説明

アミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法

【課題】DPP−IV阻害剤として有用なアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の効率的な製造法を提供する。
【解決手段】アミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に、塩基存在下、塩化ピバロイルを作用させることを特徴とする、式(2):


(式中、A、Rは前記と同意義を示す。)で示されるアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)阻害活性を有し、II型糖尿病などのDPP-IVが関与する疾患の予防および/または治療に有用なアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジペプチジルペプチダーゼIV(以下、DPP-IV)阻害剤が糖尿病(特にII型糖尿病)の治療薬として注目を集め、DPP-IV阻害作用を有する数多くの誘導体が報告されている。中でもアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体は優れた血糖低下作用を示すことから、抗糖尿病薬としていくつかの有望な化合物が報告されている。これらアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体は1−(2−クロロアセチル)ピロリジン−2−カルボニトリルあるいは1−(2−ブロモアセチル)ピロリジン−2−カルボニトリルと対応するアミンを塩基存在下、反応させることにより製造されるのが一般的である。(特許文献1〜16)
【0003】
一方、1−(2−クロロアセチル)ピロリジン−2−カルボニトリルあるいは1−(2−ブロモアセチル)ピロリジン−2−カルボニトリルを使用しない製造方法として、1−(2−クロロアセチル)ピロリジン−2−カルボキサミドあるいは1−(2−ブロモアセチル)ピロリジン−2−カルボキサミドとアミン誘導体を反応させ、その後脱水反応をすることによりアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体を製造する方法が開示されている(特許文献10〜13、特許文献17〜20)。しかしながら、特許文献10〜13においては、アミン誘導体との反応後に脱水反応を利用するアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の合成法について具体例の記載はなく、特許文献17〜19においてはアミノ基に保護基を導入した後に脱水反応を行っている具体例のみが記載されている。また、特許文献20には、トリフルオロ酢酸無水物による脱水反応のみが具体的に記載されている。
【特許文献1】特表2000-511559号公報
【特許文献2】特表2002-531547号公報
【特許文献3】特開2002-356471号公報
【特許文献4】特表2004-500321号公報
【特許文献5】特表2005-529078号公報
【特許文献6】特表2004-503531号公報
【特許文献7】US 2002/019339
【特許文献8】WO 04/099185パンフレット
【特許文献9】WO 05/075421パンフレット
【特許文献10】WO 02/38541パンフレット
【特許文献11】WO 03/095425パンフレット
【特許文献12】特開2004-26820号公報
【特許文献13】特開2006-160733号公報
【特許文献14】特開2002-356472号公報
【特許文献15】特開2004-2367号公報
【特許文献16】特開2004-2368号公報
【特許文献17】WO 03/057666パンフレット
【特許文献18】WO 04/026822パンフレット
【特許文献19】WO 06/043595パンフレット
【特許文献20】WO 07/102286パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DPP-IV阻害剤として有用な、アミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の安全かつ効率的な製造法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、アミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法を鋭意研究した結果、アミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に、塩基の存在下、塩化ピバロイルを反応させることにより、従来の方法よりも副反応を抑え、高収率で目的物を得る実用的製造方法を見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、
1)(1):
【化1】

(式中、AはCH2、CHFまたはCF2を示し;R1は置換されてもよい二級アミノ基を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に塩基存在下、塩化ピバロイルを作用させることを特徴とする、
【0007】
式(2):
【化2】

(式中、AおよびR1は前記と同意義を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法;
【0008】
2)R1が式(3):
【0009】
R2−NH− (3)
(式中R2は置換されてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されてもよいC3〜C10の環状アルキル基または置換されていてもよいC2〜C10環状アミノ基を示す。)
で表される二級アミノ基である1)に記載の製造方法;
【0010】
3)式(4):
【化3】

(式中、AはCH2、CHFまたはCF2を示し、R3は置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基、置換されていてもよいC3〜C8のシクロアルキル基、置換されていてもよいアリールメチル基、置換されていてもよいアリールエチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環、または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し、nは1または2を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に塩基存在下、塩化ピバロイルを反応させることを特徴とする、
【0011】
式(5):
【化4】

