説明

アマチャヅル抽出物の製造方法、及びその代謝疾患改善治療用アマチャヅル抽出物、代謝疾患改善用機能食品、代謝疾患改善治療用薬理組成物

【課題】アマチャヅル抽出物から新規化合物を分離し、それを用いて有効な代謝疾患改善治療用アマチャヅル抽出物、代謝疾患改善用機能食品、代謝疾患改善治療用薬理組成物を提供すること。
【解決手段】アマチャヅル葉エタノール抽出物濃縮液に、40〜125℃、1.2〜1100気圧の高温高圧または高圧反応を、0.1〜24時間処理して、アマチャヅル葉抽出物濃縮液の乾燥粉末におけるダムリンA含有量を0.7〜7%(w/w)、ダムリンBの含有量を0.5〜6%(w/w)に増加させて、アマチャヅル抽出物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アマチャヅル抽出物を高温・高圧で処理して、AMPK活性化有効成分であるダムリンA及びダムリンBの含有量を増加させた新たな組成のアマチャヅル抽出物を製造する方法、並びに、それを用いた代謝疾患改善治療用アマチャヅル抽出物、代謝疾患改善用機能食品、代謝疾患改善治療用薬理組成物に関する。
【0002】
また、本発明は、ダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新たな組成の新規アマチャヅル抽出物を、肥満、糖尿、高脂血症などを含む代謝疾患の効率的な治療及び改善用途に使用する手段に関する。
【背景技術】
【0003】
AMPK(AMP-activated protein kinase)はα、β、γのサブユニットで構成されたヘテロトリマー(heterotrimer)たんぱく質であって、主として筋肉細胞にたくさん存在し、その他にも脳、心臓、脂肪組織、及び肝にも存在する酵素であって、AMPKの作用は細胞内でエネルギー準位を感知する重要センサであり、またこの結果に従い、食欲調節、体重調節、血糖調節、及び血中脂質代謝調節などに核心役目をする。
【0004】
AMPKの活性化は、強度の高い運動や長期間飢えた時に現れるATP消耗に従うAMP濃度の増加によりAMPがAMPKのγ−サブユニットに結合して起こる。実質的な活性化はLKB1またはCaMKKという上位燐酸化酵素により、AMPK αサブユニットのスレオニン(threonine)(Thr)−172残基に対する燐酸化を通じて現れるようになる。
【0005】
燐酸化形態のAMPKは、ATPを消費する生化学反応である脂肪酸及びコレステロールの合成を抑制するようになり、反対にATPを生成する脂肪酸のベータ酸化(β-oxidation)と過程と、解糖作用(glycolysis)を活性化させるようになる。それだけでなく、細胞膜の葡萄糖吸収通路であるグルコーストランスポーター4(glucose transporter 4、GLUT4)の量を増加させるようになる。
一方、AMPKの活性化は、インスリンの作用に従うPI3K信号伝達機作に関わらず、細胞内の葡萄糖吸収通路であるGLUT4の細胞膜移動を増加させるようになる。また、AMPKが燐酸化により活性化されれば、更に他の下位たんぱく質であるコレステロール合成の核心酵素であるHMG−CoA還元酵素(hydroxymethylglutaryl -CoA reductase)に対する燐酸化が起こる。この結果、HMG−CoA還元酵素の不活性化が起こるようになって、コレステロール合成が低下するので、血中コレステロールが減少する。
【0006】
また、燐酸化が起こって活性化された形態のAMPK酵素は、その下位作用たんぱく質として脂肪酸合成の核心酵素であるACC(acetyl-CoA carboxylase)のセリン(Ser)−79残基に対する燐酸化を起こして、このACC酵素の活性を抑制するようになる。この結果、AMPKの活性化により脂肪酸の合成に核心代謝産物であるマロニル−CoA(malonyl-CoA)の生成が低下して脂肪酸の合成が抑制されるようになる。
AMPK活性化によりマロニル−CoAの減少が起これば、ミトコンドリア内に脂肪酸であるロングチェーンアシル−CoA(long chain acyl-CoA)が流入してベータ酸化が促進される。高濃度のマロニル−CoA存在状態ではロングチェーンアシル−CoAをミトコンドリアに伝達するCPT1(carnitine palmitoyl-CoA transferase)が抑制されているが、AMPKの活性化によりマロニル−CoAの濃度が低下するようになって、この阻害作用が解除されながらミトコンドリア内にロングチェーンアシル−CoA形態の脂肪酸の流入が増加しながらベータ酸化が増加するので、体脂肪及び血中中性脂質の減少が起こるようになる。
【0007】
一方、AMPKの活性化は、PGC−1α(Peroxisome proliferator-activated receptor gamma coactivator-1α)に対する燐酸化を起こし、またヒストンデアセチラーゼ(histone deacetylase)の一種であるSIRT1(Silent Information Regulatory T1)を活性化させる。その結果、AMPKとSITR1によるPGC−1αの燐酸化及び脱アセチル化によりミトコンドリア代謝が活発に起こって、糖尿及び肥満の改善効果が現れるようになる(非特許文献1〜2)。
したがって、AMPK活性化は体内脂肪酸及びコレステロールの合成抑制、そして体脂肪のベータ酸化及び血中葡萄糖の細胞吸収促進などの作用を促進するため、AMPKを活性化する物質は、肥満、糖尿、及び高脂血症の改善や治療に非常に効果的に使われることができる。
【0008】
