説明

アクリルアミド系共重合体を含む皮膜形成用の外用組成物

【課題】均一な皮膜を形成するのに有用な液状の外用組成物を提供する。
【解決手段】(i)アミド基の窒素原子上にアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリルアミド系モノマーと、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、及び(ii)炭素数1〜3の脂肪族アルコール(直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルカノールなど)とで液状の非ヒドロゲル外用組成物(溶液状組成物など)を構成する。外用組成物全体に対する水の含有量は25重量%以下である。アルコール(ii)の割合は、共重合体(i)1重量部に対して、1〜100重量部程度である。このような組成物は、液体絆創膏、液体手袋、パック、マニキュア、マスカラ、又はアイライナーなどとして有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリルアミド系共重合体及び脂肪族アルコールを含有し、外皮などに適用して、皮膜を形成するのに有用な液状の皮膜形成用の外用組成物(特に外皮の保護材や化粧品用途において有用な皮膜形成用の外用組成物)を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(p−NIPAAM)は、下限溶解臨界温度(LCST)が32℃であり、低温の水中で水和し溶解するが、32℃付近で急激な脱水和を起こし、32℃以上では水に不溶性となる。すなわち、温度に応答して、水和/脱水和を変化させる温度応答性のインテリジェント機能を有する高分子化合物であることが知られている。最近では、この機能を利用して、細胞培養(非特許文献1)、ドラッグデリバリーシステム(非特許文献2)、カラム担体(非特許文献3)などに使用されている。
【0003】
また、特開平5−84290号公報(特許文献1)には、温度感応性を有するN−イソプロピルアクリルアミドの単独又は共重合体、もしくはジエチルアクリルアミドの単独又は共重合体からなる創傷被覆用ヒドロゲルが記載されている。特許文献1の実施例では、N−イソプロピルアクリルアミド16gとエチルアクリレート4gとの重合により得られた共重合体の5%ヒドロゲルに、ウロガストロン又はスルファジアジン銀を添加し、得られたヒドロゲル組成物をラット皮膚の欠損創部位に塗布して、伸縮性絆創膏で圧迫固定している。このようなヒドロゲルは、不透明で、不均一であり、皮膚に塗布しても、のびが悪く、塗りにくい。また、塗膜は、不透明で不均一であり、外観の性状に優れない上、ゲル状でベタつきがあり、皮膜形成できないので、布製の保護材などでさらに圧迫固定する必要がある。
【0004】
一方、前述のヒドロゲルとは異なり、皮膚上に透明で均一な皮膜を形成可能な保護材が知られている。このような保護材は、皮膚又は創傷部などを水や汚れなどから保護したり、有効成分を含有させた絆創膏などとして用いられている。このような保護材の代表的なものには、液体絆創膏や液体手袋などがある。
【0005】
市販の液体絆創膏では、水などにより剥離されるのを防いで、皮膚や創傷部などを有効に保護するため、ピロキシリン(セルロース硝酸エステル)を酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解させている。そのため、有機溶媒の揮発に伴って、強い有機溶媒臭が生じる上、刺激性も高い。さらに、形成された皮膜は水に対して耐性を有しており、皮膚を有効に保護できる反面、創傷が完治した後に、皮膜を除去しようと物理的に引き剥がすと、場合によっては、皮膜の除去に伴って、創傷部分に新たに形成された皮膚等が剥離する虞もある。そこで、例えば、マニキュアの除去に有機溶媒(アセトンなど)で構成されたリムーバーを用いるように、皮膚等の剥離を防ぐため、有機溶媒などを除去剤として用いて、皮膜を除去することも可能であるが、有機溶媒の揮発により健康が害される虞がある。
【特許文献1】特開平5−84290号公報(請求項1、実施例)
【非特許文献1】Okano T.ら、J. Biomed. Res., 27, 1243(1993)
【非特許文献2】Kono K.ら、Biochimica et Biophysica Acta 1416, 239 (1999)
【非特許文献3】Kanazawa H.ら、Anal. Chem. 68, 100 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、塗布性に優れるとともに、均一かつ透明な液状の外用組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、均一かつ透明であり、外観の性状に優れた皮膜を形成することができる液状の外用組成物を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、皮膚、毛髪又は爪などに適用しても、外皮を引き剥がしたり、毛髪を損傷することなく、水洗により容易に除去可能な皮膜を形成可能な皮膜形成用組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、有効成分を含む組成物においては、有効成分の放出性に優れ、ドラッグデリバリーシステム(DDS)製剤としての有用性が高い液体絆創膏又はパックなどの外用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、特定のアクリルアミド系共重合体と特定の脂肪族アルコールとを含む組成物を用いると、透明で均一な溶液を形成でき、かつ外用に供して塗布すると均一で透明な皮膜を形成できること、このような皮膜が、髪、爪又は皮膚を有効に保護したり、また、髪、爪、又は皮膚に各種有効成分を効率よく送達できること、外界と遮断できること、さらに、皮膜が不要となれば、水洗により容易に除去できるため安全性が高いことを見いだし、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明の皮膜形成のための外用組成物は、(i)アミド基の窒素原子上にアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリルアミド系モノマーと、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(ii)炭素数1〜3の脂肪族アルコール、及び(iii)組成物全体に対して25重量%以下の割合の水を含有する液状の非ヒドロゲル組成物(又は非ヒドロゾル組成物)である。また、本発明の外用組成物は、(i)アミド基の窒素原子上にアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリルアミド系モノマーと、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(ii)炭素数1〜3の脂肪族アルコール、及び(iii)組成物全体に対して25重量%以下の割合の水を含有する溶液状組成物である。