(式中、A、R3およびnは前記と同意義を示す)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法;
【0012】
4)式(4)および式(5)において、AがCHFまたはCF2であり、R3が置換されていてもよいC1〜C6のアルキル基である3)記載の製造方法;
【0013】
5)式(4)および式(5)において、AがCHFであり、R3がエチル基であり、nが2である3)に記載の製造方法;
【0014】
6)塩基が3級アミンまたは無機塩基である1)〜5)の何れかに記載の製造方法;
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による副反応の抑制効果により、従来の方法では不可欠であったアミノ基の保護および脱保護を行うことなく、アミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体から直接アミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体を製造する効率的かつ実用的な方法を確立した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書中に示される「置換されていてもよい二級アミノ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC〜Cのアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい二級アミノ基を意味し;
【0017】
ここで「二級アミノ基」とは、窒素原子に一の水素原子が置換した脂肪族または芳香族アミノ基を意味し、例えばメチルアミノ基またブチルアミノ基ようなC〜Cのアルキル基が結合したアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、アダマンチルアミノ基またはビシクロ[2,2,2]オクタニルアミノ基などのようなC〜C10の環状アルキル基が結合したアミノ基、芳香族アミノ基(例えばアニリル基、ピリジルアミノ基などが挙げられる)を意味する。
【0018】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC〜Cのアルキル基」とはハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC〜Cのアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC〜Cのアルキル基を意味し;
【0019】
「C〜Cのアルキル基」とは、直鎖または分岐した低級アルキル基を意味し、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−エチルプロピル基、2−エチルプロピル基、ブチル基、またはヘキシル基などを挙げることができる。
【0020】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC〜C10の環状アルキル基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC〜Cのアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい、C〜C10の環状アルキル基を意味し;
【0021】
「環状アルキル基」とはC3〜C8のシクロアルキル基、C5〜C10のビシクロアルキル基またはアダマンチル基を意味し;
【0022】
「C〜Cのシクロアルキル基」とは、シクロアルキル環を有するアルキル基を意味し、例えばシクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができ;
【0023】
「C〜C10のビシクロアルキル基」とは、ビシクロアルキル環を有するアルキル基を意味し、例えばビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロペンチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基またはビシクロデシル基などを挙げることができる。
【0024】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC〜C10の環状アミノ基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC〜Cのアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC〜C10の環状アミノ基を意味し;
【0025】
「C〜C10の環状アミノ基」とは、環内に一以上の窒素原子を含有し、また環内に酸素原子、硫黄原子が存在していても良い環状アミノ基を意味し、例えば、アジリジル基、ピロリジル基、ピペリジル基、モルホリル基、オキサゾリル基、アザビシクロヘプチル基またはアザビシクロオクチル基などを挙げることができる。
【0026】
本明細書中に示される「置換されていてもよいC〜Cのシクロアルキル基」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、C〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換のC〜Cのアルキルアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいC〜Cのシクロアルキル基を意味し;
【0027】
「C〜Cのシクロアルキル基」とは、シクロアルキル環を有するアルキル基を意味し、例えばシクロプロピル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。
【0028】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールメチル基」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよいC〜Cのアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換の置換されていてもよいC〜Cのアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールメチル基(例えばフェニルメチル基、ナフチルメチル基、ピリジルメチル基、キノリルメチル基またはインドリルメチル基などを挙げることができる)を意味する。
【0029】
本明細書中に示される「置換されていてもよいアリールエチル基」とは、ハロゲン原子、置換されていてもよいC〜Cのアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC〜Cのアルコキシ基、置換されていてもよいアリールオキシ基、C〜Cのアルキルカルボニル基、C〜Cのアルコキシカルボニル基、C〜Cのアルキルチオ基、アミノ基、モノまたはジ置換の置換されていてもよいC〜Cのアルキルアミノ基、置換されていてもよいアリールアミノ基、1〜3個のヘテロ原子を含んでいてもよい4〜9員の環状アミノ基、ホルミルアミノ基、C〜Cのアルキルカルボニルアミノ基、C〜Cのアルコキシカルボニルアミノ基、C〜Cのアルキルスルホニルアミノ基及び置換されていてもよいアリールスルホニルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよいアリールエチル基(例えばフェニルエチル基、ナフチルエチル基、ピリジルエチル基、キノリルエチル基またはインドリルエチル基などを挙げることができる)を意味する。
【0030】
本明細書中に示される「置換されていてもよい芳香族炭化水素」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいC〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基、C〜Cのアルキルチオ基及びC〜Cのジアルキルアミノ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい芳香族炭化水素(ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環)を意味する。
【0031】
本明細書中に示される「置換されていてもよい芳香族へテロ環」とは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、C〜Cのアルキル基、C〜Cのアルコキシ基及び、C〜Cのアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい芳香族へテロ環(窒素原子、酸素原子、硫黄原子の中から任意に選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む5員または6員の芳香族単環式複素環、あるいは9員または10員の芳香族縮合複素環、例えばピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、キノリン環、ナフチリジン環、キナゾリン環、アクリジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソキサゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンズイミダゾール環またはベンゾオキサゾール環)を意味する。
【0032】
本明細書中に示される「置換されていてもよい脂肪族へテロ環」とは、ハロゲン原子、C〜Cのアルキル基、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、C〜Cのアルコキシ基及びC〜Cのアルキルチオ基から選ばれた1〜5個の置換基を有していてもよい脂肪族へテロ環(窒素原子、酸素原子、および硫黄原子の中から任意に選ばれた1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員の脂肪族単環式複素環、あるいは9員または10員の脂肪族縮合複素環、例えばアゼチジン環、ピロリジン環、テトラヒドロフラン環、ピペリジン環、モルホリン環またはペラジン環)を意味する。
【0033】
本明細書中に示される「塩基」とは、三級アミン、無機塩基を意味し、例えばトリエチルアミン、炭酸カリウムなどを示す。
【0034】
(製造方法)
【化5】

