説明

アダプタ装置および伝送路評価システム

【課題】パッド付の伝送路の伝送特性についての評価装置による評価を可能にする、評価装置に接続されるアダプタ装置およびこれを備える伝送路評価システムを実現する。
【解決手段】アダプタ装置1は、伝送路DUTにおける入力端信号から試験信号の反射損失を抽出して拡大した拡大反射損失信号を生成する反射損失抽出手段11と、伝送路DUTにおける出力端信号から試験信号の通過損失を抽出して拡大した拡大通過損失信号を生成する通過損失抽出手段12であって、第1のしきい値より大きい信号レベルを有するかあるいは第2のしきい値より小さい信号レベルを有する拡大通過損失信号については信号レベルを圧縮して出力し、第2のしきい値より大きく第1のしきい値より小さい信号レベルを有する拡大通過損失信号はそのまま出力する通過損失抽出手段12と、試験信号から拡大反射損失信号および拡大通過損失信号を減算して評価信号を生成する評価信号生成手段13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送路を通過した評価信号を観測することで伝送路の伝送特性を評価する評価装置に接続されるアダプタ装置および伝送路評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高速シリアル伝送に用いられる伝送路の伝送品質を評価する方法がいくつか提案されている(非特許文献1)。伝送路の周波数領域における評価項目として、TDR(Time Domain Reflectometry)/TDT(Time Domain Transmission)測定器またはネットワークアナライザにより測定されるSパラメータがある。また、伝送路の時間領域における評価項目として、ステップ応答波形から求められる特性インピーダンス、擬似ランダムデータ信号を伝送路に入力したときに得られるアイダイアグラム(Eye Diagram、「アイパターン(Eye Pattern)」とも称する。)、ジッタ(Jitter)量、ビットエラーレート(Bit Error Rate:BER)がある。
【0003】
図22は、従来一般に用いられている伝送路評価システムを例示する図である。以降、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。評価対象である伝送路DUTは、同軸ケーブル102を介して、パルスパターンジェネレータ(Pulse Pattern Generator:PPG)2とオシロスコープ3−1もしくはビットエラーレートテスタ(Bit Error Rate Tester:BERT)3−2とに接続される。パルスパターンジェネレータ2が、評価信号である擬似ランダムデータ信号を伝送路DUTの一端から入力したとき、伝送路DUTの他端からは出力として、オシロスコープ3−1であるならばアイダイアグラムやジッタ量が、ビットエラーレートテスタ3−2であるならばビットエラーレートが、観測される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】高速シリアル通信におけるジッタの基礎と測定手法の概要、アジレント・テクノロジ社、〔平成22年6月25日検索〕、インターネット<http://cp.literature.agilent.com/litweb/pdf/5989-8674JAJP.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Sパラメータおよび特性インピーダンスを評価項目とする場合については、伝送路の伝送品質を管理および解析するには特に問題ないが、信号波形の変化に対する特性についてまでも把握するものではないので、実稼動時の伝送特性を把握できているとはいえない。
【0006】
一方、アイダイアグラム、ジッタ量、もしくはビットエラーレートなどを評価項目とする場合は、実際のデータ通信に用いられている信号に近い擬似ランダムデータ信号を評価信号として用いているので、得られる測定結果は、実稼動時の伝送特性に近いものといえる。伝送路の伝送損失は、反射成分による反射損失と、伝送路を通過する際に生ずる通過損失(伝送路の材質に依存する損失)とに分けられる。伝送路の配線長が短いほど、通過損失は小さくなる。評価対象である伝送路の配線長が長いことにより伝送損失が大きくなる場合、これらアイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどの各評価項目は、伝送路ごとの明確な差(バラツキ)として現れるので、伝送路ごとの伝送品質の良し悪しを判別しやすい。しかしながら、伝送路の配線長が非常に短く、誘電損失はほとんどゼロ、かつ伝送路の特性インピーダンスの偏差により生ずる反射損失が小さい場合には、これらアイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目についても伝送路固有の差(バラツキ)が現れにくい。
【0007】
特に、伝送路の一端にパッドが形成されているような伝送媒体が均一でない伝送路(以下、本明細書では「パッド付伝送路」と称する。)は、均一の伝送媒体がからなる伝送路(以下、本明細書では「均一な伝送路」と称する。)に比べて、次の理由により、アイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目についても伝送路固有の差(バラツキ)がさらに現れにくい。図23〜28は、均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図である。
【0008】
図23(a)は、特性インピーダンスが50Ωである均一な伝送路をモデル化したシミュレーション回路を示す図であり、図23(b)は、図23(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。ここで、均一な伝送路であるマイクロストリップラインの線路長を15.0mm、線路幅を50.0μmとする。また、図24(a)は、特性インピーダンスが55Ωである均一な伝送路をモデル化したシミュレーション回路を示す図であり、図24(b)は、図24(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。ここで、均一な伝送路であるマイクロストリップラインの線路長を15.0mm、線路幅を41.7μmとする。
【0009】
図25(a)は、特性インピーダンスが50Ωである図23(a)に示す均一な伝送路の一端にパッドが接続された場合をモデル化したシミュレーション回路を示す図であり、図25(b)は、図25(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。ここで、パッドの大きさを50μm×50μmとする。また、図26(a)は、特性インピーダンスが55Ωである図24(a)に示す均一な伝送路の一端にパッドが接続された場合をモデル化したシミュレーション回路を示す図であり、図26(b)は、図26(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。ここで、パッドの大きさを50μm×50μmとする。
【0010】
S11およびS22の各波形はそれぞれ反射特性を表わし、S12およびS21の各波形はそれぞれ通過特性を表す。
【0011】
図23(b)、図24(b)、図25(b)および図26(b)を比較検討すると、図25(b)および図26(b)ではパッドが接続されたことにより、特性インピーダンスが50Ωのパッド付伝送路および特性インピーダンス55Ωのパッド付伝送路の両方とも、反射特性S11 およびS22はほとんどの周波数領域において底上げされ、周波数全域にわたって悪化しており、特に周波数が高くなるほど悪化することがわかる。また、通過特性S21について見ると、特性インピーダンスが50Ωのパッド付伝送路および特性インピーダンス55Ωのパッド付伝送路の両方とも、パッドのない均一な伝送路と比較して、周波数が高くなると急激に通過損失が大きくなることがわかる。
【0012】
図27および28は、図23(a)、図24(a)、図25(a)および図26(a)に示す特性インピーダンス50Ωの均一な伝送路およびパッド付伝送路ならびに特性インピーダンス55Ωの均一な伝送路およびパッド付伝送路に関して、反射特性の差「S1150Ω−S1155Ω」の絶対値、および通過特性の差「S2150Ω−S2155Ω」の絶対値を求めたものであり、図27(a)は、図23(b)および図24(b)における反射特性S11の差を表わし、図27(b)は、図25(b)および図26(b)における反射特性S11の差を表わす図である。また、図28(a)は、図23(b)および図24(b)における通過特性S21の差を表わし、図28(b)は、図25(b)および図26(b)における通過特性S21の差を表わす図である。
【0013】
反射特性の差について、図27(a)および図27(b)に示す特性を比較すると、パッドがない均一な伝送路の場合は、反射特性の差は周波数全域で平均しており、うねりの平均はほぼ一定であるが、パッド付伝送路の場合には、20GHz付近から反射の差が上昇している。
【0014】
同様に、通過特性の差について、図28(a)および図28(b)に示す特性を比較すると、反射特性の場合とは逆に、通過特性の差は、パッドのない均一な伝送路では周波数とともに上昇するが、パッド付伝送路の場合は平均化している。また、周波数全域にわたって、パッド付伝送路の方がパッドのない均一な伝送路よりも通過特性の差が小さくなっている。
【0015】
以上より、伝送路とパッドの接続点(段差)により生じた大きな反射により、パッドの反射特性が支配的になり、伝送路自体の通過特性の差が明確に現れにくくなっていることがわかる。このことは、パッド付伝送路は、パッドのない均一な伝送路よりもさらに、上記評価項目についての伝送路の個体ごとの差(バラツキ)が現れにくくなっていることを意味する。例えば、パッド付伝送路について試験信号を入力し、このパッド付伝送路から出力された信号のアイパターンを観測しても、伝送路の個体ごとのアイダイアグラムの違い(伝送特性の差)を識別しにくくなる。つまり、パッドのない均一な伝送路でも上記違いの識別が困難であったものが、伝送路にパッドが接続されることでさらに困難になってしまう。
【0016】
均一な伝送路であれば上記評価項目についての伝送路の個体ごとの差(バラツキ)が明確に現れるようにするために、伝送路の伝送損失がより大きくなる周波数領域まで達するようパルスパターンジェネレータが出力する評価信号の伝送レートを上げることが考えられる。しかし、パッド付伝送路の場合には、伝送レートを上げても、均一な伝送路のような期待する効果(アイパターンの差)は得られず、アイパターンにより伝送路の特性バラツキを識別することは不可能に近い。
【0017】