アマチャヅル(Gynostemma pentaphyllum)はフクベ科(Cucurbitaceae)に属する多年生つる性植物である。山や野の森の中で自活し、根葉脈は横に伸びて節に白毛があり、縺れながら育つが、巻き鬚により這い登ることもする。アマチャヅル葉を乾かして作ったお茶は主として蔓茶とも呼ばれて、円形脱毛症をなくし、種々の臓器の機能を回復させ、健康な皮膚を維持するようにする。抗ストレス効果、弛緩性、及び痙攣性便泌抑制効果、下痢止め効果などがあり、気管支喘息、老人性慢性気管支炎などに効果がある。また、鎮咳、去痰作用があり、ストレス性潰瘍にも効果があり、肝炎、動脈硬化予防、陣痛作用などがあるとも知られている。
【0009】
特許文献1には、アマチャヅル抽出物がAMP-activated protein kinase(AMPK)の活性を増大させてインスリン抵抗性、肥満、そして高脂血症などを含む代謝疾患を改善させることができることを示唆するが、具体的な有効成分については開示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許2008−0003931
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Canto and Auwerx、Curr.Opin.Lipidol. 20、98-105、2009
【非特許文献2】Cantoら、Nature 458、1056-1060、2009
【非特許文献3】Hwangら、Biochem.Biophys.Res.Commun.371,289-293,2008
【非特許文献4】Hwangら、Biochem.Biophys.Res.Commun.377,1253-1258
【非特許文献5】Hardieら、FEBS Lett.546、113-120,2003
【非特許文献6】Carlingら、Trends.Biochem.Sci.29,18-24、2004
【非特許文献7】Kahnら、Cell Metab.1、15-25,2005
【非特許文献8】Coolら、Cell Metab.3.403-416,2006
【非特許文献9】Leeら、Diabetes,55,2256-2264,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、アマチャヅル抽出物から新規化合物を分離し、それを用いて有効な代謝疾患改善治療用アマチャヅル抽出物、代謝疾患改善用機能食品、代謝疾患改善治療用薬理組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、アマチャヅル抽出物の成分を分析した結果、ダムリンAとダムリンBという物質がアマチャヅル抽出物でAMPKの活性に影響を与えることと確認された。また、本発明の技術を用いて製造したダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新たな組成の新規アマチャヅル抽出物は既存のアマチャヅル抽出物に比べてAMPKの燐酸化能力増加及び酵素活性化能力が増加したことと確認された。これらの知見を基に本発明に至った。
【0014】
本発明では、アマチャヅル抽出物から新規のダマラン系サポニン物質であるAMP-activated protein kinase(AMPK)酵素活性化能力を持つダムリンA(damulinA)と命名された2α,3β,12β-trihydroxydammar-20(22)-E,24-diene-3-O-[β-D-glucopyranosyl-(1→)-β-D-glucopyrano side]、及びダムリンB(damulinB)と命名された2α,3β,12β-trihydroxydammara-20,24-diene-3-O-[β-D-glucopyranosyl-(1→)-β-D-glucopyranoside]をHPLC及びNMR方法を用いて分離及び分析した。
その構造は下式の通りである。
【0015】
【化1】

【0016】
ダムリンを分離するためのアマチャヅル葉抽出物を製造するためには、先に乾燥されたアマチャヅル葉を10〜20倍体積のエタノール水溶液(好ましくは、20〜80%エタノール水溶液)を抽出した後、1次上層液を回収する。残ったアマチャヅル葉残留浸漬物にまたエタノール水溶液(好ましくは、20〜80%エタノール水溶液)を6〜20倍加え、65〜95℃で1〜8時間抽出して2次上層液を得て、1次及び2次上層液を合わせた後、ガーゼを用いて濾過させ、得られた液をまた800〜1,500xGで遠心分離して浮遊物を除去する。得られた抽出液を減圧濃縮して40〜70ブリックス(Brix)に濃縮した後、得られたアマチャヅル抽出物濃縮液(以下、“TG1022”と称する)をまた高温高圧条件でダムリンの含有量が高まった新規アマチャヅル抽出物濃縮液(以下、“TG1022F”と称する)を得ることができる。
【0017】
ダムリン含有量が高まった新規アマチャヅル抽出物(TG1022F)を得るためには、高温及び高圧の維持が必要であるが、このために商業的に用いられる一般的な高温・高圧または高温高圧殺菌装置が取り付けられた発酵槽及び抽出器を利用できる。
【0018】
上記新規アマチャヅル抽出物は、温度が高くない超高圧状態でも生成できるが、超高圧状態を維持するために商業的に販売されている超高圧反応器を利用することもできる。例えば、日本東洋高圧社のDFS−2Lなどを使用することができる。上記新規アマチャヅル抽出物を製造するための好ましい温度は40〜125℃であり、好ましい圧力は1.2〜1100気圧である。反応時間は、好ましくは0.1〜24時間である。その他のアマチャヅル抽出物でダムリンAとダムリンBの含有量を高めることができる方法には、高圧及び高温条件の以外にも超高周波レンジやオーブンを利用することもできる。
【0019】
ダムリンA及びダムリンBの分離及び分析は、アマチャヅル抽出物を陰イオン交換樹脂が充填されたコラムに通過させるステップ、5〜15倍の精製水で洗浄するステップ、5〜15倍の50%メタノールを通過させて洗浄するステップ、及び5〜15倍のアセトン、ノルマルヘキサン、エチルアセテート、ノルマルブタノールにステップ別に抽出するステップ、上記分画別抽出物のうち、AMPKの活性の高い分画でHPLCを用いてダムリンA及びダムリンBを分離するステップを経て確認することができる。