【0012】
前記外用組成物において、水の含有量は、脂肪族アルコール(ii)100重量部に対して、30重量部以下であってもよい。前記共重合体(i)は、N−イソプロピルアクリルアミドとC1-4アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体であってもよい。前記共重合体(i)の下限臨界溶解温度LCSTは、15〜35℃程度であってもよい。前記脂肪族アルコール(ii)の割合は、共重合体(i)1重量部に対して、1〜100重量部程度であってもよい。前記脂肪族アルコール(ii)は、直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルカノールであってもよい。前記脂肪族アルコール(ii)の割合は、組成物全体に対して60〜99重量%程度であってもよい。前記外用組成物は、液体絆創膏、液体手袋、パック、マニキュア、マスカラ、又はアイライナーなどであってもよい。前記外用組成物は、さらに局所麻酔成分、鎮痛成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分、局所刺激成分、鎮痒成分、防腐又は殺菌成分、抗真菌成分、組織修復成分、収斂成分、角質柔軟化成分、保湿成分、エモリエント成分、美白成分、及び紫外線防御成分から選択された少なくとも一種の有効成分を含有してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、特定のアクリルアミド系モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体と、特定の脂肪族アルコールと、組成物全体に対して25重量%以下の水とで外用組成物を構成するので、塗布性に優れるとともに、均一かつ透明な液状の皮膜形成に適した液状の組成物を提供できる。また、このような外用組成物を用いて皮膜を形成すると、均一かつ透明であり、外観の性状に優れる皮膜を得ることができる。また、上記外用組成物を用いると、皮膚、毛髪又は爪などに適用しても、外皮を引き剥がしたり、毛髪を損傷することなく、形成された皮膜を水洗により容易に除去することができる。さらに、有効成分を含む組成物においては、有効成分の放出性に優れ、ドラッグデリバリーシステム(DDS)製剤としての有用性が高い液体絆創膏、液体手袋、パック、マニキュア、マスカラ、又はアイライナーなどの外用組成物を提供できる。そのため、このような外用組成物では、皮膜中の有効成分(皮膚、毛髪、爪などに対して有益な作用をもたらす成分など)を効率よく放出し、ターゲットとする部位に送達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の外用組成物は、(i)アミド基の窒素原子上にアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリルアミド系モノマー(a1)と、アルキル(メタ)アクリレート(a2)との共重合体、及び(ii)炭素数1〜3程度の脂肪族アルコールを含有し、液状の非ヒドロゲル(又は非ヒドロゾル)組成物である。そして、本発明の液状(非ヒドロゲル又は非ヒドロゾル)外用組成物は、皮膜を形成するために使用される。
【0015】
前記共重合体は、少なくとも上記アクリルアミド系モノマー(a1)に対応するユニットと、前記アルキル(メタ)アクリレート(a2)に対応するユニットとを有していればよく、さらに他のコモノマーユニットを有していてもよい。
【0016】
前記アクリルアミド系モノマー(a1)としては、例えば、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどのN−直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル−アクリルアミド(好ましくは、N−C2-4アルキル−アクリルアミド);N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロブチルアクリルアミドなどのN−C3-6シクロアルキル−アクリルアミド(好ましくはC3-4シクロアルキル−アクリルアミド);N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどのN,N−ジC1-4アルキル−アクリルアミド(好ましくはN,N−ジC1-2アルキル−アクリルアミド)などが挙げられる。これらのアクリルアミド系モノマーは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。上記アクリルアミド系モノマー(a1)のうち、少なくともホモポリマーが、LCSTを有し、LCST以下の温度では水溶性を示すようなモノマーが好ましい。好ましいアクリルアミド系モノマー(a1)としては、例えば、N−プロピルアクリルアミド(N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド)、N−シクロプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミドなどが挙げられ、これらのモノマーのうち、特にN−イソプロピルアクリルアミドを用いる場合が多い。
【0017】
前記アルキル(メタ)アクリレート(a2)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどのC1-6アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレート(a2)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。上記アルキル(メタ)アクリレート(a2)のうち、C1-4アルキル(メタ)アクリレート、特にブチル(メタ)アクリレート及び/又はメチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
