孔コンクリート板6を支える支持梁7と、その周辺部の集水渠8とで構成されている。
【0162】
最下段の膜15aは、細孔径が0.1μm〜数10μmになり、それより上段の膜15b〜15eは、上段になるほど細孔径が大きいものになっており、最上段の膜15fは、数mm程度の孔径となっている。なお、既設の急速ろ過池を本実施形態のろ過システム35に改造する場合は、急速ろ過池の有孔コンクリート板を有孔コンクリート板6として転用する。
【0163】
ただし、多段ろ過膜層24の強度を高め、自ら膜15a〜15fを支持する構造にする事により有孔コンクリート板6を無くしても構わない。また、既設のろ材、ポーラスコンクリート層、分散砂利層を撤去して、多段ろ過膜層24を設ける。また、ろ過池2の下部の集水渠8には、多段ろ過膜層24を洗浄するための逆洗水を導入するための逆洗水導入管9と、バルブ11が接続され、一方、多段ろ過膜層23より上部に、逆洗排水を排出するための逆洗排水排出管10と、バルブ12とが接続されている。なお、クリプトスポリジウムの除去を主目的とする場合は、クリプトスポリジウムの大きさは4〜6μmのなので、その除去を確実するため、膜15aの細孔径は4μm未満にするのが好ましい。
【0164】
また、多段ろ過膜層24は、数十cm〜数m角に形成された複数のユニット構造体(梁)16a〜16fと、これらユニット構造体(梁)16a〜16fによって支持される複数段の膜15a〜15fによって構成され、各ユニットa〜33fを池面と平行に並べた構成になっている。
【0165】
[作用]
そして、このろ過システム35では、被処理水がろ過池2の上方から導入されると、重力で多段ろ過膜層24中を下降し、各膜15a〜15fを透過する間に被処理水中の懸濁物質で各膜15a〜15fの細孔より大きいものが、各膜15a〜15fの表面で捕捉される。すなわち各膜15a〜15fの、細孔径別の篩い作用により、下段になるほど小さい懸濁物質が被処理水より除濁される。また、最下段の0.1μm〜数10μmの異方性の細孔をもつ膜15aの表面では、クリプトスポリジウムを含む、細孔(0.1μm〜数10μm)より大きい、病原性原虫、細菌、藻類が捕捉されて、被処理水中より除去される。膜15aの細孔を通過したろ過水が、有孔コンクリート板6を通って、集水渠8に貯められた後、図示していない次の浄水処理工程に送られる。
【0166】
この時、異方性多孔質材料を用いた多段ろ過膜層24を被処理水が流れ落ちる速さは、既設の急速ろ過池を改造して、本発明のろ過システム35を適用する場合は、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度になる。これは、既存設備、配管等の周辺設備が、その仕様でできているためである。一方、緩速ろ過池に適用する場合は、ろ過速度の仕様に合わせて、各段の膜15a〜15fの細孔径を調整して、数m/日のろ過速度にする。
【0167】
また、細孔の大きい膜15fでは、圧力損失が少ないものの、クリプトスポリジウムの捕捉が可能な細孔径が小さい膜15aでは、透過流量が大きくなるほど、膜にかける水圧が上昇する。そのため、ろ過速度が150m/日、すなわち透過流量が0.1m3/min・m2の急速ろ過池に適用した場合、膜15aのみで、圧力損失が0.005MPaになることから、膜15a〜15fの圧力損失の総和が、ろ抗の上昇原因となる。また、各膜15a〜15fの目詰まりが進むと、さらに悪化する。また、新規でろ過池2、ろ過層を敷設する場合は、既存の設備のろ過速度に依存しないことから、ろ過速度1〜1000m/日の間で、好ましくは、ろ抗上昇を考慮して1〜200m/日の間で設計する。
【0168】
また、多段ろ過膜層24では、各膜15a〜15fの目詰まりを防ぐため、最上部には、細孔径が数mm程度にされた膜3fが配置され、下部の膜ほど徐々に細孔が小さくなり、最下部には、細孔径が0.1μm〜数10μmにされた膜3aが配置されている。
【0169】
なお、細孔径が同等で異方性多孔質材料でできた各膜15a〜15fより透過流速が大きいなら、メッシュ等に代替えしても構わない。特に、これら各膜15a〜15fは、上段になるほど、代替え可能である。また、膜15a〜15fで目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管9から逆洗水を導入して下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、各膜15a〜15fから取り除かれ、各々の膜15a〜15fで捕捉された懸濁物質とともに、逆洗排水として、バルブ12が開放された排出管10から排出される。この際、逆洗水量が、0.1〜0.8m3/(min・m2)となるように、バルブ11を調整する。
【0170】
[効果]
このように、この第6実施形態では、異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fは、細孔が供給水の透過方向と同一方向になるとともに、材料に占める空間の割合(空間率)が大きいため、供給水のろ過抵抗が小さくなり、通常水道用で用いられる精密ろ過膜や限外ろ過膜に比べて、透過流速を大きくすることができる。すなわち、従来の急速ろ過池に膜15a〜15fを導入する場合、多段ろ過膜層24中をろ過速度120〜150m/日で流下させなければならない。しかし、従来の有機高分子材料系の精密ろ過膜や限外ろ過膜、不繊布状構造のセラミック膜、金属膜では、かけられる圧力(ろ過池の場合、損失水頭)にもよるが、数m/日のろ過速度でしか被処理水を流す事ができない。これに対し、この第6実施形態で使用している異方性多孔質膜では、数百m/日まで被処理水を流す事ができるとともに、逆洗浄を行うことができる(請求項11、13の効果)。
【0171】
この際、上段に配置された、細孔が比較的大きい膜15fで比較的大きい濁質成分を除去し、下段に配置された、細孔が小さい膜15aで微細の浮遊物を除去しているので、1〜1000m/日の透過速度で、逆洗水を流し、各膜15a〜15fの目詰まりを解消させることができるとともに、各膜15a〜15fの目詰まりを抑制し、逆洗頻度、逆洗時間、逆洗水量を少なくでき、また、それらの交換寿命を延長できる(請求項14の効果)。
【0172】
また、数十cm〜数m角のユニット17a〜17fを池面に対し各々、平行になるように、並べて、段ろ過膜層24を構成しているので、数m〜数十m角の広さを持つ通常のろ過池2、あるいは急速ろ過よりさらに大きい緩速ろ過にも、低いコストで、かつ十分な強度を保持させて、容易に設置させることができるととともに、交換や薬品洗浄を容易にさせることができる。さらに、金属、セラミックを材料としているので、ユニット化により加熱再生も可能で、洗浄薬品の使用量を減らす事ができる。
【0173】
その他の効果は、上記と同じである。
【0174】
《第7実施形態》(請求項12、15、16に対応)
次に、図11を用いて本発明による、ろ過システムの第7実施形態について説明する。なお、第6実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0175】
[構成]
図11は、細孔の大きさが異なる金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fを、多段に組合せた多段ろ過膜24とした本発明のろ過システムの第7実施形態に関する構成図である。
【0176】
この図に示すろ過システム36が図10に示すろ過システム35と異なる点は、異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fの各間に逆洗水導入管25a〜25eを接続し、各逆洗水導入管25a〜25eに逆洗水量を調整するバルブ26a〜26eを設置するとともに、集水渠8内および各膜15a、15b間の各空間に波長が254nmの殺菌線を出す紫外線ランプ22、23を設置したことである。
【0177】
[作用]
そして、このろ過システム36では、逆洗方法および、被処理水が膜15aを通過する前後で紫外線ランプ22、23から照射される波長が254nmの紫外線(殺菌線)に被曝させることが、第6実施形態と異なる。
【0178】
まず、第6実施形態と異なる逆洗方法について説明する。
【0179】
膜15a〜15fで目詰まりが起きた場合は、各々の膜15a〜15fの下側に配置された逆洗水導入管25a〜25eから逆洗浄水(逆洗水)を導入して、多段ろ過膜層24の下から上へ水を流す事により、各膜15a〜15fで目詰まりを起こしたものが、取り除かれるとともに、各膜15a〜15fの上面で捕捉された懸濁物質とともに、開放されたバルブ11を介し、逆洗排水排出管10から排水される。逆洗水量は、0.1〜0.8m3/(min・m2)の範囲で、バルブ9、26a〜26e、12を調整する。通常、膜15a〜15fに対し、上段になるほど、逆洗水の水量が多くなるように調整するが、日詰まりや、捕捉されている懸濁物質が多い膜が有る場合は、その膜を逆流する水量が多くなるように調整する。
【0180】
次に、第6実施形態と異なる紫外線ランプ22、23による作用について説明する。
【0181】
多段ろ過膜層24を流下しながら、膜15b〜15fで除濁された被処理水が、さらに細孔が小さい膜15aを通過する際、膜15b〜15fで捕捉されなかったクリプトスポリジウム等の微生物を含む懸濁物質が被処理水から除去される。また、膜15aを通過したろ過水が集水渠8に一時的に貯留された後、ろ過池2から排出され、次処理工程に送られる。
【0182】
そして、膜15aの上面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスは、紫外線ランプ23から照射される波長が254nmの紫外線(殺菌線)によって不活化される。また、膜15aでは捕捉されず透過する膜15aの細孔より小さい、微生物、ウイルス等は、ろ過水が集水渠8に一時的に貯留されているとき、紫外線ランプ22により波長が254nmの紫外線(殺菌線)を照射して不活化する。
【0183】
[効果]
このように、この第7実施形態では、異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fの各間に、各逆洗水導入管25a〜25eを接続し、これら各逆洗水導入管25a〜25eに逆洗水量を調整する各バルブ26a〜26eを設け、膜15a〜15fで目詰まりが起きたとき、各々の膜15a〜15fの下側にある逆洗水導入管25a〜25eから逆洗浄水(逆洗水)を導入して、多段ろ過膜層24の下から上へ水を流す事により、各膜15a〜15fの目詰まり原因物質を取り除き、開放されたバルブ11を介し、逆洗排水排出管10から排水させることができる。この際、各膜15a〜15fの目詰まり度合いにより、目詰まりを起こしている膜に対する逆洗水量を大きくするとともに、逆洗水の総水量が0.1〜0.8m3/(min・m2)の範囲に収まるように、各バルブ9、26a〜26e、12を個別に調整させることができる(請求項12の効果)。
【0184】
また、膜15aの上部に設けた紫外線ランプ23から、波長が254nmの紫外線(殺菌線)を被処理水に対し照射する事により、膜15a表面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスを不活化できる。すなわち、異方性多孔質材料の膜15aでは、膜表面に捕捉された懸濁物質が長時間水流(水圧)にさらされる事により、膜15aを透過するリスクが不繊布状構造のろ過膜より高い。しかし、透過する前に十分な時間、殺菌線に被曝されることにより不活化、死減させることができ、ろ過水の安全性を向上できる(請求項16の効果)。
【0185】
また、膜15aの下部、あるいは集水渠8に設けた紫外線ランプ22から波長が254nmの紫外線(殺菌線)を膜15aを通過したろ過水に対し照射する事により、膜15aの細孔より小さく、膜15aで捕捉されず通過する細菌、微生物、ウイルスを不活化できる。また、紫外線ランプ22は、膜15aの表面で捕捉された懸濁物質が長時間水流(水圧)にさらされる事により、膜15aを透過したクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスも不活化できる。また、紫外線ランプ22は、集水渠8に設置できるので、多段ろ過膜層24のユニット17aにランプ23を設けるための構造にする必要が無く簡易にできる(請求項15の効果)。
【0186】
また、多段ろ過膜層24の構造的に許されるなら、各膜15c〜15fの間の空間に紫外線ランプを設けて、被処理水に対する消毒性能を大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明によるろ過システムの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】従来のろ過システムで使用される精密ろ過膜や限外ろ過膜、不繊布状構造のろ過膜を説明する構造図である。
【図3】従来のろ過システムで使用される金属やセラミック製の不繊布状構造のろ過膜と、図1に示すろ過システムで使用される金属やセラミック製の異方性多孔質材料で製作したろ過膜とを説明する構造図である。