【0020】
本発明のアマチャヅル抽出物に高温及び高圧を加えた新規アマチャヅル抽出物は、ダムリンA及びダムリンBが増加して糖尿病、肥満、体脂肪減少、そして血中中性脂肪及びコレステロールを減少させる効果が格段に向上するが、このような代謝疾患に対する治療、改善、または予防効果のために、ダムリンA及びダムリンBの含有量が乾燥重量当たり各々本発明の新たな組成の新規アマチャヅル抽出物の乾燥固形分のうち、有効指標成分であるダムリンAの含有量は0.5%から10%内の範囲であり、有用には0.7%から7%範囲であり、ダムリンBの含有量は0.3%から8%内の範囲であり、有用には0.5%から6%範囲である。
【0021】
新規アマチャヅル抽出物または粉末化前の液状形態(固形分に換算してダムリンAまたはダムリンBが各々0.5〜10%及び0.3〜8%以上含まれた)の一日投与量は、適切には固形分を基準にして1mg〜100gで、他の添加物及び賦形剤と共に投与できる。
【0022】
本発明の製剤は、ダムリンAあるいはダムリンBを有効成分として含有したアマチャヅル抽出物の含有量が全組成物の0.01%から100%範囲内で組成できる。
【0023】
また、本発明の組成物を含んだ食品は、抗肥満、抗糖尿、そして抗高脂血症の効験が阻害されない組成の範囲内で、どの種類の媒介物とも共に使われることができる。
本発明の組成物は、温泉水、濾過された水、蒸溜水、炭酸水、ジュース、ヨーグルト、牛乳、食用油、食品添加剤、アイスクリーム、ハンバーグ、シリアル、クッキー、パン、ビスケット、加工肉、豆乳、禅食、栄養補助剤、加工実、及び果物汁等に添加されることができ、この組成物が含まれた食品には、増量剤、防腐剤、甘味料、彩色剤、湿性乳化剤などが含まれることができる。
【0024】
疾患の臨床的状態に従って、投与は認められた多様な投与経路を選択することができる。例としては、経口または非経口投与法が使用できる。非経口投与法としては、静脈注射、筋肉注射、皮下脂肪注射、鼻腔を通じた投与法であって、その剤形は固形、半固形、あるいは液質型でも可能である。また、坐薬、クリーム、ジェル、パッチ、膣坐薬、エアロソルなどの形態であって、定量を投入できる全ての形態が含まれる。薬理的組成として伝統的な媒介物及び免疫補強剤などが含まれる。本発明の媒介物として薬理学的に認められた媒介物であれば全て可能であり、賦形剤あるいは安定剤は細胞と哺乳動物に露出時、無毒性を表すものを全て含む。薬理学的に認められた媒介物にはpHバッファー水溶液、燐酸、クエン酸、及びアスコルブ酸などを含むことができる。水溶性重合体であるポリビニルピロリドン、グライシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、あるいはライシンのようなアミノ酸、そして葡萄糖、マンノース、デキストリンのような炭水化物も媒介物になることができる。EDTAのようなキレート剤、マンニトール、ソルビトール、そして非極性界面活性剤であるツイーン(TWEEN)、PEG(polyethylene glycol)、そしてプルロニックス(PLURONICS)も媒介物に含まれることができる。
薬理学的に認められた媒介物と希釈剤には、全ての種類の溶液、分散剤、抗細菌及び抗真菌剤、等張剤、そして吸収遅延剤などを含む。薬理的活性物質のためのこのような製剤の利用法は一般的な技術に記録された通りである。薬理的活性物質と合わない製剤を除外した全ての製剤を含む。この組成に補完的な成分も添加できる。また、本発明の組成物にクロミウム、マンガン、亜鉛、ニアシン、ビタミンB6、ビタミンB12などを含むことができ、ここに現在肥満に効能があることと知らされたHCA(hydroxycitric acid)及びCLA(conjugated linoleic acid)等も含むことができる。
【0025】
経口投与時にも、薬理的に認められた無毒性の賦形剤と共に組成できる。賦形剤としては、マンニトール、ポリデキストロース、マルトデキストロース、澱粉、ラクトーズ、ステアル酸マグネシウム、サッカリン、タルク、セルロース、葡萄糖、ゼラチン、砂糖、炭酸マグネシウムなどを含む。このような組成は、溶液、懸濁、タブレット、丸薬、カプセル、粉末形態になることができ、薬理的に認められた無毒性の賦形剤と共に組成できる。
【0026】
タブレット、丸薬、及びカプセルは次のような製剤を含有できる。トレガカンスガム、アカシア、とうもろこし澱粉、及びゼラチンのような接着剤、燐酸カルシウムのような賦形剤、とうもろこし澱粉、ジャガイモ澱粉、及びアルギン酸のような分解剤、ステアルサンマグネシウムのような潤滑剤、砂糖、ラックトーズのような甘味剤、ペパーミント、ウィントグリーン、そしてチェリーなどから抽出された芳香剤も添加できる。単位容量がカプセル型の場合、上記提示された製剤の他に、液型媒介物も含むことができる。シロップとエリサの場合、有効成分と共に砂糖のような甘味剤と防腐剤としてメチルあるいはプロピルパラベンを含むことができ、着色剤と芳香剤としてチェリーとオレンジ芳香剤も添加できる。単位容量を調剤する時に使われた全ての製剤は純粋で、かつ無毒性でなければならない。このような剤形で、ラックトーズ、砂糖、燐酸カルシウムなどの希釈剤とステアルサンマグネシウムのような潤滑剤、澱粉、ポリビニルピロリドン、アカシアガム、ゼラチン、セルロースのような接合剤も共に組成できる。
【発明の効果】
【0027】
ダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新規アマチャヅル抽出物は、既存のアマチャヅル抽出物に比べてAMPKの燐酸化能力増加及び酵素活性化能力を格段に増加させられる。
【0028】
