説明

アカシア属樹皮由来物を含有する抗酸化組成物

【課題】 生体内において優れた抗酸化作用を有する組成物を提供する。
【解決手段】 アカシア属樹皮由来物を含有することを特徴とする、抗酸化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アカシア属(Acacia)に属する樹木に由来する、抗酸化組成物、並びにこの抗酸化組成物の食品、動物用飼料、医薬、及び医薬部外品としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に大気中において、酸素は三重項酸素と呼ばれる安定な物質である。その酸素の一部が、生体内でスーパーオキシドやヒドロキシラジカル、一重項酸素、過酸化水素などの活性酸素と呼ばれる反応性の高い物質に変化すると、その一部が好中球やマクロファージで産生された異物に対する生体防御の役割を担う一方で、活性酸素が過剰に生体内に存在すると、脂質、タンパク質、酵素、核酸等を攻撃し、生体膜や組織などを損傷し、動脈硬化症、脳血管障害、肺気腫、リウマチ性関節炎、白内障、高血圧症、老人性痴呆症、アルツハイマー病、又はシミ・ソバカス若しくは老化などの発症の原因にもなることが明らかにされている。
【0003】
従来からこれらの過剰な活性酸素による酸化ストレスが引き起こす上述のような各種疾病を予防するために、出発物質であるスーパーオキシド(0)を不均化して過酸化水素と酸素分子を生じる反応を触媒する酵素であるスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)と類似する働きをするSOD様物質や、活性酸素を捕捉する物質(活性酸素消去活性物質)を食品へ添加する抗酸化物質の探索が広く行われてきた。
【0004】
例えば、このような物質としては、天然物由来の物質では脂溶性のα−トコフェロール(ビタミンE)や水溶性のアスコルビン酸(ビタミンC)が挙げられ、合成物質ではBHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、TBHQ(第三級ブチルヒドロキノン)等のフェノール性物質がある。
しかしながら、これらの物質は食品の抗酸化物質として一般的には使用されているものの、生体への活性酸素消去作用が十分ではなく、特に合成物質のBHAでは発癌性の疑いが生じる等の問題もでてきている。
【0005】
そこで、近年、動植物などの天然物から安全性の高い活性酸素消去活性物質を探索する研究開発が盛んに行われており、例えば、特許文献1、2、3、4、及び5などがある。また、実際に製品化まで進んだものとしては、特に、茶葉、カカオ豆エキスから抽出されるカテキン類、ブルーベリー果皮に含有されるアントシアニン系化合物、発酵大豆中から得られるイソフラボン類等、ポリフェノール系化合物が非常に高い活性酸素消去効果があることで注目を集めている。
【0006】
これらの活性酸素消去効果が高いことが明らかになってきたポリフェノール系化合物の中でも特に茶葉に含まれる(−)エピガロカテキン、(−)エピガロカテキン−3−ガレート、(−)エピカテキン、(−)エピカテキン−3−ガレート、(+)カテキンなど、フラバン−3−オールを基本骨格とするフラバノールであるカテキン類が、他のポリフェノール類よりも高い活性酸素消去効果があることがわかってきた。
【0007】
一方、アカシア属の一種である学名:Acacia mearnsii De Wild.の樹皮から水で抽出されるタンニンは古くから大量に南アフリカやブラジルで生産されており、一般的にはワトルタンニンと呼ばれ、主に皮なめし剤や木材用接着剤として非常に安価で利用されている。また、学名:Acacia mangium Willd.(アカシアマンギュウム)は生長が非常に早いことからも、近年、インドネシア、マレーシアを始めとする亜熱帯〜熱帯で植林が盛んになってきている。このワルトタンニンは、縮合型タンニンに分類されるものである。
【0008】
最近はアカシア属の抽出物にCOX−2の選択的阻害効果(特許文献6)のあることやアカシア属の樹皮に活性酸素消去効果(特許文献7)やチロシナーゼ活性阻害効果による美白効果(特許文献8)のあることが開示されている。
しかしながら、アカシア属の樹皮や樹皮由来のポリフェノールが特定の用量にて摂取されることにより生体内で優れた抗酸化作用を発現し得ることは知られていなかった。
【特許文献1】特開平01−25726号公報
【特許文献2】特開平6−65074号公報
【特許文献3】特開平7−300422号公報
【特許文献4】特開平11−5975号公報
【特許文献5】特開2001−98264号公報
【特許文献6】特表2004−532811号公報
【特許文献7】特開2004−352639号公報
【特許文献8】特開平10−025238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、安全性の高い、生体内で優れた抗酸化作用を発揮する組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、アカシア属樹皮由来物が特定の用量にて摂取されることにより生体内で優れた抗酸化作用を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、特定の用量にてアカシア属樹皮由来物を含有することを特徴とする、抗酸化組成物に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定用量にて摂取されることにより優れた抗酸化作用を発揮できる組成物を得ることができる。