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、パッド付の伝送路の伝送特性についての評価装置による評価をより容易に実現することができる、評価装置に接続されるアダプタ装置およびこれを備える伝送路評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を実現するために、本発明においては、伝送路の入力端へ試験信号を入力したときに伝送路の出力端から出力される評価信号に基づき伝送路の伝送特性を評価する評価装置に対して接続されるアダプタ装置は、入力端において検出された入力端信号から、入力端における試験信号の反射損失を抽出し、この反射損失を拡大した拡大反射損失信号を生成する反射損失抽出手段と、出力端において検出された出力端信号から、伝送路を通過した試験信号の通過損失を抽出し、通過信号を拡大した拡大通過損失信号を生成する通過損失抽出手段であって、拡大通過損失信号のうち、第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有するものまたは第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、当該信号レベルを所定の圧縮率で圧縮して出力し、第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、そのまま出力する通過損失抽出手段と、試験信号から、反射損失抽出手段により出力された拡大反射損失信号および通過損失抽出手段により出力された拡大通過損失信号を減算することで生成される信号を、評価装置へ入力される評価信号として生成する評価信号生成手段と、を備える。
【0019】
本発明による伝送路評価システムは、上述のアダプタ装置と、アダプタ装置に接続され、評価信号を生成してこれをアダプタ装置に入力するパルスパターンジェネレータと、アダプタ装置に接続され、アダプタ装置から出力される信号に基づいて伝送路の伝送特性を評価する評価装置と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によるアダプタ装置を、従前の評価装置に接続するだけで、容易に、一端にパッドが形成された伝送路(パッド付伝送路)の伝送特性についての評価を可能にすることができる。本発明によれば、評価対象がパッド付伝送路であっても、アイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目について、伝送路ごとの明確な差(バラツキ)として現れさせることができるので、伝送路ごとの伝送品質の良し悪しを判別しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例によるアダプタ装置を示す基本ブロック図である。
【図2】本発明の実施例によるアダプタ装置内の反射損失抽出手段を示す基本ブロック図である。
【図3】本発明の実施例によるアダプタ装置内の通過損失抽出手段を示す基本ブロック図である。
【図4】図1〜3の基本ブロック図に示す本発明の実施例によるアダプタ装置を備える伝送路評価システムの基本動作フローを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例によるアダプタ装置の回路構成の具体例を示す回路図である。
【図6】本発明の実施例における反射信号抽出部の回路構成を示す回路図である。
【図7】本発明の実施例における損失信号抽出部の回路構成を示す回路図である。
【図8】図5〜7に示す回路構成を有するアダプタ装置1の動作フローを示すフローチャート(その1)である。
【図9】図5〜7に示す回路構成を有するアダプタ装置1の動作フローを示すフローチャート(その2)である。
【図10】図5〜7に示す回路構成を有するアダプタ装置1の動作フローを示すフローチャート(その3)である。
【図11】ステップS207の動作時における波形データを示す図であって、図11(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データを示し、図11(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生クロックおよび再生試験信号を示す図である。
【図12】ステップS209およびS210の動作時における波形データを示す図であって、図12(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、アンプA−8の出力信号の波形データを示しおよび、参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図12(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロックおよび再生試験信号を示す図である。
【図13】ステップS212の動作時における波形データを示す図であって、図13(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データおよび再生試験信号(DRG−2の出力)の波形データ、アンプA−8の出力信号および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックの波形データを示し、図13(b)は、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、再生試験信号(DRG−1の出力)およびメモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データを示す図である。
【図14】ステップS215の動作時におけるサンプリング期間決定時における波形データを示す図であって、図14(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、アンプA−8の出力信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図14(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、および差動アンプA−9の出力信号の波形データを示す図である。
【図15】ステップS215の動作時におけるしきい値決定時における波形データを示す図であって、図15(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、アンプA−8の出力信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図15(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、および差動アンプA−9の出力信号の波形データを示す図である。
【図16】ステップS215の動作時における信号レベル圧縮時における波形データを示す図であって、図16(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、アンプA−8の出力信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図16(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、および差動アンプA−9の出力信号の波形データを示す図である。
【図17】拡大反射損失信号の波形データおよび拡大通過損失信号の波形データを示す図であって、図17(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、拡大反射損失信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図17(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロックおよび、拡大通過損失信号の波形データを示す図である。
【図18】本発明の実施例によるアダプタ装置における反射信号抽出部の効果を説明するための、アダプタ装置を用いない従来技術による評価装置で観測されるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
【図19】本発明の実施例によるアダプタ装置における反射信号抽出部の効果を説明する、評価装置で観測されるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
【図20】本発明の実施例によるアダプタ装置における通過損失圧縮部の効果を説明するための、従来技術による評価装置で観測されるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
【図21】本発明の実施例によるアダプタ装置における通過損失圧縮部の効果を説明する、評価装置で観測されるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図である。
【図22】従来一般に用いられている伝送路評価システムを例示する図である。
【図23】均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図であって、図23(a)は、特性インピーダンスが50Ωである均一な伝送路をモデル化したシミュレーション回路を示し、図23(b)は、図23(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
【図24】均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図であって、図24(a)は、特性インピーダンスが55Ωである均一な伝送路をモデル化したシミュレーション回路を示し、図24(b)は、図24(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
【図25】均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図であって、図25(a)は、特性インピーダンスが50Ωである図23(a)に示す均一な伝送路の一端にパッドが接続された場合をモデル化したシミュレーション回路を示し、図25(b)は、図25(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
【図26】均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図であって、図26(a)は、特性インピーダンスが55Ωである図24(a)に示す均一な伝送路の一端にパッドが接続された場合をモデル化したシミュレーション回路を示し、図26(b)は、図26(a)に示すシミュレーション回路についてのSパラメータのシミュレーション結果を示す図である。
【図27】均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図であって、図27(a)は、図23(b)および図24(b)における反射特性S11の差を表わし、図27(b)は、図25(b)および図26(b)における反射特性S11の差を表わす図である。
【図28】均一な伝送路およびパッド付伝送路のSパラメータの対比について説明する図であって、図28(a)は、図23(b)および図24(b)における通過特性S21の差を表わし、図28(b)は、図25(b)および図26(b)における通過特性S21の差を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施例によるアダプタ装置を示す基本ブロック図である。本発明の実施例によるアダプタ装置1は、評価対象である伝送路DUTとこの伝送路DUTの伝送特性を評価する評価装置3との間に接続されるものである。アダプタ装置1の測定プローブP1には、伝送特性を評価すべき伝送路DUTの入力端が接続され、アダプタ装置1の測定プローブP2には、伝送路DUTの出力端が接続されることになる。なお、後述する「伝送路DUTの入力端で検出された入力端信号」は、アダプタ装置1の測定プローブP1の位置で検出されるものである。
