説明

アクチュエータ

【課題】開度計測レベルの自動調整を短時間でかつ正確に行う。
【解決手段】自動調整開始指令を受けた時、閉リミットスイッチLS1がオン状態であった場合、駆動軸を開方向へ動作させて閉リミットスイッチLS1をオフ状態とした後(矢印(1))、閉リミットスイッチLS1がオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ(矢印(2))、その時のポテンショメータの出力値(開度計測値)を第1の調整値として記憶する。次に、開リミットスイッチLS2がオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ(矢印(3))、その時のポテンショメータの出力値を第2の調整値として記憶する。この記憶した第1の調整値と第2の調整値に基づいてポテンショメータの出力値と弁体の実開度との関係を自動調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回転弁や直動弁など流体の流量を規制する流量規制機構を駆動するアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のアクチュエータは、流量制御用のバルブや風量制御用のダンパなどの流量規制機構に組み付けられている。このアクチュエータは、流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力するポテンショメータやエンコーダなどの開度センサを備え、この開度センサからの電気信号の値より計測される実開度を開度指令値に一致させるように、流量規制機構の開度を制御する。このアクチュエータでは、高精度で開度制御を行うために、製造工場からの出荷時や現場において、開度センサが出力する電気信号の値(開度計測値)と流量規制機構の実開度との関係を調整するようにしている。
【0003】
例えば、特許文献1では、電動バルブに付設されている自動調整スイッチをオンとすると、ポテンショメータの出力レベル(開度計測レベル)が自動調整される。この電動バルブにおけるポテンショメータの出力レベルの自動調整動作について図7を用いて説明する。この電動バルブには、そのバルブの全閉状態に相当する機械的位置に閉リミットスイッチが設けられ、全開状態に相当する機械的位置に開リミットスイッチが設けられている。バルブが全閉状態(0%位置)となると閉リミットスイッチがオンとなる(図7(a)参照)。バルブが全開(100%位置)となると開リミットスイッチがオンとなる(図7(b)参照)。この閉リミットスイッチおよび開リミットスイッチのオン/オフ信号はマイクロコンピュータに入力される。
【0004】
マイクロコンピュータは、自動調整スイッチがオンとされると(自動調整開始指令を受けると)、閉リミットスイッチがオンとなるまで、モータを回転させ、バルブを閉方向に駆動する(図7(c)に示す矢印(1))。そして、この閉リミットスイッチがオンとなったところで、モータを停止させ、その時のポテンショメータの出力値(図7(d)に示すP1)を第1の調整値として記憶する。
【0005】
次に、マイクロコンピュータは、開リミットスイッチがオンとなるまで、モータを回転させ、バルブを開方向に駆動する(図7(c)に示す矢印(2))。そして、この開リミットスイッチがオンとなったところで、モータを停止させ、その時のポテンショメータの出力値(図7(d)に示すP2)を第2の調整値として記憶する。
【0006】
マイクロコンピュータは、この記憶した第1の調整値および第2の調整値に基づいて、ポテンショメータの出力値とバルブの実開度との関係を自動調整する。特許文献1では、このポテンショメータの出力値とバルブの実開度との関係の自動調整をポテンショメータの出力レベル(開度計測レベル)の自動調整と呼んでいる。
【0007】
また、この種のアクチュエータは、モータの回転力を減速機構を介して駆動軸へ伝達することにより、トルクを増加させてバルブやダンパなどの流量規制機構の開度制御を行う。なお、アクチュエータには、駆動軸にリターンスプリングを設けたタイプ(スプリングリターン型アクチュエータ)と、リターンスプリングの無いタイプ(ノンスプリングリターン型アクチュエータ)がある。スプリングリターン型アクチュエータでは、停電などによりアクチュエータへの電源が遮断された場合、モータと減速機構との間に設けられた電磁クラッチが切れ、リターンスプリングの復帰力によって強制的に駆動軸が回転され、流量規制機構が全閉又は全開とされる。
【0008】
図8に従来のスプリングリターン型アクチュエータを備えた電動弁(スプリングリターン型電動弁)の一例を示す(例えば、特許文献2参照)。同図において、1は駆動軸、2は駆動軸1に付設されたリターンスプリング、3は減速機構、4は電磁クラッチ、5はモータ、6’は制御部、7は駆動軸1の動作位置に応じて流体の流量を規制する弁体(流量規制機構)、8は駆動軸1の動作位置を弁体7の現在の開度θpvとして検出する開度センサである。開度センサ8としてはポテンショメータやエンコーダが用いられる。
【0009】
この電動弁100において、制御部6’は電源(例えば、AC24V)の供給を受けて動作し、モータ5に正転指令や逆転指令を送る。また、電磁クラッチ4へは制御部6’への電源が分岐して常時供給され、クラッチ接となり、モータ5の出力軸を減速機構3を介して駆動軸1に常時回転結合する。
【0010】
これにより、モータ5の回転力が電磁クラッチ4および減速機構3を介して駆動軸1に伝達され、弁体7の開度制御が行われる。この場合、制御部6’は、弁体7の現在の開度θpvを指示される開度指令値(設定開度)θspに一致させるように、モータ5に正転指令や逆転指令を送る。なお、正転指令や逆転指令を受けた後、モータ5が停止すると、モータ5の保持トルクにより、駆動軸1は現在の動作位置を維持する。
【0011】
停電などにより、電動弁100への電源の供給が遮断されると、電磁クラッチ4への電源も断たれる。このため、電磁クラッチ4が断となり、モータ5のトルクが駆動軸1へ伝達されなくなり、リターンスプリング2の復帰力によって駆動軸1が閉方向あるいは開方向に動作し、弁体7が強制的に全閉(θ0 )あるいは全開(θ100 )とされる。この機能をスプリングリターン機能と呼んでいる。
【0012】
【特許文献1】特開平5−280655号公報