また、本発明の組成物は、長期に服用しても副作用などの心配が少なく、安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用できるアカシア属樹皮由来物とは、アカシア属(Acacia)に属する樹木(以下、「アカシア」又は「アカシア属」という)の樹皮を原料として得られるものであれば特に制限されず、例えば、アカシア属の樹皮の細片、粉末及びこれらの懸濁液、アカシア属の樹皮の抽出液、濃縮抽出液、及びエキス粉末などの抽出物並びにこの抽出物を精製して得た精製物が挙げられる。優れた抗酸化活性が得られる上で、アカシア属の樹皮の抽出物、特にアカシア樹皮ポリフェノールが好ましい。
本発明では、これらアカシア属樹皮由来物を1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0013】
本発明で使用できるアカシアは、アカシア属に属する樹木であれば特に制限されないが、優れた抗酸化作用があるアカシア属樹皮由来物が得られる点で、学名:Acacia mearnsii De Wild.(一般名ブラックワトル)、学名:Acacia mangium Willd.(一般名アカシアマンギュウム)、学名:Acacia dealbata Link.、学名:Acacia decurrens Willd.、及び学名:Acacia pycnantha Benth.からなる群より選ばれるアカシア属の樹皮が好ましく、特にAcacia mearnsii De Wild.及びAcacia mangium Willd.が好ましい。
本発明では、これらアカシア属の樹皮を1種のみ使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0014】
上記アカシア属の樹皮は、通常、樹木として伐採したのち、樹皮だけを剥がして採取し乾燥することで得られるが、好ましくはさらに天日で乾燥させた樹皮である。
アカシア属の樹皮は、外皮とやや繊維質の内皮とからなり、含水率20%程度以下に乾燥するとハンマーミルなどの粉砕機で容易に微粉化する。本発明では、アカシア属の樹皮として、このアカシア属の内皮と外皮の両方を一緒に用いてもよいし、いずれか一方のみを用いてもよい。
【0015】
前記アカシア属の樹皮の細片は、慣用の方法に従って、アカシア属の樹皮を適当な大きさに粉砕して得ることができる。
また、前記アカシア属の樹皮の粉末は、アカシア属の樹皮を慣用の方法で粉砕し粉末化して得ることができるが、特に、粒径が100μm以下、特に50〜70μmである粉末が好ましい。粉末の分画は、含水率20%以下に乾燥した樹皮を適当な大きさ、例えば粒径1.6mm以下程度に粉砕し、得られた粉末を振動ふるい機などで分級して所要の粉末を得ることができる。
【0016】
上記アカシア属の樹皮の抽出物は、アカシア属の樹皮を慣用の方法に従って抽出して得ることができる。優れた抗酸化作用を有するアカシア属の樹皮の抽出物を得るために、アカシア属の樹皮をアルコールや極性溶媒で抽出することが好ましい。
このようなアルコールとしてエタノールが、極性溶媒として水などが使用でき、また必要に応じてそれら溶媒を単独あるいは2種以上を併用してもよい。特に、優れた抗酸化作用を得るために、水とエチルアルコールなどのアルコールとの混合溶媒が好ましい。
さらに、同一又は異なる溶媒によって複数回抽出操作を行ってもよい。
優れた抗酸化作用を有する抽出物を得る上で、アカシア属の樹皮からの水又は熱水による抽出物をさらにエタノールで抽出して得た抽出物を使用してもよい。
【0017】
抽出は、アカシア属の樹皮の細片や粉末などに溶媒を加えて必要に応じて攪拌し抽出するが、温度や時間あるいは固液比については特に限定されない。溶媒に水を用いる場合には、熱水で抽出してもよい。得られた抽出液は、そのまま凍結乾燥あるいは噴霧乾燥してもよいし、あるいは減圧濃縮してから凍結乾燥又は噴霧乾燥してもよい。得られる抽出物は、抽出液、溶液、粉末、濃縮液、ペースト状物などの種々の形態とすることができ、広く必要に応じて使用できる。
さらに、これらの形態で得られた本発明のアカシア属の樹皮抽出物はそのまま抗酸化組成物として使用できるほか、さらに必要に応じて精製し、その精製物も抗酸化活性成分として使用することができる。
【0018】
本発明では、アカシア属樹皮由来物として、アカシア属の樹皮に含有されている成分も例示される。このような成分として、アカシア樹皮ポリフェノールなどが例示される。特に、アカシア樹皮ポリフェノールは優れた抗酸化作用を示すので好ましい成分である。
本発明のアカシア樹皮ポリフェノールとは、フラバン−3−オールを基本骨格とするフラバノール類の重合体である縮合型タンニンの一種を意味する。ここで、このような縮合型タンニンとして分子量500〜3000のものが好ましい。本発明で用いるアカシア樹皮ポリフェノールは、上記アカシア属の樹皮の粉末などを熱水抽出することにより得ることができる。
