説明

アノード入射面を有する検出器システム、およびその検出器システムを製造する方法

【課題】CTシステムなどの撮像システムのための検出器モジュール、およびその検出器モジュールを製造するための方法を提供する。
【解決手段】検出器モジュールは、第1の面306および第2の面308を有する直接変換センサ302のアレイを含む。直接変換センサ302の第1の面306は、放射線を受け、受けた放射線を対応する電荷信号に変換するピクセルのアレイを形成するセグメント化電極面314を含み、第2の面308は共通電極面を含む。また、検出器モジュールは、1つまたは複数の直接変換センサに結合している読み出し電子回路を含み、読み出し電子回路は放射線から遮蔽されるように構成されている。さらに、検出器モジュールは、1つまたは複数の直接変換センサに第2の面308で結合しているバイアス電圧回路310を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術の実施形態は、概して撮像システムに関し、より詳細には、放射線撮像システムのための検出器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、放射線撮像システムは、患者、または手荷物の1つなどの被験体に向けて放射線を放射する放射線源を含む。放射線ビームは、被験体によって減衰した後、放射線検出器のアレイに当たる。一般に、検出器アレイの所で受けられる放射線ビームの強度は、スキャンされる被験体を通る放射ビームの減衰に依存する。特に、検出器アレイにおけるそれぞれの検出器は、その検出器によって受けられた減衰したビームを示す個別の信号を生成する。
【0003】
そのため、撮像システムにおける検出器アレイでは、例えば、シンチレータとフォトダイオードセンサの組み合わせ、および直接変換センサを含む複数の検出器モジュールが用いられる。これらの検出器モジュールは、X線の光子のエネルギーを、特定の時間にわたって積分され、次に測定され、最終的にデジタル化される電流信号に変換する。一実装形態では、検出器モジュールには、まずX線の光子のエネルギーを電流パルス信号に変換し、次にこれらの個々のパルスを検出する光子計数(PC)センサが含まれる。光子の計数を選択することにより、電流パルスにおける振幅の検出によって、吸収線量における有効なX線スペクトルの情報、エネルギーの識別、および/または、物質の分析能力も提供される。
【0004】
デバイスのサイズが小さくなる一方で集積回路デバイスの密度が増えると、検出器の性能は、製造に用いられる利用可能な相互接続技術およびセンサ材料の制約によってますます影響を受ける。シンチレータとの組み合わせで用いられる従来のフォトセンサでは、一般に放射線入射面の反対側に検出器ピクセルの面が位置している。このような配置は、フォトダイオードから集積化読み出し電子回路への信号の電気的な送信を容易にする。同様に、直接変換センサは、共通電極面およびピクセル電極面を通常有する。電子は、X線の直接変換について対象となる半導体の電荷における多数キャリアである。直接変換センサでは電子の輸送が支配的であるため、ピクセル電極は、一般に共通電極面に対して正の電圧でバイアスされる。したがって、直接変換センサは、共通カソード電極に対して正のバイアス電圧を有するセグメント化アノード電極を有する。セグメント化アノード電極は、対応する読み出し電子回路に検出器パッケージ(detector packaging)を介して送られる電子を収集する。特に、従来のセンサでは、一般に共通カソードが放射線入射面となり、複数のピクセル素子に細分化されうるセグメント化アノードは、放射線入射面の反対側に配置される。上記で説明したように、このような従来の構成は、アノードピクセルから読み出し電子回路への信号の電気的な送信を容易にする。
【0005】
しかし、共通カソードの照射を用いる従来のセンサ構成では、カソード付近のセンサ材料の中でX線の吸収によって生じた電子は、アノードに到達する前にセンサ材料の厚さの端から端まで移動する必要がある。利用可能なセンサ材料の品質における制約によって、センサ材料の不良部分の所で電荷のトラッピング(trapping)が生じる。さらに、このような従来における検出器の構成では、トラップされた電荷の性質によって、内部の電界が変化する。特に、この電界は、カソードから、読み出し電子回路に接続されているアノードまでの、センサ材料の端から端にわたる移動距離の長さによって、多数キャリアに対して小さくなる。特に、電荷の一部は、輸送中にセンサ材料の中でトラップされ、検出器システムにおける電荷収集効率の低下をもたらす。さらに、トラップされる電荷が絶えず変化することによって、検出器の応答に関する安定性と再現性が低下する。したがって、従来における検出器の構成では、高い統計的有意性を要するような様々な撮像操作のための、高いフラックスレート(flux rate)と、高い強度とが提供されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,606,347号明細書
【発明の概要】
【0007】
従来の検出器におけるフラックスレートの制約を克服し、検出器の安定動作を提供する検出器システムを開発することが望ましい。さらに、高い電荷収集効率を提供し、それによって様々な撮像用途で用いる高いフラックスレート、および高い強度のX線における動作に適したセンサを有する検出器システムが必要である。
【0008】
本技術の態様によれば、放射線撮像システムのための検出器モジュールが提示される。検出器モジュールは、第1の面および第2の面を有する直接変換センサのアレイを含む。直接変換センサの第1の面は、放射線を受け、受けた放射線を対応する電荷信号に変換するピクセルのアレイを形成するセグメント化電極面を含み、第2の面は共通電極面を含む。また、検出器モジュールは、1つまたは複数の直接変換センサに第1の面で結合している読み出し電子回路を含み、この読み出し電子回路は放射線から遮蔽されている。さらに、検出器モジュールは、1つまたは複数の直接変換センサに第2の面で結合しているバイアス電圧回路を含む。
【0009】