AMPKの下部ターゲットたんぱく質で、かつ脂肪酸生合成の核心酵素であるACC(acetyl-CoA carboxylase)の燐酸化を格段に増加させることができるので、この結果、ACCの酵素活性を低下させる能力も格段に強く表すようになる。したがって、窮極的にはダムリンの含有量を増加させた新規アマチャヅル抽出物(TG1022F)は、ダムリン含有量を増加させない元のアマチャヅル抽出物(TG1022)に比べて体脂肪合成抑制能力、脂肪酸のベータ酸化促進能力、コレステロール生合成抑制能力、高脂血症治療及び改善効果、肥満の治療及び改善効果があり、インスリン非依存的に細胞葡萄糖運搬体であるGLUT4の細胞膜移動能力を格段に増加させるによって、糖尿病患者の血糖を効率の良く低下させることができる。
結果的に、既存のアマチャヅル抽出物に比べて本発明の方法を用いて製造したダムリンAとダムリンBの含有量の高い新規アマチャヅル抽出物が肥満、糖尿、高脂血症などの代謝疾患の改善または治療効果が格段に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】AMPK活性を増大させる有効成分である新規ダマラン系サポニンに分離及び精製されたダムリンA成分のHPLCスペクトル分析結果を示すグラフ
【図2】AMPK活性を増大させる有効成分である新規ダマラン系サポニンに分離及び精製されたダムリンB成分のHPLCスペクトル分析結果を示すグラフ
【図3】L6筋肉細胞から純粋分離されたダムリンA化合物の濃度依存的AMPK(A)及びACC(B)燐酸化能力の増加を示す写真
【図4】L6筋肉細胞から純粋分離されたダムリンBの化合物の濃度依存的AMPK(A)及びACC(B)燐酸化能力の増加を示す写真
【図5】ダムリンA及びダムリンBの脂肪酸ベータ酸化増加に対する効果を示グラフ
【図6】ダムリンA及びダムリンBの細胞内の葡萄糖吸収が増加する効果を示すグラフ
【図7】ダムリンA及びダムリンBの含有量が各々0.89%及び0.68%に増加した新たな組成の新規アマチャヅル抽出物乾燥物(TG1022F)の濃度依存的なAMPK及びACC酵素蛋白質燐酸化能力の増加を示す写真
【図8】ダムリンA及びダムリンBの含有量が各々0.89%及び0.68%に増加した新たな組成の新規アマチャヅル抽出物乾燥物(TG1022F)の投与に従う肥満マウス筋肉(Soleus muscle)でAMPK及びACC燐酸化増加の変化を示す写真
【図9】アマチャヅル抽出物及びダムリンA及びダムリンBの含有量を増加させた新規アマチャヅル抽出物の製造方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明の実施形態を説述する。なお、下記の実施形態は本発明の実施例に過ぎず、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で従来公知の技術を援用して適宜変容可能である。
【実施例1】
【0031】
アマチャヅル抽出物からAMPK活性物質であるダムリンの分離:
乾燥されたアマチャヅル葉5kgを50lの50%エタノールに浸漬させた後、90℃で6時間1次抽出した後、1次上層液を回収した。残ったアマチャヅル葉残留浸漬物にまた50%エタノール50lを加え、90℃で6時間抽出して2次上層液を得た。1次及び2次上層液を合わせた後、ガーゼで濾過して得られた液をまた1,000xgで遠心分離して浮遊物を除去した。得られた抽出液を減圧濃縮して50ブリックス(Brix)に濃縮した後、これをAMPK活性物質であるダムリンの分離に用いた。
【0032】
ダムリンの純粋分離のために50ブリックスに濃縮されたアマチャヅル抽出物をHP−20陰イオン交換樹脂(Mitsubishi Chemical Corporation)が充填されたコラム(20x65cm)を通過させた後、一次的に10lの水で洗浄し、その後、10lの50%メタノールを通過させて洗浄した後、また10lのアセトンを通過させてアセトン分画を得て濃縮した。以後、濃縮液に水を1.5l混ぜて懸濁させた後、また1.5lノルマルヘキサンを使用して各3回抽出したヘキサン層(200g)、1.5lエチルアセテートで各3回抽出したエチルアセテート層(200g)、そして1.5lのノルマルブタノールで各3回抽出したブタノール層(200g)を得た。
【0033】
これらのうち、L6筋肉細胞(L6 myotube cells)でAMPK燐酸化増加に従う活性能力が最も高いブタノール分離層(100g)をシリカゲル(Merck社)コラム(15x65cm;63−200μm粒子サイズ)に初期溶媒混合組成割合をクロロホルム:メタノール:水=5:1:0.1から始めて最終溶媒混合割合がクロロホルム:メタノール:水=0:1:0.1の濃度勾配で物質を分離して全5個の分画(B.1−B.5)を得た。
【0034】
これら分画をHPLC分析を通じて確認した結果、B.3とB.4は含まれた物質が非常に類似してこれら2つの分画を合わせてB34分画を新しく作ったし、これらをまたODS−Aシリカゲル(Merck社)コラム(6.5x65cm;12nm−150μm粒子サイズ)に通過させ、物質分離のための溶媒として水とメタノール混合割合が初期には1:1から最終0:1になるように段階的な濃度勾配を使用して6個の分画を得た(B.34−1からB.34−6)。
【0035】
これらのうち、L6細胞でAMPK燐酸化増加に従う活性化能力が最も高いB34−5分画をHPLCを用いて紫外線測定器(205mm)を使用して再度物質を分離した。このために、セミ−プリパレーティブコラム(semi-preparative column, RP-C18 Package column, 10×250mm, 10 particle size;RS Tech大韓民国)を使用したし、試料の流速は分当り2ml、溶媒は初期には0.1%フォルム酸(formic acid)が含まれた75%メタノールを使用して75分分離後、また100%メタノール溶媒で15分分離したし、この結果、14mgのダムリンA及び10mgのダムリンBが各々分離された。