また、アカシア樹皮ポリフェノール製品としてはMIMOSA CentralCo-operative Ltd.製の登録商標MIMOSA ME POWDER、MIMOSA MS POWDER、MIMOSA GS POWDER、MIMOSA FS POWDER、MIMOSA WS POWDER、MIMOSA RG POWDER、MIMOSA RN POWDER、MIMOSA DK POWDER、MIMOSA AL POWDER、MIMOSA CR POWDER、GOLDEN MIMOSA POWDERなどが例示される。
【0019】
本発明の組成物は、アカシア属樹皮由来物、例えば、アカシア属の樹皮、その抽出物、その精製物、又はアカシア樹皮ポリフェノールそのものであってもよいが、他の抗酸化作用を有する物質、例えば、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10、α−トコフェロール、プロアントシアニン、イソフラボン、ケルセチン、緑茶、又は小麦胚芽を含んでもよい。特に、相乗効果による優れた抗酸化作用が得られる点で、コエンザイムQ10、緑茶、又は小麦胚芽を含有するのが好ましい。
【0020】
本発明の組成物は、アカシア属樹皮由来物、例えば、アカシア属の樹皮、その抽出物、その精製物、又はアカシア樹皮ポリフェノールそのものであってもよいが、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、乳化剤、及びその他に医薬品や食品で一般に利用されている添加剤や素材を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の組成物は、活性酸素が関係する疾患の予防又は治療に使用することができる。本発明において、活性酸素が関係する疾患とは、スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、若しくは過酸化水素などの活性酸素又はこれらにより酸化された過酸化脂質などが起因となる細胞又は組織障害であれば特に制限されず、動脈硬化症、脳血管障害、肺気腫、リウマチ性関節炎、白内障、高血圧症、老人性痴呆症、アルツハイマー病、又はシミ・ソバカス若しくは老化などが例示される。好ましくは動脈硬化症である。
【0022】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、剤型、並びに使用者若しくは患者などの摂取者又は摂取動物の年齢、体重及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、有効成分量として1日あたり摂取者又は摂取動物の体重1kgにつきアカシア樹皮ポリフェノール量で0.005〜1g、好ましくは0.005〜0.5g、より好ましくは0.005〜0.1gを、摂取、特に経口的に摂取することにより、優れた抗酸化作用が得られる。
摂取期間は、摂取者又は摂取動物の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【0023】
本発明に係る組成物は、食品又は動物用飼料として、例えば、健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品、美容食品、及び栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品及び動物用飼料は、例えば、お茶及びジュースなどの飲料水;並びにアイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガムなどの形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、又は錠剤の形態であってもよい。ここで、動物用飼料の動物には、ペット動物、畜産動物、又は動物園などで飼育されている動物を含む、前記の活性酸素が関係する疾患の予防又は治療を必要とする全ての動物が含まれる。
【0024】
また、本発明に係る組成物は、医薬又は医薬部外品として、例えば、散剤、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤、又は懸濁剤の形態で経口投与できるが、例えば坐剤の形態で直腸的に;例えば軟膏、クリーム剤、ゲル剤、又は液剤の形態で局部的又は経皮的に非経口的に投与することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、製造例、試験例、配合例を挙げて本発明を更に詳しく具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に、ここでは本発明のアカシア属の樹皮を外皮と内皮とに分けないで実施例を示しているが、外皮を内皮から分離してそれぞれ使用することもできる。
以下の製造例、試験例等において、本発明の各アカシアをそれぞれの学名の後の括弧内に示した番号で示す。例えば、学名:Acacia mearnsii De Wild.のアカシアをアカシアNo.1と記す。