【0023】
アダプタ装置1においては、パルスパターンジェネレータ(PPG)2により、アダプタ装置1の入力ポートIn−dataから試験信号が入力される。また、アダプタ装置1の出力ポートOutからは、評価装置3へ向けて評価信号が出力される。ここで説明されるアダプタ装置に接続される評価対象である伝送路DUTは、例えばパッドが接続された伝送路(パッド付伝送路)であるが、本発明は、パッドが接続されていない伝送路(パッドなし伝送路)にも適用可能である。なお、パッド付き伝送路を評価対象とする場合、伝送路のPADがある側が、遠端にある測定プローブP2に接続される側である。
【0024】
本発明によるアダプタ装置1は、反射損失抽出手段11と、通過損失抽出手段12と、評価信号生成手段13と、クロック生成手段20と、位相同期手段21と、クロック再生手段22と、データ再生手段23と、コントローラ24と、を備える。
【0025】
上述の反射損失抽出手段11、通過損失抽出手段12、評価信号生成手段13、位相同期手段21、クロック再生手段22、データ再生手段23、およびコントローラ24は、ディジタル信号処理部10で実現される。このため、本発明によるアダプタ装置1は、入力ポートIn−dataを介してパルスパワージェネレータ2から入力された試験信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する第1のアナログディジタル(AD)変換器14と、第1のアナログディジタル変換器14によりディジタル信号化された試験信号が記憶される第1のメモリ15と、伝送路DUTの入力端において測定プローブP1により検出された入力端信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する第2のアナログディジタル変換器16と、第2のアナログディジタル変換器16によりディジタル信号化された入力端信号が記憶される第2のメモリ17と、伝送路DUTの出力端において測定プローブP2により検出された出力端信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する第3のアナログディジタル変換器18と、第3のアナログディジタル変換器18によりディジタル信号化された出力端信号が記憶される第3のメモリ19と、を備える。
【0026】
反射損失抽出手段11は、伝送路DUTの入力端において測定プローブP1により検出された入力端信号から、入力端における試験信号の反射損失を抽出し、この反射損失を拡大した拡大反射損失信号を生成する。
【0027】
図2は、本発明の実施例によるアダプタ装置内の反射損失抽出手段を示す基本ブロック図である。上述の反射損失抽出手段11は、第1の差動増幅手段31と、第1の生成手段32と、を有する。
【0028】
このうち、第1の差動増幅手段31は、位相同期手段21により調整されたタイミングで第1のメモリ15から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、位相同期手段21により調整されたタイミングで第2のメモリ17から読み出されたディジタル信号化された入力端信号と、の差信号を増幅する。
【0029】
また、第1の生成手段32は、第1の差動増幅手段31により生成された増幅された差信号から、出力端において反射した信号成分を除去することで、拡大反射損失信号を生成する。より具体的には、第1の生成手段32は、ゲーティング期間決定手段33と、ゲーティング手段34と、反射損失信号用メモリ35と、を有する。第1の生成手段32内のゲーティング期間決定手段33は、再生クロックの立ち下がり直後における再生試験信号の信号レベルが再生クロックの少なくとも1周期経過後においても変化したいとき、そのときの再生クロックの立ち下がり時刻を開始時刻とし、この開始時刻後において、再生クロックの立ち下がり直後に、再生試験信号の信号レベルが変化したときにおける当該再生クロックの立ち上がりの時刻を終了時刻とするゲーティング期間を決定する。第1の生成手段32内のゲーティング手段34は、ゲーティング期間中は増幅された差信号を出力し、ゲーティング期間以外はゼロレベルの信号を出力する。第1の生成手段32内の反射損失信号用メモリ35は、ゲーティング手段34が出力した信号を拡大反射損失信号として記憶する。
【0030】
一方、図1の通過損失抽出手段12は、伝送路DUTの出力端において測定プローブP2により検出された出力端信号から、伝送路DUTを通過した試験信号の通過損失を抽出し、通過信号を拡大した拡大通過損失信号を生成する。ここで、拡大通過損失信号のうち、第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有するものまたは第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、当該信号レベルを所定の圧縮率で圧縮して出力し、第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、そのまま出力する。
【0031】
図3は、本発明の実施例によるアダプタ装置内の通過損失抽出手段を示す基本ブロック図である。上述の通過損失抽出手段12は、第2の差動増幅手段41と、第2の生成手段42と、を有する。
【0032】
このうち、第2の差動増幅手段41は、位相同期手段21により調整されたタイミングで第1のメモリ15から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、第3のメモリ19から読み出されたディジタル信号化された出力端信号と、の差信号を増幅する。
【0033】
また、第2の生成手段42は、第2の差動増幅手段41により生成された増幅された差信号から拡大通過損失信号を生成する。より具体的には、第2の生成手段42は、サンプリング期間決定手段43と、しきい値決定手段44と、レベル圧縮手段45と、通過損失信号用メモリ46と、を有する。第2の生成手段42内のサンプリング期間決定手段43は、再生クロックの立ち下がり直後における再生試験信号の信号レベルが再生クロックの少なくとも1周期経過後においても変化しないとき、そのときの再生クロックの立ち下がり時刻を開始時刻とし、この開始時刻後において、再生クロックの立ち下がり直後に、再生試験信号の信号レベルが変化したときにおける当該再生クロックの1.5周期前の立ち上がりの時刻を終了時刻とするサンプリング期間を決定する。第2の生成手段42内のしきい値決定手段44は、サンプリング期間中における再生試験信号の信号レベルがローレベルであるときは、第2の差動増幅手段41の出力端信号中で最も高い信号レベルの値の平均値を前記第1のしきい値とし、サンプリング期間中における再生試験信号の信号レベルがハイレベルであるときは、第2の差動増幅手段41の出力端信号中で最も低い信号レベルの値の平均値を第2のしきい値とする。第2の生成手段42内のレベル圧縮手段45は、第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有する拡大通過損失信号または第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有する拡大通過損失信号については、当該信号レベルを所定の圧縮率で圧縮した上で出力し、第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有する拡大通過損失信号については、そのまま出力する。通過損失信号用メモリ46は、レベル圧縮手段45により生成された拡大通過損失信号を記憶する。
【0034】
図1に戻ると、評価信号生成手段13は、試験信号から、反射損失抽出手段11により出力された拡大反射損失信号および通過損失抽出手段12により出力された拡大通過損失信号を減算することで生成される信号を、評価装置3へ入力される評価信号として生成する。
【0035】
クロック生成手段20は、試験信号、前記入力端信号および出力端信号を、それぞれ第1のアナログディジタル変換器14、第2のアナログディジタル変換器16および第3のアナログディジタル変換器18において同一のタイミングでサンプリングするためのサンプリングクロック、ならびに、ディジタル信号化された試験信号、ディジタル信号化された入力端信号およびディジタル信号化された出力端信号をそれぞれ第1のメモリ15、第2のメモリ17および第3のメモリ19に同一のタイミングで書き込むための書込み用クロック、を生成する。
【0036】
位相同期手段21は、第1のメモリ15からディジタル信号化された試験信号を読み出すタイミングおよび第2のメモリ17からディジタル信号化された入力端信号を読み出すタイミングを、第3のメモリ19からディジタル信号化された出力端信号を読み出すタイミングに合わせるよう調整する。
【0037】
クロック再生手段22は、第3のメモリ19から読み出されたディジタル信号化された出力端信号の位相情報に基づき、再生クロックを生成する。
【0038】
データ再生手段23は、再生クロックと第3のメモリ19から読み出されたディジタル信号化された出力端信号とに基づき、試験信号を再生クロックに同期させた再生試験信号を生成する。
【0039】
コントローラ24は、評価信号生成手段13に入力されるディジタル信号化された試験信号、拡大反射損失信号および拡大通過損失信号の同期をとるために、反射損失抽出手段11中の信号用メモリから拡大反射損失信号を読み出すタイミングおよび通過損失抽出手段12中の通過損失信号用メモリから拡大通過損失信号を読み出すタイミングを調整する。
【0040】
評価信号生成手段13によって生成された評価信号は、アダプタ装置1の出力ポートOutを介して評価装置3へ出力される。評価装置3は、例えば、伝送路においてディジタル信号を伝送する際に生じるジッタをアイダイアグラムで表示するオシロスコープもしくはビットエラーレートテスタである。
【0041】
本発明による伝送路評価システム100は、上述のアダプタ装置1と、アダプタ装置1に接続され、試験信号を生成してこれをアダプタ装置1に入力するパルスパターンジェネレータ2と、アダプタ装置1に接続され、アダプタ装置1から出力される評価信号に基づいて伝送路DUTの伝送特性を評価する評価装置3と、を備える。
【0042】
図4は、図1〜3の基本ブロック図に示す本発明の実施例によるアダプタ装置を備える伝送路評価システムの基本動作フローを示すフローチャートである。
【0043】
ステップS101において、パルスパターンジェネレータ(PPG)2は、試験信号である擬似ランダムデータ信号をM周期分だけ生成し、この試験信号をアダプタ装置1へ向けて送出する。アダプタ装置1の入力ポートIn−dataにはパルスパターンジェネレータ2が生成した試験信号のデータ信号が入力され、入力ポートIn−clockには試験信号の基準クロックが入力される。
【0044】