【0036】
分離されたダムリンA及びダムリンBの精製程度を確認するために、HPLC分析[機器:Gilson 321Pump / GX271 liquid handler、検出器:UV/VIS 155 Detector(205nm)、コラム:Optimapak C18(250x4.6mm、RS tech)、流速:0.8mL/min、溶媒:A-H2O/B-MeCN、溶媒濃度勾配:B20%(0-2分)/20-62%(2-33分)/62-100%(33-39分)/100%(39-48分)/100-20%(48-53分)/20%(53-60分)]を実施した。このために、ダムリンAは8mg/mlの濃度でメタノールに溶かした後、20μlの試料を適切なHPLC分析条件で分析用コラムを使用して紫外線測定器で205nmで吸光度分析を実施した。ダムリンBは4mg/ml濃度で5%のDMSOを含有したメタノールに溶かした後、20μlの試料をダムリンAと同一な条件下で分析を実施した。
その結果、図1及び2に提示されたように、分離精製されたダムリンA及びダムリンBは全て単一ピークに各々検出されたし、これらの純度は少なくとも97%以上ずつになることを確認した。
【実施例2】
【0037】
分離精製されたダムリンの構造結晶:
化合物ダムリンの構造を確認するためにFAB Mass分析を通じて[M+Na]+ピークを805.4717(cacld.805.4714)で観察した。1H NMR、13C NMR、及びHMBC(heteronuclear multiple-bonding correlation)等のスペクトルを測定して分離精製物の構造を確認した。
【0038】
1H NMRスペクトルで7個のアングラーメチルグループ(angular methyl groups)が単一ピークに表れたし、13C−NMRで表れた特徴的なδC 124.4、124.7、132.3、140.5ppmから二重結合の炭素ピークを確認することができた。また、5.08と5.26ppmのプロトンピークからこの化合物に2個の糖が結合されていることを確認することができた。1H NMRスペクトルデータからδH3.02、3.63、3.75ppmで表れたプロトンピークとδC68.3、74.1、及び96.8ppmの炭素ピークからハイドロキシルグループ(hydroxyl group)が3個置換されていることが分かった。また、2番と3番のプロトンカップリング定数から2ハイドロキシルグループが2α、3βのダイイコートリアル(diequatorial)形態で存在することが分かった。各種物理化学的性状及び13C NMRデータを他の文献と比較してダムリンが新規化合物であることを同定したし、この化合物の構造を確証するために、HMBCスペクトルを測定した。この結果、1Hから13C NMRピークからの連結点からこの化合物は糖が3番位置に2個の結合されたことを確認したし、各位置の1H、13C NMR構造確認結果、新規化合物である2α、3β、12β-trihydroxydammar-20(22)-E、24-diene-3-O-[β-D-glucopyranosyl-(1→)-β-D- glucopyranoside]であることを確認し、ダムリンAと命名した。
【0039】
ダムリンBは無定形のパウダーであって、13C NMRとHR−ESI−MSで実測値がm/z783.4905([M+H]+calcd. 783.4895)で、分子式はC42H70O13に同定した。ダムリンAと化合物2の1H and 13C NMRスペクトルとを比較して同一なアグリコン成分(aglycone moiety)を持つということが分かる。ダムリンAとダムリンBの主な差はダムリンAのアグリコンにある3次構造のCH3グループがダムリンB末端CH2グループに置換されているという点である。そして、C−22のオレフィニックメチングループの二重結合がC−20(δC140.5)の4次構造炭素に置換されている。1H NMRスペクトルでダムリンAのメチル信号(δ1.63、3H、s)の代りにダムリンBに2個の広い単一ピーク(δ4.69and4.88、each 1H、br、s)が表れ、ダムリンAで見えない典型的なオレフィニックプロトン信号がδ5.26(1H、br、t like、J=6.9Hz)で現れる。
【0040】
ダムリンBとダムリンAの13C NMRスペクトルを比較して見ると、ダムリンAのオレフィニック炭素信号(δC124.7、C−22)とメチル信号(δC13.1、C−21)がダムリンBのメチレン信号(δC35.1)と末端メチリンピーク(δC108.7)に各々代替されている。更に他の差異点に、ダムリンAの4次構造炭素(δC140.5、C−20)がダムリンBで低磁場(δC156.3)側に化学的転移が移動したことを見ることができる。ダムリンBの加水分解でもやはりC−Glucoseが生成される。
1H、13C NMRデータ(表1)と1H−1H COSY、gHSQC、1H−13C HMBCスペクトロスコピックデータのような2次元NMR(表1)を通じてダムリンBの2個の糖を同定した。ダムリンAの1H、13C NMRスペクトルでの化学的転移、カップリング定数などを比較してダムリンBやはりβ−構成形態の2個のグルコシルユニット(glucosyl units)があることが分かる。δ4.45(1H、d、J=8.0Hz、H−1’of glc’);δC105.0(C−1’of glc’)とδ4.75(1H、d、J=8.0Hz、H−1"of glc");δC104.5(C−1"of glc")のアノメリックプロトンがこのような結論を裏付ける。2個の糖とアグリコンとの連結部品はHMBC結果(表1)を通じて決定した。
上記の結果に基づいて、ダムリンBの構造を3-O-[β-D-glucopyranosyl-(1→)-β-D-glucopyranosyl]-2α,3β,12β-trihydroxydammara-20, 24-dieneに同定した。<表1>はCD30D上でダムリンA及びダムリンBの構造分析のための1H(500MHz)及び13C(100MHz)NMR結果である。