学名:Acacia mearnsii De Wild.(No.1)、学名:Acacia mangium Willd.(No.2)、学名:Acacia dealbata Link.(No.3)、学名:Acacia decurrens Willd.(No.4)、学名:Acacia pycnantha Benth.(No.5)。
【0026】
アカシア樹皮粉末の製造例1
アカシアNo.1の樹皮を含水率20%以下まで乾燥し、その乾燥樹皮をハンマーミル(Raymond社製)で1.6mm以下(10メッシュ篩(タイラー:Tyler)通過)の粉末に粉砕した後、更に振動ふるい機で分級し、63μm以下(250メッシュ篩下)の微粉末を得た。
同様にして、残り4種のアカシアNo.2〜5の樹皮を粉砕してそれぞれ63μm以下の微粉末を得た。種類によって250メッシュ篩通過の微粉末の収率に多少の差はあるが、目的とする微粉末が得られた。
【0027】
アカシア樹皮抽出物の製造例2
本発明の各アカシアNo.1〜5の樹皮をそれぞれ含水率20%以下まで乾燥し、その乾燥樹皮をハンマーミルで1.6mm以下の粉末に粉砕した後、この乾燥粉砕樹皮100gに対して5倍量の熱水を加え、沸騰してから15分間抽出し、10〜20μmのフィルターを用いて濾過した。得られた濾液をスプレードライヤで噴霧乾燥し、樹皮抽出物各40gを得た。
以下、各樹皮抽出物はアカシアNo.1〜5熱水抽出物と記す。
【0028】
アカシア樹皮抽出物の製造例3
本発明のアカシアの樹皮を含水率20%以下まで乾燥し、その乾燥樹皮をハンマーミルで1.6mm以下の粉末に粉砕した後、この乾燥粉砕樹皮100gに対して5倍量のエタノールを加え、沸騰させて還流させながら15分間抽出し、10〜20μmのフィルターを用いて濾過した。得られた濾液からエタノールを蒸発させた後、濃縮液をクローズドスプレードライヤで噴霧乾燥し、樹皮抽出物(以下、アカシアNo.1エタノール抽出物の如く記す)40gを得た。
アカシアNo.1〜5のエタノール抽出物を得た。
【0029】
アカシア樹皮抽出物の製造例4
製造例2で得られたアカシア熱水抽出物10gに3倍量のエタノールを加え、沸騰させて還流させながら15分間抽出し、10〜20μmのフィルターを用いて濾過した。得られた濾液からエタノールを蒸発させて、それに水を加えてから凍結乾燥させて9gの抽出物(以下、アカシアNo.1熱水抽出物エタノール画分の如く記す)を得た。
アカシアNo.1〜5の熱水抽出物エタノール画分を得た。
【0030】
試験例1 抗酸化試験
(1)試験試料の調製
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na、ナカライテスク株式会社販売)の粉末1.50gに注射用水(株式会社大塚製薬工場販売)を加えて溶解し全量を500mLとし、0.3%(W/V)CMC−Na溶液を調製した。
製造例2に記載のアカシアNo.1熱水抽出物を6.0g秤量し、乳鉢で細かく粉砕下後、上記の0.3%(W/V)CMC−Na溶液で懸濁し全量を15mLとし、試験試料を調製した。
【0031】
(2)試験動物
ラット(Slc:SD、SPF、雄、6週齢)を日本エスエルシー株式会社から購入し、8日間の検疫・馴化期間を置いてから、試験に供した。
検疫・馴化期間中に、一般状態を1日1回観察し、動物入荷の翌日及び検疫・馴化終了日に体重を測定した。
検疫・馴化終了日の体重をもとに、コンピュータを用いた完全無作為抽出方法により各群の平均体重が等しくなるように、対照群及び試験群に8匹ずつ群分けした。
動物は、検疫・馴化期間及び試験期間を通して、温度20〜26℃、相対湿度40〜70%、換気回数10〜20回/時間、照明時間12時間(7:00〜19:00)に設定したクリーン飼育室で、ステンレス製ハンガーラックに設置されたステンレス製ケージで飼育した。1ケージ当たりの匹数は2〜3匹とした。
また飼料は、検疫・馴化期間及び試験期間を通して、市販固形飼料(F-2、株式会社船橋農場製)を自由に摂取させた。飲料水は上水道水を給水瓶により自由に摂取させた。
【0032】
(3)試験方法
対照群には0.3%(W/V)CMC−Na溶液を、試験群には上記で調製された試験試料を、それぞれ5mL/kgの投与液量にて、1日1回14日間経口投与した。
【0033】
(4)観察及び検査項目
(i)血清中8−OHdG(8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン)の測定
投与開始14日目に、無麻酔下にて頸静脈より血液を約1mL採取し、この採取した血液を3000rpmで15分間遠心分離して血清を得た。得られた血清中の8−OHdG濃度を高感度8−OHdG Check(日研ザイル株式会社製)を用いて測定した。
(ii)尿中8−OHdG(8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン)の測定
上記の採血を行った日の午後5時〜翌日の午前9時までの約16時間の間、ラットを代謝ケージに入れ、尿を採取した。この採取した尿を1500rpmで5分間遠心分離して上清を得た。得られた上清中の8−OHdG濃度をNew 8−OHdG Check(日研ザイル株式会社製)を用いて測定した。
【0034】
(5)統計学的手法