ステップS102では、サンプリングされた試験信号が、第1のアナログディジタル変換器14によってアナログ信号からディジタル信号に変換され、第1のメモリ15に記憶される。また、サンプリングされた入力端信号が、第2のアナログディジタル変換器16によってアナログ信号からディジタル信号に変換され、第2のメモリ17に記憶される。また、サンプリングされた出力端信号が、第3のアナログディジタル変換器18によってアナログ信号からディジタル信号に変換され、第3のメモリ19に記憶される。
【0045】
次いで、ステップS103では、M周期分のディジタル信号化された試験信号、入力端信号および出力端信号が、それぞれ第1のメモリ15、第2のメモリ17および第3のメモリ19に記憶されたか否かが判定される。
【0046】
M周期分の各信号が各メモリに記憶されると、ステップS104において、反射損失抽出手段11は、第1のメモリ15から読み出されたディジタル化された試験信号と第2のメモリ17から読み出された入力端信号とから、入力端における試験信号の反射損失を抽出し、この反射損失を拡大した拡大反射損失信号を生成する。生成された拡大反射損失信号は、反射損失抽出手段11内のメモリ(図1には示さず)内に一旦記憶される。
【0047】
次いでS105において、通過損失抽出手段12は、第1のメモリ15から読み出されたディジタル化された試験信号と第3のメモリ19から読み出されたディジタル化された出力端信号から、伝送路DUTを通過した試験信号の通過損失を抽出し、通過信号を拡大した拡大通過損失信号を生成する。生成された拡大通過損失信号は、通過損失抽出手段12内のメモリ(図1には示さず)内に一旦記憶される。
【0048】
次いでS106において、評価信号生成手段13は、反射損失抽出手段11内のメモリおよび通過損失抽出手段12内のメモリからそれぞれ拡大反射損失信号および拡大通過損失信号を同じタイミングで読み出す。評価信号生成手段13は、ディジタル信号化された試験信号から拡大反射損失信号および通過損失抽出手段12により出力された拡大通過損失信号を試験信号から減算することで評価信号として生成する。
【0049】
次いで、ステップS107において、伝送路2の評価に必要な回数N回だけ繰り返されたか否かが判定される。評価(解析)に必要なデータ量が得られるまで、繰り返し(N回)実行される。
【0050】
図5は、本発明の実施例によるアダプタ装置の回路構成の具体例を示す回路図である。アダプタ装置1の測定プローブP1およびP2の間には、評価対象である伝送路DUTが接続される。図5に示す例では、伝送路DUTは、パッドが形成された伝送路(パッド付伝送路)であるとする。
【0051】
アダプタ装置1の入力ポートIn−dataおよびIn−clockには、評価信号を生成するパルスパターンジェネレータ(PPG)2が接続され、評価信号が入力される。パルスパターンジェネレータ2は、試験信号である擬似ランダムデータ信号を生成する。パルスパターンジェネレータ2の出力ポートOut1からは試験信号のデータ信号が出力され、パルスパターンジェネレータ2の出力ポートOut2からは試験信号の基準クロックが出力される。アダプタ装置1の入力ポートIn−dataにはパルスパターンジェネレータ2が生成した試験信号のデータ信号が入力され、入力ポートIn−clockには試験信号の基準クロックが入力される。
【0052】
本発明の実施例によるアダプタ装置1の出力ポートOut−2もしくはOut−3は、評価対象である伝送路DUTの伝送特性を評価するための評価装置(図示せず)が接続される端子である。図5に示す例では、一例として、出力ポートOut−2からは、アダプタ装置1により生成された評価信号のアナログ信号が出力され、出力ポートOut−3からは、アダプタ装置1により生成された評価信号のディジタル信号が出力される。
【0053】
アダプタ装置1の入力ポートIn−dataにはデバイダD−1が接続される。デバイダD−1は、入力ポートIn−dataを介して入力された試験信号を2分配し、一方をアンプA−1に、もう一方をA−2に、それぞれ入力する。
【0054】
アンプA−2の出力信号は、アダプタ装置1の出力端子Out−1および測定プローブP1を介して、評価対象である伝送路DUTに入力される。
【0055】
一方、アンプA−1 の出力信号は、バッファアンプA−6 を介して、アナログディジタル変換器AD−2 に入力される。アナログディジタル変換器AD−2は、図1を参照して説明した第1のアナログディジタル変換器1に相当するものであり、試験信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する。
【0056】
アナログディジタル変換器AD−2にはイコライザE−2が接続される。イコライザE−2は、アダプタ装置1の入力ポートIn−dataからアナログディジタル変換器AD−2の出力までの伝送損失を補償するためのものである。アナログディジタル変換器AD−2から出力された、ディジタル信号化された試験信号は、イコライザE−2により伝送損失が補償された後、メモリM−2に波形データとして書き込まれる。このメモリM−2は、図1を参照して説明した第1のメモリ15に相当するものである。
【0057】
測定プローブP1と評価対象(プローブ対象)である伝送路DUTの入力端との接続点から非常に近いポイントには、プローブアンプA−3が実装される。プローブアンプA−3は、入力インピーダンスが極めて高いものとする。プローブアンプA−3 により、伝送路DUTの入力端における電圧波形である入力端信号をセンシングする。入力端信号は、アダプタ装置1の入力ポートIn−1およびバッファアンプA−5 を介して、アナログディジタル変換器AD−1に入力される。
【0058】
アナログディジタル変換器AD−1にはイコライザE−1が接続される。イコライザE−1は、プローブアンプA−3の入力端子からアナログディジタル変換器AD−1の出力までの伝送損失を補償するためのものである。アナログディジタル変換器AD−1から出力された、ディジタル信号化された入力端信号は、イコライザE−1により伝送損失が補償された後、メモリM−1に波形データとして書き込まれる。このメモリM−1は、図1を参照して説明した第2のメモリ17に相当するものである。
【0059】
測定プローブP2は、伝送路DUTの出力端における電圧波形である出力端信号をプローブする。すなわち、出力端信号は、伝送路DUTを通過した試験信号である。出力端信号は、バッファアンプA−4、アダプタ装置の入力ポートIn−2およびバッファアンプA−7を介してアナログディジタル変換器AD−3 に入力される。
【0060】
アナログディジタル変換器AD−3にはイコライザE−3が接続される。イコライザE−3は、測定プローブP2からアナログディジタル変換器AD−3の出力までの伝送損失を補償するためのものである。アナログディジタル変換器AD−3から出力された、ディジタル信号化された出力端信号は、イコライザE−3により伝送損失が補償された後、メモリM−3に波形データとして書き込まれる。このメモリM−3は、図1を参照して説明した第3のメモリ19に相当するものである。
【0061】
なお、パルスパターンジェネレータ2の出力からデバイダD−1、アンプA−1およびバッファアンプA−6を経てアナログディジタル変換器AD−2の入力までの信号経路と、パルスパターンジェネレータ2の出力からデバイダD−1、アンプA−2、出力ポートOut−1、プローブアンプA−3、入力ポートIn−1およびバッファアンプA−5を経てアナログディジタル変換器AD−1の入力までの信号経路と、測定プローブP2、バッファアンプA−4、入力ポートIn−2およびバッファアンプA−7を経てアナログディジタル変換器AD−3の入力までの信号経路と、については、信号の伝播時間が同じになるように、予め回路設計しておく。
【0062】
クロックジェネレータCG−1は、図1を参照して説明したクロック生成手段20に相当するものである。クロックジェネレータCG−1は、試験信号、入力端信号および出力端信号を、それぞれアナログディジタル変換器AD−1、AD−2およびAD−3において同一のタイミングでサンプリングするためのサンプリングクロックを生成する。これにより、アナログディジタル変換器AD−1、AD−2およびAD−3は、クロックジェネレータCG−1が生成したサンプリングクロックにより、それぞれバッファアンプA−5、A−6およびA−7の各出力信号を全て同一のタイミングでサンプリングすることになる。クロックジェネレータCG−1は、アナログディジタル変換器AD−1、AD−2およびAD−3の出力データをそれぞれメモリM−1、M−2およびM−3に同一のタイミングで書き込むための書き込み用クロックも生成する。これにより、メモリM−1、M−2およびM−3には、クロックジェネレータCG−1が生成したサンプリングクロックにより、ディジタル信号化された試験信号、入力端信号および出力端信号が、同一のタイミングで書き込まれる。
【0063】
差動アンプA−8は、図2を参照して説明した第1の差動増幅手段31に相当するものである。差動アンプA−8は、メモリM−1から読み出されたディジタル信号化された入力端信号と、メモリM−2から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、の差信号を求め、かつ利得Gr倍に増幅する。
【0064】
差動アンプA−8の出力信号(波形データ)は、スイッチSW−1aのA端子を介して反射信号抽出部(Reflect Signal Extractor)RSEに入力される。パッド付伝送路の反射損失には、伝送路DUTの入力端において生じる反射損失と伝送路DUTの出力端において生じる反射損失があるが、差動アンプA−8の出力信号には、伝送路DUTの入力端において反射した信号成分のほかに伝送路DUTの出力端において反射した信号成分が含まれている。反射信号抽出部RSEは、差動アンプA−8の出力信号から、伝送路DUTの出力端において反射した信号成分を除去するためのものである。反射信号抽出部RSEは、図1を参照して説明した第1の生成手段32に相当するものである。
【0065】
伝送路DUTの出力端において生じる反射損失に相当する反射信号は、伝送路DUTの入力端において生じる反射損失に相当する反射信号よりも、伝送路の入力端において遅れて現れる。そこで、本発明の実施例では、反射信号抽出部RSEにおいて、ある時間期間(ゲーティング期間)において伝送路DUTの入力端において検出された信号のみを抽出し、それ以外の時間期間における伝送路DUTの入力端において検出された信号については除去するよう制御する。図6は、本発明の実施例における反射信号抽出部の回路構成を示す回路図である。反射信号抽出部RSEは、ゲーティング用スイッチGSW−1と、反射損失信号用メモリMEM−1と、を備える。ゲーティング用スイッチGSW−1は、図2を参照して説明したゲーティング手段34に相当するものである。また、反射損失信号用メモリMEM−1は、図2を参照して説明した反射損失信号用メモリ35に相当するものである。
【0066】