【図4】本発明によるろ過システムの第2実施形態を示す構成図である。
【図5】図4に示すろ過システムで金属製の異方性多孔質材料で製作したろ過膜を使用したときの透過流量と圧力との関係を示す図である。
【図6】図4に示すろ過システムで使用される、金属製の異方性多孔質材料で製作したユニットを説明する構成図である。
【図7】本発明によるろ過システムの第3実施形態を示す構成図である。
【図8】本発明によるろ過システムの第4実施形態を示す構成図である。
【図9】本発明によるろ過システムの第5実施形態を示す構成図である。
【図10】本発明によるろ過システムの第6実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明によるろ過システムの第7実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の説明図である。
【図13】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第1例の構造を示す概略図である。
【図14】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第1例の変形例を示す概略図である。
【図15】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第2例の構造を示す概略図である。
【図16】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第3例の構造を示す概略図である。
【図17】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第3例の変形例を示す概略図である。
【図18】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第4例の構造を示す概略図である。
【図19】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第4例の変形例を示す概略図である。
【図20】従来から知られている浄水場の凝集沈殿処理とろ過池とを示すシステムフロー図である。
【図21】従来から知られている浄水場の高速ろ過池を示す構成図である。
【符号の説明】
【0188】
1、31〜36…ろ過システム
2…ろ過池
3…ろ材層
4…ポーラスコンクリート層
5…分散砂利層
6…有孔コンクリート板
7…支持梁
8…集水渠
9…逆洗水導入管
10…逆洗排水排出管
11、12、14…バルブ
13…空気導入管
15、15a〜15f…膜
16…ユニット構造体
17…ユニット
18…逆洗水導入管
19…逆洗排水排出管
20、21…バルブ
22、23…紫外線ランプ
24…多段ろ過膜層
25a〜25e…逆洗水導入管
26a〜26e…バルブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水場などで使用されるろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場では河川や貯水池などの水源から原水を取水し、凝集、フロック形成、沈殿、ろ過および殺菌の5つの単位プロセスによって、懸濁質とコロイド質の除去、および細菌等を無害化し、清澄な水道水として需要家に供給している。
【0003】
凝集、フロック形成、沈殿、ろ過による一連の除濁処理には、凝集剤を用いる方法が一般的であり、凝集剤には通常、鉄やアルミニウム等の無機金属塩が用いられる。凝集剤の効果はさまざまな物理的、生物化学的な影響を受け、最適凝集条件は、多くの因子によって定まる複雑な平衡の上に成り立っているため、一定の処理水質を確保するには熟練を要する。
【0004】
図20は、従来の凝集・沈澱後の処理水をろ過する除濁処理システムを示すフロー図である。
【0005】
この図において、原水は、着水井100に一旦貯蔵され、ここで浄水工程に送る水量が調整される。着水井100より送られた原水は、凝集・沈澱池101に入り、ここで、凝集剤注入→急速撹拌→緩速撹拌→沈澱の手順で原水内の濁質の大半である大きな懸濁物が除去された後、ろ過池102に送られる。ろ過池102では、凝集・沈澱池101で除去しきれない微細な浮遊物をろ過して分離したろ過水が次の浄水処理工程に送られる。
【0006】
この際、ろ過池102には、緩速ろ過(ろ過速度3〜6m/日)と、急速ろ過(ろ過速度120〜150m/日)が有り、今日では、設置面積が小さく、除濁能力が高い事から、急速ろ過が多く採用されている。
【0007】
次に、図21の構成図を参照ながら、ろ過池102として使用される急速ろ過池について説明する。
【0008】
急速ろ過池131は、篩い分けた天然の珪砂からなる「ろ材」が敷き詰められたろ材層103と、ろ材の流出を防ぐポーラスコンクリート層104と、それらを支える分散砂利層105と、有孔コンクリート板106を支える支持梁107とで構成されている。また、急速ろ過池131の下部に形成された集水渠108には、ろ材層103を逆流洗浄(以下、逆洗、または逆洗浄と記載する)するために必要な逆洗水を導入する逆洗水導入管109と、空気を導入する空気導入管113とが接続され、バルブ111、114によって、逆洗水の水量、空気の流量が調整できるようになっている。またろ材層103より上部には、逆洗排水を排出するための逆洗排水排出管110が接続され、バルブによって、逆洗水排水の水量が調整できるようになっている。
【0009】
そして、急速ろ過池131の上部側に被処理水が導入されると、重力でろ材層103中を下降し、ろ材の中を流れ落ちる間に被処理水中の懸濁物質が、砂の隙間に入り込んで、被処理水から取り除かれる。流れ落ちる速さは、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度であり、ろ過水は、ポーラスコンクリート層104および分散砂利層105、有孔コンクリート板106を通って、集水渠108に一時的に貯留された後、次の浄水処理工程に送られる。ろ材層103では、ろ材の目詰まりを防ぐため、上部には粒径が大きく比重が小さい「アンスラサイト」などが、下部には粒径が小さく比重が大きい珪砂が用いられる。
【0010】
また、目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管109から逆洗水を導入して下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、ろ材層103から取り除かれて逆洗排水排出管110から排水される。なお、逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層103のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と、水流の剪断力とにより、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ112の開放に伴い、ろ材や膜から分離された濁質が逆洗排水排出管110から排出され、図示していない排水処理工程に送られる。また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、ろ過池102の下部側に設けられた空気導入管113から空気を吹き込んでろ材に付着した濁質を剥離する。いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ111、114で調整する。
【0011】
こうした従来の除濁処理の運転方法を最適化する技術として特開2002−192163号公報(特許文献1)に記載のものがある。一方、平成8年10月に厚生省(現厚生労働省)より通達された「水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針」では、ろ過池出口の濁度を常時把握し、ろ過池出口の濁度を0.1度以下に維持することが制定され、浄水場における濁度管理が重要な課題となっている。
【0012】
クリプトスポリジウムは動物に感染する寄生性原虫で、体外ではオーシストの形で存在しており、大きさは4〜6μmと言われている。クリプトスポリジウムのオーシストの除去率は通常処理を行った場合で、砂ろ過のみの場合、97〜99%、凝集沈殿と砂ろ過とを併用させた場合でも、99.7〜99.9%と言われており、確実にすべてのクリプトスポリジウムを除去できない。
【0013】
特に、設置面積が小さく、除濁能力が高い事から、ろ過手段として多く採用されている急速ろ過池131は、浄水場の浄水処理工程で懸濁物質を除去する最終の工程であり、クリプトスポリジウムに対しても、当然最終段階の重要な除去プロセスとなる。しかし、ろ材の洗浄からろ過工程に移行時、あるいは処理水量の変更時において急激にろ過流量が変わったとき、濁度やクリプトスポリジウムがろ過水側に流出するか、洗浄排水が十分に排水されず、処理再開後のろ過水に混入する恐れがある。
【0014】
このような背景のもと、従来の除濁処理の代替え手段として、精密ろ過膜や限外ろ過膜に関する研究開発が進み、我が国の浄水場において、膜ろ過が急速に普及し始めている。海外においては、既に日量数十万トン規模の膜ろ過浄水場が稼動している。
【0015】
しかし、精密ろ過膜や限外ろ過膜による膜ろ過は、確実に濁質物を除去し、良質な処理水質を得られるという利点がある一方、精密ろ過膜や限外ろ過膜の素材として最も普及している有機高分子化合物(酢酸セルロース、ポリスレホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリトニトリル)の膜は、運転時間の経過とともに膜の圧密化や損傷などの物理的劣化、加水分解・酸化などによる化学的劣化、微生物により膜が資化される生物的劣化などの膜自身の変質による性能低下や、微粒子・懸濁物質の膜表面への蓄積などの外的要因により、性能が低下する。このため寿命が3年〜5年とされ、膜交換に要する費用のため、ランニングコストが従来の浄水方式よりも高いという欠点がある。
【0016】
こうしたランニングコストを低減する従来技術として、特開2001−225057号公報(特許文献2)に記載のものがある。この従来技術は、凝集剤を利用して凝集フロックを形成し、これを砂ろ過により除去する。さらに耐久性の優れた金属膜ろ過装置により微粒子・懸濁物質を確実に除去するろ過システムである。
【特許文献1】特開2002−192163公報
【特許文献2】特開2001−225057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、上述した旧来の凝集、フロック形成、沈殿、ろ過による一連の除濁処理では、以下の課題があった。
【0018】
[1]クリプトスポリジウム等の微小病原原虫のろ過水への残留
懸濁物質を除去する最終の工程であるろ過池でも除去しきれなかったクリプトスポリジウム等の微小病原原虫がろ過水に残留する場合がある。特に急速ろ過池では、ろ材の洗浄からろ過工程に移行時、あるいは処理水量の変更時において急激にろ過流量が変わったとき、濁度やクリプトスポリジウムがろ過水側に流出するか、ろ材の逆流洗浄排水が十分に排水されない恐れがある。
【0019】
[2]多量の凝集剤注入およびろ過池のろ過損失水頭の上昇
除濁能力の向上のため、凝集剤の注入量を多くすると、沈殿池で除去しきれない凝集剤がろ過池に流入し、ろ過池が目詰まりして、ろ過池の損失水頭が上昇する。一方、従来の除濁処理の代替え手段として開発された精密ろ過膜や限外ろ過膜は、確実に濁質物を除去し、良質な処理水質を得られるという利点があるが、以下の課題があった。
【0020】
[3]ランニングコストの増加
精密ろ過膜や限外ろ過膜の素材として最も普及している有機高分子化合物(酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリトニトリル)の膜は、運転時間の経過とともに膜の圧密化や損傷などの物理的劣化、加水分解・酸化などによる化学的劣化、微生物により膜が資化される生物的劣化などの膜自身の変質による性能低下や、微粒子・懸濁物質の膜表面への蓄積などの外的要因などにより性能が低下する。このため、寿命が3年〜5年とされ、膜交換に要する費用のため、ランニングコストが従来の浄水方式よりも高いという欠点がある。また、上述した特開2001−225057号公報に記載された従来の除濁システムと、金属膜ろ過装置を組み合わせたものでは、金属繊維を積層して焼結した不繊布状の金属膜をプリーツ状に折り畳んで円筒型としたエレメントで構成されており、以下の課題があった。
【0021】
[4]不繊布状構造による透過流束の低下
不繊布状構造の金属膜は、金属膜の表面だけでなく、金属膜内部でも捕捉する構造となっているため、金属表面では捕捉できない微小な粒子や懸濁物質を膜内部で捕捉できるメリットがある一方で、膜の内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質が通常の洗浄で除去できず、運転時間の経過とともに透過流束が低下しやすいという問題がある。円筒型エレメントによる金属膜は、金属膜を充填するスペースに対して有効な膜ろ過面積が小さいため、金属膜ろ過装置が大きくなり、設置スペースが増大するという問題がある。円筒を細くして装置内に充填する本数を増やす方法もあるが、必要以上に円筒を細く丸めることは、膜の孔径が拡大する恐れがあるため適切ではない。