【特許文献1】特開2002−174269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本出願人は、図8に示した電動弁100(100A)において、スプリングリターン動作回数を正確にカウントすることを目的とし、弁体7の通常の開度制御範囲(θ0 〜θ100 )の外側にリターン動作終点位置θSRを定め、スプリングリターン機能が作動した場合、このリターン動作終点位置θSRまで駆動軸1の動作位置を戻すことを考えている。例えば、リターン動作方向を閉方向とした場合、図9に示すように、全閉位置θ0 よりも閉側にリターン動作終点位置θSRを定めることを考えている。また、このリターン動作終点位置θSRを弁体7の通常の開度制御範囲の外側に定めたスプリングリターン型電動弁100(100B)において、開度センサ8の出力値と弁体7の実開度との関係を自動調整(開度計測レベルを自動調整)することを考えている。
【0014】
この場合、先に説明した特許文献1に示されているように、弁体7の全閉状態に相当する機械的位置に閉リミットスイッチを設け、全開状態に相当する機械的位置に開リミットスイッチを設ける。すなわち、図10に示すように、閉リミットスイッチLS1と開リミットスイッチLS2を設け、弁体7が全閉位置θ0 となると閉リミットスイッチLS1がオンとなるように、弁体7が全開位置θ100 となると開リミットスイッチLS2がオンとなるようにする。また、制御部6’に対して、自動調整開始指令を与える自動調整スイッチ9を設け、スプリングリターン機能と開度計測レベルの自動調整機能を備えた電動弁100Cとする。
【0015】
しかしながら、この電動弁100Cでは、電源の投入後、駆動軸1の動作位置がリターン動作終点位置θSRにある状態で、自動調整スイッチ9がオンとされることがある。この場合、駆動軸1が全閉位置θ0 を超えて閉側に位置しており、閉リミットスイッチLS1はオン状態にある(図11(a)参照)。このような状態で、自動調整スイッチ9がオンとされると、制御部6’は閉リミットスイッチLS1のオン状態をすぐに確認(図1(c)に示す動作点(1))し、その時の開度センサ8の出力値(図11(d)に示すP1)を第1の調整値として記憶する。次に、制御部6’は、開リミットスイッチSW2がオンとなるまで、モータ5を回転させ、弁体7を開方向に駆動する(図11(c)に示す矢印(2))。そして、この開リミットスイッチLS2がオンとなったところで、モータ5を停止させ、その時の開度センサ8の出力値(図11(d)に示すP2)を第2の調整値として記憶する。この場合、第1の調整値として記憶される開度センサ8の出力値は、駆動軸1の動作位置が全閉位置θ0 にある状態の出力値ではない。このため、誤差が生じ、開度計測レベルの自動調整が不正確となる。
【0016】
これに対して、自動調整スイッチ9がオンとされた時に閉リミットスイッチLS1がオン状態であった場合、開リミットスイッチLS2がオンとなるまで開方向にモータ5を回転させ(図12(c)に示す矢印(1))、開リミットスイッチLS2がオンとなったところでモータ5を停止し、その時の開度センサ8の出力値(図12(d)に示すP2)を第2の調整値として記憶し、その後、閉リミットスイッチLS1がオンとなるまでモータ5を閉方向へ動作させ(図12(c)に示す矢印(2))、閉リミットスイッチLS1がオンとなったところでモータ5を停止し、その時の開度センサ8の出力値(図12(d)に示すP1)を第1の調整値として記憶することが考えられる。しかしながら、このような方法を採ると、全閉〜全開の2往復分の時間(移動距離)を要することになり、開度計測レベルの自動調整に時間がかかる。
【0017】
なお、上述では、スプリングリターン型の電動弁を例にとって説明したが、ノンスプリングリターン型の電動弁においても、同様の問題が生じることがある。例えば、機構的な遊びによって、弁体の全閉位置や全開位置で駆動軸が停止せず、行き過ぎてしまうことがある。このような場合、上述したスプリングリターン型の電動弁100Cにおいて、駆動軸1の動作位置がリターン動作終点位置θSRにあった時と同じような状態となり、同様の問題が生じる。また、上述したスプリングリターン型の電動弁100Cのリターン動作終点位置θSRを定めない全開位置θ100 においても、同様の問題が生じる。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、開度計測レベルの自動調整を短時間で、かつ正確に行うことができるアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的を達成するために、第1発明(請求項1に係る発明)は、駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、自動調整開始指令を受けた時に実開度計測手段が出力する電気信号の値と流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータにおいて、制御部に、自動調整開始指令を受けた時に、第1のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチを第1の状態とした後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する手段を設けたものである。
【0020】
第1発明において、制御部は、自動調整スイッチがオンとされたり、上位装置から指示されるなどして、自動調整開始指令を受けると、第1のスイッチの状態を確認する。ここで、第1および第2のスイッチの第1の状態をオフ状態、第2の状態をオン状態とすると、制御部は第1のスイッチがオン状態であるか否かを確認する。制御部は、第1のスイッチがオン状態であった場合、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチをオフ状態とした後、第1のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する。次に、制御部は、第2のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する。
【0021】
