説明

アクチュエータ

【課題】アクチュエータの幅方向寸法を抑えたコンパクトな外形形状にでき、部品点数を削減することが可能なアクチュエータを提供する。
【解決手段】長手方向に延びる第1の転動体転走溝を有する軌道部材と、前記軌道部材の長手方向と平行に設けられるとともに外周に第2の転動体転走溝を有するねじ軸と、転動体を介して前記軌道部材及び前記ねじ軸に沿って軸方向に移動可能に組み付けられた移動部材と、前記軌道部材の端部に取り付けられる取付部と前記ねじ軸の端部が回転自在に保持される回転保持部を有するハウジングを備えるアクチュエータであって、前記ハウジングには、前記移動部材の位置を検出する位置検出手段を取り付ける取付手段が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールねじ装置と運動案内装置とを有するアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、長手方向に延びる軌道部材と、この軌道部材に沿って移動可能に組み付けられた移動部材と、この移動部材に螺合すると共に、軌道部材から立設するハウジングに回転自在に組み付けられたねじ軸を備えるアクチュエータが知られている。
【0003】
このようなアクチュエータは、ねじ軸の一端に取り付けられた駆動手段によってねじ軸を回転駆動させることにより、ねじ軸に螺合した移動部材を軸方向に移動させることができる。移動部材の位置を検出するために、軌道部材の長手方向と平行にセンサレールを取り付け、該センサレールにセンサを固定して移動部材の位置を検出している。
【0004】
このような構成によると、センサレールに固定されたセンサによって移動部材の位置を検出することができるので、位置制御を容易に行うことができると共に、移動部材が軸方向端部に至った際に、ハウジングとの接触を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−120670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のセンサの取付方法によると、アクチュエータのサイドカバーやアクチュエータ内部にセンサレールを掛け渡す必要があるので、アクチュエータの幅方向の寸法が増大してしまい、コンパクトな外形形状に設計することができないといった問題があった。また、センサレールを必要とするため、部品点数の削減を図ることができず、コスト抑制が難しいといった問題もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであって、アクチュエータの幅方向寸法を抑えたコンパクトな外形形状にでき、部品点数を削減することが可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
長手方向に延びる第1の転動体転走溝を有する軌道部材と、前記軌道部材の長手方向と平行に設けられると共に外周に第2の転動体転走溝を有するねじ軸と、転動体を介して前記軌道部材及び前記ねじ軸に沿って移動可能に組み付けられた移動部材と、前記移動部材の位置を検出する検出体と発振部とを有する位置検出手段と、前記軌道部材の端部に取り付けられる取付部と前記ねじ軸の端部が回転自在に保持される回転保持部を有するハウジングを備えるアクチュエータであって、前記移動部材には、前記検出体が取り付けられる一方前記ハウジングには、前記発振部を取り付ける取付手段が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動部材の位置を検出する位置検出手段がハウジングに形成された取付手段に取り付けられているので、アクチュエータの幅方向寸法を抑えたコンパクトな外形形状にでき、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るアクチュエータを示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るアクチュエータの構造を説明するための分解図。
【図3】移動部材の構造を説明するための斜視図。
【図4】運動案内装置の構造を説明するための一部断面図。
【図5】ボールねじ装置の構造を説明するための一部断面図。