前記他のコモノマーユニットに対応するコモノマー(共重合性単量体:コモノマー(b))としては、アクリル系単量体[例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1-6アルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリルなど]、重合性不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸など]、ビニル系単量体(スチレンなどの芳香族ビニル系単量体;酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステルなど)などが挙げられる。これらの他のコモノマー(b)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0019】
好ましい共重合体(i)としては、N−イソプロピルアクリルアミドとC1-4アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。
【0020】
共重合体(i)において、アクリルアミド系モノマー(a1)とアルキル(メタ)アクリレート(a2)との割合(モル比)は、例えば、(a1)/(a2)=5/1〜100/1、好ましくは5/1〜60/1、さらに好ましくは7/1〜35/1、特に10/1〜25/1程度である。また、他のコモノマー(b)の割合は、アクリルアミド系モノマー(a1)及びアルキル(メタ)アクリレート(a2)の総量100重量部に対して、例えば、0〜30重量部、好ましくは0.01〜20重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、1〜5重量部)程度であってもよい。
【0021】
共重合体(i)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、40℃以上(例えば、45〜200℃程度)、好ましくは50℃以上(例えば、50〜180℃程度)、さらに好ましくは70〜150℃程度であってもよい。
【0022】
共重合体(i)のLCSTは、本発明の外用組成物の用途(又は使用目的)、用途に応じた水の使用(例えば、日常生活における水の使用)状況(例えば、水の温度、水との接触の頻度など)に応じて、例えば、15〜35℃程度の範囲から適宜設定することができる。例えば、液体絆創膏又はマニキュアなどの用途では、家事の水仕事又は入浴で接触する水温では耐水性で、冷水では容易に洗い流すことができるように、共重合体のLCSTは15〜35℃の範囲に設定するのが好ましくい。また、入浴又は風呂掃除などで用いる保護材又は液体絆創膏などの用途では、温水に対して耐水性であり、水道水で容易に洗い流すことができるように、LCSTは、25〜35℃程度の範囲に設定するのが好ましい。マスカラ、アイライナーなどの水との接触が少ない用途では、水道水で容易に洗い流せるようにLCSTは20〜35℃程度の範囲に設定するのが好ましい。
【0023】
共重合体(i)は、例えば、ラジカル開始剤の存在下、前記アクリルアミド系モノマー(a1)と、アルキル(メタ)アクリレート(a2)と、必要によりコモノマー(b)とを重合させることにより製造できる。モノマー(a1)及び(a2)(必要により(b))の重合方法は特に制限されず、例えば、モノマー類を予め混合し、ラジカル開始剤を徐々に添加して重合させてもよく、いずれかのモノマーをラジカル開始剤の存在下、重合させつつ、他のモノマーを添加して、さらに重合を行ってもよい。
【0024】
共重合体(i)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。また、共重合体(i)には、必要により、多官能ビニル化合物などをモノマー成分として併用して、グラフト鎖を導入してもよい。
【0025】
前記炭素数1〜3程度の脂肪族アルコール(ii)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(例えば、1−プロパノール、イソプロパノール)などの脂肪族一価アルコール(直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルカノール);エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール(直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルカンポリオール)などが挙げられる。これらのアルコールは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアルコールのうち、揮発性の高い脂肪族一価アルコールは、効率よく皮膜を形成できる点で好ましく、特に、エタノール、イソプロパノールが好ましい。
【0026】
本発明の組成物において、脂肪族アルコール(ii)の割合は、共重合体(i)1重量部に対して、例えば、0.1〜80重量部、好ましくは0.1〜50重量部、さらに好ましくは1〜25重量部(例えば、1〜10重量部)、特に2〜8重量部程度である。また、脂肪族アルコール(ii)の割合は、外用組成物全体に対して、例えば、60〜99重量%、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは70〜95重量%、さらに好ましくは75〜95重量%、特に好ましくは80〜95重量%、より特に好ましくは85〜95重量%程度である。
【0027】
なお、本発明の外用組成物は、水を含有してもよいが、その含有量は組成物全体に対して25重量%以下である。水の含有量が多過ぎると、皮膜を形成しづらく、凝集又はゲル化が生じ、均一な液状組成物を得るのが困難になる場合がある。水の含有量は、使用するアルコールの種類、アルキル(メタ)アクリレートなどのコモノマーの種類及び割合などにもよるが、外用組成物全体に対して、25重量%以下(すなわち、0〜25重量%)、好ましくは20重量%以下(すなわち、0〜20重量%)、さらに好ましくは15重量%以下(すなわち、0〜15重量%)、特に好ましくは10重量%以下、より特に好ましくは5重量%以下である。また、水を実質的に含有しない組成物も好ましい。なお、水を含有する場合には、水の割合は、例えば、0.1〜25重量%、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%程度の範囲から選択してもよい。
【0028】
また、水の含有量は、前記脂肪族アルコール(ii)100重量部に対して、例えば、30重量部以下(すなわち、0〜30重量部)、好ましくは20重量部以下(すなわち、0〜20重量部)、さらに好ましくは15重量部以下(すなわち、0〜15重量部)、特に好ましくは10重量%以下、より特に好ましくは5重量%以下であってもよい。