【0022】
本発明は上記の事情に鑑み、高い透過流速を確保して被処理水の流量を大きくすることができ、かつ処理コストを低減させつつ、クリプトスポリジウムなどの微小病原原虫を確実に除去できるとともに、膜の逆洗浄回数を低減でき、運転コストを低く抑えることができるろ過システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記の目的を達成するために本発明は、ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、前記ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、前記ろ過池の上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填したことを特徴としている。
【0024】
また、前記異方性多孔質材料を用いた膜は、孔径が異なる複数段としたことを特徴としている。
【0025】
さらに、前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗排水排出管を接続し、前記膜を逆洗浄した際に出る逆洗排水を前記逆洗排水排出管から排出させることを特徴としている。
【0026】
さらに、前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗水導入管を接続し、この逆洗水導入管を介して、前記ろ過池内に逆洗水を導き、前記ろ材を洗浄することを特徴としている。
【0027】
さらに、前記膜に対する逆洗水の一部または全量を前記ろ材の逆洗水として活用し、前記膜および前記ろ材を同時に逆洗することを特徴としている。
【0028】
さらに、前記膜の洗浄と前記ろ材の洗浄とを各々、異なる水量あるいは逆洗周期とすることを特徴としている。
【0029】
さらに、前記膜の逆洗水量を0.1〜0.5m3/(min・m2)にすることを特徴としている。
【0030】
さらに、前記膜の逆洗水量と、前記ろ材の逆洗水量との総和が0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように調整することを特徴としている。
【0031】
さらに、前記膜からなる構造体で、前記ろ材を支持することを特徴としている。
【0032】
さらに、前記ろ過池の下部にある集水渠に前記膜を設けたことを特徴としている。
【0033】
さらに、ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、細孔径が異なる複数の異方性多孔質材料によって構成される複数の膜を、上段側になるほど、細孔径が順次、大きくなるように重ねて、前記ろ過池の下部に配置することを特徴としている。
【0034】
さらに、前記各膜毎に、各膜の逆洗水量あるいは逆洗サイクルを変更することを特徴としている。
【0035】
さらに、前記ろ過池のろ過速度を1〜1000m/日、好ましくは、1〜200m/日になるように調整することを特徴としている。
【0036】
さらに、前記各膜を透過速度1〜1000m/日で逆洗浄することを特徴としている。
【0037】
さらに、前記膜の下部に紫外線照射設備を設けたことを特徴としている。
【0038】
さらに、前記膜の上部に紫外線照射設備を設けたことを特徴としている。
【0039】
さらに、前記ろ過池の下部側にユニット構造体を設け、このユニット構造体の内部に、前記膜を交換自在に配置したことを特徴としている。
【0040】
さらに、既存の急速ろ過池、あるいは緩速ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填したことを特徴としている。
【0041】
さらに、前記ろ材は、篩い分けた天然の珪砂、アンスラサイト、粒状活性炭のいずれか一つを含むことを特徴としている。
【0042】
さらに、前記膜の細孔径を0.1μm以上10μm未満の範囲とし、好ましくは、4μm以下にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、高い透過流速を確保して被処理水の流量を大きくすることができ、かつ処理コストを低減させつつ、クリプトスポリジウムなどの微小病原原虫を確実に除去できるとともに、膜の逆洗浄回数を低減でき、運転コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
〈異方性多孔質材料〉
初めに、本発明者らが開発した異方性多孔質材料について説明する。
【0045】
金属膜によるろ過装置では、背景技術の欄で説明したような問題が発生する。このため、金属膜に比較して微細な孔径が形成可能で、かつ逆洗性に優れたセラミックス膜を用いた膜ろ過装置が考えられる。しかし、セラミック膜は基本的に微粒子がネットワーク状に焼結した多孔質体であるため、上述の金属膜と同様に、膜の表面だけでなく内部でも捕捉する構造となり、内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質を洗浄しづらく、運転時間の経過とともに透過流束が低下しやすいという問題がある。また、細孔が複雑にネットワークを形成する構造のため、初期特性においても圧力損失が比較的大きい。
【0046】
そこで、本発明者らは、上記に鑑み、流体のフィルタにおいて、高精度で大量の分離処理が可能で、透過流束の低下を軽減し、また洗浄性を向上させる以下の(1)〜(7)に示す異方性多孔質材料を開発するに至った。
【0047】
(特願2005−322629参照、未公開)。
【0048】
(1)複数の気孔を含有し、それぞれの気孔は長軸および短軸を規定できる非等方性の形状を有し、前記複数の気孔が方向性を有する配列をなしていることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0049】
(2)前記それぞれの気孔の長軸/短軸の長さの比が10以上であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0050】
(3)前記複数の気孔の短軸の長さが0.001〜500μmであることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0051】
(4)前記複数の気孔が、それらの長軸の方向が±10度の立体角範囲内に含まれる1つ以上の配向グループに分類されることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0052】
(5)同一の配向グループに属する前記複数の気孔の少なくとも一部が貫通気孔であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0053】
(6)前記複数の気孔の短軸の長さのバラツキが、同一の配向グループの中では±15%以下であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0054】
(7)同一の配向グループの中での貫通気孔率が70%以上であることを特徴とする異方性多孔質材料。
【0055】
以下、本発明の膜モジュールで使用される異方性多孔質材料について図12乃至図19を参照して詳述する。
【0056】
初めに、本発明に係る異方性多孔質材料の概念を、図12を参照して説明する。異方性多孔質材料は、複数の気孔を含有し、それらは、例えば図12に示す気孔51,52のような、長軸および短軸を規定することができる非等方性の形状を有する。そして、気孔51,52について、任意の基準方向と長軸のずれを傾きθで表示すると、傾きθが方向性、つまり特定範囲内に分布する傾向を有する。一方、気孔に方向性の無い材料は等方性多孔質材料である。
【0057】
《第1例、その1》
図13は第1例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図13に示すように、第1例の異方性多孔質材料53は、図12に示す楕円球状の気孔52を複数含有する。図13に示す異方性多孔質材料53に含まれる気孔52は、主に気孔全体が材料の内部に入っている閉気孔である。
【0058】
ここで、気孔52の長軸の長さaと短軸の長さbの比(アスペクト比)a/bは10以上であることが好ましい。主に閉気孔からなる場合には、方向性を持った特性を発現する根源は、閉気孔の異方的な形態に起因する。アスペクト比が10未満であると、各気孔間の配列に方向性が存在しても全体として等方に近い特性を示すため、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0059】
また、それぞれの気孔の長軸の方向が立体角Ωの範囲内に含まれるとすると、立体角Ωは±10度の範囲内であることが好ましい。主に閉気孔からなる場合、それぞれの閉気孔が高いアスペクト比を持っていても、方向性に±10度より大きなバラツキがあると、全体として等方に近い特性を示すため、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0060】
また、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであることが好ましい。0.001μm未満の場合、原子・分子間距離のオーダーでの形態制御になり、本発明の異方性多孔質材料の構造を実際的な材料として具現することが困難である。500μmより大きい場合、孔開け加工等の既存の機械加工により製造が可能になる範疇にある。これは、本発明の異方性多孔質材料の概念に含まれない。
【0061】
また、それぞれの気孔の短軸の長さbのバラツキは±15%以下であることが好ましい。主に閉気孔からなる場合、それぞれの閉気孔の径に±15%より大きなバラツキがあると、全体としての特性指向性が弱くなり、より等方に近い特性を示すので、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0062】
《第1例、その2》
図14は第1例の変形例を示している。第1例の変形例の異方性多孔質材料54は、図12に示す非等方性の形状の気孔51を複数含有する。それぞれの気孔の長軸は、一方向に配列している。
【0063】
図14に示す異方性多孔質材料54においても、図13に示す異方性多孔質材料53と同様に、それぞれの気孔のアスペクト比は10以上であり、それぞれの気孔の長軸の方向が±10度の立体角範囲内に含まれ、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであり、それぞれの気孔の短軸の長さbのバラツキは±15%以下であることが好ましい。これらの数値を選定する理由についても上記説明と同様である。
【0064】
《第2例》
図15は第2例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図15に示すように、第2例の異方性多孔質材料55は、気孔52a,52bをそれぞれ複数含有する。異方性多孔質材料55に含まれる気孔は主に閉気孔である。気孔52aは、長軸が方向Aに対して方向性を有する第1の配向グループを構成し、気孔52bは、長軸が方向Aと異なる方向Bに対して方向性を有する第2の配向グループを構成する。
【0065】
ここで、第1例と同様に、気孔52a,52bのアスペクト比は10以上であり、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであることが好ましい。これらの数値を選定する理由についても第1例と同様である。
【0066】
第1の配向グループのそれぞれの気孔の長軸の方向が立体角ΩAの範囲内に含まれるとすると、立体角ΩAは±10度の範囲内であることが好ましい。また、第2の配向グループのそれぞれの気孔の長軸の方向が立体角ΩBの範囲内に含まれるとすると、立体角ΩBは±10度の範囲内であることが好ましい。方向性に±10度より大きなバラツキがあると、全体として等方に近い特性を示すため、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0067】
また、同一の配向グループの中では、それぞれの気孔の短軸の長さbのバラツキは±15%以下であることが好ましい。短軸の長さbに±15%より大きなバラツキがあると、全体としての特性指向性が弱くなり、より等方に近い特性を示すので、異方性多孔質材料としての特徴が十分に発揮されない。
【0068】
《第3例》
図16は第3例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図16に示すように、第3例の異方性多孔質材料56は、貫通気孔57を複数有する。貫通気孔は両端が材料の表面に開いている気孔である。第3例の異方性多孔質材料56は、図13に示す第1例の異方性多孔質材料を、気孔の長軸方向に垂直で互いに平行な2つの面で切り出した形態をしている。