(式中、AはCH2、CHFまたはCF2を示し;R1は置換されてもよい二級アミノ基を示す)
【0035】
本発明において、式(2)で示されるアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体は、式(1)で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に塩基存在下、塩化ピバロイルを反応させることにより得ることができる。
【0036】
塩基としては炭酸カリウムまたは炭酸セシウムなどのアルカリ炭酸塩、トリエチルアミン、N、N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリンなどの三級アミン類が挙げられ、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンが好ましい。用いる量は、式(1)で示される化合物に対し、1〜3当量が好ましく、1〜2当量が特に好ましい。
【0037】
反応溶媒としては、反応に関与しない不活性な溶媒であればよく、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、酢酸エチル、アセトンなどの非プロトン性極性溶媒が好ましく、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0038】
反応は−30℃〜溶媒の沸点で行うことができ、0℃〜40℃が好ましく、特に20℃〜40℃が好ましい。
【0039】
また本発明において、原料である式(1)で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。
【化6】

(式中、AおよびRは前記と同意義を示し、Xは塩素原子、臭素原子、メタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基などの脱離基を示す。)
【0040】
すなわち、式(6)で示される脱離基を有するアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体を塩基の存在下、アミン誘導体またはその塩と反応させることにより、式(1)で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体を製造することができる。
【0041】
上記反応に塩基を用いる場合には炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムまたは炭酸セシウムなどのアルカリ炭酸塩、トリエチルアミン、N、N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどの三級アミン類が挙げられ、炭酸カリウムあるいはトリエチルアミンが好ましい。上記反応に触媒を用いる場合には、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどの相間移動触媒または無機塩が挙げられ、ヨウ化カリウムが好ましい。反応溶媒としては反応に関与しない不活性な溶媒、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルエーテル、ジメトキシエタン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられ、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリルが好ましい。上記反応は0〜100℃で行うことができ、0〜60℃が好ましい。
【0042】
次に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、実施例において使用される原料化合物の製造方法を参考例として示した。
【0043】
(参考例)
(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボキサミドの合成
【0044】
A法:4−アミノビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸エチル塩酸塩(319mg)のN、N−ジメチルホルムアミド(1.8mL)溶液に、炭酸カリウム(277mg)を加え、内温40℃で30分間撹拌した。これに(2S、4S)−4−フルオロ−1−[2−(ベンゼンスルホニルオキシ)アセチル]ピロリジン−2−カルボキサミド(295mg)を加え、同温で1時間撹拌した。反応液に水(5.4mL)を加え、内温5〜10℃で30分間撹拌した。析出晶を濾取し、冷水(4mL)で洗浄後、外温40℃で送風乾燥し、白色結晶の(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボキサミド(収量247mg、収率75%)を得た。
MS (ESI+)
m/z: 370 (M + H+)
HRMS (ESI+)
for C18H28FN3O4: calcd, 370.21421;
found, 370.21842.
【0045】
B法:4−アミノビシクロ[2.2.2]オクタン−1−カルボン酸エチル塩酸塩(68.8g)、炭酸カリウム(77.6g)、ヨウ化カリウム(46.6g)およびN、N−ジメチルホルムアミド(167mL)を混合し、室温撹拌下、(2S、4S)−1−(クロロアセチル)−4−フルオロピロリジン−2−カルボキサミド(55.8g)を6時間かけて滴下した。同温で更に1時間撹拌後、反応液に水(1400mL)を加え、内温10℃以下で1時間撹拌した。析出晶を濾取し、冷水(279mL)で洗浄後、外温60℃で減圧乾燥し、白色結晶の(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボキサミド(収量72.9g、収率74%)を得た。
【実施例】
【0046】
(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルの合成
【0047】
(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボキサミド(100mg)をテトラヒドロフラン(1.0mL)に懸濁し、トリエチルアミン(75.0μL)を加えた。外温40℃で塩化ピバロイル(67.0μL)を加え、同温で3時間撹拌した。反応液に水(10.0mL)を加え、酢酸エチル(10.0mL)で2回抽出した。有機層を合一し、飽和食塩水(10.0mL)洗浄、無水硫酸ナトリウム乾燥、濾過、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開相:酢酸エチル:メタノール=5:1)により精製し、白色粉末の(2S,4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリル(収量89.3mg、収量94%)を得た。
MS (ESI+)
m/z: 352 (M + H+).
HRMS (ESI+)
for C18H28FN3O4: calcd, 352.20364;
found, 352.20766.
【0048】
(比較試験例)
【0049】
以下に、式(1)で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体である(2S、4S)−1−[2−[(4−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.2]オクト−1−イル)アミノ]アセチル]−4−フルオロピロリジン−2−カルボキサミドの脱水反応について、他の脱水剤を用いた場合の製造方法の比較結果を示す。下記表の比較例は実施例の方法と同様に行った。
【0050】
(表)
【表1】