これにより、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置(例えば、0%位置)に正確に位置した時の実開度計測手段からの電気信号の値が第1の調整値として記憶され、駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置(例えば、100%位置)に正確に位置した時の実開度計測手段からの電気信号の値が第2の調整値として記憶される。この場合、駆動軸はオン状態にある第1のスイッチをオフ状態とするまで僅かに開方向に動き、オフ状態とされた第1のスイッチをオン状態とするまで僅かに閉方向に動き、その後、オフ状態にある第2のスイッチをオン状態とするまで開方向に大きく動く。これにより、閉方向の所定の動作位置と開方向の所定の動作位置との間を往復動させる方法と比べ、駆動軸の移動距離が遙かに短くなり、短時間で正確な開度計測レベルの自動調整が行われるものとなる。
【0022】
第2発明(請求項2に係る発明)は、駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、自動調整開始指令を受けた時に実開度計測手段が出力する電気信号の値と流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータにおいて、制御部に、自動調整開始指令を受けた時に、第2のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチを第1の状態とした後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、その後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する手段を設けたものである。
【0023】
第2発明において、制御部は、自動調整スイッチがオンとされたり、上位装置から指示されるなどして、自動調整開始指令を受けると、第2のスイッチの状態を確認する。ここで、第1および第2のスイッチの第1の状態をオフ状態、第2の状態をオン状態とすると、制御部は第2のスイッチがオン状態であるか否かを確認する。制御部は、第2のスイッチがオン状態であった場合、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチをオフ状態とした後、第2のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する。次に、制御部は、第1のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する。
【0024】
これにより、駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置(例えば、100%位置)に正確に位置した時の実開度計測手段からの電気信号の値が第2の調整値として記憶され、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置(例えば、0%位置)に正確に位置した時の実開度計測手段からの電気信号の値が第1の調整値として記憶される。この場合、駆動軸はオン状態にある第2のスイッチをオフ状態とするまで僅かに閉方向に動き、オフ状態とされた第2のスイッチをオン状態とするまで僅かに開方向に動き、その後、オフ状態にある第1のスイッチをオン状態とするまで閉方向に大きく動く。これにより、閉方向の所定の動作位置と開方向の所定の動作位置との間を往復動させる方法と比べ、駆動軸の移動距離が遙かに短くなり、短時間で正確な開度計測レベルの自動調整が行われるものとなる。
【0025】
第3発明(請求項3に係る発明)は、電源の供給を受けて回転するモータと、このモータの出力軸に電磁クラッチおよび減速機構を介して接続された駆動軸と、この駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、電磁クラッチが断とされた場合に駆動軸の動作位置を閉方向の所定の動作位置よりも閉側あるいは開方向の所定の動作位置よりも開側に定められる所定のリターン動作終点位置に戻すリターンスプリングと、自動調整開始指令を受けた時に実開度計測手段が出力する電気信号の値と流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータ(スプリングリターン型の電動アクチュエータ)において、制御部に、自動調整開始指令を受けた時に、第1のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチを第1の状態とした後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する手段と、自動調整開始指令を受けた時に、第2のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチを第1の状態とした後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、その後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する手段とを設けたものである。
【0026】
第3発明において、閉方向の所定の動作位置よりも閉側にリターン動作終点位置が定められているものとした場合、電磁クラッチが断とされると、その閉側のリターン動作終点位置に駆動軸が戻され、第1のスイッチが第2の状態とされる。このような状態で、自動調整スイッチがオンとされたり、上位装置から指示されるなどして、自動調整開始指令を受けると、制御部は第1のスイッチの状態および第2のスイッチの状態を確認する。なお、この場合、電源が投入された状態にあり、電磁クラッチは接とされているものとする。
ここで、第1および第2のスイッチの第1の状態をオフ状態、第2の状態をオン状態とすると、制御部は第1のスイッチがオン状態であることを確認する。制御部は、第1のスイッチがオン状態であることを確認すると、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチをオフ状態とした後、第1のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する。次に、制御部は、第2のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する。
【0027】
