説明

アクチュエータ、静電アクチュエータ及び液滴吐出ヘッド並びに静電アクチュエータの製造方法

【課題】 複雑な工程を経ることなく、所望のギャップの距離を得るアクチュエータ、静
電アクチュエータ及び液滴吐出ヘッド並びに製造方法を得る。
【解決手段】 駆動部となる電極8を有する電極基板2と、電極8による静電引力が
加わると変位する振動板4を有するキャビティ基板1と、電極基板2とキャビティ基板1
との間に、振動板4を変位させるための所望の厚さを有する空間を形成するためのスペー
サ9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加わった力により動作部分が変位する微細加工素子において、その動作部分
となる被駆動部を駆動させて仕事をさせるアクチュエータ、液滴吐出ヘッド、その製造方
法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばシリコン等を加工して微小な素子等を形成する微細加工技術(MEMS:Micro
Electro Mechanical Systems)が急激な進歩を遂げている。微細加工技術により形成され
る微細加工素子の例としては、例えば液滴吐出方式のプリンタのような記録(印刷)装置
で用いられている液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、マイクロポンプ、光可変フ
ィルタ、モータ、センサのようなアクチュエータ等がある。
【0003】
ここで、微細加工素子のアクチュエータの一例として液滴吐出ヘッドに関して説明する
。液滴吐出方式の記録(印刷)装置は、家庭用、工業用を問わず、あらゆる分野の印刷に
利用されている。液滴吐出方式とは、例えば複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドを対象
物との間で相対移動させ、対象物の所定の位置に液滴を吐出させて印刷等の記録をするも
のである。この方式は、液晶(Liquid Crystal)を用いた表示装置を作製する際のカラー
フィルタ、有機化合物等の電界発光(ElectroLuminescence )素子を用いた表示パネル(
OLED)、DNA、タンパク質等、生体分子のマイクロアレイ等の製造にも利用されて
いる。
【0004】
液滴吐出ヘッドの中で、流路の一部に液体を溜めておく吐出室を備え、吐出室の少なく
とも一面の壁(ここでは、底壁とする。この壁は他の壁とも一体形成されているが、以下
、この壁のことを振動板ということにする)を撓ませて(動作させて)形状変化により吐
出室内の圧力を高め、連通するノズルから液滴を吐出させる方法がある。振動板を変位さ
せる力として、例えば駆動部となる電極と振動板との間に発生する静電力を利用している

【0005】
ここで、被駆動部である振動板の動作を設計通りの特性で行うためには、振動板と電極
と間に形成される空間による空隙(以下、ギャップという)の距離をできる限り所望通り
に形成することが重要となる。そのため、電極上に犠牲層を形成し、さらに振動板となる
層を形成した後、エッチング等により犠牲層を除去してギャップを有する空間を形成する
方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−98506号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の方法では犠牲層を形成する前に平坦化工程を有するため、製造工
程が複雑になり、そのための時間的、経済的等のコストを費やすことになる。また、犠牲
層を除去するためのスルーホールを、振動板が形成される基板に多数形成する必要がある
ため、素子構造に関して設計等の自由度が低くなる。
【0008】
そこで、本発明はこのような問題を解決するため、複雑な工程を経ることなく、所望の
ギャップの距離を得るアクチュエータ、静電アクチュエータ及び液滴吐出ヘッド並びに製
造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るアクチュエータは、駆動部を有する基板と、駆動部により力が加わると変
位する被駆動部を有する基板と、駆動部を有する基板と被駆動部を有する基板との間に、
被駆動部を変位させるための所望の厚さを有する空間を形成するためのスペーサとを備え
たものである。
本発明によれば、例えば成膜によるスペーサを駆動部を有する基板と被駆動部を有する
基板との間に設けるようにしたので、スペーサを厚みにより駆動部と被駆動部とのギャッ
プの距離が精度よく制御されたアクチュエータを得ることができる。
【0010】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、電極を有する基板と、電極により力が加わ
ると変位する被駆動部を有する基板と、電極を有する基板と被駆動部を有する基板との間
に、被駆動部を変位させるための所望の厚さを有する空間を形成するためのスペーサとを
備えたものである。
本発明によれば、例えば成膜によるスペーサを電極を有する基板と被駆動部を有する基
板との間に設けるようにしたので、スペーサを厚みにより電極と被駆動部とのギャップの
距離が精度よく制御された静電アクチュエータを得ることができる。
【0011】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、被駆動部を有する基板の電極と対向する面
に絶縁性を有する膜からなる絶縁層を有する。
本発明によれば、絶縁層を設けることにより、被駆動部が電極に貼り付いて動作不能と
なることがない。
【0012】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、駆動部を有する基板とスペーサ、または絶
縁層とスペーサとがそれぞれ異なる材料で構成されている。
本発明によれば、駆動部を有する基板とスペーサ、または絶縁層とスペーサとをそれぞ
れ異なる材料で構成しているので、例えば、製造工程においてスペーサ形成のためのエッ
チング等の処理を行う際に、基板、絶縁層までもエッチングしてしまうことなく、ギャッ