上記の各測定値は平均値±標準誤差で表した。対照群との有意差検定はStudentのt検定を行った。有意水準は5%で表示した。
【0035】
(6)試験成績
全例において死亡及び一般状態異常は認められなかった。
血清中及び尿中の8−OHdG濃度は、対照群と比較して試験群で減少が認められ、特に、尿中8−OHdG濃度は、対照群と比較して試験群で有意な減少が認められた(表1)。
【0036】
【表1】

【0037】
以上の結果より、アカシア樹皮ポリフェノールには血清中や尿中の8−OHdGを低下させる作用があることが認められ、経口投与により生体内で抗酸化作用を示すことが確認できた。
【0038】
試験例2 急性毒性試験(経口投与)
OECD(Guidelines for the Testing of Chemicals 401, 1987)に準拠し、マウスを用いた経口急性毒性試験を実施した。
ICR系雌雄マウスについて、雄では7,000mg/kg、雌では6,500mg/kgを上限として、公差500mg/kgで各9用量の検体(上記製造例2のアカシアNo.1熱水抽出物)を雌雄マウスに単回経口投与した。検体は、本発明品を純水に懸濁して用いた。その結果、LD50値は雄では4,468mg/kg、雌では3,594mg/kgであり、いずれも3,000mg/kgの投与量で、死亡例を認めなかった。
上記試験を製造例2のアカシアNo.2〜5熱水抽出物について行って同様の結果を得た。これにより、本発明の組成物は、安全性に優れていることがわかった。
【0039】
試験例3 突然変異誘起性試験
労働省告示第77号(昭和63年9月1日)に準拠し、突然変異誘起性試験を実施した。
Escherichia coli WP2 uvrA株及びSalmonella typhimurium TA株系4菌株を用いて代謝活性化を含む復帰突然変異試験を156〜5,000μg/プレートの用量の検体(製造例2のアカシアNo.1〜5熱水抽出物)で行った。その結果、いずれの菌株についても復帰変異コロニー数の増加が見られなかったことから、製造例2のアカシアNo.1〜5熱水抽出物の突然変異誘起性は陰性であると結論づけられ、安全性に優れていることがわかった。
【0040】
配合例1 内服剤の調製
製造例4のアカシア樹皮熱水抽出物エタノール画分を用い、下記に示す組成にて内服剤を調製した。
製造例4の抽出物画分 1.0(重量%)
乳糖 30.0
コーンスターチ 60.0
結晶セルロース 8.0
ポリビニールピロリドン 1.0
計 100.0
【0041】
配合例2 ペットフードの調製
製造例2のアカシア樹皮熱水抽出物を用い、下記に示す組成にてペットフードを調製した。
製造例2の抽出物 1.0(重量%)
オートミール 88.0
でんぷん 5.0
食塩 2.5
全卵 3.0
調味料 0.5
計 100.0
【0042】
配合例3 錠剤(菓子)の調製
製造例4のアカシア樹皮熱水抽出物エタノール画分を用い、下記に示す組成にて錠剤(菓子)を調製した。
製造例4の抽出物画分 1.0(重量%)
クエン酸 1.0
脱脂粉乳 15.0
ショ糖エステル 1.0
フレーバー 0.5
粉糖 20.0
乳糖 61.5
計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、活性酸素が関係する疾患の予防及び/又は治療用の組成物を得ることができる。
より詳細には、本発明の組成物は、動脈硬化症の予防及び/又は治療に有用である。
これら組成物は、医薬品又は医薬部外品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品、若しくは栄養補助食品などの食品又は動物用飼料に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アカシア属樹皮由来物を、アカシア樹皮ポリフェノールとして1日あたり摂取者の体重1kgにつき0.005〜1gの用量にて含有することを特徴とする、抗酸化組成物。
【請求項2】
アカシア属樹皮由来物がアカシア属の樹皮の抽出物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アカシア属樹皮由来物がアカシア樹皮ポリフェノールである、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
食品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
動物用飼料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
医薬品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
医薬部外品である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−306803(P2006−306803A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132747(P2005−132747)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】