第3発明において、開方向の所定の動作位置よりも開側にリターン動作終点位置が定められているものとした場合、電磁クラッチが断とされると、その開側のリターン動作終点位置に駆動軸が戻され、第2のスイッチが第2の状態とされる。このような状態で、自動調整スイッチがオンとされたり、上位装置から指示されるなどして、自動調整開始指令を受けると、制御部は第1のスイッチの状態および第2のスイッチの状態を確認する。なお、この場合、電源が投入された状態にあり、電磁クラッチは接とされているものとする。
ここで、第1および第2のスイッチの第1の状態をオフ状態、第2の状態をオン状態とすると、制御部は第2のスイッチがオン状態であることを確認する。制御部は、第2のスイッチがオン状態であることを確認すると、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチをオフ状態とした後、第2のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する。次に、制御部は、第1のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する。
【0028】
第4発明(請求項4に係る発明)は、電源の供給を受けて回転するモータと、このモータの出力軸に減速機構を介して接続された駆動軸と、この駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、自動調整開始指令を受けた時に実開度計測手段が出力する電気信号の値と流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータ(ノンスプリングリターン型の電動アクチュエータ)において、制御部に、自動調整開始指令を受けた時に、第1のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチを第1の状態とした後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する手段と、自動調整開始指令を受けた時に、第2のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチを第1の状態とした後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、その後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する手段とを設けたものである。
【0029】
第4発明において、制御部は、自動調整スイッチがオンとされたり、上位装置から指示されるなどして、自動調整開始指令を受けると、第1のスイッチの状態および第2のスイッチの状態を確認する。ここで、第1および第2のスイッチの第1の状態をオフ状態、第2の状態をオン状態とすると、制御部は第1のスイッチがオン状態であるのか、第2のスイッチがオン状態であるのかを確認する。
第1のスイッチがオン状態であった場合、制御部は、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチをオフ状態とした後、第1のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、この後、第2のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する。
第2のスイッチがオン状態であった場合、制御部は、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチをオフ状態とした後、第2のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、この後、第1のスイッチがオフ状態からオン状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する。
【0030】
第5発明(請求項5に係る発明)は、第3発明のスプリングリターン型の電動アクチュエータにおいて、自動調整開始指令を受けた時に、第1のスイッチおよび第2のスイッチが何れも第2の状態でなかった場合、電磁クラッチを断とし、駆動軸の動作位置をリターン動作終点位置に戻すようにしたものである。
この発明によれば、自動調整開始指令を受けた時に、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置(例えば、0%位置)と開方向の所定の動作位置(例えば、100%位置)との間にあった場合、電磁クラッチが断とされ、リターンスプリングによって駆動軸の動作位置がリターン動作終点位置に戻される。これにより、リターン動作終点位置側のスイッチが第2の状態となり、第3発明による開度計測レベルの自動調整が行われる。
【0031】
第6発明(請求項6に係る発明)は、第4発明のノンスプリングリターン型の電動アクチュエータにおいて、自動調整開始指令を受けた時に、第1のスイッチおよび第2のスイッチが何れも第2の状態でなかった場合、実開度計測手段が出力するその時の電気信号の値に基づいて駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置および開方向の所定の動作位置の何れに近いかを判断し、近いと判断された方向の所定の動作位置へ駆動軸を回転させるようにしたものである。
この発明によれば、自動調整開始指令を受けた時に、駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置(例えば、0%位置)と開方向の所定の動作位置(例えば、100%位置)との間にあった場合、実開度計測手段が出力するその時の電気信号の値に基づいて駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置および開方向の所定の動作位置の何れに近いかが判断され、近いと判断された方向の所定の動作位置へ駆動軸が回転される。これにより、近いと判断された方向側のスイッチが第2の状態となり、第4発明による開度計測レベルの自動調整が行われる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、自動調整開始指令を受けた時に、第1のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を開方向へ動作させて第1のスイッチを第1の状態とした後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶するようにしたので、また、自動調整開始指令を受けた時に、第2のスイッチが第2の状態であった場合、駆動軸を閉方向へ動作させて第2のスイッチを第1の状態とした後、第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を開方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶するようにしたので、閉方向の所定の動作位置と開方向の所定の動作位置との間を往復動させる方法と比べ、駆動軸の移動距離が遙かに短くなり、短時間で正確な開度計測レベルの自動調整を行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1:スプリングリターン型〕