ゲートタイミングジェネレータ(Gate Timing Generrator)GTG−1は、その動作の詳細については後述するが、データリジェネレータ(Data ReGenerator)DRG−1が生成する再生試験信号と、オールディジタルPLL(参照符号ADP−1)が生成する再生クロックとを用いてゲーティング期間を決定し、これをゲーティング信号とする。ゲートタイミングジェネレータGTG−1は、図2を参照して説明したゲーティング期間決定手段33に相当するものである。データリジェネレータDRG−1は、図1を参照して説明したデータ再生手段23に相当するものである。また、オールディジタルPLL(参照符号ADP−1)は、図1を参照して説明したクロック再生手段22に相当するものである。
【0067】
ゲーティング用スイッチGSW−1は、ゲートタイミングジェネレータGTG−1によって生成されたゲーティング信号によって制御される。すなわち、ゲーティング用スイッチGSW−1は、ゲーティング期間中はオンされて増幅された差信号を通過させ、ゲーティング期間以外はオフとなり増幅された差信号を遮断する。したがって、反射損失信号用メモリMEM−1には、ゲーティング期間中は増幅された差信号の信号レベルが書き込まれ、ゲーティング期間以外は零レベルが書き込まれる。反射損失信号用メモリMEM−1に書き込まれた波形データが、拡大反射損失信号である。このように、反射信号抽出部RSEにより、評価対象である伝送路DUTの入力端において反射した信号成分を強調した信号成分を含み伝送路DUTの出力端において反射した信号成分を含まない拡大反射損失信号が生成される。
【0068】
反射信号抽出部RSE内の反射損失信号用メモリMEM−1から読み出された拡大反射損失信号は、スイッチSW−1bのA端子を経由し、ローパフフィルタLPF−1により評価に適する周波数帯に制限され、位相反転器PC−1を経由して、加算器SU−1に入力される。加算器SU−1は、図1を参照して説明した評価信号生成手段13に相当するものである。
【0069】
一方、メモリM−2から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、メモリM−3から読み出されたディジタル信号化された出力端信号とは、差動アンプA−9に入力される。差動アンプA−9は、図3を参照して説明した第2の差動増幅手段31に相当するものである。差動アンプA−9は、メモリM−2から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、メモリM−3から読み出されたディジタル信号化された出力端信号と、の差信号を求め、かつ利得Gt倍に増幅するが、その処理の際には、メモリM−2から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、メモリM−3から読み出されたディジタル信号化された出力端信号との波形の位相を一致させる必要があるが、この処理については後述する。
【0070】
差動アンプA−9の出力信号(波形データ)は、スイッチSW−2aのA端子を介して損失信号圧縮部(Loss Signal Compressor)LSCに入力される。差動アンプA−9の出力信号には、パッド付伝送路自体の通過損失の信号成分と、パッドにより生じた反射損失の信号成分とが含まれる。本発明の実施例では、パッドにより生じた反射損失の信号成分の影響を緩和するために、損失信号圧縮部LSCにて、差動アンプA−9の出力信号について、あるしきい値を超える信号レベルについてはある圧縮率で圧縮する。損失信号圧縮部LSCは、図3を参照して説明した第2の生成手段42に相当するものである。
【0071】
図7は、本発明の実施例における損失信号抽出部の回路構成を示す回路図である。損失信号圧縮部LSCは、ゲーティング用スイッチGSW−2と、データサンプリング部DSと、しきい値決定部TLSと、信号レベル圧縮部LCと、通過損失信号用メモリMEM−2と、を備える。しきい値決定部TLSは、図3を参照して説明したしきい値決定手段44に相当するものである。また、通過損失信号用メモリMEM−2は、図3を参照して説明した通過損失信号用メモリ46に相当するものである。
【0072】
ここで、図5に示すゲートタイミングジェネレータ(Gate Timing Generrator)GTG−1は、データリジェネレータ(Data ReGenerator)DRG−1が生成する再生試験信号と、オールディジタルPLL(参照符号ADP−1)が生成する再生クロックとを用いてサンプリング期間を決定する。ゲートタイミングジェネレータGTG−1は、図3を参照して説明したサンプリング期間決定手段43に相当するものである。
【0073】
そして、図7に示すゲーティング用スイッチGSW−2は、上述のゲートタイミングジェネレータGTG−1によって生成されたゲーティング信号によって制御される。これにより、ゲーティング用スイッチGSW−2は、サンプリング期間中はオンされて増幅された差信号を通過させ、サンプリング期間以外はオフとなり増幅された差信号を遮断する。データサンプリング部DSは、オールディジタルPLL(参照符号ADP−1)が生成する再生クロックで、ゲーティング用スイッチGSW−2を通過したサンプリング期間中における増幅された差信号の信号レベルをサンプリングする。
【0074】
しきい値決定部TLSは、データサンプリング部で取得したサンプリングデータの中から、信号レベル圧縮部LCにおけるレベル圧縮処理のしきい値にできるサンプリング期間中のデータを取得し、信号レベル圧縮部LCで用いられるしきい値電圧を設定する。具体的には、しきい値決定部TLSは、データリジェネレータDRG−1が出力した再生試験信号についてサンプリング期間中における信号レベルがローレベルであるときは、データサンプリング部DSで取得された差動アンプA−9出力信号のサンプリングデータ中で最も高い信号レベルの値の平均値を第1のしきい値とし、データリジェネレータDRG−1が出力した再生試験信号についてサンプリング期間中における信号レベルがハイレベルであるときは、データサンプリング部DSで取得された差動アンプA−9出力信号のサンプリングデータ中で最も低い信号レベルの値の平均値を第2のしきい値とする。
【0075】
信号レベル圧縮部LCは、損失信号圧縮部LSCに入力された差動アンプA−9の出力信号について、第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有するものまたは第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、当該信号レベルを所定の圧縮率で圧縮した上で出力し、第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、そのまま出力する。
【0076】
通過損失信号用メモリMEM−2には、信号レベル圧縮部LCから出力された波形データが、拡大通過損失信号として書き込まれる。このように、損失信号圧縮部LSCにより、伝送路DUTのパッドにより生じた反射損失の信号成分の影響が緩和されかつ伝送路DUTの通過損失の信号成分が強調された拡大通過損失信号が生成される。
【0077】
損失信号圧縮部LSCの通過損失信号用メモリMEM−2から読み出された拡大通過損失信号は、スイッチSW−2bのA端子を経由し、ローパフフィルタLPF−2により評価に価する周波数帯域に制限され、位相反転器PC−2を経由して、加算器SU−1に入力される。
【0078】
一方、図2に示すメモリM−2に記憶されたディジタル信号化された試験信号は、遅延回路DL−1を通過して、加算器SU−1に入力される。図3に示す反射信号抽出部RSE内の反射損失信号用メモリMEM−1から加算器SU−1の 入力までの信号の伝播時間をτr 、図5に示す通過信号抽出部LSC通過損失信号用メモリMEM−2から加算器SU−1の 入力までの信号の伝播時間をτt 、遅延回路DLの遅延時間τd1としたとき、τrとτt とが同じになるように予め回路設計しておいた上で、τd1==τr(=τt )となるように遅延回路DL−1 の遅延時間が調整される。
【0079】
差動アンプA−9による差動増幅処理の際には、メモリM−2から読み出されたディジタル信号化された試験信号と、メモリM−3から読み出されたディジタル信号化された出力端信号との波形の位相を一致させる必要がある。すなわち、メモリM−2からディジタル信号化された試験信号を読み出すタイミングを、メモリM−3からディジタル信号化された出力端信号を読み出すタイミングに対し評価対象である伝送路DUTにおける信号の伝播時間だけ遅らせる必要がある。また、メモリM−2からディジタル信号化された試験信号を読み出すタイミングを調整する場合には、メモリM−1からディジタル信号化された入力端信号を読み出すタイミングについても、併せてメモリM−2からディジタル信号化された試験信号を読み出すタイミングに一致させておく必要がある。図1を説明した位相同期手段21は、このための手段であり、図5においては、参照符号ADP−1およびADP−2で示されるオールディジタルPLLと、データリジェネレータDRG−1およびDRG−2と、データパターンコンパレータDPC−1と、アドレスコントローラAC−1がこれに相当する。
【0080】
メモリM−2の出力には、参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLおよびデータリジェネレータDRG−2が、メモリM−3の出力には、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLおよびデータリジェネレータDRG−1が、それぞれ接続される。位相比較器PD−1は、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLにより生成された再生クロックの位相と参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックの位相とを比較する。また、データパターンコンパレータDPC−1は、データリジェネレータDRG−1が生成する再生試験信号の波形パターンとデータリジェネレータDRG−1が生成する再生試験信号の波形パターンとを比較する。位相比較器PD−1が出力する位相差が最小になるように、かつ、データパターンコンパレータDPC−1による波形パターンの比較において位相差がないように、メモリM−1およびメモリM−2に対する読み出しアドレスを制御する。ここで、メモリM−1およびメモリM−2にはある程度の周期分の試験信号のデータが記憶されており、指定すべきメモリ領域上のアドレスを調整することによって、波形を遅延させることに相当する効果を得る。アドレスコントローラAC−1は、位相比較器PD−1が出力する位相差が最小になるようにメモリM−2に対する読み出しアドレスを制御する。
【0081】
加算器SU−1は、メモリM−2に記憶されたディジタル信号化された試験信号から、反射信号抽出部RSE内の反射損失信号用メモリMEM−1から読み出された拡大反射損失信号および損失信号圧縮部LSCの通過損失信号用メモリMEM−2から読み出された拡大通過損失信号を減算した信号を、評価信号として生成する。評価信号は、ディジタルアナログ(DA)変換器DA−1およびバッファアンプA−10を介して、アダプタ装置1の出力ポートOut−2より、アナログ信号として出力される。またあるいは、評価信号は、ディジタル信号として、アダプタ装置1の出力端子Out−3より出力される。上述のように、拡大反射損失信号は、評価対象である伝送路DUTの入力端において反射した信号成分を強調した信号成分を含むが伝送路DUTの出力端において反射した信号成分を含まない信号であり、拡大通過損失信号は、伝送路DUTのパッドにより生じた反射損失の信号成分の影響が緩和されかつ伝送路DUTの通過損失の信号成分が強調された信号である。したがって、出力ポートOut−2およびOut−3から出力される評価信号は、評価対象であるパッド付伝送路の一端に形成されているパッドの影響を取り除いた反射損失および通過損失を拡大したものとなる。