本技術の態様によれば、放射線撮像システムのための検出器モジュールを製造するための方法が開示される。この方法は、セグメント化電極面を含む第1の面、および共通電極面を含む第2の面を有する直接変換センサのアレイを提供することを含む。さらに、直接変換センサのアレイは、放射線を第1の面で受け、受けた放射線を対応する電荷信号に変換するために配置される。さらに、読み出し電子回路は、フレキシブル相互接続部を介して1つまたは複数の直接変換センサに結合する。加えて、1つまたは複数の直接変換センサの第2の面は、フレキシブル相互接続部または直接電気接続部を介して多層基板に結合し、その多層基板にはスペーサ素子が結合する。
【0010】
本システムの態様によれば、CTシステムが開示される。CTシステムは、スキャンされる被験体を収容する開口部と、少なくとも1つの放射線源とを有する回転可能なガントリー(gantry)を含み、この少なくとも1つの放射線源は、回転可能なガントリーに動作可能に結合しており、被験体に向けて放射線を放射するように構成されている。さらに、CTシステムは、被験体から受けた放射線を検出する検出器モジュールを含む。特に、検出器モジュールは、第1の面および第2の面を有する直接変換センサのアレイを含む。直接変換センサの第1の面は、受けた放射線を検出し、その放射線を対応する電荷信号に変換するセグメント化電極面を含み、第2の面は共通電極面を含む。また、検出器モジュールは、1つまたは複数の直接変換センサに結合している読み出し電子回路を含み、この読み出し電子回路は放射線から遮蔽されている。さらに、検出器モジュールは、1つまたは複数の直接変換センサに第2の面で結合しているバイアス電圧回路を含む。さらに、CTシステムは、検出器モジュールから被験体の少なくとも一部に対応する投影データを取得し、取得した投影データを用いて被験体の少なくとも一部の画像を再構成するコンピューティングデバイスを含むこともできる。
【0011】
本技術のこれらおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、図面全体を通して同じ文字が同じ部分を表す添付図面を参照して以下の詳細な説明が読まれると、さらに良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】CT撮像システムを絵で表した図である。
【図2】図1に示されているCT撮像システムの概略ブロック図である。
【図3】本技術の態様による、検出器モジュールの例示的構成を示す概略図である。
【図4】本技術の態様による、別の検出器モジュールの例示的構成を示す概略図である。
【図5】本技術の態様による、検出器における1つまたは複数のコンポーネントを結合するために用いられるフレキシブル相互接続部の例示的構成に関する概略図である。
【図6】本技術の態様による、検出器モジュールを形成するための方法に関する説明図である。
【図7a】本技術の態様による、検出器アレイにおける複数の検出器モジュールの例示的配置に関する説明図である。
【図7b】本技術の態様による、検出器アレイにおける複数の検出器モジュールの例示的配置に関する説明図である。
【図8a】本技術の態様による、従来の検出器と例示的検出器モジュールとに対する、時間に応じた計数率の比較に関する説明図である。
【図8b】本技術の態様による、従来の検出器と例示的検出器モジュールとに対する、時間に応じた計数率の比較に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、様々な撮像条件のもとで高電界と電荷収集効率の向上とを支える、放射線撮像システムにおける検出器システムが提示される。特に、以下の説明で例示される実施形態では、アノード入射面を含む検出器モジュールを含むコンピュータ断層撮影法(CT)システムなどの撮像システムと、検出器モジュールを製造するための方法とが開示される。本技術の例示的実施形態は、CTシステム用の検出器モジュールの場合において説明されるが、様々な他の撮像用途と、X線投射撮像システム、X線回折システム、マイクロスコープ、デジタルカメラ、および電荷結合デバイスなどの他のシステムとにおいて本検出器モジュールを使用することも考えられる点が理解されるであろう。本システムの様々な実装形態を実施するのに適した例示的環境を、図1を参照して以下のセクションで説明する。
【0014】
図1は、投影データを取得して処理するための例示的CTシステム100を示す。一実施形態では、CTシステム100は、ガントリー102を含む。さらに、ガントリー102は、ガントリー102の反対側に配置された検出器アレイ108に向けてX線の放射線106のビームを射出する少なくとも1つのX線放射線源104を含む。図1は単一のX線放射線源104を示すが、いくつかの実施形態では、異なるビュー角度からの投影データを取得するために、複数のX線ビームを投射する複数の放射線源が用いられてもよい。一実施形態では、X線の放射線源104は、患者に対応する所望の画像ボリュームに相当する投影データを取得できるように、検出器アレイ108に向けてX線の放射線106を投射する。
【0015】
一実施形態では、検出器アレイ108は、第1の面および第2の面を有する直接変換センサのアレイを含む複数の検出器モジュールを含む。特に、センサの第1の面は、X線の放射線106を受け、受けたX線の放射線106を対応する電荷信号に変換するために配置されたセグメント化電極面、すなわちアノード面を含む。例として、第1の面/アノード面は、入射したX線の放射線106を受け、その放射線を対応する電荷信号に変換する素子の2次元アレイにセグメント化することができる。検出器モジュールのアノード入射構成によって、検出器アレイ108の電荷収集効率が向上する。検出器の性能を大きく向上させるこのような検出器モジュールの例示的構成を、図2〜図8を参照してさらに詳しく説明する。
【0016】
図2は、図1のCTシステム100と同様である、投影データを取得して処理するための検出器アレイ108を含む撮像システム200を示す。そのため、検出器アレイ108は、複数の検出器素子202を含み、これらの検出器素子202は共に、対応する投影データを取得するために、患者または手荷物などの被験体204を通過する投射されたX線ビームを感知する。特に、一実施形態では、検出器素子202は、第1の面および第2の面を有する直接変換センサのアレイを含むことができ、このうち第1の面は、入射したX線の放射線106を受ける。したがって、検出器アレイ108は、セルまたは検出器素子202の複数の並びを含むマルチスライス構成で製造することができる。このような構成では、検出器素子202の1つまたは複数の追加の並びは、投影データを取得するために、一般に並列構成で配置することができる。