【0029】
本発明の外用組成物は、上記脂肪族アルコールを含有し、水の含有量が25重量%以下であるため、ゲル化又は凝集が抑制されており、均一で透明な液状である。このような組成物は、取り扱い性が高く、基材(例えば、外皮、頭髪、睫毛、爪など)に容易に塗布することができ、均一かつ透明な皮膜を形成可能である。なお、一部(化粧品など)の用途では、他の成分(有効成分、添加剤、基剤など)を添加することにより、この他の成分が分散したスラリーを形成する場合もあるが、このようなスラリーも本発明の外用組成物に包含される。
【0030】
本発明の外用組成物は、用途に応じて、さらに、有効成分(薬効成分、生理活性成分、薬理活性成分などを含む)を含有してもよい。このような有効成分としては、例えば、局所麻酔成分(リドカイン、塩酸ジブカイン、ジブカイン、アミノ安息香酸エチルなど)、鎮痛成分(サリチル酸メチルなどのサリチル酸誘導体、インドメタシン、ピロキシカム、ケトプロフェン、フェルビナクなど)、抗炎症成分(グルチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウムなどのグリチルリチン酸塩類、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、ブフェキサマク、ニコチン酸ベンジル、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、吉草酸酢酸プレドニゾン、酢酸プレゾニゾン、プレゾニゾン、デキサメサゾン、酢酸デキサメサゾン、ジメチルイソプロピルアズレン、イブプロフェンピコノール、アルニカエキス、オウゴンエキス、ガマ穂エキス、カミツレエキス、カラミン、甘草エキス、グアイアズレン、クチナシエキス、ゲンチアナエキス、紅茶エキス、トコフェロール、酢酸トコフェロール、シコンエキス、シソエキス、シャクヤクエキス、セージエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、塩酸ピリドキシン、モモ葉エキス、ヤグルマギクエキス、ユキノシタエキス、ヨモギエキス、ローマカミツレエキスなど)、抗ヒスタミン成分(マレイン酸クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、塩酸イソペンジルなど)、局所刺激成分(アンモニア、l−メントール、dl−カンフル、ハッカ油、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワニリルアミドなど)、鎮痒成分(クロタミトンなど)、防腐又は殺菌成分(アクリノール、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンセトニウム、ポビドンヨード、ヨードホルム、ヨウ素、ヨウ化カリウム、マーキュロクロム、オキシドール、クレゾール、トリクロサン、フェノール、イソプロピルメチルフェノール、チモール、サリチル酸ナトリウム、ウンデシレン酸、感光素、ヒノキチオール、フェノキシエタノール、クロロブタノール、クアタニウムー73、ジンクピリチオン、パラオキシ安息香酸エステル類、ユーカリエキス、レゾルシン、ローズマリーエキスなど)、抗真菌成分(クロトリマゾール、硝酸クロトリマゾール、硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール、ビフォナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、塩酸ネチコナゾール、ビフォナゾールおよびチオコナゾール、硝酸オモコナゾールなどのイミダゾール系抗真菌剤類、テルビナフィン、塩酸テルビナフィンおよびナフチフィンなどのアリルアミン系抗真菌剤類、ブテナフィンなどのベンジルアミン系抗真菌剤類、塩酸アモルフィンなどのアリルアミン系抗真菌剤類、トルナフテート、トルシクラートなどチオカルバミン酸系抗真菌剤類、ピロールニトリン、エキサルミド、シクロピロクスオラミンなど)、組織修復成分(アラントイン、ヘパリン類似物質、ビタミンAパルミテート、ビタミンD2、酢酸レチノール、レチノール、ビタミンA油、パンテノールなど)、収斂成分(酸化亜鉛、エゾウコギエキス、塩化アルミニウム、オウバクエキス、海塩、クエン酸、シラカバエキス、チャエキス、ホップエキス、マロニエエキスなど)、角質柔軟化成分(尿素、グリセリン、濃グリセリン、水酸化カリウム、サリチル酸、イオウ、コロイドイオウ、レゾルシン、グルコール酸、乳酸、硫酸ナトリウムなど)、保湿成分(ブチレングリコール、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、プロピレングリコール、リボ核酸ナトリウム、アシタバエキス、アスラギン酸、アラニン、アルギニン、アルギン酸ナトリウム、アルテアエキス、アロエベラエキス、オイスターエキス、加水分解ケラチン、加水分解コラーゲン、加水分解コンキリオン、加水分解卵殻膜、加水分解卵白、加水分解シルク、褐藻エキス、カリンエキス、キイチゴエキス、キシリトール、キトサン、キュウリエキス、クインスシードエキス、グリシン、グリセリン、グルコース、ケープアロエエキス、シスチン、システイン、ゼニアオイエキス、セリン、ソルビトール、トレハロース、乳酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、プラセンタエキス、ヘチマエキス、マルチトール、マンニトール、ユリエキス、ラクトフェリン、リシン、リンゴエキス、ローヤルゼリーエキスなど)、エモリエント成分(アーモンド油、アボガド油、オリーブ油、オレイン酸、オレンジラフィー油、カカオ脂、カロットアキス、スクワラン、セラミド、月見草油、ブドウ種子油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミネラルオイル、ミンク油、ユーカリ油、ラノリン、リノール酸、ローズヒップ油、ワレリンなど) 、美白成分(アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アルブチン、レシノール、エラグ酸、グルタチオン、コウジ酸、エイジツエキス、キウイエキス など)、紫外線防御成分(パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸のエチルエステル、パラアミノ安息香酸のグリセリンエステル、パラジメチルアミノ安息香酸のアミルアルコールエステル、パラジメチルアミノ安息香酸の2−エチルヘキシルアルコールエステル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン類、オクチルトリアゾン、サリチル酸オクチル、ジイソプロピルケイヒ酸エチル、ジイソプロピルケイヒ酸メチル、シノキサート、ジメトキシケイヒ酸オクタン酸グリセリル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、チャ葉エキス、ドロメトリゾール、パラメトキシケイヒ酸イソプロピル、ホモサレート、メトキシケイヒ酸オクチルなど)、生薬エキス成分、ビタミン類、アミノ酸類、ミネラル類などが例示でする。有効成分は単独で又は二種類以上組み合わせて使用できる。