図1は本発明に係るアクチュエータの一実施の形態を含む電動弁開度計測レベル自動調整システムの概略を示す図である。同図において、図10と同一符号は図10を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示し、その説明は省略する。
【0034】
なお、図10に示した電動弁100Cと区別するために、本実施の形態における電動弁を200Aとする。この電動弁200Aの制御部6は、電動弁100Cの制御部6’とはその機能が一部異なっている。また、制御部6は、ネットワーク300を介して接続される遠隔監視装置400との通信機能を備えている。
【0035】
図2に電動弁200Aにおける制御部6のハードウェア構成の概略を示す。同図において、6−1はCPU、6−2はRAM、6−3はROM、6−4はAC/DC変換器、6−5は表示部、6−6はEEPROMなどの再書き込みが可能な不揮発性のメモリ、6−7〜6−11はインターフェイスである。AC/DC変換器6−4は、電磁クラッチ4やモータ5への電源(AC24V)を分岐入力とし、この電源を直流電圧に変換して、CPU6−1,RAM6−2,ROM6−3,表示部6−5,不揮発性のメモリ6−6,インタフェース6−7〜6−11に供給する。
【0036】
CPU6−1は、RAM6−2や不揮発性のメモリ6−6にアクセスしながら、ROM6−3に格納されたプログラムに従って動作し、モータ5へ正転指令や逆転指令を送り、電磁クラッチ4にON指令やOFF指令を送る。ROM6−3には、本実施の形態特有のプログラムとして、開度計測レベルの自動調整プログラムが格納されている。
【0037】
以下、この自動調整プログラムに従う開度計測レベルの自動調整処理動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0038】
〔閉リミットスイッチLS1がオン状態である場合〕
この自動調整処理動作に入る前の状態として、電動弁200Aのスプリングリターン機能によって、駆動軸1の動作位置が全閉位置θ0 よりも閉側に定められたリターン動作終点位置θSRに戻されているものとする。また、この後、電源が投入された状態にあり、電磁クラッチ4が接とされているものとする。
【0039】
このような状態で、自動調整スイッチ9がオンとされると、この自動調整スイッチ9からのオン信号が自動調整開始指令としてCPU6−1へ与えられる。CPU6−1は、自動調整スイッチ9からの自動調整開始指令を受けると、閉リミットスイッチLS1の状態を確認する(ステップ101)。
【0040】
この場合、駆動軸1の動作位置がリターン動作終点位置θSRに戻されており、閉リミットスイッチLS1はオン状態にある(図5(a)参照)。CPU6−1は、閉リミットスイッチLS1がオン状態であることを確認すると(ステップ101のYES)、閉リミットスイッチLS1がオフ状態となるまで(ステップ103のNO)、駆動軸1を開方向へ動作させる(ステップ102、図5(c)に示す矢印(1))。
【0041】
閉リミットスイッチLS1がオフ状態となったことを確認すると(ステップ103のNO)、CPU6−1は、閉リミットスイッチLS1がオフ状態からオン状態に変化するまで(ステップ105のNO)、駆動軸1を閉方向へ動作させる(ステップ104、図5(c)に示す矢印(2))。
【0042】
閉リミットスイッチLS1がオフ状態からオン状態に変化したことを確認すると(ステップ105のNO)、CPU6−1は、その時の開度センサ8の出力値(図5(d)に示すP1)を第1の調整値として記録する(ステップ106)。
【0043】
次に、CPU6−1は、開リミットスイッチLS2がオフ状態からオン状態に変化するまで(ステップ108のNO)、駆動軸1を開方向へ動作させる(ステップ107、図5(c)に示す矢印(3))。
【0044】
開リミットスイッチLS2がオフ状態からオン状態に変化したことを確認すると(ステップ108のNO)、その時の開度センサ8の出力値(図5(d)に示すP2)を第2の調整値として記録する(ステップ109)。
【0045】
そして、第1の調整値として記録した開度センサ8の出力値P1、第2の調整値として記録した開度センサ8の出力値P2について、その値が予め定められたそれぞれの許容範囲に入っているか否かを確認する(ステップ110)。出力値P1,P2の何れも許容範囲に入っていれば、調整値判定合格とし(ステップ110のYES)、出力値P1を第1の調整値として確定し、出力値P2を第2の調整値として確定し、不揮発性のメモリ6−6に格納する(ステップ111)。
【0046】
これにより、駆動軸1の動作位置が全閉位置θ0 に正確に位置した時の開度センサ8の出力値が第1の調整値として不揮発性のメモリ6−6に格納され、駆動軸1の動作位置が全開位置θ100 に正確に位置した時の開度センサ8の出力値が第2の調整値としてメモリ6−6に格納される。この場合、駆動軸1は、図5(c)に示す自動調整動作からも分かるように、オン状態にある閉リミットスイッチLS1をオフ状態とするまで僅かに開方向に動き、オフ状態とされた閉リミットスイッチLS1をオン状態とするまで僅かに閉方向に動き、その後、オフ状態にある開リミットスイッチLS2をオン状態とするまで開方向に大きく動く。これにより、全閉位置θ0 と全開位置θ100 との間を往復動させる図12で説明した方法と比べ、駆動軸1の移動距離が遙かに短くなり、短時間で正確な開度計測レベルの自動調整が行われるものとなる。