【0069】
ここで、貫通気孔57のアスペクト比は10以上であることが好ましい。アスペクト比が10以上であることで、フィルタリングなどに好適な強度特性についてもバランス良く優れた膜材料が得られる。
【0070】
また、それぞれの貫通気孔の長軸の方向が、±10度の立体角範囲内に含まれることが好ましい。方向性に±10度より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける圧損が大きくなるなど、特徴的な特性が劣化する。
【0071】
また、それぞれの貫通気孔の短軸の長さは0.001〜500μmであることが好ましい。0.001μm未満の場合、原子・分子間距離のオーダーでの形態制御になり、本発明の異方性多孔質材料の構造を実際的な材料として具現することが困難である。500μmより大きい場合、孔開け加工等の既存の機械加工により製造が可能になる範疇にある。
【0072】
これは、本発明の異方性多孔質材料の概念に含まれない。
【0073】
また、それぞれの貫通気孔の短軸の長さのバラツキは±15%以下であることが好ましい。短軸の長さに±15%より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける分隔精度が低下するなど、特徴的な特性が劣化する。
【0074】
また、異方性多孔質材料56が有するすべての気孔における貫通気孔の割合(貫通気孔率)は70%以上であることが好ましい。貫通気孔率が70%未満の場合、フィルタリングなどにおける透過流量が低下するとともに、貫通孔以外の気孔(開気孔および閉気孔)の影響が顕在化する。具体的には、フィルタリングなどにおける洗浄性の低下、膜強度の低下などの影響がある。ここで、開気孔とは一端のみが材料表面に開いている気孔である。
【0075】
図17は第3例の変形例を示す概略図である。図17に示すように、第3例の変形例の異方性多孔質材料58は、貫通気孔59を複数有し、貫通気孔59は、異方性多孔質材料58の上面および下面に対して垂直でない方向に形成されている。第3例の変形例の異方性多孔質材料58は、図15に示す第1例の異方性多孔質材料を、気孔の長軸方向に対して垂直以外の角度で、互いに平行な2つの面で切り出した形態を有するものである。
【0076】
《第4例》
図18は第4例の異方性多孔質材料の構造を示す概略図である。図18に示すように、第4例の異方性多孔質材料60は、貫通気孔61a,61bをそれぞれ複数有する。第4例の異方性多孔質材料60は、図15に示す第2例の異方性多孔質材料を、互いに平行な2つの面で切り出した形態をしている。貫通気孔61aは第1の配向グループを構成し、貫通気孔61bは第2の配向グループを構成する。
【0077】
ここで、第3例と同様に、貫通気孔61a,61bのアスペクト比は10以上であり、それぞれの気孔の短軸の長さbは0.001〜500μmであり、同一の配向グループの中での貫通気孔率は70%以上であることが好ましい。これらの数値を選定する理由についても第3例と同様である。
【0078】
また、同一の配向グループの中では、それぞれの貫通気孔の長軸の方向が、±10度の立体角範囲内に含まれることが好ましい。方向性に±10度より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける圧損が大きくなるなど、特徴的な特性が劣化する。また、同一の配向グループの中では、それぞれの貫通気孔の短軸の長さのバラツキは±15%以下であることが好ましい。短軸の長さに±15%より大きなバラツキがあると、フィルタリングなどにおける分隔精度が低下するなど、特徴的な特性が劣化する。
【0079】
図19は第4例の変形例を示す概略図である。図19に示すように、第4例の変形例の異方性多孔質材料63は、貫通気孔64a,64bをそれぞれ複数有するとともに、図13に示す第1例の異方性多孔質材料を互いに平行な2つの面で切り出したものを、一層ごとに貫通気孔の方向が90°ずれるように積層した形態を有するものである。
【0080】
上述した各異方性多孔質材料は、一般的な多孔質材料、あるいは上述の水の浄化目的に使われている多孔質膜に代表されるような既存の多孔質材料と異なり、長軸/短軸のアスペクト比の大きい気孔が方向性を持って配列したものである。このため、第1,第3例の1次元異方性多孔質材料を流体のフィルタに用いると、フィルタの表面で微粒子・懸濁物質を捕捉するので、高精度で大量の分離処理が可能で、透過流束の低下を軽減し、フィルタの洗浄性を向上させることができる。
【0081】
また、第2,第4例の2次元異方性多孔質材料を熱交換材料として用いると、流体抵抗によるエネルギー損失を大幅に低減するので、体積当たりの熱交換効率を向上させることができる。
【0082】
上述した各異方性多孔質材料の用途についても多岐にわたるが、第1,第3例の1次元異方性多孔質材料では、高精度で大量の分離処理が可能で、高い透過流束を確保し、また洗浄性にも優れるなど、秀でた諸特性を合わせ持つ各種フィルタを挙げることができる。
【0083】
また、第2,第4例の2次元異方性多孔質材料では、体積当たりの熱交換効率が飛躍的に優れ、また流体抵抗によるエネルギー損失を大幅に低減した熱交換器を挙げることができる。
【0084】
本発明の異方性多孔質材料の製造方法は、気孔あるいは貫通気孔を形成するためのテンプレートを用いる方法、気孔あるいは貫通気孔を転写して形成する方法、気孔あるいは貫通気孔の元組織を延伸加工する方法、結晶組織成長により気孔あるいは貫通気孔を形成する方法、気相合成法により気孔あるいは貫通気孔を形成する方法をとることが可能である。
【0085】
なお、上述の各実施の形態では、気孔が1つまたは2つの配向グループからなる異方性多孔質材料を示したが、分類される配向グループの数はこれに限らない。
【0086】
〈実施形態の説明〉
以下、本発明に係るろ過システムの実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明するろ過システムでは、前述した異方性多孔質材料53,54,55,56,58,60,63のいずれかを膜モジュールを構成するろ過膜に使用するものである。
【0087】
《第1実施形態》(請求項1、18、19、20に対応)
図1は本発明によるろ過システムの一実施形態を示す構成図である。
【0088】
[構成]
この図に示すろ過システム1は、金属やセラミックで生成された異方性多孔質材料53,54,55,56,58,60,63のいずれかによって構成され、ろ過池2内に配置される膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せて構成されている。
【0089】
具体的には、篩い分けた天然の珪砂からなる「ろ材」が敷き詰められたろ材層3と、0.1μm〜数10μmの細孔を持つ金属やセラミックでできた異方性多孔質材料によって構成され、ろ材層3の下側に配置される膜15と、膜15の下側に配置されるポーラスコンクリート層4と、ポーラスコンクリート層4の下側に配置される分散砂利層5と、分散砂利層5の下側に配置される有孔コンクリート板6と、有孔コンクリート板6を支える支持梁7とで構成されている。
【0090】
また、ろ過池2の下部に形成された集水渠8には、ろ材層3と膜15を洗浄するための逆洗水と空気を導入するための逆洗水導入管9、空気導入管13と、バルブ11、14とが接続される一方、ろ材層3より上部には、逆洗排水を排出するための逆洗排水排出管10と、バルブ12とが接続されている。なお、クリプトスポリジウムの除去を主目的とする場合は、クリプトスポリジウムの大きさは4〜6μmなので、その除去を確実にするため、膜15の細孔径は4μm未満にするのが好ましい。
【0091】
この際、新規にろ過システム1を作る場合には、急速ろ過池の下部に金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を敷設した後、膜15上に直接、天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を敷き詰める。
【0092】
また、既設の急速ろ過池を本発明のろ過システム1に改造する場合は、既設のろ材の流出を防ぐポーラスコンクリート層4と分散砂利層5を残しておいても差し支えず、本構成図でもポーラスコンクリート層4とろ材層3の間に膜15を敷設しているが、ろ過池の新設や、既設のろ過池の改造であっても、ポーラスコンクリート層4と分散砂利層5が無い方が好ましい。
【0093】
[作用]
そして、このろ過システム1では、被処理水がろ過池2の上方から導入されると、重力でろ材層3中を下降し、ろ材の中を流れ落ちる間に被処理水中の懸濁物質が、砂の隙間に入り込んで、被処理水から取り除かれる。次に0.1μm〜数10μmの細孔をもつ異方性多孔質材料を用いた膜15の篩い作用により細孔よりも大きな物質は膜面に捕捉される。細孔を通過したろ過水がポーラスコンクリート層4および分散砂利層5、有孔コンクリート板6を通って、集水渠8に貯まる。この時、被処理水がろ材層3や異方性多孔質材料を用いた膜15を流れ落ちる速さは、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度である。そして、集水渠8を貯まったろ過水が図示されていない次の浄水処理工程に送られる。
【0094】
また、ろ材層3では、ろ材の目詰まりを防ぐため、上部には、粒径が大きく比重が小さい「アンスラサイト」などが、下部に粒径が小さく比重が大きい珪砂が用いられる。また、異方性多孔質材料を用いた膜15や、ろ材層3で目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管9から逆洗水を導入して下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、膜15やろ材層3から取り除かれ、逆洗排水排出管10から排水される。
【0095】
また、逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層3のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と水流の剪断力とにより、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ12の開放にともない、ろ材や膜から分離された濁質が逆洗排水排出管10から排出され、別途排水処理工程に送られる。
【0096】
また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、ろ過池2の下部の空気導入管13から空気を吹き込んでろ材に付着した濁質を剥離する。逆流洗浄では、いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ11、14で調整する。
【0097】
[効果]
このように、この第1実施形態では、異方性多孔質材料を用いた膜15は、細孔が供給水の透過方向と同一方向になるとともに、材料に占める空間の割合(空間率)が大きいため、供給水のろ過抵抗が小さくなり、通常水道用で用いられる精密ろ過膜や限外ろ過膜に比べて、透過流速を大きくすることができる。すなわち、従来の急速ろ過池に膜15を導入する場合、ろ材層3中をろ過速度120〜150m/日で流下させなければならないが、膜15中も同じ流量で流れる事になる。しかし、従来の有機高分子材料系の精密ろ過膜や限外ろ過膜、不繊布状構造のセラミック膜、金属膜では、かけられる圧力(ろ過池2の場合、損失水頭)にもよるが、数m/日のろ過速度でしか、被処理水を流す事ができない。これに対し、異方性多孔質材料で構成された膜15では、数百m/日まで被処理水を流す事ができる(請求項1の効果)。
【0098】
ここで、従来の膜と異方性多孔質材料で作った膜15との違いについて、図2、図3を用いて説明する。図2(a)は、従来の有機高分子材料系の精密ろ過膜や限外ろ過膜のモジュールの構造図である。有機高分子材料系のろ過膜201が最もろ過速度が小さく、また、構造上の強度も弱く圧力もかけられない。しかし、図2(a)のような有機高分子材料系のろ過膜201を外径が数mmの繊維状に加工する事により、ろ過速度、強度を向上でき、モジュールにした場合、ユニット体積あたりの、ろ過速度、強度は、他のろ過膜に比べて最も優れている。しかし、ろ過池に膜システムを導入する場合は、平板構造にしなければならず、有機高分子材料系の膜では、ろ過速度不足、強度不足で適用できない。
【0099】
また、図2(b)のように不繊布状構造のセラミック膜、金属膜(ろ過膜202)は、強度は十分で、図3(a)のように平板構造に加工できるため、ろ過池に設置可能だが、透過流速が小さく、急速ろ過池のろ過速度には達していない。また、膜の内部に入り込んだ微粒子・懸濁物質が通常の洗浄で除去できず、運転時間の経過とともに透過流速が低下しやすいという問題がある。なお、いずれの膜もろ過池2の後段にろ過膜設備として別途、設ける事はできる。
【0100】