【0031】
有効成分の割合は、組成物の用途などに応じて、組成物全体に対して、例えば、0.0001〜30重量%、好ましくは0.0005〜20重量%、さらに好ましくは0.001〜10重量%程度であってもよい。
【0032】
本発明の外用組成物は、用途に応じて、他の溶媒又は溶剤成分、添加剤などを含有してもよい。
【0033】
前記溶媒又は溶剤成分としては、組成物の用途、使用形態などに応じて、例えば、炭素数4以上の一価又は多価アルコール(例えば、ポリエチレングリコールなど)、エーテル類[ジエチルエーテルなどの他、グリコールエーテル類(メチルセロソルブなどのセロソルブ類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのジアルキレングリコールアルキルエーテル類など)など]、ニトリル類(アセトニトリルなど)、ケトン類(アセトン、など)、エステル類(酢酸エチルなどのカルボン酸アルキルエステルなど)などが挙げられる。これらの溶媒成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。溶媒成分を含有する場合、溶媒成分の割合は、組成物の用途、使用形態などに応じて、適宜選択できる。
【0034】
前記添加剤としては、医薬部外品、医薬品、雑品、化粧品等に使用される慣用の成分、例えば、粉末状基剤又は担体(結合剤、崩壊剤、賦形剤、滑沢剤など)、油性基剤又は担体(動植物油、ロウ、ワックス、ワセリン、パラフィンオイル、シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸など)、水性基剤又は担体(キサンタンガムなどのゲル基剤など)、防腐剤、キレート剤、抗酸化剤、清涼化剤、安定化剤、流動化剤、乳化剤、粘稠化剤、増粘剤、緩衝剤、香料、着色剤(染顔料など)、分散剤、吸着剤、保湿剤、湿潤剤、防湿剤、帯電防止剤、樹脂(ポリアミド系樹脂、水添ポリブテンなどのオレフィン系樹脂など)粒子などが挙げられる。添加剤も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
本発明の外用組成物は、前記共重合体(i)と、アルコール(ii)と、水を含有する場合には水(iii)と、さらに必要により他の成分(有効成分、溶媒成分、添加剤など)とを慣用の方法により混合することにより製造できる。各成分の混合順序は、特に制限されず、全ての成分を一度に混合してもよく、一部の成分を混合し、残りの成分を添加してさらに混合を行ってもよい。前記混合の温度は、特に制限されず、例えば、0〜40℃、好ましくは5〜30℃程度、さらに好ましくは室温(15〜25℃程度)であってもよい。
【0036】
なお、混合は、慣用の混合方法、例えば、機械的撹拌手段、超音波、振動などを利用することにより行うことができる。混合雰囲気は、特に制限されず、空気中、不活性ガス(窒素ガスなど)雰囲気中などであってもよい。
【0037】
このような組成物は、被着体として、皮膚、爪、睫毛、頭髪、毛髪などに適用することにより皮膜を形成する外用組成物として有用である。なお、前記組成物を被着体に適用すると、被着体上に皮膜が形成される。前記組成物は、均一で透明な外観の性状に優れる皮膜を形成することができる。また、皮膜形成性に優れるため、皮膚、爪、毛髪等、適用面の形状が複雑、不定形で、適用後に形状が変化するような基材に対しても有効に皮膜を形成できる。さらに、液状(好ましくは、溶液状)の組成物は、延びがよく、塗りやすいので、薄い皮膜を形成することもできる。
【0038】
一旦形成された皮膜は、被着体から剥離することがなく、被着体を保護できるとともに、水により容易に除去できるので、被着部に、炎症、創傷、熱傷等があっても、引き剥がされる虞もなく、安全である。なお、適用対象となる被着体は、人体に限らず、非ヒト動物(例えば、イヌ、ネコなどの哺乳動物など)などであってもよい。
【0039】
また、形成された皮膜は、アクリルアミド系共重合体(i)の少なくとも下限臨界溶解温度以下の温度の水で洗浄することにより除去することができる。なお、水による洗浄は、例えば、皮膜を水に接触させることにより行うことができ、通常、貯水への浸漬、流水との接触、流水による洗浄などにより行う場合が多い。また、上記水での洗浄に伴って、指などで皮膜を軽く擦ったり、水洗に代えて、皮膜を氷などで軽く擦ることによっても、皮膜を容易に除去することができる。また、水による除去は被着部位への負担が最小限に抑えられ、安全性が高い。
【0040】
なお、本発明では、形成された皮膜を水により除去できる水温は、組成物に含有される共重合体(i)のLCSTよりも低い温度になる傾向がある。また、皮膜が、水洗により除去可能となる温度は、共重合体の構成モノマーの種類及び共重合性モノマーの割合などに依存して変化する。
【0041】
組成物を外皮に適用する用途としては、例えば、液体絆創膏、パック、マニキュア、マスカラ、アイライナー、又は液体手袋(又はローション手袋)(液体手袋用の液状組成物をエアゾール剤として用いたエアゾール手袋なども含む)などが挙げられる。
【0042】
また、本発明の組成物の上記のような特性を利用して、医薬品、化粧品(美容パック、口元、目元などの部分メーク用途の他、爪、睫毛、毛髪などへのメーク用途など)においても、前記組成物を有効利用できる。前記化粧品としては、具体的に、パック、口紅(液状口紅の他、リップグロス、リップトリートメントなども含む)、マスカラ、アイシャドー、アイライナー、マニキュア(爪用マニキュア(トップコート、ベースコートなども含む)の他、毛髪用マニキュアなど)、ヘアカラー、毛髪用スタイリング剤などが挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の皮膜形成用組成物は、創傷被覆材やDDS製剤などの医薬品又は液体絆創膏などの医薬部外品の他、液体手袋などの雑品といった外用組成物などとして有用である。また、前記組成物は、口紅、マスカラ、アイシャドー、アイライナー、マニキュア、ヘアカラーなどの化粧品用の外用組成物としても有用である。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0045】