【図6】ねじ軸の取付状態を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るアクチュエータの実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るアクチュエータを示す斜視図であり、図2は、本発明の実施形態に係るアクチュエータの構造を説明するための分解図であり、図3は、移動部材の構造を説明するための斜視図であり、図4は、運動案内装置の構造を説明するための一部断面図であり、図5は、ボールねじ装置の構造を説明するための一部断面図であり、図6は、ねじ軸の取付状態を説明するための図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係るアクチュエータは、長手方向に沿って延びる長尺な矩形状をしており、そのアクチュエータの取付面である底面と対向する上面に上面カバー50が両側に側面カバー51,51が取り付けられている。上面カバー50及び側面カバー51,51は連結されておらず、移動部材20が移動することができるように、長手方向に空間22cが形成されている。該空間22cには後述する移動部材20の取着部22bが突出している。さらに、アクチュエータ1の長手方向の両端部には、上面カバー50と両側の側面カバー51,51と連結される樹脂製のエンドキャップ70が取り付けられている。
【0014】
次に、図2を参照して本実施形態に係るアクチュエータ1の構造について説明を行う。図2に示すように、本実施形態に係るアクチュエータ1は、長手方向に延びる軌道部材10と、該軌道部材10に沿って移動可能に組み付けられた移動部材20と、該移動部材20に螺合すると共に、軌道部材10から立設するハウジング40に回転自在に組み付けられたねじ軸30とを備えている。
【0015】
なお、ねじ軸30の一方の軸端には、駆動手段としてモータ60が取り付けられており、モータ60に外部から給電された電流を流すことで、モータ60の回転軸が回転し、カップリング61を介してモータと接続されたねじ軸30もこの回転に同期して回転自在に組み付けられている。なお、ねじ軸30の両端部はアンギュラベアリング44を介してハウジング40で保持されている。
【0016】
図3に示すように、移動部材20は、軌道部材10と組み合わされて運動案内装置を構成する第1の移動部材としてのキャリッジ21と、複数のねじ用転動体を介してねじ軸30と組み合わされてボールねじ装置を構成する第2の移動部材としてのナット23とを備えており、キャリッジ21とナット23とは、接続部材としてのブラケット22を介して互いに接続されている。
【0017】
ブラケット22は、キャリッジ21の上にボルト締めして取り付けられると共に、ねじ軸30が挿通される挿通溝22aが形成されており、該挿通溝22aの一端部にナット23が取り付けられている。また、ブラケット22の両側面には、上方に延びる取着部22bが形成されており、該取着部22bは、移動対象物と連結されることで移動対象物を案内することができるように構成されている。
【0018】
次に、図4を参照して運動案内装置の構成について説明を行う。軌道部材10は、断面矩形状に形成された部材であり、左右側面には、長手方向に沿って第1の転動体転走溝11が形成されている。
【0019】
キャリッジ21は、軌道部材10に組み付けられるように、断面コ字状に形成されており、その長手方向の両端部にエンドプレート26a,26bを備えている。また、キャリッジ21には、軌道部材10に形成された第1の転動体転走溝11と対向するように、長手方向に沿って第1の負荷転動体転走溝28が形成されている。
【0020】
また、キャリッジ21には、第1の負荷転動体転走溝28と第1の転動体転走溝11からなる負荷転動体転走路と平行に形成された戻し通路29が穿孔されている。さらに、エンドプレート26a,26bのキャリッジ21と対向する端面には、負荷転動体転走路と戻し通路29とを繋ぐ図示しない方向転換路が形成されている。転動体であるボール27は、負荷転動体転走路,戻し通路29及び一対の方向転換路からなる無限循環路を転走する。
【0021】
転動体27は、球状のボールを複数配列して構成されており、複数の転動体27は、転動体連結帯27aによって一連に連結配列されている。なお、転動体連結帯27aは、隣接する転動体27の間に介在される間座部と、間座部同士を連結する一対の連結部とから形成されている。さらに、転動体連結帯27aは例えば合成樹脂によって形成されており、無限循環路内で適宜屈曲可能なように可撓性を有している。
【0022】
なお、図3に示すようにキャリッジ21は、長手方向に沿って複数設けられて互いに連結されており、本実施形態においては、2つのキャリッジ21を用いて構成している。それぞれのキャリッジ21は、長手方向の両端にエンドプレート26a,26bが取り付けられている。このように2つのキャリッジ21,21を用いた場合、長手方向の両端部に位置するエンドプレート26aにはシール部材24が取り付けられており、軌道部材10と移動部材20との間に塵埃等の異物が混入することを防止している。
【0023】
一方、キャリッジ21,21同士の対向側に位置するエンドプレート26bには該シール部材24は取り付けられていない。
【0024】