プの距離を精度よく保つことができる。
【0013】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、駆動部を有する基板がガラス、スペーサが
多結晶シリコンまたは窒化シリコンを材料として構成されている。
本発明によれば、製造工程においてスペーサ形成のためのエッチング等の処理を行う際
に、基板までもエッチングしてしまうことなく、ギャップの距離を精度よく保つことがで
きる。そして、基板をガラスとすることにより、製造コストを抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、駆動部を有する基板がシリコン、スペーサ
が酸化シリコンまたは窒化シリコンを材料として構成されている。
本発明によれば、製造工程においてスペーサ形成のためのエッチング等の処理を行う際
に、基板までもエッチングしてしまうことなく、ギャップの距離を精度よく保つことがで
きる。また、基板をシリコンとすることにより、基板と電極とを一体形成することができ
るので、より緻密に基板への電極作製ができ、高密度化を図ることができる。
【0015】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、絶縁層が酸化シリコン、スペーサが窒化シ
リコンを材料として構成されている。
本発明によれば、製造工程においてスペーサ形成のためのエッチング等の処理を行う際
に、絶縁層までもエッチングしてしまうことなく、ギャップの距離を精度よく保つことが
できる。
【0016】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、絶縁層が窒化シリコン、スペーサが酸化シ
リコンを材料として構成されている。
本発明によれば、製造工程においてスペーサ形成のためのエッチング等の処理を行う際
に、絶縁層までもエッチングしてしまうことなく、ギャップの距離を精度よく保つことが
できる。
【0017】
また、本発明に係る静電アクチュエータは、絶縁層が酸化シリコンよりも比誘電率の高
い材料、スペーサが酸化シリコンまたは窒化シリコンを材料として構成されている。
本発明によれば、製造工程においてスペーサ形成のためのエッチング等の処理を行う際
に、絶縁層までもエッチングしてしまうことなく、ギャップの距離を精度よく保つことが
できる。また、比誘電率の高い材料を用いることにより、静電引力を大きくすることがで
き、エネルギー効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドは、上記の静電アクチュエータを有し、液体が充填
される吐出室の少なくとも一部分を被駆動部として、被駆動部の変位により吐出室と連通
するノズルから液滴を吐出させるものである。
本発明によれば、上記の静電アクチュエータによる液滴吐出ヘッドを得ることができる
ので、各ノズルの吐出特性をより均一にすることができ、例えば、画像等の印刷を行う場
合にはムラ等がなく、高精細の印刷を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、電極が設けられる基板上に、ス
ペーサとなる膜を所望の厚さで形成する工程と、被駆動部が設けられる部分に合わせて膜
の一部をエッチングしてスペーサを形成する工程と、スペーサ形成によってできた凹部に
電極を設ける工程と、被駆動部が設けられた基板と電極が設けられた基板とを接合する工
程とを有している。
本発明によれば、膜厚を高精度に管理できる成膜により、所望の厚さの膜を基板上に形
成し、被駆動部が設けられる部分に合わせて膜の一部をエッチングしてスペーサを形成す
るようにしたので、電極と被駆動部との間のギャップを所望の距離に制御したアクチュエ
ータを、複雑な工程を経ることなく製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、被駆動部が設けられる基板に絶
縁性を有する膜の層を第1の所望の厚さで形成する工程と、絶縁性を有する膜の層にさら
にスペーサとなる層を第2の所望の厚さで形成する工程と、被駆動部が設けられる部分に
合わせてスペーサとなる層の一部をエッチングしてスペーサを形成する工程と、スペーサ
形成によってできた凹部と電極と対向するように、被駆動部が設けられる基板と電極が設
けられた基板とを接合する工程とを有している。
本発明によれば、膜厚を高精度に管理できる成膜により、第2の所望の厚さの膜を基板
上に形成し、被駆動部が設けられる部分に合わせて膜の一部をエッチングしてスペーサを
形成するようにしたので、電極と被駆動部との間のギャップを所望の距離に制御したアク
チュエータを、複雑な工程を経ることなく製造することができる。
【0021】
また、本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、ウェットエッチング法で、膜の
一部をエッチングしてスペーサを形成する。
本発明によれば、ウェットエッチング法によりスペーサを形成するようにしたので、複
数の基板を同時に加工処理することもでき、効率よく、時間的、経済的にコストを低減す
ることができ、設備投資も小さくてすむ。
【0022】
また、本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、ドライエッチング法で、膜の一
部をエッチングしてスペーサを形成する。
本発明によれば、ドライエッチング法によりスペーサを形成するようにしたので、膜の
厚さ方向の垂直性に優れたスペーサを形成することができ、そのため、複数設けられた電
極間の幅を狭めることができるようになるため、高密度化を図ることができる。
【0023】
また、本発明に係る静電アクチュエータの製造方法は、スペーサを形成する層又は絶縁
層となる膜をCVDにより形成する。
本発明によれば、スペーサを形成する層又は絶縁層となる膜をCVDで形成することに
より、緻密で均一性が良好な膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
実施の形態1.