(共重合体の調製)
(1)共重合体の合成
N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAM)(2.49g、22.0mmol)、表1に示す共重合性モノマー(ブチルメタクリレート(BMA)又はメチルメタクリレート(MMA))及び2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)(9.03mg、0.055mmol)を、無水N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)10mlに溶解させて、系内の脱気及び窒素置換を3回繰り返し、最後に脱気して封管し、70℃で5時間振とうさせながら重合を行った。重合後、内容物を2〜3mlの水と共に透析チューブ(分子量2000カット)に流し込み、さらに水10〜15mlを加えて、チューブの口を糸で縛った。この重合物を充填した透析チューブを、低温室(温度4℃)にて、外液としての精製水(3l)中に投じて、マグネチックスターラーで撹拌しつつ、3日間透析を行った。なお、透析の間、外液は、毎日新鮮な精製水と交換した。透析後、透析チューブの内容液をシャーレに移し、凍結乾燥により生成物を得た。
【0046】
(2)共重合体の物性測定
上記(1)において得られた共重合体の軟化点、LCST、及びIRスペクトルを測定した。
【0047】
なお、軟化点は、融点測定器(柳本(株)製、ミクロ融点測定装置)を用いて測定した。また、LCSTは、共重合体の0.5重量%濃度水溶液を調製し、波長500nmの光線の透過度に基づいて評価した。なお、共重合体5は、0.5重量%の濃度では、沈殿を生じるため、0.3重量%濃度の水溶液を調製して評価した。さらに、IRスペクトルは、KBr法に基づいて測定した。共重合性モノマーの種類及び割合とともに、測定した物性値を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
なお、各共重合体のIRスペクトルデータは以下の通りである。
【0050】
共重合体1:3440cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1729cm-1(CO2),1653及び1540cm-1(CONH),1459cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体2:3439cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1730cm-1(CO2),1648及び1541cm-1(CONH),1459cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体3:3440cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1656及び1544cm-1(CONH),1459cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体4:3440cm-1(NH),3100−2860cm-1(−CH3,−CH2−),1653及び1540cm-1(CONH),1459cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体5:3437cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1718cm-1(CO),1653及び1541cm-1(CONH),1458cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体6:3437cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1720cm-1(CO2),1653及び1540cm-1(CONH),1458cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体7:3437cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1720cm-1(CO),1653及び1540cm-1(CONH),1459cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体8:3437cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1720cm-1(CO2),1653及び1541cm-1(CONH),1458cm-1(−CH3,−CH2−),1386及び1368cm-1(イソプロピル)
共重合体9;3437cm-1(NH),3100−2870cm-1(−CH3,−CH2−),1653及び1541cm-1(CONH),1459cm-1(−CH3,−CH2−),1387及び1368cm-1(イソプロピル)。
【0051】
(溶液状組成物の外観性状及び皮膜特性評価)
得られた共重合体1〜9を各々エタノールに溶解させ、共重合体の割合が15重量%であり、エタノールの割合が85重量%である組成物を得た(実施例1〜9)。得られた組成物(実施例1〜9)は、いずれも溶液状であり、均一で透明な組成物であった。
【0052】
得られた組成物の10μlを採取し、人工皮(出光テクノファイン(株)製,サプラーレ(品番:PBZ13001))に滴下により塗布した。いずれの溶液状組成物も、粘性は低く、速やかに広がり、延びがよく、厚みが均一で透明な塗膜を形成し、5分以内に自然乾燥により皮膜を形成した。
【0053】
形成された各皮膜について、セロハンテープを皮膜に貼りつけた後、テープを剥離させたところ、いずれの皮膜も、剥離することなく、人工皮上に残存し、テープ剥離後の皮膜表面も滑らかであった。
【0054】