【0082】
既に説明したように、パッド付伝送路の場合、従来技術では、伝送路とパッドの接続点(段差)により生じた大きな反射により、パッドの反射特性が支配的になり、伝送路自体の通過特性の差が明確に現れにくい。例えば、パッド付伝送路について試験信号を入力し、このパッド付伝送路から出力された信号のアイパターンを観測しても、伝送路の個体ごとのアイダイアグラムの違い(伝送特性の差)を識別しにくくなる。これに対し、本発明の実施例によれば、パッド付伝送路の一端に形成されているパッドの影響を取り除いた反射損失および通過損失を拡大した評価信号を作成することができるので、アイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目について、評価対象である伝送路ごとの明確な差(バラツキ)として現れさせることができるので、伝送路ごとの伝送品質の良し悪しを判別しやすくすることができる。一般に、均一な伝送路であれば上記評価項目についての伝送路の個体ごとの差(バラツキ)が明確に現れるようにするために、従来は伝送路の伝送損失がより大きくなる周波数領域まで達するようパルスパターンジェネレータが出力する評価信号の伝送レートを上げなければならなかったが、これに対し、本発明の実施例によれば、伝送レートを上げることなく、伝送路ごとのアイパターンの差を明確にすることができる。
【0083】
図8〜10は、図5〜7に示す回路構成を有するアダプタ装置1の動作フローを示すフローチャートである。また、図11〜17は、各動作時における波形のタイミングチャートを示す図である。なお、図11〜17において、参照符号ADP−1及び参照符号ADP−2で示したオールディジタルPLLの再生クロックと再生試験信号(DRG−1の出力)及び再生試験信号(DRG−2の出力)の各波形については、時間関係が見やすくなるレベルに表記している。
【0084】
まず、ステップS201において、アダプタ装置1の入力ポートIn−3にコントロール信号が入力される。これにより、アダプタ装置1内のコントローラ24は、アダプタ装置1の各動作を開始させる。
【0085】
次いで、ステップS202において、コントローラ24は、初期セットアップを行う。具体的には、まず、メモリM−1およびM−2のアドレス信号線用のスイッチSW−3をA側にセットする。そして、メモリM−1、M−2およびM−3のアドレスをゼロ番地に設定する。また、スイッチSW−1aおよびSW−1bならびにスイッチSW−2aおよびSW−2bについては、A側にセットする。ユーザが設定した損失信号圧縮部LSCの圧縮率に関するデータは、In−3を介して入力され、損失信号圧縮部LSCに設定する。なお、当該圧縮率についてはユーザが任意に設定可能であるので、例えばある圧縮率にてアダプタ装置1を動作させたときに出力された評価信号でアイパターンを観測し、評価に適したアイパターンが得られないようであれば圧縮率を変更して再度アダプタ装置1を動作させてもよい。
【0086】
次いでステップS203において、パルスパターンジェネレータ(PPG)2は、試験信号である擬似ランダムデータ信号をM周期分だけ生成し、この試験信号をアダプタ装置1へ向けて送出する。アダプタ装置1の入力ポートIn−dataにはパルスパターンジェネレータ2が生成した試験信号のデータ信号が入力され、入力ポートIn−clockには試験信号の基準クロックが入力される。
【0087】
次いでステップS204において、コントローラ24は、アナログディジタル変換器AD−1、AD−2およびAD−3を動作させる。これにより、バッファアンプA−5、A−6およびA−7の各出力は、アナログ信号からディジタル信号に変換される。
【0088】
次いでステップS205において、コントローラ24は、メモリM−1、M−2およびM−3に対してライト信号M123−W−Signalおよびアドレス信号Adressを出力し、アナログディジタル変換器AD−1、AD−2およびAD−3から各出力データを保存する。
【0089】
次いでステップS206において、コントローラ24は、パルスパターンジェネレータPPG−1が試験信号をM周期分出力したか否かを判定する。M周期出力されたと判定されるとステップS207へ進む。
【0090】
次いでステップS207において、再生クロックおよび再生試験信号が生成される。具体的には、コントローラ24は、メモリM−3に対してリード信号M3−R−Signalおよびアドレス信号Adressを出力し、メモリM−3からディジタル化された出力端信号を読み出させる。これにより、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLは再生クロックを生成し、データリジェネレータDRG−1は再生試験信号を生成する。図11は、ステップS207の動作時における波形データを示す図であって、図11(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データを示し、図11(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生クロックおよび再生試験信号を示す図である。図11(a)と図11(b)とを比較してわかるように、出力端信号は、試験信号に対して、伝送路を通過した分だけ時間的に遅延している。また図11(b)に示すように、出力端信号に基づき、再生クロックおよび再生試験信号が生成されていることがわかる。
【0091】
次いでステップS208において、コントローラ24は、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLが規定時間内に位相をロックしたか否かを判定する。
【0092】
位相をロックできた場合、ステップS209において、コントローラ24は、メモリM−1およびM−2に対してリード信号M12−R−Signalおよびアドレス信号Adressを出力し、メモリM−1からはディジタル化された入力端信号を、メモリM−2からはディジタル化された試験信号を、それぞれ読み出させる。
【0093】
次いでステップS210において、拡大反射損失信号が生成される。具体的には、コントローラ24は、反射信号抽出部RSEに対して書き込み用タイミング信号T−RSEを出力し、ゲートタイミングジェネレータGTG−1が生成したゲーティング信号をゲーティング用スイッチGSW−1に対して出力する。ゲーティング用スイッチGSW−1によって抽出された反射信号の波形データを、M周期分、反射損失保存用メモリMEM−1に書き込ませる。反射損失信号用メモリMEM−1は、書き込みが完了すると読み出し状態になる。図12は、ステップS209およびS210の動作時における波形データを示す図であって、図12(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、アンプA−8の出力信号の波形データおよび参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示す。図12(a)に示すように、アンプA−8の出力信号は、試験信号と入力端信号の差信号を示すものであり、伝送路DUTの入力端において反射した信号成分のほかに出力端において反射した信号成分が含まれていることがわかる。図12(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロックおよび再生試験信号を示す図である。ここで、図12(a)および(b)において、グレーを施された時間期間は、ゲーティング期間を表わす。本実施例では、ゲーティング期間として、再生クロックの立ち下がり直後における再生試験信号の信号レベルが再生クロックの周期経過後においても変化しないとき、そのときの再生クロックの立ち下がり時刻を開始時刻とし、この開始時刻後において、再生クロックの立ち下がり直後に、再生試験信号の信号レベルが変化したときにおける当該再生クロックの立ち上がりの時刻を終了時刻とするものを作成する。図12(a)に示すように、グレーで示されたゲーティング期間中のアンプA−8の出力信号がゲーティング用スイッチGSW−1を通過し、反射損失保存用メモリMEM−1に拡大反射損失信号として書き込まれることになる。
【0094】
次いでステップS211において、コントローラ24は、参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLが規定時間内に位相をロックしたか否かを判定する。
【0095】
次いでステップS212において、コントローラ24は、スイッチSW−3をB側にセットする。これにより、アドレスコントローラAC−1は、位相比較器PD−1が出力する位相差に関する信号とデータパターンコンパレータDPC−1による比較結果とに基づいて、メモリM−1およびM−2のアドレスデータを制御し、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLにより生成された再生クロックの位相と参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックの位相とがゼロとなるように、かつ、データリジェネレータDRG−1が生成する再生試験信号の波形パターンとデータリジェネレータDRG−1が生成する再生試験信号の波形パターンとが同期するようにする。アドレスコントローラAC−1は、同期状態になったと判定すると、ロック信号をコントローラ24に対して出力する。ここで、位相比較器PD−1は、メモリM−1およびM−2のクロック信号用遅延回路DL−2をアナログ的に制御し、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLにより生成された再生クロックの位相と参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックの位相とが完全にゼロになるようにしている。
【0096】
図13は、ステップS212の動作時における波形データを示す図であって、図13(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)の波形データおよび、アンプA−8の出力信号および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックの波形データを示す。図13(b)は、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、再生試験信号(DRG−1の出力)およびメモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データを示す図である。これらの図より、各波形の同期が取れていることがわかる。