このような構成によれば、反モータ側のキャリッジ端面のエンドプレート26aに設けた潤滑剤供給手段25から潤滑剤を供給した場合、隣接するキャリッジ21,21同士の間にシール部材24が取り付けられていないので、モータ側のキャリッジ21にも転動体転走溝を転走する転動体27を介して潤滑剤を供給することが可能となる。これによって、反モータ側のキャリッジ21のみに潤滑剤供給手段25を形成すれば、潤滑剤を供給し難いモータ側のキャリッジ21にも潤滑剤を供給することができるため、長期に渡って安定に転走させることが可能となる。
【0025】
次に、図5を参照して例えばエンドキャップ方式であるボールねじ装置の構造について説明を行う。図5に示すように、ボールねじ装置は、外周面に所定のリードを有する螺旋状の第2の転動体転走溝33が形成されたねじ軸30と、複数のねじ用転動体35を介してねじ軸30に螺合すると共に、ねじ用転動体35の無限循環路を備えたナット23とから構成されている。これらねじ軸30とナット23の相対的な回転によりナット23がねじ軸30の軸方向へ往復運動可能に構成されている。
【0026】
ナット23は、ねじ軸30が貫通する貫通穴34を有する略円筒状に形成されている。該貫通穴34の内周面には、ねじ軸30に形成された螺旋状の第2の転動体転走溝33と対向する螺旋状の第2の負荷転動体転走溝36が形成される。なお、第2の転動体転走溝33と第2の負荷転動体転走溝36とによって第2の負荷転動体転走路を構成している。また、ナット23には、貫通穴34と平行して延びる、転動体戻し路が形成されている。
【0027】
また、ナット30の両端部には、そのナット30の端面と対向する面に第2の負荷転動体転走路と転動体戻し路とをつなぐ一対の方向転換路が形成されたエンドキャップ32が組み付けられている。これによって、第2の負荷転動体転走路と転動体戻し路と一対の方向転換路がつながることにより、複数のねじ用転動体35の無限循環路を形成している。また、方向転換路の一部として、第2の負荷転動体転走路を転走するねじ用転動体35を掬うための掬い部が形成されている。
【0028】
また、ナット23の一端には、フランジ31が形成されており、該フランジ31をブラケット22に締結固定することができるようになっている。
【0029】
図6に示すように、軌道部材10とねじ軸30とは、ハウジング40を介して一体に組み付けられている。ハウジング40は、軌道部材10とボルト締めで固定されており、軌道部材10の長手方向の端部に取り付けるように、軌道部材10の幅方向に延設する取付部41と、ねじ軸30の端部が回転自在に保持される回転保持部42とを備えている。なお、図6に示すように、取付部41の幅方向の寸法は、回転保持部42よりも大きく形成されており、長手方向からの投影形状が概略凸状に形成されている。
【0030】
なお、回転保持部42には、ねじ軸30を円滑に回転支持することができるように、取付孔45が穿孔されており、該取付孔45にアンギュラベアリング44を介してねじ軸が30が組み付けられている。
【0031】
さらに、ハウジング40の外周には、長手方向に沿って取付手段としての溝43が形成されている。例えば、溝43は、取付部41の上面に形成されており、該溝43には位置検出手段としてのセンサ46が取り付けられている。センサ46は、ボルト47によって溝43に締結されており、該ボルト47を緩めることで、長手方向の取付位置を適宜調整することができるようになっている。
【0032】
センサ46は、例えば近接センサを用いることができる。本実施形態に係るアクチュエータ1においては、移動部材20がねじ軸30に沿って移動する際、移動部材20に取り付けられた検出体22dがハウジング40に取り付けられたセンサ46の発振部46aの上を通過することで、検出体22dの位置を検知している。これは、高周波を発振する発振部46a上を検出体22dが通過することで、センサ46に流れる電流の変化を検知して移動部材20の位置がハウジング40に近接していることを取得することができる。なお、近接センサは、検出対象である移動部材20の移動情報や存在情報を電気的信号に置き換えることで位置の検出を行えればあらゆる種類の近接センサを用いることができ、例えば、電気的信号に置き換えるための検出方式には、電磁誘導により検出対象となる金属体に発生する渦電流を利用する方式、検出体の接近による電気的な容量の変化を捉える方式、磁石やリードスイッチを利用する方式が採用することができる。また、センサ46は、フォトセンサなど既存のセンサを使用することができ、検出対象である移動部材20の位置情報や存在情報が検出することができれば、種々のセンサを適用することができる。
【0033】
また、ハウジング40の取付部41の両側面や回転保持部42の上面には、上述した上面カバー50や側面カバー51を取り付けるためのカバー取付孔48及び側面カバー取付孔49が形成されており、該カバー取付孔48及び側面カバー取付孔49に上面カバー50や側面カバー51を締結固定することができるようになっている。
【0034】