次に、上記と同様に、共重合体1〜9を用いて、人口皮上に皮膜を形成し、以下に従って、皮膜の耐水性について試験した。形成された各皮膜について、42℃のお湯に、人工皮ごと皮膜を浸し、2時間放置した後、皮膜の剥離状況を目視にて評価したところ、いずれの皮膜も、剥離することなく、人工皮上に残存し、表面も滑らかであった。また、同様にして、形成された各皮膜について、25℃の濃度5重量%の食塩水(汗に相当)に人工皮ごと皮膜を浸し、2時間放置した後、皮膜の剥離状況を目視にて評価したところ、いずれの皮膜も、剥離することなく、人工皮上に残存し、表面も滑らかであった。さらに、同様にして、形成された各皮膜について、8℃の水に、人工皮ごと皮膜を浸し、2時間放置した後、皮膜の剥離状況を目視にて評価したところ、いずれの皮膜も、人工皮に残存することなく、剥離した。以上のことから、実施例の溶液状組成物では、外部からの物理的刺激に対しては有効に保護できる均一で透明な皮膜が形成できることが判る。また、形成された皮膜は、25℃又は汗といった日常生活において接しうる水に対して耐水性であり、皮膚を保護することができる。一方、皮膜を除去する場合には、冷水で容易に除去することができる。
【0055】
(溶液状組成物の外観性状及び皮膜特性評価試験)
(1)室温29℃にて、共重合体6を、エタノール、水、又はエタノールと水との混合溶媒(混合比率は表2に示す)に添加し、撹拌して、15重量%の濃度で重合体を含有する組成物を調製した(実施例10〜12及び比較例1〜3)。得られた組成物の外観性状を目視にて観察した。
【0056】
(2)上記(1)で調製した組成物について、10μlを採取し、人工皮(出光テクノファイン(株)製,サプラ−レ(品番:PBZ13001))に、滴下により塗布した。塗布から5分後、各膜について、外観性状を目視にて観察した。
【0057】
(3)上記項目(2)で人工皮上に形成した皮膜を、人工皮ごと、水(25℃)に一晩(12時間)浸し、膜の外観性状を目視で評価した。
【0058】
結果を表2に示す。
【0059】
【表2】

【0060】
表2から明らかなように、実施例では、比較例に比べて、外観性状に優れ、透明で均一な皮膜が形成できた。また、実施例では、形成された皮膜は、25℃の水に長時間浸漬しても高い透明性及び均一性を保持していた。一方、比較例では、不透明で不均一な塗膜となり、皮膜は形成されなかった。
【0061】
実施例13及び比較例4(ローション手袋)
共重合体5をエタノールに溶解し、香料(1重量%)を添加して、共重合体の割合が5重量%であり、エタノールの割合が94重量%の溶液状組成物(ローション手袋)を調製した。得られた組成物は、均一で透明であった。
【0062】
得られた溶液状組成物を人工皮(出光ファインテクノ(株)製,サプラ−レ(品番:PBZ13001))に直径約5mmの円形状に塗布し、5分間風乾して皮膜を形成した。この皮膜を、人工皮ごと20℃の水に浸漬して、2時間振とうした。その結果、2時間後も皮膜は消失することはなかった。さらにこの皮膜に氷水中に浸漬に指で軽く擦ると、皮膜は容易に除去された(実施例13)。
【0063】
一方、市販のローション手袋(リバテープ製薬(株)製,ローション手袋,タフベール(登録商標))を用いて、上記実施例13と同様に操作を行ったところ、水浸漬後も皮膜は保持され、氷水中、指で強く擦っても、皮膜は除去できなかった。
【0064】
実施例14(エアゾール手袋)
共重合体5 0.5g及びパラオキシ安息香酸エステル0.03mgをエタノール30gに溶解させて、均一で透明な溶液状組成物を調製した。この組成物を炭酸ガスとともに、エアゾール容器に充填し、エアゾール手袋を得た。このエアゾール手袋を人工皮にスプレーし、皮膜を形成した。スプレーに伴う不快な臭いもなく、皮膚への刺激もなかった。
【0065】
実施例15(入浴用の創傷保護材)
共重合体9をエタノールに溶解し、香料1重量%を添加して、共重合体の割合が15重量%であり、エタノールの割合が84重量%である均一で透明な溶液状組成物を調製した。この溶液を被験者の傷口に塗布して、5分間自然乾燥することにより皮膜を形成した後、被験者を入浴させた。入浴中も、傷口への水の浸透はなく、傷口を有効に保護することができた。皮膜使用後、水で洗浄することにより皮膜は容易に除去され、被着部である傷口及びその周辺の皮膚に損傷はなかった。なお、前記洗浄において、皮膜は18℃及び8℃の水のいずれを用いても容易に除去された。
【0066】
実施例16(液体絆創膏)
共重合体6 15g、トリクロロカルバニリド100mgをイソプロパノール100mlに溶解して均一で透明な溶液状組成物(液体絆創膏)を調製した。被験者の傷口に塗布し、5分間風乾したところ、不快な臭いもなく、皮膜が形成し、傷口を保護することができた。使用後は、水で洗浄することにより皮膜は容易に除去され、被着部である傷口及びその周辺の皮膚に損傷はなかった。なお、前記洗浄において、皮膜は18℃及び8℃の水のいずれを用いても容易に除去された。
【0067】
実施例17(マニキュア)
共重合体5 20g、ショ糖エステル樹脂8g、O−アセチルクエン酸トリブチル8g、エチレングリコールジエチルエーテル8g、2−ブタノン35g、メチルセロソルブ12g、イソプロパノール5g、及び着色剤4gを混合し、均一で透明なマニキュア用組成物を調製した。得られた組成物を被験者の爪に塗布したところ、5分以内で乾燥し、均一な皮膜が形成された。皮膜を形成した爪を20℃の水に浸漬させたが、皮膜は剥離することはなく、皮膜を氷水に浸漬して指で擦ったところ容易に除去できた。
【0068】
実施例18(マスカラ)
共重合体6 5.5g、トリメチルシロキシケイ酸23.0g、水添ポリブテン16.0g、エタノール18.0g、ジメシコン5.0g、クオタニウム−18ヘクトライト4.0g、ブチレングリコール8.0g、ジイソステアリン酸ポリグリセリル1.5g、ナイロンパウダー1.0g、デヒドロ酢酸ナトリウム0.4g、パラベン類0.3g、酸化鉄5.5g、マイカ4.0g、酸化チタン1.5g、及び精製水6.3gを混合し、液状(スラリー状)の組成物(マスカラ)を調製した。
【0069】
得られたマスカラを睫毛に塗布したところ、3分以内で乾燥し、睫毛表面に薄く皮膜を形成できた。なお、皮膜の形成により、睫毛のボリューム感が向上し、睫毛のカール形状を固定できた。また、皮膜は、10℃付近の冷水で睫毛を擦ることにより簡単に除去できた。
【0070】
実施例19(アイライナー)
共重合体6 15.0g、エタノール25.0g、ブチレングリコール18.0g、キサンタンガム0.5g、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)4.0g、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(21E.O.)4.0g、デヒドロ酢酸ナトリウム0.4g、パラベン類0.4g、カーボンブラック4.0g、酸化鉄1.0g、及び精製水13.7gを混合し、液状(スラリー状)の組成物(アイライナー)を調製した。
【0071】