【0017】
さらに、投影データを取得するためのスキャンの間に、ガントリー102、およびガントリー102に取り付けられたコンポーネントは、回転の中心点206のまわりを回転する。あるいは、被験体204に対する投射角度が時間に応じて変化する実施形態では、取り付けられたコンポーネントは、円弧ではなく一般曲線に沿って動くこともできる。そのため、ガントリー102の回転とX線の放射線源104の動作とは、所望のエネルギーレベルにおける、所望のビュー角度からの投影データを取得するために、撮像システム200の制御機構208によって制御されてもよい。一実施形態では、制御機構208は、X線の放射線源104に電力とタイミング信号を供給するX線コントローラ210、および、スキャン要件に基づいてガントリー102の回転速度と位置を制御するガントリーモータコントローラ212を含むことができる。
【0018】
制御機構208は、検出器素子202から受信したアナログデータをサンプリングし、そのアナログデータを後続の処理のためにデジタル信号に変換するためのデータ取得システム(DAS)214をさらに含むことができる。DAS214によってサンプリングされ、デジタル化されたデータは、コンピューティングデバイス216に送信することができる。コンピューティングデバイス216は、このデータを、ハードディスクドライブ、フロッピー(商標)ディスクドライブ、コンパクトディスク−リード/ライト(CD−R/W)ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、またはソリッドステートストレージデバイスなどのストレージデバイス218に記憶させることができる。
【0019】
さらに、コンピューティングデバイス216は、撮像システム200を動作させるために、DAS214、X線コントローラ210、およびガントリーモータコントローラ212の1つまたは複数に適切な命令とパラメータを提供することができる。それによって、一実施形態では、コンピューティングデバイス216は、オペレータが被験体の画像を観察すること、および/または、オペレータが、キーボード(図示せず)を含みうるオペレータ用コンソール222を介してコマンドおよびスキャンパラメータを指定することを可能にするディスプレイ220に動作可能に結合している。コンピューティングデバイス216は、オペレータ供給の命令およびパラメータ、ならびに/または、システムで定義された命令およびパラメータを用いて、モータ駆動のテーブル226を制御するテーブルモータコントローラ224を動作させる。特に、テーブルモータコントローラ224は、対応する投影データを検出器素子202が取得できるように、ガントリー102の中の、患者などの被験体204を適切に位置決めするためにテーブル226を動かす。
【0020】
上記で説明したように、従来における検出器の構成では、取得される投影データに対応する多数電荷キャリアの長い距離にわたる輸送が必要である。特に、カソードからDAS214などの読み出し電子回路までの、また、電荷をトラップする不良部分を有するセンサ材料の端から端までの電荷キャリアの輸送が起こり、それによって電荷収集効率の損失が生じる。本技術の態様によれば、これらの従来における検出器の構成の欠点は、検出器素子202のアレイにおけるセグメント化アノード面が、入射するX線の放射線106を受けるように検出器素子202を製造することによって回避されうる。X線の放射線106が、アノード入射面付近の直接変換センサの材料に吸収されるため、DAS214に向かう収集される電荷の移動距離が短くなり、それによって、より安定した検出器の動作がもたらされる。
【0021】
DAS214は、収集された電荷に対応するX線データをサンプリングしてデジタル化する。その後、画像再構成器228は、サンプリングされ、デジタル化されたX線データを用いて、高い統計的有意性を要する画像操作などで用いるための高品質画像の高速の再構成を行なう。次に画像再構成器228は、再構成された画像をストレージデバイス218に記憶させるか、または、診断および評価に有用な情報を生み出すために、コンピューティングデバイス216に再構成された画像を送信する。コンピューティングデバイス216は、所望の組織における高品質の再構成画像をオペレータが評価することを可能にするディスプレイ220に、再構成画像と他の有用な情報とを送信することができる。良好な高品質画像を再構成することの助けとなる効率的な電荷収集を可能にする検出器モジュールの例示的構成を、図3を参照してさらに詳しく説明する。
【0022】
図3は、本技術の態様による、図2の検出器素子202と同様の検出器素子のアレイを一般に含む撮像用検出器システム300の例示的構成に関する説明図である。一実施形態では、検出器素子は直接変換センサ302であり、直接変換センサ302の第1の面306と第2の面308との間に配置されたセンサ材料304を含む。さらに、第1の面306は、X線の放射線106を受け、その放射線を対応する電荷信号に変換するピクセル素子のアレイを形成するように細分されたセグメント化電極面を含み、第2の面308は共通電極面を含む。具体的には、第1の面306に入射するX線の放射線106は、直接変換センサ302の材料によって吸収され、それによって電子と正孔のペアが作られる。そのため、直接変換センサ302は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛結晶、および、多結晶コンパクト、ならびに/または、これらの同じ化合物の薄膜層などの材料を含む。いくつかの実施形態では、テルル化水銀カドミウム、沃化第二水銀、臭化タリウム、沃化鉛、酸化鉛、シリコン、ガリウム砒素などの他の半導体を用いることもできる。
【0023】
さらに、直接変換センサ302は、バイアス電圧回路310への電気接続部を含み、この電気接続部は、第2の面308に結合されうる。バイアス電圧回路310は、直接変換センサ302における特定の接触部に向かう電荷の動きを促進するために、第1の面306および第2の面308の少なくとも一方に適切な電圧バイアスを加える。現在のところ考えられる構成では、第1の面306は、第2の面308に対して正の電圧バイアスを有する。したがって、第1の面306は、電子を収集するアノードを含むことができ、第2の面308はカソードを含むことができる。X線の放射線を第2の面/カソード面308で受けるように構成された従来における検出器の構成と異なり、直接変換センサ302は、入射するX線の放射線を第1の面/アノード面306で受ける。上記で説明したように、入射した放射線によって電子と正孔のペアが作られる。一実施形態では、バイアス電圧回路310は、負のバイアス電圧を第2の面/カソード面308に加え、それによって、カソードに正孔を集めさせ、アノードに電子を集めさせる。例示的実装形態では、カソードに加えられるバイアス電圧は、約−100ボルトから約−5000ボルトまでの範囲であってもよく、一方、アノードはグラウンド電位に保たれる。