このように、本実施形態に係るアクチュエータ1は、軌道部材10の端部に取り付けられたハウジング40に位置検出手段46を取り付けることができるので、アクチュエータの幅方向寸法を抑えたコンパクトな外形形状にでき、部品点数を削減することができる。
【0035】
また、本実施形態に係るアクチュエータ1は、ハウジング40の外周に長手方向に沿って形成された溝43として取付手段を一体に形成しているので、容易に取付手段を加工することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るアクチュエータ1は、ハウジング40の取付部41の幅方向の長さは、回転保持部42よりも大きく形成しているので、ハウジング40の外周から大きく突出することなく位置検出手段を取り付けることができるので、アクチュエータの幅寸法を抑えたコンパクトな外形形状にできる。
【0037】
また、本実施形態に係るアクチュエータ1は、キャリッジ21とナット23とが互いに接続されているので、ボールねじ装置と運動案内装置とを一体化してなるアクチュエータを容易に得ることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るアクチュエータ1は、複数のキャリッジ21を備えると共に、シール部材24が移動部材20の長手方向の両端のエンドプレート26aにのみ取り付けられているので、一方のキャリッジ21のみに潤滑剤供給手段25を形成すれば、他方のキャリッジ21にも潤滑剤を供給することができるため、長期に渡って安定して転走をさせることができる。
【0039】
また、本実施形態に係る溝43は、取付部41の上面に形成した場合について説明したが、溝43は、ハウジング40の外周に形成されていればよく、例えば回転保持部42の側面に形成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 アクチュエータ, 10 軌道部材, 11 第1の転動体転走溝, 20 移動部材, 21 キャリッジ, 22d 検出体, 23 ナット, 24 シール部材, 27 転動体, 30 ねじ軸, 34 貫通穴, 35 ねじ用転動体, 40 ハウジング, 41 取付部, 42 回転保持部, 43 溝(取付手段), 46 センサ, 46a 発振部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延びる第1の転動体転走溝を有する軌道部材と、
前記軌道部材の長手方向と平行に設けられると共に外周に第2の転動体転走溝を有するねじ軸と、
転動体を介して前記軌道部材及び前記ねじ軸に沿って移動可能に組み付けられた移動部材と、
前記移動部材の位置を検出する検出体と発振部とを有する位置検出手段と、
前記軌道部材の端部に取り付けられる取付部と前記ねじ軸の端部が回転自在に保持される回転保持部を有するハウジングを備えるアクチュエータであって、
前記移動部材には、前記検出体が取り付けられる一方前記ハウジングには、前記発振部を取り付ける取付手段が設けられることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクチュエータにおいて、
前記取付手段は、前記ハウジングの外周に前記長手方向に沿って形成された溝であることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアクチュエータにおいて、
前記ハウジングの前記取付部の幅方向の長さは、前記回転保持部よりも大きいことを特徴とするアクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のアクチュエータにおいて、
前記移動部材は、前記転動体を介して前記軌道部材に組み付けられる第1の移動部材と、前記転動体を介して前記ねじ軸に取り付けられる貫通穴が形成される第2の移動部材を備え、前記第1の移動部材と前記第2の移動部材とは互いに接続部材を介して接続されることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載のアクチュエータにおいて、
前記キャリッジは、前記長手方向に沿って複数設けられると共に、前記キャリッジと前記軌道部材との間に異物が混入することを防止するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記キャリッジの移動方向の両端に取り付けられる一方、前記キャリッジ同士の対向側にシール部材を設けないことを特徴とするアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100865(P2013−100865A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244870(P2011−244870)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】