【0041】
【表1】

【実施例3】
【0042】
ダムリンA及びダムリンBのAMPKとACCの燐酸化増加効果:
AMPKの燐酸化により起こる活性化は、ACCとHMG−CoA還元酵素に対して燐酸化増加を起こして、この結果、ACCとHMG−CoA還元酵素の活性を阻害する(Henin、1995)。これによって、AMPK燐酸化により脂肪酸生合成は抑制されるようになり、ミトコンドリアでベータ酸化が増加し、肝組織では脂肪及びコレステロールの合成が阻害される。AMPKの活性はアミノ酸172番のスレオニン残基に燐酸化が増加したか否かにより判断できる。
【0043】
ACCは肝と筋肉組織で脂質代謝を調節する重要な酵素である。この酵素はアセチル−CoAをカルボキシル化させてマロニル−CoAを生成するようにする。マロニル−CoAはミトコンドリア内で脂肪酸のベータ酸化を調節する最も重要な因子であって、マロニル−CoAの濃度が増加すれば、ミトコンドリア膜のCPT−1(carnitine palmitoyl-CoA transferase)の活性が減少して脂肪酸のベータ酸化が抑制されるようになり、反対にマロニル−CoA濃度が減少すれば、ベータ酸化は増加して体脂肪減少が促進される。ACCはAMPK活性の下位ターゲットたんぱく質であって、AMPKの活性化はACCを燐酸化してACC酵素の不活性化を促進してマロニル−CoAの濃度が減少するようになって、この結果、ミトコンドリア膜のCPT−1の活性が増加するので脂肪酸のベータ酸化が増加するようになる。
【0044】
したがって、単一物質に分離されたダムリンAを10、30、60ug/ml濃度に、ダムリンBは1、5、10ug/ml濃度に各々分化されたL6筋肉細胞(L6 myotube cells)に2時間ずつ処理した後、AMPK αサブユニットのスレオニン−172残基及びACC酵素蛋白質の79番目のセリン残基に対する燐酸化増加程度をファンなど(非特許文献3)の方法によってウエスタンブロット分析を通じて確認した。
この結果、ダムリンA及びダムリンBの処理によりL6筋肉細胞内のAMPK及びACCの燐酸化が対照群に比べて濃度依存的に各々増加されることを確認したし(図3及び4)、ダムリンA及びダムリンB両方ともAMPKの燐酸化を起こして活性化され、ACCは燐酸化されて活性阻害を起こす有効物質であることを確認することができた。
【実施例4】
【0045】
ダムリンA及びダムリンBの脂肪酸ベータ酸化促進を通じた脂肪減少効果:
AMPKを活性化させれば、ACCの活性が減少するようになって、ミトコンドリア内のマロニル−CoAの濃度が減少するようになる。これによって、ミトコンドリア内に脂肪酸流入が増加してベータ酸化が増加するようになるので、体脂肪減少に従う肥満抑制効果が現れるようになる。培養されたL6筋肉細胞に純粋分離したダムリンAとダムリンBを処理してファンなどの方法(非特許文献4)に従い脂肪酸のベータ酸化増進効果を調べた。
【0046】
その結果、ダムリンA(30μg/ml)及びダムリンB(5μg/ml)により各々脂肪酸のベータ酸化が各々1.8倍と2.6倍増加されることが観察された(図5)。
また、ダムリンA及びダムリンBは体脂肪減少促進を通じた肥満抑制または治療効能が高い物質であることを確認した。
【実施例5】
【0047】
ダムリンA及びダムリンBの細胞内葡萄糖吸収促進効果:
AMPKの活性化はまた細胞内に葡萄糖吸収が増加を起こして血糖低下効果を表すことがよく知られている(非特許文献3、5〜9)。したがって、ダムリンAとダムリンBをL6筋肉細胞に処理して細胞内葡萄糖吸収能力に対する影響を調べた。
【0048】
培養されたL6筋肉細胞をファンなどの方法(非特許文献4)に従い高濃度の葡萄糖と共に、細胞内では分解が起こらない放射線同位元素である2-DG(2-deoxy-[3H]D-glucose)を添加した後、ダムリンA(30μg/ml)とダムリンB(5μg/ml)による細胞内の2―DG吸収促進程度を調べた。この結果、ダムリンAを処理した細胞では糖吸収能力が平均的に42%、そしてダムリンBが処理された細胞では79%程度の糖吸収が増加した(図6)。この結果、ダムリンA及びダムリンBは全て血糖低下を通じた抗糖尿効果が優れることを確認した。
【実施例6】
【0049】
高温及び高圧処理によりダムリン含有量が増加したアマチャヅル抽出物の製造:
上記実施形態4及び5で確認されたように、新規化合物であるダムリンAとダムリンBはAMPK活性化及びこれに従うACC活性阻害を起こす有効物質と明かされた。しかしながら、単純アマチャヅル抽出物(TG1022)にはダムリンA及びダムリンBの含有量が有効効果を表す程度に高いほうでなかった。したがって、ダムリンA及びダムリンBの含有量を増加させた新規組成の新たなアマチャヅル抽出物(TG1022F)を製造したし、上記新規アマチャヅル抽出物(TG1022F)が強力なAMPK活性化能力を有することを確認することができた。
【0050】
上記新規アマチャヅル抽出物濃縮液(TG1022F)は、単純常温常圧アマチャヅルエタノール抽出物(TG1022)に高温及び高圧反応あるいは超高圧反応などを通じて製造した。
【0051】
高温高圧反応は一般的な高温高圧滅菌器あるいは超高圧反応器(DFS−2L、東洋高圧、日本)を使用してアマチャヅルの単純抽出物濃縮液30mlに高温高圧条件を維持するようにした。
【0052】
