説明

アダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ及びアダマンタン粉粒体の排出方法

【課題】ラットホールやブリッジの形成を防止し、閉塞現象が生じず、先入れ、先出しを可能としたアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ及びアダマンタン粉粒体の排出方法を提供する。
【解決手段】縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型の円筒からなる貯槽部Aの下端部と、底板9上に間隙13を介して材料供給用の直胴内筒10が設けられ、該直胴円筒10と外筒11の下端を該底板9に接続し、外筒11上端と内筒10上部とを環状板で接続し、該内筒10、外筒11及び底板9とで上記間隙13から供給される材料の通路を形成し、底板部に材料の排出口1を設け、かつ底板9の中心部に突設した直立回転体8に複数の中心回転羽根6を設け、該中心回転羽根6の外端に前記外筒11の内周に沿って回転リング12を設置し、該回転リング12に材料移送用の回転羽根を複数配設してなるサークルフィーダーBの上記直胴内筒10の上端部とを、連設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ及びアダマンタン粉粒体の排出方法に関する。更に詳しくは、縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型(逆テ−パ型ということがある)の円筒からなる貯槽部と該貯槽部の底部にサークルフィーダーを備えたアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ及びアダマンタン粉粒体の排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アダマンタンは、シクロヘキサン環が4個、カゴ型に結合した構造を有し、対称性が高く、安定な化合物である。このようなアダマンタン骨格を有するアダマンタン類は特異な機能を示すことから、潤滑剤、農医薬原料や高機能性工業材料等の各種化学品の原料、中間体として有用であることが知られている。
一般に、アダマンタン粉粒体の製造は、原料である炭素数10以上の三環式飽和炭化水素化合物を異性化する反応工程、反応生成液中のアダマンタンを濃縮する濃縮工程、濃縮されたアダマンタンを析出させる晶析工程、晶析スラリー液からアダマンタンの結晶を分離する固液分離工程、固液分離されたアダマンタンの結晶を洗浄する洗浄工程、洗浄アダマンタンの結晶を乾燥する乾燥工程を経て行われ(例えば、特許文献1参照)、乾燥されたアダマンタン粉粒体は貯蔵サイロに移送されて貯蔵され、必要に応じて出荷される。
従来、アダマンタン粉粒体の貯蔵サイロとしては、直胴部と下部断面を下方にいくにつれて縮小したコニカル部とを有する自然流下式の貯蔵サイロで、該貯蔵サイロ本体の底部に設けられた取り出し配管から取り出し弁、ロータリーフィダー又はテーブルフィーダーを経て取り出す構造のものが使用されている。
しかしながら、アダマンタン粉粒体をかかる貯蔵サイロで貯蔵すると、断面減少を伴わない直胴部にもアダマンタン粉粒体の圧密により、壁方向への圧力が増大し、ブリッジの支持部を形成し、ラットホールやひいてはブリッジを形成し、閉塞現象が生じて貯蔵物の取り出しができなくなるといった問題が生じることが知られている。また、ラットホールやブリッジの形成により、製品の先入れ先出しができないという問題も生じる。
このため、貯蔵サイロの直胴部の外壁部にノッカーやバイブレータを取り付けてブリッジ現象により形成されたアーチやラットホールを破壊して流動性を高めることが行われている。
しかしながら、これらの方法によっても、破壊されたラットホールやブリッジを形成していた塊状物が貯蔵サイロの下部に落下し、取り出し配管を閉塞して排出できなくなるといった現象が生じる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−59483公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような状況下における問題点を解決するためになされたもので、内部にラットホールやブリッジが形成するのを防止し、閉塞現象が生じず、先入れ、先出しを可能としたアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ及びアダマンタン粉粒体の排出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型の円筒からなる貯槽部と該貯槽部の下部にサークルフィーダーを設けた貯蔵サイロが、内部にラットホールやブリッジを形成せず、先入れ、先出しを可能とするアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロになることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型の円筒からなる貯槽部の下端部と、底板上に間隙を介して材料供給用の直胴内筒が設けられ、該直胴円筒と中心線を共有する外筒の下端を該底板に接続、固定し、外筒上端と内筒上部とを環状板で接続し、該内筒、外筒及び底板とで上記間隙から供給される材料の通路を形成し、該材料通路の底板部に材料の排出口を設け、かつ底板の中心部に突設した直立回転体に複数の中心回転羽根を設け、該中心回転羽根の外端に上記外筒の内周に沿って回転リングを設置し、該回転リングに材料移送用の外周回転羽根を底板に沿って上記材料通路に複数配設してなるサークルフィーダーの上記直胴内筒の上端部とを、連設してなることを特徴とするアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(2)上記(1)のサークルフィーダーにおいて、該サークルフィーダーの内筒を、縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型にしたことを特徴とするアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(3)貯槽部の外壁部にノッカーが設けられている上記(1)又は(2)に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(4)貯槽部の内面が研磨処理されたものである上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(5)貯槽部にジャケットが設置されている上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(6)サークルフィーダーの中央回転羽根を取り付けた直立回転体のボス部にアジテーターが設置されている上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(7)サークルフィーダーの中央回転羽根にカッターが設置されている上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(8)サークルフィーダーの内筒下端部に供回り防止冶具が設置されている上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ、
(9)上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の貯蔵サイロを使用し、サークルフィーダーを稼動させることを特徴とするアダマンタン粉粒体の排出方法、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内部にラットホールやブリッジが形成するのを防止し、閉塞現象が生じず、先入れ、先出しを可能としたアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ及びアダマンタン粉粒体の排出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロは、縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型の円筒からなる貯槽部の下端部と、底板上に間隙を介して材料供給用の直胴内筒が設けられ、該直胴円筒と中心線を共有する外筒の下端を該底板に接続、固定し、外筒上端と内筒上部を環状板で接続し、該内筒、外筒及び底板とで上記間隙から供給される材料の通路を形成し、該材料通路の底板部に材料の排出口を設け、かつ底板の中心部に突設した直立回転体に複数の中心回転羽根を設け、該中心回転羽根の外端に前記外筒の内周に沿って回転リングを設置し、該回転リングに材料移送用の外周回転羽根を底板に沿って上記材料通路に複数配設してなるサークルフィーダーの上記直胴内筒の上端部とを、連設してなることを特徴とする。
【0009】
貯蔵サイロからアダマンタンの粉粒体を自重により自然流出させると、流動速度はサイロの中央部で最も速くなり、サイロ内壁面で最も遅くなる。閉塞は、この壁面と粉粒体の付着を支持部として発生するブリッジやラットホールによるものであり、このため本発明では貯槽部の円筒を逆テーパ型にすることにより、粉粒体の付着を阻止してブリッジやラットホールの支持部が形成され難い構造とするものである。
更に、本発明にあっては、サークルフィーダーの内筒を、縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型にしたものが好ましい。
また、本発明にあっては貯槽の外壁部にノッカーを設けることでさらに貯槽内壁面に粉粒体の付着を防止することができるので好ましい。