一方、異方性多孔質材料の膜15は、図3(b)のように、金属やセラミックでできた0.1μm〜数10μmの異方性の細孔をもつ膜であり、数百m/日まで被処理水を流す事ができ、また、膜の内部で微粒子・懸濁物質が入り込んで通常の洗浄で除去できないような事は無い。すなわち、既設の急速ろ過池において、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を、ろ材層3の下部に設けることにより、新たな施設(敷地)は不要で、かつ、これらのろ過池、ろ過層を大幅な改造なく導入できる。これにより、従来のろ過処理では十分に除去できないクリプトスポリジウム等の微生物や微粒子を除去できる(請求項20の効果)。
【0101】
また、膜15上に直接、天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層してろ材層3を形成し、微細の浮遊物の除去は、膜15で行い、比較的大きい濁質成分をろ材層3で行わせることにより、膜15、ろ材層3、双方の目詰まりを抑制し、逆洗頻度、逆洗時間、逆洗水量を少なくでき、またそれらの交換寿命を延長させることができる(請求項19の効果)。
【0102】
また、上述した実施形態では、近年、設置面積が小さく、除濁能力が高い急速ろ過が多く採用されていることから、急速ろ過池を用いて、本発明のろ過システムを説明した。しかし、逆洗を有し、ウイルス、病原微生物の漏洩がある、高度処理の生物活性炭槽、粒状活性炭槽、緩速ろ過池にも適用できる。
【0103】
それらに適用した場合、前二つの処理槽は、ろ材として粒状活性炭を使用し、構成が違う緩速ろ過池でもろ材は、珪砂を用いるが、構成は急速ろ過池と異なる。しかし、本発明のろ材層3と異方性多孔質材料でできた膜15とを組み合わせる点は、急速ろ過池の場合と同じである。また、緩速ろ過池は、ろ過速度が数m/日であり、ろ過速度が遅く不繊布状構造のセラミック膜、金属膜でも適用可能だが、不繊布状構造内部への目詰まりのデメリットを考慮すると本発明によるろ過システムの方が優れている。その他の効果は、上記と同じである。
【0104】
また、この第1実施形態では、既存のろ過池2を本発明のろ過システム1に改造する場合を例にして、説明しているが、既設の急速ろ過池を本発明のろ過システム1に改造する場合は、既設のろ材の流出を防ぐポーラスコンクリート層4と分散砂利層5を残しておいても差し支えない(請求項18の効果)。
【0105】
また、本構成図でもポーラスコンクリート層4とろ材層3の間に膜15を敷設しているが、ろ過池の新設や、既設のろ過池の改造であっても、ポーラスコンクリート層4と分散砂利層5が無い方が好ましい。
【0106】
《第2実施形態》(請求項2〜8、17に対応)
次に、図4と図5を用いて本発明によるろ過システムの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0107】
図4は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明によるろ過システムの第2実施形態に関する構成図である。
【0108】
[構成]
この図に示すろ過システム31が図1に示すろ過システム1と異なる点は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を、孔径が異なる2種類の膜15a、15bの2段にして、ユニット構造体(梁)16により2膜間に空間を設けたユニット17の複数を、池面に対し平行に並べた構造にし、さらに逆洗方法を、膜15aと、ろ材層3および膜15bとを別に最適化して洗浄するために逆洗水導入管18と、逆洗排水排出管19を膜15a、15bの間に接続して、それらの水量を調整するバルブ20、21をそれぞれに接続したことである。
【0109】
下段の膜15aは、0.1μm〜数10μmの細孔を持つ異方性多孔質材料を用いた膜で、上段の膜15bの細孔は、膜15aの細孔より大きく、かつ珪砂等のろ材の粒径より小さくろ材が流出しないようになっている。なお、クリプトスポリジウムの除去を主目的とする場合は、クリプトスポリジウムの大きさは4〜6μmなので、その除去を確実するため、膜15aの細孔径は4μm未滴にするのが好ましい。
【0110】
また、逆洗用の空気導入管13は、逆洗水導入管18と同様に膜15a、15bの間に接続する方が望ましい。しかし、既設の急速ろ過池に本発明のろ過システムを導入する場合は、図4に示すように既設の集水渠8への接続している設備をそのまま使用しても構わない。
【0111】
[作用]
そして、このろ過システム31では、被処理水がろ過池2の上方から導入されると、重力でろ材層3中を下降し、ろ材の中を流れ落ちる間に被処理水中の懸濁物質が、砂の隙間に入り込んで、被処理水から取り除かれる。
【0112】
次に、0.1μm〜数10μmの細孔を持つ異方性多孔質材料を用いた膜15a、15bの篩い作用により、各々の細孔よりも大きな物質が膜面に捕捉される。細孔を通過したろ過水がポーラスコンクリート層4および分散砂利層5、有孔コンクリート板6を通って、集水渠8に貯まった後、図示されていない次の浄水処理工程に送られる。この時、ろ材層13や異方性多孔質材料を用いた膜15a、15bを被処理水が流れ落ちる速さは、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度である。
【0113】
また、ろ材層3では、ろ材の目詰まりを防ぐため、上部には、粒径が大きく比重が小さい「アンスラサイト」などが、下部に粒径が小さく比重が大きい珪砂が用いられる。
【0114】
また、膜15a、15bやろ材層3で目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管9から逆洗水を導入して、下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、膜15a、15bやろ材層3から取り除かれて、逆洗排水排出管10、19から排水される。
【0115】
また、逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層3のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と水流の剪断力により、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ12の開放にともない、ろ材や膜15a、15bから分離された濁質が逆洗水排出管10、19から排出され、図示されていない排水処理工程に送られる。
【0116】
また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、空気導入管13から空気を吹き込んでろ材に付着した濁質を剥離する。逆流洗浄では、いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ11、14、20で調整する。この時、逆洗水導入管9、18から導入される総量が、その値になるように調整する。すなわち、逆洗水導入管9から、水量は0.1〜0.5m3/(min・m2)となるように、逆洗水を導入し、残りを逆洗水導入管18から導入する。
【0117】
また、膜15aのみが目詰まりを起こした場合は、膜15aのみを逆洗する。その時は、逆洗水導入管9から、0.1〜0.5m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、同量または、膜15aの上部に残っている被処理水を僅か加えた水量を逆洗排水排出管19から排出する。
【0118】
[効果]
この第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0119】
細孔径の異なる2つの膜15a、15bを使用させることにより、それぞれの膜15a、15bの細孔より大きい懸濁物質がそれぞれの膜表面で捕獲される。結果、細孔径が小さく、目詰まりしやすい膜15aの懸濁物質による目詰まりを低減できるとともに、目詰まりに起因し、塞がれた無効な細孔を減らせる。結果、急速ろ過と同等のろ過速度(流量)を十分に確保でき、逆洗周期、交換寿命を長くできる。また、膜15a、15bの間に逆洗水導入管18、逆洗排水排出管19を接続することもでき、膜15a中の逆洗水量とろ材層3中の逆洗水量を変更できる(請求項2の効果)。
【0120】
ここで、図5を用いて逆洗水量による膜15a、15bへの影響について説明する。図5は、異方性多孔質材料によって構成された膜15a、15bに対する、被処理水の透過流量と、圧力との関係を示す図である。
【0121】
この図から明らかなように、クリプトスポリジウムの捕捉が可能な細孔径が小さい膜15aでは、透過流量が大きくなるほど、膜15aにかかる水圧が上昇する。また、膜15aを介して、ろ材層3内に、ろ材を流動状態にするのに必要な0.6〜0.8m3/(min・m2)の逆洗水を流すと、膜15aでの圧力損失が大きくなり、その分だけ、逆洗水導入ポンプの大型化、電気代等のランニングコストの増大、膜15a、15bや集水渠8等の耐圧性能向上によるイニシャルコストが増大する。
【0122】
つまり、膜15aの目詰まりを取り除くだけなら、それほど多くの逆洗水量を必要としないことから、逆洗水導入管9から、0.2〜0.3m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、導入管18から、0.4〜0.6m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、ろ材を流動状態にする0.6〜0.8m3/(min・m2)の水量を確保する。ここで、膜15bは、細孔径が大きいので、0.4〜0.6m3/(min・m2)で逆洗水を流しても、圧力損失は大きくならない(請求項7、8の効果)。
【0123】
また、被処理水(原水)水質によっては、細孔径が小さい分、膜15aの目詰まり周期は、ろ材層3の目詰まり周期と一致しない。すなわち、逆流洗浄を行う周期の最適間隔が、それぞれ違い、毎回両方同時に逆洗する必要が無い。そして、逆洗排水排出管19を膜15aの上部に接続しているので、膜15aのみを逆洗する事ができ、膜15aと、膜15b及びろ材層3とを個別に、あるいは同時に、最適水量で逆洗する事ができる(請求項3、4、5、6の効果)。
【0124】
一方、ろ過処理時(ろ過速度150m/日)では、膜15a、15bの圧力損失を加算しなければならず、その分、沈殿池2のろ抗上昇になることから、通常の沈殿池2、例えば圧力損失が0.005MPa未満の沈殿池2では、50cmだけ、ろ抗上昇を加算しなければならない。しかし、膜15bによる除濁能力を考慮し、ろ材層3のろ材の種類、引き詰め方を最適化すれば、ろ抗上昇を低くすることができる。
【0125】
次に、図6を用いて膜15a、15bのユニット化について説明する。図6は、ろ過池2を上から見た図である。通常、ろ過池2は、数m〜数十m角の広さを持ち、急速ろ過より緩速ろ過の方がさらに広い。それほど広い面積の異方性多孔質膜を金属やセラミックで製作または設置するのは困難であり、コスト高、強度不足になるだけでなく、交換や薬品洗浄も難しい。
【0126】
そこで、この第2実施形態では、膜15aと15bおよび、それらを支持するユニット構造体(梁)16によって、膜交換自在なユニット17にし、同一のユニット17を複数個、ろ材層3の下部に同層面となるように平行に並べて固定する。各ユニット17のサイズは、数十cm〜数m角のユニットとする。これにより、それらの問題が解決できる。また、金属、セラミックを材料としているので、ユニット化により加熱再生も可能で、洗浄薬品の使用量を減らす事ができる(請求項17の効果)。
【0127】
《第3実施形態》(請求項10に対応)
次に、図7を用いて本発明に係るろ過システムの第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態や第2実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0128】
図7は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明による、ろ過システムの第3実施形態に関する構成図である。
【0129】
[構成]
この図に示すろ過システム32が図1に示すろ過システム1と異なる点は、図1に示す膜15を、ろ過池2の下部に形成された集水渠8の空気導入管13と逆洗水導入管9との下部側に膜15を設けるとともに、膜15の下部に膜15の逆洗用の逆洗水導入管18とバルブ20を接続したことである。なお、既設の急速ろ過池2に本発明のろ過システム32を導入する場合は、既設の集水渠8に接続されている空気導入管13と逆洗水導入管9をそのまま使用しても構わない。
【0130】
[作用]