図1は本発明の第1の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。図
1は(静電)アクチュエータの代表としてフェイスイジェクト型の液滴吐出ヘッドを表し
たものである(なお、構成部材を図示し、見やすくするため、図1を含め、以下の図面で
は各構成部材の大きさの関係が実際のものと異なる場合がある)。図1において、キャビ
ティ基板1は、例えば(110)面方位のシリコン単結晶基板(この基板を含め、以下、
単にシリコン基板という)で構成されている。キャビティ基板1には、吐出室5となる凹
部(底壁が被駆動部となる振動板4となる)及び各ノズル共通に吐出する液体を貯めてお
くためのリザーバ7となる凹部を形成する。凹部の形成には、例えば異方性ウェットエッ
チング法を用いる。リザーバ7はタンク(図示せず)から液体供給口13を介して供給さ
れる液体を貯めておく。また、電極端子19は電極8と同期し、キャビティ基板1に反対
の電荷を供給する。ここで電極基板2と対向する面には後述するように絶縁層14を形成
している。
【0025】
電極基板2は厚さ約1mmであり、図1の方向からはキャビティ基板1の下面に接合さ
れる。本実施の形態では電極基板2にホウ珪酸系の耐熱硬質ガラスを用いる。電極基板2
のキャビティ基板1との接合する側の面にはスペーサ9が形成されている。キャビティ基
板1に形成される各吐出室5(振動板4)に合わせて、スペーサ9となる膜の一部を除去
し、スペーサ9形成と同時にギャップGを有する凹部9Aを形成する。スペーサ9の厚さ
(凹部9Aの深さ)は約0.2〜0.6μmとなるように形成し、本実施の形態では約0
.25μmに形成する。また、本実施の形態では、スペーサ9の材料として多結晶シリコ
ン(Poly−Si)を用いる。これは、例えばスペーサ9(凹部9A)形成のため異方
性エッチング工程において、ガラスのエッチャント(エッチング液)と異なるエッチャン
トを選択したためである。ガラスと同じエッチャントを用いない材料としては他にも窒化
シリコン(Si34)があり、窒化シリコンをスペーサ9の材料として用いてもよい。
【0026】
凹部9Aの内側に被駆動部を駆動させる、駆動部となる電極8、リード部10及び端子
部11(以下、これらを合わせて電極部という)を設ける。本実施の形態では、電極部の
材料として、酸化錫を不純物としてドープしたITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫
酸化物)を用い、スパッタ法により凹部9A内に例えば0.1μmの厚さで成膜する。し
たがって、本実施の形態においては、振動板4(絶縁層14)と電極8との間のギャップ
Gは約0.15μmとなる。ここでは電極部の材料としてITOを用いるが、例えばクロ
ム等の金属等を材料に用いてもよい。また、液体をリザーバ7に供給するための液体供給
口13も設けている。
【0027】
ノズル基板3は例えば厚さ約180μmのシリコン基板である。電極基板2とは反対の
面(図1の場合には上面)でキャビティ基板1と接合している。図1ではノズル基板3が
上面となり、電極基板2を下面としているが、実際に用いられる場合には、ノズル基板3
の方が電極基板2よりも下面となることが多い。ノズル基板3には、吐出室5と連通する
ノズル12が形成されている。本実施の形態においてはノズル12は2段で構成されてお
り、内側(キャビティ基板1と接合される側)の直径が外側の直径よりも大きい。これは
、液体流れの整流作用により、液体の直進性を高めるためである。18はダイヤフラムで
ある。また、ノズル基板3の内側の面(図1の場合には下面)にはオリフィス6となる細
溝を設け、吐出室5とリザーバ7とを連通させる連通溝とする。
【0028】
図2は液滴吐出ヘッドの断面図である。ノズル12のノズル孔から吐出させる液体を吐
出室5で溜めておき、吐出室5の底壁である振動板4を撓ませることにより、吐出室5内
の圧力を高め、ノズル孔から液滴を吐出させる。ここで、本実施の形態の振動板4は、高
濃度のボロンドープ層で構成されている。これは、例えばKOH(水酸化カリウム)水溶
液等のアルカリ性水溶液でシリコンの異方性ウェットエッチングを行った場合、高濃度(
約5×1019atoms・cm-3以上)のボロン拡散領域で極端にエッチングレートが小
さくなる、いわゆるエッチングストップ技術を利用するためである。また、キャビティ基
板1の下面(電極基板2と対向する面)には、液滴吐出ヘッド(振動板4)を駆動させた
時の絶縁破壊及び短絡を防止するため、絶縁層14を例えば0.11μm成膜する。本実
施の形態では、絶縁層14を酸化シリコン(SiO2 )で形成する。
【0029】
発振駆動回路15は、ワイヤ21を介して端子部11と接続され、電極8に電荷の供給
及び停止を制御する。発振駆動回路15は例えば20kHzで発振し、電極8に0Vと3
0Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。この発振駆動回路15が駆動し、電極8に
電荷を供給して正に帯電させると、振動板4は負に帯電し、静電気力により電極8に引き
寄せられて撓む。これにより吐出室5の容積は広がる。そして、電極8への電荷供給を止
めると振動板4は元に戻るが、そのとき吐出室5の容積も元に戻るから、そのとき発生す
る圧力により液滴が吐出し、例えば記録対象となる記録紙に着弾することによって画像、
文字等の記録が行われる。また、キャビティ基板1のシリコン基板と発振駆動回路15と
は、電極端子19を介して電気的に接続される。
【0030】
本実施の形態は、電極8と振動板4(絶縁層14)との間のギャップGの距離を、簡単
な工程で設計通りに作製できる方法及び液滴吐出ヘッドを得るためのものである。ギャッ
プが広くなると電力消費が大きくなったり、所定の静電力が得られなかったりする。また
、ギャップが狭くなると、振動板4の変位が小さくなるため、所望の吐出特性が得られな
い場合がある。特に液滴吐出ヘッドのような複数のノズルが存在する場合においては、ノ
ズル間、また製品間で吐出特性のばらつきが生じる場合がある。そこで本実施の形態は、
エッチングによる厚さ管理より高い精度で厚さ管理ができる膜形成(成膜)により、スペ
ーサ9となる膜をあらかじめ電極基板2上に所望の厚さで形成し、その層の一部をエッチ
ングにより除去して凹部9Aを形成することで、電極基板をエッチングして凹部を形成す
るよりも、所望の厚さで、スペーサ9(凹部9A)を形成するようにする。一方、振動板
4が形成されたキャビティ基板1の電極基板2と対向する面には、振動板4の安定駆動を
はかるための絶縁層14を形成する。面は平坦なので所望の厚さの層を高精度に形成する
ことができる。その後、キャビティ基板1と電極基板2とを陽極接合することにより、ス
ペーサ9の厚さによる所定の距離のギャップを得ることができる。
【0031】
図3は電極基板2の処理工程を表す図である。なお、図3では、ある液滴吐出ヘッドの
一部だけが表されているが、実際にはシリコンウェハ単位で作製されるので複数個分の液
滴吐出ヘッドの部材を一体形成することとなる。まず、電極基板2の作製について説明す
る。まず、電極基板2となるガラス基板の表面にスペーサ9となる多結晶シリコン膜42
を成膜する(図3(a))。成膜方法としては、例えば、LP−CVD(Low Pressure-C
hemical Vapor Deposition:減圧化学気相堆積法)又はスパッタ法を用いる。LP−CV
Dは、例えば基板温度550〜650℃、圧力が20〜200Paにおいて、シラン(S
iH4 )をガスとして用いて成膜する。一方、スパッタ法の場合は、例えば基板温度40
0〜500℃、圧力が0.1Paのアルゴンガス雰囲気中において成膜する。
【0032】
そして、成膜した多結晶シリコン膜に対してスペーサ9(凹部9A)を形成する。あら
かじめスペーサ9(凹部9A)に合わせたパターンのレジストをフォトリソグラフィ法に
より多結晶シリコン膜上に作成しておき、例えばRIE(Reactive Ion Etching:反応性
イオンエッチング)でCF4 SF6等のガスを用いてエッチングを行い、レジストで覆わ
れていない部分(凹部9Aとなる部分)を除去するドライエッチング法により形成する。
その後、レジストを除去するとスペーサ9が完成する(図3(b))。そして、例えばス
パッタ法によるスパッタリングを行って、凹部9A上にITOを成膜し、電極に合わせた
パターンのレジストをフォトリソグラフィ方によりITO膜上に作成し、レジストで覆わ
れていない部分(電極8以外の部分)を除去するウェットエッチング方により電極8を形
成し、電極基板2を作製する((図3(c)))。
【0033】
図4はキャビティ基板1となるシリコン基板41の処理工程を表す図である。まず、キ
ャビティ基板1となるシリコン基板41(この時点では、通常ウェハ状となっている)に
洗浄等の処理を施す(図4(a))。そして、シリコン基板41の一方の面をB2 3
主成分とする固体の拡散源に対向させ、石英ボードにセットし、さらに拡散炉にその石英
ボートをセットする。炉内を窒素雰囲気にして温度を約1100℃に上昇させて保持した
状態で、ボロン(ホウ素)をシリコン基板41中に拡散させ、ボロン拡散(ボロンドーブ
)層42(ボロンの濃度は、約1.0×1020atoms・cm-3とする。)を形成する
(図4(b))。ボロン拡散層42のシリコン基板41表面にはボロン化合物が生成され
る。これを酸素及び水蒸気雰囲気中、例えば摂氏600度の条件で1時間30分酸化させ
、B23+SiO2 に化学変化させ、B23+SiO2 をフッ酸水溶液でエッチングして
除去する。
【0034】
次に絶縁層14となる酸化シリコン(SiO2 )膜の層をボロン拡散層42表面に形成
する(図4(c))。成膜方法としては、例えば、プラズマ−CVD又はLP−CVDを