新規アマチャヅル抽出物濃縮液(TG1022F)を乾燥させて得られた乾燥物内のダムリンA及びダムリンBの含有量はHPLCを使用して分析した。この時、図1に表れた純度を持つ分離されたダムリンA及びダムリンBを標準品に使用して濃度別定量標準曲線を作成して試料の各ピーク面積比から含有量を計算した。この結果、高温及び高圧あるいは時間を異にした条件で新規アマチャヅル抽出物濃縮液(TG1022F)でダムリンAとダムリンBの含有量は各々温度、圧力、時間などに比例して増加した(表2)。したがって、本発明ではアマチャヅル抽出物濃縮液を高温及び高圧を共に使用した処理条件で加工すれば、処理時間に比例してダムリンA及びダムリンBの含有量が格段に増加した新たなアマチャヅル抽出物濃縮液(TG1022F)を製造できる。<表2>は高温、高圧条件でアマチャヅル抽出物に含まれたダムリンの含有量増加を表す表である。
【0053】
【表2】

【実施例7】
【0054】
ダムリン含有量が増加した新規アマチャヅル抽出物のAMPK及びACCの燐酸化増加に対する効果:
実施形態6の方法により製造されたダムリンA及びダムリンBの含有量を各々0.89%及び0.68%に増加させた新たな組成のアマチャヅル抽出物(TG1022F)のAMPK信号伝達系の活性化増進能力に対する濃度依存性をL6筋肉細胞で調べた。
その結果、図7に表れたように、単純なアマチャヅル抽出物であるTG1022は120ug/mlの濃度で処理しても非処理対照群と類似するように全くAMPK及びACCの燐酸化を起こすことができなかった。しかしながら、ダムリンA及びダムリンBの含有量が各々0.89%及び0.68%に増加するように製造されたTG1022Fは、60ug/mlの処理濃度でもAMPK及びACCの燐酸化を強く促進させたし、90ug/ml及び120ug/mlに処理濃度を増加させた時、濃度依存的にAMPK及びACCの燐酸化を増加させた。特に、高温・高圧処理しない単純なアマチャヅル酒精抽出物濃縮液であるTG1022(ダムリンA含有量0.37%、ダムリンB含有量0.28%)と121℃、1.2気圧、1時間反応条件で高温・高圧処理したTG1022F(ダムリンA含有量0.89%、ダムリンB含有量0.68%)を同一な濃度に処理し、これらの効果を比較した結果、ダムリン含有量を増加させたTG1022FのAMPK及びACCの燐酸化能力がダムリン含有量が増加されないTG1022に比べて格段に優れることを確認した。
【実施例8】
【0055】
肥満動物モデルにおける新規アマチャヅル抽出物を用いた体重減少効果:
レプチン遺伝子突然変異によって肥満、高血糖、そしてインスリン抵抗性動物モデルとして使われるob/obマウスを使用してダムリンが増加したアマチャヅル抽出物の抗肥満効果を調べた。このために実施形態6の方法によりダムリンA及びダムリンBの含有量が各々0.89%及び0.68%に増加した新規アマチャヅル抽出物(TG1022F)を一日150mg/kgと300mg/kgで各々毎日8週間経口投与したし、この時、対照群としては生理食塩水を投与したグループを使用したし、単純アマチャヅル抽出物であるTG1022を300mg/kgとも比較した。
【0056】
この際、動物は各投与グループ当たり雄8頭ずつを使用した。得られた結果として表5に表したように、TG1022F(ダムリンA含有量0.89%、ダムリンB含有量0.68%)を一日150mg/kgと300mg/kgで投与したグループでは8週後に体重が生理食塩水対照群に比べて2.95g及び4.58g減少した(表3)。しかしながら、この時TG1022を300mg/kgで投与したグループでは生理食塩水対照群に比較時、留意性ある体重変化が表れなかった。一方、全ての投与グループの間に食餌摂取量の変化はないことと表れて、ダムリンA及びダムリンBの含有量が増加したTG1022Fによる体重減少効果は食餌摂取量の減少によるものではないことが分かった(表3)。
【0057】
表3は、肥満マウス(ob/ob)でダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新たな組成の新規アマチャヅル抽出物TG1022F(ダムリンA含有量0.89%、ダムリンB含有量0.68%)投与による体重減少効果を表す表である。
【0058】
【表3】

【実施例9】
【0059】
新規アマチャヅル抽出物の動物筋肉におけるAMPK及びACC燐酸化増加効果:
上記実施例8で得られた体重減少効果がAMPK及びACCの燐酸化増加に従う結果なのかを確認するために、TG1022F(ダムリンA及びダムリンBの含有量が各々0.89%及び0.68%に増加した抽出物)を投与したマウスでふくらはぎ筋肉を分離した後、ウエスタンブロット方法を用いてAMPK及びACCの燐酸化程度を確認した。
その結果、図8に示した結果のように、生理食塩水対照群及び単純アマチャヅル抽出物であるTG1022に比べてダムリンA及びダムリンBの含有量が増加したTG1022Fを投与したグループでAMPK及びACCの燐酸化が強くなされていることを確認することができた。この結果、上記実施形態8に表れたダムリン含有量が増加したTG1022Fの体重減少効果はTG1022Fが動物筋肉のAMPK活性化及びこれに伴うACCの不活性化を効率的に起こして表れた結果であることを再確認した。
【実施例10】
【0060】
新規アマチャヅル抽出物の人体体重及び腰回り減少に対する効果:
年齢が21歳から71歳の間の成人男子及び女子に単純なアマチャヅル抽出物であるTG1022とダムリンA及びダムリンBの含有量が各々0.89%及び0.68%に増加したTG1022Fを毎日各々300mgずつ12週間経口投与した。この際、TG1022は男女各々10人を対象に経口投与し、TG1022Fも男女各々10人を対象に経口投与した。体重は体重計を用いて測定したし、腰回りは10番目のあばら骨の下と掌骨の間の中間部位の回りを測定した。
【0061】
この結果、表4に表れたように、ダムリン含有量が増加したTG1022F投与群では男と女の試験群全てで体重は各々平均4.3kgと2.1kgずつ減少したし、腰回りは各々平均5.4cm及び5.8cmずつ減少した。一方、TG1022を投与した男子と女子の試験群で体重は平均0.6kg及び0.4kgずつ各々減少したし、腰回りは平均0.7cmと0.8cmずつ減少した(表7)。この結果に従い、ダムリンA及びダムリンBの含有量を増加させた新たな組成のTG1022Fは単純アマチャヅル抽出物であるTG1022に比べて格段に優れる体重及び体脂肪減少効果があることを確認した。