ノッカー等の排出促進装置としては特に限定されず、エアーノッカー、ブラスターバイブレーター等を例示することができる。設けるノッカーの数や設置位置についてもとくに限定されず、ラットホールやブリッジを形成し易い箇所に、左右対称の位置に1対もしくは複数対設けることが好ましい。
また、貯槽の内面が研磨処理されたものが好ましく、研磨処理としては特に限定されず、電解研磨処理やバフ研磨処理に代表される機械的研磨処理を挙げることができる。電解研磨処理の処理条件に特に制限はなく、電圧は好ましくは1〜50V、より好ましくは3〜20V,電流密度は好ましくは1〜200A/dm2,処理温度は好ましくは10〜150℃、より好ましくは30〜100℃、処理時間は好ましくは1〜30分、より好ましくは3〜20分で処理されたものが好ましい。バフ研磨処理の処理条件も特に制限されず、例えば、直径30cmのウール性ポリッシャーを3000〜4000rpmで回転させる方法を例示できる。表面粗さRzは5μm以下が好ましい。
本発明の貯蔵サイロにあっては、貯蔵するアダマンタン粉粒体が昇華性を有しているために、ある温度以上になると、昇華作用によりアダマンタンの蒸気が発生し、これが冷却されるとアダマンタンの粒子同士が凝結することとなる。これを防止するためにサイロ内の温度をある一定の温度範囲に保つように貯槽部にジャケットを設け、ジャケット内に冷媒を通すことによってサイロ内を冷却することが好ましく、サイロ内の温度としては、−20〜30℃の範囲内の温度に保つことが好ましい。
アダマンタン粉粒体の平均粒径は、通常100〜500μm、好ましくは200〜300μm程度である。
【0010】
しかしながら、アダマンタン粉粒体を長時間貯蔵していると底部のアダマンタン粉粒体が圧縮されて塊状化し、抜き出し配管部を閉塞する現象が見られ、この現象は貯槽部の円筒を逆テーパ型にする等の上記の対策だけでは解決されない。
【0011】
本発明の貯蔵サイロは貯槽の下部にサークルフィーダーが設けられていることを特徴とする。
本発明で使用するサークルフィーダーは、図1及び図2に示すように、底板9上に間隙13を介して貯槽部からのアダマンタン粉粒体供給用の内筒10が設けられ、該内筒と中心線を共有する外筒11の下端を該底板9に接続、固定し、外筒上端と内筒上部とを環状板で接続し、該内筒、外筒及び底板とで上記間隙から供給される材料の通路14を形成し、該材料通路の底板部に材料の排出口1を設け、かつ底板9の中心部に突設した直立回転体8に複数の中心回転羽根6を設け、該中心回転羽根6の外端に上記外筒の内周に沿って設けられた外周回転リング12に取り付けられた複数個の外周回転羽根7が、底板に沿って前記排出材料の通路14を回転する構造を有している。逆テーパ型の貯槽部に充填されたアダマンタン粉粒体は、内筒からフィーダーの底板9上に自然流下式で供給され、底板9の中心部に設けられた直立回転体8に連結した複数の中心回転羽根6の回転によって外周方向へ移送され、間隙13から円周外周部の前記排出材料の通路14へ切り出され、切り出されたアダマンタン粉粒体は、外周リング12に取り付けられた前記外周回転羽根7によって排出口1へ導かれ、排出される。これにより、貯蔵サイロ内のアダマンタン粉粒体の先入れ、先出しが可能となる。排出口の数は1個に限定されず、複数個設けても構わない。また、中央回転羽根6及び外周回転羽根7の回転方向は時計周りでも逆周りでも構わないが、時計周りが好ましい。
流量の調節は内筒の外周にそって設けられた流量調節リング(図示せず)を上下させて、間隙の幅を調節することにより行われる。
このとき、複数の中央回転羽根6の上に落下した塊状物が羽根の上に載った状態のままで羽根とともに供回りするケースがあり、この羽根の上の塊状物を解碎することと、回転羽根による排出性を向上させるために該羽根の内筒よりの部分にカッター3を設けることが好ましい。該カッターの形状はとくに限定されないが、中心部の直立回転体8からみて左右の辺の一辺が他の辺より長い形状をした三面エッジ状のものが好ましい。該カッター3の取り付け角度は特に限定されず、羽根の幅方向に平行に取り付けても、幅方向から少し角度をもたせて取り付けてもよいが、若干角度をもって取り付けたほうか塊状物の解砕と粉粒体の排出性がより一層向上するので好ましい。
更に、本発明にあっては、底板の中心部に設けられた直立回転体8の上部で粉粒体が流動しなくなる現象がみられ、これを防止するために直立回転体8のボス部にアジテーター4を設けることが好ましい。該アジテーターの形状はとくに限定されないが直立回転体のボス部に取り付けることから丸棒状のものが好ましく、その径や長さは適宜検討して決めればよい。
本発明にあっては、貯槽部の円筒内部に存在するアダマンタン粉粒体が凝結して、例えば菓子のプリンのような形状のまま前記中央回転羽6、カッター3及びアジテーター4と供回りしてアダマンタン粉粒体が流動しなくなるといった現象を防止するために、内筒の下端部に内周に沿って数ケ所、図3に示すような突起状の供回り防止冶具を設けることが好ましい。