用いる。プラズマ−CVDは、例えば基板温度350〜450℃、圧力が30〜700P
aにおいて、TEOS(テトラエトキシシラン:Si(OC254 )をガスとして用い
、成膜する。または、温度250〜400℃、圧力が30〜500Paにおいて、シラン
(SiH4 )と二酸化窒素(NO2 )の混合ガスを用いて成膜する。また、LP−CVD
は、例えば基板温度650〜750℃、圧力が20〜200PaにおいてTEOSをガス
として用いて成膜する。ここではTEOSを用いた絶縁層14形成を行うものとする。こ
こで、絶縁層14を成膜する前にO2 プラズマ処理を行ってボロン拡散層42の表面をク
リーニングし、成膜した絶縁層14の絶縁耐圧の均一性を向上させるようにしてもよい。
また、場合によっては、絶縁層14上にアニール処理を施し、膜の緻密性を向上させて絶
縁耐圧を向上させるようにしてもよい。
【0035】
図5は接合及び液滴吐出ヘッド作製の最終工程を表す図である。図5(a)に示すよう
に、シリコン基板41と電極基板2との陽極接合を行う。陽極接合とは、キャビティ基板
1となるシリコン基板41と電極基板2とを、例えば360℃に加熱した後、電極基板2
を負極側、シリコン基板41を正極側と接続して、例えば800Vの電圧を印加すること
で行う表面活性化接合である。陽極接合によって、電極基板2(スペーサ9)とシリコン
基板41(絶縁層14)とは原子レベルで接合するため、例えば接合部分から凹部9Aに
水分が侵入するのを防ぐことができる。ここでは陽極接合により接合しているが、他の表
面活性化接合、接着剤による接合等を行ってもよい。
【0036】
陽極接合後、図5(b)に示すように、例えば、38重量パーセントの濃度の水酸化カ
リウム(KOH)水溶液に接合した基板を浸し、さらに32重量パーセントの濃度の水酸
化カリウム水溶液に浸してシリコン基板41を所望の厚さ(吐出室5等の高さ)になるま
でエッチングする。濃度の高いKOHに浸すことで、ある程度の厚さまでエッチング速度
を優先し、その後、濃度の低いKOHに浸し、シリコン基板の表面荒れを抑え、かつ、エ
ッチング面上にできる極小突起の発生率も抑えるように仕上げる。他にシリコン基板の全
面エッチングを行う方法としてはグラインドする方法がある。例えば所望の厚さよりも約
10μm多い厚さまでグラインドした後、グラインドにより生じた表面の加工変質層をフ
ッ酸・硝酸混合液を用いて取り除く方法も有効である。
【0037】
次にプラズマ−CVDにより、例えば、成膜時の処理温度が360℃、高周波出力が7
00W、圧力が約33Pa、TEOSガス流量100cm3 /min、酸素ガス流量10
00cm3 /minの条件でエッチングを施した面に対して酸化シリコン膜を例えば1.
5μm成膜する。そして、パターニングを酸化シリコン膜に施し、フッ酸水溶液でエッチ
ングして、吐出室5、リザーバ9等、キャビティ基板1の部材を形成するためのエッチン
グマスク(レジスト)を酸化シリコンによりパターニングする。
【0038】
パターニング形成後、基板全体を35重量パーセントの濃度の水酸化カリウム(KOH
)水溶液に浸し、パターニングしていない部分のシリコン基板41の厚さが約10μmに
なるまでウェットエッチングを行う。その後、さらにシリコン基板41を3重量パーセン
トの濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、前述したエッチングストップとみなすことがで
きるまでウェットエッチングを行う。これにより、ボロン拡散層42が振動板4となり、
またリザーバ9の底壁面となる。ウェットエッチングが終了すると、フッ酸水溶液で酸化
シリコン膜のエッチングマスクを除く。
【0039】
ノズルプレート3については、ノズルプレート3となる200μmのシリコン基板にノ
ズル孔16を開ける。また、ウェットエッチング等を用いて細溝8を形成する。さらに電
極取り出し口25に合わせた貫通穴(図示せず)を形成する。そして、例えばエポキシ樹
脂等の接着剤を用いてキャビティプレート1上に接着する(図5(c))。最後に、ダイ
シングを行ってウェハに一体形成されている複数の液滴吐出ヘッドを個々に切り離し、図
2に示すような液滴吐出ヘッドが完成する。
【0040】
以上のように実施の形態1によれば、膜厚を高精度に管理できる成膜により、多結晶シ
リコン膜を電極基板2に形成し、振動板4の位置に合わせて層の一部をエッチングにより
除去し、スペーサ9(凹部9A)を形成するようにしたので、電極8と振動板4(絶縁層
14)との間のギャップGを所望の距離に制御した液滴吐出ヘッドを製造することができ
る。その際、犠牲層を構築するために基板を平坦化するというような複雑な工程を経なく
てもよい。また、スペーサ9を多結晶シリコンとしたので、ガラスの電極基板2をエッチ
ングさせてしまうことなく、スペーサ9(凹部9A)を形成することができる。また、電
極基板2をガラスにすることで、コスト低減を図ることができる。さらに、ウェットエッ