【0024】
したがって、第1の面/アノード面306において正にバイアスされているピクセルアレイは、電子を収集するために読み出し電子回路312に結合している。そのため、読み出し電子回路312は、関連するデータを収集するために、図2のDAS214などの1つまたは複数の取得システム、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または、他の好適な処理システムを含むことができる。特に、読み出し電子回路312は、入射するX線の位置に関する空間マッピングを得るために、第1の面/セグメント化アノード面306に結合している。そのため、第1の面/セグメント化アノード面306は、それぞれが読み出し電子回路312の対応するチャネルに接続されている複数のアノードパッド314を含むことができる。
【0025】
一般に、X線は、ランベルト−ベールの法則に従って入射位置の近くに吸収される。したがって、本構成では、読み出し電子回路312に送られる多数キャリアであることによって収集される電荷は、従来における検出器のシステムのようにセンサ材料304の厚さの端から端までの全ての移動に比べて、実質的に短い距離を移動する。例示的実装形態では、センサ材料304の厚さは、約0.1mmから約20mmでもよい。このように、直接変換センサ302のアノード照射構成によって、セグメント化アノードパッド314への多数キャリアの輸送距離の短さを保ちつつ、他の方法では薄い材料を貫通して伝わってしまう高エネルギーの光子を有する放射線を検出するために厚いセンサ材料304を使用することが可能となる。さらに、トラップされた任意の正孔は、センサ材料304の深い部分にある対応する電子の位置における電界を増加させうる。電界の増加は、セグメント化アノードパッド314に急速に移動する電子の傾向をさらに高め、それによって、直接変換センサ302の電子収集効率が著しく向上する。加えて、このように速められた電子の輸送により電子のトラッピングの機会がさらに減り、それによって、より安定した検出器の動作がもたらされる。例示的実装形態の1つでは、アノード入射面を有する直接変換センサは、カソード入射面を有する従来における検出器の構成と比べて、電荷収集効率において約300%の改善を示した。
【0026】
このように、X線の放射線をアノード面で受ける直接変換センサ302を構成することによって、様々な撮像用途で有用となりうる、はるかに高いフラックスレート、および、はるかに高い強度のX線の使用が可能となる。例として、直接変換センサ302のアノード入射構成によって、約1千万カウント/秒/ミリ平方メートルから約10億カウント/秒/ミリ平方メートルにわたるフラックスレートの使用が可能となりうる。しかし、高フラックスレートおよび高強度のX線は、読み出し電子回路312に対して放射線損傷を引き起こす恐れがある。したがって、一実施形態では、読み出し電子回路312は、X線から遮蔽されるように、センサアレイにおいて隣接する直接変換センサ302の裏側に配置される。
【0027】
さらに、いくつかの実施形態では、読み出し電子回路312は、放射線の透過力が大きく作られ、アノードパッド314に直接的に結合している。このような放射線の透過力が大きい構成は、例えば、X線の相互作用の可能性を低減する小規模のゲートサイズと薄い厚さにおける使用を可能にしながら、宇宙用途に特化しているIC製造工場でASICチップとして製造されうる。残念なことに、このような構成は、いくつかの場合では性能の低さをもたらす恐れがある。したがって、一実施形態では、読み出し電子回路312は、入射するX線の放射線106から読み出し電子回路312が遮蔽されるように、重なり合うように配置されたセンサアレイにおいて隣接する直接変換センサの裏側に配置される。入射する放射線から遮蔽され、適切に配置された読み出し電子回路を有する直接変換センサの例示的構成を、図4を参照してさらに詳しく説明する。
【0028】
ここで図4を参照すると、対応する読み出し電子回路に対する放射線損傷を防ぐために適切に配置された複数の直接変換センサを有する検出器モジュール400の例示的構成が示されている。特に、図4に示されている構成では、それぞれが第1の面および第2の面を有する直接変換センサ402ならびに404が重なり合うように配置されたアレイを含む検出器モジュール400が示されている。例として、直接変換センサ404は、第1の面406および第2の面408を有する。一実施形態では、第1の面406は、X線の放射線106を受け、その放射線を対応する電荷信号に変換するように構成されたピクセルのアレイを形成するセグメント化電極面を含み、第2の面408は共通電極面を含む。さらに、第1の面406は、第2の面に対して正の電圧バイアスに保つことができる。したがって、第1の面406は、電子を収集するアノードを含むことができ、第2の面408はカソードを含むことができる。
【0029】
図4は、直接変換センサ402および404の2つだけを示しているが、検出器モジュール400は、入射するX線の放射線106を、対応する第1の面すなわちセグメント化アノード面で受けるように構成された多数のセンサを含むことができる。特に、一実施形態では、センサをタイルのように並べることは、それぞれのこけら板(shingle)が前のこけら板の一部を覆っているこけら板によってなぞらえることができる。このように、直接変換センサ402および404は、センサアレイにおける少なくとも1つの他の直接変換センサの読み出し電子回路を遮蔽するように適切に配置することができる。そのため、読み出し電子回路は、センサアレイにおける1つまたは複数のセンサに接続することができる。例として、図4は、直接変換センサ404に接続された読み出し電子回路410を示す。特に、直接変換センサ404に対応するアノードパッドは、例えば、フレキシブル相互接続部412または直接電気接続部を用いて読み出し電子回路410に接続することができる。