【0051】
表に示すように、他の酸塩化物を作用させた場合、反応が進行しない、あるいはN−アセチル体の相当量の副生があった(比較例1〜4)。また、従来報告されていた特許文献10〜13あるいは特許文献17に記載されていた無水トリフルオロ酢酸による脱水反応(比較例5)では、アセチル基が置換したアミノ基に保護基がない場合には、N−アシル体の相当量の副生があった。一方、トリエチルアミンを用いない特許文献20の実施例14記載の方法を用いると60〜70%程度の収率で目的物が得られるが、収率も十分なものでなく且つN−アシル体も相当量副生した。しかし、塩化ピバロイルを作用させる本願発明の方法では、有意に副反応を抑制し高収率で反応が進行することが明らかとなった。
【0052】
すなわち、本願発明の方法は、保護基を導入しなくても副反応を抑制することが可能であり、従来法と比較してアミノアセチルピロリジン誘導体を効率的に製造する実用的な方法である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明により、DPP−IV阻害剤として有用な、式(2)に示したアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の効率的かつ実用的な製造法を提供することができ、産業上有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、AはCH2、CHFまたはCF2を示し;
Rは置換されていてもよい二級アミノ基を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に塩基存在下、塩化ピバロイルを作用させることを特徴とする、式(2):
【化2】

(式中、AおよびRは前記と同意義を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法。
【請求項2】
式(1)および式(2)において、Rが式(3):
R−NH− (3)
(式中Rは、置換されていてもよいC〜Cのアルキル基、置換されていてもよいC〜C10の環状アルキル基または置換されていてもよいC〜C10の環状アミノ基を示す)
で表される二級アミノ基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
式(4):
【化3】

(式中、AはCH2、CHFまたはCF2を示し;
Rは置換されてもよいC〜Cのアルキル基、置換されてもよいC〜Cのシクロアルキル基、置換されてもよいアリールメチル基、置換されてもよいアリールエチル基、置換されていてもよい芳香族炭化水素、置換されていてもよい芳香族へテロ環、または置換されていてもよい脂肪族へテロ環を示し;
nは1または2を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボキサミド誘導体に塩基存在下、塩化ピバロイルを反応させることを特徴とする、式(5):
【化4】

(式中、A、Rおよびnは前記と同意義を示す。)
で示されるアミノアセチルピロリジンカルボニトリル誘導体の製造方法。
【請求項4】
式(4)および式(5)において、AがCHFまたはCFであり、Rが置換されていてもよいC〜Cのアルキル基である請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
式(4)および式(5)において、AがCHFであり、Rがエチル基であり、nが2である請求項3記載の製造方法。
【請求項6】
塩基がトリエチルアミン、N−メチルモルホリンである請求項1から5の何れかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−114127(P2009−114127A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289243(P2007−289243)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000001395)杏林製薬株式会社 (120)
【Fターム(参考)】