得られたアイライナーを皮膚に塗布したところ、5分以内で乾燥し、皮膚上に、薄く均一な黒色の皮膜が形成できた。得られた皮膜は、15℃付近の冷水を用いて軽く擦り洗いすることにより、容易に除去できた。
【0072】
実施例20(リップパック)
共重合体6 1g、エタノール5.5g、精製水0.5g、デカグリセリンペンタイソステアリン酸3g、キャンデリラロウ0.5g、精製ミツロウ0.5g、オゾケライト6g、白色ワセリン25g、精製ホホバ油26g、流動パラフィン12g、及びイソノナン酸イソノニル20gを混合し、透明のリップパックを調製した。
【0073】
得られたリップパックを唇に塗布したところ、皮膜が形成できた。得られた皮膜は、15℃付近の冷水を用いて軽く擦り洗いすることにより、容易に除去できた。
【0074】
(有効成分の放出性)
日本薬局方一般試験法20.抗生物質の微生物学的力価試験法II.穿孔平板法に準じて試験を行った。ミューラーヒントン寒天培地(栄研製)約20mlを基層用カンテン培地として、直径9cmペトリ皿に入れ、カンテンが水平になるように広げて基層カンテン平板を作製した。
【0075】
一方、48〜51℃に保持した種層用カンテン培地(ミューラーヒントン寒天培地)に約106/mlになるように試験菌液(黄色ブドウ球菌:Staphylococcus aureus ATCC 6538)を加え、十分に混合し、種層カンテン培地を調製した。
【0076】
滅菌済みの穿孔カッター(TOYOBO:バイオプシ−パンチ8mm、ステンレス製)を用いて、基層カンテン平板に、ペトリ皿の底面に達する直径8.0mmの円形の孔をあけ、各孔につき0.1gの試料(種層カンテン培地)を注入した後、33℃で48時間培養し、形成された阻止円の直径を測定した。なお、阻止円の測定値は、3回測定した測定値の平均値とした(n=3)。
【0077】
なお、穿孔に注入する試料としては、以下の試料を用いた。
【0078】
(A)共重合体7 15g、トリクロロカルバニド0.1g、及びイソプロパノール100gを混合して得られた均一で透明な溶液状組成物(実施例21)。
【0079】
(B)共重合体6 15g、トリクロロカルバニド0.1g、及びイソプロパノール100gを混合して得られた均一で透明な溶液状組成物(実施例22)。
【0080】
(C)市販の液体絆創膏に準じて調製した組成物。すなわち、トリクロロカルバニリド0.1g、ピロキシリン12g、酢酸エチル55g、ジエチルエーテル5g、ミリスチン酸イソプロピル18g、及びエタノール25gを混合して得られた溶液状組成物(比較例5)。
【0081】
(D)対照:トリクロロカルバニリド0.1g及びイソプロパノール115gを含有する溶液。
【0082】
実施例21及び22の溶液状組成物は、穿孔に注入した後、孔の中で皮膜を形成した。それにも拘わらず、実施例21では、阻止円の直径は22.1mmであり、実施例22では21.9mmであり、皮膜を形成することのない対照により形成された阻止円直径22.0mmとほぼ同程度の拡がりであった。一方、比較例5の市販の液体絆創膏に類似する溶液状組成物は、穿孔に注入した後、孔の中で皮膜を形成したが、阻止円は小さく、13.5mmであった。このように、本発明の組成物においては、有効成分を含有させて外用に用いた場合、皮膜からの有効成分の放出性に優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アミド基の窒素原子上にアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリルアミド系モノマーと、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(ii)炭素数1〜3の脂肪族アルコール、及び(iii)組成物全体に対して25重量%以下の割合の水を含有する皮膜形成のための液状の非ヒドロゲル外用組成物。
【請求項2】
(i)アミド基の窒素原子上にアルキル基又はシクロアルキル基を有するアクリルアミド系モノマーと、アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体、(ii)炭素数1〜3の脂肪族アルコール、及び(iii)組成物全体に対して25重量%以下の割合の水を含有する皮膜形成のための溶液状の外用組成物。
【請求項3】
水の含有量が、脂肪族アルコール(ii)100重量部に対して、30重量部以下である請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項4】
共重合体(i)が、N−イソプロピルアクリルアミドとC1-4アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体である請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項5】
共重合体(i)の下限臨界溶解温度LCSTが、15〜35℃である請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項6】
脂肪族アルコール(ii)が、直鎖状又は分岐鎖状C1-3アルカノールである請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項7】
脂肪族アルコール(ii)の割合が、共重合体(i)1重量部に対して、1〜100重量部である請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項8】
脂肪族アルコール(ii)の割合が、組成物全体に対して60〜99重量%である請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項9】
液体絆創膏、液体手袋、パック、マニキュア、マスカラ、又はアイライナーである請求項1又は2記載の外用組成物。
【請求項10】
さらに、局所麻酔成分、鎮痛成分、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分、局所刺激成分、鎮痒成分、防腐又は殺菌成分、抗真菌成分、組織修復成分、収斂成分、角質柔軟化成分、保湿成分、エモリエント成分、美白成分、及び紫外線防御成分から選択された少なくとも一種の有効成分を含有する請求項1又は2記載の外用組成物。

【公開番号】特開2007−119428(P2007−119428A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317129(P2005−317129)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】