【0047】
〔開リミットスイッチLS2がオン状態である場合〕
上述した開度計測レベルの自動調整動作は、駆動軸1の動作位置が全閉位置θ0 よりも閉側に定められたリターン動作終点位置θSRに戻されていることを前提としたが、駆動軸1の動作位置が全開位置θ100 あるいはそれよりも開側にある場合にも同様の動作が行われる。
【0048】
例えば、全開位置θ100 をフェールセーフ位置とした場合、機構的な遊びによって、全開位置θ100 で駆動軸1が停止せず、行き過ぎてしまうことがある。このような状態で、自動調整スイッチ9をオンとすると、ステップ112で開リミットスイッチLS2のオン状態が確認され、ステップ113〜120の処理工程へ進み、開度計測レベルの自動調整が行われる。
【0049】
この場合、CPU6−1は、開リミットスイッチLS2がオン状態であることを確認すると(ステップ112のYES)、開リミットスイッチLS2がオフ状態となるまで(ステップ114のNO)、駆動軸1を閉方向へ動作させる(ステップ113)。開リミットスイッチLS2がオフ状態となったことを確認すると(ステップ114のNO)、開リミットスイッチLS2がオフ状態からオン状態に変化するまで(ステップ116のNO)、駆動軸1を開方向へ動作させる(ステップ115)。
【0050】
開リミットスイッチLS2がオフ状態からオン状態に変化したことを確認すると(ステップ116のNO)、CPU6−1は、その時の開度センサ8の出力値を第2の調整値として記録する(ステップ117)。そして、閉リミットスイッチLS1がオフ状態からオン状態に変化するまで(ステップ119のNO)、駆動軸1を閉方向へ動作させる(ステップ118)。閉リミットスイッチLS1がオフ状態からオン状態に変化したことを確認すると(ステップ119のNO)、CPU6−1は、その時の開度センサ8の出力値を第1の調整値として記録する(ステップ120)。
【0051】
〔閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れもがオン状態でなかった場合〕
CPU6−1は、自動調整開始指令を受けた時に、閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れもがオン状態でなかった場合(ステップ101のNO、ステップ112のNO)、自動調整前準備に入る(ステップ121)。
【0052】
この自動調整前準備では、図4にそのフローチャートを示すように、閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れもがオフ状態であることを確認し(ステップ201のYES)、また電動弁200がスプリングリターン型であることを確認し(ステップ202のYES)、電磁クラッチ4を断とし、駆動軸1の動作位置をリターン動作終点位置θSRに戻す(ステップ203)。そして、閉リミットスイッチLS1がオン状態となれば(ステップ201のNO)、ステップ101(図3)へ戻り、ステップ101のYESに応じて、ステップ102〜109の処理工程へ進む。
【0053】
〔実施の形態2:ノンスプリングリターン型〕
実施の形態1では、電動弁200をスプリングリターン型の電動弁200Aとしたが、図6に示すように電動弁200をノンスプリングリターン型の電動弁200Bとしてもよい。ノンスプリングリターン型の電動弁200Bには、スプリングリターン型の電動弁200Aのようなリターンスプリング2は設けられておらず、電磁クラッチ4もない。
【0054】
〔閉リミットスイッチLS1がオン状態である場合〕
このノンスプリングリターン型の電動弁200Bでは、例えば、全閉位置θ0 をフェールセーフ位置とした場合、機構的な遊びによって、全閉位置θ0 で駆動軸1が停止せず、行き過ぎてしまうことがある。このような状態で自動調整スイッチ9をオンとすると、ステップ101(図3)で閉リミットスイッチLS1のオン状態が確認され、ステップ102〜109の処理工程へ進み、実施の形態1と同様にして開度計測レベルの自動調整が行われる。
【0055】
〔開リミットスイッチLS2がオン状態である場合〕
このノンスプリングリターン型の電動弁200Bでは、例えば、全開位置θ100 をフェールセーフ位置とした場合、機構的な遊びによって、全開位置θ100 で駆動軸1が停止せず、行き過ぎてしまうことがある。このような状態で自動調整スイッチ9をオンとすると、ステップ112(図3)で開リミットスイッチLS2のオン状態が確認され、ステップ113〜120の処理工程へ進み、実施の形態1と同様にして開度計測レベルの自動調整が行われる。
【0056】
〔閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れもがオン状態でなかった場合〕
このノンスプリングリターン型の電動弁200Bにおいて、CPU6−1は、自動調整開始指令を受けた時に、閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れもがオン状態でなかった場合(ステップ101のNO、ステップ112のNO)、自動調整前準備に入る(ステップ121)。
【0057】
この自動調整前準備では、図4にそのフローチャートを示すように、閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れもがオフ状態であることを確認する(ステップ201のYES)。そして、電動弁200がスプリングリターン型でないことを確認し(ステップ202のNO)、ステップ204の処理へと進む。
【0058】
ステップ204では、例えば、開度センサ8の出力値の設計上の50%位置を設計理論基準とし、その時の開度センサ8の出力値が設計理論基準よりも小さい場合には駆動軸1の動作位置が全閉位置θ0 に近いと判断し、設計理論基準よりも大きい場合には駆動軸1の動作位置が全開位置θ100 に近いと判断し、近いと判断された方へ駆動軸1を回転させる。
【0059】
そして、閉リミットスイッチLS1および開リミットスイッチLS2の何れかがオン状態となれば(ステップ201のNO)、ステップ101(図3)へ戻る。ここで、閉リミットスイッチLS1がオン状態であった場合には、ステップ101のYESに応じて、ステップ102〜109の処理工程へ進む。開リミットスイッチLS2がオン状態であった場合には、ステップ112のYESに応じて、ステップ113〜120の処理工程へ進む。