【実施例】
【0012】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0013】
実施例1
図1に示すような、逆テーパ型の貯槽部Aを有し、その下部にサークルフィーダーBを設けてなる、貯槽上端部の内径が50cm、高さが60cmの貯蔵サイロにアダマンタンの粉粒体(平均粒径200μm)を80kg入れて5日間貯蔵した。ジャケットには温度10℃の水を流してサイロ内部の温度を12℃に保持した。その後、サークルフィーダーを1時間稼動させてアダマンタン粉粒体をサイロより抜き出した。抜き出しは順調で抜き出し量にも変動がなく、スムーズに抜き出しができた。
【0014】
比較例1
直胴部と、下部縦断面を下方にいくにつれて縮小したコニカル部とを有する自然流下式の従来の貯蔵サイロを用いてアダマンタンの粉粒体(平均粒径200μm)を80kg入れて5日間貯蔵したのち、下部から抜き出そうとしたが、コニカル部にブリッジを形成し、抜き出すことはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】サークルフィーダーを底部に有する貯蔵サイロの縦断面概略図である。
【図2】サークルフィーダーの平面概略図である。
【図3】供回り防止冶具を例示した図である。
【符号の説明】
【0016】
1:排出口、2:モーター、3:カッター、4:アジテーター、5:ジャケット、6:中央回転羽根、7:外周回転羽根、8:直立回転体(ボス部)、9:底板、10:内筒、11:外筒、12:外周回転リング、13:間隙、14:排出材料の通路、15:供回り防止冶具
A:逆テーパ型貯槽部、B:サークルフィーダー部、C:冷媒入口、
D:冷媒出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型の円筒からなる貯槽部の下端部と、底板上に間隙を介して材料供給用の直胴内筒が設けられ、該直胴円筒と中心線を共有する外筒の下端を該底板に接続、固定し、外筒上端と内筒上部とを環状板で接続し、該内筒、外筒及び底板とで上記間隙から供給される材料の通路を形成し、該材料通路の底板部に材料の排出口を設け、かつ底板の中心部に突設した直立回転体に複数の中心回転羽根を設け、該中心回転羽根の外端に前記外筒の内周に沿って回転リングを設置し、該回転リングに材料移送用の外周回転羽根を底板に沿って上記材料通路に複数配設してなるサークルフィーダーの上記直胴内筒の上端部とを、連設してなることを特徴とするアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項2】
請求項1のサークルフィーダーにおいて、該サークルフィーダーの内筒を、縦断面を下部に向けて拡径したテーパ型にしたことを特徴とするアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項3】
貯槽部の外壁部にノッカーが設けられている請求項1又は2に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項4】
貯槽部の内面が研磨処理されたものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項5】
貯槽部にジャケットが設置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項6】
サークルフィーダーの中央回転羽根を取り付けた直立回転体のボス部にアジテーターが設置されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のアダマンタン類の貯蔵サイロ。
【請求項7】
サークルフィーダーの中央回転羽根にカッターが設置されている請求項1〜6のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項8】
サークルフィーダーの内筒下端部に供回り防止冶具が設置されている請求項1〜7のいずれか1項に記載のアダマンタン粉粒体の貯蔵サイロ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の貯蔵サイロを使用し、サークルフィーダーを稼動させることを特徴とするアダマンタン粉粒体の排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302374(P2007−302374A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130591(P2006−130591)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(592096111)株式会社ヨシカワ (19)
【Fターム(参考)】