チング法によりスペーサ9を形成するようにしたので、複数の基板を同時に加工処理する
こともでき、効率よく、時間的、経済的にコストを低減することができ、設備投資も小さ
くてすむ。
【0041】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2に係るキャビティ基板1となるシリコン基板41の処理工
程を表す図である。実施の形態1ではスペーサ9を電極基板2に形成してシリコン基板4
1(キャビティ基板1)と接合したが、本実施の形態は、スペーサ9をシリコン基板41
側に形成し、電極基板2と接合するものである。
【0042】
ここで、スペーサ9形成のためにエッチングを行うが、その際、絶縁層14に影響を及
ぼさないように、絶縁層14とスペーサ9とはエッチャントが異なる材料で構成する。本
実施の形態では、例えば、絶縁層14を窒化シリコン、スペーサ9を酸化シリコンを材料
として形成する。ここで、絶縁層14を酸化シリコン、スペーサ9を窒化シリコンとして
もよいし、第1の実施の形態と同様にスペーサ9に多結晶シリコンを材料としても用いて
もよい。なお、本実施の形態におけるスペーサ及び絶縁層については、第1の実施の形態
と材料が異なるが、機能的、構成的に同じ役割を果たすので、スペーサ9、絶縁層14と
同じ符号を付して説明する。
【0043】
図6(a)に示すように、実施の形態1と同様に、キャビティ基板1となるシリコン基
板41に洗浄等の処理を施す。さらに、ボロン(ホウ素)をシリコン基板41中に拡散さ
せ、ボロン拡散層42を形成する(図6(b))。
【0044】
次に絶縁層14となる窒化シリコン(Si34)膜の層をボロン拡散層42表面に形成
する(図6(c))。成膜方法としては、酸化シリコンと同様に例えば、プラズマ−CV
D、LP−CVD、常圧CVD等の方法を用いる。プラズマ−CVDは、例えば基板温度
250〜400℃、圧力が30〜500Paにおいて、シラン(SiH4 )とアンモニア
(NH3 )の混合ガスを用いて成膜する。また、LP−CVDは、例えば基板温度650
〜800℃、圧力が20〜200Paにおいてジクロールシラン(SiH2Cl2)とアン
モニア(NH3 )の混合ガスを用いて成膜する。また、他にPVD(Physical Vapor Dep
osition )であるスパッタ法を用いてもよい。スパッタ法については、例えば、常温、圧
力が0.1Paの下で、ターゲットをシリコンとし、窒素(N2 )ガス雰囲気中で行う。
【0045】
絶縁層14を形成すると、その層上に、スペーサ9となる酸化シリコン膜61をさらに
形成する。酸化シリコンの成膜方法については、実施の形態1で行った説明と同様の方法
で行う。そして、成膜した酸化シリコン膜61に対してスペーサ9(凹部9A)を形成す
る。あらかじめスペーサ9(凹部9A)に合わせてレジストを酸化シリコン膜上にパター
ニングしておき、例えば常温のフッ酸水溶液(HF)又はバッファードフッ酸水溶液(B
HF)に浸漬して、レジストで覆われていない部分を除去する。その後、レジストを除去
するとスペーサ9が完成する(図6(d))。例えば、ここで、スペーサ9を窒化シリコ
ンで形成する場合は、150〜180℃の熱リン酸水溶液(H3PO4)に浸漬する。
【0046】
一方、本実施の形態では、電極基板2上にスペーサ9を形成する必要がないので、実施
の形態1で説明した図3(b)のスペーサ9形成工程を省略して、電極部となるITOを
成膜し、電極基板2を作製する。
【0047】
そして、実施の形態1と同様に作製したキャビティ基板1となるシリコン基板41と電
極基板2とを接合して液滴吐出ヘッドを作製するが、これらの工程は実施の形態1におい
て図5を用いて説明したことと同様の工程で行われるので説明を省略する。
【0048】
以上のように実施の形態2によれば、膜厚を高精度に管理できる成膜により、酸化シリ
コン膜を絶縁層14(窒化シリコン膜の層)上に形成し、振動板4の位置に合わせて膜の
一部をエッチングにより除去し、スペーサ9(凹部9A)を形成するようにしたので、電
極8と振動板4(絶縁層14)との間のギャップGを所望の距離に制御した液滴吐出ヘッ
ドを製造することができる。絶縁層14を窒化シリコン、スペーサ9を酸化シリコンとし
、エッチャントが異なる材料とするので、スペーサ9の形成の際、絶縁層14までエッチ
ングしてしまうことを防止し、スペーサ9の厚みだけでギャップGの距離を制御すること
ができる。これは絶縁層14を酸化シリコン、スペーサ9を窒化シリコンとしても同じで
ある。そして、窒化シリコン膜をCVDで形成することにより、緻密で均一性が良好な膜
を得ることができる。特にスペーサ9となる窒化シリコン膜をCVDにより形成する際に
は、各ノズルに設けられた電極と振動板との間のギャップGのばらつきを低減し、ギャッ
プ部の形状を精度よく形成することができ、吐出特性のばらつきを抑えることができる。
【0049】
実施の形態3.