【0030】
さらに、一実施形態では、読み出し電子回路410は、入射するX線の放射線106から遮蔽されるように、センサアレイにおける近傍の、または隣接する直接変換センサ404の裏側に配置される。さらに、読み出し電子回路410は、同じ平面に配置することができ、また、センサアレイにおいて対応する直接変換センサ404の一方の面に対して配置することができる。特に、読み出し電子回路410は、図1の放射線源104などのX線源から受けるX線照射の場から外れるように配置される。
【0031】
いくつかの実施形態では、直接変換センサ402の読み出し電子回路が後続または隣接する直接変換センサ404によって遮蔽されるように、直接変換センサ402および404を、センサアレイにおいてある角度で位置決めすることによって、すなわち、ある角度で部分的に重なり合うように配置することによって、入射するX線の放射線106からのさらなる保護を実現することができる。一例では、直接変換センサ402の読み出し電子回路410は、近傍の直接変換センサ404とスペーサ素子416の間、または、近傍の直接変換センサ404と検出器ボード418の間に配置される。同様に、直接変換センサ404の読み出し電子回路410を遮蔽するために、後続の直接変換センサ(図示せず)をある角度で配置することができ、その後も同様である。理解しやすいように、直接変換センサ404を参照して、検出器モジュール400における特定要素の説明を以降のセクションで開示する。しかし、開示される要素は、センサアレイに配置される他の直接変換センサの構成にも適用可能でありうる。
【0032】
さらに、一実施形態では、直接変換センサ404の第1の面、すなわちセグメント化アノード面406は、フレキシブル相互接続部412を介して対応する読み出し電子回路410に結合している。例として、直接変換センサ404は、フレキシブル相互接続部412にはんだ付けすることができ、または、レーザーボンディングの方法によって取り付けることができる。さらに、直接変換センサ404の第2の面408は、多層基板414に接触していてもよく、かつ/または、電子的に結合していてもよい。本明細書で用いられる場合、「フレキシブル」という用語は、フレキシブル相互接続部412が配置される表面の外形にフレキシブル相互接続部412が沿うように、直接変換センサ404および/または多層基板414の1つまたは複数の表面のまわりに配置されるフレキシブル相互接続部412の能力を指す。そのため、フレキシブル相互接続部412は、Kapton(登録商標)、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、Ultem(登録商標)ポリエーテルイミド、フレキシブルプリント回路、またはこれらの組み合わせなどの材料を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、フレキシブル相互接続部412は、フレキシブル相互接続部412の特定の表面に配置された複数の電気接触素子または電気接触点(図示せず)をさらに含むことができる。特に、複数の電気接触素子は、直接変換センサ404の対応する電気接触点を、多層基板414の対応する接触点に結合するように構成することができ、それによって、結合した素子どうしの間の電気経路が設けられる。例として、フレキシブル相互接続部412は、直接変換センサ404の第1の面406におけるアノードパッド(図4では示さず)を、対応する読み出し電子回路410の読み出しチャネルに個々に結合することができる。したがって、フレキシブル相互接続部412は、フレキシブル相互接続部412の少なくとも対応する上部面と底部面に、金属はんだのトレース、ナノワイヤー、導電ポリマーのリボン、またはこれらの組み合わせなどの導電素子をさらに含むことができる。特に、フレキシブル相互接続部412は、直接変換センサ404と多層基板414との間の電気経路を設けるために導電素子を含むことができる。このように、フレキシブル相互接続部412は、従来の穴開けの手法(drilling approach)により要求される機械的強度の問題によって制約されることなく、応力、歪み、および/もしくは許容誤差などの所望の機械的特性ならびに/または電気的特性の両方を提供するための、多層基板414の材料選択におけるフレキシビリティを可能にする。
【0034】
したがって、多層基板414は、ガラス、セラミック、プラスチック、金属、紙、ポリマー、複合材料、またはこれらの組み合わせなどの材料を含む。特に、一実施形態では、多層基板414は、検出器モジュール400の他のコンポーネントから高電圧(カソードにおいて約600V)を絶縁する多層のセラミックである。そのため、セラミックの多層基板414は、導電トレースまたはワイヤー接続部を介して直接変換センサ404のカソード面/第2の面408に結合している非電気的な、または機械的なセラミック回路ボードでもよい。あるいは、セラミックの多層基板414は、電気接続部分を固有に含むこともできる。
【0035】
本技術の態様によれば、セラミックの多層基板414は、少なくとも1つのスペーサ素子416にさらに結合している。特に、スペーサ素子416は、2つ以上の検出器モジュールを検出器ボード418につないでいる。そのため、スペーサ素子416は、位置合わせピン、ねじ、噛み合い式の留め具、キー/スロット構造、接着剤、および/または、他の好適なデバイスなどの固定機構420を用いて検出器ボード418に結合されうる。一実施形態では、スペーサ素子416は、センサアレイにおいて直接変換センサ402および404を所望の角度でそろえるために配置された楔形スペーサである。具体的には、スペーサ素子416は、直接変換センサ402の読み出し電子回路(図示せず)がセンサアレイにおける後続の直接変換センサ404によって遮蔽されるよう、直接変換センサ402および404をそろえるように構成されている。
【0036】
このように、スペーサ素子416は、検出器ボード418の機械的な支持体となる。さらに、スペーサ素子416は、検出器の表面が湾曲した形状である必要のある、幅の広いコーンビームの設計におけるファン角(fan angle)に対応するようにも適合されうる。例として、楔形のスペーサ素子は、図2の検出器108などの湾曲した検出器の曲線に対応することができる。しかし、いくつかの実施形態では、スペーサ素子416は、入射したX線の放射線106によって熱くなる場合がある直接変換センサ404および/または多層基板414を冷却するための温度スタビライザーとして付加的に機能することができる。そのため、スペーサ素子416は、高分子材料、金属、セラミック材料、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0037】