【0060】
なお、上述した実施の形態1,2においては、自動調整スイッチ9をオンとすることによってCPU6−1へ自動調整開始指令を与えるようにしたが、遠隔監視装置400からネットワーク300を介してCPU6−1へ自動調整開始指令を与えるようにしてもよい。
【0061】
また、上述した実施の形態1,2では、自動調整結果などを表示部6−5に表示するようにするが、ネットワーク300を介して遠隔監視装置400へ送り、遠隔監視装置400のディスプレイ上に表示させるようにしてもよい。
【0062】
また、上述した実施の形態1,2では、電動弁の開度計測レベルの自動調整を行うものとして説明したが、油圧によって弁体を駆動する油圧弁、空気圧によって弁体を駆動する空気圧弁、回転弁や直動弁など、流体の流量を規制する弁体を駆動する多種多様のアクチュエータについて、同様にして開度計測レベルの自動調整を行うことが可能である。
【0063】
また、上述した実施の形態1では、電磁クラッチ4を断とし、リターンスプリング2の復帰力によって、駆動軸1をリターン動作終点位置θSRに戻すようにしたが、リターンスプリング2の復帰力ではなく、例えば油圧や空気圧などによって駆動軸1をリターン動作終点位置θSRに戻すようにしてもよい。
【0064】
また、上述した実施の形態1では、全閉位置θ0 側にリターン動作終点位置θSRを定めるようにしたが、全開位置θ100 側にリターン動作終点位置θSRを定めるようにしてもよい。また、リターン動作終点位置θSRを定めた側に駆動軸1の動作位置が位置していた場合にのみ、開度レベルの自動調整を行うようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係るアクチュエータの一実施の形態を含む電動弁開度計測レベル自動調整システムの概略を示す図である。
【図2】この電動弁開度計測レベル自動調整システムにおける電動弁の制御部のハードウェア構成の概略を示す図である。
【図3】この電動弁の制御部が実行する自動調整プログラムに従う開度計測レベルの自動調整処理動作を示すフローチャートである。
【図4】閉リミットスイッチおよび開リミットスイッチが何れもオン状態でなかった場合の自動調整前準備の処理を示すフローチャートである。
【図5】全閉位置θ0 よりも閉側に定められたリターン動作終点位置θSRに駆動軸の動作位置が位置していた場合の開度計測レベルの自動調整動作を説明する図である。
【図6】ノンスプリングリターン型の電動弁を使用した場合の電動弁開度計測レベル自動調整システムの概略を示す図である。
【図7】特許文献1に示された電動バルブの開度計測レベルの自動調整動作を説明する図である。
【図8】従来のスプリングリターン型アクチュエータを備えた電動弁の一例を示す図である。
【図9】図8に示した電動弁において全閉位置よりもθ0 よりも閉側にリターン動作終点位置θSRを定めた例を示す図である。
【図10】図9に示した電動弁において閉リミットスイッチおよび開リミットスイッチを設けて開度計測レベルの自動調整を行わせるようにした例を示す図である。
【図11】特許文献1に示された方法を適用した場合の開度計測レベルの自動調整動作を説明する図である。
【図12】特許文献1に示された方法を適用した場合の問題の解決策として考えられる開度計測レベルの自動調整動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0066】
1…駆動軸、2…リターンスプリング、3…減速機構、4…電磁クラッチ、5…モータ、6…制御部、6−1…CPU、6−2…RAM、6−3…ROM、6−4…AC/DC変換器、6−5…表示部、6−6…不揮発性のメモリ、6−7〜6−11…インターフェイス、7…弁体、8…開度センサ、9…自動調整スイッチ、200(200A、200B)…電動弁、LS1…閉リミットスイッチ、LS2…開リミットスイッチ、300…ネットワーク、400……遠隔監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、前記駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、前記駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、自動調整開始指令を受けた時に前記実開度計測手段が出力する電気信号の値と前記流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータにおいて、
前記制御部は、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第1のスイッチが第2の状態であった場合、前記駆動軸を開方向へ動作させて前記第1のスイッチを第1の状態とした後、前記第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、前記第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を開方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する手段
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、前記駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、前記駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、自動調整開始指令を受けた時に前記実開度計測手段が出力する電気信号の値と前記流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータにおいて、
前記制御部は、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第2のスイッチが第2の状態であった場合、前記駆動軸を閉方向へ動作させて前記第2のスイッチを第1の状態とした後、前記第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を開方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、その後、前記第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する手段と