【0097】
次いでステップS213において、コントローラ24は、アドレスコントローラAC−1はロック状態か否かを判定する。
【0098】
ステップS208、ステップS211およびステップS213において、コントローラ24が「No」であると判定したときは、何からのエラー状態にあることを意味するので、ステップS214において、コントローラ24はアダプタ装置1の出力ポートOut−6を介してアラーム信号Alarmを出力する。
【0099】
ステップS215では、拡大通過損失信号が生成される。具体的には、コントローラ24は、損失信号圧縮部LSCに対してイネーブル信号T−LSLを出力し、損失信号圧縮部LSCを動作させる。これにより、損失信号圧縮部LSCは次のような動作を行う。まず、ゲートタイミングジェネレータGTG−2が出力するゲーティング信号により、ゲーティング用スイッチGSW−2を制御し、データサンプリング部DSがデータサンプリングすべきサンプリング期間を決定する。データサンプリング部DSは、オールディジタルPLL(参照符号ADP−1)が生成する再生クロックで、ゲーティング用スイッチGSW−2を通過したサンプリング期間中における差動アンプA−9で増幅された差信号の信号レベルをサンプリングする。また、しきい値決定部TLSは、データリジェネレータDRG−1が出力した再生試験信号についてサンプリング期間中における信号レベルがローレベルであるときは、データサンプリング部DSで取得された差動アンプA−9出力信号のサンプリングデータ中で最も高い信号レベルの値の平均値を第1のしきい値として決定し、データリジェネレータDRG−1が出力した再生試験信号についてサンプリング期間中における信号レベルがハイレベルであるときは、データサンプリング部DSで取得された差動アンプA−9出力信号のサンプリングデータ中で最も低い信号レベルの値の平均値を第2のしきい値として決定する。また、信号レベル圧縮部LCは、損失信号圧縮部LSCに入力された差動アンプA−9の出力信号について、第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有するものまたは第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、当該信号レベルを所定の圧縮率で圧縮した上で出力し、第2のしきい値よりも大きく第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、そのまま出力する。また、コントローラ24は、通過損失信号用メモリMEM−2に対しライト信号を出力して、信号レベル圧縮部LCが出力した波形データを、M周期分、通過損失信号用メモリMEM−2に書き込む。書き込み完了後は、コントローラ24は、書き込み完了信号を出力する。通過損失信号用メモリMEM−2は、書き込みが完了すると読み出し状態になる。
【0100】
図14は、ステップS215の動作時におけるサンプリング期間決定時における波形データを示す図であって、図14(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、アンプA−8の出力信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図14(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、および差動アンプA−9の出力信号の波形データを示す図である。ここで、図14(b)において、グレーを施された時間期間は、サンプリング期間を表わす。サンプリング期間として、再生クロック(ADP−1の出力)の立ち下がり直後における再生試験信号(DRG−1の出力)の信号レベルが再生クロックの周期経過後においても変化しないとき、そのときの再生クロックの立ち下がり時刻を開始時刻とし、この開始時刻後において、再生クロックの立ち下がり直後に、再生試験信号の信号レベルが変化したときにおける当該再生クロックの1.5周期前の立ち上がりの時刻を終了時刻とするものを作成する。
【0101】
図15は、ステップS215の動作時におけるしきい値決定時における波形データを示す図であって、図15(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、アンプA−8の出力信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図15(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、および差動アンプA−9の出力信号の波形データを示す図である。ここで、図15(b)において、グレーを施された時間期間は、サンプリング期間を表わす。また、図15(b)において、点線で示された直線が第1のしきい値および第2のしきい値の各信号レベルを表わす。図15(b)に示されるように、第1のしきい値として、データリジェネレータDRG−1が出力した再生試験信号についてサンプリング期間中における信号レベルがローレベルであるときの、データサンプリング部DSで取得されたディジタル信号化された出力端信号中で最も高い信号レベルの値の平均値が設定され、第2のしきい値として、データリジェネレータDRG−1が出力した再生試験信号についてサンプリング期間中における信号レベルがハイレベルであるときの、データサンプリング部DSで取得されたディジタル信号化された出力端信号中で最も低い信号レベルの値の平均値が設定される。
【0102】
図16は、ステップS215の動作時における信号レベル圧縮時における波形データを示す図であって、図16(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、アンプA−8の出力信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図16(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロック、および差動アンプA−9の出力信号の波形データを示す図である。ここで、図16(b)において、グレーを施された時間期間は、サンプリング期間を表わす。また、図16(b)において、点線で示された直線が第1のしきい値および第2のしきい値の各信号レベルを表わす。圧縮率は、差動アンプA−9の出力のピーク値をva1およびva2とし、信号レベル圧縮後の振幅の大きさをvc1およびvc2としたとき、式1で表わされる。
【0103】
【数1】

【0104】
圧縮率はユーザが任意に設定可能である。差動アンプA−9の出力のピーク値va1およびva2に対して、ユーザがある圧縮率を設定したとき、式1から信号レベル圧縮後の振幅の大きさはvc1およびvc2に一義的に決まる。上述のように、評価に適したアイパターンが得られるまで圧縮率を変更して再度アダプタ装置1を動作させてもよい。
【0105】
図17は、拡大反射損失信号の波形データおよび拡大通過損失信号の波形データを示す図であって、図17(a)は、メモリM−2に記憶されたディジタル化された試験信号の波形データ、再生試験信号(DRG−2の出力)、拡大反射損失信号の波形データ、および参照符号ADP−2で示されるオールディジタルPLLの再生クロックを示し、図17(b)は、メモリM−3に記憶されたディジタル化された出力端信号の波形データ、再生試験信号(DRG−1の出力)、参照符号ADP−1で示されるオールディジタルPLLの再生クロックおよび拡大通過損失信号の波形データを示す図である。ここで、図17(b)において、グレーを施された時間期間は、サンプリング期間を表わす。図17(a)に示すように、拡大反射損失信号として、評価対象である伝送路DUTの入力端において反射した信号成分を強調した信号成分を含むが伝送路DUTの出力端において反射した信号成分を含まない信号が生成される。また、図17(b)に示すように、拡大通過損失信号として、伝送路DUTのパッドにより生じた反射損失の信号成分の影響が緩和されかつ伝送路DUTの通過損失の信号成分が強調された信号が生成される。
【0106】
次いで図10のステップS216において、評価信号が生成される。具体的には、コントローラ24は、損失信号圧縮部LSCから上記書き込み完了信号を受信すると、アダプタ装置Out−2もしくはOut−3から出力される評価信号が評価可能であることを示すイネーブル信号を、アダプタ装置1の出力ポートOut−6を介して外部評価装置に向けて出力する。
【0107】
最後に、ステップS217において、コントローラ24は、アダプタ装置In−3に停止信号が入力されたか否かを判定する。停止信号が入力された場合は処理を終了する。
【0108】
次に、上述の本発明の実施例による伝送路評価システムのシミュレーション結果について説明する。シミュレーションにはザイリンクス社の「Xilinx Virtex−4 RoketIO Simulation Model(TXモデル)」を使用した。評価対象の伝送路として、「特性インピーダンスZ0=55Ω」のパッド付伝送路を用いた。また、図5に示す差動アンプA−8のゲインGrを10デシベル、差動アンプA−9のゲインGtを16デシベルとした。
【0109】
図18および19は、本発明の実施例によるアダプタ装置における反射信号抽出部の効果を説明する、評価装置で観測されるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図であって、図18はアダプタ装置を用いない従来技術によるもの、図19は本発明の実施例によるものを示す図である。これらの図からわかるように、従来技術で生じていた伝送路の出力端側に形成されたパッドに生じた反射損失の影響が、本発明の実施例によればなくなり、伝送路の入力端側で生じた反射損失のみが拡大できていることがわかる。ここでGtを「−100dB」としている。
【0110】
図20および21は、本発明の実施例によるアダプタ装置における通過損失圧縮部の効果を説明する、評価装置で観測されるアイダイアグラムのシミュレーション結果を示す図であって、図20は従来技術によるもの、図21は本発明の実施例によるものを示す図である。ここで、最大開口電圧が同じになるようにGt(損失拡大ゲイン)を変えている。なお、Grを「−100dB」としている。これらの図からわかるように、従来技術における立ち上がりおよび立ち下がりで生じた波形歪みが、本発明の実施例では緩和され、パッドのない伝送路の場合の結果に近いものとなっていることがわかる。
【0111】
図19および21に示すように、本発明の実施例によるアダプタ装置により、パッド付伝送路であってもパッドが付いていない伝送路の場合と同じような結果を得ることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、高速シリアル伝送に用いられる伝送路の伝送品質の評価する際に適用することができる。本発明によるアダプタ装置を、従前の評価装置に接続するだけで容易に、パッド付の伝送路の伝送特性についての評価を可能にすることができる。本発明によれば、評価対象がパッドに接続された伝送路であっても、アイダイアグラム、ジッタ量およびビットエラーレートなどいずれの評価項目について、伝送路ごとの明確な差(バラツキ)として現れさせることができるので、伝送路ごとの伝送品質の良し悪しを判別しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0113】