一実施形態では、フレキシブル相互接続部412は、直接変換センサ404の第1の面406に配置されたアノードパッドに結合しており、第2の面408に配置されたカソードは、多層基板414に結合している。さらに多層基板414は、スペーサ素子416に結合している。特に、直接変換センサ404、フレキシブル相互接続部412、多層基板414、およびスペーサ素子416は共に、撮像システム用の検出器モジュール400のフィールド交換可能ユニットを形成することができる。このような複数のフィールド交換可能ユニットは、広い範囲を覆うために、例えば、検出器システムにおける噛み合い式のスロットによってまとめることができる。同様に、このようなフィールド交換可能ユニットは、検出器の構成を変更するために容易に分解することができる。そのため、フィールド交換可能ユニットを1つまたは複数の検出器ボードに対して結合および/または分離するために、コネクタおよび/またはフレキシブルケーブル422を用いることができ、それによって、検出器ボード418に対する検出器モジュール400の交換可能性が助長される。さらに、フレキシブルケーブル422によって、異なる検出器ボードに配置された検出器モジュール間の電力およびデジタル通信信号の送信が可能となりうる。
【0038】
検出器モジュール400に関して現在のところ考えられる構成によって、入射するX線の放射線106が第1の面406で受けられる。しかし、従来の実装手法では、検出器モジュール400における吸収線量の効率を低下させうる光子の著しい損失につながる、実装部分の端から端までの、入射したX線の放射線106の輸送が必要となる場合がある。そのため、検出器モジュール400の電荷収集効率を維持するために、1つまたは複数の特定の実装構成を用いることができる。
【0039】
例として、図5は、検出器モジュール400における1つまたは複数のコンポーネントを結合するために用いられる、図4のフレキシブル相互接続部412などのフレキシブル相互接続部の例示的構成を示す。図5は、理解しやすいように数個の検出器コンポーネントだけを示しているが、検出器モジュール500は、図4に示されているコンポーネントなどの他のコンポーネントを含むことができる。それにより、一実施形態では、フレキシブル相互接続部502は、直接変換センサ506の第1の面504を、対応する読み出し電子回路508に結合するように構成されている。
【0040】
直接変換器センサ404および読み出し電子回路410が同じ平面にある、図4に示されている実施形態と異なり、図5のフレキシブル相互接続部502は、読み出し電子回路508を、対応する直接変換センサ506に対して実質的に垂直な平面に配置するように構成されている。特に、フレキシブル相互接続部502の一部は、直接変換センサ506の第1の面504に沿って配置されており、フレキシブル相互接続部502の別の部分は、約90度曲がっており、直接変換センサ506に対応する検出器ボード510に沿って配置されている。図6に示されているフレキシブル相互接続部の構成は、一般に「L」構成と呼ばれることがある。
【0041】
さらに、検出器モジュール500は、水平な平面に配置された直接変換センサ506を支える平らな楔スペーサなどのスペーサ素子512を用いることができる。検出器モジュール500の電荷収集効率を著しく向上させるために、図5に示されている実施形態では、水平面に沿う第1の面504におけるアノードパッドが、垂直面に配置された読み出し電子回路508のアナログ入力チャネルに有利に結合している。具体的には、「L」構成によって、入射するX線の放射線106から読み出し電子回路508を遮蔽することも行ないつつ、読み出し電子回路508に向かう、第1の面504に入射したX線の放射線106の移動距離がはるかに小さくなることが確実なものとなる。
【0042】
図5に示されている実施形態はフレキシブル相互接続部502の「L」構成を示すが、フレキシブル相互接続部502の可撓性のある性質は、いくつかの代替実施形態にも役立つ。例として、「U」構成では、フレキシブル相互接続部502は、検出器モジュール500の2つの面を包む。同様に、「T」構成では、フレキシブル相互接続部502の第1の部分は第1の面504を包み、フレキシブル相互接続部502の他の2つの部分は、直接変換センサ506の中央と重なる。特に、フレキシブル相互接続部502の小さい部分を使用することによって、電荷収集効率と、高密度の相互接続部分を有するフレキシブル相互接続部502の製造可能性とがさらに向上する。
【0043】
図6に目を向けると、本技術のいくつかの態様による、検出器モジュールを製造するための例示的方法を示すフローチャート600が提示されている。さらに、図6では、この例示的方法は、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実施されうる動作を示す、論理にかなったフローチャートにおけるブロックの集まりとして示されている。様々な動作は、例示的方法における異なるフェーズにおいて概して行なわれる機能を示すブロックに図示されている。
【0044】
ソフトウェアの場合には、ブロックは、1つまたは複数の処理用サブシステムによって実行されるときに、列挙された操作を行なうコンピュータの命令を表す。例示的方法が説明される順序は、限定として解釈されるようには考えられておらず、本明細書で開示される例示的方法、または等価である代替方法を実施するために、説明される任意数のブロックが任意の順序で組み合わせられてもよい。さらに、本明細書で説明される主題の主旨および範囲から逸脱することなく、例示的方法から特定のブロックが削除されてもよく、また、追加された機能を有する追加ブロックが加えられてもよい。説明を目的として、図3〜図5の要素を参照して例示的方法を説明する。
【0045】