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
電源の供給を受けて回転するモータと、このモータの出力軸に電磁クラッチおよび減速機構を介して接続された駆動軸と、この駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、前記駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、前記駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、前記電磁クラッチが断とされた場合に前記駆動軸の動作位置を前記閉方向の所定の動作位置よりも閉側あるいは前記開方向の所定の動作位置よりも開側に定められる所定のリターン動作終点位置に戻すリターンスプリングと、自動調整開始指令を受けた時に前記実開度計測手段が出力する電気信号の値と前記流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータにおいて、
前記制御部は、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第1のスイッチが第2の状態であった場合、前記駆動軸を開方向へ動作させて前記第1のスイッチを第1の状態とした後、前記第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、前記第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を開方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する手段と、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第2のスイッチが第2の状態であった場合、前記駆動軸を閉方向へ動作させて前記第2のスイッチを第1の状態とした後、前記第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を開方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、その後、前記第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する手段と
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
電源の供給を受けて回転するモータと、このモータの出力軸に減速機構を介して接続された駆動軸と、この駆動軸の動作位置に応じて流体の流量を規制する流量規制機構と、この流量規制機構の実開度に応じた値の電気信号を出力する実開度計測手段と、前記駆動軸の動作位置が閉方向の所定の動作位置を超えて閉側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第1のスイッチと、前記駆動軸の動作位置が開方向の所定の動作位置を超えて開側に位置する場合に第1の状態から第2の状態となる第2のスイッチと、自動調整開始指令を受けた時に前記実開度計測手段が出力する電気信号の値と前記流量規制機構の実開度との関係を自動調整する制御部とを備えたアクチュエータにおいて、
前記制御部は、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第1のスイッチが第2の状態であった場合、前記駆動軸を開方向へ動作させて前記第1のスイッチを第1の状態とした後、前記第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶し、その後、前記第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を開方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶する手段と、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第2のスイッチが第2の状態であった場合、前記駆動軸を閉方向へ動作させて前記第2のスイッチを第1の状態とした後、前記第2のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を開方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第2の調整値として記憶し、その後、前記第1のスイッチが第1の状態から第2の状態に変化するまで前記駆動軸を閉方向へ動作させ、その時の前記実開度計測手段が出力する電気信号の値を第1の調整値として記憶する手段と
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項3に記載されたアクチュエータにおいて、
前記制御部は、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第1のスイッチおよび第2のスイッチが何れも第2の状態でなかった場合、前記電磁クラッチを断とし、前記駆動軸の動作位置を前記リターン動作終点位置に戻す手段
を備えることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項6】
請求項4に記載されたアクチュエータにおいて、
前記制御部は、
前記自動調整開始指令を受けた時に、前記第1のスイッチおよび第2のスイッチが何れも第2の状態でなかった場合、前記実開度計測手段が出力するその時の電気信号の値に基づいて前記駆動軸の動作位置が前記閉方向の所定の動作位置および前記開方向の所定の動作位置の何れに近いかを判断し、近いと判断された方向の所定の動作位置へ前記駆動軸を回転させる手段
を備えることを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−169988(P2008−169988A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6389(P2007−6389)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】