1 アダプタ装置
2 パルスパワージェネレータ
10 ディジタル信号処理部
11 反射損失抽出手段
12 通過損失抽出手段
13 評価信号生成手段
14 第1のアナログディジタル変換器14
15 第1のメモリ
16 第2のアナログディジタル変換器
17 第2のメモリ
18 第3のアナログディジタル変換器
19 第3のメモリ
20 クロック生成手段
21 位相同期手段
22 クロック再生手段
23 データ再生手段
24 コントローラ
31 第1の差増増幅手段
32 第1の生成手段
33 ゲーティング期間決定手段
34 ゲーティング手段
35 反射損失信号用メモリ
41 第2の差増増幅手段
42 第2の生成手段
43 サンプリング期間決定手段
44 しきい値決定手段
45 レベル圧縮手段
46 通過損失信号用メモリ
100 伝送路評価システム
A−1、A−2 アンプ
A−3 プローブアンプ
A−4、A−5、A−6、A−7、A−10 バッファアンプ
A−8、A−9 差動アンプ
AD−1、AD−2、AD−3 アナログディジタル変換器
ADP−1 オールディジタルPLL
CG−1 クロックジェネレータ
D−1 デバイダ
DA−1 ディジタルアナログ変換器
DL−1、DL−2 遅延回路
DRG−1 データリジェネレータ
DS データサンプリング部
DUT 伝送路
E−1、E−2、E−3 イコライザ
GSW−1、GSW−2 ゲーティング用スイッチ
GTG−1 ゲートタイミングジェネレータ
In−1、In−2、In−3 入力ポート
In−data 試験信号の入力ポート
In−clock 基準クロックの入力ポート
LC 信号レベル圧縮部
LP−1、LP−2 ローパスフィルタ
LSC 損失信号圧縮部
M−1、M−2、M−3 メモリ
MEM−1 反射損失信号用メモリ
MEM−2 通過損失信号用メモリ
Out−1、Out−2、Out−3 出力ポート
P1、P2 測定プローブ
PC−1、PC−2 位相反転器
RSE 反射信号抽出部
SU−1 加算器
SW−1a、SW−1b、SW−2a、SW−2b スイッチ
TLS しきい値決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路の入力端へ試験信号を入力したときに前記伝送路の出力端から出力される評価信号に基づき前記伝送路の伝送特性を評価する評価装置に対して接続されるアダプタ装置であって、
前記入力端において検出された入力端信号から、前記入力端における前記試験信号の反射損失を抽出し、前記反射損失を拡大した拡大反射損失信号を生成する反射損失抽出手段と、
前記出力端において検出された出力端信号から、前記伝送路を通過した前記試験信号の通過損失を抽出し、前記通過信号を拡大した拡大通過損失信号を生成する通過損失抽出手段であって、前記拡大通過損失信号のうち、第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有するものまたは前記第1のしきい値よりも小さい第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、当該信号レベルを所定の比率で圧縮した上で出力し、前記第2のしきい値よりも大きく前記第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、そのまま出力する通過損失抽出手段と、
前記試験信号から、前記反射損失抽出手段により出力された前記拡大反射損失信号および前記通過損失抽出手段により出力された前記拡大通過損失信号を減算することで生成される信号を、前記評価装置へ入力される評価信号として生成する評価信号生成手段と、
を備えることを特徴とするアダプタ装置。
【請求項2】
前記試験信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する第1のアナログディジタル変換器と、
前記第1のアナログディジタル変換器によりディジタル信号化された前記試験信号が記憶される第1のメモリと、
前記入力端信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する第2のアナログディジタル変換器と、
前記第2のアナログディジタル変換器によりディジタル信号化された前記入力端信号が記憶される第2のメモリと、
前記出力端信号をアナログ信号からディジタル信号に変換する第3のアナログディジタル変換器と、
前記第3のアナログディジタル変換器によりディジタル信号化された前記出力端信号が記憶される第3のメモリと、
を備える請求項1に記載のアダプタ装置。
【請求項3】
前記試験信号、前記入力端信号および前記出力端信号を、それぞれ前記第1のアナログディジタル変換器、前記第2のアナログディジタル変換器および前記第3のアナログディジタル変換器において同一のタイミングでサンプリングするためのサンプリングクロック、ならびに、前記ディジタル信号化された試験信号、前記ディジタル信号化された入力端信号および前記ディジタル信号化された出力端信号をそれぞれ前記第1のメモリ、前記第2のメモリおよび前記第3のメモリに同一のタイミングで書き込むための書込み用クロック、を生成するクロック生成手段をさらに備える請求項2に記載のアダプタ装置。
【請求項4】
前記第1のメモリから前記ディジタル信号化された試験信号を読み出すタイミングおよび前記第2のメモリから前記ディジタル信号化された入力端信号を読み出すタイミングを、前記第3のメモリから前記ディジタル信号化された出力端信号を読み出すタイミングに合わせるよう調整する位相同期手段をさらに備える請求項3に記載のアダプタ装置。
【請求項5】
前記第3のメモリから読み出された前記ディジタル信号化された出力端信号の位相情報に基づき、再生クロックを生成するクロック再生手段と、
前記再生クロックと前記第3のメモリから読み出された前記ディジタル信号化された出力端信号とに基づき、前記試験信号を前記再生クロックに同期させた再生試験信号を生成するデータ再生手段と、
をさらに備える請求項4に記載のアダプタ装置。
【請求項6】
前記反射損失抽出手段は、
前記位相同期手段により調整されたタイミングで前記第1のメモリから読み出された前記ディジタル信号化された試験信号と、前記位相同期手段により調整されたタイミングで前記第2のメモリから読み出された前記ディジタル信号化された入力端信号と、の差信号を増幅する第1の差動増幅手段と、
前記第1の差動増幅手段により生成された前記増幅された差信号から、前記出力端において反射した信号成分を除去することで、前記拡大反射損失信号を生成する第1の生成手段と、
を有する請求項5に記載のアダプタ装置。
【請求項7】
前記第1の生成手段は、
前記再生クロックの立ち下がり直後における前記再生試験信号の信号レベルが前記再生クロックの少なくとも1周期経過後においても変化しないとき、前記経過後における前記再生クロックの立ち下がり時刻を開始時刻とし、該開始時刻後において、前記再生クロックの立ち下がり直後に、前記再生試験信号の信号レベルが変化したときにおける当該再生クロックの立ち上がりの時刻を終了時刻とするゲーティング期間を決定するゲーティング期間決定手段と、
前記ゲーティング期間中は前記増幅された差信号を出力し、前記ゲーティング期間以外はゼロレベルの信号を出力するゲーティング手段と、
前記ゲーティング手段が出力した信号を前記拡大反射損失信号として記憶する反射損失信号用メモリと、
を有する請求項6に記載のアダプタ装置。
【請求項8】
前記通過損失抽出手段は、
前記位相同期手段により調整されたタイミングで前記第1のメモリから読み出された前記ディジタル信号化された試験信号と、前記第3のメモリから読み出された前記ディジタル信号化された出力端信号と、の差信号を増幅する第2の差動増幅手段と、
前記第2の差動増幅手段により生成された前記増幅された差信号から前記拡大通過損失信号を生成する第2の生成手段と、を有する請求項7に記載のアダプタ装置。
【請求項9】
前記第2の生成手段は、
前記再生クロックの立ち下がり直後における前記再生試験信号の信号レベルが前記再生クロックの少なくとも1周期経過後においても変化しないとき、前記経過後における前記再生クロックの立ち下がり時刻を開始時刻とし、該開始時刻後において、前記再生クロックの立ち下がり直後に、前記再生試験信号の信号レベルが変化したときにおける当該再生クロックの1.5周期前の立ち上がりの時刻を終了時刻とするサンプリング期間を決定するサンプリング期間決定手段と、
前記サンプリング期間中における前記再生試験信号の信号レベルがローレベルであるときは、前記第2の差動増幅手段により増幅された差信号中で最も高い信号レベルの値の平均値を前記第1のしきい値とし、前記サンプリング期間中における前記再生試験信号の信号レベルがハイレベルであるときは、前記第2の差動増幅手段により増幅された差信号中で最も低い信号レベルの値の平均値を前記第2のしきい値とするしきい値決定手段と、
前記拡大通過損失信号のうち、前記第1のしきい値よりも大きい信号レベルを有するものまたは前記第2のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、当該信号レベルを所定の比率で圧縮した上で出力し、前記第2のしきい値よりも大きく前記第1のしきい値よりも小さい信号レベルを有するものについては、そのまま出力するレベル圧縮手段と、
生成された前記拡大通過損失信号を記憶する通過損失信号用メモリと、
を有する請求項8に記載のアダプタ装置。
【請求項10】
前記評価信号生成手段に入力される前記ディジタル信号化された試験信号、前記拡大反射損失信号および前記拡大通過損失信号の同期をとるために、前記反射損失信号用メモリから前記拡大反射損失信号を読み出すタイミングおよび前記通過損失信号用メモリから前記拡大通過損失信号を読み出すタイミングを調整するコントローラを備える請求項8に記載のアダプタ装置。
【請求項11】
前記伝送路は、パッドが接続された伝送路である請求項1〜10のいずれか一項に記載のアダプタ装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のアダプタ装置と、
前記アダプタ装置に接続され、前記試験信号を生成してこれを前記アダプタ装置に入力するパルスパターンジェネレータと、
前記アダプタ装置に接続され、前記アダプタ装置から出力される前記評価信号に基づいて前記伝送路の伝送特性を評価する評価装置と、
を備えることを特徴とする伝送路評価システム。
【請求項13】
前記評価装置は、前記伝送路においてディジタル信号を伝送する際に生じるジッタをアイダイアグラムで表示するオシロスコープもしくはビットエラーレートテスタである請求項12に記載の伝送路評価システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−10195(P2012−10195A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145608(P2010−145608)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】