そして、図1に示すろ過システム1では、被処理水がろ材層3→膜15→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板6→集水渠8という経路で流れる間、ろ材層3と膜15とで、被処理水中の懸濁物質が除濁されるのに対し、この図に示すろ過システム32では、ろ材層3→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板6→膜15→集水渠8という順番になるのみで、除濁処理に関する作用は、図1に示すろ過システム1と違いがない。しかし、膜15やろ材層3の目詰まりを除去する逆洗方法が図1に示すろ過システム1と異なる。
【0131】
逆洗は、二つの段階からなっており、第1段階は、逆洗水によって、ろ材層3のろ材を流動状態とし、局所的な短絡流や小さな渦によるろ材粒子相互の衝突・摩擦と水流の剪断力により、付着濁質の剥離を促し分離する。第2段階は、バルブ12の開放にともない、ろ材や膜15から分離された濁質が逆洗水排出管10から排出され、別途排水処理工程に送られる。また、空気洗浄方式では、逆流洗浄と併用して、空気導入管13から空気を吹き込んで、ろ材に付着した濁質を剥離する。
【0132】
また、逆流洗浄では、いずれかの洗浄方法が行われるが、空気と水を同時に吹き込んだり、数分間空気を吹き込んでから水を導入したり、種々のものがあり、空気量は0.8〜1.5m3/(min・m2)、水量は0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように、それぞれをバルブ11、14、20で調整する。この時、逆洗水導入管9、18から導入される逆洗水の総量が、その値になるように調整する。すなわち、逆洗水導入管9からは、水量は0.1〜0.5m3/(min・m2)導入し、残りを逆洗水導入管18から導入する。
【0133】
[効果]
この第3実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0134】
まず、ポーラスコンクリート板4、分散砂利層5などにより、ろ材層3と、膜15とを物理的に分離しているので、ろ材層3のろ材によって、膜15の細孔が塞がれないようにして、膜15の各細孔が無効にならないようにする。結果、急速ろ過と同等のろ過速度(流量)を十分に確保でき、逆洗周期、交換寿命を長くできる。また、膜15の上部側にろ材層逆洗用の逆洗水導入管9を接続し、膜15の下部側に膜逆洗用の逆洗水導入管18を接続しているので、膜15中の逆洗水量と、ろ材層3中の逆洗水量とを変更できる(請求項10の効果)。なお、逆洗流量による膜15への影響については、第2実施形態の説明で、図5を用いて説明済みである。
【0135】
また、クリプトスポリジウムの捕捉が可能な細孔径が小さい膜15では、透過流量が大きくなるほど、膜15にかかる水圧が上昇する。また、膜15を介して、ろ材層3内に、ろ材を流動状態にするのに必要な0.6〜0.8m3/(min・m2)の逆洗水を流すと、膜15での圧力損失が大きくなり、その分だけ、逆洗水導入ポンプの大型化、電気代等のランニングコストの増大、膜や集水渠8等の耐圧性能向上によるイニシャルコストが増大する。
【0136】
そして、膜15の目詰まりを取り除くだけなら、それほど多くの逆洗水量を必要としないことから、逆洗水導入管18から、0.2〜0.3m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、逆洗水導入管9から、0.4〜0.6m3/(min・m2)で逆洗水を導入し、ろ材を流動状態にするのに必要な0.6〜0.8m3/(min・m2)の水量を確保する。
【0137】
一方、ろ過処理時(ろ過速度150m/日)では、膜15の圧力損失を加算しなければならず、その分、沈殿池2のろ抗上昇になることから、通常の沈殿池2、例えば圧力損失が0.005MPa未満の沈殿池2では、50cmだけ、ろ抗上昇を加算しなければならない。しかし、膜15による除濁能力を考慮し、ろ材層3のろ材の種類、引き詰め方を最適化すれば、ろ抗上昇を低くすることができる。
【0138】
また、この第3実施形態では、既設のろ過池2に本発明のろ過システム32を導入する場合、ろ材層3の洗浄に最適化された容量の仕様で設計されている空気導入管9および逆洗水導入管9をそのまま転用できるため、軽微の改良だけで済み、更新コストを低減できる。また、逆洗のみで、膜15中の目詰まりを除去できなくなった時は、ろ材層3のろ材を入れ替えることなく、膜15のみの交換で済み、ランニングコストを低減できる。
【0139】
また、膜15が、ろ材の重量に耐える必要がなく、透過流量に対する水圧のみ耐え得る強度の構造で済み、材料コスト、加工コストを低減できる。なお、この第3実施形態では、省略したが、膜15の上部に逆洗排水排出管を接続しても良い。この場合、第2実施形態と同様に、膜15のみを逆洗する事ができ、膜15、ろ材層3を個別にあるいは同時に、最適水量で逆洗する事ができる。
【0140】
《第4実施形態》(請求項9に対応)
次に、図8を用いて本発明に係るろ過システムの第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態から第3実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0141】
図8は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明による、ろ過システムの第4実施形態に関する構成図である。
【0142】
[構成]
この図に示すろ過システム33が図1に示すろ過システム1と異なる点は、図1に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を無くし、異方性多孔質材料を用いた膜15とそのユニット構造体(梁)16で構成されるユニット17をろ材層3の支持構造体としてにしたことである。
【0143】
[作用]
そして、この図に示すろ過システム33では、図1に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6の代わりに、膜15と、ユニット構造体(梁)16で構成されるユニット17でろ材層3を支持している。また、図1に示すろ過システム1では、被処理水がろ材層3→膜15→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板→集水渠8に流れる間、ろ材層3と膜15にて、被処理水中の懸濁物質が除濁されるのに対し、この図に示すろ過システム33では、ろ材層3→膜15(ユニット17)→集水渠8の順番になる事が異なっており、その他の作用は、図1に示すろ過システム1と違いがない。
【0144】
[効果]
この第4実施形態では、第1実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0145】
ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6が無くなることにより、設備の簡易化による管理コストの低減させることができるとともに、それらの孔中に、細菌等が繁殖する恐れがなく、また、定期的にユニット17を交換洗浄するので管理を容易にさせることができる。また、新規にろ過池2を敷設する場合は、ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を必要としない分、敷設コストを低減させることができる(請求項9の効果)。
【0146】
一方、既設のろ過池2にこのろ過システム33を導入する場合、既存のポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を撤去する必要があるが、これらを無くした分だけ、ユニット17の取り付け位置を下げて、ろ過池2の池面と、膜15との高低差を大きくさせることにより、膜15に加えられる水圧を大きくし、被処理水の透過流速に対する圧力損失(ろ抗上昇)分を補償させることができる。
【0147】
《第5実施形態》(請求項15、16に対応)
次に、図9を用いて本発明に係るろ過システムの第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態から第4実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0148】
図9は、金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15と、篩い分けた天然の「珪砂」、「粒状活性炭」、「アンスラサイト」等のろ材を粒径別に積層したろ材層3を組合せた本発明による、ろ過システムの第5実施形態に関する構成図である。
【0149】
[構成]
この図に示すろ過システム34が図4に示すろ過システム31と異なる点は、図4に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を無くし、細孔径が異なる異方性多孔質材料を用いた2つの膜15a、15bと、ユニット構造体(梁)16a、16bで構成されるユニット17を、ろ材層3の支持構造体にするとともに、膜15aの上下に、波長が254nmの殺菌線の出す紫外線ランプ22、23を設置したことである。
【0150】
[作用]
そして、この図に示すろ過システム34では、図4に示すポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6の代わりに、膜15とユニット構造体(梁)16で構成されるユニット17でろ材層3を支持するとともに、図4に示すろ過システム32では、被処理水がろ材層3→膜15b→膜15a→ポーラスコンクリート層4→分散砂利層5→有孔コンクリート板6→集水渠8に流れる間、ろ材層3と膜15にて、被処理水中の懸濁物質が除濁されるのに対し、この図に示すろ過システム34では、ろ材層3→膜15b→膜15a→集水渠8の順番になるようにしている。
【0151】
また、膜15a表面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスに対し、紫外線ランプ23から照射される、波長が254nmの紫外線(殺菌線)によって不活化される。
【0152】
一方、膜15aの細孔より小さい、微生物、ウイルス等は、膜15aでは捕捉されず、透過するが、集水渠8に一時的に貯留されているとき、紫外線ランプ22から照射される、波長が254nmの紫外線(殺菌線)によって不活化される。
【0153】
その他の作用は、実施例2と違いはない。
【0154】
[効果]
この第5実施形態では、第2実施形態と同様の効果を得ながら、次の新たな効果が得られる。
【0155】
ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6が無くなることにより、設備の簡易化による管理コストの低減させることができるとともに、それらの孔中に、細菌等が繁殖する恐れがなく、また、定期的にユニット17を交換洗浄するので管理を容易にさせることができる。また、新規にろ過池2を敷設する場合は、ポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を必要としない分、敷設コストを低減させることができる。
【0156】
一方、このろ過システム33を既設のろ過池2に導入する場合、既存のポーラスコンクリート層4、分散砂利層5、有孔コンクリート板6を撤去する必要があるが、これらを無くした分だけ、ユニット17の取り付け位置を下げて、ろ過池2の水面と、膜15a、15bとの高低差を大きくさせることにより、膜15a、15bに加えられる水圧を大きくし、被処理水の透過流速に対する圧力損失(ろ抗上昇)分を補償させることができる。
【0157】
また、膜15aの上部に設けた紫外線ランプ23から、波長が254nmの殺菌線である紫外線を被処理水に対し照射する事により、膜15a表面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスを不活化できる。すなわち、異方性多孔質材料の膜15aでは、不繊布状構造のろ過膜に比べて、膜表面に捕捉された懸濁物質が長時間水流(水圧)にさらされることで、膜15aを透過するリスクがあるが、膜15aを透過する前に十分な時間、殺菌線に被曝させることにより不活化、死滅させることができ、ろ過水の安全性を向上できる(請求項15の効果)。
【0158】
一方、第1、第3、第4実施形態のように、膜15の上部に紫外線ランプ23を設けることができない構成の場合を含め、膜15aの細孔より小さい微生物やウイルスは、膜15a表面で捕捉できず、膜15aを透過してしまうが、その場合は、膜15aの下部に設けられた紫外線ランプ22から照射される波長が254nmの殺菌線である紫外線により、それらを不活化でき、ろ過水の安全性を向上できる(請求項16の効果)。
【0159】
《第6実施形態》(請求項11、13、14に対応)
次に、図10を用いて本発明に係るろ過システムの第6実施形態を説明する。
【0160】
図10は、細孔の大きさが異なる金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15を多段にした本発明による、ろ過システムの第6実施形態に関する構成図である。
【0161】
[構成]