上述の第1の実施の形態では、電極基板2にガラス基板を用いたが、本発明はこれに限
定されるものではなく、ガラス基板の代わりに例えばシリコン基板を用いるようにしても
よい。ここで、シリコン基板はp型のシリコン基板を用いるものとする。例えばp型のシ
リコン基板を熱酸化法により表面に酸化シリコン膜を形成し、フォトリソグラフィ法を用
いて、電極部となる部分の形状が露出するようにパターニングを行う。そして、電極部と
なる部分にリン(P)を拡散させてn型の領域(チャネル)を形成する。したがって、n
型の領域をp型の領域で囲むことになるため、電極基板2に電極部を個別に一体形成する
ことができる。これにより、直接的に電極基板に電極部を作り込め、高密度化を図ること
ができる。ここで、実施の形態1の方法の場合、スペーサ9となる膜はシリコンとエッチ
ャントが異なる酸化シリコン又は窒化シリコンを材料として構成する。
【0050】
実施の形態4.
上述の実施の形態では、絶縁層14として、酸化シリコン、窒化シリコンを説明したが
、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、酸窒化シリコン(SiON)、酸化
アルミナ(Al23)、酸化ハフニウム(HfO2 )、窒化ハフニウムシリケート(酸窒
化ハフニウムシリケート:HfSiON)等、酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料で
絶縁層14を構成し、スペーサ9を酸化シリコン、窒化シリコンで構成するようにしても
よい。酸化アルミナの成膜方法としては、例えばスパッタ又はCVDを用いる。CVDは
、例えば基板温度800〜1000℃、圧力が約100Paにおいて、塩化アルミニウム
(AlCl3 )、二酸化炭素(CO2 )、水素(H2 )の混合ガスを用いて成膜する。ま
た、スパッタの場合は、常温、圧力が0.1Paの下で、ターゲットをアルミニウム、酸
素(O2 )ガス雰囲気中で成膜する。酸化シリコンよりも比誘電率が高い材料を絶縁層1
4とすることにより、酸化シリコンで成膜した場合に比べ、同じ条件下でも静電引力を大
きくすることができ、エネルギー効率を向上させることができる。
【0051】
実施の形態5.
上述の実施の形態では、酸化シリコンまたは窒化シリコンでスペーサ9を形成する際、
スペーサ9が形成される膜にウェットエッチング法を行う方法について説明した。本発明
はこれに限定されるものではない。ドライエッチング法によりエッチングを行うことがで
きる。例えば、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)により、酸化
シリコン、窒化シリコン等をエッチングする場合には、常温下でCF4 、CHF3 、C2
6等の塩素系ガスを用いてエッチングを行う。ドライエッチングを用いれば、スペーサ
9を厚さ方向により垂直に形成することができるので、電極8間の間隔を狭めることが可
能であり、高密度化を図ることができる。
【0052】
実施の形態6.
図7は上述の実施の形態で製造した液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置の主要な構成
手段を表す図である。図7の液滴吐出装置は液滴吐出方式(インクジェット方式)による
印刷を目的とする。また、いわゆるシリアル型の装置である。図7において、被印刷物で
あるプリント紙110が支持されるドラム111と、プリント紙110にインクを吐出し
、記録を行う液滴吐出ヘッド112とで主に構成される。また、図示していないが、液滴
吐出ヘッド112にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は
、ドラム111の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ113により、ドラム111に
圧着して保持される。そして、送りネジ114がドラム111の軸方向に平行に設けられ
、液滴吐出ヘッド112が保持されている。送りネジ114が回転することによってに液
滴吐出ヘッド112がドラム111の軸方向に移動するようになっている。
【0053】
一方、ドラム111は、ベルト115等を介してモータ116により回転駆動される。
また、プリント制御手段117は、印画データ及び制御信号に基づいて送りネジ114、
モータ116を駆動させ、また、ここでは図示していないが、液滴吐出ヘッド112にあ
る発振駆動回路を駆動させて振動板4を振動させ、制御をしながら印刷を行わせる。
【0054】
ここでは液体をインクとしてプリント紙110に吐出するようにしているが、液滴吐出
ヘッドから吐出する液体はインクに限定されない。例えば、カラーフィルタとなる基板に
吐出する用途ではカラーフィルタ用の顔料を含む液体、有機化合物等の電界発光(Electr
oLuminescence )素子を用いた表示パネル(OLED等)の基板に吐出する用途では、発
光素子となる化合物を含む液体、基板上に配線する用途では例えば導電性金属を含む液体
を、それぞれの装置において設けられた液滴吐出ヘッドから吐出させるようにしてもよい
。また、液滴吐出ヘッドをディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐
出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids :デオキシリボ核酸)
、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド
核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。その他、染
料の吐出等にも利用することができる。
【0055】
実施の形態7.