ステップ602では、セグメント化電極面を含む第1の面と、共通電極面を含む第2の面とを有する、図4の直接変換センサ402および404などの直接変換センサのアレイが提供される。次にステップ604では、X線を第1の面で受け、受けたX線を対応する電荷信号に変換するために、直接変換センサのアレイが配置される。そのため、直接変換センサの第1の面はセグメント化電極面に対応し、直接変換センサの第2の面は共通電極面に対応する。さらに、第1の面は、第2の面に対して正の電圧バイアスを有する。したがって、一実施形態では、第1の面はアノード面を含み、第2の面はカソード面を含む。
【0046】
さらにステップ606では、図4の読み出し電子回路410などの読み出し電子回路が、フレキシブル相互接続部412などのフレキシブル相互接続部を介して第1の面に結合する。さらに、ステップ608では、第2の面が、例えばフレキシブル相互接続部または直接電気接続部を介して、図4の多層基板414などの多層基板に結合する。特に、一実施形態では、センサアレイにおける直接変換センサは、センサアレイにおける直接変換センサの読み出し電子回路が後続の直接変換センサによって遮蔽されるように、多層基板上にある角度で配置される。別の実施形態では、読み出し電子回路は、X線から遮蔽されるように、センサアレイにおける対応する直接変換センサの裏側に配置される。あるいは、読み出し電子回路は、同じ平面に配置することができ、また、対応する直接変換センサの一方の面に対して配置することができる。いくつかの他の実施形態では、読み出し電子回路は、センサアレイにおける対応する直接変換センサと共に、「L」構成、「U」構成、または「T」構成で配置される。
【0047】
これらの構成のうちの1つまたは複数の構成では、フレキシブル相互接続部は、直接変換センサの電気接触点を、多層基板の対応する点に結合し、それによって、結合した素子どうしの間に電気経路が設けられる。特に、フレキシブル相互接続部は、直接変換センサの第1の面におけるアノードパッドを、対応する読み出し電子回路の読み出しチャネルに個々に結合することができる。このような結合によって、読み出し電子回路に向かう、収集される電荷の移動距離が小さくなり、それによって、入射した放射線から読み出し電子回路が遮蔽されながらも、電荷収集効率が向上する。
【0048】
さらに、ステップ610では、多層基板が、図4のスペーサ素子416などのスペーサ素子に結合する。特に、スペーサ素子は、2つ以上の検出器モジュールを検出器ボードにつなぐ。したがって、スペーサ素子は、アノード面に入射するX線の放射線を受けることによって収集される電荷の移動距離を小さくするためだけでなく、入射する放射線から読み出し電子回路を遮蔽しうるために、直接変換センサを適切に位置決めするための機械的な支持体となる。しかし、いくつかの実施形態では、スペーサ素子は、入射したX線の放射線によって熱くなる場合がある直接変換センサおよび/または多層基板を冷却するための温度スタビライザーとして付加的に機能することができる。
【0049】
次に、このように製造された検出器モジュールは、広い範囲を覆うために決められたパターンで配置される。特に、図7(a)および図7(b)は、検出器アレイにおける複数の検出器モジュールの例示的配置700を示す。例として、ファンビームまたはコーンビームのCT撮像システムでは、検出器モジュールは、広い範囲を覆うために平面アレイ、ステップアレイ、または湾曲アレイ状に配置することができる。一般に、図2の放射線源104などの放射線源からX線ビームが放射状に放射されるため、検出器素子をX線ビームにそろえて配置するために、検出器のアレイ表面における曲率が用いられる。例えば、図7(a)に示されている検出器モジュール704の配置702では、中心部706から離れる方に重なり合うように配置されている検出器モジュールのアレイが例示されている。しかし、図7(b)に示されている構成708では、同じ方向に重なり合うように配置されている検出器モジュール710のアレイが例示されている。
【0050】
図3〜図7を参照して説明された検出器モジュールに関して現在のところ考えられる構成によって、従来の検出器モジュールよりはるかに高い電荷収集効率がもたらされる。従来における検出器の構成と、現在のところ考えられる検出器の構成とに対する、時間に対する計数率の比較を、図8(a)および図8(b)に関して提示することができる。具体的には、図8(a)および図8(b)は、従来における検出器の構成と、図3に示されている例示的なアノード照射構成とに対する、時間に対する計数率の比較に関する図式表現800を示す。
【0051】
特に、図8(a)は、従来における検出器の構成に対する、時間に対する計数率のグラフを示し、図8(b)は、例示的なアノード照射構成に対する、時間に対する計数率のグラフ表現である。図8(a)に示されているように、従来における検出器の構成では、カソード照射に関係する電荷のトラッピングによって、時間において計数が低下する不安定性が示される。計数が低下するこの不安定性は、参照数字802によって全体的に表されている。しかし、図8(b)に示されている曲線804によって図示されているように、アノード照射構成に対応している計数率は、時間にわたって実質的に安定している。このように、X線の放射線をアノード面で受けるように直接変換センサを構成することによって、様々な撮像用途で必要となる、はるかに高いフラックスレート、および、はるかに高い強度のX線の使用が可能となる。
【0052】
上記で開示された検出器システム、およびその検出器システムを製造する方法では、入射するX線の放射線を受けるように配置され、第2の共通電極面に対して正の電圧バイアスを有するセグメント化電極面を含む検出器モジュールが説明されている。入射するX線の放射線をセグメント化電極面/アノード面で受けることによって、読み出し電子回路に向かう、収集される電荷の移動距離が小さくなり、それによって、センサにおける電荷のトラッピングによる損失が最小となる。さらに、アノード入射面を用いることによって達成される向上した電荷収集効率を保ちつつ、入射した放射線から読み出し電子回路を効果的に遮蔽する、様々な相互接続構成およびスペーサ構成が提示された。
【0053】
本技術の例示的実施形態は、CTシステム用の検出器モジュールの場合において説明されているが、様々な他の撮像用途および他の撮像システムにおいて本検出器モジュールを使用することも考えられる点が理解されるであろう。これらのシステムのいくつかには、X線投射撮影法、蛍光透視法および断層撮影法、陽電子放出断層撮影法(PET)のスキャナー、複数ソースの撮像システム、複数検出器の撮像システム、単光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)のスキャナー、マイクロスコープ、デジタルカメラ、電荷結合デバイス、またはこれらの組み合わせが含まれうる。