この図に示すろ過システム35は、ろ過池2に細孔の大きさが異なる金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fを組合せた多段ろ過膜層24と、それらを支える有孔コンクリート板6と、この有孔コンクリート板6を支える支持梁7と、その周辺部の集水渠8とで構成されている。
【0162】
最下段の膜15aは、細孔径が0.1μm〜数10μmになり、それより上段の膜15b〜15eは、上段になるほど細孔径が大きいものになっており、最上段の膜15fは、数mm程度の孔径となっている。なお、既設の急速ろ過池を本実施形態のろ過システム35に改造する場合は、急速ろ過池の有孔コンクリート板を有孔コンクリート板6として転用する。
【0163】
ただし、多段ろ過膜層24の強度を高め、自ら膜15a〜15fを支持する構造にする事により有孔コンクリート板6を無くしても構わない。また、既設のろ材、ポーラスコンクリート層、分散砂利層を撤去して、多段ろ過膜層24を設ける。また、ろ過池2の下部の集水渠8には、多段ろ過膜層24を洗浄するための逆洗水を導入するための逆洗水導入管9と、バルブ11が接続され、一方、多段ろ過膜層23より上部に、逆洗排水を排出するための逆洗排水排出管10と、バルブ12とが接続されている。なお、クリプトスポリジウムの除去を主目的とする場合は、クリプトスポリジウムの大きさは4〜6μmのなので、その除去を確実するため、膜15aの細孔径は4μm未満にするのが好ましい。
【0164】
また、多段ろ過膜層24は、数十cm〜数m角に形成された複数のユニット構造体(梁)16a〜16fと、これらユニット構造体(梁)16a〜16fによって支持される複数段の膜15a〜15fによって構成され、各ユニットa〜33fを池面と平行に並べた構成になっている。
【0165】
[作用]
そして、このろ過システム35では、被処理水がろ過池2の上方から導入されると、重力で多段ろ過膜層24中を下降し、各膜15a〜15fを透過する間に被処理水中の懸濁物質で各膜15a〜15fの細孔より大きいものが、各膜15a〜15fの表面で捕捉される。すなわち各膜15a〜15fの、細孔径別の篩い作用により、下段になるほど小さい懸濁物質が被処理水より除濁される。また、最下段の0.1μm〜数10μmの異方性の細孔をもつ膜15aの表面では、クリプトスポリジウムを含む、細孔(0.1μm〜数10μm)より大きい、病原性原虫、細菌、藻類が捕捉されて、被処理水中より除去される。膜15aの細孔を通過したろ過水が、有孔コンクリート板6を通って、集水渠8に貯められた後、図示していない次の浄水処理工程に送られる。
【0166】
この時、異方性多孔質材料を用いた多段ろ過膜層24を被処理水が流れ落ちる速さは、既設の急速ろ過池を改造して、本発明のろ過システム35を適用する場合は、1分間に8〜10cm(ろ過速度120〜150m/日)程度になる。これは、既存設備、配管等の周辺設備が、その仕様でできているためである。一方、緩速ろ過池に適用する場合は、ろ過速度の仕様に合わせて、各段の膜15a〜15fの細孔径を調整して、数m/日のろ過速度にする。
【0167】
また、細孔の大きい膜15fでは、圧力損失が少ないものの、クリプトスポリジウムの捕捉が可能な細孔径が小さい膜15aでは、透過流量が大きくなるほど、膜にかける水圧が上昇する。そのため、ろ過速度が150m/日、すなわち透過流量が0.1m3/min・m2の急速ろ過池に適用した場合、膜15aのみで、圧力損失が0.005MPaになることから、膜15a〜15fの圧力損失の総和が、ろ抗の上昇原因となる。また、各膜15a〜15fの目詰まりが進むと、さらに悪化する。また、新規でろ過池2、ろ過層を敷設する場合は、既存の設備のろ過速度に依存しないことから、ろ過速度1〜1000m/日の間で、好ましくは、ろ抗上昇を考慮して1〜200m/日の間で設計する。
【0168】
また、多段ろ過膜層24では、各膜15a〜15fの目詰まりを防ぐため、最上部には、細孔径が数mm程度にされた膜3fが配置され、下部の膜ほど徐々に細孔が小さくなり、最下部には、細孔径が0.1μm〜数10μmにされた膜3aが配置されている。
【0169】
なお、細孔径が同等で異方性多孔質材料でできた各膜15a〜15fより透過流速が大きいなら、メッシュ等に代替えしても構わない。特に、これら各膜15a〜15fは、上段になるほど、代替え可能である。また、膜15a〜15fで目詰まりが起きた場合は、下部の逆洗水導入管9から逆洗水を導入して下から上へ水を流す事により、目詰まりを起こしたものが、各膜15a〜15fから取り除かれ、各々の膜15a〜15fで捕捉された懸濁物質とともに、逆洗排水として、バルブ12が開放された排出管10から排出される。この際、逆洗水量が、0.1〜0.8m3/(min・m2)となるように、バルブ11を調整する。
【0170】
[効果]
このように、この第6実施形態では、異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fは、細孔が供給水の透過方向と同一方向になるとともに、材料に占める空間の割合(空間率)が大きいため、供給水のろ過抵抗が小さくなり、通常水道用で用いられる精密ろ過膜や限外ろ過膜に比べて、透過流速を大きくすることができる。すなわち、従来の急速ろ過池に膜15a〜15fを導入する場合、多段ろ過膜層24中をろ過速度120〜150m/日で流下させなければならない。しかし、従来の有機高分子材料系の精密ろ過膜や限外ろ過膜、不繊布状構造のセラミック膜、金属膜では、かけられる圧力(ろ過池の場合、損失水頭)にもよるが、数m/日のろ過速度でしか被処理水を流す事ができない。これに対し、この第6実施形態で使用している異方性多孔質膜では、数百m/日まで被処理水を流す事ができるとともに、逆洗浄を行うことができる(請求項11、13の効果)。
【0171】
この際、上段に配置された、細孔が比較的大きい膜15fで比較的大きい濁質成分を除去し、下段に配置された、細孔が小さい膜15aで微細の浮遊物を除去しているので、1〜1000m/日の透過速度で、逆洗水を流し、各膜15a〜15fの目詰まりを解消させることができるとともに、各膜15a〜15fの目詰まりを抑制し、逆洗頻度、逆洗時間、逆洗水量を少なくでき、また、それらの交換寿命を延長できる(請求項14の効果)。
【0172】
また、数十cm〜数m角のユニット17a〜17fを池面に対し各々、平行になるように、並べて、段ろ過膜層24を構成しているので、数m〜数十m角の広さを持つ通常のろ過池2、あるいは急速ろ過よりさらに大きい緩速ろ過にも、低いコストで、かつ十分な強度を保持させて、容易に設置させることができるととともに、交換や薬品洗浄を容易にさせることができる。さらに、金属、セラミックを材料としているので、ユニット化により加熱再生も可能で、洗浄薬品の使用量を減らす事ができる。
【0173】
その他の効果は、上記と同じである。
【0174】
《第7実施形態》(請求項12、15、16に対応)
次に、図11を用いて本発明による、ろ過システムの第7実施形態について説明する。なお、第6実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0175】
[構成]
図11は、細孔の大きさが異なる金属やセラミックでできた異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fを、多段に組合せた多段ろ過膜24とした本発明のろ過システムの第7実施形態に関する構成図である。
【0176】
この図に示すろ過システム36が図10に示すろ過システム35と異なる点は、異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fの各間に逆洗水導入管25a〜25eを接続し、各逆洗水導入管25a〜25eに逆洗水量を調整するバルブ26a〜26eを設置するとともに、集水渠8内および各膜15a、15b間の各空間に波長が254nmの殺菌線を出す紫外線ランプ22、23を設置したことである。
【0177】
[作用]
そして、このろ過システム36では、逆洗方法および、被処理水が膜15aを通過する前後で紫外線ランプ22、23から照射される波長が254nmの紫外線(殺菌線)に被曝させることが、第6実施形態と異なる。
【0178】
まず、第6実施形態と異なる逆洗方法について説明する。
【0179】
膜15a〜15fで目詰まりが起きた場合は、各々の膜15a〜15fの下側に配置された逆洗水導入管25a〜25eから逆洗浄水(逆洗水)を導入して、多段ろ過膜層24の下から上へ水を流す事により、各膜15a〜15fで目詰まりを起こしたものが、取り除かれるとともに、各膜15a〜15fの上面で捕捉された懸濁物質とともに、開放されたバルブ11を介し、逆洗排水排出管10から排水される。逆洗水量は、0.1〜0.8m3/(min・m2)の範囲で、バルブ9、26a〜26e、12を調整する。通常、膜15a〜15fに対し、上段になるほど、逆洗水の水量が多くなるように調整するが、日詰まりや、捕捉されている懸濁物質が多い膜が有る場合は、その膜を逆流する水量が多くなるように調整する。
【0180】
次に、第6実施形態と異なる紫外線ランプ22、23による作用について説明する。
【0181】
多段ろ過膜層24を流下しながら、膜15b〜15fで除濁された被処理水が、さらに細孔が小さい膜15aを通過する際、膜15b〜15fで捕捉されなかったクリプトスポリジウム等の微生物を含む懸濁物質が被処理水から除去される。また、膜15aを通過したろ過水が集水渠8に一時的に貯留された後、ろ過池2から排出され、次処理工程に送られる。
【0182】
そして、膜15aの上面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスは、紫外線ランプ23から照射される波長が254nmの紫外線(殺菌線)によって不活化される。また、膜15aでは捕捉されず透過する膜15aの細孔より小さい、微生物、ウイルス等は、ろ過水が集水渠8に一時的に貯留されているとき、紫外線ランプ22により波長が254nmの紫外線(殺菌線)を照射して不活化する。
【0183】
[効果]
このように、この第7実施形態では、異方性多孔質材料を用いた膜15a〜15fの各間に、各逆洗水導入管25a〜25eを接続し、これら各逆洗水導入管25a〜25eに逆洗水量を調整する各バルブ26a〜26eを設け、膜15a〜15fで目詰まりが起きたとき、各々の膜15a〜15fの下側にある逆洗水導入管25a〜25eから逆洗浄水(逆洗水)を導入して、多段ろ過膜層24の下から上へ水を流す事により、各膜15a〜15fの目詰まり原因物質を取り除き、開放されたバルブ11を介し、逆洗排水排出管10から排水させることができる。この際、各膜15a〜15fの目詰まり度合いにより、目詰まりを起こしている膜に対する逆洗水量を大きくするとともに、逆洗水の総水量が0.1〜0.8m3/(min・m2)の範囲に収まるように、各バルブ9、26a〜26e、12を個別に調整させることができる(請求項12の効果)。
【0184】
また、膜15aの上部に設けた紫外線ランプ23から、波長が254nmの紫外線(殺菌線)を被処理水に対し照射する事により、膜15a表面で捕捉された懸濁物質中のクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスを不活化できる。すなわち、異方性多孔質材料の膜15aでは、膜表面に捕捉された懸濁物質が長時間水流(水圧)にさらされる事により、膜15aを透過するリスクが不繊布状構造のろ過膜より高い。しかし、透過する前に十分な時間、殺菌線に被曝されることにより不活化、死減させることができ、ろ過水の安全性を向上できる(請求項16の効果)。
【0185】
また、膜15aの下部、あるいは集水渠8に設けた紫外線ランプ22から波長が254nmの紫外線(殺菌線)を膜15aを通過したろ過水に対し照射する事により、膜15aの細孔より小さく、膜15aで捕捉されず通過する細菌、微生物、ウイルスを不活化できる。また、紫外線ランプ22は、膜15aの表面で捕捉された懸濁物質が長時間水流(水圧)にさらされる事により、膜15aを透過したクリプトスポリジウム、細菌、微生物、ウイルスも不活化できる。また、紫外線ランプ22は、集水渠8に設置できるので、多段ろ過膜層24のユニット17aにランプ23を設けるための構造にする必要が無く簡易にできる(請求項15の効果)。
【0186】
また、多段ろ過膜層24の構造的に許されるなら、各膜15c〜15fの間の空間に紫外線ランプを設けて、被処理水に対する消毒性能を大幅に向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明によるろ過システムの第1実施形態を示す構成図である。
【図2】従来のろ過システムで使用される精密ろ過膜や限外ろ過膜、不繊布状構造のろ過膜を説明する構造図である。
【図3】従来のろ過システムで使用される金属やセラミック製の不繊布状構造のろ過膜と、図1に示すろ過システムで使用される金属やセラミック製の異方性多孔質材料で製作したろ過膜とを説明する構造図である。
【図4】本発明によるろ過システムの第2実施形態を示す構成図である。