図8は本発明を利用したアクチュエータの例である波長可変光フィルタを表す図である
。上述の実施の形態は、液滴吐出ヘッドを例として説明したが、本発明は液滴吐出ヘッド
だけに限定されず、静電方式であるか否かを問わず、他の微細加工のアクチュエータにも
適用することができる。例えば、図8の波長可変光フィルタは、ファブリ・ペロー干渉計
の原理を利用し、可動鏡200と固定鏡210との間隔を変化させながら選択した波長の
光を出力するものである。可動鏡200を変位させるためには、可動鏡200が設けられ
ている、シリコンを材料とする可動体201を変位させる。そのために電極230と可動
体200(可動鏡201)とを所定の間隔(ギャップ)で対向配置する必要がある。そこ
で、この間隔を所定の間隔に制御するため、上述の実施の形態で説明した方法を用いてス
ペーサ220を設ける。これにより、波長可変光フィルタの性能向上を図ることができる
。また、モータ、センサ、SAWフィルタのような振動素子(レゾネータ)、光スイッチ
等のミラーデバイス等、他の種類の微細加工のアクチュエータにも適用することができる

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図3】電極基板2の処理工程を表す図である。
【図4】キャビティ基板1となるシリコン基板41の処理工程を表す図である。
【図5】接合及び液滴吐出ヘッド作製の最終工程を表す図である。
【図6】実施の形態2に係るシリコン基板51の処理工程を表す図である。
【図7】液滴吐出記録装置の主要な構成手段を表す図である。
【図8】本発明を利用した波長可変光フィルタを表す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 キャビティ基板、2 電極基板、3 ノズル基板、4 振動板、5 吐出室、6
オリフィス、7 リザーバ、8 電極、9 スペーサ、9A 凹部、10 リード部、1
1 端子部、12 ノズル、13 液体供給口、14 絶縁層、15 発振駆動回路、1
8 ダイヤフラム、19 電極端子、41 シリコン基板、42 ボロン拡散層、110
プリント紙、111 ドラム、112 液滴吐出ヘッド、113 紙圧着ローラ、11
4 送りネジ、115 ベルト、116 モータ、117 プリント制御手段、200
可動鏡、201 可動体、210 固定鏡、220 スペーサ、230 電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部を有する基板と、
前記駆動部により力が加わると変位する被駆動部を有する基板と、
前記駆動部を有する基板と前記被駆動部を有する基板との間に、前記被駆動部を変位さ
せるための所望の厚さを有する空間を形成するためのスペーサと
を備えたことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
電極を有する基板と、
前記電極により力が加わると変位する被駆動部を有する基板と、
前記電極を有する基板と前記被駆動部を有する基板との間に、前記被駆動部を変位させ
るための所望の厚さを有する空間を形成するためのスペーサと
を備えたことを特徴とする静電アクチュエータ。
【請求項3】
被駆動部を有する基板の前記電極と対向する面に絶縁性を有する膜からなる絶縁層を有
することを特徴とする請求項1記載の静電アクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動部を有する基板と前記スペーサ、または前記絶縁層と前記スペーサとがそれぞ
れ異なる材料で構成されていることを特徴とする請求項3に記載の静電アクチュエータ。
【請求項5】
前記駆動部を有する基板がガラス、前記スペーサが多結晶シリコンまたは窒化シリコン
を材料として構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の静電アクチュエ
ータ。
【請求項6】
前記駆動部を有する基板がシリコン、前記スペーサが酸化シリコンまたは窒化シリコン
を材料として構成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の静電アクチュエ
ータ。
【請求項7】
前記絶縁層が酸化シリコン、前記スペーサが窒化シリコンを材料として構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の静電アクチュエータ。
【請求項8】
前記絶縁層が窒化シリコン、前記スペーサが酸化シリコンを材料として構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の静電アクチュエータ。
【請求項9】
絶縁層が酸化シリコンよりも比誘電率の高い材料、前記スペーサが酸化シリコンまたは
窒化シリコンを材料として構成されていることを特徴とする請求項3に記載の静電アクチ
ュエータ。
【請求項10】
請求項1〜9に記載の静電アクチュエータを有し、
液体が充填される吐出室の少なくとも一部分を前記被駆動部として、前記被駆動部の変
位により前記吐出室と連通するノズルから液滴を吐出させることを特徴とする液滴吐出ヘ
ッド。
【請求項11】
電極が設けられる基板上に、スペーサとなる膜を所望の厚さで形成する工程と、
被駆動部が設けられる部分に合わせて前記膜の一部をエッチングしてスペーサを形成す
る工程と、
スペーサ形成によってできた凹部に電極を設ける工程と、
被駆動部が設けられた基板と前記電極が設けられた基板とを接合する工程と
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項12】
被駆動部が設けられる基板に絶縁性を有する膜の層を第1の所望の厚さで形成する工程
と、
前記絶縁性を有する膜の層にさらにスペーサとなる膜を第2の所望の厚さで形成する工程
と、
被駆動部が設けられる部分に合わせて前記スペーサとなる膜の一部をエッチングしてス
ペーサを形成する工程と、
スペーサ形成によってできた凹部と電極と対向するように、前記被駆動部が設けられる
基板と前記電極が設けられた基板とを接合する工程と
を有することを特徴とする静電アクチュエータの製造方法。
【請求項13】
ウェットエッチング法で、前記膜の一部をエッチングして前記スペーサを形成すること
を特徴とする請求項11乃至12記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項14】
ドライエッチング法で、前記膜の一部をエッチングして前記スペーサを形成することを
特徴とする請求項11乃至12記載の静電アクチュエータの製造方法。
【請求項15】
前記スペーサを形成する膜又は前記絶縁層となる膜をCVDにより形成することを特徴
とする請求項11〜14に記載の静電アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−198820(P2006−198820A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11175(P2005−11175)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】