【0054】
本発明における特定の特徴だけが本明細書において例示され、また説明されたが、当業者には多くの改変および変更が思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の本来の趣旨に入るこのような全ての改変および変更を含むように考えられていることが理解されることになる。
【符号の説明】
【0055】
100 CTシステム
102 ガントリー
104 放射線源
106 X線の放射線
108 検出器アレイ
200 撮像システム
202 検出器素子
204 被験体
206 回転の中心点
208 制御機構
210 X線コントローラ
212 ガントリーモータコントローラ
214 データ取得システム
216 コンピューティングデバイス
218 ストレージデバイス
220 ディスプレイ
222 コンソール
224 コンベアシステム/テーブルモータコントローラ
226 コンベアシステム/テーブル
228 画像再構成器
300 撮像用検出器システム
302 直接変換センサ
304 センサ材料
306 直接変換センサ302の第1の面
308 直接変換センサ302の第2の面
310 バイアス電圧回路
312 読み出し電子回路
314 アノードパッド
400 検出器モジュール
402 直接変換センサ
404 直接変換センサ
406 直接変換センサ404の第1の面
408 直接変換センサ404の第2の面
410 読み出し電子回路
412 フレキシブル相互接続部
414 多層基板
416 スペーサ素子
418 検出器ボード
420 固定機構
422 フレキシブルケーブル
500 検出器モジュール
502 フレキシブル相互接続部
504 第1の面
506 直接変換センサ
508 読み出し電子回路
510 検出器ボード
512 スペーサ素子
600 検出器モジュールを形成するための例示的方法を示すフローチャート
602−610 検出器モジュールを形成するための例示的方法のステップ
700 検出器アレイにおける複数の検出器モジュールの例示的配置700
702 検出器モジュール(704)の配置
704 検出器モジュール
706 検出器モジュール704の配置702における中心部
708 検出器モジュール(710)の配置
710 検出器モジュール
800 従来における検出器の構成と、図3に示されている例示的なアノード照射構成とに対する、時間に対する計数率の比較に関する図式表現800
802 従来の検出器の構成における、カソード照射に関係する電荷のトラッピングによって、時間において計数が低下する不安定性
804 本願で開示されているアノード照射構成に対応している安定な計数率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有する直接変換センサのアレイであって、前記第1の面が、放射線を受け、受けた前記放射線を対応する電荷信号に変換するピクセルのアレイを形成するセグメント化電極面を含み、前記第2の面が共通電極面を含む、直接変換センサのアレイと、
1つまたは複数の前記直接変換センサに前記第1の面で結合しており、前記放射線から遮蔽されるように構成された読み出し電子回路と、
1つまたは複数の前記直接変換センサに前記第2の面で結合しているバイアス電圧回路と
を含む、放射線撮像システムのための検出器モジュール。
【請求項2】
前記第1の面が、電子を収集するアノードを含み、前記第2の面がカソードを含む、請求項1記載の検出器モジュール。
【請求項3】
前記1つまたは複数の直接変換センサに結合している前記読み出し電子回路が、隣接する直接変換センサによって遮蔽されるように、前記1つまたは複数の直接変換センサが、ある角度で配置されている、請求項1記載の検出器モジュール。
【請求項4】
前記1つまたは複数の直接変換センサの前記第1の面が、フレキシブル相互接続部を介して前記読み出し電子回路に結合している、請求項1記載の検出器モジュール。
【請求項5】
前記1つまたは複数の直接変換センサの前記第2の面が、前記フレキシブル相互接続部または直接電気接続部を介して多層基板に結合しており、前記多層基板がスペーサ素子にさらに結合している、請求項4記載の検出器モジュール。
【請求項6】
前記フレキシブル相互接続部が、前記1つまたは複数の直接変換センサの前記第1の面を、前記1つまたは複数の直接変換センサに対して実質的に垂直に配置された前記読み出し電子回路に結合するように構成されている、請求項4記載の検出器モジュール。
【請求項7】
前記フレキシブル相互接続部が、前記1つまたは複数の直接変換センサの前記第1の面および前記第2の面を包むように構成されている、請求項4記載の検出器モジュール。
【請求項8】
前記フレキシブル相互接続部の2つの部分が前記1つまたは複数の直接変換センサの中央に重なるように前記フレキシブル相互接続部が構成されている、請求項4記載の検出器モジュール。
【請求項9】
前記放射線撮像システムが、所望の計数率を実現するために多数キャリアの短い移動距離を提供する光子計数システムである、請求項1記載の検出器モジュール。
【請求項10】
セグメント化電極面を含む第1の面、および共通電極面を含む第2の面を有する直接変換センサのアレイを提供するステップと、
放射線を前記第1の面で受け、受けた前記放射線を対応する電荷信号に変換するために、直接変換センサのアレイを配置するステップと、
フレキシブル相互接続部を介して、1つまたは複数の前記直接変換センサの前記第1の面に読み出し電子回路を結合するステップと、
前記フレキシブル相互接続部または直接電気接続部を介して、前記1つまたは複数の直接変換センサの前記第2の面を多層基板に結合するステップと、
前記多層基板にスペーサ素子を結合するステップと
を含む、撮像システムのための検出器モジュールを製造するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2012−198195(P2012−198195A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−17638(P2012−17638)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】