【図5】図4に示すろ過システムで金属製の異方性多孔質材料で製作したろ過膜を使用したときの透過流量と圧力との関係を示す図である。
【図6】図4に示すろ過システムで使用される、金属製の異方性多孔質材料で製作したユニットを説明する構成図である。
【図7】本発明によるろ過システムの第3実施形態を示す構成図である。
【図8】本発明によるろ過システムの第4実施形態を示す構成図である。
【図9】本発明によるろ過システムの第5実施形態を示す構成図である。
【図10】本発明によるろ過システムの第6実施形態を示す構成図である。
【図11】本発明によるろ過システムの第7実施形態を示す構成図である。
【図12】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の説明図である。
【図13】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第1例の構造を示す概略図である。
【図14】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第1例の変形例を示す概略図である。
【図15】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第2例の構造を示す概略図である。
【図16】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第3例の構造を示す概略図である。
【図17】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第3例の変形例を示す概略図である。
【図18】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第4例の構造を示す概略図である。
【図19】本発明によるろ過システムの各実施形態で使用される異方性多孔質材料の第4例の変形例を示す概略図である。
【図20】従来から知られている浄水場の凝集沈殿処理とろ過池とを示すシステムフロー図である。
【図21】従来から知られている浄水場の高速ろ過池を示す構成図である。
【符号の説明】
【0188】
1、31〜36…ろ過システム
2…ろ過池
3…ろ材層
4…ポーラスコンクリート層
5…分散砂利層
6…有孔コンクリート板
7…支持梁
8…集水渠
9…逆洗水導入管
10…逆洗排水排出管
11、12、14…バルブ
13…空気導入管
15、15a〜15f…膜
16…ユニット構造体
17…ユニット
18…逆洗水導入管
19…逆洗排水排出管
20、21…バルブ
22、23…紫外線ランプ
24…多段ろ過膜層
25a〜25e…逆洗水導入管
26a〜26e…バルブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、
前記ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、前記ろ過池の上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填した、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過システムにおいて、
前記異方性多孔質材料を用いた膜は、孔径が異なる複数段から成る、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗排水排出管を接続し、前記膜を逆洗浄した際に出る逆洗排水を前記逆洗排水排出管から排出させる、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗水導入管を接続し、この逆洗水導入管を介して、前記ろ過池内に逆洗水を導き、前記ろ材を洗浄する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のろ過システムにおいて、
前記膜に対する逆洗水の一部または全量を前記ろ材の逆洗水として活用し、前記膜および前記ろ材を同時に逆洗する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の洗浄と前記ろ材の洗浄とを各々、異なる水量あるいは逆洗周期とする、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の逆洗水量を0.1〜0.5m3/(min・m2)にする、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の逆洗水量と、前記ろ材の逆洗水量との総和が0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように調整する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜からなる構造体で、前記ろ材を支持する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の下部にある集水渠に前記膜を設けた、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項11】
ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、
細孔径が異なる複数の異方性多孔質材料によって構成される複数の膜を、上段側になるほど、細孔径が順次、大きくなるように重ねて、前記ろ過池の下部に配置する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項12】
請求項11に記載のろ過システムにおいて、
前記各膜毎に、各膜の逆洗水量あるいは逆洗サイクルを変更する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池のろ過速度を1〜1000m/日、好ましくは、1〜200m/日になるように調整する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記各膜を透過速度1〜1000m/日で逆洗浄する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の下部に紫外線照射設備を設けた、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の上部に紫外線照射設備を設けた、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の下部側にユニット構造体を設け、このユニット構造体の内部に、前記膜を交換自在に配置した、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
既存の急速ろ過池、あるいは緩速ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填した、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項19】
請求項1乃至10、15乃至18のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ材は、篩い分けた天然の珪砂、アンスラサイト、粒状活性炭のいずれか一つを含む、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の細孔径を0.1μm以上10μm未満の範囲とし、好ましくは、4μm以下にする、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項1】
ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、
前記ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、前記ろ過池の上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填した、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過システムにおいて、
前記異方性多孔質材料を用いた膜は、孔径が異なる複数段から成る、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗排水排出管を接続し、前記膜を逆洗浄した際に出る逆洗排水を前記逆洗排水排出管から排出させる、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の前記膜の上方側に、逆洗水導入管を接続し、この逆洗水導入管を介して、前記ろ過池内に逆洗水を導き、前記ろ材を洗浄する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載のろ過システムにおいて、
前記膜に対する逆洗水の一部または全量を前記ろ材の逆洗水として活用し、前記膜および前記ろ材を同時に逆洗する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の洗浄と前記ろ材の洗浄とを各々、異なる水量あるいは逆洗周期とする、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の逆洗水量を0.1〜0.5m3/(min・m2)にする、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の逆洗水量と、前記ろ材の逆洗水量との総和が0.6〜0.8m3/(min・m2)となるように調整する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜からなる構造体で、前記ろ材を支持する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の下部にある集水渠に前記膜を設けた、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項11】
ろ過池を使用して、被処理水をろ過するろ過システムにおいて、
細孔径が異なる複数の異方性多孔質材料によって構成される複数の膜を、上段側になるほど、細孔径が順次、大きくなるように重ねて、前記ろ過池の下部に配置する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項12】
請求項11に記載のろ過システムにおいて、
前記各膜毎に、各膜の逆洗水量あるいは逆洗サイクルを変更する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池のろ過速度を1〜1000m/日、好ましくは、1〜200m/日になるように調整する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項14】
請求項11乃至13のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記各膜を透過速度1〜1000m/日で逆洗浄する、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の下部に紫外線照射設備を設けた、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の上部に紫外線照射設備を設けた、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ過池の下部側にユニット構造体を設け、このユニット構造体の内部に、前記膜を交換自在に配置した、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
既存の急速ろ過池、あるいは緩速ろ過池の下部側に異方性多孔質材料を用いた膜を設け、上部側に被処理水中の懸濁物質をろ過するろ材を充填した、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項19】
請求項1乃至10、15乃至18のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記ろ材は、篩い分けた天然の珪砂、アンスラサイト、粒状活性炭のいずれか一つを含む、
ことを特徴とするろ過システム。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のろ過システムにおいて、
前記膜の細孔径を0.1μm以上10μm未満の範囲とし、好ましくは、4μm以下にする、
ことを特徴とするろ過システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2008−55282(P2008−55282A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233469(P2006−233469)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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