表4は、人体でダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新規アマチャヅル抽出物TG1022Fの体重及び腰回り減少効果を表す表である。
【0062】
【表4】

【実施例11】
【0063】
新規アマチャヅル抽出物の血中脂質減少に対する効果:
新規アマチャヅル抽出物の血中脂質減少に対する効果を確認するために、上記実施形態10で実施された被試験者の血中中性脂肪とコレステロール含有量の変化を調べた。
【0064】
その結果、表8に表れたように、ダムリン含有量を増加させたTG1022F投与群では男と女の試験群で中性脂質は各々平均23.7mg/dlと28.4mg/dlずつ減少したし、総コレステロールは各々平均26.3mg/dlと21.5mg/dlずつ減少した。一方、単純アマチャヅル抽出物であるTG1022を投与した男子と女子の試験群で中性脂質は各々平均3.7mg/dlと4.8mg/dlずつ減少したし、総コレステロールは各々平均3.1mg/dlと2.5mg/dlずつ減少した(表8)。
この結果に従い、ダムリンA及びダムリンBの含有量を増加させた新規アマチャヅル抽出物であるTG1022Fは単純アマチャヅル抽出物であるTG1022に比べて血中中性脂質及び総コレステロールに対する減少効果が格段に優れることを確認した。
表5は、人体でダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新たな組成の新規アマチャヅル抽出物TG1022F(ダムリンA含有量0.89%、ダムリンB含有量0.68%)の血中脂質減少効果を表す表である。
【0065】
【表5】

【実施例12】
【0066】
新規アマチャヅル抽出物の血糖減少効果:
次に新規アマチャヅル抽出物の血糖減少効果を測定するために、上記実施形態10で実施された被試験者の空腹血糖変化を調べた。
【0067】
この結果は表8に表れたように、ダムリンA及びダムリンBの含有量を各々ダムリンA含有量0.89%、ダムリンB含有量0.68%に増加させたTG1022F投与群では、男子と女子の試験群で空腹血糖は各々平均26.4mg/dlと21.5mg/dlずつ減少した。一方、単純アマチャヅル抽出物であるTG1022を投与した男子と女子の試験群で空腹血糖は各々平均3.1mg/dlと2.5mg/dlずつ減少した。この結果に従い、ダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新規アマチャヅル抽出物TG1022Fは単純なアマチャヅル抽出物であるTG1022に比べて血糖減少効果が格段に優れることを確認した。
表6は、人体でダムリンA及びダムリンBの含有量が増加した新規アマチャヅル抽出物TG1022Fの血糖減少効果を表す表である。
【0068】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によると、アマチャヅル抽出されるAMPK活性化物質のダムリンA及びダムリンBにより、肥満、糖尿、高脂血症を含む代謝疾患の改善及び治療に有効であり、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アマチャヅルの抽出物を製造する方法であって、
アマチャヅル葉エタノール抽出物濃縮液に、40〜125℃、1.2〜1100気圧の高温高圧または高圧反応を、0.1〜24時間処理して、
アマチャヅル葉抽出物濃縮液の乾燥粉末におけるダムリンAの含有量を0.7〜7%(w/w)、ダムリンBの含有量を0.5〜6%(w/w)に増加させる
ことを特徴とするアマチャヅル抽出物の製造方法。
【請求項2】
肥満、糖尿、高脂血症を示す代謝疾患の改善、治療のためのアマチャヅル抽出物であって、
アマチャヅル葉エタノール抽出物濃縮液を、40〜125℃、1.2〜1100気圧、0.1〜24時間、高温高圧反応させて製造される抽出物であって、
有効成分として、ダムリンAを0.7〜7%(w/w)、ダムリンBを0.5〜6%(w/w)含有する
ことを特徴とする代謝疾患改善治療用アマチャヅル抽出物。
【請求項3】
アマチャヅル抽出物を含む機能食品であって、
請求項2に記載のアマチャヅル抽出物を含む
ことを特徴とする代謝疾患改善用機能食品。
【請求項4】
機能食品が、温泉水、濾過水、蒸溜水、炭酸水、ジュース、ヨーグルト、牛乳、食用油のいずれかを含む
請求項3に記載の代謝疾患改善用機能食品。
【請求項5】
アマチャヅル抽出物を含む薬理組成物であって、
請求項2のアマチャヅル抽出物を含む
ことを特徴とする代謝疾患改善治療用薬理組成物。
【請求項6】
薬理組成物が、AMP-activated protein kinase(AMPK)酵素の活性を増大させる
請求項5に記載の代謝疾患改善治療用薬理組成物。
【請求項7】
下式の構造のダムリンAまたはダムリンBの化合物のうち、少なくとも一方を含有する
請求項2ないし6のいずれかに記載の代謝疾患改善治療用アマチャヅル抽出物、代謝疾患改善用機能食品、代謝疾患改善治療用薬理組成物。
(化1)


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−20995(P2011−20995A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15020(P2010−15020)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(510024994)ティ ジー バイオテク コーポレート リミテッド (1)
【Fターム(参考)】